スタータ駆動回数記憶システム及び電子制御ユニット
【課題】スタータの駆動回数を計数するユニットが交換される場合に、それまでに計数されていた駆動回数を交換後の新たなユニットへと自動的に且つ精度良く引き継がせる。
【解決手段】スタータ3の駆動回数を計数して不揮発性のメモリ23に記憶するスタータ制御ユニット11は、計数した駆動回数を示す駆動回数情報を、当該ユニット11と通信線27で接続されている複数のユニット12〜17に送信し、各ユニット12〜17では、その駆動回数情報に基づいて、当該ユニットのメモリ23に記憶している駆動回数を更新する。そして、スタータ制御ユニット11では、起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定すると、他のユニット12〜17へ、駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニット12〜17の各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニット11のメモリ23に記憶する。
【解決手段】スタータ3の駆動回数を計数して不揮発性のメモリ23に記憶するスタータ制御ユニット11は、計数した駆動回数を示す駆動回数情報を、当該ユニット11と通信線27で接続されている複数のユニット12〜17に送信し、各ユニット12〜17では、その駆動回数情報に基づいて、当該ユニットのメモリ23に記憶している駆動回数を更新する。そして、スタータ制御ユニット11では、起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定すると、他のユニット12〜17へ、駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニット12〜17の各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニット11のメモリ23に記憶する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を記憶しておく技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスタータは、規定回数よりも多く使用されると、当該スタータの動力源であるモータのブラシや接点が磨耗したり、エンジンのリングギヤに噛み合うピニオンギヤが磨耗したりして、寿命に至る可能性がある。
【0003】
このため、車両に搭載された特定のユニットが、スタータの駆動回数(即ち、駆動された回数)を計数して記憶するようにしておき、そのユニット(以下、計数ユニットという)に記憶されている駆動回数が規定値に達したら、スタータを交換することが考えられる。また、その場合、所定のテスタを計数ユニットに接続して、該計数ユニットから駆動回数を読み出すことにより、スタータの現在の駆動回数を確認する、といった作業手法が考えられる。
【0004】
ここで、スタータの駆動回数を記憶している上記計数ユニットが故障する等して交換された場合には、それまでに計数された駆動回数を失ってしまい、駆動回数は0から改めて計数されることとなる。すると、その改めて計数される駆動回数が規定値に達するよりも前に、スタータの寿命が来てしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、この問題の対策としては、例えば、計数ユニットを交換する作業者が、以下のような駆動回数の引き継ぎ作業を行うことが考えられる。
即ち、作業者は、計数ユニットの交換を行う前に、その計数ユニットからテスタによって駆動回数を読み出しておき、計数ユニットを交換したら、その交換後の新たな計数ユニットに、交換前の計数ユニットから読み出しておいた駆動回数を書き込む。そして、このような駆動回数の引き継ぎ作業を行えば、交換前の計数ユニットによって計数された駆動回数を、交換後の計数ユニットに引き継がせることができる。
【0006】
尚、スタータの駆動回数を記憶しておく技術とは関係ないが、特許文献1には、車両に搭載される複数の各ユニットのメモリに、その車両に固有の車両識別情報を予め記憶させておき、各ユニットは、動作を開始した際において、自身のメモリに車両識別情報が記憶されていなければ、他のユニットから通信により車両識別情報を受け取って、その受け取った車両識別情報を自身のメモリに記憶する、という技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−255079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述の対策では、人が駆動回数の引き継ぎ作業を行う必要があるため、手間がかかるという問題がある。更に、作業者が駆動回数の引き継ぎ作業を全て確実に遂行しなかった場合は勿論であるが、交換前のユニットに駆動回数を読み出せなくなる程の故障が生じている場合にも、駆動回数を交換後の新たなユニットに引き継がせることができなくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、スタータの駆動回数を計数するユニットが交換される場合に、それまでに計数されていた駆動回数を交換後の新たなユニットへと自動的に且つ精度良く引き継がせることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のスタータ駆動回数記憶システムは、車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を計数して記憶するものであり、通信路を介して通信が可能な3つ以上の複数のユニットを備えている。そして、その複数のユニットの各々は、スタータの駆動回数を記憶するための記憶手段を備えている。
【0011】
また、複数のユニットのうちの1つは、スタータの駆動回数を計数して、該計数した駆動回数を当該ユニットの記憶手段に更新記憶するマスタユニットである。尚、当該ユニットとは、自身(そのユニット自身)ということである。
【0012】
そして、そのマスタユニットは、計数した駆動回数を示す駆動回数情報を、複数のユニットのうちの当該マスタユニット以外のユニットであるスレーブユニットに送信する駆動回数情報送信手段を備えている。
【0013】
一方、スレーブユニットの各々は、マスタユニットから送信されてきた駆動回数情報に基づいて、当該ユニットの記憶手段に記憶している駆動回数を更新するバックアップ更新手段を備えている。
【0014】
このため、マスタユニットにて計数されていく駆動回数は、各スレーブユニットの記憶手段にも、バックアップデータとして記憶されることとなる。
そして更に、マスタユニットは、当該ユニットの記憶手段に駆動回数が記憶されているか否かを判定する判定手段と、その判定手段により記憶手段に駆動回数が記憶されていないと判定された場合に、他のユニットに対して、駆動回数の送信を要求する駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニットの記憶手段に記憶する駆動回数復元手段とを備えている。
【0015】
また、スレーブユニットの各々は、他のユニットから駆動回数要求が送信されてきた場合に、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットの記憶手段に記憶されている駆動回数を送信する駆動回数応答手段を備えている。
【0016】
このため、スタータの駆動回数を計数するマスタユニットが交換された場合には、その交換後の新たなマスタユニットにおいて、判定手段により、記憶手段に駆動回数が記憶されていないと判定され、そのマスタユニットから各スレーブユニットへ駆動回数要求が送信されて、各スレーブユニットからマスタユニットへ、各スレーブユニットの記憶手段にバックアップデータとして記憶されていた駆動回数が送信されることとなる。
【0017】
そして、交換後の新たなマスタユニットにおいては、各スレーブユニットから送信されてきた駆動回数のうちで、最も大きい駆動回数が、ユニット交換時点までに計数されていた駆動回数として、記憶手段に記憶され、以後は、その記憶された駆動回数の値から、スタータの駆動回数の計数が継続されることとなる。
【0018】
よって、このようなスタータ駆動回数記憶システムによれば、スタータの駆動回数を計数するマスタユニットが交換される場合に、それまでに計数されていた駆動回数を交換後の新たなユニットへと自動的に引き継がせることができる。
【0019】
更に、マスタユニットは、各スレーブユニットからの駆動回数のうち、最も大きい駆動回数を、記憶手段に記憶することとなり、つまりは、スタータの寿命(交換時期)を判定するための駆動回数として、最も厳しい条件となる値を、記憶手段に記憶することとなる。よって、その記憶手段に記憶されている駆動回数が規定値以上になったか否かを判定することにより、スタータの交換時期を適切に判断することができ、スタータを交換する前にスタータの寿命が来てしまう可能性を、より低くすることができる。
【0020】
例えば、スレーブユニットにおいては、記憶手段内の駆動回数をマスタユニットからの駆動回数情報に基づき更新することに、ノイズや一時的なリセットや通信エラーなどの原因によって失敗する可能性があり、そのような駆動回数の更新失敗が生じた場合には、あるスレーブユニットに記憶されている駆動回数が、他のスレーブユニットに記憶されている正しい駆動回数よりも小さいという状況であって、各スレーブユニットに記憶されている駆動回数が異なる状況が発生する。そして、そのような状況でマスタユニットが交換された場合でも、各スレーブユニットに記憶されている駆動回数のうち、最も大きい駆動回数であり正しいと考えられる駆動回数(スタータの交換時期を正しく判断できる駆動回数でもある)が、交換後の新たなマスタユニットに記憶されることとなる。尚、ユニットに記憶されるとは、詳しくは、そのユニットの記憶手段に記憶されるということである。
【0021】
このため、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムによれば、マスタユニットが交換される場合には、それまでに計数されていた駆動回数を、交換後の新たなユニットへと、自動的にだけではなく、精度良く引き継がせることもできる。
【0022】
また、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムによれば、例えば、マスタユニットだけでなく、スレーブユニットの何れかとマスタユニットとがセットで交換された場合でも、交換後の新たなマスタユニットには、交換されなかった他のスレーブユニットに記憶されていた駆動回数を記憶させることができ、駆動回数の復元能力が高い。
【0023】
ところで、スレーブユニットに記憶される駆動回数を更新させる方式としては、下記の2通りのものが考えられる。
まず第1の方式は、請求項6に記載のように、マスタユニットの駆動回数情報送信手段は、駆動回数情報として、計数した駆動回数を送信し、スレーブユニットのバックアップ更新手段は、マスタユニットから送信されてきた駆動回数を、当該ユニットの記憶手段に更新記憶する、というものである。つまり、マスタユニットからスレーブユニットに駆動回数そのものを送信し、その駆動回数をスレーブユニットの記憶手段に更新記憶させるという方式である。尚、以下では、この第1の方式のことを、生値更新方式という。
【0024】
そして、この生値更新方式によれば、もし各スレーブユニットに記憶されている駆動回数が異なる状況が発生したとしても、その状況は、マスタユニットから駆動回数情報(駆動回数)が送信されることで解消されることとなる。よって、全てのユニットに同じ駆動回数が記憶されている状態への復帰能力が高いという利点がある。
【0025】
次に第2の方式は、請求項5に記載のように、マスタユニットの駆動回数情報送信手段は、駆動回数情報として、当該駆動回数情報の前回送信時からの駆動回数の増加分(差分とも言える)を送信し、スレーブユニットのバックアップ更新手段は、当該ユニットの記憶手段に記憶している駆動回数を、マスタユニットから送信されてきた前記増加分だけ大きい値に更新する、というものである。つまり、マスタユニットから駆動回数の増加分を送信し、その増加分だけスレーブユニットに記憶される駆動回数も増加させるという方式である。尚、以下では、この第2の方式のことを、増加分更新方式という。
【0026】
そして、この増加分更新方式によれば、スタータの駆動回数が大きくなっても、マスタユニットからスレーブユニットに送信される駆動回数情報のデータ量を小さいものにすることができる、という利点がある。
【0027】
次に、請求項2のスタータ駆動回数記憶システムでは、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、スレーブユニットの各々も前記判定手段と前記駆動回数復元手段とを備え、マスタユニットも前記駆動回数応答手段を備えている。
【0028】
つまり、各スレーブユニットにおいても、判定手段が、当該ユニットの記憶手段に駆動回数が記憶されているか否かを判定し、その判定手段により駆動回数が記憶されていないと判定されたなら、駆動回数復元手段が、他のユニット(この場合、他のスレーブユニットとマスタユニット)に対して駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニットの記憶手段に記憶する。また、マスタユニットでは、他のユニット(この場合、スレーブユニットの何れか)から駆動回数要求が送信されてくると、駆動回数応答手段が、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットの記憶手段に記憶されている駆動回数を送信する。
【0029】
そして、このスタータ駆動回数記憶システムによれば、スレーブユニットの何れかが交換された場合にも、その交換後の新たなスレーブユニットにおいて、判定手段により、記憶手段に駆動回数が記憶されていないと判定され、そのスレーブユニットから他のユニット(他のスレーブユニットとマスタユニット)へ駆動回数要求が送信されて、それに対する応答として、他の各ユニットから交換後の新たなスレーブユニットへ駆動回数が送信されることとなる。そして、交換後の新たなスレーブユニットにおいては、他の各ユニットから送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数が、記憶手段に記憶されることとなる。
【0030】
このため、スレーブユニットの何れかが交換される場合にも、それまでに計数されていた駆動回数を、交換後の新たなスレーブユニットへと自動的に且つ精度良く引き継がせることができる。そして、マスタユニットが交換されるときに備えて、できるだけ多くのスレーブユニットに正しい駆動回数が記憶されている状態をできるだけ早く作っておくことが好ましく、そのことを実現することができる。
【0031】
特に、前述した増加分更新方式の場合には、スレーブユニットの何れかが交換された後、交換後の新たなスレーブユニットにマスタユニットから駆動回数情報(駆動回数の増加分)が送信されただけでは、その新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数は、初期値の0から上記増加分だけ大きい値になるだけであり、ユニット交換前に記憶されていた真値(正しい駆動回数)には戻らない。しかし、請求項2のシステムによれば、増加分更新方式であっても、交換後の新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を真値に戻すことができる。
【0032】
また、前述した生値更新方式の場合であれば、交換後の新たなスレーブユニットにマスタユニットから駆動回数情報(駆動回数)が送信されれば、その新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を真値に戻すことが可能であるが、請求項2のシステムによれば、交換後の新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を、マスタユニットから駆動回数情報が送信される前であっても真値に戻すことができるようになる。よって、マスタユニットが交換されるときに備えて、スレーブユニットをできるだけ早く正しい駆動回数が記憶されている状態にすることができるという面において、やはり有利である。
【0033】
次に、請求項3のスタータ駆動回数記憶システムでは、請求項2のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、スレーブユニットの各々は、駆動回数更正手段を備えている。そして、その駆動回数更正手段は、当該ユニットの判定手段により当該ユニットの記憶手段に駆動回数が記憶されていると判定された場合に、他のユニットに対して駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、当該ユニットの記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、当該ユニットの記憶手段に記憶する。
【0034】
このスタータ駆動回数記憶システムによれば、あるスレーブユニットに記憶されている駆動回数が、前述した更新失敗によって、他のユニット(他のスレーブユニットとマスタユニット)に記憶されている駆動回数より小さい値になったとしても、そのスレーブユニットに記憶される駆動回数を、他のユニットに記憶されている正しい駆動回数と同じ値に直すことができる。そして、マスタユニットからスレーブユニットへの駆動回数情報の形態や、その駆動回数情報が送信されるか否かに関わらず、全てのスレーブユニットに正しい駆動回数が記憶されている状態を維持することができる。
【0035】
特に、前述した増加分更新方式の場合には、例えば、スレーブユニットSa,Sbのうち、スレーブユニットSaに記憶されている駆動回数が、更新失敗によって、マスタユニットに記憶されている真値の駆動回数よりも小さい値になったとすると、以後、そのスレーブユニットSaに記憶される駆動回数は、真値よりも小さい値でしか推移しなくなる。
【0036】
そして、そのような状況において、マスタユニットが交換されても、新たなマスタユニットには、他のスレーブユニットSbに記憶されていた正しい駆動回数が記憶されるため、問題はない。
【0037】
ところが、もしマスタユニットが交換される前に、スレーブユニットSbにおいても駆動回数の更新失敗が起こっていて、そのスレーブユニットSbに記憶されている駆動回数も真値より小さい値になっていると、マスタユニットの交換時において、もはや、新たなマスタユニットへ正しい駆動回数を記憶させることができなくなる。
【0038】
つまり、増加分更新方式の場合、非常に希なケースではあるが、全てのスレーブユニットが駆動回数の更新に失敗した場合には、もはやスレーブユニット側に正しい駆動回数が残らないため、その状況で、マスタユニットが交換されると、新たなマスタユニットに正しい駆動回数を記憶させることができなくなるという懸念がある。
【0039】
しかし、請求項3のスタータ駆動回数記憶システムによれば、こうした懸念を回避することができるのである。
また、前述した生値更新方式の場合には、スレーブユニットに記憶されている駆動回数がマスタユニットに記憶されている真値の駆動回数よりも小さい値になったとしても、マスタユニットから送信される駆動回数情報により、スレーブユニットに記憶される駆動回数は真値に戻すことができる。
【0040】
しかし、請求項3のスタータ駆動回数記憶システムは、生値更新方式の場合であっても、やはり有利である。マスタユニットから駆動回数情報が送信される前であっても、スレーブユニットの駆動回数を真値に戻すことが可能になるからであり、延いては、マスタユニットが交換されるときに備えて、駆動回数の更新に失敗したスレーブユニットをできるだけ早く正しい駆動回数が記憶されている状態に復帰させることができるからである。
【0041】
次に、請求項4のスタータ駆動回数記憶システムでは、請求項1〜3のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、マスタユニットは、前述した駆動回数更正手段と同様の駆動回数更正手段を備えている。
