説明

スチール用耐薄チップパウダートップコート

【課題】より薄く、および/またはより経済的なトップコートを提供し、スチール、特に高張力スチール用耐チップパウダーコーティングを提供する。
【解決手段】本発明は、例えば、自動車サスペンションコイルスプリングなどの、1以上のワックスおよび1以上の強化エポキシ樹脂の樹脂成分から形成されるパウダーコーティングを含む、耐食パウダーコーティングされたスチール基体用耐チップパウダートップコートを提供する。本発明は、強化エポキシパウダーベースコートおよびトップコートの二重コーティングを提供し、これは発泡および/または繊維強化することができる。耐チップトップコートを形成するために使用されるパウダーは、耐チップ性を十分に保持しつつ、最高200phrまで、好ましくは75phrまでの1以上の増量剤、または0.5phr以上の1以上の増量剤、例えば、硫酸バリウムをさらに含むことができる。加えて、耐チップトップコートを形成するために使用されるパウダーは、1以上の低温硬化剤を含む低温硬化パウダーであり得る。本発明は、基体に、強化亜鉛負荷エポキシコーティングパウダーを施用し、パウダーコーティングされた基体に、ワックス含有強化エポキシトップコートを施用し、加熱して、コーティングパウダーを融合または硬化させることを含む、二重コーティングを製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐チップトップコート用コーティングパウダーおよびスチール基体用パウダーコーティングトップコートに関する。さらに詳細には、本発明は、強化エポキシ樹脂および1以上のワックス化合物をその上に含む耐チップトップコート用コーティングパウダー、および耐チップトップコート用コーティングパウダーで作られた高張力スチール基体への、例えば、自動車サスペンションコイルスプリングなどへの、耐チップコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車および他の乗り物のホイールアセンブリにおけるスチールコイルスプリングは非常に厳しい条件に付される。従来のスチールスプリングはさびるか、さび得ることが予想されるので、従来のコイルスプリングは適切な厚さのスチールで形成された。しかし、自動車のハンドル操作および乗車制御を改善するために、ホイールアセンブリを外側方向に向かって乗り物の隅部へと移動させた。これにより、自動車本体構造に対するねじり応力が増加し;さらに頑丈なフレームアセンブリを用いるか、または隅部へ移動させたサスペンション部品の軽量化により、この応力をゼロにしなければならない。直径を減少させると、高張力スチールコイルスプリングは従来の自動車サスペンションコイルスプリングよりも軽くなり、かくしてこれらの部品の重量を減少させるための手段を提供する。さらに、超高張力スチールは、さらなる軽量化の見込みをもたらす。しかし、超高張力スチールコイルスプリングはスクラッチおよびノッチ感受性であるので、舗装されているかまたは舗装されていない路上をドライブ中に飛んでくる石および砂利によって生じる衝撃損傷から保護することが必要である。また、望ましい金属特性を維持し、早すぎる柔軟性損傷を防止するために、高張力スチールは163℃を超えて加熱することはできない。
【0003】
Grubbらの米国特許第6,677,032B1号は、耐食性を付与する亜鉛リッチな強化エポキシベースコートおよび耐チップ性を付与する同じ熱硬化性エポキシ樹脂の無亜鉛トップコートを包含する二重層コーティングを開示する。高張力スチール用強化コーティングは、1つの熱サイクルで加工できるが、この特許において開示されているトップコートの厚さは、自動車のOEM耐チップコーティング基準を満たすコーティングのコストを増大させる。
【特許文献1】米国特許第6,677,032B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、より薄く、および/またはより経済的なトップコートを提供しつつ、スチール、特に高張力スチール用耐チップパウダーコーティングを提供する問題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、1以上の耐食性パウダーコーティングベースコートをその上に有する基体の耐チップパウダートップコートは、1以上の強化エポキシ樹脂の樹脂成分のコーティングパウダーの硬化または融合生成物、樹脂100部あたり0.1から5部(phr)の1以上のワックスおよび、任意に最高200phrまでの1以上の増量剤(extender)を含む。このトップコートは、その耐チップ性を十分に保持しつつ、最高75phrまでの1以上の増量剤、または0.1phr以上、または0.5phr以上の1以上の増量剤、例えば、硫酸バリウムを有するパウダーの硬化または融合生成物を含む。耐チップトップコートを形成するために使用されるパウダーは、低温硬化パウダー、例えば、100から163℃の温度で45以内、好ましくは30分以内の時間で硬化し、1以上の低温硬化剤を含むものであり得る。好適な低温硬化剤は、例えば、脂肪族ポリアミンのエポキシ付加物、脂環式ポリアミンのエポキシ付加物、イミダゾールのエポキシ付加物、およびこれらの混合物である。
【0006】
スチール基体と接触した耐食性ベースコートパウダーコーティングは、1以上の耐食性強化樹脂パウダーコーティング、例えば、亜鉛負荷された(loaded)エポキシ樹脂パウダー、ウレタンパウダー、または高度に架橋したエポキシパウダーから得られるものを含む。
【0007】
