説明

スチレン製造方法およびそこでの使用のための触媒

スチレン製造方法およびそこでの使用のための触媒がここに記述されている。この方法は一般的には、C源を準備し、反応器内に配置されたナノ結晶性ゼオライトを含む触媒の存在下でC源をトルエンと接触させてエチルベンゼンを含む生成物流を生成し、そして生成物流を反応器から回収することを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明の態様は一般的にはスチレンおよびエチルベンゼンの製造方法に関する。より具体的には、態様はそのような方法における使用のための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
スチレンは多くの重合体の製造において使用される重要な単量体である。エチルベンゼンを製造し、それを次に脱水素化してスチレンを製造することにより、スチレンは普通製造される。
【0003】
一般的には分子ふるいタイプの触媒を用いて実施される芳香族転化方法は化学処理工業において既知である。そのような芳香族転化方法は例えばベンゼンの如き芳香族化合物をエチレンでアルキル化して例えばエチルベンゼンの如きアルキル芳香族を製造することを包含する。残念なことに、そのような方法はスチレンおよびエチルベンゼンへの非常に低い選択率を有することの他に所望する生成物の非常に低い収率により特徴づけられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の点から見て、増加した収率および改良された選択率が可能なスチレンおよび/またはエチルベンゼンの製造方法を開発することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明の態様はスチレン製造方法を包含する。この方法は一般的には、C源を準備し、反応器内に配置されたナノ結晶性ゼオライトを含む触媒の存在下でC源をトルエンと接触させてエチルベンゼンを含む生成物流を生成し、そして生成物流を反応器から回収することを包含する。
【0006】
1つもしくはそれ以上の態様はナノ結晶性ゼオライトが約1000nmより小さい粒子寸法を含む前の段落の方法を包含する。
【0007】
1つもしくはそれ以上の態様はナノ結晶性ゼオライトが約300nmより小さい粒子寸法を含むいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0008】
1つもしくはそれ以上の態様はナノ結晶性ゼオライトがX−タイプゼオライトから製造されるいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0009】
1つもしくはそれ以上の態様は触媒がRu、Rh、Ni、Co、Pd、Pt、Mn、Ti、Zr、V、Nb、K、Cs、Ga、Ph、BおよびNa並びにそれらの組み合わせから選択される金属をさらに含むいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0010】
1つもしくはそれ以上の態様は触媒が担体物質をさらに含むいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0011】
1つもしくはそれ以上の態様は担体物質がシリカ、アルミナ、アルミノシリカ、チタニ
ア、ジルコニアおよびそれらの組み合わせから選択されるいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0012】
1つもしくはそれ以上の態様は生成物流がスチレンをさらに含むいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0013】
1つもしくはそれ以上の態様はC源を転化させてホルムアルデヒド、水素、水、メタノールおよびそれらの組み合わせから選択される中間生成物を生成することをさらに含むいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0014】
1つもしくはそれ以上の態様はC源がメタノール、ホルムアルデヒド、ホルマリン、トリオキサン、メチルホルムセル(methylformcel)、パラホルムアルデヒドおよびメチアル(methyal)並びにそれらの生成物から選択されるいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0015】
1つもしくはそれ以上の態様はC源がメタノールおよびホルムアルデヒドの混合物を含むいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0016】
1つもしくはそれ以上の態様はトルエン転化率が0.1モル%より大きいいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0017】
