ステレオ又は疑似ステレオオーディオ信号の最適化装置及び方法
本発明によって、ステレオ又は疑似ステレオ信号を生成するためのベースとなる各パラメータの最適な選定が可能となる。音響心理の観点に基づき、得られた信号の相関度、定義範囲、ラウドネス及びそれ以外のパラメータを決定し、それによってアーチファクトを防止する手段はユーザーの手に委ねられている。本発明により、二台以上のスピーカーからの再生のために決定するオーディオ信号とモノラル信号及び少数のパラメータの間で変換する高効率な符号器又は復号器を構成することができる。具体的な適用範囲は、電気通信(ハンドフリー機器)、広域ネットワーク、コンピュータシステム、送信・伝送機器、特に、衛星伝送機器、業務用オーディオ技術、テレビ、フィルム、無線及び消費者用電子機器である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号とオーディオ信号を生成、伝送、変換及び再生する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二つ以上のスピーカーから放出されるオーディオ信号が、異なる振幅、周波数、伝搬時間差又は位相差を有するか、或いは相応にフェードアウトする場合、聴取者に立体的な印象を与えることは、一般的に周知である。
【0003】
そのような無相関化した信号は、一方では、異なる場所に置かれた音響変換システムによって発生させて、任意選択により、その信号を更に処理するか、或いはモノラル信号から、そのような好適な無相関化を実現する所謂疑似ステレオ技術を用いて発生させることができる。
【0004】
特許文献1と特許文献2は、例えば、マイクロホンの主軸と音源が向いている方向の軸が成す、マッピングすべき音響事象の入射角を方法論的に評価する方法を記載しており、それは、元の録音状況の関数に依存する(そのシステムに基づき補間することができる)伝搬時間差と振幅補正値を利用している。ここに、特許文献1と特許文献2の内容を参照して挿入する。
【0005】
特許文献3は、フィルタリングによって、モノラル入力信号から異なる形式の信号を生成することを提案しており、そこでは、例えば、ローリゼン氏が提案する方法を用いて、録音状況に依存する振幅と伝搬時間の補正に基づき、別個に仮想的な単一バンドのステレオ信号を発生させた後、それらを二つの出力信号に組み合わせている。
【0006】
特許文献4は、それぞれ遅延時間は異なるが、画一的に増幅されたモノラル入力信号に対して、90、120、240及び270°の方位に関して相関をとるためのHRTF(ヘッド・リレイテッド・トランスファー・ファンクション)を使用しており、そのようにして生成された信号は、最終的に再び元のモノラル信号と重ね合わされている。その場合、振幅補正値と伝搬時間補正値は、録音状況と関係無く選定されている。
【0007】
本出願人の名前で2009年7月22日に出願した先願の特許文献5は、特許文献1と2による装置において、ステレオ変換を行った後(次の関係式
【0008】
【数1】
【0009】
が成り立つMSマトリックスを通過させた後)、形式的に単純に一つ又は複数のパノラマ電位差計又はそれと同等の補助手段を後に接続することを提案しており、それは、強度差ステレオ信号、即ち、伝搬時間差又は位相差、或いは周波数スペクトルの差を持たず、レベルだけが異なるステレオ信号の場合のように、得られたステレオ信号のマッピング幅を所定通り縮小したり、マッピング方向をずらすのではなく、むしろ相関度を増減させている。
【0010】
特許文献1、2及び5による構成では、ステレオ変換器において、異なるパラメータを選定して、それによって、疑似ステレオ信号を発生させている。多くの場合、複数のパラメータ又はパラメータセットを用いて、疑似ステレオオーディオ信号を得ることが可能であるにも関わらず、そのようなパラメータの選定は、感じ取られる立体的な音響パターンに影響を与える。しかし、所定の位置又は所定のオーディオ信号に関して最適なパラメータを選定することは簡単なことではない。
【0011】
更に、多くの場合、パラメータの調整は、左と右のチャンネル間の相関度にも影響を与える。しかし、本発明の範囲内において、パラメータφ、f(又は簡略化したパラメータn)、α、βの異なる設定の評価に対して、画一的な相関度を規定することが有効であることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許公開第2124486号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第1850639号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第0825800号明細書
【特許文献4】米国特許第5173944号明細書
【特許文献5】スイス国特許出願第2009/01159号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のことから、本発明の課題は、疑似ステレオ信号を得るための新しい方法及び新しい装置を提示することである。
【0014】
特に、ステレオ又は疑似ステレオ信号を生成するためのベースとなるパラメータをそれぞれ自動的かつ最適に選定するための新しい方法及び新しい装置を提示することを課題とする。
【0015】
特に、そのような信号の取得時に、パラメータ(φ、λ、ρ又はf(又はn)、α、β)を最適かつ自動的に決定する方法及び装置を提示することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本方法及び本装置では、複数の無相関化した、特に、疑似ステレオ信号の変化形態から、その無相関化が特に有利であると判明した変化形態を選定する。
【0017】
特に、異なる性質の信号(例えば、音楽録音に対する音声録音)を変換して最適に再生できるように、選定基準自体を出来る限り効率的かつコンパクトな形で調整する。
【0018】
従って、一つの観点において、x(t)が時点tで得られる左の出力チャンネルの関数値を表し、y(t)が時点tで得られる右の出力チャンネルの関数値を表し、ステレオ変換器により疑似ステレオ出力信号x(t)とy(t)を得るための装置及び方法において、<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるまで、その取得形態を反復して最適化する装置及び方法を提案する。
【0019】
しかし、ドロップアウト又はそれと同等の欠陥が発生した場合に、僅かな数の個々の点が定義範囲外に存在する可能性が有る。そのような場合、<x(t),y(t)>の一部が所定の定義範囲内となるまで、その取得形態を反復して最適化する。そのような一部は、大抵ドロップアウト又はそれと同等の欠陥のためにほんの僅かしか全体と相違しないので、そのような装置も、同等のものとして特許請求の保護範囲内に有るものとする。
【0020】
有利には、望ましい定義範囲を単一の数値パラメータaによって規定し、有利には、0≦a≦1とする。このパラメータ、そのため定義範囲は、例えば、次の不等式
【0021】
【数2】
【0022】
によって、効果的に規定することができ、ここで、出力信号x(t),y(t)の複素伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]に関して、次の関係式が成り立つ。
【0023】
【数3】
【0024】
有利には、当業者は、例えば、次の不等式によっても、
【0025】
【数4】
【0026】
そのようなパラメータa又はそのような定義範囲を規定し、ここで、f* [x(t)]とg* [y(t)]は、又もや出力信号x(t),y(t)の複素伝達関数を表し、0≦a≦1である。
【0027】
両方の場合に、ユーザーは、パラメータa(0≦a≦1)に基づき、(出力信号x(t),y(t)の最大レベルを単位円上に正規化している場合)複素数平面又は虚軸の単位円を出発点として、そのような定義範囲を任意に規定することができる。
【0028】
この二つの例で説明した原理は、複素数平面の単位円と異なる座標系を選定して、別の新しい定義範囲を定義した場合でも依然として成り立つ。従って、「定義範囲」とは、一般的に全体として<x(t),y(t)>を完全に、或いは(例えば、所謂ドロップアウトを含む欠陥の有る録音の場合には)部分的に包含する出力信号x(t),y(t)の<x(t),y(t)>に関する値の許容範囲であると解釈する。
【0029】
有利な変化形態では、出力信号(x(t)とy(t))の相関度を正規化する。有利な変化形態では、得られた左と右のチャンネルの最大レベルを正規化する。そのようにして、相関度又は得られた左と右のチャンネルの最大レベルに影響を与えることなく、望ましい定義範囲が得られるように、若干のパラメータを反復して最適化することができる。
【0030】
φ、f(又はn)、α、βの異なるパラメータ設定に対して、|<x(t),y(t)>|に依存する判定基準により、それらを規定することも有効である。従って、そのような目的のために、本発明では、|<x(t),y(t)>|に依存する相応の数値範囲を正規化して、それがパラメータの最適化のための判定基準を表すようにする。
【0031】
そのため、一つの実施構成では、変換器により疑似ステレオ出力信号x(t)とy(t)を得るための方法を提案し、x(t)は、時点tで得られた左の出力チャンネルの関数値を表し、y(t)は、時点tで得られた右の出力チャンネルの関数値を表し、出力信号の複素伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]は、次の通り定義され、
【0032】
【数5】
【0033】
次の判定基準が満たされるまで、その取得形態を反復して最適化し、
【0034】
【数6】
【0035】
ここで、0≦a≦1は、望ましい定義範囲を規定する。
【0036】
別の実施構成では、当業者は、有利には、この判定基準を次の判定基準によって置き換える。
【0037】
【数7】
【0038】
特許文献1又は2による疑似ステレオ信号の取得方法では、それらが常に明らかに中間の信号を提供するという事実が特徴的である。そのため、ここでは、時間間隔[−T,T]及び左チャンネルの出力信号x(t)と右チャンネルの出力信号y(t)に関して、次の短時間相互相関を導入する。
【0039】
【数8】
【0040】
既に述べた通り、φ、f(又はn)、α、βの異なるパラメータ設定に対して、画一的な相関度を取得することが有効である。従って、その目的のために、本発明では、出力信号(x(t)とy(t))の相関度を正規化する。そのような正規化は、有利には、λ(左の減衰係数)又はρ(右の減衰係数)を目的通り変化させることによって規定することができる。
【0041】
そこで、そのような画一的な相関度によって、得られた信号に対して、ユーザーが調整可能な判定基準を系統的に適用することができる。
【0042】
φ、f(又はn)、α、βの異なるパラメータ設定に対して、得られた左と右のチャンネルの画一的な最大レベルを取得することも有効である。従って、その目的のために、本発明では、得られた左と右のチャンネルの最大レベルを正規化して、そのレベルが、パラメータの最適化によって影響を受けないようにする。
【0043】
例えば、先ずは第一の論理素子を用いて、例えば、0dBへの左の信号Lと右の信号Rの最大値の画一的な調整を行うことが有効である。
【0044】
φ、f(又はn)、α、βの異なるパラメータ設定に対して、<x(t),y(t)>又は|<x(t),y(t)>|に依存する判定基準に基づき、パラメータを規定することも有効である。従って、そのような目的のために、本発明では、それに対応した数値範囲をそれぞれ正規化して、それが、パラメータを最適化するための判定基準を表すようにする。
【0045】
x(t)とy(t)を複素数平面の単位円内にマッピングする。そこで、例えば、特許文献1又は2による装置の各出力信号の品質を推定するために、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]を詳しく調べる。ここでは、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]を考察すると、二つの信号f* [x(t)]とg* [y(t)]の如何なる無相関化も、実軸上への偏向と同等となる。
【0046】
従って、ステレオ変換器の最適化は、例えば、前記の判定基準に基づき、|Re{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|及び|Im{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|に対して行われる。
【0047】
この方法は、単一のパラメータ、即ち、aによって、特に、特許文献1又は2による装置又は方法の出力信号の異なる性質を最適に考慮しているので、特に有利であることが分かっている。有利には、例えば、音声又は音楽を手動で、或いは自動的に異なる形で処理するように、このパラメータは、オーディオ信号の形式に依存することができる。音声の場合、例えば、発音時の高周波雑音などの妨害アーチファクトのために、音楽を録音する場合と異なり、有利には、aによって決まる定義範囲を大幅に縮小する。
【0048】
更に、単一のパラメータaを縮小して、単位円又は虚軸を出発点として、f* [x(t)]+g* [y(t)]に関する最適なマッピング範囲をそれぞれ選定することができる。
【0049】
本発明では、信号x(t)、y(t)が前述した条件を満たさない場合、最適化という意味において、関数値x[t(φ,f,α,β)]とy[t(φ,f,α,β)]又はx[t(φ,n,α,β)]とy[t(φ,n,α,β)]に合わせた反復した措置により、パラメータφ、f(又はn)、α、βを新たに決定して、x(t)とy(t)が前述した条件を満たすまで、これまでに説明した工程を実行する。
【0050】
