説明

ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に関与するNPHS2遺伝子、上記遺伝子によりコードされるタンパク質、並びにそれらの診断的及び治療的使用

【課題】ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に関与する遺伝子の提供。
【解決手段】コルチコイド抵抗性ネフローゼ症候群に関与するタンパク質をコードするNPHS2遺伝子と称される新規遺伝子、並びに新規に同定されたヌクレオチド配列及びアミノ酸の診断的及び治療的使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に関与するタンパク質をコードするNPHS2と称される新規遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
特発性ネフローゼ症候群は、主に子供に現れ、そして大量のタンパク尿及び腎臓における非特異的な組織変化により特徴づけられ、時には巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)を含む病理学的症状である。これらの特徴は有足細胞の小足の消失の広まりと関係し(Broyer et al., 1998)、それらの原因が何であれネフローゼ症候群を明らかにする。大部分の症例はステロイドを基本とした治療に該当し、そして良好な予後を迎えるが、しかし約20%はステロイドに対して抵抗性であり、そして完全な糸球体硬化をもたらす末期の腎不全まで進行する。次にステロイド抵抗性ネフローゼ症候群について言及する。
【0003】
糸球体による原尿(primary urine)形成中の血漿の高分子の限外ろ過はヒト腎臓の主要な機能の1つである。この機能を担う構造的に複雑な毛細血管壁は、その内側の表面を有窓性内皮細胞により覆われ、そして外側の表面を小足を形成する固有の上皮細胞(有足細胞)により覆われた基底膜から成る。多くの後天的又は遺伝病において、血漿タンパク質の過度の喪失を生じ、ネフローゼ症候群、そしてその後にあるいは末期の腎不全をもたらす糸球体膜の機能不全が観察される。前記ろ過障壁を冒す遺伝病の研究は糸球体のろ過工程の生理病理学的理解のための有用なモデルを提供する。タンパク尿及びネフローゼ症候群を伴う遺伝性障害のいくつかは説明されている。最も深刻なものは子宮内での強いタンパク尿、そして通常生涯の最初の2年の間に末期の腎不全を生じる出生時のネフローゼ症候群を伴う常染色体劣性病であるところのフィンランド型(Finnish type)の先天的ネフローゼ症候群(CNF)である。CNFはNPHS1遺伝子の変異により引き起こされる(Kestilae, 1998)。その上、家族性タンパク尿又は組織学的な、巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)の障害によるネフローゼ症候群の患者はより高齢な患者、時に成人に達した患者において報告されている。常染色体の優性FSGSに関する2の遺伝子座が、それぞれNPHS1遺伝子座に近い19q13の遺伝子座(Mathis et al., 1998)、及び11q21〜q22の遺伝子座(Winn et al., 1999)に位置付けられている。
【0004】
1995年に遺伝が常染色体劣性である新しいステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の実体が以下の基準に従って特徴づけられた:3ヶ月〜5歳の早期発症であり、ステロイドを基本とした治療に抵抗性であり、10歳までに末期腎不全に進行し、腎臓移植後に再発がなく、そしていかなる腎外障害もない。組織学的に、早期生検において最小限の一時変異だけが観察されるが、しかしFSGSは一般的に後段に見られる。このステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に関与する遺伝子座はマーカーD1S452〜D1S466の1q25〜q31領域に位置付けられており、この領域は約12cm超に達する(Fuchshuber, 1995)。この配置は他のチームにより確認され(Lench et al., 1998)、そして最近、成人で発症する家族性を示すFSGSのこの領域への関連も証明された(Tsukaguchi et al., 1999)。
【発明の開示】
【0005】
本発明の発明者らは前記ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の実体に関与する新規遺伝子の正確な同定にここで成功した。この遺伝子は初めSRN1と呼ばれ、そして次にNPHS2と改名された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
配列表を添付し、ここで配列番号1の配列は、オープン・リーディング・フレーム(ORF)に対応するヒトにおけるNPHS2のcDNA断片を示す。このORFは1149塩基を含み、そしてポドシンと称される383アミノ酸のタンパク質をコードし、その配列は配列番号2に示される。
【0007】
配列番号3〜配列番号10の配列は、(添付の一覧中のはっきりとした特徴の)それぞれ8のエクソンを含むヒトNPHS2遺伝子のゲノムDNA断片を以下のとおり示す:
配列番号3:
