説明

スチレン系熱収縮性フィルム

【課題】 剛性、自然収縮性に優れ、かつミシン目の切裂き性にも優れたスチレン系樹脂熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも1層が、スチレン系重合体の連続相にゴム状重合体が架橋粒子を形成して分散したゴム変性スチレン系樹脂を主成分とした層からなるスチレン系熱収縮性フィルムであって、該ゴム変性スチレン系樹脂に分散したゴム粒子のうち粒子径0.005〜0.2μmの分散粒子(A)が80nmの超薄切片において100μm2の面積あたり500〜2000000個存在するゴム変性スチレン系樹脂組成物を延伸してなることを特徴とするスチレン系熱収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰強度が高く、自然収縮率が小さく、かつミシン目の切裂き性に優れたスチレン系熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種容器には、商品名や使用上の注意等の情報を伝えるため、あるいは意匠性を付与するために印刷を施した熱収縮性フィルム(ラベル)を装着することが一般的に行われている。この熱収縮性フィルムについては、環境問題の観点から燃焼時に有害物質が懸念されるポリ塩化ビニルから他素材への代替が進み、近年は熱収縮後の仕上がりがよく、リサイクルの観点から容器とフィルムを分離するためのミシン目切れが良いスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体が多く用いられるようになった。
しかしながら、このスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体のフィルムは、柔らかくて腰がなく、また、保管時に寸法が変化するいわゆる自然収縮性が劣る、などの問題を有していた。
これらの欠点を改良するために、ゴム状重合体粒子で変性されたスチレン系樹脂、いわゆる耐衝撃性ポリスチレンからなる熱収縮性フィルムが特許文献1に開示され、耐衝撃性ポリスチレンフィルムを積層した熱収縮フィルムが特許文献2に開示されており、腰の強さおよび自然収縮性が改良されているが、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体の長所であったミシン目切れが劣るため、容器との分離がしにくいという問題点を抱えていた。
【0003】
【特許文献1】特開平07−032477号公報
【特許文献2】特開平09−114380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、腰強度、自然収縮性に優れ、かつミシン目の切裂き性に優れたスチレン系熱収縮性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体および必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル単量体を主成分とした単量体混合物を共重合して得られるゴム変性スチレン系樹脂であって、該共重合体の連続相中にゴム状重合体が粒子状の分散相を形成し、特定の粒子径範囲のゴム粒子を特定の粒子数とした場合に、その目的に適合することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、少なくとも1層が、スチレン系重合体の連続相にゴム状重合体が架橋粒子を形成して分散したゴム変性スチレン系樹脂を主成分とした層からなるスチレン系熱収縮性フィルムであって、該ゴム変性スチレン系樹脂に分散したゴム粒子のうち粒子径0.005〜0.2μmの分散粒子(A)が80nmの超薄切片において100μm2の面積あたり500〜2000000個存在するゴム変性スチレン系樹脂組成物を延伸してなることを特徴とするスチレン系熱収縮性フィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱収縮性フィルムは、自然収縮性に優れるため、保管時の寸法変化による不良が低減できるとともに、フィルムの剛性が高く薄肉化が可能であるうえ、ミシン目に沿って切ることが可能なため、容器との分別が容易でリサイクル負荷を低減できる利点も併せ持つものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のスチレン系熱収縮性フィルムは、ゴム状重合体が分散粒子を形成しスチレン系(共)重合体が連続相であるゴム変性スチレン系樹脂を主成分とする層を少なくとも1層有するものである。
