説明

ステアリング装置

【課題】摩耗現象を最小限にし、スペースを節約して二輪車に組み込むことのできる、操舵角センサを備えるステアリング装置を提案する。
【解決手段】二輪車のためのステアリング装置は、ステアリングシャフト5を案内するフレーム6を備え、フレーム6に開口部が形成され、当該開口部の領域に角度センサ4が配置されており、フレーム6の開口部の領域において、角度センサ3に対応した可動部材がステアリングシャフト5に配置されており、角度センサ3と可動部材とは、相互に非接触に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車のためのステアリング装置およびステアリング装置によって操舵角を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵角を検出するために働く操舵角センサを備えるステアリング装置が、最近では、自動車で広く使用されている。操舵角の検出は、とりわけ走行動特性安定化システム、例えばエレクトロニック・スタビリティプログラム(ESP)などにおいて重要な役割を果たす。ESPの他に、電動式パワーステアリング、アクティブステアリング、電動液圧式パワーステアリング、コーナリング・ライトシステム、車間距離・速度制御装置(ACC)などのシステムが操舵角に関する情報を利用する。
【0003】
従来技術により、コードディスクを有するロータを備え、コードディスクのコードを読取ユニットによって読み取り可能な操舵角センサが既知である。一般に、コードディスクのコードは、幅の異なる歯と、歯間に配置された歯間空隙とによって構成されている。
【0004】
ドイツ国特許出願公開第102004004023号明細書に記載の操舵角センサは、ステアリングコラムまたはステアリングホイールと同期回転式に結合可能であり、ステアリングコラムの回転軸線を中心として回転可能な主要ロータを備える。この操舵角センサは、さらに主要ロータの回転角度位置を読み取るための第1読取ユニットと、付加ロータの回転角度位置を読み取るための第2読取ユニットとを備え、付加ロータは、ステアリングコラムの回転軸線を中心として回転可能であり、付加ロータを駆動するために、主要ロータによって駆動されるギア部材が設けられている。
【0005】
上記明細書に提案されている装置では、センサが、主要ロータ、付加ロータ、および、2つのロータを結合するギア部材を使用することによって、比較的大きいスペースを必要とし、したがって、二輪車で使用することが困難となることが欠点である。同様に、長時間の作動時には、汚染作用または疲労によって、ロータに摩耗現象が生じる場合があることも欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102004004023号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、摩耗現象を最小限にし、スペースを節約して二輪車に組み込むことのできる、操舵角センサを備えるステアリング装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、出願時の独立請求項1に記載のステアリング装置、および、出願時の独立請求項7に記載の操舵角を検出するための方法により解決される。有利な実施形態が、従属請求項および発明の実施の形態に明らかである。
【0009】
ステアリングシャフトを案内するフレームと、センサユニットと、を備える、二輪車のためのステアリング装置を提供することが提案される。センサユニットは、角度センサと、角度センサに対応した可動部材とを備える。センサユニットの正確な機能性を確保するために、角度センサは、ステアリング装置に不動に固定されており、可動部材は、操舵時に、すなわち、二輪車のステアリングハンドルの回転運動時に、それと同様に回転するように固定されている。
【0010】
一実施形態では、角度センサは、フレームに固定されており、対応する可動部材は、ステアリングハンドルに固定されており、角度センサと可動部材とは、相互に分離されている、すなわち、非接触に配置されている。
【0011】
角度センサと可動部材とがこのように非接触に配置されていることにより、摩耗現象が防止される。長時間の使用時に摩耗するロータまたはギアを備える通常の操舵角センサとは反対に、本明細書に示した操舵角センサは、このようなロータまたはギアを廃止し、これにより、スペースを節約した構成を可能にする。
【0012】
さらに、可動部材としての磁石および対応する角度センサによって操舵角を検出することができる。ステアリングシャフトへの固定が容易になるように、ステアリングシャフトの湾曲に対応した湾曲部を備える曲線状(例えば、弓状)のN/S極磁石が使用される。一実施形態では、曲線状の磁石は、棒磁石に相当する。すなわち、一方の半分にはN極が位置し、他方の半分にはS極が位置し、N極とS極との間の仮想分離線は、ステアリングシャフトに対して平行に延在している(しかしながら、磁石の他の構成も可能である)。
【0013】
この磁石は、クランプ、例えばクランプリングによって簡単に、ステアリングシャフトに摩擦接続的に(kraftschluessig)結合されている。別の実施形態では、ステアリングシャフトには、磁石を挿入することのできる収容部またはポケットが設けられている。
