説明

スチールコード、ゴム−スチールコード複合体およびタイヤ

【課題】特にタイヤクラウン部の補強用途に有用なスチールコードであって、従来におけるような製造上の問題を有することがなく、安定した品質で効率良く生産することが可能なスチールコード、これを用いたゴム−スチールコード複合体およびタイヤを提供する。
【解決手段】複数本の素線1を撚り合わせた断面略楕円形状のストランド2がN本(N=2〜8)撚り合わされてなる複撚り構造を有し、ストランド2の長径をd1、短径をd2としたときd1/d2>1.08であり、コードの外接円直径をD(mm)、コードの撚り合わせピッチをP(mm)としたとき、下記式、
εc=√(−b/2+√(b2/4−c))−1
(式中、bは−1+π2(−4R2+d2)/P2、cはπ22k(4π22+P2)/P4、Rは(D−d)/2、kはtan2(π/2−π/N)、dは(d1+d2)/2を表す)により定義されるεcがεc>0.005を満足するスチールコードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチールコード、ゴム−スチールコード複合体(以下、それぞれ単に「コード」、「複合体」とも称する)およびタイヤに関し、詳しくは、タイヤやベルト、ホースなどの各種ゴム製品の補強に好適に適用されるスチールコード、それを用いたゴム−スチールコード複合体およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
スチールコードは、ゴムなどのマトリックス中に埋設されて複合体を補強する目的で種々用いられており、中でも、ゴムをスチールコードで補強したゴム−スチールコード複合体は、ゴム製品にゴム単体では不足する強度や剛性を持たせることができるため、タイヤやベルト、ホースなどの各種ゴム製品に広く適用されている。
【0003】
通常、このような複合体を含む製品は、マトリックスが流動化若しくは軟化した状態で成型加工する工程を経て製品化されるが、このようなプロセスで、補強に使用されるスチールコードが剛直であるために、しばしばその成型加工時におけるフレキシビリティーが制約を受けてしまう。従って、従来のスチールコードでは、製品にした際の強度や剛性を高めることと、製造工程における自由度とは、背反することとなっていた。
【0004】
特にタイヤは、形状が円形で曲面部が大半を占めることから、その製造工程においては柔軟性が要求され、特に、加硫工程では、モールドにフィットさせるために釜の中で拡張させるのが通常である。その一方で、製品となった後は、長時間の過酷な使用に耐え、安定した性能を発揮するために、高い強度および剛性と、寸法安定性が重要となる。特に、タイヤのクラウン部は、使用時において常に内圧により周方向に引っ張り入力を受け、使用によりクリープして周長が伸びることにより、歪が生じて耐久性を悪化させたり、タイヤの断面形状を変化させて摩耗特性を悪化させたりする場合がある。
【0005】
これに対し、タイヤクラウン部の強化に係る技術として、例えば、特許文献1には、カーカスの周りのトレッド部に、2層の交錯ベルトと、その下層に位置する、少なくとも1層よりなり、波形若しくはジグザグ形をなす多数のコード(又はフィラメント)の補強要素を全体として赤道に沿う配向としたストリップによるクラウン強化層とを配することで、タイヤの重量増なしにセパレーションを有効に防止する技術が開示されている。
【0006】
また、上記特許文献1では、波形若しくはジグザグ形のコードまたはフィラメントを全体として赤道に沿って配向させたストリップをクラウン強化層として用いることは、加硫時の伸びが容易に得られることから製造上簡便となることも開示されている。
【特許文献1】特開平2−208101号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、製品となった後にこのスチールコードが充分な剛性を発揮するためには、製品に内圧を負荷した状態で上記の波形またはジグザグ形が伸ばされてほぼ解消している必要がある。そのため、製品タイヤとしての物性を目標値に合致させるためには、成型加工工程において高い精度が必要となることから、生産効率の点で問題を有するものであった。
【0008】
そこで本発明の目的は、特にタイヤクラウン部の補強用途に有用なスチールコードであって、従来におけるような製造上の問題を有することがなく、安定した品質で効率良く生産することが可能なスチールコード、これを用いたゴム−スチールコード複合体およびタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のスチールコードは、複数本の素線を撚り合わせた断面略楕円形状のストランドがN本(N=2〜8)撚り合わされてなる複撚り構造を有し、前記ストランドの長径をd1、短径をd2としたときd1/d2>1.08であり、コードの外接円直径をD(mm)、コードの撚り合わせピッチをP(mm)としたとき、下記式、
