説明

スティックスリップ検出装置および検出方法

【課題】より簡略化したシステムで、確実にスティックスリップが検出できるようにする。
【解決手段】スティックスリップ検出装置は、接触摺動部を有する可動部の変位を設定されている第1時間毎に測定する変位測定部101と、第1条件および第2条件のいずれか一方の条件が成立する回数である変位変化数を、変位測定部101による測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する変位変化数計数部102と、変位変化数により可動部の異常を判断する異常判断手段103とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節弁やガスガバナなどの接触摩擦部を有する摺動面をもつ装置の動作におけるスティックスリップを検出するスティックスリップ検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調節弁やガスガバナの故障は、摺動部分におけるスティックスリップの発生を検出することで、診断することが可能である。スティックスリップは、例えば、図25に示すように、ピストン2501とシリンダ2502との接触摺動部2503の状態によって発生するものである。例えば、スティックスリップは、接触摺動部2503に異物が混入したときなどに発生する。従って、ピストン2501の変位を計測し、計測した変位の状態を監視することでスティックスリップを検出できる。
【0003】
例えば、ピストン2501へ駆動入力を与えた状態で、ピストン2501の変位の状態を検出する。この検出において、駆動入力を与えていても変位が一定時間変化しない場合、スティックスリップが発生したものと判断できる。
【0004】
ところが、上述したスティックスリップの検出は、スティックスリップの発生する原因および現象を分析した結果に基づく方法ではない。このため、ピストン2501が動作する条件によって、スティックスリップの発生を検知できない場合が発生してしまう。また、検知できない場合と検知できる場合との差異が、明確にされていない。
【0005】
スティックスリップは、いわゆる動作をしない状態が細かく発生している状況である。実際には、スティックスリップが発生している状態では、上述の固着時間はスティックスリップを発生させる機構のパラメータと、ピストン2501に対する操作入力の関数となり、動作しない時間が一様ではない。このため、一様な固着時間の設定は困難であり、動作しない時間を固定として監視しても、確実にスティックスリップを検出できるとは限らない。
【0006】
この問題を解決するために、測定しているピストン2501の速度分布の偏りを示す指標値で、スティックスリップを検出する技術が提案されている(非特許文献1参照)。また、検出したピストン2501の変位より第1の状態量を算出し、また、検出した変位より第2の状態量を算出し、正常動作時の変位より得られる第1の状態量と第2の状態量との関係と、算出した第1の状態量および算出した第2の状態量の間の関係とを比較することで、スティックスリップを検出(判断)する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3254624号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】黒田 正人、日高 武雄、綛田 長生、「フィールドバスを使ったコントロールバルブ診断技術の実証実験」、Savemation Review、 28−36頁、2002年8月号。
【非特許文献2】丸太 浩 他、「第5章 調節弁固着現象のモデル化と検出」、日本学術振興会プロセスシステム工学第143委員会ワークショップNo.25最終報告書、2004年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したスティックスリップの検出では、弁軸速度の分布より速度の平均的大と2乗平均との比を求め、また、変位の1階差分値の絶対値の平均、および変位の1階差分値の2乗平均の平方根を算出するなど、計算量が多く、検出を行うシステム(装置)に負担がかかり、また、システムの簡略化を阻害しているという問題があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、より簡略化したシステムで、確実にスティックスリップが検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスティックスリップ検出装置は、接触摺動部を有する可動部の変位を設定されている第1時間毎に測定する変位測定手段と、測定開始よりk回目に変位測定手段に測定された測定値y(k)とk回目より1回前に変位測定手段に測定された測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に変位測定手段に測定された測定値y(k−1)とk回目より2回前に変位測定手段に測定された測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が第1閾値より大きく、かつ、Δy(k)とΔy(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きい第1条件、およびΔy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さく、かつ、Δy(k−1)の絶対値が第2閾値より小さい場合以外で、Δy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さい第2条件のいずれか一方の条件が成立する回数である変位変化数を、変位測定手段による測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する変位変化数計数手段と、変位変化数より可動部の異常を判断する異常判断手段とを少なくとも備える。
【0012】
上記スティックスリップ検出装置において、異常判断手段は、2以上の変位変化数を検出して可動部の異常を判断すればよい。
【0013】
また、上記スティックスリップ検出装置において、可動部に対する制御値の変化を第1時間毎に測定する制御値測定手段と、測定開始よりk回目に制御値測定手段に測定された制御値x(k)とk回目より1回前に制御値測定手段に測定された制御値x(k−1)との差のΔx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に制御値測定手段に測定された制御値x(k−1)とk回目より2回前に制御値測定手段に測定された制御値x(k−2)との差のΔx(k−1)の絶対値が第3閾値より大きく、かつ、Δx(k)とΔx(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きい第3条件、およびΔx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さく、かつ、Δx(k−1)の絶対値が第4閾値より小さい場合以外で、Δx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さい第4条件のいずれか一方の条件が成立する回数である制御変化数を、測