説明

ステアバイワイヤ装置

【課題】コンパクトで乗員のハンドル操作が違和感なく行われると共に故障時には的確に対応可能なステアバイワイヤ装置を提供する。
【解決手段】ステアリング11の回転操作によって前輪をフレーム12に対してトー方向に回転させる車両に用いるステアバイワイヤ装置1において、ステアリング11の回転角を取得する回転角取得部材2と、回転角取得部材2の取得した角度に応じて駆動力を発生するアクチュエータ3,4と、アクチュエータ3,4の駆動力を前輪のトー方向の回転へと伝達する連結シャフト5と、を有し、連結シャフト5は、アクチュエータ3,4の出力を前輪のトー方向の回転へと伝達する第1の状態と、ステアリング11の回転力を前輪のトー方向の回転へと伝達する第2の状態と、に移動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両の操舵部分に用いるステアバイワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車のハンドル操作性を制御する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−5935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、ハンドルと前輪が回動軸で連結されており、その回動軸に負荷装置が回動力を発生するものである。したがって、地面からの衝撃と共に負荷装置の回動力が直接ハンドルに伝わり、乗員のハンドル操作に違和感を与えることがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、コンパクトで乗員のハンドル操作が違和感なく行われると共に故障時には的確に対応可能なステアバイワイヤ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明の請求項1に係るステアバイワイヤ装置は、ステアリングの回転操作によって前輪をフレームに対してトー方向に回転させる車両に用いるステアバイワイヤ装置において、前記ステアリングの回転角を取得する回転角取得部材と、前記回転角取得部材の取得した角度に応じて駆動力を発生するアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動力を前記前輪のトー方向の回転へと伝達する連結シャフトと、を有し、前記連結シャフトは、前記アクチュエータの出力を前記前輪のトー方向の回転へと伝達する第1の状態と、前記ステアリングの回転力を前記前輪のトー方向の回転へと伝達する第2の状態と、に移動することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係るステアバイワイヤ装置では、前記連結シャフトは、前記ステアリングと係合するステアリング係合部を有し、前記ステアリングは、前記連結シャフトと係合する連結シャフト係合部を有し、前記連結シャフトと前記ステアリングとは、前記第1の状態では、離間しており、前記第2の状態で、前記ステアリング係合部と前記連結シャフト係合部を係合することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係るステアバイワイヤ装置では、前記ステアリング係合部と前記連結シャフト係合部は、一方が凹の円錐状、他方が凸の円錐状に傾斜した案内部を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係るステアバイワイヤ装置では、前記前輪を前記連結シャフトに対して支持するフロントフォークを有し、前記連結シャフトと前記フロントフォークは、スプライン構造により連結されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係るステアバイワイヤ装置では、前記連結シャフトを付勢するバネと、前記連結シャフトを前記バネの付勢力に抗して留める移動部材と、を有し、前記第1の状態から、前記移動部材が移動すると、前記バネの付勢力により前記連結シャフトが移動して、前記第2の状態となることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係るステアバイワイヤ装置では、前記連結シャフトを移動させるソレノイドを有し、前記第1の状態から、前記ソレノイドが励磁され延伸すると、前記連結シャフトが移動して、前記第2の状態となることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係るステアバイワイヤ装置では、前記アクチュエータの出力軸から伝達された駆動力を前記アクチュエータの出力方向と反対方向で前記連結シャフトに伝達するジョイント部と、前記フレームに取り付けられ前記アクチュエータを支持する支持部材と、を有し、前記アクチュエータは、前記ステアリングよりも下方であって、前記アクチュエータの出力軸と前記前輪のトー方向回転軸が平行になるように配置され、前記ジョイント部は、第1のカウンタギヤと第2のカウンタギヤを有し、前記第1の状態では、前記第1のカウンタギヤと前記第2のカウンタギヤが噛み合い、前記第2の状態では、前記第1のカウンタギヤと前記第2のカウンタギヤが離間することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係るステアバイワイヤ装置では、前記ステアリングは、ステアリングバーであり、前記車両は鞍乗型車両であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、ステアバイワイヤ装置は、ステアリングの回転操作によって前輪をフレームに対してトー方向に回転させる車両に用いるステアバイワイヤ装置において、前記ステアリングの回転角を取得する回転角取得部材と、前記回転角取得部材の取得した角度に応じて駆動力を発生するアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動力を前輪のトー方向の回転へと伝達する連結シャフトと、を有し、前記連結シャフトは、前記アクチュエータの出力を前輪のトー方向の回転へと伝達する第1の状態と、前記ステアリングの回転力を前輪のトー方向の回転へと伝達する第2の状態と、に移動するので、ステアバイワイヤ装置が動作しなくなった場合には、ステアリングを手動で操作することにより、前輪を操舵することができ、操作不能に陥ることなく、運転することが可能となる。