説明

ステロイドホルモン核受容体のモジュレーターとしてのスピロ含有化合物および組成物

本明細書では、スピロ構造の特徴を有する化合物を記載している。また、本明細書では、上記化合物の製造方法、ステロイドホルモン核受容体活性を調節するための上記化合物の使用方法、および上記化合物を含む医薬組成物および医薬についても記載している。また、本明細書では、ステロイドホルモン核受容体の活性に関連した疾患または状態を処置および/または予防するための上記化合物、医薬組成物および医薬の使用方法についても記載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ステロイドホルモン核受容体の活性化に伴う疾患または状態を処置または予防するための化合物、上記化合物の製造方法、上記化合物を含む医薬組成物および医薬、および上記化合物の使用方法が記載されている。
【背景技術】
【0002】
ステロイドホルモン核受容体は、核ホルモン受容体スーパーファミリーのサブセットを代表する。天然状態で受容体と複合体を形成する同族リガンドによって名前を挙げると、ステロイドホルモン核受容体には、グルココルチコイド受容体(GR)、アンドロゲン受容体(AR)、鉱質コルチコイド受容体(MR)、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)がある。MRは、上皮組織、心臓、腎臓、脳、脈管組織および骨で発現される。アルドステロンは、MRの内在性リガンドであり、主として副腎、心臓、脳および血管で合成される。幾つかの有害な作用、例えば:ナトリウム/水保持、腎線維症、脈管炎症、脈管線維症、内皮機能不全、冠動脈炎症、冠動脈血流の減少、心室不整脈、心筋線維症、心室肥大、および心臓血管系、主として心臓、血管系および腎臓への直接損傷は、アルドステロンに起因すると考えられる。全標的臓器に対するアルドステロン作用は、MR受容体の活性化を通して伝達される。GRは、ほとんど全ての組織および臓器系で発現され、中枢神経系の機能の完全さおよび心臓血管、代謝および免疫ホメオスタシスの維持にとって非常に重要なものである。
【発明の開示】
【0003】
発明の要約
一つの特徴は、スピロ構造を有する化合物である。別の特徴は、核受容体の調節を目的とするスピロ構造を有する上記化合物の使用である。別の特徴は、疾患または状態の処置における、または疾患または状態を処置するための医薬の製造を目的とするスピロ構造を有する上記化合物の使用であり、この場合少なくとも一つの核受容体活性の調節により上記疾患または状態の病状および/または総合的症状が予防、阻止または改善され得るものとする。別の特徴は、スピロ構造を有する上記化合物を含む医薬組成物である。別の特徴は、スピロ構造を有する上記化合物の製造方法である。
【0004】
一つの特徴は、式(A):
【化1】

[式中、PおよびPの環構造は、独立して所望により置換されていてもよいシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択され、所望による各置換基Rは、独立してハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、または−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、各mは、独立して0、1、2、3、4、5および6から選択され、環構造Pは、5、6、7または8原子により構成されるスピロ構造であり、Pの原子の少なくとも1個は、O、NR、C(RおよびSから選択されるヘテロ原子Xであり、ZはCR=CRまたはC(R−C(Rである]
の構造を有する化合物である。
【0005】
一つの特徴は、式(1):
【化2】

[式中、(a)Aは、NR−CRまたはN=CRであり、Xは、O、NR、C(RまたはSであり、ZはCR=CRまたはC(R−C(Rであり、(b)Rは、H、または−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分であり、Lは、結合、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、R部分の所望による置換基は、ハロゲン、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−C1−6アルキルおよびハロ−C1−6アルコキシから選択され、RおよびRは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、RまたはR部分の所望による置換基は、ハロゲン、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−C1−6アルキルおよびハロ−C1−6アルコキシから選択されるか、またはRおよびRは、一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員複素環を形成するか、またはRおよびRは、一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員シクロアルキル、炭素環または複素環を形成し、(c)各Rは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、ただし、少なくとも1個のRはHではないものとし、(d)各Rは、独立して、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、各mは、独立して0、1、2、3、4および5から選択され、(e)各Rは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択されるか、またはいずれか2個のR基は、一緒になって3〜8員炭素環または複素環を形成し、そして(f)各RおよびRは、独立してHおよび(C−C)アルキルから選択される]
の構造を有する化合物、その医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグ、または医薬上許容される溶媒和物である。
【0006】
上記特徴の一態様では、XはOである。上記特徴の追加的または代替的態様では、XはOであり、ZはCR=CRである。上記特徴の追加的または代替的態様では、XはOであり、ZはC(R−C(Rである。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRである。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOである。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOであり、ZはCR=CRである。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOであり、ZはC(R−C(Rである。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOであり、RおよびRは一緒になって3〜8員複素環を形成する。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOであり、ZはCR=CRであり、RおよびRは一緒になって3〜8員複素環を形成する。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOであり、ZはC(R−C(Rであり、RおよびRは一緒になって3〜8員複素環を形成する。
【0007】
上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、RおよびRは一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員炭素環または複素環を形成する。追加的または代替的態様では、XはOである。追加的または代替的態様では、ZはCR=CRである。追加的または代替的態様では、ZはC(R−C(Rである。追加的または代替的態様では、RはHではない。
【0008】
上記特徴の追加的または代替的態様では、AはN=CRである。追加的または代替的態様では、XはOである。追加的または代替的態様では、ZはCR=CRである。追加的または代替的態様では、ZはC(R−C(Rである。
【0009】
上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、RはHではない。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、RおよびRは一緒になって3〜8員複素環を形成する。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOである。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOであり、ZはCR=CRである。上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、XはOであり、ZはC(R−C(Rである。
【0010】
上記特徴の追加的または代替的態様では、AはNR−CRであり、RおよびRは一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員炭素環または複素環を形成する。追加的または代替的態様では、XはOである。追加的または代替的態様では、ZはCR=CRである。追加的または代替的態様では、ZはC(R−C(Rである。追加的または代替的態様では、RはHではない。
【0011】
別の特徴は、式(2):
【化3】

(式中、nは、0、1、2、3、4または5である)
で示される構造を有する化合物である。
【0012】
上記特徴の一態様では、XはOである。上記特徴の追加的または代替的態様では、XはOであり、ZはCR=CRである。上記特徴の追加的または代替的態様では、XはOであり、ZはC(R−C(Rである。
【0013】
もう一つの特徴は、少なくとも一つのステロイドホルモン核受容体の活性を調節する方法であって、少なくとも一つのステロイドホルモン核受容体を、式(1)の構造を有する化合物、またはその医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグ、または医薬上許容される溶媒和物と接触させることを含む方法である。
【0014】
上記特徴の追加的または代替的態様では、化合物は、少なくとも一つのステロイドホルモン核受容体と直接接触する。追加的または代替的態様では、接触はインビトロで行なわれる。追加的または代替的態様では、接触はインビボで行なわれる。
【0015】
もう一つの特徴は、式(1)の構造を有する少なくとも1種の化合物またはその医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグ、または医薬上許容される溶媒和物を、1種またはそれ以上の適切な賦形剤と混合した形で含む医薬組成物である。追加的または代替的態様では、1種またはそれ以上の賦形剤は、非経腸投与に適切なものである。追加的または代替的態様では、1種またはそれ以上の賦形剤は、経口投与に適切なものである。追加的または代替的態様では、1種またはそれ以上の賦形剤は、眼への投与に適切なものである。
【0016】
もう一つの特徴は、ステロイドホルモン核受容体活性の調節により、疾患の病状および/または総合的症状が予防、阻止または改善され得る動物における疾患の処置方法であって、式(1)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグまたは医薬上許容される溶媒和物の治療有効量を動物に投与することを含む方法である。追加的または代替的態様では、ステロイドホルモン核受容体は、グルココルチコイド受容体、鉱質コルチコイド受容体、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体から成る群から選択される。
【0017】
追加的または代替的態様において、本発明方法は、さらに第2物質の治療有効量の投与を含み、第2物質を、低カリウム血症、高血圧症、うっ血性心不全、腎不全、特に慢性腎不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、Xシンドローム、肥満、ネフロパシー、後壁心筋梗塞、冠動脈心疾患、コラーゲン形成増加、線維症および高血圧および内皮機能不全後のリモデリングから成る群から選択される疾患または状態の処置で使用する。追加的または代替的態様において、第2物質は、抗肥満剤、抗高血圧薬、変力作用薬、脂質降下薬、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、Na−K−アデノシントリホスファターゼ膜ポンプの阻害剤、中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤、ACE/NEP阻害剤、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、β−アドレナリン作用性受容体遮断薬、変力作用薬、カルシウムチャネル遮断薬、および3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル補酵素Aレダクターゼ(HMG−CoA)阻害剤から成る群から選択される。追加的または代替的態様では、式(1)で示される化合物を第2物質の前に投与する。追加的または代替的態様では、式(1)で示される化合物を第2物質と共に投与する。追加的または代替的態様では、式(1)で示される化合物を第2物質の後に投与する。
【0018】
もう一つの特徴は、ステロイドホルモン核受容体活性が疾患の病状および/または総合的症状の一因である、動物における疾患または状態の処置を目的とする医薬の製造における式(1)の化合物の使用である。追加的または代替的態様では、ステロイドホルモン核受容体は、グルココルチコイド受容体、鉱質コルチコイド受容体、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体、およびプロゲステロン受容体から成る群から選択される。
【0019】
もう一つの特徴は、式(2):
【化4】

の構造を有する化合物の製造方法であって、適切な反応条件下、ケト酸化合物を、式(3):
【化5】

で示される構造を有する化合物と混合する工程を含む方法である。追加的または代替的態様において、XはOである。
【0020】
もう一つの特徴は、式(4):
【化6】

で示される構造を有する化合物の製造方法であって、適切な反応条件下、ケトンを式(3):
【化7】

で示される構造を有する化合物と混合する工程を含む方法である。追加的または代替的態様において、XはOである。
【0021】
もう一つの特徴は、式(5):
【化8】

で示される構造を有する化合物の製造方法であって、適切な反応条件下、求電子性反応体を、式(4):
【化9】

で示される構造を有する化合物と混合する工程を含む方法である。さらなる態様では、求電子性反応体は、酸塩化物、無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、またはスルホニルクロリドから選択される。追加的または代替的態様において、XはOである。
【0022】
もう一つの特徴は、式(6):
【化10】

で示される構造を有する化合物の製造方法であって、適切な反応条件下、イミデート化合物を、式(3):
【化11】

で示される構造を有する化合物と混合する工程を含む方法である。さらなる態様において、XはOである。
【0023】
本明細書に記載されているスピロ−化合物の配向は、ある種の官能基を一配向で示した形をとっているが、この構造描写は、特に明記していない場合、鏡像体の配向と同一であるとみなされるべきである。単なる例を挙げると、下式:
【化12】

