説明

スチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法及びトナーの製造方法

【課題】ホットオフセットの発生を抑制し、トナーの光沢度を良好とするとともに、容易にトナーに導入できるスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法及びそのトナーの製造方法を提供する。
【解決手段】スチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法は、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、重合開始剤を混合して乳化重合し、樹脂粒子分散液を調製する工程と、スチレン系モノマー、アクリル系モノマーを、水系媒体中に分散させ、モノマー分散液を調製する工程と、前記樹脂粒子分散液と、前記モノマー分散液を混合し、この混合液を加熱して前記重合開始剤の10時間半減期温度に達したところで、0.2m/s以下の攪拌速度で少なくとも20分間攪拌し、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法及びトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンターやデジタル複写機等では、画像処理技術の向上やトナーの小径化等により、高画質な画像の印刷が可能となった。注文に応じて、迅速に高画質な印刷物を提供できることから、特に軽印刷分野において利用されることが多い。このような軽印刷分野における印刷物のなかには写真画像も多く、光沢度が高いトナーが要求されている。
【0003】
トナー画像の光沢度を高めるため、従来、トナーを構成する樹脂として、ガラス転移温度が低いだけでなく、低分子量の樹脂が用いられていた。ガラス転移温度が低く、低分子量の樹脂を用いることにより、定着処理時、低い定着温度でトナーを溶融させることができ、さらに溶融したトナーの表面が平滑となって光沢度が増す。
【0004】
しかしながら、ガラス転移温度が低く、低分子量の樹脂が用いられたトナーは、溶融時のトナーの粘度が低く、溶融したトナー粒子内の内部凝集力も小さい。そのため、容易にトナー粒子が破断し、用紙や定着部材にトナーが付着して汚染する、いわゆるホットオフセットを発生させることが多かった。
【0005】
ホットオフセットを回避するため、従来、トナー粒子中に高分子量体の樹脂を導入することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。高分子量体の樹脂を導入することにより、トナー粒子の弾性を高めて、定着処理時のトナー粒子の破断を防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−177983号公報
【特許文献2】特開2000−231220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高分子量体の樹脂のトナーへの導入は容易ではない。トナーに用いられている他の樹脂との相溶性が低く、製造が困難な場合もある。特許文献1によれば、高分子量体を導入するため、溶剤が用いられている。
【0008】
本発明の課題は、ホットオフセットの発生を抑制し、トナーの光沢度を良好とするとともに、容易にトナーに導入できるスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法及びそのトナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、
スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、重合開始剤を混合して乳化重合し、樹脂粒子分散液を調製する工程と、
スチレン系モノマー、アクリル系モノマーを、水系媒体中に分散させ、モノマー分散液を調製する工程と、
前記樹脂粒子分散液と、前記モノマー分散液を混合し、この混合液を加熱して前記重合開始剤の10時間半減期温度に達したところで、0.2m/s以下の攪拌速度で少なくとも20分間攪拌し、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する工程と、
を含むスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法が提供される。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、分子量分布において1000000より大きく3000000より小さい範囲内にピークを有する請求項1に記載のスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法が提供される。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、重量平均分子量が1000000以上3000000以下である請求項1又は2に記載のスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法が提供される。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナーの製造方法であって、
スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、重合開始剤を混合して乳化重合し、スチレン−アクリル樹脂の樹脂粒子分散液を調製する工程と、
スチレン系モノマー、アクリル系モノマーを、水系媒体中に分散させ、モノマー分散液を調製する工程と、
前記樹脂粒子分散液と、前記モノマー分散液を混合し、この混合液を加熱して前記重合開始剤の10時間半減期温度に達したところで、0.2m/s以下の攪拌速度で少なくとも20分間攪拌し、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する工程と、
を含むトナーの製造方法が提供される。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、分子量分布において1000000より大きく3000000より小さい範囲内にピークを有する請求項4に記載のトナーの製造方法が提供される。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、重量平均分子量が1000000以上3000000以下である請求項4又は5に記載のトナーの製造方法が提供される。
【0015】
請求項7に記載の発明によれば、
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、結着樹脂の分子量分布における面積比(%)が、2〜25%の範囲内にある請求項4〜6の何れか一項に記載のトナーの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ホットオフセットの発生を抑制し、トナーの光沢度を良好とするとともに、容易にトナーに導入できるスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法及びそのトナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例に係るトナーのGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法及びトナーの製造方法について説明する。
