説明

スティック状の二酸化塩素発生装置

【課題】装置を小型化して二酸化塩素の発生源を持ち運びできるようにしつつも液ダレの心配がなく、二酸化塩素ガスの放出にも問題が生じない二酸化塩素発生装置を提供する。
【解決手段】可撓性の筒状の容器本体12が設けられ、容器本体12は、通気性・非透水体37で構成されたガス放出口14を具備するとともに、ガス放出口14以外の部分は密閉されて非透水構造をなし、容器本体12の内部には、水に溶解して酸性を示す酸性物質Aを含有する徐放剤18が収納されるとともに、亜塩素酸塩水溶液Bを密封した易破壊性の封入体20が収納され、容器本体12を円弧状に曲げることにより封入体20が破壊されて亜塩素酸塩水溶液が酸性物質を含有する徐放剤18と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスがガス放出口14を介して容器本体12の外部に放出されていくように構成した二酸化塩素発生装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜塩素酸塩の溶液と酸性物質を反応させて二酸化塩素を発生させる器具や装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−145654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二酸化塩素製造装置は、持ち運ぶことを念頭に開発されたものではなく、デスクや床の上に載置するタイプであったり、あるいは大がかりなものが多かった。また、単に小型化して持ち運び(携帯)できるようにしても、装置内部からの液ダレの懸念が生じるなどの問題が発生した。液ダレは容器の密閉性を確保することにより達成されるものの、容器の密閉性を確保すればその反面、二酸化塩素ガスの放出に滞りが生じるといった新たな問題が発生した。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置を小型化して二酸化塩素の発生源を持ち運びできるようにしつつも液ダレの心配がなく、なおかつ二酸化塩素ガスの放出にも問題が生じない二酸化塩素発生装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る二酸化塩素発生装置は、亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置であって、その第一特徴構成は、外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の筒状の容器本体が設けられ、前記容器本体は、通気性・非透水体で構成されたガス放出口を具備するとともに、前記ガス放出口以外の部分は密閉されて非透水構造をなし、前記容器本体の内部には、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤が収納されるとともに、亜塩素酸塩水溶液を密封した易破壊性の封入体が収納され、前記容器本体を円弧状に曲げることにより内部に収納した前記封入体が破壊され、当該封入体の破壊により前記亜塩素酸塩水溶液が前記酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出口を介して容器本体の外部に放出されていくようにした点にある。
【0007】
本構成によれば、例えば筒状の容器本体の右端を右手で、左端を左手で持ち、該容器本体を円弧状に曲げることにより、内部に収納した易破壊性の封入体が破壊され、封入体の内部から亜塩素酸塩水溶液が流れ出る。容器本体の内部には、酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤が収納されているので、流れ出た亜塩素酸塩水溶液は前記徐放剤と接触し(酸と接触し)、これにより二酸化塩素ガスが発生する。容器本体内で発生した二酸化塩素ガスは、通気性・非透水体で構成されたガス放出口から容器本体の外部に放出されていく。
【0008】
従って、本発明の二酸化塩素発生装置は、操作者が容易に取り扱うことができるように、装置を小型化して二酸化塩素の発生源を持ち運びできるようになる。また、ガス放出口以外の部分は密閉されて非透水構造をなし、封入体は密封してあるため、例えば二酸化塩素発生操作前は、装置内部からの液ダレが起こり難い二酸化塩素発生装置となる。
本発明の二酸化塩素発生装置は、封入体の破壊により亜塩素酸塩水溶液および酸性物質を含有する徐放剤(あるいは酸性の徐放剤)を接触させて二酸化塩素を発生させるため、発生した二酸化塩素は、ガス放出口を介して容器本体の外部に容易に放出させることができる。