好ましくは、トップコートの基体は、耐食性パウダーコーティングされた高張力スチール、即ち、耐食性強化エポキシパウダーコーティングを有するスチールを含む。本発明は、スチール基体用耐チップパウダーコーティングを提供し、ベースコートパウダーコーティングは25から103μmの厚さを有し、トップコートは150から400μm、好ましくは384μm以下、さらに好ましくは335μm以下の厚さを有する。トップコートは、発泡させることができるか、もしくは繊維強化できるか、またはその両方である。
【0008】
トップコートまたはそのためのコーティングパウダー中の1以上のワックスは、従って0.335以下のスリップ試験タンジェント値(ASTM D4518−85(1985))をもたらす任意のワックスであり得る。好適なワックスは、ポリエチレン(PE)ワックス、微結晶PEワックス、高分子量PEワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、水素化ヒマシ油、TiOとPTFEとの組み合わせ、部分塩素化パラフィン樹脂、例えば、70%塩素化パラフィン樹脂、PE/PTFE組み合わせ、有機シロキサンを含有するワックス、およびこれらの組み合わせから選択できる。好ましくは、ワックスは、PE/PTFE組み合わせ、即ち、好ましくは、PE対PTFEの比が1:1から3.0:1.0、例えば、1.1:0.9から2.0:1.0であるPE/PTFE組み合わせを含む。1以上のワックスを、0.1phr以上から5.0phrまで、好ましくは3.0phr以下、さらに好ましくは2.5phr以下の量で使用できる。
【0009】
本発明は、スチール基体上に対する二重コーティングを提供し、この場合、ベースコートは、25から103μmの厚さを有する強化亜鉛負荷エポキシ樹脂を含み、無亜鉛トップコートが形成され、ベースコートと同じ強化エポキシおよび1以上のワックスを含み、150から400μmの厚さを有する。
【0010】
二重コーティングは、好ましくは、1つの加熱サイクルにより処理される「ドライ・オン・ドライ」法により形成できる。この方法では、強化亜鉛負荷エポキシベースコートコーティングパウダーが、例えば、静電的にスチール基体に、所望の厚さのベースコートを形成するために十分な量で施用される。トップコート用のコーティングパウダーは、所望の厚さのトップコートを形成するために十分な量で適用される。次に、パウダーコーティングされた基体を加熱して、コーティングパウダーを融合または硬化させ、これにより二重コーティングを製造する。同じ強化エポキシ樹脂は、好ましくは、ベースコートおよびトップコートの両方を形成するために使用され、従って、加熱サイクルにより、各層のエポキシ樹脂の架橋により2層が互いに完全に結合する構造が得られる。
【0011】
かっこを含む全ての語句は、かっこでくくられたもの、およびこれがない場合のいずれかまたは両方を意味する。例えば、「(コ)ポリマー」なる語句は、選択的に、ポリマー、コポリマーおよびこれらの混合物を包含する。
【0012】
特に定めのない限り、全てのプロセスはおよび全ての実施例を、標準的温度および圧力(STP)の条件下で行った。
【0013】
本明細書において記載される全ての範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。例えば、成分が4重量%以上、または10重量%以上で、最高25重量%までの量で存在するならば、この成分は、4から10重量%、4から25重量%または10から25重量%の量で存在し得る。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「平均粒子サイズ」なる用語は、特に定めのない限り、Malvern Mastersizer(商標)2000装置(Malvern Instruments Inc.、Southboro、MA)を製造業者により推奨される手順により用いて、レーザー光散乱により測定される粒子分布における粒子直径または粒子の最大寸法を意味する。
【0015】
本明細書において用いられる場合、特に指定のない限り、用語「耐チップコーティング試験」は、General Motorの「GM公開試験番号GM9508P、方法B(2002年6月改訂)を意味する。
【0016】
本明細書において用いられる場合、「コーティングパウダー」なる語句は、パウダーコーティング組成物を意味し、「パウダーコーティング」なる語句は、パウダーコーティング組成物から形成されるコーティングを意味する。
【0017】
本明細書において用いられる場合、「コポリマー」なる用語は、2以上の異なるモノマーから製造される任意のポリマーを意味する。
【0018】
本明細書において用いられる場合、特に指定のない限り、任意の樹脂または(コ)ポリマーの「ガラス転移温度」または「Tg」なる用語は、示差走査熱量分析(DSC)(1分あたり20℃の加熱速度)を用いて測定され、Tgは変曲の中点でとる。Tgは別法として、Bull.Amer.Physics.Soc.、1、3、123ページ(1956)のFox式により説明されるように計算することができる。
【0019】
本明細書において用いられる場合、「高張力スチール」なる用語は、例えば、プレストレスト形態またはプレストレス鎖の形態で、25℃で1850MPa以上の最大張力を示すスチールを包含し、超高張力スチールを包含する。
【0020】
本明細書において用いられる場合、任意の(コ)ポリマーまたは樹脂の「ハイブリッド」なる用語は、付加物、グラフトまたはブロックコポリマーおよびかかる(コ)ポリマーまたは樹脂の相溶性または相溶化ブレンド、例えば、エポキシポリエステルハイブリッドを意味する。
