説明

ステビア抽出物の混合物、及びステビア抽出物の溶解方法

【課題】 本発明の目的は、難溶性であるRebaudioside-Aを90%以上であるステビア抽
出物の溶解性を改善したステビア抽出物の混合物の提供、及び難溶性であるRebaudioside
-Aを90%以上であるステビア抽出物の溶解方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物と該水溶性多糖
類の混合比率が乾燥重量で、ステビア抽出物:水溶性多糖類=100:5〜0.4:99.6とした
ステビア混合物、及びRebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物に対して水
溶性多糖類を、乾燥重量でステビア抽出物:水溶性多糖類=100:5〜0.4:99.6となるよ
うに混合するステビア抽出物の溶解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶解性であるRebaudioside-A90重量%以上含有するステビア抽出物の混合
物、及び難溶解性であるRebaudioside-A90重量%以上含有するステビア抽出物の溶解方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
ステビア甘味料(ステビア抽出物)は、キク科の植物ステビアレバウディアナベルトニ
ー(Stevia rebaudiana BERTOI)の葉部から抽出精製した高甘味物質の混合品である。
【0003】
ステビア抽出物の甘味成分は、主成分であるSteviosideをはじめ、Rebaudioside-A、Ru
busoside、Dulcoside-A、steviobioside、Rebaudioside-C、Rebaudioside-Bなどが知られ
ている。
【0004】
ステビア抽出物には、Steviosideの含有比率の高い通常抽出品、あるいはRebaudioside
-Aの含有比率を高くした調整品が知られている。これらステビア抽出物の甘味度は、ショ
糖の200〜300倍であり、同じ甘味を得るための使用量はショ糖と比較して大幅に削減でき
ることから実質的にノンカロリー甘味料として使用されている。また、ステビア抽出物は
高甘味度である天然甘味料であることから、食品工業界でも多く使用されている(特許文
献1)。
【0005】
Steviosideの含有比率の高い通常抽出品の甘味は比較的砂糖に似ているが、苦み等の異
味が後味に残るという欠点がある。一方、Rebaudioside-Aの含有比率を高くした調整品は
、異味が少ない良質な甘味である。
【0006】
しかし、Rebaudioside-Aの含有比率を高くし、かつ、ステビア成分を高純度化するほど
、このステビア抽出物の水への溶解性が低下するという問題が生じる。
【0007】
このため、Rebaudioside-Aの含有比率を高くした調整品は、低濃度の抽出液となるため
、乾燥・固形化する場合には大量の水分を蒸発ことが必要となるため生産効率が大幅に低
下するとともに、異物除去の濾過における作業が大幅に増加する。また、飲食品などの甘
味料として使用される場合には、一定の濃度で保持した甘味料を使用することが一般的で
あるが、Rebaudioside-Aの含有比率を高くした調整品は、再結晶化しやすいため一定濃度
で保持することが困難であるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-236842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、難溶性であるRebaudioside-Aを90%以上であるステビア抽出
物の溶解性を改善したステビア抽出物の混合物の提供、及び難溶性であるRebaudioside-A
を90%以上であるステビア抽出物の溶解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はRebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物の欠点である溶解性
を改善するために、鋭意検討を重ねた結果、Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステ
ビア抽出物と該水溶性多糖類の混合比率が乾燥重量で、ステビア抽出物:水溶性多糖類=
100:5〜0.4:99.6としたステビア抽出物混合物とすることにより目的を達成することを
見出すと共に、Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物に対して水溶性多
糖類を、乾燥重量でステビア抽出物:水溶性多糖類=100:5〜0.4:99.6となるように混
合するステビア抽出物の溶解方法を見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、難溶性であるRebaudioside-Aを90%以上であるステビア抽出物の溶解
性を改善したステビア抽出物の混合物の提供、及び難溶性であるRebaudioside-Aを90%以
上であるステビア抽出物の溶解方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物と該水溶性多糖類の
混合比率が乾燥重量で、ステビア抽出物:水溶性多糖類=100:5〜0.4:99.6としたステ
ビア混合物、及びRebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物に対して水溶性
多糖類を、乾燥重量でステビア抽出物:水溶性多糖類=100:5〜0.4:99.6となるように
混合するステビア抽出物の溶解方法である。
【0013】
本発明において、ステビアン抽出物とは、Stevioside、Rubusoside、Dulcoside-A、ste
viobioside、Rebaudioside-C、Rebaudioside-B、Rebaudioside-Aの含量が95重量%以上の