【0009】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第二特徴構成は、亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の筒状の容器本体が設けられ、前記容器本体は、通気性・非透水体で構成されたガス放出口を具備するとともに、前記ガス放出口以外の部分は密閉されて非透水構造をなし、前記容器本体の内部には、亜塩素酸塩を含有する徐放剤が収納されるとともに、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質の水溶液を密封した易破壊性の封入体が収納され、前記容器本体を円弧状に曲げることにより内部に収納した前記封入体が破壊され、当該封入体の破壊により前記酸性物質の水溶液が前記亜塩素酸塩と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出口を介して容器本体の外部に放出されていくようにした点にある。
【0010】
本構成によれば、例えば筒状の容器本体の右端を右手で、左端を左手で持ち、該容器本体を円弧状に曲げることにより、内部に収納した易破壊性の封入体が破壊され、封入体の内部から酸性物質の水溶液(酸性水溶液)が流れ出る。容器本体の内部には、亜塩素酸塩(固形)を含有する徐放剤が収納されているので、流れ出た酸性水溶液は前記徐放剤と接触し(亜塩素酸塩と接触し)、これにより二酸化塩素ガスが発生する。容器本体内で発生した二酸化塩素ガスは、通気性・非透水体で構成されたガス放出口から容器本体の外部に放出されていく。
【0011】
従って、本発明の二酸化塩素発生装置は、操作者が容易に取り扱うことができるように、装置を小型化して二酸化塩素の発生源を持ち運びできるようになる。また、ガス放出口以外の部分は密閉されて非透水構造をなし、封入体は密封してあるため、例えば二酸化塩素発生操作前は、装置内部からの液ダレが起こり難い二酸化塩素発生装置となる。
本発明の二酸化塩素発生装置は、封入体の破壊により酸性水溶液および亜塩素酸塩を含有する徐放剤を接触させて二酸化塩素を発生させるため、発生した二酸化塩素は、ガス放出口を介して容器本体の外部に容易に放出させることができる。
【0012】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第三特徴構成は、亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の容器本体が設けられ、前記容器本体は、一端に開口部を有した有底筒状をなし、前記開口部がガス放出口として構成されるべく、通気性・非透水体により閉蓋されてなり、前記容器本体の内部には、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤が収納されるとともに、亜塩素酸塩水溶液を密封した易破壊性の封入体が収納され、前記容器本体を円弧状に曲げることにより内部に収納した前記封入体が破壊され、当該封入体の破壊により前記亜塩素酸塩水溶液が前記酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出口を介して容器本体の外部に放出されていくようにした点にある。
【0013】
本構成の二酸化塩素発生装置は、上記第一特徴構成に記載の二酸化塩素発生装置と同様に、操作者が容易に取り扱うことができるように、装置を小型化して二酸化塩素の発生源を持ち運びできるようになり、装置内部からの液ダレを起こり難くすることができる。さらに、封入体の破壊により亜塩素酸塩水溶液および酸性物質を含有する徐放剤(あるいは酸性の徐放剤)を接触させて二酸化塩素を発生させた後は、発生した二酸化塩素を容器本体の外部に容易に放出させることができる。
また、筒状の容器本体における開口部に通気性・非透水体を取り付けて閉蓋しているので、ガス放出口を容易に設けることができ、製品を安価に製造するメリットがある。
【0014】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第四特徴構成は、亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の容器本体が設けられ、前記容器本体は、一端に開口部を有した有底筒状をなし、前記開口部がガス放出口として構成されるべく、通気性・非透水体により閉蓋されてなり、前記容器本体の内部には、亜塩素酸塩を含有する徐放剤が収納されるとともに、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質の水溶液を密封した易破壊性の封入体が収納され、前記容器本体を円弧状に曲げることにより内部に収納した前記封入体が破壊され、当該封入体の破壊により前記酸性物質の水溶液が前記亜塩素酸塩と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出口を介して容器本体の外部に放出されていくようにした点にある。
【0015】
