ステップドリル
【課題】ステップドリルの先端側の切刃が磨耗した場合に、そのドリルを丸ごと取り替えなくても、その先端部を取り替えるだけで、再使用することができるステップドリルを提供する。
【解決手段】シャンク1とボデー2とを有し、ボデー2には切屑を排出するための溝3と、この溝3により分割され、ボデー2にそれぞれ段差状に形成された複数のランド群4を備え、ドリル先端部5を有し小径のランド4aが形成された交換体6と、前記シャンク1を有し交換体6の小径のランド4aより大径のランド4bが形成された本体7とにより別体として構成し、この本体7の先端嵌合部7aに前記交換体6の後端嵌合部6aを着脱自在として嵌合し、固着したものとし、前記ランド群4を、交換体6の小径のランド4aと本体7の大径のランド4bから形成されたものとし、前記ランド群4と前記溝3とで形成されるエッジ部に主切刃8aおよび副切刃8bを形成した。
【解決手段】シャンク1とボデー2とを有し、ボデー2には切屑を排出するための溝3と、この溝3により分割され、ボデー2にそれぞれ段差状に形成された複数のランド群4を備え、ドリル先端部5を有し小径のランド4aが形成された交換体6と、前記シャンク1を有し交換体6の小径のランド4aより大径のランド4bが形成された本体7とにより別体として構成し、この本体7の先端嵌合部7aに前記交換体6の後端嵌合部6aを着脱自在として嵌合し、固着したものとし、前記ランド群4を、交換体6の小径のランド4aと本体7の大径のランド4bから形成されたものとし、前記ランド群4と前記溝3とで形成されるエッジ部に主切刃8aおよび副切刃8bを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板、木板、合板などに、大小の径の穴をあけることができるステップドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のステップドリルとしては、例えば図15に示したように、シャンク21とボデー22とを有し、ボデー22には切屑を排出するための溝23と、この溝23により分割され、ボデー22にそれぞれ段差状に形成された二条のランド群24を備えたものが存在する。このステップドリルは、前記ランド群24の先端部にはドリル先端部25が形成されており、ランド群24は複数のランド24aを備えており、各ランド24aがそれぞれ錐台部26aと土台部26bを有している。そして、このステップドリルは、前記錐台部26a及び土台部26bにおいて、溝23とで形成されるエッジ部であって、ドリルの回転方向のエッジ部には、それぞれ超硬材料からなる主切刃27a及び副切刃27bを複数形成したものとしている。
【特許文献1】特開平11−239907号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のステップドリルは、ドリルを回転させると、エッジ部に形成された主切刃27a及び副切刃27bにより加工物が切削されるが、これら切刃は超硬材料からなるので、ステンレス等の難切削材料を切削する場合にも、切刃の磨耗が低減されるとしている。その結果、上記従来のステップドリルでは、ドリルの寿命を長くすることができるという効果が得られるとしている。
【0004】
しかしながら、上記従来のステップドリルは、ドリルの寿命を長くすることができるといっても、長年の使用によっていずれは切刃が磨耗して、ドリルの寿命が尽きてしまうことになる。特に、ステップドリルの先端側の切刃は、大小の径の穴をあける場合にも必ず、その切削に使用されるので、使用頻度が激しく磨耗し易いと言える。そして、この先端側の切刃が磨耗してしまえば、後端側の切刃が磨耗していなくても、ステップドリルとして使用できなくなり、寿命が尽きてしまうことになる。
【0005】
ドリルの寿命が尽きれば、新しいものに取り替えるのであるが、この種のステップドリルでは、ボデー22にそれぞれ段差状に形成された複数のランド24aを備えたものとしているので、製造工程が多く、その加工も複雑であり、超硬材料からなるので、ドリルそのものの値段が高価なものになっている。
【0006】
ところで、上記従来のステップドリルでは、ドリルの先端側の切刃が磨耗してしまうたびに、ドリルを丸ごと取り替えることになるが、ドリルを丸ごと取り替えていたのでは、使用者にとってはそのドリルの購入費が高くつき、複数本、常備携帯するのは困難であるという問題点を有していた。
【0007】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、ステップドリルの先端側の切刃が磨耗してしまっても、そのドリルを丸ごと取り替えなくても、ステップドリルの先端部を取り替えるだけで、再使用することができるステップドリルを提供することを目的とし、さらにその先端部をより安価なコストで製造することができるステップドリルを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、この発明は、シャンク1とボデー2とを有し、ボデー2には切屑を排出するための溝3と、この溝3により分割され、ボデー2にそれぞれ段差状に形成された複数のランド群4を備えたステップドリルであって、このステップドリルは、ドリル先端部5を有し小径のランド4aが形成された交換体6と、前記シャンク1を有し交換体6の小径のランド4aより大径のランド4bが形成された本体7とにより別体として構成し、この本体7の先端嵌合部7aに前記交換体6の後端嵌合部6aを着脱自在として嵌合し、固着したものとし、前記ランド群4を、交換体6の小径のランド4aと本体7の大径のランド4bから形成されたものとし、前記ランド群4と前記溝3とで形成されるエッジ部に主切刃8aおよび副切刃8bを形成したものとしている。
【0009】
さらに、この発明のステップドリルは、前記交換体6の小径ランド4aを複数形成し、本体7の大径のランド4bを複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとし、各ランド4a、4bがそれぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有し、前記交換体6の後端嵌合部6aは、本体7のシャンク1と同軸に位置する角軸とした軸部11とし、前記本体7の先端嵌合部7aは、前記交換体6の軸部11が差し込まれる角穴とした挿入穴13としている。
【0010】
また、この発明のステップドリルは、前記交換体6の小径ランド4aを複数形成し、本体7の大径のランド4bを複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとし、各ランド4a、4bがそれぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有し、前記本体7の先端嵌合部7aは、本体7のシャンク1と同軸に位置するようにこの本体7の先端部に設けた角軸とした軸部11とし、前記交換体6の後端嵌合部6aは、前記本体7の軸部11が差し込まれる角穴とした挿入穴13としている。
【0011】