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する制御変化数計数手段を備え、異常判断手段は、同一の時間帯に計数された変位変化数が制御変化数より多いことを検出して可動部の異常を判断するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明に係るスティックスリップ検出方法は、接触摺動部を有する可動部の変位を設定されている第1時間毎に測定し、測定開始よりk回目の測定値y(k)とk回目より1回前の測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きく、かつ、k回目より1回前の測定値y(k−1)とk回目より2回前の測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が第1閾値より大きく、かつ、Δy(k)とΔy(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きい第1条件、およびΔy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さく、かつ、Δy(k−1)の絶対値が第2閾値より小さい場合以外で、Δy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さい第2条件のいずれか一方の条件が成立する回数である変位変化数を、測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する変位変化数計数ステップと、変位変化数より可動部の異常を判断する異常判断ステップとを少なくとも備える。
【0015】
上記スティックスリップ検出方法において、異常判断ステップでは、2以上の変位変化数を検出して可動部の異常を判断すればよい。
【0016】
上記スティックスリップ検出方法において、測定開始よりk回目の制御値x(k)とk回目より1回前の制御値x(k−1)との差のΔx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きく、かつ、k回目より1回前の制御値x(k−1)とk回目より2回前の制御値x(k−2)との差のΔx(k−1)の絶対値が第3閾値より大きく、かつ、Δx(k)とΔx(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きい第3条件、およびΔx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さく、かつ、Δx(k−1)の絶対値が第4閾値より小さい場合以外で、Δx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さい第4条件のいずれか一方の条件が成立する回数である制御変化数を、測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する制御変化数計数ステップを備え、異常判断ステップでは、同一の時間帯に計数された変位変化数が制御変化数より多いことを検出して可動部の異常を判断するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したことにより、本発明によれば、より簡略化したシステムで、確実にスティックスリップが検出できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1におけるスティックスリップ検出装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図3】図3は、測定される可動部の変位(測定値)の時間変化を示す特性図である。
【図4】図4は、測定される可動部の変位の時間変化を示す特性図である。
【図5】図5は、測定される可動部の変位の時間変化を示す特性図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2におけるスティックスリップ検出装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図8】図8は、2つの値が交互に取られた時系列信号が矩形波となっている制御値と、この制御値に対応した調節弁の弁軸変位の応答の状態を示す説明図である。
【図9】図9は、指示値および指示値に対応した調節弁の弁軸変位の応答の状態を示す説明図である。
【図10】図10は、制御値および制御値に対応する変位の状態を示す説明図である。
【図11】図11は、制御値および制御値に対応する変位の状態を示す説明図である。
【図12】図12は、制御値および制御値に対応する変位の状態を示す説明図である。
【図13】図13は、制御値および制御値に対応する変位の状態を示す説明図である。
【図14】図14は、制御値が0秒より300秒にかけて一次関数として変化する場合の、制御値および制御値に対応する変位の状態(変化)を示す特性図である。
【図15】図15は、制御値が0秒より300秒にかけて一次関数として変化する場合の、制御値および制御値に対応する変位の状態(変化)を示す特性図である。
【図16】図16は、制御値が0秒から600秒にかけて正弦波のように変化する場合の、制御値および制御値に対応する変位の状態(変化)を示す特性図である。
【図17】図17は、制御値が0秒から600秒にかけて正弦波のように変化する場合の、制御値および制御値に対応する変位の状態(変化)を示す特性図である。
【図18】図18は、制御値が120秒の時点でステップ状に大きく変化する場合の、制御値および制御値に対応する変位の状態(変化)を示す特性図である。
【図19】図19は、制御値が120秒の時点でステップ状に大きく変化する場合の、制御値および制御値に対応する変位の状態(変化)を示す特性図である。
【図20】図20は、制御値が2つの値が交互に取られた時系列信号が矩形波で変化する場合の、制御値および制御値に対応する変位の状態(変化)を示す特性図である。
【図21】図21は、本発明の実施の形態3におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。
【図22】図22は、本発明の実施の形態4におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。
【図23】図23は、本発明の実施の形態5におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。
【図24】図24は、本発明の実施の形態6におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。
【図25】図25は、摺動部分を有する装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0020】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。このスティックスリップ検出装置は、接触摺動部を有する可動部の変位を設定されている第1時間毎に測定する変位測定部101と、第1条件および第2条件のいずれか一方の条件が成立する回数である変位変化数を、変位測定部101による測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する変位変化数計数部102と、変位変化数により可動部の異常を判断する異常判断部103とを備える。異常判断部103は、例えば、2以上の変位変化数を検出して可動部の異常を判断する。