本構成の二酸化塩素発生装置は、上記第二特徴構成に記載の二酸化塩素発生装置と同様に、操作者が容易に取り扱うことができるように、装置を小型化して二酸化塩素の発生源を持ち運びできるようになり、装置内部からの液ダレを起こり難くすることができる。さらに、封入体の破壊により酸性水溶液および亜塩素酸塩を含有する徐放剤を接触させて二酸化塩素を発生させた後は、発生した二酸化塩素を容器本体の外部に容易に放出させることができる。
また、筒状の容器本体における開口部に通気性・非透水体を取り付けて閉蓋しているので、ガス放出口を容易に設けることができ、製品を安価に製造するメリットがある。
【0016】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第五特徴構成は、前記容器本体内部における底部に前記徐放剤が積層されるとともに、前記徐放剤の積層上面に前記封入体が載置され、上端面が前記通気性・非透水体の下面と当接し、下端面が前記封入体の上面と当接するクッションを設けた点にある。
【0017】
本構成によれば、当該クッションが設けられているので、保存時や搬送中の振動によって易破壊性の封入体が容器本体内で動いたり、ひいては使用前に破損してしまうことを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の二酸化塩素発生装置の断面図である。
【図2】本発明の二酸化塩素発生装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の二酸化塩素発生装置は、亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させるものであり、容易に持ち運ぶことを念頭に開発されたものである。
【0020】
図1,2に示したように、二酸化塩素発生装置10は、外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の筒状の容器本体12が設けられ、当該容器本体12は、通気性・非透水体37で構成されたガス放出口14を具備するとともに、当該ガス放出口14以外の部分は密閉されて非透水構造をなしている。
容器本体12の内部には、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質Aを含有する徐放剤18あるいは酸性の徐放剤18が収納されるとともに、亜塩素酸塩水溶液Bを密封した易破壊性の封入体20が収納されている。
当該容器本体12を円弧状に曲げることにより、内部に収納した封入体20が破壊され、当該封入体20の破壊により亜塩素酸塩水溶液Bが酸性物質Aを含有する徐放剤18あるいは酸性の徐放剤18と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスがガス放出口14を介して容器本体12の外部に放出されていくように構成してある。
【0021】
(容器本体)
本実施形態の容器本体12は、筒状の態様を例示したがこれに限られるものではなく、例えば長尺状で、内部に封入体20を収容できる空間を有する態様であればよい。
容器本体12の一端に形成された開口部をガス放出口14とし、他端を密封して有底筒状の態様とすることができる。当該開口部(ガス放出口14)は、通気性・非透水体37(後述)により閉蓋する。これにより、開口部(ガス放出口14)以外の部分は密閉されて非透水構造とすることができる。
容器本体12は可撓性素材よりなる。ここでいう可撓性とは、外から力を加えると容易に、例えば円弧状に曲げることができ、かつ力を解除すると元の筒状・スティック状の形状に戻る性質をいう。可撓性を持つ素材としては、例えば樹脂素材が例示されるがこれに限られるものではない。当該樹脂素材としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、シリコンなどが挙げられる。
【0022】
(通気性・非透水体)
ガス放出口に設けられる通気性・非透水体は、ガスや空気、湿気は透過させるが、液体は透過させない透湿防水性シート(あるいは通気防水シート)である。構造的には、微多孔質フィルム(非常に小さな孔を多数有する素材のフィルム)を単独で、あるいは複数枚重ねて貼り合せた素材や、無孔質であってもガスや空気、湿気(水蒸気)の移動を可能とした素材、高密度織物に強力な撥水処理を施したコーティングタイプの素材などがある。上市されているものとしては、例えばゴアテックス(登録商標)やエクセポール(登録商標、三菱樹脂社製:微多孔質ポリオレフィン系フィルムと各種不織布などを組み合わせた、通気性・透湿性・防水性に優れた素材)、エントラントE(登録商標、東レ社製)などが挙げられる。なお、通気性・非透水体は、容器本体に取り付けやすくするため、ヒートシール性(熱溶着性)を備えていることが望ましい。
【0023】
(封入体)
封入体20は、亜塩素酸塩水溶液Bを密封可能であり、易破壊性の容器である。
