説明

スチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具

【課題】スチールコードベルトの端部接続作業において、カバーゴムを剥離する作業の効率及び安全性を向上することができるスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具を提供する。
【解決手段】スチールコードベルトの端部に露出したスチールコードに巻き付ける鋼線1の一端部を折り返して先端を鋼線本体に係合させると共に、その巻き付けた鋼線1と牽引手段とを接続するフック4の先端部4aをフック4の開口部が拡がる方向に延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具に関し、更に詳しくは、スチールコードベルトの端部接続作業において、スチールコードベルトの端部付近からゴムカバーを所定の長さだけ剥離するためのカバーゴム剥離用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高張力が必要とされるようなコンベヤベルトには、長手方向に引き揃えられた複数のスチールコードからなる補強層をもつスチールコードベルトが用いられる。スチールコードベルトからコンベヤベルトを構成するには、スチールコードベルトの端部同士を接続して無端状化する必要がある。従来より、このスチールコードベルトの接続は、特許文献1に記載されているように、以下の手順により行われている。
【0003】
まず、ベルト端部におけるカバーゴムを、ナイフ等を用いて除去し、スチールコードの端部を露出させる。次に、図5に示すように、両端に環状部10を有する鋼線11をそれぞれのスチールコード12に1本ずつ8の字状に一重に巻き付ける。そして、それら巻き付けた複数の鋼線11の環状部10にフックを引っ掛けてウィンチと接続し、ベルト端部と反対方向へ牽引することで、スチールコードからカバーゴムを引き出すようにして剥離する。最後に、スチールコードが所定の長さ露出した端部同士を、一方のスチールコードと他方のスチールコードとが交互に並ぶようにして突き合わせ、新たにカバーゴムで被覆して成形加硫する。
【0004】
しかし、上記のような接続方法におけるカバーゴムの剥離作業では、スチールコードの本数が多く、かつ互いの間隔が狭いため、スチールコードに巻き付けた鋼線同士が絡みやすくなり、作業効率と安全性を低下させるという問題があった。また、鋼線を牽引する際に、鋼線が剛性により起き上がってフックから外れることがないように、一定の張力が加わるまで鋼線を人力で抑えておかなければならないため、作業員の手足が鋼線に巻き込まれて負傷するおそれがあるという問題もあった。
【特許文献1】特開昭59−012831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、スチールコードベルトの端部接続作業において、カバーゴムを剥離する作業の効率及び安全性を向上することができるスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明のスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具は、スチールコードベルトの端部に露出したスチールコードに巻き付ける鋼線と、その巻き付けた鋼線と牽引手段とを接続するフックと、を備えたスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具において、前記鋼線の一端部を折り返して先端を該鋼線本体に係合させると共に、前記フックの先端部を該フックの開口部が拡がる方向に延長したことを特徴とするものである。
【0007】
フックの先端部がフック本体に対してなす角度を、0°超から90°未満の範囲にすることが望ましい。
【0008】
また、フックをベースプレートの一方の縁部に沿って複数配置すると共に、そのベースプレートの他方の縁部にスイベルを接続することが望ましく、更にそれら複数のフックを配置したベースプレートの縁部は、ベルト幅方向に対して所定の角度をなすことが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具によれば、スチールコードに巻き付ける鋼線の一端部を折り返して鋼線本体に係合させたので、隣接するスチールコードにそれぞれ巻き付けた鋼線が絡み合うことがないので、スチールコードへの鋼線の巻き付け作業の効率と安全性を向上することができる。
【0010】
また、巻き付けた鋼線と牽引手段とを接続するフックの先端部を、フック本体の開口部が拡がる方向に延長したので、フックに引っ掛けた鋼線が剛性により起き上がっても、延長した先端部により鋼線がフックから外れることを防止することができるので、牽引作業の効率と安全性を向上することができる。
【0011】
従って、本発明のスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具により、スチールコードベルトの端部接続作業において、カバーゴムを剥離する作業の効率及び安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明のスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具(以下、「カバーゴム剥離用治具」という。)は、ベルト端部に露出したスチールコードに巻き付ける鋼線と、その巻き付けた鋼線に引っ掛けて牽引手段と接続するフックとから構成されている。
【0013】
図1は、カバーゴム剥離用治具における鋼線を示す。
【0014】
この鋼線1は、JISG3522に規定するピアノ線から形成され、一端部1aは鋭角に折り返され、その先端1bは鋼線本体1cに係合するように更に略V字状に折り曲げられている。また、他端部1dは、環状に折り曲げられ、その先端を鋼線本体1cに巻き付けて固定することで環状部2を形成している。
【0015】
このような鋼線1を、スチールコードベルトの端部に露出したスチールコードに一重に巻き付ける手順を、図2に基づいて以下に説明する。
【0016】
