説明

スチレン系重合体製造用触媒およびこれを利用したスチレン系重合体の製造方法

本発明はスチレン系重合体製造用触媒およびこれを利用したスチレン系重合体の製造方法に関し、とくにメタロセン触媒および助触媒がシンジオタクチックスチレン系重合体の担体に担持された担持触媒を含む触媒下でスチレン系モノマーを重合することによってゲル発生問題を根本的に遮断して反応機内部に高分子が付着する現象を防止することができ、触媒の重合活性を維持して高い反応転換率を有するだけでなく、同時に反応運転および製品生産が容易で、最終製品の粒度を調節することができるスチレン系重合体製造用触媒、およびこれを利用したスチレン系重合体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチレン系重合体製造用触媒およびこれを利用したスチレン系重合体の製造方法に関し、より詳しくはゲル発生問題を根本的に遮断して反応機内部に高分子が付着する現象を防止することができ、触媒の重合活性を維持して高い反応転換率を有するだけでなく、同時に反応運転および製品生産が容易であり、最終製品の粒度を調節することができるスチレン系重合体製造用触媒およびこれを利用したスチレン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カナダ特許第2,026,552号明細書はメタロセン触媒を利用したシンジオタクチック立体構造を有するスチレン系重合体の製造方法について開示している。
【0003】
一般にスチレン系モノマーを重合してシンジオタクチック立体構造を有する重合体を製造するための方法は大きく不活性有機溶媒を利用したスラリー方法とモノマーを直接重合するバルク方式に区分することができる。
【0004】
前記スラリー方法では、シンジオタクチックスチレン系高分子が重合されながら発生するゲル現象を避けることができるので、通常の撹拌機が装着された液状重合反応機をそのまま使用し、これにより特殊な形態の反応装置を必要とせず、製品の全てが液状で得られるので連続的な製造が容易であるという長所がある。しかし、この方法は溶媒として使われる不活性有機溶剤が少なくとも反応物の80%以上を占めるために追加的な溶媒の分離・精製工程が不可欠となり、触媒の反応活性が大きく低下するという問題点のため、触媒開発、テスト作業、小規模工程などにのみ適用され、実際に大規模生産工程には適用することが難しかった。
【0005】
一方、モノマーを直接重合するバルク方法は別途の溶媒回収および精製工程が必要でなく、触媒活性が高く、現在、多く適用されている方法である。しかし、この方法はシンジオタクチックスチレン系モノマー重合過程に付随するゲル現象により反応機内部に高分子が付着する現象が発生するという問題点がある。そのために特別に製作された反応機を利用してシンジオタクチックスチレン系モノマーを重合しているが、これによる製造原価の上昇だけでなく、運転過程中の反応機内部に高分子の固まりおよび粘着発生のため長期的に問題点が発生することがあって生産性を悪化させる主要原因となっていた。
【0006】
このようなゲル現象による重合上の問題点を解決するための様々な形態の反応機が開発されている。一例として、米国特許第5,254,647号明細書はシンジオタクチックスチレン系重合体を製造するための反応装置で洗浄された表面反応機(wiped surface reactor)について開示している。前記反応機は通常の二対のスクリューを利用してモノマーを円滑に混合させることによって、粒子が急激に生成し始める低い転換率領域での粒子塊りの形成を避けることができ、再びパウダーベッド型反応機に移送して高い転換率でシンジオタクチックスチレン系重合体を得ることができ、これによりパウダーベッド型反応機の低い混合効率にもかかわらず比較的に均一な製品を得ることができる長所がある。しかし、スクリュー反応機自体の処理容量に制限があり、低い転換率で運転するため高い転換率を得るために必ずパウダーベッド型反応機を必要として製造原価が多くかかるという問題点がある。
【0007】
その他に、米国特許第6,242,542号明細書は逆混合反応機を直列または並列に連結してシンジオタクチックスチレン系重合体を製造する方法と装置について開示している。また、米国特許第5,484,862号明細書は改善された液状パウダーベッド型反応機について開示している。この特許によると、水平形撹拌反応機を利用する前記反応装置を使用することによって、開始剤として使われた重合体粉末が液状のモノマーによく分散されて重合が円滑に進められるので連続的にシンジオタクチックスチレン系重合体を製造することができる長所がある。
【0008】
しかし、前記従来技術は全てシンジオタクチックスチレン系モノマーを重合する時に発生するゲル現象による粒子塊りが生じることを人為的に防止したり、生じた粒子を壊すことに主眼点があるが、重合過程中、ゲル現象により反応機内部に高分子が固まったり粘着する現象を根本的に解決することができないという問題点がある。
【0009】
したがって、ゲル発生問題を根本的に遮断して反応機内部に高分子が付着する現象を防止することができ、同時に触媒の重合活性を維持して高い反応転換率を有することができるスチレン系重合体の製造方法に対する研究がさらに必要であるのが実情である。
【発明の開示】
【0010】