【0021】
本明細書において用いられる場合、特に定めのない限り、「分子量」なる用語は、ポリスチレン標準で較正されたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリマーの重量平均分子量を意味する。
【0022】
本明細書において用いられる場合、「phr」なる用語は、樹脂系100(重量)部あたりの成分の量(重量)を意味する。従って、他の物質、例えば、粉末亜鉛、ガラス、アラミドまたは炭素繊維、発泡剤などの量は、100部として計算された樹脂系に対する、100重量部あたりの重量部として表される。
【0023】
本明細書において用いられる場合、「ポリマー」なる用語は、任意の数の様々なモノマーの反応生成物であるポリマー、例えば、ターポリマー、およびテトラポリマーを包含し、さらには、ランダム、ブロック、セグメント化およびグラフトコポリマー、およびこれらの任意の混合物または組み合わせを包含する。
【0024】
本明細書においてて用いられる場合、「樹脂」および「ポリマー」なる用語は交換可能に使用される。
【0025】
本明細書において用いられる場合、「樹脂系」なる用語は、エポキシ樹脂、強化樹脂および任意のクロスリンカー、硬化剤(curing agent)または硬化剤(hardener)(触媒ではない)であって、架橋構造の一体部分になるものの全体を意味する。
【0026】
本明細書において用いられる場合、「スリップ試験」なる用語は、約500gの質量を有し、コーティングされたパネルの一端に設置された7.68cm×10.24cmのプラスチックスレッドが、このスレッドが設置された末端からこのパネルをゆっくりと手動で上昇させるにつれて、滑り始める角度での傾きのタンジェントを得る試験を意味する。コーティングされたパネルをスレッドが動き始める直前まで上昇させる。分度器を用いて角度を次に手動で測定する。コーティングされたパネルは、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)硬化ポリエステルおよび2.0phrのワックスを含むパウダーでコーティングされた、10.24cm×30.72cm(4”×12”)Qパネル(冷延スチール)を含み、これを静電スプレーにより51.2μm(2.0mil)の厚さ(最高5.12μm(0.2mil)までの厚さのばらつきがある)に施用し、次いで190.6℃(375°F)で35分間硬化させる。スリップ試験は、本明細書において定義されるスレッドを使用して、ASTM D4518−85(1985)により定義される。
【0027】
本明細書において用いられる場合、「wt%」なる用語は、重量%を意味する。
【0028】
本明細書において、特に定めのない限り、全ての百分率は重量百分率である。
【0029】
本発明の耐チップ二重コーティングにより、意外にも、耐チップコーティング基準を満たす、かなり薄いコーティングとすることが可能になる。ベースコートは亜鉛負荷された架橋パウダーコーティングを含み、一方、トップコートは、1以上のワックスおよび無亜鉛発泡強化エポキシパウダーコーティングを含み得る。本発明のパウダーコーティングを用いて、パウダーコーティングの耐チップ性を保持し、かくして、トップコートの厚さを40%まで減少させるかまたは200phrもの、好ましくは最高75phrまでの増量剤またはフィラー、例えば、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化鉄、結晶性シリカ(石英)、メタケイ酸カルシウム、ソーダ石灰ガラス球、ケイ酸マグネシウム、霞石閃長岩、モスクワマイカ、珪藻土、カオリンクレイまたは炭酸カルシウムを添加しながら、高張力スチールスプリングの現在の要件を満たすことができる。
【0030】
ベースコートおよびトップコートの強化エポキシ樹脂は、エポキシ成分およびエラストマー成分の合計重量基準で、5から25重量%のエポキシ付加物、および−30℃以下、好ましくは−40℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する1以上のエラストマーのエラストマー成分;エポキシシェル、ならびにエポキシシェルおよびアクリルゴムコアの合計基準で5から20重量%のソフトゴムコア(このコアは−30℃以下、好ましくは−40℃以下のTgを有する)を有するコア−シェルポリマー;200から550のヒドロキシル当量を有する多ヒドロキシ官能性硬化剤;ならびにこれらの混合物および組み合わせから選択される強化剤を含み得る。
【0031】
亜鉛負荷ベースコート中、強化コーティングパウダーは好ましくは75phr、もしくは好ましくは150phr以上、さらに好ましくは200phr以上の亜鉛粉を含んでもよい。ベースコート中の硬化樹脂は、任意の架橋樹脂またはポリマー、好ましくはエポキシであり得る。
【0032】
トップコート中、強化エポキシ樹脂をさらに強化して、より高い耐チップ性を提供することができる。トップコートをさらに強化する一方法は、コーティングパウダーが付される加工温度で融解または分解しない物質、例えば、ガラス、アラミド、金属または炭素から形成される繊維を外側コートに添加することである。有用な繊維は、約5から約20μmの間の直径を有し、外側コートを形成するために使用される樹脂の約20から約80phrの間で使用される。トップコートをさらに強化するための別の方法は、発泡剤を外側コート樹脂に添加して、加工される場合に、外側コートの密度を理論的密度に対して少なくとも約25%、好ましくは少なくとも40%減少させることである。密度の減少が約65%を超えると、コーティングは弱くなる。発泡は、外側コーティングに多孔性を付与し、このコーティングは砂利などの物質がぶつかった場合に、へこむが、割れはしない。外側コートの樹脂は、繊維の添加ならびに発泡剤の使用による発泡の両方によりさらに強化することができる。
