説明

ステインの歯牙付着抑制用チューインガム

【課題】 唾液など口腔内に漂うステインの原因となるポリフェノールを取り除くことのできるステインの歯牙付着抑制用チューインガムを提供する。
【解決手段】 プロリン、ヒスチジンがタンパク質のアミノ酸組成の15%を超えるようなタンパク質であるゼラチン、コラーゲンが口腔内に漂うポリフェノールに強い選択性をもって吸着するので、これらを配合した歯牙へのステイン付着抑制用チューインガムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューインガムに関する。より詳細には、歯牙に付着するステインを防止するために、口中のポリフェノール化合物を除去することを目的にするステインの歯牙付着抑制用チューインガムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙の着色は、ステインと呼ばれる色素沈着物が歯牙へ沈着することにより生じ、審美上の大きな問題である。ステインの原因とされるものはいくつかあるが、飲食物に含まれるポリフェノール化合物が大きな原因のひとつとして考えられている。ステインを予防するための手段として、口中に存在するポリフェノールを除去することが考えられるが、これを満たすものは現在のところ開示されていない。
【0003】
ステインを除去するための手段として、研磨剤や化学物質が配合されている歯磨剤等の口腔用組成物を歯ブラシなどの用具を介して口に含み、刷掃するという方法により、付着した後に除去するという方法が一般的に用いられている。この方法では、高い効果は得られるが、使用するときと場所を選ぶため、手軽な手段とは言いがたい。手軽な手段として、特表2004−522456号公報にステインを除去するための研磨剤とポリリン酸塩を配合したチューインガムが開示されているが、ブラッシングを伴わないチューインガムでは、ステイン除去の効果は十分に得ることはできず、かえって味を損なう結果となる。ステイン付着を抑制する手段として、特開平2−200618号公報に示されたアミノアルキルシリコーンや、特開平5−163126号公報に示されたフルオロアルキルリン酸塩を配合した口腔用組成物が開示されているが、主に歯の表面に皮膜を形成するものであり、歯の表面以外、例えば舌の表面などにも皮膜を形成するため、味覚に問題などが起こる場合がある。また、特開2000−189060号公報には、ポリフェノールとゼラチンの複合体を主基剤として配合したステイン除去チューインガムが開示されているが、この発明は、口中のポリフェノールの除去でなく、歯牙に付着したステインを研磨剤により除去することを目的にしているに過ぎない。このため、手軽に有効な手段でステインの歯牙へ付着を抑制するために、歯牙に付着したステインでなく、口中すなわち唾液中などに存在するポリフェノールを除去できる手段の開発が望まれている。
【0004】
【特許文献1】 特表2004−522456号公報
【特許文献2】 特開平2−200618号公報
【特許文献3】 特開平5−163126号公報
【特許文献4】 特開2000−189060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の問題点を鑑みなされたものであって、唾液など口腔内に漂うステインの原因となるポリフェノールを取り除くことのできるステインの歯牙付着抑制用チューインガムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、タンパク質に吸着する性質を有しているポリフェノール化合物が、特にプロリン、および/又はヒスチジンがタンパク質のアミノ酸組成の15%を超えるようなタンパク質、すなわちゼラチン、コラーゲンに強い選択性をもって吸着することを見出し、口腔内に漂うポリフェノールを吸着し、歯牙へのステイン付着抑制するチューインガムを完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の各項に示す発明に関する。
項1: ステイン付着抑制剤としてゼラチン、コラーゲンから選ばれる1種以上を配合することを特徴とするステインの歯牙付着抑制用チューインガム組成物。
項2: チューインガム組成物の10倍縣濁液のpHが7.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のステインの歯牙付着抑制用チューインガム組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、口中のポリフェノール化合物を吸着することで、歯牙に付着するステインを予防することのできるステインの歯牙付着を抑制するチューインガムが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ゼラチン及びコラーゲンは、その構成アミノ酸組成のうち、プロリン、および/又はヒスチジンが15%以上を含むタンパク質である。一般的にタンパク質をつくるアミノ酸は20種類程度であり、通常タンパク質を構成するアミノ酸は、1つずつが5%程度である。1つ、もしくは2つの特定アミノ酸が、タンパク質のアミノ酸組成の15%を超えることは、稀であり、非常に特異的なタンパク質である。
