説明

ステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ阻害剤としてのアザシクロアルカン誘導体

構造式(I)で表わされるアザシクロアルカン誘導体は、他の公知のステアロイル−補酵素Aデサチュラーゼと比較して選択的なステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ(SCD1)阻害剤である。本発明の化合物は、アテローム性動脈硬化症のような循環器病を含む脂質合成及び代謝障害;肥満症;糖尿病;神経性疾患;メタボリックシンドローム;インシュリン抵抗性;及び脂肪肝症に関連する病状の予防及び治療に有用である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ(SCD)の阻害剤であるアザシクロアルカン誘導体、SCD活性により介在される病状又は疾患を制御、予防及び/又は治療するためのこのような化合物の使用に関する。本発明の化合物は、アテローム性動脈硬化症のような循環器病;肥満症;糖尿病;神経系の疾患;メタボリックシンドローム;インシュリン抵抗性;癌;及び脂肪肝変性を含む異常脂質合成及び代謝に関連した病状又は疾患の制御、予防及び治療のために有用である。
【背景技術】
【0002】
哺乳類において、少なくも3種のクラスの脂肪酸アシル−補酵素A(CoA)デサチュラーゼ(デルタ−5、デルタ−6及びデルタ−9デサチュラーゼ)が、食餌又はデノボ合成のいずれか由来のモノ−及びポリ不飽和脂肪酸アシル−CoAにおける二重結合生成の任を負っている。デルタ−9特異的ステアロイル−CoAデサチュラーゼ(SCDs)は、モノ不飽和脂肪酸アシル−CoAのC9−C10位におけるシス−二重結合の律速的な形成を触媒する。好ましい基質は、ステアロイル−CoA及びパルミトイル−CoAでありオレオイル及びパルミトレオイル−CoAが、リン脂質、トリグリセリド、コレステロールエステル及びろうエステルの生合成における主要な成分として生じる(Dobrzyn and Natami,Obesity Reviews,6:169−174(2005))。
【0003】
ラット肝臓のミクロソームSCDタンパク質は、1974年に最初に分離され、キャラクタリゼーションされた(Strittmatter et al.,PNAS,71:4565−4569(1974))。それ以来、いろいろな種由来の多くの哺乳類SCD遺伝子がクローニングされ研究された。例えば、ラットから2種の遺伝子(SCD1及びSCD2、Thiede et al.,J.Biol.Chem.,261,13230−13235(1986)),Mihara,K.,J.Biochem.(Tokyo),108:1022−1029(1990));マウスから4種の遺伝子(SCD1、SCD2、SCD3及びSCD4)(Miyazaki et al.,J.Biol.Chem.,278:33904−33911(2003));ヒトから2種の遺伝子(SCD1及びACOD4(SCD2))(Zhang,et al.,Biochem.J.,340:255−264(1991);Beiraghi,et al.,Gene,309:11−21(2003);Zhang et al.,Biochem.J.,388:135−142(2005))が同定された。ラット及びマウスにおける脂肪酸代謝におけるSCDsの関与は1970年代から知られている(Oshino,N.,Arch.Biochem.Biophys.,149:378−387(1972))。このことは、更にa)SCD1遺伝子に自然変異を有するアセビアマウス(Zheng et al.,Nature Genetics,23:268−270(1999))、b)標的遺伝子欠失に由来するSCD1−ヌルマウス(Ntambi,et al.,PNAS,99:11482−11486(2002))、及びc)レプチンに誘導される体重減少の間のSCD1発現抑制(Cohen et al.,Science,297:240−243(2002))の生物学的研究によって支持されている。SCD活性の薬理学的阻害の潜在的利益は、マウスにおけるアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害剤(ASO)を用いて証明されている(Jiang,et al.,J.Clin.Invest.,115:1030−1038(2005))。SCD活性のASO阻害は、初代マウス肝細胞において、脂肪酸合成を減少し、脂肪酸の酸化を増加する。SCD−ASOsによるマウスの処理は、食餌に誘導される肥満症の予防、脂肪過多症、肝腫大、脂肪変性、食後の血漿インシュリン及びグルコース濃度の減少、デノボ脂肪酸合成の減少、脂質合成遺伝子の発現の減少、及び肝臓及び脂肪組織におけるエネルギー消費を促進する遺伝子の発現の増加を招く。したがって、SCD阻害は、肥満症及び関連する代謝障害の治療における新規な治療方針となる。
【0004】
ヒトにおいて、上昇したSCD活性が、いくつかの共通の疾患経過において直接関係することを支持することを受け入れざるを得ない証拠がある。例えば、非アルコール性脂肪肝疾患の患者におけるトリグリセライドの分泌に対する肝臓の脂肪合成の増加がある(Diraison,et al.,Diabetes Metabolism,29:478−485(2003);Donnelly,et al.,J.Clin.Invest.,115:1343−1351(2005))。食後のデノボ脂肪合成は、肥満症患者において有意に増加する(Marques−Lopes,et al.,American Journal of Clinical Nutrition,73:252−261(2001))。高いSCD活性と、血漿トリグリセリドの増加、高い肥満度指数と血漿HDLの減少を含む増加した心血管系リスクプロフィールとの間には顕著な関係がある(Attie,et al.,J.Lipid Res.,43:1899−1907(2002))。SCD活性は、ヒトの形質転換細胞の増殖及び生存の制御において重要な役割を果たしている(Scaglia and Igal,J.Biol.Chem.,(2005))。
【0005】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチド以外に、SCD活性の阻害剤には、非選択的チア脂肪酸基質類似体[B.Behrouzian and P.H.Buist,Prostaglandins,Leukotrienes,and Essential Fatty Acids,68:107−112(2003)]、シクロプロペノイド脂肪酸(Raju and Reiser,J.Biol.Chem.,242:379−384(1967))、特定の共役長鎖脂肪酸異性体(Park,et al.,Biochim.Biophys.Acta,1486:285−292(2000))、全てXenon Pharmaceuticals,Inc.に譲渡された国際特許出願公開WO2005/011653;WO2005/011654;WO2005/011656;WO2005/011656;WO2005/011657に開示されたピリダジン誘導体のシリーズ、全てXenon Pharmaceuticals,Inc.に譲渡された国際特許出願公開WO2006/014168、WO2006/034279、WO2006/034312、WO2006/034315、WO2006/034338、WO2006/034341、WO2006/034440、WO2006/034441、及び2006/034446に開示されたヘテロ環誘導体のシリーズが含まれる。
【0006】
本発明は、ステアロイル−CoAデルタ−9デサチュラーゼの阻害剤としての新規なアザシクロアルカン誘導体に関し、これは、非アルコール性脂肪肝疾患、循環器病、肥満症、糖尿病、メタボリックシンドローム、及びインシュリン抵抗性として例示される脂質濃度の上昇が含まれるSCD活性により媒介される種々の病状及び疾患の治療及び/又は予防に有用であり、これらに限定されない。
【0007】
脂質代謝におけるステアロイル−補酵素Aデサチュラーゼの役割は、M.Miyazaki and J.M.Ntambi,Prostaglandins,Leukotrienes,and Essential Fatty Acids,68:113−121(2003)に開示されている。SCD活性の薬理学的処置の治療の可能性は、A.Dobryzn and J.M.Ntambi,in“Stearoyl−CoA desaturase as a new drug target for obesity treatment,”Obesity Reviews,6:169−174(2005)に開示されている。
【発明の概要】
【0008】
発明の要旨
本発明は、構造式I:
【0009】
【化1】