ATGの前に683塩基対が存在する。このcDNAクローンはヒト胎児腎臓cDNAライブラリー(λgt11ファージ内に複製されたClontechライブラリー)のスクリーニングにより得られ、大体615〜619塩基の間で始まる。ATGからスプライシング部位まで(第1エクソン)の274塩基対、そして次に147塩基対のイントロン配列が存在する。
【0008】
配列番号4:
151塩基対のイントロン、次に104塩基対のコーディング(第2エクソン)、そして次に123塩基対のイントロンが存在する。
【0009】
配列番号5:
336塩基対のイントロン、次に73塩基対のコーディング(第3エクソン)、そして次に291塩基対のイントロンが存在する。
【0010】
配列番号6:
187塩基対のイントロン、次に83塩基対のコーディング(第4エクソン)、そして次に90塩基対のイントロンが存在する。
【0011】
配列番号7:
250塩基対のイントロン、次に204塩基対のコーディング(第5エクソン)、そして次に195塩基対のイントロンが存在する。
【0012】
配列番号8:
367塩基対のイントロン、次に56塩基対のコーディング(第6エクソン)、そして次に169塩基対のイントロンが存在する。
【0013】
配列番号9:
327塩基対のイントロン、次に79塩基対のコーディング(第7エクソン)、そして次に310塩基対のイントロンが存在する。
【0014】
配列番号10:
285塩基対のイントロン、次に911塩基の、使用されたポリアデニル化部位までのcDNA配列(第8エクソン)が存在する。停止コドンは562位に存在し、他の潜在的ポリアデニル化部位を含む109塩基対の付加的なゲノム配列が続く。
【0015】
配列番号11は第5エクソンの一部、第6、及び第7エクソン、並びに第8エクソンの大部分(前記cDNAの1792位から)を含む。
【0016】
配列番号12〜27はヒトの配列を増幅するために有用なプライマーである。
【0017】
配列番号28はラット・ポドシンcDNA配列であり、配列番号29は対応のアミノ酸配列である。
【0018】
従って、本発明の対象は、単離核酸、すなわち配列番号3〜配列番号10、あるいは以下の:
i)配列番号3〜配列番号10の配列の少なくとも70%と一致する配列;又は
ii)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、配列番号3〜配列番号10若しくはそれらに相補的な配列とハイブリダイズする配列、
として定義される相同配列から選ばれるところの配列である。
【0019】
本発明の対象は、配列番号1又は28の配列、あるいは以下の:
1)配列番号1の配列の少なくとも70%と一致する配列;
ii)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、配列番号1の配列若しくはそれに相補的な配列とハイブリダイズする配列;又は
iii)前記のようにポドシンと称されるポリペプチドをコードする配列、として定義される相同配列をも含む単離核酸である。
【0020】
好ましくは、本発明による相同ヌクレオチド配列は、配列番号1又は配列番号3〜10、及び28の配列の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%一致する。
【0021】
優先的に、かかる相同ヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下、特に配列番号1,3〜10、及び28の配列に相補的な配列にハイブリダイズする。ストリンジェンシー条件を定義するパラメーターは、対をなした鎖の50%が分かれる温度(Tm)に依存する。
【0022】
30塩基超を含む配列について、Tmは以下の等式により定められる:Tm=81.5+0.41(G+C%)+16.6Log (カチオン濃度)−0.63(ホルムアミド%)−(600/塩基数)(Sambrook et al., 1989)。
【0023】
長さが30塩基未満の配列について、Tmは以下の等式により定められる:Tm=4(G+C)+2(A+T)。
【0024】
非特異的な配列がハイブリダイズしない好適なストリンジェント条件下、ハイブリダイゼーション温度は5〜30℃、好ましくは5〜10℃、Tmを下回り、そして使用されるハイブリダイゼーション・バッファーは好ましくは高いイオン強度の溶液、例えば6×SSC溶液である。
【0025】
配列番号1又は28に示されるORFに相同的な核酸は、それが以下に定めるポドシンの生理活性を有するポリペプチドをコードすることを条件とする1塩基以上の変異、挿入、欠失又は置換、あるいは遺伝子コードの変性により配列番号1又は28の配列と異なるあらゆるヌクレオチド配列を含む。
【0026】
ヒト以外の哺乳動物の、好ましくは霊長類の、又はヒツジ科若しくはブタの仲間の胎児、又はさらに他のげっ歯類のポドシンをコードする遺伝子の配列、及び対立遺伝子の変異型又は多型配列が前述の相同配列の中に含まれる。
【0027】
下記の表は、NPHS2遺伝子内に同定された多型の特定の番号を示す:
【0028】
【表1】

【0029】
本発明の対象は、配列番号2又は29のアミノ酸配列、あるいは以下の:
i)配列番号2又は29の配列の少なくとも70%と一致する配列;又は
ii)請求項2ii)に定義される相同核酸配列、すなわちストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、配列番号2又は29の配列、若しくはそれらに相補的な配列とハイブリダイズする核酸配列によりコードされる配列、
として定義される相同配列を含むポドシンと称される単離ポリペプチドでもある。
【0030】
