説明

ステアリングシャフトの取付構造

【課題】本発明は、ステアリングシャフトの振動を抑制しつつ車両の衝突時にステアリングシャフト及びステアリングホイールの乗員側への進入を抑制することができるステアリングシャフトの取付構造を提供する。
【解決手段】本ステアリングシャフト4の取付構造では、ピラーツーピラーメンバへのステアリングシャフトの取付部8と、該取付部に対して前後方向に対向するボデー部位12と、をテンションをかけた繊維構造部材10で連結したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングシャフトの振動を抑制しつつ車両の衝突時にステアリングシャフト及びステアリングホイールの乗員側への進入を抑制することができるステアリングシャフトの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングは、概ね乗員が操作するステアリングホイールとその回転操作を伝達するステアリングシャフトとで構成される。このステアアリングの振動を低減するためにステアリングホイールやステアリングシャフトに振動を減衰させるダンパが設けられる場合が多い。例えば、特許文献1では、ステアリング振動を低減させるために、ステアリングシャフトにダイナミックダンパを設けている。
【0003】
しかしながら、従来式のダンパ装置の場合、アルミニウムとゴムのごとき金属部材と弾性部材との複合成型品で構成されるため加工工程が多くコストが高く、重量も大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−60075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みて創作されたものであり、ステアリングシャフトの振動を抑制しつつ車両の衝突時にステアリングシャフト及びステアリングホイールの乗員側への進入を抑制することができるステアリングシャフトの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明では、ピラーツーピラーメンバへのステアリングシャフトの取付部と、該取付部に対して前後方向に対向するボデー部位(例えば、カウルやダッシュパネル)と、をテンションをかけた繊維構造部材(例えば、ウェビング部材)で連結したことを特徴とするステアリングシャフトの取付構造を提供する。
【0007】
本発明のステアリングシャフトの取付構造は、ウェビング部材に代表される繊維構造部材の各繊維同士の摩擦による減衰効果を利用している。繊維構造部材はその長手方向に振動が加えられると各繊維の伸縮により摩擦し、各繊維の温度が上昇する。すなわち、振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、振動は低減されることとなる。したがって、本ステアリングシャフトの取付構造によればこれを取り付けるピラーツーピラーメンバの振動を抑制することでステアリングシャフトの振動を抑制することができる。
【0008】
また、本ステアリングシャフトの取付構造によれば、車両衝突時にボデー部位側が乗員側に侵入してきても、繊維構造部材が撓むだけであり、ステアリングホイールが乗員に近づかないため乗員障害値への悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のステアリングシャフトの取付構造は、ウェビング部材等の繊維構造部材の各繊維同士の摩擦による減衰によりステアリングシャフトの振動を抑制することができる。また、本ステアリングシャフトの取付構造の場合、車両の衝突時にステアリングシャフト及びステアリングホイールが乗員側に近づいてくることを回避し、乗員への安全性を確保することができる。さらに、本ステアリングシャフトの取付構造は、コストと重量とを抑制しながら乗員への安全性を確保することができる点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ステアリングシャフトやインパネ、ダッシュボードを取り外した状態の車両前方のボデー部位と、このボデー部位に固着されたピラーツーピラーメンバとを表した斜視図である。
【図2】本発明のステアリングシャフトの取付構造の側面模式図であり、(a)は通常の状態、(b)は車両の衝突時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、本発明の一実施形態に係るステアリングシャフトの取付構造について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1にはステアリングシャフトやインパネなどを取り外した状態の車両前方のボデー部位12と、このボデー部位12に固着されたピラーツーピラーメンバ15とを表した斜視図である。フロントピラー17とは、ルーフ(図示せず)を支え、自動車の剛性強化の一翼を担っているボデー部位の一部の支柱であり、ここでは車両前方に位置するものをいう。また、ピラーツーピラーメンバ15はフロントピラー17の間すなわち前方のボデー部位12の両側部の間を幅方向に支持する中空棒状部材であり、その両端のサイドブラケット16によりボデー部位12(ピラー17)と固着される。さらに、ピラーツーピラーメンバ15はその中央近傍でセンターブレース20が下方にフロア部まで伸びおり、このセンターブレース20によりピラーツーピラーメンバ15は上下方向に担持される。