【0021】
ここで、上述した第1条件は、測定開始よりk回目に変位測定部101に測定された測定値y(k)とk回目より1回前に変位測定部101に測定された測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に変位測定部101に測定された測定値y(k−1)とk回目より2回前に変位測定部101に測定された測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が第1閾値より大きく、かつ、Δy(k)とΔy(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きい条件である。
【0022】
また、上述した第2条件は、測定開始よりk回目に変位測定部101に測定された測定値y(k)とk回目より1回前に変位測定部101に測定された測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さく、かつ、k回目より1回前に変位測定部101に測定された測定値y(k−1)とk回目より2回前に変位測定部101に測定された測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が第2閾値より小さくなる場合以外で、Δy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さい条件である。
【0023】
次に、上述した本実施の形態1におけるスティックスリップ検出装置の動作例について、図2のフローチャートを用いて説明する。まず、設定されている第1時間が経過すると(ステップS201)、変位測定部101が、可動部の変位を測定する(ステップS202)。開始より3回以上の測定がなされると(ステップS203)、変位変化数計数部102が、Δy(k)およびΔy(k−1)について、第1条件の成立もしくは第2条件の成立を判断する(ステップS204)。変位変化数計数部102には、第1条件もしくは第2条件が設定されており、設定されている条件の成立を判断する。また、変位変化数計数部102は、変位測定がなされる毎に、条件の一致を判断する。この判断で、いずれかの条件の成立を確認(判断)すると、変位変化数計数部102は、変位変化数を計数(加算)する(ステップS205)。
【0024】
上述したステップS201〜ステップS205が、設定されている第2時間が経過するまで繰り返された後(ステップS206)、異常判断部103は、計数されている変位変化数が2以上となっていることを判断(検出)すると(ステップS207)、スティックスリップが発生した異常と判断する(ステップS208)。このようにして、異常判断部103により異常と判断されると、スティックスリップ検出装置は、図示しない表示部にスティックスリップが発生したことを表示するなど、スティックスリップが発生したことを対象者に対して通知する。
【0025】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、設定されている第1閾値および第2閾値との大小関係の判断などの簡単な計算によるより簡略化したシステムで、確実にスティックスリップが検出できるようになる。
【0026】
ここで、上述した第1条件および第2条件について説明する。
【0027】
はじめに、第1条件について説明する。図3に示すように、測定される可動部の変位(測定値)が、時間とともに変化する場合を考える。なお、図3において、丸(白丸および黒丸)が、第1時間毎に測定された可動部の変位(測定値)を示している。図3に示すように可動部の変位が変化している場合、まず、左より3番目の黒丸、4番目の白丸、9番目の黒丸、10番目の白丸、11番目の白丸は、1つ前の丸との差(Δy(k))の絶対値が、第1閾値より大きい。
【0028】
これらの中で、4番目の白丸、10番目の白丸、11番目の白丸は、1つ前の丸との差(Δy(k))の絶対値が、第1閾値より大きく、2つ前の丸と3つ前の丸との差(Δy(k−1))の絶対値が、第1閾値より大きく、加えて、Δy(k)とΔy(k−1)との符号が同じ場合となっている。第1条件では、この場合以外を計数するものとしている。従って、4番目の白丸、10番目の白丸、11番目の白丸は、Δy(k)の絶対値が第1閾値より大きいが、変位変化数としては計数されない。
【0029】
一方、3番目の黒丸および9番目の黒丸は、Δy(k)の絶対値が、第1閾値より大きいが、Δy(k−1)は0となり、絶対値が第1閾値より大きくならない。このため、変位変化数として計数されることになる。従って、図3に示すように、第2時間内で変化している場合、変位変化数は2として計数される。
【0030】
次に、第2条件について説明する。図4に示すように、測定される可動部の変位(測定値)が、時間とともに変化する場合を考える。なお、図4においても、丸(白丸および黒丸)が、第1時間毎に測定された可動部の変位(測定値)を示している。図4に示すように可動部の変位が変化している場合、まず、左より2番目の白丸、5番目の黒丸、6,7,8番目の白丸、12番目の黒丸、13,14,15番目の白丸は、1つ前の丸との差(Δy(k))の絶対値が、第1閾値より小さい。
【0031】
これらの中で、2番目の白丸、6,7,8番目の白丸、13,14,15番目の白丸は、1つ前の丸との差(Δy(k))の絶対値が、第1閾値より小さく、2つ前の丸と3つ前の丸との差(Δy(k−1))の絶対値が、第1閾値より小さい場合となっている。第2条件では、この場合以外を計数するものとしている。従って、2番目の白丸、6,7,8番目の白丸、13,14,15番目の白丸は、Δy(k)の絶対値が第1閾値より小さいが、変位変化数としては計数されない。
【0032】
一方、5番目の黒丸および12番目の黒丸は、Δy(k)の絶対値が、第1閾値より小さいが、Δy(k−1)の絶対値は、第1閾値より大きいため、第1閾値より小さくならない。このため、5番目の黒丸および12番目の黒丸は、変位変化数として計数されることになる。従って、図4に示すように、第2時間内で変化している場合、変位変化数は2として計数される。
【0033】
ところで、図3に示す可動部の変位(測定値)の変化は、図4に示す可動部の変位の変化と同じである。従って、第1条件の判断および第2条件の判断のいずれであっても、同じ結果が得られることがわかる。
【0034】
以上のように、第1条件もしくは第2条件の判断を行うことで、次に説明するように、正常な可動部の変位をスティックスリップとして検出することが防げるようになる。例えば、Δy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きいなど、Δy(k)と閾値との比較のみで変位変化数を計数する場合を考える。この場合、可動部の変位が図5の(a)に示すように変化すると、t0からt1までの間の測定値においては、Δy(k)が閾値より大きいので、これら全てを変位変化数として計数することになる。この結果、スティックスリップが発生しているものと判断されることになる。しかしながら、図5の(a)に示すような変化は、通常の動作であり、スティックスリップが発生している状態ではない。