さらに、この発明のステップドリルは、前記交換体6の小径ランド4aを複数形成し、本体7の大径のランド4bを複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとし、各ランド4a、4bがそれぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有し、前記交換体6の後端嵌合部6aは、本体7のシャンク1と同軸に位置する軸部11と、本体7の最上部の錐台部9bの一部となる嵌合凸部12とからなり、前記本体7の先端嵌合部7aは、前記交換体6の軸部11が差し込まれる挿入穴13と、最上部となる錐台部9bの一部を切欠いた嵌合凹部14とからなるものとしている。
【0012】
また、この発明のステップドリルは、前記交換体6の小径ランド4aを複数形成し、本体7の大径のランド4bを複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとし、各ランド4a、4bがそれぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有し、前記本体7の先端嵌合部7aは、本体7のシャンク1と同軸に位置するようにこの本体7の先端部に設けられた軸部11と、交換体6の最下部の錐台部9aの一部となる嵌合凸部12とからなるものとし、前記交換体6の後端嵌合部6aは、前記本体7の軸部11が差し込まれる挿入穴13と、最下部となる錐台部9aの一部を切欠いた嵌合凹部14とからなるものとしている。
【0013】
そして、この発明のステップドリルは、前記交換体6の最下部の土台部10aの周面を前記本体7の最上部の土台部10bから少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の土台部10bから少し食み出した交換体6の土台部10aの周面と本体7の土台部10bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さくするように、前記交換体6の土台部10aの周面を研削加工したものとしている。
【0014】
さらに、この発明のステップドリルは、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを前記本体7の嵌合凹部14から少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の嵌合凹部14から食み出した交換体6の嵌合凸部12の両表面12aと本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さくするように、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを研削加工したものとしている。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、以上に述べたように構成されており、ステップドリルの先端側の切刃が磨耗してしまっても、そのドリルを丸ごと取り替えなくても、ステップドリルの先端部を取り替えるだけで、再使用することができるものとなり、使用者にとってはそのステップドリルの先端部を購入すればよく、その購入費は高くつくことがなく、その先端部を複数本、常備携帯しておけるものとなった。
【0016】
さらに、この発明は、前記ステップドリルの先端部をより安価なコストで製造することができるので、使用者にとってはそのステップドリルの先端部をより安価な値段で購入できるものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明のステップドリルを実施するための最良の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
この発明のステップドリルは、図に示したように、基端部に設けられた六角軸状のシャンク1と、このシャンク1から先端部に向かって略円錐状に形成されたボデー2とを有している。
【0019】
ボデー2は、先端に行くほど先細となる略円錐状であって、その基端部から先端部に向かって断面がV字状の二条の溝3がドリルの中心軸線Lを中心として対向して形成されており、これらの溝3によって切屑を排出するようにしている。さらに、このボデー2には、前記二条の溝3により分割され、それぞれ段差状に形成された複数のランド群4を備えたものとしている。なお、前記溝3は、図に示していないが、断面がU字状であってもよく、またスパイラル状に形成してもよく、条数も三条や四条などとするなど、適宜の形状や条数として実施できるのは言うまでもない。
【0020】
そして、この発明のステップドリルは、ドリル先端部5を有し小径のランド4aが形成された交換体6と、前記シャンク1を有し、この交換体6の小径のランド4aより大径のランド4bが形成された本体7とにより別体として構成したものとし、この本体7に形成した先端嵌合部7aに、前記交換体6に形成した後端嵌合部6aを着脱自在として嵌合し、固着したものとしている。
【0021】
ランド群4は、前記交換体6の小径のランド4aと本体7の大径のランド4bから形成されたものとし、これらランド群4と前記溝3とで形成されるエッジ部であって、ドリルの回転方向のエッジ部には、主切刃8aおよび副切刃8bを複数形成したものとしている。
【0022】
すなわち、図示したステップドリルでは、前記交換体6の小径のランド4aを外径が徐々に大きくなるように段差状に複数形成し、本体7の大径のランド4bを外径が徐々に大きくなるように段差状にそれぞれ複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとしている。そして、前記各ランド4a、4bは、それぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有している。また、前記各ランド4a、4bの外径寸法が、二条の溝3の一方に数字で表示されている。図示したステップドリルでは、小径のランド4aを6〜12mmまでとし、大径のランド4bを15mm以上としている。なお、前記小径のランド4aは、6〜12mmより大きい外径寸法または6〜12mmより小さい外径寸法に設定しても良いのは言うまでもない。
【0023】
前記交換体6の後端嵌合部6aは、図1〜7に示したものでは、本体7のシャンク1と同軸に位置するように交換体6の基端部に設けられた角軸とした軸部11としている。前記本体7の先端嵌合部7aは、前記交換体6の軸部11が差し込まれる角穴とした挿入穴13としている。さらに、前記本体7の先端嵌合部7aは、図に示していないが、本体7のシャンク1と同軸に位置するようにこの本体7の先端部に設けた角軸とした軸部11とすることができる。この場合、前記交換体6の後端嵌合部6aは、前記本体7の軸部11が差し込まれる角穴とした挿入穴13とすることができる。なお、前記軸部11は、四角軸としたものを図に示しているが、三角軸や六角軸などとしてもよい。また、前記挿入穴13も、軸部11の形状に応じた角穴とするのは言うまでもない。そして、前記挿入穴13には、本体7の錐台部9bの周面または土台部10bの周面から連通するようにしたネジ穴15が形成されている。このネジ穴15には、虫ネジ16をねじ込んだものとしており、虫ネジ16を締め付けた状態で、ネジ穴14から突出しないようにしている。
【0024】