1つもしくはそれ以上の態様はトルエン転化率が15モル%より大きいいずれかの前の段落の方法を包含する。
【0018】
1つもしくはそれ以上の態様はスチレンへの選択率が2モル%より大きくそしてエチルベンゼンへの選択率が10モル%より大きいいずれかの前の段落の方法を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はスチレン製造方法用のフローチャートを示す。
【図2】図2は別のスチレン製造方法用のフローチャートを示す。
【0020】
詳細な記述
導入および定義
詳細な記述を次に提供する。添付された特許請求の範囲の各々は別個の発明を規定しており、それは侵害目的のためには特許請求の範囲で特定された種々の要素または限度の同等物を包含するとして認識される。前後関係によるが、以下の「発明」に関する全ての言及はある場合にはある種の特定態様だけをさしうる。他の場合には、「発明」に関する言及は特許請求の範囲の1つもしくはそれ以上であるが必ずしも全てでない引用された主題をさすであろう。特定の態様、変法および例を包含する発明の各々は以下でさらに詳細に記述されるが、発明はこれらの態様、変法および例に限定されず、この特許における情報を入手可能な情報および技術と組み合わせる際に当業者が発明しそしてそれを使用しうることを包含する。
【0021】
ここで使用される種々の用語は以下に示される。特許請求の範囲で使用される用語が以下で定義されない場合には、当業者が出願時点で印刷された文献および発行された特許に反映されている用語の最も広い定義を与えるべきである。さらに、断らない限り、ここに記述される全ての化合物は置換されていてもまたは未置換であってもよくそして化合物のリストはそれらの誘導体を包含する。
【0022】
さらに、種々の範囲および/または数的限度は以下で明白に述べられる。断らない限り
、終点は互換性であると意図されることが認識される。さらに、いずれかの範囲が明白に述べられる範囲または限度内に入る程度の反復範囲も包含する。
【0023】
スチレン製造方法は一般的には、トルエンを共原料としてのメタノールまたはメタン/酸素と反応させることを包含する。実際には、メタノール(CHOH)はしばしば脱水素化されて副生物になって、所望するものより低いトルエン転化率および/または所望するものより低い選択率をもたらす。ここで使用される際には、用語「選択率」は所望する生産物/生成物に転化される投入物/反応物の百分率をさす。そのような低い転化/選択割合は一般的には経済的でない方法をもたらす。
【0024】
しかしながら、ここに記述される方法(および特に記述される方法と組み合わせされたここに記述される触媒)は副生物生成を最少にすることができ、それにより増加した転化率/選択率を生ずる。
【0025】
1つもしくはそれ以上の態様では、スチレン製造方法はトルエンをC源と称しうる炭素源(例えば、トルエンと交差カップリングしてスチレン、エチルベンゼンまたはそれらの組み合わせを生成しうる炭素源)と触媒の存在下で反応させてスチレンおよびエチルベンゼンを含む生成物流を製造することを包含する。例えば、C源はメタノール、ホルムアルデヒドまたはそれらの混合物を包含しうる。或いは、C源は以下のもの:ホルマリン(水およびMeOHの溶液中の37重量%〜50重量%HCO)、トリオキサン(1,3,5−トリオキサン)、メチルホルムセル(メタノール中の55重量%HCO)、パラホルムアルデヒドおよびメチアル(ジメトキシメタン)の1種もしくはそれ以上から選択されるC源と反応したトルエンを包含する。別の態様では、C源はメタノール、ホルムアルデヒド、ホルマリン、トリオキサン、メチルホルムセル、パラホルムアルデヒド、メチアル並びにそれらの組み合わせから選択される。
【0026】
ホルムアルデヒドは、例えば、メタノールの酸化または脱水素化により製造することができる。1つの態様では、メタノールを脱水素化してホルムアルデヒドおよび水素ガスを製造することによりホルムアルデヒドが製造される。この反応段階は一般的には乾燥ホルムアルデヒド流を製造し、それによりホルムアルデヒドとトルエンとの反応前の生成した水の分離が省かれる。脱水素化方法は以下の式:
CHOH → CHO+H
に記述される。
【0027】
ホルムアルデヒドおよび水を製造するためのメタノールの酸化によりホルムアルデヒドを製造することもできる。メタノールの酸化は以下の式:
2CHOH+O → 2CHO+2H
に記述される。
【0028】
ホルムアルデヒドを得るための分離方法を利用する時には、スチレンの製造のためにホルムアルデヒドをトルエンと反応させる前に分離装置を次に使用してホルムアルデヒドを水素ガスからまたは水をホルムアルデヒドおよび未反応メタノールから分離する。そのような分離が逆のホルムアルデヒドからメタノールへの水素化を阻止する。例えば、精製されたホルムアルデヒドを次にスチレン反応器に送りそして未反応のメタノールを再循環させることができる。