は、
【化13】

と同等な内容である。従って、特記しない場合、スピロ−基の両配向は、本明細書記載のあらゆる目的について同一のものを表すとみなすべきである。
【0024】
都合上、この項および本明細書における他の部分に記載されている特徴および態様は全て、例として単一の式、例えば「式(1)」を使用している。しかしながら、本明細書記載の特徴および態様は全て、式(A)の範囲内に含まれる本明細書に示された式全てに等しく当てはまる。例えば、本明細書に記載されている特徴および態様は全て、式(B)、式(C)、式(E)、式(F)、式(G)、式(H)、式(I)、式(J)、式(K)、式(A)、式(2)、式(4)、式(5)、式(6)の構造を有する化合物、並びにこれらの一般式の範囲内に包含される特定化合物の全てに適用され得る。
【0025】
本明細書に記載されている方法および組成物の他の目的、特徴および利益も、以下に詳述されている記載から明らかとなるはずである。しかしながら、詳細な記載および具体例は、態様を示しており、本発明の精神および範囲内に含まれる様々な変更および修飾が、この詳細な記載から当業者にとっては明白なものとなるため、単なる説明として与えられているものと理解すべきである。
【0026】
本発明のこれらおよび他の特徴は、以下に詳述されている記載を参照すると明らかになるはずである。さらに、本明細書に挙げられている特許および他の参考文献は全て、正確な手順または組成物をより詳細に記載しており、それらについては出典明示により援用する。
【0027】
発明の詳細な記載
一定の化学用語
特記しない場合、明細書および請求の範囲を含む本願で使用されている以下の語は、下記の意味を有するものとする。英文の明細書および請求の範囲で使用されている、単数表現は、文章中で他に明確に示されていない場合、複数の指示対象についても包含することに注意しなければならない。標準化学用語の意味は、Carey および Sundberg “ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4THED”A(2000)およびB(2001)(プレナム・プレス、ニューヨーク)巻を含む参考図書に記載されている。特記しない場合、当業者の技術の範囲内での、質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の慣用的方法が使用される。
【0028】
本明細書で使用されている「アルケニル基」の語は、1個またはそれ以上の二重結合をそこに有する炭化水素鎖をいう。アルケニル基の二重結合は、非共役または別の不飽和基に共役され得る。適切なアルケニル基には、(C−C)アルケニル基、例えばビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルがあるが、これらに限定されるわけではない。アルケニル部分は、分枝状、直鎖または環状(この場合、「シクロアルケニル」基としても知られている)であり得、非置換または置換され得る。
【0029】
本明細書で使用されている「アルコキシ」の語は、−O−(アルキル)を包含し、このアルキルは本明細書記載の意味である。単に例として挙げると、C1−6アルコキシには、メトキシ、エトキシなどがあるが、これらに限定されるわけではない。アルコキシ基は非置換または置換され得る。
【0030】
本明細書で使用されている「アルキル」の語は、1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基をいい、直鎖、分枝状、環状、飽和および/または不飽和形態を含み得る。これが本明細書中に現われたとき、例えば「1〜10」といった数値の範囲は、所定の範囲における各整数を指し、例えば「1〜10個の炭素原子」または「C1−10」または「C−C10」は、アルキル基が1炭素原子、2炭素原子、3炭素原子など、10炭素原子を含め、10個までの炭素原子により構成され得ることを意味するが、数値の範囲が示されていない「アルキル」の語が出てきた場合でも本定義に包含される。アルキル部分は「飽和アルキル」基であり得、その場合はアルケンまたはアルキン部分を全く含まないことを意味する。代表的飽和アルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびn−ヘキシル、および長鎖アルキル基、例えばヘプチルおよびオクチルがあるが、これらに限定されるわけではない。アルキル部分はまた「不飽和アルキル」部分でもあり得、その場合は、少なくとも1個のアルケンまたはアルキン部分を含むことを意味する。「アルケン」部分とは、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の炭素−炭素二重結合から成る基をいい、「アルキン」部分とは、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の炭素−炭素三重結合から成る基をいう。代表的不飽和アルキル基には、エテニル、プロペニル、ブテニルなどがあるが、これらに限定されるわけではない。アルキル基は非置換または置換されたものであり得る。置換アルキル基には、ハロゲン−置換アルキル基、例えば単なる例として挙げるとトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0031】
本明細書で使用されている「アルキルアミン」の語は、−N(アルキル)基(式中、xおよびyは、x=1、y=1およびx=2、y=0の群から選択される)をいう。x=2のとき、アルキル基は、一緒になって、所望により環状の環系を形成し得、さらにx=2のとき、アルキル基は同一または異なり得る。アルキルアミン基は非置換または置換されたものであり得る。
【0032】
本明細書で使用されている「アルキニル」の語は、1個またはそれ以上の三重結合をそこに有する炭化水素鎖をいう。アルキニル基の三重結合は、別の不飽和基と非共役または共役したものであり得る。適切なアルキニル基には、(C−C)アルキニル基、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、および4−ブチル−2−ヘキシニルがあるが、これらに限定されるわけではない。アルキニル部分は分枝状または直鎖であり得、非置換または置換されたものであり得る。
【0033】
本明細書で使用されている「アミド」の語は、式−C(O)NHRまたは−NHC(O)R(式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、および複素環(環炭素原子を介して結合)から成る群から選択される)をもつ化学的部分をいう。アミドは、本明細書記載の化合物におけるアミンまたはカルボキシル側鎖から形成され得る。上記アミドを製造するための手順および特定の基は、当業者には公知であり、参考文献、例えばGreene および Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク(1999)といった情報源から容易に見出され得、これについては出典明示により援用する。アミド基は、非置換または置換されたものであり得る。
【0034】
本明細書で使用されている「芳香族」または「アリール」の語は、共役パイ電子系を有する少なくとも1個の環を有する閉環構造をいい、炭素環状アリールおよび複素環状アリール(または「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」)基の両方を包含する。炭素環または複素環状芳香族基は、5〜20個の環原子を含み得る。この語は、単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接対の炭素原子を共有する環)基を包含する。芳香族基は、非置換または置換されたものであり得る。
【0035】
本明細書で使用されている「アリールオキシ」の語は、−O−アリール基を包含し、このアリールは本明細書記載の意味を有する。アリールオキシ基は非置換または置換されたものであり得る。
【0036】
本明細書で使用されている「結合」または「単結合」の語は、2原子間の共有結合をいい、そのどちらかが大きな部分の一部であり得る。
【0037】
本明細書で使用されている「炭素環状」または「シクロアルキル」の語は、1個またはそれ以上の共有結合閉環構造を含み、環のバックボーンを形成する原子が全て炭素原子である化合物をいう。上記の基は、3〜20個の環炭素原子を有し、炭素および水素原子を含む飽和、部分飽和、または完全不飽和単環式、縮合二環式、スピロ環式、架橋多環式または多環式環であり得る。炭素環状アルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルがあるが、これらに限定はされない。炭素環状芳香族基には、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、並びにベンゾ縮合炭素環状部分、例えば、単なる例としては、ジベンゾスベレノンおよびジベンゾスベロンがあるが、これらに限定されるわけではない。炭素環状基は、非置換または置換されたものであり得る。
【0038】
本明細書で使用されている「エステル」の語は、式−COOR(式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリールおよび複素環(環炭素を介して結合)から成る群から選択される)をもつ化学的部分をいう。本明細書記載の化合物におけるヒドロキシまたはカルボキシル側鎖は全てエステル化され得る。上記エステルを製造するための手順および特定の基は、当業者には公知であり、参考文献、例えばGreene および Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク(1999)といった情報源から容易に見出され得、これについては出典明示により援用する。エステル基は、非置換または置換されたものであり得る。
【0039】
本明細書で使用されている「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」の語は、所望により置換されていてもよいアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分を包含し、それらは炭素以外の原子、例えば酸素、窒素、硫黄、リンまたはそれらの組み合わせから選択される1個またはそれ以上の骨格鎖原子を有する。「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」基は、非置換または置換されたものであり得る。
【0040】
本明細書で使用されている「ヘテロアリール」またはこれに代わるものとして「ヘテロ芳香族」の語は、窒素、酸素、硫黄から選択される1個またはそれ以上の環ヘテロ原子を含むアリール基をいう。例を挙げると、N−含有「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリール」部分は、環骨格原子の少なくとも1個が窒素原子である芳香族基をいう。多環式ヘテロアリール基は、縮合または非縮合形態であり得る。ヘテロアリール基は、非置換または置換されたものであり得る。
【0041】
本明細書で使用されている「複素環」の語は、環バックボーンが、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の原子を含む環構造をいう。複素環式芳香族基の例には、アクリジニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンズイミダゾリル、ベンズインダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、フラザニル、フロピリジニル、フリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インドリジニル(indolidinyl)、インドリジニル(indolizinyl)、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソオキサゾリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル(naphthylidinyl)、ナフチリジニル(naphthyridinyl)、オキサジアゾリル、オキサゾリル、フェノオキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノオキサチイニル、チアントレニル、フェナチリジニル、フェナトロリニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、プテリジニル、ピラジル、ピラゾリル、ピリジル、ピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアジニル、(1,2,3,)−および(1,2,4)−トリアゾリルなどがあるが、これらに限定されるわけではない。さらに、複素環式基は、非置換または置換されたものであり得る。非芳香族複素環式基の例には、アゼピニル、アゼパン−2−オニル、アゼチジニル、ジアゼピニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イル、ジチアニル、ジチオラニル、ホモピペリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、インドリニル、インドリル、モルホリニル、オキサゼピニル、オキセパニル、オキセタニル、オキシラニル、ピペリジノ、ピペリジル、ピペリジノニル、ピペラジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、ピロリニル、キノリジニル、チエタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピラニル、チアゼピニル、チエパニル、チオモルホリニル、チオラニル、チオキサニルなどがあるが、これらに限定されるわけではない。複素環式基は縮合または非縮合形態であり得る。この基を指す語はまた、可能な互変異性体を全て包含する。
【0042】
本明細書で使用されている「ハロゲン」の語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。好ましいハロゲン基は、フルオロ、クロロおよびブロモである。
【0043】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロアルキニル」および「ハロアルコキシ」の語は、1個またはそれ以上のハロゲン基またはそれらの組み合わせにより置換されたアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシ構造を包含する。
【0044】
本明細書で使用されている「〜員環」の語は、環状構造を全て包含し得る。「〜員」の語は、環を構成する骨格原子の数を示すものとする。すなわち、例えば、シクロヘキシル、ピリジン、ピランおよびチオピランは6員環であり、およびシクロペンチル、ピロール、フラン、およびチオフェンは5員環である。
【0045】
本明細書で使用されている「部分」の語は、分子の特定部分または官能基をいう。化学的部分は、多くの場合、分子中に埋封されているか付加された化学的部分であると認識されている。
【0046】
本明細書で使用されている「保護基」の語は、反応性部分の一部または全部を遮断する化学的部分をいい、保護基が除去されるまで上記基は化学反応に関与するのを阻止される。
【0047】
本明細書で使用されている「反応体」の語は、共有結合を形成するのに使用される求核基または求電子体をいう。
【0048】
「スルホニル」の語は、硫黄原子の存在を意味し、所望により別の部分、例えばアルキル基、アリール基または複素環基に結合されていてもよい。アリールまたはアルキルスルホニル部分は、式−SOR'(式中、R'は前記のアルキルまたはアリールである)を有し、メチルスルホニル、エチルスルホニルおよびフェニルするホニル基を含むが、これらに限定されるわけではない。スルホニル基は、非置換または置換されたものであり得る。フェニルスルホニルは、所望によりハロゲン、アルキルおよびアルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
特記しない場合、置換基が「所望により置換されていてもよい」とみなされるとき、置換基は、例えば、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキルアミン、アルキルチオ、アルキニル、アミド、モノ−およびジ−置換アミノ基を含むアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、カルボニル、炭素環状、シアノ、シクロアルキル、ハロゲン、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、イソシアナート、イソチオチアナート、メルカプト、ニトロ、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、シリル、スルホニル、チオカルボニル、チオシアナート、トリハロメタンスルホニル、およびそれらの保護化合物から個々に、そして独立して選択される1個またはそれ以上の基(複数も可)により置換され得る基であることを意味する。上記置換基の保護化合物を形成し得る保護基は、当業者には公知であり、参考文献、例えばGreene および Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク(1999)および Kocienski、Protective Groups、Thieme Verlag、ニューヨーク、ニューヨーク(1994)から容易に見出され得、これらについては出典明示により援用する。
【0050】
一定の医薬用語
本明細書で使用されている、製剤、組成物または成分に関する「許容される」の語は、処置されている対象の全般的健康状態に対して永続的で有害な影響を及ぼさないことを意味する。
【0051】
本明細書で使用されている「アゴニスト」の語は、別の分子の活性または受容体部位の活性を高める分子、例えば化合物、薬剤、酵素活性剤またはホルモンモジュレーターをいう。
【0052】
本明細書で使用されている「アンタゴニスト」の語は、別の分子の作用または受容体部位の活性を減じるか、または阻止する分子、例えば化合物、薬剤、酵素活性剤、またはホルモンモジュレーターをいう。
【0053】
本明細書で使用されている「担体」の語は、細胞または組織への化合物の組込みを容易にする比較的非毒性の化学的化合物または薬剤をいう。
【0054】
本明細書で使用されている「同時投与」などの語は、単一患者への選択された複数治療剤の投与を包含するものとし、複数薬剤を、同一または異なる投与経路により、または同一または異なる時点で投与する治療レジメンを包含するものとする。
【0055】
本明細書で使用されている「有効量」または「治療有効量」の語は、処置されている疾患または状態の症状の一つまたはそれ以上をある程度まで軽減するのに十分な、投与されている薬剤または化合物の量をいう。結果は、疾患の徴候、症状または原因の低減化および/または軽減、または生物系の他の望ましい改変であり得る。例えば、治療用途についての「有効量」は、病状の臨床的に著しい減少をもたらすのに要求される本明細書開示の化合物を含む組成物の量である。個々の症例における適切な「有効」量は、例えば投与量漸増試験といった技術を用いて決定され得る。
【0056】
本明細書で使用されている「高める」または「促進(性)の」の語は、効力または持続時間の点で所望の効果を増加または延長させることを意味する。すなわち、治療剤の効果の促進について、「促進する」の語は、効力または持続時間の点で系に対する他の治療剤の効果を増加または延長させる能力をいう。本明細書で使用されている「促進有効量」の語は、所望の系においてもう一つの治療剤の効果を高めるのに十分な量をいう。
【0057】
「キット」および「製品セット」の語は、同義語として使用される。
【0058】
本明細書で使用されている「代謝産物」の語は、化合物が代謝されるときに形成される化合物の誘導体をいう。
【0059】
本明細書で使用されている「活性な代謝産物」の語は、化合物が代謝されるときに形成される化合物の生物活性誘導体をいう。
【0060】
本明細書で使用されている「代謝された」の語は、特定物質が生物体により変えられる一連の過程(加水分解反応および酵素により触媒される反応を含むが、これらに限定はされない)をいう。すなわち、酵素は、化合物に特異的な構造上の改変を生じさせ得る。例えば、シトクロムP450は様々な酸化および還元反応を触媒し、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミンおよび遊離スルフヒドリル基への活性化グルクロン酸分子の転移を触媒する。代謝に関するさらなる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、McGraw-Hill(1996)から入手され得る。
【0061】
本明細書で使用されている「調節する」の語は、標的と直接的または間接的に相互作用することにより、標的の活性を改変させる、すなわち単なる例として挙げると、標的の活性を高める、標的の活性を阻害する、標的の活性を制限する、または標的の活性を拡大することを意味する。
【0062】
本明細書で使用されている「モジュレーター」の語は、標的と直接的または間接的に相互作用する分子をいう。相互作用には、アゴニストおよびアンタゴニストの相互作用があるが、これに限定されるわけではない。
【0063】
本明細書で使用されている「医薬上許容される」の語は、化合物の生物活性または特性を排除することがなく、比較的非毒性である物質、例えば担体または希釈剤をいう。すなわち、上記物質は、望ましくない生物学的作用を誘発したり、それが含有されている組成物の成分のいずれとも有害な形で相互作用したりすることなく個体に投与され得る。
【0064】
本明細書で使用されている化合物の「医薬上許容される塩」の語は、医薬的に許容され得る塩をいう。
【0065】
本明細書で使用されている「医薬的組み合わせ」の語は、複数の有効成分の混合または組み合わせから得られる製品をいい、有効成分の固定的および非固定的組み合わせの両方を含む。「固定的組み合わせ」の語は、有効成分、例えば式(1)の化合物および併用薬剤を両方とも患者に単一物質または用量形態で同時に投与することを意味する。「非固定的組み合わせ」の語は、有効成分、例えば式(1)の化合物および併用薬剤を、特定の介在時間制限を設けずに同時、併発的または連続的に個別物質として患者に投与することを意味し、この場合上記投与により、患者の体において2化合物の有効レベルがもたらされる。後者はまた、カクテル療法、例えば3種またはそれ以上の有効成分の投与にも適用される。
【0066】
本明細書で使用されている「医薬組成物」の語は、活性化合物と他の化学的成分、例えば担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤および/または賦形剤との混合物をいう。
【0067】
本明細書で使用されている「プロドラッグ」の語は、体内での代謝過程により、薬剤または化合物が薬理学的活性形態に変換される薬剤または化合物をいう。
【0068】
「対象」または「患者」の語は、哺乳類および非哺乳類を包含する。哺乳類の例には、哺乳類綱のメンバー:ヒト、ヒト以外の霊長類、例えばチンパンジー、および他の大型および小型のサル種、畜産動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、家畜、例えばウサギ、イヌ、およびネコ、実験動物、例えばげっ歯動物、例えばラット、マウスおよびモルモットなどがあるが、これらに限定されるわけではない。非哺乳類の例には、鳥類および魚類などがあるが、限定されるわけではない。本明細書で提供されている方法および組成物の一態様では、哺乳類はヒトである。
【0069】
本明細書で使用されている「処置する」、「処置の」または「処置」の語は、病気または病状の軽減、減退または改善、追加的症状の予防、症状の根元的代謝誘因の改善または予防、病気または状態の阻害、例えば病気または状態の発現の阻止、病気または状態の緩和、病気または状態の退縮の誘発、病気または状態により誘発される病状の緩和、または病気または状態の症状の阻止を包含する。
【0070】
説明的生物学的活性
鉱質コルチコイド受容体(MR)
鉱質コルチコイドは、鉱物、ナトリウムおよびカリウムの代謝におけるそれらの役割に因んで命名された。これらのステロイドについての伝統的役割は、それらの作用に応じた上皮組織、例えば腎臓および遠位結腸における体液および電解質バランスの調節に存する。非上皮組織、例えば心臓および血管系における鉱質コルチコイド生成酵素および受容体、並びに種々の状態、例えば心不全および高血圧症におけるこの経路の遮断の有益な効果が確認されている。
【0071】
内臓組織、例えば腎臓および消化管では、MRは、アルドステロンに応答してナトリウム保持、カリウム排出および水分バランスを調節している。アルドステロンレベルの上昇、または鉱質コルチコイド受容体の過剰刺激は、コン症候群、1次および2次高アルドステロン症、ナトリウム保持増加、マグネシウムおよびカリウム排出増加(利尿)、水分保持増加、高血圧症(収縮期および収縮期/拡張期)、不整脈、心筋線維症、心筋梗塞、バーター症候群、うっ血性心不全(CHF)および過剰のカテコールアミンレベルに伴う状態を含む幾つかの病的状態または上的疾患状態に関連付けられる。さらに、脳におけるMR発現は、ニューロン興奮性の制御、視床下部−下垂体−副腎軸の負のフィードバック調節、および行動能力の認知的特徴においてある一定の役割を演じると思われる。特に、鉱質コルチコイド受容体、およびMR活性の調節は、不安および大うつ病に関与している。最後に、MRの発現は、胸部癌の分化に関連付けられ得る。選択的にMRを調節する化合物は、限定されるわけではないが、癌、乳癌、コン症候群、1次および2次高アルドステロン症、ナトリウム保持増加、マグネシウムおよびカリウム排出増加(利尿)、水分保持増加、高血圧(収縮期および収縮期/拡張期)、不整脈、心筋線維症、心筋梗塞、バーター症候群、うっ血性心不全(CHF)、過度のカテコールアミンレベルに伴う状態、認知障害、精神病、認知症、記憶障害、気分障害(mood condition)、うつ病、双極性状態、不安状態、および人格障害(personality condition)を含む様々な疾患および状態の処置または予防において臨床的重要性を有する。
【0072】
グルココルチコイド受容体(GR)
グルココルチコイドは、コルチコステロイドの1種であり、免疫系および多臓器系に対する多大な効果を伴う内在性ホルモンである。それらは、炎症性サイトカイン、例えばIL−1、IL−2、IL−6、およびTNFの阻害、プロスタグランジンおよびロイコトリエンを含むアラキドン酸代謝産物の阻害、Tリンパ球の枯渇、および内皮細胞における接着分子の発現の低減化により様々な免疫および炎症機能を抑制する。これらの効果に加えて、グルココルチコイドは、肝臓におけるグルコース産生およびタンパク質の異化作用を刺激し、電解質および水分バランスにおいてある一定の役割を演じ、カルシウム吸収を低下させ、骨芽細胞機能を阻害する。
【0073】
GRは、ほとんど全組織および臓器系で発現され、中枢神経系の機能の完全さおよび心臓血管、代謝、および免疫ホメオスタシスの維持にとっては非常に重要である。グルココルチコイド(例、コルチソル、コルチコステロンおよびコルチソン)、およびグルココルチコイド受容体は、様々な病的状態または病的疾患状態に関係している。例えば、コルチソルの分泌低下は、筋力低下、皮膚のメラニン色素の増加、体重減少、低血圧、および低血糖症をもたらす疾患の病因に関与している。他方、グルココルチコイド分泌の過剰または延長は、クッシング症候群と相関関係を示し、肥満、高血圧、糖代謝異常、高血糖、真性糖尿病、オステオポローシス、多尿症および多渇症も誘発し得る。
【0074】
GRを選択的に調節する化合物は、限定されるわけではないが、炎症、組織拒絶、自己免疫、悪性腫瘍、例えば白血病およびリンパ腫、クッシング症候群、急性副腎(皮質)不全、先天性副腎過形成、リウマチ熱、結節性多発性動脈炎、肉芽腫性多発性動脈炎、骨髄性セルラインの阻害、免疫増殖/アポトーシス、HPA軸抑制および調節、高コルチソル血症、Th1/Th2サイトカインバランスの調節、慢性腎臓病、卒中および脊髄損傷、低カルシウム血症、高血糖、急性副腎(皮質)不全、慢性1次性副腎(皮質)不全、2次性副腎(皮質)不全、先天性副腎過形成、脳水腫、血小板減少症、リトル症候群、炎症性腸疾患、全身エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎(polyartitis)、ウェゲネル肉芽腫症、巨細胞関節炎、慢性関節リウマチ、変形性関節症、枯草熱、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、血管神経性水腫、慢性閉塞性肺疾患、喘息、腱炎、滑液包炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫慢性活動性肝炎、臓器移植、肝炎および肝硬変、創傷治癒および組織修復、炎症性頭皮脱毛症、皮下脂肪織炎、乾癬、円板状エリテマトーデス、炎症性のう胞、アトピー性皮膚炎、壊疽性膿皮症、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、全身エリテマトーデス、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、再発性多発性軟骨炎、炎症性脈管炎、サルコイドーシス、スウィート病、1型反応性らい病、毛細血管性血管腫、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、剥脱性皮膚炎、結節性紅斑、アクネ、多毛症、毒性表皮壊死、多形性紅斑、皮膚T細胞リンパ腫、気腫、神経炎症状態、多発性硬化症およびアルツハイマー病を含む、様々な疾患および状態の処置または予防における臨床的な重要性を有する。
【0075】
アンドロゲン受容体(AR)
アンドロゲンは、標的組織の細胞内側の特異的受容体、アンドロゲン受容体(AR)に結合する。ARは、体内の多数の組織で発現され、内在性アンドロゲンリガンド、例えばテストステロン(T)およびジヒドロテストステロン(DHT)の生理学的および病態生理学的作用を発現させる受容体である。構造的に、ARは、3つの主要な機能的ドメイン:リガンド結合ドメイン(LBD)、DNA結合ドメインおよびアミノ末端ドメインにより構成される。ARに結合し、内在性ARリガンドの作用を模倣する化合物は、ARアゴニストと称され、内在性ARリガンドの作用を阻害する化合物はARアンタゴニストと称される。アンドロゲンは受容体と結合することにより活性化し、標的遺伝子に隣接するDNA結合部位への結合が誘発される。そこから、補助活性化因子タンパク質および基本転写因子と相互作用することにより、遺伝子の発現を調節する。すなわち、アンドロゲンは、その受容体を介して、細胞における遺伝子発現の変化を誘発する。これらの変化は、最終的には標的組織の生理機能において眼に見える細胞の代謝出力、分化または増殖に対して重大な影響を及ぼすことになる。
【0076】
ARを選択的に調節する化合物は、限定するわけではないが、前立腺癌、良性前立腺過形成、女性における多毛症、脱毛症、神経性食欲不振、乳癌、アクネ、筋骨格障害(musculoskeletal condition)、例えば骨疾患、造血障害(hematopoietic condition)、神経筋疾患、リウマチ疾患、消耗病、癌、エイズ、悪液質を含む様々な疾患および状態の処置または予防において、ホルモン補充療法(HRT)、男性側避妊での使用、男性の性機能改善、男性の生殖障害(reproductive condition)、および男性の原発性または続発性の性機能不全の治療において臨床的な重要性を示す。
【0077】
エストロゲン受容体(ER)
エストロゲンは、男性および女性の両方に関する生殖、中枢神経、骨格、および心臓血管系の発生およびホメオスタシスにおいて重要な役割を演じる。エストロゲン受容体(ER)は、前立腺、膀胱、卵巣、精巣、肺、小腸、血管内皮および脳の様々な部分を含む若干の組織で発現される。ERを選択的に調節する化合物は、限定するわけではないが、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、肺癌、心臓血管疾患、神経変性状態、尿失禁、CNS状態、多発性硬化症、消化管障害(GI tract condition)、オステオポローシス、骨喪失、骨折、オステオポローシス、パジェット病、骨ターンオーバーの異常増加、歯周病、歯の喪失、慢性関節リウマチ、変形性関節症、プロテーゼ周囲の骨溶解、骨形成不全症、代謝性骨疾患、悪性腫瘍の高カルシウム血症、および多発性骨髄腫、軟骨変性、子宮内膜症、子宮フィブロイド疾患、乳癌、子宮癌、のぼせ、認知機能障害、脳変性状態、再狭窄、女性化乳房、脈管平滑筋細胞増殖、肥満および失調症を含む様々な疾患および状態の処置または予防において臨床的な重要性を示す。
【0078】
プロゲステロン受容体(PR)
プロゲステロンは、主として生殖系の発生および維持におけるその役割について知られているステロイドホルモンである。プロゲステロンは、PRについての天然リガンドであり、結合時に受容体/リガンド複合体が形成される。この複合体は、細胞DNAに存在する特異的遺伝子プロモーターに結合し、mRNAおよびその遺伝子によりコードされるタンパク質の生成を調節する。PRについての合成リガンドは、天然ホルモンの作用を模倣するアゴニストであり得るか、またはそれらはホルモンの作用を阻害するアンタゴニストであり得る。
【0079】
プロゲステロンは、生殖器官の外側における広い範囲の生物学的プロセスに関与している。末梢神経系では、プロゲステロンは、再生中の神経の髄鞘形成を促す。プロゲステロンはシュヴァン細胞(ミエリンを産生する細胞型)により合成されるものであり、PRが、ラットからの1次シュヴァン細胞培養物で検出されたことから、オートクラインループの存在が示唆されている。プロゲステロンは、PRへ結合して転写因子Krox−20の転写を刺激し、次いで幾つかのミエリンタンパク質遺伝子の転写が刺激されることによりミエリン形成を促進すると思われる。すなわち、プロゲステロンの局所的および全身的な両産生は、神経線維腫増大の一因であり得る。従って、PRを選択的に調節する化合物は、限定するわけではないが、ホルモン依存的乳癌、子宮および卵巣癌、非悪性慢性疾患および状態、例えばフィブロイド、ホルモン依存的前立腺癌を含む様々な疾患および状態の処置または予防、およびホルモン補充療法において臨床的な重要性を示す。
【0080】
化合物
式(A)の化合物、その医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグ、および医薬上許容される溶媒和物は、ステロイドホルモン核受容体の活性を調節し、それ自体、有害なステロイドホルモン核受容体活性が疾患または状態の病状および/または症状の一因である場合の疾患または状態の処置に有用である。
【0081】
【化14】