ここでいう易破壊性とは、外側から力を及ぼして曲げる(あるいは曲げようとする)ことにより容易に亀裂が入ったり割れたりして破壊できる性質をいうが、搬送中や保存時における揺れや軽い衝撃によって破損するものであってはならない。易破壊性の封入体20としては、例えばガラスアンプルや厚みが比較的薄いプラスチック容器が挙げられる。易破壊性の封入体20としてプラスチック容器を使用する場合、当該容器に予め脆弱部を人為的に設けておき、外側から力を及ぼして曲げる(あるいは曲げようとする)ことにより、その脆弱部に亀裂が入ったり割れたりして破壊できるように構成することもできる。
【0024】
(酸性物質)
本発明で使用し得る酸性物質としては、無機酸や有機酸あるいはその塩であり、例えば塩酸・硫酸・硝酸・リン酸・ホウ酸・メタリン酸・ピロリン酸・スルファミン酸などの無機酸、蟻酸・酢酸・プロピオン酸・酪酸・乳酸・ピルビン酸・クエン酸・リンゴ酸・酒石酸・グルコン酸・グリコール酸・フマル酸・マロン酸・マレイン酸・シュウ酸・コハク酸・アクリル酸・クロトン酸・グルタル酸などの有機酸、あるいはこれらの塩が挙げられる。
また、無機酸の塩としては、例えば、リン酸二水素の塩(ナトリウム塩やカリウム塩、以下同様)、リン酸二水素塩とリン酸一水素塩の混合物などが挙げられる。特には、25℃における5%(重量%。以下同様)水溶液のpHが2.5〜6.8となる緩衝性のある酸(無機酸、有機酸)またはその塩であることが好ましい。前記pHが2.5未満であっても、また6.8を超えても、溶存二酸化塩素の保存安定性が低下し、保存中における二酸化塩素液剤の液性(pH)の変動が大きくなる。
なお、25℃における5%水溶液のpHが3.5〜6.0となる緩衝性のある酸(無機酸、有機酸)またはその塩を使用することが好ましく、pH4.0〜5.5であることがさらに好ましい。具体的には、リン酸・ホウ酸・メタリン酸・ピロリン酸・スルファミン酸・酢酸などが挙げられる。なかでも、保存安定性に優れ、保存中における液性(pH)の変動を最小限に抑えることができ、それゆえ、優れた殺菌作用、抗ウイルス作用、防カビ作用、防臭作用などの効果を発揮するという点で、リン酸またはその塩を使用することが好ましく、リン酸二水素ナトリウムを使用することがさらに好ましい。
酸性物質は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
また、酸性の樹脂を使用(あるいは上記酸性物質と併用)することもできる。酸性の樹脂としては、例えば部分ナトリウム塩架橋ポリアクリル酸系樹脂などが挙げられる。
【0025】
(亜塩素酸塩)
本発明で使用される亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば亜塩素酸ナトリウム・亜塩素酸カリウム・亜塩素酸リチウムが挙げられ、亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム・亜塩素酸マグネシウム・亜塩素酸バリウムが挙げられる。なかでも、入手が容易という点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。これら亜塩素酸アルカリは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。
亜塩素酸塩水溶液における亜塩素酸塩の割合は、0.1重量%〜30重量%であることが好ましい。0.1重量%未満の場合は、二酸化塩素の発生において亜塩素酸塩が不足するという問題が生じる可能性があり、30重量%を超える場合は、亜塩素酸塩が飽和して結晶が析出しやすいという問題が生じる可能性がある。安全性や安定性、二酸化塩素の発生効率などを鑑みた場合、さらに好ましい範囲は、1重量%〜20重量%である。
【0026】
(徐放剤)
本発明で使用し得る徐放剤18としては、錠剤状に成形したものを使用することができるが、これに限らず、粉体や粒体を使用することもできる。徐放剤18には、例えば高吸水性ポリマーと酸性物質を混ぜ合わせ、錠剤状に成形する。即ち、本実施形態の徐放剤18は、酸性物質の担持体となっている。また、徐放剤18は、発生した二酸化塩素ガスを一旦取り込んで、二酸化塩素ガスの発生持続時間を引き延ばす役割をも担う。
徐放剤18を容器本体12の内部に収容する量は、当該徐放剤18に酸性物質が混入されている場合は、例えば亜塩素酸塩水溶液Bに含まれる亜塩素酸塩の全量と反応するために必要とされる最少量の酸性物質を含むようにする。図1には、四つの錠剤状の徐放剤18を容器本体12の内部に収容する場合を例示しているが、この数に限られるものではない。
徐放剤18を構成する材料としては特に限定はないが、例えば、デンプン系吸水性樹脂・セルロース系吸水性樹脂・合成ポリマー系吸水性樹脂・焼成骨材あるいは多孔質材料が挙げられる。
