説明

スチルベン誘導体、発光素子、および発光装置

【課題】青色として優れた色純度を与える新規物質、およびこれを用いた発光素子、並びに発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】スチルベン誘導体は下記一般式(1)に示す構造を有するものである。但し、一般式(1)において、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基を表し、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Arは、炭素数6〜25のアリール基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチルベン誘導体、スチルベン誘導体を用いた発光素子、および発光素子を
有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型軽量、高速応答性などの特徴を有する発光素子は、次世代のフラットパネルディス
プレイへの応用が期待されている。また、発光素子をマトリクス状に配置した発光装置は
、従来の液晶表示装置と比較して、視野角が広く視認性が優れる点に優位性があると言わ
れている。
【0003】
発光素子は、一対の電極(陽極と陰極)間に発光物質を含む層を挟んでなり、その発光
機構は、両電極間に電圧を印加した際に陽極から注入される正孔(ホール)と、陰極から
注入される電子が、発光物質を含む層の発光層において再結合することにより発光中心で
再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出
して発光するといわれている。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流
励起型の発光素子と呼ばれる。なお、発光物質が形成する励起状態の種類としては、一重
項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励
起状態からの発光が燐光と呼ばれている。
【0004】
発光素子の発光波長は、発光素子中に含まれる発光分子の励起状態から基底状態のエネ
ルギー差、すなわちバンドギャップによって決定される。従って、発光分子の構造を工夫
することで、種々の発光色を得ることが可能である。そして光の三原色である赤、青、緑
の発光が可能な発光素子を作製し、これを用いることで発光装置のフルカラー化が実現さ
れる。
【0005】
しかし、信頼性が高く、かつ色純度に優れた発光素子の実現が困難であるという問題を
有しているのが現状である。近年の材料開発の結果、赤色、および緑色の発光素子に関し
ては、高い信頼性と優れた色純度が達成されているものの、特に青色の発光素子に関して
は、十分な信頼性と色純度を持つ発光素子の実現されておらず、多くの研究がなされてい
る(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−75580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、青色として優れた色純度を与える
新規物質、およびこれを用いた発光素子、並びに発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成は、新規なスチルベン誘導体を提供するものである。なお、本発明のスチ
ルベン誘導体は下記一般式(1)に示す構造を有するものである。
【0009】
【化01】

【0010】
一般式(1)において、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6
〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても
良い。また、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基
を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。また、R
は、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Arは、炭素数6〜25
のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。
【0011】
また、本発明のスチルベン誘導体は、下記一般式(2)に示す構造を有するものである

【0012】
【化02】

【0013】
一般式(2)において、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6
〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても
良い。また、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基
を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。また、R
は、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、R〜R10は、水素、炭
素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基を表し、このアリール基は
炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。
【0014】
また、本発明のスチルベン誘導体は、下記一般式(3)に示す構造を有するものである

【0015】
【化03】

【0016】
一般式(3)において、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6
〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても
良い。また、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基
を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。また、Ar
は、炭素数6〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を
有していても良い。
【0017】
また、本発明のスチルベン誘導体は、下記一般式(4)に示す構造を有するものである

【0018】
【化04】

【0019】
一般式(4)において、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6
〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても
良い。また、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基
を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。また、R
10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基を表し
、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。
【0020】
また、本発明のスチルベン誘導体は、下記一般式(5)に示す構造を有するものである

【0021】
【化05】

【0022】
一般式(5)において、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭
素数6〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有して
いても良い。また、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、
Arは、炭素数6〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキ
ル基を有していても良い。
【0023】
また、本発明のスチルベン誘導体は、下記一般式(6)に示す構造を有するものである

【0024】
【化06】

【0025】
一般式(6)において、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭
素数6〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有して
いても良い。また、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、
〜R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基
を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても良い。
【0026】
また、本発明のスチルベン誘導体は、下記一般式(7)に示す構造を有するものである

【0027】
【化07】

【0028】
一般式(7)において、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭
素数6〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有して
いても良い。また、Arは、炭素数6〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭
素数1〜4のアルキル基を有していても良い。
【0029】
また、本発明のスチルベン誘導体は、下記一般式(8)に示す構造を有するものである

【0030】
【化08】

【0031】
一般式(8)において、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭
素数6〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有して
いても良い。また、R〜R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6
〜25のアリール基を表し、このアリール基は炭素数1〜4のアルキル基を有していても
良い。
【0032】
また、本発明において、上述したスチルベン誘導体を含む発光層を有することを特徴と
する発光素子の構成を含めることとする。なお、本発明のスチルベン誘導体は、色純度の
高い青色発光を呈するという特徴を有していることから、主にゲスト材料として用い、他
のホスト材料と共に発光層を形成する。
【0033】
上記構成において、本発明のスチルベン誘導体は、ホスト材料の極性によってその発光
色の微調整が可能であることから、ホスト材料を適宜選択することにより所望の発光色を
得ることができる。
【0034】
また、本発明では、上述したスチルベン誘導体を含む発光層を有する発光素子を含む発
光装置の構成を含めることとする。
【発明の効果】
【0035】
本発明を実施することにより、色純度の良い青色発光が得られ、また、その発光効率に
優れたスチルベン誘導体を得ることができる。また、上記スチルベン誘導体を用いて発光
素子を作製することにより、色純度の良い青色発光素子およびそれを用いた発光装置を提
供することができる。また、発光効率に優れた発光素子および発光装置を提供することが
できる。また、寿命の長い発光素子および発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の発光素子について説明する図。
【図2】本発明の発光素子について説明する図。
【図3】本発明の発光素子について説明する図。
【図4】本発明の発光装置について説明する図。
【図5】本発明の電子機器について説明する図。
【図6】PCAのNMRチャート。
【図7】本発明のPCASのNMRチャート。
【図8】本発明のPCASの吸収スペクトル。
【図9】本発明のPCASの発光スペクトル。
【図10】本発明のPCATBSのNMRチャート。
【図11】本発明のPCATBSの吸収スペクトル。
【図12】本発明のPCATBSの発光スペクトル。
【図13】本発明のPCA2SのNMRチャート。
【図14】本発明のPCA2Sの吸収スペクトル。
【図15】本発明のPCA2Sの発光スペクトル。
【図16】YGAのNMRチャート。
【図17】本発明のYGASのNMRチャート。
【図18】本発明のYGASの吸収スペクトル。
【図19】本発明のYGASの発光スペクトル。
【図20】本発明のYGA2SのNMRチャート。
【図21】本発明のYGA2Sの吸収スペクトル。
【図22】本発明のYGA2Sの発光スペクトル。
【図23】PCASを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図24】PCASを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図25】PCASを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図26】PCASを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図27】PCATBSを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図28】PCATBSを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図29】PCATBSを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図30】PCATBSを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図31】PCA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図32】PCA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図33】PCA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図34】PCA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図35】YGASを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図36】YGASを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図37】YGASを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図38】YGASを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図39】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図40】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図41】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図42】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図43】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図44】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図45】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図46】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図47】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図48】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図49】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図50】YGA2Sを用いて作製された発光素子の素子特性を示すグラフ。
【図51】YGA2Sを用いて作成された発光素子の信頼性試験の結果を示す図
【図52】PCAのNMRチャート。
【図53】PCAのNMRチャート。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の一態様について図面等を用いながら詳細に説明する。但し、本発明は
多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱する
ことなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0038】
(実施の形態1)
本発明におけるスチルベン誘導体は、下記一般式(1)〜(8)で示される構造を有す
るものである。
【0039】
【化09】

【0040】
式中、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール
基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イ
ソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ
る。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、
フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していても良い
し、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が
有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基
、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−
ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また
、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9
’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0041】
式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基を表
す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。炭
素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フルオ
レニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していても良いし、有
していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が有する
置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−
プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル
基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また、フル
オレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9’−ビ
フルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0042】
式中、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のア
ルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基
、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0043】
Arは、炭素数6〜25のアリール基を表す。炭素数6〜25のアリール基としては
、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、こ
れらのアリール基は置換基を有していても良いし、有していなくとも良い。これらアリー
ル基が置換基を有する場合、当該アリール基が有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル
基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−
ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。このう
ち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフ
ルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル基であること
が好ましい。
【0044】
【化10】

【0045】
式中、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール
基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イ
ソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ
る。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、
フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していても良い
し、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が
有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基
、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−
ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また
、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9
’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0046】
式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基を表
す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。炭
素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フルオ
レニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していても良いし、有
していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が有する
置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−
プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル
基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また、フル
オレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9’−ビ
フルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0047】
式中、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のア
ルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基
、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0048】
式中、R〜R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のア
リール基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙
げられる。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリ
ル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していて
も良いし、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリー
ル基が有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エ
チル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基
、t−ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい
。また、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−
9,9’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0049】
【化11】

【0050】
式中、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール
基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イ
ソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ
る。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、
フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していても良い
し、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が
有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基
、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−
ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また
、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9
’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0051】
式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基を表
す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。炭
素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フルオ
レニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していても良いし、有
していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が有する
置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−
プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル
基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また、フル
オレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9’−ビ
フルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0052】
式中、Arは、炭素数6〜25のアリール基を表す。炭素数6〜25のアリール基と
しては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フルオレニル基等が挙げられる。な
お、これらのアリール基は置換基を有していても良いし、有していなくとも良い。これら
アリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が有する置換基は、炭素数1〜4のア
ルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基
、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また、フルオレニル基は、9,9−ジメ
チルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル基であ
ることが好ましい。
【0053】
【化12】

【0054】
式中、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール
基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イ
ソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられ
る。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、
フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していても良い
し、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が
有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基
、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−
ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また
、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9
’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0055】
式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のアリール基を表
す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。炭
素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フルオ
レニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していても良いし、有
していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が有する
置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−
プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル
基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また、フル
オレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9’−ビ
フルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0056】
式中、R〜R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のア
リール基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙
げられる。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリ
ル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していて
も良いし、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリー
ル基が有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エ
チル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基
、t−ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい
。また、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−
9,9’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0057】
【化13】

【0058】
式中、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のア
リール基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙
げられる。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリ
ル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していて
も良いし、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリー
ル基が有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エ
チル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基
、t−ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい
。また、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−
9,9’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0059】
式中、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のア
ルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基
、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0060】
式中、Arは、炭素数6〜25のアリール基を表す。炭素数6〜25のアリール基と
しては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フルオレニル基等が挙げられる。な
お、これらのアリール基は置換基を有していても良いし、有していなくとも良い。これら
アリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が有する置換基は、炭素数1〜4のア
ルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基
、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また、フルオレニル基は、9,9−ジメ
チルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル基であ
ることが好ましい。
【0061】
【化14】

【0062】
式中、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のア
リール基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙
げられる。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリ
ル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していて
も良いし、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリー
ル基が有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エ
チル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基
、t−ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい
。また、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−
9,9’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0063】
式中、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のア
ルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基
、イソブチル基、s−ブチル基、t―ブチル基等が挙げられる。
【0064】
また、R〜R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のア
リール基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙
げられる。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリ
ル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していて
も良いし、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリー
ル基が有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エ
チル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基
、t−ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい
。また、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−
9,9’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0065】
【化15】