より一般的には、表現「相同アミノ酸配列」は、アミノ酸若しくはわずかなアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入、特にこれらの変更がポドシンの生理活性を著しく害さないような位置での人為的なアミノ酸又はアミノ酸異性体による天然アミノ酸の置換によって配列番号2又は29の配列と異なるあらゆるアミノ酸配列を意味することが意図される。
【0031】
前述の置換は、好ましくは保存性置換、すなわち同じクラスのアミノ酸の置換、例えば無荷電側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、及びチロシン)の、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリシン、アルギニン、及びヒスチジン)の、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸及びグルタミン酸)の、あるいは無極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、及びシステイン)の置換である。
【0032】
好ましくは、前述の相同アミノ酸配列は、配列番号2又は29の配列の少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%と一致する。
【0033】
相同性は一般的に配列分析プログラム(例えばSequence Analysis Software Package : Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705 による)を用いて測定される。最大限の相同性(すなわち同一性)を得るために類似のアミノ酸配列が並べられる。この目的のために、ギャップを前記配列内に人為的に導入する必要がある。一旦最適なアラインメントを製造し、位置の総数について2つの比較される配列のアミノ酸の全ての位置を記録することにより相同性の程度(同一性)を確立する。
【0034】
表現「ポドシンの生理活性」は糸球体膜の完全な状態の維持に関する。ポドシンの欠乏又は有害な改質は糸球体レベルでのタンパク質の漏出、そしてその結果としてタンパク尿の出現を引き起こす。
【0035】
本発明のポリペプチドは当業者が周知のあらゆる技術を用いて製造されうる。本発明のポリペプチドは、例えば合成化学技術、例えば純度、抗原特異性、及び望ましくない副産物の存在の理由で、そしてその製造の容易さで有利であるメリフィールド型の合成を用いて合成されうる。
【0036】
組換えポドシンを、配列番号1若しくは配列番号28の配列又は相同配列を含む核酸を含むベクターを上記の対応のポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養した宿主細胞内に転移させることによる方法を用いて製造することもできる。
【0037】
次に製造されたポドシンは回収、及び精製されうる。
【0038】
使用される精製方法は当業者に知られている。得られた組換えポリペプチドは、個別に又は組合せて用いられる方法、例えば分留、クロマトグラフィー法、特異的なモノ−又はポリクローナル抗体を用いたイムノアフィニティー技術等により細胞のライセート及び抽出物並びに/又は培養液の上清から精製されうる。
【0039】
ポドシンをコードする着目の核酸配列は、それらの発現の調節のための要素、例えば特に転写プロモーター、アクチベーター、及び/又はターミネーターに機能するように連結されて発現ベクター内に挿入される。
【0040】
前記核酸の発現を制御するシグナル(プロモーター、アクチベーター、ターミネーション配列等)は使用される細胞宿主の機能として選ばれる。この効果のために、本発明による核酸配列は、選択された宿主内で自立的に複製するか又は選択された宿主内に組み込まれるベクター内に挿入される。前述のベクターは、当業者により一般に使用される方法により製造され、そしてそこから得られるクローンは標準的な方法、例えばエレクトロポレーション法又はリン酸カルシウム共沈法を用いて好適な宿主内へ導入される。
【0041】
本発明により定義されるヌクレオチド配列の1つを含む前記クローニング及び/又は発現ベクターは本発明の一部でもある。
【0042】
本発明は、それらの発現ベクターにより一時的に又は安定にトランスフェクトされる宿主細胞に向けられもする。これらの細胞は、前記のとおりベクター内に挿入されたヌクレオチド配列の原核生物又は真核生物宿主細胞へ導入し、次に複製及び/又はトランスフェクトしたヌクレオチド配列の発現を可能にする条件下で上記細胞を培養することにより得られる。
【0043】
宿主細胞の例は、特に哺乳動物細胞、例えばCOS−7,293又はMDCK細胞、昆虫細胞、例えばSF9細胞、細菌、例えばE.コリ(E. coli)、及び酵母株、例えばYRG2を含む。
【0044】
本発明のさまざまなヌクレオチド配列は人工的な起源であるかどうかは分からない。それらは、配列番号1又は28、及び3〜10の配列の塩基に関して構築されたプローブを用いた配列ライブラリーのスクリーニングにより得られたDNA又はRNA配列でありうる。前記ライブラリーは、当業者に知られる慣例の分子生物学的技術を用いて製造されうる。
【0045】
本発明によるヌクレオチド配列は化学合成、又はライブラリーのスクリーニングにより得られた配列の化学的若しくは酵素的変更を含む混成の方法により製造されることもできる。
【0046】