本発明で使用されるゴム変性スチレン系樹脂は、ゴムの存在下、スチレン系単量体単独またはスチレン系単量体およびスチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体とを(共)重合したものである。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン単量体の他、パラメチルスチレン、α−メチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン、核ハロゲン化スチレン等といったスチレン誘導体単量体が挙げられる。これらスチレン系単量体は一種でも、二種以上の混合物でも良い。中でもスチレン単量体が好ましく用いられる。
また、スチレン系単量体と共重合可能な他のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらの他のビニルモノマーは一種でも、二種以上を併用してもよい。
【0008】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル、およびメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートなどのアクリル酸エステルなどが挙げられ、これらは、一種でも二種以上を併用しても良い。好ましくはメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートまたはこれらの混合物である。この場合、スチレン70〜20重量%、(メタ)アクリル酸エステル30〜80重量%とすることにより、透明性を付与することができるため好ましい。
一方、ゴム重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、およびこれらのブタジエンあるいはイソプレン部分を水素添加した水素添加物等を用いることができるが、ポリブタジエンゴムまたはスチレン−ブタジエンゴムが好ましい。これらは単独で使用するかあるいは二種以上を併用しても良い。
【0009】
本発明で使用されるゴム変性スチレン系樹脂のゴム濃度は4〜30重量%であり、好ましくは8〜20重量%である。4重量%未満ではフィルムの切裂き性が劣り、30重量%以上ではフィルムの剛性が劣る。上記範囲のゴム変性スチレン系樹脂を単独で用いるか、もしくは高ゴム濃度のゴム変性スチレン系樹脂を非ゴム変性スチレン系樹脂で希釈して用いてもよい。
本発明に使用されるゴム変性スチレン系樹脂中の分散粒子(A)は、粒子径が0.005〜0.2μmの分散粒子である。
分散粒子(A)の粒子数は、フィルムを適正な温度、及び時間(例えば、130℃、30分)で十分に完全収縮させた後、エポキシ包埋した後に切り出した80nmの超薄切片をオスミウム酸で染色後、透過型電子顕微鏡で撮影した写真(図1)から、粒子径0.005〜0.2μmの分散粒子について100μm2あたりの個数を求める。本発明のフィルム中の分散粒子(A)は、フィルム中において、延伸により配向した異方性の高い形態となっており、且つその粒子径が小さいために粒子同士が重なって見えるため(図2)、切削角度により見える粒子径が異なるなど画像解析が困難かつ不正確であり、透過型電子顕微鏡観察を実施する際は完全収縮させる必要がある。
【0010】
この透過型電子顕微鏡写真において、粒子径が0.005〜0.2μmである分散粒子(A)の粒子数は、100μm2あたり500〜2000000個であることが必要である。好ましくは1000〜1000000個である。100μm2あたり500個以下では、ミシン目の切裂き性が劣り、2000000個以上ではフィルムの剛性、すなわち腰強度が劣るため好ましくない。
分散粒子(A)の粒子形態は特に限定されないが、好ましくは粒子内部にオクルージョンを2個以上含む架橋粒子が分散粒子(A)の総粒子数の50%未満である。さらに好ましくは30%未満である。粒子内部にオクルージョンを2個以上含む架橋粒子が分散粒子(A)の総粒子数の50%未満であると切裂き性改良効果と剛性のバランスが優れる。本発明で使用されるゴム変性スチレン系樹脂には、粒子径が0.005〜0.2μmの分散粒子(A)を上記の粒子数で含んでいればよく、その他の粒子径、粒子形態の分散粒子を含んでいても構わない。
【0011】
本発明で使用されるゴム変性スチレン系樹脂の製法は特に制限無く、乳化重合、塊状重合、溶液重合、塊状連続重合法など既知の方法で製造される。