前記のような従来の技術の問題点を解決するために本発明は、ゲル発生問題を根本的に遮断して反応機内部に高分子が付着する現象を防止することができ、触媒の重合活性を維持して高い反応転換率を有するだけでなく、同時に反応運転および製品生産が容易で、最終製品の粒度を調節することができるスチレン系重合体製造用触媒を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、ゲル発生問題を根本的に遮断して反応機内部に高分子が付着する現象を防止することができ、同時に触媒の重合活性を維持して高い反応転換率を有するスチレン系重合体の製造方法を提供することにある。
【0012】
前記目的を達成するためにスチレン系重合体製造用触媒において、メタロセン触媒および助触媒がシンジオタクチックスチレン系重合体自体を担体として担持された触媒を含むスチレン系重合体製造用触媒を提供する。
【0013】
また、本発明はスチレン系重合体の製造方法であって、前記担持触媒下でスチレン系モノマーを重合させる工程を含むスチレン系重合体の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明者らはゲル発生問題を根本的に遮断して反応機内部に高分子が付着する現象を防止することができ、同時に触媒の重合活性を維持して高い反応転換率を有することができるスチレン系重合体の製造方法について研究したところ、メタロセン触媒および助触媒がシンジオタクチックスチレン系重合体を担体として担持された触媒下でスチレン系モノマーを重合してスチレン系重合体を製造した結果、従来バルク重合方法の短所であるゲル発生問題を根本的に遮断して反応機内部に高分子が付着する現象を防止することができ、従来のスラリー重合方法の短所である触媒の重合活性が急激に減少する問題点を解決して高い反応転換率を有することができることを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0016】
本発明のスチレン系重合体製造用触媒はメタロセン触媒および助触媒がシンジオタクチックスチレン系重合体を担体として担持された触媒を含むことを特徴とする。
【0017】
前記担持触媒はメタロセン触媒に含まれている金属1モルに対してスチレン系モノマー100〜2,000モルをメタロセン触媒(金属含量基準)1モルおよび助触媒(金属含量基準)1〜2,000モルの存在下で重合して製造される。
【0018】
本発明に使用されるスチレン系モノマーは以下の化学式1の構造を含有する物質である。
[化学式1]
PhCH=CH2
化学式1中、
Phは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子またはスズ原子を少なくとも1つ以上含む1つまたは2つ以上の置換基を有するフェニル基である。
【0019】
前記スチレン系モノマーはアルキルスチレン、ハロゲン化スチレン、ハロゲン置換アルキルスチレン、アルコキシスチレン、ビニルビフェニル、ビニルフェニルナフタレン、ビニルフェニルピレン、ビニルフェニルアントラセン、トリアルキルシリルビニルビフェニル、アルキルシリルスチレン、アルキルエステルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルベンゼンスルホン酸エステル、ビニルベンジルジアルコキシフォスファイド、p−ジビニルベンゼンまたはm−ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンまたはアリールスチレンなどを使用することができる。具体的には、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンまたはジメチルスチレンなどのアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレンまたはブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン;クロロメチルスチレンまたはブロモエチルスチレンなどのハロゲン置換スチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレンまたはブトキシスチレンなどのアルコキシスチレン;4−ビニルビフェニルまたは3−ビニルビフェニルなどのビニルビフェニル;1−(4−ビニルビフェニルナフタレン)、2−(4−ビニルビフェニルナフタレン)、1−(3−ビニルビフェニルナフタレン)または1−(2−ビニルビフェニルナフタレン)などのビニルフェニルナフタレン;1−(4−ビニルフェニル)ピレンまたは2−(4−ビニルフェニル)ピレンなどのビニルフェニルピレン;1−(4−ビニルフェニル)アントラセンまたは2−(4−ビニルフェニル)アントラセンなどのビニルフェニルアントラセン;4−ビニル−4−トリメチルシリルビフェニルなどのトリアルキルシリルビニルビフェニル;あるいはo−トリメチルシリルスチレン、m−トリエチルシリルスチレンまたはp−トリエチルシリルスチレンなどのアルキルシリルスチレンなどがある。
【0020】
メタロセン触媒は前記スチレン系モノマーに対して0.01〜10モル%含まれるのが好ましく、0.1〜5モル%含まれるのがさらに好ましい。その含量が0.1重量%未満である場合には、担持体内の触媒濃度が低すぎて触媒役割をよく果たすことができない問題点があり、5モル%を超える場合には担持体濃度が触媒濃度に比べて低すぎて担持効果が大きく落ちて、本発明で主張する担持触媒固有の重合特性が発現され難い問題点がある。
【0021】