なお、数値範囲a〜bの記載は、下限値a及び上限値bを、その数値範囲に含むことを示す。
【0019】
<スチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法>
本発明のスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法は、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、重合開始剤を混合して乳化重合し、樹脂粒子分散液を調製する工程と、前記スチレン系モノマーと、前記アクリル系モノマーを、水系媒体中に分散させ、モノマー分散液を調製する工程と、前記樹脂粒子分散液と前記モノマー分散液を混合し、この混合液を加熱して前記重合開始剤の10時間半減期温度に達したところで、0.2m/s以下の攪拌速度で少なくとも20分間攪拌し、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する工程と、を含む。
【0020】
以下、上記製造方法の一実施の形態として、各工程を具体的に説明する。
(1)第1段重合工程
界面活性剤溶液に重合開始剤を添加し、分散させる。この重合開始剤の分散液に、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーを添加して、乳化重合を行う。乳化重合により、スチレン−アクリル樹脂の樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を調製する。
【0021】
この第1段重合工程で得られたスチレン−アクリル樹脂の分子量を制御することで、後段の第2段重合工程で生成されるスチレン-アクリル樹脂の高分子量体の分子量分布におけるピーク面積比を調整することができる。
第1段重合工程で得られたスチレン−アクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、150000〜600000が好ましい。
【0022】
(重合性モノマー)
乳化重合に用いられるスチレン系モノマー、アクリル系モノマーは、特に限定されず、従来公知のモノマーを用いることができる。
【0023】
スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等の他、これらの誘導体が挙げられる。
【0024】
アクリル系モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、n−メチルアクリルアミド、n−エチルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
他のアクリル系モノマーとしては、例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のラジカル重合性の2価カルボン酸が挙げられる。
【0026】
なかでも、ラジカル重合性の2価カルボン酸をモノマーとして含有することが好ましい。極性基であるカルボキシ基の存在により、水系媒体中において樹脂粒子を形成するための重合反応を安定して進行させることができる。また、樹脂粒子の表面に、未反応のカルボン酸がより表層に配向しやすくなり、高分子量体が生成しやすくなる。
【0027】
また、第1段重合工程では、重合反応の反応速度の制御が容易となることから、上記アクリル系モノマーのなかでも、重合速度が比較的速いメタクリル酸メチルと、重合速度が比較的遅いイタコン酸の併用が好ましい。
【0028】
第1段重合工程では、上述したスチレン系モノマー、アクリル系モノマーに加えて、ビニル系モノマー、オレフィン系モノマーを用いることができる。
ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーが挙げられる。
【0029】
オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等のモノオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジオレフィン系モノマーが挙げられる。
【0030】
(重合開始剤)
本発明に用いられる重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であれば特に限定されず、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等のアゾ系化合物、パーオキシド化合物等が挙げられる。
さらに、上記重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とすることが可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性が上昇し、乳化重合時の温度を低下させることができ、重合時間も短縮できることから好ましい。
【0031】
乳化重合時の温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択してもよいが、例えば50〜90℃の温度範囲が用いられる。常温で重合が開始される重合開始剤、例えば過酸化水素と還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いることにより、常温又はそれ以上の温度で重合することも可能である。
【0032】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、特に限定されないが、好適な界面活性剤の例として下記のイオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0033】
イオン性界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等の脂肪酸塩等が挙げられる。
【0034】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0035】
本発明において、これら界面活性剤は、主に乳化重合時の乳化剤として使用されるが、他の工程又は他の目的で使用してもよい。
【0036】
(2)モノマー分散液の調製工程
水系媒体中に、界面活性剤を添加して界面活性剤溶液を調製する。界面活性剤は上記(1)工程で挙げられた界面活性剤を用いることができる。この界面活性剤溶液中に、スチレン系モノマー、アクリル系モノマーを添加し、分散処理を行って、第2段重合に用いられるモノマー分散液を調製する。
【0037】
第2段重合に用いられるスチレン系モノマー、アクリル系モノマーとしては、第1段重合工程で挙げたモノマーと同様のモノマーが挙げられる。第1段重合工程で用いられたモノマーと同じモノマーを選択してもよいし、異なるモノマーを選択してもよい。
【0038】
水系媒体とは、50%質量以上の主成分が水からなる媒体をいう。水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等である。
【0039】