【0033】
好ましくは、スチール基体は腐食防止前処理剤、例えば、リン酸亜鉛で前処理される。
【0034】
1以上のエポキシ樹脂は、当該分野においてコーティングパウダーに有用であると知られているもの、例えば、エピクロロヒドリンまたはポリグリシジルエーテルおよび芳香族ポリオール、例えば、ビスフェノール、例えば、ビスフェノールAの反応により製造されるものから選択できる。エポキシ樹脂は、1.0以上、さらに好ましくは1.9以上の平均エポキシ官能性を有する。一般に、エポキシ当量は少なくとも170であるが、場合によっては、さらに低い値も可能であり;例えば、100以上であってもよい。好ましくは、エポキシ当量は、3000未満、または1000未満、例えば、170から1500、または特に750から975である。かかるエポキシ樹脂は、例えば、芳香族または脂肪族ポリオールおよびエピクロロヒドリンまたはジクロロヒドリンの間のアルカリ、例えば、苛性ソーダの存在下でのエーテル化反応により製造できる。芳香族ポリオールは、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(即ち、ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、脂肪族グリコールおよびジグリコール、ジオールのジグリシジルエーテル、ならびにかかるジオールの縮合グリシジルエーテルを使用できる。好適な樹脂は、これに限定されないが、エピクロロヒドリンおよびビスフェノール、例えば、ビスフェノールAおよびビスフェノールFの反応により製造されるものにより例示される。これらの樹脂の低溶融粘度は、硬化剤、添加剤および顔料との混合物中、60から110℃でのこれらの押出を促進する。好ましくは、本発明において使用されるエポキシ樹脂は、ビスフェノールのエーテル化残基を含む。好適なエポキシ樹脂は、例えば、Araldite(商標)GT7074、930から1180のエポキシドあたりの重量(EEW)を有するビスフェノールAエポキシ樹脂のジグリシジルエーテル(ニューヨーク州ブルースターのHuntsman Advanced Materials Americas Inc.から商業的に入手可能)を含み得る。
【0035】
コーティングパウダー組成物は、エポキシハイブリッドコーティングパウダーを含み得る。ハイブリッドコーティングパウダー中のエポキシ樹脂として有用なオキシラン基含有ポリマーは、ポリグリシジル官能性アクリルポリマー、エポキシノボラック樹脂、またはカルボキシル官能性ポリエステルおよびエポキシ樹脂の反応生成物を含み得る。
【0036】
熱硬化性エポキシ樹脂は、1以上の硬化剤、例えば、ポリアミン化合物、またはエポキシ樹脂の自己架橋を行うための硬化触媒のいずれか、または両者を含有し得る。好ましくは、硬化剤は、低温硬化剤、例えば、脂肪族または脂環式ポリアミンのエポキシ付加物およびイミダゾールのエポキシ付加物を含む。低温硬化剤は、149℃以下で30分間で硬化するコーティングパウダーを提供し;かかるコーティングは、例えば、135℃で30分で硬化できるか;または149℃未満の温度で120分未満、例えば、121℃の温度で40分で硬化できる。
【0037】
ポリアミンのエポキシ付加物は、例えば、脂肪族ジ第二ジアミン、脂肪族ジ第一ジアミン、脂環式ジアミンおよび芳香族ジアミンのエポキシ付加物を含み得る。かかる化合物は、樹脂100部あたり2から40部(phr)、好ましくは5から20phrの範囲の量で使用できる。
【0038】
好ましい触媒は、イミダゾールであり、イミダゾールは下記一般式を有する:
【0039】
【化1】

【0040】
式中、R、R、R、およびRは独立して、水素、アルキル、アリール、またはエポキシ樹脂と反応性でない任意の置換基である。本発明に関して、イミダゾールなる用語は、本明細書においては置換および非置換イミダゾールの両方の意味で使用される。触媒は、低温硬化剤との硬化反応を促進するために、樹脂100部あたり0.1から5部(phr)、好ましくは0.2から2phrの量で使用できる。
【0041】
好ましくは、低温硬化剤は、イミダゾールのエポキシ付加物、例えば、イミダゾールのビスフェノールAエポキシ樹脂付加物を含む。エポキシ付加物は、イミダゾールをエポキシ樹脂系とより相溶性(compatible)にする。イミダゾールのエポキシ付加物は、樹脂100部あたり0.1から8.0部(phr)、好ましくは1.0から5phrの量で使用できる。かかるイミダゾールのビスフェノールAエポキシ樹脂との好適な付加物は、Shell Chemical CompanyからEpon(商標)Curing Agent P−101として商業的に入手可能であり、ビスフェノールAエポキシ樹脂のジグリシジルエーテルのイミダゾール付加物はテキサス州ヒューストンのResolution Performance Productsから商業的に入手可能である。
【0042】