また、既存の部品を使用することができ、低コストで信頼性を向上させることが可能となる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記連結シャフトは、前記ステアリングと係合するステアリング係合部を有し、前記ステアリングは、前記連結シャフトと係合する連結シャフト係合部を有し、前記連結シャフトと前記ステアリングとは、前記第1の状態では、離間しており、前記第2の状態で、前記ステアリング係合部と前記連結シャフト係合部を係合するので、ステアバイワイヤ装置が動作しなくなった場合には、ステアリングを手動で操作することにより、前輪を操舵することができ、操作不能に陥ることなく、安定して運転することが可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記ステアリング係合部と前記連結シャフト係合部は、一方が凹の円錐状、他方が凸の円錐状に傾斜した案内部を有するので、ステアリング係合部と連結シャフト係合部が多少ずれていたとしても、案内部が位置を修正して案内するので、円滑且つ的確に結合することが可能となる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記前輪を前記連結シャフトに対して支持するフロントフォークを有し、前記連結シャフトと前記フロントフォークは、スプライン構造により連結されているので、上下方向に移動可能でありながら、周方向には強固に係合し、連結シャフトの回転をフロントフォークに的確に伝達することが可能となる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記連結シャフトを付勢するバネと、前記連結シャフトを前記バネの付勢力に抗して留める移動部材と、を有し、前記第1の状態から、前記移動部材が移動すると、前記バネの付勢力により前記連結シャフトが移動して、前記第2の状態となるので、簡単な構造で低コスト化することができる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記連結シャフトを移動させるソレノイドを有し、前記第1の状態から、前記ソレノイドが励磁され延伸すると、前記連結シャフトが移動して、前記第2の状態となるので、部品点数を減らすことができると共に安定して作動することが可能となる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明によれば、前記アクチュエータの出力軸から伝達された駆動力を前記アクチュエータの出力方向と反対方向で前記連結シャフトに伝達するジョイント部と、前記フレームに取り付けられ前記アクチュエータを支持する支持部材と、を有し、前記アクチュエータは、前記ステアリングよりも下方であって、前記アクチュエータの出力軸と前記前輪のトー方向回転軸が平行になるように配置され、前記ジョイント部は、第1のカウンタギヤと第2のカウンタギヤを有し、前記第1の状態では、前記第1のカウンタギヤと前記第2のカウンタギヤが噛み合い、前記第2の状態では、前記第1のカウンタギヤと前記第2のカウンタギヤが離間するので、コンパクトな構成とすることが可能となる。
【0021】
また、請求項8に記載の発明によれば、前記ステアリングは、ステアリングバーであり、前記車両は鞍乗型車両であるので、乗員のステアリング操作により違和感を与えることがなく、乗員がより円滑にステアリング操作をすることが可能となる。また、乗員がより安定して運転することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態のステアバイワイヤ装置の斜視図である。
【図2】第1実施形態のステアバイワイヤ装置の断面図である。
【図3】通常時のステアバイワイヤ装置の状態を示す図である。
【図4】故障時のステアバイワイヤ装置の状態を示す図である。
【図5】実施例1のステアバイワイヤ装置の通常状態を示す図である。
【図6】実施例1のステアバイワイヤ装置の故障時の状態を示す図である。
【図7】実施例1のステアバイワイヤ装置の故障時の状態を示す図である。
【図8】連結シャフト5とフォーク伝達部材部分を拡大した図である。
【図9】実施例2のステアバイワイヤ装置の通常状態を示す図である。
【図10】実施例2のステアバイワイヤ装置の故障時の状態を示す図である。
【図11】実施例3のステアバイワイヤ装置を示す図である。
【図12】ステアリングバーと連結シャフトとの結合部分の一実施例を示す図である。
【図13】ステアリングバーと連結シャフトの一実施例の横断面図である。
【図14】ステアリングバーと連結シャフトとの結合部分の他の実施例を示す図である。
【図15】ステアリングバーと連結シャフトの他の実施例の横断面図である。
【図16】他の実施形態のステアバイワイヤ装置の斜視図である。
【図17】他の実施形態のステアバイワイヤ装置の斜視図である。
【図18】第2実施形態のステアバイワイヤ装置の斜視図である。
【図19】第2実施形態のステアバイワイヤ装置の断面図である。
【図20】第2実施形態のステアバイワイヤ装置の通常状態を示す図である。
【図21】連結シャフトとフォーク伝達部材部分を拡大した図である。
【図22】連結シャフトとステアリングバー部分を拡大した図である。
【図23】第2実施形態のステアバイワイヤ装置の故障時の状態を示す図である。
【図24】連結シャフトとフォーク伝達部材部分を拡大した図である。
【図25】連結シャフトとステアリングバー部分を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は第1実施形態のステアバイワイヤ装置の斜視図、図2は第1実施形態のステアバイワイヤ装置の断面図である。
【0025】
ステアバイワイヤ装置1は、鞍乗型車両10のフレーム12の先端に連結されたヘッドチューブ12aに支持されて、ステアリングバー11の下方に延びるように設置する。なお、第1実施形態では、鞍乗型車両10のステアリングバー11に対して説明するが、例えば、バケットシート等を有する一般車両の環状等のステアリングに用いることも可能である。
【0026】