分散処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば高速回転するローターを備えた攪拌装置クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリン又は圧力式ホモジナイザー等によって分散する方法が挙げられる。
【0040】
(3)第2段重合工程
上記(1)工程で調製された樹脂粒子分散と、上記(2)工程で調製されたモノマー分散液とを混合する。このとき、(1)工程で乳化重合に用いられた重合開始剤を添加してもよい。次に、混合液を加熱し、(1)工程で乳化重合に用いられた重合開始剤の10時間半減期温度に達したところで、その温度を維持しながら、0.2m/s以下の攪拌速度(周速)で攪拌する。10時間半減期温度とは、重合開始剤がラジカル重合反応によって、溶液中の重合開始剤の濃度が半分になるまでの時間、つまり半減期が10時間となるときの溶液の温度をいう。攪拌は通常用いられるような回転式の攪拌装置を用いることができる。
【0041】
攪拌速度は、0.2m/s以下であれば、0m/s、つまり攪拌自体も無くてもよいが、好ましくは攪拌速度が0.04〜0.2m/sの範囲内である。重合開始剤の10時間半減期温度に達したときに、上記の攪拌速度で攪拌されていればよく、各分散液の混合と同時に攪拌を開始し、その後攪拌を停止して10時間半減期温度に達したときに0.2m/s以下の攪拌速度に達するように、初期の攪拌速度を調整してもよい。また、混合直後は攪拌せずに10時間半減期温度に達したところで、0.2m/s以下の攪拌速度で攪拌を開始してもよい。
【0042】
0.2m/s以下の攪拌速度による攪拌を、少なくとも20分間保持する。これにより、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体が生成される。保持時間は、好ましくは20分以上120分以下である。保持時間が20分未満では、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体が十分量生成されず、120分を超えても高分子量体の生成量はほとんど変わらない。
【0043】
(スチレン−アクリル樹脂の高分子量体の分子量)
上記製造方法によって生成されたスチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、その分子量分布において、1000000より大きく3000000より小さい範囲内にピークを有することが好ましい。1000000以下の範囲にピークがある場合、弾性成分が減少し、弾性体としての機能が低下する。そのため、トナーの結着樹脂としてスチレン-アクリル樹脂の高分子量体を用いたとき、定着時にトナー粒子が破断しやすくなり、ホットオフセットが生じやすい。また、3000000以上の範囲にピークがある場合、弾性成分が増加する。そのため、トナーの結着樹脂としてスチレン-アクリル樹脂を用いたとき、結着樹脂の粘弾性が上昇し、トナーの形状制御が難しくなって、所望のトナー粒子の円形度を達成することができない。
【0044】
また、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、重量平均分子量Mwが、1000000以上3000000以下であることが好ましい。重量平均分子量Mwが、1000000を下回れば、弾性成分が減少し、弾性体としての機能が低下する。そのため、トナーの結着樹脂としてスチレン-アクリル樹脂の高分子量体を用いたとき、定着時にトナー粒子が破断しやすくなり、ホットオフセットが生じやすい。また、重量平均分子量Mwが、30000000を超えれば、弾性成分が増加する。そのため、トナーの結着樹脂としてスチレン-アクリル樹脂を用いたとき、結着樹脂の粘弾性が上昇し、トナーの形状制御が難しくなって、所望のトナー粒子の円形度を達成することができない。
【0045】
このような高分子量体の発現機構については、明確にはなっていないが、第2段重合工程でのモノマー分散液の温度、攪拌速度、攪拌の保持時間を、上述した条件とすることにより、第1段重合後の重合開始剤の残存分によって、分子量が1000000を超えるスチレン−アクリル樹脂が生成されると推察される。
【0046】
上記分子量分布及び重量平均分子量Mwは、GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定される。まず、濃度1mg/mlの測定試料をテトラヒドロフランに添加し、室温にて超音波分散機を用いて5分間分散処理し、溶解させる。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理し、処理した試料の溶解液10μLを、GPCに注入し、GPCによる測定を開始する。GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.2ml/min
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
試料の分子量分布は、単分散の標準ポリスチレン(分子量7500000〜5800000)について測定された較正曲線を用いて算出される。較正曲線測定用の標準ポリスチレンとしては10点用いる。
【0047】
<トナーの製造方法>
上記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法は、スチレン−アクリル樹脂及び着色剤を含有するトナーの製造方法に好適に用いられ得る。
【0048】
まず、本発明のトナーの製造方法によって製造されるトナーの組成物について説明する。
(結着樹脂)
結着樹脂としては、上述のスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法によって生成されるスチレン−アクリル樹脂が挙げられる。このスチレン−アクリル樹脂に、上述したスチレン系モノマー、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、オレフィン系モノマー等との重合によって得られる樹脂を併用してもよい。
【0049】
スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、結着樹脂の分子量分布における面積比(%)が、2〜25%の範囲内にあることが好ましい。トナーがコアシェル構造からなる場合、コアの結着樹脂の分子量分布における面積比が、2〜25%の範囲内にあることが好ましい。面積比が2%未満では、結着樹脂の弾性成分が不十分となり、ホットオフセットが発生しやすい。一方、25%を超えれば、弾性成分が過剰となり、トナーの形状制御が難しくなって、所望のトナー粒子の円形度を達成することができない。
なお、上記面積比は、結着樹脂の分子量分布において、全面積に対しスチレン−アクリル樹脂の高分子量体のピークが占める面積の割合をいう。
【0050】
(着色剤)
着色剤としては、特に限定されず、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。着色剤の添加量は、トナーに対して2〜20質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは3〜15質量%の範囲内である。
【0051】
黒色の着色剤としては、例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックの他、マグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いることができる。これらの顔料は、単独で又は複数を選択して併用することが可能である。