【0029】
以上で示された式はトルエンおよびC源の1:1モル比を示しているが、そのようなモル比はここにある態様の中では制限されずそして操作条件および反応システムの効率によって変動しうる。例えば、過剰のトルエンまたはC源が反応区域に供給される場合には、未反応部分を引き続き分離しそして工程に戻して再循環させることができる。1つの
態様では、トルエン:C源のモル比は100:1〜1:100の範囲でありうる。別の態様では、トルエン:C源のモル比は、例えば、50:1〜1:50、または20:1〜1:20、または10:1〜1:10、または5:1〜1:5または2:1〜1:2の範囲でありうる。
【0030】
スチレン製造方法は一般的には、1つもしくはそれ以上の反応器内に配置された触媒を含む。反応器は、例えば、固定床反応器、流動床反応器、担持床反応器またはそれらの組み合わせを包含しうる。ここに記述されているような高められた温度および圧力において操作可能でありそして反応物と触媒との接触を可能にしうる反応器が本発明の範囲内に考えられうる。特定の反応器システムの態様は当業者により特定の設計条件および生産量に基づき決めることができ、そして本発明の範囲を限定する意図はない。
【0031】
別の面では、1つもしくはそれ以上の反応器は1つもしくはそれ以上の触媒床を包含しうる。複数の床を使用する時には、不活性物質層が各床を分離しうる。不活性物質は例えば石英の如き不活性物質のいずれかのタイプを包含しうる。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、反応器は1〜10個の触媒床または2〜5個の触媒床を包含する。さらに、例えば、C源およびトルエンを触媒床、不活性物質層またはそれらの組み合わせに注入することができる。或いは、C源の少なくとも一部を1つもしくは複数の触媒床に注入することができそしてトルエン原料の少なくとも一部を1つもしくは複数の不活性物質層に注入する。さらに別の態様では、C源全部を1つもしくは複数の触媒床に注入することができそしてトルエン原料の全てを1つもしくは複数の不活性物質層に注入する。或いは、トルエン原料の少なくとも一部を1つもしくは複数の触媒床に注入することができそしてC源の少なくとも一部を1つもしくは複数の不活性物質層に注入することができる。さらに別の態様では、トルエン原料の全てを1つもしくは複数の触媒床に注入することができそしてC源全部を1つもしくは複数の不活性物質層に注入することができる。
【0032】
反応器の操作条件は特有のシステムでありそして原料流組成および生成物流の組成に依存して変動しうる。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、1つもしくは複数の反応器は高められた温度および圧力において操作できる。
【0033】
1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、高められた温度は250℃〜750℃、または約300℃〜約500℃または約325℃〜約450℃の範囲でありうる。高められた圧力は、例えば、1気圧〜70気圧、または1気圧〜約35気圧または約1気圧〜約5気圧の範囲でありうる。
【0034】
図1はC源がホルムアルデヒドである上記のスチレン製造方法の1つの態様の簡素化されたフローチャートを示す。この態様では、第一反応器(2)は脱水素化反応器または酸化反応器のいずれかである。第一反応器(2)は第一メタノール原料(1)をホルムアルデヒドに転化させるように設計される。第一反応器(2)の生成物流(3)を次に場合により存在するガス分離装置(4)に送ることができ、そこでホルムアルデヒドがいずれかの未反応メタノール(6)および望まれない副生物(5)から分離される。いずれかの未反応メタノール(6)を次に第一反応器(2)中に戻して再循環させることができる。副生物(5)が清浄なホルムアルデヒド(7)から分離される。
【0035】
1つの態様では、第一反応器(2)はホルムアルデヒドおよび水素を製造する脱水素化反応器でありそしてガス分離装置(4)は水素を生成物流(3)から除去可能な膜である。
【0036】
別の態様では、第一反応器(2)はホルムアルデヒドおよび水を含んでなる生成物流(3)を製造する酸化反応器である。ホルムアルデヒドおよび水を含んでなる生成物流(3
)を次にガス分離装置(4)を用いずに第二反応器(9)に送ることができる。
【0037】