【0010】
のアザシクロアルカン誘導体に関する。
【0011】
これらのアザシクロアルカン誘導体はSCDの阻害剤として有効である。したがって、それらは、糖尿病、インシュリン抵抗性、脂質障害、肥満症、アテローム性動脈硬化症及びメタボリックシンドロームのようなSCDの阻害に応答する障害の治療、抑制又は予防に有用である。
【0012】
本発明は、また、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0013】
本発明は、また、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、治療を必要とする被験者においてSCDの阻害に応答する障害、疾患又は病状を治療、抑制又は予防する方法に関する。
【0014】
本発明は、また、本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、2型糖尿病、インシュリン抵抗性、肥満症、脂質障害、アテローム性動脈硬化症及びメタボリックシンドロームを治療、抑制又は予防する方法に関する。
【0015】
本発明は、また、本発明の化合物を、肥満症の治療に有用であることが知られている他の薬剤の治療に有効な量と組み合わせて投与することにより、このような病状を治療、抑制又は予防する方法に関する。
【0016】
本発明は、また、本発明の化合物を、2型糖尿病の治療に有用であることが知られている他の薬剤の治療に有効な量と組み合わせて投与することにより、このような病状を治療、抑制又は予防する方法に関する。
【0017】
本発明は、また、本発明の化合物を、アテローム性動脈硬化症の治療に有用であることが知られている他の薬剤の治療に有効な量と組み合わせて投与することにより、このような病状を治療、抑制又は予防する方法に関する。
【0018】
本発明は、また、本発明の化合物を、脂質障害の治療に有用であることが知られている他の薬剤の治療に有効な量と組み合わせて投与することにより、このような病状を治療、抑制又は予防する方法に関する。
【0019】
本発明は、また、本発明の化合物を、メタボリックシンドロームの治療に有用であることが知られている他の薬剤の治療に有効な量と組み合わせて投与することにより、このような病状を治療する方法に関する。
【0020】
発明の詳細な記載
本発明は、SCDの阻害剤として有用なアザシクロアルカン誘導体に関する。本発明の化合物は、構造式I:
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、各nは独立して0、1又は2であり;
qは0又は1であり;
rは0又は1であり;
pは0、1又は2であり;
X−Yは、N−C(O)、N−S(O)、N−CR、CH−O、CH−S(O)、CH−NR13、又はCR17−CRであり;
Arは、フェニル、ナフチル、又は1〜5個のR置換基で置換されていてもよいヘテロアリールであり;
HetArは、
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、ZはO、S又はN−R18であり;
WはN又はC−R15である)
からなる群から選択される縮合ヘテロ芳香環であり;
及びRは、各々独立して水素、ハロゲン又はC1−3アルキルであり、ここで、アルキルは、独立して、フッ素及びヒドロキシから選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロシクロプロピル環システムを形成してもよく;
各Rは、独立して、
1−6アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ヘテロシクリル、
(CH3−7シクロアルキル、
ハロゲン、
OR
(CHN(R
(CHC≡N、
(CHCO
NO
(CHNRSO
(CHSON(R
(CHS(O)
(CHNRC(O)N(R
(CHC(O)N(R
(CHNRC(O)R
(CHNRCO
O(CHC(O)N(R
CF
CHCF
OCF、及び
OCHCFからなる群から選択され;
ここで、フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及びC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;ここで、R中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、フッ素、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく;又は2個の置換基は、同じメチレン(CH)基上にある場合、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロプロピル基を形成し;
各Rは、独立して、
水素、
1−6アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ナフチル、及び
(CH3−7シクロアルキルからなる群から選択され;
ここで、アルキル、フェニル、ヘテロアリール及びシクロアルキルは、ハロゲン、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;又は2個のR基は、それらが結合する原子と一緒になって、O、S、NH及びNC1−4アルキルから選択される追加のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜8員環の単環又は二環式環システムを形成し;
、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、各々独立して、水素、フッ素又はC1−3アルキルであり、ここで、アルキルはフッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;
各R13は、独立して水素又はC1−6アルキルであり;
14は、独立して、アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、アリールアミノ、アリール−C1−2アルキルアミノ、C1−4アルキルカルボニルアミノ、アリール−C1−2アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、C1−4アルキルアミノカルボニルアミノ、C1−4アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、アリール−C1−2アルキルスルホニルアミノ、C1−4アルキルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ及びアリール−C1−2アルキルオキシカルボニルアミノからなる群から選択され;
15及びR16は、各々独立して、水素であるか、又はアミノ、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルカルボニルオキシ、フェニル、ヘテロアリール若しくは1〜5個のハロゲンで置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
17は、水素、C1−3アルキル、フッ素又はヒドロキシであり;そして
18は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルキルカルボニル、アリール−C1−2アルキルカルボニル、アリールカルボニル、C1−4アルキルアミノカルボニル、C1−4アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリール−C1−2アルキルスルホニル、C1−4アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリール−C1−2アルキルオキシカルボニルアミノ、β−D−リボフラノシル、α−D−リボフラノシル、β−D−グルコピラノシル及びα−D−グルコピラノシルからなる群から選択される)
によって表わされる化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【0025】
本発明の化合物の一実施態様においては、nは0である。
【0026】
第二の実施態様においては、q及びrはいずれも1であり、6員環のピペリジン環を提供する。
【0027】
第三の実施態様においては、qは1であり、rは0であり、5員環のピロリジン環を提供する。
【0028】
第四の実施態様においては、q及びrはいずれも0であり、4員環のアゼチジン環を提供する。
【0029】
本発明の化合物の第五の実施態様においては、X−YはN−C(O)である。この実施態様のクラスにおいては、Arは、前述したような1〜3個のR置換基によって置換されているフェニルである。このクラスのサブクラスにおいては、フェニルは、R置換基の1個によりオルト位で置換されている。
【0030】
本発明の化合物の第六の実施態様においては、X−YはN−S(O)である。この実施態様のクラスにおいては、Arは、前述したような1〜3個のR置換基によって置換されているフェニルである。このクラスのサブクラスにおいては、フェニルは、R置換基の1個によりオルト位で置換されている。
【0031】
本発明の化合物の第七の実施態様においては、X−YはCH−Oである。この実施態様のクラスにおいては、Arは、前述したような1〜3個のR置換基によって置換されているフェニルである。このクラスのサブクラスにおいては、フェニルは、R置換基の1個によりオルト位で置換されている。
【0032】
本発明の化合物の第八の実施態様においては、X−YはCH−S(O)である。この実施態様のクラスにおいては、Arは、前述したような1〜3個のR置換基によって置換されているフェニルである。このクラスのサブクラスにおいては、フェニルは、R置換基の1個によりオルト位で置換されている。
【0033】
本発明の化合物の第九の実施態様においては、X−YはN−CRである。この実施態様のクラスにおいては、Arは、前述したような1〜3個のR置換基によって置換されているフェニルである。この実施態様の更に他のクラスにおいては、R及びRは水素であり、Arは1〜3個のR置換基で置換されているフェニルである。このクラスのサブクラスにおいては、フェニルは、R置換基の1個によりオルト位で置換されている。
【0034】
本発明の化合物の第十の実施態様においては、X−YはCH−NR13である。この実施態様のクラスにおいては、Arは、前述したような1〜3個のR置換基によって置換されているフェニルである。この実施態様の更に他のクラスにおいては、R13は水素であり、Arは1〜3個のR置換基で置換されているフェニルである。このクラスのサブクラスにおいては、フェニルは、R置換基の1個によりオルト位で置換されている。
【0035】
本発明の化合物の第十一の実施態様においては、X−YはCR17−CRである。この実施態様のクラスにおいては、Arは、前述したような1〜3個のR置換基によって置換されているフェニルである。この実施態様の更に他のクラスにおいては、R、R及びR17は水素であり、Arは1〜3個のR置換基で置換されているフェニルである。このクラスのサブクラスにおいては、フェニルは、R置換基の1個によりオルト位で置換されている。
【0036】
本発明の化合物の更なる実施態様においては、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ水素である。
【0037】
本発明の化合物の更なる実施態様においては、各Rは、独立して、ハロゲン、C1−4アルキル、トリフルオロメチル、シアノ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ及びフェニルからなる群から選択される。
【0038】
更なる実施態様においては、HetArは、
【0039】
【化4】