式(A)の化合物において、PおよびPの環構造は、独立して所望により置換されていてもよいシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される。さらに、PおよびPの環構造は、独立して5〜8個の原子により構成される。PおよびPの環構造が置換されているとき、各Rは、独立してハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、各mは、独立して0、1、2、3、4、5および6から選択される。Zとして示される基はCR=CRまたはC(R−C(Rであり、各Rは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択されるか、またはいずれか2つのR基は、一緒になって3〜8員シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環を形成し得る。
【0082】
さらに、式(A)の化合物の環構造Pは、5、6、7または8原子、および構造Xから成るスピロ構造であり、この場合Xは、O、NR、C(RおよびSから選択される。別法として、環構造Pは、5、6、7または8原子、および構造XおよびAから成るスピロ構造であり、この場合Xは、O、NR、C(RおよびSから選択され、AはNR−CRまたはN=CRである。ここでRは、H、または−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分であり、Lは、結合、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択される。置換基RおよびRは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択される。または置換基RおよびRは、一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員複素環を形成するか、または置換基RおよびRは、一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員炭素環または複素環を形成する。各RおよびRは、独立してHおよび(C−C)アルキルから選択される。環構造Pは、2個のR基によりさらに置換され得、ここで各Rは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CN、および−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、少なくとも1個のRがHではない限り、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択される。
【0083】
式(A)の追加的を、下記式(B)、式(C)、式(E)、式(F)、式(G)、式(H)、式(I)、式(J)、式(K)、式(1)、式(2)、式(4)、式(5)、および式(6)に示す。
【化15】

【0084】
さらに、式(D)または式(3)の構造を有する化合物は、式(A)の範囲内には含まれないが、本明細書記載の組成物であり、本明細書記載の方法で使用される:
【化16】

【0085】
化合物の合成
式(1)の化合物および前項記載の構造を有する化合物は、当業者に公知の標準合成技術を用いるか、または本明細書記載の方法と組み合わせて当業界で公知の方法を用いることにより合成され得る。さらに、本明細書に示されている溶媒、温度および他の反応条件は、当業者によって変更され得るものである。
【0086】
本明細書に記載されている式(1)の化合物および前項記載の構造を有する化合物の合成に使用される出発物質は、市販的供給源、例えば Aldrich Chemical Co.(ミルウォーキー、ウィスコンシン)、Sigma Chemical Co.(セントルイス、ミズーリ)から入手され得るか、または出発物質は合成され得る。本明細書記載の化合物、および異なる置換基を有する他の関連化合物は、例えば、March、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 第4版、(Wiley 1992);Carey および Sundberg、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 第4版、AおよびB巻(Plenum 2000、2001)、および Green および Wuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 第3版、(Wiley 1999)(これらは全て、出典明示により援用する)に記載された、当業者に公知の技術および材料を用いて合成され得る。本明細書に開示されている化合物の一般的製造方法は、当分野における既知反応から誘導され得、これらの反応は、本明細書で提供されている式から見出される様々な部分の導入について、当業者により認められている適切な試薬および条件の使用により修飾され得る。規準として、以下の合成方法が使用され得る。
【0087】
求電子体と求核基の反応による共有結合の形成
本明細書記載の化合物は、様々な求電子体または求核基を用いて修飾されることにより、新たな官能基または置換基を形成し得る。「共有結合およびその前駆体の例」と題する表1は、得られる共有結合および前駆体官能基の抜粋した例を列挙しており、利用可能な求電子体および求核基の多様な組み合わせに対する指針として使用され得る。前駆体官能基は、求電子体および求核基として示されている。
表1:共有結合およびその前駆体の例
【表1】

【表2】

【0088】
保護基の使用
上記反応では、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基を保護することにより、これらが最終生成物で望まれる場合に、反応へのそれらの望ましくない関与を回避することが必要な場合もあり得る。保護基を用いることにより一部または全部の反応性部分は遮断され、保護基が除去されるまで上記の基は化学反応への関与を阻止される。各保護基は異なる手段により除去可能であるのが好ましい。完全に異なる反応条件下で開裂される保護基であれば、差異に基づく除去の必要条件を満たす。保護基は、酸、塩基および水素化分解により除去され得る。例えばトリチル、ジメトキシトリチル、アセタールおよびt−ブチルジメチルシリルといった基は、酸に不安定であるため、水素化分解により除去され得るCbz基、および塩基に不安定なFmoc基で保護されたアミノ基の存在下におけるカルボキシおよびヒドロキシ反応性部分の保護に使用され得る。カルボン酸およびヒドロキシ反応性部分は、酸に不安定な基、例えばt−ブチルカルバメートまたは酸および塩基の両方に安定しているが、加水分解的に除去され得るカルバメートで遮断されたアミンの存在下、塩基に不安定な基、例えば限定されるわけではないが、メチル、エチルおよびアセチルにより遮断され得る。
【0089】
カルボン酸およびヒドロキシ反応性部分はまた、加水分解的に除去可能な保護基、例えばベンジル基により遮断され得、酸と水素結合し得るアミン基は塩基に不安定な基、例えばFmocにより遮断され得る。カルボン酸反応性部分は、本明細書で典型的に示されている単なるエステル化合物への変換により保護され得るか、またはそれらは酸化的に除去可能な保護基、例えば2,4−ジメトキシベンジルにより遮断され得、共存するアミノ基は、フッ化物に不安定なシリルカルバメートにより遮断され得る。
【0090】
アリル遮断基は、酸−および塩基−保護基の存在下において有用である(前者は安定しており、続いて金属またはpi−酸触媒により除去され得るため)。例えば、アリル遮断カルボン酸は、酸に不安定なt−ブチルカルバメートまたは塩基に不安定な酢酸アミン保護基の存在下におけるPd触媒反応により脱保護され得る。保護基のさらに別の形態は、化合物または中間体が結合され得る樹脂である。残基が樹脂に結合されている限り、その官能基は遮断され、反応できない。一旦樹脂から放出されると、官能基は反応に利用可能となる。
【0091】
典型的には、遮断/保護基は以下のものから選択され得る:
【化17】