ステアバイワイヤ装置1は、ステアリングバー11の回転角度を取得する回転角取得部材としてのエンコーダ2と、駆動力を発生するアクチュエータとしてのモータ3と、モータ3の回転を減速するアクチュエータとしての減速部4と、モータ3の駆動力をフロントフォーク14に伝達する連結シャフト5と、フレーム12に対してモータ3を支持する支持部材としてのマウント6と、を有する。
【0027】
エンコーダ2は、マウント6のステアリング支持部6aに支持固定される。エンコーダ2は、フレーム12に対して相対的に回転するステアリングバー11のステアリング軸11aの回転角度を検出し取得する。
【0028】
モータ3は、減速部4に支持される。モータ3の回転はモータ出力部3aから減速部4で減速されて連結シャフト5に出力される。
【0029】
減速部4は、マウント6のモータ支持部6bに支持される。減速部4は、プラネタリギヤ等から構成され、モータ3の回転を減速して減速出力部4aから連結シャフト5に出力する。
【0030】
第1実施形態では、モータ3及び減速部4でアクチュエータを構成する。なお、減速部4は、必ずしも設ける必要はない。また、モータ3及び減速部4を一体で構成してもよい。
【0031】
ジョイント部7は、減速出力部4aと同軸に連結されるカウンタ軸7aと、減速出力部4aとカウンタ軸7aとを連結するカップリング7bと、カウンタ軸7aのカップリング7bとは反対側の端部に設けられた第1カウンタギヤ7cと、連結シャフト5のフロントフォーク14とは反対側の端部に設けられ第1カウンタギヤ7cに噛み合う第2カウンタギヤ7dと、を有する。
【0032】
連結シャフト5は、減速出力部4aとフォーク伝達部材8を連結して、モータ3の駆動力をフォーク伝達部材8に伝達するものである。
【0033】
フォーク伝達部材8は、カップ型の部材であって、連結シャフト5に対してスプライン構造等で連結される。具体的には、連結シャフト5の下方外周とフォーク伝達部材8の内周にスプラインを形成し、上下方向に移動可能とすることが好ましい。また、フォーク伝達部材8は、フロントフォーク14と図示しないボルト等により一体的に回転するように連結される。なお、別体のフォーク伝達部材8に代えて、フロントフォーク14の上方を加工することによってフロントフォーク14の一部としてフォーク伝達部を形成してもよい。
【0034】
フォーク伝達部材8と連結シャフト5をスプライン構造で連結することにより、上下方向に移動可能でありながら、周方向には強固に係合し、連結シャフト5の回転を、フロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと的確に伝達することが可能となる。
【0035】
図2に示すように、モータ出力部3a、減速出力部4a、及びカウンタ軸7aは同軸で回転可能に取り付けられる。また、連結シャフト5、フォーク伝達部材8及びフロントフォーク14は同軸で回転可能に取り付けられる。そして、モータ出力部3a、減速出力部4a、及びカウンタ軸7aの回転軸と、連結シャフト5、フォーク伝達部材8及びフロントフォーク14の回転軸は、平行に配置される。したがって、ジョイント部7は、減速出力部4aからの出力を180度折り返して連結シャフト5に伝達する。
【0036】
マウント6は、ステアリングバー11のステアリング軸11aを回転可能に支持するステアリング支持部6aと、モータ3及び減速部4を支持し、フレーム12に支持固定されるモータ支持部6bと、ステアリング支持部6aとモータ支持部6bとを連結する連結支持部6cと、を有する。
【0037】
また、ステアリングバー11のステアリング軸11aには、ステアリングバー11の回転に抵抗力を与える図示しないステアリングダンパを設けることが好ましい。ステアリングダンパを設けることで、乗員の入力に抵抗が加えられて、適度な操舵感を演出することが可能となる。
【0038】
さらに、ステアリングダンパと共にバネを設けるとより好ましい。バネの力によって、前輪が自然に直進状態となるように、ステアリングバー11が付勢され、より良い操舵感を得ることが可能となる。
【0039】
次に、第1実施形態のステアバイワイヤ装置1の動作について説明する。
【0040】
第1実施形態のステアバイワイヤ装置1では、乗員がステアリングバー11を回転させると、ステアリング軸11aが回転する。エンコーダ2は、ステアリング軸11aの回転を検出して、図示しない制御部へ検出値を送信する。
【0041】
制御部は、エンコーダ2の検出値に応じてモータ3に作動信号を送信する。モータ3は、制御部からの信号に応じて回転する。モータ3の回転は、減速部4で減速され、ジョイント部7に伝達される。
【0042】
ジョイント部7では、まず、モータ3の回転は、減速出力部4aからカップリング7bを介してカウンタ軸7aに伝達される。続いて、カウンタ軸7aに設けられた第1カウンタギヤ7cに伝達され、第1カウンタギヤ7cに噛み合う第2カウンタギヤ7dに伝達される。そして、第2カウンタギヤ7dを設けた連結シャフト5が回転する。ここで、モータ3のモータ出力軸3aから伝達された回転力は、180度折り返されて連結シャフト5に伝達される。連結シャフト5が回転すると、フォーク伝達部材8が回転して、フロントフォーク14が回転し、図示しない前輪がトー方向に回転して操舵される。
【0043】
このように、第1実施形態によれば、ステアリングバー11と図示しない前輪を支持するフロントフォーク14が直接連結されておらず、モータ3の回動力が直接ステアリングバー11に伝わることがないので、乗員のステアリング操作に違和感を与えることがなく、乗員が円滑にステアリング操作をすることが可能となる。
【0044】
また、ジョイント部7を設けることで、モータ3の出力軸3aとフロントフォーク14の回転軸の方向を変更することが可能となり、モータ3の設置箇所の自由度が高くなる。
【0045】
さらに、モータ3をステアリングバー11の前方且つ下方に配置することにより、乗員の視界が広くなると共に、運転時の乗員の膝等の邪魔にならず、乗員が快適に運転することが可能となる。
【0046】
また、モータ3の出力軸3aとフロントフォーク14の回転軸を平行に配置することにより、ジョイント部7をカウンタギヤ等の簡単な構造にすることができると共に、モータ3の回転力をフロントフォーク14に的確に伝達することが可能となる。
【0047】