デンプン系吸水性樹脂としては、例えば、デンプン/ポリアクリル酸系樹脂[サンウエット(三洋化成社製、粉末)]があり、合成ポリマー系吸水性樹脂としては、例えば、架橋ポリアクリル酸系樹脂[アラソーブ(荒川化学社製、粉末)、ワンダーゲル(花王社製、粉末)、アクアキープ(住友精化社製、粉末)、ダイアウエット(三菱油化社製、粉末)]、イソブチレン/マレイン酸系樹脂[KIゲル(クラレ社製、粉末)]、及び、ポバール/ポリアクリル酸塩系樹脂[スミカゲル(住友化学社製、粉末)]がある。本発明において用いられる吸収性樹脂は、ここに例示されたもののみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限り、その他で慣用されている吸水性樹脂であってもかまわない。
焼成骨材としては、例えば動物(哺乳類、魚類、鳥類含む)の骨、貝殻及びサンゴを焼成して破砕片状、粒子状あるいは粉状にしたものを用いることができる。多孔質材料としては、例えばセピオライト、モンモリロナイト、ケイソウ土、タルク、ゼオライト等が挙げられる。
【0027】
本発明の二酸化塩素発生装置10を設置する場所は特に限定はなく、例えば一般家庭(リビングや玄関、お手洗いや台所など)に、また工業用(工場用)として、あるいは病院や診療所・介護施設などの医療現場、学校や駅舎・公衆トイレなどの公共施設などにと、あらゆる場面で使用することができる。また、人が居住し得る室内空間といった比較的広い空間だけでなく、冷蔵庫や下駄箱、車内(車、バス、電車)などの狭い空間においても使用することが可能であり、あるいは着衣のポケットに入れて携帯することも可能である。このように、本発明の発生装置は適用可能な空間の広さは特に制限されるものではない。
【0028】
本発明の二酸化塩素発生装置10は、例えば筒状の容器本体12の右端を右手で、左端を左手で持ち、該容器本体を円弧状に曲げることにより、内部に収納した易破壊性の封入体20が破壊され、封入体20の内部から亜塩素酸塩水溶液Bが流れ出る。容器本体12の内部には、酸性物質Aを含有する徐放剤18(あるいは酸性の徐放剤)が収納されているので、流れ出た亜塩素酸塩水溶液Bは徐放剤18と接触し、これにより二酸化塩素ガスが発生する。容器本体12内で発生した二酸化塩素ガスは、通気性・非透水体37で構成されたガス放出口14から容器本体12の外部に放出されていく。
【0029】
〔別実施の形態1〕
上述した実施形態では、容器本体12の内部には、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質Aを含有する徐放剤18(あるいは酸性の徐放剤18)を収納し、亜塩素酸塩水溶液Bを密封した易破壊性の封入体20を収納した場合について説明した。
【0030】
しかし、これに限らず、容器本体12の内部には、亜塩素酸塩を含有する徐放剤18を収納し、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質の水溶液を密封した易破壊性の封入体20を収納するように構成してもよい。
【0031】
この場合、容器本体12を円弧状に曲げることにより内部に収納した封入体20が破壊され、当該封入体20の破壊により酸性物質の水溶液が亜塩素酸塩と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスがガス放出口14を介して容器本体12の外部に放出されていくように構成される。
【0032】
本構成では、封入体20の破壊により酸性水溶液および亜塩素酸塩を含有する徐放剤18を接触させて二酸化塩素を発生させるため、発生した二酸化塩素は、ガス放出口14を介して容器本体12の外部に容易に放出させることができる。
【0033】
〔別実施の形態2〕
上述した実施形態において、容器本体12における底部に徐放剤18を積層し、当該徐放剤18の積層上面に封入体20を載置し、上端面が通気性・非透水体37の下面と当接し、下端面が封入体20の上面と当接する緩衝材22を設けることが可能である。
【0034】
当該緩衝材22は、クッション性を備えた部材で構成し、例えば、フェルトなどの不織布、ゴムなどの弾性材などが例示されるが、これに限られるものではない。
【0035】
このように緩衝材22を設けると、保存時や搬送中の振動によって易破壊性の封入体が容器本体内で動いたり、使用前に破損してしまうことを未然に防止することができる。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の二酸化塩素発生装置10の実施例について説明する。
【0037】
〔実施例1〕
図1は、本発明の一実施例を示す二酸化塩素発生装置10の断面図であり、図2はその分解斜視図である。例えばポリプロピレン、ポリエチレン、シリコン樹脂などの可撓性を有する素材からなる非透水性の密封された容器本体12は、一端に開口部(ガス放出口)14を有し、他端に底板部16を備えた円筒状(直径16〜18mm)をなしている。また、当該容器本体12は、開口部14から底板部16に向かうに従って、すなわち下方に向かうに従って漸次、わずかに径小となっている。
【0038】