【0035】
これに対し、上述した条件1もしくは条件2の成立を判断すれば、図5の(a)に示す変化では、変位変化数は1とされ、スティックスリップが発生したものとは判断されない。一方、条件1もしくは条件2の成立を判断すれば、図5の(b)に示すようにスティックスリップが実際に発生している変化では、変位変化数は5とされ、スティックスリップが発生したものと判断されるようになる。
【0036】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図6は、本発明の実施の形態2におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。このスティックスリップ検出装置は、接触摺動部を有する可動部の変位を設定されている第1時間毎に測定する変位測定部601と、第1条件および第2条件のいずれか一方の条件が成立する回数である変位変化数を、変位測定部601による測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する変位変化数計数部602を備える。
【0037】
ここで、上述した第1条件は、測定開始よりk回目に変位測定部601に測定された測定値y(k)とk回目より1回前に変位測定部601に測定された測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に変位測定部601に測定された測定値y(k−1)とk回目より2回前に変位測定部601に測定された測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が第1閾値より大きく、かつ、Δy(k)とΔy(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きい条件である。
【0038】
また、上述した第2条件は、測定開始よりk回目に変位測定部601に測定された測定値y(k)とk回目より1回前に変位測定部601に測定された測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さく、かつ、k回目より1回前に変位測定部601に測定された測定値y(k−1)とk回目より2回前に変位測定部601に測定された測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が第2閾値より小さくなる場合以外で、Δy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さい条件である。
【0039】
また、本実施の形態2におけるスティックスリップ検出装置は、可動部に対する制御値の変化を第1時間毎に測定する制御値測定部603と、第3条件および第4条件のいずれか一方の条件が成立する回数である制御変化数を、測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する制御変化数計数部604と、同一の時間帯に計数された変位変化数が制御変化数より多いことを検出して可動部の異常を判断する異常判断部605とを備える。
【0040】
ここで、上述した第3条件は、測定開始よりk回目に制御値測定部603に測定された制御値x(k)とk回目より1回前に制御値測定部603に測定された制御値x(k−1)との差のΔx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に制御値測定部603に測定された制御値x(k−1)とk回目より2回前に制御値測定部603に測定された制御値x(k−2)との差のΔx(k−1)の絶対値が第3閾値より大きく、かつ、Δx(k)とΔx(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きい条件である。
【0041】
また、上述した第4条件は、測定開始よりk回目に制御値測定部603に測定された制御値x(k)とk回目より1回前に制御値測定部603に測定された制御値x(k−1)との差のΔx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さく、かつ、k回目より1回前に制御値測定部603に測定された制御値x(k−1)とk回目より2回前に制御値測定部603に測定された制御値x(k−2)との差のΔx(k−1)の絶対値が第4閾値より小さい場合以外で、Δx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さい条件である。
【0042】
次に、本実施の形態2におけるスティックスリップ検出装置の動作例について、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、設定されている第1時間が経過すると(ステップS701)、変位測定部601が、可動部の変位を測定し、制御値測定部603が、可動部に対する制御値の変化を測定する(ステップS702)。開始より3回以上の測定がなされると(ステップS703)、まず、変位変化数計数部602が、Δy(k)およびΔy(k−1)について、第1条件の成立もしくは第2条件の成立を判断する(ステップS704)。変位変化数計数部602には、第1条件もしくは第2条件が設定されており、設定されている条件の成立を判断する。また、変位変化数計数部602は、変位測定がなされる毎に、条件の一致を判断する。この判断で、いずれかの条件の成立を確認(判断)すると、変位変化数計数部602は、変位変化数を計数(加算)する(ステップS705)。
【0043】
次に、制御変化数計数部604が、Δx(k)およびΔx(k−1)について、第3条件の成立もしくは第4条件の成立を判断する(ステップS706)。制御変化数計数部604には、第3条件もしくは第4条件が設定されており、設定されている条件の成立を判断する。また、変位変化数計数部602は、変位測定がなされる毎に、条件の一致を判断する。この判断で、いずれかの条件の成立を確認(判断)すると、制御変化数計数部604は、制御変化数を計数(加算)する(ステップS707)。
【0044】
上述したステップS701〜ステップS707が、設定されている第2時間が経過するまで繰り返された後(ステップS708)、異常判断部605は、変位変化数が制御変化数より多いことを判断(検出)すると(ステップS709)、スティックスリップが発生している異常と判断する(ステップS710)。このフローによれば、同一の時間帯に計数された変位変化数と制御変化数とが、異常判断部605の判断対象となる。
【0045】
このようにして、異常判断部605により異常と判断されると、スティックスリップ検出装置は、図示しない表示部にスティックスリップが発生したことを表示するなど、スティックスリップが発生したことを対象者に対して通知する。
【0046】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、設定されている第1閾値および第2閾値との大小関係、また、設定されている第3閾値および第4閾値との大小関係の判断などの簡単な計算によるより簡略化したシステムで、確実にスティックスリップが検出できるようになる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、正常な動作をスティックスリップとして誤判断することが抑制できるようになる。以下、この点について説明する。