【0042】
そして、このスタータ駆動回数記憶システムによれば、マスタユニットが正しい駆動回数を失ってしまうことを防止することができる。
例えば、マスタユニットにおいて、スレーブユニットへ駆動回数情報を送信してから、記憶手段内の駆動回数を更新する前に、電源が遮断されたりリセットが発生したりして、その記憶手段内の駆動回数の更新に失敗すると、マスタユニットにおいて正しい駆動回数を失ってしまうこととなるが、マスタユニットにも駆動回数更正手段を設けることで、マスタユニットはスレーブユニットから正しい駆動回数を受け取って記憶し直すことができる。
【0043】
特に、前述した生値更新方式の場合には、マスタユニットに記憶されている駆動回数が正しくなくなると、全てのスレーブユニットに記憶される駆動回数にも影響するため、マスタユニットに駆動回数更正手段を設けることは有効である。
【0044】
ところで、一般に、車両に搭載されるユニットとしては、車両がイグニッション(IG)オンの状態になると動作用電力が供給されて起動するイグニッション系ユニットと、車両がアクセサリ(ACC)オンの状態になると動作用電力が供給されて起動するアクセサリ系ユニットとがある。
【0045】
尚、イグニッションオンの状態とは、車両のイグニッションスイッチがオンされている状態であるとも言えるが、イグニッションスイッチをオン/オフさせる従来からのイグニッションキーシリンダが存在しないプッシュスイッチ式の車両(即ち、プッシュスイッチの操作によってイグニッション電源のオン/オフや、アクセサリ電源のオン/オフや、スタータのオンが行われる車両)もあるため、総称すると、車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給される状態のことである。同様に、アクセサリオンの状態とは、車両のアクセサリスイッチがオンされている状態であるとも言えるが、イグニッションキーシリンダが存在しないプッシュスイッチ式の車両もあるため、総称すると、車両におけるアクセサリ系の電源ラインにバッテリ電圧が供給される状態のことである。
【0046】
そして、何れのユニットであっても、例えば、判定手段は、当該判定手段を備えるユニットが起動した際に動作すれば良く、また、その判定手段の判定結果に基づく駆動回数要求の送信は、当該スタータ駆動回数記憶システムを成す全てのユニットが起動している状態にて行われるようになっていれば良い。
【0047】
このため、当該スタータ駆動回数記憶システムを成すユニットが、イグニッション系ユニットとアクセサリ系ユニットとの何れかに統一されているのであれば、判定手段の動作及び駆動回数要求の送信は、ユニットが起動した際に行われるようになっていれば良い。
【0048】
また、当該スタータ駆動回数記憶システムを成すユニットとして、アクセサリ系ユニットとイグニッション系ユニットとが混在する場合には、イグニッション系ユニットよりもアクセサリ系ユニットの方が先に起動することになるため、アクセサリ系ユニットでは、例えば、当該ユニットが起動して判定手段が動作した後、イグニッションオンの状態になったことを確認してから駆動回数要求を送信する、というように構成すれば良い。また、アクセサリ系ユニットであっても、イグニッション系ユニットと同様に、イグニッションオンの状態になったら判定手段の動作及び駆動回数要求の送信が行われる、というように構成しても良い。
【0049】
一方、請求項7の電子制御ユニットによれば、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムにおけるマスタユニットとして使用することができ、請求項8の電子制御ユニットによれば、請求項4のスタータ駆動回数記憶システムにおけるマスタユニットとして使用することができる。
【0050】
また、請求項9の電子制御ユニットによれば、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムにおけるスレーブユニットとして使用することができ、請求項10の電子制御ユニットによれば、請求項2のスタータ駆動回数記憶システムにおけるスレーブユニットとして使用することができる。更に、請求項11の電子制御ユニットによれば、請求項3のスタータ駆動回数記憶システムにおけるスレーブユニットとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態のスタータ駆動回数記憶システムを表す構成図である。
【図2】スタータ制御ユニットで実行される駆動回数加算処理を表すフローチャートである。
【図3】スタータ制御ユニットで実行される駆動回数情報送信処理を表すフローチャートである。
【図4】スタータ制御ユニット以外の各ユニットで実行される駆動回数バックアップ更新処理を表すフローチャートである。
【図5】全てのユニットで実行される駆動回数チェック処理を表すフローチャートである。
【図6】駆動回数チェック処理中の駆動回数復元処理を表すフローチャートである。
【図7】駆動回数チェック処理中の駆動回数更正処理を表すフローチャートである。
【図8】全てのユニットで実行される駆動回数応答処理を表すフローチャートである。
【図9】スタータ制御ユニットで実行されるスタータ劣化判定処理を表すフローチャートである。
【図10】スタータ制御ユニットで実行される劣化判定結果通知処理を表すフローチャートである。
【図11】テスタで実行される劣化判定結果問い合わせ処理を表すフローチャートである。
【図12】テスタで実行される駆動回数リセット要求処理を表すフローチャートである。
【図13】全てのユニットで実行される駆動回数リセット処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に、本発明が適用された実施形態のスタータ駆動回数記憶システムについて説明する。
図1に示すように、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムは、車両のエンジン1を始動させるためのスタータ3を制御するユニット(スタータ制御ユニット)11と、エンジン1を制御するユニット(エンジン制御ユニット)12と、車両のブレーキ装置を制御するユニット(ブレーキ制御ユニット)13と、エンジン1の自動的な停止及び再始動の制御であるアイドルストップ制御を行うユニット(アイドルストップ制御ユニット)14と、車両の自動変速機を制御するユニット(トランスミッション制御ユニット)15と、車両のメータを制御するユニット(メータ制御ユニット)16と、車両の空調装置を制御するユニット(エアコン制御ユニット)17と、を備えている。
【0053】
各ユニット11〜17は、マイコン21やメモリ23や通信回路25等を備えた電子制御ユニットであり、車両に配設された通信線27を介して互いにデータ通信可能となっている。詳しく説明すると、各ユニット11〜17の処理動作の中枢部であるマイコン21が、そのユニットに設けられている通信回路25と上記通信線27を介して、互いに通信することにより情報をやりとりして、各自の制御対象を制御するための処理を行うようになっている。
【0054】
また、各ユニット11〜17のマイコン21には、揮発性のRAM21aが備えられている。これに対して、各ユニット11〜17のメモリ23は、データの書き換えが可能な不揮発性メモリであり、本実施形態では、例えばEEPROMであるが、いわゆるフラッシュメモリ等でも良い。
【0055】
尚、図1においては、マイコン21、メモリ23及び通信回路25を、ユニット11,14についてだけ図示しているが、他のユニットにも同様に設けられている。また、ユニット11には、そのユニット11のマイコン21からの制御信号に従ってスタータ3を駆動する駆動回路29が設けられている。
【0056】
また、通信線27には、車両外の検査装置であるテスタ31を着脱するためのコネクタ33が設けられている。そして、テスタ31は、通信線27に接続されることにより、その通信線27を介して各ユニット11〜17と通信可能になる。詳しく説明すると、テスタ31は、処理動作の中枢部であるマイコン35や表示装置37や操作部38や通信回路39等を備えており、マイコン35が、通信回路39と通信線27を介して、各ユニット11〜17のマイコン21と通信するようになっている。
【0057】
そして、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムでは、スタータ制御ユニット11が、スタータ3の駆動回数を計数して該計数した駆動回数を当該ユニット11のメモリ23に更新記憶するマスタユニットとなっている。また、他のユニット12〜17の各々は、スタータ制御ユニット11から送信される駆動回数情報に基づいて、当該ユニットのメモリ23に記憶している駆動回数を更新するスレーブユニット(マスタユニット以外のユニット)となっている。
【0058】
つまり、スタータ制御ユニット11にて計数されるスタータ3の駆動回数が、そのスタータ制御ユニット11のメモリ23だけでなく、他のユニット12〜17のメモリ23にもバックアップされる(バックアップデータとして記憶される)ようになっている。
【0059】
一方、本実施形態において、ユニット11〜17は、車両がイグニッションオンの状態(車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給される状態)になると動作用電力が供給されて起動する(詳しくは、そのユニット11〜17のマイコン21が起動する)イグニッション系ユニットである。また、各ユニット11〜17には、車両がイグニッションオンの状態になると、イグニッション系の電源ラインからではなく、図示しない給電用リレーを介してバッテリ電圧が動作用電力として供給され、その後、車両がイグニッションオフの状態(車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給されない状態)になってからも、そのユニットのマイコン21が行うべき所定の処理が終了するまでは、上記給電用リレーを介して動作用電力が供給され続けるようになっている。尚、以下では、車両がイグニッションオフの状態になってからユニット11〜17への動作用電力の供給が停止されるまでの期間のことを、最終動作期間という。
【0060】
次に、各ユニットで実行される処理について説明する。
まず、図2は、スタータ制御ユニット11で実行される駆動回数加算処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数加算処理は、スタータ制御ユニット11のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。
【0061】
図2に示すように、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、駆動回数加算処理の実行を開始すると、まずS120にて、スタータ3の駆動が必要か否かを判定する。
スタータ3の駆動が必要な場合とは、勿論エンジン1を始動させる時であり、本実施形態では、車両の運転者の始動用操作に応じてエンジン1を始動させるユーザ始動時と、アイドルストップ制御によって自動的に停止させたエンジン1を自動的に再始動させる時(アイドルストップからの再始動時)との、何れかである。
【0062】
そして、S120では、所定のユーザ始動許可条件が成立していると判定し、且つ、運転者がエンジン1を始動させるための始動用操作(イグニッションキーシリンダがある車両であれば、キーを捻ってスタータスイッチをオンする操作であり、プッシュスイッチ式の車両であれば、そのプッシュスイッチが所定時間以上押されたという操作)を行ったことを検知した場合、あるいは、アイドルストップ制御ユニット14から自動停止中のエンジン1を再始動させる指令が送信されてきた場合に、スタータ3の駆動が必要であると判定する。尚、ユーザ始動許可条件としては、例えば、シフト位置がパーキングロック位置(P位置)であり、且つ、ブレーキペダルが踏まれている、といった条件である。
【0063】
そして、このS120にて、スタータ3の駆動が必要ではないと判定した場合には、そのまま当該駆動回数加算処理を終了するが、スタータ3の駆動が必要であると判定した場合には、S130に進む。
【0064】
S130では、駆動回路29によってスタータ3を駆動し、エンジン1をクランキングさせる。すると、エンジン制御ユニット12により、エンジン1に対する燃料噴射及び点火が実施される。そして、このS130では、エンジン1が完爆状態(始動が完了した状態であり、いわゆるエンジン1がかかった状態)になったと判定すると、スタータ3の駆動を停止する。尚、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、例えば、エンジン1のクランク軸センサ(図示省略)からの回転信号に基づき算出されるエンジン回転数から、エンジン1が完爆状態になったか否かを判定する。
【0065】
そして、次のS140にて、当該ユニット11で計数し記憶しているスタータ3の駆動回数を、1つ大きい値に更新する処理を行い、その後、当該駆動回数加算処理を終了する。
【0066】
ここで、スタータ制御ユニット11において駆動回数がどのように記憶されているかについて具体的に説明する。
まず、スタータ制御ユニット11では、スタータ3の駆動回数を、メモリ23と、マイコン21内のRAM21aとの、両方を使って継続的に記憶するようになっている。
【0067】
そして、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、上記S140では、RAM21a内の駆動回数に1を加算する処理を行う。
更に、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、車両がイグニッションオフの状態になってから動作用電力の供給が停止されるまでの最終動作期間中に、RAM21aからメモリ23に駆動回数をコピーして退避させる退避処理を行う。そして、車両がイグニッションオンの状態になって当該マイコン21が起動した直後に行う駆動回数コピー処理により、メモリ23からRAM21aに駆動回数をコピーする。尚、ユニット11〜17の製造時におけるメモリ23内の駆動回数の初期値は0である。
【0068】
このため、スタータ制御ユニット11に動作用電力が供給されてマイコン21が動作している間は、スタータ3が駆動される毎に、RAM21a上で駆動回数が1ずつ加算されて、そのRAM21aに最新の駆動回数が記憶されることとなり、また、スタータ制御ユニット11への動作用電力の供給が停止している間は、最新の駆動回数がメモリ23に記憶(保存)されることとなる。
【0069】
尚、変形例として、S140では、メモリ23内の駆動回数を1つ大きい値に更新する処理を行っても良い。つまり、S140では、メモリ23から駆動回数を読み出して、その読み出した値に1を加算した値を、更新後の駆動回数としてメモリ23に書き込む、という処理を行うようにしても良い。この場合、最新の駆動回数は常にメモリ23に記憶されることとなる。
【0070】
次に、図3(A)は、スタータ制御ユニット11で実行される駆動回数情報送信処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数情報送信処理は、スタータ制御ユニット11のマイコン21によって実行される。そして、ここでは、前述した最終動作期間中に実行されるものとして説明するが、他の例として、例えば一定時間毎に実行するようにしたり、図2のS140で駆動回数を更新した場合に実行されるようにしても良い。
【0071】
図3(A)に示すように、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、駆動回数情報送信処理の実行を開始すると、まずS150にて、RAM21aに記憶されている最新の駆動回数(即ち、今回の動作期間の終了時までに計数した駆動回数の最終値であり、退避処理によってメモリ23に退避させる駆動回数でもある)を示す駆動回数情報を、他の全てのユニット12〜17に送信する。
【0072】
そして、次のS155にて、他の全てのユニット12〜17から、駆動回数情報を受信したことを示す受信完了応答が送信されてきたことを確認する。そして、その後、当該駆動回数情報送信処理を終了する。尚、ユニット12〜17の何れかから受信完了応答が一定時間経っても送信されてこない場合には、例えば、駆動回数情報を再送信したり、通信エラー履歴を記憶したりする。
【0073】
ここで、本実施形態では、前述した増加分更新方式を採っており、上記S150では、駆動回数情報として、当該駆動回数情報の前回送信時(即ち、前回の当該S150で駆動回数情報を送信した時)からの駆動回数の増加分(差分)を送信する。よって、前回のS150の実行時から、駆動回数がNだけ増加していれば、今回のS150では、そのNを示すデータを駆動回数情報として送信することとなる。
【0074】
また、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、図3(A)の処理に代えて、図3(B)に示す駆動回数情報送信処理を実行しても良い。
即ち、図3(B)の駆動回数情報送信処理では、まずS160にて、他のユニット12〜17のうちの何れか1つを指定ユニットとして、その指定ユニットに前述の駆動回数情報を送信する。そして、次のS163にて、駆動回数情報を送信した指定ユニットから、受信完了応答が送信されてきたことを確認する。尚、指定ユニットから受信完了応答が一定時間経っても送信されてこない場合には、例えば、駆動回数情報を再送信したり、通信エラー履歴を記憶したりする。
【0075】
そして、次のS165にて、全てのユニット12〜17への駆動回数情報の送信が完了したか否かを判定し、駆動回数情報を未だ送信していない未送信ユニットがあれば、その未送信ユニットの1つを指定ユニットとして、上記S160以降の処理を繰り返す。また、上記S165にて、全てのユニット12〜17への駆動回数情報の送信が完了したと判定したならば、当該駆動回数情報送信処理を終了する。
【0076】
つまり、図3(A)の処理では、駆動回数情報を、他の全てのユニット12〜17にブロードキャストする一斉送信方式を採っているのに対して、図3(B)の処理では、駆動回数情報を、他のユニット12〜17の各々に順次一対一で送信する順次送信方式を採っている。
【0077】
尚、前述した生値更新方式を採用しても良く、その場合、図3(A)のS150、あるいは、図3(B)のS160では、駆動回数情報として、RAM21aに記憶されている最新の駆動回数を示すデータを、そのまま送信することとなる。
【0078】
次に、図4は、スタータ制御ユニット11以外の各ユニット12〜17で実行される駆動回数バックアップ更新処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数バックアップ更新処理は、各ユニット12〜17のマイコン21により、例えば一定時間毎に実行される。
【0079】
図4に示すように、各ユニット12〜17のマイコン21は、駆動回数バックアップ更新処理の実行を開始すると、まずS210にて、スタータ制御ユニット11からの駆動回数情報を受信したか否かを判定する。尚、この駆動回数情報は、前述した図3(A)のS150あるいは図3(B)のS160で送信されるものである。このため、当該駆動回数バックアップ更新処理も、スタータ制御ユニット11における図3(A)又は(B)の処理と同様に、最終動作期間中にだけ実行されるようにしても良い。
【0080】
そして、S210にて、駆動回数情報を受信していないと判定した場合には、そのまま当該駆動回数バックアップ更新処理を終了するが、駆動回数情報を受信したと判定した場合には、S220に進む。
【0081】
S220では、当該マイコン21が搭載されているユニット(以下、自ユニットという)で記憶しているスタータ3の駆動回数を、受信した駆動回数情報が示す増加分だけ大きい値に更新する処理を行う。尚、本実施形態において、ユニット12〜17では、スタータ3の駆動回数をメモリ23に記憶するようになっている。このため、S220では、メモリ23内の駆動回数を、駆動回数情報の示す増加分だけ大きい値に更新する処理を行う。
