説明

スターリングサイクル機関

【課題】組立作業効率を低下させずに小型化させることができるスターリングサイクル機関を提供する。
【解決手段】内側コア20の一端側に掛部としてのフランジ部20Bを形成し、このフランジ部20Bに対応して押さえ部材としての押さえ板26を設けると共に、シリンダ7の基端側に一体形成されたマウント25の他側面25Bと前記押さえ板26とで、前記フランジ部20Bを挟持固定して、前記シリンダ7と内側コア20とを略同軸状に配置することにより、前記シリンダ7と内側コア20とで熱膨張に差が生じても、不純物ガスを発生させることなく、前記シリンダ7や内側コア20を歪ませたり、前記内側コア20にガタつきを生じさせたりしにくくすることができるだけでなく、従来、前記内側コア20の固定に必要であった前記シリンダ7の基端側部分を不要として、駆動機構16の外径、ひいてはケーシング1の外径を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーピストン型のスターリングサイクル機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスターリングサイクル機関としては、円筒部と胴部から成るケーシングを設け、この胴部内に駆動機構を設けるとともに、前記ケーシング内にシリンダを設けたものがあった。そして、この種のスターリングサイクル機関は、前記シリンダ内に、前記駆動機構によって往復駆動されるピストン、及びこのピストンに連動してこのピストンと位相差をもって往復駆動するディスプレイサーを設けていた。さらに、前記駆動機構の固定子である導磁部(本願発明の内側コアに相当する)を、前記シリンダの外周に固定していた。なお、前記導磁部は強磁性体の鋼製である。また、前記駆動機構の固定子である積層コア(本願発明の外側コアに相当する)及び電磁コイルを、前記シリンダのフランジ部に固定していた。ここで、前記シリンダの材質は、一般的にはアルミニウム合金である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3769751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなスターリングサイクル機関は、アルミニウム合金と鋼との熱膨張係数の差によって、前記導磁部にガタつきが生じたり、前記シリンダに歪みが生じたりする虞があった。そして、前記導磁部にガタつきが生じると、振動や騒音の原因となるばかりでなく、前記導磁部やシリンダが磨耗して故障の原因になる虞もあった。さらに、前記導磁部のガタつきを防止するため、前記導磁部を接着剤で固定することも行われていたが、組立作業性が悪化するばかりでなく、長期の使用によって接着剤からガスが発生し、特に、高性能の冷凍機では、このガスが液化したり凍結したりして性能を低下させるという問題もあった。一方、前記シリンダに歪みが生じると、このシリンダと前記ピストンの隙間が小さいので、僅かな歪みでも前記ピストンの動作障害に繋がる虞があった。さらに、前記シリンダの歪みを抑えるために、このシリンダの肉厚を厚くすると、その分、前記ケーシングの外径の増大に繋がるという問題もあった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、組立作業効率を低下させずに小型化させることができるスターリングサイクル機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のスターリングサイクル機関は、シリンダと、このシリンダ内を往復動可能なピストンと、固定子と可動子とで構成される駆動機構とを有し、前記可動子が永久磁石を有して構成され、前記可動子が前記ピストンに固定されると共にこのピストンの外側に配置され、前記固定子が、筒状の内側コアと外側コアと電磁コイルとを有して構成され、前記内側コアが前記可動子の内側に配置されると共に、前記外側コア及び前記電磁コイルが前記可動子の外側に配置されるスターリングサイクル機関において、前記内側コアの一端側に掛部を形成し、この掛部に対応して押さえ部材を設けると共に、前記シリンダの端部と前記押さえ部材とで前記内側コアの掛部を挟持固定することで、前記シリンダと前記