さらに、前記交換体6の後端嵌合部6aは、図8〜14に示したものでは、本体7のシャンク1と同軸に位置するように交換体6の基端部に設けられた軸部11と、本体7の最上部の錐台部9bの一部となる嵌合凸部12とからなる。前記本体7の先端嵌合部7aは、前記交換体6の軸部11が差し込まれる挿入穴13と、最上部となる錐台部9bの一部を切欠いた嵌合凹部14とからなるものとしている。また、前記本体7の先端嵌合部7aは、図に示していないが、本体7のシャンク1と同軸に位置するようにこの本体7の先端部に設けられた軸部11と、交換体6の最下部の錐台部9aの一部となる嵌合凸部12とからなるものにすることができる。この場合、前記交換体6の後端嵌合部6aは、前記本体7の軸部11が差し込まれる挿入穴13と、最下部となる錐台部9aの一部を切欠いた嵌合凹部14とからなるものにすることができる。そして、前記挿入穴13には、本体7の錐台部9bの周面または土台部10bの周面から連通するようにしたネジ穴15が形成されている。このネジ穴15には、虫ネジ16をねじ込んだものとしており、虫ネジ16を締め付けた状態で、ネジ穴14から突出しないようにしている。なお、前記交換体6の軸部11は、丸軸としているが、角軸であってもよく、特にその軸形状については問われることなく、任意の軸形状のものを選択すればよい。
【0025】
前記嵌合凸部12は、図13に示したように、軸部11と直角に交差するようにした略台形台形状の横長凸部を一直線状に形成したものとしており、その表面12aが錐台部9bの周面の一部になるものとしている。前記嵌合凹部14は、この嵌合凸部12が丁度嵌まり込むようにした略台形台形状の横長溝を一直線状に形成したものとしている。さらに、前記嵌合凸部12は、図に示していないが、軸部11と直角に交差するようにした略台形台形状の横長凸部を十字形状に形成したものとすることができる。この場合、前記嵌合凹部14は、この嵌合凸部12が丁度嵌まり込むようにした略台形台形状の横長溝を十字形状に形成したものとすることができる。
【0026】
したがって、図1〜7に示したこの発明のステップドリルでは、前記本体7の先端嵌合部7aの挿入穴13に交換体6の後端嵌合部6aの軸部11を挿入し、前記ネジ穴15にねじ込んだ虫ネジ16を締め付けて、この虫ネジ16を前記挿入穴13に挿入した軸部11に押し当てるようにすれば、本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aが固着されて抜けなくなる。また、図8〜14に示したこの発明のステップドリルでは、前記本体7の先端嵌合部7aの挿入穴13に交換体6の後端嵌合部6aの軸部11を挿入し、その先端嵌合部7aの嵌合凹部14に後端嵌合部6aの嵌合凸部12を嵌合し、前記ネジ穴15にねじ込んだ虫ネジ16を締め付けて、この虫ネジ16を前記挿入穴13に挿入した軸部11に押し当てるようにすれば、本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aが固着されて抜けなくなる。
【0027】
そして、この発明のステップドリルは、前記虫ネジ16を緩めて、この虫ネジ16を前記挿入穴13に挿入した軸部11に当たらないようにすれば、本体7の先端嵌合部7aから交換体6の後端嵌合部6aを抜くことができ、この交換体6を新しいものに取り替えることができる。
【0028】
さらに、この発明のステップドリルは、図1〜7に示したものでは、前記交換体6の最下部の土台部10aの周面を前記本体7の最上部の土台部10bから少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の土台部10bから少し食み出した交換体6の土台部10aの周面と本体7の土台部10bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さく、すなわち約2〜3/100ミリになるように、前記交換体6の土台部10aの周面を研削加工したものとしている。また、この発明のステップドリルは、図示していないが、前記交換体6の最下部の錐台部9aの周面を前記本体7の最上部の錐台部9bから少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の錐台部9bから少し食み出した交換体6の錐台部9aの周面と本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さく、すなわち約2〜3/100ミリになるように、前記交換体6の錐台部9aの周面を研削加工したものとしてもよい。
【0029】
また、この発明のステップドリルは、図8〜14に示したものでは、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを前記本体7の嵌合凹部14から少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の嵌合凹部14から食み出した交換体6の嵌合凸部12の両表面12aと本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さく、すなわち約2〜3/100ミリになるように、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを研削加工したものとしている。
【0030】
前記土台部10aの周面と土台部10bの周面との間に生ずる段差、錐台部9aの周面と錐台部9bの周面との間に生ずる段差、または前記嵌合凸部12の両表面12aと錐台部9bの周面との間に生ずる段差が、約2〜3/100ミリより大きくなると、この段差によって土台部10a、10b、錐台部9a、9bの円滑摺動を阻害される。さらに、この段差部分に切り粉、切り屑が食い込み、徐々に肥大化して、段差部分の円周径が切刃径を超えて大きくなり、擦るだけで切削不能となることがある。
【0031】
前記段差を約2〜3/100ミリ程度にするには、超高精度の加工機を使用すれば、前記したように土台部10aの周面と土台部10bの周面とを位置合わせすることなく加工ができ、さらに前記したように交換体6の錐台部9aの周面と本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせすることなく加工ができ、また前記したように交換体6の嵌合凸部12の両表面12aと本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせすることなく加工することができる。しかし、この超高精度の加工機は、購入費や維持費が高くつき、製造コストも高いものとなる。
【0032】
そこで、この発明では、通常の精度の加工機を用いて、約5〜7/100ミリの精度のバラツキで前記交換体6の最下部の土台部10aの周面を前記本体7の最上部の土台部10bから少し食み出す程度の大きさに作成したり、前記交換体6の最下部の錐台部9aの周面を前記本体7の最上部の錐台部9bから少し食み出す程度の大きさに作成したり、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを前記本体7の嵌合凹部14から少し食み出す程度の大きさに作成する。そして、本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記したように交換体6の最下部の土台部10aの周面を研削加工したり、交換体6の最下部の錐台部9aの周面を研削加工したり、交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを研削加工すれば、通常の精度の加工機でも約2〜3/100ミリの段差までに加工することができ、製造コストを低く抑えることができるものとなる。
