説明

スターリングエンジン

【課題】スコッチ・ヨーク機構を備えたスターリングエンジンにおいて、組立作業が容易で、組立精度がよいスターリングエンジンを提供すること。
【解決手段】本発明のスターリングエンジンは、ディスプレーサピストン71とパワーピストン72とをスコッチ・ヨーク機構90を介してクランクシャフト80に連結し、スコッチ・ヨーク機構90及びクランクシャフト80を高圧雰囲気下に維持するクランクケース50と、クランクシャフト80の両端のクランクシャフト軸受123、124及びヨーク94a、94bの動作方向を規制するガイドシャフト95a、95bを固定するクランクボックス100とを備え、クランクボックス100を、クランクケース50とは別部材で構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱やバイオマスなどの熱源を活用できるスターリングエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
廃熱やバイオマスなどの熱源を有効に活用することは、環境問題及びエネルギー問題の解決に繋がる。スターリングエンジンは熱源を選ばず、温度差があれば運転できるという特徴を持つことから、それら熱源の有効活用に適している。
スターリングエンジンは、低い温度にも熱源できることから、その目標性能を達成するにはピストンシールや機構の摩擦に起因する機械損失の軽減が開発課題の一つである。
スターリングエンジンに用いられるスコッチ・ヨーク機構は、出力軸に偏心して取り付けられたクランクピン軸受が長円形の溝の中を転がることにより、ヨークを往復動させる機構であり、ピストンおよび出力軸に垂直な方向に直動軸受等のガイドを設けることによって、ピストンに作用するサイドスラストを打ち消すことができる。
そして、スコッチ・ヨーク機構は、クロスヘッド機構や通常のクランク機構に比べて高さを短縮しやすく、また、各部にグリース封入式の軸受を用いることによって潤滑装置を簡単化できるため、比較的低出力の小型エンジンに適している。
一方、スコッチ・ヨーク機構は、ヨークの往復部の質量増大による機械損失の増加、クランクピンとヨーク部の接点の強度や耐摩耗性に問題があり、本発明者らは、摺動損失を低減し、信頼性の高いスコッチ・ヨーク機構とするスターリングエンジンを既に提案している(特許文献1)。
【特許文献1】特願2006−283323号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のスターリングエンジンでは、スコッチ・ヨーク機構をクランクケースに取り付ける構成であるため、精度が要求される組立作業が極めて困難であり、熟練を要するという問題を有していた。特にクランクケースは、耐圧部材によって耐圧構造をとらなければならないため、組立精度を高めることが極めて困難であった。
【0004】
そこで本発明は、スコッチ・ヨーク機構を備えたスターリングエンジンにおいて、組立作業が容易で、組立精度がよいスターリングエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明のスターリングエンジンは、ディスプレーサピストンとパワーピストンとを備え、前記ディスプレーサピストンと前記パワーピストンとをスコッチ・ヨーク機構を介してクランクシャフトに連結し、前記クランクシャフトの両端にはクランクシャフト軸受を備え、前記スコッチ・ヨーク機構を、前記クランクシャフトに偏心して取り付けられたクランクピンと、前記クランクピンのまわりに設けた軸受と、長溝を形成したヨークと、前記ヨークの動作方向を前記ディスプレーサピストン及び前記パワーピストンの動作方向に規制するガイドシャフトとで構成し、前記軸受が前記長溝内を転がることで前記ヨークが前記ガイドシャフトに沿って往復動するスターリングエンジンであって、前記スコッチ・ヨーク機構及び前記クランクシャフトを高圧雰囲気下に維持するクランクケースと、前記クランクシャフト軸受及び前記ガイドシャフトを固定するクランクボックスとを備え、前記クランクボックスを、前記クランクケースとは別部材で構成したことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のスターリングエンジンにおいて、前記ディスプレーサピストンと前記パワーピストンとが摺動するシリンダと、前記シリンダを固定するベースフランジと、前記シリンダの外周部に配置する