【0066】
式中、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素数6〜25のア
リール基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙
げられる。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリ
ル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換基を有していて
も良いし、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場合、当該アリー
ル基が有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エ
チル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基
、t−ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい
。また、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−
9,9’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0067】
式中、Arは、炭素数6〜25のアリール基を表す。炭素数6〜25のアリール基と
しては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フルオレニル基等が挙げられる。な
お、これらのアリール基は置換基を有していても良いし、有していなくとも良い。これら
アリール基が置換基を有する場合、当該アリール基が有する置換基は、炭素数1〜4のア
ルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基
、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
このうち、メチル基、t−ブチル基が好ましい。また、フルオレニル基は、9,9−ジメ
チルフルオレン−2−イル基、またはスピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル基であ
ることが好ましい。
【0068】
【化16】

【0069】
式中、R、R、R〜R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または、炭素
数6〜25のアリール基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基
、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−
ブチル基等が挙げられる。炭素数6〜25のアリール基としては、フェニル基、ナフチル
基、ビフェニリル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、これらのアリール基は置換
基を有していても良いし、有していなくとも良い。これらアリール基が置換基を有する場
合、当該アリール基が有する置換基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的に
はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基
、s−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。このうち、メチル基、t−ブチ
ル基が好ましい。また、フルオレニル基は、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、
またはスピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル基であることが好ましい。
【0070】
上述した一般式(1)〜(8)で示される本発明のスチルベン誘導体の具体的な一態様
として、下記構造式(9)〜(152)で表されるスチルベン誘導体が挙げられる。なお
、本発明のスチルベン誘導体はこれに限られることはない。
【0071】
【化17】

【0072】
【化18】

【0073】
【化19】

【0074】
【化20】

【0075】
【化21】

【0076】
【化22】

【0077】
【化23】

【0078】
【化24】

【0079】
【化25】

【0080】
【化26】

【0081】
【化27】

【0082】
【化28】

【0083】
【化29】

【0084】
【化30】

【0085】
【化31】

【0086】
【化32】

【0087】
【化33】

【0088】
【化34】

【0089】
【化35】

【0090】
【化36】

【0091】
【化37】

【0092】
【化38】

【0093】
【化39】

【0094】
本発明のスチルベン誘導体は、色純度の良い青色発光が得られ、また発光効率に優れて
いるという特徴を有している。
(実施の形態2)
【0095】
[一般式(1)の合成方法]
以下では、下記一般式(1)で表される本発明のスチルベン誘導体の合成方法の一例を
開示する。
【0096】
【化40】

【0097】
[ステップ1;4位がハロゲン化されたスチルベン誘導体(St1)の合成]
まず、下記合成スキーム(A)に示すように、4位がハロゲン化されたベンジルのトリ
フェニルホスホニウム塩(α1)とベンズアルデヒド誘導体(β1)とを塩基存在下にて
反応させる、いわゆるウィティッヒ(Wittig)反応により、4位がハロゲン化され
たスチルベン誘導体(St1)を得る。このスチルベン誘導体(St1)は、合成スキー
ム(A’)に示すように、トリフェニルホスホニウム塩(α1)に換えてホスホン酸エス
テル(α2)を用いるホルナー−エモンズ(Horner−Emmons)反応によって
も得ることができる。なお、塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩
基や、金属アルコキシドなどの有機塩基などを用いることができる。
【0098】
また、スチルベン誘導体(St1)は、下記合成スキーム(A’’)に示すように、無
置換または3,4,5位の少なくとも1つが置換されたベンジルのトリフェニルホスホニ
ウム塩(α3)と4位がハロゲン化されたベンズアルデヒド(β2)とを塩基存在下にて
反応させる、いわゆるウィティッヒ(Wittig)反応により得ることもできる。ある
いは、合成スキーム(A’’’)に示すように、トリフェニルホスホニウム塩(α3)に
換えてホスホン酸エステル(α4)を用いるホルナー−エモンズ(Horner−Emm
ons)反応によっても得ることができる。
【0099】
【化41】

【0100】
【化42】

【0101】
[ステップ2;3−アミノカルバゾール誘導体(Cz1)の合成]
次に、下記合成スキーム(B)に示すように、3位がハロゲン化されたカルバゾール誘
導体(γ1)とアリールアミンとを、塩基存在下にて金属触媒を用いてカップリングする
ことにより、3−アミノカルバゾール誘導体(Cz1)得る。カップリング時の金属触媒
としては、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(
ジベンジリデンアセトン)パラジウムなどのパラジウム触媒や、一価の銅などを用いるこ
とができる。塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩基や、金属アル
コキシドなどの有機塩基などを用いることができる。
【0102】
【化43】

【0103】
[ステップ3;一般式(1)で表される本発明のスチルベン誘導体の合成]
次いで、下記合成スキーム(C)に示すように、ステップ1で得たスチルベン誘導体(
St1)とステップ2で得た3−アミノカルバゾール誘導体(Cz1)とを、塩基存在下
にて金属触媒を用いてカップリングすることにより、一般式(1)で表される本発明のス
チルベン誘導体を得ることができる。金属触媒及び塩基としては、先に述べた物質を用い
ることができる。
【0104】
【化44】

【0105】
[一般式(3)の合成方法]
以下では、下記一般式(3)で表される本発明のスチルベン誘導体の合成方法の一例を
開示する。
【0106】
【化45】

【0107】
[ステップ1;4位および4’位がハロゲン化されたスチルベン誘導体(St2)の合成

まず、下記合成スキーム(D)に示すように、4位がハロゲン化されたベンジルのトリ
フェニルホスホニウム塩(α5)と4位がハロゲン化されたベンズアルデヒド(β3)と
を塩基存在下にて反応させる、いわゆるウィティッヒ(Wittig)反応により、4位
および4’位がハロゲン化されたスチルベン誘導体(St2)を得る。あるいは、合成ス
キーム(D’)に示すように、トリフェニルホスホニウム塩(α5)に換えてホスホン酸
エステル(α6)を用いるホルナー−エモンズ(Horner−Emmons)反応によ
っても得ることができる。
【0108】
【化46】

【0109】
[ステップ2;3−アミノカルバゾール誘導体(Cz1)の合成]
次に、先に述べた合成スキーム(B)に従い、3−アミノカルバゾール誘導体(Cz1
)を合成する。
【0110】
[ステップ3;一般式(3)で表される本発明のスチルベン誘導体の合成]
次いで、下記合成スキーム(E)に示すように、4位および4’位がハロゲン化された
スチルベン誘導体(St2)と3−アミノカルバゾール誘導体(Cz1)とを、塩基存在
下にて金属触媒を用いてカップリングすることにより、一般式(1)で表される本発明の
スチルベン誘導体を得ることができる。金属触媒及び塩基としては、先に述べた物質を用
いることができる。
【0111】
【化47】

【0112】
[一般式(5)の合成方法]
以下では、下記一般式(5)で表される本発明のスチルベン誘導体の合成方法の一例を
開示する。
【0113】
【化48】

【0114】
[ステップ1;4位がハロゲン化されたスチルベン誘導体(St1)の合成]
まず、先に述べた合成スキーム(A)〜(A’’’)のいずれかに従い、4位がハロゲ
ン化されたスチルベン誘導体(St1)を合成する。
【0115】
[ステップ2;9−(4−アミノフェニル)カルバゾール誘導体(Cz2)の合成]
次に、下記合成スキーム(F)に示すように、フェニル基の4位がハロゲン化された9
−フェニルカルバゾール誘導体(γ2)とアリールアミンとを、塩基存在下にて金属触媒
を用いてカップリングすることにより、9−(4−アミノフェニル)カルバゾール誘導体
(Cz2)を得る。金属触媒及び塩基としては、先に述べた物質を用いることができる。
【0116】
【化49】

【0117】
[ステップ3;一般式(5)で表される本発明のスチルベン誘導体の合成]
次いで、下記合成スキーム(G)に示すように、4位がハロゲン化されたスチルベン誘
導体(St1)と9−(4−アミノフェニル)カルバゾール誘導体(Cz2)とを、塩基
存在下にて金属触媒を用いてカップリングすることにより、一般式(5)で表される本発
明のスチルベン誘導体を得ることができる。
【0118】
【化50】

【0119】
[一般式(7)の合成方法]
以下では、下記一般式(7)で表される本発明のスチルベン誘導体の合成方法の一例を
開示する。
【化51】

【0120】
[ステップ1;4位および4’位がハロゲン化されたスチルベン誘導体(St2)の合成

まず、先に述べた合成スキーム(D)〜(D’)のいずれかに従い、4位および4’位
がハロゲン化されたスチルベン誘導体(St2)を合成する。
【0121】
[ステップ2;9−(4−アミノフェニル)カルバゾール誘導体(Cz2)の合成]
次に、先に述べた合成スキーム(F)に従い、9−(4−アミノフェニル)カルバゾー
ル誘導体(Cz2)を合成する。
【0122】
[ステップ3;一般式(7)で表される本発明のスチルベン誘導体の合成]
次いで、下記合成スキーム(H)に示すように、4位および4’位がハロゲン化された
スチルベン誘導体(St2)と9−(4−アミノフェニル)カルバゾール誘導体(Cz2
)とを、塩基存在下にて金属触媒を用いてカップリングすることにより、一般式(7)で
表される本発明のスチルベン誘導体を得ることができる。
【0123】
【化52】