内側コアとを略同軸上に配置したものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のスターリングサイクル機関は、請求項1において、前記押さえ部材を弾性部材とし、前記押さえ部材が弾性変形した状態で前記掛部に当接するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載のスターリングサイクル機関は、前記シリンダと内側コアとの材質の差によって熱膨張に差が生じても、不純物ガスを発生させずに前記内側コアにガタつきや歪みを生じさせにくくすることができるばかりでなく、従来、前記内側コアの固定のために必要であった前記シリンダの基端側部分を不要として、前記駆動機構の外径、ひいては前記ケーシングの外径を小さくすることができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載のスターリングサイクル機関は、前記押さえ部材を弾性変形させた状態で前記掛部に当接させて、前記シリンダの端部と押さえ部材とで前記内側コアの掛部を挟持固定すれば、前記シリンダが前記内側コアよりも大きく膨張しても、前記押さえ部材で前記掛部を押さえ付け続けることができるので、前記内側コアをガタつかせないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1を示すスターリングサイクル機関の縦断面図である。
【図2】同、スターリングサイクル機関の要部の横断面図である。
【図3】同、図1における要部の拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例2を示すスターリングサイクル機関の要部の拡大断面図である。
【図5】同、スターリングサイクル機関の要部の横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例1について、添付図を参照して説明する。なお、以下の説明において、図1及び図3における上方を先端側、下方を基端側と定義する。図1乃至図3において、1は略円筒状に形成された円筒部2と、胴部3と、連結部4と、吸熱ブロック5と、ハーメチックシール6とで構成されるケーシングである。前記円筒部2、胴部3、及び連結部4は、ステンレス鋼等からなる。また、前記ハーメチックシール6は、鋼等からなる。一方、前記吸熱ブロック5は、銅等からなる。なお、前記円筒部2は両端が開放しており、その先端部2Aの外周側に雄螺子2Bを形成していると共に、先端側2Aの断面が正確に円形となるように内面を切削加工している。これによって、前記円筒部2の先端側2Aの内面が、シリンダとして作用する。また、前記吸熱ブロック5には、前記雄螺子2Bに対応して、雌螺子5Aが形成されている。そして、略リング状の前記連結部4を介して、前記円筒部2と胴部3とを鑞付け等で連結させ、前記胴部3とハーメチックシール6とを鑞付け等で連結すると共に、前記円筒部2の先端部と吸熱ブロック5とを、前記雄螺子2Bと雌螺子5Aを螺合、鑞付けすることで、前記ケーシング1は構成されている。なお、前記円筒部2の開放した先端は、前記吸熱ブロック5によって封止されている。また、前記ハーメチックシール6には、後述する電源端子38が、ガラス等によって絶縁状態で固定されている。
【0013】
前記円筒部2の基端側の内部には、前記連結部4の内部まで延びるシリンダ7が、前記円筒部2に対して同軸状(軸線Z)に挿入されて設けられている。そして、前記シリンダ7における前記胴部3側には、後述するマウント部25及び接続用腕部30が一体に成形されている。なお、前記シリンダ7、マウント部25、及び接続用腕部30は、アルミニウム合金等を用いてダイカスト等の鋳造を行った後、切削加工したものである。そして、前記シリンダ7の先端側及び前記円筒部2の先端部2Aの内側には、中空円筒状のディスプレイサー8が軸線Z方向に摺動可能に収容されている。また、前記ディスプレイサー8の先端と吸熱ブロック5との間には、膨張室Eが形成されている。そして、前記ディスプレイサー8の先端に装着された蓋部材9には、複数の通気孔8Aが形成されている。これらの通気穴8Aによって、前記ディスプレイサー8の内部と前記膨張室Eとが連通されている。