本発明に使用される前記メタロセン触媒は通常のシンジオタクチックスチレン系重合体の製造時に使用されるものであればいずれも制限を受けない。一般に前記メタロセン触媒は周期律表上の4族金属化合物(チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)など)を含む化合物が好ましく、チタン系化合物がさらに好ましい。
【0022】
本発明に使用される前記助触媒はアルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウム化合物またはボレート化合物などを使用することができる。具体的には、メチルアルミノキサン(MAO)またはアルキルアルミニウム化合物を添加して安定化度を向上させ、改質されたメチルアルミノキサン(MMAO)などのアルキルアルミノキサン;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、トリ(n−ブチル)アルミニウム、トリ(n−プロピル)アルミニウムまたはトリイソプロピルアルミニウム(TIBAL)などのアルキルアルミニウム化合物;ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、o−シアノ−N−メチルピリジウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1−ジメチルフェロセニウム−テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはベンジルジメチルフェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのボレート化合物などがある。とくに、前記アルキルアルミニウム化合物としては、トリイソブチルアルミニウムを使用するのが好ましい。
【0023】
前記助触媒はメタロセン触媒に含まれている金属1モルに対して1〜2,000倍含まれるのが好ましく、100〜2,000倍含まれるのがさらに好ましい。その含量が1モル未満である場合には助触媒の絶対量が不足するためにメタロセン触媒が活性化され難く、2,000モル以上である場合には触媒活性化に参与して残った過剰の剰余助触媒が担持触媒水溶液にそのまま含まれて担持触媒を利用した本重合体製造時に重合速度を制御するのが難しく、重合体の平均分子量が減少する問題点がある。
【0024】
前記のような成分からなる本発明のスチレン系モノマー重合用触媒はメタロセン触媒および助触媒がシンジオタクチックスチレン系重合体の担体に担持された担持触媒を含み、前記担持触媒は不活性有機溶媒下で製造されて0.00001〜0.0005Timol/Lの濃度で不活性有機溶媒に分散されたものが好ましい。
【0025】
前記不活性有機溶媒はペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、ペンタフルオロベンゼンまたはトルエンなどを使用することができる。前記反応は0〜120℃の反応温度で実施されるのが好ましく、10〜50℃の反応温度で実施されるのがさらに好ましい。また、前記反応時間は10〜500分が好ましく、30〜200分がさらに好ましい。
【0026】
前記反応時に使用される反応機の形式は均一に撹拌できる反応機形態であれば制限を受けない。とくに、温度調節のために反応機外部にジャケットを装着して熱媒体流体を通じて反応温度を調節することができる撹拌反応機を使用するのが良い。
【0027】
また、本発明は上記のスチレン系重合体製造用触媒存在下でスチレン系モノマーを重合させる工程を含むスチレン系重合体の製造方法を提供する。
【0028】
前記スチレン系重合体はメタロセン触媒および助触媒がシンジオタクチックスチレン重合体を担体として担持された触媒を含むスチレン系重合体製造用触媒および助触媒を投入して一定時間の間に反応させたり、連続的に投入する方法で製造することができる。
【0029】
前記担持触媒は不活性有機溶媒に分散されたものが好ましく、前記スチレン系モノマーは担持触媒製造時に用いられる不活性有機溶媒体積の0.1〜50倍含まれるのが好ましく、0.5〜5倍に含まれるのがさらに好ましい。その体積比が0.1倍未満である場合には重合活性が急激に低下する問題点があり、50倍を超える場合にはバルク重合方法でのようなゲル現象を避けられない問題点がある。
【0030】
前記助触媒は担持触媒に担持されたメタロセン1モルに対して10〜1,000倍の範囲で含まれるのが好ましい。担持触媒を製造する時に投入される助触媒の場合と同様に、その含量が10倍未満である場合には助触媒の絶対量が不足するために既に製造されたメタロセン担持触媒が活性化することが難しく、1,000倍以上である場合にはやはり重合速度を制御することが難しくいため重合体の平均分子量が増加し難しくなる問題点がある。
【0031】
前記スチレン系重合体の製造時重合は0〜120℃の反応温度で実施されるのが好ましく、50〜90℃の反応温度で実施されるのがさらに好ましい。また、前記重合時撹拌速度は100〜1,000rpmの範囲で調節するのが好ましい。
【0032】
前記のような方法で収得されるスチレン系重合体は平均粒径が0.05〜1mmであるのが好ましく、重量平均分子量は10,000〜2,000,000であるのが好ましく、さらに好ましくは100,000〜1,000,000である。
【0033】
また、前記スチレン系重合体は10〜100%の反応転換率を有し、好ましくは20〜70%の反応転換率を有する。それだけでなく、前記スチレン系重合体はC13NMR分析の結果、75%以上のシンジオタクチシティを有するのが好ましく、90%以上のシンジオタクチック立体規則性を有するのがさらに好ましい。