【0082】
そして、次のS230にて、前述した受信完了応答をスタータ制御ユニット11に送信し、その後、当該駆動回数バックアップ更新処理を終了する。このS230で送信する受信完了応答は、前述したように駆動回数情報を受信したことを示すが、駆動回数の更新が完了したことも示している。
【0083】
尚、前述した生値更新方式の場合には、スタータ制御ユニット11からユニット12〜17へ、駆動回数情報として、駆動回数そのものを示すデータが送信されてくるため、上記S220では、受信した駆動回数情報が示す駆動回数を、自ユニットのメモリ23にそのまま更新記憶すれば良い。
【0084】
次に、図5は、スタータ制御ユニット11を含む全てのユニット11〜17で実行される駆動回数チェック処理を表すフローチャートである。
尚、この駆動回数チェック処理は、車両がイグニッションオンの状態になって各ユニット11〜17が起動した直後に、その各ユニット11〜17のマイコン21によって実行される。また、スタータ制御ユニット11では、前述した駆動回数コピー処理(メモリ23からRAM21aに駆動回数をコピーする処理)よりも前に、この駆動回数チェック処理が実行される。
【0085】
図5に示すように、各ユニット11〜17のマイコン21は、駆動回数チェック処理の実行を開始すると、まずS320にて、メモリ23に駆動回数が記憶されているか否かを判定する。
【0086】
具体的には、メモリ23内の駆動回数(より詳しくは、メモリ23において駆動回数を記憶するために用意された所定記憶領域のデータ)が、ユニット製造時の初期値である0であるか、あるいは、通常ではあり得ない異常な値であるエラー値であれば、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定する。このため、ユニット11〜17の何れかが新品に交換されて、その新たなユニットが最初に起動した場合には、このS320にて、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定されることとなる。
【0087】
そして、S320にて、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定したならば、S330に進んで、図6に示す駆動回数復元処理を行い、その後、当該駆動回数チェック処理を終了する。また、S320にて、メモリ23に駆動回数が記憶されていると判定したならば、S340に移行して、図7に示す駆動回数更生処理を行い、その後、当該駆動回数チェック処理を終了する。
【0088】
ここで、図6に示すように、図5のS330で実行される駆動回数復元処理では、まずS332にて、他の全てのユニットへ、駆動回数を要求するための駆動回数要求を送信する。尚、マイコン21は、他のユニットからの駆動回数要求を受信すると、後述する図8の駆動回数応答処理により、自ユニットにおいて記憶している最新の駆動回数を、駆動回数要求の送信元へ返信するようになっている。
【0089】
このため、S332に続くS333では、他の全てのユニットからの駆動回数を受信するまで待ち、他の全ユニットからの駆動回数を受信したなら、次のS334にて、受信した全ての駆動回数(他の全ユニットからの駆動回数)が一致しているか否かを判定する。そして、全ての駆動回数が一致していないと判定した場合には、S335に進み、その全ての駆動回数のうちで、値が最も大きい駆動回数を検索する。そして、続くS336にて、S335で検索した最大の駆動回数を自ユニットのメモリ23に書き込み、その後、当該駆動回数復元処理を終了する。
【0090】
また、上記S334にて、受信した全ての駆動回数が一致していると判定した場合には、S337に移行して、その一致している駆動回数を自ユニットのメモリ23に書き込む。そして、その後、当該駆動回数復元処理を終了する。
【0091】
このため、図6の駆動回数復元処理が実行された場合には、他の全ユニットから受信した駆動回数のうちで値が最も大きい駆動回数が、復元値としてメモリ23に記憶されることとなる。また、スタータ制御ユニット11においては、メモリ23に記憶された駆動回数と同じ駆動回数が、駆動回数コピー処理によってRAM21aにも記憶される。
【0092】
一方、図7に示すように、図5のS340で実行される駆動回数更生処理においても、まずS342にて、他の全てのユニットへ駆動回数要求を送信し、続くS343にて、他の全てのユニットからの駆動回数を受信するまで待つ。
【0093】
そして、他の全ユニットからの駆動回数を受信したなら(S343:YES)、次のS344にて、受信した全ての駆動回数(他の全ユニットからの駆動回数)と、自ユニットに記憶されている駆動回数(詳しくは、自ユニットのメモリ23に記憶されている最新の駆動回数)とが一致しているか否かを判定する。
【0094】
そして、受信した全ての駆動回数と、自ユニットに記憶されている駆動回数とが一致してないと判定した場合には、S345に進み、受信した全ての駆動回数と自ユニットに記憶されている駆動回数とのうちで、値が最も大きい駆動回数を検索する。そして、続くS346にて、S345で検索した最大の駆動回数を自ユニットのメモリ23に書き込み、その後、当該駆動回数更生処理を終了する。
【0095】
また、上記S344にて、受信した全ての駆動回数と、自ユニットに記憶されている駆動回数とが一致していると判定した場合には、自ユニットに記憶されている駆動回数を更生する必要はないと判断して、そのまま当該駆動回数更生処理を終了する。
【0096】
このため、図7の駆動回数更生処理が実行された場合には、他の全ユニットから受信した駆動回数と、自ユニットに記憶されている駆動回数とのうちで、値が最も大きい駆動回数が、メモリ23に記憶されることとなる。また、スタータ制御ユニット11においては、そのメモリ23に記憶された駆動回数と同じ駆動回数が、駆動回数コピー処理によってRAM21aにも記憶される。
【0097】
次に、図8は、スタータ制御ユニット11を含む全てのユニット11〜17で実行される駆動回数応答処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数応答処理は、各ユニット11〜17のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。
【0098】
図8に示すように、各ユニット11〜17のマイコン21は、駆動回数応答処理の実行を開始すると、まずS410にて、他のユニットからの駆動回数要求を受信したか否かを判定する。尚、この駆動回数要求は、前述した図6のS332あるいは図7のS342で送信されるものである。
【0099】
そして、駆動回数要求を受信していないと判定したならば、そのまま当該駆動回数応答処理を終了するが、駆動回数要求を受信したと判定したならば、S420に進む。
S420では、自ユニットに記憶している最新の駆動回数(詳しくは、自ユニットのメモリ23に記憶されている駆動回数)を、駆動回数要求の送信元へ送信する。そして、その後、当該駆動回数応答処理を終了する。
【0100】
尚、他のユニットから駆動回数要求が送信されてくるのは、車両がイグニッションオンの状態になった直後であり、マイコン21が起動した直後であるため、スタータ制御ユニット11においても、上記S420では、メモリ23に記憶されている駆動回数を送信する。
【0101】
次に、図9(A)は、スタータ制御ユニット11で実行されるスタータ劣化判定処理を表すフローチャートである。尚、このスタータ劣化判定処理は、スタータ制御ユニット11のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。また、ここでは、前述した駆動回数コピー処理よりも後に、このスタータ劣化判定処理が実行されるものとして説明する。
【0102】
図9(A)に示すように、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、スタータ劣化判定処理の実行を開始すると、まずS510にて、自ユニットで記憶している最新の駆動回数(このスタータ劣化判定処理が実行される時点では、RAM21aに記憶されている駆動回数)が、所定の劣化判定値以上であるか否かを判定する。尚、劣化判定値は、スタータ3のモータのブラシや接点が磨耗したりピニオンギヤが磨耗したりして、スタータ3の機能に支障が出だす可能性のある駆動回数の値であって、スタータ3の寿命が到来する前に該スタータ3を交換した方が良いと考えられる値に設定されている。このため、劣化判定値は、スタータ3が正常に機能しなくなると考えられる設計上又は実験から得た限界駆動回数よりは小さい値に設定されている。
【0103】
そして、S510にて、駆動回数が劣化判定値以上ではないと判定した場合には、S520に進み、スタータ3の劣化判定結果を「劣化なし」に設定し、その後、当該スタータ劣化判定処理を終了する。
【0104】
また、上記S510にて、駆動回数が劣化判定値以上であると判定した場合には、S530に移行して、スタータ3の劣化判定結果を「劣化あり」に設定し、その後、当該スタータ劣化判定処理を終了する。
【0105】
尚、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、図9(A)の処理に代えて、図9(B)に示すスタータ劣化判定処理を実行しても良い。即ち、図9(B)のスタータ劣化判定処理では、S530にて劣化判定結果を「劣化あり」に設定した場合には、次のS535にて、車両の運転者に対してスタータ3が劣化していること(延いては、スタータ3の交換が必要なこと)を報知するための警告灯を点灯させる処理を行う。また、S520にて劣化判定結果を「劣化なし」に設定した場合には、次のS525にて、上記警告灯を消灯させる処理を行う。
【0106】
次に、図10は、スタータ制御ユニット11で実行される劣化判定結果通知処理を表すフローチャートである。尚、この劣化判定結果通知処理は、スタータ制御ユニット11のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。
【0107】
図10に示すように、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、劣化判定結果通知処理の実行を開始すると、まずS540にて、テスタ31からの劣化判定結果要求を受信したか否かを判定する。そして、劣化判定結果要求を受信していないと判定した場合には、そのまま当該劣化判定結果通知処理を終了するが、劣化判定結果要求を受信したと判定した場合には、S550に進む。S550では、前述したスタータ劣化判定処理のS520又はS530で設定されている劣化判定結果を、テスタ31に送信し、その後、当該劣化判定結果通知処理を終了する。
【0108】
次に、図11は、テスタ31で実行される劣化判定結果問い合わせ処理を表すフローチャートである。尚、この劣化判定結果問い合わせ処理は、テスタ31の使用者(一般には車両を整備する作業者)が、該テスタ31を通信線27に接続すると共に、該テスタ31の操作部38に対して、スタータ3の交換要否チェックを指示する入力操作を行うと、該テスタ31のマイコン35によって実行される。
【0109】
図11に示すように、テスタ31のマイコン35が劣化判定結果問い合わせ処理の実行を開始すると、まずS610にて、スタータ制御ユニット11へ前述の劣化判定結果要求を送信する。
【0110】
すると、スタータ制御ユニット11から、前述した図10の劣化判定結果通知処理によって劣化判定結果が送信されてくるため、次のS620にて、その劣化判定結果を受信するまで待つ。そして、劣化判定結果を受信したなら、S630に進む。
【0111】
S630では、受信した劣化判定結果が「劣化あり」であるか否かを判定し、劣化判定結果が「劣化あり」でなければ、S640に進んで、当該テスタ31の使用者に対して、スタータ3の交換が不要なことを通知する。具体的には、表示装置37に、スタータ3の交換が不要なことを示すメッセージやマーク等を表示する。そして、その後、当該劣化判定結果問い合わせ処理を終了する。
【0112】
また、上記S630にて、劣化判定結果が「劣化あり」であると判定した場合には、S650に移行する。そして、そのS650では、当該テスタ31の使用者に対して、スタータ3の交換が必要なことを通知する。具体的には、表示装置37に、スタータ3の交換が必要なことを意味するメッセージやマーク等を表示する。そして、その後、当該劣化判定結果問い合わせ処理を終了する。
【0113】
次に、図12は、テスタ31で実行される駆動回数リセット要求処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数リセット要求処理は、テスタ31の使用者が、該テスタ31を通信線27に接続すると共に、該テスタ31の操作部38に対して、駆動回数のリセットを指示する入力操作を行うと、該テスタ31のマイコン35によって実行される。
【0114】
図12に示すように、テスタ31のマイコン35が駆動回数リセット要求処理の実行を開始すると、まずS660にて、駆動回数を記憶している全てのユニット11〜17へ、駆動回数のリセットを要求するための駆動回数リセット要求を送信する。
【0115】
そして、次のS670にて、全てのユニット11〜17から、駆動回数のリセットを実施したことを示すリセット完了応答が送信されてきたことを確認する。そして、その後、当該駆動回数リセット要求処理を終了する。尚、ユニット11〜17の何れかからリセット完了応答が一定時間経っても送信されてこない場合には、例えば、駆動回数リセット要求を再送信したり、当該テスタ31の使用者に対してエラーを報知するための処理を行ったりする。
【0116】
次に、図13は、全てのユニット11〜17で実行される駆動回数リセット処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数リセット処理は、各ユニット11〜17のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。
【0117】
図13に示すように、各ユニット11〜17のマイコン21は、駆動回数リセット処理の実行を開始すると、まずS710にて、テスタ31からの駆動回数リセット要求を受信したか否かを判定する。その駆動回数リセット要求は、前述した図12のS660で送信されるものである。
【0118】
そして、駆動回数リセット要求を受信していないと判定したならば、そのまま当該駆動回数リセット処理を終了するが、駆動回数リセット要求を受信したと判定したならば、S720に進む。
【0119】
S720では、自ユニットのメモリ23に記憶されている駆動回数を0にリセットする。また、スタータ制御ユニット11においては、RAM21aに記憶されている駆動回数も0にリセットする。
【0120】
そして、次のS730にて、テスタ31へ、前述のリセット完了応答を送信し、その後、当該駆動回数リセット処理を終了する。
以上のような本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムでは、スタータ制御ユニット11において、スタータ3の駆動回数が計数されると共に、その計数した駆動回数が該ユニット11のRAM21aとメモリ23に更新記憶され(図2)、更に、その計数された駆動回数が劣化判定値以上になったか否かの劣化判定が実施される(図9)。
【0121】
そして、車両を整備する作業者は、テスタ31を車両の通信線27に接続して、該テスタ31の操作部38に対し、スタータ3の交換要否チェックを指示する入力操作を行えば、スタータ制御ユニット11からテスタ31へ劣化判定結果が送信されて、テスタ31の表示装置37に、その劣化判定結果に応じて、スタータ3の交換が必要か否かを表すメッセージが表示されることとなる(図10,図11)。
【0122】
よって、作業者は、テスタ31の表示装置37に表示されるメッセージに従ってスタータ3を交換すれば、スタータ3が使用過多による製品寿命で機能不能となる前に、そのスタータ3を適切に交換することができる。
【0123】
また、作業者は、スタータ3を新品に交換した場合に、テスタ31の操作部38に対して、駆動回数のリセットを指示する入力操作を行えば、スタータ制御ユニット11及び他のユニット12〜17に記憶されている駆動回数を、0にリセットすることができる(図12,図13)。
【0124】
ここで特に、本実施形態において、スタータ制御ユニット11は、計数した駆動回数を他のユニットに知らせるための駆動回数情報を、他の全てのユニット12〜17へ送信するようになっている(図3)。そして、他の各ユニット12〜17は、スタータ制御ユニット11からの駆動回数情報に基づいて、当該ユニット12〜17のメモリ23に記憶している駆動回数を更新するようになっている(図4)。
【0125】
このため、スタータ制御ユニット11にて計数されていく駆動回数は、他の各ユニット12〜17のメモリ23にもバックアップデータとして記憶されることとなる。
更に、スタータ制御ユニット11では、イグニッションオンに伴い起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されているか否かを判定し(図5のS320)、駆動回数が記憶されていなければ、当該ユニットが新品に交換されたと判断して、図6の駆動回数復元処理を行うようになっている。そして、その駆動回数復元処理により、他のユニット12〜17に駆動回数要求を送信すると共に(S332)、その駆動回数要求に応答して他のユニット12〜17の各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニット11のメモリ23に記憶するようになっており(S334〜S337)、前述の駆動回数コピー処理により、RAM21aにも、メモリ23に記憶したのと同じ駆動回数を記憶する。また、このため、ユニット12〜17の各々は、他のユニットから駆動回数要求が送信されてきたならば、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットにおいて記憶している最新の駆動回数を送信するようになっている(図8)。
【0126】
よって、スタータ制御ユニット11が交換された場合、交換後の新たなスタータ制御ユニット11においては、他の各ユニット12〜17から送信されてきた駆動回数のうちで、最も大きい駆動回数が、ユニット交換時点までに計数されていた駆動回数として、メモリ23及びRAM21aに記憶され、以後は、その記憶された駆動回数の値から、スタータ3の駆動回数の計数が継続されることとなる。このため、ユニット交換時点までに計数されていた駆動回数を交換後の新たなユニット11へと自動的に引き継がせることができる。
【0127】
そして更に、スタータ制御ユニット11は、他の各ユニット12〜17からの駆動回数のうち、最も大きい駆動回数を、メモリ23とRAM21aに記憶することとなり、つまりは、スタータ3の寿命(交換時期)を判定するための駆動回数として、最も厳しい条件となる値を記憶することとなる。よって、その記憶されている駆動回数が劣化判定値以上になったか否かを判定することにより、スタータ3の交換時期を適切に判断することができ、スタータ3を交換する前にスタータ3の寿命が来てしまう可能性を、より低くすることができる。
【0128】
例えば、ユニット12〜17においては、メモリ23内の駆動回数をスタータ制御ユニット11からの駆動回数情報に応じて更新することに、ノイズや一時的なリセットや通信エラーなどの原因によって失敗する可能性があり、そのような駆動回数の更新失敗が生じた場合には、あるユニットに記憶されている駆動回数が、他のユニットに記憶されている正しい駆動回数よりも小さいという状況であって、各ユニット12〜17に記憶されている駆動回数が異なる状況が発生する可能性がある。そして、そのような状況でスタータ制御ユニット11が交換された場合でも、他の各ユニット12〜17に記憶されている駆動回数のうち、最も大きい駆動回数であり、正しいと考えられる駆動回数(スタータ3の交換時期を正しく判断できる駆動回数でもある)が、交換後の新たなスタータ制御ユニット11に記憶されることとなる。