εc=√(−b/2+√(b2/4−c))−1
(式中、bは−1+π2(−4R2+d2)/P2、cはπ22k(4π22+P2)/P4、Rは(D−d)/2、kはtan2(π/2−π/N)、dは(d1+d2)/2を表す)により定義されるεcがεc>0.005、好適にはεc>0.015を満足することを特徴とするものである。
【0010】
本発明のスチールコードにおいては、前記N本のストランドの長軸の方向が、すべて略同一方向であってかつ、コード長手方向にわたっても同一方向であることが好ましく、コードが断面略楕円形状であって、コードの長径をD1、短径をD2としたとき、D1/D2>1.02であることも好ましい。また、本発明のスチールコードにおいては、前記N本のストランドの構造が2+n+m構造であって、かつ、2本のコア素線が実質的に撚り合わされずに平行に引き揃えられているか、前記N本のストランドの構造が2+n構造であって、かつ、2本のコア素線が実質的に撚り合わされずに平行に引き揃えられているか、または、前記N本のストランドの構造が1+n構造であって、かつ、1本のコア素線が波形に型付けされていることが好ましい。
【0011】
また、本発明のゴム−スチールコード複合体は、上記本発明のスチールコードがゴムに埋設されてなることを特徴とするものである。本発明の複合体においては、前記N本のストランド間に、少なくとも一箇所隙間が存在することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のタイヤは、上記本発明のゴム−スチールコード複合体を補強材として用いた補強層を備えることを特徴とするものであり、好適には、前記補強層が、タイヤクラウン部に、前記補強材を少なくとも1周巻き付けて形成されてなる。
【0013】
より具体的には、本発明のタイヤは、少なくとも一対のビードコア間に跨ってトロイド状に延在する少なくとも一対のカーカスを骨格とし、該カーカスの外周に、タイヤ赤道面に対し10〜40°の傾斜角をなす複数本のコードまたはフィラメントを補強要素とする少なくとも一層のベルトを有するタイヤにおいて、
前記ベルトの内周側であって前記カーカスの外周に、上記本発明のゴム−スチールコード複合体を全体としてタイヤ周方向に沿って配向させてなるストリップより形成された、少なくとも一層のクラウン強化層を備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の他のタイヤは、少なくとも一対のビードコア間に跨ってトロイド状に延在する少なくとも一対のカーカスを骨格とし、該カーカスの外周に、タイヤ赤道面に対し10〜40°の傾斜角をなし、層間で互いに赤道面を挟んで交差する複数本のコードまたはフィラメントを補強要素とする少なくとも二層の交錯ベルトを有するタイヤにおいて、
前記交錯ベルトの内周側であって前記カーカスの外周に、上記本発明のゴム−スチールコード複合体を全体としてタイヤ周方向に沿って配向させてなるストリップより形成された、少なくとも一層のクラウン強化層を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記構成としたことにより、特にタイヤクラウン部の補強用途に有用であって、従来のような製造上の問題を有することなく、安定した品質で効率良く生産することが可能なスチールコード、これを用いたゴム−スチールコード複合体およびタイヤを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1に、本発明のスチールコードの一例の断面図を示す。図示するように、本発明のスチールコードは、複数本、好適には3〜20本の素線1を撚り合わせたストランド2が、N本(N=2〜8)、図示する例では5本撚り合わされてなる複撚り構造を有している。
【0017】
また、図示するように、本発明のコードを構成するストランド2は断面略楕円形状を呈し、その長径をd1、短径をd2としたとき、これらの比d1/d2が、d1/d2>1.08を満足する。これにより、ストランド2間に隙間があっても、コードの外径が大きくなりにくくなり、製品のゲージを小さくすることができる。
【0018】
また、本発明のコードは、コードの外接円直径をD(mm)、コードの撚り合わせピッチをP(mm)としたとき、下記式、
εc=√(−b/2+√(b2/4−c))−1
(式中、bは−1+π2(−4R2+d2)/P2、cはπ22k(4π22+P2)/P4、Rは(D−d)/2、kはtan2(π/2−π/N)、dは(d1+d2)/2を表す)により定義されるεcがεc>0.005を満足するものである。
【0019】