前記の第一エポキシ強化法に従って、エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールA樹脂を、−30℃以下、好ましくは−40℃以下のTgを有するエラストマーに付加させる。好ましいエラストマーは、カルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリル(CTBN)ゴムである。かかるエポキシ/CTBNゴム付加物は、例えば、1975年9月24日に公開された英国特許明細書1,407,851(C.G.Taylor)およびPowder Coating 184“Elastomer−Modified Epoxy Powder Coatings:a Review”、1994年4月13日、No.4347に記載されている。低温耐チップ性に必要な軟化を提供するために、CTBN成分はCTBNおよびエポキシ樹脂成分の合計重量の5重量%以上、CTBNおよびエポキシ樹脂の最高25重量%までの量で存在する。CTBNが25重量%を超えると、さらなる利点は実現されず、良好な硬化に不十分なエポキシ成分が存在し得る。エラストマー成分およびエポキシ成分は化学的に結合するので、コーティングパウダーの融合および硬化の間に相分離は起こらない。しかし、エポキシおよびゴムのミクロドメインが残存する。
【0043】
第二の強化法において、1以上のコア/シェル樹脂を使用し、この樹脂中で、アクリルゴム樹脂はコアを形成し、エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールAエポキシ樹脂はシェルを形成する。コアのアクリルゴム樹脂のカルボキシル官能基とシェルのエポキシ樹脂間の化学結合は、コア/シェル樹脂を用いて形成されるコーティングパウダーの融合および硬化中の相分離を予防する。かかるアクリルゴム修飾エポキシ樹脂は、例えば、Dow Chemical Companyにより、Polymer Reprints、32(3)pp358〜9においてH−J SueおよびE.I.Garcia−Melfinにより記載されている。好ましいコア−シェルポリマーは、シェルのエポキシ樹脂がこれにより結合するカルボン酸官能基を有するアクリルゴムコアを有し、例えば、アクリルゴムは(メタ)アクリル酸およびアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ブチルアクリレート、エチルアクリレートおよびエチルヘキシル(メタ)アクリレートから形成できる。
【0044】
第三強化法として、エポキシ樹脂を、200から550、好ましくは300以上の範囲の比較的高いヒドロキシ当量を有するポリヒドロキシル官能基と硬化させる。架橋剤の比較的高いヒドロキシ当量は、OH基間の比較的長い鎖長を保証し、この鎖長は、硬化したコーティングに柔軟性を付与し、コーティングを耐チップ性にするのに役立つ。好ましいポリヒドロキシル強化剤は、フェノール硬化剤、例えば、ビスフェノールAのビスフェノールAエンドキャップされたジグリシジルエーテルであり、これはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびビスフェノールAの反応生成物である。エポキシ樹脂成分の好ましいフェノール硬化剤の例としては、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyにより商標D.E.H.(商標)87およびD.E.H.(商標)85硬化剤で販売されているものを含み、どちらもビスフェノールAのビスフェノールエンドキャップされたジグリシジルエーテルであると考えられる。D.E.H.(商標)87硬化剤は、370から400のヒドロキシル当量を有し、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyから商業的に入手可能である。
【0045】
他の種類のフェノール硬化剤を、フェノール−およびクレゾール−ノボラック硬化剤などと同様に使用できる。
【0046】
耐食性を付与するために亜鉛粉を添加し、Znは前記強化エポキシ樹脂のいずれかと併せて強化剤としても作用する。従って、かかるZnリッチな強化エポキシコーティングの単一コートを用いて、高張力スチール成分上に単一コートを形成し、耐チップ性および耐食性の両方を有するかかる成分を提供することができる。本発明において有用な亜鉛粉は、2.0から10.0μm、例えば、4.0ミクロンの平均粒子サイズを有してもよい。好適な亜鉛粉は、亜鉛末4P16であり、これはノースカロライナ州ローリーのSogem USA Inc.から商業的に入手可能である。
【0047】
二重コーティング法は、スチール基体と接触した、亜鉛含有強化エポキシの25から100μmの厚さを有するベースコートパウダーを施用し、次いで亜鉛を含まず、1以上のワックスを含有する強化エポキシのトップコートパウダーを施用することを含む。トップコートは強化繊維を含有してもよく、および/または発泡剤の使用により発泡させてもよい。無亜鉛外側コーティングは、繊維を含有し、かつ発泡させることができる。二重コートコーティングが形成される場合、2つのコートの樹脂組成物が実質的に同一であることが好ましく、これにより一般的に連続した熱硬化性樹脂構造が形成され、その内部コートは亜鉛に富み、外側コートは繊維および/または発泡により強化される。
【0048】
1以上の発泡剤が使用される場合、これは乾燥形態でコーティングパウダーと混合するか、即ちポストブレンドとして使用するか、またはコーティングパウダーそれ自体の中に完全に組み入れるか、即ち、密接混合または溶融混合の一部として使用するかのいずれかであってよい。完全に混合される場合、発泡剤は、コーティングパウダー組成物がコーティングパウダー中に融合される温度よりも高い温度であるが、コーティングパウダーが融合または硬化する温度以下の温度で活性化され、高張力スチールをコーティングする。発泡剤は、0.1phr以上で、最高5phrまで、好ましくは少なくとも0.5phrで使用され、実際の量は特定の発泡剤、特定の樹脂系、加工条件および密度の減少が望まれる程度に依存する。樹脂に加えて、成分の量に依存して、発泡剤は、全配合物の0.1から3重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%で使用される。