【0014】
角度センサによって操舵角を測定することができるように、操舵時に磁石のみが移動または回動され、角度センサが位置を変えないことは極めて重要である。これは、角度センサが、ステアリングシャフトにではなく、ステアリングシャフトのフレームに固定されていることによって確保される。一実施形態では、ステアリングシャフトのフレームには、角度センサを組み込む開口部が設けられている。この開口部は、フレームの内側と外側とを接続しており、これにより、例えばステアリングシャフトをフレーム内に挿入した後にフレームの外側から角度センサを組み付けることができる。さらに開口部は、フレームの外側にのみ切欠きとして成形されていてもよく、これにより、ステアリングシャフトの挿入前に角度センサがフレーム内に組み付けられる。さらに角度センサは、非対称的な開口部内に取り付けられていてもよい。すなわち、開口部は、開口部の寸法に基づいて一方側からのみ、すなわち、フレームの内側または外側からのみ、角度センサの組み付けを可能にする。
【0015】
高精度の測定を可能にするために、角度センサは、磁石に向かい合って配置されている。これは、角度センサと磁石との間の仮想接続線がステアリングシャフトの縦軸線に対して角度αをなしており、例えば、60°<α<120°であることを意味する。さらに磁石は、磁石のN極とS極との間の移行部、すなわち、最良の磁界均質性を有する領域が、角度センサの前に位置するように配向されている。
【0016】
さらに、操舵角を測定するために、ホール効果が利用されるように構成してもよい。ホール効果は、電流が流れる、定常磁界に位置する導体における電圧の発生を示す。この場合、電圧は、導体における電流方向および磁界方向に対して直交する方向に降下する。このような電圧は、ホール電圧と呼ばれる。
【0017】
簡単なホールセンサに電流が流れ、電流に対して垂直方向に延在する磁界内にホールセンサがもたらされた場合、ホールセンサは、磁界強度および電流の積に対して比例する出力電圧を供給する。信号は、さらに温度に関係しており、偏りを有している場合もある。アナログ式ホールセンサでは、電流が制御され、信号の温度依存性、偏りおよび起こり得る非線形性が補正される。
【0018】
デジタル式ホールセンサでは、アナログ式ホールセンサの信号が比較器を介してデジタル信号に変換される。
【0019】
本明細書に示したステアリング装置で使用されるホールセンサでは、磁界の変化が、磁石の回転に応じて測定される。この場合、センサユニットの制御ユニットによって、角度に応じた出力信号が生成される。安全性についての理由から、センサユニットは、冗長信号を供給する。
【0020】
このようにして検出された操舵角は、様々な領域で使用することができる。したがって、例えば、ウィンカーをスイッチオンまたはスイッチオフすることができるように、いつ車線変更が行われたのか、または、いつ終了したのかを検出することができる。
【0021】
さらに、検出された操舵角を他の制御装置、例えばエレクトロニック・スタビリティプログラム(ESP)またはトラクション・コントロールシステムなどに供給してもよい。
【0022】
提案した操舵装置の一実施形態では、ステアリングシャフトまたはステアリングシャフトのフレームに設けられたセンサユニットは、2つのフォークブリッジの間に配置されている。2つのフォークブリッジの間のステアリングシャフトの領域は、センサユニットのために十分なスペースを提供し、二輪自動車にステアリングシャフトを組み付ける前にセンサユニットを結合することを可能にするので、特に有利である。
【0023】
本発明の利点および構成が、以下の詳細な説明および添付の図面から明らかである。
【0024】
上記の特徴および以下にさらに説明する特徴は、それぞれに示した組み合わせにおいてのみならず、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の組み合わせにおいて、または、単独で用いることができることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】操舵角センサを備える本発明によるステアリング装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】操舵角センサの測定原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施形態に基づいて図面に概略的に示し、以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1には、操舵角センサ2を備える本発明によるステアリング装置1が概略的に示されている。ステアリング装置1は、ステアリングシャフト5と、ステアリングシャフト5を案内するフレーム6とを備える。フレーム6は、2つのフォークブリッジの間に配置されている。ステアリング装置1は、さらに操舵角を検出するためのセンサユニット2を備える。センサユニット2は、角度センサ3および可動部材として磁石4を備える。磁石4は、曲線状のN/S曲磁石として示されており、クランプリング7を介して2つのフォークブリッジの間でステアリングシャフトに摩擦接続的に結合されている。
【0028】