筒状の冷却部とを備え、前記冷却部の一方の端部に形成した冷却部用フランジを前記ベースフランジの一方の面に固定し、前記クランクボックスの天板に形成した耳部を前記ベースフランジの他方の面に固定することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、前記シリンダの一端側の外周面に前記冷却部の内周面が当接し、前記シリンダの他端側の外周面に前記天板に形成した開口部の内周面が当接することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、前記クランクボックスと前記シリンダとを同一部材で一体成型したことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、前記クランクボックスと前記ベースフランジとを同一部材で一体成型したことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、前記クランクボックス、前記ベースフランジ、及び前記シリンダを同一部材で一体成型したことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1に記載のスターリングエンジンにおいて、前記クランクボックスを、前記クランクシャフトを貫通させるための開口部を形成した一対の側板と、前記ガイドシャフトの固定面を形成する天板及び底板とによって形成し、前記天板には、前記パワーピストンの摺動空間となる開口部を形成し、一対の前記側板に設けた前記開口部にはそれぞれベアリングホルダを固定し、前記クランクシャフト軸受を、前記ベアリングホルダ内に収めることで、前記クランクシャフトを前記クランクボックスに取り付けることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1に記載のスターリングエンジンにおいて、前記クランクケースの胴部側面には発電機接続筒部を備え、前記発電機接続筒部の端部には発電機接続フランジを設け、発電機ケースの一端には発電機ケース側フランジを備え、前記発電機接続フランジと前記発電機ケース側フランジとを接続し、前記クランクシャフトの一端を、カップリングを介して発電機用シャフトに接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐圧を考慮することなくクランクボックスを構成することができ、このクランクボックスにクランクシャフト軸受及びガイドシャフトを固定する構成を容易に設計することができるスターリングエンジンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態によるスターリングエンジンは、スコッチ・ヨーク機構及びクランクシャフトを高圧雰囲気下に維持するクランクケースと、クランクシャフト軸受及びガイドシャフトを固定するクランクボックスとを備え、クランクボックスを、クランクケースとは別部材で構成したものである。本実施の形態によれば、高圧雰囲気下に維持するクランクケースとは別部材としてクランクボックスを設けることで、耐圧を考慮することなくクランクボックスを構成することができ、このクランクボックスにクランクシャフト軸受及びガイドシャフトを固定する構成を容易に設計することができる。そして、このクランクボックスにクランクシャフト軸受及びガイドシャフトを固定した状態で、組立を行うことが可能であるため、組立を精度よく容易に行うことができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、ディスプレーサピストンとパワーピストンとが摺動するシリンダと、シリンダを固定するベースフランジと、シリンダの外周部に配置する筒状の冷却部とを備え、冷却部の一方の端部に形成した冷却部用フランジをベースフランジの一方の面に固定し、クランクボックスの天板に形成した耳部をベースフランジの他方の面に固定するものである。本実施の形態によれば、ベースフランジの一方の面に冷却部を取り付け、ベースフランジの他方の面にクランクボックスを取り付けるため、ベースフランジを基準に精度を確保することができる。
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、シリンダの一端側の外周面に冷却部の内周面が当接し、シリンダの他端側の外周面に天板に形成した開口部の内周面が当接するものである。本実施の形態によれば、シリンダをベースフランジの両面から突出させ、このシリンダの外周面に冷却部の内周面とクランクボックスの開口部内周面を当接させることで、それぞれの軸心調整を容易に行うことができる。