そこで、更なる工程で、例えば、関数値の最大化という意味において、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフを考察する。そのような措置は、次の式
【0051】
【数9】
【0052】
の最大化と等しく、この式自体は、次の式の値以下となる。
【0053】
【数10】
【0054】
有利には、当業者は、例えば、次の式で式(7)を置き換える。
【0055】
【数11】
【0056】
この場合でも、この最大化に関する限界値R* 又は次の不等式(8)によって定義される偏差Δ(下記参照)が式(8)の範囲内で自由に選定することができる限りにおいて、その措置がユーザーの手に委ねられる。全体として、可能な信号の変化形態xj (t),yj (t)の全数に関して、次の条件を満たさなければならない。
【0057】
【数12】
【0058】
有利には、当業者は、又もや次の式で式(8)を置き換える。
【0059】
【数13】
【0060】
R* とΔは、目標とする出力信号のラウドネス(即ち、聴取者もステレオマッピングの妥当性を判断するための各パラメータ)と直接関連する。
【0061】
Δによって定義される限界値R* の範囲又は全ての可能なリリーフの積分の最大値が得られなかった場合、限界値R* と偏差Δ又は前述した最大値に関する最適化という意味において、関数値x[t(φ,f,α,β)]とy[t(φ,f,α,β)]又はx[t(φ,n,α,β)]とy[t(φ,n,α,β)]に基づく反復した措置により、新たなパラメータφ、f、α又はβを決定して、最適なステレオ音響化に対応する信号x(t),y(t)、或いはパラメータφ、λ、ρ、f(又はn)、α、βが得られるまで、これまでに説明した全ての工程を実行する。
【0062】
相関度r、望ましい定義範囲をそれぞれ決定するパラメータa、限界値R* 及びその偏差Δを相応に選定して、各入力信号の性質に対して、各適用範囲(例えば、音声又は音楽の再生)に関する最適なシステムを構成することができる。
【0063】
ここで行った考察は、虚数平面の単位円と異なる座標系を選定した場合でも、全体として有効である。例えば、単一の関数値の代わりに、軸の長さを正規化して、それに応じて計算負荷を軽減することもできる。
【0064】
一つの観点において、(周知の)圧縮アルゴリズム又はデータ削減方法の採用、或いは例えば、特許文献1又は2に基づき得られた疑似ステレオ信号に関する最小値又は最大値などの特筆すべき特徴の考察が推奨され、それは、本発明による評価を加速する。
【0065】
ここで提案した|<x(t),y(t)>|を考察する代わりに、ステレオ音響化の最適化のために|<x(t),y(t)>|2 を用いることもできる。それによって、計算負荷が大幅に軽減される。
【0066】
その外に、本発明は、3台以上のスピーカー(例えば、従来技術に属するサラウンド設備)から再生されるステレオ信号を発生する装置又は方法に適用することができる。
【0067】
一つの観点において、本発明は、(例えば、特許文献1又は2による)ステレオ変換器の後に、パラメータを部分的に調整可能である複数の手段(例えば、論理素子)をカスケードに接続した形態で構成され、それに対して、前記の装置又は方法に関するフィードバックは、論理素子の全ての条件が満たされるまで、パラメータφ、λ、ρ、f(又はn)、α、βの最適な変更を行うように構成される。
【0068】
その外に、これらの手段(論理素子)は、それ以外の形態で構成することができるとともに、限定して、全体又は一部を省略することもできる。
【0069】
以下において、本発明の異なる実施構成及び実施例を例示して説明し、その際、次の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】任意選択により、(MSマトリックスの前に配置された増幅器を通過する前の)入力信号MとSを(任意選択により、図6bが後に接続される)図7による回路に供給することができる、ステレオ変換器(例えば、特許文献1又は2によるステレオ変換器)のレベルの正規化及び出力信号の相関度の正規化のための二つの論理素子に関する回路図の例
【図2】与えられた信号x(t),y(t)を伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]を用いて複素数平面にマッピングするか、或いはそれらの合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角を決定する回路図の例
【図3】パラメータaを用いて定義範囲を選定する回路図の第一の例
【図3a】パラメータaを用いて新たな定義範囲を選定する回路図の当業者に有利な第二の例
【図4】図1で生成され、図2により複素平面にマッピングされた信号を条件|Re{f* [x(t)]+g* [y(t)]}]|≦|a*cos arg{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|かつ|Im{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|≦|sin arg{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|に基づきパラメータaによって定義した許容される定義範囲に関して検査する第三の論理素子の回路図の第一の例
【図4a】図1で生成され、図2により複素平面にマッピングされた信号を図3aにより新たに条件Re2 {f* [x(t)]+g* [y(t)]}*1/a2 +Im2 {f* [x(t)]+g* [y(t)]}≦1に基づきパラメータaによって定義した許容される定義範囲に関して検査する第三の論理素子の回路図の当業者に有利な第二の例
【図5】最終的に関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフをその関数値の最大化という意味において考察して、ユーザーが、その最大化に関する、不等式(8)によって定義した限界値R* 又は同じく不等式(8)によって定義した偏差Δを自由に選定することができる第四の論理素子の回路図の例
【図5a】最終的に関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフをその関数値の最大化という意味において考察して、ユーザーが、その最大値に関する、不等式(8a)によって定義した限界値R* 又は同じく不等式(8a)によって定義した偏差Δを自由に選定することができる第四の論理素子の回路図の当業者に有利な第二の例
【図6a】信号のローカル化を決定する図6bによる回路に引き渡される前の既に存在するステレオ信号のための入力回路図
【図6b】入力が図5又は図5aの出力或いは図6aの出力と接続された、信号のローカル化を決定する回路図
【図7】パラメータzが引き渡された場合に増幅係数λの初期値が図1の増幅係数λの最終値に一致し、図6bによる回路が後に接続されている場合に、入力信号としてパラメータzが出現すると作動する、ステレオ又は疑似ステレオ信号を正規化する回路図の別の例
【図8】与えられた信号x(t),y(t)を伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]を用いて複素数平面にマッピングする回路図の例
【図9】オーディオ信号のマッピング幅を調整する回路図の例
【発明を実施するための形態】
【0071】
例えば、特許文献1又は2による装置におけるステレオ変換器に関して、同様の減衰係数λとρが反比例する場合に、最適なパラメータφ、λ、f(又は簡略化したパラメータn)、α、βを決定して、モノラル信号を、(聴取者がステレオ信号の品質を評価するための二つの判定基準である)最適な無相関とラウドネスを有する、それに対応する疑似ステレオ信号に変換する。出来る限り少ない技術手段を用いて、そのような決定を実現する。
【0072】
図1は、前述したMSマトリックス110を備えたステレオ変換器(例えば、特許文献1又は2によるステレオ変換器)の出力信号のレベルの正規化及び相関度の正規化のための二つの第一の論理素子の回路の原理図を図示しており、(MSマトリックスの前に配置された増幅器を通過する前の)入力信号MとSは、任意選択により、図7による回路に供給することができ、この図7による回路は、任意選択により、理想的には、図6bが後に接続されており、図6bから得られるパラメータzが決定された場合に作動する(下記参照)。
【0073】
この場合、レベルを正規化するための第一の論理素子120は、増幅係数ρ* を有する同形の二つの増幅器と接続されており、左チャンネルLと右チャンネルRの最大値を0dBに調整する役割を果たす。
【0074】
機器110(例えば、特許文献1又は2によるMSマトリックス)から得られた信号LとRは、二つの信号の最大値が正確に0dBのレベルとなるように(複素数平面の単位円への正規化)、画一的に係数ρ* で増幅される(増幅器118,119)。それは、例えば、フィードバック121と122及び増幅器118と119の増幅係数ρ* の変更又は補正によって、0dBへのLとRの最大値の調整を行う論理素子120を後に接続することで実現される。
【0075】
第二の工程において、その結果得られた、振幅がLとRに直接比例するステレオ信号x(t)123とy(t)124は、次の式による短時間相互相関によって、相関度rを決定する別の論理素子125に供給される。
【0076】
【数14】
【0077】
rは、ユーザーによって、−1≦r≦1の範囲内で決定することができ、理想的には、0.2≦r≦0.7の範囲内で動く。
【0078】
rからの偏差は、それぞれフィードバック126によって、S信号に関する増幅器117の増幅係数λを最適に調整するために用いられる。
【0079】
その結果得られた信号LとRは、新たに増幅器118と119及び又もやフィードバック121と122によって、0dBへのLとRの最適値の新たな調整を行う論理素子120を通過した後、新たに論理素子125に供給される。
【0080】
このプロセスは、ユーザーが決定した相関度rを達成するまで行われる。
【0081】
その結果、複素数平面の単位円に関して正規化されたステレオ信号x(t),y(t)が得られる。
【0082】
図2は、入力信号x(t),y(t)を複素数平面にマッピングするか、或いはその合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角を決定するための回路の原理図を図示している。この回路では、図1の出力で得られた信号x(t)とy(t)は、それらの信号をそれぞれ係数
【0083】
【数15】
【0084】
で増幅した後、同じラウドネスの実数部と虚数部に分割するマトリックスに供給され、増幅器229で増幅された信号x(t)から生成された実数部は、更に、増幅係数−1を有する増幅器231を通過する。そのため、次の伝達関数が得られる。
【0085】
【数16】
【0086】
ここで、各実数部又は虚数部は、合算され、そのため、伝達関数f* [x(t)]+g* [y(t)]の合計の実数部又は虚数部が得られる。
【0087】
素子232によって、f* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角が決定される。
【0088】
図3は、定義範囲を選定する回路の原理図を図示しており、複素数平面又は虚軸の単位円を出発点とする、パラメータ0≦a≦1に関する無段階の調整が可能である。従って、ユーザーは、複素数平面上で定義範囲aを決定することができる。そのために、ちょうど決定したf* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角の余弦333又は正弦334を計算している。余弦333から得られた信号は、次に、増幅器335に供給されて、ユーザーが自由に選択可能な増幅係数0≦a≦1で増幅される。
【0089】
図4は、図1で生成され、図2により複素数平面にマッピングされた信号を次の条件
【0090】
【数17】
【0091】
に基づき検査する第三の論理素子の回路の原理図を図示している。
【0092】
ここでは、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の実数部と虚数部及び増幅器334と335から得られた信号は、判定基準(4)と(5)が満たされるか否か、そのため、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の値がユーザーによってaを用いて定義された数値範囲内に有るか否かを検査する別の論理素子436に供給される。
【0093】
その条件に該当しない場合、フィードバック437によって、新たに最適化された値φ、f(又はn)、α、βを決定して、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の値がユーザーによってaを用いて定義された数値範囲内となるまで、これまでに説明したシステム全体を新たに通る。ここで、論理素子436の出力信号は、次の論理素子538(図5)に引き渡される。
【0094】
その論理素子は、次に、関数値の最大化という意味において、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフを考察し、ユーザーは、そのような最大化のために、次の不等式(8)によって決まる限界値R* (及び同じく不等式(8)によって決まる偏差Δ)を自由に選定することができる。全体として、次の条件を満たさなければならない。
【0095】
【数18】
【0096】
その条件に該当しない場合、フィードバック539によって、新たに最適化された値φ、f(又はn)、α、βを反復して決定して、伝達関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフが、(両方ともユーザーによって定義される)限界値R* 又は偏差Δを考慮して、関数値の目的とする最大化を満たすまで、これまでに説明したシステム全体を新たに通る。