上記式により定義されたεcがεc>0.005、好適にはεc>0.015を満足するものとしたことで、図示するように、スチールコード内でN本のストランド2の間に少なくとも一箇所、図示する例では全てのストランド2間に、一定以上の隙間が形成され、これをゴム等のマトリックス中に埋設した際においてもストランド2間に隙間が存在することとなるため、マトリックスが柔らかい状態にあるときは、コードへの引っ張り歪に対してある程度の歪までは容易に伸びることができるものとなる。これにより、製品の成型加工が容易となるとともに、タイヤ製造時の加硫拡張時の猶予が大きくなるため、製造が容易であるというメリットが得られる。
【0020】
一方、加硫後のゴムのようにマトリックスの流動性が小さくなると、上記のようにストランド2の間に隙間があっても、スチールコードはこの隙間を小さくするようなコイルバネ的変形ができなくなり、隙間がないときのようにスチールの持つ剛性が発揮されるようになる。このため、製品となった際の本発明のスチールコードの引っ張り剛性は、加工工程でスチールコードに加わる歪の大きさの影響を受けにくく、常に高剛性となる。
【0021】
また、本発明のコードにおいては、N本のストランド2の長軸の方向が、すべて略同一方向であってかつ、コード長手方向にわたっても同一方向であることが好ましい。コードを構成する各ストランド2の長軸の方向が揃っており、かつ、それがコード長手方向にわたり同方向を向いているものとすることで、コード自体も扁平となり、製品のゲージをさらに薄くすることができる。
【0022】
さらに、本発明においては、コードの断面形状が略楕円形状であって、コードの長径をD1、短径をD2としたとき、これらの比D1/D2がD1/D2>1.02を満足することも好ましく、これにより、さらに製品のゲージを薄くすることができる。なお、この場合のコードの外接円直径Dは、D=(D1+D2)/2である。
【0023】
また、製品中ではストランド間に隙間が残った状態の方が疲労性の点で好ましいが、上記のように本発明のコードでは、このような状態であっても、ストランド2同士が密着した際に比較して引っ張り剛性が大きく低下することはない。
【0024】
本発明におけるストランド2の構造としては、具体的には例えば、図1に示すストランド2のように、2+n+m構造であって、かつ、2本のコア素線1aが実質的に撚り合わされずに平行に引き揃えられている構造や、図2に示すストランド12のように、2+n構造であって、かつ、2本のコア素線11aが実質的に撚り合わされずに平行に引き揃えられている構造、また、図3に示すストランド22のように、1+n構造であって、かつ、1本のコア素線21aが波形に型付けされている構造などを挙げることができ、この場合、ゴム中にコードを埋設した際に、コード内部までゴムが浸透し、製品となって外傷を受けてもそこから水分などが侵入拡散してサビが広がるなどしにくく、好適である。
【0025】
以上より、本発明によれば、生産効率が良く、かつ、製品タイヤとなった後に補強材としての十分な剛性を発揮することのできるスチールコード、および、これをゴムに埋設してなるゴム−スチールコード複合体を実現することができる。
【0026】
また、本発明のタイヤは、かかる本発明のゴム−スチールコード複合体を補強材として用いた補強層を備えるものであればよく、これにより、補強層において所望の高剛性を発揮させて、耐久性や耐摩耗性に優れたタイヤを実現することができる。特には、本発明は、高内圧で使用されクラウン部に高い周方向張力がかかるトラック・バス用(TBR)タイヤに適用した際に有用である。本発明のタイヤは、好適には、タイヤクラウン部に、上記ゴム−スチールコード複合体からなる補強材が、少なくとも1周巻き付けられて形成されてなる補強層を備える。
【0027】
図4に、本発明のゴム−スチールコード複合体を補強材として用いた本発明のタイヤの一例のトレッド部近傍の拡大断面図を示す。図示するタイヤ100は、少なくとも一対のビードコア(図示せず)間に跨ってトロイド状に延在する少なくとも一対のカーカス101を骨格とし、その外周に、タイヤの中央円周を含む平面、即ち、タイヤ赤道面に対し10〜40°の傾斜角をなし、層間で互いに赤道面を挟んで交差する複数本のコードまたはフィラメントを補強要素とする少なくとも二層の交錯ベルト102を有し、この交錯ベルト102の内周側であってカーカス101の外周に、上記ゴム−スチールコード複合体を全体としてタイヤ周方向に沿って配向させてなるストリップより形成された、少なくとも一層のクラウン強化層103を備えている。
【0028】
本発明の効果は、図示する例には限られず、いかなるタイヤにおいても得ることができるが、前述したように、特に、TBRタイヤにおいて有効であり、中でも、図4に示すような構造のタイヤ周方向に沿う配向としたストリップによるクラウン強化層103に本発明に係る複合体を適用することで、加硫時の伸びが容易に得られて製造上簡便となるとともに、この加硫時拡張の変動に対して製品の物性の変動が少なく、安定した品質が確保できる点で好適である。
【0029】