これらのヌクレオチド配列は、本発明による配列番号1若しくは28又は3〜10の配列、あるいはそれらに相補的な鎖に特異的にハイブリダイズするプローブ又はプライマーの製造を可能にさせる。好適なハイブリダイゼーション条件は、当業者により通常用いられる温度及びイオン強度の条件、好ましくは先に定義したとおりのストリンジェントな条件下に対応する。これらのプローブは、生物サンプル中の本発明のポリペプチドに特異的な転写産物をハイブリダイゼーション実験、特に「in situ」ハイブリダイゼーション実験により検出するためか、あるいは多型、変異又は不正確なスプライシングに起因する異常な合成又は遺伝子の異常性を証明するためのインビトロ診断ツールとして使用されうる。
【0047】
プローブとして有用な本発明の核酸は、最も少なくて10のヌクレオチドを、好ましくは少なくとも20のヌクレオチドを、より好ましくは少なくとも100のヌクレオチドを含む。プライマーとして有用な核酸は、最も少なくて10のヌクレオチドを、好ましくは少なくとも14のヌクレオチドを、さらに好ましくは少なくとも40のヌクレオチドを含む。
【0048】
より明確には、本発明の対象は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、配列番号1若しくは28又は3〜10の配列、あるいはそれらに相補的な配列の1つに特異的にハイブリダイズする少なくとも10のヌクレオチドを有する核酸である。
【0049】
有利には、プローブとしての、第5エクソンの一部、第6及び第7エクソン、並びに第8エクソンの大部分(cDNAの728塩基〜1792塩基)を含む配列番号11の配列から成る核酸の用途が考えられうる。
【0050】
その上、配列番号12〜配列番号27の配列から成る核酸は(例えばPCRによる)増幅のためのプライマーとして使用されうる。
【0051】
好ましくは本発明のプローブ又はプライマーはそれらの使用に先立ち標識される。これについては、いくつかの技術、例えば蛍光、放射線、化学発光又は酵素的標識が当業者の範囲の内にある。
【0052】
これらのオリゴヌクレオチドがNPHS2遺伝子内の変異又は遺伝子転位の検出に使用されるインビトロ診断法を本発明に含む。
【0053】
当業者は、生物サンプルに含まれるDNAの分析に関する、及び遺伝病の診断に関する標準法を十分に理解している。遺伝子型の分析に関する多くの方法が利用できる(Antonarakis et al., 1989; Cooper et al., 1991)。
【0054】
好ましくは、NPHS2遺伝子の異常性の検出のためにDGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気流動)法、SSCP(1本鎖DNA高次構造多型)法又はDHPLC(変性高性能液体クロマトグラフィー)法の使用が考えられる。前記方法の後に直接シークエンス法が続く。転写産物の1以上のエクソンの喪失を引き起こすスプライシング変異又はクリプティック・サイト(cryptic site)の活性化による異常なスプライシングの結果を可視化できるので、有利には、NPHS2遺伝子の異常性検出のためにRT−PCR法が使用される。好ましくは、この方法の後に直接シークエンス法が続く。DNAチップを用いる最近開発された方法がNPHS2遺伝子の異常性の検出にも使用されうる(Bellis et al., 1997)。
【0055】
NPHS2遺伝子のクローニング、さらにステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の原因であるさまざまな変異の同定は、直接的な診断の想像を可能にさせる。前記診断方法の特異性及び信頼度は、特に出生前の診断において特に認めうるほどのものである。従って、本発明の核酸配列は遺伝相談のための特に望ましいツールを表す。
【0056】
従って、本発明の対象は、配列番号3〜10の核酸配列を含むと定義されるNPHS2遺伝子、又は配列番号1の配列に相補的な核酸配列を含むと定義される上記遺伝子の転写産物の異常性の検出のための、少なくとも1の先に定義した核酸の使用である。
【0057】
よって、本発明の対象は以下の:
a1)DNAを含む生物サンプルを請求項3〜10若しくは相同配列から選ばれる核酸配列を含むとして定義される、NPHS2遺伝子の全て又は一部を増幅するための特定のオリゴヌクレオチドと一緒にセットし;
b1)上記DNAを増幅し;
c1)増幅産物を検出し;
d1)得られた増幅産物を、対照サンプルを用いて得られたものと比較し、そしてこのようにNPHS2遺伝子の変異に関連するステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を示唆する上記NPHS2遺伝子内の起こりうる異常を検出する;
かあるいは代わりに、
a2)RNAを含む生物サンプルを請求項1の配列若しくは相同配列に相補的な核酸配列を含むとして定義される、NPHS2遺伝子の転写産物の全て又は一部を増幅するための特定のオリゴヌクレオチドと一緒にセットし;
b2)上記DNAを増幅し;
c2)増幅産物を検出し;
d2)得られた増幅産物を、対照サンプルを用いて得られたものと比較し、そしてこのようにNPHS2遺伝子の変異に関連するステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を示唆する上記NPHS2遺伝子内の起こりうる異常を検出する;
から成るステップを含むNPHS2遺伝子の変異に関連したステロイド抵抗性ネフローゼ症候群のインビトロにおける診断方法である。