【0124】
(実施の形態3)
【0125】
本発明では、実施の形態1に示すスチルベン誘導体を用いて発光素子を形成することが
できる。
【0126】
なお、本発明における発光素子の素子構成は、図1に示すように第1の電極101と第
2の電極102との間に発光物質を含む層103が挟まれた構造を有する。また、発光物
質を含む層103には、本発明のスチルベン誘導体を含んでいる。ここでは、第1の電極
が陽極として機能する電極であり、第2の電極が陰極として機能する電極である場合につ
いて説明する。なお、陽極とは、発光物質を含む層に正孔を注入する電極のことをいい、
陰極とは、発光物質を含む層に電子を注入する電極のことをいう。
【0127】
また、発光物質を含む層103の構成としては、少なくとも発光層104を含み、正孔
注入層、発光層、電子輸送層の順の積層構造、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸
送層の順の積層構造、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層の順の
積層構造、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層の順
の積層構造等が挙げられる。なお、本発明のスチルベン誘導体は、発光層104に用いる
のが好ましい。
【0128】
また、本発明の発光素子は基板に支持されていることが好ましく、基板について特に制
限はなく、従来の発光素子に用いられているもの、例えば、ガラス、石英、透明プラスチ
ックなどからなるものを用いることができる。
【0129】
また、本発明の発光素子の陽極材料としては、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV
以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。
なお、陽極材料の具体例としては、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium Ti
n Oxide)、酸化珪素を含み酸化インジウムに2〜20atomic%の酸化亜鉛
(ZnO)を混合したIZO(indium zinc oxide)の他、金(Au)
、白金(Pt)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(C
r)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(
Pd)、または金属材料の窒化物(TiN)等を用いることができる。
【0130】
但し、陽極と発光層との間に第1のバッファー層が設けられている場合には、幅広い範
囲の仕事関数を有する電極材料に対してのオーム接触が可能となるため、一般に仕事関数
の小さい材料として知られるアルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルカリ金属、マグネ
シウム(Mg)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:L
i)等も陽極材料として用いることができる。
【0131】
ここでいう第1のバッファー層は、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、ビニル
骨格を少なくとも一つ含む芳香族炭化水素を含む芳香族炭化水素等の有機化合物のうちの
いずれかと、金属化合物との組み合わせで構成される。
【0132】
上記芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−
N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチル
フェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−ト
リス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’
,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルア
ミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス(N−{4−[N,N−ビス(3−メチル
フェニル)アミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)
、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTD
AB)、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TC
TA)、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQ
n)、2,2’,3,3’−テトラキス(4−ジフェニルアミノフェニル)−6,6’−
ビキノキサリン(略称:D−TriPhAQn)、2,3−ビス{4−[N−(1−ナフ
チル)−N−フェニルアミノ]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:NP
ADiBzQn)等が挙げられる。
【0133】
また、カルバゾール誘導体としては、例えば、3−[N−(9−フェニルカルバゾール
−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA
1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミ
ノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、N−(2−ナフチル)カル
バゾール(略称:NCz)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CB
P)、9,10−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]アントラセン(略称:BC
PA)、3,5−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ビフェニル(略称:BCP
Bi)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:T
CPB)等が挙げられる。
【0134】
また、芳香族炭化水素(ビニル骨格を少なくとも一つ含む芳香族炭化水素を含む)とし
ては、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、2−ter
t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、テ
トラセン、ルブレン、ペンタセン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェ
ニル(略称:DPVBi)等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0135】
一方、上記金属化合物としては、遷移金属の酸化物や窒化物が望ましく、4〜8属に属
する金属の酸化物もしくは窒化物がさらに望ましい。また、上述した芳香族アミン、カル
バゾール誘導体、および芳香族炭化水素(ビニル骨格を少なくとも一つ含む芳香族炭化水
素を含む)のいずれに対しても電子受容性を示すものが好ましい。このような金属化合物
として、例えば、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、レニウム酸
化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル
酸化物、タングステン酸化物、銀酸化物等の金属化合物が挙げられる。
【0136】
なお、第1のバッファー層において、金属化合物は、芳香族アミン、カルバゾール誘導
体、およびビニル骨格を少なくとも一つ含む芳香族炭化水素を含む芳香族炭化水素等の有
機化合物のいずれを用いた場合でも質量比が0.5〜2、若しくはモル比が1〜4(=金
属化合物/有機化合物)となるように含まれていることが好ましい。また、第1のバッフ
ァー層は、導電率が高いことから50nm以上の膜厚とすればよい。
【0137】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、
導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。なお、陰極材料の具
体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、すなわちLiやCs等のアル
カリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(M
g:Ag、Al:Li)や化合物(LiF、CsF、CaF)、希土類金属を含む遷移
金属の他、Al、Ag、ITO(indium tin oxide)等の金属(合金を
含む)とを積層したものを用いることができる。
【0138】
但し、陰極と発光層との間に第2のバッファー層が設けられている場合には、幅広い範
囲の仕事関数を有する電極材料に対してのオーム接触が可能となるため、一般に仕事関数
の大きい材料として知られるITO(indium tin oxide)、酸化珪素を
含むインジウム錫酸化物、酸化珪素を含み酸化インジウムに2〜20atomic%の酸
化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(indium zinc oxide)等も陰極材
料として用いることができる。
【0139】
ここでいう第2のバッファー層は、電子輸送性物質およびバイポーラ性物質から選ばれ
る少なくとも一の物質と、これらの物質に対し電子供与性を示す物質(ドナー)との組み
合わせで構成される。電子輸送性物質およびバイポーラ性物質としては、1×10−6
/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。電子輸送性物質およびバイポーラ
性物質としては、それぞれ後述する材料を用いることができる。
【0140】
なお、上述した陽極材料及び陰極材料は、蒸着法、スパッタリング法等により薄膜を形
成することにより、それぞれ陽極及び陰極を形成する。膜厚は、10〜500nmとする
のが好ましい。
【0141】
また、本発明の発光素子において、発光物質を含む層におけるキャリアの再結合により
生じる光は、陽極または陰極の一方、または両方から外部に射出される構成となる。すな
わち、陽極から光を射出させる場合には、陽極を透光性の材料で形成し、陰極側から光を
射出させる場合には、陰極を透光性の材料で形成する。
【0142】
また、発光物質を含む層には公知の材料を用いることができ、低分子系化合物および高
分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、発光物質を含む層を形成する材料に
は、有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるもの
とする。
【0143】
なお、発光物質を含む層は、正孔注入性物質からなる正孔注入層、正孔輸送性物質また
はバイポーラ性物質からなる正孔輸送層、発光性物質からなる発光層、ホールブロッキン
グ性物質からなる正孔阻止層(ホールブロッキング層)、電子輸送性物質からなる電子輸
送層、電子注入性物質からなる電子注入層の他、上述した第1のバッファー層および第2
のバッファー層などを組み合わせて積層することにより形成される。
【0144】
本発明において、スチルベン誘導体を発光層に用いる場合には、一対の電極間に形成さ
れる発光物質を含む層に発光層と、それ以外の層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正
孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、第1のバッファー層、第2のバッファー層等)を組
み合わせて積層形成することにより発光素子を形成することもできる。これらの層の形成
に用いる具体的な物質を以下に示す。なお、第1のバッファー層および第2のバッファー
層については、先に説明したので説明を省略する。
【0145】
正孔注入層は、正孔注入性物質を用いて形成することが好ましい。なお、正孔注入性物
質としては、有機化合物であればポルフィリン系の化合物が有効であり、フタロシアニン
(以下、H−Pcと示す)、銅フタロシアニン(以下、Cu−Pcと示す)等を用いる
ことができる。また、導電性高分子化合物に化学ドーピングを施した材料もあり、ポリス
チレンスルホン酸(以下、PSSと示す)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン
(以下、PEDOTと示す)などを用いることもできる。
【0146】
正孔輸送層は、正孔の輸送性に優れた層であり、特に1×10−6cm/Vs以上の
正孔移動度を示す正孔輸送性物質またはバイポーラ性物質を用いて形成することが好まし
い。なお、正孔輸送性物質とは、電子よりも正孔の移動度が高い物質であり、好ましくは
電子の移動度に対する正孔の移動度の比の値(=正孔移動度/電子移動度)が100より
も大きい物質をいう。
【0147】
正孔輸送性物質としては、例えば芳香族アミン系(すなわち、ベンゼン環−窒素の結合
を有するもの)の化合物が好適である。広く用いられている物質として、例えば、4,4
’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(以下、TP
Dと示す)の他、その誘導体である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニ
ルアミノ]ビフェニル(以下、NPBと示す)や、4,4’,4’’−トリ(N−カルバ
ゾリル)トリフェニルアミン(以下、TCTAと示す)、4,4’,4’’−トリス(N
,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)、4,4’,
4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミ
ン(以下、MTDATAと示す)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられ
る。
【0148】
また、バイポーラ性物質とは、電子の移動度と正孔の移動度とを比較したときに、一方
のキャリアの移動度に対する他方のキャリアの移動度の比の値が100以下、好ましくは
10以下である物質をいう。バイポーラ性の物質として、例えば、2,3−ビス(4−ジ
フェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、2,3−ビス{4−[N
−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン
(略称:NPADiBzQn)等が挙げられる。バイポーラ性の物質の中でも特に、正孔
及び電子の移動度が1×10−6cm/Vs以上の物質を用いることが好ましい。
【0149】
発光層は、少なくとも一種の発光物質を含んでおり、ここでいう発光物質とは、発光効
率が良好で、所望の波長の発光をし得る物質である。なお、本実施の形態における発光層
は、ゲスト物質となる本発明の一つであるスチルベン誘導体が有するバンドギャップ(L
UMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップをいう)よりも大きいバンドギャ
ップを有する物質(ホスト物質)からなる層中に、スチルベン誘導体が分散するように混
合された層(いわゆる、ホストとゲストの関係にある物質をそれぞれ含む層)である。
【0150】
なお、本発明のスチルベン誘導体を発光層に用いることで、色純度の良い青色発光が得
られる。
【0151】
なお、本発明のスチルベン誘導体と組み合わせて発光層を形成するホスト物質としては
、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:C
zPA)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、ビス[2−
(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、9
,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、4,4’,4’’−トリ(
N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、2,2’,2’’−(1,
3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略
称:TPBi)等を用いることができる。
【0152】
電子輸送層は、電子の輸送性に優れた層であり、特に1×10−6cm/Vs以上の
電子移動度を示す電子輸送性物質またはバイポーラ性物質を用いて形成することが好まし
い。なお、電子輸送性物質とは、正孔よりも電子の移動度が高い物質であり、好ましくは
正孔の移動度に対する電子の移動度の比の値(=電子移動度/正孔移動度)が100より
も大きい物質をいう。
【0153】
具体的な電子輸送性物質としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、
Alqと示す)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Al
mqと示す)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(以下、
BeBqと示す)などのキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体や、
混合配位子錯体であるビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト
)アルミニウム(以下、BAlqと示す)などが好適である。また、ビス[2−(2−ヒ
ドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(以下、Zn(BOX)と示す)、ビ
ス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(以下、Zn(BTZ)
と示す)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに
、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル
)−1,3,4−オキサジアゾール(以下、PBDと示す)、1,3−ビス[5−(p−
tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(以
下、OXD−7と示す)などのオキサジアゾール誘導体、3−(4−tert−ブチルフ
ェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下
、TAZと示す)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル
)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下、p−EtTAZと示
す)などのトリアゾール誘導体、バソフェナントロリン(以下、BPhenと示す)、バ
ソキュプロイン(以下、BCPと示す)等のフェナントロリン誘導体、その他、4,4−
ビス(5−メチルベンズオキサゾリル−2−イル)スチルベン(以下、BzOsと示す)
等を用いることができる。なお、バイポーラ性物質としては、上述した物質を用いること
ができる。
【0154】
また、ホールブロッキング性物質としては、上で述べたBAlq、OXD−7、TAZ
、p−EtTAZ、BPhen、BCP等を用いることができる。
【0155】
以上のように、本発明のスチルベン誘導体を発光層に用いた発光素子を作製することで
、色純度の良い青色発光素子が得られる。また、発光効率に優れた発光素子が得られる。
また、寿命の長い発光素子が得られる。
(実施の形態4)
【0156】
本実施の形態では、本発明のスチルベン誘導体を含む発光素子と組み合わせて発光装置
を作製することのできる薄膜トランジスタ(TFT)の一例として、トップゲート構造を
有するシングルゲート型TFTについて、図2を用いて説明する。
【0157】
図2に示すようにTFT208は、基板201上に形成され、TFT208のドレイン
電極207bと発光素子の第1の電極209は、電気的に接続されている。なお、第1の
電極209上には、発光物質を含む層を挟んで第2の電極が形成され、実施の形態2で説
明したような発光素子が形成される。従って、TFT208は、発光素子の駆動を制御す
ることができる。
【0158】
基板201について特に限定はなく、ガラス、石英の他、ポリエチレンテレフタレート
(PET)、ポリエチレンナフタレート(OEN)、ポリエーテルサルホン(PES)等
の可撓性を有するものも用いることができる。
【0159】
また、ここでは図示しないが、基板201上にプラズマCVD法やスパッタリング法等
の公知の成膜方法により、酸化珪素または窒化珪素等の絶縁物からなる絶縁膜を形成して
も良い。なお、絶縁膜は、単膜でもよいし、複数の膜を積層した多層膜としてもよい。絶
縁膜を基板201とTFT208との間に設けることによって、基板201からTFT2
08への不純物の拡散を防ぐことができる。
【0160】
図2におけるソース領域202a、ドレイン領域202b、およびチャネル形成領域2
03は半導体膜で形成される。なお、半導体膜としては、シリコン、シリコン・ゲルマニ
ウム(SiGe)等を主成分とし、結晶状態がそれぞれ異なる非晶質半導膜、結晶状態を
一部に含む非晶質半導体膜、及び結晶質半導体膜のいずれかを用いることができるが、本
実施の形態では、結晶質半導体膜を用いて形成する場合について説明する。また、半導体
膜は、プラズマCVD法やスパッタリング法などの公知の成膜方法を用いて成膜すること
ができる。半導体膜の膜厚は、10〜150nmとし、さらに30〜70nmとするのが
好ましい。
【0161】
結晶質半導体膜は、非晶質半導体膜を加熱又はレーザ照射により結晶化して形成するこ
とができる。また、最初から結晶質半導体膜を形成することもできる。具体的には、Ge
またはF等のフッ素系ガスと、SiHまたはSi等のシラン系ガスとを用
い、熱またはプラズマを利用することにより結晶質半導体膜を形成することができる。
【0162】
また、ソース領域202aおよびドレイン領域202bは、結晶質半導体膜中に不純物
元素が添加された領域である。不純物元素は、半導体膜に一導電型を付与することができ
る元素であり、n型の導電型を付与する不純物としてはリン(P)、p型の導電型を導電
型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)等が代表的に挙げられるが、第1の電極
209を陽極として機能させる場合には、p型、陰極として機能させる場合にはn型とな
るように不純物を添加することが好ましい。なお、本実施の形態で示すTFT構造の場合
には、結晶質半導体膜を形成した後、後に形成されるゲート電極205をマスクとして結
晶質半導体膜中に不純物の添加を行うこととする。
【0163】
ソース領域202a、ドレイン領域202b、およびチャネル形成領域203を覆って
形成されるゲート絶縁膜204は、プラズマCVD法やスパッタリング法等の成膜方法に
より、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等の絶縁物を用いて形成される
。また、ゲート絶縁膜204は、一層の絶縁膜によって形成されていてもよいし、複数の
絶縁膜が積層された積層膜で形成されていてもよい。なお、ゲート絶縁膜204の膜厚は
、10〜150nmとするのが好ましく、さらに30〜70nmとするのが好ましい。
【0164】
ゲート電極205は、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo
)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)
等の金属の他、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)等の金属窒化物からなる
導電膜を用いて形成することができる。また、ゲート電極205は、一層の導電膜によっ
て形成されていてもよいし、複数の導電膜が積層された構造であってもよい。なお、上記
導電膜は、スッパッタリング法などの公知の成膜方法を用いることができる。また、ゲー
ト電極205を形成する導電膜の膜厚は、200nm以上とするのが好ましく、さらに3
00〜700nmとするのが好ましい。
【0165】
ソース領域202a、ドレイン領域202b、チャネル形成領域203、およびゲート
電極205を覆って形成される層間絶縁膜206は、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素
、窒化酸化珪素等の絶縁物を用いて形成することができる。その他にもアクリル、ポリイ
ミド、またはシロキサン等の絶縁物を用いることもできる。なお、上記シロキサンは、珪
素(Si)、酸素(O)、水素(H)等の元素を含み、さらにSi−O−Si結合(シロ
キサン結合)を含む化合物である。なお、上記絶縁膜は、プラズマCVD法、スパッタリ
ング法、塗布法、スピンコート法等の公知の成膜方法により形成することができる。なお
、層間絶縁膜206の膜厚は、300nm〜2μmとし、さらに500nm〜1μmとす
るのが好ましい。
【0166】
層間絶縁膜206上に形成されたソース電極207aはソース領域202aと、ドレイ
ン電極207bはドレイン領域202bと、それぞれ電気的に接続するように形成されて
いる。なお、ソース電極207aおよびドレイン電極207bは、銀(Ag)、金(Au
)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(
Ir)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、タンタル(
Ta)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、チタン
(Ti)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、バリウム
(Ba)等の金属元素からなる膜、または前記元素を主成分とする合金材料からなる膜(
例えば、Alと炭素(C)とNiを含む合金、Alと炭素(C)とMoを含む合金)、ま
たは前記元素からなる積層膜(例えば、MoとAlとMoとの積層膜、TiとAlとTi
との積層膜、Tiと窒化チタン(TiN)とAlとTiとの積層膜)又は金属窒化物等の
化合物材料からなる膜等が挙げられる。なお、上記導電膜は、スッパッタリング法などの
公知の成膜方法を用いることができる。また、ソース電極207aおよびドレイン電極2
07bの膜厚は、200nm以上とするのが好ましく、さらに300〜700nmとする
のが好ましい。
【0167】
また、ドレイン電極207bには、発光素子の第1の電極209が電気的に接続されて
いる。なお、第1の電極209を形成する材料に関しては、実施の形態3において説明し
たので、そちらを参照することとし、ここでの説明は省略する。
【0168】
絶縁体210は、ソース電極207a、ドレイン電極207bを覆い、さらに第1の電
極209の端部を覆うように形成される。さらに絶縁体210は、側壁に曲率を有する形
状となるように形成するのが好ましい。なお、絶縁体210は、アクリル、ポリイミド、
レジスト、酸化珪素、窒化珪素、シロキサン等を用いて形成することができる。
【0169】
なお、本実施の形態では、TFT208がトップゲート構造を有するシングルゲート型
TFTの場合について説明したが、これに限定されることはなく、ボトムゲート構造を有
するTFTであっても、複数のゲート電極を有するマルチゲート型のTFTでもよい。ま
た、チャネル形成領域とドレイン領域との間にドレイン領域よりも低濃度の不純物を含む
低濃度不純物領域を有するLDD(Light Doped Drain)構造のTFT
でもよい。また、チャネル形成領域とドレインとの間に設けられる低濃度不純物領域がゲ
ート電極と重畳したゲートオーバーラップLDD構造のトランジスタであってもよい。
【0170】
以上のようなTFTと、本発明のスチルベン誘導体を含む発光素子を組み合わせて発光
装置を作製することにより、色純度の良い青色が得られるだけでなく、発光効率に優れ、
寿命の長い発光装置を得ることができる。
(実施の形態5)
【0171】
本実施の形態では、本発明のスチルベン誘導体を含む発光素子と組み合わせて発光装置
を作製することのできる薄膜トランジスタ(TFT)の一例として、チャネルエッチ型の
ボトムゲート構造を有するTFTについて図3(A)を用い、チャネルストップ型のボト
ムゲート構造を有するTFTについて、図3(B)を用いて説明する。
【0172】
図3(A)に示すようにチャネルエッチ型のボトムゲート構造を有するTFT308は
、基板301上に形成され、TFT308のドレイン電極306bと発光素子の第1の電
極309は、電気的に接続されている。なお、第1の電極309上には、発光物質を含む
層を挟んで第2の電極が形成され、実施の形態3で説明したような発光素子が形成される
。従って、TFT308は、発光素子の駆動を制御することができる。
【0173】
なお、基板301については、特に限定はなく実施の形態3で示した基板201と同様
の材料を用いることができる。また、基板301とTFT308との間に設けることが可
能な絶縁膜についても実施の形態4で挙げたのと同様の方法および材料を用いて形成する
ことができる。なお、その効果も同様である。
【0174】
基板301上には、ゲート電極302が形成されており、ゲート電極302上には、ゲ
ート絶縁膜303が形成されている。なお、ゲート電極302およびゲート絶縁膜303
は、実施の形態4で示したゲート電極205およびゲート絶縁膜204とそれぞれ同様の
方法および材料を用いて形成することができる。
【0175】
ゲート絶縁膜303上のゲート電極302と重なる位置に、第1の半導体膜からなるチ
ャネル形成領域304が形成されている。なお、第1の半導体膜には、シリコン、シリコ
ン・ゲルマニウム(SiGe)等を主成分とする非晶質半導体膜、結晶状態を一部に含む
非晶質半導体膜、及び結晶質半導体膜のいずれかを用いることができるが、本実施の形態
では、第1の半導体膜として、非晶質半導体膜を用いることとする。なお、第1の半導体
膜は、プラズマCVD法やスパッタリング法などの公知の成膜方法を用いて成膜すること
ができる。また、ここで用いる第1の半導体膜の膜厚は、10〜150nmとし、さらに
30〜70nmとするのが好ましい。
【0176】
第1の半導体膜上には、第2の半導体膜からなるソース領域305aおよびドレイン領
域305bがそれぞれ形成されている。なお、第2の半導体膜には、シリコン、シリコン
・ゲルマニウム(SiGe)等を主成分とし、n型もしくはp型の導電型を付与する不純
物を含む非晶質半導体膜、結晶状態を一部に含む非晶質半導体膜、及び結晶質半導体膜の
いずれかを用いることができるが、本実施の形態では、第2の半導体膜として、非晶質半
導体膜を用いることとする。また、第2の半導体膜は、予めn型もしくはp型の導電型を
付与する不純物を含む非晶質半導体膜である。なお、第2の半導体膜は、プラズマCVD
法などの公知の成膜方法を用いて成膜することができる。また、ここで用いる第2の半導
体膜の膜厚は、10〜150nmとし、さらに30〜70nmとするのが好ましい。
【0177】
ソース領域305a上には、ソース領域305aと接してソース電極306aが形成さ
れ、ドレイン領域305b上には、ドレイン領域305bと接してドレイン電極306b
が形成されている。なお、ソース電極306aおよびドレイン電極306bは、実施の形
態3で示したソース電極207aおよびドレイン電極207bと同様の方法、材料、およ
び膜厚で形成することができる。
【0178】
上述したようにTFT308は、ゲート電極302、ゲート絶縁膜303、チャネル形
成領域304、ソース領域305a、ドレイン領域305b、ソース電極306a、ドレ
イン電極306bを含んでおり、さらにTFT308を覆って層間絶縁膜307が形成さ
れている。なお、層間絶縁膜307は、実施の形態3で示した層間絶縁膜206と同様の
材料を用いて形成することができる。
【0179】
また、層間絶縁膜307の一部に形成された開口部を介して、ドレイン電極306bと
発光素子の第1の電極309とが電気的に接続されている。なお、第1の電極309を形
成する方法、材料、および膜厚に関しては、実施の形態3に説明したので、そちらを参照
することとし、ここでの説明は省略する。
【0180】
また、TFT308および第1の電極309の端部を覆うように形成される絶縁体31
0は、実施の形態3で示した絶縁体310と同様の方法、材料、および膜厚で形成するこ
とができる。
【0181】
また、チャネルストップ型のボトムゲート構造を有するTFT328は、図3(B)に
示すような構造を有している。すなわち、TFT328は、基板321上に形成され、T
FT328のドレイン電極326bと発光素子の第1の電極329は、電気的に接続され
ている。なお、第1の電極329上には、発光物質を含む層を挟んで第2の電極が形成さ
れ、実施の形態2で説明したような発光素子が形成される。従って、TFT328は、発
光素子の駆動を制御することができる。
【0182】
図3(B)に示すチャネルストップ型のボトムゲート構造を有するTFT328では、
チャネル形成領域324上のゲート電極と重なる位置に保護膜331が設けられている。
【0183】
なお、保護膜331は、第2の半導体膜および導電膜を加工して、ソース領域325a
、ドレイン領域325b、ソース電極326a、ドレイン電極326bを形成するときに
、チャネル形成領域324を形成する第1の半導体膜がエッチングされてしまわないよう
に、保護する機能を有する膜である。保護膜331は、プラズマCVD法やスパッタリン
グ法等の成膜方法により、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等の絶縁膜
を用いて形成すればよい。
【0184】
また、図3(B)に示すTFT328の場合において、ゲート電極322、ゲート絶縁
膜323、チャネル形成領域324、ソース領域325a、ドレイン領域325b、ソー
ス電極326a、ドレイン電極326b、層間絶縁膜327、第1の電極329、および
絶縁体330は、図3(A)で説明したゲート電極302、ゲート絶縁膜303、チャネ
ル形成領域304、ソース領域305a、ドレイン領域305b、ソース電極306a、
ドレイン電極306b、層間絶縁膜307、第1の電極309、および絶縁体310と同
様の方法、材料、および膜厚で形成すればよいので、図3(A)の説明を参照することと
し、ここでの説明は省略する。
【0185】
以上のようなTFTと、本発明のスチルベン誘導体を含む発光素子とを組み合わせて発
光装置を作製することにより、色純度の良い青色が得られるだけでなく、発光効率に優れ
、寿命の長い発光装置を得ることができる。
(実施の形態6)
【0186】
本実施の形態6では、画素部に本発明により形成される発光素子を有する発光装置につ
いて図4を用いて説明する。なお、本発明における発光装置は、本発明の発光素子に加え
て発光素子を駆動する駆動回路等の制御手段を構成に含むものとする。なお、図4(A)
は、発光装置を示す上面図、図4(B)は図4(A)をA−A’で切断した断面図である
。点線で示された401は駆動回路部(ソース側駆動回路)、402は画素部、403は
駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、404は封止基板、405はシール材で
あり、シール材405で囲まれた内側は、空間407になっている。
【0187】
なお、408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力される信号
を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキ
ット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る
。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(P
WB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけ
でなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0188】
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。素子基板410上には駆動回路
部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401
と、画素部402が示されている。
【0189】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT42
4とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公
知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施
例では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はな
く、基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0190】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とその
ドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。
なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ
型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0191】
第1の電極413上には、発光物質を含む層416、および第2の電極417がそれぞ
れ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極413に用いる材料としては
、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、インジウムスズ酸化物(IT
O:indium tin oxide)膜、インジウム亜鉛酸化物(IZO:indi
um zinc oxide)膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、
Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チ
タン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることがで
きる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクト
がとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0192】
また、発光物質を含む層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、またはインクジェット
法によって形成される。発光物質を含む層416には、発光層、電子発生層、正孔輸送層
、電子輸送層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、正孔注入層、電子注入層、バッフ
ァー層等が含まれる。なお、これらの層を形成する際には、低分子系材料、中分子材料(
オリゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子系材料を用いることができる。また、
発光物質を含む層を形成する場合には、通常、有機化合物を単層もしくは積層で用いる場
合が多いが、本発明においては、有機化合物からなる膜の一部に無機化合物を用いる構成
も含めることとする。
【0193】
また、本発明において、バッファー層は、発光素子の両電極の一方の電極(陽極または
陰極の一方)、または両方の電極に接して設けたり、両方の電極に接することなく設けら
れる。
【0194】
また、発光物質を含む層416上には、第2の電極(陰極)417が形成されている。
【0195】
さらに、シール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより
、素子基板410、封止基板404、およびシール材405で囲まれた空間407に発光
素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、不活性気体(窒素や
アルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される構成も含むものとする