【0129】
このため、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムによれば、スタータ制御ユニット11が交換される場合には、それまでに計数されていた駆動回数を、交換後の新たなユニット11へと、自動的にだけではなく、精度良く引き継がせることもできる。
【0130】
また例えば、スタータ制御ユニット11だけでなく、他のユニット12〜17の何れかとスタータ制御ユニット11とがセットで交換された場合でも、交換後の新たなスタータ制御ユニット11には、交換されなかった他のユニットに記憶されていた駆動回数を記憶させることができ、駆動回数の復元能力が高い。
【0131】
更に、本実施形態では、スタータ制御ユニット11以外のユニット(以下、スレーブユニットともいう)12〜17においても、イグニッションオンに伴い起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されているか否かを判定し(図5のS320)、駆動回数が記憶されていなければ、当該ユニットが新品に交換されたと判断して、図6の駆動回数復元処理を行うようになっている。また、このため、スタータ制御ユニット11も、他のユニットから駆動回数要求が送信されてきたならば、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットにおいて記憶している最新の駆動回数を送信するようになっている(図8)。
【0132】
よって、ユニット12〜17の何れかが交換された場合にも、その交換後の新たなユニットにおいて、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定され(S320:NO)、そのユニットからスタータ制御ユニット11を含む他の各ユニットへ駆動回数要求が送信されて、それに対する応答として、他の各ユニットから交換後の新たなユニットへ駆動回数が送信されることとなる。そして、交換後の新たなユニットにおいては、他の各ユニットから送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数がメモリ23に記憶されることとなる。
【0133】
このため、ユニット12〜17の何れかが交換される場合にも、それまでに計数されていた駆動回数を、交換後の新たなユニットへと自動的に且つ精度良く引き継がせることができる。そして、スタータ制御ユニット11が交換されるときに備えて、できるだけ多くのスレーブユニットに正しい駆動回数が記憶されている状態をできるだけ早く作っておくことが好ましく、そのことを実現することができる。
【0134】
特に、上記実施形態では増加分更新方式を採っているため、スレーブユニット12〜17の何れかが交換された後、その交換後の新たなユニットにスタータ制御ユニット11から駆動回数情報(駆動回数の増加分)が送信されただけでは、その新たなユニットに記憶される駆動回数は、初期値の0から上記増加分だけ大きい値になるだけであり、正しい値には戻らない。しかし、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムによれば、増加分更新方式であっても、交換後の新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を正しい値に戻すことができる。
【0135】
尚、前述した生値更新方式を採用した場合であっても、交換後の新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を、スタータ制御ユニット11から駆動回数情報が送信される前に、正しい値に戻すことができるようになる。よって、スタータ制御ユニット11が交換されるときに備えて、スレーブユニットをできるだけ早く正しい駆動回数が記憶されている状態にすることができるという面で、やはり有利である。
【0136】
また、本実施形態において、スレーブユニット12〜17の各々は、イグニッションオンに伴い起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されていると判定した場合には(S320:YES)、図7の駆動回数更生処理を行うようになっている。そして、その駆動回数更生処理により、他のユニットに対して駆動回数要求を送信し(S342)、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、当該ユニットに記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、当該ユニットのメモリ23に記憶するようになっている(S344〜S346)。
【0137】
このため、あるスレーブユニットに記憶されている駆動回数が、前述した更新失敗によって、他のユニットに記憶されている駆動回数より小さい値になったとしても、そのスレーブユニットに記憶される駆動回数を、他のユニットに記憶されている正しい駆動回数と同じ値に直すことができる。そして、全てのスレーブユニットに正しい駆動回数が記憶されている状態を維持することができる。
【0138】
特に、増加分更新方式の場合、非常に希なケースではあるが、全てのスレーブユニットが駆動回数の更新に失敗した場合には、もはやスレーブユニット側に正しい駆動回数が残らないため、その状況で、スタータ制御ユニット11が交換されると、新たなスタータ制御ユニット11に正しい駆動回数を記憶させることができなくなるという懸念がある。しかし、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムによれば、こうした懸念を回避することができる。
【0139】
尚、前述した生値更新方式の場合には、スレーブユニットが駆動回数の更新に失敗しても、スタータ制御ユニット11から次回に駆動回数情報が送信されることで、そのスレーブユニットに記憶される駆動回数を真値に戻すことはできる。しかし、生値更新方式の場合であっても、スレーブユニット12〜17が図7の駆動回数更生処理を行うことは、やはり有利である。なぜなら、スタータ制御ユニット11から駆動回数情報が送信される前であっても、スレーブユニットの駆動回数を真値に戻すことが可能になるからであり、延いては、スタータ制御ユニット11が交換されるときに備えて、駆動回数の更新に失敗したスレーブユニットをできるだけ早く正しい駆動回数が記憶されている状態に復帰させることができるからである。
【0140】
また、本実施形態では、スタータ制御ユニット11も、イグニッションオンに伴い起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されていると判定した場合には(S320:YES)、図7の駆動回数更生処理を行うようになっている。
【0141】
このため、スタータ制御ユニット11が正しい駆動回数を失ってしまうことを防止することができる。
例えば、スタータ制御ユニット11において、スレーブユニット12〜17へ駆動回数情報を送信してから、メモリ23内の駆動回数を更新する前に、誤って電源が遮断されたりリセットが発生したりして、そのメモリ23内の駆動回数の更新に失敗すると、正しい駆動回数を失ってしまうこととなるが、図7の駆動回数更生処理を行うことで、スレーブユニットから正しい駆動回数を受け取って記憶し直すことができる。尚、生値更新方式の場合には、スタータ制御ユニット11に記憶されている駆動回数が正しくなくなると、全てのスレーブユニット12〜17に記憶される駆動回数にも影響するため、スタータ制御ユニット11にて図7の処理を行うことは特に有効である。
【0142】
また、本実施形態では、エンジン1の制御とは関係がないメータ制御ユニット16やエアコン制御ユニット17にも駆動回数を記憶させているため、エンジン1の不調等に起因して、エンジン1の制御に関連する複数のユニット(例えば、ユニット11,12,14等)が同時に交換されたとしても、駆動回数を失ってしまうことを防ぐことができる。
【0143】
一方、前述の増加分更新方式によれば、スタータ3の駆動回数が大きくなっても、スタータ制御ユニット11からスレーブユニット12〜17に送信される駆動回数情報のデータ量を小さく抑えることができるという利点がある。
【0144】
尚、本実施形態では、マスタユニットとしてのスタータ制御ユニット11においては、メモリ23とRAM21aが記憶手段に相当し、スレーブユニットとしての他のユニット12〜17においては、メモリ23が記憶手段に相当している。また、通信線27が通信路に相当している。
【0145】
そして、スタータ制御ユニット11のマイコン21が行う処理のうち、図3(A)又は(B)の駆動回数情報送信処理が、駆動回数情報送信手段に相当し、他のユニット12〜17のマイコン21が行う処理のうち、図4の駆動回数バックアップ更新処理が、バックアップ更新手段に相当している。
【0146】
また、各ユニット11〜17のマイコン21が行う処理のうち、図5のS320が、判定手段に相当し、図6の駆動回数復元処理が、駆動回数復元手段に相当し、図7の駆動回数更生処理が、駆動回数更正手段に相当し、図8の駆動回数応答処理が、駆動回数応答手段に相当している。
【0147】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0148】
例えば、図1に示した各ユニットは一例であり、他の機能のユニットであっても良い。
また、通信路は、有線(通信線27)に限らず、無線の通信路であっても良い。
また、上記実施形態は、例えば下記の各変形例のように変形しても良い。
【0149】
[変形例1]
ユニット12〜17においても、スタータ制御ユニット11と同様に、前述した退避処理と駆動回数コピー処理とを行うことにより、駆動回数を、メモリ23とRAM21aとの両方を使って継続的に記憶するようになっていても良い。
【0150】
[変形例2]
スタータ制御ユニット11以外の各ユニット12〜17においても、マイコン21が、図9(A)及び図10の各処理と同様の処理を行うようにし、更に、テスタ31で実行される図11の劣化判定結果問い合わせ処理では、全てのユニット11〜17へ劣化判定結果要求を送信すると共に、その劣化判定結果要求に応答して各ユニット11〜17から送信されてくる劣化判定結果を、表示装置37に表示するように構成しても良い。
【0151】
この場合、テスタ31の使用者は、例えば、表示装置37に表示される複数の劣化判定結果の多数決によって、スタータ3を交換すべきか否か判断することができる。また、テスタ31のマイコン35が、各ユニット11〜17からの劣化判定結果の多数決をとって、その多数決の結果を表示装置37に表示するように構成しても良い。
【0152】
[変形例3]
スタータ制御ユニット11からテスタ31へは、劣化判定結果に代えて、駆動回数そのものが送信されるようになっていても良い。
【0153】
この場合、テスタ31にて、図9(A)と同様のスタータ劣化判定処理が行われて、その処理による劣化判定結果が表示装置37に表示されるように構成しても良いし、また、表示装置37には、駆動回数が表示されるように構成しても良い。後者の場合、作業者は、表示装置37に表示された駆動回数から、スタータ3の交換要否を判断すれば良いからである。
【0154】
尚、上記変形例2においても、この変形例3と同様に、各ユニット11〜17からテスタ31へ駆動回数が送信されて、例えば、その各ユニット11〜17からの駆動回数が、テスタ31の表示装置37に表示されるように構成しても良い。
【0155】
[変形例4]
生値更新方式を採用した場合、テスタ31で実行される図12の駆動回数リセット要求処理では、駆動回数リセット要求を、スタータ制御ユニット11だけに送信するようにしても良い。
【0156】
スタータ制御ユニット11に記憶される駆動回数が0にリセットされれば、そのスタータ制御ユニット11から他のユニット12〜17に駆動回数情報が送信されることで、他のユニット12〜17に記憶される駆動回数も0にすることができるからである。
【符号の説明】
【0157】
1…エンジン、3…スタータ、11…スタータ制御ユニット
12…エンジン制御ユニット、13…ブレーキ制御ユニット
14…アイドルストップ制御ユニット、15…トランスミッション制御ユニット
16…メータ制御ユニット、17…エアコン制御ユニット、21,35…マイコン
21a…RAM、23…データ書き換えが可能な不揮発性メモリ
25,39…通信回路、27…通信線、29…駆動回路、31…テスタ
33…コネクタ、37…表示装置、38…操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を記憶しておく技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスタータは、規定回数よりも多く使用されると、当該スタータの動力源であるモータのブラシや接点が磨耗したり、エンジンのリングギヤに噛み合うピニオンギヤが磨耗したりして、寿命に至る可能性がある。
【0003】
このため、車両に搭載された特定のユニットが、スタータの駆動回数(即ち、駆動された回数)を計数して記憶するようにしておき、そのユニット(以下、計数ユニットという)に記憶されている駆動回数が規定値に達したら、スタータを交換することが考えられる。また、その場合、所定のテスタを計数ユニットに接続して、該計数ユニットから駆動回数を読み出すことにより、スタータの現在の駆動回数を確認する、といった作業手法が考えられる。
【0004】
ここで、スタータの駆動回数を記憶している上記計数ユニットが故障する等して交換された場合には、それまでに計数された駆動回数を失ってしまい、駆動回数は0から改めて計数されることとなる。すると、その改めて計数される駆動回数が規定値に達するよりも前に、スタータの寿命が来てしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、この問題の対策としては、例えば、計数ユニットを交換する作業者が、以下のような駆動回数の引き継ぎ作業を行うことが考えられる。
即ち、作業者は、計数ユニットの交換を行う前に、その計数ユニットからテスタによって駆動回数を読み出しておき、計数ユニットを交換したら、その交換後の新たな計数ユニットに、交換前の計数ユニットから読み出しておいた駆動回数を書き込む。そして、このような駆動回数の引き継ぎ作業を行えば、交換前の計数ユニットによって計数された駆動回数を、交換後の計数ユニットに引き継がせることができる。
【0006】
尚、スタータの駆動回数を記憶しておく技術とは関係ないが、特許文献1には、車両に搭載される複数の各ユニットのメモリに、その車両に固有の車両識別情報を予め記憶させておき、各ユニットは、動作を開始した際において、自身のメモリに車両識別情報が記憶されていなければ、他のユニットから通信により車両識別情報を受け取って、その受け取った車両識別情報を自身のメモリに記憶する、という技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−255079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述の対策では、人が駆動回数の引き継ぎ作業を行う必要があるため、手間がかかるという問題がある。更に、作業者が駆動回数の引き継ぎ作業を全て確実に遂行しなかった場合は勿論であるが、交換前のユニットに駆動回数を読み出せなくなる程の故障が生じている場合にも、駆動回数を交換後の新たなユニットに引き継がせることができなくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、スタータの駆動回数を計数するユニットが交換される場合に、それまでに計数されていた駆動回数を交換後の新たなユニットへと自動的に且つ精度良く引き継がせることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のスタータ駆動回数記憶システムは、車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を計数して記憶するものであり、通信路を介して通信が可能な3つ以上の複数のユニットを備えている。そして、その複数のユニットの各々は、スタータの駆動回数を記憶するための記憶手段を備えている。
【0011】
また、複数のユニットのうちの1つは、スタータの駆動回数を計数して、該計数した駆動回数を当該ユニットの記憶手段に更新記憶するマスタユニットである。尚、当該ユニットとは、自身(そのユニット自身)ということである。
【0012】
そして、そのマスタユニットは、計数した駆動回数を示す駆動回数情報を、複数のユニットのうちの当該マスタユニット以外のユニットであるスレーブユニットに送信する駆動回数情報送信手段を備えている。
【0013】
一方、スレーブユニットの各々は、マスタユニットから送信されてきた駆動回数情報に基づいて、当該ユニットの記憶手段に記憶している駆動回数を更新するバックアップ更新手段を備えている。
【0014】
このため、マスタユニットにて計数されていく駆動回数は、各スレーブユニットの記憶手段にも、バックアップデータとして記憶されることとなる。
そして更に、マスタユニットは、当該ユニットの記憶手段に駆動回数が記憶されているか否かを判定する判定手段と、その判定手段により記憶手段に駆動回数が記憶されていないと判定された場合に、他のユニットに対して、駆動回数の送信を要求する駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニットの記憶手段に記憶する駆動回数復元手段とを備えている。
【0015】
また、スレーブユニットの各々は、他のユニットから駆動回数要求が送信されてきた場合に、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットの記憶手段に記憶されている駆動回数を送信する駆動回数応答手段を備えている。
【0016】
このため、スタータの駆動回数を計数するマスタユニットが交換された場合には、その交換後の新たなマスタユニットにおいて、判定手段により、記憶手段に駆動回数が記憶されていないと判定され、そのマスタユニットから各スレーブユニットへ駆動回数要求が送信されて、各スレーブユニットからマスタユニットへ、各スレーブユニットの記憶手段にバックアップデータとして記憶されていた駆動回数が送信されることとなる。
【0017】
そして、交換後の新たなマスタユニットにおいては、各スレーブユニットから送信されてきた駆動回数のうちで、最も大きい駆動回数が、ユニット交換時点までに計数されていた駆動回数として、記憶手段に記憶され、以後は、その記憶された駆動回数の値から、スタータの駆動回数の計数が継続されることとなる。
【0018】
よって、このようなスタータ駆動回数記憶システムによれば、スタータの駆動回数を計数するマスタユニットが交換される場合に、それまでに計数されていた駆動回数を交換後の新たなユニットへと自動的に引き継がせることができる。
【0019】
更に、マスタユニットは、各スレーブユニットからの駆動回数のうち、最も大きい駆動回数を、記憶手段に記憶することとなり、つまりは、スタータの寿命(交換時期)を判定するための駆動回数として、最も厳しい条件となる値を、記憶手段に記憶することとなる。よって、その記憶手段に記憶されている駆動回数が規定値以上になったか否かを判定することにより、スタータの交換時期を適切に判断することができ、スタータを交換する前にスタータの寿命が来てしまう可能性を、より低くすることができる。
【0020】
例えば、スレーブユニットにおいては、記憶手段内の駆動回数をマスタユニットからの駆動回数情報に基づき更新することに、ノイズや一時的なリセットや通信エラーなどの原因によって失敗する可能性があり、そのような駆動回数の更新失敗が生じた場合には、あるスレーブユニットに記憶されている駆動回数が、他のスレーブユニットに記憶されている正しい駆動回数よりも小さいという状況であって、各スレーブユニットに記憶されている駆動回数が異なる状況が発生する。そして、そのような状況でマスタユニットが交換された場合でも、各スレーブユニットに記憶されている駆動回数のうち、最も大きい駆動回数であり正しいと考えられる駆動回数(スタータの交換時期を正しく判断できる駆動回数でもある)が、交換後の新たなマスタユニットに記憶されることとなる。尚、ユニットに記憶されるとは、詳しくは、そのユニットの記憶手段に記憶されるということである。