【0048】
例えば、可動部の変位のみを用いて判断している場合(特許文献1,非特許文献1参照)、可動部の正常な動き(変位)がスティックスリップの状態と同様であれば、スティックスリップが実際には発生していなくてもスティックスリップと判断されることになる。しかしながら、これは、誤検知ということになる。
【0049】
例えば、ポジショナによる弁軸位置の制御において、弁軸変位の制御値が大きく変更される場合、制御値が変更されるときの弁(可動部)の変位の挙動は、スティックスリップの状態と同様となる場合がある。
【0050】
図8の(a)に示すような、2つの値が交互に取られた時系列信号が矩形波となっている制御値が与えられると、これに対応し、調節弁の弁軸変位の応答は、図8の(b)に示すような時系列信号の変位測定値として測定される。この挙動は、大半の時間は固着状態にあり、時々滑り状態となって速い動きをするというスティックスリップ現象の挙動と同様である。この結果、単に、弁軸変位より判断すると、図8の(a)に示すような制御を行っているときに、スティックスリップが発生しているものとして誤検知を起こしてしまう。このような誤検知は、弁の動作速度が速い場合に起きやすく、小型の弁で特に問題となる。
【0051】
また、制御値と測定される可動部の変位との両方を用いてスティックスリップを判断する技術(非特許文献2参照)でも、次に示すような問題が発生する。
【0052】
この技術では、まず、開度y(t)とこれより1つ前に測定された開度y(t−1)との差分Δy(t)の絶対値が、連続して閾値ε以下である(|Δy(t)|<εを満たす)時間帯を検出する。検出した各時間帯において、開度指示値(制御値)の最大値と最小値の差をuとする。
【0053】
次に、図9に示すように、u≧ε1である期間(点線で示す開度指示値が変化している期間)だけを対象とし、実線で示す開度の最大値と最小値の差yが閾値以下(y≦ε2を満たす)である時間帯を、スティックスリップとみなす。また、データ全体の期間に対する、スティックスリップが発生している時間帯の割合を指標ρとし、ρが0であればスティックスリップは発生しておらず、ρが1に近いほど、スティックスリップが発生している可能性が高いと判断している。
【0054】
しかしながら、非特許文献2技術では、開度指示値が変化している期間(u≧ε1)だけを対象としているため、図9に示すように、点線で示す開度指示値がステップ状に大きく変化した直後などの開度指示値が変化していない期間に起きた、実線で示すように開度が変化するスティックスリップを検知できない。
【0055】
上述したように、まず、可動部の変位のみを用いて判断している場合は、スティックスリップを誤判断する場合があり、また、非特許文献1の技術では、スティックスリップを検出できない場合があるなどの問題がある。これに対し、本実施の形態2によれば、前述したように、制御値および測定される変位の各々に対し、「一定以上の変化がないデータから、一定以上の変化があるデータに切り替わった回数(変化数)」もしくは、「一定以上の変化があるデータから、一定以上の変化がないデータに切り替わった回数(変化数)」を求め、「変位に対して求めた回数」が「制御値に対して求めた回数」よりも大きい場合にスティックスリップが発生していると判定するので、誤判断が抑制され、検出できない場合が抑制できるようになる。
【0056】
例えば、図10に示すように、点線で示す制御値がステップ状に大きく変化し、これに対して実線で示すように変位が変化した場合、本実施の形態によれば、制御値の切り替わり回数は1回となり、また、変位の切り替わり回数は1回となり、これらの間に差がないので、スティックスリップは発生していないものと判断し、実際の状態を正確に検出している。
【0057】
また、図11に示すように、点線で示す制御値がステップ状に大きく変化し、これに対して実線で示すように階段状に変位が変化した場合、本実施の形態によれば、制御値の切り替わり回数は1回となるが、変位の切り替わり回数は2回を超え、これらの間に差あるのでスティックスリップが発生していると判断し、実際の状態を正確に検出している。
【0058】
また、図12に示すように、点線で示す制御値が滑らかに少しずつ変化し、これに対し、実線で示すように同様に滑らかに少しずつ変位も変化する場合、本実施の形態によれば、各々切り替わり回数に差はなく、スティックスリップは発生していないものと判断し、実際の状態を正確に検出する。これに対し、図13に示すように、実線で示す変位が階段状に変化する場合、本実施の形態によれば、切り替わりの回数が変位の方が多くなるのでスティックスリップが発生していると判断し、実際の状態を正確に検出する。
【0059】
以下、本実施の形態のスティックスリップ検出装置(方法)によるスティックスリップの検出結果(シミュレーション)について説明する。以下では、第1時間を1秒とし、第1時間を60秒としている。また、第1閾値,第2閾値,第3閾値,および第4閾値を1としている。また、「変位変化数−制御変化数」の0以上の値を指標値としている。
【0060】
まず、制御値が0秒より300秒にかけて一次関数として変化する場合について、図14および図15に示す。まず、図14に示すように、点線で示す制御値の変化に対し、実線で示す変位も制御値と同様に変化している場合、指標値が1以上となることはなく、スティックスリップは発生していないものと判断される。これに対し、図15に示すように、点線で示す制御値の変化に対し、実線で示す変位が階段状に変化している場合、1以上となる指標値が0秒より300秒にかけて発生し、スティックスリップが発生しているものと判断される。
【0061】
次に、制御値が0秒から600秒にかけて正弦波のように変化する場合について、図16および図17に示す。図16に示すように、点線で示す制御値の変化に対し、実線で示す変位も制御値と同様に変化している場合、指標値が1以上となることはなく、スティックスリップは発生していないものと判断される。これに対し、図17に示すように、点線で示す制御値の変化に対し、実線で示す変位が階段状に変化している場合、1以上となる指標値が0秒から600秒にかけて発生し、スティックスリップが発生しているものと判断される。
【0062】
次に、制御値が120秒の時点でステップ状に大きく変化する場合について、図18および図19に示す。まず、図18に示すように、点線で示す制御値の変化に対し、実線で示す変位が120秒から300秒にかけてなだらかに変化している場合、指標値が1以上となることはなく、スティックスリップは発生していないものと判断される。これに対し、図19に示すように、点線で示す制御値の変化に対し、実線で示す変位が120秒から300秒にかけて階段状に変化している場合、1以上となる指標値が180秒から300秒にかけて発生し、スティックスリップが発生しているものと判断される。
【0063】
次に、制御値が2つの値が交互に取られた時系列信号が矩形波で変化する場合について、図20に示す。このような変化が変位に発生すれば、単純には、スティックスリップが発生しているものと判断される。しかしながら、本実施の形態によれば、実線で示す変位は、点線で示す矩形波の制御値の変化と同様に変化しているので、指標値が1以上となることはなく、スティックスリップは発生していないものと判断される。