【0092】
他の保護基、および保護基の生成およびそれらの除去に適用可能な技術の詳細な記載は、Greene および Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク(1999)、および Kocienski、Protective Groups、Thieme Verlag、ニューヨーク、ニューヨーク(1994)に報告されており、これらについては出典明示により援用する。
【0093】
式(A)の化合物は反応スキーム1に従って合成され得、式中の最初の三環式出発物質は、二求核性化合物の形成に使用される反応性中心(G)を含んでおり、それらをさらに様々な求電子性試薬と反応させることにより、スピロ含有化合物を生成する。
【化18】

【0094】
二求核性化合物に向かう合成経路についての段階1の非限定的実施例が、反応スキーム2に示されており、ケトン部分をもつ三環式化合物を、トリメチルシリルシアニド(TMSCN)で処理することにより、トリメチルシリルオキシ−およびシアノ−置換化合物を得、次いで水素化アルミニウムリチウム、または他の適切な還元剤を用いて還元することにより、X=Oのとき、二求核性ヒドロキシ−アミン化合物(D)を得る。
【化19】

【0095】
特に、反応スキーム3では、単なる例として、二求核性スベレノン化合物(3a)の合成が示されている。この例では、三環式出発物質は、所望により置換されていてもよいジベンゾスベレノン化合物である。
【化20】

【0096】
別法として、反応スキーム4では、単なる例として、二求核性スベロン化合物(3b)の合成が示されている。この例では、三環式出発物質は、所望により置換されていてもよいジベンゾスベロン化合物である。
【化21】

【0097】
さらに、反応スキーム5に従って、単なる例としては、式(D)(式中、XはSである)の化合物が合成され得る。出発物質、例えば、単なる例を挙げると、所望により置換されていてもよいジベンゾスベレノンまたは所望により置換されていてもよいジベンゾスベロンを、適切な試薬、例えば、単なる例として、ラベッソン試薬と反応させることにより、チオケトン化合物を形成させ、これを適切なシアノ求核性試薬、例えば、単なる例として、HCNで処理することにより、シアノ/チオール化合物が形成される。シアノ/チオール化合物を適切な還元試薬、例えば、単なる例として、水素化アルミニウムリチウムで還元することにより、チオ−アミノ−二求核性化合物を得る。
【化22】

【0098】
さらに、実例を示す反応スキーム6に従って、式(D)(式中、XはNである)で示される化合物が合成され得る。出発物質、例えば、単なる例として、所望により置換されていてもよいジベンゾスベレノンまたは所望により置換されていてもよいジベンゾスベロンを、適切な試薬、例えば、単なる例として、ヒドロキシルアミンと反応させることにより、オキシム化合物が形成される。オキシム化合物を適切なシアノ求核性試薬、例えば、単なる例として、HCNと反応させ、次いで適切な還元試薬、例えば、単なる例として水素化アルミニウムリチウムで処理することにより、ジアミノ化合物を得る。
【化23】

【0099】
限定されるわけではないが、化合物(3a)および化合物(3b)を含む、式(D)の中間体化合物を用いることにより、式(A)の化合物および本明細書に開示された構造上類似している化合物が合成され得る。例えば、式(C)で示される縮合環スピロ化合物の形成に関する非限定的合成スキームが、反応スキーム7に示されており、二求核性化合物(D)をケト酸と反応させることにより、環化縮合反応を介して縮合環スピロ化合物(2)が生成される。
【化24】

【0100】
式(A)で示される縮合環スピロ化合物の合成は、反応スキーム8でさらに典型的に示されており、所望により置換されていてもよいスベレノン(3a)または所望により置換されていてもよいスベロン(3b)をケト酸と反応させることにより、縮合環スピロ化合物(2)が得られる。
【化25】

【0101】
式(A)で示されるオキサゾリンスピロ化合物の典型的合成は、スキーム9に示されており、二求核性化合物(D)を、イミデート化合物と反応させることにより、オキサゾリンスピロ化合物(G)を得る。ただし、R'は最終生成物中に組込まれていないものとする。
【化26】

【0102】
式(A)で示されるオキサゾリンスピロ化合物の合成については、反応スキーム10でさらに実例を示しており、所望により置換されていてもよいスベレノン(3a)または所望により置換されていてもよいスベロン(3b)をイミデートと反応させることにより、オキサゾリンスピロ化合物(6)を得る。
【化27】

【0103】
式(A)で示されるオキサゾリジンスピロ化合物の合成の実例がスキーム11に示されており、二求核性化合物(D)をケトン化合物と反応させることにより、オキサゾリジンスピロ化合物(E)を得る。式(A)の置換オキサゾリジンスピロ化合物は、オキサゾリジンスピロ化合物(E)と酸塩化物、無水物、イソシアネート、イソチオシアネートまたはスルホニルクロリドなどとの反応により合成され、非限定的実施例として反応スキーム13にも示されている、置換オキサゾリジンスピロ化合物(F)が得られる。
【化28】

【0104】
式(A)で示されるオキサゾリジンスピロ化合物の合成については、反応スキーム12でさらに実例を示しており、所望により置換されていてもよいスベレノン(3a)または所望により置換されていてもよいスベロン(3b)をケトンと反応させることにより、オキサゾリジンスピロ化合物(4)を得、これをさらに酸塩化物、無水物、イソシアネート、イソチオシアネートまたはスルホニルクロリドなどと反応させることにより、置換オキサゾリジンスピロ化合物(5)を得る。
【化29】