清浄なホルムアルデヒド(7)を次に第二反応器(9)中でトルエンの原料流(8)と第二反応器(9)中に配置された触媒(示されていない)の存在下で反応させる。トルエンおよびホルムアルデヒドが反応してスチレンを製造する。第二反応器(9)の生成物(10)を次に場合により存在する分離装置(11)に送ることができ、そこでいずれかの望まれない副生物(5)、例えば水、をスチレン、未反応ホルムアルデヒド(12)および未反応トルエン(13)から分離することができる。いずれかの未反応ホルムアルデヒド(12)および未反応トルエン(13)を第二反応器(9)中に戻して再循環させることができる。スチレン生成物流(14)を分離装置(11)から除去しそして所望するならさらなる処理または加工にかけることができる。
【0038】
図2はC1源がメタホールである上記のスチレン製造方法の別の態様の簡素化されたフローチャートを示す。メタノール含有原料流(21)がトルエンの原料流(22)と共に内部に配置された触媒(示されていない)を有する反応器(23)に供給される。メタノールが触媒と反応してスチレンを含む生成物(24)を製造する。反応器(23)の生成物(24)を次に場合により存在する分離装置(25)に送ることができ、そこでいずれかの望まれない副生物(26)をスチレン、未反応メタノール(27)、未反応ホルムアルデヒド(28)および未反応トルエン(29)から分離することができる。いずれかの未反応メタノール(27)、未反応ホルムアルデヒド(28)および未反応トルエン(29)を反応器(23)中に戻して再循環させることができる。スチレン生成物流(30)を分離装置(25)から除去しそして所望するならさらなる処理または加工にかけることができる。
【0039】
ここに記述される方法のために使用される触媒は一般的にはゼオライト系物質を包含する。ここで使用される際には、用語「ゼオライト系物質」はアルミノ珪酸塩格子を含有する分子ふるいをさす。ゼオライト系物質は当該技術で既知でありそして均一な孔寸法を有する良好に配置された孔システムを有する。しかしながら、これらの物質は微小孔だけまたは中孔だけのいずれか、ほとんどの場合には微小孔だけ、を有する傾向がある。微小孔は約2nmより小さい直径を有する孔として定義される。中孔は約2nm〜約50nmの範囲にわたる直径を有する孔として定義される。微小孔は一般的には微小孔内部の触媒活性部位への外部分子到達を制限するかまたは触媒活性部位への拡散を遅らせる。
【0040】
しかしながら、本発明の態様はナノ結晶性ゼオライトを使用する。ここで使用される際には、用語「ナノ結晶性ゼオライト」は1000nmより小さい粒子寸法を有するゼオライト系物質をさす。例えば、粒子寸法は、例えば、1000nmより小さく、または300nmより小さく、または100nmより小さく、または50nmより小さくまたは25nmより小さい。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、粒子寸法は25nm〜300nm、または50nm〜100nmまたは50nm〜75nmである。ここで使用される際には、用語「粒子寸法」はゼオライト系物質の各々が分離している結晶(すなわち、結晶)の寸法またはゼオライト系物質内の粒子の塊の寸法のいずれかをさす。
【0041】
例えば、ゼオライト系物質は珪酸塩をベースとしたゼオライト類、例えば、ホージャサイト類およびモルデン沸石類、を包含しうる。珪酸塩をベースとしたゼオライト類は交互にあるSiOおよびMO四面体から構成することができ、ここでMは周期律表の1〜16族から選択される元素である。そのように製造されたゼオライト類は、例えば、4、6、8、10、または12−員の酸素環経路を有することができる。他の適するゼオライト物質はX−タイプおよびY−タイプゼオライト類を包含する。ここで使用される際には用語「X−タイプ」は1:1〜1.7:1の珪素:アルミニウムモル比を有するゼオライト系物質をさしそして「Y−タイプ」は1.7:1より大きい珪素:アルミニウムモル比
を有するゼオライト系物質をさす。
【0042】
触媒は、例えば、約1重量%〜約99重量%、または3重量%〜約90重量%または約4重量%〜約80重量%のナノ結晶性ゼオライトを包含する。
【0043】
1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、ナノ結晶性ゼオライトはナノ結晶性でないゼオライト系物質と比べて増加した表面積対容量比を有することができる。
【0044】
ナノ結晶性ゼオライトは当業者に既知である方法により担持されていてもよい。例えば、そのような方法は固体の多孔性アルミノ珪酸塩粒子または構造を無機性の微孔−生成剤の濃縮水溶液を少量湿潤含浸により含浸させることを包含しうる。或いは、例えば、ナノ結晶性ゼオライトを担体物質と混合することもできる。例えば、ナノ結晶性ゼオライトをその場で担体物質で担持することまたは押し出しうることもさらに考えられる。或いは、ナノ結晶性ゼオライトを担体物質上に噴霧コーティングすることによりナノ結晶性ゼオライトを担持することもできる。例えば、そのような担持方法は担体物質、例えば下記の担体物質または場合により重合体球、例えばポリスチレン球、上へのナノ結晶性ゼオライトの積層を包含しうることもさらに考えられる。例えば、そのような担持方法がゼオライト膜の利用を包含しうることもさらに考えられる。