【0196】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料
はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404
に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Rei
nforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポ
リエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0197】
以上のように、本発明のスチルベン誘導体を含む発光装置を作製することにより、色純
度の良い青色が得られるだけでなく、発光効率に優れ、寿命の長い発光装置を得ることが
できる。
【0198】
なお、本実施の形態に示す発光装置は、実施の形態1〜5に示した構成を自由に組み合
わせて実施することが可能である。
(実施の形態7)
【0199】
本実施の形態は、スチルベン誘導体を含む電子機器の一例を図5を参照して説明する。
【0200】
図5(A)に示すテレビジョンは、本体8001、表示部8002等を含んでいる。表
示部8002は、スチルベン誘導体を発光物質を含む層に含む発光素子を用いて画素が形
成され、その画素をマトリクス状に配列させて構成されている。例えば、実施の形態6の
発光装置を表示部8002に適用することができる。いずれにしても、スチルベン誘導体
を含んで構成される表示部8002を備えることにより、青色の色再現性に優れ、消費電
力が低く、さらには長寿命化を実現させたテレビジョンを提供することができる。
【0201】
図5(B)に示す情報端末機器は、本体8101、表示部8102等を含んでいる。表
示部8102は、スチルベン誘導体を発光物質を含む層に含む発光素子を用いて画素が形
成され、その画素をマトリクス状に配列させて構成されている。例えば、実施の形態6の
発光装置を表示部8102に適用することができる。いずれにしても、スチルベン誘導体
を含んで構成される表示部8102を備えることにより、青色の色再現性に優れ、消費電
力が低く、さらには長寿命化を実現させた情報端末機器を提供することができる。
【0202】
図5(C)に示すビデオカメラは、本体8201、表示部8202等を含んでいる。表
示部8202はスチルベン誘導体を発光物質を含む層に含む発光素子を用いて画素が形成
され、その画素をマトリクス状に配列させて構成されている。例えば、実施の形態6の発
光装置を表示部8202に適用することができる。いずれにしても、スチルベン誘導体を
含んで構成される表示部8202を備えることにより、青色の色再現性に優れ、消費電力
が低く、さらには長寿命化を実現させたビデオカメラを提供することができる。
【0203】
図5(D)に示す電話機は、本体8301、表示部8302等を含んでいる。表示部8
302は、スチルベン誘導体を発光物質を含む層に含む発光素子を用いて画素が形成され
、その画素をマトリクス状に配列させて構成されている。例えば、実施の形態6の発光装
置を表示部8302に適用することができる。いずれにしても、スチルベン誘導体を含ん
で構成される表示部8302を備えることにより、青色の色再現性に優れ、消費電力が低
く、さらには長寿命化を実現させた電話機を提供することができる。
【0204】
図5(E)に示す携帯型のテレビジョンは、本体8401、表示部8402等を含んで
いる。表示部8402は、スチルベン誘導体を発光物質を含む層に含む発光素子を用いて
画素が形成され、その画素をマトリクス状に配列させて構成されている。例えば、実施の
形態6の発光装置を表示部8402に適用することができる。いずれにしても、スチルベ
ン誘導体を含んで構成される表示部8402を備えることにより、青色の色再現性に優れ
、消費電力が低く、さらには長寿命化を実現させた携帯型のテレビジョンを提供すること
ができる。またテレビジョンとしては、携帯電話機などの携帯端末に搭載する小型のもの
から、持ち運びをすることができる中型のもの、また、大型のもの(例えば40インチ以
上)まで、幅広いものに、本発明の発光装置を適用することができる。
【0205】
なお、本発明に係る電子機器は、図5(A)〜(E)に限定されず、表示部又は発光部
にスチルベンゼン誘導体を含むものが含まれる。例えば、スイッチのポジション若しくは
ステータスを示す照明用としてスチルベンゼン誘導体を含む発光素子を用いた電子機器を
提供することができる。また、交通信号機の発光光源に、スチルベンゼン誘導体を含む発
光素子を用いることもできる。
【0206】
このように、スチルベン誘導体を含んで構成される表示部等を備えることで、青色の色
再現性に優れ、消費電力が低く、寿命の長い電子機器を提供することができる。
【実施例1】
【0207】
以下に、本発明のスチルベン誘導体の合成例、および実施例について説明するが、本発
明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0208】
(合成例1)
本合成例1では、本発明のスチルベン誘導体の一例として、構造式(9)で表される4
−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]スチルベン(
略称:PCAS)の合成方法について説明する。
【0209】
[ステップ1;4−ブロモスチルベンの合成]
【0210】
(i)4−ブロモベンジルトリフェニルホスホニウムブロミドの合成方法を以下に示す。
まず、4−ブロモベンジルブロミド25.36g(101.5mmol)、アセトン1
00mLを100mL三角フラスコに入れ、トリフェニルホスフィン29.28g(11
1.6mmol)を加えて室温で24時間撹拌した。反応後、反応混合物中の析出物を吸
引ろ過により回収し、4−ブロモベンジルトリフェニルホスホニウムブロミドの白色粉末
状固体を50g、収率96%で得た。
【0211】
(ii)4−ブロモスチルベンの合成方法を以下に示す。
(i)で得た4−ブロモベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド25.3g(49
.5mmol)、ベンズアルデヒド5.25g(49.5mmol)を500mL三口フ
ラスコに入れ窒素置換をし、脱水テトラヒドロフラン(略称:THF)150mLを加え
て冷却した。ここに脱水THF50mLに溶かしたカリウムtert−ブトキシド6.1
0g(54.4mmol)を滴下して加えた後室温で24時間撹拌した。反応後、溶液を
水で洗浄し、有機層と水層とに分けた後、この水層を酢酸エチルで抽出し、得られた抽出
溶液を前記有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した。混合溶液を吸引ろ過し、ろ液
を濃縮した。得られた残渣をメタノールで洗浄後、混合物中の析出物を吸引ろ過により回
収し、目的物の白色固体を3.75g、収率29%で得た。
【0212】
なお、4−ブロモスチルベンの合成スキーム(a−1)を次に示す。
【0213】
【化53】