【0040】
(式中、Z、R13、R14及びR15は前述した通りである)からなる群から選択される縮合ヘテロ芳香環である。この実施態様のクラスにおいては、ZはNR18である。
【0041】
SCDの阻害剤として有用な、限定的でない本発明の化合物の具体例は、以下の
【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
及びそれらの薬学的に許容される塩である。
【0045】
本明細書で用いられるように、下記の定義が適用される。
【0046】
「アルキル」、及びアルコキシ及びアルカノイル等の接頭辞「アルカ(alk)」を有する他の基は、炭素鎖を特に定義しない限り、直鎖又は分岐鎖、及びそれらの組み合わせである炭素鎖を意味する。アルキル基の具体例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル等が含まれる。例えば、C3−10のように特定の数の炭素原子が許容される場合、用語アルキルは、シクロアルキル基、シクロアルキル構造と組み合わせた直鎖又は分岐鎖アルキル鎖の組み合わせをも含む。炭素原子の数が特定されていない場合、C1−6を意味する。
【0047】
「シクロアルキル」はアルキルのサブセットであり、特定の数の炭素原子を有する飽和炭素環を意味する。シクロアルキルの具体例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が含まれる。シクロアルキル基は、特に示さない限り一般に単環式である。シクロアルキル基は、特に示さない限り飽和である。
【0048】
「アルコキシ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルコキシ)、又はこの範囲内の任意の数の炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖アルコキシドを意味する[すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシ等]。
【0049】
「アルキルチオ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルチオ)、又はこの範囲内の任意の数の炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖アルキルスルフィドを意味する[すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオ等]。
【0050】
「アルキルアミノ」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルアミノ)、又はこの範囲内の任意の数の炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖アルキルアミンを意味する[すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ等]。
【0051】
「アルキルスルホニル」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルスルホニル)、又はこの範囲内の任意の数の炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖アルキルスルホンを意味する[すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニル等]。
【0052】
「アルキルスルフィニル」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルスルフィニル)、又はこの範囲内の任意の数の炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖アルキルスルホキシドを意味する[すなわち、メチルスルフィニル(MeSO−)、エチルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル等]。
【0053】
「アルキルオキシカルボニル」なる用語は、特定の数の炭素原子(例えば、C1−6アルキルオキシカルボニル)、又はこの範囲内の任意の数の炭素原子を持つ本発明のカルボン酸誘導体の直鎖又は分岐鎖エステルを意味する[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニル又はブチルオキシカルボニル]。
【0054】
「アリール」は、炭素環原子を含む、単環式又は多環式芳香族環システムを意味する。好ましいアリールは、単環式又は二環式の6〜10員環芳香族環システムである。フェニル及びナフチルが好ましいアリールである。最も好ましいアリールはフェニルである。
【0055】
「ヘテロシクリル」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子、更にイオウの酸化形態、すなわちSO及びSOを含む、飽和又は不飽和の非芳香族環又は環システムを意味する。ヘテロシクリルの具体例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリン、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、及び2−オキソアゼチジン−1−イル等が含まれる。
【0056】
「ヘテロアリール」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む、芳香族又は部分芳香族複素環を意味する。したがって、ヘテロアリールには、アリール、シクロアルキル及び芳香族でない複素環等の他の種類の環と縮合したヘテロアリールが含まれる。ヘテロアリール基の具体例には、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル(特に、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル及び1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル等が含まれる。複素環及びヘテロアリール基については、3〜15個の原子を含み、1〜3個の環を形成する環及び環システムが含まれる。
【0057】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。塩素及びフッ素が、一般的に好ましい。アルキル又はアルコキシ基上でハロゲンが置換される場合、フッ素が最も好ましい(例えば、CFO及びCFCHO)。
【0058】
構造式Iの化合物は、1以上の不斉中心を含んでもよく、したがって、ラセミ化合物及びラセミ混合物、単一の光学異性体、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして存在してもよい。本発明は、構造式Iの化合物のこのような全ての異性体形態を含むことを意味する。
【0059】
式Iの化合物は、例えば、適当な溶媒、例えばメタノール又は酢酸エチル又はそれらの混合物からの分別結晶化、又は光学活性固定相を用いたキラルクロマトグラフィーによって個々のジアステレオ異性体に分離することができる。絶対的立体化学は、必要であれば、既知の絶対配置の不斉中心を含む試薬を用いて誘導体化された結晶生成物又は結晶性中間体のX−線結晶によって決定することができる。
【0060】
また、一般構造式Iの化合物の任意の立体異性体は、既知の絶対配置の光学的に純粋な出発原料又は試薬を用いて、立体特異的な合成により製造してもよい。
【0061】
所望であれば、個々の光学異性体が分離できるよう、化合物のラセミ混合物を分離してもよい。分離は、化合物のラセミ混合物を光学異性的に純粋な化合物とカップリングしてジアステレオマー混合物を生成し、分別結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的な方法により個々のジアステレオマーを分離する等の、当該技術分野において周知の方法により実施してもよい。カップリング反応は、しばしば光学異性的に純粋な酸又は塩基を用いた塩の形成である。次いで、付加されたキラルな残基の切断により、ジアステレオマー誘導体を純粋な光学異性体に変換する。化合物のラセミ混合物は、当該技術分野において周知のキラル固定相を用いたクロマトグラフィー法によっても直接分離してもよい。
【0062】
本明細書に開示された化合物のいくつかはオレフィン二重結合を含んでおり、特に示さない限りはE及びZ幾何異性体を含むことを意味する。
【0063】
本明細書に開示された化合物のいくつかは、1個以上の二重結合シフトに付随して起こる水素の異なる結合点を有する互変異性体として存在してもよい。例えば、ケトン及びそのエノール体はケト−エノール互変異性体である。個々の互変異性体及びその混合物は、本発明の化合物に含まれる。
【0064】
本明細書で用いられるように、構造式Iの化合物への言及は、薬学的に許容される塩、それらが遊離の化合物若しくはその薬学的に許容される塩への前駆体として、又は他の合成操作において用いられる場合、薬学的に許容されない塩をも含むことが理解されるであろう。
【0065】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。「薬学的に許容される塩」なる用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む、薬学的に許容される無毒の塩基又は酸から製造される塩を意味する。「薬学的に許容される塩」なる用語に含まれる塩基性化合物の塩は、一般的に遊離の塩基を適切な有機又は無機酸と反応させることにより製造される本発明の化合物の無毒の塩を意味する。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオダイド、吉草酸塩が含まれるが、これらに限定されない。更に、本発明の化合物が酸部分を有する場合は、その適切な薬学的に許容される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、マンガン塩、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の無機塩基に由来する塩が含まれるがこれらに限定されない。特に好ましくは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される有機の無毒の塩基に由来する塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンのような一級、二級及び三級アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。
【0066】
また、本発明の化合物の中にカルボン酸(−COOH)又はアルコール基が存在する場合、メチル、エチル又はピバロイルオキシメチルのようなカルボン酸誘導体、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル及びアミノアシルのようなアルコールのアシル誘導体の薬学的に許容されるエステルを用いてもよい。徐放製剤又はプロドラッグ製剤として用いるための溶解性又は加水分解特性を修飾するために当業界で公知のエステル及びアシル基が含まれる。
【0067】
なお、構造式Iの化合物の溶媒和物、特に水和物は同様に本発明に含まれる。
【0068】
本発明の化合物は、阻害を必要とするほ乳類等の患者において、前記化合物の有効量を投与することを含む、ステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ酵素(SCD)を阻害する方法において有用である。したがって、本発明の化合物は、高い又は異常なSCD酵素活性により介在される病状及び疾患の抑制、予防及び/又は治療に有用である。
【0069】
したがって、本発明の一態様は、構造式Iの化合物又はその薬学的塩又は溶媒和物の有効量を患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類患者において、高血糖症、糖尿病又はインシュリン抵抗性を治療する方法に関する。
【0070】
本発明の第二の態様は、構造式Iの化合物の抗糖尿病に有効な量を患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類の患者において非−インシュリン依存性糖尿病(2型糖尿病)を治療する方法に関する。
【0071】
本発明の第三の態様は、構造式Iの化合物を、肥満症の治療に有効な量で患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類患者において肥満症を治療する方法に関する。
【0072】
本発明の第四の態様は、構造式Iの化合物を、メタボリックシンドローム及びその後遺症の治療に有効な量で患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類患者においてメタボリックシンドローム及びその後遺症を治療する方法に関する。メタボリックシンドロームの後遺症には、高血圧症、血糖値の上昇、高トリグリセリド血症及び低レベルのHDLコレステロールが含まれる。
【0073】
本発明の第五の態様は、構造式Iの化合物を、脂質障害の治療に有効な量で患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類患者において、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される脂質障害を治療する方法に関する。
【0074】
本発明の第六の態様は、構造式Iの化合物を、アテローム性動脈硬化症の治療に有効な量で患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類患者において、アテローム性動脈硬化症を治療する方法に関する。
【0075】
本発明の第七の態様は、構造式Iの化合物を、癌の治療に有効な量で患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類患者において、癌を治療する方法に関する。
【0076】
本発明の更なる態様は、構造式Iの化合物を、疾患の治療に有効な量で患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類患者において、(1)高血糖症、(2)グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)膵炎、(15)腹部肥満症、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎臓障害、(19)神経障害、(20)脂肪肝疾患、(21)多嚢胞性卵巣症候群、(22)睡眠呼吸障害、(23)メタボリックシンドローム、及び(24)インシュリン抵抗性が要素である他の病状及び障害からなる群から選択される病状を治療する方法に関する。
【0077】
本発明の更なる態様は、構造式Iの化合物を、病状の発生を遅延するのに有効な量で患者に投与することを含む、そのような処置を必要とするほ乳類患者において、(1)高血糖症、(2)グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(119高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)膵炎、(15)腹部肥満症、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎臓障害、(19)神経障害、(20)脂肪肝疾患、(21)多嚢胞性卵巣症候群、(22)睡眠呼吸障害、(23)メタボリックシンドローム、及び(24)インシュリン抵抗性が要素である他の病状及び障害からなる群から選択される病状の発生を遅延する方法に関する。
【0078】
本発明の更なる態様は、構造式Iの化合物を、病状の発現の危険性を減少するのに有効な量で患者に投与することを含む、そのような処置を必要とするほ乳類患者において、(1)高血糖症、(2)グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満症、(5)脂質障害、(6)脂質異常症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその後遺症、(13)血管再狭窄、(14)膵炎、(15)腹部肥満症、(16)神経変性疾患、(17)網膜症、(18)腎臓障害、(19)神経障害、(20)脂肪肝疾患、(21)多嚢胞性卵巣症候群、(22)睡眠呼吸障害、(23)メタボリックシンドローム、及び(24)インシュリン抵抗性が要素である他の病状及び障害からなる群から選択される病状の発現の危険性を減少する方法に関する。
【0079】
ヒト等の霊長類に加え、本発明の方法によって、他の種々のほ乳類が治療され得る。例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、馬、犬、猫、モルモット、ラット、又は他のウシ、ヒツジ、馬、犬、猫、マウス等のげっし類を含む種々のほ乳類が限定されることなく治療され得る。しかし、鳥類(例えば、ニワトリ)等の他の種でも実施してもよい。
【0080】
更に、本発明は、本発明の化合物を薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることを含む、ヒト及び動物においてステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ酵素活性を阻害する医薬の製造方法に関する。特に、本発明は、ほ乳類において高血糖症、2型糖尿病、インシュリン抵抗性、肥満症及び脂質障害からなる群から選択される病状の治療に用いられる医薬の製造における構造式Iで表される化合物の使用であって、前記脂質障害は、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される。
【0081】
本発明の方法において治療される対象者は、一般に、ステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ酵素活性の阻害が望まれているほ乳類、好ましくはヒトの男性又は女性である。「治療に有効な量」なる用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家によって求められる組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘導する対象化合物の量を意味する。
【0082】
本明細書において用いられるように、「組成物」なる用語は、特定の成分を指定された量で含む生成物、及び指定された量における特定の成分の組み合わせから直接又は間接的にもたらされる任意の生成物を含むことが意図される。医薬組成物に関するこのような用語には、活性成分及び担体を構成する不活性成分を含む生成物、並びに任意の2種以上の成分の組み合わせ、複合体生成又は凝集、又は1種以上の成分の解離、又は1種以上の成分の他のタイプの反応又は相互作用によって直接又は間接的にもたらされる任意の生成物も含むことが意図される。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを混合することによって製造される任意の組成物を含む。「薬学的に許容される」については、製剤の他の成分と適合性があり、受容者に対して有害でない担体、希釈剤又は賦形剤を意味する。
【0083】
「化合物の投与」及び/又は「化合物を投与する」なる用語は、本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを治療を必要とする個体に与えることを意味すると理解すべきである。
【0084】
ステアロイル−補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼ(SCD)酵素活性の阻害剤としての本発明の化合物の有用性は、以下のミクロソーム及び全細胞に基づくアッセイにより証明することができる。
【0085】
I.SCD−誘導ラット肝臓ミクロソームアッセイ
SCD酵素に対する式Iの化合物の活性は、以下に示すように、SCD−1を誘導したラット肝臓ミクロソーム、及び既に公開されている手順(Joshi,et al.,J.Lipid Res.,18:32−36(1977))にいくらか修飾、を用いて、放射標識されたステアロイル−CoAのオレオイル−CoAへの変換によって決定される。ウィスターラットに、高炭水化物/低脂肪げっし動物用食餌(LabDiet#5803,Purina)を3日間摂食させた後、SCDが誘導された肝臓を、250mMショ糖、1mM EDTA、5mM DTT及び50mM Tris−HCl(pH7.5)中でホモジナイズした(1:10w/v)。組織及び細胞破片を除去するため20分間の遠心分離(18,000×g/4℃)の後、100,000×gの遠心分離(60分間)、及び得られた沈殿を、100mMリン酸ナトリウム、20%グリセロール及び2mM DTTに懸濁することによりミクロソームを調製した。2μLのDMSO中の試験化合物を、180μLのミクロソーム(通常、Tris−HClバッファー(100mM、pH7.5)、ATP(5mM)、補酵素A(0.1mM)、Triton X−100(0.5mM)及びNADH(2mM)中に、約100μg/mL)と室温で15分間インキュベートした。20μLの[H]−ステアロイル−CoA(最終濃度2μM、放射活性濃度1μCi/mL)を加えることにより反応を開始し、150μLの1N水酸化ナトリウムを加えることにより反応を停止した。室温で60分後、オレオイル−CoA及びステアロイル−CoAを加水分解した後、0.5mg/mLのステアリン酸及び0.5mg/mLのオレイン酸を補充したエタノール中の15%リン酸(v/v)を150μL加えることにより溶液を酸性化した。次いで、C−18逆相カラム及びパッカード フロー シンチレーション アナライザーを備えたHPLCにより、[H]−オレイン酸及び[H]のステアリン酸を定量した。また、反応混合物(80μL)を、塩化カルシウム/活性炭水性懸濁液(100μLの15%(w/v)活性炭及び20μLの2N CaCl)と混合した。得られた混合物を遠心分離し、放射活性脂肪酸を安定な沈殿として沈殿させた。9,10−[H]−ステアロイル−CoAのSCD−触媒不飽和化に由来するトリチウム水を上清の50μLをシンチレーションカウンターにより測定することにより定量した。