本発明の第4の実施の形態は、第2の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、クランクボックスとシリンダとを同一部材で一体成型したものである。本実施の形態によれば、クランクボックスとシリンダとを同一部材で一体成型することで、組立作業を容易にし、組立精度を高めることができる。
本発明の第5の実施の形態は、第2の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、クランクボックスとベースフランジとを同一部材で一体成型したものである。本実施の形態によれば、クランクボックスとベースフランジとを同一部材で一体成型することで、組立作業を容易にし、組立精度を高めることができる。
本発明の第6の実施の形態は、第2の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、クランクボックス、ベースフランジ、及びシリンダを同一部材で一体成型したものである。本実施の形態によれば、クランクボックス、ベースフランジ、及びシリンダを同一部材で一体成型することで、組立作業を容易にし、組立精度を高めることができる。
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、クランクボックスを、クランクシャフトを貫通させるための開口部を形成した一対の側板と、ガイドシャフトの固定面を形成する天板及び底板とによって形成し、天板には、パワーピストンの摺動空間となる開口部を形成し、一対の側板に設けた開口部にはそれぞれベアリングホルダを固定し、クランクシャフト軸受を、ベアリングホルダ内に収めることで、クランクシャフトをクランクボックスに取り付けるものである。本実施の形態によれば、クランクボックスを直方体に形成し、直方体を形成するそれぞれの面を利用してクランクシャフトやパワーピストンを固定するため、それぞれの部材の取り付け角度のずれを最小限に抑えることができる。
本発明の第8の実施の形態は、第1の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、クランクケースの胴部側面には発電機接続筒部を備え、発電機接続筒部の端部には発電機接続フランジを設け、発電機ケースの一端には発電機ケース側フランジを備え、発電機接続フランジと発電機ケース側フランジとを接続し、クランクシャフトの一端を、カップリングを介して発電機用シャフトに接続するものである。本実施の形態によれば、クランクシャフトだけでなく発電機用シャフトについてもクランクケースに固定しないので、組立精度を高めることができるとともに組立作業を容易に行うことができる。
【実施例】
【0008】
以下本発明の一実施例によるスターリングエンジンについて説明する。
まず、図1を用いて同スターリングエンジンの外観構成について説明する。
図1は本実施例によるスターリングエンジンの構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施例によるスターリングエンジンは、加熱部10、再生部20、冷却部30を、ベースフランジ40の一方に積み重ねて構成している。また、同スターリングエンジンは、ベースフランジ40の他方にクランクケース50を備えている。クランクケース50には、発電機ケース60とエンコーダケース51とを備えている。
同スターリングエンジンは、加熱部10を、例えば船舶のディーゼルエンジンから発生する排気ガスを排出する熱源ガス流路内に設置して用いる。
冷却部30は、筒状の冷却部用胴部31と、この冷却部用胴部31の両端に形成した冷却部用フランジ32、33とを備える。一方の冷却部用フランジ32は、ベースフランジ40の一方の面に固定される。
再生部20は、筒状の再生部用胴部21と、この再生部用胴部21の両端に形成した再生部用フランジ22、23とを備える。一方の再生部用フランジ22は、他方の冷却部用フランジ33に固定される。
加熱部10は、U字状に曲げられた複数のヒーター管11と、これらのヒーター管11の開口端部を固定する加熱部用フランジ12とを備える。この加熱部用フランジ12は、他方の再生部用フランジ23に固定される。なお、ヒーター管11には、多数の熱交換フィン13を設けている。