【0214】
[ステップ2;3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA
)の合成]
【0215】
(i)3−ブロモ−9−フェニルカルバゾールの合成方法について以下に示す。
先ず、N−フェニルカルバゾール24.3g(100mmol)を氷酢酸600mLに
溶かし、N−ブロモコハク酸イミド17.8g(100mmol)をゆっくり加え、室温
で24時間撹拌した。この氷酢酸溶液を氷水1Lに撹拌しながら滴下した。析出した白色
固体を水で3回洗浄した。この固体をジエチルエーテル150mLに溶解し、飽和炭酸水
素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄した。
【0216】
この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。これを濾過し、得られたろ液を濃縮した
。得られた残渣にメタノール約50mLを加え、超音波を照射して均一に溶解させた。こ
の溶液を静置することで白色固体が析出した。これを濾過し、ろ物を乾燥させる事で、白
色粉末の3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール28.4g(収率88%)を得た。
【0217】
(ii)3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA)の合
成方法について以下に示す。
窒素下で、(i)で得た3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール19g(60mmol
)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(略称:Pd(dba))34
0mg(0.6mmol)、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(略称:
DPPF)1.6g(3.0mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(略称:te
rt−BuONa)13g(180mmol)の混合物に、脱水キシレン110mL、ア
ニリン7.0g(75mmol)を加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、7.5時間
加熱撹拌した。
【0218】
反応終了後、この懸濁液に50℃に温めたトルエンを約500mL加え、これをフロリ
ジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この残渣をヘキ
サン−酢酸エチルを加えて超音波を照射した。得られた懸濁液を濾過し、このろ物を乾燥
し、クリーム色の粉末を15g得た(収率75%)。核磁気共鳴法(H NMR)によ
って、このクリーム色粉末が3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(
略称:PCA)であることを確認した。
【0219】
この化合物のH NMRを次に示す。また、H NMRチャートを図6(A)、(
B)に示す。なお、図6(B)は、図6(A)における5ppm〜9ppmの範囲を拡大
して表したチャートである。
H NMR(300MHz、CDCl);δ=6.84(t、J=6.9Hz、1
H)、6.97(d、J=7.8Hz、2H)、7.20−7.61(m、13H)、7
.90(s、1H)、8.04(d、J=7.8Hz、1H)。
【0220】
この化合物のH NMRを次に示す。また、H NMRチャートを図52(A)、(
B)に示す。なお、図52(B)は、図52(A)における6.5ppm〜8.5ppm
の範囲を拡大して表したチャートである。
H NMR(300MHz、DMSO−d);δ=6.73(t、J=7.5Hz、
H)、7.02(d、J=8.1Hz、2H)、7.16−7.70(m、12H)、
7.95(s、1H)、8.06(s、1H)、8.17(d、J=7.8Hz)。
【0221】
さらに、13C NMRを次に示す。また、13C NMRチャートを図53(A)、(
B)に示す。なお、図53(B)は、図53(A)における100ppm〜150ppm
の範囲を拡大して表したチャートである。
13C NMR(75.5MHz、DMSO−d);δ=109.55、110.30
、110.49、114.71、118.22、119.70、120.14、120.
61、122.58、123.35、126.18、126.48、127.37、12
9.15、130.14、135.71、136.27、137.11、140.41、
145.61。
【0222】
また、3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA)の合
成スキーム(b−1)を次に示す。
【0223】
【化54】