【0033】
そして、この発明のステップドリルは、その先端側の切刃、すなわち交換体6の切刃が磨耗すれば、前記したように本体7のネジ穴15にねじ込んだ虫ネジ16を緩めれば、本体7から交換体6を抜くことができるので、この交換体6を新しいものに非常に簡単に取り替えることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明のステップドリルの一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示すこの発明のステップドリルの背面図である。
【図3】図1に示すこの発明のステップドリルの平面図である。
【図4】図1に示すこの発明のステップドリルの一部断面正面図である。
【図5】図1に示すこの発明のステップドリルの一部断面背面図である。
【図6】図1に示すこの発明のステップドリルの斜視図である。
【図7】図1に示すこの発明のステップドリルの分解斜視図である。
【図8】この発明のステップドリルの他の実施形態を示す正面図である。
【図9】図8に示すこの発明のステップドリルの背面図である。
【図10】図8に示すこの発明のステップドリルの平面図である。
【図11】図8に示すこの発明のステップドリルの一部断面正面図である。
【図12】図8に示すこの発明のステップドリルの一部断面背面図である。
【図13】図8に示すこの発明のステップドリルの斜視図である。
【図14】図8に示すこの発明のステップドリルの分解斜視図である。
【図15】従来のステップドリルの正面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 シャンク
2 ボデー
3 溝
4 ランド群
4a ランド
4b ランド
5 ドリル先端部
6 交換体
7 本体
8a 主切刃
8b 副切刃
9a 錐台部
9b 錐台部
10a 土台部
10b 土台部
11 軸部
12 嵌合凸部
12a 表面
13 挿入穴
14 嵌合凹部
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板、木板、合板などに、大小の径の穴をあけることができるステップドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のステップドリルとしては、例えば図15に示したように、シャンク21とボデー22とを有し、ボデー22には切屑を排出するための溝23と、この溝23により分割され、ボデー22にそれぞれ段差状に形成された二条のランド群24を備えたものが存在する。このステップドリルは、前記ランド群24の先端部にはドリル先端部25が形成されており、ランド群24は複数のランド24aを備えており、各ランド24aがそれぞれ錐台部26aと土台部26bを有している。そして、このステップドリルは、前記錐台部26a及び土台部26bにおいて、溝23とで形成されるエッジ部であって、ドリルの回転方向のエッジ部には、それぞれ超硬材料からなる主切刃27a及び副切刃27bを複数形成したものとしている。
【特許文献1】特開平11−239907号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のステップドリルは、ドリルを回転させると、エッジ部に形成された主切刃27a及び副切刃27bにより加工物が切削されるが、これら切刃は超硬材料からなるので、ステンレス等の難切削材料を切削する場合にも、切刃の磨耗が低減されるとしている。その結果、上記従来のステップドリルでは、ドリルの寿命を長くすることができるという効果が得られるとしている。
【0004】
しかしながら、上記従来のステップドリルは、ドリルの寿命を長くすることができるといっても、長年の使用によっていずれは切刃が磨耗して、ドリルの寿命が尽きてしまうことになる。特に、ステップドリルの先端側の切刃は、大小の径の穴をあける場合にも必ず、その切削に使用されるので、使用頻度が激しく磨耗し易いと言える。そして、この先端側の切刃が磨耗してしまえば、後端側の切刃が磨耗していなくても、ステップドリルとして使用できなくなり、寿命が尽きてしまうことになる。
【0005】
ドリルの寿命が尽きれば、新しいものに取り替えるのであるが、この種のステップドリルでは、ボデー22にそれぞれ段差状に形成された複数のランド24aを備えたものとしているので、製造工程が多く、その加工も複雑であり、超硬材料からなるので、ドリルそのものの値段が高価なものになっている。
【0006】
ところで、上記従来のステップドリルでは、ドリルの先端側の切刃が磨耗してしまうたびに、ドリルを丸ごと取り替えることになるが、ドリルを丸ごと取り替えていたのでは、使用者にとってはそのドリルの購入費が高くつき、複数本、常備携帯するのは困難であるという問題点を有していた。
【0007】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、ステップドリルの先端側の切刃が磨耗してしまっても、そのドリルを丸ごと取り替えなくても、ステップドリルの先端部を取り替えるだけで、再使用することができるステップドリルを提供することを目的とし、さらにその先端部をより安価なコストで製造することができるステップドリルを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、この発明は、シャンク1とボデー2とを有し、ボデー2には切屑を排出するための溝3と、この溝3により分割され、ボデー2にそれぞれ段差状に形成された複数のランド群4を備えたステップドリルであって、このステップドリルは、ドリル先端部5を有し小径のランド4aが形成された交換体6と、前記シャンク1を有し交換体6の小径のランド4aより大径のランド4bが形成された本体7とにより別体として構成し、この本体7の先端嵌合部7aに前記交換体6の後端嵌合部6aを着脱自在として嵌合し、固着したものとし、前記ランド群4を、交換体6の小径のランド4aと本体7の大径のランド4bから形成されたものとし、前記ランド群4と前記溝3とで形成されるエッジ部に主切刃8aおよび副切刃8bを形成したものとしている。
【0009】
さらに、この発明のステップドリルは、前記交換体6の小径ランド4aを複数形成し、本体7の大径のランド4bを複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとし、各ランド4a、4bがそれぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有し、前記交換体6の後端嵌合部6aは、本体7のシャンク1と同軸に位置する角軸とした軸部11とし、前記本体7の先端嵌合部7aは、前記交換体6の軸部11が差し込まれる角穴とした挿入穴13としている。
【0010】
また、この発明のステップドリルは、前記交換体6の小径ランド4aを複数形成し、本体7の大径のランド4bを複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとし、各ランド4a、4bがそれぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有し、前記本体7の先端嵌合部7aは、本体7のシャンク1と同軸に位置するようにこの本体7の先端部に設けた角軸とした軸部11とし、前記交換体6の後端嵌合部6aは、前記本体7の軸部11が差し込まれる角穴とした挿入穴13としている。