さらに、ステアバイワイヤ装置1をフレーム12に設置できると共に、ステアバイワイヤ装置1の重心がフロントフォーク14の回転軸の近くに配置できるので、乗員が安定して運転することが可能となる。
【0048】
次に、第1実施形態のステアバイワイヤ装置1の故障時の対応について説明する。
【0049】
図3は通常時のステアバイワイヤ装置1の状態を示す図、図4は故障時のステアバイワイヤ装置1の状態を示す図である。
【0050】
図3に示すように、第1の状態としての通常時、アクチュエータとしてのモータ3の出力は、ジョイント部7、連結シャフト5、及びフォーク伝達部材8を経由してフロントフォーク14へ伝達される。
【0051】
第2の状態として、ステアバイワイヤ装置1が故障等で動作しなくなった場合には、図4に示すように、連結シャフト5を上方に移動させることによって、ジョイント部7の第2カウンタギヤ7dを上方に移動させ、第2カウンタギヤ7dと第1カウンタギヤ7cとの噛み合いを外し、第1カウンタギヤ7cと第2カウンタギヤ7dとが離間して、モータ3の出力がフロントフォーク14へ伝達できないようにする。
【0052】
また、連結シャフト5は、上方に移動した時に、ステアリングバー11のステアリング軸部11aと結合する。したがって、ステアリングバー11とフロントフォーク14が一体的に回転できるようになる。
【0053】
したがって、ステアバイワイヤ装置1が動作しなくなった場合には、ステアリングバー11を手動で操作することにより、フロントフォーク14及び前輪を操舵することができ、操作不能に陥ることなく、安定して運転することが可能となる。
【0054】
次に具体的な実施例について説明する。
【0055】
図5は実施例1のステアバイワイヤ装置1の通常状態を示す図、図6は連結シャフト5とフォーク伝達部材8部分を拡大した図である。図6(a)は拡大図の縦断面図、図6(b)は拡大図の横断面図である。
【0056】
図5に示すように、通常時、アクチュエータとしてのモータ3の出力は、ジョイント部7、連結シャフト5、及びフォーク伝達部材8を経由してフロントフォーク14へ伝達される。
【0057】
図6に示すように、フォーク伝達部材8は、本体8a、移動部材8b、付勢部材としてのバネ8cを有する。本体8aは、連結シャフト5の下方外側を覆うように形成され、連結シャフト5とはスプライン等により連結されている。移動部材8bは、本体8aに対して径方向に移動可能な嵌合部8b1と、嵌合部8b1から周方向両側に延びる電磁石8b2と、を有する。バネ8cは、本体8aの内周側の底部に配置されて連結シャフト5を上方に付勢する。
【0058】
第1の状態としての通常時、連結シャフト5の両側に配置された移動部材8bの電磁石8b2が引き付けあい、嵌合部8b1が本体8aから内周側に突出して連結シャフト5の穴部5aに嵌合し、連結シャフト5をバネ8cの付勢力に抗して留めている。
【0059】
したがって、アクチュエータとしてのモータ3の出力は、ジョイント部7、連結シャフト5、及びフォーク伝達部材8を経由してフロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと伝達される。
【0060】
図7は実施例1のステアバイワイヤ装置1の故障時の状態を示す図、図8は連結シャフト5とフォーク伝達部材8部分を拡大した図である。図8(a)は拡大図の縦断面図、図8(b)は拡大図の横断面図である。
【0061】
第2の状態として、ステアバイワイヤ装置1が故障等で動作しなくなった場合には、図7に示すように、連結シャフト5を上方に移動させることによって、ジョイント部7の第2カウンタギヤ7dを上方に移動させ、第2カウンタギヤ7dと第1カウンタギヤ7cとの噛み合いを外し、モータ3の出力がフロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと伝達できないようにする。
【0062】
図8に示すように、故障時、連結シャフト5の両側に配置された移動部材8bの電磁石8b2を互いに離間するように作動させる。すると、嵌合部8b1が連結シャフト5の穴部5aとの嵌合状態から離間して本体8a側に移動する。その結果、バネ8cの付勢力によって連結シャフト5が上方に移動し、図7に示すように、第2カウンタギヤ7dと第1カウンタギヤ7cとの噛み合いが外れる。
【0063】
また、連結シャフト5は、上方に移動した時に、ステアリングバー11のステアリング軸部11aと結合する。したがって、ステアリングバー11とフロントフォーク14が一体的に回転できるようになる。
【0064】
したがって、ステアバイワイヤ装置1が動作しなくなった場合には、ステアリングバー11を手動で操作することにより、フロントフォーク14及び前輪を操舵することができ、操作不能に陥ることなく、運転することが可能となる。
【0065】
また、連結シャフト5をバネ8cによって付勢するので、簡単な構造で低コスト化することができる。
【0066】
図9は実施例2のステアバイワイヤ装置1の通常状態を示す図、図10は実施例2のステアバイワイヤ装置1の故障時の状態を示す図である。
【0067】
図9に示すように、第1の状態としての通常時、アクチュエータとしてのモータ3の出力は、ジョイント部7、連結シャフト5、及びフォーク伝達部材8を経由してフロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと伝達される。
【0068】
図9に示すように、フォーク伝達部材8は、本体8a及びソレノイド8dを有する。本体8aは、連結シャフト5の下方外側を覆うように形成され、連結シャフト5とはスプライン等により連結されている。ソレノイド8dは、下部を本体8aの内周側の底部に結合されて上部を連結シャフト5に結合されている。
【0069】
通常時、ソレノイド8dは、収縮した状態であり、第1カウンタギヤ7cと第2カウンタギヤ7dは噛み合っている。
【0070】
したがって、アクチュエータとしてのモータ3の出力は、ジョイント部7、連結シャフト5、及びフォーク伝達部材8を経由してフロントフォーク14へ伝達される。
【0071】