【0105】
化合物のさらなる形態
都合上、この項および本明細書における他の部分に記載されている化合物の形態および他の特徴は、例として単一の式、例えば「式(1)」を使用している。しかしながら、本明細書記載の化合物の形態および他の特徴は、式(A)の範囲内に包含される本明細書に示された式全てに等しく当てはまる。例えば、本明細書に記載されている化合物の形態および他の特徴は、式(B)、式(C)、式(E)、式(F)、式(G)、式(H)、式(I)、式(J)、式(K)、式(1)、式(2)、式(4)、式(5)、式(6)の構造を有する化合物、並びにこれらの一般式の範囲内に包含される特定化合物の全てに適用され得る。
【0106】
式(1)の化合物は、親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアルミニウムイオンにより置換されるか、または有機塩基と配位結合したときに形成される医薬上許容される塩として製造され得る。さらに、開示された化合物の塩形態は、出発物質または中間体の塩を用いて製造され得る。
【0107】
式(1)の化合物は、化合物の遊離塩基形態を、医薬上許容される無機または有機酸、例えば、限定されるわけではないが、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸、メタ燐酸など、および有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、Q−トルエンスルホン酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、アリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4'−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸およびムコン酸と反応させることにより、医薬上許容される酸付加塩(医薬上許容される塩の1タイプである)として製造され得る。
【0108】
別法として、式(1)で示される化合物は、化合物の遊離酸形態を、医薬上許容される無機または有機塩基、例えば、限定されるわけではないが、有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなど、および無機塩基、例えば水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどと反応させることにより、医薬上許容される塩基付加塩(医薬上許容される塩の1タイプである)として製造され得る。
【0109】
医薬上許容される塩と言えば、その溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形も包含されるものと解釈すべきである。溶媒和物は、化学量論または非化学量論量の溶媒を含み、医薬上許容される溶媒、例えば水、エタノールなどにより結晶化過程中に形成され得る。溶媒が水であるとき水和物が形成され、または溶媒がアルコールであるときアルコラートが形成される。式(1)で示される化合物の溶媒和物は、好都合には本明細書記載のプロセス中に製造または形成され得る。単なる例として挙げると、式(1)で示される化合物の水和物は、好都合には有機溶媒、例えば、限定されるわけではないが、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはメタノールを用いて、水性/有機溶媒混合物からの再結晶化により製造され得る。さらに、本明細書で提供されている化合物は、非溶媒和および溶媒和物形態で存在し得る。一般に、溶媒和形態は、本明細書で提供されている化合物および方法の目的について非溶媒和形態と均等内容であると考えられる。
【0110】
式(1)で示される化合物は、多形としても知られている結晶形態を包含する。多形は、化合物の同一元素組成の異なる結晶パッキング配置を含む。多形は、通常異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学および電気特性、安定性および溶解性を有する。様々な因子、例えば再結晶化溶媒、結晶化速度、および貯蔵温度は、単晶形態を優勢にさせ得る。
【0111】
式(1)で示される化合物の非酸化形態は、0〜80℃での適切な不活性有機溶媒、例えば限定されるわけではないが、アセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなどの中、還元剤、例えば、限定されるわけではないが、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、トリブロミドなどで処理することにより、式(1)で示される化合物のN−酸化物から製造され得る。
【0112】
式(1)の化合物は、プロドラッグとして製造され得る。プロドラッグは、一般的に対象への投与およびそれに続く吸収後、何らかのプロセス、例えば代謝経路による変換を介して有効な、またはより活性の高い種類に変換される薬剤前駆体である。プロドラッグの中には、活性を低下させ、および/または薬剤に可溶性または他の何らかの特性を付与するプロドラッグに存在する化学基を有するものもある。一旦化学基がプロドラッグから開裂および/または修飾されると、活性薬剤が生成される。状況によっては、親薬剤よりもプロドラッグの方が投与し易い場合もあるので、プロドラッグは有用であることが多い。例えば、親薬剤には生物学的利用能が無くても、プロドラッグが経口投与によりそれを示すこともあり得る。プロドラッグはまた、親薬剤よりも医薬組成物中での溶解度が改良されている場合もあり得る。限定を伴わないプロドラッグの一例は、エステル(「プロドラッグ」)として投与されることにより、水溶解性が移動性にとっては有害である細胞膜への透過が容易になる式(1)の化合物であるが、次いでこれは、水溶解性が有益である細胞の内側に一旦入ると、代謝的に活性物質であるカルボン酸に加水分解される。プロドラッグのさらなる例は、酸性基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)であり得、このペプチドは代謝に付されて活性部分を現わす。
【0113】
プロドラッグは、部位特異的組織への薬剤輸送を促す修飾因子として使用される、可逆性薬剤誘導体として設計され得る。現在までのプロドラッグの設計は、水が主溶媒である領域にターゲッティングするため治療用化合物の有効な水溶解性を高めるものであった。例えば、Fedorak et al.、Am.J.Physiol.、269:G210−218(1995);McLoed et al.、Gastroenterol、106:405−413(1994);Hochhaus et al.、Biomed.Chrom.、6:283−286(1992);J.Larsenおよび H.Bundgaard、Int.J.Pharmaceutics、37、87(1987);J.Larsen et al.、Int.J.Pharmaceutics、47、103(1988);Sinkula et al.、J.Pharmsci.、64、181−210(1975);T.Higuchi および V.Stella、Pro-drugs as Novel Delivery Systems、A.C.S. Symposiumseries の14巻、および Edward B. Roche、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987参照、これらについては全て出典明示により援用する。
【0114】
さらに、式(1)で示される化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に公知の方法により製造され得る(例えば、さらなる詳細については、Saulnier et al.、(1994)、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters、第4巻、1985頁を参照)。単なる例として挙げると、適切なプロドラッグは、式(1)の非誘導体化合物を適切なカルバミル化剤、例えば、限定されるわけではないが、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカーボネートなどと反応させることにより製造され得る。本明細書記載の化合物のプロドラッグ形態は、プロドラッグがインビボで代謝されることにより上記誘導体を生成するもので、これらも請求の範囲内に包含される。事実、前記化合物の中には、別の誘導体または活性化合物についてのプロドラッグである場合もあり得る。
【0115】
式(1)で示される化合物の芳香族環部分における部位は、様々な代謝反応を被り易いものであり得るため、芳香族環構造における適切な置換基、例えば、単なる例を挙げると、ハロゲンの組込みにより、この代謝経路が低減化、縮小または排除され得る。
【0116】
本明細書記載の化合物は、同位体的(例、放射性同位元素による)または限定されるわけではないが、発色団または蛍光部分、生物発光標識、または化学発光標識の使用を含む他の手段により標識され得る。式(1)で示される化合物は、1個またはそれ以上のキラル中心を有し得、各中心はRまたはS立体配置で存在し得る。本明細書に示された化合物は、ジアステレオマー、鏡像体、およびエピマー形態並びにそれらの適切な混合物を全て包含する。式(1)の化合物は、化合物のラセミ混合物を光学活性分割剤と反応させて一対のジアステレオマー化合物を形成し、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋な鏡像体を回収することにより、それらの個々の立体異性体として製造され得る。鏡像体の分割は、本明細書記載の化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を用いて実施され得るが、解離可能な複合体が好ましい(例、結晶性ジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは独特の物理特性(例、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有するため、これらの相違点を利用することにより容易に分離され得る。ジアステレオマーは、キラルクロマトグラフィー、または好ましくは、溶解度差異に基づいた分離/分割技術により分離され得る。次いで、光学的に純粋な鏡像体を、ラセミ化をもたらさない実践的手段により、分割剤と一緒に回収する。ラセミ混合物からの化合物の立体異性体の分割に適用可能な技術のさらに詳細な記述は、Jean Jacques、Andre Collet、Samuel H. Wilen、“Enantiomers, Racemates and Resolutions”、John Wiley And Sons, Inc.、1981に載っており、これについては、出典明示により援用する。
【0117】
さらに、本明細書で提供されている化合物および方法は、幾何異性体として存在し得る。本明細書で提供されている化合物および方法は、シス、トランス、シン、アンチ、E(反対側)、およびZ(同じ側)異性体並びにそれらの適切な混合物を全て包含する。状況によっては、化合物は互変異性体として存在し得る。互変異性体は全て、本明細書記載の式の範囲内に包含され、本明細書記載の化合物および方法により提供される。本明細書で提供されている化合物および方法の追加態様では、単一製造工程、組み合わせ、または相互変換から生じる鏡像体および/またはジアステレオマーの混合物もまた本明細書記載の適用に有用であり得る。
【0118】
医薬組成物/製剤/投与
簡便のために、本項および明細書の他の部分に記載されている医薬組成物および製剤は、例として単一の式、例えば「式(1)」を使用している。しかしながら、本明細書記載の医薬組成物および製剤は、式(A)の範囲内に包含される本明細書に示された式全てに等しく当てはまる。例えば、本明細書に記載されている医薬組成物および製剤は、式(B)、式(C)、式(E)、式(F)、式(G)、式(H)、式(I)、式(J)、式(K)、式(1)、式(2)、式(4)、式(5)、式(6)の構造を有する化合物、並びにこれらの一般式の範囲内に包含される特定化合物の全てに適用され得る。
【0119】
本明細書で使用されている医薬組成物は、式(1)で示される化合物と他の化学的成分、例えば担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤の混合物をいう。医薬組成物は、生物体への化合物の投与を容易にする。式(1)で示される化合物を含む医薬組成物は、限定されるわけではないが、静脈内、経口、直腸、エーロゾル、非経腸、眼、肺、経皮、膣、耳、鼻および局所投与を含む当業界で公知の慣用的形態および経路により医薬組成物として治療有効量で投与され得る。
【0120】
化合物は、例えば、直接的な臓器への化合物の注射を介して、全身的よりも局所的に、多くの場合デポーまたは持続放出製剤で投与され得る。さらに、式(1)で示される化合物を含む医薬組成物は、標的化薬剤送達システム、例えば臓器特異的抗体でコーティングしたリポソームで投与され得る。リポソームは、臓器にターゲッティングされ、そこで選択的に取込まれる。さらに、式(1)の化合物を含む医薬組成物は、急速放出製剤形態、長期放出製剤形態、または中時間放出製剤形態で提供され得る。
【0121】
経口投与の場合、式(1)の化合物は、活性化合物を当業界で公知の医薬上許容される担体または賦形剤と合わせることにより容易に製剤化され得る。上記担体により、本明細書記載の化合物は、処置される患者により経口摂取される、錠剤、散剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液などとして処方され得る。
【0122】
経口用医薬製剤は、1種またはそれ以上の固体賦形剤を本明細書記載の化合物の1種またはそれ以上と混合し、所望によりその混合物を粉砕し、所望ならば適切な助剤を添加後、顆粒の混合物を加工処理して錠剤または糖衣錠コアを形成することにより得られる。適切な賦形剤は、特に増量剤、例えば乳糖、しょ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖質、セルロース製品、例えばトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはその他、例えばポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)またはリン酸カルシウムである。所望ならば、崩壊剤、例えば架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムが加えられ得る。
【0123】
糖衣錠コアは適切なコーティングにより提供される。この目的の場合、濃縮糖溶液が使用され得、所望によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。染料または色素は、識別するため、または活性化合物用量の種々の組み合わせを特徴づけるため、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0124】
経口使用され得る医薬製剤には、ゼラチンでできたプッシュ−フィット式カプセル剤、並びにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセリンまたはソルビトールでできたソフト密封カプセル剤がある。プッシュ−フィット式カプセル剤は、増量剤、例えば乳糖、結合剤、例えば澱粉、および/または滑沢剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウムおよび、所望により安定剤と混合した形で有効成分を含み得る。ソフトカプセルでは、活性化合物は、適切な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン、またはポリエチレングリコールに溶解または懸濁され得る。さらに、安定剤も添加され得る。経口投与用製剤は全て、上記投与に適切な用量であるべきである。
【0125】
頬側または舌下投与の場合、組成物は、慣用的方法で製剤化された錠剤、トローチ剤またはゲルの形態を取り得る。非経腸注射は、ボーラス注射または連続注入に関与するものであり得る。式(1)の医薬組成物は、油性または水性賦形剤中の滅菌懸濁液、溶液またはエマルションとして非経腸注射に適切な形態であり得、処方剤、例えば懸濁、安定および/または分散剤を含み得る。非経腸投与用医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として製造され得る。適切な親油性溶媒または賦形剤には、脂肪油、例えばごま油、または合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエートまたはトリグリセリド、またはリポソームがある。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘稠度を高める物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含み得る。所望により、懸濁液はまた、適切な安定剤または化合物の溶解度を高めて高濃縮液の製造を可能にする薬剤も含み得る。別法として、有効成分は、使用前に、適切な賦形剤、例えば滅菌発熱物質不含有水により調製するための粉末形態であり得る。
【0126】
式(1)の化合物は、局所投与され得、様々な局所投与可能組成物、例えば溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、バルム剤、クリームまたは軟膏に製剤化され得る。上記医薬化合物は、可溶化剤、安定剤、等張化促進剤、緩衝液および保存剤を含み得る。
【0127】
式(1)の構造を有する化合物の経皮投与に適切な製剤は、経皮送達装置および経皮送達パッチを使用し得、ポリマーまたは接着剤に溶解および/または分散させた、親油性エマルションまたは緩衝液、水溶液であり得る。上記パッチは、医薬製剤の連続拍動性、またはオンデマンド送達用に構築され得る。さらにまた、式(1)で示される化合物の経皮送達は、イオン導入パッチなどの手段により達成され得る。さらに、経皮パッチは、式(1)の化合物の制御送達を達成し得る。吸収速度は、速度制御膜を用いるかまたはポリマーマトリックスまたはゲル内に化合物を閉じ込めることにより減速され得る。逆に、吸収促進剤は、吸収を高めるのに使用され得る。吸収促進剤または担体は、皮膚への浸透を助ける吸収可能な医薬上許容される溶媒を含み得る。例えば、経皮装置は、裏打ち部材、所望により担体と共に化合物を含むレザーバー、所望による長時間にわたって予め定められた制御速度で化合物を宿主の皮膚に送達するための速度制御バリアー、および皮膚に装置を確保する手段を含む包帯形態をとる。
【0128】
吸入による投与の場合、式(1)の化合物は、エーロゾル、噴霧または粉末形態であり得る。式(1)の医薬組成物は、好都合には、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスの使用により、加圧パックまたはネブライザーからエーロゾル噴霧形態で送達される。加圧エーロゾルの場合、用量単位は、バルブを利用して定量を送達させることにより決定され得る。吸入器または注入器で使用される、例えば、単なる例として挙げると、ゼラチンでできたカプセルおよびカートリッジは、化合物および適切な粉末基剤、例えば乳糖または澱粉の粉末混合物を含むものとして製剤化され得る。
【0129】
式(1)の化合物はまた、慣用的坐薬基剤、例えばカカオバターまたは他のグリセリド、並びに合成ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、PEGなどを含む、直腸用組成物、例えば浣腸、直腸用ゲル、直腸用泡沫、直腸エーロゾル、坐剤、ゼリー坐剤、または停留浣腸として製剤化され得る。組成物の坐剤形態では、所望によりカカオバターと組み合わされていてもよい、低融点ろう、例えば、限定されるわけではないが、脂肪酸グリセリドの混合物が最初に溶ける。
【0130】
本明細書で提供されている処置または使用方法を実践する場合、本明細書記載の式(1)で示される化合物の治療有効量は、処置すべき疾患または状態を有する哺乳類に対し医薬組成物で投与される。好ましくは、哺乳類はヒトである。治療有効量は、病気の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、使用化合物の有効性および他の因子により広範に変動し得る。化合物は、単独で、または混合物の成分として1種またはそれ以上の治療剤と組み合わせて使用され得る。
【0131】
医薬組成物は、活性化合物を医薬に使用され得る製品に加工処理し易くする賦形剤および助剤を含む1種またはそれ以上の生理学的に許容される担体を用いる慣用的方法で製剤化され得る。適正な製剤は、選択された投与経路により異なる。公知技術、担体および賦形剤のいずれかが、適切なものとして、当業界で理解されている形で使用され得る。式(1)の化合物を含む医薬組成物は、慣用的方法、例えば、単なる例として挙げると、慣用的混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、糊状化、乳化、封入、包括または圧縮工程により製造され得る。
【0132】
医薬組成物は、少なくとも1種の医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤および有効成分として本明細書記載の式(1)で示される化合物の遊離酸または遊離塩基形態、または医薬上許容される塩形態を含む。さらに、本明細書記載の方法および医薬組成物は、N−酸化物、結晶形態(多形としても知られている)、並びに同一タイプの活性を有するこれらの化合物の活性代謝産物の使用を含む。状況によっては、化合物は互変異性体として存在し得る。互変異性体も全て、本明細書で示されている化合物の範囲内に包含される。さらに、本明細書記載の化合物は、非溶媒和形態および医薬上許容される溶媒、例えば水、エタノールなどとの溶媒和形態で存在し得る。本明細書で示されている化合物の溶媒和形態もまた、本明細書に開示されているものとみなされる。さらに、医薬組成物は、他の医薬または調合薬、担体、アジュバント、例えば保存、安定、湿潤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節用の塩、および/または緩衝剤を含み得る。さらに、医薬組成物は、他の治療上貴重な物質も含み得る。
【0133】
本明細書記載の化合物を含む組成物の製造方法では、固体、半固体または液体を形成させるための1種またはそれ以上の医薬上許容される不活性賦形剤または担体により化合物を製剤化する。固体組成物には、限定されるわけではないが、散剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤および坐剤がある。液体組成物には、化合物が溶解される溶液、化合物を含むエマルション、または本明細書に開示された化合物を含むリポソーム、ミセルまたはナノ粒子を含む溶液がある。半固体組成物には、限定されるわけではないが、ゲル、懸濁液およびクリームがある。組成物は、液状溶液または懸濁液、使用前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態、またはエマルション形態であり得る。これらの組成物はまた、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝剤などを含有し得る。
【0134】
本明細書記載の医薬組成物の概要は、例えば、Remington; The Science and Practice of Pharmacy、第19版(イーストン、ペンシルベニア:Mack Publishing Company、1995);Hoover,John E.、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、イーストン、ペンシルベニア、1975;Liberman,H.A.および Lachman,L.編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、ニューヨーク、ニューヨーク、1980;および Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に記載されており、これらについては出典明示により援用する。
【0135】
投与方法および処置方法
都合上、この項および本明細書における他の部分に記載されている組成物、使用および方法は、例として単一の式、例えば「式(1)」を使用している。しかしながら、本明細書記載の組成物、使用および方法は、式(A)の範囲内に包含される本明細書に示された式全てに等しく当てはまるものとし、式(B)、式(C)、式(E)、式(F)、式(G)、式(H)、式(I)、式(J)、式(K)、式(1)、式(2)、式(4)、式(5)、式(6)の構造を有する化合物、並びにこれらの一般式の範囲内に包含される特定化合物の全てが包含される。
【0136】
式(1)の化合物は、ステロイドホルモン核受容体活性が疾患の病状および/または総合的症状の一因である疾患または状態を処置するための医薬の製造で使用され得る。さらに、処置を必要とする対象における、本明細書記載の疾患または状態のいずれかの処置方法では、治療有効量で、少なくとも1種の式(1)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグ、または医薬上許容される溶媒和物を含む医薬組成物を対象に投与する。
【0137】
本明細書記載の化合物(複数も可)を含む組成物は、予防的および/または治療的処置用に投与され得る。治療適用では、組成物は、疾患または状態の症状を治療または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、既に疾患または状態に罹患している患者に投与される。この使用についての有効量は、疾患または状態の重症度および経過、治療歴、患者の健康状態、体重および薬剤に対する応答、および主治医の判断により変動する。常用の試験法(限定するわけではないが、用量漸増臨床試験を含む)により上記治療有効量を決定することは、当業者の技術の範囲内に十分含まれると思われる。
【0138】
本明細書記載の化合物(複数も可)を含む組成物は、処置を必要とする患者における、動脈硬化症、神経疾患、癌、コン症候群、1次および2次高アルドステロン症、ナトリウム保持増加、マグネシウムおよびカリウム排出増加(利尿)、水分保持増加、高血圧(収縮期および収縮期/拡張期)、不整脈、心筋線維症、心筋梗塞、バーター症候群、うっ血性心不全(CHF)、過度のカテコールアミンレベルに伴う状態、認知障害、精神病、認知症、記憶障害、気分障害、うつ病、双極性状態、不安状態、および人格障害、炎症、組織拒絶、自己免疫、悪性腫瘍、例えば白血病およびリンパ腫、クッシング症候群、急性副腎(皮質)不全、先天性副腎過形成、リウマチ熱、結節性多発性動脈炎、肉芽腫性多発性動脈炎、骨髄性セルラインの阻害、免疫増殖/アポトーシス、HPA軸抑制および調節、高コルチソル血症、Th1/Th2サイトカインバランスの調節、慢性腎臓病、卒中および脊髄損傷、低カルシウム血症、高血糖、慢性1次性副腎(皮質)不全、2次性副腎(皮質)不全、脳水腫、血小板減少症、リトル症候群、炎症性腸疾患、全身エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎(polyartitis)、ウェゲネル肉芽腫症、巨細胞関節炎、慢性関節リウマチ、変形性関節症、枯草熱、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、血管神経性水腫、慢性閉塞性肺疾患、喘息、腱炎、滑液包炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、自己免疫慢性活動性肝炎、臓器移植、肝炎、肝硬変、創傷治癒および組織修復、炎症性頭皮脱毛症、皮下脂肪織炎、乾癬、円板状エリテマトーデス、炎症性のう胞、アトピー性皮膚炎、壊疽性膿皮症、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、再発性多発性軟骨炎、炎症性脈管炎、サルコイドーシス、スウィート病、1型反応性らい病、毛細血管性血管腫、接触皮膚炎、扁平苔癬、剥脱性皮膚炎、結節性紅斑、アクネ、多毛症、毒性表皮壊死、多形性紅斑、気腫、神経炎症状態、多発性硬化症およびアルツハイマー病、前立腺癌、良性前立腺過形成、脱毛症、神経性食欲不振、乳癌、筋骨格障害、例えば骨疾患、造血障害、神経筋疾患、リウマチ疾患、消耗病、エイズ、悪液質の処置、ホルモン補充療法(HRT)、男性側避妊での使用、男性の性機能改善、男性の生殖系障害、および男性の原発性または続発性性機能不全、精巣癌、卵巣癌、肺癌、心臓血管疾患、神経変性状態、CNS状態、消化管障害、オステオポローシス、骨喪失、骨折、パジェット病、骨ターンオーバーの異常増加、歯周病、歯の喪失、プロテーゼ周囲の骨溶解、骨形成不全症、代謝性骨疾患、悪性腫瘍の高カルシウム血症、および多発性骨髄腫、軟骨変性、子宮内膜症、子宮フィブロイド疾患、子宮癌、のぼせ、脳変性状態、再狭窄、女性化乳房、脈管平滑筋細胞増殖、肥満、失調症、および非悪性慢性異常(non-malignant chronic condition)、例えばフィブロイドから選択される疾患状態または状態の処置に使用され得、この方法では本明細書記載の化合物、またはその互変異性体、プロドラッグ、溶媒和物または塩の有効量を患者に投与する。
【0139】
患者の状態が改善されない場合、医師の裁量で、化合物の投与は、患者の疾患または状態の症状を改善または制御または制限するために、長期的、すなわち、例えば患者の生存期間中を含む長期間にわたる投与となり得る。患者の状態が改善されている場合、医師の裁量で、化合物の投与は、ある一定の期間連続的または一時的に中止されること(すなわち、「休薬日」)もあり得る。
【0140】
患者の病状が改善されると、必要ならば、維持用量を投与する。それに続いて、投与の用量または頻度、またはその両方は、症状の関数として、疾患または状態の改善が保持されるレベルまで低減化され得る。しかしながら、患者は、症状の再発時には長期体制での断続的処置を必要とし得る。
【0141】
場合によっては、本明細書記載の化合物(またはその医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグ、および医薬上許容される溶媒和物)の少なくとも1種の治療有効量を、別の治療剤と組み合わせて投与するのが適切なこともあり得る。単なる例として挙げると、本明細書記載の化合物の一つを投与されたときに患者が経験した1種の副作用が炎症である場合、最初の治療剤と組み合わせて抗炎症剤を投与するのが適切であり得る。または、単なる例を挙げると、本明細書に記載された化合物の一つの治療有効性は、アジュバントの投与により高められ得る(すなわち、アジュバントそれ自体では、ごく僅かな治療効果しかあげられないが、別の治療剤と組み合わせると、患者にとっての全体的治療効果は高められる)。または、単なる例を挙げると、患者が経験する恩恵は、本明細書に記載された化合物の一つを、同じく治療上の恩恵をもたらす別の治療剤(治療体制も含む)と共に投与することにより増大され得る。いずれの場合も、処置されている疾患または状態とは関係無く、患者が経験する全体的恩恵は、単に2種の治療剤の相加的なものであり得るか、または患者は相乗的恩恵を被り得る。例えば、相乗効果は、式(1)で示される化合物および低カリウム血症、高血圧症、うっ血性心不全、腎不全、特に慢性腎不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、Xシンドローム、肥満、ネフロパシー、後壁心筋梗塞、冠動脈心疾患、コラーゲン形成増加、線維症および高血圧および内皮機能不全後のリモデリングの処置で使用される他の物質により発生し得る。上記化合物の例には、抗肥満薬、例えばオルリスタット、抗高血圧薬、変力作用薬および脂質降下薬、例えば、限定されるわけではないが、ループ利尿薬、例えばエタクリン酸、フロセミドおよびトルセミド、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、例えばベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリノドプリル、キナプリル、ラミプリルおよびトランドレプリル;Na−K−アデノシントリホスファターゼ膜ポンプ阻害剤、例えばジゴキシン、中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;ACE/NEP阻害剤、例えばオマパトリラット、サムパトリラット、およびファシドトリル;アンギオテンシンIIアンタゴニスト、例えばカンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタンおよびバルサルタン、特にバルサルタン;β−アドレナリン作用性受容体遮断薬、例えばアセブトロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロパノロール、ソタロールおよびチモロール;変力作用薬、例えばジゴキシン、ドブタミンおよびミルリノン;カルシウムチャネル遮断薬、例えばアムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピンおよびベラパミル;および3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル補酵素Aレダクターゼ(HMG−CoA)阻害剤、例えばロバスタチン、ピタバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチンおよびリバスタチンがある。本明細書記載の化合物を他の治療薬と共に投与するとき、同時投与化合物の用量は、勿論、併用薬剤のタイプ、使用される特定薬剤、処置されている疾患または状態などにより変動する。さらに、1種またはそれ以上の生物活性薬剤と同時投与するとき、本明細書で示されている化合物は、生物活性薬剤(複数も可)と同時または連続して投与され得る。連続投与される場合、担当医は、生物活性薬剤(複数も可)と組み合わせたタンパク質投与の適切な順序について決定を下す。
【0142】
いずれの場合も、多様な治療剤(そのうち1つは本明細書記載の化合物の1種である)は、何らかの順序、または場合によっては同時に投与され得る。同時の場合、多様な治療剤は、単回統一形態、または複数適用形態で提供され得る(単なる例として挙げると、単一丸薬として、または2個の個別丸薬として)。治療剤の1つが複数回適用量で投与され得るか、または両方とも複数回適用量として与えられ得る。同時ではない場合、複数回適用間のタイミングは、0週を越える期間から4週間未満の間で変動し得る。さらに、組み合わせ方法、組成物および製剤は、2薬剤のみの使用に限定されるわけではない。我々は、多様な治療組み合わせの使用も想定している。
【0143】
さらに、式(1)の化合物はまた、追加的または相乗的利益を患者にもたらし得る手順と組み合わせて使用され得る。単なる例として挙げると、患者は本明細書記載の方法において治療上および/または予防上の恩恵を被ると予測されており、その方法では、式(1)の医薬組成物および/または他の治療剤との組み合わせを、遺伝子検査と組み合わせることにより、その個体が、ある種の疾患または状態と相関関係を示すことが知られている突然変異遺伝子のキャリアーであるか否かを測定する。
【0144】
式(1)の化合物および組み合わせ療法は、疾患または状態の発生の前、最中または後に施され得、化合物を含む組成物投与のタイミングは変動し得る。すなわち、例えば、化合物は予防薬として使用され得、疾患または状態の発生を阻止するため、疾患または状態に陥る傾向のある対象へ連続的に投与され得る。化合物および組成物は、症状発現の最中または発現後可能な限り早く対象に投与され得る。化合物の投与は、発症後の最初の48時間以内、好ましくは発症後の最初の48時間以内、さらに好ましくは発症後の最初の6時間以内、最も好ましくは発症後の3時間以内に開始され得る。初回投与は、実践的経路、例えば静脈注射、ボーラス注射、5分から約5時間にわたる注入、丸薬、カプセル剤、経皮パッチ、頬側送達など、またはそれらの組み合わせによるものであり得る。化合物は、好ましくは病気または状態の発生が検出または疑われた後、実施可能な限り早く、そして病気の処置に必要な期間、例えば約1ヶ月〜約3ヶ月間投与される。処置期間の長さは対象ごとに異なり得、長さは既知規準を用いて決定され得る。例えば、化合物または化合物を含む製剤は、少なくとも2週間、好ましくは約1ヶ月〜約5年間、そしてさらに好ましくは約1ヶ月〜約3年間投与され得る。
【0145】
本明細書記載の医薬組成物は、正確な用量の単回投与に適切な単位用量形態であり得る。単位用量形態では、製剤は、1種またはそれ以上の化合物の適量を含む単位用量に分割される。単位用量は、別々の量の製剤を含むパッケージ形態であり得る。非限定的な例は、パッケージされた錠剤またはカプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の散剤である。水性懸濁組成物は、単回用量の再密閉できない容器にパッケージされ得る。別法として、複数回用量の再密閉可能容器が使用され得、その場合組成物中に保存剤を含むのが一般的である。単なる例を挙げると、非経腸注射用製剤は、限定されるわけではないが、アンプルを含む単位用量形態、または保存剤を加えた複数回用量容器形態を呈し得る。
【0146】
本明細書記載の式(1)で示される化合物に適切な1日用量は、体重1kgに基づくと約0.03〜2.5mg/kgである。限定されるわけではないが、ヒトを含む大型哺乳類における指示1日用量は、約0.5〜約100mgの範囲であり、好都合には限定されるわけではないが1日4回までの分割用量または遅延形態で投与される。経口投与に適切な単位用量形態は、約1〜50mgの有効成分を含む。個々の処置法に関する変数の数は大きく、これらの推奨値からかなり逸脱することも珍しくはないため、前記の範囲は提案に過ぎない。上記用量は、限定されるわけではないが、使用化合物の活性、処置される疾患または状態、投与方法、個々の対象の必要条件、処置されている疾患または状態の重症度、および担当医の判断といった多くの可変性により改変され得る。
【0147】
上記治療法の毒性および治療有効性は、限定されるわけではないが、LD50(集団の50%に対する致死量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)の測定についての細胞培養物または実験動物における標準医薬手順により測定され得る。毒性作用および治療効果間の用量比が治療指数であり、それはLD50およびED50間の比として表され得る。高い治療指数を呈する化合物が好ましい。細胞培養検定法および動物試験から得られたデータは、ヒトで使用される範囲の用量を処方するのに使用され得る。上記化合物の用量は、好ましくは毒性が最小限であって、ED50を含む循環濃度の範囲内に含まれるものである。投与量は、使用される用量形態および使用される投与経路によってこの範囲内で変動し得る。
【0148】
キット/製品セット
本明細書記載の治療適用で使用するためのキットおよび製品セットも本明細書に記載されている。上記キットは、1個またはそれ以上の容器、例えばバイアル、チューブなどを収納するように区画されたキャリアー、パッケージまたは容器を含み得、容器(複数も可)は各々本明細書記載の方法で使用される個別成分の一つを含んでいる。適切な容器には、例えば瓶、バイアル、注射器および試験管がある。容器は、様々な材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成され得る。
【0149】
例えば、容器(複数も可)は、所望により組成物中または本明細書で開示されている別の薬剤と組み合わせた形で、本明細書記載の1種またはそれ以上の化合物を含み得る。容器(複数も可)は、所望により無菌出入口を有していてもよい(例えば、容器は静注輸液用バッグまたは皮下注射針により貫通され得るストッパーを有する瓶であり得る)。上記キットは、所望により化合物を識別説明書またはラベルまたは本明細書記載の方法でのその使用に関する使用指示書と共に含んでいてもよい。
【0150】
キットは、典型的には1個またはそれ以上の追加容器を含み得、各々本明細書に記載された化合物の使用について商業的および使用者の観点から望ましいものであり得る様々な物質(例えば所望により濃縮形態でもよい試薬、および/または装置)の1種またはそれ以上を随伴し得る。上記物質の非限定的な例としては、緩衝液、希釈液、フィルター、針、注射器;内容物を列挙しているキャリアー、パッケージ、容器、瓶および/または管ラベルおよび/または使用説明書、および使用説明書を伴うパッケージ挿入物があるが、これらに限定されるわけではない。典型的には使用説明書のセットも含まれる。
【0151】
ラベルは、容器に貼付または付随されたものであり得る。ラベルを形成する文字、番号または他の字体が容器自体に付着、成形またはエッチングされているとき、ラベルは容器に貼付されたものであり得る。ラベルが例えばパッケージ挿入物として、容器を保持するレセプタクルまたはキャリアー内に存在するとき、それは容器に付随されたものであり得る。ラベルは、内容物が特定治療適用について使用されるべきであることを示すのに使用され得る。ラベルはまた、例えば本明細書記載の方法における内容物の使用に関する説明事項を示し得る。
【実施例】
【0152】
以下、実施例により式(A)で示される化合物の実例となる製造法およびその有効性および安全性の試験方法を説明する。これらの実施例は、単に説明を目的としているのであって、本明細書で与えられている請求の範囲を制限するものではない。本明細書で開示され、請求の範囲に記載されている方法は全て、大した実験を行わずとも本開示に照らして実施および達成され得る。当業者であれば、請求の範囲の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書記載の方法および本方法の工程または工程順序において変更が適用され得ることは容易に理解できるはずである。当業者にとっては明らかな上記の類似した置換および修飾も全て、請求の範囲の精神、範囲および概念内に含まれるものとみなされる。
【0153】
実施例1:ジベンゾスベレノン化合物の合成
実施例1a:トリメチルシリル−シアノジベンゾスベレノン化合物の合成
【化30】