【0097】
有利な変化形態において、対応する図3,4及び5を置き換えた図3a,4a及び5aは、当業者に有利な代替回路の原理図を図示している。
【0098】
図3aによって、又もやパラメータa(0≦a≦1)に関する新たな定義範囲の選定が可能であり、複素数平面又は虚軸の単位円を出発点とする、aに関する無段階の調整が可能である。従って、ユーザーは、aによって決まる複素数平面上の定義範囲を単位円内において自由に決定することができる。そのために、f* [x(t)]+g* [y(t)]の実数部333aの自乗又は虚数部の自乗334aを算出している。その自乗334aから得られた信号は、次に、増幅器335aに供給されて、ユーザーによって自由に選定可能な増幅係数1/a2 で増幅される。更に、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角の正弦の自乗を算出している。
【0099】
図4aは、図3aの出力の後に接続されて、図1で生成され、図2により複素数平面にマッピングされた信号を次の簡略化した条件に基づき検査する当業者に有利な新たな第三の論理素子の回路の原理図を図示している。
【0100】
【数19】
【0101】
この場合、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の実数部の自乗と虚数部の自乗及びそれらの自乗333aと335aから得られた信号が、前記の判定基準を満たすか否か、そのため、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の値がユーザーによってaを用いて定義された新たな数値範囲内に有るか否かを検査する別の論理素子436aに供給される。
【0102】
その条件に該当しない場合、フィードバック437aによって、新たに最適化された値φ、f(又はn)、α、βを決定して、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の値がユーザーによってaを用いて定義された新たな数値範囲内となるまで、これまでに説明したシステム全体を新たに通る。ここで、論理素子436aの出力信号は、次の論理素子538a(図5a)に引き渡される。
【0103】
この論理素子は、次に、関数値の最大化という意味において、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフを考察し、ユーザーは、そのような最大化のために、不等式(8a)によって決まる限界値R* (及び同じく不等式(8a)によって決まる偏差Δ)を自由に選定することができる。全体として、新たに次の条件を満たさなければならない。
【0104】
【数20】
【0105】
その条件に該当しない場合、フィードバック539aによって、新たに最適化された値φ、f(又はn)、α、βを反復して決定して、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフが、(両方ともユーザーによって新たに定義される)限界値R* 又は偏差Δを考慮して、関数値の目的とする最大化を満たすまで、これまでに説明したシステム全体を新たに通る。
【0106】
従って、例えば、特許文献1又は2の実施構成の中の一つによる本来の疑似ステレオ変換器を用いて(ここでは、同様の減衰係数λとρが反比例する場合を含めて)x(t)とy(t)が前述した条件(4)、(5)及び(8)、或いは(4a)と(8a)を満たすまで、新たなパラメータφ、f(又はn)、α、βを反復して決定する。
【0107】
それによって、信号x(t)123とy(t)124は、(選択可能な相関度rで決まる)互換性、(選定可能な増幅係数aで決まる)定義範囲及び(選定可能な限界値R* 又は選定可能な偏差Δで決まる)ラウドネスに関して、ユーザーの指示と一致して、ここで説明した構成の出力信号L* とR* を表すこととなる。
1.マッピング方向の決定
時として、得られたステレオマッピングをステレオ音響化のベースとなる指向特性の主軸の周りに鏡像反転させることも、例えば、そのような主軸に関して鏡面反転したマッピングが得られるので、重要である。それは、手動で左と右のチャンネルを交換することによって行うことができる。
【0108】
本システムによって、既に存在するステレオ信号L゜,R゜をマッピングする場合、例えば、図6bにより構成される仮想音源の図示された疑似ステレオ手法を用いて、正しいマッピング方向を自動的に見つけ出すことができる(図6bは、図5又は図5aの直ぐ後に接続され、既に存在するステレオ信号L゜,R゜の複素伝達関数の合計f* (l(ti ))+g* (r(ti ))を決定するために、同様に図6aを図6bに接続することができる)。この場合、(少なくとも一つのケースにおいて、以下で述べる伝達関数f* (x(ti ))+g* (y(ti ))又はf* (l(ti ))+g* (r(ti ))の相関関数値の全てが0に等しいということにはならない)好適に選定した時点ti において、図2により既に算出した伝達関数f* (x(ti ))+g* (y(ti ))を(図2の入力信号x(t),y(t)に関する回路の第一の部分と構成が一致する図6aによる回路で算出された)元のステレオ信号L゜,R゜の左の信号l(t)又は右の信号r(t)のf* (l(ti ))+g* (r(ti ))と比較する。これらの伝達関数が複素数平面の同じ又は対角線上に対向する象限内を移動した場合、複素数平面の同じ又は対角線上に対向する象限内に有る、前記の伝達関数の関数値の全数mがそれぞれ1だけ増える。
【0109】
ここで、伝達関数f* (x(ti ))+g* (y(ti ))又はf* (l(ti ))+g* (r(ti ))の相関関数値の数以下であり、ゼロではない、経験的に(又は統計的に調査して)決定できる数bは、必要な該当数を規定する。そのような数を下回る数で、例えば、図1〜5又は図1,2,3a〜5aによる構成から得られるステレオ信号の左チャンネルx(t)と右チャンネルy(t)を交換する。
【0110】
元のステレオ信号が、指向特性を規定する関数f(又はその簡略化したパラメータn)及び(例えば、データ圧縮を目的とする)パラメータφ、α、β、λ、ρに加えて、モノラル信号に符号変換される場合(パラメータzに関して拡張することができる出力640aの例、下記参照)、有意義なこととして、(例えば、0又は1の数を占めるとともに、所望の場合、同時に図7による回路を作動させることができるパラメータzによって表される)得られた左チャンネルと得られた右チャンネルを交換すべきか否かの情報を一緒に符号化する。
【0111】
僅かな変更により、電気回路又はアルゴリズム内の別の位置に挿入することもできる、図6a及び6bによる回路と同様の回路を構成することができる。
2.マッピング幅の縮小又は拡大
このような用途に対して、従来技術に属する圧縮アルゴリズム又はデータ削減方法を更に採用すること、或いは例えば、得られた疑似ステレオ信号の最小値又は最大値などの特筆すべき特徴を考察することも推奨され、それは、本発明による評価を加速する。
【0112】
得られたステレオ信号の相関度r、或いは(得られたステレオ信号を処理するための)減衰係数λ又はρを目的通り変化させることによって、得られたステレオ信号のマッピング幅を補足的に縮小又は拡大することは、(例えば、自動車でのステレオ信号の再生のために)特に重要である。この場合、ステレオ音響化する信号の指向特性を規定する、事前に調査したパラメータf(又はn)、手動で、或いは測定技術により検出する、主軸と音源の成す角度φ、左の仮想の開口角α及び右の仮想の開口角βを維持することができ、有意義なこととして、そのようなマッピング幅の縮小又は拡大を手動で行う場合には、例えば、図1の論理素子120による最終的な振幅補正だけが必要となる。
【0113】
これらを自動化する場合、一連の音響心理実験は、一定のマッピング幅が、基本的に次の判定基準
【0114】
【数21】
【0115】
と次の判定基準
【0116】
【数22】
【0117】
に依存することを示している(ここで、例えば、電話信号に対しては、S* とε又はU* とκを音楽録音と異なる形で決定する)。それによると、得られたステレオ信号の相関度r、或いは(得られたステレオ信号を処理するための)減衰係数λ又はρ、場合によっては、図1の論理素子120と同様の論理素子に応じた好適な関数値x(t),y(t)だけをフィードバックに基づき反復した動作原理により決定する。
【0118】
従って、本発明による図1〜5、6a、6b又は図1、2、3a〜5a、6a、6bの構成は、配置構成という意味において、例えば、図7、8及び/又は9に図示された形に拡張することができる。この場合、図7は、図6bが後に接続されている場合に、入力信号としてパラメータzが出現すると作動する、ステレオ又は疑似ステレオ信号を正規化する回路の別の例を図示している。ここで、パラメータzが引き渡された場合、増幅係数λの初期値は、図1の増幅係数λの最終値に一致し、その引き渡された時点で、図1の入力信号は、図7の入力信号として直接引き渡される。
【0119】
その外に、図7〜9による回路は、その他の回路又はアルゴリズムにおいて、独立して使用することもできる。
【0120】
本構成において、MSマトリックス110では、パラメータzが1に等しい場合、(入力信号としてパラメータzが出現すると、このMSマトリックスを同時に作動させる)論理素子110aによって、左と右のチャンネルが交換され、それ以外の場合、そのような交換は行われない。
【0121】
ここで、その結果得られたMSマトリックス110の出力信号LとRは、二つの信号の最大値が正確に0dBのレベルを有するように(複素数平面の単位円への正規化)、画一的に係数ρ* で増幅される(増幅器118,119)。それは、例えば、フィードバック121と122及び増幅器118と119の増幅係数ρ* の変更又は補正によって、LとRの最大値を0dBに調整することを行う論理素子120を後に接続することによって実現される。
【0122】
ここで、更なる工程において、その結果得られた信号x(t)123とy(t)124を図8によるマトリックスに供給し、そこでは、これらの信号は、それぞれ係数
【0123】
【数23】
【0124】
で増幅された(増幅器229,230)後、同じラウドネスの実数部と虚数部に分割され、増幅器229を用いて増幅された信号x(t)から生成された実数部は、更に増幅係数−1の増幅器231を通過する。それによって、図2と関連して既に述べた複素伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]が得られる。ここで、各実数部と虚数部は、合算され、そのため、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の実数部と虚数部が得られる。
【0125】
ここで、例えば、図9の論理素子640による構成が後に接続され、その構成は、ユーザーが目的とするステレオ信号のマッピング幅に関して好適に選定した限界値S* 又は好適に選定した偏差ε(両方とも不等式(9)によって定義される)に関して、次の条件
【0126】
【数24】
【0127】
が満たされるか否かを検査する。その条件に該当しない場合、フィードバック641によって、(得られたステレオ信号を処理するための)相関度r又は減衰係数λ又はρに関して新たな最適値を決定して、上記の条件(9)が満たされるまで、図7〜9に図示されている通り、これまでに説明した工程を実行する。
【0128】
ここで、論理素子640の出力信号は、例えば、図9の論理素子642による構成に引き渡される。その構成は、最終的に目的とするステレオ信号のマッピング幅に関する関数値の最適化という意味において、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフを考察しており、ユーザーは、目的とするステレオ信号のマッピング幅に関して、限界値U* 及び偏差κ(両方とも不等式(10)によって定義される)を好適に選定することができる。全体として、次の条件
【0129】
【数25】
【0130】
を満たさなければならない。その条件に該当しない場合、フィードバック643によって、(得られたステレオ信号を処理するための)相関度r、或いは減衰係数λ又はρに関する新たな最適値を決定して、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフが、限界値U* 又は偏差κ(両方ともユーザーによって好適に選定される)を考慮したマッピング幅に関する関数値の目標とする最適化を満たすまで、図7〜9に図示されている通り、これまでに説明した工程を実行する。
【0131】
そのため、信号x(t)123とy(t)124は、(得られたステレオ信号を処理するための)相関度r、或いは減衰係数λとρによって決まるマッピング幅に関して、ユーザーの指示と一致し、前述した構成の出力信号L**とR**を表すこととなる。
3.本発明の適用範囲
前述した構成又はその構成の一部は、パラメータφ、f(又は簡略化したパラメータn)、α、β、λ、ρに加えて、モノラル信号に制限される完全なステレオ信号のための符号器として使用することができる。
【0132】
既に存在するステレオ信号は、r、a、R* 、Δ又はマッピング方向(或いは以下で説明するパラメータS* 、ε、U* 又はκ)に関して評価した後、特許文献1又は2による装置又は方法と関連して、同様に、パラメータφ、f(又はn)、α、β、λ、ρに基づきモノラル信号として新たに符号化することができる。
【0133】
同様に、場合によっては、後続する素子によって補完される、前述した構成は、モノラル信号用の復号器として用いることができる。φ、f(又はn)、α、β、λ、ρ、或いは(例えば、0又は1の値を占めることができるパラメータzによって表される)マッピング方向が分かった場合に、そのような復号器は、特許文献1又は2による装置に縮退する。
【0134】