第2の状態として、ステアバイワイヤ装置1が故障等で動作しなくなった場合には、図10に示すように、連結シャフト5を上方に移動させることによって、ジョイント部7の第2カウンタギヤ7dを上方に移動させ、第2カウンタギヤ7dと第1カウンタギヤ7cとの噛み合いを外し、モータ3の出力がフロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと伝達できないようにする。
【0072】
図10に示すように、故障時、ソレノイド8dを励磁して延伸するように作動させる。すると、連結シャフト5が上方に移動し、第2カウンタギヤ7dと第1カウンタギヤ7cとの噛み合いが外れる。
【0073】
また、連結シャフト5は、上方に移動した時に、ステアリングバー11のステアリング軸部11aと結合する。したがって、ステアリングバー11とフロントフォーク14が一体的に回転できるようになる。
【0074】
したがって、ステアバイワイヤ装置1が動作しなくなった場合には、ステアリングバー11を手動で操作することにより、フロントフォーク14及び前輪を操舵することが可能となる。
【0075】
また、ソレノイド8dを用いることにより、部品点数が少なくなり、簡単な構造でステアバイワイヤ装置1を構成することが可能となると共に安定して作動することが可能となる。
【0076】
図11は、実施例3のステアバイワイヤ装置1を示す図である。
【0077】
実施例3のステアバイワイヤ装置1では、連結シャフト5を手動で上方に移動するものである。図11に示すように、連結シャフト5にレバー8eを取り付ける。本体8aには、レバー8eが貫通する貫通穴8a1が形成されている。
【0078】
第1の状態としての通常時、レバー8eは、下方に下げられており、図3に示したように、第1カウンタギヤ7cと第2カウンタギヤ7dは噛み合っている。
【0079】
したがって、アクチュエータとしてのモータ3の出力は、ジョイント部7、連結シャフト5、及びフォーク伝達部材8を経由してフロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと伝達される。
【0080】
第2の状態として、ステアバイワイヤ装置1が故障等で動作しなくなった場合には、図11に示すように、レバー8eを上方に持ち上げ連結シャフト5を上方に移動させることによって、図4に示したように、ジョイント部7の第2カウンタギヤ7dを上方に移動させ、第2カウンタギヤ7dと第1カウンタギヤ7cとの噛み合いを外し、モータ3の出力がフロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと伝達できないようにする。
【0081】
また、連結シャフト5は、上方に移動した時に、ステアリングバー11のステアリング軸部11aと結合する。したがって、ステアリングバー11とフロントフォーク14が一体的に回転できるようになる。
【0082】
したがって、ステアバイワイヤ装置1が動作しなくなった場合には、ステアリングバー11を手動で操作することにより、フロントフォーク14及び前輪を操舵することが可能となる。
【0083】
次に、ステアリングバー11と連結シャフト5との結合について説明する。
【0084】
図12はステアリングバー11と連結シャフト5との結合部分の一実施例を示す図、図13はステアリングバー11と連結シャフト5の一実施例の横断面図である。
【0085】
図12(a)はステアリングバー11のステアリング軸部11aを示す図、図12(b)は連結シャフト5の上部を示す図である。図12(a)はステアリングバー11のステアリング軸部11aの断面図、図12(b)は連結シャフト5の上部の断面図である。
【0086】
図12(a)及び図13(a)に示すように、ステアリングバー11のステアリング軸部11aは、内側に連結シャフト係合部としてのスプライン溝11bを形成している。スプライン溝11bの入口には、凹の円錐状に傾斜した案内部11b1が形成されている。また、図12(b)及び図13(b)に示すように、連結シャフト5の上部には、スプライン溝11bに噛み合うステアリングバー係合部としてのスプラインシャフト部5bが形成されている。スプラインシャフト部5bの上部には、凸の円錐状に傾斜した案内部5cが形成されている。
【0087】
したがって、故障時等に、連結シャフト5が、上方に移動すると、ステアリングバー11のステアリング軸部11aのスプライン溝11bにスプラインシャフト部5bが噛み合う。したがって、ステアリングバー11とフロントフォーク14が一体的に回転できるようになる。
【0088】
このように、ステアリング軸部11aの内側にスプライン溝11bを形成し、連結シャフト5の上部にスプライン溝11bに噛み合うスプラインシャフト部5bを形成することで、簡単で的確にステアリング軸部11aと連結シャフト5とを結合することが可能となる。
【0089】
また、スプラインシャフト部5bの上部に案内部5cを形成することにより、スプライン溝11bとスプラインシャフト部5bの凹凸が多少ずれていたとしても、案内部5cが位置を修正して案内するので、ステアリング軸部11aと連結シャフト5とをより円滑且つ的確に結合することが可能となる。
【0090】
図14はステアリングバー11と連結シャフト5との結合部分の他の実施例を示す図、図15はステアリングバー11と連結シャフト5の他の実施例の横断面図である。
【0091】
図14(a)はステアリングバー11のステアリング軸部11aを示す図、図14(b)は連結シャフト5の上部を示す図である。図15(a)はステアリングバー11のステアリング軸部11aの断面図、図15(b)は連結シャフト5の上部の断面図である。
【0092】
図14(a)及び図15(a)に示すように、ステアリングバー11のステアリング軸部11aは、連結シャフト係合部としての挿入穴11cを形成している。挿入穴11cの入口は、図14(a)に示すように、凹の円錐状に傾斜した案内部11dを有する。また、挿入穴11cは、図15(a)に示すように、環状に並んで形成される。
【0093】
また、図14(b)及び図15(b)に示すように、連結シャフト5の上部には、挿入穴11cに挿入されるステアリングバー係合部としての挿入ピン5dが形成されている。挿入ピン5dの先端には、凸の円錐状に傾斜した案内部としての先端部5eが形成されている。また、挿入ピン5dは、図15(b)に示すように、環状に並んで形成される。
【0094】