【0086】
II.全細胞に基づくSCD(デルタ−9)、デルタ−5及びデルタ−6デサチュラーゼアッセイ
ヒトHepG2細胞を、24ウェルプレート上で、10%の加熱不活性化したウシ胎児血清を補充したMEM培地(Gibcoカタログ番号11095−072)中、加湿したインキュベータ内で37℃、5%CO下で培養した。培地に溶解した試験化合物を、密集した細胞と37℃で15分間インキュベートした。[1−14C]−ステアリン酸を、各ウェルに最終濃度0.05μCi/mLになるように加え、SCDが触媒した[14C]−オレイン酸の形成を検出した。0.05μCi/mLの[1−14C]−エイコサトリエン酸又は[1−14C]−リノレン酸及び10μMの2−アミノ−N−(3−クロロフェニル)ベンズアミド(デルタ5−デサチュラーゼ阻害剤)を、それぞれ、デルタ−5及びデルタ−6デサチュラーゼ活性の指標とするために用いた。37℃で4時間インキュベートした後、培養培地を除去し、標識化された細胞を、室温でPBS(3×1mL)で洗浄した。標識化された細胞脂質を、400μLの2N水酸化ナトリウム及び50μLのL−α−ホスファチジルコリン(イソプロパノール中2mg/mL、Sigma #P−3556)を用いて65℃で1時間、窒素雰囲気下で加水分解した。リン酸(60μL)を用いて酸性化した後、300μLのアセトニトリルを用いて放射活性種を抽出し、C−18逆相カラム及びパッカード フロー シンチレーション アナライザーを備えたHPLCにより定量した。[14C]−ステアリン酸を超える[14C]−オレイン酸、[14C]−エイコサトリエン酸を超える[14C]−アラキドン酸、及び[14C]−リノレン酸を超える[14C]−エイコサテトラエン酸(8,11,14,17)のレベルを、それぞれ、SCD、デルタ−5及びデルタ−6デサチュラーゼの対応する活性指数として用いた。
【0087】
式IのSCD1阻害剤、特に実施例1〜12の阻害剤は、1μM未満、更に典型的には0.1μM未満の阻害定数IC50を示す。一般に、式Iの化合物、特に実施例1〜25の化合物についてのSCD1に対するデルタ−5又はデルタ−6デサチュラーゼについてのIC50の比は少なくとも約10又はそれ以上であり、好ましくは約100又はそれ以上である。
【0088】
本発明の化合物の生体内における効果
式Iの化合物の生体内における効果は、以下に示すように、動物において[1−14C]−ステアリン酸の[1−14C]オレイン酸への変換の後に測定された。式Iの化合物をマウスに投与し、1時間後に放射活性トレーサー[1−14C]−ステアリン酸を20μCi/kgで静脈注射した。化合物の投与3時間後、肝臓を集め、10N水酸化ナトリウム中で80℃で24時間加水分解し、全肝臓脂肪酸のプールを得た。抽出物のリン酸による酸性化の後、[1−14C]−ステアリン酸及び[1−14C]−オレイン酸の量を、C−18逆相カラム及びパッカード フロー シンチレーション アナライザーを備えるHPLCにより定量した。
【0089】
更に、本発明の化合物は、他の薬剤と組み合わせて、前述した疾患、障害及び病状の予防又は治療に有用である。
【0090】
本発明の化合物は、式Iの化合物又は他の薬剤が有用性を有する疾患又は病状の治療、予防、鎮静又は改善において1種以上の他の薬剤と併用して用いてもよく、薬剤を組み合わせることは、それぞれの薬剤を単独で使用する場合よりもより安全でより効果的である。このような他の薬剤は、それらが通常に用いられる投与経路及び量で、式Iの化合物と同時、又は連続的に投与してもよい。式Iの化合物を1種以上の他の化合物と同時に用いる場合、このような他の薬剤及び式Iの化合物を含む単一の投与形態における医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法には、式Iの化合物と1種以上の他の薬剤とを異なる重複するスケジュールで投与する療法も含まれてもよい。1種以上の他の活性成分を併用して用いる場合、本発明の化合物及び他の活性成分は、それぞれを単独で用いる場合よりも低い用量で用いてもよいことも意図される。したがって、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物に加え、1種以上の他の活性成分を含む組成物が含まれる。
【0091】
別々に投与されるか、同一の医薬組成物内で投与されるかのいずれかで、式Iの化合物と組み合わせて投与してもよい他の活性成分には、
(a)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤;
(b)(i)グリタゾン(トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン、バラグリタゾン等)のようなPPARγアゴニスト、並びに、KRP−297、ムラグリタザル、ナベグリタザル、ガリダ、TAK−559のようなPPARα/γ二重アゴニスト、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラート)のようなPPARαアゴニスト及びWO02/060388、WO02/08188、WO2004/019869、WO2004/020409、WO2004/020408、及びWO2004/066963に開示されたような選択的PPARγモジュレータ(SPPARγM’s)を含む他のPPARリガンド;(ii)メトホルミン及びフェノホルミンのようなビグアニド、及び(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、
を含むインシュリン増感剤;
(c)インシュリン又はインシュリン模倣薬;
(d)スルホニル尿素、及びトルブタミド、グリブリド、グリピジド、グリメピリドのようなその他のインシュリン分泌促進剤、及びナテグリニド及びレパグリニドのようなメグリチニド類;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース及びミグリトール等):
(f)WO98/04528、WO99/01423、WO00/39088及びWO00/69810に開示されたような、グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)GLP−1、GLP−1類似体又は模倣薬、及びエキセンジン−4(エクセナチド)、リラグルチド(NN−2211)、CJC−1131、LY−307161、及びWO00/42026及びWO00/59887に開示された化合物のようなGLP−1受容体アゴニスト;
(h)WO00/58360に開示されたようなGIP、GIP模倣薬、及びGIP受容体アゴニスト;
(i)PACAP、PACAP模倣薬、及びWO01/23420に開示されたようなPACAP受容体アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン、及びロスバスタチン及び他のスタチン類)、(ii)金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラート)のようなPPARαアゴニスト、(v)ナベグリタザル及びムラグリタザルのようなPPARα/γ二重アゴニスト、(vi)β−シトステロール及びエゼチミブのようなコレステロール吸収阻害剤、(vii)アバシミブのようなアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び(viii)プロブコールのような酸化防止剤、
のようなコレステロール低下薬;
(k)WO97/28149に開示されたようなPPARδアゴニスト;
(l)フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、神経ペプチドY又はYアンタゴニスト、CB1受容体インバースアゴニスト及びアンタゴニスト、βアドレナリン受容体アゴニスト、メラノコルチン−受容体アゴニスト、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト、ボンベシン受容体アゴニスト(ボンベシン受容体サブタイプ−3アゴニスト)、及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニスト、のような抗肥満化合物;
(m)回腸型胆汁酸トランスポーター阻害剤;
(n)アスピリン、非ストロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、グルココルチコイド、アズルフィジン、及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤のような炎症状態に用いられることを意図する薬剤;
(o)ACE阻害剤(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、タンドラプリル)、A−II受容体遮断薬(ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン及びエプロサルタン)、β遮断薬及びカルシウムチャンネル遮断薬のような抗高血圧剤;
(p)WO03/015774;WO04/076420;及びWO04/081001に開示されたようなグルコキナーゼ活性化剤(GKAs);
(q)米国特許第6,730,690号;WO03/104207;及びWO04/058741に開示されたような、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の阻害剤;
(r)トルセトラピブのようなコレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)の阻害剤;及び
(s)米国特許第6,054,587号;第6,110,903号;第6,284,748号;第6,399,782号;及び第6,489,476号に開示されたような、フルクトース1,6−ビスホスファターゼの阻害剤、
が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
構造式Iの化合物と併用してもよいジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤には、米国特許第6,699,871号;WO02/076450(2002年10月3日);WO03/004498(2003年1月16日);WO03/004496(2003年1月16日);EP1 258 476(2002年11月20日);WO02/083128(2002年10月24日);WO02/062764(2002年8月15日);WO03/000250(2003年1月3日);WO03/002530(2003年1月9日);WO03/002531(2003年1月9日);WO03/002553(2003年1月9日);WO03/002593(2003年1月9日);WO03/000180(2003年1月3日);WO03/082817(2003年10月9日);WO03/000181(2003年1月3日);WO04/007468(2004年1月22日);WO04/032836(2004年4月24日);WO04/037169(2004年5月6日);及びWO04/043940(2004年5月27日)に開示されたものが含まれる。特定のDPP−IV阻害剤化合物には、イソロイシンチアゾリジド(P32/98);NVP−DPP−728;LAF237;P93/01;及びサクサグリプチン(BMS477118)が含まれる。
【0093】
構造式Iの化合物と併用してもよい抗肥満化合物には、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、神経ペプチドY又はYアンタゴニスト、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト又はインバースアゴニスト、メラノコルチン−受容体アゴニスト、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト、ボンベシン受容体アゴニスト、及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニストが含まれる。構造式Iの化合物と併用してもよい抗肥満化合物の概説については、S.Chaki et al.,“Recent advances in feeding suppressing agents:potential therapeutic strategy for the treatment of obesity,”Expert Opin.Ther.Patents,11:1677−1692(2001);D.Spanswick and K.Lee,“Emerging antiobesity drugs,”Expert Opin.Emerging Drugs,8:217−237(2003);及びJ.A.Fernandez−Lopez,et al.,“Pharmacological Approaches for the Treatment of Obesity,”Drugs,62:915−944(2002)を参照されたい。
【0094】
構造式Iの化合物と併用してもよい神経ペプチドY5アンタゴニストには、米国特許第6,335,345号(2002年1月1日)及びWO01/14376(2001年3月1日)に開示されたもの;及びGW59884A;GW569180A;LY366377;及びCGP−71683Aとして同定された特定の化合物が含まれる。
【0095】
式Iの化合物と併用してもよい、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニストには、リモナバントのようなPCT国際公開WO03/007887;米国特許第5,624,941号に開示されたもの、SLV−319のようなPCT国際公開WO02/076949に開示されたもの、米国特許第6,028,084号;PCT国際公開WO98/41519;PCT国際公開WO00/10968;PCT国際公開WO99/02499;米国特許第5,532,237号;米国特許第5,292,736号;PCT国際公開WO03/086288;PCT国際公開WO03/087037;PCT国際公開WO04/048317;PCT国際公開WO03/007887;PCT国際公開WO03/063781;PCT国際公開WO03/075660;PCT国際公開WO03/077847;PCT国際公開WO03/082190;PCT国際公開WO03/082191;PCT国際公開WO03/087037;PCT国際公開WO03/086288;PCT国際公開WO04/012671;PCT国際公開WO04/029204;PCT国際公開WO04/040040;PCT国際公開WO01/64632;PCT国際公開WO01/64633;及びPCT国際公開WO01/64634に開示されたものが含まれる。
【0096】
本発明において有用なメラノコルチン−4受容体(MC4R)アゴニストには、米国特許第6,294,534号、米国特許第6,350,760号、第6,376,509号、第6,410,548号、第6,458,790号、米国特許第6,472,398号、米国特許第5837521号、米国特許第6699873号、これらは全体として本明細書に参考文献として組み入れられる;米国特許出願公開第2002/0004512号、第2002/0019523号、第2002/0137664号、第2003/0236262号、第2003/0225060号、第2003/0092732号、第2003/109556号、第2002/0177151号、第2002/187932号、第2003/0113263号、これらは全体として本明細書に参考文献として組み入れられる;及びWO99/64002、WO00/74679、WO02/15909、WO01/70708、WO01/70337、WO01/91752、WO02/068387、WO02/068388、WO02/067869、WO03/007949、WO2004/024720、WO2004/089307、WO2004/078716、WO2004/078717、WO2004/037797、WO01/58891、WO02/070511、WO02/079146、WO03/009847、WO03/057671、WO03/068738、WO03/092690、WO02/059095、WO02/059107、WO02/059108、WO02/059117、WO02/085925、WO03/004480、WO03/009850、WO03/013571、WO03/031410、WO03/053927、WO03/061660、WO03/066597、WO03/094918、WO03/099818、WO04/037797、WO04/048345、WO02/018327、WO02/080896、WO02/081443、WO03/066587、WO03/066597、WO03/099818、WO02/062766、WO03/000663、WO03/000666、WO03/003977、WO03/040107、WO03/040117、WO03/040118、WO03/013509、WO03/057671、WO02/079753、WO02//092566、WO03/−093234、WO03/095474、及びWO03/104761に開示されたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
併用療法の1つの特定の態様としては、構造式Iの化合物及びHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の治療に有効な量を患者に投与することを含む、治療を必要とするほ乳類患者における、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び脂質異常症からなる群から選択される病状の治療方法に関する。
【0098】
特に、この併用療法の態様は、治療を必要とするほ乳類患者における、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症及び脂質異常症からなる群から選択される病状の治療方法であって、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン及びロスバスタチンから選択される。
【0099】
本発明の他の態様においては、構造式Iの化合物及びHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の治療に有効な量を治療を必要とするほ乳類患者に投与することを含む、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDLレベル、高LDLレベル、高脂血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症、及びこのような病状の後遺症からなる群から選択される病状の発現の危険性を減少する方法が開示される。
【0100】
本発明の他の態様においては、構造式Iの化合物及びHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の治療に有効な量をヒト患者に投与することを含む、治療を必要なヒト患者における、アテローム性動脈硬化症の発現の遅延又は発現の危険性を減少する方法が開示される。
【0101】
特に、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン及びロスバスタチンから選択される、治療を必要とするヒト患者におけるアテローム性動脈硬化症の発現の遅延又は発現の危険性を減少する方法が開示される。
【0102】
本発明の他の態様においては、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンであり、更にコレステロール吸収阻害剤を投与することを含む、治療を必要とするヒト患者におけるアテローム性動脈硬化症の発現の遅延又は発現の危険性を減少する方法が開示される。
【0103】
特に、本発明の他の態様においては、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンであり、コレステロール吸収阻害剤がエゼチミブである、治療を必要とするヒト患者におけるアテローム性動脈硬化症の発現の遅延又は発現の危険性を減少する方法が開示される。