また、前記ディスプレイサー8の基端部分にも、複数の通気孔8Bが形成されている。また、前記ディスプレイサー8の内部には、再生器10が設けられている。そして、前記円筒部2内において、前記シリンダ7の内外を連通する第一の連通孔11と第二の連通孔12が、前記シリンダ7自体に形成されている。また、前記第一の連通孔11と第二の連通孔12との間において、前記円筒部2の内面と前記シリンダ7の外面との間に、排熱フィン13が設けられている。そして、前記膨張室Eから、前記通気孔8A、再生器10、通気孔8B、第一の連通孔11、排熱フィン13、及び第二の連通孔12を通って、前記シリンダ7内の圧縮室Cに至る経路14が形成されている。更に、前記円筒部2の基端部2Cの内部から前記連結部4の内部にかけて、前記シリンダ7の基部側の内側には、ピストン15の先端部が軸線Z方向に摺動可能に収容されている。そして、前記ピストン15の基端部は、駆動機構16と同軸状(軸線Z)に連結されている。なお、前記駆動機構16は、前記ピストン15の基端に、接続体15Aによって接続されていると共に、前記ピストン15の基端側の外周に同軸状に延設された短筒状の枠17と、この枠17の一端に固定された円筒状の永久磁石18と、この永久磁石18の外周に近接して設けられた環状の電磁コイル19と、前記永久磁石18の内周に近接して設けられた内側コア20とで構成されている。
【0014】
前記シリンダ7の基端側には、延設部7Aが軸線Z方向に延設して形成されている。また、前記内側コア20の先端部の内側には、前記延設部7Aに対応して、段差部20Aが形成されている。そして、前記延設部7Aと段差部20Aとによって、前記内側コア20が前記シリンダ7に対し位置決めされている。
【0015】
また、前記接続体15Aには、前記ピストン15の動作を制御するための、複数の第一の板バネ21が接続されている。さらに、前記ディスプレイサー8の基端側には、このディスプレイサー8の動作を制御するためのロッド22の一端が接続されていると共に、このロッド22の他端には、前記第二の板バネ23が接続されている。なお、前記ロッド22は、前記ピストン15を貫通して延びている。また、前記各板バネ21,23は、前記胴部3内において、前記内側コア20の基端部よりも基端側に配置されていると共に、前記第一の板バネ21よりも、前記第二の板バネ23の方が基端側に配置されている。なお、前記電磁コイル19の周囲には、外側コア24が設けられている。この外側コア24は、適宜形状の電磁鋼板を複数枚積層することで形成されている。一方、前記内側コア20は、絶縁体(例えば合成樹脂等)で予め被覆された強磁性体である鉄粉を適宜形状に成形した後、焼結して形成したものである。なお、前記外側コア24を、前記内側コア20と同様の手法で構成しても良い。そして、前記駆動機構16は、前記電磁コイル19、内側コア20及び外側コア24によって構成される固定子16Aと、前記枠17と永久磁石18によって構成される可動子16Bを有する。
【0016】
また、前記シリンダ7の基端部に、フランジ状のマウント25が前記シリンダ7と一体且つ同軸状に突出形成されている。このマウント25は、その先端側の一側面25Aが前記連結部4の取付部4Aに当接し、この取付部4Aに螺子止めされるように構成されている。一方、前記マウント25の基端側の他側面25Bには、前記延設部7Aの周囲に、環状の凹溝25Cが形成されている。そして、この凹溝25Cに、前記内側コア20の先端部の外側に形成された掛部としてのフランジ部20Bが、軸線Z方向に挿入可能となっている。なお、前記フランジ部20Bの軸線Z方向の厚さ寸法L1は、前記凹溝25Cの軸線Z方向の深さ寸法L2よりも、僅かに大きく形成されている(L1>L2)。このため、前記凹溝25Cに挿入された前記フランジ部20Bは、前記他側面25Bよりも軸線Z方向の基端側に僅かに突出する。また、前記他側面25Bにおける凹溝25Cの外側には、前記シリンダ7及び内側コア20とほぼ同軸状に配置されたリング状の押さえ部材としての押さえ板26がビス27により螺子止めされている。そして、前記押さえ板26の内径D1は、前記凹溝25Cの外径D2及びフランジ部20Bの外径D3より小さく(D1<D2,D1<D3)、且つ前記内側コア20の外径D4より僅かに大きく形成されている(D1>D4)。