【0011】
さらに、この発明のステップドリルは、前記交換体6の小径ランド4aを複数形成し、本体7の大径のランド4bを複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとし、各ランド4a、4bがそれぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有し、前記交換体6の後端嵌合部6aは、本体7のシャンク1と同軸に位置する軸部11と、本体7の最上部の錐台部9bの一部となる嵌合凸部12とからなり、前記本体7の先端嵌合部7aは、前記交換体6の軸部11が差し込まれる挿入穴13と、最上部となる錐台部9bの一部を切欠いた嵌合凹部14とからなるものとしている。
【0012】
また、この発明のステップドリルは、前記交換体6の小径ランド4aを複数形成し、本体7の大径のランド4bを複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとし、各ランド4a、4bがそれぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有し、前記本体7の先端嵌合部7aは、本体7のシャンク1と同軸に位置するようにこの本体7の先端部に設けられた軸部11と、交換体6の最下部の錐台部9aの一部となる嵌合凸部12とからなるものとし、前記交換体6の後端嵌合部6aは、前記本体7の軸部11が差し込まれる挿入穴13と、最下部となる錐台部9aの一部を切欠いた嵌合凹部14とからなるものとしている。
【0013】
そして、この発明のステップドリルは、前記交換体6の最下部の土台部10aの周面を前記本体7の最上部の土台部10bから少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の土台部10bから少し食み出した交換体6の土台部10aの周面と本体7の土台部10bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さくするように、前記交換体6の土台部10aの周面を研削加工したものとしている。
【0014】
さらに、この発明のステップドリルは、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを前記本体7の嵌合凹部14から少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の嵌合凹部14から食み出した交換体6の嵌合凸部12の両表面12aと本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さくするように、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを研削加工したものとしている。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、以上に述べたように構成されており、ステップドリルの先端側の切刃が磨耗してしまっても、そのドリルを丸ごと取り替えなくても、ステップドリルの先端部を取り替えるだけで、再使用することができるものとなり、使用者にとってはそのステップドリルの先端部を購入すればよく、その購入費は高くつくことがなく、その先端部を複数本、常備携帯しておけるものとなった。
【0016】
さらに、この発明は、前記ステップドリルの先端部をより安価なコストで製造することができるので、使用者にとってはそのステップドリルの先端部をより安価な値段で購入できるものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明のステップドリルを実施するための最良の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
この発明のステップドリルは、図に示したように、基端部に設けられた六角軸状のシャンク1と、このシャンク1から先端部に向かって略円錐状に形成されたボデー2とを有している。
【0019】
ボデー2は、先端に行くほど先細となる略円錐状であって、その基端部から先端部に向かって断面がV字状の二条の溝3がドリルの中心軸線Lを中心として対向して形成されており、これらの溝3によって切屑を排出するようにしている。さらに、このボデー2には、前記二条の溝3により分割され、それぞれ段差状に形成された複数のランド群4を備えたものとしている。なお、前記溝3は、図に示していないが、断面がU字状であってもよく、またスパイラル状に形成してもよく、条数も三条や四条などとするなど、適宜の形状や条数として実施できるのは言うまでもない。
【0020】
そして、この発明のステップドリルは、ドリル先端部5を有し小径のランド4aが形成された交換体6と、前記シャンク1を有し、この交換体6の小径のランド4aより大径のランド4bが形成された本体7とにより別体として構成したものとし、この本体7に形成した先端嵌合部7aに、前記交換体6に形成した後端嵌合部6aを着脱自在として嵌合し、固着したものとしている。
【0021】
ランド群4は、前記交換体6の小径のランド4aと本体7の大径のランド4bから形成されたものとし、これらランド群4と前記溝3とで形成されるエッジ部であって、ドリルの回転方向のエッジ部には、主切刃8aおよび副切刃8bを複数形成したものとしている。
【0022】
すなわち、図示したステップドリルでは、前記交換体6の小径のランド4aを外径が徐々に大きくなるように段差状に複数形成し、本体7の大径のランド4bを外径が徐々に大きくなるように段差状にそれぞれ複数形成し、前記ランド群4が、交換体6の複数のランド4aと、本体7の複数のランド4bから成るものとしている。そして、前記各ランド4a、4bは、それぞれ錐台部9a、9bと土台部10a、10bを有している。また、前記各ランド4a、4bの外径寸法が、二条の溝3の一方に数字で表示されている。図示したステップドリルでは、小径のランド4aを6〜12mmまでとし、大径のランド4bを15mm以上としている。なお、前記小径のランド4aは、6〜12mmより大きい外径寸法または6〜12mmより小さい外径寸法に設定しても良いのは言うまでもない。
【0023】
前記交換体6の後端嵌合部6aは、図1〜7に示したものでは、本体7のシャンク1と同軸に位置するように交換体6の基端部に設けられた角軸とした軸部11としている。前記本体7の先端嵌合部7aは、前記交換体6の軸部11が差し込まれる角穴とした挿入穴13としている。さらに、前記本体7の先端嵌合部7aは、図に示していないが、本体7のシャンク1と同軸に位置するようにこの本体7の先端部に設けた角軸とした軸部11とすることができる。この場合、前記交換体6の後端嵌合部6aは、前記本体7の軸部11が差し込まれる角穴とした挿入穴13とすることができる。なお、前記軸部11は、四角軸としたものを図に示しているが、三角軸や六角軸などとしてもよい。また、前記挿入穴13も、軸部11の形状に応じた角穴とするのは言うまでもない。そして、前記挿入穴13には、本体7の錐台部9bの周面または土台部10bの周面から連通するようにしたネジ穴15が形成されている。このネジ穴15には、虫ネジ16をねじ込んだものとしており、虫ネジ16を締め付けた状態で、ネジ穴14から突出しないようにしている。