【0049】
本発明において使用される発泡コーティングパウダーは、それ自体、基体をコーティングするために使用できる。発泡コーティングパウダーにおいては、ピンホールを生じ、コーティングの外観を損なう気体放出、例えば、水からの気体放出を避けることが望ましい。しかし、本発明の一つの態様によると、発泡コーティングを製造するコーティングパウダーについて、機能的利点が見られる。発泡コーティングを高張力スチールの二重コーティングについてトップコートとして前述したが、発泡コーティングは、要件があまり厳しくない場合に、高張力スチール基体上で衝撃耐性を得るために、それ自体で使用できる。
【0050】
発泡コーティングはまた、スチール基体に断熱および防音の両方を提供する。従って、例えば、発泡コーティングは、振動を弱めるために自動車オイルパンまたは自動車ドアパネルの内部をコーティングするために使用できる。
【0051】
本発明において使用される発泡コーティングは、衝撃を受けた時にくぼむか、またはつぶれる。このような押しつぶされる発泡コーティングの一つの用途は、製造要件により、さらに高い許容範囲を考慮する場合、構成成分間の許容範囲を非常に小さくみせる分野においてである。例えば、ホテル用金庫のドアおよびドア枠上の発泡コーティングは、実際の許容範囲が高い場合でも、押しつぶされて、非常にぴったりとした外観を形成する。
【0052】
発泡剤は、所定のコーティングパウダーが配合される温度と、コーティングパウダーが融合し、硬化する温度の差によって選択される。このような薬剤は、コーティングパウダーを形成するために、材料を密接に混合してコーティングパウダーを形成する間は発泡しないように、例えば、エポキシコーティングパウダーについては60℃から110℃の温度で、そしてコーティングパウダーの硬化温度で著しいガスを発生させるように、120℃以上、例えば、150℃以上、または最高275℃までで選択される。
【0053】
エポキシコーティングの現在好ましい熱活性化発泡剤は、p−トルエンスルホニルヒドラジド、例えば、コネチカット州ミドルベリーのUniroyal Chemical CompanyによりCelogen(商標)TSHとして販売されているものである。他の好適な発泡剤としては、これに限定されないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、シリコンオキシヒドリドおよびアゾカルボンアミドが挙げられる。
【0054】
化学発泡剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを使用して、発泡させることができる。発泡させるために、水素化ホウ素ナトリウムは、プロトンドナー、例えば、水を必要とする。アルカリ金属水素化ホウ素化物と合わせて塩水和物をプラスチック中で使用すると、高温で発泡し、この塩水和物はある閾値温度以上でのみ水を放出する。エポキシベースのコーティングパウダーに関して、水素化ホウ素ナトリウムおよびアルミナ三水和物の組み合わせは、発泡剤およびプロトンドナーの有用な組み合わせである。
【0055】
別法として、発泡コーティングを製造することができ、この場合、2つのコーティングパウダーの乾燥ブレンドを調製することにより、2つの化学成分が気体を発生させ、2つのコーティングパウダーのうちの一方は1つの化学成分を含み、他のコーティングパウダーは他の化学成分を含む。例えば、水素化ホウ素ナトリウムを含有するエポキシコーティングパウダーを、カルボン酸官能性アクリルポリマーを含有するアクリルコーティングパウダーと乾式ブレンドすることができる。融合させ、硬化させた場合、アクリルコーティングパウダーのカルボン酸官能基は、水素化ホウ素ナトリウムの発泡のためのプロトンに寄与する。
【0056】
本発明において有用なコーティングパウダーは、当該分野において公知の微量成分、例えば、顔料、および流量調節剤、例えば、シリカも配合することができる。一つの好適な商業的に入手可能な顔料(増量剤でもある)としては、Raven#1250ビーズ、ジョージア州アトランタのColumbian Chemical Co.から入手可能なカーボンブラック顔料が挙げられる。
【0057】
本発明の耐チップおよび耐食性コーティングを提供するために使用されるコーティングパウダーは、通常の方法に従って製造される。成分をブレンドし、次いで顕著な硬化が起こらないように溶融混合する。溶融化合物を押し出し、押出後、急速に冷却し、続いて粉砕し、必要ならば粒子を大きさによって分類する。
【0058】
コーティングパウダーを通常の手段により適用することができる。静電コーティングに関して、粒子の平均サイズは、5から200μm、好ましくは25μm以上、または75μm以下の範囲である。
【0059】
施用したら、コーティングを、例えば90から250℃の温度で30秒から90分の期間、熱硬化させる。熱硬化の熱は、対流、赤外(IR)または近IR源から得ることができる。
【実施例】
【0060】
以下の実施例は、本発明の有用性を説明する。
【0061】