クランクケース50は、筒状のクランクケース胴部52と、このクランクケース胴部52の一端に形成したクランクケース胴部フランジ53とを備える。また、クランクケース胴部52の側面には、筒状のエンコーダケース51と同一軸線上に、発電機接続筒部54を備える。この発電機接続筒部54の端部には、発電機接続フランジ55を設けている。
発電機ケース60の一端には、発電機ケース側フランジ61を備えており、発電機ケース側フランジ61と発電機接続フランジ55とが接続される。なお、クランクケース50内は、高圧雰囲気下に維持され、本実施例においては、発電機ケース60内もクランクケース50内と同じ高圧雰囲気下に維持される。
【0009】
次に、図2から図11を用いて同スターリングエンジンの内部構成について説明する。
図2は同スターリングエンジンの構成を示す一部断面斜視図、図3は同スターリングエンジンの構成を示す側面断面図である。
同スターリングエンジンは、ディスプレーサピストン71とパワーピストン72とを有している。ディスプレーサピストン71及びパワーピストン72は、それぞれクランクシャフト80に連結されている。クランクシャフト80の一端は、カップリング81を介して発電機用シャフト62と接続され、他端は、カップリング82を介してエンコーダ63と接続されている。また、クランクシャフト80の一端側には、フライホイール64を設けている。ここでカップリング81、82は、クランクシャフト80と発電機用シャフト62との軸心づれを許容できるゴムカップリングが適している。
ディスプレーサピストン71及びパワーピストン72の移動範囲には、シリンダ73が設けられている。
シリンダ73の外周部には、冷却部30とベースフランジ40が位置する。
ディスプレーサピストン71には、ディスプレーサキャップ71aが設けられている。
加熱部10には、加熱部用フランジ12の中央部に、加熱部ヘッド14を形成している。
この加熱部ヘッド14は、ディスプレーサキャップ71aの頂部と同形状に形成されている。そして、加熱部ヘッド14とディスプレーサキャップ71aとの間にディスプレーサピストン71の一方の空間が形成され、ディスプレーサピストン71とパワーピストン72との間にディスプレーサピストン71の他方の空間が形成される。
ヒーター管11の一端側端部11aは、ディスプレーサピストン71の一方の空間に連通している。またヒーター管11の他端側端部11bは、再生部20と連通し、再生部20は冷却部30と連通し、冷却部30はディスプレーサピストン71の他方の空間に連通している。
再生部20の内部には、シリンダ73と同心円状の筒材24が配置されている。そして再生部20の内周面と筒材24との間には、複数の円管が再生部20の軸方向に配置される。各円管の隙間にはオーステナイト系ステンレス鋼や黄銅等の金網のマトリックス材を詰めている。作動ガスは、マトリックス材を通り抜けて、ヒーター管11又は冷却部30に流れる。作動ガスは、この再生部20を通り抜けるときに、マトリックス材から吸熱し、又はマトリックス材に放熱する。なお、円管及びマトリックス材については図示を省略する。
冷却部30内は、冷却水が流れる通路と作動ガスが流れる通路に区分され、作動ガスは冷却水で冷却される。
【0010】
ディスプレーサピストン71とパワーピストン72とは、スコッチ・ヨーク機構90を介してクランクシャフト80に連結している。なお、ディスプレーサピストン71とパワーピストン72とは位相を所定角度ずらしている。
ここでスコッチ・ヨーク機構90について、図4から図9を用いて説明する。
図4は、本実施例によるスコッチ・ヨーク機構の構成を示す要部正面図、図5は、同スコッチ・ヨーク機構を示す要部斜視図、図6は、パワーピストンとクランクシャフトとの連結を示すスコッチ・ヨーク機構の要部斜視図、図7は、ディスプレーサピストンとクランクシャフトとの連結を示すスコッチ・ヨーク機構の要部斜視図、図8は、クランクシャフトにおける連結を示すスコッチ・ヨーク機構の要部斜視図である。