【0034】
本発明の担持触媒製造およびスチレン系重合体の製造を本発明の一実施例による図1および図2によって説明する。図1は本発明の一実施例による担持触媒を製造した後、これを利用してスチレン系重合体を製造するための装置を示す模式図であり、図2は本発明の一実施例によって担持触媒を製造した後、これを利用してスチレン系重合体を連続的に製造するための装置を示す模式図である。
【0035】
図1は熱媒体流体1を通じて特定温度に調節された撹拌反応機に精製された不活性有機溶媒5を投入し、規定量の精製スチレン系モノマー2を助触媒3と混合して反応機に投入して撹拌した後、引き続き不活性有機溶媒に希釈されたメタロセン触媒4を投入して一定時間撹拌しながら反応させてシンジオタクチックスチレン系重合体にメタロセン触媒が担持された担持触媒を製造する。その後、熱媒体流体の温度を調節して反応機内部の温度を再び設定し、ここに精製されたスチレン系モノマー2および助触媒を投入して一定時間撹拌して反応を進行させ、メタノールを加えて反応を終結させ、ろ過および乾燥してスチレン系重合体を製造する。
【0036】
また、図2は2つの撹拌反応機が直列で連結されてスチレン系モノマーからシンジオタクチックスチレン系重合体を連続的に製造するための装置の模式図であって、前記図1と同一に担持触媒を製造した後、これを第2反応機(b)に移送してシンジオタクチックスチレン系高分子を連続的に製造する。より詳しくは、反応機(a)で製造された担持触媒溶液10をポンプ11を通じて反応機(b)に移送させる。これと同時に予定された流速でメチルアルミノキサン7と混合されたスチレン系モノマー8を反応機(b)に連続供給する。この時、反応滞留時間を調節して反応機(b)での重合反応が終了すれば、一定の速度で反応生成物9を連続的に回収する。また、反応機(a)で製造された担持触媒溶液の供給が反応機(b)へ進められると同時に、不活性有機溶媒1、スチレン系モノマー2、助触媒3、およびメタロセン触媒4を各々予定された流速で反応機(a)に補充して供給することにより、高い重合転換率を有する液状のスチレン系重合体を連続的に製造することができる。
【0037】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が以下の実施例に限られるわけではない。
【実施例】
【0038】
実施例1
1Lの反応機内部を75℃に設定し、一日間真空状態で反応機内部を浄化した後、高純度アルゴンガスを利用して反応機内部を3回浄化し、反応機温度を25℃に設定した。その後、精製されたn−ヘプタン250mLを反応機に投入し、精製されたスチレンモノマー0.5mLおよびメチルアルミノキサン(Albemarle、MAO;4.68重量%AL)溶液2.6mLを順次に反応機に投入して10分間撹拌した。次に、トルエンに希釈させたペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシド(Cp*Ti(OME)3)溶液(0.005M)4.0mLを投入した後、撹拌しながら反応を始めた。1時間程度反応させた後、反応液が濁ったら10分間かけて反応機温度を70℃に昇温させた。その後、反応機内部温度が70℃に一定になれば、精製されたスチレンモノマー250mLを投入し、次いでメチルアルミノキサン(Albemarle、MAO;4.68重量%AL)溶液3.9mLを投入して600rpmで撹拌しながら2時間反応をさせた。反応後、少量のメタノールで反応を終結させ、反応機下端のバルブを利用して液状の重合生成物を回収した後、塩酸が少量含まれた多量のメタノールで反応物を洗浄およびろ過し、80℃の真空オーブンで乾燥して最終スチレン系重合体73.7gを収得した。
【0039】
実施例2
前記実施例1で反応機の撹拌速度を1000rpmにしたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で実施してスチレン系重合体を収得した。
【0040】
実施例3
前記実施例1で助触媒としてメチルアルミノキサン(Albemarle、MAO;4.68重量%AL)溶液の代わりにトリイソブチルアルミニウム(1M)トルエン溶液およびメチルアルミノキサン(Albemarle、MAO;4.68重量%AL)をアルミニウムモル比基準に50:50で混合した溶液を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で実施してスチレン系重合体65.2gを収得した。
【0041】
実施例4
5Lおよび20Lの撹拌反応機が直列で連結された装置(図2)を利用して反応機内部の温度を75℃に設定し、一日間真空状態で反応機内部を浄化した後、高純度アルゴンガスを利用して反応機内部を3回浄化し、5Lの反応機は25℃に、20Lの反応機は70℃に各々温度を調節した。
【0042】
5Lの反応機に精製されたn−ヘプタン3600mLを投入し、精製されたスチレンモノマー10.3mL、メチルアルミノキサン(Albemarle、MAO;4.68重量%AL)溶液55.0mLおよびトルエンに希釈させたペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシド(Cp*Ti(OME)3)溶液(0.0075M)56.0mLを順次に投入した後、撹拌しながら反応を始めた。1時間程度反応させた後、前記反応液をポンプを利用して20Lの反応機に移送した。