ものである。なお、この規格は、第69回JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)におい
て、国際的に認知されたものである。
【0014】
本発明において、Rebaudioside-Aを90重量%以上が含有するステビア抽出物の製造は、
キク科植物であるステビアの葉部に含まれる甘味物質を乾燥葉から水、または含水有機溶
媒にて抽出し、次いで抽出液をそのまま濃縮するか、または必要に応じて陽イオン交換樹
脂、陰イオン交換樹脂、活性炭でイオン性不純物を除去し、吸着樹脂に甘味成分を吸着さ
せ親水性溶媒で溶離して溶離液を濃縮、乾燥してステビア抽出物を得て、高純度Rebaudio
side-A を得る方法は膜分離、アルコール抽出、結晶化等の慣用手段を適宜施すことがで
きる。また、結晶化の方法は結晶溶媒としてエタノール、メタノール等の有機溶媒に必要
であれば水を加えて、適宣使用することができる。
【0015】
本発明において、水溶性多糖類としては、食品(または食品添加物)として用いること
が出来るものであれば、天然物または合成物であっても良いが、例えば、ペクチン、グア
ーガム、アラビアガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プルラン、デ
キストラン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、サイクロデキスト
リンなどが挙げることができ、これらに限定されるものではないが、デンプン、アミロー
ス、アミロペクチン、デキストリンの1種以上を混合することは、Rebaudioside-Aを90重
量%以上含有したステビア抽出物の溶解性の向上の点から好ましい。
【0016】
水溶性多糖としては、食品(または食品添加物)として用いることが出来るものであれ
ば、天然物または合成物であっても良いが、例えば、ペクチン、グアーガム、アラビアガ
ム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プルラン、デキストラン、デンプ
ン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、サイクロデキストリンなどが上げられ
るが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明において、Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物と該水溶性多
糖類の混合比率が乾燥重量で、ステビア抽出物:水溶性多糖類=100:5〜0.4:99.6であ
ることが必要であり、好ましくはステビア抽出物:水溶性多糖類=100:10〜100:30であ
る。
【0018】
Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物は溶解性が非常に低いため、高
濃度に溶解することができないと共に、低濃度で溶解させる場合にも、溶解時間がかかる
上、一旦溶解しても、加熱や冷却、長時間放置などにより再結晶化する。
【0019】
本発明において、Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビアン抽出物は水(常温
)に対して0.5重量%未満であれば、溶解性及びその溶液の安定性はあるが、0.5重量%以上
になると、溶解性、及びその溶液の安定性は著しく低下する。つまり、本発明は、Rebaud
ioside-Aを90重量%以上含有するステビアン抽出物を0.5重量%以上、特に4重量%以上含有
する溶液を調整するのに優れた方法である。
【0020】
しかしながら、理由は不明でありが、Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア
抽出物に水溶性多糖類、このましくは、デンプン、アミロース、アミロペクチン、デキス
トリン、またはそれらの混合物を規定量共存させることにより、溶解性の向上や再結晶化
を防ぐことができるとともに、Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物で
は溶解不可能な濃度において、水溶性多糖類を共存させることにより、安定的に溶解させ
ることができる。
【実施例】
【0021】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
[実験1]
Rebaudioside-A含量91%、ステビア7成分(Stevioside、Rubusoside、Dulcoside-A、ste
viobioside、Rebaudioside-C、Rebaudioside-B、Rebaudioside-A)の総含量95%のステビア
甘味料1の溶解性を調査した。
【0023】
[比較例1]
<ステビア甘味料1単独の溶解性調査>。
i)ステビア甘味料1 4.5gを25℃の水100mlに混和後、1時間攪拌したが、溶解しなかっ
た。
ii)iの未溶解液を95℃に加温、攪拌し、完全溶解させた後、65℃で攪拌を12時間継続
したところ、未溶解物が発生した。この未溶解物を回収して、食品添加物公定書法に従っ
てステビアの定性試験を行った結果、高純度のRebaudioside-Aであった。
【0024】
[実施例1]
<ステビア甘味料1とデキストリン混合物の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 4.5gを25℃の水50mlに混和後、デキストリン0.5gを溶解した50ml
溶液を加え、攪拌し、30分以下で溶解した。
ii)iの溶液を12時間攪拌し続けても、未溶解物は発生しなかった。
iii)iの溶液を95℃に加温、攪拌した後、65℃で攪拌を12時間継続したが、未溶解物
は発生しなかった。
iv)iiiの溶液を4℃で12時間放置したが、未溶解物は発生しなかった。
【0025】
[実験2]
Rebaudioside-A含量91%、ステビア7成分(Stevioside、Rubusoside、Dulcoside-A、ste
viobioside、Rebaudioside-C、Rebaudioside-B、Rebaudioside-A)の総含量95%のステビア