【0010】
本発明に用いるゼラチン、コラーゲンは特に限定されるものなく、商業的に入手できる牛、豚、サメ、魚、植物などの由来のものを使用することができ、その配合量は0.01〜15重量%であり、0.1〜10重量%が特に好ましい。配合量が0.01重量%に満たないと十分な効果が得られず、15重量%を超えるとチューインガムが硬くなり、触感が悪くなるため不都合である。
【0011】
本発明に用いるゼラチン及びコラーゲンは、水不溶の担体に担持されていることが望ましい。このような水不溶の担体としては、特に制限されないが、例えば沈降性シリカ、ゲルシリカ等のシリカ、リン酸水素カルシウム・2水和物および無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、天然カルシウム(未焼成又焼成カルシウム)(卵殼、貝殻、骨、乳清)、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、軽石(パミス)、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、天然チクル、酢酸ビニルなど合成樹脂などを例示することができ、中でも沈降性シリカ、ゲルシリカ、リン酸水素カルシウム・2水和物および無水和物、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ハイドロキシアパタイト、酢酸ビニルが好ましく、特に沈降性シリカ、ゲルシリカ、リン酸水素カルシウム・2水和物および無水和物、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ハイドロキシアパタイト、酢酸ビニルが好ましく、沈降性シリカが最も好ましい。
【0012】
これら担体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上用いてゼラチン及びコラーゲンを担持でき、その方法は、特に限定されるものでなく、例えばゼラチンやコラーゲンを水に溶解した後、その水溶液を吸着し乾燥させるなどの方法がある。
【0013】
本発明では、ガムベースとして、天然チクル、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、酢酸ビニル樹脂、カルナバロウ、シェラック、パラフィンワックス、ミツロウ、エステルガム、ポリブテンなどの一般的なガムベースを用いることができ、本発明のチューインガム組成物では、それを10倍の水で懸濁するときの水のpHが7.0以下が好ましい。
【0014】
チューインガム組成物の水懸濁液のpHについて説明すると、チューインガムのpHはポリフェノールの吸着力に関係し、pHが低いほど、強いポリフェノール吸着力を示す。本発明では、チューインガム組成物のpHを以下の方法で測定する。
【0015】
pHの測定方法:本発明のチューインガム0.2gをとり、ナイフを用いて粉砕する。それに2gの水を加え、ボルテックスミキサーを用いて30秒間懸濁し、pHメーターを用いて測定する。
【0016】
また、本発明の組成物では、上記した方法で測定するときのpHを7.0以下とするために、例えばクエン酸及びその塩、リン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸誘導体及びその塩、グルコン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、乳酸及びその塩、酢酸、フマル酸、フィチン酸などを配合することができる。これらのうち、味の面から、クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩が好ましい。
【0017】
本発明の組成物には、化学的、物理的にステインを除去するような成分を配合するとそのステイン除去効果とあいまって好ましい。そのようなステイン除去成分は、例えば一般式(1)及び(2)で示される水溶性縮合リン酸塩や、一般式(3)で示されるスルホコハク酸系界面活性剤、パパイン等のタンパク質分解酵素、過酸化水素、過酸化尿素や過酸化カルシウムなどの過酸化物、研磨剤などがあげられる。ステイン除去成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。その配合量は組成物全体に対して、0.01%〜10%である。
【0018】
一般式(1):
【0019】
【化1】