【0043】
ここに精製されたスチレンモノマー3600mLを10分間かけて投入し、次にメチルアルミノキサン82.5mLを投入した後、600rpmで撹拌しながら反応を始めた。1時間経過した後、前記と同一の条件で5Lの反応機で担持触媒溶液3600mLを1時間製造し、再び1時間経過後(20Lの反応機での反応時間が2時間経過した後)、5Lの反応機で製造された担持触媒溶液、精製されたスチレンモノマーおよびメチルアルミノキサン溶液を各々1分当り30mL、30mL、0.070mLの流速で20Lの反応機に供給した。これと同時に20Lの反応機で反応液位を維持しながら重合生成物を回収した。そして、5Lの反応機には精製されたn−ヘプタン、精製されたスチレンモノマー、メチルアルミノキサン溶液、トルエンに希釈されたペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシド溶液(0.0075M)を各々1分当り30mL、0.010mL、0.45mL、0.45mLの流速で供給することによって担持触媒およびスチレン重合体を連続的に製造した。この時、全運転時間は正常な連続運転を基準に10時間実施し、得られたスチレン重合体は4.78kgであった。
【0044】
比較例
1Lの反応機内部を70℃に設定し、一日間真空状態で反応機内部を浄化した後、高純度アルゴンガスを利用して反応機内部を3回浄化し、反応機温度を25℃に設定した。その後、精製されたn−ヘプタン250mLを反応機に投入し、精製されたスチレンモノマー250mLおよびメチルアルミノキサン(Albemarle、MAO;4.68重量%AL)溶液6.5mLを順次に反応機に投入して10分間撹拌した。次いで、トルエンに希釈させたペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシド(Cp*Ti(OME)3)溶液(0.005M)4.0mLを投入して600rpmで撹拌しながら3時間反応をさせた。反応後、少量のメタノールで反応を終結させ、反応機下端のバルブを利用して液状の重合生成物を回収した後、塩酸が少量含まれた多量のメタノールで反応物を洗浄およびろ過し、80℃の真空オーブンで乾燥して最終スチレン系重合体43.7gを収得した。
【0045】
実験例1
前記実施例1〜4および比較例1で製造したスチレン系重合体を利用して平均直径、反応転換率、平均分子量およびシンジオタクチシティを測定し、その結果を以下の表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜4では反応機内壁および撹拌機に付着して残っている反応生成物が全体生成物の1%以下で、ほとんどが反応機内壁や撹拌機に残っておらず排出された。一方、比較例ではゲル現象の発生により25%程度の生成物が排出されずに反応機内壁および撹拌機に付着して残っていた。これを収率で表現すれば、実施例の場合には99%以上の収率を示すのに対して、比較例の場合には75%程度の低い収率を示した。
【0048】
本発明による触媒システムによれば、ゲル発生問題を根本的に遮断して反応機内部に高分子が付着する現象を防止することができる。
【0049】
また、触媒の重合活性を維持して高い反応転換率を有するだけでなく、同時に反応運転および製品生産が容易で、最終製品の粒度を調節することができて静電気発生による爆発可能性を解消し、パウダー移送による粉塵発生などの問題点を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例によって担持触媒を製造した後、これを利用してスチレン系重合体を製造するための装置を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施例によって担持触媒を製造した後、これを利用してスチレン系重合体を連続的に製造するための装置を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒および助触媒がシンジオタクチックスチレン系重合体の担体に担持された担持触媒を含むスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項2】
前記担持触媒がスチレン系モノマーをメタロセン触媒および助触媒下で重合して製造されることを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項3】
前記担持触媒がメタロセン触媒に含まれている金属1モルに対してスチレン系モノマー100〜2,000モルおよび助触媒(金属含量基準)1〜2,000モルを含むことを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項4】
前記スチレン系モノマーが以下の化学式1の構造を含有するアルキルスチレン、ハロゲン化スチレン、ハロゲン置換アルキルスチレン、アルコキシスチレン、ビニルビフェニル、ビニルフェニルナフタレン、ビニルフェニルピレン、ビニルフェニルアントラセン、トリアルキルシリルビニルビフェニル、アルキルシリルスチレン、アルキルエステルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルベンゼンスルホン酸エステル、ビニルベンジルジアルコキシフォスファイド、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンおよびアリールスチレンからなる群より1種以上選択されることを特徴とする請求項2記載のスチレン系重合体製造用触媒。