【0104】
本発明の他の態様においては、
(1)構造式Iの化合物;
(2)以下からなる群から選択される化合物:
(a)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤;
(b)(i)グリタゾン(トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン、バラグリタゾン等)のようなPPARγアゴニスト、並びに、KRP−297、ムラグリタザル、ナベグリタザル、ガリダ、TAK−559のようなPPARα/γ二重アゴニスト、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラート)のようなPPARαアゴニスト及びWO02/060388、WO02/08188、WO2004/019869、WO2004/020409、WO2004/020408、及びWO2004/066963に開示されたような選択的PPARγモジュレータ(SPPARγM’s)を含む他のPPARリガンド;(ii)メトホルミン及びフェノホルミンのようなビグアニド、及び(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、
を含むインシュリン増感剤;
(c)インシュリン又はインシュリン模倣薬;
(d)スルホニル尿素、及びトルブタミド、グリブリド、グリピジド、グリメピリドのようなその他のインシュリン分泌促進剤、及びナテグリニド及びレパグリニドのようなメグリチニド類;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース及びミグリトール等):
(f)WO98/04528、WO99/01423、WO00/39088及びWO00/69810に開示されたような、グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)GLP−1、GLP−1類似体又は模倣薬、及びエキセンジン−4(エクセナチド)、リラグルチド(NN−2211)、CJC−1131、LY−307161、及びWO00/42026及びWO00/59887に開示された化合物のようなGLP−1受容体アゴニスト;
(h)WO00/58360に開示されたようなGIP、GIP模倣薬、及びGIP受容体アゴニスト;
(i)PACAP、PACAP模倣薬、及びWO01/23420に開示されたようなPACAP受容体アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン、及びロスバスタチン及び他のスタチン類)、(ii)金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラート)のようなPPARαアゴニスト、(v)ナベグリタザル及びムラグリタザルのようなPPARα/γ二重アゴニスト、(vi)β−シトステロール及びエゼチミブのようなコレステロール吸収阻害剤、(vii)アバシミブのようなアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び(viii)プロブコールのような酸化防止剤、
のようなコレステロール低下薬;
(k)WO97/28149に開示されたようなPPARδアゴニスト;
(l)フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、神経ペプチドY又はYアンタゴニスト、CB1受容体インバースアゴニスト及びアンタゴニスト、β3アドレナリン受容体アゴニスト、メラノコルチン−受容体アゴニスト、特にメラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト、ボンベシン受容体アゴニスト(ボンベシン受容体サブタイプ−3アゴニスト)、及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニスト、のような抗肥満化合物;
(m)回腸型胆汁酸トランスポーター阻害剤;
(n)アスピリン、非ストロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、グルココルチコイド、アズルフィジン、及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤のような炎症状態に用いられることを意図する薬剤;
(o)ACE阻害剤(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、タンドラプリル)、A−II受容体遮断薬(ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン及びエプロサルタン)、β遮断薬及びカルシウムチャンネル遮断薬、のような抗高血圧剤;
(p)WO03/015774;WO04/076420;及びWO04/081001に開示されたようなグルコキナーゼ活性化剤(GKAs);
(q)米国特許第6,730,690号;WO03/104207;及びWO04/058741に開示されたような、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の阻害剤;
(r)トルセトラピブのようなコレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)の阻害剤;及び
(s)米国特許第6,054,587号;第6,110,903号;第6,284,748号;第6,399,782号;及び第6,489,476号に開示されたような、フルクトース1,6−ビスホスファターゼの阻害剤;及び
(3)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物が開示される。
【0105】
本発明の化合物が1種以上の他の薬剤と同時に用いられる場合、本発明の化合物に加えてこのような他の薬剤を含む医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加え、1種以上の他の活性成分も含むものが含まれる。
【0106】
第二の活性成分に対する本発明の化合物の重量比は変化してもよく、それぞれの成分の有効投与量に依存する。一般に、それぞれの有効投与量が用いられる。従って、例えば本発明の化合物を他の薬剤と併用する場合、他の薬剤に対する本発明の化合物の重量比は約1000:1〜約1:1000であり、好ましくは約200:1〜約1:200である。本発明の化合物及び他の活性成分の併用は、一般に前記範囲内であるが、各ケースにおいて、それぞれの活性成分の有効投与量を用いるべきである。
【0107】
このような併用において本発明の化合物及び他の活性成分は、別個に、又は一緒に投与してもよい。更に、一成分の投与は、他の薬剤の投与の前、同時又は後であってもよい。
【0108】
本発明の化合物は、経口、非経口的(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、嚢内注射又は注入、皮下注射又は埋め込み)によって、吸入スプレー、鼻、膣、直腸、舌下、又は局所的経路によって投与してもよく、単独で、又は通常の無毒の薬学的に許容される担体、アジュバント及びそれぞれの投与経路に適した賦形剤を含む、適切な投与単位製剤中に一緒に製剤化されてもよい。マウス、ラット、馬、牛、羊、犬、猫、猿のような温血動物の治療に加え、本発明の化合物はヒトにおける利用に有効である。
【0109】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は、投与単位形態中に好都合に存在してもよく、薬学の分野において周知の任意の方法によって製造してもよい。全ての方法は、活性成分を、1種以上の補助成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、医薬組成物は、活性成分を、液体担体又は微粉化した固体担体又はその両方に均一及び均質に会合させ、必要であれば、生成物を所望の製剤に形成することによって製造される。医薬組成物においては、活性の目的化合物は、疾患の進行又は病状に対して所望の効果をもたらすのに十分な量が含まれる。本明細書で用いられるように、「組成物」なる用語は、特定の成分を指定された量で含む生成物、及び特定成分を指定された量で組み合わせて、直接的又は間接的に得られる任意の生成物を含むことを意味する。
【0110】
活性成分を含む医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、薬用キャンディー、水性又は油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、エマルジョン、硬又は軟カプセル、又はシロップ又はエリキシル剤のような経口的使用に適した形態であってもよい。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物の製造のための技術分野で公知の任意の方法によって製造してもよく、このような組成物は、薬学的優雅さ及び味のよい製剤を提供するために、甘味剤、着香料、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種以上の成分を含んでもよい。錠剤は、錠剤の製造に適した、無毒の薬学的に許容される賦形剤と混合された活性成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;トウモロコシデンプン又はアルギン酸のような造粒剤及び崩壊剤;デンプン、ゼラチン又はアラビアゴムのような結合剤、及びステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクのような滑沢剤であり得る。錠剤はコーティングされていないか、又は消化管内における崩壊及び吸収を遅延し、その結果、長期間にわたって持続した活性をもたらすために公知の技術によってコーティングされてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質を用いてもよい。それらはまた、制御放出のための浸透圧性治療用錠剤を形成するための米国特許第4,256,108号;第4,166,452号;及び第4,265,874号に開示された技術によってコーティングされてもよい。
【0111】
経口用途のための製剤は、活性成分が、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンのような不活性固体希釈剤と混合される硬ゼラチンカプセル、又は活性成分が、水、又はピーナッツ油、流動パラフィン又はオリーブ油のような油性媒体と混合される軟ゼラチンカプセルとして存在してもよい。
【0112】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性成分を含む。このような賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムのような懸濁剤であり;分散剤又は湿潤剤は、レシチンのような天然のホスファチド、又はステアリン酸ポリオキシエチレンのようなアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、又はヘプタデカエチレンオキシセタノールのようなエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートのようなヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、又はポリエチレンソルビタンモノオレートのような、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物であってもよい。また、水性懸濁液は、エチル又はn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸のような1種以上の保存剤、1種以上の着色剤、1種以上の着香料、及びショ糖又はサッカリンのような1種以上の甘味剤を含んでもよい。
【0113】
油性懸濁液は、活性成分を、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油又はやし油のような植物性油脂、又は流動パラフィンのような鉱油に懸濁することによって製剤化してもよい。油性懸濁液は、ミツロウ、固形パラフィン又はセチルアルコールのような増粘剤を含んでもよい。味のよい経口製剤を得るために、前述したような甘味剤及び着香料を加えてもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸のような酸化防止剤を添加することにより保存してもよい。
【0114】
水を加えることによる水性懸濁液の製造に適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種以上の保存剤と混合された活性成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、既に前記に例示されている。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、着香料及び着色剤を存在させてもよい。
【0115】
本発明の医薬組成物は、水中油型のエマルジョンの形態であってもよい。油相は、オリーブ油、ラッカセイ油のような植物性油脂、又は流動パラフィンのような鉱油、又はそれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤は、アラビアゴム又はトラガカントゴムのような天然のゴム、大豆、レシチンのような天然のホスファチド、モノオレイン酸ソルビタンのような脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来するエステル又は部分エステル、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレートのような前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物であってもよい。エマルジョンは、甘味剤及び着香料を含んでもよい。
【0116】
シロップ及びエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はショ糖のような甘味剤を用いて製剤化され得る。このような製剤は、粘滑剤、保存剤並びに着香料及び着色剤を含んでもよい。
【0117】
医薬組成物は、無菌の注射用の水性又は油性懸濁液であってもよい。この懸濁液は、前述した適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、当該技術分野において公知の方法に従って製剤化してもよい。無菌の注射用製剤は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような無毒の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌の注射用溶液又は懸濁液であってもよい。用いてもよい許容される担体及び溶媒は、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液である。更に、無菌の固定油が慣用的に溶媒又は懸濁媒体として用いられる。この目的のため、合成のモノ−又はジグリセリドを含む任意の無刺激性の固定油を用いてもよい。更に、オレイン酸のような脂肪酸は、注射用製剤における用途がある。
【0118】
本発明の化合物は、薬剤の直腸投与のための座薬の形態としても投与してもよい。これらの組成物は、薬剤を、常温では固体であるが直腸温度で液体であり、その結果直腸内で薬剤を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって製造され得る。このような材料は、カカオ脂及びポリエチレングリコールである。
【0119】
局所用途のために、本発明の化合物を含むクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液等が用いられる。(この用途の目的のため、局所適用には、マウスウォッシュ及びうがい薬が含まれるべきである。)
【0120】
本発明の医薬組成物及び方法は、更に、本明細書に示された、前記病理的症状の治療に通常に用いられる他の治療的に活性な化合物を含んでもよい。
【0121】
ステアリル−CoAデルタ−9デサチュラーゼ酵素活性の阻害を必要とする病状の治療又は予防において、適切な投与レベルは、1日あたり患者の体重1kgあたり約0.01〜500mg、単一又は複数の投与において投与してもよい。好ましくは、投与レベルは、1日あたり約0.1〜約250mg/kgであり、更に好ましくは1日あたり約0.5〜約100mg/kgである。適切な投与レベルは、1日あたり約0.01〜250mg/kg、1日あたり約0.05〜100mg/kg、又は1日あたり約0.1〜50mg/kgであってもよい。投与のこの範囲内で、投与量は、1日あたり0.05〜0.5、0.5〜5又は5〜50mg/kgであってもよい。経口投与において、治療される患者への投与量を症状によって調節するために、組成物は、好ましくは、1.0〜1000mgの活性成分、特には1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0及び1000.0mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供される。化合物は、1日に1〜4回の投与レジメで、好ましくは1日に1又は2回の投与レジメで投与してもよい。
【0122】
糖尿病及び/又は高血糖症又は高トリグリセリド血症又は本発明の化合物が意図する他の疾患を治療又は予防する場合、一般的に満足な結果は、本発明の化合物を、1日に約0.1mg〜約100mg/動物の体重1kg、好ましくは1日1回投与又は1日に2〜6回に分けて、又は徐放形態で投与する場合に得られる。最も大きなほ乳類について、1日の全投与量は約1.0mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約50mgである。70kgの成人のヒトの場合、1日の全投与量は一般に約7mg〜約350mgである。この投与レジメは、最適な治療反応をもたらすように調整してもよい。
【0123】
しかし、任意の特定の患者についての特定の投与レベル及び投与頻度は変化してもよく、用いられる特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全体的な健康状態、性、食事、投与の様式及び時間、排泄速度、薬剤の併用、特定の病状の重症度、及び治療中の宿主を含む種々の要因に依存し得ることが理解されるであろう。
【0124】
略語のリスト:
Alk=アルキル
APCI=大気圧化学イオン化法
Ar=アリール
Boc=tert−ブトキシカルボニル
br=ブロード
d=ダブレット
DBU=1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DAST=ジエチルアミノサルファトリフルオライド
Deoxofluor(登録商標)=ビス(2−メトキシエチル)アミノサルファトリフルオライド
DIBAL−H=水素化ジイソブチルアルミニウム
DMSO=ジメチルスルホキシド
ESI=エレクトロスプレイイオン化
EtOAc=酢酸エチル
m=マルチプレット
m−CPBA=3−クロロペルオキシ安息香酸
MeOH=メチルアルコール
MS=質量スペクトル
NaHMDS=ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド
NMR=核磁気共鳴分析法
PG=保護基
rt=室温
s=シングレット
t=トリプレット
THF=テトラヒドロフラン
TsOH=トルエン−4−スルホン酸
【0125】
本発明の化合物の製造
構造式Iの化合物は、適切な原料を用いて、以下のスキーム及び実施例の方法に従って製造され得、以下の具体的な実施例によって更に例示される。しかし、実施例に説明される化合物は、本発明として考慮される唯一の種を構成するものとして解釈されない。実施例は、更に本発明の化合物の製造の詳細を説明する。当業者は、これらの化合物を製造するために、以下の調製方法の条件及び工程の公知の変形を用いてもよいことを容易に理解するであろう。特に示さない限り、全ての温度は摂氏である。質量スペクトル(MS)は、エレクトロスプレイイオン−質量分析(ESMS)により測定した。
【0126】
方法A:
適切に置換されたハロゲン化ヘテロアリール1を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール、2−メトキシエタノール及びそれらの水性混合物のような溶媒中、およそ室温〜およそ還流温度の範囲の温度で、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、トリエチルアミン又は炭酸アルカリ金属(K,Na,Cs)のような塩基の存在下に、適切に置換された環状アミン2と反応させる。抽出操作、及びフラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製又は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液若しくは水を加えることによる生成物の沈殿は、所望の縮合生成物3を与える。
【0127】
【化7】