容器本体12の内部は、開口部14側の端部に設けられた円柱状のキャップ24を取付ける空間を備えるガス放出部12aと、キャップ取付け空間と連続し、円柱状のガス発生空間を備える本体部12bに大きく分けられる。キャップ取付け空間はガス発生空間よりも径大となっている。例えば、ガス発生空間の内径を12mmとし、キャップ取付け空間の内径を16mmとする。
【0039】
図2に示すように、容器本体12の開口部14より、まず4個の徐放剤18が詰められ、容器本体12の底板部16の上に積み重ねられる。この徐放剤18は、高吸水性ポリマーと酸性物質Aを混ぜ合わせたものを通常の錠剤製剤工程(混合・練合・造粒・乾燥・成形・打錠など)を経て得られたものである。当該酸性物質Aは、水に溶解することにより酸性を示す物質で、例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物など、25℃における5%水溶液のpHが4.0〜5.5となるものである。
【0040】
1個の徐放剤18の大きさは、例えば、直径10mm、厚み7〜9mmである。積み重ねられた徐放剤18の上には、長尺状のガラスアンプル(直径10mm×130mm)が封入体20として載置される。当該封入体20の内部には、15重量%亜塩素酸ナトリウム水溶液B 5〜10gが充填され、従来公知の方法によって密封されている。封入体20の上には、クッション性を備えたフェルトからなる円柱状の緩衝材22が載せられている。この緩衝材22の下面、すなわち封入体20上端部との当接面は、封入体20におけるドーム状の上端部を受け入れるための凹入部22aが形成されている。緩衝材22は、容器本体12のガス発生空間(本体部12b)の上端部に取り付けられる。緩衝材22の大きさ(外径)は、容器本体12の本体部12bの内径よりも大きく作られており、素材自身が保有する緩衝材22の弾性力を利用して容器本体12の内部に取り付けられ、係止されている。
【0041】
この緩衝材22の上方、即ち、容器本体12におけるキャップ取付け空間(ガス放出部12a)には、円筒状のキャップ24が収容される。これにより溶液本体12の開口部14が閉蓋される。
【0042】
当該キャップ24は、蓋本体30および通気性・非透水体37から構成される。当該蓋本体30は、上端および下端が開口して上端開口部24aと下端開口部24bとを形成し、軸方向中央部において内周面から延びる平板26を備え、縦断面H型の態様となっている。当該平板26は、厚み方向に貫通する通気孔28が複数個設けてある。また、通気性・非透水体37は、円形・シート状の通気性・非透水シート(エクセポール)36の下面に、環状の通気性・非透水シート(エクセポール)36aを熱溶着した積層シートである。当該通気性・非透水体37は、蓋本体30の下端開口部24bに、下端開口部24bを覆って閉蓋するように熱溶着してある。本発明におけるガス放出口14は通気性・非透水体37により構成する。
【0043】
容器本体12におけるキャップ取付け空間(ガス放出部12a)にキャップ24を収納した際、キャップ24上端部と容器本体12の上端部が高さ的に位置が合致し、面一となるように構成することが好ましく、双方の上端部同士を熱を加えて熱溶着して容器本体12とキャップ24を一体化しておくことがさらに好ましい。これにより、容器本体12内部の液体の漏れを防ぐことができる。
【0044】
上記のように構成された二酸化塩素発生装置10における容器本体12の両端を手で持ち、該容器本体12を円弧状に曲げる。これにより、内部に収納した易破壊性の封入体20が破壊され、封入体20の内部から亜塩素酸ナトリウム水溶液Bが流れ出る。容器本体12の内部には、上述したように酸性物質Aを含有する徐放剤18が収納されているので、流れ出た亜塩素酸ナトリウム水溶液Bは酸性物質Aと接触し、これにより二酸化塩素ガスが発生する。容器本体12内で発生した二酸化塩素ガスは、通気性・非透水体37で構成されたガス放出口から通気孔28を経て、容器本体12の外部に放出される。
【0045】
なお、本実施例では、封入体20の内部に亜塩素酸ナトリウム水溶液を封入し、徐放剤18の中に酸性物質を混入させたが、これに限らず、封入体20の内部に酸性物質水溶液を封入し、徐放剤18の中に亜塩素酸ナトリウムを混入させてもよい。また、徐放剤18は、錠剤状に成形したものに限らず、粉体や粒体を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の二酸化塩素発生装置は、亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させるために利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 二酸化塩素発生装置
12 容器本体
14 開口部(ガス放出口)
18 徐放剤
20 封入体
22 緩衝材
37 通気性・非透水体
A 酸性物質
B 亜塩素酸塩水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、