【0021】
このため、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムによれば、マスタユニットが交換される場合には、それまでに計数されていた駆動回数を、交換後の新たなユニットへと、自動的にだけではなく、精度良く引き継がせることもできる。
【0022】
また、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムによれば、例えば、マスタユニットだけでなく、スレーブユニットの何れかとマスタユニットとがセットで交換された場合でも、交換後の新たなマスタユニットには、交換されなかった他のスレーブユニットに記憶されていた駆動回数を記憶させることができ、駆動回数の復元能力が高い。
【0023】
ところで、スレーブユニットに記憶される駆動回数を更新させる方式としては、下記の2通りのものが考えられる。
まず第1の方式は、請求項6に記載のように、マスタユニットの駆動回数情報送信手段は、駆動回数情報として、計数した駆動回数を送信し、スレーブユニットのバックアップ更新手段は、マスタユニットから送信されてきた駆動回数を、当該ユニットの記憶手段に更新記憶する、というものである。つまり、マスタユニットからスレーブユニットに駆動回数そのものを送信し、その駆動回数をスレーブユニットの記憶手段に更新記憶させるという方式である。尚、以下では、この第1の方式のことを、生値更新方式という。
【0024】
そして、この生値更新方式によれば、もし各スレーブユニットに記憶されている駆動回数が異なる状況が発生したとしても、その状況は、マスタユニットから駆動回数情報(駆動回数)が送信されることで解消されることとなる。よって、全てのユニットに同じ駆動回数が記憶されている状態への復帰能力が高いという利点がある。
【0025】
次に第2の方式は、請求項5に記載のように、マスタユニットの駆動回数情報送信手段は、駆動回数情報として、当該駆動回数情報の前回送信時からの駆動回数の増加分(差分とも言える)を送信し、スレーブユニットのバックアップ更新手段は、当該ユニットの記憶手段に記憶している駆動回数を、マスタユニットから送信されてきた前記増加分だけ大きい値に更新する、というものである。つまり、マスタユニットから駆動回数の増加分を送信し、その増加分だけスレーブユニットに記憶される駆動回数も増加させるという方式である。尚、以下では、この第2の方式のことを、増加分更新方式という。
【0026】
そして、この増加分更新方式によれば、スタータの駆動回数が大きくなっても、マスタユニットからスレーブユニットに送信される駆動回数情報のデータ量を小さいものにすることができる、という利点がある。
【0027】
次に、請求項2のスタータ駆動回数記憶システムでは、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、スレーブユニットの各々も前記判定手段と前記駆動回数復元手段とを備え、マスタユニットも前記駆動回数応答手段を備えている。
【0028】
つまり、各スレーブユニットにおいても、判定手段が、当該ユニットの記憶手段に駆動回数が記憶されているか否かを判定し、その判定手段により駆動回数が記憶されていないと判定されたなら、駆動回数復元手段が、他のユニット(この場合、他のスレーブユニットとマスタユニット)に対して駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニットの記憶手段に記憶する。また、マスタユニットでは、他のユニット(この場合、スレーブユニットの何れか)から駆動回数要求が送信されてくると、駆動回数応答手段が、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットの記憶手段に記憶されている駆動回数を送信する。
【0029】
そして、このスタータ駆動回数記憶システムによれば、スレーブユニットの何れかが交換された場合にも、その交換後の新たなスレーブユニットにおいて、判定手段により、記憶手段に駆動回数が記憶されていないと判定され、そのスレーブユニットから他のユニット(他のスレーブユニットとマスタユニット)へ駆動回数要求が送信されて、それに対する応答として、他の各ユニットから交換後の新たなスレーブユニットへ駆動回数が送信されることとなる。そして、交換後の新たなスレーブユニットにおいては、他の各ユニットから送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数が、記憶手段に記憶されることとなる。
【0030】
このため、スレーブユニットの何れかが交換される場合にも、それまでに計数されていた駆動回数を、交換後の新たなスレーブユニットへと自動的に且つ精度良く引き継がせることができる。そして、マスタユニットが交換されるときに備えて、できるだけ多くのスレーブユニットに正しい駆動回数が記憶されている状態をできるだけ早く作っておくことが好ましく、そのことを実現することができる。
【0031】
特に、前述した増加分更新方式の場合には、スレーブユニットの何れかが交換された後、交換後の新たなスレーブユニットにマスタユニットから駆動回数情報(駆動回数の増加分)が送信されただけでは、その新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数は、初期値の0から上記増加分だけ大きい値になるだけであり、ユニット交換前に記憶されていた真値(正しい駆動回数)には戻らない。しかし、請求項2のシステムによれば、増加分更新方式であっても、交換後の新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を真値に戻すことができる。
【0032】
また、前述した生値更新方式の場合であれば、交換後の新たなスレーブユニットにマスタユニットから駆動回数情報(駆動回数)が送信されれば、その新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を真値に戻すことが可能であるが、請求項2のシステムによれば、交換後の新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を、マスタユニットから駆動回数情報が送信される前であっても真値に戻すことができるようになる。よって、マスタユニットが交換されるときに備えて、スレーブユニットをできるだけ早く正しい駆動回数が記憶されている状態にすることができるという面において、やはり有利である。
【0033】
次に、請求項3のスタータ駆動回数記憶システムでは、請求項2のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、スレーブユニットの各々は、駆動回数更正手段を備えている。そして、その駆動回数更正手段は、当該ユニットの判定手段により当該ユニットの記憶手段に駆動回数が記憶されていると判定された場合に、他のユニットに対して駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、当該ユニットの記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、当該ユニットの記憶手段に記憶する。
【0034】
このスタータ駆動回数記憶システムによれば、あるスレーブユニットに記憶されている駆動回数が、前述した更新失敗によって、他のユニット(他のスレーブユニットとマスタユニット)に記憶されている駆動回数より小さい値になったとしても、そのスレーブユニットに記憶される駆動回数を、他のユニットに記憶されている正しい駆動回数と同じ値に直すことができる。そして、マスタユニットからスレーブユニットへの駆動回数情報の形態や、その駆動回数情報が送信されるか否かに関わらず、全てのスレーブユニットに正しい駆動回数が記憶されている状態を維持することができる。
【0035】
特に、前述した増加分更新方式の場合には、例えば、スレーブユニットSa,Sbのうち、スレーブユニットSaに記憶されている駆動回数が、更新失敗によって、マスタユニットに記憶されている真値の駆動回数よりも小さい値になったとすると、以後、そのスレーブユニットSaに記憶される駆動回数は、真値よりも小さい値でしか推移しなくなる。
【0036】
そして、そのような状況において、マスタユニットが交換されても、新たなマスタユニットには、他のスレーブユニットSbに記憶されていた正しい駆動回数が記憶されるため、問題はない。
【0037】
ところが、もしマスタユニットが交換される前に、スレーブユニットSbにおいても駆動回数の更新失敗が起こっていて、そのスレーブユニットSbに記憶されている駆動回数も真値より小さい値になっていると、マスタユニットの交換時において、もはや、新たなマスタユニットへ正しい駆動回数を記憶させることができなくなる。
【0038】
つまり、増加分更新方式の場合、非常に希なケースではあるが、全てのスレーブユニットが駆動回数の更新に失敗した場合には、もはやスレーブユニット側に正しい駆動回数が残らないため、その状況で、マスタユニットが交換されると、新たなマスタユニットに正しい駆動回数を記憶させることができなくなるという懸念がある。
【0039】
しかし、請求項3のスタータ駆動回数記憶システムによれば、こうした懸念を回避することができるのである。
また、前述した生値更新方式の場合には、スレーブユニットに記憶されている駆動回数がマスタユニットに記憶されている真値の駆動回数よりも小さい値になったとしても、マスタユニットから送信される駆動回数情報により、スレーブユニットに記憶される駆動回数は真値に戻すことができる。
【0040】
しかし、請求項3のスタータ駆動回数記憶システムは、生値更新方式の場合であっても、やはり有利である。マスタユニットから駆動回数情報が送信される前であっても、スレーブユニットの駆動回数を真値に戻すことが可能になるからであり、延いては、マスタユニットが交換されるときに備えて、駆動回数の更新に失敗したスレーブユニットをできるだけ早く正しい駆動回数が記憶されている状態に復帰させることができるからである。
【0041】
次に、請求項4のスタータ駆動回数記憶システムでは、請求項1〜3のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、マスタユニットは、前述した駆動回数更正手段と同様の駆動回数更正手段を備えている。
【0042】
そして、このスタータ駆動回数記憶システムによれば、マスタユニットが正しい駆動回数を失ってしまうことを防止することができる。
例えば、マスタユニットにおいて、スレーブユニットへ駆動回数情報を送信してから、記憶手段内の駆動回数を更新する前に、電源が遮断されたりリセットが発生したりして、その記憶手段内の駆動回数の更新に失敗すると、マスタユニットにおいて正しい駆動回数を失ってしまうこととなるが、マスタユニットにも駆動回数更正手段を設けることで、マスタユニットはスレーブユニットから正しい駆動回数を受け取って記憶し直すことができる。
【0043】
特に、前述した生値更新方式の場合には、マスタユニットに記憶されている駆動回数が正しくなくなると、全てのスレーブユニットに記憶される駆動回数にも影響するため、マスタユニットに駆動回数更正手段を設けることは有効である。
【0044】
ところで、一般に、車両に搭載されるユニットとしては、車両がイグニッション(IG)オンの状態になると動作用電力が供給されて起動するイグニッション系ユニットと、車両がアクセサリ(ACC)オンの状態になると動作用電力が供給されて起動するアクセサリ系ユニットとがある。
【0045】
尚、イグニッションオンの状態とは、車両のイグニッションスイッチがオンされている状態であるとも言えるが、イグニッションスイッチをオン/オフさせる従来からのイグニッションキーシリンダが存在しないプッシュスイッチ式の車両(即ち、プッシュスイッチの操作によってイグニッション電源のオン/オフや、アクセサリ電源のオン/オフや、スタータのオンが行われる車両)もあるため、総称すると、車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給される状態のことである。同様に、アクセサリオンの状態とは、車両のアクセサリスイッチがオンされている状態であるとも言えるが、イグニッションキーシリンダが存在しないプッシュスイッチ式の車両もあるため、総称すると、車両におけるアクセサリ系の電源ラインにバッテリ電圧が供給される状態のことである。
【0046】
そして、何れのユニットであっても、例えば、判定手段は、当該判定手段を備えるユニットが起動した際に動作すれば良く、また、その判定手段の判定結果に基づく駆動回数要求の送信は、当該スタータ駆動回数記憶システムを成す全てのユニットが起動している状態にて行われるようになっていれば良い。
【0047】
このため、当該スタータ駆動回数記憶システムを成すユニットが、イグニッション系ユニットとアクセサリ系ユニットとの何れかに統一されているのであれば、判定手段の動作及び駆動回数要求の送信は、ユニットが起動した際に行われるようになっていれば良い。
【0048】
また、当該スタータ駆動回数記憶システムを成すユニットとして、アクセサリ系ユニットとイグニッション系ユニットとが混在する場合には、イグニッション系ユニットよりもアクセサリ系ユニットの方が先に起動することになるため、アクセサリ系ユニットでは、例えば、当該ユニットが起動して判定手段が動作した後、イグニッションオンの状態になったことを確認してから駆動回数要求を送信する、というように構成すれば良い。また、アクセサリ系ユニットであっても、イグニッション系ユニットと同様に、イグニッションオンの状態になったら判定手段の動作及び駆動回数要求の送信が行われる、というように構成しても良い。
【0049】
一方、請求項7の電子制御ユニットによれば、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムにおけるマスタユニットとして使用することができ、請求項8の電子制御ユニットによれば、請求項4のスタータ駆動回数記憶システムにおけるマスタユニットとして使用することができる。
【0050】
また、請求項9の電子制御ユニットによれば、請求項1のスタータ駆動回数記憶システムにおけるスレーブユニットとして使用することができ、請求項10の電子制御ユニットによれば、請求項2のスタータ駆動回数記憶システムにおけるスレーブユニットとして使用することができる。更に、請求項11の電子制御ユニットによれば、請求項3のスタータ駆動回数記憶システムにおけるスレーブユニットとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態のスタータ駆動回数記憶システムを表す構成図である。
【図2】スタータ制御ユニットで実行される駆動回数加算処理を表すフローチャートである。
【図3】スタータ制御ユニットで実行される駆動回数情報送信処理を表すフローチャートである。
【図4】スタータ制御ユニット以外の各ユニットで実行される駆動回数バックアップ更新処理を表すフローチャートである。
【図5】全てのユニットで実行される駆動回数チェック処理を表すフローチャートである。
【図6】駆動回数チェック処理中の駆動回数復元処理を表すフローチャートである。
【図7】駆動回数チェック処理中の駆動回数更正処理を表すフローチャートである。
【図8】全てのユニットで実行される駆動回数応答処理を表すフローチャートである。
【図9】スタータ制御ユニットで実行されるスタータ劣化判定処理を表すフローチャートである。
【図10】スタータ制御ユニットで実行される劣化判定結果通知処理を表すフローチャートである。
【図11】テスタで実行される劣化判定結果問い合わせ処理を表すフローチャートである。
【図12】テスタで実行される駆動回数リセット要求処理を表すフローチャートである。
【図13】全てのユニットで実行される駆動回数リセット処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に、本発明が適用された実施形態のスタータ駆動回数記憶システムについて説明する。
図1に示すように、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムは、車両のエンジン1を始動させるためのスタータ3を制御するユニット(スタータ制御ユニット)11と、エンジン1を制御するユニット(エンジン制御ユニット)12と、車両のブレーキ装置を制御するユニット(ブレーキ制御ユニット)13と、エンジン1の自動的な停止及び再始動の制御であるアイドルストップ制御を行うユニット(アイドルストップ制御ユニット)14と、車両の自動変速機を制御するユニット(トランスミッション制御ユニット)15と、車両のメータを制御するユニット(メータ制御ユニット)16と、車両の空調装置を制御するユニット(エアコン制御ユニット)17と、を備えている。
【0053】
各ユニット11〜17は、マイコン21やメモリ23や通信回路25等を備えた電子制御ユニットであり、車両に配設された通信線27を介して互いにデータ通信可能となっている。詳しく説明すると、各ユニット11〜17の処理動作の中枢部であるマイコン21が、そのユニットに設けられている通信回路25と上記通信線27を介して、互いに通信することにより情報をやりとりして、各自の制御対象を制御するための処理を行うようになっている。
【0054】
また、各ユニット11〜17のマイコン21には、揮発性のRAM21aが備えられている。これに対して、各ユニット11〜17のメモリ23は、データの書き換えが可能な不揮発性メモリであり、本実施形態では、例えばEEPROMであるが、いわゆるフラッシュメモリ等でも良い。
【0055】
尚、図1においては、マイコン21、メモリ23及び通信回路25を、ユニット11,14についてだけ図示しているが、他のユニットにも同様に設けられている。また、ユニット11には、そのユニット11のマイコン21からの制御信号に従ってスタータ3を駆動する駆動回路29が設けられている。
【0056】
また、通信線27には、車両外の検査装置であるテスタ31を着脱するためのコネクタ33が設けられている。そして、テスタ31は、通信線27に接続されることにより、その通信線27を介して各ユニット11〜17と通信可能になる。詳しく説明すると、テスタ31は、処理動作の中枢部であるマイコン35や表示装置37や操作部38や通信回路39等を備えており、マイコン35が、通信回路39と通信線27を介して、各ユニット11〜17のマイコン21と通信するようになっている。
【0057】
そして、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムでは、スタータ制御ユニット11が、スタータ3の駆動回数を計数して該計数した駆動回数を当該ユニット11のメモリ23に更新記憶するマスタユニットとなっている。また、他のユニット12〜17の各々は、スタータ制御ユニット11から送信される駆動回数情報に基づいて、当該ユニットのメモリ23に記憶している駆動回数を更新するスレーブユニット(マスタユニット以外のユニット)となっている。
【0058】
つまり、スタータ制御ユニット11にて計数されるスタータ3の駆動回数が、そのスタータ制御ユニット11のメモリ23だけでなく、他のユニット12〜17のメモリ23にもバックアップされる(バックアップデータとして記憶される)ようになっている。
【0059】