【0224】
[ステップ3;4−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミ
ノ]スチルベン(略称:PCAS)の合成]
【0225】
4−ブロモスチルベン1.00g(3.86mmol)、3−(N−フェニルアミノ)
−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA)1.29g(3.86mmol)、ビス(
ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.11g(0.193mmol)、ナトリウムt
ert−ブトキシド1.85g(19.3mmol)を100mL三口フラスコへ入れ窒
素置換をし、さらにトルエン20mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10%ヘ
キサン溶液)0.39g(0.193mmol)を加えて80℃で7時間加熱し撹拌した

【0226】
反応後、溶液を水で洗浄し、有機層と水層とに分けた後、この水層をトルエンで抽出し
、得られた抽出溶液を前記有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した。混合溶液をろ
過し、ろ液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン
、ヘキサン混合液)により精製し、トルエン、ヘキサン混合液により再結晶したところ目
的物の黄色固体を1.34g、収率68%で得た。核磁気共鳴法(H NMR)によっ
て、この化合物が4−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルア
ミノ]スチルベン(略称:PCAS)であることを確認した。
【0227】
この化合物のH NMRを以下に示す。また、H NMRチャートを図7に示す。
【0228】
H NMR(300MHz,CDCl);δ=7.90(d,J= 7.8 Hz
,1H),7.94(s,1H),7.61−7.31(m,14H),7.25−7.
00(m,12H)
【0229】
また、4−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]ス
チルベン(略称:PCAS)の合成スキーム(c−1)を次に示す。
【0230】
【化55】

【0231】
また、4−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]ス
チルベン(以下、PCASと示す)の吸収スペクトルを図8に示す。図8において横軸は
波長(nm)、縦軸は強度(単位なし)を表す。なお、図8は、PCASをトルエン溶液
に溶解させた状態における吸収スペクトルを示すものである。
【0232】
また、PCASの発光スペクトルを図9に示す。図9において、横軸は波長(nm)、
縦軸は発光強度(任意単位)を表す。なお、図9は、PCASをトルエン溶液に溶解させ
た状態における発光スペクトル(励起波長393nm)である。図9から、PCASから
の発光は、トルエン溶液中において451nmにピークを有することが分かる。そしてこ
れらの発光は、青色系の発光色として視認された。
【0233】
また、得られたPCASを蒸着法によって成膜し、薄膜状態における当該化合物のイオ
ン化ポテンシャルを、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したとこ
ろ、−5.30eVであった。また、薄膜状態における当該化合物の吸収スペクトルを、
UV・可視光分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定し、吸収スペクトル
の長波長側の吸収端をtaucプロットにより求め、その吸収端のエネルギーをバンドギ
ャップ(2.91eV)とし、LUMO準位を求めたところ、LUMO準位は−2.39
eVであった。
【0234】
さらに、得られたPCASの分解温度Tを示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子
株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、T=359℃であり、
良好な耐熱性を示すことが分かった。
【0235】
なお、PCASの基底状態における最適分子構造を、密度汎関数法(DFT)のB3L
YP/6−311(d,p)により計算した。DFTは、電子相関を考慮しないハートリ
ー・フォック(HF)法に比較して計算精度が良く、同レベルの計算精度である摂動法(
MP)法よりも計算コストが小さいため、本計算で採用した。計算は、ハイパフォーマン
スコンピュータ(HPC)(SGI社製、Altix3700 DX)を用いて行った。
この計算結果から得られたPCASのHOMO準位の値は、−5.00eVであった。
【0236】
また、DFTで構造最適化した分子構造において時間依存密度汎関数法(TDDFT)
のB3LYP/6−311(d,p)を適用することにより、PCASの一重項励起エネ
ルギー(バンドギャップ)を算出したところ、一重項励起エネルギーは3.04eVと算
出された。
【0237】
(合成例2)
本合成例2では、本発明のスチルベン誘導体の一例として、構造式(55)で表される
4−tert−ブチル−4’−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フ
ェニルアミノ]スチルベン(略称:PCATBS)の合成方法について説明する。
【0238】
[ステップ1;4−ブロモ−4’−tert−ブチルスチルベンの合成]
【0239】
合成例1の[ステップ1](i)と同様にして4−ブロモベンジルトリフェニルホスホ
ニウムブロミドを得た後、4−ブロモベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド15g
(29.28mmol)、4−tert−ブチルベンズアルデヒド7.12g(43.9
2mmol)を500mL、三口フラスコに入れ窒素置換をした後、THF150mLを
加えて氷冷した。ここに、THF50mLに溶かしたカリウムtert−ブトキシド3.
94g(35.14mmol)を滴下して加えた後室温で24時間撹拌した。
【0240】
反応後、溶液を水で洗浄し、有機層と水層とに分けた後、水層を酢酸エチルで抽出し、
抽出溶液を前記有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した。混合溶液をろ過し、ろ液
を濃縮した。得られた残渣をメタノールで洗浄後、混合物中の析出物を吸引ろ過により回
収し、目的物の白色固体を3.30g、収率35%で得た。
【0241】
また、4−ブロモ−4’−tert−ブチルスチルベンの合成スキーム(a−2)を次
に示す。
【0242】
【化56】

【0243】
[ステップ2;3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA
)の合成]
【0244】
なお、本合成例2のステップ2において合成される3−(N−フェニルアミノ)−9−
フェニルカルバゾールは、合成例1のステップ2において説明した物質と同様であるため
、ここでの説明は省略することとする。
【0245】
[ステップ3;4−tert−ブチル−4’−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−
イル)−N−フェニルアミノ]スチルベン(略称:PCATBS)の合成]
【0246】
4−ブロモ−4’−tert−ブチルスチルベン1.0g(3.17mmol)、3−
(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA)1.06g(3.
17mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.09g(0.159m
mol)、ナトリウムtert−ブトキシド1.52g(15.86mmol)を100
mL三口フラスコへ入れ窒素置換をし、さらに脱水トルエン20mL、トリ(tert−
ブチル)ホスフィン(10%ヘキサン溶液)0.32g(0.159mmol)を加えて
80℃で3時間加熱した。
【0247】
反応後、溶液を水で洗浄し、有機層と水層とに分けた後、水層をトルエンで抽出し、抽
出溶液を前記有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した。混合溶液をろ過し、ろ液を
濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン、ヘキサン)によ
り精製し、トルエン、ヘキサンにより再結晶したところ目的物の黄色固体を0.67g、
収率37%で得た。核磁気共鳴法(H NMR)によって、この化合物が4−tert
−ブチル−4’−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ
]スチルベン(略称:PCATBS)であることを確認した。
【0248】
この化合物のH NMRを以下に示す。また、H NMRチャートを図10に示す

【0249】
H NMR(300MHz,CDCl);δ=8.00(d,J=7.8Hz,1
H),7.94(s,1H),7.64−7.33(m,14H),7.27−6.99
(m,11H),1.32(s,9H)
【0250】
また、4−tert−ブチル−4’−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)
−N−フェニルアミノ]スチルベン(略称:PCATBS)の合成スキーム(c−2)を
次に示す。
【0251】
【化57】

【0252】
また、4−tert−ブチル−4’−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)
−N−フェニルアミノ]スチルベン(以下、PCATBSと示す)の吸収スペクトルを図
11に示す。図11において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(単位なし)を表す。なお
、図11は、PCATBSをトルエン溶液に溶解させた状態における吸収スペクトルを示
すものである。
【0253】
また、PCATBSの発光スペクトルを図12に示す。図12において、横軸は波長(
nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。なお、図12は、PCATBSをトルエン
溶液に溶解させた状態における発光スペクトル(励起波長391nm)である。図12か
ら、PCATBSからの発光は、トルエン溶液中において445nmにピークを有するこ
とが分かる。そしてこれらの発光は、青色系の発光色として視認された。
【0254】
また、得られたPCATBSを蒸着法によって成膜し、薄膜状態における当該化合物の
イオン化ポテンシャルを、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定した
ところ、−5.26eVであった。また、薄膜状態における当該化合物の吸収スペクトル
を、UV・可視光分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定し、吸収スペク
トルの長波長側の吸収端をtaucプロットにより求め、その吸収端のエネルギーをバン
ドギャップ(2.93eV)とし、LUMO準位を求めたところ、LUMO準位は−2.
33eVであった。
【0255】
さらに、得られたPCATBSの分解温度Tを示差熱熱重量同時測定装置(セイコー
電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、T=381℃であ
り、良好な耐熱性を示すことが分かった。
【0256】
(合成例3)
本合成例3では、本発明のスチルベン誘導体の一例として、構造式(57)で表される
4,4’−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]
スチルベン(略称:PCA2S)の合成方法について説明する。
【0257】
[ステップ1;4,4’−ジブロモスチルベンの合成]
【0258】
合成例1の[ステップ1](i)と同様にして4−ブロモベンジルトリフェニルホスホ
ニウムブロミドを得た後、4−ブロモベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド48.
05g(93.80mmol)、4−ブロモベンズアルデヒド20.83g(112.6
mmol)を1Lの三口フラスコに入れ窒素置換をし、脱水THF300mLを加えて氷
冷した。ここに、THF100mlに溶かしたカリウムtert−ブトキシド12.63
g(112.6mmol)を滴下して加えた後室温で24時間撹拌した。
【0259】
反応後、溶液を水で洗浄し、有機層と水層とに分けた後、水層を酢酸エチルで抽出し、
抽出溶液と前記有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した。混合溶液をろ過し、ろ液
を濃縮した。得られた残渣をメタノールで洗浄後、混合物中の析出物を吸引ろ過により回
収し、目的物の白色固体を10.77g、収率34%で得た。
【0260】
また、4,4’−ジブロモスチルベンの合成スキーム(d−1)を次に示す。
【0261】
【化58】

【0262】
[ステップ2;3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA
)の合成]
【0263】
なお、本合成例3のステップ2において合成される3−(N−フェニルアミノ)−9−
フェニルカルバゾールは、合成例1のステップ2において説明した物質と同様であるため
、ここでの説明は省略することとする。
【0264】
[ステップ3;4,4’−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フ
ェニルアミノ]スチルベン(略称:PCA2S)の合成]
【0265】
4,4’−ジブロモスチルベン1.00g(2.95mmol)、3−(N−フェニル
アミノ)−9−フェニルカルバゾール2.19g(6.56mmol)、ビス(ジベンジ
リデンアセトン)パラジウム0.189g(0.328mmol)、ナトリウムtert
−ブトキシド3.15g(32.8mmol)を100mL三口フラスコへ入れ窒素置換
をし、脱水トルエン20mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10%ヘキサン溶
液)0.66g(0.328mmol)を加えて80℃で7時間加熱した。
【0266】
反応後、溶液を水で洗浄し、有機層と水層とに分けた後、水層を酢酸エチルで抽出し、
抽出溶液を前記有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した。混合溶液をろ過し、ろ液
を濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン、ヘキサン)に
より精製し、クロロホルム、ヘキサンにより再結晶したところ目的物の黄色固体を1.1
9g、収率47%で得た。核磁気共鳴法(H NMR)によって、この化合物が4,4
’−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]スチル
ベン(略称:PCA2S)であることを確認した。
【0267】
この化合物のH NMRを以下に示す。また、H NMRチャートを図13に示す