したがって、第2の状態としての故障時等に、連結シャフト5が、上方に移動すると、ステアリングバー11のステアリング軸部11aの挿入穴11cに、連結シャフト5の挿入ピン5dが挿入される。したがって、ステアリングバー11とフロントフォーク14が一体的に回転できるようになる。
【0095】
このように、ステアリング軸部11aに挿入穴11cを形成し、連結シャフト5の上部に挿入穴11c挿入される挿入ピン5dを形成することで、簡単で的確にステアリング軸部11aと連結シャフト5とを結合することが可能となる。
【0096】
また、挿入穴11cの入口に凹の円錐状に傾斜した案内部11dを形成し、挿入ピン部5dの先端に凸の円錐状に傾斜した先端部5eを形成することにより、挿入穴11cと挿入ピン部5dの位置が多少ずれていたとしても、案内部11dと先端部5eが位置を修正して案内するので、ステアリング軸部11aと連結シャフト5とをより円滑且つ的確に結合することが可能となる。
【0097】
さらに、挿入穴11c及び挿入ピン5dは、環状に並んで形成されるので、ステアリング軸部11aと連結シャフト5とをより強固に結合することが可能となる。
【0098】
図16は他の実施形態のステアバイワイヤ装置の斜視図、図17は他の実施形態のステアバイワイヤ装置の斜視図である。
【0099】
図16及び図17に示すように、他の実施形態及び他の実施形態ステアバイワイヤ装置1はヘッドチューブ12aの側方に取り付けたものである。その他の構成については、第1実施形態と同一である。このような実施形態においても図3〜図15に示した第1実施形態に適用した構成を適用することが可能である。
【0100】
ステアバイワイヤ装置1をヘッドチューブ12aの側方に取り付けることで、鞍乗型車両10に設けられた他の部品との重量バランスを調整することができ、姿勢が安定した快適な運転をすることが可能となる。
【0101】
図18は第2実施形態のステアバイワイヤ装置の斜視図、図19は第2実施形態のステアバイワイヤ装置の断面図である。
【0102】
第2実施形態のステアバイワイヤ装置1は、鞍乗型車両10のフレーム12の先端に連結されたヘッドチューブ12aに支持されて、ステアリングバー11の上方に延びるように設置する。なお、第2実施形態では、鞍乗型車両10のステアリングバー11に対して説明するが、例えば、バケットシート等を有する一般車両の環状等のステアリングに用いることも可能である。
【0103】
ステアバイワイヤ装置1は、ステアリングバー11の回転を検出するエンコーダ2と、駆動力を発生するモータ3と、モータ3の回転を減速する減速部4と、モータ3の駆動力をフロントフォーク14に伝達する連結シャフト5と、フレーム12に対してモータ3を支持するマウント6と、を有する。
【0104】
エンコーダ2は、マウント6のステアリング支持部6aに支持固定される。エンコーダ2は、フレーム12に対して相対的に回転するステアリングバー11のステアリング軸11aの回転角度を検出し取得する。
【0105】
モータ3は、減速部4に支持される。モータ3の回転はモータ出力部3aから減速部4で減速されて連結シャフト5に出力される。
【0106】
減速部4は、マウント6のモータ支持部6bに支持される。減速部4は、プラネタリギヤ等から構成され、モータ3の回転を減速して減速出力部4aから連結シャフト5に出力する。
【0107】
第2実施形態では、モータ3及び減速部4でアクチュエータを構成する。なお、減速部4は、必ずしも設ける必要はない。また、モータ3及び減速部4を一体で構成してもよい。
【0108】
連結シャフト5は、減速出力部4aとフロントフォーク14を連結して、モータ3の駆動力をフロントフォーク14に伝達するものである。連結シャフト5は、管状のステアリング軸11aの内部を挿通してステアリング軸11aと相対回転可能に設置される。連結シャフト5はシャフトアダプタ5aを介してフロントフォーク14と連結される。シャフトアダプタ5aとフロントフォーク14は図示しないボルトを介して連結される。
【0109】
マウント6は、フレーム12に支持固定されるステアリング支持部6aと、モータ3及び減速部4を支持するモータ支持部6bと、ステアリング支持部6aとモータ支持部6bとを連結する連結支持部6cと、を有する。
【0110】
また、ステアリングバー11のステアリング軸11aには、ステアリングバー11の回転に抵抗力を与える図示しないステアリングダンパを設けることが好ましい。ステアリングダンパを設けることで、乗員の入力に抵抗が加えられて、適度な操舵感を演出することが可能となる。
【0111】
さらに、ステアリングダンパと共に付勢部材としてのバネを設けるとより好ましい。バネの力によって、前輪が自然に直進状態となるように、ステアリングバー11が付勢され、より良い操舵感を得ることが可能となる。
【0112】
次に、第2実施形態のステアバイワイヤ装置1の動作について説明する。
【0113】
第2実施形態のステアバイワイヤ装置1では、乗員がステアリングバー11を回転させると、ステアリング軸11aが回転する。エンコーダ2は、ステアリング軸11aの回転を検出して、図示しない制御部へ検出値を送信する。
【0114】
制御部は、エンコーダ2の検出値に応じてモータ3に作動信号を送信する。モータ3は、制御部からの信号に応じて回転する。モータ3の回転は、減速部4で減速され、連結シャフト5に伝達される。連結シャフト5が回転すると、フロントフォーク14が回転し、図示しない前輪が操舵される。
【0115】
このように、第2実施形態によれば、ステアリングバー11と図示しない前輪を支持するフロントフォーク14が直接連結されておらず、モータ3の回動力が直接ステアリングバー11に伝わることがないので、乗員のステアリング操作に違和感を与えることがなく、乗員が円滑にステアリング操作をすることが可能となる。
【0116】
さらに、ステアバイワイヤ装置1をフレーム12に設置できるので、乗員が安定して運転することが可能となる。
【0117】
次に、第2実施形態のステアバイワイヤ装置1の故障時の対応について説明する。
【0118】
図20は第2実施形態のステアバイワイヤ装置1の通常状態を示す図、図21は連結シャフト5とフォーク伝達部材8部分を拡大した図、図22は連結シャフト5とステアリングバー11部分を拡大した図である。
【0119】