ジベンゾスベレノン化合物は以下の手順により合成され得る。ジクロロメタン(DCM)(60ml)中の5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン(10g、48mmol)およびヨウ素(5mol%)の攪拌溶液に、TMSCN(8.0mL、60mmol)を0℃でゆっくりと加え、混合物を室温で1時間攪拌する。反応を飽和チオ硫酸ナトリウム(Na)溶液でクエンチし、DCMのほとんどを除去する。残さを酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、水層を分離する。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥し、濾過する。濾液を真空下で濃縮し、粗ジベンゾスベロン化合物2a化合物をそれ以上精製せずに次の工程で使用する。
【0154】
実施例1b:アミノ−アルコールジベンゾスベレノン化合物(3a)の合成
【化31】

下、LiAlH(THF中1M;60mL、60mmol)を、0℃でTHF(80mL)中のトリメチルシリル−シアノジベンゾスベレノン化合物(48mmol)の溶液にゆっくりと加える。混合物を室温で0.5時間、次いで40℃でさらに4時間攪拌する。混合物を冷却し、白色固体が沈澱するまで、EtOAc(〜10mL)、次いで2MのNaOH溶液で注意深くクエンチする。白色固体を濾過し、EtOAcで十分に洗浄する。濾液を真空中で濃縮してDCMのほとんどを除去し、残さをEtOAcで抽出する。水層を分離し、有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過する。濾液を真空下で濃縮し、粗標記化合物をそれ以上精製せずに次の工程で使用する。3・HClについてのスペクトルデータ。 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) 2.95 (s, 2H), 7.04 (s, 2H), 7.25-7.35 (m, 2H), 7.35-7.48 (m, 4H), 7.89 (d, 2H, J = 8.0 Hz); MS (ESI) m/z 220 [M−OH]+
【0155】
実施例2:ジベンゾスベロン化合物の合成
実施例2a:トリメチルシリル−シアノジベンゾスベロン化合物の合成
【化32】

ジベンゾスベロン化合物は、以下の手順により合成され得る。DCM(60ml)中の10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−オン(4.1g、19.7mmol)およびヨウ素(5mol%)の攪拌溶液に、TMSCN(2.7mL、20mmol)を0℃でゆっくりと加え、混合物を90℃で12時間攪拌する。反応混合物を冷却し、飽和Na溶液でクエンチし、DCMのほとんどを除去する。残さをEtOAcで抽出し、水層を分離する。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過する。濾液を真空下で濃縮し、粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=15/1)により精製し、無色シロップとして標記化合物を得る。
【0156】
実施例2b:アミノ−アルコールジベンゾスベレノン化合物(3b)の合成
【化33】

下、LiAlH(THF中1M;60mL、60mmol)を、0℃でTHF(80mL)中のトリメチルシリル−シアノジベンゾスベロン化合物(48mmol)の溶液にゆっくりと加える。混合物を室温で0.5時間、次いで40℃でさらに4時間攪拌する。混合物を冷却し、白色固体が沈澱するまで、EtOAc(〜10mL)、次いで2MのNaOH溶液で注意深くクエンチする。白色固体を濾過し、EtOAcで十分に洗浄する。濾液を真空下で濃縮してDCMのほとんどを除去し、残さをEtOAcで抽出する。水層を分離し、有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過する。濾液を真空下で濃縮し、粗標記化合物をそれ以上精製せずに次の工程で使用する。3・HClについてのスペクトルデータ。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) 2.95 (s, 2H), 7.04 (s, 2H), 7.25-7.35 (m, 2H), 7.35-7.48 (m, 4H), 7.89 (d, 2H, J = 8.0 Hz); MS (ESI) m/z 220 [M−OH]+
【0157】
実施例3:縮合環スピロ化合物の合成
縮合環スピロ化合物は、ディーン−スタークトラップを用いて適切な還流溶媒中、アミノ−アルコール中間体、例えば化合物3aまたは3bとケト酸の環化縮合により生成され得る(スキーム7およびスキーム8参照)。一般に、トルエン(25ml)中の出発中間体、例えば化合物3aまたは3b(HCl塩、1.0mol当量)およびケト酸(1.0〜1.5mol当量)の溶液を、ディーン−スターク装置を用いて還流させ、反応の進行を約8〜12時間以内に完了するまで分析TLCによりモニターする。室温に冷却後、トルエンを除去し、粗生成物を精製する。縮合環スピロジベンゾスベレノン化合物FRS−1からFRS−14は、下記の通り、スキーム7およびスキーム8に従って合成される。
【0158】
実施例3a:化合物FRS−1の合成
【化34】