【0052】
マゼンタ又はレッド用の着色剤としては、例えばC.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等の顔料が挙げられる。
【0053】
オレンジ又はイエロー用の着色剤としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等の顔料が挙げられる。
【0054】
グリーン又はシアン用の着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等の顔料が挙げられる。
【0055】
他にも、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等の染料を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。
以上の着色剤は、単独で又は複数を選択して併用することが可能である。
【0056】
本発明で用いられる着色剤は、表面改質されていてもよい。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01〜20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲内である。
【0057】
シランカップリング剤としては、例えばメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
チタンカップリング剤としては、例えば、商品名プレンアクト(味の素社製)で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。
アルミニウムカップリング剤としては、例えば市販品のプレンアクトAL−M(味の素社製)等が挙げられる。
【0058】
着色剤の表面改質法としては、着色剤の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法を挙げることができる。
表面改質された着色剤は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理される。
【0059】
(離型剤)
トナーは、定着部材との離型性を向上させるため、離型剤を含有してもよい。離型剤により、トナー画像に光沢を付与することもできる。
離型剤としては、炭化水素系ワックス類、エステル系ワックス類、天然物系ワックス類、アミド系ワックス類等が挙げられる。
【0060】
炭化水素系ワックス類としては、低分子量のポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの他、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。これら離型剤の含有量は、トナー中に5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
エステル系ワックス類としては、ベヘン酸ベヘニル、エチレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールベヘン酸エステル、ネオペンチルグリコールステアリン酸エステル、ネオペンチルグリコールベヘン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールステアリン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールベヘン酸エステル、グリセリンステアリン酸エステル、グリセリンベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、クエン酸ステアリル、クエン酸ベヘニル、リング酸ステアリル、リング酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコール類とのエステル等が挙げられる。
【0061】
(荷電制御剤)
トナーは、荷電制御剤を含有してもよい。
荷電制御剤は、従来公知の荷電制御剤を使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体等が挙げられる。
【0062】
(外添剤)
トナーは、外添剤によって外添処理されてもよい。外添剤は、外添処理によってトナー粒子の表面に付着し、トナーの流動性や、定着部材のクリーニング性能を向上させることができる。
外添剤としては、無機粒子、有機微粒子、滑剤等が挙げられる。
【0063】
外添剤として使用できる無機微粒子としては、例えばシリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
外添剤の添加量としては、トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0064】
シリカ微粒子としては、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタン微粒子としては、例えば日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
アルミナ微粒子としては、例えば日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0065】
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0066】
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩、リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩、リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム等のリシノール酸金属塩等が挙げられる。
【0067】
次に、本発明に係るトナーの製造方法の各工程を説明する。
本発明に係るトナーの製造方法は、スチレン−アクリル樹脂及び着色剤を含有するトナーの製造方法であって、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、重合開始剤を混合して乳化重合し、スチレン−アクリル樹脂の樹脂粒子分散液を調製する工程と、前記スチレン系モノマー、前記アクリル系モノマーを、水系媒体中に分散させ、モノマー分散液を調製する工程と、前記樹脂粒子分散液と、前記モノマー分散液を混合し、この混合液を加熱して前記重合開始剤の10時間半減期温度に達したところで、0.2m/s以下の攪拌速度で少なくとも20分間攪拌し、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する工程と、を含む。
【0068】
以下、本発明に係るトナーの製造方法の一実施の形態として、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を含有する樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、融着させて、コア粒子を作製し、その表面にさらに樹脂粒子を凝集、融着させ、コア粒子表面を被覆するシェル層を形成し、コア・シェル構造を有するトナー粒子を形成する方法を説明する。