また、図示はしないが、交錯ベルト102に代えて、タイヤ赤道面に対し10〜40°の傾斜角をなす複数本のコードまたはフィラメントを補強要素とする少なくとも一層のベルトを有するタイヤにおいて、かかるベルトの内周側であってカーカスの外周に、本発明の複合体を補強材として適用したクラウン強化層を設けることによっても、上記と同様の効果が得られることについては、言うまでもない。
【0030】
なお、本発明のタイヤは、補強層、特にはクラウン強化層の補強材として、上記本発明のゴム−スチールコード複合体が適用されているものであればよく、これにより本発明の所期の効果を得ることができるものであり、具体的なコード径や撚りピッチ、補強層における補強材の打ち込み数の他、具体的なタイヤ構造や材質等については、常法に従い適宜設定することができ、特に制限されるものではない。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(比較例)
従来一般的にTBRタイヤの補強材として使用されているコード構造3+9+15×0.23のコード20を、図5の平面図に示すように、波型形状(波長:λ、振幅:2a)に型付けして平行に並べ、ゴムに埋設することで、比較例のゴム−スチールコード複合体を作製した。
【0032】
(実施例1)
下記表1に示す2+6+11構造(2本のコア素線は実質的に撚り合わされずに平行に引き揃えられている)を有する断面略楕円形状のストランドを、図1に示すように5本撚り合わせたものをゴムに埋設することで、実施例1のゴム−スチールコード複合体を作製した。
【0033】
(実施例2)
下記表1に示す2+8構造(2本のコア素線は実質的に撚り合わされずに平行に引き揃えられている)を有する断面略楕円形状のストランドを、図2に示すように5本撚り合わせたものをゴムに埋設することで、実施例2のゴム−スチールコード複合体を作製した。
【0034】
(実施例3)
下記表1に示す1+6構造(1本のコア素線は波形に型付けされている)を有する断面略楕円形状のストランドを、図3に示すように5本撚り合わせたものをゴムに埋設することで、実施例3のゴム−スチールコード複合体を作製した。
【0035】
実施例1〜3で得られた複合体のストランドの長径d1および短径d2、コードの長径D1および短径D2、コードの撚り合わせピッチPおよびεcの値を下記の表1中に示す。なお、実施例1〜3の各複合体における各ストランドの長軸は、すべて略同一方向であってかつ、コード長手方向にわたっても同一方向である。
【0036】
得られた各複合体について、歪と応力との関係を評価した結果を、図6のグラフに示す。図中、拡張0.5%加硫後および拡張1%加硫後の値は、各複合体をそれぞれ0.5%または1%拡張した状態で加硫した後に測定した値である。結果として、図示するように、実施例の複合体は、加硫前においては低剛性で加工性が良い一方、加硫後においては従来品である比較例の複合体よりも高剛性を示していることがわかる。また、加硫後の物性については、加硫時の拡張の影響も受けにくいことがわかる。
【0037】
次に、比較例および実施例3については図7に示すタイヤ構造、実施例1,2については図4に示すタイヤ構造にて、作製した複合体をクラウン強化層103の補強材として適用して、タイヤサイズ265/60R22.5のタイヤをそれぞれ4本作製し、リム幅8.25に組んで商業用トラックに装着し、900kPaの内圧を充填した。その後、平均25480N(2600kgf)の荷重を作用させた状態で、舗装高速路30%、舗装一般路70%の走行路を10万km走行させて、走行終了時のセンター溝深さとショルダー溝深さを測定し、新品時からの磨耗量を比較した。その結果、比較例のタイヤでは2mm以上の差が生じていたが、各実施例のタイヤでは1mm以内であり、実施例において偏摩耗性が向上していることが確かめられた。
【0038】
また、各タイヤにおいて周方向ベルト層に到達した外傷を受けた部分について、そのカット部からさびの進展した長さを測定し、30mm以上のものがあった場合は腐食伝播性悪、それ以下なら良とした。
これらの結果を、下記の表1中に併せて示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1に示すように、前記式により定義されるεcがεc>0.005を満足する複撚りコードを補強材として用いた実施例1〜3のタイヤは、生産性が良好であるとともに、偏摩耗性および腐食伝播性に優れたものであることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のスチールコードの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のスチールコードの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明のスチールコードのさらに他の例を示す断面図である。