図20に示すように、第1の状態としての通常時、アクチュエータとしてのモータ3の出力は、連結シャフト5、及びフォーク伝達部材8を経由してフロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと伝達される。アクチュエータ出力軸4aと連結シャフト5の受け部5fとは、スプラインによって連結される。
【0120】
図21に示すように、フォーク伝達部材8は、本体8a、移動部材8b、付勢部材としてのバネ8cを有する。本体8aは、連結シャフト5の下方外側を覆うように形成され、連結シャフト5とはスプライン等により連結されている。移動部材8bは、図8(b)に示した構造と同様に、本体8aに対して径方向に移動可能な嵌合部8b1と、嵌合部8b1から周方向両側に延びる電磁石8b2と、を有する。バネ8cは、本体8aの内周側の底部に配置されて連結シャフト5を下方に付勢する。
【0121】
また、フォーク伝達部材8は、フロントフォーク14と図示しないボルト等により一体的に回転するように連結される。なお、別体のフォーク伝達部材8に代えて、フロントフォーク14の上方を加工することによってフロントフォーク14の一部としてフォーク伝達部を形成してもよい。
【0122】
通常時、図6(b)に示したように、連結シャフト5の両側に配置された移動部材8bの電磁石8b2が引き付けあい、嵌合部8b1が本体8aから内周側に突出して連結シャフト5の穴部5aに嵌合し、連結シャフト5をバネ8cの付勢力に抗して留めている。
【0123】
したがって、アクチュエータとしてのモータ3の出力は、連結シャフト5及びフォーク伝達部材8を経由してフロントフォーク14へ伝達される。
【0124】
また、図22に示すように、連結シャフト5とステアリングバー11の部分は、連結シャフト5に形成されたステアリング係合部5gのステアリングバー係合部としてのステアリング係合ピン5hと、ステアリングバー11の連結シャフト係合部としての連結シャフト係合孔11eとが離間されており、ステアリングバー11の操作が連結シャフト5に直接伝達することはない。
【0125】
図23は第2実施形態のステアバイワイヤ装置1の故障時の状態を示す図、図24は連結シャフト5とフォーク伝達部材8部分を拡大した図、図25は連結シャフト5とステアリングバー11部分を拡大した図である。
【0126】
第2の状態として、ステアバイワイヤ装置1が故障等で動作しなくなった場合には、図23に示すように、連結シャフト5をバネ8cの付勢力により下方に移動させることによって、連結シャフト5を下方へ移動させてアクチュエータ出力軸としての減速器出力軸4aと連結シャフト5との係合を取り外し、モータ3の出力がフロントフォーク14を介して前輪のトー方向の回転へと伝達できないようにする。
【0127】
図8に示すように、故障時、連結シャフト5の両側に配置された移動部材8bの電磁石8b2を互いに離間するように作動させる。すると、嵌合部8b1が連結シャフト5の穴部5aとの嵌合状態から離間して本体8a側に移動する。その結果、図24に示すように、バネ8cの付勢力によって連結シャフト5が下方に移動し、図23に示すように、モータ3と連結シャフト5の連結が外れる。
【0128】
また、連結シャフト5は、下方に移動した時に、図25に示すように、ステアリングバー11と結合する。したがって、ステアリングバー11とフロントフォーク14が一体的に回転できるようになる。
【0129】
具体的には、連結シャフト5に形成されたステアリング係合部5gのステアリング係合ピン5hとステアリングバー11の連結シャフト係合孔11eが係合することで、ステアリングバー11の操作が連結シャフト5に直接伝達することとなる。
【0130】
したがって、ステアバイワイヤ装置1が動作しなくなった場合には、ステアリングバー11を手動で操作することにより、フロントフォーク14及び前輪を操舵することが可能となる。
【0131】
このように、ステアリングバー11に連結シャフト係合孔11eを形成し、連結シャフト5のステアリング係合部5gに連結シャフト係合孔11eに挿入されるステアリング係合ピン5hを形成することで、簡単で的確にステアリングバー11と連結シャフト5とを結合することが可能となる。
【0132】
また、連結シャフト係合孔11eの入口に凹の円錐状に傾斜した案内部11e1を形成し、ステアリング係合ピン5hの先端に凸の円錐状に傾斜した先端部5h1を形成することにより、連結シャフト係合孔11eとステアリング係合ピン5hの位置が多少ずれていたとしても、先端部5h1が位置を修正して案内部11e1に案内されるので、ステアリングバー11と連結シャフト5とをより円滑且つ的確に結合することが可能となる。なお、案内部11e1を凸の円錐状に傾斜させ、先端部5h1を凹の円錐状に傾斜させてもよい。
【0133】
このように、本実施形態に係る発明によれば、ステアバイワイヤ装置1は、ステアリングバー11の回転操作によって前輪をフレーム12に対してトー方向に回転させる鞍乗型車両10に用いるステアバイワイヤ装置1において、ステアリングバー11の回転角を取得する回転角取得部材2と、回転角取得部材2の取得した角度に応じて駆動力を発生するアクチュエータ3,4と、アクチュエータ3,4の駆動力を前輪のトー方向の回転へと伝達する連結シャフト5と、を有し、連結シャフト5は、アクチュエータ3,4の出力を前輪のトー方向の回転へと伝達する第1の状態と、ステアリングバー11の回転力を前輪のトー方向の回転へと伝達する第2の状態と、に移動するので、ステアバイワイヤ装置1が動作しなくなった場合には、ステアリングバー11を手動で操作することにより、前輪15を操舵することができ、操作不能に陥ることなく、運転することが可能となる。また、既存の部品を使用することができ、低コストで信頼性を向上させることが可能となる。
【0134】
また、連結シャフト5は、ステアリングバー11と係合するステアリングバー係合部5bを有し、ステアリングバー11は、連結シャフト5と係合する連結シャフト係合部11bを有し、連結シャフト5とステアリングバー11とは、第1の状態では、離間しており、第2の状態で、ステアリングバー係合部5bと連結シャフト係合部11bを係合するので、ステアバイワイヤ装置1が動作しなくなった場合には、ステアリングバー1を手動で操作することにより、フロントフォーク14及び前輪15を操舵することができ、操作不能に陥ることなく、安定して運転することが可能となる。