【0128】
中間体の製造
中間体1
【0129】
【化8】

【0130】
4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン
0℃で、Boc−4−ヒドロキシ−1−ピペリジン(25g、124ミリモル)、2−ヒドロキシ−ベンゾトリフルオライド(22g、136ミリモル)及びトリフェニルホスフィン(39g、149ミリモル)のTHF中の溶液に、ジエチルアゾジカルボキシレート(23.5mL,149ミリモル)を滴下して加えた。次いで、混合物を室温まで加温し、14時間撹拌した。混合物を濃縮し、エチルエーテルで希釈し、1N NaOH、水で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。混合物を濃縮し、EtO/ヘキサン(35:65)で希釈した。沈殿したホスフィンオキシドを濾過し、そしてろ液を濃縮した。残渣を、溶出液としてEtO/ヘキサン(35:65)を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、1−ピペリジンカルボン酸,4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1,1−ジメチルエチルエステルを固体として得た。トリフルオロ酢酸(26.3mL,342ミリモル)を、1−ピペリジンカルボン酸,4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−1,1−ジメチルエチルエステル(29.5g,85ミリモル)のCHCl(171mL)中の溶液に加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。残渣をEtOAc(200mL)で希釈し、2N NaOH(3×100mL)、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、そして濃縮し、標題の化合物を油状物質として得た。
【0131】
中間体2
【0132】
【化9】

【0133】
4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン
工程1:tert−ブチル4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−カルボキシレート
tert−ブチル4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート(50.6g,251ミリモル)及びジ−tert−ブチルアゾジカルボキシレート(71g,308ミリモル)のTHF(350mL)中の溶液に、2−ブロモ−5−フルオロフェノール(36mL,324ミリモル)を加えた。混合物を−78℃に冷却し、そしてトリフェニルホスフィン(81.5g,311ミリモル)のジクロロメタン(130mL)中の溶液をカニューレを通して加えた。室温で18時間後、真空下で溶媒を除去し、標題の化合物を油状物質として得、これは、更に精製することなく工程2において用いた。
【0134】
工程2:4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン
工程1からのtert−ブチル4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−カルボキシレートをエタノール(200mL)に溶解し、−78℃に冷却し、ジオキサン(450mL)中の4N HClで処理した。反応物を加温し、室温で一晩撹拌した。減圧下に溶媒を除去し、そして混合物を、1N NaOH(750mL)及びエーテル−ヘキサンの1:1混合物で分配した。数回の抽出後、有機層を一緒にし、濃縮して乾燥させた。粗材料をヘプタン(1L)に溶解し、そして白色の沈殿を濾過して捨てた。ヘプタン層をエーテルで希釈し、ジオキサン(100mL)中の4N HClで処理した。得られた沈殿を濾過により集め、エーテル−ヘキサンの1:1混合物で3回洗浄した。塩を1N NaOH(500mL)及びエーテル−ヘキサンの1:1混合物で再度分配した。数回の抽出後、有機層を一緒にし、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。粗材料をヘプタン(2L)に溶解し、1N NaOH(250mL)で4回洗浄した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、標題の化合物を無色の油状物質として得た。
【0135】
以下の実施例は本発明を説明するために提供され、いずれの方法においても本発明を限定するものとして解釈されない。
【0136】
実施例1
【0137】
【化10】