パワーピストン72とクランクシャフト80とを連結するスコッチ・ヨーク機構90aは、クランクシャフト80に偏心して取り付けられたピストン用クランクピン91aと、ピストン用クランクピン91aのまわりに設けたピストン用軸受92aと、長溝93aを形成したピストンヨーク94aとで構成され、ピストン用軸受92aが長溝93a内を転がることでピストンヨーク94aが往復動する。なお、スコッチ・ヨーク90aは、図6に示すようにパワーピストンボード74によってパワーピストン72と連結している。また、ピストンヨーク94aの両側部には、パワーピストン72の動作方向にガイドシャフト95aが設けられている。ピストンヨーク94aは、リニアベアリングを介してガイドシャフト95aに設けている。ガイドシャフト95aは、ピストンヨーク94aの動作方向をパワーピストン72の動作方向に規制する。
ピストンヨーク94aの長溝93aの内周面には2枚のプレート96a、97aを設けている。長溝93aのパワーピストン72側の内周面には上側プレート96aが、長溝93aのパワーピストン72と反対側の内周面には下側プレート97aが設けられている。ピストン用軸受92aは、上側プレート96aと下側プレート97aとを摺動面としている。
ピストンヨーク94aにはアルミニウム合金を用い、プレート96a、97aには炭素鋼を用いる。このように、プレート96a、97aを、ピストンヨーク94aの材料よりも硬い材料で構成することで、プレート96b、97bのみをピストン用軸受92a外周壁面との接触面であるプレート96b、97bに摺動性を高めるための最適な材料、硬度、表面処理等を施すことで、耐摩耗性を高めることができる。さらに、万一、磨耗等で交換する場合もピストンヨーク94aを交換することなく、プレート96b、97bのみの交換で済み、メンテナンス性のよいスターリングエンジンとなる。なお、ピストン用軸受92aにはボールベアリングを用いて外輪を回動する。
【0011】
特に図4及び図7に示すように、ディスプレーサピストン71とクランクシャフト80とを連結するスコッチ・ヨーク機構90bは、クランクシャフト80に偏心して取り付けられたディスプレーサ用クランクピン91bと、ディスプレーサ用クランクピン91bのまわりに設けたディスプレーサ軸受92bと、長溝93bを形成したディスプレーサヨーク94bとで構成され、ディスプレーサ用軸受92bが長溝93b内を転がることでディスプレーサ用ヨーク94bが往復動する。なお、スコッチ・ヨーク90bは、ディスプレーサロッド75によってディスプレーサピストン71と連結している。また、ディスプレーサヨーク94bの両側部には、ディスプレーサピストン71の動作方向にガイドシャフト95bが設けられている。ディスプレーサヨーク94bは、リニアベアリングを介してガイドシャフト95bに設けている。ガイドシャフト95bは、ディスプレーサヨーク94bの動作方向をディスプレーサピストン71の動作方向に規制する。
ディスプレーサヨーク94bの長溝93bの内周面には2枚のプレート96b、97bを設けている。長溝93bのディスプレーサピストン71側の内周面には上側プレート96bが、長溝93bのディスプレーサピストン71と反対側の内周面には下側プレート97bが設けられている。ディスプレーサ用軸受92bは、上側プレート96bと下側プレート97bとを摺動面としている。
ディスプレーサヨーク94bにはアルミニウム合金を用い、プレート96b、97bには炭素鋼等を用いる。このように、プレート96b、97bを、ディスプレーサヨーク94bの材料よりも硬い材料で構成することで、プレート96b、97bのみをピストン用軸受92a外周壁面との接触面であるプレート96b、97bに摺動性を高めるための最適な材料、硬度、表面処理等を施すことで、耐摩耗性を高めることができる。さらに、万一、磨耗等で交換する場合もディスプレーサヨーク94bを交換することなく、プレート96b、97bのみの交換で済み、メンテナンス性のよいスターリングエンジンとなる。なお、ディスプレーサ用軸受92bにはボールベアリングを用いて外輪を回動する。
【0012】
次に、スコッチ・ヨーク機構を収容するクランクボックスについて、図2から図10を用いて説明する。
図9は、本実施例によるクランクボックスの斜視図、図10は、同クランクボックスをベースフランジに取り付けた状態を示す要部斜視図である。
図9に示すように、クランクボックス100は、クランクシャフト80を貫通させるための開口部101、102を形成した側板103、104と、スコッチ・ヨーク機構90のガイドシャフト95a、95bの固定面を形成する天板105及び底板106とによって形成されている。一方の側板103は、他方の側板104と対向する位置にあり、天板105は底板106と対向する位置にある。