【0058】
特に少なくとも1の481,173/174,488,924/925,128,343,482,548,607、及び940、あるいは1033,529,622,774−782,154,422,442,571,572,583,783,794、及び848のヌクレオチドの位置での変異、挿入又は欠失により配列番号1の配列と異なる配列を含む単離核酸も本発明の一部である。
【0059】
すでに特定された変異の中で下記の表1及び2に示されるものが特に注目される。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
これらの検査は、特にすでに罹患した子供のいる家族に発症前の診断(特に出生前診断)として活用されうる。
【0063】
散発的な症例において、NPHS2遺伝子の変異の検出は、治療の変更(そして特に効果がないであろう免疫抑制治療の回避)、及び腎臓移植後の再発のないことの予測を可能にさせる。
【0064】
この診断検査は、糸球体膜異常の二次的な関与を伴う他の病理学的症状(糖尿病腎症、AIDSにおける腎症、ネフロン損失、低血圧症)においてポドシンの特定の多型変異の関連性を調べるためにも使用されうる。これらの変異はそれらの疾患における腎症の誘発又は進行に感受性の因子に相当しうる。
【0065】
本発明の対象は、先に定義したポドシン・ポリペプチドに向けられた抗体でもある。
【0066】
それらはポリ−若しくはモノクローナル抗体であるか又はそれらの断片、あるいはキメラ抗体、特にヒト化又は免疫複合体化した抗体である。
【0067】
ポリクローナル抗体は、通常の手順によりポリペプチドに対して免疫された動物の血清から得られる。
【0068】
本発明の1の態様により、反応性残基を介してタンパク質又は他のペプチドにつながれる好適なペプチド断片は抗原として使用されうる。ウサギを、Benoit et al. (1982)により記載された手順により1mg相当のペプチド抗原により免疫する。4週間後、その動物に200μgの抗原を注射し、そして10〜14日後に血を抜く。3回目の注射の後、その能力を測定するために抗血清を、クロラミン−T法により調製したヨウ素により放射線標識した抗原ペプチドに結合させる、そしてその後カルボキシメチルセルロース(CMC)イオン交換カラムによるクロマトグラフィーにより精製した。次にその抗体分子をその哺乳動物から回収し、そして当業者に周知の方法、例えばIgG画分を得るためのDEAEセファデックスを用いて所望の濃度まで分離する。
【0069】
ポリクローナル血清の特異性を上げるために、その抗体を、固相固定化ポリペプチドを用いたイムノアフィニティー・クロマトグラフィーにより精製する。固相免疫複合体を形成させる目的でそのポリペプチドのその抗体分子との免疫反応を起こすために、前記抗体を前記固相固定化ポリペプチドと十分な時間接触させる。
【0070】
実施例として、ウサギによるポリクローナル抗体を、ポドシンの第15〜89アミノ酸及び第135〜383アミノ酸の断片を含む2種類の組換えタンパク質に対して製造し、6のヒスチジン残基にN末端側で結合した、そのcDNAをベクターPQ E32(Quiagen)内にサブクローニングし、そしてE.コリにより発現させる。
【0071】
モノクローナル抗体は、Koehler and Milstein (1975)により記載された慣例のハイブリドーマ培養法により得られる。
【0072】
本発明の抗体又は抗体断片は、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、Fab断片、及びF(ab’)2断片を含む。それらは標識抗体又はイムノコンジュゲートの形態でもありうる。
【0073】
本発明の抗体、とりわけモノクローナル抗体は、特に特定の組織切片上のポドシンの、例えば免疫蛍光検査法、金標識法、酵素免疫化学法等による免疫組織化学分析のために使用されうる。
【0074】
こうして製造された抗体は、ポドシンの発現を観察しなくてはならないあらゆる状況で有利には使用される。
【0075】
本発明の対象は、生物サンプル中の先に定義したポリペプチドの検出又は精製のための、こうして得られた少なくとも1の抗体の使用でもある。
【0076】
より正確には、本発明は、生物サンプル中のポドシンの検出又は発現レベルの計測のためのインビトロにおける方法に関し、そしてその方法は、先に定義した少なくとも1の抗体をポドシンと上記抗体(antibody or antibodies)との間の特異的な免疫複合体の見込まれる形成をもたらす条件下で上記生物サンプルと接触させ、そして形成されるであろう特異的な免疫複合体を検出することを含む。(例えばELISA型の)前述の検査の構築は、特に腎臓移植後の抗ポドシン抗体の発生についての調査、特定の自己免疫性腎臓病又はステロイド抵抗性ネフローゼ症候群にさえ有用であろう。
【0077】
本発明の対象は以下の:
− 場合により担体に付着させた、少なくとも1のポドシン特異性抗体;
− ポドシンと上記抗体との間の特異的な抗原/抗体複合体の形成を明らかにする手段 、及び/又はこれらの複合体を数値化する手段、
を含む、この方法を実施するためのキットでもある。
【0078】
本発明の対象は、医薬として許容される媒質と組合せて先に定義したポドシン・ポリペプチド又は上記ポリペプチドをコードする核酸を含む医薬組成物でもある。
【0079】