外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の筒状の容器本体が設けられ、
前記容器本体は、通気性・非透水体で構成されたガス放出口を具備するとともに、前記ガス放出口以外の部分は密閉されて非透水構造をなし、
前記容器本体の内部には、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤が収納されるとともに、亜塩素酸塩水溶液を密封した易破壊性の封入体が収納され、
前記容器本体を円弧状に曲げることにより内部に収納した前記封入体が破壊され、当該封入体の破壊により前記亜塩素酸塩水溶液が前記酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出口を介して容器本体の外部に放出されていくようにしたことを特徴とする二酸化塩素発生装置。
【請求項2】
亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、
外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の筒状の容器本体が設けられ、
前記容器本体は、通気性・非透水体で構成されたガス放出口を具備するとともに、前記ガス放出口以外の部分は密閉されて非透水構造をなし、
前記容器本体の内部には、亜塩素酸塩を含有する徐放剤が収納されるとともに、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質の水溶液を密封した易破壊性の封入体が収納され、
前記容器本体を円弧状に曲げることにより内部に収納した前記封入体が破壊され、当該封入体の破壊により前記酸性物質の水溶液が前記亜塩素酸塩と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出口を介して容器本体の外部に放出されていくようにしたことを特徴とする二酸化塩素発生装置。
【請求項3】
亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、
外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の容器本体が設けられ、
前記容器本体は、一端に開口部を有した有底筒状をなし、
前記開口部がガス放出口として構成されるべく、通気性・非透水体により閉蓋されてなり、
前記容器本体の内部には、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤が収納されるとともに、亜塩素酸塩水溶液を密封した易破壊性の封入体が収納され、
前記容器本体を円弧状に曲げることにより内部に収納した前記封入体が破壊され、当該封入体の破壊により前記亜塩素酸塩水溶液が前記酸性物質を含有する徐放剤あるいは酸性の徐放剤と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出口を介して容器本体の外部に放出されていくようにしたことを特徴とする二酸化塩素発生装置。
【請求項4】
亜塩素酸塩と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、
外から力を加えることにより円弧状に湾曲し得る可撓性の容器本体が設けられ、
前記容器本体は、一端に開口部を有した有底筒状をなし、
前記開口部がガス放出口として構成されるべく、通気性・非透水体により閉蓋されてなり、
前記容器本体の内部には、亜塩素酸塩を含有する徐放剤が収納されるとともに、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質の水溶液を密封した易破壊性の封入体が収納され、
前記容器本体を円弧状に曲げることにより内部に収納した前記封入体が破壊され、当該封入体の破壊により前記酸性物質の水溶液が前記亜塩素酸塩と接触し、これにより発生する二酸化塩素ガスが前記ガス放出口を介して容器本体の外部に放出されていくようにしたことを特徴とする二酸化塩素発生装置。
【請求項5】
前記容器本体内部における底部に前記徐放剤が積層されるとともに、前記徐放剤の積層上面に前記封入体が載置され、
上端面が前記通気性・非透水体の下面と当接し、下端面が前記封入体の上面と当接する緩衝材が設けられてなることを特徴とする請求項3または4に記載の二酸化塩素発生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−230956(P2011−230956A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102333(P2010−102333)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(391003392)大幸薬品株式会社 (20)