全体として、そのような符号器又は復号器は、オーディオ信号を記録、変換、伝送又は再生する所であれば、如何なる所でも使用することができる。それらは、多チャンネルステレオ技術に対する優れた代替技術である。
【0135】
具体的な適用範囲は、電気通信(ハンドフリー機器)、広域ネットワーク、コンピュータシステム、送信・伝送機器、特に、衛星伝送機器、業務用オーディオ技術、テレビ、フィルム、無線及び消費者用電子機器である。
【0136】
本発明は、(例えば、自動車内の)不利な受信条件下における安定したFMステレオ信号の取得に関しても特に重要である。この場合、安定したステレオ音響は、元のステレオ信号の左と右のチャンネルの合計である主チャンネル信号(L+R)を入力信号として純粋に利用して実現することができる。この場合、元のステレオ信号の左と右のチャンネルの減算結果である完全又は不完全な副チャンネル信号(L−R)を一緒に用いて、使用可能なS信号を処理するか、或いは全体として目標とするステレオ信号のマッピング幅を決定するために、以下のパラメータを決定又は最適化する。
(a)ステレオ音響化する信号の指向特性を規定するパラメータf(又はn)、
(b)手動で、或いは測定技術により検出する、主軸と音源の成す角度φ、
(c)左の仮想の開口角α、
(d)右の仮想の開口角β、
(e)得られたステレオ信号又はそれから得られた信号を処理するための減衰係数λ又はρ、
(f)MSマトリックス又はそれ以外の本発明による構成から得られた左と右のチャンネルを単位円に正規化するための図1の増幅係数ρ* (この場合、1は、例えば、ρ* を用いて正規化した0dBの最大レベルに等しく、x(t)は、そのような正規化から得られた左の出力信号を表し、y(t)は、そのような正規化から得られた右の出力信号を表す)、
(g)得られたステレオ信号の相関度r、
(h)得られた出力信号の伝達関数(例えば、次の複素伝達関数
【0137】
【数26】
【0138】
と、
【0139】
【数27】
【0140】
、例えば、0≦a≦1に対して、次の式が成り立つ、
【0141】
【数28】
【0142】
と、
【0143】
【数29】
【0144】
(当業者は、有利には、同じパラメータa、0≦a≦1に対して、上記の条件(4)と(5)を下記の新しい条件と置き換える、
【0145】
【数30】
【0146】
)の合計に関する許容される数値範囲を定義するための増幅係数a、
(i)前記の伝達関数の合計の関数値の絶対値を決定又は最大化するための限界値R* 又は偏差Δ(この場合、そのような決定又は最大化と時間間隔[−T,T]又は可能な出力信号xj (t),yj (t)の全数に関して、例えば、次の式が成り立つ、
【0147】
【数31】
【0148】
当業者は、有利には、上記の条件(8)を下記の式で置き換える)、
【0149】
【数32】
【0150】
(j)例えば、前記の元のステレオ信号に関する伝達関数(2)と(3)の関数値が属する象限を決定することによる、再現した音源のマッピング方向(例えば、それに続いて、得られた左又は右のチャンネルの交換によって最適化することができる、上記参照)、
(k)限界値S* 又は偏差ε(これらに関しては、例えば、次の式
【0151】
【数33】
【0152】
が成り立たなければならない)、
(l)限界値U* 又は偏差κ(これらに関しては、例えば、次の式
【0153】
【数34】
【0154】
が成り立たなければならない)。
如何なる場合でも、この結果は、FM信号に対して一定のステレオ音響マッピングとなる。
【0155】
この場合でも、従来技術に属する圧縮アルゴリズム、データ削減方法の採用、或いは例えば、本発明による評価を加速させる、得られた信号又は信号成分の最小値と最大値などの特筆すべき特徴の考察を更に適用することができる。
【0156】
各実施構成、各図面又は各構成要素において、ここで述べた回路、変換器、構成又は論理素子は、例えば、それらと同等のソフトウェアプログラム、プログラミングされたプロセッサ、或いはDSP又はFPGAによる解決策によって実現することができる。
【符号の説明】
【0157】
φ 録音角
α 左の仮想の開口角
β 右の仮想の開口角
λ 左の入力信号の減衰係数
ρ 右の入力信号の減衰係数
これらの減衰係数λとρを用いて、ステレオ信号の相関度を調整することができる。
【0158】
Φ 極角
f M信号の指向特性を規定する極距離
Pα,Pβ α又はβに関する増幅係数
L α,L β α又はβに関する遅延時間
Sα S信号のシミュレーションした左の信号成分
Sβ S信号のシミュレーションした右の信号成分
x(t) 左の出力信号
y(t) 右の出力信号
f* [x(t)] 複素伝達関数
g* [y(t)] 複素伝達関数
a 得られた出力信号x(t),y(t)の伝達関数の合計に関する値の許容される数値範囲を定義するための増幅係数
r 短時間相互相関から導出される相関度
R* 得られた出力信号x(t),y(t)のラウドネスの限界値
Δ 偏差
S* 得られた出力信号x(t),y(t)のマッピング幅の第一の限界値
ε 偏差
U* 得られた出力信号x(t),y(t)のマッピング幅の第二の限界値
κ 偏差
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号とオーディオ信号を生成、伝送、変換及び再生する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二つ以上のスピーカーから放出されるオーディオ信号が、異なる振幅、周波数、伝搬時間差又は位相差を有するか、或いは相応にフェードアウトする場合、聴取者に立体的な印象を与えることは、一般的に周知である。
【0003】
そのような無相関化した信号は、一方では、異なる場所に置かれた音響変換システムによって発生させて、任意選択により、その信号を更に処理するか、或いはモノラル信号から、そのような好適な無相関化を実現する所謂疑似ステレオ技術を用いて発生させることができる。
【0004】
特許文献1と特許文献2は、例えば、マイクロホンの主軸と音源が向いている方向の軸が成す、マッピングすべき音響事象の入射角を方法論的に評価する方法を記載しており、それは、元の録音状況の関数に依存する(そのシステムに基づき補間することができる)伝搬時間差と振幅補正値を利用している。ここに、特許文献1と特許文献2の内容を参照して挿入する。
【0005】
特許文献3は、フィルタリングによって、モノラル入力信号から異なる形式の信号を生成することを提案しており、そこでは、例えば、ローリゼン氏が提案する方法を用いて、録音状況に依存する振幅と伝搬時間の補正に基づき、別個に仮想的な単一バンドのステレオ信号を発生させた後、それらを二つの出力信号に組み合わせている。
【0006】
特許文献4は、それぞれ遅延時間は異なるが、画一的に増幅されたモノラル入力信号に対して、90、120、240及び270°の方位に関して相関をとるためのHRTF(ヘッド・リレイテッド・トランスファー・ファンクション)を使用しており、そのようにして生成された信号は、最終的に再び元のモノラル信号と重ね合わされている。その場合、振幅補正値と伝搬時間補正値は、録音状況と関係無く選定されている。
【0007】
本出願人の名前で2009年7月22日に出願した先願の特許文献5は、特許文献1と2による装置において、ステレオ変換を行った後(次の関係式
【0008】
【数1】
【0009】
が成り立つMSマトリックスを通過させた後)、形式的に単純に一つ又は複数のパノラマ電位差計又はそれと同等の補助手段を後に接続することを提案しており、それは、強度差ステレオ信号、即ち、伝搬時間差又は位相差、或いは周波数スペクトルの差を持たず、レベルだけが異なるステレオ信号の場合のように、得られたステレオ信号のマッピング幅を所定通り縮小したり、マッピング方向をずらすのではなく、むしろ相関度を増減させている。
【0010】
特許文献1、2及び5による構成では、ステレオ変換器において、異なるパラメータを選定して、それによって、疑似ステレオ信号を発生させている。多くの場合、複数のパラメータ又はパラメータセットを用いて、疑似ステレオオーディオ信号を得ることが可能であるにも関わらず、そのようなパラメータの選定は、感じ取られる立体的な音響パターンに影響を与える。しかし、所定の位置又は所定のオーディオ信号に関して最適なパラメータを選定することは簡単なことではない。
【0011】
更に、多くの場合、パラメータの調整は、左と右のチャンネル間の相関度にも影響を与える。しかし、本発明の範囲内において、パラメータφ、f(又は簡略化したパラメータn)、α、βの異なる設定の評価に対して、画一的な相関度を規定することが有効であることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許公開第2124486号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第1850639号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第0825800号明細書
【特許文献4】米国特許第5173944号明細書
【特許文献5】スイス国特許出願第2009/01159号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のことから、本発明の課題は、疑似ステレオ信号を得るための新しい方法及び新しい装置を提示することである。
【0014】
特に、ステレオ又は疑似ステレオ信号を生成するためのベースとなるパラメータをそれぞれ自動的かつ最適に選定するための新しい方法及び新しい装置を提示することを課題とする。
【0015】
特に、そのような信号の取得時に、パラメータ(φ、λ、ρ又はf(又はn)、α、β)を最適かつ自動的に決定する方法及び装置を提示することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本方法及び本装置では、複数の無相関化した、特に、疑似ステレオ信号の変化形態から、その無相関化が特に有利であると判明した変化形態を選定する。
【0017】
特に、異なる性質の信号(例えば、音楽録音に対する音声録音)を変換して最適に再生できるように、選定基準自体を出来る限り効率的かつコンパクトな形で調整する。
【0018】
従って、一つの観点において、x(t)が時点tで得られる左の出力チャンネルの関数値を表し、y(t)が時点tで得られる右の出力チャンネルの関数値を表し、ステレオ変換器により疑似ステレオ出力信号x(t)とy(t)を得るための装置及び方法において、<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるまで、その取得形態を反復して最適化する装置及び方法を提案する。
【0019】
しかし、ドロップアウト又はそれと同等の欠陥が発生した場合に、僅かな数の個々の点が定義範囲外に存在する可能性が有る。そのような場合、<x(t),y(t)>の一部が所定の定義範囲内となるまで、その取得形態を反復して最適化する。そのような一部は、大抵ドロップアウト又はそれと同等の欠陥のためにほんの僅かしか全体と相違しないので、そのような装置も、同等のものとして特許請求の保護範囲内に有るものとする。
【0020】
有利には、望ましい定義範囲を単一の数値パラメータaによって規定し、有利には、0≦a≦1とする。このパラメータ、そのため定義範囲は、例えば、次の不等式
【0021】
【数2】
【0022】
によって、効果的に規定することができ、ここで、出力信号x(t),y(t)の複素伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]に関して、次の関係式が成り立つ。
【0023】
【数3】
【0024】
有利には、当業者は、例えば、次の不等式によっても、
【0025】
【数4】
【0026】
そのようなパラメータa又はそのような定義範囲を規定し、ここで、f* [x(t)]とg* [y(t)]は、又もや出力信号x(t),y(t)の複素伝達関数を表し、0≦a≦1である。
【0027】
両方の場合に、ユーザーは、パラメータa(0≦a≦1)に基づき、(出力信号x(t),y(t)の最大レベルを単位円上に正規化している場合)複素数平面又は虚軸の単位円を出発点として、そのような定義範囲を任意に規定することができる。
【0028】
この二つの例で説明した原理は、複素数平面の単位円と異なる座標系を選定して、別の新しい定義範囲を定義した場合でも依然として成り立つ。従って、「定義範囲」とは、一般的に全体として<x(t),y(t)>を完全に、或いは(例えば、所謂ドロップアウトを含む欠陥の有る録音の場合には)部分的に包含する出力信号x(t),y(t)の<x(t),y(t)>に関する値の許容範囲であると解釈する。
【0029】
有利な変化形態では、出力信号(x(t)とy(t))の相関度を正規化する。有利な変化形態では、得られた左と右のチャンネルの最大レベルを正規化する。そのようにして、相関度又は得られた左と右のチャンネルの最大レベルに影響を与えることなく、望ましい定義範囲が得られるように、若干のパラメータを反復して最適化することができる。
【0030】
φ、f(又はn)、α、βの異なるパラメータ設定に対して、|<x(t),y(t)>|に依存する判定基準により、それらを規定することも有効である。従って、そのような目的のために、本発明では、|<x(t),y(t)>|に依存する相応の数値範囲を正規化して、それがパラメータの最適化のための判定基準を表すようにする。
【0031】
そのため、一つの実施構成では、変換器により疑似ステレオ出力信号x(t)とy(t)を得るための方法を提案し、x(t)は、時点tで得られた左の出力チャンネルの関数値を表し、y(t)は、時点tで得られた右の出力チャンネルの関数値を表し、出力信号の複素伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]は、次の通り定義され、
【0032】