本発明で使用されるゴム変性スチレン系樹脂には、必要に応じて少なくとも一つのスチレン系ブロックと少なくとも一つのブタジエン系ブロックを有するSBブロック共重合体を15重量部以下で添加することができる。15重量部を超えて添加した場合、フィルムの腰強度が低下するほか、フィッシュアイが発生するなど好ましくない。
本発明で使用されるゴム変性スチレン系樹脂には、有機ポリシロキサン化合物、フォスファイト等の有機安定剤、カルシウム、錫等の無機安定剤、フェノール系、スルファイド系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、サリチル酸フェニル等の紫外線吸収剤、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、金属石鹸等の滑剤、その他目的に合わせて繊維補強材、無機充填材、顔料、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、着色剤、難燃剤等を適宜配合することもできる。又、フィルムの製品表面の特性を改質するためにスチレン系樹脂で用いられている改質剤を塗布することができる。
【0012】
さらに、テルペン系樹脂、テルペン系水素添加樹脂を添加することにより、成形性、耐熱性、耐衝撃性、剛性バランスや外観特性を高めることもでき、これらは10重量%以下で使用することが出来る。
ただし、ゴム変性スチレン系樹脂組成物としてのVICAT軟化温度が、50℃を下回らないようにする必要がある。VICAT軟化温度が50℃を下回ると自然収縮性が劣ってしまう。
これらの添加剤は、重合系に添加しても良く、ゴム変性スチレン系樹脂と押出機で混合する方法を用いてもよい。
【0013】
本発明の熱収縮性フィルムの表裏層には、本発明とは異なるゴム変性スチレン系樹脂、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体およびこれらとスチレン系(共)重合体との混合物から選ばれる層を積層しても良い。特に、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体を積層することにより、印刷性、収縮速度が調整できる点で好ましい。このとき、本発明の目的である自然収縮性、腰強度、および切裂き性を満足する意味で、本発明に用いられるゴム変性スチレン系樹脂層の厚みがフィルム厚みの50%以上であることが肝要である。
本発明の熱収縮性フィルムの製造方法は特に制限が無く、Tダイシート押出し機によりシート状に成形した後、一軸延伸加工装置、二軸延伸加工装置により、一軸あるいは二軸に延伸する方法、押出されたチューブ状フィルムを円周方向に延伸する方法、インフレーション加工装置等など公知の方法で製造される。
その他、延伸温度、延伸倍率、フィルム厚みなどについても特に制限は無く、使用される用途、要求特性に応じて選択される。例えば、収縮が必要な方向に2〜6倍程度延伸して、フィルム厚み10〜100μmに製膜される。
【実施例】
【0014】
次に、実施例などにより本発明を更に具体的に説明する。
(1)使用する成分
(A)ゴム変性スチレン系樹脂
(ゴム変性スチレン系樹脂A−1)
攪拌機を備えた5l−7l−7l重合機3基を直列連結し、その後に二段ベント付き二軸押出機を配置した重合装置を用いてスチレン系樹脂を製造する。
スチレン86重量部、ゴム状重合体としてB−Sタイプ(B:ブタジエンブロック、S:スチレンブロックで、スチレン含有量が38重量%、25℃での5重量%スチレン溶液粘度が30cpsであるゴム状弾性体)9重量部、エチルベンゼン5重量部、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.04重量部からなる原料溶液を重合機に供給し重合を行う。第1段重合機で120℃で100rpmで攪拌機を回転させ2時間重合し、ゴム粒子を析出させた後、第2段重合機にて135℃で3時間重合を継続しゴム粒子を安定化させた後、更に第3段重合機にて145℃で3時間重合を進め、最終重合固形分69%とし、この重合溶液を220℃、20mmHgのベント圧力の二段ベント付き二軸押出機により脱揮発後、ゴム変性スチレン系樹脂を得た。得られたゴム変性スチレン系樹脂A−1の物性を表1に示す。
【0015】
(ゴム変性スチレン系樹脂A−2〜3)
表1に示した通り、攪拌数を変えた以外はA−1と同様にしてゴム変性スチレン系樹脂A−2〜A−3を得た。
(ゴム変性スチレン系樹脂A−4)