ここで、前記押さえ板26は、ばね鋼やステンレス鋼等の弾性部材から形成されている。また、前記外側コア24の基端側には、固定リング28が当接しており、この固定リング28と前記マウント25とで前記外側コア24を挟持し、ビス29で締め付けることによって、前記外側コア24及び電磁コイル19が前記マウント25に固定される。更に、前記マウント25の他側面25Bから、複数の接続用腕部30が前記シリンダ7の軸線Z方向と略平行に突設されている。なお、前記接続用腕部30は、その基端30Aにおいて前記マウント25と一体に形成されている。また、前記接続用腕部30の先端面30Bは、前記シリンダ7の軸線Z方向と直交するように同一面上に形成されており、この先端面30Bに雌螺子を有する螺子孔30Cが前記シリンダ7の軸線Z方向と平行に形成されている。そして、このように前記シリンダ7に対してマウント25及び接続用腕部30が一体に形成されていることで、これらシリンダ7、マウント25及び接続用腕部30の精度を高めることができる。
【0017】
前記接続用腕部30の先端面30Bには、前記第一の板バネ21が当接する。この第一の板バネ21は、前記先端面30Bに当接した状態で、前記接続用腕部30とスペーサー31との間で挟持される。なお、前記スペーサー31は、その本体31Aが正六角柱状に形成されており、その一端に前記螺子孔30Cの雌螺子と螺合する雄螺子31Bが前記本体31Aと同軸に形成されていると共に、その他端に雄螺子31Cが前記本体31Aと同軸に形成されている。そして、前記第一の板バネ21の外周部に形成された螺子孔21Aを介して、前記スペーサー31の一端の雄螺子31Bを、前記接続用腕部30の螺子孔30Cの雌螺子と螺合させることで、前記第一の板バネ21が前記接続用腕部30とスペーサー31との間で挟持される。このとき、前記スペーサー31の本体31Aが正六角柱状に形成されているので、スパナ等で締め付けることで簡単に前記接続用腕部30に取り付けられる。また、複数の前記先端面30Bが前記シリンダ7の軸線Z方向と直交するように同一面上に形成されているため、これらの先端面30Bに当接する前記第一の板バネ21も、前記シリンダ7の軸線Z方向に対して直交することになる。
【0018】
更に、前記スペーサー31を複数の前記接続用腕部30にそれぞれ取り付けた状態において、前記第二の板バネ23の外周部に形成された螺子孔23Aを介して、前記スペーサー31の雄螺子31Cにナット32を螺合させることで、前記第二の板バネ23が前記スペーサー31に固定される。そして、このように前記接続用腕部30に対してスペーサー31を取り付けることで、前記第一の板バネ21を挟持すると共に、前記スペーサー31に前記第二の板バネ23を取り付けるように構成することで、独立した前記第一の板バネ21及び第二の板バネ23を前記シリンダ7に対して簡単に固定することができるばかりでなく、これらの板バネ21,23が共通の前記接続用腕部30に対して取り付けられることで、前記第一の板バネ21及び第二の板バネ23の固定のための構造を単純化することができ、スターリングサイクル機関全体を小型化することができる。また、前記接続用腕部30の先端面30Bに雌螺子を有する螺子孔30Cを形成し、この螺子孔30Cと螺合する雄螺子31Bを前記スペーサー31に形成したことで、前記第一の板バネ21と第二の板バネ23を順次固定してゆくことができるので、これら第一の板バネ21及び第二の板バネ23をより簡単に前記シリンダ7に対して固定することができる。
【0019】
なお、図中33は、前記ケーシング1の他端に設けた振動吸収ユニットであり、前記シリンダ7の軸線Z上に配置された連結部33Aを介して同軸状に複数の板バネ34とバランスウエイト35が重なるように配置されている。また、図中36は、前記駆動機構16に電力を供給する電源コネクタであり、37は電源コードである。そして、前記電源コネクタ36は、前記ハーメチックシール6に絶縁状態で固定された電源端子38に接続される。さらに、図中39は、前記排熱フィン13から前記円筒部2を介して移動した熱を外部へ排出するための、円筒形状の排熱部材である。また、図中40は、前記経路14と背部空間とを隔離するためのOリングである。