【数5】
【0033】
次の判定基準が満たされるまで、その取得形態を反復して最適化し、
【0034】
【数6】
【0035】
ここで、0≦a≦1は、望ましい定義範囲を規定する。
【0036】
別の実施構成では、当業者は、有利には、この判定基準を次の判定基準によって置き換える。
【0037】
【数7】
【0038】
特許文献1又は2による疑似ステレオ信号の取得方法では、それらが常に明らかに中間の信号を提供するという事実が特徴的である。そのため、ここでは、時間間隔[−T,T]及び左チャンネルの出力信号x(t)と右チャンネルの出力信号y(t)に関して、次の短時間相互相関を導入する。
【0039】
【数8】
【0040】
既に述べた通り、φ、f(又はn)、α、βの異なるパラメータ設定に対して、画一的な相関度を取得することが有効である。従って、その目的のために、本発明では、出力信号(x(t)とy(t))の相関度を正規化する。そのような正規化は、有利には、λ(左の減衰係数)又はρ(右の減衰係数)を目的通り変化させることによって規定することができる。
【0041】
そこで、そのような画一的な相関度によって、得られた信号に対して、ユーザーが調整可能な判定基準を系統的に適用することができる。
【0042】
φ、f(又はn)、α、βの異なるパラメータ設定に対して、得られた左と右のチャンネルの画一的な最大レベルを取得することも有効である。従って、その目的のために、本発明では、得られた左と右のチャンネルの最大レベルを正規化して、そのレベルが、パラメータの最適化によって影響を受けないようにする。
【0043】
例えば、先ずは第一の論理素子を用いて、例えば、0dBへの左の信号Lと右の信号Rの最大値の画一的な調整を行うことが有効である。
【0044】
φ、f(又はn)、α、βの異なるパラメータ設定に対して、<x(t),y(t)>又は|<x(t),y(t)>|に依存する判定基準に基づき、パラメータを規定することも有効である。従って、そのような目的のために、本発明では、それに対応した数値範囲をそれぞれ正規化して、それが、パラメータを最適化するための判定基準を表すようにする。
【0045】
x(t)とy(t)を複素数平面の単位円内にマッピングする。そこで、例えば、特許文献1又は2による装置の各出力信号の品質を推定するために、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]を詳しく調べる。ここでは、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]を考察すると、二つの信号f* [x(t)]とg* [y(t)]の如何なる無相関化も、実軸上への偏向と同等となる。
【0046】
従って、ステレオ変換器の最適化は、例えば、前記の判定基準に基づき、|Re{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|及び|Im{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|に対して行われる。
【0047】
この方法は、単一のパラメータ、即ち、aによって、特に、特許文献1又は2による装置又は方法の出力信号の異なる性質を最適に考慮しているので、特に有利であることが分かっている。有利には、例えば、音声又は音楽を手動で、或いは自動的に異なる形で処理するように、このパラメータは、オーディオ信号の形式に依存することができる。音声の場合、例えば、発音時の高周波雑音などの妨害アーチファクトのために、音楽を録音する場合と異なり、有利には、aによって決まる定義範囲を大幅に縮小する。
【0048】
更に、単一のパラメータaを縮小して、単位円又は虚軸を出発点として、f* [x(t)]+g* [y(t)]に関する最適なマッピング範囲をそれぞれ選定することができる。
【0049】
本発明では、信号x(t)、y(t)が前述した条件を満たさない場合、最適化という意味において、関数値x[t(φ,f,α,β)]とy[t(φ,f,α,β)]又はx[t(φ,n,α,β)]とy[t(φ,n,α,β)]に合わせた反復した措置により、パラメータφ、f(又はn)、α、βを新たに決定して、x(t)とy(t)が前述した条件を満たすまで、これまでに説明した工程を実行する。
【0050】
そこで、更なる工程で、例えば、関数値の最大化という意味において、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフを考察する。そのような措置は、次の式
【0051】
【数9】
【0052】
の最大化と等しく、この式自体は、次の式の値以下となる。
【0053】
【数10】
【0054】
有利には、当業者は、例えば、次の式で式(7)を置き換える。
【0055】
【数11】
【0056】
この場合でも、この最大化に関する限界値R* 又は次の不等式(8)によって定義される偏差Δ(下記参照)が式(8)の範囲内で自由に選定することができる限りにおいて、その措置がユーザーの手に委ねられる。全体として、可能な信号の変化形態xj (t),yj (t)の全数に関して、次の条件を満たさなければならない。
【0057】
【数12】
【0058】
有利には、当業者は、又もや次の式で式(8)を置き換える。
【0059】
【数13】
【0060】
R* とΔは、目標とする出力信号のラウドネス(即ち、聴取者もステレオマッピングの妥当性を判断するための各パラメータ)と直接関連する。
【0061】
Δによって定義される限界値R* の範囲又は全ての可能なリリーフの積分の最大値が得られなかった場合、限界値R* と偏差Δ又は前述した最大値に関する最適化という意味において、関数値x[t(φ,f,α,β)]とy[t(φ,f,α,β)]又はx[t(φ,n,α,β)]とy[t(φ,n,α,β)]に基づく反復した措置により、新たなパラメータφ、f、α又はβを決定して、最適なステレオ音響化に対応する信号x(t),y(t)、或いはパラメータφ、λ、ρ、f(又はn)、α、βが得られるまで、これまでに説明した全ての工程を実行する。
【0062】
相関度r、望ましい定義範囲をそれぞれ決定するパラメータa、限界値R* 及びその偏差Δを相応に選定して、各入力信号の性質に対して、各適用範囲(例えば、音声又は音楽の再生)に関する最適なシステムを構成することができる。
【0063】
ここで行った考察は、虚数平面の単位円と異なる座標系を選定した場合でも、全体として有効である。例えば、単一の関数値の代わりに、軸の長さを正規化して、それに応じて計算負荷を軽減することもできる。
【0064】
一つの観点において、(周知の)圧縮アルゴリズム又はデータ削減方法の採用、或いは例えば、特許文献1又は2に基づき得られた疑似ステレオ信号に関する最小値又は最大値などの特筆すべき特徴の考察が推奨され、それは、本発明による評価を加速する。
【0065】
ここで提案した|<x(t),y(t)>|を考察する代わりに、ステレオ音響化の最適化のために|<x(t),y(t)>|2 を用いることもできる。それによって、計算負荷が大幅に軽減される。
【0066】
その外に、本発明は、3台以上のスピーカー(例えば、従来技術に属するサラウンド設備)から再生されるステレオ信号を発生する装置又は方法に適用することができる。
【0067】
一つの観点において、本発明は、(例えば、特許文献1又は2による)ステレオ変換器の後に、パラメータを部分的に調整可能である複数の手段(例えば、論理素子)をカスケードに接続した形態で構成され、それに対して、前記の装置又は方法に関するフィードバックは、論理素子の全ての条件が満たされるまで、パラメータφ、λ、ρ、f(又はn)、α、βの最適な変更を行うように構成される。
【0068】
その外に、これらの手段(論理素子)は、それ以外の形態で構成することができるとともに、限定して、全体又は一部を省略することもできる。
【0069】
以下において、本発明の異なる実施構成及び実施例を例示して説明し、その際、次の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】任意選択により、(MSマトリックスの前に配置された増幅器を通過する前の)入力信号MとSを(任意選択により、図6bが後に接続される)図7による回路に供給することができる、ステレオ変換器(例えば、特許文献1又は2によるステレオ変換器)のレベルの正規化及び出力信号の相関度の正規化のための二つの論理素子に関する回路図の例
【図2】与えられた信号x(t),y(t)を伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]を用いて複素数平面にマッピングするか、或いはそれらの合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角を決定する回路図の例
【図3】パラメータaを用いて定義範囲を選定する回路図の第一の例
【図3a】パラメータaを用いて新たな定義範囲を選定する回路図の当業者に有利な第二の例
【図4】図1で生成され、図2により複素平面にマッピングされた信号を条件|Re{f* [x(t)]+g* [y(t)]}]|≦|a*cos arg{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|かつ|Im{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|≦|sin arg{f* [x(t)]+g* [y(t)]}|に基づきパラメータaによって定義した許容される定義範囲に関して検査する第三の論理素子の回路図の第一の例
【図4a】図1で生成され、図2により複素平面にマッピングされた信号を図3aにより新たに条件Re2 {f* [x(t)]+g* [y(t)]}*1/a2 +Im2 {f* [x(t)]+g* [y(t)]}≦1に基づきパラメータaによって定義した許容される定義範囲に関して検査する第三の論理素子の回路図の当業者に有利な第二の例
【図5】最終的に関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフをその関数値の最大化という意味において考察して、ユーザーが、その最大化に関する、不等式(8)によって定義した限界値R* 又は同じく不等式(8)によって定義した偏差Δを自由に選定することができる第四の論理素子の回路図の例
【図5a】最終的に関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフをその関数値の最大化という意味において考察して、ユーザーが、その最大値に関する、不等式(8a)によって定義した限界値R* 又は同じく不等式(8a)によって定義した偏差Δを自由に選定することができる第四の論理素子の回路図の当業者に有利な第二の例
【図6a】信号のローカル化を決定する図6bによる回路に引き渡される前の既に存在するステレオ信号のための入力回路図
【図6b】入力が図5又は図5aの出力或いは図6aの出力と接続された、信号のローカル化を決定する回路図
【図7】パラメータzが引き渡された場合に増幅係数λの初期値が図1の増幅係数λの最終値に一致し、図6bによる回路が後に接続されている場合に、入力信号としてパラメータzが出現すると作動する、ステレオ又は疑似ステレオ信号を正規化する回路図の別の例
【図8】与えられた信号x(t),y(t)を伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]を用いて複素数平面にマッピングする回路図の例
【図9】オーディオ信号のマッピング幅を調整する回路図の例
【発明を実施するための形態】
【0071】
例えば、特許文献1又は2による装置におけるステレオ変換器に関して、同様の減衰係数λとρが反比例する場合に、最適なパラメータφ、λ、f(又は簡略化したパラメータn)、α、βを決定して、モノラル信号を、(聴取者がステレオ信号の品質を評価するための二つの判定基準である)最適な無相関とラウドネスを有する、それに対応する疑似ステレオ信号に変換する。出来る限り少ない技術手段を用いて、そのような決定を実現する。
【0072】
図1は、前述したMSマトリックス110を備えたステレオ変換器(例えば、特許文献1又は2によるステレオ変換器)の出力信号のレベルの正規化及び相関度の正規化のための二つの第一の論理素子の回路の原理図を図示しており、(MSマトリックスの前に配置された増幅器を通過する前の)入力信号MとSは、任意選択により、図7による回路に供給することができ、この図7による回路は、任意選択により、理想的には、図6bが後に接続されており、図6bから得られるパラメータzが決定された場合に作動する(下記参照)。
【0073】
この場合、レベルを正規化するための第一の論理素子120は、増幅係数ρ* を有する同形の二つの増幅器と接続されており、左チャンネルLと右チャンネルRの最大値を0dBに調整する役割を果たす。
【0074】
機器110(例えば、特許文献1又は2によるMSマトリックス)から得られた信号LとRは、二つの信号の最大値が正確に0dBのレベルとなるように(複素数平面の単位円への正規化)、画一的に係数ρ* で増幅される(増幅器118,119)。それは、例えば、フィードバック121と122及び増幅器118と119の増幅係数ρ* の変更又は補正によって、0dBへのLとRの最大値の調整を行う論理素子120を後に接続することで実現される。
【0075】
第二の工程において、その結果得られた、振幅がLとRに直接比例するステレオ信号x(t)123とy(t)124は、次の式による短時間相互相関によって、相関度rを決定する別の論理素子125に供給される。
【0076】
【数14】
【0077】
rは、ユーザーによって、−1≦r≦1の範囲内で決定することができ、理想的には、0.2≦r≦0.7の範囲内で動く。
【0078】
rからの偏差は、それぞれフィードバック126によって、S信号に関する増幅器117の増幅係数λを最適に調整するために用いられる。
【0079】