同一重合装置を用い、スチレン49.9重量部、ブチルアクリレート15.5重量部、メチルメタクリレート20.6部、ゴム状重合体としてB−Sタイプ(B:ブタジエンブロック、S:スチレンブロックで、スチレン含有量が38重量%、25℃での5重量%スチレン溶液粘度が30cpsであるゴム状弾性体)9重量部、エチルベンゼン5重量部、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.05重量部からなる原料溶液を重合機に供給し重合を行う。第1段重合機で100〜120℃で80rpmで攪拌機を回転させ重合し、ゴム粒子を析出させた後、第2段重合機にて120℃〜135℃で重合を継続しゴム粒子を安定化させた後、更に第3段重合機にて135℃〜145℃で重合を進め、最終重合固形分68%とし、この重合溶液を220℃、20mmHgのベント圧力の二段ベント付き二軸押出機により脱揮発後、ゴム変性スチレン系樹脂A−4を得た。
【0016】
(ゴム変性スチレン系樹脂A−5、A−6)
表1に示した通り、重合する溶剤組成、有機化酸化物量、攪拌数を変えた以外はA−4と同様にしてゴム変性スチレン系樹脂A−5、A−6を得た。
(非ゴム変性スチレン系樹脂A−7)
単量体成分をスチレン55.1重量部、ブチルアクリレート17.1重量部、メチルメタクリレート22.8重量部とし、ゴム状重合体を添加しないほかはA−1〜6と同様にして非ゴム変性スチレン系樹脂A−7を得た。
【0017】
(ゴム変性スチレン系樹脂A−8)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に蒸留水200部、不均化ロジン酸カリウム1部、水酸化カリウム0.03部、次いでスチレン−ブタジエンランダム共重合ラテックス(重量平均粒子径0.08μm、スチレン含有量38重量%)を固形分として50重量部を仕込み、窒素置換後、60℃に昇温した。0.2%硫酸第一鉄溶液2部、ピロリン酸ナトリウム0.1部を添加し、5分後からスチレン29重量部、メタクリル酸メチル12重量部およびアクリル酸ブチル9重量部、t−ドデシルメルカプタン0.07部、およびクメンハイドロパーオキサイド0.3部を2時間かけて連続滴下し、滴下終了後、60℃のまま1時間攪拌を続けて、その後70℃に昇温して1時間反応した。冷却したグラフト重合ラテックスに酸化防止剤を添加し、硫酸マグネシウムを用いて塩析し、続いて洗浄、乾燥してゴム変性スチレン系樹脂A−8を得た。
表1にゴム変性スチレン系樹脂A−1〜6、8および非ゴム変性スチレン系樹脂A−7の性状を纏めた。
【0018】
(B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体
アサフレックス825(旭化成ケミカルズ株式会社製SBS、スチレン含有量77%)
(C)スチレン−共役ジエンブロック共重合ゴム
タフプレン126(旭化成ケミカルズ株式会社製SBブロックゴム、スチレン含有量40%)
【0019】
(2)試験方法
分散粒子(A)の粒子数・・・130℃、30分で完全収縮させた熱収縮性フィルムをエポキシ包埋した後、切り出した80nmの超薄切片をオスミウム酸で染色後、透過型電子顕微鏡撮影し、倍率10000倍の写真(図1参照)にした。写真中、黒く染色された粒子がゴム状重合体の分散粒子である。図1に示す写真から粒子径が0.005〜0.2μmの分散粒子(A)について、100μm2の面積について粒子数を求めた。
ここで、粒子径は写真中の粒子面積から円相当径とした時の粒子径である。本測定は、写真を1000dpiの解像度でスキャナーに取り込み、画像解析装置IP−1000(旭化成製)の粒子解析ソフトを用いて測定した。
引裂き性・・・得られたフィルムに3.85mm間隔で孔径0.5mmのミシン目をTD方向(収縮率の大きい方向)と垂直な方向に直線上に施し、机上に置いたフィルムのミシン目の片側を手で抑えて、反対側を手で引裂いたときの状態を下記の通り評価した。
○:ミシン目に沿ってきれいに切れる。
△:ミシン目に沿って切れかけるが、途中でミシン目からずれて切れる。
×:ミシン目に沿って切れない。
自然収縮率・・・40℃で7日間フィルムを自然放置した時の基準点間(元寸法300mm)の距離を0.1mm単位で測定し、収縮率を求めた。
引張り弾性率・・・フィルムからMD方向(長さ)150mm、TD方向(幅)15mmの短冊をカミソリで切り出し、ISO−527−3に準じ、温度23℃、相対湿度50%、チャック間100mm、試験速度1mm/minで測定した。応力2Nと4N間の傾きを見掛け弾性率として求めた。