化合物FRS−1は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(1.1g、4.8mmol)および4−オキソ−ペンタン酸(0.5mL、4.9mmol)から製造される。粗生成物をヘキサン−ジエチルエーテル(EtO)(4:1v/v)中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る。1H NMR (400 MHz, CDCl3) 1.54 (s, 3H), 2.28-2.46 (m, 2H), 2.54-2.64 (m, 1H), 2.67-2.77 (m, 1H), 3.13 (dd, 1H, J = 12.0, 0.8 Hz), 4.59 (d, 1H, J = 12.4 Hz), 7.05 (d, 1H, J = 11.6 Hz), 7.10 (d, 1H, J = 11.6 Hz), 7.16-7.40 (m, 6H), 7.74 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 7.87 (d, 1H, J = 8.0 Hz); MS (ESI) m/z 318 [M+H]+。キラル純粋FRS−1は、以下の条件を用いたキラルHPLCを用いる合成法により得られる:カラムおよび寸法:Whelk−01 10/100 25cm×4.6mmID、流速:1mL/分、試料濃度:MeOHに溶解、1mg/mL、試料実行時間:45分、溶媒条件:30%イソプロパノールおよび70%ヘキサン、モニターされた波長:220nm。
【0159】
実施例3b:化合物FRS−2の合成
【化35】

化合物FRS−2は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(0.5g、2.1mmol)および4−オキソ−4−フェニル−酪酸(0.38g、2.1mmol)から製造される。粗生成物をEtO中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 380[M+H]
【0160】
実施例3c:化合物FRS−3の合成
【化36】

化合物FRS−3は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物6a(0.5g、2.1mmol)および4−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−酪酸(0.4g、2.1mmol)から製造される。粗生成物をEtO中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 398[M+H]
【0161】
実施例3d:化合物FRS−4の合成
【化37】

化合物FRS−4は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(0.66g、2.8mmol)および5−オキソ−ヘキサン酸(0.35mL、2.9mmol)から製造される。粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=3/2)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 332[M+H]
【0162】
実施例3e:化合物FRS−5の合成
【化38】

化合物FRS−5は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(0.2g、0.73mmol)および4−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−酪酸(0.16g、0.77mmol)から製造される。粗生成物をEtO中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 410[M+H]
【0163】
実施例3f:化合物FRS−6の合成
【化39】

化合物FRS−6は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(0.1g、0.37mmol)および6−オキソ−ヘプタン酸(55mg、0.38mmol)から製造される。粗生成物を、HPLC(7分で10%CHCN/水〜90%CHCN/水)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 346[M+H]
【0164】
実施例3g:化合物FRS−7の合成
【化40】

化合物FRS−7は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(0.1g、0.37mmol)および4−(4−ブロモ−フェニル)−4−オキソ−酪酸(95mg、0.37mmol)から製造される。粗生成物を、ヘキサン−EtO(4:1v/v)中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 459[M+H]
【0165】
実施例3h:化合物FRS−8の合成
【化41】

化合物FRS−8は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(0.3g、1.1mmol)および4−オキソ−4−チオフェン−2−イル−酪酸(0.21g、1.1mmol)から製造される。残さをEtOで磨砕し、固体を濾過する。濾液を濃縮し、粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=8/2)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 386[M+H]
【0166】
実施例3i:化合物FRS−9の合成
【化42】

化合物FRS−9は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(0.1g、0.37mmol)および4−オキソ−ヘプタン酸(53mg、0.37mmol)から製造される。粗生成物をヘキサン−EtO(5:1 v/v)中で磨砕し、固体を濾過することにより、オフホワイト色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 346[M+H]
【0167】
実施例3j:化合物FRS−10の合成
【化43】

化合物FRS−10は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(1.1g、4.8mmol)および4−オキソ−4−シクロプロピル−2−イル−酪酸(0.5mL、4.9mmol)から製造される。粗生成物を、HPLC(7分で10%CHCN/水〜90%CHCN/水)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 344[M+H]
【0168】
実施例3k:化合物FRS−11の合成
【化44】

化合物FRS−11は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(250mg、0.91mmol)および4−オキソ−4−トリフルオロメチル−2−イル−酪酸(0.1mL、0.92mmol)から製造される。粗生成物を、HPLC(7分で10%CHCN/水〜90%CHCN/水)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 386[M+H]
【0169】
実施例3l:化合物FRS−12の合成
【化45】

化合物FRS−12は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3a(237mg、0.8mmol)および4−オキソ−4−[3−(N−フェニルスルホニル)ピロール]−2−イル−酪酸(0.1mL、1mmol)から製造される。粗生成物を、HPLC(7分で10%CHCN/水〜90%CHCN/水)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 509[M+H]
【0170】
実施例3m:化合物FRS−13の合成
【化46】

化合物FRS−13は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3b(0.7g、2.9mmol)および4−オキソ−ペンタン酸(0.3mL、2.9mmol)から製造される。粗生成物をヘキサン−EtO(4:1 v/v)中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 320[M+H]。キラル純粋FRS−13は、以下の条件を用いたキラルHPLCを用いる合成法により得られる:カラムおよび寸法:Whelk−01 10/100 25cm×4.6mmID、流速:1mL/分、試料濃度:MeOHに溶解、1mg/mL、試料実行時間:45分、溶媒条件:30%イソプロパノールおよび70%ヘキサン、モニターされた波長:220nm。
【0171】
実施例3n:化合物FSR−14の合成
【化47】

化合物FRS−14は、スキーム7およびスキーム8に従って化合物3b(0.7g、2.9mmol)および5−オキソ−ヘキサン酸(0.35mL、2.9mmol)から製造される。粗生成物をヘキサン−EtO(4:1 v/v)中で磨砕し、固体を濾過することにより、オフホワイト色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 334[M+H]
【0172】
実施例4:オキサゾリンスピロ化合物の合成
式(G)で示されるオキサゾリンスピロ−化合物は、スキーム9に従って式(D)で示されるアミノ−アルコール化合物とイミデート化合物との反応により合成され得る。さらに、式(6)で示されるオキサゾリンスピロ−ジベンゾスベレノン、またはオキサゾリンスピロ−ジベンゾスベロン化合物は、スキーム10に従ってそれぞれアミノ−アルコール化合物(3a)または(3b)とイミデート化合物との反応により合成され得る。例として、オキサゾリンスピロ−ジベンゾスベレノン化合物OXS−1〜OXS−3の合成を以下に記載する。
【0173】
実施例4a:化合物OXS−1の合成
【化48】

トルエン−DMFの混合物(4:1v/v、5mL)中の化合物3a(0.1g、0.37mmol)および4−ヒドロキシ−ベンズイミド酸エチルエステル塩酸塩(75mg、0.37mmol)の溶液を、80℃で12時間攪拌する。室温に冷却後、混合物を濃縮する。粗生成物をヘキサン−EtO(4:1 v/v)中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) 3.98 (s, 2H), 6.94 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.18 (s, 2H), 7.30-7.37 (m, 2H), 7.40-7.45 (m, 2H), 7.50 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 7.75 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 8.01 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 10.2 (s, 1H); MS (ESI) m/z 340 [M+H]+
【0174】
実施例4b:化合物OXS−2の合成
【化49】

トルエン−DMFの混合物(4:1v/v、5mL)中の化合物3a(0.1g、0.37mmol)およびベンズイミド酸エチルエステル塩酸塩(0.37mmol)の溶液を、80℃で12時間攪拌する。室温に冷却後、混合物を濃縮する。粗生成物をヘキサン−EtO(4:1 v/v)中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 324[M+H]
【0175】
実施例4c:化合物OXS−3の合成
【化50】

トルエン−DMFの混合物(4:1v/v、5mL)中の化合物3a(0.1g、0.37mmol)および4−メトキシベンズイミド酸エチルエステル塩酸塩(0.37mmol)の溶液を、80℃で12時間攪拌する。室温に冷却後、混合物を濃縮する。粗生成物をヘキサン−EtO(4:1 v/v)中で磨砕し、固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る。MS(ESI)m/z 354[M+H]
【0176】
実施例5:オキサゾリジンスピロ化合物の合成
式(E)で示されるオキサゾリジンスピロ−化合物は、スキーム11に従って式(D)で示されるアミノ−アルコール化合物とケトン化合物との反応により合成され得る。さらに、式(4)で示されるオキサゾリジンスピロ−ジベンゾスベレノン、またはオキサゾリジンスピロ−ジベンゾスベロン化合物は、スキーム12に従ってそれぞれアミノ−アルコール化合物(3a)または(3b)とケトン化合物との反応により合成され得る。例として、オキサゾリジンスピロ−ジベンゾスベレノン化合物BOXS−1およびBOXS−2の合成を以下に記載する。
【0177】
実施例5a:化合物BOXS−1の合成
【化51】

化合物BOXS−1を化合物3aから製造する。アセトン(20mL)中の化合物3a(1.0g、3.7mmol)の溶液を、12時間還流加熱する。生成した溶液を冷却し、溶媒を除去する。残さをへキサン中で磨砕し、固体を濾過する。濾液を濃縮し、粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=7/3)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る。1H NMR (600 MHz, CDCl3) 1.55 (s, 6H), 3.53 (s, 2H), 7.01 (s, 2H), 7.22-7.25 (m, 2H), 7.32 (d, 2H, J = 5.0 Hz), 7.34-7.38 (m, 2H), 7.93 (d, 2H, J = 5.3 Hz); MS (ESI) m/z 278 [M+H]+
【0178】
実施例5b:化合物BOXS−2の合成
【化52】

化合物BOXS−2を化合物3aから製造する。1,2−ジクロロエタン(10mL)中の化合物3a(0.55g、2.3mmol)の溶液に、シクロヘキサノン(4.0mL、39mmol)およびTsOH(5mol%)を加える。混合物を12時間80℃で加熱する。生成した混合物を冷却し、溶媒を除去する。粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン〜ヘキサン/EtOAc=8/2)で精製することにより、淡黄色固体として標記化合物を得る。1H NMR (400 MHz, CDCl3) 1.40-1.95 (m, 10H), 3.37 (s, 2H), 7.00 (s, 2H), 7.20-7.26 (m, 2H), 7.29-7.39 (m, 4H), 7.97 (d, 2H, J = 8.0 Hz); MS (ESI) m/z 318 [M+H]+
【0179】
実施例5c:化合物BOXS−3の合成
【化53】

化合物BOXS−3は、BOXS−2の場合と同様にして製造される。MS(ES)460、m/z(M+23)483。
【0180】
実施例6:置換オキサゾリジンスピロ化合物の合成
式(F)で示される置換オキサゾリジンスピロ−化合物は、スキーム11に従って式(E)で示されるオキサゾリジンスピロ−化合物と求電子性反応体との反応により合成され得る。さらに、式(5)で示される置換オキサゾリジンスピロ−ジベンゾスベレノン、または置換オキサゾリジンスピロ−ジベンゾスベロン化合物は、スキーム12に従って式(4)で示されるオキサゾリジンスピロ化合物と求電子性反応体との反応により合成され得る。例として、置換オキサゾリジンスピロ−ジベンゾスベレノン化合物SOXS−1〜SOXS−6の合成を下記に示す。
【0181】
実施例6a:化合物SOXS−1の合成
【化54】

化合物SOXS−1を、室温で2時間攪拌したDCM(4mL)中の化合物BOXS−1(50mg、0.18mmol)および2,4−ジフルオロフェニルイソシアネート(0.02mL、0.18mmol)の溶液から製造する。生成した混合物を濃縮し、残さをへキサン中で磨砕する。固体を濾過することにより、白色固体として標記化合物を得る。1.84 (s, 6H), 3.94 (s, 2H), 5.98 (s, 1H), 6.78 (m, 2H), 7.11 (s, 2H), 7.29 (dd, J = 7.6, 1.2 Hz, 2H), 7.72 (dd, J = 8.0, 1.6 Hz, 2H), 7.6 (m, 2H), 7.84 (m, 1H), 7.98 (dd, J = 8.0, 1.2 Hz, 2H). MS (ESI) m/z 433 [M+H]+
【0182】
実施例6b:化合物SOXS−2の合成
【化55】

化合物SOXS−2を、室温で2時間攪拌したDCM(4mL)中の化合物BOXS−1(30mg、0.16mmol)および3,5−ジメチルイソオキサゾールイソシアネート(0.02mL、0.18mmol)の溶液から合成する。減圧下で溶媒を除去した後、粗生成物を、HPLC(7分で10%CHCN/水〜90%CHCN/水)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 456[M+H]
【0183】
実施例6c:化合物SOXS−3の合成
【化56】

化合物SOXS−3を、化合物BOXS−1の溶液から合成する。ジクロロメタン(2ml)およびN,N−ジイソプロピルアミン(0.2ml)中の化合物BOXS−1(50.0mg、0.18mmol)の溶液に、アセチルクロリド(0.015ml、0.3mmol)を室温で加える。混合物を2時間RTで攪拌し、EtOAcで希釈し、飽和NaCO水溶液およびブラインで洗浄し、次いでMgSOで乾燥する。減圧下で溶媒を除去した後、粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン〜ヘキサン/EtOAc=8/2)で精製することにより、白色固体として標記化合物(50.0mg、0.156mmol、収率:87%)を得る:MS(ESI)m/z 320[M+H]
【0184】
実施例6d:化合物SOXS−4の合成
【化57】

化合物SOXS−4を、化合物BOXS−1の溶液から合成する。ジクロロメタン(2ml)およびN,N−ジイソプロピルアミン(0.2ml)中の化合物BOXS−1(50.0mg、0.18mmol)の溶液に、メタンスルホニルクロリド(0.015ml、0.3mmol)を室温で加える。混合物を2時間室温で攪拌し、EtOAcで希釈し、飽和NaCO水溶液およびブラインで洗浄し、次いでMgSOで乾燥する。減圧下で溶媒を除去した後、粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン〜ヘキサン/EtOAc=8/2)で精製することにより、白色固体として標記化合物(50.0mg、0.156mmol、収率:87%)を得る:MS(ESI)m/z 356[M+H]
【0185】
実施例6e:化合物SOXS−5の合成
【化58】

化合物SOXS−5を、化合物BOXS−1の溶液から合成する。ジクロロメタン(2ml)およびN,N−ジイソプロピルアミン(0.2ml)中の化合物BOXS−1(50.0mg、0.18mmol)の溶液に、ベンゾイルクロリド(0.02ml、0.3mmol)を室温で加える。混合物を2時間室温で攪拌し、EtOAcで希釈し、飽和NaCO水溶液およびブラインで洗浄し、次いでMgSOで乾燥する。減圧下で溶媒を除去した後、粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン〜ヘキサン/EtOAc=8/2)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 382[M+H]
【0186】
実施例6f:化合物SOXS−6の合成
【化59】

化合物SOXS−6を、化合物BOXS−2の溶液から合成する。ジクロロメタン(2ml)およびN,N−ジイソプロピルアミン(0.2ml)中の化合物BOXS−2(50.0mg、0.18mmol)の溶液に、アセチルクロリド(0.01ml、0.3mmol)を室温で加える。混合物を2時間室温で攪拌し、EtOAcで希釈し、飽和NaCO水溶液およびブラインで洗浄し、次いでMgSOで乾燥する。減圧下で溶媒を除去した後、粗生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン〜ヘキサン/EtOAc=8/2)で精製することにより、白色固体として標記化合物を得る:MS(ESI)m/z 360[M+H]
【0187】
実施例6g:化合物SOXS−7の合成
【化60】