【0020】
次に、本実施例のスターリングサイクル機関の製造工程について説明する。まず、前記円筒部2と連結部4と吸熱ブロック5とを接続することで、予め一体化しておく。また、前記胴部3とハーメチックシール6とを接続することで、予め一体化しておく。そして、前記シリンダ7は、前記マウント25の一側面25Aを前記連結部4の取付部4Aに当接させてこの取付部4Aに対して螺子止めすることで、前記ケーシング1に対して固定される。この際、前記シリンダ7の外面が、前記円筒部2の基端部2Cの内面に案内されて挿入されることで、前記シリンダ7を円筒部2に対して同軸に配置することができる。また、前記延設部7Aと段差部20Aによって、前記シリンダ7に対し前記内側コア20を位置決めした状態で、前記フランジ部20Bを前記凹溝25Cに挿入し、前記マウント25の他側面25Bに前記押さえ板26をビス27により螺子止めし、前記凹溝25Cと押さえ板26との間で前記フランジ部20Bを軸線Z方向に挟持して固定する。また、前記シリンダ7と一体に形成されたマウント25に対して、前記固定リング28及びビス29によって、前記電磁コイル19及び外側コア24を固定する。このようにして、前記駆動機構16の固定子16Aが前記シリンダ7に固定される。また、前記永久磁石18がインサート成形された前記枠17を前記ピストン15の基端と前記接続体15Aとで挟持することで、前記駆動機構16の可動子16Bが前記ピストン15に固定される。更に、前記シリンダ7内に前記ディスプレイサー8、ピストン15等を組み込み、このピストン15の基端の接続体15Aに取り付けられた前記第一の板バネ21を前記接続用腕部30とスペーサー31との間で挟持して固定すると共に、前記ディスプレイサー8に接続されたロッド22の基端に接続された前記第二の板バネ23を前記スペーサー31の他端に固定する。その後に、前記胴部3と連結部4とを接続することで一体化し、予め組み立てられた前記振動吸収ユニット33を前記胴部3に取り付ける。
【0021】
次に、本実施例の作用について説明する。前記構成により、前記電磁コイル19に交流電流を流すと、この電磁コイル19から交番磁界が発生して前記外側コア24で集中し、この交番磁界によって、前記永久磁石18を軸線Z方向に往復動させる力が生じる。この力によって、前記永久磁石18が固定された枠17に接続された前記ピストン15が、前記シリンダ7内を軸線Z方向に往復動する。前記ピストン15が前記ディスプレイサー8に近付く方向に移動すると、前記ピストン15とディスプレイサー8との間に形成された圧縮室C内の気体が圧縮されて、前記第二の連通孔12、排熱フィン13、第一の連通孔11、通気孔8B、再生器10、及び通気孔8Aを通って、前記吸熱ブロック5内の膨張室Eに至ることで、前記ディスプレイサー8が前記ピストン15に近付く方向に所定の位相差をもって押し下げられる。一方、前記ピストン15が前記ディスプレイサー8から遠ざかる方向に移動すると、前記圧縮室Cの内部が負圧となり、前記膨張室E内の気体が、前記通気孔8A、再生器10、通気孔8B、第一の連通孔11、吸熱フィン13、及び第二の連通孔12を通って、前記圧縮室Cに還流することで、前記ディスプレイサー8が前記ピストン15から遠ざかる方向に所定の位相差をもって押し上げられる。このような工程中において、二つの等温変化と等体積変化とからなる可逆サイクルが行われることによって、前記膨張室Eの近傍は低温となり、一方、前記圧縮室Cの近傍は高温となる。そして、このように前記ピストン15及びディスプレイサー8が往復動すると、前記振動吸収ユニット33で振動が吸収されるとはいえ、僅かな振動が残る可能性があるが、前述した通り、前記シリンダ7とマウント25と接続用腕部30とが一体に形成されていることによって、振動によってこれらシリンダ7とマウント25と接続用腕部30の結合が緩むなどということが起こり得ず、長期に渡って強度及び精度が保たれる。
【0022】