これに対して角度センサ3は、磁石4に向かい合ってステアリングシャフト5のフレーム6に配置されている。角度センサ3は、図1では、走行方向における磁石4の前方に配置されているが、別の配置、すなわち、走行方向における磁石の後方に、または、磁石と並んで配置することも可能である。角度センサ3をフレーム6に固定するために、フレーム6には、角度センサ3を形状接続的に(formschluessig)組み付けられる開口部が設けられている。曲線状の永久磁石として形成された磁石4は、角度センサ3に対するN極およびS極の間隔がほぼ同一になるように、すなわち、N極とS極との間の移行部が角度センサ3に向かい合っているように、角度センサ3に対して配置されている。この移行部は、磁界の均質性が高く、したがって、角度センサ3は、磁石4の回動に起因する磁界の小さい変化を特に正確に検出することができる。
【0029】
磁石4は、この実施形態では、曲線状の棒磁石として形成されているが、しかしながら、他の適宜な実施形態も可能である。
【0030】
操舵角は、ホール効果を利用して規定される。ホール効果は、電流が流れる、定常磁界に位置する導体における電圧の発生を示す。この場合、電圧は、導体における電流方向および磁界方向に対して垂直方向に降下する。すなわち、ホールセンサに電流が流れ、電流に対して垂直方向に延在する磁界内にホールセンサがもたされると、ホールセンサは、磁界強度および電流の積に対して比例する出力電圧を供給する。例えば、磁界の回転により磁界強度が変化すると、磁界強度の変化が記録され、ホールセンサは、適宜な電気信号を発信する。この場合、ホール電圧は、磁界強度に比例する。
【0031】
回転磁界検出では、磁界は、垂直方向(B)、すなわちY方向、および、水平方向(B)、すなわちX方向の成分に分解される。X方向およびY方向の磁界強度の方向は、この場合、90°だけずらされている。図2に示すように、X方向の磁界強度は、回転角度に関係して余弦曲線を描いており、Y方向の磁界強度は、正弦曲線を描いている。二重矢印10は、回転を示す。このように2つの磁界成分が90°だけずれていることによって、ICまたは集積回路とも呼ばれるホールセンサにおいて、制御ユニットにより逆正接関数(B/B)を形成することによって、線形信号12の生成が可能となる。操舵角が磁界強度のX成分およびY成分から計算されることにより、測定誤差が最小限となり、これにより、小さい操舵角であっても高精度で検出することができる。さらに直進走行時の較正は不要である。このような操舵角センサでは、磁界強度の絶対変化ではなく、相対変化が測定されるので、ゼロ点を規定する必要もほぼない。
【符号の説明】
【0032】
1…ステアリング装置
2…操舵角センサ(センサユニット)
3…角度センサ
4…磁石
5…ステアリングシャフト
6…フレーム
7…クランプリング
10…二重矢印
12…線形信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車のためのステアリング装置であって、
ステアリングシャフト(5)を案内するフレーム(6)を備え、
前記フレーム(6)に開口部が形成され、
前記開口部の領域に角度センサ(3)が配置されており、
前記フレーム(6)の前記開口部の領域において、前記角度センサ(3)に対応した可動部材が前記ステアリングシャフト(5)に配置されており、
前記角度センサ(3)と前記可動部材とは、相互に非接触に配置されている
二輪車のためのステアリング装置。
【請求項2】
可動部材は、磁石(4)である、請求項1に記載の二輪車のためのステアリング装置。
【請求項3】
前記磁石(4)は、曲線状のN/S極の磁石である、請求項2に記載の二輪車のためのステアリング装置。
【請求項4】
前記磁石(4)は、クランプリング(7)を介してステアリングシャフト(5)に摩擦力によって固定されている、請求項2または3に記載の二輪車のためのステアリング装置
【請求項5】
前記磁石(4)は、該磁石のために設けられた収容部に挿入される、請求項2または3に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記磁石(4)は、曲線状の棒磁石として形成されている、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のステアリング装置を備える、二輪車で操舵角を検出するための方法。
【請求項8】
ホール効果を使用する、請求項7に記載の操舵角を検出するための方法。
【請求項9】
磁石(4)の回転に応じた磁石(4)の磁界の変化によって操舵角を測定する、請求項8に記載の操舵角を検出するための方法。
【請求項10】
前記磁石(4)の磁界を垂直方向(B)の成分と水平方向(B)の成分とに分解し、逆正接関数(B/B)を形成することによって線形信号を生成する、請求項9に記載の操舵角を検出するための方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82440(P2013−82440A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223064(P2012−223064)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】