その結果得られた信号LとRは、新たに増幅器118と119及び又もやフィードバック121と122によって、0dBへのLとRの最適値の新たな調整を行う論理素子120を通過した後、新たに論理素子125に供給される。
【0080】
このプロセスは、ユーザーが決定した相関度rを達成するまで行われる。
【0081】
その結果、複素数平面の単位円に関して正規化されたステレオ信号x(t),y(t)が得られる。
【0082】
図2は、入力信号x(t),y(t)を複素数平面にマッピングするか、或いはその合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角を決定するための回路の原理図を図示している。この回路では、図1の出力で得られた信号x(t)とy(t)は、それらの信号をそれぞれ係数
【0083】
【数15】
【0084】
で増幅した後、同じラウドネスの実数部と虚数部に分割するマトリックスに供給され、増幅器229で増幅された信号x(t)から生成された実数部は、更に、増幅係数−1を有する増幅器231を通過する。そのため、次の伝達関数が得られる。
【0085】
【数16】
【0086】
ここで、各実数部又は虚数部は、合算され、そのため、伝達関数f* [x(t)]+g* [y(t)]の合計の実数部又は虚数部が得られる。
【0087】
素子232によって、f* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角が決定される。
【0088】
図3は、定義範囲を選定する回路の原理図を図示しており、複素数平面又は虚軸の単位円を出発点とする、パラメータ0≦a≦1に関する無段階の調整が可能である。従って、ユーザーは、複素数平面上で定義範囲aを決定することができる。そのために、ちょうど決定したf* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角の余弦333又は正弦334を計算している。余弦333から得られた信号は、次に、増幅器335に供給されて、ユーザーが自由に選択可能な増幅係数0≦a≦1で増幅される。
【0089】
図4は、図1で生成され、図2により複素数平面にマッピングされた信号を次の条件
【0090】
【数17】
【0091】
に基づき検査する第三の論理素子の回路の原理図を図示している。
【0092】
ここでは、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の実数部と虚数部及び増幅器334と335から得られた信号は、判定基準(4)と(5)が満たされるか否か、そのため、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の値がユーザーによってaを用いて定義された数値範囲内に有るか否かを検査する別の論理素子436に供給される。
【0093】
その条件に該当しない場合、フィードバック437によって、新たに最適化された値φ、f(又はn)、α、βを決定して、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の値がユーザーによってaを用いて定義された数値範囲内となるまで、これまでに説明したシステム全体を新たに通る。ここで、論理素子436の出力信号は、次の論理素子538(図5)に引き渡される。
【0094】
その論理素子は、次に、関数値の最大化という意味において、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフを考察し、ユーザーは、そのような最大化のために、次の不等式(8)によって決まる限界値R* (及び同じく不等式(8)によって決まる偏差Δ)を自由に選定することができる。全体として、次の条件を満たさなければならない。
【0095】
【数18】
【0096】
その条件に該当しない場合、フィードバック539によって、新たに最適化された値φ、f(又はn)、α、βを反復して決定して、伝達関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフが、(両方ともユーザーによって定義される)限界値R* 又は偏差Δを考慮して、関数値の目的とする最大化を満たすまで、これまでに説明したシステム全体を新たに通る。
【0097】
有利な変化形態において、対応する図3,4及び5を置き換えた図3a,4a及び5aは、当業者に有利な代替回路の原理図を図示している。
【0098】
図3aによって、又もやパラメータa(0≦a≦1)に関する新たな定義範囲の選定が可能であり、複素数平面又は虚軸の単位円を出発点とする、aに関する無段階の調整が可能である。従って、ユーザーは、aによって決まる複素数平面上の定義範囲を単位円内において自由に決定することができる。そのために、f* [x(t)]+g* [y(t)]の実数部333aの自乗又は虚数部の自乗334aを算出している。その自乗334aから得られた信号は、次に、増幅器335aに供給されて、ユーザーによって自由に選定可能な増幅係数1/a2 で増幅される。更に、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の偏角の正弦の自乗を算出している。
【0099】
図4aは、図3aの出力の後に接続されて、図1で生成され、図2により複素数平面にマッピングされた信号を次の簡略化した条件に基づき検査する当業者に有利な新たな第三の論理素子の回路の原理図を図示している。
【0100】
【数19】
【0101】
この場合、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の実数部の自乗と虚数部の自乗及びそれらの自乗333aと335aから得られた信号が、前記の判定基準を満たすか否か、そのため、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の値がユーザーによってaを用いて定義された新たな数値範囲内に有るか否かを検査する別の論理素子436aに供給される。
【0102】
その条件に該当しない場合、フィードバック437aによって、新たに最適化された値φ、f(又はn)、α、βを決定して、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の値がユーザーによってaを用いて定義された新たな数値範囲内となるまで、これまでに説明したシステム全体を新たに通る。ここで、論理素子436aの出力信号は、次の論理素子538a(図5a)に引き渡される。
【0103】
この論理素子は、次に、関数値の最大化という意味において、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフを考察し、ユーザーは、そのような最大化のために、不等式(8a)によって決まる限界値R* (及び同じく不等式(8a)によって決まる偏差Δ)を自由に選定することができる。全体として、新たに次の条件を満たさなければならない。
【0104】
【数20】
【0105】
その条件に該当しない場合、フィードバック539aによって、新たに最適化された値φ、f(又はn)、α、βを反復して決定して、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフが、(両方ともユーザーによって新たに定義される)限界値R* 又は偏差Δを考慮して、関数値の目的とする最大化を満たすまで、これまでに説明したシステム全体を新たに通る。
【0106】
従って、例えば、特許文献1又は2の実施構成の中の一つによる本来の疑似ステレオ変換器を用いて(ここでは、同様の減衰係数λとρが反比例する場合を含めて)x(t)とy(t)が前述した条件(4)、(5)及び(8)、或いは(4a)と(8a)を満たすまで、新たなパラメータφ、f(又はn)、α、βを反復して決定する。
【0107】
それによって、信号x(t)123とy(t)124は、(選択可能な相関度rで決まる)互換性、(選定可能な増幅係数aで決まる)定義範囲及び(選定可能な限界値R* 又は選定可能な偏差Δで決まる)ラウドネスに関して、ユーザーの指示と一致して、ここで説明した構成の出力信号L* とR* を表すこととなる。
1.マッピング方向の決定
時として、得られたステレオマッピングをステレオ音響化のベースとなる指向特性の主軸の周りに鏡像反転させることも、例えば、そのような主軸に関して鏡面反転したマッピングが得られるので、重要である。それは、手動で左と右のチャンネルを交換することによって行うことができる。
【0108】
本システムによって、既に存在するステレオ信号L゜,R゜をマッピングする場合、例えば、図6bにより構成される仮想音源の図示された疑似ステレオ手法を用いて、正しいマッピング方向を自動的に見つけ出すことができる(図6bは、図5又は図5aの直ぐ後に接続され、既に存在するステレオ信号L゜,R゜の複素伝達関数の合計f* (l(ti ))+g* (r(ti ))を決定するために、同様に図6aを図6bに接続することができる)。この場合、(少なくとも一つのケースにおいて、以下で述べる伝達関数f* (x(ti ))+g* (y(ti ))又はf* (l(ti ))+g* (r(ti ))の相関関数値の全てが0に等しいということにはならない)好適に選定した時点ti において、図2により既に算出した伝達関数f* (x(ti ))+g* (y(ti ))を(図2の入力信号x(t),y(t)に関する回路の第一の部分と構成が一致する図6aによる回路で算出された)元のステレオ信号L゜,R゜の左の信号l(t)又は右の信号r(t)のf* (l(ti ))+g* (r(ti ))と比較する。これらの伝達関数が複素数平面の同じ又は対角線上に対向する象限内を移動した場合、複素数平面の同じ又は対角線上に対向する象限内に有る、前記の伝達関数の関数値の全数mがそれぞれ1だけ増える。
【0109】
ここで、伝達関数f* (x(ti ))+g* (y(ti ))又はf* (l(ti ))+g* (r(ti ))の相関関数値の数以下であり、ゼロではない、経験的に(又は統計的に調査して)決定できる数bは、必要な該当数を規定する。そのような数を下回る数で、例えば、図1〜5又は図1,2,3a〜5aによる構成から得られるステレオ信号の左チャンネルx(t)と右チャンネルy(t)を交換する。
【0110】
元のステレオ信号が、指向特性を規定する関数f(又はその簡略化したパラメータn)及び(例えば、データ圧縮を目的とする)パラメータφ、α、β、λ、ρに加えて、モノラル信号に符号変換される場合(パラメータzに関して拡張することができる出力640aの例、下記参照)、有意義なこととして、(例えば、0又は1の数を占めるとともに、所望の場合、同時に図7による回路を作動させることができるパラメータzによって表される)得られた左チャンネルと得られた右チャンネルを交換すべきか否かの情報を一緒に符号化する。
【0111】
僅かな変更により、電気回路又はアルゴリズム内の別の位置に挿入することもできる、図6a及び6bによる回路と同様の回路を構成することができる。
2.マッピング幅の縮小又は拡大
このような用途に対して、従来技術に属する圧縮アルゴリズム又はデータ削減方法を更に採用すること、或いは例えば、得られた疑似ステレオ信号の最小値又は最大値などの特筆すべき特徴を考察することも推奨され、それは、本発明による評価を加速する。
【0112】
得られたステレオ信号の相関度r、或いは(得られたステレオ信号を処理するための)減衰係数λ又はρを目的通り変化させることによって、得られたステレオ信号のマッピング幅を補足的に縮小又は拡大することは、(例えば、自動車でのステレオ信号の再生のために)特に重要である。この場合、ステレオ音響化する信号の指向特性を規定する、事前に調査したパラメータf(又はn)、手動で、或いは測定技術により検出する、主軸と音源の成す角度φ、左の仮想の開口角α及び右の仮想の開口角βを維持することができ、有意義なこととして、そのようなマッピング幅の縮小又は拡大を手動で行う場合には、例えば、図1の論理素子120による最終的な振幅補正だけが必要となる。
【0113】
これらを自動化する場合、一連の音響心理実験は、一定のマッピング幅が、基本的に次の判定基準
【0114】
【数21】
【0115】
と次の判定基準
【0116】
【数22】
【0117】
に依存することを示している(ここで、例えば、電話信号に対しては、S* とε又はU* とκを音楽録音と異なる形で決定する)。それによると、得られたステレオ信号の相関度r、或いは(得られたステレオ信号を処理するための)減衰係数λ又はρ、場合によっては、図1の論理素子120と同様の論理素子に応じた好適な関数値x(t),y(t)だけをフィードバックに基づき反復した動作原理により決定する。
【0118】
従って、本発明による図1〜5、6a、6b又は図1、2、3a〜5a、6a、6bの構成は、配置構成という意味において、例えば、図7、8及び/又は9に図示された形に拡張することができる。この場合、図7は、図6bが後に接続されている場合に、入力信号としてパラメータzが出現すると作動する、ステレオ又は疑似ステレオ信号を正規化する回路の別の例を図示している。ここで、パラメータzが引き渡された場合、増幅係数λの初期値は、図1の増幅係数λの最終値に一致し、その引き渡された時点で、図1の入力信号は、図7の入力信号として直接引き渡される。
【0119】
その外に、図7〜9による回路は、その他の回路又はアルゴリズムにおいて、独立して使用することもできる。
【0120】
本構成において、MSマトリックス110では、パラメータzが1に等しい場合、(入力信号としてパラメータzが出現すると、このMSマトリックスを同時に作動させる)論理素子110aによって、左と右のチャンネルが交換され、それ以外の場合、そのような交換は行われない。
【0121】