【0069】
(1)コア粒子の形成
(a)スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を含有する樹脂粒子の分散液の調製
上述のスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法によって、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する。
【0070】
トナーに離型剤を含有させる場合、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する過程において、離型剤を添加してもよい。例えば、第2段重合に用いるモノマー分散液の調製工程において、スチレン系モノマー、アクリル系モノマーの分散液に、離型剤も分散させ、第2段重合工程において生成される高分子量体の樹脂粒子に離型剤粒子を含有させる。
このとき、臨界ミセル濃度以下の界面活性剤を溶解させた水系媒体中に、離型剤とモノマー分散液を、機械的エネルギーを利用して油滴として分散させ、その分散液に水溶性の重合開始剤を添加することにより、油滴内で重合反応させることが好ましい。この方法によれば、油相に溶解させた離型剤の脱離が少なく、生成される高分子量体の樹脂粒子内に十分量の離型剤を導入することができる。
【0071】
(第3段重合工程)
上記高分子量体を生成した後、さらに重合開始剤とスチレン系モノマー、アクリル系モノマーを添加し、重合反応を行ってもよい。これにより、高分子量体の樹脂粒子の表面に、スチレン−アクリル樹脂の層を形成することができ、多層構造を有する樹脂粒子を得ることができる。例えば、第3段重合で重合するスチレン−アクリル樹脂の分子量を低分子量とすることにより、トナー粒子の定着可能下限温度を調整することができる。
第3段重合工程において添加するスチレン系モノマー、アクリル系モノマーとしては、第1段重合工程で挙げたモノマーと同様のモノマーが挙げられる。第1段重合工程又は第2段重合工程で用いられたモノマーと同じモノマーを選択して用いてもよいし、異なるモノマーを選択して用いてもよい。
【0072】
(b)着色剤粒子の分散液の調製
上述の着色剤を、水系媒体中に分散させ、着色剤粒子の分散液を調製する。
【0073】
(c)凝集、融着工程
(a)工程で得られた高分子量体を含有する樹脂粒子の分散液に、(b)工程で得られた着色剤粒子の分散液と凝集剤を添加して加熱し、凝集、融着させてコア粒子を形成する。凝集と融着の一連の工程は、会合と呼ばれることがある。
なお、離型剤を(a)工程ではなく、(c)工程において添加し、樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤粒子を凝集、融着させてコア粒子を形成してもよい。
【0074】
(凝集剤)
本発明で用いられる凝集剤は、金属塩の中から選択されることが好ましい。
金属塩としては、一価〜三価の金属塩等が挙げられる。一価の金属塩としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。二価の金属塩としては、例えば塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マンガン等の金属塩が挙げられる。三価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等の金属塩が挙げられる。
これらは、目的に応じて適宜選択することができる。一般的には、一価の金属塩より二価の金属塩の方が、臨界凝集濃度(凝析値又は凝析点とも呼ばれる)が小さく、さらに三価の金属塩の臨界凝集濃度は小さい。
【0075】
凝集、融着の方法としては、塩析融着法が好ましい。塩析融着法は、凝集と融着を並行して進め、所望の粒子径までコア粒子が成長したところで凝集の停止剤を添加し、粒子の成長を停止させる方法である。この方法によれば、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱が継続して行われる。
【0076】
好ましい凝集方法は、樹脂粒子と着色剤粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等からなる塩析剤を、臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、樹脂粒子のガラス転移温度以上であって、かつ離型剤が存在する場合は離型剤の融解ピーク温度以上の温度に加熱して凝集させる方法である。
【0077】
凝集、融着工程の後、熟成工程を経ることとしてもよい。
具体的には、凝集、融着工程で加熱温度を低めにして粒子間の融着の進行を抑制し、コア粒子の均一化を図る。その後、熟成工程において、所望の円形度になるまで加熱温度を低めに、かつ時間を長く調整して、コア粒子の表面が均一形状となるよう制御する。
【0078】
(2)シェル化
上記(1)工程で得られたコア粒子の分散液中に、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーの分散液と重合開始剤を添加し、乳化重合させる。添加するスチレン系モノマー及びアクリル系モノマーは、コア粒子の形成、つまり高分子量体の生成に用いられたスチレン系モノマー、アクリル系モノマーと同種でもよいし、異種でもよい。
シェル化工程では、乳化重合によって生成されたスチレン−アクリル樹脂の樹脂粒子が、コア粒子の表面に凝集、融着し、コア粒子の表面にシェル層が形成されたトナー粒子の分散液が得られる。
【0079】
シェル化工程を繰り返し、シェル層を多層化してもよい。乳化重合の条件を変えることにより、各シェル層の樹脂粒子の分子量や粒径を変えることができる。
【0080】
(3)冷却・洗浄工程
上記(2)工程で得られたコア・シェル構造のトナー粒子の分散液を、例えば1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。所定温度まで冷却すると、冷却されたトナー粒子の分散液からトナー粒子を固液分離する。固液分離は遠心分離の他、ヌッチェ等を用いた減圧濾過、フィルタープレス等を用いた濾過等、何れの方法でもよい。次いで、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状のトナー粒子をケーキのような円筒形状に整形した状態)を洗浄し、界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去する。
【0081】
(4)乾燥工程
洗浄されたトナーケーキを乾燥処理する。乾燥処理には、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等を用いることができる。乾燥されたトナー粒子の水分は、5%質量以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
【0082】
(5)外添処理工程
必要に応じて外添剤を添加してもよい。乾燥によって得られたトナー粒子に外添剤を混合する。混合には、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の装置を用いることができる。
【0083】