【0020】
[実施例1〜9、比較例1〜3]
表2および表3に示した配合処方に従って、まず、押出温度210℃で厚さ0.3mmのシートを押出成形し、その後、東洋精機製作所製の二軸延伸装置を用いて、表2および表3に示した延伸温度でシートの幅方向に1.15倍、シートの長さ方向に5倍に延伸して、延伸フィルムを作成した。
表2および表3下段に得られたフィルムの評価結果を示した。
【0021】
[実施例10〜13、比較例4、5]
表4に記載した配合処方および多層構成で0.3mmの多層シートを押出成形し、その後、東洋精機製作所製の二軸延伸装置を用いて、表4に示した延伸温度でシートの幅方向に1.15倍、シートの長さ方向に5倍に延伸して、延伸フィルムを作成した。
表4下段に得られたフィルムの評価結果を示した。
表2、表3および表4から明らかなように、実施例1〜9および実施例10〜13の本発明の熱収縮性フィルムは、スチレン−共役ジエンブロック共重合体からなるフィルム(比較例3)に比し、剛性、自然収縮性に優れるとともに、ミシン目切裂き性が改善されている。非ゴム変性スチレン系樹脂を用いたフィルム(比較例2、5)は剛性は高く、自然収縮も小さいが、ミシン目の切裂き性が劣る。分散粒子(A)の粒子数が少ないゴム変性スチレン系樹脂を用いた場合(比較例1、4)についても、剛性は高く、自然収縮も小さいが、ミシン目切裂き性が劣る。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のスチレン系熱収縮性フィルムは自然収縮性が優れ、保管時の寸法変化による不良品を削減でき、剛性が高いことからフィルムの薄肉化すなわち省資源が達成でき、かつミシン目の切裂き性が優れることから容器と熱収縮フィルムとの分離が可能であり、リサイクル時の負担を軽減できるため、各種用途に好適な熱収縮性フィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1のフィルムを加熱により完全収縮させた後の透過型電子顕微鏡写真。
【図2】実施例1のフィルムの表面に平行な断面の透過型電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層が、スチレン系重合体の連続相にゴム状重合体が架橋粒子を形成して分散したゴム変性スチレン系樹脂を主成分とした層からなるスチレン系熱収縮性フィルムであって、該ゴム変性スチレン系樹脂に分散したゴム粒子のうち粒子径0.005〜0.2μmの分散粒子(A)が80nmの超薄切片において100μm2の面積あたり500〜2000000個存在するゴム変性スチレン系樹脂組成物を延伸してなることを特徴とするスチレン系熱収縮性フィルム。
【請求項2】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム濃度が4〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系熱収縮性フィルム。
【請求項3】
ゴム変性スチレン系樹脂が、ブタジエン系ゴムの存在下でスチレンおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを共重合したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリスチレン系熱収縮性フィルム。
【請求項4】
分散粒子(A)のうち、粒子内部にオクル−ジョンを2個以上含む架橋粒子が分散粒子(A)の総粒子数の50%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系熱収縮性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン系熱収縮性多層フィルムの表層および裏層にスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体を主成分とした層を積層してなることを特徴とするスチレン系熱収縮性多層フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−213785(P2006−213785A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26247(P2005−26247)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(500199479)PSジャパン株式会社 (45)
【Fターム(参考)】