少なくとも1のポリペプチドを含む本発明による医薬組成物の投与方法、用量、及び医薬形態は、当業者により通常の方法、特に疾患に対する治療的処置の確立に一般的に考慮される基準、例えばその患者の年齢又は体重、彼又は彼女の全体的な症状の重さ、治療に対する許容度、及び注意される副作用等に従い決定されうる。
【0080】
一般的に、約0.1μg〜約1mgの範囲をとる治療的又は予防的な有効量が成人に投与される。
【0081】
本発明の対象は、ポドシン活性をもつポリペプチドをコードする先に定義した核酸、及び医薬として許容される媒質を含む医薬組成物でもあり、そしてこの上記組成物を遺伝子治療に使用されることを意図する。前記核酸、好ましくは一般的なウイルス・ベクター(例えばアデノウイルス及びレトロウイルス)に挿入されたその核酸は、標的細胞への転移を促進するあらゆる媒質、例えばアニオン性リポソーム、カチオン性脂質、微細粒子、例えば金微細粒子、沈殿剤、例えばリン酸カルシウム、又は転移を促進する他の作用物質を含まないむき出しの形で投与されうる。この場合、前記ポリヌクレオチドは、媒質があろうがなかろうが生理学的に許容される溶液、例えば無菌溶液又は無菌緩衝液中に単に希釈される。
【0082】
あるいは、本発明の核酸を、転移を促進する作用物質と結合させうる。それを、特に(i)細胞の透過性を変える化学物質と結合させるか、(ii)場合により、転移を促進する付加物の存在下、リポソームによりカプセル化するか、あるいは(iii)カチオン性脂質又はシリカ、金、又はタングステンで作られた微細粒子と結合させる。
【0083】
本発明の核酸構築物を微細粒子で覆う場合、これらの微細粒子は遺伝子銃の技術を用いて内皮又は上皮内注入されうる(WO94/24263)。
【0084】
医薬品として使用される量は、特に核酸構築物自身、この核酸が投与される個体、投与方法及び組成物の形態、並びに病理学的症状に依存する。一般的に、約0.1μg〜約1mg、好ましくは約1μg〜約800μg、さらに好ましくは約25μg〜約250μgの範囲をとる治療的又は予防的有効量が成人に投与されうる。
【0085】
本発明の核酸構築物は、あらゆる慣例の投与経路を介して、例えば特に非経口的に投与される。投与経路の選択は、特に選ばれた処方に依存する。腎組織、特に糸球体を目標とした投与は、特に有利である。
【0086】
本発明のポリペプチド又はこのポリペプチドをコードする核酸は、特に腎臓病の治療、特にNPHS2遺伝子の変更に関連したステロイド抵抗性ネフローゼ症候群又は一般的な疾患(AIDS、糖尿病等)に関連した発症の治療のための医薬品として有用である。
【0087】
最後に、したがって本発明の対象は、有効量の先に定義したポドシン・ポリペプチド又はこのポリペプチドをコードする核酸をこのような治療を必要とする患者に投与する治療上の処置の方法である。標的とされる患者は一般的にヒトであるが、しかし本願を、適切な場合には、あらゆる動物まで広げることもできる。
【0088】
以下の実施例及び添付の図面は、その範囲を制限することなしに本発明を説明する。
【実施例】
【0089】
実施例1−NPHS2遺伝子の同定
NPHS2遺伝子の同定のために本発明の発明者らにより使用された方法は、遺伝子が配置されている最小の遺伝子の間隔を明らかにし、次にその領域を含むPACコンティグの構築によりその領域の物理的地図を確立し、既知の遺伝子及び領域のESTsの一覧を作成し、そして(RACE−PCR及び胎児腎臓cDNAライブラリーのスクリーニングにより)ESTsを特徴づける。
【0090】
1.候補領域及びNPHS2遺伝子の配置の物理的マッピング:
マイクロサテライト・マーカー(Dib et al., 1996)及び新しい患者の家系を利用する連鎖分析は、NPHS2遺伝子座がD1S480とD1S2883の間に位置決めできた。これら2のマーカー間に前記領域を含むYACコンティグ(20クローン)を構築した。約3Mbと推定されるこの領域を含むためにP1人工染色体(PAC)コンティグをも構築する。次にこのコンティグ内の他のマイクロサテライト・マーカーの同定が可能である。併発事件を示す2のファミリーは、D1S1640と183F10CAの間のこの疾患に関する前記遺伝子座、つまりその領域のサブクローンのシークエンシングにより同定された新しいマイクロサテライト・マーカーの正確な位置の特定を可能にする。これら2つのマーカーの間の35 PACコンティグは約2〜2.5Mbp に及ぶが、しかし14のコスミドにより部分的に占有されている5のギャップを含む。
【0091】
次に本発明の発明者らは、その領域内に潜在的に位置する配列についてデータバンクでの調査、そしてYACs,PACs、及びコスミドの断片、並びにCpG島(CpG island)、既知の遺伝子、(Uni Gene)ESTクラスター、及び独立ESTを潜在的に含むさまざまなPACsのサブクローンの配列決定によりこのコンティグに配置した。
【0092】
2.NPHS2遺伝子の同定
サンガー・センター・データベースを調べることにより、着目の領域のテロメア端の近くに位置するマーカーD1S215を含むPAC 545A16は、EST AA398634と同様に精巣ライブラリー由来であり、そしてストマチン(stomatin)遺伝子に弱い相同性をもつ短かい配列を含むが、しかしおもしろいことに、論理に基づきESTに対して反対側の方向であることが判明した。次に本発明の発明者らはこのESTをコスミド28e17及びPAC 302d13上に配置し、そしてRT−PCRにより腎臓でそれが発現されたことを示した。
【0093】