ここで、その結果得られたMSマトリックス110の出力信号LとRは、二つの信号の最大値が正確に0dBのレベルを有するように(複素数平面の単位円への正規化)、画一的に係数ρ* で増幅される(増幅器118,119)。それは、例えば、フィードバック121と122及び増幅器118と119の増幅係数ρ* の変更又は補正によって、LとRの最大値を0dBに調整することを行う論理素子120を後に接続することによって実現される。
【0122】
ここで、更なる工程において、その結果得られた信号x(t)123とy(t)124を図8によるマトリックスに供給し、そこでは、これらの信号は、それぞれ係数
【0123】
【数23】
【0124】
で増幅された(増幅器229,230)後、同じラウドネスの実数部と虚数部に分割され、増幅器229を用いて増幅された信号x(t)から生成された実数部は、更に増幅係数−1の増幅器231を通過する。それによって、図2と関連して既に述べた複素伝達関数f* [x(t)]とg* [y(t)]が得られる。ここで、各実数部と虚数部は、合算され、そのため、伝達関数の合計f* [x(t)]+g* [y(t)]の実数部と虚数部が得られる。
【0125】
ここで、例えば、図9の論理素子640による構成が後に接続され、その構成は、ユーザーが目的とするステレオ信号のマッピング幅に関して好適に選定した限界値S* 又は好適に選定した偏差ε(両方とも不等式(9)によって定義される)に関して、次の条件
【0126】
【数24】
【0127】
が満たされるか否かを検査する。その条件に該当しない場合、フィードバック641によって、(得られたステレオ信号を処理するための)相関度r又は減衰係数λ又はρに関して新たな最適値を決定して、上記の条件(9)が満たされるまで、図7〜9に図示されている通り、これまでに説明した工程を実行する。
【0128】
ここで、論理素子640の出力信号は、例えば、図9の論理素子642による構成に引き渡される。その構成は、最終的に目的とするステレオ信号のマッピング幅に関する関数値の最適化という意味において、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフを考察しており、ユーザーは、目的とするステレオ信号のマッピング幅に関して、限界値U* 及び偏差κ(両方とも不等式(10)によって定義される)を好適に選定することができる。全体として、次の条件
【0129】
【数25】
【0130】
を満たさなければならない。その条件に該当しない場合、フィードバック643によって、(得られたステレオ信号を処理するための)相関度r、或いは減衰係数λ又はρに関する新たな最適値を決定して、関数f* [x(t)]+g* [y(t)]のリリーフが、限界値U* 又は偏差κ(両方ともユーザーによって好適に選定される)を考慮したマッピング幅に関する関数値の目標とする最適化を満たすまで、図7〜9に図示されている通り、これまでに説明した工程を実行する。
【0131】
そのため、信号x(t)123とy(t)124は、(得られたステレオ信号を処理するための)相関度r、或いは減衰係数λとρによって決まるマッピング幅に関して、ユーザーの指示と一致し、前述した構成の出力信号L**とR**を表すこととなる。
3.本発明の適用範囲
前述した構成又はその構成の一部は、パラメータφ、f(又は簡略化したパラメータn)、α、β、λ、ρに加えて、モノラル信号に制限される完全なステレオ信号のための符号器として使用することができる。
【0132】
既に存在するステレオ信号は、r、a、R* 、Δ又はマッピング方向(或いは以下で説明するパラメータS* 、ε、U* 又はκ)に関して評価した後、特許文献1又は2による装置又は方法と関連して、同様に、パラメータφ、f(又はn)、α、β、λ、ρに基づきモノラル信号として新たに符号化することができる。
【0133】
同様に、場合によっては、後続する素子によって補完される、前述した構成は、モノラル信号用の復号器として用いることができる。φ、f(又はn)、α、β、λ、ρ、或いは(例えば、0又は1の値を占めることができるパラメータzによって表される)マッピング方向が分かった場合に、そのような復号器は、特許文献1又は2による装置に縮退する。
【0134】
全体として、そのような符号器又は復号器は、オーディオ信号を記録、変換、伝送又は再生する所であれば、如何なる所でも使用することができる。それらは、多チャンネルステレオ技術に対する優れた代替技術である。
【0135】
具体的な適用範囲は、電気通信(ハンドフリー機器)、広域ネットワーク、コンピュータシステム、送信・伝送機器、特に、衛星伝送機器、業務用オーディオ技術、テレビ、フィルム、無線及び消費者用電子機器である。
【0136】
本発明は、(例えば、自動車内の)不利な受信条件下における安定したFMステレオ信号の取得に関しても特に重要である。この場合、安定したステレオ音響は、元のステレオ信号の左と右のチャンネルの合計である主チャンネル信号(L+R)を入力信号として純粋に利用して実現することができる。この場合、元のステレオ信号の左と右のチャンネルの減算結果である完全又は不完全な副チャンネル信号(L−R)を一緒に用いて、使用可能なS信号を処理するか、或いは全体として目標とするステレオ信号のマッピング幅を決定するために、以下のパラメータを決定又は最適化する。
(a)ステレオ音響化する信号の指向特性を規定するパラメータf(又はn)、
(b)手動で、或いは測定技術により検出する、主軸と音源の成す角度φ、
(c)左の仮想の開口角α、
(d)右の仮想の開口角β、
(e)得られたステレオ信号又はそれから得られた信号を処理するための減衰係数λ又はρ、
(f)MSマトリックス又はそれ以外の本発明による構成から得られた左と右のチャンネルを単位円に正規化するための図1の増幅係数ρ* (この場合、1は、例えば、ρ* を用いて正規化した0dBの最大レベルに等しく、x(t)は、そのような正規化から得られた左の出力信号を表し、y(t)は、そのような正規化から得られた右の出力信号を表す)、
(g)得られたステレオ信号の相関度r、
(h)得られた出力信号の伝達関数(例えば、次の複素伝達関数
【0137】
【数26】
【0138】
と、
【0139】
【数27】
【0140】
、例えば、0≦a≦1に対して、次の式が成り立つ、
【0141】
【数28】
【0142】
と、
【0143】
【数29】
【0144】
(当業者は、有利には、同じパラメータa、0≦a≦1に対して、上記の条件(4)と(5)を下記の新しい条件と置き換える、
【0145】
【数30】
【0146】
)の合計に関する許容される数値範囲を定義するための増幅係数a、
(i)前記の伝達関数の合計の関数値の絶対値を決定又は最大化するための限界値R* 又は偏差Δ(この場合、そのような決定又は最大化と時間間隔[−T,T]又は可能な出力信号xj (t),yj (t)の全数に関して、例えば、次の式が成り立つ、
【0147】
【数31】
【0148】
当業者は、有利には、上記の条件(8)を下記の式で置き換える)、
【0149】
【数32】
【0150】
(j)例えば、前記の元のステレオ信号に関する伝達関数(2)と(3)の関数値が属する象限を決定することによる、再現した音源のマッピング方向(例えば、それに続いて、得られた左又は右のチャンネルの交換によって最適化することができる、上記参照)、
(k)限界値S* 又は偏差ε(これらに関しては、例えば、次の式
【0151】
【数33】
【0152】
が成り立たなければならない)、
(l)限界値U* 又は偏差κ(これらに関しては、例えば、次の式
【0153】
【数34】
【0154】
が成り立たなければならない)。
如何なる場合でも、この結果は、FM信号に対して一定のステレオ音響マッピングとなる。
【0155】
この場合でも、従来技術に属する圧縮アルゴリズム、データ削減方法の採用、或いは例えば、本発明による評価を加速させる、得られた信号又は信号成分の最小値と最大値などの特筆すべき特徴の考察を更に適用することができる。
【0156】
各実施構成、各図面又は各構成要素において、ここで述べた回路、変換器、構成又は論理素子は、例えば、それらと同等のソフトウェアプログラム、プログラミングされたプロセッサ、或いはDSP又はFPGAによる解決策によって実現することができる。
【符号の説明】
【0157】
φ 録音角
α 左の仮想の開口角
β 右の仮想の開口角
λ 左の入力信号の減衰係数
ρ 右の入力信号の減衰係数
これらの減衰係数λとρを用いて、ステレオ信号の相関度を調整することができる。
【0158】
Φ 極角
f M信号の指向特性を規定する極距離
Pα,Pβ α又はβに関する増幅係数
L α,L β α又はβに関する遅延時間
Sα S信号のシミュレーションした左の信号成分
Sβ S信号のシミュレーションした右の信号成分
x(t) 左の出力信号
y(t) 右の出力信号
f* [x(t)] 複素伝達関数
g* [y(t)] 複素伝達関数
a 得られた出力信号x(t),y(t)の伝達関数の合計に関する値の許容される数値範囲を定義するための増幅係数
r 短時間相互相関から導出される相関度
R* 得られた出力信号x(t),y(t)のラウドネスの限界値
Δ 偏差
S* 得られた出力信号x(t),y(t)のマッピング幅の第一の限界値
ε 偏差
U* 得られた出力信号x(t),y(t)のマッピング幅の第二の限界値
κ 偏差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
x(t)が時点tで得られた左の出力チャンネルの関数値を表し、y(t)が時点tで得られた右の出力チャンネルの関数値を表すとして、ステレオ変換器(110)により疑似ステレオ出力信号x(t)とy(t)を取得する方法において、
<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるまで、その取得形態を反復して最適化することを特徴とする方法。
【請求項2】
<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるように、パラメータφ、f(又はn)、α、βを反復して調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
得られた左と右のチャンネルの最大レベルを正規化するか、或いは同様に、<x(t),y(t)>の座標系の軸の長さを正規化することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
出力信号x(t)とy(t)の相関度を正規化することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
|<x(t),y(t)>|に応じた判定基準に基づき、当該の取得形態を反復して最適化することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
ユーザーが当該の定義範囲を決定することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
当該の音声に関する定義範囲を音楽に関する定義範囲よりも自動的に縮小して決定することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
x(t)の複素伝達関数が、2の平方根で除算したx(t)に−1と虚数単位の和を乗算した結果に等しく、y(t)の複素伝達関数が、2の平方根で除算したy(t)に−1と虚数単位の和を乗算した結果に等しく、選択可能な限界値R* から選択可能な偏差Δを差し引いた値が、0以上であり、かつx(t)とy(t)の複素伝達関数の合計の絶対値を時間間隔[−T,T]に渡って積分した値以下であり、かつ上記の伝達関数の合計を時間間隔[−T,T]に渡って積分した、全数pの組み合わせ可能な対の関数xj (t)とyj (t)に関する全てのリリーフの中の最大値以下であり、かつ限界値R* から偏差Δを差し引いた値以下であり、かつ上記のx(t)とy(t)の複素伝達関数の合計の偏角の正弦の自乗と1からaの自乗を差し引いた値との積を1から差し引いた値の平方根によってパラメータa(0≦a≦1)を除算した結果を時間間隔[−T,T]に渡って積分した値以下であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
得られたステレオ信号のマッピング方向を更に決定又は規定することを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
得られた疑似ステレオ信号のマッピング幅をそれらの相関度(r)又は減衰係数(λ又はρ)を可能な限り変更することによって更に規定することを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
得られたステレオ信号を複数のスピーカーから再生できるように更に評価することを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
圧縮方法、データ削減方法又はそれ以外の選択的評価方法をオーディオ信号に更に適用することを特徴とする請求項1から11までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
得られたステレオ出力信号を三台以上のスピーカーから再生するためのステレオ信号に更に変換することを特徴とする請求項1から12までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
本方法をFMステレオ信号に適用することを特徴とする請求項1から13までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
x(t)が時点tで得られた左の出力チャンネルの関数値を表し、y(t)が時点tで得られた右の出力チャンネルの関数値を表すとして、変換器により疑似ステレオ出力信号x(t)とy(t)を取得する装置において、
この変換器が、<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるまで、その取得形態を反復して最適化する反復式変換器であることを特徴とする装置。