また、前記フランジ部20Bの軸線Z方向の厚さ寸法L1が、前記凹溝25Cの軸線Z方向の深さ寸法L2より僅かに大きく形成され(L1>L2)ることで、前記凹溝25Cに挿入された前記フランジ部20Bが、前記マウント25の他側面25Bより僅かに突出し、前記押さえ板26を前記マウント25の他側面25Bに前記ビス27により螺子止めした場合に、前記押さえ板26の内周側が前記フランジ部20Bに押されて前記他側面25Bから離れる方向に弾性変形する。このため、前記フランジ部20Bには、前記押さえ板26により、前記凹溝25Cへ軸線Z方向に押し付けようとする弾性復元力Fが付与される。
【0023】
このように、前記内側コア20が、前記マウント25の基端に前記押さえ板26の弾性力によって保持されることで、前記シリンダ7及びマウント25が前記内側コア20よりも大きく膨張しても、前記押さえ板26で前記フランジ部20Bを押さえ付け続けることができるので、前記シリンダ7や内側コア20を歪ませたり、前記内側コア20をガタつかせたりしないようにすることができる。また、前記内側コア20が、前記マウント25の基端に前記押さえ板26の弾性力によって保持されることで、経時変化によって不純物ガスが発生することもない。また、前記内側コア20とピストン15とが隣接することで、前記内側コア20とピストン15との間から前記シリンダ7を排除した構成とすることができるので、前記駆動機構16、ひいては前記ケーシング1の外径寸法の増加を抑えることができる。更に、前記延設部7Aの厚さ寸法よりも前記段差部20Aの深さ寸法を極僅かに小さくすることによって、前記シリンダ7の内径よりも前記内側コア20の内径を極僅かに大きくする程度に抑えることができるので、前記内側コア20の外径を小さくして、前記駆動機構16、ひいては前記ケーシング1の外径を小さくすることができる。
【0024】
以上のように、本実施例のスターリングサイクル機関は、シリンダ7内を往復動可能なピストン15と、固定子16Aと可動子16Bとで構成される駆動機構16とを有し、前記可動子16Bが永久磁石18を有して構成され、前記可動子16Bが前記ピストン15に固定されると共にこのピストン15の外側に配置され、前記固定子16Aが、筒状の内側コア20と外側コア24と電磁コイル19とを有して構成され、前記内側コア20が前記可動子16Bの内側に配置されると共に前記外側コア24及び前記電磁コイル19が前記永久磁石18の外側に配置されるスターリングサイクル機関において、前記内側コア20の一端側に掛部であるフランジ部20Bを形成し、このフランジ部20Bに対応して押さえ部材である押さえ板26を設けると共に、前記シリンダ7の端部である前記フランジ部25の他側面25Bと前記押さえ板26とで、前記導磁部20のフランジ部20Bを挟持固定することで、前記シリンダ7と前記内側コア20とを略同軸上に配置している。
【0025】
この場合、前記シリンダ7と内側コア20との材質の差によって熱膨張に差が生じても、不純物ガスを発生させることなく、前記シリンダ7や内側コア20を歪ませたり前記内側コア20にガタつきを生じさせたりしにくくすることができるだけでなく、従来、前記内側コア20の固定のために必要であったシリンダ7の基端側部分を不要として、前記駆動機構16の外径、ひいては前記ケーシング1の外径を小さくすることができる。
【0026】
また、本実施例のスターリングサイクル機関は、前記押さえ板26を弾性部材とし、この押さえ板26が弾性変形した状態で前記フランジ部20Bに当接するものとすることにより、前記シリンダ7と一体形成された前記マウント25の他側面25Bと押さえ板26とで前記内側コア20のフランジ部20Bを挟持固定すれば、前記シリンダ7やマウント25が前記内側コア20よりも大きく膨張しても、前記押さえ板26で前記フランジ部20Bを押さえ付け続けて、前記内側コア20をガタつかせないようにすることができる。
【実施例2】
【0027】