[化学式1]
PhCH=CH2
化学式1中、
Phは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子またはスズ原子を少なくとも1つ以上置換したフェニル基である。
【請求項5】
前記メタロセン触媒がチタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブおよびタンタルからなる群より1種以上選択される4族金属化合物を含むことを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項6】
前記助触媒がアルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウム化合物およびボレート化合物からなる群より1種以上選択されることを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項7】
前記アルキルアルミノキサンがメチルアルミノキサンまたは改質されたメチルアルミノキサンであることを特徴とする請求項6記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項8】
前記アルキルアルミニウム化合物がトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、トリ(n−ブチル)アルミニウム、トリ(n−プロピル)アルミニウムおよびトリイソプロピルアルミニウムからなる群より1種以上選択されることを特徴とする請求項6記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項9】
前記ボレート化合物がボラン、トリフェニルカルボニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、o−シアノ−N−メチルピリジウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1−ジメチルフェロセニウム−テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびベンジルジメチルフェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートからなる群より1種以上選択されることを特徴とする請求項6記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項10】
前記担持触媒がペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、およびトルエンからなる群より1種以上選択される不活性有機溶媒に分散されたものであることを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項11】
前記担持触媒が0.00001〜0.0005Timol/Lの濃度で不活性有機溶媒に分散されたことを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体製造用触媒。
【請求項12】
請求項1記載の担持触媒下でスチレン系モノマーを重合させる工程を含むスチレン系重合体の製造方法。
【請求項13】
前記担持触媒がペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、ペンタフルオロベンゼンおよびトルエンからなる群より1種以上選択される不活性有機溶媒に分散されたものであることを特徴とする請求項12記載のスチレン系重合体の製造方法
【請求項14】
前記担持触媒が0.00001〜0.0005Timol/Lの濃度で不活性有機溶媒に分散されたことを特徴とする請求項12記載のスチレン系重合体の製造方法。
【請求項15】
前記スチレン系モノマーの投入量が不活性有機溶媒体積の0.1〜50倍であることを特徴とする請求項12記載のスチレン系重合体の製造方法。
【請求項16】
前記担持触媒がメタロセン触媒に含まれている金属1モルに対してスチレン系モノマー100〜2,000モルおよび助触媒(金属含量基準)1〜2,000モルを含むことを特徴とする請求項12記載のスチレン系重合体の製造方法。
【請求項17】
前記重合が0〜120℃の反応温度で実施されることを特徴とする請求項12記載のスチレン系重合体の製造方法。
【請求項18】
前記重合が100〜1,000rpmの撹拌速度で実施されることを特徴とするスチレン系重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−506517(P2006−506517A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501714(P2005−501714)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000213
【国際公開番号】WO2004/069880
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(303026660)エルジ・ケム・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】