【0013】
また、ピラーツーピラーメンバ15は各種部品と連結されるが、運転席前方に位置するブラケット18の間でステアリングシャフトと連結される。図2には、本ステアリングシャフトの取付構造1の側面側から見た構成が示されており、(a)は通常の状態、(b)は車両の衝突時の状態を示している。
【0014】
図2(a)に示すように本ステアリングシャフトの取付構造1は、ウェビング部材(繊維構造部材)10で互いに連結されるステアリング6とボデー部位12との取付構造である。ステアリング6は概ねステアリングホイール2とステアリングシャフト4とで構成されており、乗員が操作したステアリングホイール2の回転をステアリングシャフト4が伝達する。ステアリングシャフト4にはその中央近傍に前述のピラーツーピラーメンバ15に取り付けるための取付部8が形成される。取付部8はその先端に穴8aが設けられ、この穴8aにピラーツーピラーメンバ15が貫通し、ピラーツーピラーメンバ15に装着される。したがって、ステアリングシャフト4はピラーツーピラーメンバ15を介してボデー部位12に固定されることとなる。
【0015】
取付部8は、ウェビング部材10にも連結する。ウェビング部材10の両端部10a、10bは引っ掛けることができる形状になっており、一方の端部10aで連結部材(ブラケット)11を介して取付部8と連結する。連結部材11は一端をウェビング部材10の端部10aと連結し、他端を取付部8の穴8aの近傍にボルト9で締結する。また、ウェビング部材10の他方の端部10bでは連結部材(ブラケット)14を介してボデー部位12にボルト13で締結される。
【0016】
通常の状態では、図2(a)の矢印Aに示すようにウェビング部材10には引っ張られ、所定のテンションが付加された状態に設定される。ここでウェビング部材10について考える。ウェビング部材10は、各繊維材料が複数、捩られて又は織られて形成された繊維構造部材であり、通常、シートベルト同様の樹脂製(例えば、ポリエステル製)の織物繊維である。また、ここではウェビング部材10の代替えとして繊維構造部材であれば他の部材でも良く、例えば、金属製の繊維体を複数捩りあわせて形成した金属ワイヤーが挙げられる。
【0017】
この状態で車両が振動すると、ボデー部位12やステアリングシャフト4を介してウェビング部材10にも振動が伝達される。そして、ウェビング部材10はその各繊維材料同士が摩擦し、振動が減衰していく。これはウェビング部材10の振動のエネルギが摩擦により熱エネルギ等に転換されるからである。
【0018】
次に図2(b)を参照すれば、図2(a)に対して車両の衝突等によりボデー部位12が乗員側に進入してきた様子を示している。図2(a)と同位置である点線で示すボデー部位12が、車両の衝突等により紙面右側の実線で示すボデー部位12’に進入している(矢印B参照)。このボデー部位12’の移動に従ってウェビング部材10’は紙面左右方向に縮小する(矢印C参照)。これに対して、ステアリングシャフト6は、固定されている。すなわち、ウェビング部材10’がボデー部位12’の進入を受け止めてステアリングシャフト4への伝達を遮断している。したがって、車両衝突事故時における乗員の安全性を高めることができる。
【0019】
以上、本発明のステアリングシャフトの取付構造についての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることは当業者は理解できるであろう。
【符号の説明】
【0020】
1 ステアリングシャフトの取付構造
2 ステアリングホイール
4 ステアリングシャフト
6 ステアリング
8 取付部
9,14 締結具
10 ウェビング部材(繊維構造部材)
11,13 連結部材(ブラケット)
12 ボデー部位
15 ピラーツーピラーメンバ
16 サイドブラケット
17 フロントピラー
18 ブラケット
20 センターブレース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラーツーピラーメンバへのステアリングシャフトの取付部と、該取付部に対して前後方向に対向するボデー部位と、をテンションをかけた繊維構造部材で連結したことを特徴とするステアリングシャフトの取付構造。





【図1】
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【図2】
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