【0024】
さらに、前記交換体6の後端嵌合部6aは、図8〜14に示したものでは、本体7のシャンク1と同軸に位置するように交換体6の基端部に設けられた軸部11と、本体7の最上部の錐台部9bの一部となる嵌合凸部12とからなる。前記本体7の先端嵌合部7aは、前記交換体6の軸部11が差し込まれる挿入穴13と、最上部となる錐台部9bの一部を切欠いた嵌合凹部14とからなるものとしている。また、前記本体7の先端嵌合部7aは、図に示していないが、本体7のシャンク1と同軸に位置するようにこの本体7の先端部に設けられた軸部11と、交換体6の最下部の錐台部9aの一部となる嵌合凸部12とからなるものにすることができる。この場合、前記交換体6の後端嵌合部6aは、前記本体7の軸部11が差し込まれる挿入穴13と、最下部となる錐台部9aの一部を切欠いた嵌合凹部14とからなるものにすることができる。そして、前記挿入穴13には、本体7の錐台部9bの周面または土台部10bの周面から連通するようにしたネジ穴15が形成されている。このネジ穴15には、虫ネジ16をねじ込んだものとしており、虫ネジ16を締め付けた状態で、ネジ穴14から突出しないようにしている。なお、前記交換体6の軸部11は、丸軸としているが、角軸であってもよく、特にその軸形状については問われることなく、任意の軸形状のものを選択すればよい。
【0025】
前記嵌合凸部12は、図13に示したように、軸部11と直角に交差するようにした略台形台形状の横長凸部を一直線状に形成したものとしており、その表面12aが錐台部9bの周面の一部になるものとしている。前記嵌合凹部14は、この嵌合凸部12が丁度嵌まり込むようにした略台形台形状の横長溝を一直線状に形成したものとしている。さらに、前記嵌合凸部12は、図に示していないが、軸部11と直角に交差するようにした略台形台形状の横長凸部を十字形状に形成したものとすることができる。この場合、前記嵌合凹部14は、この嵌合凸部12が丁度嵌まり込むようにした略台形台形状の横長溝を十字形状に形成したものとすることができる。
【0026】
したがって、図1〜7に示したこの発明のステップドリルでは、前記本体7の先端嵌合部7aの挿入穴13に交換体6の後端嵌合部6aの軸部11を挿入し、前記ネジ穴15にねじ込んだ虫ネジ16を締め付けて、この虫ネジ16を前記挿入穴13に挿入した軸部11に押し当てるようにすれば、本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aが固着されて抜けなくなる。また、図8〜14に示したこの発明のステップドリルでは、前記本体7の先端嵌合部7aの挿入穴13に交換体6の後端嵌合部6aの軸部11を挿入し、その先端嵌合部7aの嵌合凹部14に後端嵌合部6aの嵌合凸部12を嵌合し、前記ネジ穴15にねじ込んだ虫ネジ16を締め付けて、この虫ネジ16を前記挿入穴13に挿入した軸部11に押し当てるようにすれば、本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aが固着されて抜けなくなる。
【0027】
そして、この発明のステップドリルは、前記虫ネジ16を緩めて、この虫ネジ16を前記挿入穴13に挿入した軸部11に当たらないようにすれば、本体7の先端嵌合部7aから交換体6の後端嵌合部6aを抜くことができ、この交換体6を新しいものに取り替えることができる。
【0028】
さらに、この発明のステップドリルは、図1〜7に示したものでは、前記交換体6の最下部の土台部10aの周面を前記本体7の最上部の土台部10bから少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の土台部10bから少し食み出した交換体6の土台部10aの周面と本体7の土台部10bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さく、すなわち約2〜3/100ミリになるように、前記交換体6の土台部10aの周面を研削加工したものとしている。また、この発明のステップドリルは、図示していないが、前記交換体6の最下部の錐台部9aの周面を前記本体7の最上部の錐台部9bから少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の錐台部9bから少し食み出した交換体6の錐台部9aの周面と本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さく、すなわち約2〜3/100ミリになるように、前記交換体6の錐台部9aの周面を研削加工したものとしてもよい。
【0029】
また、この発明のステップドリルは、図8〜14に示したものでは、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを前記本体7の嵌合凹部14から少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記本体7の嵌合凹部14から食み出した交換体6の嵌合凸部12の両表面12aと本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さく、すなわち約2〜3/100ミリになるように、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを研削加工したものとしている。
【0030】
前記土台部10aの周面と土台部10bの周面との間に生ずる段差、錐台部9aの周面と錐台部9bの周面との間に生ずる段差、または前記嵌合凸部12の両表面12aと錐台部9bの周面との間に生ずる段差が、約2〜3/100ミリより大きくなると、この段差によって土台部10a、10b、錐台部9a、9bの円滑摺動を阻害される。さらに、この段差部分に切り粉、切り屑が食い込み、徐々に肥大化して、段差部分の円周径が切刃径を超えて大きくなり、擦るだけで切削不能となることがある。
【0031】
前記段差を約2〜3/100ミリ程度にするには、超高精度の加工機を使用すれば、前記したように土台部10aの周面と土台部10bの周面とを位置合わせすることなく加工ができ、さらに前記したように交換体6の錐台部9aの周面と本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせすることなく加工ができ、また前記したように交換体6の嵌合凸部12の両表面12aと本体7の錐台部9bの周面とを位置合わせすることなく加工することができる。しかし、この超高精度の加工機は、購入費や維持費が高くつき、製造コストも高いものとなる。
【0032】
そこで、この発明では、通常の精度の加工機を用いて、約5〜7/100ミリの精度のバラツキで前記交換体6の最下部の土台部10aの周面を前記本体7の最上部の土台部10bから少し食み出す程度の大きさに作成したり、前記交換体6の最下部の錐台部9aの周面を前記本体7の最上部の錐台部9bから少し食み出す程度の大きさに作成したり、前記交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを前記本体7の嵌合凹部14から少し食み出す程度の大きさに作成する。そして、本体7の先端嵌合部7aに交換体6の後端嵌合部6aを嵌合し、固着させ、前記したように交換体6の最下部の土台部10aの周面を研削加工したり、交換体6の最下部の錐台部9aの周面を研削加工したり、交換体6の嵌合凸部12の両表面12aを研削加工すれば、通常の精度の加工機でも約2〜3/100ミリの段差までに加工することができ、製造コストを低く抑えることができるものとなる。