一方、本実施形態において、ユニット11〜17は、車両がイグニッションオンの状態(車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給される状態)になると動作用電力が供給されて起動する(詳しくは、そのユニット11〜17のマイコン21が起動する)イグニッション系ユニットである。また、各ユニット11〜17には、車両がイグニッションオンの状態になると、イグニッション系の電源ラインからではなく、図示しない給電用リレーを介してバッテリ電圧が動作用電力として供給され、その後、車両がイグニッションオフの状態(車両におけるイグニッション系の電源ラインにバッテリ電圧が供給されない状態)になってからも、そのユニットのマイコン21が行うべき所定の処理が終了するまでは、上記給電用リレーを介して動作用電力が供給され続けるようになっている。尚、以下では、車両がイグニッションオフの状態になってからユニット11〜17への動作用電力の供給が停止されるまでの期間のことを、最終動作期間という。
【0060】
次に、各ユニットで実行される処理について説明する。
まず、図2は、スタータ制御ユニット11で実行される駆動回数加算処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数加算処理は、スタータ制御ユニット11のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。
【0061】
図2に示すように、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、駆動回数加算処理の実行を開始すると、まずS120にて、スタータ3の駆動が必要か否かを判定する。
スタータ3の駆動が必要な場合とは、勿論エンジン1を始動させる時であり、本実施形態では、車両の運転者の始動用操作に応じてエンジン1を始動させるユーザ始動時と、アイドルストップ制御によって自動的に停止させたエンジン1を自動的に再始動させる時(アイドルストップからの再始動時)との、何れかである。
【0062】
そして、S120では、所定のユーザ始動許可条件が成立していると判定し、且つ、運転者がエンジン1を始動させるための始動用操作(イグニッションキーシリンダがある車両であれば、キーを捻ってスタータスイッチをオンする操作であり、プッシュスイッチ式の車両であれば、そのプッシュスイッチが所定時間以上押されたという操作)を行ったことを検知した場合、あるいは、アイドルストップ制御ユニット14から自動停止中のエンジン1を再始動させる指令が送信されてきた場合に、スタータ3の駆動が必要であると判定する。尚、ユーザ始動許可条件としては、例えば、シフト位置がパーキングロック位置(P位置)であり、且つ、ブレーキペダルが踏まれている、といった条件である。
【0063】
そして、このS120にて、スタータ3の駆動が必要ではないと判定した場合には、そのまま当該駆動回数加算処理を終了するが、スタータ3の駆動が必要であると判定した場合には、S130に進む。
【0064】
S130では、駆動回路29によってスタータ3を駆動し、エンジン1をクランキングさせる。すると、エンジン制御ユニット12により、エンジン1に対する燃料噴射及び点火が実施される。そして、このS130では、エンジン1が完爆状態(始動が完了した状態であり、いわゆるエンジン1がかかった状態)になったと判定すると、スタータ3の駆動を停止する。尚、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、例えば、エンジン1のクランク軸センサ(図示省略)からの回転信号に基づき算出されるエンジン回転数から、エンジン1が完爆状態になったか否かを判定する。
【0065】
そして、次のS140にて、当該ユニット11で計数し記憶しているスタータ3の駆動回数を、1つ大きい値に更新する処理を行い、その後、当該駆動回数加算処理を終了する。
【0066】
ここで、スタータ制御ユニット11において駆動回数がどのように記憶されているかについて具体的に説明する。
まず、スタータ制御ユニット11では、スタータ3の駆動回数を、メモリ23と、マイコン21内のRAM21aとの、両方を使って継続的に記憶するようになっている。
【0067】
そして、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、上記S140では、RAM21a内の駆動回数に1を加算する処理を行う。
更に、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、車両がイグニッションオフの状態になってから動作用電力の供給が停止されるまでの最終動作期間中に、RAM21aからメモリ23に駆動回数をコピーして退避させる退避処理を行う。そして、車両がイグニッションオンの状態になって当該マイコン21が起動した直後に行う駆動回数コピー処理により、メモリ23からRAM21aに駆動回数をコピーする。尚、ユニット11〜17の製造時におけるメモリ23内の駆動回数の初期値は0である。
【0068】
このため、スタータ制御ユニット11に動作用電力が供給されてマイコン21が動作している間は、スタータ3が駆動される毎に、RAM21a上で駆動回数が1ずつ加算されて、そのRAM21aに最新の駆動回数が記憶されることとなり、また、スタータ制御ユニット11への動作用電力の供給が停止している間は、最新の駆動回数がメモリ23に記憶(保存)されることとなる。
【0069】
尚、変形例として、S140では、メモリ23内の駆動回数を1つ大きい値に更新する処理を行っても良い。つまり、S140では、メモリ23から駆動回数を読み出して、その読み出した値に1を加算した値を、更新後の駆動回数としてメモリ23に書き込む、という処理を行うようにしても良い。この場合、最新の駆動回数は常にメモリ23に記憶されることとなる。
【0070】
次に、図3(A)は、スタータ制御ユニット11で実行される駆動回数情報送信処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数情報送信処理は、スタータ制御ユニット11のマイコン21によって実行される。そして、ここでは、前述した最終動作期間中に実行されるものとして説明するが、他の例として、例えば一定時間毎に実行するようにしたり、図2のS140で駆動回数を更新した場合に実行されるようにしても良い。
【0071】
図3(A)に示すように、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、駆動回数情報送信処理の実行を開始すると、まずS150にて、RAM21aに記憶されている最新の駆動回数(即ち、今回の動作期間の終了時までに計数した駆動回数の最終値であり、退避処理によってメモリ23に退避させる駆動回数でもある)を示す駆動回数情報を、他の全てのユニット12〜17に送信する。
【0072】
そして、次のS155にて、他の全てのユニット12〜17から、駆動回数情報を受信したことを示す受信完了応答が送信されてきたことを確認する。そして、その後、当該駆動回数情報送信処理を終了する。尚、ユニット12〜17の何れかから受信完了応答が一定時間経っても送信されてこない場合には、例えば、駆動回数情報を再送信したり、通信エラー履歴を記憶したりする。
【0073】
ここで、本実施形態では、前述した増加分更新方式を採っており、上記S150では、駆動回数情報として、当該駆動回数情報の前回送信時(即ち、前回の当該S150で駆動回数情報を送信した時)からの駆動回数の増加分(差分)を送信する。よって、前回のS150の実行時から、駆動回数がNだけ増加していれば、今回のS150では、そのNを示すデータを駆動回数情報として送信することとなる。
【0074】
また、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、図3(A)の処理に代えて、図3(B)に示す駆動回数情報送信処理を実行しても良い。
即ち、図3(B)の駆動回数情報送信処理では、まずS160にて、他のユニット12〜17のうちの何れか1つを指定ユニットとして、その指定ユニットに前述の駆動回数情報を送信する。そして、次のS163にて、駆動回数情報を送信した指定ユニットから、受信完了応答が送信されてきたことを確認する。尚、指定ユニットから受信完了応答が一定時間経っても送信されてこない場合には、例えば、駆動回数情報を再送信したり、通信エラー履歴を記憶したりする。
【0075】
そして、次のS165にて、全てのユニット12〜17への駆動回数情報の送信が完了したか否かを判定し、駆動回数情報を未だ送信していない未送信ユニットがあれば、その未送信ユニットの1つを指定ユニットとして、上記S160以降の処理を繰り返す。また、上記S165にて、全てのユニット12〜17への駆動回数情報の送信が完了したと判定したならば、当該駆動回数情報送信処理を終了する。
【0076】
つまり、図3(A)の処理では、駆動回数情報を、他の全てのユニット12〜17にブロードキャストする一斉送信方式を採っているのに対して、図3(B)の処理では、駆動回数情報を、他のユニット12〜17の各々に順次一対一で送信する順次送信方式を採っている。
【0077】
尚、前述した生値更新方式を採用しても良く、その場合、図3(A)のS150、あるいは、図3(B)のS160では、駆動回数情報として、RAM21aに記憶されている最新の駆動回数を示すデータを、そのまま送信することとなる。
【0078】
次に、図4は、スタータ制御ユニット11以外の各ユニット12〜17で実行される駆動回数バックアップ更新処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数バックアップ更新処理は、各ユニット12〜17のマイコン21により、例えば一定時間毎に実行される。
【0079】
図4に示すように、各ユニット12〜17のマイコン21は、駆動回数バックアップ更新処理の実行を開始すると、まずS210にて、スタータ制御ユニット11からの駆動回数情報を受信したか否かを判定する。尚、この駆動回数情報は、前述した図3(A)のS150あるいは図3(B)のS160で送信されるものである。このため、当該駆動回数バックアップ更新処理も、スタータ制御ユニット11における図3(A)又は(B)の処理と同様に、最終動作期間中にだけ実行されるようにしても良い。
【0080】
そして、S210にて、駆動回数情報を受信していないと判定した場合には、そのまま当該駆動回数バックアップ更新処理を終了するが、駆動回数情報を受信したと判定した場合には、S220に進む。
【0081】
S220では、当該マイコン21が搭載されているユニット(以下、自ユニットという)で記憶しているスタータ3の駆動回数を、受信した駆動回数情報が示す増加分だけ大きい値に更新する処理を行う。尚、本実施形態において、ユニット12〜17では、スタータ3の駆動回数をメモリ23に記憶するようになっている。このため、S220では、メモリ23内の駆動回数を、駆動回数情報の示す増加分だけ大きい値に更新する処理を行う。
【0082】
そして、次のS230にて、前述した受信完了応答をスタータ制御ユニット11に送信し、その後、当該駆動回数バックアップ更新処理を終了する。このS230で送信する受信完了応答は、前述したように駆動回数情報を受信したことを示すが、駆動回数の更新が完了したことも示している。
【0083】
尚、前述した生値更新方式の場合には、スタータ制御ユニット11からユニット12〜17へ、駆動回数情報として、駆動回数そのものを示すデータが送信されてくるため、上記S220では、受信した駆動回数情報が示す駆動回数を、自ユニットのメモリ23にそのまま更新記憶すれば良い。
【0084】
次に、図5は、スタータ制御ユニット11を含む全てのユニット11〜17で実行される駆動回数チェック処理を表すフローチャートである。
尚、この駆動回数チェック処理は、車両がイグニッションオンの状態になって各ユニット11〜17が起動した直後に、その各ユニット11〜17のマイコン21によって実行される。また、スタータ制御ユニット11では、前述した駆動回数コピー処理(メモリ23からRAM21aに駆動回数をコピーする処理)よりも前に、この駆動回数チェック処理が実行される。
【0085】
図5に示すように、各ユニット11〜17のマイコン21は、駆動回数チェック処理の実行を開始すると、まずS320にて、メモリ23に駆動回数が記憶されているか否かを判定する。
【0086】
具体的には、メモリ23内の駆動回数(より詳しくは、メモリ23において駆動回数を記憶するために用意された所定記憶領域のデータ)が、ユニット製造時の初期値である0であるか、あるいは、通常ではあり得ない異常な値であるエラー値であれば、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定する。このため、ユニット11〜17の何れかが新品に交換されて、その新たなユニットが最初に起動した場合には、このS320にて、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定されることとなる。
【0087】
そして、S320にて、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定したならば、S330に進んで、図6に示す駆動回数復元処理を行い、その後、当該駆動回数チェック処理を終了する。また、S320にて、メモリ23に駆動回数が記憶されていると判定したならば、S340に移行して、図7に示す駆動回数更生処理を行い、その後、当該駆動回数チェック処理を終了する。
【0088】
ここで、図6に示すように、図5のS330で実行される駆動回数復元処理では、まずS332にて、他の全てのユニットへ、駆動回数を要求するための駆動回数要求を送信する。尚、マイコン21は、他のユニットからの駆動回数要求を受信すると、後述する図8の駆動回数応答処理により、自ユニットにおいて記憶している最新の駆動回数を、駆動回数要求の送信元へ返信するようになっている。
【0089】
このため、S332に続くS333では、他の全てのユニットからの駆動回数を受信するまで待ち、他の全ユニットからの駆動回数を受信したなら、次のS334にて、受信した全ての駆動回数(他の全ユニットからの駆動回数)が一致しているか否かを判定する。そして、全ての駆動回数が一致していないと判定した場合には、S335に進み、その全ての駆動回数のうちで、値が最も大きい駆動回数を検索する。そして、続くS336にて、S335で検索した最大の駆動回数を自ユニットのメモリ23に書き込み、その後、当該駆動回数復元処理を終了する。
【0090】
また、上記S334にて、受信した全ての駆動回数が一致していると判定した場合には、S337に移行して、その一致している駆動回数を自ユニットのメモリ23に書き込む。そして、その後、当該駆動回数復元処理を終了する。
【0091】
このため、図6の駆動回数復元処理が実行された場合には、他の全ユニットから受信した駆動回数のうちで値が最も大きい駆動回数が、復元値としてメモリ23に記憶されることとなる。また、スタータ制御ユニット11においては、メモリ23に記憶された駆動回数と同じ駆動回数が、駆動回数コピー処理によってRAM21aにも記憶される。
【0092】
一方、図7に示すように、図5のS340で実行される駆動回数更生処理においても、まずS342にて、他の全てのユニットへ駆動回数要求を送信し、続くS343にて、他の全てのユニットからの駆動回数を受信するまで待つ。
【0093】
そして、他の全ユニットからの駆動回数を受信したなら(S343:YES)、次のS344にて、受信した全ての駆動回数(他の全ユニットからの駆動回数)と、自ユニットに記憶されている駆動回数(詳しくは、自ユニットのメモリ23に記憶されている最新の駆動回数)とが一致しているか否かを判定する。
【0094】
そして、受信した全ての駆動回数と、自ユニットに記憶されている駆動回数とが一致してないと判定した場合には、S345に進み、受信した全ての駆動回数と自ユニットに記憶されている駆動回数とのうちで、値が最も大きい駆動回数を検索する。そして、続くS346にて、S345で検索した最大の駆動回数を自ユニットのメモリ23に書き込み、その後、当該駆動回数更生処理を終了する。
【0095】
また、上記S344にて、受信した全ての駆動回数と、自ユニットに記憶されている駆動回数とが一致していると判定した場合には、自ユニットに記憶されている駆動回数を更生する必要はないと判断して、そのまま当該駆動回数更生処理を終了する。
【0096】
このため、図7の駆動回数更生処理が実行された場合には、他の全ユニットから受信した駆動回数と、自ユニットに記憶されている駆動回数とのうちで、値が最も大きい駆動回数が、メモリ23に記憶されることとなる。また、スタータ制御ユニット11においては、そのメモリ23に記憶された駆動回数と同じ駆動回数が、駆動回数コピー処理によってRAM21aにも記憶される。
【0097】
次に、図8は、スタータ制御ユニット11を含む全てのユニット11〜17で実行される駆動回数応答処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数応答処理は、各ユニット11〜17のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。
【0098】
図8に示すように、各ユニット11〜17のマイコン21は、駆動回数応答処理の実行を開始すると、まずS410にて、他のユニットからの駆動回数要求を受信したか否かを判定する。尚、この駆動回数要求は、前述した図6のS332あるいは図7のS342で送信されるものである。
【0099】
そして、駆動回数要求を受信していないと判定したならば、そのまま当該駆動回数応答処理を終了するが、駆動回数要求を受信したと判定したならば、S420に進む。
S420では、自ユニットに記憶している最新の駆動回数(詳しくは、自ユニットのメモリ23に記憶されている駆動回数)を、駆動回数要求の送信元へ送信する。そして、その後、当該駆動回数応答処理を終了する。
【0100】
尚、他のユニットから駆動回数要求が送信されてくるのは、車両がイグニッションオンの状態になった直後であり、マイコン21が起動した直後であるため、スタータ制御ユニット11においても、上記S420では、メモリ23に記憶されている駆動回数を送信する。
【0101】
次に、図9(A)は、スタータ制御ユニット11で実行されるスタータ劣化判定処理を表すフローチャートである。尚、このスタータ劣化判定処理は、スタータ制御ユニット11のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。また、ここでは、前述した駆動回数コピー処理よりも後に、このスタータ劣化判定処理が実行されるものとして説明する。
【0102】
図9(A)に示すように、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、スタータ劣化判定処理の実行を開始すると、まずS510にて、自ユニットで記憶している最新の駆動回数(このスタータ劣化判定処理が実行される時点では、RAM21aに記憶されている駆動回数)が、所定の劣化判定値以上であるか否かを判定する。尚、劣化判定値は、スタータ3のモータのブラシや接点が磨耗したりピニオンギヤが磨耗したりして、スタータ3の機能に支障が出だす可能性のある駆動回数の値であって、スタータ3の寿命が到来する前に該スタータ3を交換した方が良いと考えられる値に設定されている。このため、劣化判定値は、スタータ3が正常に機能しなくなると考えられる設計上又は実験から得た限界駆動回数よりは小さい値に設定されている。
【0103】
そして、S510にて、駆動回数が劣化判定値以上ではないと判定した場合には、S520に進み、スタータ3の劣化判定結果を「劣化なし」に設定し、その後、当該スタータ劣化判定処理を終了する。
【0104】
また、上記S510にて、駆動回数が劣化判定値以上であると判定した場合には、S530に移行して、スタータ3の劣化判定結果を「劣化あり」に設定し、その後、当該スタータ劣化判定処理を終了する。
【0105】
尚、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、図9(A)の処理に代えて、図9(B)に示すスタータ劣化判定処理を実行しても良い。即ち、図9(B)のスタータ劣化判定処理では、S530にて劣化判定結果を「劣化あり」に設定した場合には、次のS535にて、車両の運転者に対してスタータ3が劣化していること(延いては、スタータ3の交換が必要なこと)を報知するための警告灯を点灯させる処理を行う。また、S520にて劣化判定結果を「劣化なし」に設定した場合には、次のS525にて、上記警告灯を消灯させる処理を行う。