【0138】
6−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−9H−プリン
6−ブロモプリン(100mg,0.5ミリモル)、4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン(0.13mL,0.55ミリモル)及びDBU(0.23mL,1.5ミリモル)の混合物をDMF(0.5mL)中、120℃で16時間加熱した。混合物を水(10mL)で希釈し、沈殿を濾過し、水、次いでエーテルで洗浄した。生成物を高真空下に乾燥し、標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ8.24(s,1H),8.08(s,1H),7.67 7.61(m,2H),7.39(d,1H),7.12(t,1H),5.04 5.00(m,1H),4.62(br s,2H),4.47(br s,2H)2.18 2.12(m,2H),1.92(dtd,2H)。MS(+ESI)m/z364(MH)。
【0139】
実施例2
【0140】
【化11】

【0141】
6−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−9H−プリン−2−アミン
2−アミノ−6−ブロモプリン(150mg,0.7ミリモル)、4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン(0.21mL,0.84ミリモル)及びNEt(0.15mL,1.1ミリモル)の混合物を2−メトキシエタノール/水(4:1,1.4mL)中、130℃で16時間加熱した。揮発性成分を1/3容量まで蒸発させ、飽和NaHCO水溶液(2mL)で希釈し、そしてEtOAc(2mL)で3回抽出した。一緒にした有機層をNaSOで乾燥した。溶媒の蒸発、それに続くCHCl/ヘキサンからの再結晶により、標題の化合物を白色固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ11.61(s,1H),7.71(s,1H),7.67 7.60(m,2H),7.38(d,1H),7.11(t,1H),5.29(s,2H),5.01 4.96(m,1H),4.51(s,2H),4.26(s,2H),2.14 2.09(m,2H),1.90 1.82(m,2H)。MS(+ESI)m/z379(MH)。
【0142】
実施例3
【0143】
【化12】

【0144】
2−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−9H−プリン
2−クロロプリン(100mg,0.7ミリモル)、4−[2−(トリフルオロメチル)−フェノキシ]−ピペリジン(0.19mL,0.78ミリモル)及びトリエチルアミン(0.13mL,1ミリモル)の混合物を2−メトキシエタノール/水(4:1,1.3mL)中、130℃で16時間加熱した。揮発性成分を1/3容量まで蒸発させ、飽和NaHCO水溶液(2mL)で希釈し、そしてEtOAc(2mL)で3回抽出した。一緒にした有機層をNaSOで乾燥した。溶媒の蒸発、それに続くコンビフラッシュ(SiO、2〜5%MeOH/EtOAcの勾配溶出)により精製し、標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ11.79(s,1H),8.72(s,1H),8.09(s,1H),7.66 7.58(m,2H),7.38 7.30(m,1H),7.09(t,1H),5.00 4.92(m,1H),4.17 4.11(m,2H),3.93 3.86(m,2H),2.11 2.03(m,2H),1.90 1.80(m,2H)。MS(+ESI)m/z364(MH)。
【0145】
実施例4
【0146】
【化13】

【0147】
2−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン
2−ブロモヒポキサンチン(100mg,0.5ミリモル)及び4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−ピペリジン(0.12mL,0.51ミリモル)の混合物をエタノール/水(3:1,1.5mL)中、90℃で6時間加熱した。揮発性成分を1/3容量まで蒸発させ、形成した固体を濾過し、水、次いでエーテルで洗浄した。固体をアセトン(4mL)に再溶解し、そして濾過した。ろ液を蒸発させ、標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ7.77(s,1H),7.67 7.61(m,2H),7.37(d,1H),7.12(t,1H),5.01 4.99(m,1H),3.90 3.81(m,4H),2.19 2.13(m,2H),2.11(s,1H),1.95(dd,2H)。MS(+ESI)m/z380(MH)。
【0148】
実施例5
【0149】
【化14】

【0150】
N−メチル−2−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−9H−プリン−6−アミン
2−クロロ−6(メチルアミノ)プリン(150mg,0.8ミリモル)、4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン(0.24mL,0.98ミリモル)及びトリエチルアミン(0.17mL,1.2ミリモル)の混合物を2−メトキシエタノール/水(4:1,1.6mL)中、130℃で16時間加熱した。揮発性成分を1/3容量まで蒸発させ、飽和NaHCO水溶液(2mL)で希釈した。形成した固体を濾過し、水、次いでエーテルで洗浄した。生成物を高真空下で乾燥し、標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ13.43(s,1H),7.66 7.59(m,3H),7.36(d,1H),7.09(t,1H),6.42(s,1H),4.91(t,1H),4.15(s,2H),3.78(s,2H),3.10(s,3H),2.06(d,2H),1.80(s,2H)。MS(+ESI)m/z392.9(MH)。
【0151】
実施例6
【0152】
【化15】

【0153】
(2−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−9H−プリン−8−イル)メタノール
工程1:2−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}ピリミジン−4,5−ジアミン
2−クロロピリミジン−4,5−ジアミン(200mg,1.4ミリモル)、4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン(0.4mL,1.6ミリモル)及びトリエチルアミン(0.58mL,4.1ミリモル)の混合物を2−メトキシエタノール/水(4:1,2.8mL)中、130℃で16時間加熱した。溶媒を除去し、水(5mL)で希釈し、そしてEtOAc(5mL)で3回抽出した。一緒にした有機層をNaSOで乾燥した。溶媒の除去、それに続くコンビフラッシュ(SiO,5%MeOH/EtOAc)により精製し、標題の化合物を固体として得た。MS(+ESI)m/z354(MH).
【0154】
工程2:2−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}−9H−プリン8−イル)メタノール
2−{4−[2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピペリジン−1−イル}ピリミジン−4,5−ジアミン(100mg,0.28ミリモル)の混合物にEtOH(1.4mL)中、金属ナトリウム(26mg,1.1ミリモル)を加えた。混合物を室温で5分間撹拌した。グリコール酸エチル(0.1mL,1.1ミリモル)を加え、混合物を90℃に加熱した。4時間後、混合物を室温まで冷却し、金属ナトリウム(26mg,1.1ミリモル)及びグリコール酸エチル(0.1mL,1.1ミリモル)を再度加え、加熱を16時間続けた。溶媒を除去し、残渣を水(2mL)で希釈し、EtOAc(2mL)で3回抽出し、そしてNaSOで乾燥した。溶媒の除去、それに続くエーテルを用いた粉砕により、標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ8.57(s,1H),7.66 7.60(m,2H),7.38(d,1H),7.11(t,1H),4.96 4.92(m,1H),4.76(s,2H),4.12(s,2H),3.88(s,2H),2.10 2.06(m,2H),1.88 1.80(m,2H)。MS(+ESI)m/z394(MH)。
【0155】
実施例7
【0156】
【化16】

【0157】
2−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−9−H−プリン
実施例3について記載された方法に従い、4−(2−ブロモフェノキシ)ピペリジン及び2−クロロプリンから標題の化合物を製造した。H NMR(500MHz,DMSO d):δ8.71(s,1H),8.14(s,1H),7.56 7.50(m,1H),7.24(dd,1H),6.78(td,1H),4.85(s,1H),4.06 4.00(m,2H),3.80 3.73(m,2H),1.98 1.92(m,2H),1.70 1.65(m,2H)。MS(+ESI)m/z392,394(MH)。
【0158】
実施例8
【0159】
【化17】

【0160】
5−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]−ピリミジン
工程1:2−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]ピリミジン−4,5−ジアミン
2−クロロピリミジン−4,5−ジアミン(3g,20.75ミリモル)、4−(2−ブロモフェノキシ)ピペリジン(6.83g,24.90ミリモル)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(7.25ml,41.5ミリモル)の混合物を2−メトキシエタノール(33.2mL)及び水(8.30mL)中、130℃で6日間加熱した。溶媒を除去し、残渣を水(25mL)で希釈し、そしてEtOAc(25mL)で3回抽出した。一緒にした有機画分をNaSOで乾燥し、溶媒を蒸発させた。コンビフラッシュ(SiO−120g,25分間かけて5%MeOH/EtOAcの勾配溶出)による精製により、標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ7.57(dd,1H),7.53(s,1H),7.04(dd,1H),6.70(td,1H),5.55(s,2H),4.78 4.73(m,1H),4.05 3.97(m,2H),3.58 3.51(m,2H),3.42(s,2H),2.00 1.92(m,2H),1.74 1.66(m,2H)。MS(+ESI)m/z382,384(MH)。
【0161】
工程2:5−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−d]−ピリミジン
2−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]ピリミジン−4,5−ジアミン(245mg,0.641ミリモル)の混合物にジオキサン(1.3mL)中、亜硝酸tert−ブチル(0.1mL,0.769ミリモル)を加えた。混合物を70℃で8時間加熱した。溶媒を除去し、CHCl/ヘキサンから固体を再結晶し、濾過し、ヘキサンで洗浄して標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ9.15(s,1H),7.59(dd,1H),7.09(dd,1H),6.73(td,1H),4.94 4.89(m,1H),4.21 4.01(m,4H),2.11 2.05(m,2H),1.87(dtd,2H)。MS(+ESI)m/z393,395(MH)。
【0162】
実施例9
【0163】
【化18】

【0164】
6−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]9H−プリン
6−ブロモ−9H−プリン(900mg,4.52ミリモル)、4−(2−ブロモフェノキシ)ピペリジン(1488mg,5.43ミリモル)及びトリエチルアミン(0.946mL,6.78ミリモル)の混合物を2−メトキシエタノール(7.236mL)及び水(1.809mL)中、130℃で加熱した。0.5時間後、混合物を1N HCl(10mL)で希釈し、濾過した。生成物を水、次いでエーテルで洗浄し、標題の化合物を白色固体として得た。H NMR(500MHz,DMSO d):δ13.04(s,1H),8.21(s,1H),8.12(s,1H),7.61(dd,1H),7.25(dd,1H),6.79(td,1H),4.88(t,1H),4.57 4.37(m,2H),4.11 4.32(m,2H),2.04 1.97(m,2H),1.75 1.69(m,2H)。MS(+ESI)m/z392,394(MH)。
【0165】
実施例10
【0166】
【化19】