次にRACE−PCRの多様な試みが、このESTからのcDNAを得るために必要であった。実際、大部分の実験において、スプライスされていないように見えるゲノムDNAsに対応の産物を得た。しかしながら、短かいオープン・リーディング・フレーム及び全てがヒト腎臓ライブラリー由来の6のESTs(Unigene cluster Hs. 192657)との相同体を含む転写産物に対応した1の産物を得たが、しかしそれはゲノム上で場所が特定されなかった。
【0094】
実際、EST AA398634に属する、Uni GeneクラスターHs.254975のESTsは、他の遺伝子又は偽遺伝子に属するようであり、その転写方向はNPHS2と逆であり、そしてそれがNPHS2の3′配列と部分的に重複することがEST AA398634に関するデータバンクにより提供されるデータを説明するようなことが起こっている。前記のこのRACE−PCR産物をさまざまな組織からのRNAsを含むノーザン・ブロットのハイブリダイズのためのプローブとして使用して、約2kbのこの転写産物が腎臓のみで発現されていることを示した。これらの結果は50のさまざまな組織からのRNAs(Clontech)を含むドット・ブロットでのハイブリダイズにより確認された。強いシグナルは成人腎臓及び胎児腎臓のみで得られた。
【0095】
コンティグ上のこの遺伝子の局在性、及び腎臓におけるその実質的に得られた発現は、この遺伝子を優れた候補遺伝子にし、この仮定は、cDNAの5′部分と3′部分の両方に位置するプライマーを用いた患者の末期的な腎臓から抽出されたRNAを用いたRT−PCRによる増幅産物の実質的な欠如によって補足される。NPHS2遺伝子の完全なcDNAをノーザン・ブロットのハイブリダイズに用いたプローブ(配列番号11)によるヒト胎児腎臓のスクリーニングによりクローン化した。
【0096】
イントロン−エクソン・ジャンクション及び第1エクソンの上流のゲノム配列をPAC 302d13及びコスミド28e17の直接シークエンシングにより得た。
【0097】
実施例2−患者の家族における変異の同定
前記遺伝子のイントロン−エクソン構造を特徴づけした後、本発明の発明者らは、次に前記のとおりの家族性ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(早期発症、末期腎不全への急速な進行、移植後の非再発、そして腎臓生検における巣状分節状糸球体硬化症)を示す、そしてハプロタイプの研究がNPHS2遺伝子座との連鎖と一致する家族に属する16人の関連のない患者における変異をSSCP(1本鎖DNA高次構造多型)により捜した。
【0098】
このSSCP分析のために、そのエクソンをフランキング・イントロン・プライマーを用いたPCRにより増幅した。PCR条件及びプライマーをプログラムOligo 5.0(NBI)を用いて選び、そしてそれは以下のとおりである:
第1エクソン、5′−GCA GCG ACT CCA CAG GGA CT−3′(配列番号12)、及び5′−TCA GTG GGT CTC GTG GGG AT−3′(配列番号13);
第2エクソン、5′−AGG CAG TGA ATA CAG TGA AG−3′(配列番号14)、及び5′−GGC CTC AGG AAA TTA CCT A−3′(配列番号15);
第3エクソン、5′−TTC TGG GAG TGA TTT GAA AG−3′(配列番号16)、及び5′−TGA AGA AAT TGG CAA GTC AG−3′(配列番号17);
第4エクソン、5′−AAG GAG AAA CCC AAA CAG C−3′(配列番号18)、及び5′−CGG TAG GTA GAC CAT GGA AA−3′(配列番号19);
第5エクソン、5′−CAT AGG AAA GGA GCC CAA GA−3′(配列番号20)、及び5′−TTT CAG CAT ATT GGC CAT TA−3′(配列番号21);
第6エクソン、5′−CTC CCA CTG ACA TCT GA−3′(配列番号22)、及び5′−AAT TTA AAA TGA AAC CAG AA−3′(配列番号23);
第7エクソン、5′−CTA AAT CAT GGC TGC ACA CC−3′(配列番号24)、及び5′−CTT CCT AAA GGG CAG TCT GG−3′(配列番号25);
第8エクソン、5′−GGT GAA GCC TTC AGG GAA TG−3′(配列番号26)、及び5′−TTC TAT GGC AGG CCC CTT TA−3′(配列番号27);
そして50℃(第6エクソン)、55℃(第2、第3、第4、及び第5エクソン)、並びに60℃(第1、第7、及び第8エクソン)のハイブリダイゼーション温度である。
【0099】
第1エクソンの高いGC含有率のために、製造業者の指示に従いQiagen Taqポリメラーゼ及びQ溶液を用いてPCRを実施した。さらにそのサイズのために、第1エクソンのPCR産物はゲル電気泳動前にSmaI酵素により2の断片に消化する必要があった。泳動をGeneGel Excel 12.5/24キット(Pharmacia)を用いてGenephor Electrophoresis Unit により600V、25mA、15Wで2時間実施した。染色をPlasOne Silver Staining キット(Pharmacia)を用いて「GeneStain Automated Gel Stainer」により実施した。
【0100】
結果