【0033】
そして、この発明のステップドリルは、その先端側の切刃、すなわち交換体6の切刃が磨耗すれば、前記したように本体7のネジ穴15にねじ込んだ虫ネジ16を緩めれば、本体7から交換体6を抜くことができるので、この交換体6を新しいものに非常に簡単に取り替えることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明のステップドリルの一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示すこの発明のステップドリルの背面図である。
【図3】図1に示すこの発明のステップドリルの平面図である。
【図4】図1に示すこの発明のステップドリルの一部断面正面図である。
【図5】図1に示すこの発明のステップドリルの一部断面背面図である。
【図6】図1に示すこの発明のステップドリルの斜視図である。
【図7】図1に示すこの発明のステップドリルの分解斜視図である。
【図8】この発明のステップドリルの他の実施形態を示す正面図である。
【図9】図8に示すこの発明のステップドリルの背面図である。
【図10】図8に示すこの発明のステップドリルの平面図である。
【図11】図8に示すこの発明のステップドリルの一部断面正面図である。
【図12】図8に示すこの発明のステップドリルの一部断面背面図である。
【図13】図8に示すこの発明のステップドリルの斜視図である。
【図14】図8に示すこの発明のステップドリルの分解斜視図である。
【図15】従来のステップドリルの正面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 シャンク
2 ボデー
3 溝
4 ランド群
4a ランド
4b ランド
5 ドリル先端部
6 交換体
7 本体
8a 主切刃
8b 副切刃
9a 錐台部
9b 錐台部
10a 土台部
10b 土台部
11 軸部
12 嵌合凸部
12a 表面
13 挿入穴
14 嵌合凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク(1)とボデー(2)とを有し、ボデー(2)には切屑を排出するための溝(3)と、この溝(3)により分割され、ボデー(2)にそれぞれ段差状に形成された複数のランド群(4)を備えたステップドリルであって、このステップドリルは、ドリル先端部(5)を有し小径のランド(4a)が形成された交換体(6)と、前記シャンク(1)を有し交換体(6)の小径のランド(4a)より大径のランド(4b)が形成された本体(7)とにより別体として構成し、この本体(7)の先端嵌合部(7a)に前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)を着脱自在として嵌合し、固着したものとし、前記ランド群(4)を、交換体(6)の小径のランド(4a)と本体(7)の大径のランド(4b)から形成されたものとし、前記ランド群(4)と前記溝(3)とで形成されるエッジ部に主切刃(8a)および副切刃(8b)を形成したことを特徴とするステップドリル。
【請求項2】
前記交換体(6)の小径ランド(4a)を複数形成し、本体(7)の大径のランド(4b)を複数形成し、前記ランド群(4)が、交換体(6)の複数のランド(4a)と、本体(7)の複数のランド(4b)から成るものとし、各ランド(4a、4b)がそれぞれ錐台部(9a、9b)と土台部(10a、10b)を有し、前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)は、本体(7)のシャンク(1)と同軸に位置する角軸とした軸部(11)とし、前記本体(7)の先端嵌合部(7a)は、前記交換体(6)の軸部(11)が差し込まれる角穴とした挿入穴(13)としたことを特徴とする請求項1記載のステップドリル。
【請求項3】
前記交換体(6)の小径ランド(4a)を複数形成し、本体(7)の大径のランド(4b)を複数形成し、前記ランド群(4)が、交換体(6)の複数のランド(4a)と、本体(7)の複数のランド(4b)から成るものとし、各ランド(4a、4b)がそれぞれ錐台部(9a、9b)と土台部(10a、10b)を有し、前記本体(7)の先端嵌合部(7a)は、本体(7)のシャンク(1)と同軸に位置するようにこの本体(7)の先端部に設けた角軸とした軸部(11)とし、前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)は、前記本体(7)の軸部(11)が差し込まれる角穴とした挿入穴(13)としたことを特徴とする請求項1記載のステップドリル。
【請求項4】
前記交換体(6)の小径ランド(4a)を複数形成し、本体(7)の大径のランド(4b)を複数形成し、前記ランド群(4)が、交換体(6)の複数のランド(4a)と、本体(7)の複数のランド(4b)から成るものとし、各ランド(4a、4b)がそれぞれ錐台部(9a、9b)と土台部(10a、10b)を有し、前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)は、本体(7)のシャンク(1)と同軸に位置する軸部(11)と、本体(7)の最上部の錐台部(9b)の一部となる嵌合凸部(12)とからなり、前記本体(7)の先端嵌合部(7a)は、前記交換体(6)の軸部(11)が差し込まれる挿入穴(13)と、最上部となる錐台部(9b)の一部を切欠いた嵌合凹部(14)とからなるものとしたことを特徴とする請求項1記載のステップドリル。
【請求項5】
前記交換体(6)の小径ランド(4a)を複数形成し、本体(7)の大径のランド(4b)を複数形成し、前記ランド群(4)が、交換体(6)の複数のランド(4a)と、本体(7)の複数のランド(4b)から成るものとし、各ランド(4a、4b)がそれぞれ錐台部(9a、9b)と土台部(10a、10b)を有し、前記本体(7)の先端嵌合部(7a)は、本体(7)のシャンク(1)と同軸に位置するようにこの本体(7)の先端部に設けられた軸部(11)と、交換体(6)の最下部の錐台部(9a)の一部となる嵌合凸部(12)とからなるものとし、前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)は、前記本体(7)の軸部(11)が差し込まれる挿入穴(13)と、最下部となる錐台部(9a)の一部を切欠いた嵌合凹部(14)とからなるものとしたことを特徴とする請求項1記載のステップドリル。
【請求項6】
前記交換体(6)の最下部の土台部(10a)の周面を前記本体(7)の最上部の土台部(10b)から少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体(7)の先端嵌合部(7a)に交換体(6)の後端嵌合部(6a)を嵌合し、固着させ、前記本体(7)の土台部(10b)から少し食み出した交換体(6)の土台部(10a)の周面と本体(7)の土台部(10b)の周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さくするように、前記交換体(6)の土台部(10a)の周面を研削加工したものとしたことを特徴とする請求項2記載のステップドリル。