以下の実施例において、「Araldite(商標)GT7226/9808樹脂Master Batch」とは、795および895からのエポキシドあたりの重量で90重量%のビスフェノールAエポキシ樹脂のジグリシジルエーテルおよび10重量%のAcronal(商標)4Fアクリル流量調節剤を含有するエポキシ樹脂を意味する。マスターバッチは、ニューヨーク州ブルースターのHuntsman Advanced Materials Americas Inc.から商業的に入手可能である。Cab−O−Sil(商標)M5は、イリノイ州タスコラのCabot Corporationから商業的に入手可能な発煙シリカである。成分737BCは、粉砕されたeガラス繊維であるか、またはガラス短繊維であり、オハイオ州トリードのOwens Corningから商業的に入手可能である。
【0062】
配合物:実施例AおよびBならびに実施例1A〜6A
ベースコートおよびトップコートコーティングパウダーのそれぞれを、原料成分をプラスチックバッグ中で約1分間振盪し、次に短時間(60〜90秒)、71.1℃(160°F)に設定されたPrism二軸スクリューTSE24PC押出機でシート状に押し出し、これをベルト上で空冷し、砕いてチップにする方法に従って、下記の表1に記載した成分から形成した。得られたチップを約1分間、プラスチックバッグ中で表示された量の乾燥フローエイドと混合し、次いでBrinkman Retsch ZM1000 Laboratory Grinder中、高速で粉砕して粉末にし、次いで135μm(100メッシュ)スクリーンを用いてスクリーンして、粗粒子を除去した。
【0063】
コーティング:実施例1〜9
得られたエポキシベースコートおよびトップコートコーティング組成物を次いで、Nordson Versa−Spray II静電スプレーガンを用いて、一つずつ、乾燥状態で、下記表2および3に表示された基体上(この基体のそれぞれは4分間160℃で表面温度約104℃に予熱)に静電スプレーし、下記表2および3に表示された厚さのコーティングパウダーを得た。得られた二重コーティングを次に20分間160℃で、強制空気電気オーブン中で硬化させて、パウダーコーティングを形成した。
【0064】
実施例1〜6において、10.24cm×30.72cm×1.54cm(4”×12”×0.6”)リン酸亜鉛前処理Qパネル(冷延スチールパネル)を、51.2μm±5.12μm(平均2.0から2.2mil)の平均厚さの実施例Aのベースコート、および下記表2に記載され、下記表2に記載される平均厚さ(230.4μm±5.12μm(9.0mil、±0.2mil)、307.2μm±5.12μm(12,0mil、±0.2mil)および/または384μm±5.12μm(15.0mil、±0.2mil))のトップコートを用いて、前述の方法でコーティングした。
【0065】
実施例7〜9(スプリング)において、高張力自動車サスペンションコイルのリン酸亜鉛前処理された7.68cm×1.28cm(3.0”L×0.5”W)外側湾曲部分を、実施例Aのベースコート(平均ベースコート厚さ51.2μm±5.12μm(2.0mil±0.2mil))、および下記表3に記載したトップコート(下記表3に表示された平均トップコート厚さ)を用いてコーティングした。
【0066】
グラベロメーター試験:
グラベロメーター法GM9508P、方法Bに従い、−30℃で次のようにして、パウダーコーティングを耐チップ性に関して試験した:
実施例1〜6において、試験を二重に行い、1から9のグラベロメーター評点を下記表2に示す。1から9の評点は、試験パネルを参考パネル1〜9と比較し、最もよく合致する参考パネルを決定することにより決定した。参考パネル1から9はグラベロメーターに暴露された参考パネルの結果を示すGM規格で見出される写真である。1はチップ量が最も多く、最悪と評価されたパネルであり、9は性能規格に適合し、チップが最も少ない。
【0067】
実施例7〜9において、試験は二重に行い、下記表3に示し、これはグラベロメーター結果として各試験について計測された各基体スプリング部分に対するインパクトの数を示す。たとえば、1/1の評点は、各試験事象において、1つのインパクトによるくぼみ、穴またはチップの目に見える証拠が2つの試験事象のそれぞれにおけるスプリング基体上で見出され;5/8の評点は、1つの試験において基体スプリング上に5つの「くぼみ」が見出され、繰り返しまたは二重試験において8つの「くぼみ」が見出されたことを意味する。評点0/0はスプリング「くぼみ」試験について最良の可能な評点であった。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
実施例1Aは、50phrの増量剤を有する比較トップコートである。実施例2Aは、75phrの増量剤を有する比較トップコートであり;実施例3Aは、繊維を有するトップコートを含有するワックスであり;実施例4Aは75phrの増量剤を有するトップコートを含有するワックスであり;実施例5Aは、75.0phrの増量剤を有するトップコートを含有するPE/PTFEワックス組み合わせであり;実施例6Aは75.0phr増量剤を含有し、繊維を含有しないPE/PTFEワックス組み合わせであり;実施例7Aは高級官能性エポキシ樹脂を有するトップコートである。
【0072】
【表4】

【0073】