【0064】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図21は、本発明の実施の形態3におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。このスティックスリップ検出装置は、スティックスリップの検出対象となる調節弁2101、調節弁2101の弁軸変位を制御するポジショナ2102,異常検出装置2103,および警報部2104を備える。
【0065】
ポジショナ2102は、制御演算部2121,操作器空気圧力発生部2122,弁軸変位測定部2123,および入力部2124を備えている。また、異常検出装置2103は、特性記憶部2131および比較演算部2132を備える。
【0066】
ポジショナ2102では、制御演算部2121に制御された操作器空気圧力発生部2122により発生した空気圧力で、調節弁2101の弁軸を動作させる。また、ポジショナ2102では、弁軸変位測定部2123で測定している弁軸の変位が制御演算部2121に帰還され、操作器空気圧力発生部2122の制御に反映させている。また、制御演算部2121が行う各制御は、入力部2124より入力される指示値(制御プログラム)をもとに行われる。
【0067】
異常検出装置2103では、特性記憶部2131に記憶されている各設定値および閾値(第1閾値、第2閾値,第3閾値,第4閾値)を用い、比較演算部2132が、制御値および弁軸変位の測定値(変位測定値)をもとに、調節弁2101におけるスティックスリップ発生の判断を行う。比較演算部2132は、制御演算部2121より操作器空気圧力発生部2122に出力される制御値、および弁軸変位測定部2123が測定している変位測定値を取得する。また、比較演算部2132は、特性記憶部2131に記憶されている第1時間毎に、上記制御値および変位測定値を取得する。
【0068】
また、比較演算部2132は、取得した変位測定値および制御値の各々において、特性記憶部2131に記憶されている条件が成立する回数である変位変化数および制御変化数を、特性記憶部2131に記憶されている第2時間毎に計数する。第2時間は、第1時間毎の3倍以上の時間とされている。比較演算部2132では、第2時間の中で、計数した変位変化数が制御変化数より大きい場合、調節弁2101に異常(スティックスリップ)が発生したものと判断し、警報部2104を動作させる。
【0069】
ここで、特性記憶部2131には変位測定値値の変位変化数として計数する条件として、測定(取得)開始よりk回目に弁軸変位測定部2123に測定された測定値y(k)とk回目より1回前に弁軸変位測定部2123に測定された測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が特性記憶部2131に記憶されている第1閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に弁軸変位測定部2123に測定された測定値y(k−1)とk回目より2回前に弁軸変位測定部2123に測定された測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が第1閾値より大きく、かつ、Δy(k)とΔy(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δy(k)の絶対値が特性記憶部2131に記憶されている第1閾値より大きい条件(第1条件)が記憶されている。
【0070】
また、特性記憶部2131には、制御値の変位変化数として計数する条件として、測定(取得)開始よりk回目に操作器空気圧力発生部2122に出力された制御値x(k)とk回目より1回前に操作器空気圧力発生部2122に出力された制御値x(k−1)との差のΔx(k)の絶対値が特性記憶部2131に記憶されている第3閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に操作器空気圧力発生部2122に出力された制御値x(k−1)とk回目より2回前に操作器空気圧力発生部2122に出力された制御値x(k−2)との差のΔx(k−1)の絶対値が第3閾値より大きく、かつ、Δx(k)とΔx(k−1)との符号が同じ場合以外で、Δx(k)の絶対値が特性記憶部2131に記憶されている第3閾値より大きい条件(第3条件)が記憶されている。
【0071】
なお、特性記憶部2131変位測定値定値の変位変化数として計数する条件として、測定開始よりk回目に弁軸変位測定部2123に測定された測定値y(k)とk回目より1回前に弁軸変位測定部2123に測定された測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が特性記憶部2131に記憶されている第2閾値より小さく、かつ、k回目より1回前に弁軸変位測定部2123に測定された測定値y(k−1)とk回目より2回前に弁軸変位測定部2123に測定された測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が第2閾値より小さくなる場合以外で、Δy(k)の絶対値が特性記憶部2131に記憶されている第2閾値より小さい条件(第2条件)が記憶されていてもよい。
【0072】
また、特性記憶部2131に、制御値の変位変化数として計数する条件として、測定開始よりk回目に操作器空気圧力発生部2122に出力された制御値x(k)とk回目より1回前に操作器空気圧力発生部2122に出力された制御値x(k−1)との差のΔx(k)の絶対値が特性記憶部2131に記憶されている第4閾値より小さく、かつ、k回目より1回前に操作器空気圧力発生部2122に出力された制御値x(k−1)とk回目より2回前に操作器空気圧力発生部2122に出力された制御値x(k−2)との差のΔx(k−1)の絶対値が第4閾値より小さい場合以外で、Δx(k)の絶対値が特性記憶部2131に記憶されている第4閾値より小さい条件(第4条件)が記憶されていてもよい。
【0073】
上述した本実施の形態におけるスティックスリップ検出装置では、比較演算部2132が、実施の形態2におけるスティックスリップ検出装置の変位変化数計数部602,制御変化数計数部604,および異常判断部605に相当している。このように構成した本実施の形態によれば、実施の形態2と同様に、設定されている第1閾値および第2閾値との大小関係、また、設定されている第3閾値および第4閾値との大小関係の判断などの簡単な計算によるより簡略化したシステムで、確実にスティックスリップが検出できるようになる。また、本実施の形態によれば、正常な動作をスティックスリップとして誤判断することが抑制できるようになる。
【0074】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図22は、本発明の実施の形態4におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。このスティックスリップ検出装置は、スティックスリップの検出対象となる調節弁2101、調節弁2101の弁軸変位を制御するポジショナ2102,異常検出装置2203,警報部2104,および操作器空気圧力測定部2205を備える。