【図4】本発明のタイヤの一例のトレッド部近傍を示す拡大断面図である。
【図5】比較例に係るゴム−スチールコード複合体を示す断面図である。
【図6】比較例および実施例のゴム−スチールコード複合体における歪と応力との関係を示すグラフである。
【図7】本発明のタイヤの他の例のトレッド部近傍を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1,11,21 素線
1a,11a,21a コア素線
2,12,22 ストランド
100 タイヤ
101 カーカス
102 交錯ベルト
103 クラウン強化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の素線を撚り合わせた断面略楕円形状のストランドがN本(N=2〜8)撚り合わされてなる複撚り構造を有し、前記ストランドの長径をd1、短径をd2としたときd1/d2>1.08であり、コードの外接円直径をD(mm)、コードの撚り合わせピッチをP(mm)としたとき、下記式、
εc=√(−b/2+√(b2/4−c))−1
(式中、bは−1+π2(−4R2+d2)/P2、cはπ22k(4π22+P2)/P4、Rは(D−d)/2、kはtan2(π/2−π/N)、dは(d1+d2)/2を表す)により定義されるεcがεc>0.005を満足することを特徴とするスチールコード。
【請求項2】
εc>0.015を満足する請求項1記載のスチールコード。
【請求項3】
前記N本のストランドの長軸の方向が、すべて略同一方向であってかつ、コード長手方向にわたっても同一方向である請求項1または2記載のスチールコード。
【請求項4】
コードが断面略楕円形状であり、コードの長径をD1、短径をD2としたとき、D1/D2>1.02である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のスチールコード。
【請求項5】
前記N本のストランドの構造が2+n+m構造であって、かつ、2本のコア素線が実質的に撚り合わされずに平行に引き揃えられている請求項1〜4のうちいずれか一項記載のスチールコード。
【請求項6】
前記N本のストランドの構造が2+n構造であって、かつ、2本のコア素線が実質的に撚り合わされずに平行に引き揃えられている請求項1〜4のうちいずれか一項記載のスチールコード。
【請求項7】
前記N本のストランドの構造が1+n構造であって、かつ、1本のコア素線が波形に型付けされている請求項1〜4のうちいずれか一項記載のスチールコード。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一項記載のスチールコードがゴムに埋設されてなることを特徴とするゴム−スチールコード複合体。
【請求項9】
前記N本のストランド間に、少なくとも一箇所隙間が存在する請求項1〜8のうちいずれか一項記載のゴム−スチールコード複合体。
【請求項10】
請求項8または9記載のゴム−スチールコード複合体を補強材として用いた補強層を備えることを特徴とするタイヤ。
【請求項11】
前記補強層が、タイヤクラウン部に、前記補強材を少なくとも1周巻き付けて形成されてなる請求項10記載のタイヤ。
【請求項12】
少なくとも一対のビードコア間に跨ってトロイド状に延在する少なくとも一層のカーカスを骨格とし、該カーカスの外周に、タイヤ赤道面に対し10〜40°の傾斜角をなす複数本のコードまたはフィラメントを補強要素とする少なくとも一層のベルトを有するタイヤにおいて、
前記ベルトの内周側であって前記カーカスの外周に、請求項8または9記載のゴム−スチールコード複合体を全体としてタイヤ周方向に沿って配向させてなるストリップより形成された、少なくとも一層のクラウン強化層を備えることを特徴とするタイヤ。
【請求項13】
少なくとも一対のビードコア間に跨ってトロイド状に延在する少なくとも一層のカーカスを骨格とし、該カーカスの外周に、タイヤ赤道面に対し10〜40°の傾斜角をなし、層間で互いに赤道面を挟んで交差する複数本のコードまたはフィラメントを補強要素とする少なくとも二層の交錯ベルトを有するタイヤにおいて、
前記交錯ベルトの内周側であって前記カーカスの外周に、請求項8または9記載のゴム−スチールコード複合体を全体としてタイヤ周方向に沿って配向させてなるストリップより形成された、少なくとも一層のクラウン強化層を備えることを特徴とするタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−69484(P2008−69484A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249705(P2006−249705)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】