【0106】
次に、図10は、スタータ制御ユニット11で実行される劣化判定結果通知処理を表すフローチャートである。尚、この劣化判定結果通知処理は、スタータ制御ユニット11のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。
【0107】
図10に示すように、スタータ制御ユニット11のマイコン21は、劣化判定結果通知処理の実行を開始すると、まずS540にて、テスタ31からの劣化判定結果要求を受信したか否かを判定する。そして、劣化判定結果要求を受信していないと判定した場合には、そのまま当該劣化判定結果通知処理を終了するが、劣化判定結果要求を受信したと判定した場合には、S550に進む。S550では、前述したスタータ劣化判定処理のS520又はS530で設定されている劣化判定結果を、テスタ31に送信し、その後、当該劣化判定結果通知処理を終了する。
【0108】
次に、図11は、テスタ31で実行される劣化判定結果問い合わせ処理を表すフローチャートである。尚、この劣化判定結果問い合わせ処理は、テスタ31の使用者(一般には車両を整備する作業者)が、該テスタ31を通信線27に接続すると共に、該テスタ31の操作部38に対して、スタータ3の交換要否チェックを指示する入力操作を行うと、該テスタ31のマイコン35によって実行される。
【0109】
図11に示すように、テスタ31のマイコン35が劣化判定結果問い合わせ処理の実行を開始すると、まずS610にて、スタータ制御ユニット11へ前述の劣化判定結果要求を送信する。
【0110】
すると、スタータ制御ユニット11から、前述した図10の劣化判定結果通知処理によって劣化判定結果が送信されてくるため、次のS620にて、その劣化判定結果を受信するまで待つ。そして、劣化判定結果を受信したなら、S630に進む。
【0111】
S630では、受信した劣化判定結果が「劣化あり」であるか否かを判定し、劣化判定結果が「劣化あり」でなければ、S640に進んで、当該テスタ31の使用者に対して、スタータ3の交換が不要なことを通知する。具体的には、表示装置37に、スタータ3の交換が不要なことを示すメッセージやマーク等を表示する。そして、その後、当該劣化判定結果問い合わせ処理を終了する。
【0112】
また、上記S630にて、劣化判定結果が「劣化あり」であると判定した場合には、S650に移行する。そして、そのS650では、当該テスタ31の使用者に対して、スタータ3の交換が必要なことを通知する。具体的には、表示装置37に、スタータ3の交換が必要なことを意味するメッセージやマーク等を表示する。そして、その後、当該劣化判定結果問い合わせ処理を終了する。
【0113】
次に、図12は、テスタ31で実行される駆動回数リセット要求処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数リセット要求処理は、テスタ31の使用者が、該テスタ31を通信線27に接続すると共に、該テスタ31の操作部38に対して、駆動回数のリセットを指示する入力操作を行うと、該テスタ31のマイコン35によって実行される。
【0114】
図12に示すように、テスタ31のマイコン35が駆動回数リセット要求処理の実行を開始すると、まずS660にて、駆動回数を記憶している全てのユニット11〜17へ、駆動回数のリセットを要求するための駆動回数リセット要求を送信する。
【0115】
そして、次のS670にて、全てのユニット11〜17から、駆動回数のリセットを実施したことを示すリセット完了応答が送信されてきたことを確認する。そして、その後、当該駆動回数リセット要求処理を終了する。尚、ユニット11〜17の何れかからリセット完了応答が一定時間経っても送信されてこない場合には、例えば、駆動回数リセット要求を再送信したり、当該テスタ31の使用者に対してエラーを報知するための処理を行ったりする。
【0116】
次に、図13は、全てのユニット11〜17で実行される駆動回数リセット処理を表すフローチャートである。尚、この駆動回数リセット処理は、各ユニット11〜17のマイコン21によって、例えば一定時間毎に実行される。
【0117】
図13に示すように、各ユニット11〜17のマイコン21は、駆動回数リセット処理の実行を開始すると、まずS710にて、テスタ31からの駆動回数リセット要求を受信したか否かを判定する。その駆動回数リセット要求は、前述した図12のS660で送信されるものである。
【0118】
そして、駆動回数リセット要求を受信していないと判定したならば、そのまま当該駆動回数リセット処理を終了するが、駆動回数リセット要求を受信したと判定したならば、S720に進む。
【0119】
S720では、自ユニットのメモリ23に記憶されている駆動回数を0にリセットする。また、スタータ制御ユニット11においては、RAM21aに記憶されている駆動回数も0にリセットする。
【0120】
そして、次のS730にて、テスタ31へ、前述のリセット完了応答を送信し、その後、当該駆動回数リセット処理を終了する。
以上のような本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムでは、スタータ制御ユニット11において、スタータ3の駆動回数が計数されると共に、その計数した駆動回数が該ユニット11のRAM21aとメモリ23に更新記憶され(図2)、更に、その計数された駆動回数が劣化判定値以上になったか否かの劣化判定が実施される(図9)。
【0121】
そして、車両を整備する作業者は、テスタ31を車両の通信線27に接続して、該テスタ31の操作部38に対し、スタータ3の交換要否チェックを指示する入力操作を行えば、スタータ制御ユニット11からテスタ31へ劣化判定結果が送信されて、テスタ31の表示装置37に、その劣化判定結果に応じて、スタータ3の交換が必要か否かを表すメッセージが表示されることとなる(図10,図11)。
【0122】
よって、作業者は、テスタ31の表示装置37に表示されるメッセージに従ってスタータ3を交換すれば、スタータ3が使用過多による製品寿命で機能不能となる前に、そのスタータ3を適切に交換することができる。
【0123】
また、作業者は、スタータ3を新品に交換した場合に、テスタ31の操作部38に対して、駆動回数のリセットを指示する入力操作を行えば、スタータ制御ユニット11及び他のユニット12〜17に記憶されている駆動回数を、0にリセットすることができる(図12,図13)。
【0124】
ここで特に、本実施形態において、スタータ制御ユニット11は、計数した駆動回数を他のユニットに知らせるための駆動回数情報を、他の全てのユニット12〜17へ送信するようになっている(図3)。そして、他の各ユニット12〜17は、スタータ制御ユニット11からの駆動回数情報に基づいて、当該ユニット12〜17のメモリ23に記憶している駆動回数を更新するようになっている(図4)。
【0125】
このため、スタータ制御ユニット11にて計数されていく駆動回数は、他の各ユニット12〜17のメモリ23にもバックアップデータとして記憶されることとなる。
更に、スタータ制御ユニット11では、イグニッションオンに伴い起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されているか否かを判定し(図5のS320)、駆動回数が記憶されていなければ、当該ユニットが新品に交換されたと判断して、図6の駆動回数復元処理を行うようになっている。そして、その駆動回数復元処理により、他のユニット12〜17に駆動回数要求を送信すると共に(S332)、その駆動回数要求に応答して他のユニット12〜17の各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニット11のメモリ23に記憶するようになっており(S334〜S337)、前述の駆動回数コピー処理により、RAM21aにも、メモリ23に記憶したのと同じ駆動回数を記憶する。また、このため、ユニット12〜17の各々は、他のユニットから駆動回数要求が送信されてきたならば、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットにおいて記憶している最新の駆動回数を送信するようになっている(図8)。
【0126】
よって、スタータ制御ユニット11が交換された場合、交換後の新たなスタータ制御ユニット11においては、他の各ユニット12〜17から送信されてきた駆動回数のうちで、最も大きい駆動回数が、ユニット交換時点までに計数されていた駆動回数として、メモリ23及びRAM21aに記憶され、以後は、その記憶された駆動回数の値から、スタータ3の駆動回数の計数が継続されることとなる。このため、ユニット交換時点までに計数されていた駆動回数を交換後の新たなユニット11へと自動的に引き継がせることができる。
【0127】
そして更に、スタータ制御ユニット11は、他の各ユニット12〜17からの駆動回数のうち、最も大きい駆動回数を、メモリ23とRAM21aに記憶することとなり、つまりは、スタータ3の寿命(交換時期)を判定するための駆動回数として、最も厳しい条件となる値を記憶することとなる。よって、その記憶されている駆動回数が劣化判定値以上になったか否かを判定することにより、スタータ3の交換時期を適切に判断することができ、スタータ3を交換する前にスタータ3の寿命が来てしまう可能性を、より低くすることができる。
【0128】
例えば、ユニット12〜17においては、メモリ23内の駆動回数をスタータ制御ユニット11からの駆動回数情報に応じて更新することに、ノイズや一時的なリセットや通信エラーなどの原因によって失敗する可能性があり、そのような駆動回数の更新失敗が生じた場合には、あるユニットに記憶されている駆動回数が、他のユニットに記憶されている正しい駆動回数よりも小さいという状況であって、各ユニット12〜17に記憶されている駆動回数が異なる状況が発生する可能性がある。そして、そのような状況でスタータ制御ユニット11が交換された場合でも、他の各ユニット12〜17に記憶されている駆動回数のうち、最も大きい駆動回数であり、正しいと考えられる駆動回数(スタータ3の交換時期を正しく判断できる駆動回数でもある)が、交換後の新たなスタータ制御ユニット11に記憶されることとなる。
【0129】
このため、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムによれば、スタータ制御ユニット11が交換される場合には、それまでに計数されていた駆動回数を、交換後の新たなユニット11へと、自動的にだけではなく、精度良く引き継がせることもできる。
【0130】
また例えば、スタータ制御ユニット11だけでなく、他のユニット12〜17の何れかとスタータ制御ユニット11とがセットで交換された場合でも、交換後の新たなスタータ制御ユニット11には、交換されなかった他のユニットに記憶されていた駆動回数を記憶させることができ、駆動回数の復元能力が高い。
【0131】
更に、本実施形態では、スタータ制御ユニット11以外のユニット(以下、スレーブユニットともいう)12〜17においても、イグニッションオンに伴い起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されているか否かを判定し(図5のS320)、駆動回数が記憶されていなければ、当該ユニットが新品に交換されたと判断して、図6の駆動回数復元処理を行うようになっている。また、このため、スタータ制御ユニット11も、他のユニットから駆動回数要求が送信されてきたならば、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットにおいて記憶している最新の駆動回数を送信するようになっている(図8)。
【0132】
よって、ユニット12〜17の何れかが交換された場合にも、その交換後の新たなユニットにおいて、メモリ23に駆動回数が記憶されていないと判定され(S320:NO)、そのユニットからスタータ制御ユニット11を含む他の各ユニットへ駆動回数要求が送信されて、それに対する応答として、他の各ユニットから交換後の新たなユニットへ駆動回数が送信されることとなる。そして、交換後の新たなユニットにおいては、他の各ユニットから送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数がメモリ23に記憶されることとなる。
【0133】
このため、ユニット12〜17の何れかが交換される場合にも、それまでに計数されていた駆動回数を、交換後の新たなユニットへと自動的に且つ精度良く引き継がせることができる。そして、スタータ制御ユニット11が交換されるときに備えて、できるだけ多くのスレーブユニットに正しい駆動回数が記憶されている状態をできるだけ早く作っておくことが好ましく、そのことを実現することができる。
【0134】
特に、上記実施形態では増加分更新方式を採っているため、スレーブユニット12〜17の何れかが交換された後、その交換後の新たなユニットにスタータ制御ユニット11から駆動回数情報(駆動回数の増加分)が送信されただけでは、その新たなユニットに記憶される駆動回数は、初期値の0から上記増加分だけ大きい値になるだけであり、正しい値には戻らない。しかし、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムによれば、増加分更新方式であっても、交換後の新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を正しい値に戻すことができる。
【0135】
尚、前述した生値更新方式を採用した場合であっても、交換後の新たなスレーブユニットに記憶される駆動回数を、スタータ制御ユニット11から駆動回数情報が送信される前に、正しい値に戻すことができるようになる。よって、スタータ制御ユニット11が交換されるときに備えて、スレーブユニットをできるだけ早く正しい駆動回数が記憶されている状態にすることができるという面で、やはり有利である。
【0136】
また、本実施形態において、スレーブユニット12〜17の各々は、イグニッションオンに伴い起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されていると判定した場合には(S320:YES)、図7の駆動回数更生処理を行うようになっている。そして、その駆動回数更生処理により、他のユニットに対して駆動回数要求を送信し(S342)、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、当該ユニットに記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、当該ユニットのメモリ23に記憶するようになっている(S344〜S346)。
【0137】
このため、あるスレーブユニットに記憶されている駆動回数が、前述した更新失敗によって、他のユニットに記憶されている駆動回数より小さい値になったとしても、そのスレーブユニットに記憶される駆動回数を、他のユニットに記憶されている正しい駆動回数と同じ値に直すことができる。そして、全てのスレーブユニットに正しい駆動回数が記憶されている状態を維持することができる。
【0138】
特に、増加分更新方式の場合、非常に希なケースではあるが、全てのスレーブユニットが駆動回数の更新に失敗した場合には、もはやスレーブユニット側に正しい駆動回数が残らないため、その状況で、スタータ制御ユニット11が交換されると、新たなスタータ制御ユニット11に正しい駆動回数を記憶させることができなくなるという懸念がある。しかし、本実施形態のスタータ駆動回数記憶システムによれば、こうした懸念を回避することができる。
【0139】
尚、前述した生値更新方式の場合には、スレーブユニットが駆動回数の更新に失敗しても、スタータ制御ユニット11から次回に駆動回数情報が送信されることで、そのスレーブユニットに記憶される駆動回数を真値に戻すことはできる。しかし、生値更新方式の場合であっても、スレーブユニット12〜17が図7の駆動回数更生処理を行うことは、やはり有利である。なぜなら、スタータ制御ユニット11から駆動回数情報が送信される前であっても、スレーブユニットの駆動回数を真値に戻すことが可能になるからであり、延いては、スタータ制御ユニット11が交換されるときに備えて、駆動回数の更新に失敗したスレーブユニットをできるだけ早く正しい駆動回数が記憶されている状態に復帰させることができるからである。
【0140】
また、本実施形態では、スタータ制御ユニット11も、イグニッションオンに伴い起動した際に、メモリ23に駆動回数が記憶されていると判定した場合には(S320:YES)、図7の駆動回数更生処理を行うようになっている。
【0141】
このため、スタータ制御ユニット11が正しい駆動回数を失ってしまうことを防止することができる。
例えば、スタータ制御ユニット11において、スレーブユニット12〜17へ駆動回数情報を送信してから、メモリ23内の駆動回数を更新する前に、誤って電源が遮断されたりリセットが発生したりして、そのメモリ23内の駆動回数の更新に失敗すると、正しい駆動回数を失ってしまうこととなるが、図7の駆動回数更生処理を行うことで、スレーブユニットから正しい駆動回数を受け取って記憶し直すことができる。尚、生値更新方式の場合には、スタータ制御ユニット11に記憶されている駆動回数が正しくなくなると、全てのスレーブユニット12〜17に記憶される駆動回数にも影響するため、スタータ制御ユニット11にて図7の処理を行うことは特に有効である。
【0142】
また、本実施形態では、エンジン1の制御とは関係がないメータ制御ユニット16やエアコン制御ユニット17にも駆動回数を記憶させているため、エンジン1の不調等に起因して、エンジン1の制御に関連する複数のユニット(例えば、ユニット11,12,14等)が同時に交換されたとしても、駆動回数を失ってしまうことを防ぐことができる。
【0143】
一方、前述の増加分更新方式によれば、スタータ3の駆動回数が大きくなっても、スタータ制御ユニット11からスレーブユニット12〜17に送信される駆動回数情報のデータ量を小さく抑えることができるという利点がある。
【0144】
尚、本実施形態では、マスタユニットとしてのスタータ制御ユニット11においては、メモリ23とRAM21aが記憶手段に相当し、スレーブユニットとしての他のユニット12〜17においては、メモリ23が記憶手段に相当している。また、通信線27が通信路に相当している。
【0145】
そして、スタータ制御ユニット11のマイコン21が行う処理のうち、図3(A)又は(B)の駆動回数情報送信処理が、駆動回数情報送信手段に相当し、他のユニット12〜17のマイコン21が行う処理のうち、図4の駆動回数バックアップ更新処理が、バックアップ更新手段に相当している。
【0146】
また、各ユニット11〜17のマイコン21が行う処理のうち、図5のS320が、判定手段に相当し、図6の駆動回数復元処理が、駆動回数復元手段に相当し、図7の駆動回数更生処理が、駆動回数更正手段に相当し、図8の駆動回数応答処理が、駆動回数応答手段に相当している。
【0147】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0148】
例えば、図1に示した各ユニットは一例であり、他の機能のユニットであっても良い。
また、通信路は、有線(通信線27)に限らず、無線の通信路であっても良い。
また、上記実施形態は、例えば下記の各変形例のように変形しても良い。
【0149】
[変形例1]
ユニット12〜17においても、スタータ制御ユニット11と同様に、前述した退避処理と駆動回数コピー処理とを行うことにより、駆動回数を、メモリ23とRAM21aとの両方を使って継続的に記憶するようになっていても良い。
【0150】
[変形例2]
スタータ制御ユニット11以外の各ユニット12〜17においても、マイコン21が、図9(A)及び図10の各処理と同様の処理を行うようにし、更に、テスタ31で実行される図11の劣化判定結果問い合わせ処理では、全てのユニット11〜17へ劣化判定結果要求を送信すると共に、その劣化判定結果要求に応答して各ユニット11〜17から送信されてくる劣化判定結果を、表示装置37に表示するように構成しても良い。