天板105には、パワーピストン72の摺動空間となる開口部107を形成し、底板106には、開口部108を形成している。また、天板105には、一対の耳部109が設けられ、この耳部109にはベースフランジ取付孔110が形成されている。
また、天板105及び底板106には、ガイドシャフト取付孔111が形成されている。図5に示すように、ガイドシャフト取付孔111に、ガイドシャフト95a、95bが固定される。
また、図3及び図10に示すように、開口部101にはベアリングホルダ121が、開口部102にはベアリングホルダ122が固定される。そして、図8に示すクランクシャフト80の両端に備えたクランクシャフト軸受123、124を、それぞれベアリングホルダ121、122内に収めることで、クランクシャフト80がクランクボックス100に取り付けられる。
ガイドシャフト取付孔111へのガイドシャフト95a、95bの取り付けによって、図6に示すパワーピストン72側のスコッチ・ヨーク機構90aと、図7に示すディスプレーサピストン71側のスコッチ・ヨーク機構90bとをクランクボックス100に取り付ける。そして、図8に示すクランクシャフト80を挿入し、開口部101にはベアリングホルダ121を、開口部102にはベアリングホルダ122を取り付ける。このようにして、クランクボックス100にクランクシャフト80を取り付けた状態を図5に示す。
【0013】
次にクランクボックス100のベースフランジ40への取り付けについて説明する。
図10に示すように、クランクボックス100は、ベースフランジ40の他方の面に取り付けられる。また、シリンダ73は、フランジ部73aをベースフランジ40の他方の面に当接させボルト結合する。なお、クランクボックス100のベースフランジ40への取り付け前に、ベースフランジ40に、シリンダ73を取り付けておくことが好ましい。シリンダ73の一方の端部は、ベースフランジ40の一方の面よりも突出しており、クランクボックス100の組み付け状態では、クランクボックス100内に位置する。従って、シリンダ73をベースフランジ40に取り付けることで、クランクボックス100のベースフランジ40への取り付け調整を、シリンダ73を基準面として行うことができる。
クランクボックス100のベースフランジ40への取り付けは、ベースフランジ取付孔110にボルトを挿入して取り付けられる。
【0014】
次にクランクケースについて説明する。
図11は、クランクケースの一部断面斜視図である。
クランクケース胴部フランジ53には、ボルト孔53aが形成され、また、発電機接続フランジ55にも、ボルト孔55aが形成されている。
クランクケース50は、クランクケース胴部フランジ53をベースフランジ40の一方の面に、ボルト孔53aを用いてボルト固定する。また、発電機ケース60は、発電機接続フランジ55と発電機ケース側フランジ61とをボルト孔55aを用いてボルト固定する。
上記構成において、スタート時には発電機を動力源としてディスプレーサピストン71を動作させることで、ディスプレーサピストン71の一方の空間と他方の空間内の作動ガスが移動する。作動ガスは、加熱部10で加熱・膨張して一方の空間に導入され、冷却部30で冷却・収縮して他方の空間に導入されることで、一方の空間及び他方の空間内に圧力変動が生じる。この作動空間内の圧力変動によってパワーピストン72が動作することで出力を得ることができる。
【0015】
上記説明の通り、本実施例によれば、スコッチ・ヨーク機構90及びクランクシャフト80を高圧雰囲気下に維持するクランクケース50と、クランクシャフト軸受123、124及びガイドシャフト95a、95bを固定するクランクボックス100とを備え、クランクボックス100をクランクケース50とは別部材で構成し、スコッチ・ヨーク機構90をクランクボックス100内に収めるとともに、クランクシャフト80もクランクボックス100で支持する構成とし、クランクケース50は、単なるカバーとして機能させている。従って、耐圧構造をとらなければならないクランクケース50では、組立精度を必要とせず、組立精度が必要となるクランクボックス100は、耐圧構造とする必要がないため、クランクボックス100を精度良く製造できるとともに、組立精度を高めることができる。