以上のように、トナーに用いられる結着樹脂としてスチレン−アクリル樹脂を生成する過程で、本発明に係るスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法を容易に組み込むことができる。すなわち、トナーの製造過程において、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成することができ、トナーに、弾性体としての高分子量体を導入することが容易である。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0085】
<トナー1の作製>
(1)コア粒子の形成
(スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を含有する樹脂粒子の作製)
(第1段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下1.42m/sの周速で攪拌しながら加熱し、液温を80℃に昇温させた。界面活性剤溶液として、約2900質量部のイオン交換水に、アニオン系界面活性剤であるドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを2.0質量部溶解させた溶液を用いた。
【0086】
上記界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム、10時間半減期温度71℃)9.0質量部を添加し、イタコン酸60質量部を添加した。その後、下記モノマー溶液1を3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間保持した。
(モノマー溶液1)
n−ブチルアクリレート 198質量部
メタクリル酸メチル 942質量部
【0087】
(第2段重合)
アニオン系界面活性剤(ポリオキシ(2)ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させ、界面活性剤溶液を調製した。また、撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、85℃に加温した下記モノマー溶液2を調製した。
(モノマー溶液2)
スチレン 202質量部
n−ブチルアクリレート 105質量部
メタクリル酸 22質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
【0088】
90℃に加温した界面活性剤溶液に、第1段重合で得られた樹脂粒子の分散液を28質量部と、上記のように調製したモノマー溶液2を添加し、循環経路を有する機械式分散機クレアミックス(エム・テクニック社製)により4時間混合、分散させ、モノマー分散液を調製した。
【0089】
5Lの反応容器に撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付け、反応容器に、モノマー分散液を仕込み、液温を重合開始剤10時間半減期温度と同じ71℃に保持して、窒素気流下、0.05m/sの攪拌速度で60分撹拌した。次いで、1.42m/sに撹拌速度を上げ、重合開始剤(過硫酸カリウム)11質量部をイオン交換水211質量部に溶解させた重合開始剤水溶液を、反応容器中に添加した。その後、85℃において120分加熱、撹拌し、90℃においてさらに60分加熱、撹拌した。この第2段重合で得られた分散液を、樹脂粒子分散液a1と表す。
【0090】
(第3段重合)
第2段重合で得られた樹脂粒子分散液a1に、重合開始剤(過硫酸カリウム)2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた重合開始剤水溶液を添加した。次いで、80℃の温度条件下で、下記モノマー溶液3を1時間かけて滴下した。
(モノマー溶液3)
スチレン 231質量部
n−ブチルアクリレート 99質量部
n−オクチルメルカプタン 4.4質量部
【0091】
滴下終了後、3時間にわたり加熱、撹拌を行って重合を行い、重合反応終了後、28℃に冷却して多層構造を有する樹脂粒子分散液A1を作製した。樹脂粒子分散液A1に分散する樹脂粒子の、重量平均分子量は1,550,000、軟化点は92℃、ガラス転移温度は43℃であった。
【0092】
(着色剤粒子分散液の調製)
n−ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。次いで、撹拌を行いながら当該界面活性剤水溶液中にカーボンブラック(リーガル330R、キャボット社製)420質量部を徐々に添加した。次いで、クレアミックスWモーションCLM−0.8(エム・テクニック社製)を用いて、分散処理を行い、着色剤粒子分散液を調製した。
この着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の粒径を、電気泳動光散乱光度計ELS−800(大塚電子社製)を用いて測定した結果、質量平均粒径で110nmであった。
【0093】
(コア粒子の形成)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記組成物を投入し、攪拌した。
樹脂粒子分散液A1 421質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤粒子分散液 200質量部(固形分換算)
【0094】
次に、反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを8〜11に調整した。次いで、凝集剤(塩化マグネシウム・6水和物)2質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた凝集剤溶液を、撹拌の下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温させ、樹脂粒子と着色剤粒子の凝集、融着を行った。この状態でマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて、凝集、融着により形成されたコア粒子の粒径を測定し、コア粒子の体積基準メディアン径が5.5μmになったとき、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を添加し、凝集、融着を停止させた。停止後、さらに、熟成処理として、液温を70℃に保持して1時間にわたり加熱、撹拌することにより融着を継続させた。これにより、熟成処理されたコア粒子の分散液1が得られた。
【0095】
(2)シェル化
(シェル用樹脂粒子分散液の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させた界面活性剤溶液を投入し、窒素気流下、1.42m/sの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0096】
上記界面活性剤溶液に重合開始剤(過硫酸カリウム)9.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた後、下記モノマー溶液3を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、78℃の温度下で1時間にわたり加熱、撹拌して、重合反応を行い、シェル用樹脂粒子分散液を調製した。シェル用樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の重量平均分子量Mwは10000、軟化点は110℃、ガラス転移温度は50℃であった。