【0268】
H NMR(300MHz,CDCl);δ=8.00(d,J=7.8Hz,2
H),7.94(s,2H),7.62−7.33(m,20H),7.24−6.94
(m,10H)
【0269】
また、4,4’−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニル
アミノ]スチルベン(略称:PCA2S)の合成スキーム(e−1)を次に示す。
【0270】
【化59】

【0271】
また、4,4’−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニル
アミノ]スチルベン(以下、PCA2Sと示す)の吸収スペクトルを図14に示す。図1
4において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(単位なし)を表す。なお、図14は、PC
A2Sをトルエン溶液に溶解させた状態における吸収スペクトルを示すものである。
【0272】
また、PCA2Sの発光スペクトルを図15に示す。図15において、横軸は波長(n
m)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。なお、図15は、PCA2Sをトルエン溶液
に溶解させた状態における発光スペクトル(励起波長397nm)である。図15から、
PCA2Sからの発光は、トルエン溶液中において446nmにピークを有することが分
かる。そしてこれらの発光は、青色系の発光色として視認された。
【0273】
また、得られたPCA2Sを蒸着法によって成膜し、薄膜状態における当該化合物のイ
オン化ポテンシャルを、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したと
ころ、−5.20eVであった。また、薄膜状態における当該化合物の吸収スペクトルを
、UV・可視光分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定し、吸収スペクト
ルの長波長側の吸収端をtaucプロットにより求め、その吸収端のエネルギーをバンド
ギャップ(2.74eV)とし、LUMO準位を求めたところ、LUMO準位は−2.4
6eVであった。
【0274】
さらに、得られたPCA2Sの分解温度Tを示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電
子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、T=484℃であり
、良好な耐熱性を示すことが分かった。
【0275】
なお、PCA2Sの基底状態における最適分子構造を、先の合成例1と同様の手法にて
計算した。この計算結果から得られたPCA2SのHOMO準位の値は、−4.63eV
であった。
【0276】
また、先の合成例1と同様の手法にてPCA2Sの一重項励起エネルギー(バンドギャ
ップ)を算出したところ、一重項励起エネルギーは2.84eVと算出された。
【0277】
(合成例4)
本合成例4では、本発明のスチルベン誘導体の一例として、構造式(96)で表される
4−{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアミノ}スチル
ベン(略称:YGAS)の合成方法について説明する。
【0278】
[ステップ1;4−ブロモスチルベンの合成]
【0279】
なお、本合成例4のステップ1において合成される4−ブロモスチルベンは、合成例1
のステップ1において説明した物質と同様であるため、ここでの説明は省略することとす
る。
【0280】
[ステップ2;9−[4−(N−フェニルアミノ)フェニル]カルバゾール(略称:YG
A)の合成]
【0281】
(i)N−(4−ブロモフェニル)カルバゾールの合成方法について以下に示す。
1,4−ジブロモベンゼンを56.3g(0.24mol)、カルバゾールを31.3
g(0.18mol)、よう化銅を4.6g(0.024mol)、炭酸カリウムを66
.3g(0.48mol)、18−クラウン−6−エーテルを2.1g(0.008mo
l)、300mLの三口フラスコに入れ窒素置換し、1,3−ジメチル−3,4,5,6
−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(略称:DMPU)を8mL加え、窒素雰囲
気下にて180℃で6時間撹拌した。
【0282】
反応混合物を室温まで冷ましてから、吸引ろ過により沈殿物を除去し、ろ液を希塩酸、
飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥
した。乾燥後、反応混合物を自然ろ過し、得られたろ液を濃縮し、得られた油状物質をシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製し、ク
ロロホルム、ヘキサンにより再結晶したところ、目的物の淡褐色プレート状結晶を20.
7g、収率35%で得た。核磁気共鳴法(H NMR)によって、この化合物がN−(
4−ブロモフェニル)カルバゾールであることを確認した。
【0283】
この化合物のH NMRを次に示す。
【0284】
H NMR(300MHz,DMSO−d)δ=8.14(d,J=7.8Hz,
2H),7.73(d,J=8.7Hz,2H),7.46(d,J=8.4Hz,2H
),7.42−7.26(m,6H)
【0285】
(ii)9−[4−(N−フェニルアミノ)フェニル]カルバゾール(略称:YGA)の
合成。
【0286】
次に、(i)で得たN−(4−ブロモフェニル)カルバゾールを5.4g(17.0m
mol)、アニリンを1.8mL(20.0mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン
)パラジウム(0)(略称:Pd(dba))を100mg(0.17mmol)、ナ
トリウムtert−ブトキシド(略称:tert−BuONa)3.9g(40mmol
)を200mLの三口フラスコに入れ窒素置換し、トリ(tert−ブチル)ホスフィン
(略称:P(tert−Bu))の10%ヘキサン溶液を0.1mL、脱水トルエン5
0mLを加えて、80℃、窒素雰囲気下にて6時間撹拌した。
【0287】
反応混合物を、フロリジール、セライト、アルミナを通してろ過し、ろ液を水、飽和食
塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。反応混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して
得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1
)により精製したところ目的物を4.1g、収率73%で得た。核磁気共鳴法(H N
MR)によって、この化合物が9−[4−(N−フェニルアミノ)フェニル]カルバゾー
ル(略称:YGA)であることを確認した。
【0288】
この化合物のH NMRを次に示す。また、H NMRチャートを図16に示す。
【0289】
H NMR(300MHz,DMSO−d)δ=8.47(s,1H),8.22
(d,J=7.8Hz,2H),7.44−7.16(m,14H),6.92−6.8
7(m,1H)
【0290】
また、9−[4−(N−フェニルアミノ)フェニル]カルバゾールの合成スキーム(f
−1)を次に示す。
【0291】
【化60】

【0292】
[ステップ3;4−{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニル
アミノ}スチルベン(略称:YGAS)の合成]
【0293】
4−ブロモスチルベン0.62g(2.38mmol)、9−[4−(N−フェニルア
ミノ)フェニル]カルバゾール0.88g(2.62mmol)、ビス(ジベンジリデン
アセトン)パラジウム0.068g(0.119mmol)、ナトリウムtert−ブト
キシド1.14g(11.9mmol)を100mL三口フラスコへ入れ窒素置換をし、
さらに脱水トルエン15mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10%ヘキサン溶
液)0.24g(0.119mmol)を加えて80℃で7時間加熱した。
【0294】
反応後、溶液を水で洗浄し、有機層と水層とに分けた後、水層をトルエンで抽出し、抽
出溶液を前記有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した。混合溶液をろ過し、ろ液を
濃縮し得られた残渣をクロロホルムに溶かしてからセライト、フロリジール、アルミナを
通してろ過した。ろ液を濃縮し、トルエン、ヘキサンにより再結晶したところ目的物の黄
色固体を1.0g、収率80%で得た。
【0295】
この化合物のH NMRを以下に示す。また、H NMRチャートを図17に示す

【0296】
H NMR(300MHz,CDCl);δ=8.14(d,J=7.8Hz,2
H),7.52−7.26(m,19H),7.22−7.06(m,7H)
【0297】
また、4−{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアミノ
}スチルベン(略称:YGAS)の合成スキーム(g−1)を次に示す。
【0298】
【化61】

【0299】
また、4−{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアミノ
}スチルベン(以下、YGASと示す)の吸収スペクトルを図18に示す。図18におい
て横軸は波長(nm)、縦軸は強度(単位なし)を表す。なお、図18は、トルエン溶液
に溶解させた状態における吸収スペクトルを示すものである。
【0300】
また、YGASの発光スペクトルを図19に示す。図19において横軸は波長(nm)
、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。なお、図19は、トルエン溶液に溶解させた状態
における発光スペクトル(励起波長382nm)である。図19から、YGASからの発
光は、トルエン溶液中において428nmにピークを有することが分かる。そしてこれら
の発光は、青色系の発光色として視認された。
【0301】
また、得られたYGASを蒸着法によって成膜し、薄膜状態における当該化合物のイオ
ン化ポテンシャルを、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したとこ
ろ、−5.65eVであった。また、薄膜状態における当該化合物の吸収スペクトルを、
UV・可視光分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定し、吸収スペクトル
の長波長側の吸収端をtaucプロットにより求め、その吸収端のエネルギーをバンドギ
ャップ(2.99eV)とし、LUMO準位を求めたところ、LUMO準位は−2.66
eVであった。
【0302】
さらに、得られたYGASの分解温度Tを示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子
株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、Tは384℃であり、
良好な耐熱性を示すことが分かった。
【0303】
なお、YGASの基底状態における最適分子構造を、先の合成例1と同様の手法にて計
算した。この計算結果から得られたYGASのHOMO準位の値は、−5.10eVであ
った。
【0304】
また、先の合成例1と同様の手法にてYGASの一重項励起エネルギー(バンドギャッ
プ)を算出したところ、一重項励起エネルギーは3.09eVと算出された。
【0305】
(合成例5)
本合成例5では、本発明のスチルベン誘導体の一例として、構造式(129)で表され
る4,4’−ビス{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルア
ミノ}スチルベン(略称:YGA2S)の合成方法について説明する。
【0306】
[ステップ1;4,4’−ジブロモスチルベンの合成]
【0307】
なお、本合成例5のステップ1において合成される4,4’−ジブロモスチルベンは、
合成例3のステップ1において説明した物質と同様であるため、ここでの説明は省略する
こととする。
【0308】
[ステップ2;9−[4−(N−フェニルアミノ)フェニル]カルバゾール(略称:YG
A)の合成]
【0309】
なお、本合成例5のステップ2において合成される9−[4−(N−フェニルアミノ)
フェニル]カルバゾールは、合成例4のステップ2において説明した物質と同様であるた
め、ここでの説明は省略することとする。
【0310】
[ステップ3;4,4’−ビス{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N
−フェニルアミノ}スチルベン(略称:YGA2S)の合成]
【0311】
4,4’−ジブロモスチルベン1.00g(2.95mmol)、9−[4−(N−フ
ェニルアミノ)フェニル]カルバゾール2.19g(6.56mmol)、ビス(ジベン
ジリデンアセトン)パラジウム0.189g(0.328mmol)、ナトリウムter
t−ブトキシド3.15g(32.8mmol)を100mL三口フラスコへ入れ窒素置
換をし、さらに脱水トルエン20mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10%ヘ
キサン溶液)0.66g(0.328mmol)を加えて80℃で7時間加熱した。
【0312】
反応後、溶液を水で洗浄し、有機層と水層とに分けた後、混合溶液中の析出物を吸引ろ
過により回収し、ろ物をクロロホルムに溶かしてからセライト、フロリジール、アルミナ
を通してろ過した。ろ液を濃縮し、クロロホルム、ヘキサンにより再結晶したところ目的
物の黄色固体を1.51g、収率60%で得た。
【0313】
この化合物のH NMRを以下に示す。また、H NMRチャートを図20に示す

【0314】
H NMR(300MHz,CDCl);δ=8.14(d,J=7.8Hz,4
H),7.47−7.28(m,28H),7.25−7.08(m,10H),7.0
2(s,2H)
【0315】
また、4,4’−ビス{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェ
ニルアミノ}スチルベン(略称:YGA2S)の合成スキーム(h−1)を次に示す。
【0316】
【化62】