[式1中、Mは、NaまたはKを示し、nは2以上の整数である。]
【0020】
一般式(2):
【0021】
【化2】

[式2中、Mは、NaまたはKを示し、nは3以上の整数である。]
【0022】
一般式(3):
【0023】
【化3】

[式3中、R1は炭素数8〜22のアルキル基もしくはアルケニル基、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、平均付加モル数nは0〜20、MおよびMは、それぞれ同一または異なり、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルカノールアミンを表す。]
【0024】
本発明の組成物は、常法に従って製造することができ、通常配合される成分を、本発明の効果を損なわない限りにおいて、剤形などに応じて適宜配合することができる。このような成分としては、例えば、サポニン、キラヤ抽出物、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、レシチン(酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、卵黄レシチン、植物レシチン)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの乳化剤;
【0025】
ペパーミント油、スペアミント油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、ベルガモット油、ラベンダー油、セージ油、ローレル油、カモミール油、バジル油、キャラウエイ油、シナモン油、ジンジャー油、シソ油、タイム油、ナツメグ油、コリアンダー油、ローズマリー油、クローブ油、ゼラニウム油、ダバナ油、冬緑油、ユーカリ油、ティーツリー油、スターアニス油、フェンネル油などの精油類、パプリカオレオレジン、バニラエキストラクトなどの香辛料抽出物類、メントール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、アネトール、サリチル酸メチル、リモネン、シトロネラール、シトラール、シネオール、リナロール、チモール、エステル類、アルデヒド類、イオノン、バニリン、エチルバニリン、マルトールなどの香味料;
【0026】
グルコース、キシロース、フルクトースなどの単糖類、ショ糖、トレハロース、パラチノース、マルトース、ラクトース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクチュロースなどの二糖類、でん粉、デキストリン、セルロース、ヘミセルロース、マンナン、キシランなどの多糖類、キシリトール、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトールなどの糖アルコール類、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、ステビア末、アマチャ抽出物、アセスルファムK、スクラロース、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ、カンゾウ末、タウマチン、アスパルテームL−フェニルアラニン化合物などの天然・人工甘味料の甘味料。これら甘味剤は、単独で用いても2種以上を用いてもよく、甘味剤の配合量は、組成物全体に対して、通常、0.01〜80重量%である。
【0027】
保存料としては、安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩、亜硫酸ナトリウム、エチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類、ヒノキチオールなどが例示される。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよく、その配合量は、通常、組成物全体に対して0.01〜3重量%である。
【0028】
着色剤としては、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号などの法定色素、群青、強化群青、紺青などの鉱物系色素、酸化チタン、クロロフィル、クロロフィリン、銅クロロフィル、銅クロロフィリンNa、鉄クロロフィリンNa、天然植物抽出色素などが例示される。これらの着色剤は、単独でも用いても、2種類以上を併用してもよい。
【実施例】
【0029】
以下実例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、[%]は[重量%]を示す。
【0030】
下記に示す成分を配合し、常法に従ってチューインガムを調製し、評価に用いた。
成分 (%)
酢酸ビニル 30.0
キシリトール 21.0
パラチニット 21.0
エリスリトール 21.0
アスパルテーム 0.1
香味料 2.0
豚由来ゼラチン 表1
牛血清アルブミン 表1
リン酸三ナトリウム 表1
リン酸二水素ナトリウム 表1
水 残部
合計 100.0
【0031】
評価方法
チューインガム0.2gを砕片化し、2gの蒸留水を加えて十分に攪拌しチューインガム懸濁液を得た。この液のpHを測定した後、0.1%タンニン酸水溶液1mL、塩化ナトリウム0.05gを加えた後、室温で30分間浸透し遠心分離を行い、上澄2mLをとり、10%トリエタノールアミン水溶液を加え攪拌した。この液に、0.01M塩化鉄水溶液を1mL加え、15分後の510nmの吸光度を測定した。得られた値と検量線から、チューインガム懸濁液の上澄に残存するタンニン酸量を算出し、以下の式でタンニン酸除去率を算出し、91%以上を○、60〜90%を△、60未満を×と評価した。
【0032】
【式1】
(タンニン酸除去率)=(1−(タンニン酸量残存量)/(添加タンニン酸量))×100
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示すとおり、プロリン、および/もしくはヒスチジンが構成アミノ酸の15%以上であるタンパク質である豚由来ゼラチンを配合したチューインガムは、ポリフェノール化合物を強く吸着し、ポリフェノール化合物の除去効果を示した。また、pH7以下の場合に、pH7より高い場合と比較して、高いポリフェノール除去効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、口中のポリフェノール化合物を吸着することで、歯牙に付着するステインを予防することのできるステインの歯牙付着を抑制するチューインガムを提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステイン付着抑制剤としてゼラチン、コラーゲンから選ばれる1種以上を配合することを特徴とするチューインガム組成物。
【請求項2】
チューインガム組成物の10倍縣濁液のpHが7.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のチューインガム組成物。

【公開番号】特開2006−169226(P2006−169226A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382560(P2004−382560)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】