【0045】
1つの具体的な態様では、ナノ結晶性ゼオライトは少量湿潤含浸により担持される。そのような方法は一般的には、ナノ結晶性ゼオライトを例えばメタノールの如き希釈剤の中に分散させて個々の結晶を生成することを包含する。担体物質を次に溶液に加えそして乾燥するまで混合することができる。
【0046】
さらに別の態様では、ナノ結晶性ゼオライトと組み合わされた担体物質を使用するミニ押し出しバッチを製造して押し出し物を生成することによりナノ結晶性ゼオライトが担持される。
【0047】
場合により存在する担体物質は、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノシリカ、チタニア、ジルコニアおよびそれらの組み合わせを包含しうる。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、触媒は約5重量%〜約20重量%、または約5重量%〜約15重量%または約7重量%〜約12重量%の担体物質を含む。
【0048】
ここに記述される触媒は反応物の有効拡散性を増加させ、それにより所望する生成物への反応物転化率を増加させる。さらに、触媒は従来のゼオライト系物質を使用する方法より改良された生成物選択率を示す方法をもたらす。
【0049】
さらに、そのような方法の活性は内部活性部位への到達増加により増加され、それにより比較的大きな非ナノ結晶性ゼオライト類と比べて触媒重量当たりの活性部位の有効数を増加させる。ここで使用される際には、用語「活性」は単位時間当たりの標準的条件設定において方法で使用される触媒重量当たりで製造される生成物重量をさす。
【0050】
場合により、例えば、ゼオライト系物質のイオン交換もしくは含浸によりまたは活性金属をゼオライト系物質がそこから製造される合成物質の中に加えることにより、触媒活性金属をナノ結晶性ゼオライトの中に加えることができる。ここで使用される際には、用語「ナノ結晶性ゼオライト中に加える」はゼオライト系物質の骨格中への加入、ゼオライト系物質の溝中への加入(すなわち、吸蔵)またはそれらの組み合わせをさす。
【0051】
触媒活性金属は、例えば、金属形態であることも、酸素と組み合わされることも(例えば、酸化金属)または下記の化合物の誘導体であることもできる。適する触媒活性金属は
触媒の使用が意図される特定方法に依存しており、そして例えばアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Ru、Cs、Fr)、希土「ランタニド」金属(例えば、La、Ce、Pr)、IVB族金属(例えば、Ti、Zr、Hf)、VB族金属(例えば、V、Nb、Ta)、VIB族金属(例えば、Cr、Mo、W)、IB族金属(例えば、Cu、Ag、Au)、VIIIB族金属(例えば、Pd、Pt、Ir、Co、Ni、Rh、Os、Fe)、IIIA族金属(例えば、Ga)およびそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない。或いは(または以上で論じられた金属と組み合わされて)、触媒活性金属は例えばIIIA族化合物(例えば、B)、VA族化合物(例えば、P)またはそれらの組み合わせを包含しうる。1つもしくはそれ以上の態様では、触媒活性金属はCs、Na、B、Gaおよびそれらの組み合わせから選択される。
【0052】
1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、ナノ結晶性ゼオライトは約10重量%より少ないナトリウムを包含しうる。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、ナノ結晶性ゼオライトは約5重量%より少ないアルミニウムを包含しうる。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、ナノ結晶性ゼオライトは少なくとも約30重量%のセシウムを包含しうる。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、ナノ結晶性ゼオライトは少なくとも約10重量%より少ない珪素を包含しうる。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、ナノ結晶性ゼオライトは少なくとも約0.1重量%のホウ素を包含することができる。ナノ結晶性ゼオライトの残りは酸素から製造されることを認識すべきである。
【0053】
さらに、触媒を化学化合物で処理して基本部位を抑制することにより所望する生成物に対する側鎖アルキル化選択率の増加が得られうる。そのような改良は第二金属の添加により達成されうる。第二金属は上記のものの1つでありうる。例えば、1つもしくはそれ以上の態様では、第二金属はホウ素を包含しうる。