【0075】
ポジショナ2102は、制御演算部2121,操作器空気圧力発生部2122,弁軸変位測定部2123,および入力部2124を備えている。なお、調節弁2101,ポジショナ2102,および警報部2104は、前述した実施の形態3と同様である。
【0076】
本実施の形態では、異常検出装置2203において、特性記憶部2231に記憶されている各設定値および閾値(第1閾値、第2閾値,第3閾値,第4閾値)を用い、比較演算部2232が、制御値および弁軸変位の変位測定値をもとに、調節弁2101におけるスティックスリップ発生の判断を行う。本実施の形態では、操作器空気圧力発生部2122から調節弁2101に出力されている空気圧力を操作器空気圧力測定部2205が測定し、この空気圧力測定値を制御値として比較演算部2232が取得する。また、比較演算部2232は、弁軸変位測定部2123が測定している変位測定値を取得する。また、比較演算部2232は、特性記憶部2231に記憶されている第1時間毎に、上記制御値(空気圧力測定値)および変位測定値を取得する。
【0077】
また、比較演算部2232は、取得した変位測定値および制御値の各々において、特性記憶部2231に記憶されている条件が成立する回数である変位変化数および制御変化数を、特性記憶部2231に記憶されている第2時間毎に計数する。第2時間は、第1時間毎の3倍以上の時間とされている。比較演算部2232では、第2時間の中で、計数した変位変化数が制御変化数より大きい場合、調節弁2101に異常(スティックスリップ)が発生したものと判断し、警報部2104を動作させる。
【0078】
なお、特性記憶部2231には、前述した実施の形態3の特性記憶部2131と同様の条件が記憶されている。
【0079】
上述した本実施の形態におけるスティックスリップ検出装置では、比較演算部2232が、実施の形態2におけるスティックスリップ検出装置の変位変化数計数部602,制御変化数計数部604,および異常判断部605に相当している。また、操作器空気圧力測定部2205が、実施の形態2における制御値測定部603に相当している。このように構成した本実施の形態によれば、実施の形態2と同様に、設定されている第1閾値および第2閾値との大小関係、また、設定されている第3閾値および第4閾値との大小関係の判断などの簡単な計算によるより簡略化したシステムで、確実にスティックスリップが検出できるようになる。また、本実施の形態によれば、正常な動作をスティックスリップとして誤判断することが抑制できるようになる。
【0080】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図23は、本発明の実施の形態5におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。このスティックスリップ検出装置は、スティックスリップの検出対象となる調節弁2101、調節弁2101の弁軸変位を制御するポジショナ2102,異常検出装置2303,および警報部2104を備える。
【0081】
ポジショナ2102は、制御演算部2121,操作器空気圧力発生部2122,弁軸変位測定部2123,および入力部2124を備えている。また、異常検出装置2303は、特性記憶部2131および比較演算部2132を備える。加えて、本実施の形態では、異常検出装置2303が、ノイズ除去部2333を備える。ノイズ除去部2333は、ポジショナ2102より取得する制御値および弁軸変位の測定値(変位測定値)より、信号上のノイズを除去する。例えば、よく知られた移動平均などの手法によりノイズを除去する。
【0082】
本実施の形態においても、異常検出装置2303では、特性記憶部2131に記憶されている各設定値および閾値(第1閾値、第2閾値,第3閾値,第4閾値)を用い、比較演算部2132が、制御値および変位測定値をもとに、調節弁2101におけるスティックスリップ発生の判断を行う。ここで、本実施の形態では、ノイズ除去部2333より、取得する制御値および変位測定値の信号よりノイズを除去するので、より正確な判断ができるようになる。例えば、制御値および変位測定値にノイズが混入している場合、このノイズを変化数として計数する場合が発生する。これに対し、ノイズを除去することで、ノイズによる上述した問題が抑制できるようになる。
【0083】
このように構成した本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、設定されている第1閾値および第2閾値との大小関係、また、設定されている第3閾値および第4閾値との大小関係の判断などの簡単な計算によるより簡略化したシステムで、より正確にスティックスリップが検出できるようになる。また、本実施の形態によれば、正常な動作をスティックスリップとして誤判断することが抑制できるようになる。
【0084】
[実施の形態6]
次に、本発明の実施の形態6について説明する。図24は、本発明の実施の形態6におけるスティックスリップ検出装置の構成を示す構成図である。このスティックスリップ検出装置は、スティックスリップの検出対象となる調節弁2101、調節弁2101の弁軸変位を制御するポジショナ2102,異常検出装置2403,警報部2104,および操作器空気圧力測定部2105を備える。
【0085】
ポジショナ2102は、制御演算部2121,操作器空気圧力発生部2122,弁軸変位測定部2123,および入力部2124を備えている。また、異常検出装置2403は、特性記憶部2131および比較演算部2132を備える。これらの構成は、実施の形態4と同様である。加えて、本実施の形態では、異常検出装置2403が、ノイズ除去部2433を備える。ノイズ除去部2433は、操作器空気圧力測定部2105より取得する制御値としての空気圧力測定値、およびポジショナ2102より取得する弁軸変位の測定値(変位測定値)より、信号上のノイズを除去する。例えば、よく知られた移動平均などの手法によりノイズを除去する。
【0086】
本実施の形態においても、異常検出装置2403では、特性記憶部2131に記憶されている各設定値および閾値(第1閾値、第2閾値,第3閾値,第4閾値)を用い、比較演算部2132が、制御値(空気圧力測定値)および変位測定値をもとに、調節弁2101におけるスティックスリップ発生の判断を行う。ここで、本実施の形態では、ノイズ除去部2433より、取得する制御値(空気圧力測定値)および変位測定値の信号よりノイズを除去するので、より正確な判断ができるようになる。
【0087】
このように構成した本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、設定されている第1閾値および第2閾値との大小関係、また、設定されている第3閾値および第4閾値との大小関係の判断などの簡単な計算によるより簡略化したシステムで、より正確にスティックスリップが検出できるようになる。また、本実施の形態によれば、正常な動作をスティックスリップとして誤判断することが抑制できるようになる。
【0088】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、各閾値は、検出対象において実際にスティックスリップを発生させ、この状態で測定をした結果を用いて決定すればよい。また、異常検出装置が、ポジショナ内に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