(モノマー溶液3)
スチレン 543質量部
n−ブチルアクリレート 228質量部
メタクリル酸 105質量部
n−オクチルメルカプタン 24質量部
【0097】
上記コア粒子分散液1を65℃に保持し、上記シェル用樹脂粒子分散液を47質量部(固形分換算)添加した。さらに、凝集剤(塩化マグネシウム・6水和物)2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した凝集剤溶液を、10分間かけて添加した。その後、シェル化温度の70℃まで昇温して1時間にわたり撹拌を継続し、コア粒子の表面にシェル用樹脂粒子を融着させた後、75℃で20分間熟成処理を行ってシェル層を形成させた。
【0098】
その後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加し、シェルの形成を停止させた。さらに、8℃/分の速度で30℃に冷却して、濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥処理した。これにより、コア粒子の表面にシェル層を有するトナー粒子が得られた。
【0099】
(外添処理)
得られたトナー粒子に、下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサー(三井三池鉱業社製)にて混合する外添処理を行い、外添処理されたトナー粒子からなるトナー1を作製した。なお、ヘンシェルミキサーによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/s、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
(外添剤)
ヘキサメチルシラザン処理されたシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理された二酸化チタン(平均一次粒径24nm) 0.8質量部
以上の手順により、トナー1を作製した。
【0100】
<トナー2の作製>
上記高分子量体のスチレン−アクリル樹脂を生成する第2段重合において、71℃にて60分攪拌したところを、71℃にて30分の攪拌に変えた以外は、同様にして樹脂粒子分散液A2を調整し、それ以降はトナー1の作製と同様にしてトナー2を作製した。
【0101】
<トナー3の作製>
上記高分子量体のスチレン−アクリル樹脂を生成する第2段重合において、71℃にて60分攪拌するときの攪拌速度0.05m/sを、0.20m/sの攪拌速度に変えた以外は、トナー1と同様にして樹脂粒子分散液A3を調整した。それ以降はトナー1の作製と同様にして、トナー3を作製した。
【0102】
<トナー4の作製>
上記高分子量体のスチレン−アクリル樹脂を生成する第2段重合において、モノマー溶液2を、下記組成のモノマー溶液4に変え、第1段重合で得られた樹脂粒子分散液a1の添加量を56質量部に変えた以外は、トナー1と同様にして樹脂粒子分散液A4を調製した。また、それ以降もトナー1の作製と同様にして、トナー4を作製した。
(モノマー溶液4)
スチレン 188質量部
n−ブチルアクリレート 91質量部
メタクリル酸 22質量部
N−オクチルメルカプタン 5質量部
【0103】
<トナー5の作製>
上記高分子量体のスチレン−アクリル樹脂を生成する第2段重合において、モノマー溶液2を、下記組成のモノマー溶液5に変え、第1段重合で得られた樹脂粒子分散液a1の添加量を84質量部に変えた。また、71℃にて60分攪拌したところを、85℃にて30分の攪拌に変えた。これら以外は、トナー1と同様にして樹脂粒子分散液A5を調製した。また、それ以降もトナー1の作製と同様にしてトナー5を作製した。
(モノマー溶液5)
スチレン 174質量部
n−ブチルアクリレート 77質量部
メタクリル酸 22質量部
N−オクチルメルカプタン 5質量部
【0104】
<トナー6の作製>
上記高分子量体のスチレン−アクリル樹脂を生成する第2段重合において、71℃にて60分攪拌したところを、85℃にて20分間の攪拌に変えた以外は、トナー1と同様にして樹脂粒子分散液A6を調整した。それ以降はトナー1の作製と同様にして、トナー6を作製した。
【0105】
<トナー7の作製>
上記高分子量体のスチレン−アクリル樹脂を生成する第2段重合において、71℃にて60分間、攪拌速度0.05m/sで攪拌したところを、85℃にて60分間、攪拌速度1.42m/sの攪拌に変えた以外は、トナー1と同様にして樹脂粒子分散液A7を調整した。それ以降はトナー1の作製と同様にして、トナー7を作製した。
【0106】
<トナー8の作製>
超高分子量スチレン系樹脂(1)(樹脂粒子A)の調製において、第2段重合においてモノマー分散液を仕込んだ後、71℃で保持せず、すぐに1.42m/sの撹拌速度で攪拌して、樹脂粒子分散液A8を調整した。それ以降はトナー1の作製と同様にしてトナー8を作製した。
【0107】
<評価>
作製された各トナー1〜8について、下記の評価を行った。表1は、評価結果を示す。
・スチレン−アクリル樹脂の高分子量体の分子量の測定
各トナー1〜8の作製において、第2段重合を経て得られた樹脂粒子分散液a1から試料を採り、樹脂粒子分散液a1中のスチレン−アクリル樹脂の分子量をGPCにより測定し、重量平均分子量Mwを得た。また、分子量分布において、分子量300000以上の領域に現れるピークのピークトップMpと、500000〜3000000の分子量の範囲内にあるピークの全面積に対し、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体のピークが占める割合を示す面積比(%)を求めた。
【0108】
具体的には、濃度1mg/mlの測定試料をテトラヒドロフランに添加し、室温にて超音波分散機を用いて5分間分散処理し、溶解させた。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理し、処理した試料の溶解液10μLを、GPCに注入し、GPCによる測定を開始した。GPCの測定条件は以下の通りである。
装置 :HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :0.2ml/min
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
較正曲線:単分散のポリスチレン標準粒子(分子量7500000〜5800000)を10点
【0109】
図1は、測定によって得られたトナー1のGPCチャートを示す。図1において、X軸は溶出時間、Y軸は検出器の強度を示し、較正曲線の溶出時間に対応する分子量をGPCチャート中に示した。
また、下記表1において、GPCチャートから求められたピークトップMp、重量平均分子量Mw、面積比(%)を示した。
なお、トナー7、8については、300000以上の高分子量域にピークが見られなかった。
【0110】
・ホットオフセットの評価
作製されたトナー1〜8の現像剤を作製し、当該現像剤を用いて定着テストを行い、ホットオフセットの発生状況を確認した。
(現像剤の作製)