また本実施例によれば、ディスプレーサピストン71とパワーピストン72とが摺動するシリンダ73と、シリンダ73を固定するベースフランジ40と、シリンダ73の外周部に配置する筒状の冷却部30とを備え、冷却部30の一方の端部に形成した冷却部用フランジ32をベースフランジ40の一方の面に固定し、クランクボックス100の天板105に形成した耳部109をベースフランジ40の他方の面に固定することで、ベースフランジ40を基準に精度を確保することができる。
また本実施例によれば、シリンダ73の一端側の外周面に冷却部30の内周面が当接し、シリンダ73の他端側の外周面に天板105に形成した開口部107の内周面が当接する。従って、シリンダ73をベースフランジ40の両面から突出させ、このシリンダ73の外周面に冷却部30の内周面とクランクボックス100の開口部107の内周面を当接させることで、それぞれの軸心調整を容易に行うことができる。
また本実施例によれば、クランクボックス100を、クランクシャフト80を貫通させるための開口部101、102を形成した一対の側板103、104と、ガイドシャフト95a、95bの固定面を形成する天板105及び底板106とによって形成し、天板105にはパワーピストン72の摺動空間となる開口部107を形成し、一対の側板103、104に設けた開口部101、102にはそれぞれベアリングホルダ121、122を固定し、クランクシャフト軸受123、124をベアリングホルダ121、122内に収めることで、クランクシャフト80をクランクボックス100に取り付けている。従って、クランクボックス100を直方体に形成し、直方体を形成するそれぞれの面を利用してクランクシャフト80やパワーピストン72を固定するため、それぞれの部材の取り付け角度のずれを最小限に抑えることができる。
また本実施例によれば、クランクケース50の胴部52側面には発電機接続筒部54を備え、発電機接続筒部54の端部には発電機接続フランジ55を設け、発電機ケース60の一端には発電機ケース側フランジ61を備え、発電機接続フランジ55と発電機ケース側フランジ61とを接続し、クランクシャフト80の一端を、カップリング81を介して発電機用シャフト62に接続している。従って、クランクシャフト80だけでなく発電機用シャフト62についてもクランクケース50に固定しないので、組立精度を高めることができるとともに組立作業を容易に行うことができる。
【0016】
なお、本実施例では、クランクボックス100とシリンダ73とを別部材として説明したが、クランクボックス100とシリンダ73とを同一部材で一体成型してもよい。クランクボックス100とシリンダ73とを同一部材で一体成型することで、組立作業を容易にし、組立精度を高めることができる。
また、本実施例では、クランクボックス100とベースフランジ40とを別部材として説明したが、クランクボックス100とベースフランジ40とを同一部材で一体成型してもよい。クランクボックス100とベースフランジ40とを同一部材で一体成型することで、組立作業を容易にし、組立精度を高めることができる。
また、クランクボックス100、ベースフランジ40、及びシリンダ73を同一部材で一体成型してもよい。クランクボックス100、ベースフランジ40、及びシリンダ73を同一部材で一体成型することで、組立作業を容易にし、組立精度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明のスターリングエンジンは、廃熱やバイオマスなどの熱源ガスを活用した発電装置や動力装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例によるスターリングエンジンの構成を示す斜視図
【図2】同スターリングエンジンの構成を示す一部断面斜視図
【図3】同スターリングエンジンの構成を示す側面断面図
【図4】本実施例によるスコッチ・ヨーク機構の構成を示す要部正面図
【図5】同スコッチ・ヨーク機構を示す要部斜視図
【図6】パワーピストンとクランクシャフトとの連結を示すスコッチ・ヨーク機構
【図7】ディスプレーサピストンとクランクシャフトとの連結を示すスコッチ・ヨーク機構の要部斜視図
【図8】クランクシャフトにおける連結を示すスコッチ・ヨーク機構の要部斜視図
【図9】本実施例によるクランクボックスの斜視図
【図10】同クランクボックスをベースフランジに取り付けた状態を示す要部斜視図
【図11】クランクケースの一部断面斜視図
【符号の説明】
【0019】
10 加熱部
11 ヒーター管
12 加熱部用フランジ
13 熱交換フィン
20 再生部
21 再生部用胴部
22、23 再生部用フランジ