101…変位測定部、102…変位変化数計数部、103…異常判断部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触摺動部を有する可動部の変位を設定されている第1時間毎に測定する変位測定手段と、
測定開始よりk回目に前記変位測定手段に測定された測定値y(k)とk回目より1回前に前記変位測定手段に測定された測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に前記変位測定手段に測定された測定値y(k−1)とk回目より2回前に前記変位測定手段に測定された測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が前記第1閾値より大きく、かつ、Δy(k)とΔy(k−1)との符号が同じ場合以外で、前記Δy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きい第1条件、
および前記Δy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さく、かつ、前記Δy(k−1)の絶対値が前記第2閾値より小さい場合以外で、前記Δy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さい第2条件
のいずれか一方の条件が成立する回数である変位変化数を、前記変位測定手段による測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する変位変化数計数手段と、
前記変位変化数により前記可動部の異常を判断する異常判断手段と
を少なくとも備えることを特徴とするスティックスリップ検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のスティックスリップ検出装置において、
前記異常判断手段は、2以上の前記変位変化数を検出して前記可動部の異常を判断することを特徴とするスティックスリップ検出装置。
【請求項3】
請求項1記載のスティックスリップ検出装置において、
前記可動部に対する制御値の変化を前記第1時間毎に測定する制御値測定手段と、
測定開始よりk回目に前記制御値測定手段に測定された制御値x(k)とk回目より1回前に前記制御値測定手段に測定された制御値x(k−1)との差のΔx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きく、かつ、k回目より1回前に前記制御値測定手段に測定された制御値x(k−1)とk回目より2回前に前記制御値測定手段に測定された制御値x(k−2)との差のΔx(k−1)の絶対値が前記第3閾値より大きく、かつ、Δx(k)とΔx(k−1)との符号が同じ場合以外で、前記Δx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きい第3条件、
および前記Δx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さく、かつ、前記Δx(k−1)の絶対値が前記第4閾値より小さい場合以外で、前記Δx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さい第4条件
のいずれか一方の条件が成立する回数である制御変化数を、前記測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する制御変化数計数手段を備え、
前記異常判断手段は、同一の時間帯に計数された前記変位変化数が前記制御変化数より多いことを検出して前記可動部の異常を判断する
ことを特徴とするスティックスリップ検出装置。
【請求項4】
接触摺動部を有する可動部の変位を設定されている第1時間毎に測定し、
測定開始よりk回目の測定値y(k)とk回目より1回前の測定値y(k−1)との差のΔy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きく、かつ、k回目より1回前の測定値y(k−1)とk回目より2回前の測定値y(k−2)との差のΔy(k−1)の絶対値が前記第1閾値より大きく、かつ、Δy(k)とΔy(k−1)との符号が同じ場合以外で、前記Δy(k)の絶対値が設定されている第1閾値より大きい第1条件、
および前記Δy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さく、かつ、前記Δy(k−1)の絶対値が前記第2閾値より小さい場合以外で、前記Δy(k)の絶対値が設定されている第2閾値より小さい第2条件
のいずれか一方の条件が成立する回数である変位変化数を、前記測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する変位変化数計数ステップと、
前記変位変化数より前記可動部の異常を判断する異常判断ステップと
を少なくとも備えることを特徴とするスティックスリップ検出方法。
【請求項5】
請求項4記載のスティックスリップ検出方法において、
前記異常判断ステップでは、2以上の前記変位変化数を検出して前記可動部の異常を判断することを特徴とするスティックスリップ検出方法。
【請求項6】
請求項4記載のスティックスリップ検出方法において、
測定開始よりk回目の制御値x(k)とk回目より1回前の制御値x(k−1)との差のΔx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きく、かつ、k回目より1回前の制御値x(k−1)とk回目より2回前の制御値x(k−2)との差のΔx(k−1)の絶対値が前記第3閾値より大きく、かつ、Δx(k)とΔx(k−1)との符号が同じ場合以外で、前記Δx(k)の絶対値が設定されている第3閾値より大きい第3条件、
および前記Δx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さく、かつ、前記Δx(k−1)の絶対値が前記第4閾値より小さい場合以外で、前記Δx(k)の絶対値が設定されている第4閾値より小さい第4条件
のいずれか一方の条件が成立する回数である制御変化数を、前記測定が3回以上行われる間隔以上の第2時間毎に計数する制御変化数計数ステップを備え、
前記異常判断ステップでは、同一の時間帯に計数された前記変位変化数が前記制御変化数より多いことを検出して前記可動部の異常を判断する
ことを特徴とするスティックスリップ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図15】
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【図17】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−32268(P2012−32268A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171838(P2010−171838)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】