表2に示すように、すべての本発明の実施例の結果は、自動車OEM規格を満たす。実施例4、5および6は全て、性能を損なうことなく低コスト増量剤を用いてコーティングを製造できることを示す。一方、比較例B2パネルは、トップコートが230.4μm±5.12μm(9.0mil)の厚さである場合、8/8の満足できないOEM耐チップ性能結果を示す。実施例1および2において、ワックスを含有しないコーティングは、トップコートが307.2μm±5.12μm(12mil)の厚さである場合に満足できない評点をもたらす。実施例3において、2.0phrのポリエチレン(PE)ワックスは、比較例B1におけるコーティングに添加され、フラットパネルは、砂利が一般にパネルの表面に0.0のタンジェント(PEワックスのタンジェントスリップ値(0.331)よりも小さい)で当たっても、トップコート厚さ307.2μm±5.12μm(12mil)において9/9の許容できる評点をもたらした。実施例4および5において、PEワックス、およびPEワックス/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックスの組み合わせのそれぞれは、実施例2(比較例)において増量剤を添加する効果を克服し、トップコート厚さ307.2μm±5.12μm(12mil)における9/9の満足できる評点が得られる。実施例6において、トップコート厚さ307.2μm±5.12μm(12mil)での9/9の満足できる評点は、強化ガラス繊維が実施例5のトップコートから除去された場合に得られる。
【0074】
【表5】

【0075】
上記表3に示すように、実施例7(比較例)は、230.4μm±5.12μm(9.0mil)のトップコート厚さでの2つの試験において5/8のインパクトまたは「くぼみ」をもたらした。一方、実施例8においてPEワックスをトップコートに添加すると、トップコート厚さ230.4μm±5.12μm(9.0mil)の各二重の基体に対して、それぞれ4/5インパクトが得られた。実施例9において、PE/PTFEワックスの組み合わせを実施例7の比較トップコートに添加すると、トップコート厚さ230.4μm±5.12μm(9.0mil)の各二重の基体に対して、75phr増量剤が添加され、強化ガラス繊維が除去された場合でも、それぞれ2/2インパクトが得られた。結果は、1以上のワックスを高張力スチール、例えば、自動車コイルスプリングに二重コーティングするために添加すると、比較的薄いコーティングにおいて、低コスト増量剤を用いるさらに薄いコーティングにおいても、耐チップ性能の保持が可能であることを示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐食パウダーコーティングベースコートをその上に有するスチール基体上の耐チップパウダートップコートであって:
1以上の強化エポキシ樹脂の1以上の樹脂成分、樹脂100部あたり0.1から5部(phr)の1以上のワックスおよび、任意に最高200phrまでの1以上の増量剤のコーティングパウダーの硬化または融合生成物を含む耐チップパウダートップコート。
【請求項2】
前記コーティングパウダーが、最高75phrまでの1以上の増量剤を含む請求項1記載の耐チップパウダートップコート。
【請求項3】
前記コーティングパウダーが、脂肪族ポリアミンのエポキシ付加物、脂環式ポリアミンのエポキシ付加物、イミダゾールのエポキシ付加物、およびこれらの混合物から選択される1以上の低温硬化剤をさらに含む、請求項1記載の耐チップパウダートップコート。
【請求項4】
1以上のワックスにおいて、ASTM D4518−85(1985)による測定により、0.35以下のスリップ試験タンジェント値が得られる、請求項1記載の耐チップパウダートップコート。
【請求項5】
1以上のワックスが、ポリエチレン(PE)ワックス、微結晶PEワックス、高分子量PEワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、水素化ヒマシ油、TiOとPTFEとの組み合わせ、部分塩素化パラフィン樹脂、例えば、70%塩素化パラフィン樹脂、PE/PTFE組み合わせ、有機シロキサンを含有するワックス、およびこれらの混合物から選択される、請求項1記載の耐チップパウダートップコート。
【請求項6】
前記耐食ベースコートが、25から103μmの厚さを有し、前記トップコートが150から400μmの厚さを有する、請求項1記載の耐チップパウダートップコート。
【請求項7】
前記スチール基体が耐食高張力スチールを含む、請求項1記載の耐チップパウダートップコート。
【請求項8】
前記スチール基体が1以上の亜鉛負荷強化エポキシ樹脂パウダーを含有するベースコートを有する、請求項7記載の耐チップパウダートップコート。
【請求項9】
前記ベースコートおよび前記トップコートがそれぞれ同じ融合または硬化した強化エポキシ樹脂パウダーを含む、請求項8記載の耐チップパウダートップコート。
【請求項10】
耐チップパウダー二重コーティングを製造する方法であって:
スチール基体に、強化亜鉛負荷エポキシコーティングパウダーを、所望の厚さのベースコートを形成するために十分な量で施用し、
パウダーコーティングされた基体に請求項1記載のトップコートを、所望の厚さのトップコートを形成するために十分な量で施用し、
コーティングパウダーを融合または硬化させるために加熱することを含み、
ベースコートおよびトップコートの両方を形成するために前記の同じ強化エポキシ樹脂を使用するのが好ましい方法。

【公開番号】特開2009−120812(P2009−120812A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−208848(P2008−208848)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】