【請求項16】
<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるように、パラメータφ、f(又はn)、α、βを反復して調整するように、当該の変換器が構成されている請求項15に記載の装置。
【請求項17】
得られた左と右のチャンネルの最大レベルを正規化するか、或いは同様に、<x(t),y(t)>の座標系の軸の長さを正規化する正規化手段を備えた請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
出力信号x(t)とy(t)の相関度を正規化する正規化手段を備えた請求項15から17までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項19】
|<x(t),y(t)>|に応じた判定基準に基づき、当該の取得形態を反復して最適化する請求項15から18までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項20】
ユーザーが当該の定義範囲を決定する請求項15から19までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項21】
当該の音声に関する定義範囲を音楽に関する定義範囲よりも自動的に縮小して決定する手段を備えた請求項15から20までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項22】
選択可能な限界値R* から選択可能な偏差Δを差し引いた値が、0以上であり、かつx(t)とy(t)の複素伝達関数の合計の絶対値を時間間隔[−T,T]に渡って積分した値以下であり、かつ上記の伝達関数の合計を時間間隔[−T,T]に渡って積分した、全数pの組み合わせ可能な対の関数xj (t)とyj (t)に関する全てのリリーフの中の最大値以下であり、かつ限界値R* から偏差Δを差し引いた値以下であり、上記の複素伝達関数の合計の偏角の正弦の自乗と1からaの自乗を差し引いた値とを乗算した積を1から差し引いた値の平方根によってパラメータa(0≦a≦1)を除算した結果を時間間隔[−T,T]に渡って積分した値以下である請求項15から21までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項23】
ステレオ信号のマッピング方向を更に決定又は規定する手段を備えた請求項15から22までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項24】
得られた疑似ステレオ信号のマッピング幅を相関度r、減衰係数λ又は減衰係数ρを可能な限り変更することによって更に規定する手段が配備されていることを特徴とする請求項15から23までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項25】
得られたステレオ信号を複数のスピーカーから再生できるように更に評価する手段を備えた請求項15から24までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項26】
オーディオ信号の圧縮、データ削減又はそれ以外の選択的評価を行う手段を備えた請求項15から25までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項27】
得られたステレオ出力信号を三台以上のスピーカーから再生するためのステレオ信号に変換する一つ以上の変換器が配備されていることを特徴とする請求項15から26までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項28】
請求項15から27までのいずれか一つに記載の装置をFMステレオ信号の処理に使用すること。
【請求項1】
x(t)が時点tで得られた左の出力チャンネルの関数値を表し、y(t)が時点tで得られた右の出力チャンネルの関数値を表すとして、ステレオ変換器(110)により疑似ステレオ出力信号x(t)とy(t)を取得する方法において、
<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるまで、その取得形態を反復して最適化することを特徴とする方法。
【請求項2】
<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるように、パラメータφ、f(又はn)、α、βを反復して調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
得られた左と右のチャンネルの最大レベルを正規化するか、或いは同様に、<x(t),y(t)>の座標系の軸の長さを正規化することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
出力信号x(t)とy(t)の相関度を正規化することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
|<x(t),y(t)>|に応じた判定基準に基づき、当該の取得形態を反復して最適化することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
ユーザーが当該の定義範囲を決定することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
当該の音声に関する定義範囲を音楽に関する定義範囲よりも自動的に縮小して決定することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
x(t)の複素伝達関数が、2の平方根で除算したx(t)に−1と虚数単位の和を乗算した結果に等しく、y(t)の複素伝達関数が、2の平方根で除算したy(t)に−1と虚数単位の和を乗算した結果に等しく、選択可能な限界値R* から選択可能な偏差Δを差し引いた値が、0以上であり、かつx(t)とy(t)の複素伝達関数の合計の絶対値を時間間隔[−T,T]に渡って積分した値以下であり、かつ上記の伝達関数の合計を時間間隔[−T,T]に渡って積分した、全数pの組み合わせ可能な対の関数xj (t)とyj (t)に関する全てのリリーフの中の最大値以下であり、かつ限界値R* から偏差Δを差し引いた値以下であり、かつ上記のx(t)とy(t)の複素伝達関数の合計の偏角の正弦の自乗と1からaの自乗を差し引いた値との積を1から差し引いた値の平方根によってパラメータa(0≦a≦1)を除算した結果を時間間隔[−T,T]に渡って積分した値以下であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
得られたステレオ信号のマッピング方向を更に決定又は規定することを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
得られた疑似ステレオ信号のマッピング幅をそれらの相関度(r)又は減衰係数(λ又はρ)を可能な限り変更することによって更に規定することを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
得られたステレオ信号を複数のスピーカーから再生できるように更に評価することを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
圧縮方法、データ削減方法又はそれ以外の選択的評価方法をオーディオ信号に更に適用することを特徴とする請求項1から11までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
得られたステレオ出力信号を三台以上のスピーカーから再生するためのステレオ信号に更に変換することを特徴とする請求項1から12までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
本方法をFMステレオ信号に適用することを特徴とする請求項1から13までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
x(t)が時点tで得られた左の出力チャンネルの関数値を表し、y(t)が時点tで得られた右の出力チャンネルの関数値を表すとして、変換器により疑似ステレオ出力信号x(t)とy(t)を取得する装置において、
この変換器が、<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるまで、その取得形態を反復して最適化する反復式変換器であることを特徴とする装置。
【請求項16】
<x(t),y(t)>が所定の定義範囲内となるように、パラメータφ、f(又はn)、α、βを反復して調整するように、当該の変換器が構成されている請求項15に記載の装置。
【請求項17】
得られた左と右のチャンネルの最大レベルを正規化するか、或いは同様に、<x(t),y(t)>の座標系の軸の長さを正規化する正規化手段を備えた請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
出力信号x(t)とy(t)の相関度を正規化する正規化手段を備えた請求項15から17までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項19】
|<x(t),y(t)>|に応じた判定基準に基づき、当該の取得形態を反復して最適化する請求項15から18までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項20】
ユーザーが当該の定義範囲を決定する請求項15から19までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項21】
当該の音声に関する定義範囲を音楽に関する定義範囲よりも自動的に縮小して決定する手段を備えた請求項15から20までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項22】
選択可能な限界値R* から選択可能な偏差Δを差し引いた値が、0以上であり、かつx(t)とy(t)の複素伝達関数の合計の絶対値を時間間隔[−T,T]に渡って積分した値以下であり、かつ上記の伝達関数の合計を時間間隔[−T,T]に渡って積分した、全数pの組み合わせ可能な対の関数xj (t)とyj (t)に関する全てのリリーフの中の最大値以下であり、かつ限界値R* から偏差Δを差し引いた値以下であり、上記の複素伝達関数の合計の偏角の正弦の自乗と1からaの自乗を差し引いた値とを乗算した積を1から差し引いた値の平方根によってパラメータa(0≦a≦1)を除算した結果を時間間隔[−T,T]に渡って積分した値以下である請求項15から21までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項23】
ステレオ信号のマッピング方向を更に決定又は規定する手段を備えた請求項15から22までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項24】
得られた疑似ステレオ信号のマッピング幅を相関度r、減衰係数λ又は減衰係数ρを可能な限り変更することによって更に規定する手段が配備されていることを特徴とする請求項15から23までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項25】
得られたステレオ信号を複数のスピーカーから再生できるように更に評価する手段を備えた請求項15から24までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項26】
オーディオ信号の圧縮、データ削減又はそれ以外の選択的評価を行う手段を備えた請求項15から25までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項27】
得られたステレオ出力信号を三台以上のスピーカーから再生するためのステレオ信号に変換する一つ以上の変換器が配備されていることを特徴とする請求項15から26までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項28】
請求項15から27までのいずれか一つに記載の装置をFMステレオ信号の処理に使用すること。
【図1】
【図2】
【図3】
【図3a】
【図4】
【図4a】
【図5】
【図5a】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図3a】
【図4】
【図4a】
【図5】
【図5a】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2012−533954(P2012−533954A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520970(P2012−520970)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055877
【国際公開番号】WO2011/009650
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(510300393)ストーミングスイス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055877
【国際公開番号】WO2011/009650
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(510300393)ストーミングスイス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【Fターム(参考)】
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