化合物SOXS−7を、SOXS−6の合成に関して記載した要領で化合物BOXS−3の溶液から合成する。
【0188】
実施例7:医薬組成物
実施例7a:非経腸組成物
注射による投与に適切な非経腸医薬組成物を製造するため、式(1)で示される化合物の水溶性塩100mgをDMSOに溶かし、次いで10mLの0.9%滅菌食塩水と混合する。混合物を注射による投与に適した単位用量形態中に混ぜ入れる。
【0189】
実施例7b:経口組成物
経口送達用医薬組成物を製造するため、式(1)で示される化合物100mgを、750mgの乳糖と混合する。混合物を、経口投与に適切な経口用量単位、例えばハードゼラチンカプセル中に混ぜ入れる。
【0190】
実施例8:鉱質コルチコイド受容体拮抗作用の機能検定法
化合物のMRアンタゴニスト活性を、哺乳類2ハイブリッドリポーター系で測定する。MRのN−末端(MR−NT、アミノ酸1〜597をコードする配列)を、VP16遺伝子の活性化ドメインに融合する。MRのリガンド結合ドメイン(MR−LBD、アミノ酸672〜984をコード化する配列)を、酵母Gal4遺伝子のDNA結合ドメインに融合する。MR遺伝子を、PCRによりヒト腎臓cDNAライブラリーからクローン化する。
【0191】
384ウェルプレートでこの検定法を実施する。簡単に述べると、293T細胞(ATCC)を、Gal4−MR−LBDおよびVP16−MR NTについての発現ベクター、およびGal4結合配列を含むルシフェラーゼリポーターベクター(pG5−Luc)によりトランスフェクションする。トランスフェクションの直後、細胞を384ウェルプレートで培養する(50μl培地中約3×10細胞/ウェル)。培地に3%炭−デキストラン処理胎児ウシ血清(Hyclone)を補う。トランスフェクションの24時間後、DMSO中で調製した化合物を細胞に移入する。次いで、0.4nM最終濃度のアルドステロン(Acros)により細胞に刺激を与え、37℃でさらに24時間インキュベーションした後、ルミノメーター(CLIPR)を用いて20μlのBright-Glo(Promega)によりルシフェラーゼ活性を検定する。ルシフェラーゼの発現を、アルドステロン誘導MRトランス−活性化の指標として使用する。各化合物を12−濃度滴定によりデュプリケイトで試験する。IC50値(アルドステロン誘導MR活性の50%と拮抗するのに要求される試験化合物の濃度として定義される)を用量応答曲線から測定する。
【0192】
実施例9:グルココルチコイド受容体拮抗作用の機能性検定法
化合物のGRアンタゴニスト活性を、哺乳類2ハイブリッドリポーター系で測定する。GRのリガンド結合ドメイン(GR−LBD、アミノ酸541〜778をコード化する配列)を、酵母Gal4遺伝子のDNA結合ドメインに融合する。GR遺伝子を、PCRによりヒト肺cDNAライブラリーからクローン化する。
【0193】
384ウェルプレートでこの検定法を実施する。COS−7細胞(ATCC)を、Gal4−GR−LBDについての発現ベクターおよびGal4結合配列を含むルシフェラーゼリポーターベクター(pG5−Luc)によりトランスフェクションする。トランスフェクションの直後、細胞を384ウェルプレートで培養する(50μl培地中約8000細胞/ウェル)。培地に3%炭−デキストラン処理胎児ウシ血清(Hyclone)を補う。トランスフェクションの24時間後、DMSO中で調製した化合物を細胞に移入する。次いで、10nM最終濃度のデキサメタゾン(Sigma)により細胞に刺激を与え、37℃でさらに24時間インキュベーションした後、ルミノメーター(CLIPR)を用いて20μlのBright-Glo(Promega)によりルシフェラーゼ活性を検定する。ルシフェラーゼの発現を、デキサメタゾン誘導GRトランス−活性化の指標として使用する。各化合物を12−濃度滴定によりデュプリケイトで試験する。IC50値(デキサメタゾン誘導GR活性の50%と拮抗するのに要求される試験化合物の濃度として定義される)を用量応答曲線から測定する。
【0194】
実施例10:プロゲステロン受容体拮抗作用の機能性検定法
化合物のPRアンタゴニスト活性を、T−47Dセルライン(ATCC)においてプロゲステロン誘導アルカリ性ホスファターゼ活性により測定する。T−47D乳癌細胞において、プロゲステロンは、時間および用量依存的に膜結合アルカリ性ホスファターゼ酵素の新たな合成を特異的に誘発する(Di Lorenzo et al.、Cancer Research、51:4470−4475(1991))。アルカリ性ホスファターゼ酵素活性は、化学発光基質、例えばCSPD(登録商標)(Applied Biosystems)により測定され得る。
【0195】
384ウェルプレートでこの検定法を実施する。簡単に述べると、T−47D細胞を、384ウェルプレートにおいて、10%胎児ウシ血清を補った50μl培地中、約2.5×10細胞/ウェルの密度で培養する。24時間後、培地を吸引する。フェノールレッドおよび血清を含まない新たな培地を細胞に加える。DMSO中で調製した化合物を細胞に移入する。次いで、3nM最終濃度のプロゲステロン(Sigma)により細胞に刺激を与え、37℃でさらに24時間インキュベーションした後、ルミノメーター(CLIPR)を用いて25μlのCSPD(登録商標)(Applied Biosystems)によりアルカリ性ホスファターゼを検定する。アルカリ性ホスファターゼの発現を、プロゲステロン誘導PRトランス−活性化の指標として使用する。各化合物を12−濃度滴定によりデュプリケイトで試験する。IC50値(プロゲステロン誘導PR活性の50%と拮抗するのに要求される試験化合物の濃度として定義される)を用量応答曲線から測定する。
【0196】
実施例11:アンドロゲン受容体拮抗作用の機能性検定法
MMTVルシフェラーゼリポーターを安定して発現するMDA−Kb2セルライン(ATCC)により、化合物のARアンタゴニスト活性を測定する。MMTVプロモーターは、アンドロゲン受容体応答エレメントを含むマウス乳癌ウイルスプロモーターである。MDA−kb2細胞は、高レベルの機能性、内在性アンドロゲン受容体を発現することが示されたMDA−MB−453細胞から誘導される(Wilson et al.、Toxicological Sciences、66:69−81(2002))。ARリガンド、例えばジヒドロテストステロンにより刺激を加えると、MMTVルシフェラーゼリポーターは活性化され得る。
【0197】
384ウェルプレートでこの検定法を実施する。簡単に述べると、MDA−kb2細胞を、384ウェルプレートにおいて、50μl培地中、約2.4×10細胞/ウェルの密度で培養する。培地に5%炭−デキストラン処理胎児ウシ血清(Hyclone)を補う。24時間後、DMSO中で調製した化合物を細胞に移入する。次いで、0.3nM最終濃度のジヒドロテストステロン(Sigma)により細胞に刺激を与え、37℃でさらに24時間インキュベーションした後、ルミノメーター(CLIPR)を用いて20μlのBright-Glo(Promega)によりルシフェラーゼ活性を検定する。ルシフェラーゼの発現を、ジヒドロテストステロン誘導ARトランス−活性化の指標として使用する。各化合物を12−濃度滴定によりデュプリケイトで試験する。IC50値(ジヒドロテストステロン誘導AR活性の50%と拮抗するのに要求される試験化合物の濃度として定義される)を用量応答曲線から測定する。
【0198】
種々のステロイドホルモン核受容体についての上記機能性検定法を用いて、典型的試験化合物を評価した。特定ステロイドホルモン核受容体の50%と拮抗する典型的試験化合物の能力を、IC50値の範囲として表2に示す。
表2:特定ステロイドホルモン核受容体の50%と拮抗するのに要求される試験化合物に関するIC50値の範囲
A=>10
B=1−10
C=0.1−1
D=<0.1
【表3】

【0199】
本明細書記載の実施例および態様は、単に説明を目的とするものであること、およびそれに照らして様々な修正または変化が当業者により容易に想到され、それらも本願の精神および範囲並びに添付された請求の範囲内に包含されるものとする。本明細書で挙げられている全ての出版物、特許、および特許出願については、出典明示により援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、
(a)Aは、NR−CRまたはN=CRであり、Xは、O、NR、C(RまたはSであり、ZはCR=CRまたはC(R−C(Rであり、
(b)Rは、H、または−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分であり、Lは、結合、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、R部分の所望による置換基は、ハロゲン、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−C1−6アルキルおよびハロ−C1−6アルコキシから選択され、
およびRは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CNおよび−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、RまたはR部分の所望による置換基は、ハロゲン、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−C1−6アルキルおよびハロ−C1−6アルコキシから選択されるか、または
およびRは、一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員複素環を形成するか、または
およびRは、一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員シクロアルキル、炭素環または複素環を形成し、
(c)各Rは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CNおよび−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、ただし、少なくとも1個のRはHではないものとし、
(d)各Rは、独立して、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CNおよび−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択され、各mは、独立して0、1、2、3、4および5から選択され、
(e)各Rは、独立してH、ハロゲン、OH、NH、SH、NO、CNおよび−L−アルキル、−L−シクロアルキル、−L−ヘテロアルキル、−L−ハロアルキル、−L−アリール、−L−ヘテロシクロアルキル、および−L−ヘテロアリールから選択される所望により置換されていてもよい部分から選択され、Lは、結合、O、NH、S、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、C(O)NH−、−S(O)−、−S(O)および−S(O)NH−から選択されるか、またはいずれか2個のR基は、一緒になって3〜8員炭素環または複素環を形成し、および
(f)各RおよびRは、独立してHおよび(C−C)アルキルから選択される]
で示される構造を有する化合物、その医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグまたは医薬上許容される溶媒和物。
【請求項2】
XがOである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
ZがCR=CRである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
ZがC(R−C(Rである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
AがNR−CRである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
XがOである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
ZがCR=CRである、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
ZがC(R−C(Rである、請求項5記載の化合物。
【請求項9】
およびRが一緒になって3〜8員複素環を形成する、請求項5記載の化合物。
【請求項10】
式(2):
【化2】

(式中、nは、0、1、2、3、4または5である)
で示される構造を有する、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
XがOである、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
ZがCR=CRである、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
ZがC(R−C(Rである、請求項10記載の化合物。
【請求項14】
がHではない、請求項5記載の化合物。
【請求項15】
およびRが一緒になって所望により置換されていてもよい3〜8員シクロアルキル、炭素環または複素環を形成する、請求項5記載の化合物。
【請求項16】
XがOである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
ZがCR=CRである、請求項15記載の化合物。
【請求項18】
ZがC(R−C(Rである、請求項15記載の化合物。
【請求項19】
がHではない、請求項15記載の化合物。
【請求項20】
AがN=CRである、請求項1記載の化合物。
【請求項21】
XがOである、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
ZがCR=CRである、請求項20記載の化合物。
【請求項23】
ZがC(R−C(Rである、請求項20記載の化合物。
【請求項24】
少なくとも一つのステロイドホルモン核受容体の活性を調節する方法であって、少なくとも一つのステロイドホルモン核受容体を、式(1)で示される構造を有する化合物、またはその医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグまたは医薬上許容される溶媒和物と接触させることを含む方法。
【請求項25】
式(1)で示される化合物を、少なくとも一つのステロイドホルモン核受容体と直接接触させる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
接触がインビトロで行なわれる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
接触がインビボで行なわれる、請求項25記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1種の式(1)で示される構造を有する化合物、またはその医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグまたは医薬上許容される溶媒和物を、1種またはそれ以上の適切な賦形剤と混合した形で含む、医薬組成物。
【請求項29】
1種またはそれ以上の賦形剤が非経腸投与に適切なものである、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
1種またはそれ以上の賦形剤が経口投与に適切なものである、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項31】
1種またはそれ以上の賦形剤が、眼への投与に適切なものである、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項32】
ステロイドホルモン核受容体活性の調節により、疾患の病状および/または総合的症状が予防、阻止または改善され得る動物における疾患の処置方法であって、式(1)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩、医薬上許容されるN−酸化物、医薬上活性な代謝産物、医薬上許容されるプロドラッグまたは医薬上許容される溶媒和物の治療有効量を動物に投与することを含む方法。
【請求項33】
ステロイドホルモン核受容体が、グルココルチコイド受容体、鉱質コルチコイド受容体、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体から成る群から選択される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
さらに第2物質の治療有効量の投与を含み、第2物質を、低カリウム血症、高血圧症、うっ血性心不全、腎不全、特に慢性腎不全、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、Xシンドローム、肥満、ネフロパシー、後壁心筋梗塞、冠動脈心疾患、コラーゲン形成増加、線維症および高血圧および内皮機能不全後のリモデリングから成る群から選択される疾患または状態の処置で使用する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
第2物質が、抗肥満剤、抗高血圧薬、変力作用薬、脂質降下薬、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、Na−K−アデノシントリホスファターゼ膜ポンプの阻害剤、中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤、ACE/NEP阻害剤、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、β−アドレナリン作用性受容体遮断薬、変力作用薬、カルシウムチャネル遮断薬、および3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル補酵素Aレダクターゼ(HMG−CoA)阻害剤から成る群から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
式(1)で示される化合物を第2物質の前に投与する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
式(1)で示される化合物を第2物質と共に投与する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
式(1)で示される化合物を第2物質の後に投与する、請求項34記載の方法。
【請求項39】
ステロイドホルモン核受容体活性が疾患の病状および/または総合的症状の一因である、動物における疾患の処置を目的とする医薬の製造における式(1)の化合物の使用。
【請求項40】
ステロイドホルモン核受容体が、グルココルチコイド受容体、鉱質コルチコイド受容体、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体、およびプロゲステロン受容体から成る群から選択される、請求項39記載の使用。
【請求項41】
式(2):
【化3】

で示される構造を有する化合物の製造方法であって、適切な反応条件下、ケト酸化合物を、式(3)
【化4】

で示される構造を有する化合物と混合する工程を含む方法。
【請求項42】
XがOである、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
式(4):
【化5】

で示される構造を有する化合物の製造方法であって、適切な反応条件下、ケトンを式(3):
【化6】

で示される構造を有する化合物と混合する工程を含む方法。
【請求項44】
XがOである、請求項43記載の化合物。
【請求項45】
式(5):
【化7】

で示される構造を有する化合物の製造方法であって、適切な反応条件下、求電子性反応体を、式(4):
【化8】

で示される構造を有する化合物と混合する工程を含む方法。
【請求項46】
求電子性反応体が、酸塩化物、無水物、イソシアネート、イソチオシアネート、またはスルホニルクロリドから選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
XがOである、請求項45記載の化合物。
【請求項48】
式(6):
【化9】

で示される構造を有する化合物の製造方法であって、適切な反応条件下、イミデートを、式(3):
【化10】

で示される構造を有する化合物と混合する工程を含む方法。
【請求項49】
XがOである、請求項48記載の化合物。

【公表番号】特表2008−531564(P2008−531564A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557074(P2007−557074)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/005803
【国際公開番号】WO2006/104594
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】