本発明の実施例2について、図4及び図5を参照して説明する。なお、実施例1と同様に、図4における上方を先端側、下方を基端側と定義する。この実施例2は、シリンダ41と内側コア42と押さえ部材としての押さえ板43以外は、実施例1と共通する。前記シリンダ41の基端側には、延設部41Aが軸線Z方向に延設して形成されている。また、前記内側コア42の先端部の内側には、前記延設部41Aに対応して、段差部42Aが形成されている。そして、前記延設部41Aと段差部42Aとによって、前記内側コア42が前記シリンダ41に対し位置決めされている。また、前記シリンダ41の基端部に、フランジ状のマウント44が前記シリンダ41と一体且つ同軸状に突出形成されている。このマウント44は、その先端側の一側面44Aが、ケーシング1を構成する連結部4の取付部4Aに当接し、この取付部4Aに螺子止めされるように構成されている。一方、前記マウント44の基端側の他側面44Bには、前記延設部41Aの周囲に、環状の凹溝44Cが形成されている。そして、この凹溝44Cに、前記内側コア42の先端部42Bが、軸線Z方向に挿入可能となっている。また、前記内側コア42の先端側の外周には、掛部としての凹溝45が形成されている。なお、前記内側コア42の先端から前記凹溝45の先端側壁45Aまでの軸線Z方向の寸法M1は、前記凹溝44Cの軸線Z方向の深さ寸法M2よりも、僅かに大きく形成されている(M1>M2)。このため、前記凹溝44Cに前記内側コア42の先端部42Bが挿入された状態では、前記内側コア42の凹溝45の先端側壁45Aは、前記他側面44Bよりも軸線Z方向の基端側に僅かに突出する。また、前記他側面44Bにおける前記凹溝44Cの基端側には、前記シリンダ41及び内側コア42と同軸状に配置されたリング状の前記押さえ板43が、ビス27により螺子止めされている。そして、前記押さえ板43の内径N1は、前記凹溝44Cの外径N2及び前記内側コア42の先端部42Bの外径N3より小さく(N1<N2,N1<N3)、且つ前記凹溝45の内径N4とほぼ等しく形成されている(N1=N4)。ここで、前記押さえ板43は、ばね鋼やステンレス鋼等の弾性部材から形成されていると共に、複数に分割可能に形成されている。
【0028】
そして、前記延設部41Aと段差部42Aによって、前記シリンダ41に対し前記内側コア42を位置決めした状態で、前記先端部42Bを前記凹溝44Cに挿入し、更に、分割された前記押さえ板43の内周部分を前記凹溝45に挿入した状態で、前記押さえ板43を前記ビス27により螺子止めし、前記凹溝44Cと押さえ板43との間で前記内側コア42の先端から前記凹溝45の先端側壁45Aまでを軸線Z方向に挟持して固定する。
【0029】
このように、前記内側コア42の先端から前記凹溝45の先端側壁45Aまでの軸線Z方向の寸法M1が、前記凹溝44Cの軸線Z方向の深さ寸法M2より僅かに大きく形成され(M1>M2)ることで、前記凹溝44Cに前記内側コア42の先端部42Bが挿入された状態では、前記内側コア42の凹溝45の先端側壁45Aが、前記他側面44Bより僅かに突出するため、複数の前記押さえ板43を前記マウント44の他側面44Bに前記ビス27により螺子止めした場合に、複数の前記押さえ板43の内周側が前記凹溝45の先端側壁45Aに押されて前記他側面44Bから離れる方向に弾性変形する。このため、前記凹溝45の先端側壁45Aには、複数の前記押さえ板43により、前記凹溝44Cへ軸線Z方向に押し付けようとする弾性復元力Fが付与される。
【0030】
このように、前記内側コア42が、前記マウント44の基端に複数の前記押さえ板43の弾性力によって保持されることで、前記シリンダ41及びマウント44が前記内側コア42よりも大きく膨張しても、複数の前記押さえ板43で前記凹溝45の先端側壁45Aを押さえ付け続けることができるので、前記シリンダ41や内側コア42を歪ませたり、前記内側コア42をガタつかせたりしないようにすることができる。また、前記内側コア42が、前記マウント44の基端に複数の前記押さえ板43の弾性力によって保持されることで、経時変化によって不純物ガスが発生することもない。また、前記内側コア42とピストン15とが隣接することで、前記内側コア42とピストン15との間から前記シリンダ41を排除した構成とすることができるので、駆動機構16、ひいては前記ケーシング1の外径寸法の増加を抑えることができる。更に、前記延設部41Aの厚さ寸法よりも前記段差部42Aの深さ寸法を極僅かに小さくすることによって、前記シリンダ41の内径よりも前記内側コア20の内径を極僅かに大きくする程度に抑えることができるので、前記内側コア42の外径を小さくして、前記駆動機構16、ひいては前記ケーシング1の外径を小さくすることができる。
【0031】