【0167】
5−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル][1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン
5−クロロ[1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン(93mg,0.542ミリモル)[Chem.Pharm.Bull.1958;6,675−679に開示されたようにして製造]、4−(2−ブロモフェノキシ)ピペリジン(178mg,0.650ミリモル)及びトリエチルアミン(0.15mL,1.084ミリモル)の混合物をEtOH(0.11mL)中、80℃に加熱した。1時間後、溶媒を除去し、1N HCl(2mL)で希釈した。混合物をEtOAc(2mL)で3回抽出し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、コンビフラッシュ(SiO−12g,25分間かけて20〜50%EtOAc/ヘキサンの勾配溶出)による精製により、標題の化合物を泡状物質として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ8.94(s,1H),8.87(s,1H),7.57(dd,1H),7.07(dd,1H),6.71(td,1H),4.91 4.86(m,1H),4.17 4.10(m,2H),4.04 3.95(m,2H),2.10 2.05(m,2H),1.86(dtd,2H)。MS(+ESI)m/z409,411(MH)。
【0168】
実施例11
【0169】
【化20】

【0170】
5−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル][1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン−2−アミン
工程1:2−クロロ[1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン−2−アミン
2−クロロ−5−ニトロピリミジン−4−イルチオシアネート(1.1g,5.08ミリモル)[Chem.Pharm.Bull.1958;6,334−338に開示されたようにして製造]のAcOH(10.16mL)中の溶液に鉄(0.851g,15.24ミリモル)を加え、混合物を60℃に加熱した。一時間後、混合物を濾過し、溶媒を蒸発させた。残渣を水(10mL)で希釈し、EtOAc(25mL)で3回抽出した。一緒にした有機画分を1N NaOH(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、固体をEtOで粉砕し、標題の化合物を得た。MS(+ESI)m/z187(MH).
【0171】
工程2:5−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル][1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン−2−アミン
2−クロロ[1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン−2−アミン(300mg,1.608ミリモル)、4−(2−ブロモフェノキシ)ピペリジン(529mg,1.929ミリモル)及びトリエチルアミン(336μL,2.411ミリモル)の混合物をDMF(3.2mL)中、120℃で3時間加熱した。混合物を水(5mL)で希釈し、EtOAc(3mL)で3回抽出した。一緒にした有機画分を水(3mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、CHCl/ヘキサンから生成物を再結晶し、濾過し、ヘキサンで洗浄して標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ8.27(s,1H),7.58(dd,1H),7.08(dd,1H),6.79(d,1H),6.72(td,1H),4.88 4.84(m,1H),4.10 4.03(m,2H),3.82(ddd,2H),2.06 2.04(m,2H),1.85 1.77(m,2H)。MS(+ESI)m/z424,426(MH)。
【0172】
実施例12
【0173】
【化21】

【0174】
2−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−9H−プリン−8−チオール
工程1:2−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]ピリミジン−4,5−ジアミン
2−クロロピリミジン−4,5−ジアミン(3g,20.75ミリモル)、4−(2−ブロモフェノキシ)ピペリジン(6.83g,24.90ミリモル)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)(7.25mL,41.5ミリモル)の混合物を2−メトキシエタノール(33.2mL)及び水(8.30mL)中、130℃で6日間加熱した。溶媒を蒸発させ、残渣を水(25mL)で希釈し、EtOAc(25mL)で3回抽出した。一緒にした有機画分をNaSOで乾燥し、溶媒を蒸発させた。コンビフラッシュ(SiO 120g,25分間の5% MeOH/EtOAcの勾配溶出)による精製により、標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ7.57(dd,1H),7.53(s,1H),7.04(dd,1H),6.70(td,1H),5.55(s,2H),4.78 4.73(m,1H),4.05 3.97(m,2H),3.58 3.51(m,2H),3.42(s,2H),2.00 1.92(m,2H),1.74 1.66(m,2H)。MS(+ESI)m/z382,384(MH)。
【0175】
工程2:2−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]−9H−プリン−8−チオール
2−[4−(2−ブロモ−5−フルオロフェノキシ)ピペリジン−1−イル]ピリミジン−4,5−ジアミン(300mg,0.785ミリモル)のEtOH(3.9mL)中の溶液に、二硫化炭素(0.056mL,0.942ミリモル)、次いで1N 水酸化ナトリウム(1.6mL,1.57ミリモル)を加えた。混合物を90℃で2時間加熱した。溶媒を蒸発させ、残渣を5%クエン酸(5mL)及びEtO/ヘキサン1:1(5mL)で希釈した。混合物を濾過し、水、次いでEtO/ヘキサン1:1で洗浄した。高真空下で固体を乾燥し、標題の化合物を固体として得た。H NMR(500MHz,アセトンd):δ8.11(s,1H),7.59(dd,1H),7.07(dd,1H),6.72(d,1H),4.87(d,1H),4.08 4.03(m,2H),3.86 3.80(m,2H),2.03(d,2H),1.83 1.78(m,2H)。MS(+ESI)m/z424,426(MH)。
【0176】
医薬製剤の実施例
本発明の化合物の経口用組成物の特定の実施態様として、任意の実施例の化合物50mgを、十分に微粉の乳糖を用いて製剤化し、合計量580〜590mgが満たされたサイズOの硬ゼラチンカプセルを得る。
【0177】
本発明を、特定の実施態様を参照して開示及び説明したが、当業者は、種々の変形、修飾及び置換を本発明の精神及び範囲を逸脱せずになし得ることを理解するであろう。例えば、前記に記載の好ましい投与量以外の有効な投与量を、特定の病状について治療されるヒトの反応性における変化の結果として適用してもよい。同様に、観察される薬理学的反応は、選択される特定の活性化合物、薬学的担体が存在するかどうか、製剤のタイプ及び用いられる投与方法により、及び依存して変化してもよく、結果におけるこのような予想される変形又は相違は、本発明の目的及び実施に従って意図される。したがって、本発明は、以下の請求の範囲によってのみ限定され、このような請求の範囲は、妥当な範囲で広く解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化1】

(式中、各nは独立して0、1又は2であり;
qは0又は1であり;
rは0又は1であり;
pは0、1又は2であり;
X−Yは、N−C(O)、N−S(O)、N−CR、CH−O、CH−S(O)、CH−NR13、又はCR17−CRであり;
Arは、フェニル、ナフチル、又は置換されていないか若しくは1〜5個のR置換基で置換されているヘテロアリールであり;
HetArは、
【化2】

(式中、ZはO、S又はN−R18であり;
WはN又はC−R15である)
からなる群から選択される縮合ヘテロ芳香環であり;
及びRは、各々独立して水素、ハロゲン又はC1−3アルキルであり、ここで、アルキルは置換されていないか、若しくはフッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロシクロプロピル環システムを形成してもよく;
各Rは、独立して、
1−6アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ナフチル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ヘテロシクリル、
(CH3−7シクロアルキル、
ハロゲン、
OR
(CHN(R
(CHC≡N、
(CHCO
NO
(CHNRSO
(CHSON(R
(CHS(O)
(CHNRC(O)N(R
(CHC(O)N(R
(CHNRC(O)R
(CHNRCO
O(CHC(O)N(R
CF
CHCF
OCF、及び
OCHCFからなる群から選択され;
ここで、フェニル、ナフチル、ヘテロアリール、シクロアルキル及びヘテロシクリルは置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル、トリフルオロメチル及びC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;ここで、R中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はフッ素、ヒドロキシ及びC1−4アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換され;又は2個の置換基は、同じメチレン(CH)基上にある場合、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロプロピル基を形成し;
各Rは、独立して、
水素、
1−6アルキル、
(CH−フェニル、
(CH−ヘテロアリール、
(CH−ナフチル、及び
(CH3−7シクロアルキルからなる群から選択され;
ここで、アルキル、フェニル、ヘテロアリール及びシクロアルキルは置換されていないか、若しくはハロゲン、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;又は2個のR基は、それらが結合する原子と一緒になって、O、S、NH及びNC1−4アルキルから選択される追加のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜8員環の単環又は二環式環システムを形成し;
、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、各々独立して、水素、フッ素又はC1−3アルキルであり、ここで、アルキルは置換されていないか、又はフッ素及びヒドロキシから独立して選択される1〜3個の置換基で置換され;
各R13は、独立して水素又はC1−6アルキルであり;
14は、独立して、アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、アリールアミノ、アリール−C1−2アルキルアミノ、C1−4アルキルカルボニルアミノ、アリール−C1−2アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、C1−4アルキルアミノカルボニルアミノ、C1−4アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、アリール−C1−2アルキルスルホニルアミノ、C1−4アルキルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ及びアリール−C1−2アルキルオキシカルボニルアミノからなる群から選択され;
15及びR16は、各々独立して、水素であるか、又はアミノ、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルカルボニルオキシ、フェニル、ヘテロアリール若しくは1〜5個のハロゲンで置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
17は、水素、C1−3アルキル、フッ素又はヒドロキシであり;そして
18は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルキルカルボニル、アリール−C1−2アルキルカルボニル、アリールカルボニル、C1−4アルキルアミノカルボニル、C1−4アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリール−C1−2アルキルスルホニル、C1−4アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリール−C1−2アルキルオキシカルボニル、β−D−リボフラノシル、α−D−リボフラノシル、β−D−グルコピラノシル及びα−D−グルコピラノシルからなる群から選択される)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
HetArが、
【化3】

からなる群から選択される縮合ヘテロ芳香環である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
X−YがCH−Oである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Arが、1〜3個のR置換基で置換されているフェニルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
X−YがCR17−CRである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
、R及びR17が水素であり、Arが、1〜3個のR置換基で置換されているフェニルである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
、R、R、R、R、R10、R11及びR12が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
が、独立して、ハロゲン、C1−4アルキル、トリフルオロメチル、シアノ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ及びフェニルからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
q及びrがいずれも1である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
【化4】

【化5】

からなる群から選択される、請求項9記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
請求項1記載の化合物を、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項12】
哺乳類における、ステアロイル補酵素Aデルタ−9デサチュラーゼの阻害に応答する障害、病状又は疾患の治療のための請求項1記載の化合物の使用。
【請求項13】
前記障害、病状又は疾患が、2型糖尿病、インシュリン抵抗性、脂質障害、肥満症、メタボリックシンドローム及び脂肪肝疾患からなる群から選択される、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記脂質障害が、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される、請求項13記載の使用。
【請求項15】
哺乳類において2型糖尿病、インシュリン抵抗性、脂質障害、肥満症、メタボリックシンドローム及び脂肪肝疾患の治療に用いられる医薬の製造のための請求項1記載の化合物の使用。
【請求項16】
前記脂質障害が、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される、請求項15記載の使用。

【公表番号】特表2010−500292(P2010−500292A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523119(P2009−523119)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001396
【国際公開番号】WO2008/017161
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】