甘味料1の高濃度溶解性を調査した。
【0026】
[比較例2]
<ステビア甘味料1単独の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 32gを25℃の水100mlに混和後、1時間攪拌したが、溶解しなかった

ii)iの未溶解液を95℃に加温、攪拌し、完全溶解させた後、65℃で攪拌を継続したと
ころ、6時間以内で未溶解物が発生した。この未溶解物を回収して、食品添加物公定書法
に従ってステビアの定性試験を行った結果、高純度のRebaudioside-Aであった。
【0027】
[実施例2]
<ステビア甘味料1とデキストリン混合物の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 32gを25℃の水50mlに混和後、デキストリン8gを溶解した50ml溶
液を加え、攪拌し、1時間で溶解した。
ii)iの溶液を12時間攪拌し続けても、未溶解物は発生しなかった。
iii)iの溶液を95℃に加温、攪拌した後、65℃で攪拌を12時間継続したが、未溶解物
は発生しなかった。
iV)の溶液を4℃で12時間放置したが、未溶解物は発生しなかった。
【0028】
[実験3]
Rebaudioside-A含量97%のステビア甘味料2の溶解性を調査した。
【0029】
[比較例3]
<ステビア甘味料2単独の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 4.5gを25℃の水100mlに混和後、1時間攪拌したが、溶解しなかっ
た。
ii)iの未溶解液を95℃に加温、攪拌し、完全溶解させた後、65℃で攪拌を12時間継続
したところ、未溶解物が発生した。この未溶解物を回収して、食品添加物公定書法に従っ
てステビアの定性試験を行った結果、高純度のRebaudioside-Aであった。
【0030】
[実施例3]
<ステビア甘味料2とデキストリン混合物の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 4.5gを25℃の水50mlに混和後、デキストリン0.5gを溶解した50ml
溶液を加え、攪拌し、30分以下で溶解した。
ii)iの溶液を12時間攪拌し続けても、未溶解物は発生しなかった。
iii)iの溶液を95℃に加温、攪拌した後、65℃で攪拌を12時間継続したが、未溶解物
は発生しなかった。
iv)iiiの溶液を4℃で12時間放置したが、未溶解物は発生しなかった。
【0031】
[実験4]
Rebaudioside-A含量97%のステビア甘味料2の高濃度溶解性を調査した。
【0032】
[比較例4]
<ステビア甘味料2単独の溶解性調査>
<ステビア甘味料1単独の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 32gを25℃の水100mlに混和後、1時間攪拌したが、溶解しなかった

ii)iの未溶解液を95℃に加温、攪拌し、完全溶解させた後、65℃で攪拌を継続したと
ころ、6時間以内で未溶解物が発生した。この未溶解物を回収して、食品添加物公定書法
に従ってステビアの定性試験を行った結果、高純度のRebaudioside-Aであった。
【0033】
[実施例4]
<ステビア甘味料2とデキストリン混合物の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 32gを25℃の水50mlに混和後、デキストリン8gを溶解した50ml溶
液を加え、攪拌し、1時間で溶解した。
ii)iの溶液を12時間攪拌し続けても、未溶解物は発生しなかった。
iii)iの溶液を95℃に加温、攪拌した後、65℃で攪拌を12時間継続したが、未溶解物
は発生しなかった。
iV)の溶液を4℃で12時間放置したが、未溶解物は発生しなかった。
【0034】
[実施例5]
<ステビア甘味料2とアミロース混合物の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 32gを25℃の水50mlに混和後、デキストリン8gを溶解した50ml溶
液を加え、攪拌し、1時間で溶解した。
ii)iの溶液を12時間攪拌し続けても、未溶解物は発生しなかった。
iii)iの溶液を95℃に加温、攪拌した後、65℃で攪拌を12時間継続したが、未溶解物
は発生しなかった。
iV)の溶液を4℃で12時間放置したが、未溶解物は発生しなかった。
【0035】
[実施例6]
<ステビア甘味料2とアミロペクチン混合物の溶解性調査>
i)ステビア甘味料1 32gを25℃の水50mlに混和後、デキストリン8gを溶解した50ml溶
液を加え、攪拌し、1時間で溶解した。
ii)iの溶液を12時間攪拌し続けても、未溶解物は発生しなかった。
iii)iの溶液を95℃に加温、攪拌した後、65℃で攪拌を12時間継続したが、未溶解物
は発生しなかった。
iV)の溶液を4℃で12時間放置したが、未溶解物は発生しなかった。
【0036】
以上のことから、水溶性多糖類を混合することで、Rebaudioside-Aを90重量%以含有す
るステビア抽出物の溶解性が改善されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物及び水溶性多糖類の混合物におい
て、該ステビア抽出物と該水溶性多糖類の混合比率が乾燥重量で、ステビア抽出物:水溶
性多糖類=100:5〜0.4:99.6であることを特徴とするステビア混合物。
【請求項2】
水溶性多糖類がデンプン、アミロース、アミロペクチン、デキストリンのいずれか一種を
含有することを特徴とする請求項1に記載ののステビア混合物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のステビアを含有することを特徴とする飲食品。
【請求項4】
Rebaudioside-Aを90重量%以上含有するステビア抽出物の溶解方法において、該ステビア
抽出物に対して水溶性多糖類を、乾燥重量でステビア抽出物:水溶性多糖類=100:5〜0.
4:99.6となるように混合することを特徴とするステビア抽出物の溶解方法