以上のように、本実施例のスターリングサイクル機関は、シリンダ41内を往復動可能なピストン15と、固定子16Aと可動子16Bとで構成される駆動機構16とを有し、前記可動子16Bが永久磁石18を有して構成され、前記可動子16Bが前記ピストン15に固定されると共にこのピストン15の外側に配置され、前記固定子16Aが、筒状の内側コア42と外側コア24と電磁コイル19とを有して構成され、前記内側コア42が前記可動子16Bの内側に配置されると共に前記外側コア24及び前記電磁コイル19が前記永久磁石18の外側に配置されるスターリングサイクル機関において、前記内側コア42の一端側に掛部である凹溝45を形成し、この凹溝45に対応して押さえ部材である押さえ板43を複数設けると共に、前記シリンダ41の端部である前記フランジ部44の他側面44Bと複数の前記押さえ板43とで、前記内側コア42の先端から前記凹溝45の先端側壁45Aまでを挟持固定することで、前記シリンダ41と前記内側コア42とを略同軸上に配置している。
【0032】
この場合、前記シリンダ41と内側コア42との材質の差によって熱膨張に差が生じても、不純物ガスを発生させることなく、前記シリンダ41や内側コア42を歪ませたり前記内側コア42にガタつきを生じさせたりしにくくすることができるだけでなく、従来、前記内側コア42の固定のために必要であったシリンダ41の基端側部分を不要として、前記駆動機構16の外径、ひいては前記ケーシング1の外径を小さくすることができる。
【0033】
また、本実施例のスターリングサイクル機関は、複数の前記押さえ板43を弾性部材とし、これらの押さえ板43が弾性変形した状態で前記凹溝45の先端側壁45Aに当接するものとすることにより、前記シリンダ41と一体形成された前記マウント44の他側面44Bと複数の押さえ板43とで前記内側コア42の先端から前記凹溝45の先端側壁45Aまでを挟持固定すれば、前記シリンダ7やマウント44が前記内側コア42よりも大きく膨張しても、複数の前記押さえ板43で前記凹溝45の先端側壁45Aを押さえ付け続けて、前記内側コア42をガタつかせないようにすることができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施例においては、掛部と押さえ部材を何れも環状に形成したが、要は、シリンダの基端側と押さえ部材とで掛部を挟持できればよいので、掛部と押さえ部材が環状に形成されなくても良い。
【符号の説明】
【0035】
7,41 シリンダ
15 ピストン
16 駆動機構
16A 固定子
16B 可動子
18 永久磁石
19 電磁コイル
20,42 内側コア
20B フランジ部(掛部)
24 外側コア
26,43 押さえ板(押さえ部材)
45 凹溝(掛部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、このシリンダ内を往復動可能なピストンと、固定子と可動子とで構成される駆動機構とを有し、前記可動子が永久磁石を有して構成され、前記可動子が前記ピストンに固定されると共にこのピストンの外側に配置され、前記固定子が、筒状の内側コアと外側コアと電磁コイルとを有して構成され、前記内側コアが前記可動子の内側に配置されると共に、前記外側コア及び前記電磁コイルが前記可動子の外側に配置されるスターリングサイクル機関において、
前記内側コアの一端側に掛部を形成し、この掛部に対応して押さえ部材を設けると共に、前記シリンダの端部と前記押さえ部材とで前記内側コアの掛部を挟持固定することで、前記シリンダと前記内側コアとを略同軸上に配置したものとすることを特徴とするスターリングサイクル機関。
【請求項2】
前記押さえ部材を弾性部材とし、前記押さえ部材が弾性変形した状態で前記掛部に当接するものとすることを特徴する請求項1記載のスターリングサイクル機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68362(P2013−68362A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207252(P2011−207252)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000109325)ツインバード工業株式会社 (176)