30 冷却部
31 冷却部用胴部
32、33 冷却部用フランジ
40 ベースフランジ
50 クランクケース
51 エンコーダケース
52 胴部
53 クランクケース胴部フランジ
54 発電機接続筒部
55 発電機接続フランジ
60 発電機ケース
61 発電機ケース側フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレーサピストンとパワーピストンとを備え、
前記ディスプレーサピストンと前記パワーピストンとをスコッチ・ヨーク機構を介してクランクシャフトに連結し、
前記クランクシャフトの両端にはクランクシャフト軸受を備え、
前記スコッチ・ヨーク機構を、
前記クランクシャフトに偏心して取り付けられたクランクピンと、
前記クランクピンのまわりに設けた軸受と、
長溝を形成したヨークと、
前記ヨークの動作方向を前記ディスプレーサピストン及び前記パワーピストンの動作方向に規制するガイドシャフトとで構成し、
前記軸受が前記長溝内を転がることで前記ヨークが前記ガイドシャフトに沿って往復動するスターリングエンジンであって、
前記スコッチ・ヨーク機構及び前記クランクシャフトを高圧雰囲気下に維持するクランクケースと、
前記クランクシャフト軸受及び前記ガイドシャフトを固定するクランクボックスとを備え、
前記クランクボックスを、前記クランクケースとは別部材で構成したことを特徴とするスターリングエンジン。
【請求項2】
前記ディスプレーサピストンと前記パワーピストンとが摺動するシリンダと、前記シリンダを固定するベースフランジと、前記シリンダの外周部に配置する筒状の冷却部とを備え、
前記冷却部の一方の端部に形成した冷却部用フランジを前記ベースフランジの一方の面に固定し、
前記クランクボックスの天板に形成した耳部を前記ベースフランジの他方の面に固定することを特徴とする請求項1に記載のスターリングエンジン。
【請求項3】
前記シリンダの一端側の外周面に前記冷却部の内周面が当接し、前記シリンダの他端側の外周面に前記天板に形成した開口部の内周面が当接することを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項4】
前記クランクボックスと前記シリンダとを同一部材で一体成型したことを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項5】
前記クランクボックスと前記ベースフランジとを同一部材で一体成型したことを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項6】
前記クランクボックス、前記ベースフランジ、及び前記シリンダを同一部材で一体成型したことを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項7】
前記クランクボックスを、前記クランクシャフトを貫通させるための開口部を形成した一対の側板と、前記ガイドシャフトの固定面を形成する天板及び底板とによって形成し、前記天板には、前記パワーピストンの摺動空間となる開口部を形成し、一対の前記側板に設けた前記開口部にはそれぞれベアリングホルダを固定し、前記クランクシャフト軸受を、前記ベアリングホルダ内に収めることで、前記クランクシャフトを前記クランクボックスに取り付けることを特徴とする請求項1に記載のスターリングエンジン。
【請求項8】
前記クランクケースの胴部側面には発電機接続筒部を備え、前記発電機接続筒部の端部には発電機接続フランジを設け、発電機ケースの一端には発電機ケース側フランジを備え、前記発電機接続フランジと前記発電機ケース側フランジとを接続し、前記クランクシャフトの一端を、カップリングを介して発電機用シャフトに接続することを特徴とする請求項1に記載のスターリングエンジン。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−62906(P2009−62906A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232265(P2007−232265)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(506065725)株式会社eスター (17)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)