【0151】
この場合、テスタ31の使用者は、例えば、表示装置37に表示される複数の劣化判定結果の多数決によって、スタータ3を交換すべきか否か判断することができる。また、テスタ31のマイコン35が、各ユニット11〜17からの劣化判定結果の多数決をとって、その多数決の結果を表示装置37に表示するように構成しても良い。
【0152】
[変形例3]
スタータ制御ユニット11からテスタ31へは、劣化判定結果に代えて、駆動回数そのものが送信されるようになっていても良い。
【0153】
この場合、テスタ31にて、図9(A)と同様のスタータ劣化判定処理が行われて、その処理による劣化判定結果が表示装置37に表示されるように構成しても良いし、また、表示装置37には、駆動回数が表示されるように構成しても良い。後者の場合、作業者は、表示装置37に表示された駆動回数から、スタータ3の交換要否を判断すれば良いからである。
【0154】
尚、上記変形例2においても、この変形例3と同様に、各ユニット11〜17からテスタ31へ駆動回数が送信されて、例えば、その各ユニット11〜17からの駆動回数が、テスタ31の表示装置37に表示されるように構成しても良い。
【0155】
[変形例4]
生値更新方式を採用した場合、テスタ31で実行される図12の駆動回数リセット要求処理では、駆動回数リセット要求を、スタータ制御ユニット11だけに送信するようにしても良い。
【0156】
スタータ制御ユニット11に記憶される駆動回数が0にリセットされれば、そのスタータ制御ユニット11から他のユニット12〜17に駆動回数情報が送信されることで、他のユニット12〜17に記憶される駆動回数も0にすることができるからである。
【符号の説明】
【0157】
1…エンジン、3…スタータ、11…スタータ制御ユニット
12…エンジン制御ユニット、13…ブレーキ制御ユニット
14…アイドルストップ制御ユニット、15…トランスミッション制御ユニット
16…メータ制御ユニット、17…エアコン制御ユニット、21,35…マイコン
21a…RAM、23…データ書き換えが可能な不揮発性メモリ
25,39…通信回路、27…通信線、29…駆動回路、31…テスタ
33…コネクタ、37…表示装置、38…操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を計数して記憶するスタータ駆動回数記憶システムであって、
通信路を介して通信が可能な3つ以上の複数のユニットを備えると共に、前記ユニットの各々は、前記スタータの駆動回数を記憶するための記憶手段を備えており、
前記複数のユニットのうちの1つは、前記スタータの駆動回数を計数して、該計数した駆動回数を当該ユニットの前記記憶手段に更新記憶するマスタユニットであり、
前記マスタユニットは、
前記計数した駆動回数を示す駆動回数情報を、前記複数のユニットのうちの当該マスタユニット以外のユニットであるスレーブユニットに送信する駆動回数情報送信手段を備えており、
前記スレーブユニットの各々は、
前記マスタユニットから送信されてきた前記駆動回数情報に基づいて、当該ユニットの前記記憶手段に記憶している駆動回数を更新するバックアップ更新手段を備えており、
更に、前記マスタユニットは、
当該ユニットの前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていないと判定された場合に、他のユニットに対して、前記駆動回数の送信を要求する駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニットの前記記憶手段に記憶する駆動回数復元手段とを備え、
前記スレーブユニットの各々は、
他のユニットから前記駆動回数要求が送信されてきた場合に、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットの前記記憶手段に記憶されている駆動回数を送信する駆動回数応答手段を備えていること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項2】
請求項1に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記スレーブユニットの各々も、前記判定手段と前記駆動回数復元手段とを備え、
前記マスタユニットも、前記駆動回数応答手段を備えていること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項3】
請求項2に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記スレーブユニットの各々は、
当該ユニットの前記判定手段により当該ユニットの前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていると判定された場合に、他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、当該ユニットの前記記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、当該ユニットの前記記憶手段に記憶する駆動回数更正手段を備えていること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記マスタユニットは、
当該ユニットの前記判定手段により当該ユニットの前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていると判定された場合に、他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、当該ユニットの前記記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、当該ユニットの前記記憶手段に記憶する駆動回数更正手段を備えていること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記マスタユニットの前記駆動回数情報送信手段は、前記駆動回数情報として、当該駆動回数情報の前回送信時からの前記駆動回数の増加分を送信し、
前記スレーブユニットの前記バックアップ更新手段は、当該ユニットの前記記憶手段に記憶している駆動回数を、前記マスタユニットから送信されてきた前記増加分だけ大きい値に更新すること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記マスタユニットの前記駆動回数情報送信手段は、前記駆動回数情報として、前記計数した駆動回数を送信し、
前記スレーブユニットの前記バックアップ更新手段は、前記マスタユニットから送信されてきた前記駆動回数を、当該ユニットの前記記憶手段に更新記憶すること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項7】
車両に搭載され、通信路を介して他の2つ以上のユニットとの間で通信が可能であり、前記車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を記憶するための記憶手段を備えると共に、前記スタータの駆動回数を計数して、該計数した駆動回数を前記記憶手段に更新記憶する電子制御ユニットであって、
前記計数した駆動回数を示す駆動回数情報を、前記他のユニットに送信することにより、前記計数した駆動回数を前記他のユニットに記憶させる駆動回数情報送信手段と、
前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていないと判定された場合に、前記他のユニットに対して、前記駆動回数の送信を要求する駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して前記他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、前記記憶手段に記憶する駆動回数復元手段と、
を備えていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の電子制御ユニットにおいて、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていると判定された場合に、前記他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して前記他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、前記記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、前記記憶手段に記憶する駆動回数更正手段を備えていること、
を特徴とする電子制御ユニット。
【請求項9】
車両に搭載され、通信路を介して他のユニットと通信が可能な電子制御ユニットであって、
前記車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を記憶するための記憶手段と、
前記他のユニットから前記駆動回数を示す駆動回数情報が送信されてくると、その駆動回数情報に基づいて、前記記憶手段に記憶している駆動回数を更新するバックアップ更新手段と、
前記他のユニットから前記駆動回数の送信を要求する駆動回数要求が送信されてくると、その駆動回数要求の送信元へ、前記記憶手段に記憶されている駆動回数を送信する駆動回数応答手段と、
を備えていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の電子制御ユニットにおいて、
当該電子制御ユニットと通信が可能な他のユニットは複数あり、
更に、当該電子制御ユニットは、
前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていないと判定された場合に、前記他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して前記他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、前記記憶手段に記憶する駆動回数復元手段と、
を備えていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の電子制御ユニットにおいて、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていると判定された場合に、前記他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して前記他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、前記記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、前記記憶手段に記憶する駆動回数更正手段を備えていること、
を特徴とする電子制御ユニット。
【請求項1】
車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を計数して記憶するスタータ駆動回数記憶システムであって、
通信路を介して通信が可能な3つ以上の複数のユニットを備えると共に、前記ユニットの各々は、前記スタータの駆動回数を記憶するための記憶手段を備えており、
前記複数のユニットのうちの1つは、前記スタータの駆動回数を計数して、該計数した駆動回数を当該ユニットの前記記憶手段に更新記憶するマスタユニットであり、
前記マスタユニットは、
前記計数した駆動回数を示す駆動回数情報を、前記複数のユニットのうちの当該マスタユニット以外のユニットであるスレーブユニットに送信する駆動回数情報送信手段を備えており、
前記スレーブユニットの各々は、
前記マスタユニットから送信されてきた前記駆動回数情報に基づいて、当該ユニットの前記記憶手段に記憶している駆動回数を更新するバックアップ更新手段を備えており、
更に、前記マスタユニットは、
当該ユニットの前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていないと判定された場合に、他のユニットに対して、前記駆動回数の送信を要求する駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、当該ユニットの前記記憶手段に記憶する駆動回数復元手段とを備え、
前記スレーブユニットの各々は、
他のユニットから前記駆動回数要求が送信されてきた場合に、その駆動回数要求の送信元へ、当該ユニットの前記記憶手段に記憶されている駆動回数を送信する駆動回数応答手段を備えていること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項2】
請求項1に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記スレーブユニットの各々も、前記判定手段と前記駆動回数復元手段とを備え、
前記マスタユニットも、前記駆動回数応答手段を備えていること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項3】
請求項2に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記スレーブユニットの各々は、
当該ユニットの前記判定手段により当該ユニットの前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていると判定された場合に、他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、当該ユニットの前記記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、当該ユニットの前記記憶手段に記憶する駆動回数更正手段を備えていること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記マスタユニットは、
当該ユニットの前記判定手段により当該ユニットの前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていると判定された場合に、他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、当該ユニットの前記記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、当該ユニットの前記記憶手段に記憶する駆動回数更正手段を備えていること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記マスタユニットの前記駆動回数情報送信手段は、前記駆動回数情報として、当該駆動回数情報の前回送信時からの前記駆動回数の増加分を送信し、
前記スレーブユニットの前記バックアップ更新手段は、当該ユニットの前記記憶手段に記憶している駆動回数を、前記マスタユニットから送信されてきた前記増加分だけ大きい値に更新すること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のスタータ駆動回数記憶システムにおいて、
前記マスタユニットの前記駆動回数情報送信手段は、前記駆動回数情報として、前記計数した駆動回数を送信し、
前記スレーブユニットの前記バックアップ更新手段は、前記マスタユニットから送信されてきた前記駆動回数を、当該ユニットの前記記憶手段に更新記憶すること、
を特徴とするスタータ駆動回数記憶システム。
【請求項7】
車両に搭載され、通信路を介して他の2つ以上のユニットとの間で通信が可能であり、前記車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を記憶するための記憶手段を備えると共に、前記スタータの駆動回数を計数して、該計数した駆動回数を前記記憶手段に更新記憶する電子制御ユニットであって、
前記計数した駆動回数を示す駆動回数情報を、前記他のユニットに送信することにより、前記計数した駆動回数を前記他のユニットに記憶させる駆動回数情報送信手段と、
前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていないと判定された場合に、前記他のユニットに対して、前記駆動回数の送信を要求する駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して前記他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、前記記憶手段に記憶する駆動回数復元手段と、
を備えていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の電子制御ユニットにおいて、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていると判定された場合に、前記他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して前記他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、前記記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、前記記憶手段に記憶する駆動回数更正手段を備えていること、
を特徴とする電子制御ユニット。
【請求項9】
車両に搭載され、通信路を介して他のユニットと通信が可能な電子制御ユニットであって、
前記車両のエンジンを始動させるためのスタータの駆動回数を記憶するための記憶手段と、
前記他のユニットから前記駆動回数を示す駆動回数情報が送信されてくると、その駆動回数情報に基づいて、前記記憶手段に記憶している駆動回数を更新するバックアップ更新手段と、
前記他のユニットから前記駆動回数の送信を要求する駆動回数要求が送信されてくると、その駆動回数要求の送信元へ、前記記憶手段に記憶されている駆動回数を送信する駆動回数応答手段と、
を備えていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の電子制御ユニットにおいて、
当該電子制御ユニットと通信が可能な他のユニットは複数あり、
更に、当該電子制御ユニットは、
前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていないと判定された場合に、前記他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して前記他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数のうちで最も大きい駆動回数を、前記記憶手段に記憶する駆動回数復元手段と、
を備えていることを特徴とする電子制御ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の電子制御ユニットにおいて、
前記判定手段により前記記憶手段に前記駆動回数が記憶されていると判定された場合に、前記他のユニットに対して前記駆動回数要求を送信し、その駆動回数要求に応答して前記他のユニットの各々から送信されてきた駆動回数と、前記記憶手段に記憶されている駆動回数とのうちで、最も大きい駆動回数を、前記記憶手段に記憶する駆動回数更正手段を備えていること、
を特徴とする電子制御ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−225187(P2012−225187A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91185(P2011−91185)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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