【請求項7】
前記交換体(6)の嵌合凸部(12)の両斜面(12a)を前記本体(7)の嵌合凹部(14)から少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体(7)の先端嵌合部(7a)に交換体(6)の後端嵌合部(6a)を嵌合し、固着させ、前記本体(7)の嵌合凹部(14)から食み出した交換体(6)の嵌合凸部(12)の両斜面(12a)と本体(7)の錐台部(9b)の斜面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さくするように、前記交換体(6)の嵌合凸部(12)の両斜面(12a)を研削加工したものとしたことを特徴とする請求項4記載のステップドリル。
【請求項1】
シャンク(1)とボデー(2)とを有し、ボデー(2)には切屑を排出するための溝(3)と、この溝(3)により分割され、ボデー(2)にそれぞれ段差状に形成された複数のランド群(4)を備えたステップドリルであって、このステップドリルは、ドリル先端部(5)を有し小径のランド(4a)が形成された交換体(6)と、前記シャンク(1)を有し交換体(6)の小径のランド(4a)より大径のランド(4b)が形成された本体(7)とにより別体として構成し、この本体(7)の先端嵌合部(7a)に前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)を着脱自在として嵌合し、固着したものとし、前記ランド群(4)を、交換体(6)の小径のランド(4a)と本体(7)の大径のランド(4b)から形成されたものとし、前記ランド群(4)と前記溝(3)とで形成されるエッジ部に主切刃(8a)および副切刃(8b)を形成したことを特徴とするステップドリル。
【請求項2】
前記交換体(6)の小径ランド(4a)を複数形成し、本体(7)の大径のランド(4b)を複数形成し、前記ランド群(4)が、交換体(6)の複数のランド(4a)と、本体(7)の複数のランド(4b)から成るものとし、各ランド(4a、4b)がそれぞれ錐台部(9a、9b)と土台部(10a、10b)を有し、前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)は、本体(7)のシャンク(1)と同軸に位置する角軸とした軸部(11)とし、前記本体(7)の先端嵌合部(7a)は、前記交換体(6)の軸部(11)が差し込まれる角穴とした挿入穴(13)としたことを特徴とする請求項1記載のステップドリル。
【請求項3】
前記交換体(6)の小径ランド(4a)を複数形成し、本体(7)の大径のランド(4b)を複数形成し、前記ランド群(4)が、交換体(6)の複数のランド(4a)と、本体(7)の複数のランド(4b)から成るものとし、各ランド(4a、4b)がそれぞれ錐台部(9a、9b)と土台部(10a、10b)を有し、前記本体(7)の先端嵌合部(7a)は、本体(7)のシャンク(1)と同軸に位置するようにこの本体(7)の先端部に設けた角軸とした軸部(11)とし、前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)は、前記本体(7)の軸部(11)が差し込まれる角穴とした挿入穴(13)としたことを特徴とする請求項1記載のステップドリル。
【請求項4】
前記交換体(6)の小径ランド(4a)を複数形成し、本体(7)の大径のランド(4b)を複数形成し、前記ランド群(4)が、交換体(6)の複数のランド(4a)と、本体(7)の複数のランド(4b)から成るものとし、各ランド(4a、4b)がそれぞれ錐台部(9a、9b)と土台部(10a、10b)を有し、前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)は、本体(7)のシャンク(1)と同軸に位置する軸部(11)と、本体(7)の最上部の錐台部(9b)の一部となる嵌合凸部(12)とからなり、前記本体(7)の先端嵌合部(7a)は、前記交換体(6)の軸部(11)が差し込まれる挿入穴(13)と、最上部となる錐台部(9b)の一部を切欠いた嵌合凹部(14)とからなるものとしたことを特徴とする請求項1記載のステップドリル。
【請求項5】
前記交換体(6)の小径ランド(4a)を複数形成し、本体(7)の大径のランド(4b)を複数形成し、前記ランド群(4)が、交換体(6)の複数のランド(4a)と、本体(7)の複数のランド(4b)から成るものとし、各ランド(4a、4b)がそれぞれ錐台部(9a、9b)と土台部(10a、10b)を有し、前記本体(7)の先端嵌合部(7a)は、本体(7)のシャンク(1)と同軸に位置するようにこの本体(7)の先端部に設けられた軸部(11)と、交換体(6)の最下部の錐台部(9a)の一部となる嵌合凸部(12)とからなるものとし、前記交換体(6)の後端嵌合部(6a)は、前記本体(7)の軸部(11)が差し込まれる挿入穴(13)と、最下部となる錐台部(9a)の一部を切欠いた嵌合凹部(14)とからなるものとしたことを特徴とする請求項1記載のステップドリル。
【請求項6】
前記交換体(6)の最下部の土台部(10a)の周面を前記本体(7)の最上部の土台部(10b)から少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体(7)の先端嵌合部(7a)に交換体(6)の後端嵌合部(6a)を嵌合し、固着させ、前記本体(7)の土台部(10b)から少し食み出した交換体(6)の土台部(10a)の周面と本体(7)の土台部(10b)の周面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さくするように、前記交換体(6)の土台部(10a)の周面を研削加工したものとしたことを特徴とする請求項2記載のステップドリル。
【請求項7】
前記交換体(6)の嵌合凸部(12)の両斜面(12a)を前記本体(7)の嵌合凹部(14)から少し食み出す程度の大きさに作成し、この本体(7)の先端嵌合部(7a)に交換体(6)の後端嵌合部(6a)を嵌合し、固着させ、前記本体(7)の嵌合凹部(14)から食み出した交換体(6)の嵌合凸部(12)の両斜面(12a)と本体(7)の錐台部(9b)の斜面とを位置合わせして、これらの間に生ずる段差を小さくするように、前記交換体(6)の嵌合凸部(12)の両斜面(12a)を研削加工したものとしたことを特徴とする請求項4記載のステップドリル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−203396(P2007−203396A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23453(P2006−23453)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(397016448)ジェフコム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(397016448)ジェフコム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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