まず、図2(a)のように、鋼線1の一端部1aをスチールコード3間の隙間に挿入する。このとき、鋼線1の一端部1aはヤリ状になっているため、スチールコード3間の隙間に容易に挿入することができる。次に、図2(b)のように、スチールコード3を包むようにして、鋼線本体1cを折り曲げる。最後に図2(c)のように、一端部1aを隣接するスチールコード3との隙間から引き出し、折り曲げられて2本になった鋼線本体1cに、略V字状に折り曲げられた先端1bを共に係合させる。
【0017】
このように、鋼線1をスチールコード3間に挿入して、図5に示すような8の字形ではなく、スチールコード3に直線的に巻き付けることができるため、隣接する鋼線1同士が絡み合うことがないので、スチールコード3への鋼線1の巻き付け作業の効率と安全性を向上することができる。
【0018】
図3は、カバーゴム剥離用治具におけるフックを示す。
【0019】
このフック4は、金属製のベースプレート5の一方の縁部5a付近に立設した鋼製の丸棒を、ベースプレート5と略平行な方向へ屈曲させることにより形成されている。ベースプレート5は、他方の縁部5bに形成された取付孔6に固定されたシャックル7を介して、図示しない牽引手段(例えばウィンチなど)に接続されている。このようなフック4において、フック4の先端部4aはフック4の開口部が拡がる方向へ延長されている。
【0020】
このようにフック4を構成することにより、フック4に環状部2を引っ掛けた鋼線1が剛性により起き上がっても、環状部2が起き上がる方向へ先端部4aが延びているため、環状部2がフック4から外れることを防止することができる。従って、スチールコード3に巻き付けた鋼線1の牽引作業の際に、人力により鋼線1の起き上がりを抑える必要がなくなるので、牽引作業の安全性を向上することができる。
【0021】
以上のように、カバーゴム剥離用治具における鋼線1及びフック4を構成したので、スチールコードベルトの端部接続作業において、スチールコードへの鋼線1の巻き付け作業、及びその巻き付けた鋼線1の牽引作業からなるカバーゴムの剥離作業の効率及び安全性を向上することができる。
【0022】
フック4の先端部4aがフック本体4b(又はベースプレート5)に対してなす角度αは、0°超から90°未満とすることが望ましい。角度αを0°以下にすると、フック4の開口部が狭まる方向へ延長することになるため、剥離作業後に鋼線1をフック4から取り外す作業が困難になる。また、角度αを90°以上にすると、先端部4aが鋼線1の起き上がる方向と反対側へ延びることになるため、鋼線1がフック4から外れやすくなる。
【0023】
また、鋼線1の捩れによりフック4やベースプレート5が回転するのを防止するために、ベースプレート5と牽引手段とは、シャックル6の代わりにスイベルを介して接続することが望ましい。
【0024】
スチールコードベルトの端部接続作業においては、複数のスチールコード3にそれぞれ巻き付けられた鋼線1を一度に牽引することが必要であり、そのためフック4は、図4に示すように、ベースプレート5の一方の縁部5aに沿って複数配列される。一方で、ベルト端部に重ね代を設けて接続を強固にするため、ベルト端部はベルト幅方向Wに対して所定の角度β(例えば、18°又は22°)をなすように斜めに切断される。そのため、フック4を配列するベースプレート5の一方の縁部5aは、ベルト端部の切断方向と平行となるように、ベルト幅方向Wに対して所定の角度βをなすことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態からなるカバーゴム剥離用治具における鋼線を示す外観図である。
【図2】スチールコードへの鋼線の巻き付け方法を説明する説明図であって、(a)はスチールコード間へ鋼線を挿入した状態を、(b)は鋼線の端部を折り曲げた状態を、(c)はスチールコードに鋼線を巻き付けた状態を、それぞれ示す。。
【図3】本発明の実施形態からなるカバーゴム剥離用治具におけるフックを示す一部断面図である。
【図4】ベールプレート上に固定された複数のフックを示す立体図である。
【図5】従来のカバーゴム剥離作業におけるスチールコードに鋼線を巻き付ける方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 鋼線
1a 鋼線の一端部
1b 鋼線の一端部の先端
1c 鋼線本体
1d 鋼線の他端部
2 環状部
3 スチールコード
4 フック
4a フックの先端部
4b フック本体
5 ベースプレート
5a ベースプレートの一方の縁部
5b ベースプレートの他方の縁部
6 取付孔
7 シャックル
10 従来の鋼線の環状部
11 従来の鋼線
12 スチールコード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールコードベルトの端部に露出したスチールコードに巻き付ける鋼線と、その巻き付けた鋼線と牽引手段とを接続するフックと、を備えたスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具において、
前記鋼線の一端部を折り返して先端を該鋼線本体に係合させると共に、前記フックの先端部を該フックの開口部が拡がる方向に延長したスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具。
【請求項2】
前記フックの先端部が該フック本体に対してなす角度を、0°超から90°未満の範囲にした請求項1に記載のスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具。
【請求項3】
前記フックをベースプレートの一方の縁部に沿って複数配置すると共に、前記ベースプレートの他方の縁部にスイベルを接続した請求項1又は2に記載のスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具。
【請求項4】
前記複数のフックを配置したベースプレートの縁部が、ベルト幅方向に対して所定の角度をなすようにした請求項3に記載のスチールコードベルトのカバーゴム剥離用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−286604(P2009−286604A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142753(P2008−142753)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】