【0317】
また、4,4’−ビス{N−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェ
ニルアミノ}スチルベン(以下、YGA2Sと示す)の吸収スペクトルを図21に示す。
図21において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(単位なし)を表す。なお、図21は、
トルエン溶液に溶解させた状態における吸収スペクトルを示すものである。
【0318】
また、YGA2Sの発光スペクトルを図22に示す。図22において横軸は波長(nm
)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。なお、図22は、トルエン溶液に溶解させた状
態における発光スペクトル(励起波長395nm)である。図22から、YGA2Sから
の発光は、トルエン溶液中において435nmにピークを有することが分かる。そしてこ
れらの発光は、青色系の発光色として視認された。
【0319】
また、得られたYGA2Sを蒸着法によって成膜し、薄膜状態における当該化合物のイ
オン化ポテンシャルを、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したと
ころ、−5.77eVであった。また、薄膜状態における当該化合物の吸収スペクトルを
、UV・可視光分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定し、吸収スペクト
ルの長波長側の吸収端をtaucプロットにより求め、その吸収端のエネルギーをバンド
ギャップ(2.81eV)とし、LUMO準位を求めたところ、LUMO準位は−2.9
6eVであった。
【0320】
さらに、得られたYGA2Sの分解温度Tを示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電
子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、Tは483℃であり
、良好な耐熱性を示すことが分かった。
【0321】
なお、YGA2Sの基底状態における最適分子構造を、先の合成例1と同様の手法にて
計算した。この計算結果から得られたYGA2SのHOMO準位の値は、−5.20eV
であった。
【0322】
また、先の合成例1と同様の手法にてYGA2Sの一重項励起エネルギー(バンドギャ
ップ)を算出したところ、一重項励起エネルギーは2.87eVと算出された。
【実施例2】
【0323】
本実施例では、本発明のスチルベン誘導体を発光物質を含む層の一部に用いて発光素子
を作製する場合であって、具体的には、本発明のスチルベン誘導体を発光物質を含む層の
発光層のゲスト材料として用いた発光素子について説明する。
【0324】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。なお、本実施例では、第1の電極の
材料として透明導電膜であるITSO(ITOに酸化珪素が2〜10重量%含まれたター
ゲットを用いてスパッタリング法で得られる酸化珪素を含む酸化インジウムスズ)を用い
、スパッタリング法により110nmの膜厚で形成し、エッチングによって第1の電極の
形状を2mm×2mmとした。
【0325】
次に第1の電極上に発光素子を形成するための前処理として、多孔質の樹脂(代表的に
はPVA(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)で基板表面を洗浄し、その後、
大気下、200℃で1時間熱処理を行い、UVオゾン処理を370秒行った。さらに、減
圧下、170℃で30分熱処理を行った。
【0326】
次に、第1の電極上に発光物質を含む層を形成した。なお、本実施例における発光物質
を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を真空蒸着法に
より順次積層して形成した。
【0327】
まず、正孔注入層は、4,4’−ビス(N−{4−[N,N−ビス(3−メチルフェニ
ル)アミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)とモリ
ブデン酸化物を質量比で4:2となるように共蒸着により形成し、膜厚は50nmとした
。正孔輸送層にNPBを膜厚が10nmとなるように蒸着して形成した。
【0328】
次に、発光層を形成した。なお、発光層の膜厚は30nmとなるようにした。発光層の
構成は、後述する。
【0329】
さらに電子輸送層は、バソキュプロイン(略称:BCP)を、膜厚が10nmとなるよ
うに蒸着して形成した。電子注入層は、Alqとリチウムを質量比で1:0.01とな
るように共蒸着により形成し、膜厚を20nmとなるようにした。
【0330】
続いて第2の電極としてAlを200nmの膜厚で真空蒸着により成膜し、素子を完成
させた。なお、基板上に形成された上記素子が大気に曝されることが無いように窒素雰囲
気下で封止基板を用いて封止を行った。
【0331】
ここで、上記構成における発光層として4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル
(略称:CBP)と本発明のスチルベン誘導体であるPCASを質量比で1:0.1とな
るように共蒸着した素子を素子1、上記構成における発光層としてCBPと本発明のスチ
ルベン誘導体であるPCATBSを質量比で1:0.1となるように共蒸着した素子を素
子2、上記構成における発光層としてCBPと本発明のスチルベン誘導体であるPCA2
Sを質量比で1:0.1となるように共蒸着した素子を素子3、上記構成における発光層
としてCBPと本発明のスチルベン誘導体であるYGASを質量比で1:0.05となる
ように共蒸着した素子を素子4、上記構成における発光層としてCBPと本発明のスチル
ベン誘導体であるYGA2Sを質量比で1:0.05となるように共蒸着した素子を素子
5とする。
【0332】
上記のように作製した発光素子(素子1〜素子5)に電圧を印加して発光素子を駆動さ
せ、それぞれの素子特性を測定した。
【0333】
素子1の輝度−電流密度特性を図23に、輝度−電圧特性を図24に、電流効率−輝度
特性を図25に、および発光スペクトルを図26にそれぞれ示した。なお、素子1では、
7.4Vの電圧を印加した際、電流密度が50.9mA/cmであり、輝度は、972
cd/cm、電流効率は、1.91cd/Aであった。また、448nmにピークを有
し、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.15,0.13)と良好な色純
度で、青色の発光を呈している。
【0334】
素子2の輝度−電流密度特性を図27に、輝度−電圧特性を図28に、電流効率−輝度
特性を図29に、および発光スペクトルを図30にそれぞれ示した。なお、素子2では、
7.0Vの電圧を印加した際、電流密度が58.7mA/cmであり、輝度は、957
cd/cm、電流効率は、1.63cd/Aであった。また、442nmにピークを有
し、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.15,0.10)と良好な色純
度で、青色の発光を呈している。
【0335】
素子3の輝度−電流密度特性を図31に、輝度−電圧特性を図32に、電流効率―輝度
特性を図33に、および発光スペクトルを図34にそれぞれ示した。なお、素子3では、
8.4Vの電圧を印加した際、電流密度が34.9mA/cmであり、輝度は、110
0cd/cm、電流効率は、3.16cd/Aであった。また、458nmにピークを
有し、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.16,0.20)と青色の発
光を呈している。
【0336】
素子4の輝度−電流密度特性を図35に、輝度−電圧特性を図36に、電流効率−輝度
特性を図37に、および発光スペクトルを図38にそれぞれ示した。なお、素子4では、
12.2Vの電圧を印加した際、電流密度が180mA/cmであり、輝度は、941
cd/cm、電流効率は、0.522cd/Aであった。また、436nmにピークを
有し、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.15,0.07)と良好な色
純度で、濃い青色の発光を呈している。
【0337】
素子5の輝度−電流密度特性を図39に、輝度−電圧特性を図40に、電流効率―輝度
特性を図41に、および発光スペクトルを図42にそれぞれ示した。なお、素子5では、
10.8Vの電圧を印加した際、電流密度が39.4mA/cmであり、輝度は、92
2cd/cm、電流効率は、2.34cd/Aであった。また、443nmにピークを
有し、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.15,0.11)と良好な色
純度で、青色の発光を呈している。
【0338】
また、本実施例では、上記素子5のうち、発光層において、CBPの代わりにCzPA
を用い、CzPAとYGA2Sを質量比で1:0.05となるように共蒸着し、また電子
輸送層をBCPからAlqに換えた素子を素子6として作製した。さらに、正孔注入層
において、NPBとモリブデン酸化物を質量比で4:1となるように共蒸着を行い、膜厚
を50nmとし、他は素子6と同様に成膜した素子を素子7とし、同様に素子特性を測定
した。
【0339】
素子6の輝度−電流密度特性を図43に、輝度−電圧特性を図44に、電流効率―輝度
特性を図45に、および発光スペクトルを図46にそれぞれ示した。なお、素子6では、
6.2Vの電圧を印加した際、電流密度が16.1mA/cmであり、輝度は、104
0cd/cm、電流効率は、6.42cd/Aであった。また、444nmにピークを
有し、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.17,0.18)と良好な色
純度で、青色の発光を呈している。この結果から、素子6は、先に示した素子1〜素子5
と比べて高効率な素子であることが分かる。
【0340】
素子7の輝度−電流密度特性を図47に、輝度−電圧特性を図48に、電流効率−輝度
特性を図49に、および発光スペクトルを図50にそれぞれ示した。なお、素子7では、
6.4Vの電圧を印加した際、電流密度が37.3mA/cmであり、輝度は、109
0cd/cm、電流効率は、2.93cd/Aであった。また、444nmにピークを
有し、CIE表色系における色度座標は(x,y)=(0.16,0.17)と良好な色
純度で、青色の発光を呈している。
【0341】
なお、素子7は、初期輝度を500cd/mに設定し、電流密度一定の条件で駆動し
た際、200時間経過後も初期輝度(500cd/m)に対して86%の輝度(相対輝
度)を保っていた。
【0342】
さらに、上記試験を継続したところ、図51のような結果が得られた。図51の横軸は
駆動時間(h)、縦軸は500cd/mを100%としたときの相対輝度(%)を表す
。図51から初期輝度を500cd/mとした場合の予想される輝度の半減期は280
0時間であった。以上のことから、素子7は非常に寿命が長い素子であると言える。
【符号の説明】
【0343】
101 第1の電極
102 第2の電極
103 発光物質を含む層
104 発光層
201 基板
202a ソース領域
202b ドレイン領域
203 チャネル形成領域
204 ゲート絶縁膜
205 ゲート電極
206 層間絶縁膜
207a ソース電極
207b ドレイン電極
208 TFT
209 第1の電極
210 絶縁体
301 基板
302 ゲート電極
303 ゲート絶縁膜
304 チャネル形成領域
305a ソース領域
305b ドレイン領域
306a ソース電極
306b ドレイン電極
307 層間絶縁膜
308 TFT
309 第1の電極
310 絶縁体
321 基板
322 ゲート電極
323 ゲート絶縁膜
324 チャネル形成領域
325a ソース領域
325b ドレイン領域
326a ソース電極
326b ドレイン電極
327 層間絶縁膜
328 TFT
329 第1の電極
330 絶縁体
331 保護膜
401 駆動回路部(ソース側駆動回路)
402 画素部
403 駆動回路部(ゲート側駆動回路)
404 封止基板
405 シール材
407 空間
408 配線
409 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
410 素子基板
411 スイッチング用TFT
412 電流制御用TFT
413 第1の電極
414 絶縁物
416 発光物質を含む層
417 第2の電極(陰極)
418 発光素子
423 nチャネル型TFT
424 pチャネル型TFT
8001 本体
8002 表示部
8101 本体
8102 表示部
8201 本体
8202 表示部
8301 本体
8302 表示部
8401 本体
8402 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(5)で表されるスチルベン誘導体。
【化01】


(式中、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基を表す。また、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Arは、炭素数6〜25のアリール基を表す。)
【請求項2】
一般式(6)で表されるスチルベン誘導体。
【化02】


(式中、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基を表す。また、R〜Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、R〜R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基を表す。)
【請求項3】
一般式(7)で表されるスチルベン誘導体。
【化03】


(式中、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基を表す。また、Arは、炭素数6〜25のアリール基を表す。)
【請求項4】
一般式(8)で表されるスチルベン誘導体。
【化04】


(式中、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基を表す。また、R〜R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜25のアリール基を表す。)
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスチルベン誘導体を含む層を電極間に有することを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項5に記載の発光素子を画素部に有することを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発光装置を表示部に用いることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate


【公開番号】特開2013−10760(P2013−10760A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165560(P2012−165560)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2006−272593(P2006−272593)の分割
【原出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】