粒径45μmのフェライトコアに対して質量比で0.8質量%のシリコーン樹脂SR2411(東レダウコーニングシリコーン社製)を添加し、流動床コーティング装置を用いてコーティングキャリアを得た。作製された各トナー1〜8を6質量部採り、このコーティングキャリア94質量部とV型ブレンダにて混合処理し、各トナー1〜8の現像剤を作製した。
【0111】
(定着テスト)
市販のフルカラープリンターbizhub PRO 950(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を改造し、定着装置の定着温度を、120〜210℃の範囲内で変更できるようにした。この改造されたフルカラープリンターbizhub PRO 950に、各トナー1〜8の現像剤をセットして用紙上にトナー画像を形成し、温度20℃、相対湿度55%の常温常湿の環境下で、定着テストを行った。トナー画像は、用紙の幅方向(用紙の搬送方向に垂直な方向)に長い5mm幅の帯状の画像であり、最大値の濃度が設定されたベタ画像である。定着テストでは、定着温度を120℃から210℃まで、5℃毎に上昇させ、各定着温度で用紙上に形成されたトナー画像を定着処理した。
【0112】
定着処理後、用紙上のトナー画像を、さらし布で1Paの圧力で10回擦った。擦る前後のトナー画像の濃度を測定し、その濃度差から、下記式によって定着率を測定した。
定着率(%)=(擦った後のトナー濃度)/(擦る前のトナー濃度)×100
定着率が70%以上に達するときの定着温度(定着可能下限温度)以上で、ホットオフセットによる画像汚れが目視により観察されたときの定着温度を求めた。
【0113】
ホットオフセットの評価結果を、下記表1に示した。
画像汚れが観察され、ホットオフセットが発生したトナーについては、表1において、ホットオフセットが発生したときの定着温度を示した。定着温度が210℃に達してもホットオフセットが発生しない場合、表1において、未発生と表した。
【0114】
・光沢度の評価
上記各トナー1〜8の現像剤がセットされたフルカラープリンターbizhub PRO 950によって、最大値の濃度が設定されたベタ画像の画像形成を行い、定着温度を190℃として定着テストを行った。定着処理後、用紙上のトナー画像の光沢度を測定し、評価した。具体的には、光沢度計(村上色材研究所製、製品名GM-26D)を用いて、JIS Z8741:97に従い、角度75℃の光沢度を測定した。トナー画像の中央部と四隅の合計5点について測定し、5点の測定値の平均値を光沢度として得た。
【0115】
光沢度の評価結果を、下記表1に示した。
表1における光沢度の評価基準は、以下の通りである。
◎:光沢度が27以上
○:光沢度が17以上27未満
×:光沢度が17未満
○又は◎の評価が、トナーとして使用可能なレベルである。
【0116】
【表1】

【0117】
表1に示すように、実施例に係るトナー1〜4は、何れも210℃までホットオフセットが発生せず、優れた光沢度が得られている。
【0118】
また、表1に示すように、実施例に係るトナー1〜4は全て、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体のピークトップ値Mpが、1000000より大きく3000000より小さい範囲内にあり、重量平均分子量Mwも1000000以上3000000以下の範囲内にある。
実施例に係るトナー1については、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体の分子量のピークが1000000より大きく3000000より小さい範囲内にあることが、図1からも把握できる。
【0119】
比較例に係るトナー5は、ピークトップMpが1500000の高分子量体を含有し、ホットオフセットが未発生であるが、光沢度が失われている。一方、比較例に係るトナー6〜8は、光沢度に優れているが、ホットオフセットが発生している。すなわち、比較例に係るトナー5〜8は、ホットオフセットの抑制と優れた光沢度の両立ができていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、重合開始剤を混合して乳化重合し、樹脂粒子分散液を調製する工程と、
スチレン系モノマー、アクリル系モノマーを、水系媒体中に分散させ、モノマー分散液を調製する工程と、
前記樹脂粒子分散液と、前記モノマー分散液を混合し、この混合液を加熱して前記重合開始剤の10時間半減期温度に達したところで、0.2m/s以下の攪拌速度で少なくとも20分間攪拌し、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する工程と、
を含むスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法。
【請求項2】
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、分子量分布において1000000より大きく3000000より小さい範囲内にピークを有する請求項1に記載のスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法。
【請求項3】
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、重量平均分子量が1000000以上3000000以下である請求項1又は2に記載のスチレン−アクリル樹脂の高分子量体の製造方法。
【請求項4】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナーの製造方法であって、
スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、重合開始剤を混合して乳化重合し、スチレン−アクリル樹脂の樹脂粒子分散液を調製する工程と、
スチレン系モノマー、アクリル系モノマーを、水系媒体中に分散させ、モノマー分散液を調製する工程と、
前記樹脂粒子分散液と、前記モノマー分散液を混合し、この混合液を加熱して前記重合開始剤の10時間半減期温度に達したところで、0.2m/s以下の攪拌速度で少なくとも20分間攪拌し、スチレン−アクリル樹脂の高分子量体を生成する工程と、
を含むトナーの製造方法。
【請求項5】
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、分子量分布において1000000より大きく3000000より小さい範囲内にピークを有する請求項4に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、重量平均分子量が1000000以上3000000以下である請求項4又は5に記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
前記スチレン−アクリル樹脂の高分子量体は、結着樹脂の分子量分布における面積比(%)が、2〜25%の範囲内にある請求項4〜6の何れか一項に記載のトナーの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−95762(P2013−95762A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236638(P2011−236638)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】