【0054】
ゼオライト系物質と触媒活性金属との接触前にゼオライト系物質、触媒活性金属、担体物質またはそれらの組み合わせを場合により担体と接触させうることもさらに考えられる。そのような担体は、例えば、ゼオライト系物質中への触媒活性金属の加入を助けるために適用できる。1つもしくはそれ以上の態様では、例えば、担体はアルミニウムを包含する。1つもしくはそれ以上の態様では、担体はナノ−寸法担体である(ナノ−寸法担体は上記のナノ結晶性ゼオライト類に関して定義されている)。
【0055】
1つの態様では、担体を使用して担体物質の孔の中に結晶性ゼオライトを移送させることによりナノ結晶性ゼオライトが製造される。例えば、製造されたゼオライトを次に乾燥しうる。担体をナノ結晶性ゼオライトとの接触前に溶媒と混合しうることもさらに考えられる。
【0056】
ここに記述される方法は、例えば、少なくとも0.01モル%、または0.05モル%〜40モル%、または2モル%〜25モル%または5モル%〜25モル%のトルエン転化率を示しうる。
【0057】
この方法は、例えば、少なくとも1モル%、または1モル%〜99モル%、または少なくとも30モル%または65モル%〜99モル%のスチレンへの選択率を示しうる。
【0058】
この方法は、例えば、少なくとも5モル%、または5モル%〜99モル%、または少なくとも10モル%または8モル%〜99モル%のエチルベンゼンへの選択率を示しうる。
【0059】
以上は本発明の態様に向けられているが、本発明の他のおよびさらなる態様をそれらの基本的範囲から逸脱せずに案出することができ、そしてそれらの範囲は以下の特許請求の範囲により決められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
源を準備し、
反応器内に配置されたナノ結晶性ゼオライトを含んでなる触媒の存在下でC源をトルエンと接触させてエチルベンゼンを含んでなる生成物流を生成し、そして
生成物流を反応器から回収する
ことを含んでなるスチレン製造方法。
【請求項2】
ナノ結晶性ゼオライトが約1000nmより小さい粒子粒子寸法を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項3】
ナノ結晶性ゼオライトが約300nmより小さい粒子粒子寸法を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項4】
ナノ結晶性ゼオライトがX−タイプゼオライトから製造される、請求項1の方法。
【請求項5】
触媒がRu、Rh、Ni、Co、Pd、Pt、Mn、Ti、Zr、V、Nb、K、Cs、Ga、Ph、BおよびNa並びにそれらの組み合わせから選択される金属をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項6】
触媒が担体物質をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項7】
担体物質がシリカ、アルミナ、アルミノシリカ、チタニア、ジルコニアおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項6の方法。
【請求項8】
生成物流がスチレンをさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項9】
源を転化させてホルムアルデヒド、水素、水、メタノールおよびそれらの組み合わせから選択される中間生成物を生成することをさらに含んでなる請求項1の方法。
【請求項10】
源がメタノール、ホルムアルデヒド、ホルマリン、トリオキサン、メチルホルムセル、パラホルムアルデヒドおよびメチアル並びにそれらの生成物から選択される、請求項1の方法。
【請求項11】
源がメタノールおよびホルムアルデヒドの混合物を含んでなる、請求項10の方法。
【請求項12】
トルエン転化率が0.1モル%より大きい、請求項1の方法。
【請求項13】
トルエン転化率が15モル%より大きい、請求項1の方法。
【請求項14】
スチレンへの選択率が2モル%より大きくそしてエチルベンゼンへの選択率が10モル%より大きい、請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518883(P2013−518883A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552000(P2012−552000)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2011/022558
【国際公開番号】WO2011/097096
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】