【0135】
また、ステアリングバー係合部5bと連結シャフト係合部11bは、一方が凹の円錐状、他方が凸の円錐状に傾斜した案内部5c,11b1を有するので、ステアリングバー係合部5bと連結シャフト係合部11bが多少ずれていたとしても、案内部が位置を修正して案内するので、円滑且つ的確に結合することが可能となる。
【0136】
また、前輪を連結シャフト5に対して支持するフロントフォーク14を有し、連結シャフト5とフロントフォーク14は、スプライン構造により連結されているので、上下方向に移動可能でありながら、周方向には強固に係合し、連結シャフト5の回転をフロントフォーク14に的確に伝達することが可能となる。
【0137】
また、連結シャフト5を付勢するバネ8cと、連結シャフト5をバネ8cの付勢力に抗して留める移動部材8bと、を有し、第1の状態から、移動部材8bが移動すると、バネ8cの付勢力により連結シャフト5が移動して、第2の状態となるので、簡単な構造で低コスト化することができる。
【0138】
また、連結シャフト5を移動させるソレノイド8dを有し、第1の状態から、ソレノイド8dが励磁され延伸すると、連結シャフト5が移動して、第2の状態となるので、部品点数を減らすことができると共に安定して作動することが可能となる。
【0139】
また、アクチュエータ3,4の出力軸から伝達された駆動力をアクチュエータ3,4の出力方向と反対方向で連結シャフト5に伝達するジョイント部7と、フレーム12に取り付けられアクチュエータ3,4を支持する支持部材6と、を有し、アクチュエータ3,4は、ステアリングバー11よりも下方であって、アクチュエータ3,4の出力軸と前輪のトー方向回転軸が平行になるように配置され、ジョイント部7は、第1のカウンタギヤ7cと第2のカウンタギヤ7dを有し、第1の状態では、第1のカウンタギヤ7cと第2のカウンタギヤ7dが噛み合い、第2の状態では、第1のカウンタギヤ7cと第2のカウンタギヤ7dが離間するので、コンパクトな構成とすることが可能となる。
【符号の説明】
【0140】
1…ステアバイワイヤ装置
2…エンコーダ(回転角取得部材)
3…モータ(アクチュエータ)
4…減速部(アクチュエータ)
5…連結シャフト
6…マウント(支持部材)
7…ジョイント部
8…移動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングの回転操作によって前輪をフレームに対してトー方向に回転させる車両に用いるステアバイワイヤ装置において、
ステアリングの回転角を取得する回転角取得部材と、
回転角取得部材の取得した角度に応じて駆動力を発生するアクチュエータと、
アクチュエータの駆動力を前輪のトー方向の回転へと伝達する連結シャフトと、
を有し、
前記連結シャフトは、
前記アクチュエータの出力を前記前輪のトー方向の回転へと伝達する第1の状態と、
前記ステアリングの回転力を前記前輪のトー方向の回転へと伝達する第2の状態と、
に移動する
ことを特徴とするステアバイワイヤ装置。
【請求項2】
前記連結シャフトは、前記ステアリングと係合するステアリング係合部を有し、
前記ステアリングは、前記連結シャフトと係合する連結シャフト係合部を有し、
前記連結シャフトと前記ステアリングとは、
前記第1の状態では、離間しており、
前記第2の状態で、前記ステアリング係合部と前記連結シャフト係合部を係合する
ことを特徴とする請求項1に記載のステアバイワイヤ装置。
【請求項3】
前記ステアリング係合部と前記連結シャフト係合部は、一方が凹の円錐状、他方が凸の円錐状に傾斜した案内部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のステアバイワイヤ装置。
【請求項4】
前記前輪を前記連結シャフトに対して支持するフロントフォークを有し、
前記連結シャフトと前記フロントフォークは、スプライン構造により連結されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のステアバイワイヤ装置。
【請求項5】
前記連結シャフトを付勢するバネと、
前記連結シャフトをバネの付勢力に抗して留める移動部材と、
を有し、
前記第1の状態から、前記移動部材が移動すると、前記バネの付勢力により前記連結シャフトが移動して、前記第2の状態となる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のステアバイワイヤ装置。
【請求項6】
前記連結シャフトを移動させるソレノイドを有し、
前記第1の状態から、ソレノイドが励磁され延伸すると、前記連結シャフトが移動して、前記第2の状態となる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のステアバイワイヤ装置。
【請求項7】
前記アクチュエータの出力軸から伝達された駆動力を前記アクチュエータの出力方向と反対方向で前記連結シャフトに伝達するジョイント部と、
前記フレームに取り付けられ前記アクチュエータを支持する支持部材と、
を有し、
前記アクチュエータは、前記ステアリングよりも下方であって、前記アクチュエータの出力軸と前記前輪のトー方向回転軸が平行になるように配置され、
前記ジョイント部は、第1のカウンタギヤと第2のカウンタギヤを有し、
前記第1の状態では、前記第1のカウンタギヤと前記第2のカウンタギヤが噛み合い、
前記第2の状態では、前記第1のカウンタギヤと前記第2のカウンタギヤが離間する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のステアバイワイヤ装置。
【請求項8】
前記ステアリングは、ステアリングバーであり、
前記車両は鞍乗型車両である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のステアバイワイヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−71605(P2013−71605A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212341(P2011−212341)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】