10の異なる変異を得た。いくつかはフレームシフト又は中途での停止コドンの出現という結果を招き、そして同定された遺伝子が実際はNPHS2遺伝子である場合に限りその結果として不活化変異となる。他のものはこの疾患をもつ家族を分離し、そして80の対照の染色体内には発見されない、タンパク質の高度に保存された領域に起こるミスセンス変異であり、このことはこの変異が罹患した子供の表現型を実際に担うことを強く示唆する。
【0101】
1種類のミスセンス変異(R138Q)が、互いに関連はないが、しかしヨーロッパの同じ地域から来た6人の個人から発見され、この変異の創始者効果の可能性を示唆した。
【0102】
実施例3−in situハイブリダイゼーションによる腎臓におけるNPHS2遺伝子の発現の研究
方法
パラフィンをパラフィン包埋6μm腎臓切片から除き、その切片を再水和し、そして次にハイブリダイゼーション・シグナルを増加させるためにクエン酸ナトリウム溶液(0.01M、pH6)中、マイクロ波処理した。NPHS2リボプローブをPGEM−Teasyベクター中にサブクローニングされた1065塩基対のPCR産物(NPHS2 cDNAの728〜1792位、配列番号1)から合成した。アンチセンス・プローブをSalIによる消化の後T7ポリメラーゼを用いて合成し、そしてセンス・プローブをSacIIによる消化の後Sp6ポリメラーゼを用いて合成した。そのリボプローブを製造業者の指示に従いジゴキシゲニン−11−UTP(Boehringer Mannheim)か、又はSibony et al., 1995 に記載のとおり〔35S〕UTPのいずれかにより標識した。in situハイブリダイゼーション実験をそれぞれジゴキシゲニン−11−UTPと〔35S〕UTPプローブについてKalatzis et al. (1998)とHeidet et al. (1997)に記載のとおり実施した。
【0103】
結果
これらのin situハイブリダイゼーション実験は、NPHS2遺伝子が成熟腎臓内の有足細胞によってのみ発現されることを示すことを可能にした。胎児腎臓において、ネフロンの発生初期でシグナルは得られなかった。一方で、将来の有足細胞に対応する領域内のS字体(S shaped body)下部で強いシグナルを検出した。この発現は未成熟糸球体及び成熟糸球体内の副皮質に固執する。これらの結果は、発生の間の初期及び成熟糸球体の両方における有足細胞によるNPHS2遺伝子の限られた発現が病理学的観察と完全に一致するので、NPHS2遺伝子によりコードされるタンパク質を「ポドシン」と称することが正しいと証明される。
【0104】
【化1】

【0105】
【化2】

【0106】
【化3】

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】添付した図面はNPHS2領域のマップである。2.5Mbの候補領域はマーカーD1S1640及び183f10−CAにより区切られる。STS配列(太字及び斜体で)、固有のEST配列、並びにUni Gene ESTクラスター(普通文字で)の多型マーカーのマップ上の位置を示す。YACs,PACs、及びコスミドを直線で表す。遺伝子を斜線を入れた四角で示す。NGAPはおそらく選択的プロモーターのために5′位で選択的にスプライスされるエクソンの存在を象徴する水平の線により分けられた2つの四角によって表される。リボソーム・タンパク質S14の偽遺伝子であるRPS14PはNGAPイントロンの内部に位置する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その配列が、配列番号3〜配列番号10、あるいは以下:
(i)配列番号3〜配列番号10の配列の少なくとも70%と一致する配列;又は
(ii)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、配列番号3〜配列番号10の配列若しくはそれらに相補的な配列とハイブリダイズする配列、
として定義される相同配列から選ばれるところの単離核酸。
【請求項2】
配列番号2若しくは配列番号29のアミノ酸配列、あるいは以下:
i)配列番号2又は配列番号29の配列の少なくとも70%と一致する配列;又は
ii)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、配列番号1又は28の配列若しくはそれらに相補的な配列とハイブリダイズする核酸配列によりコードされる配列、
として定義される相同配列を含みポドシン(podocin)と称される単離ポリペプチド。
【請求項3】
特に少なくとも1の481,173/174,488,924/925,128,343,482,548,607、及び940、あるいは1033,529,622,774−782,154,422,442,571,572,583,783,794、及び848のヌクレオチドの位置での変異、挿入又は欠失により配列番号1の配列と異なる配列を含む単離核酸。
【請求項4】
配列番号1又は28の配列、あるいは以下:
i)配列番号1又は28の配列の少なくとも70%と一致する配列;又は
ii)請求項2に記載のポドシンと称されるポリペプチドをコードする配列、
として定義される相同配列を含む単離核酸。
【請求項5】
請求項1,3又は4のいずれか1項に記載の核酸を含むクローニング及び/又は発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターによりトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項7】
配列番号11〜配列番号27の配列から選ばれる配列から成る核酸。
【請求項8】
請求項4に記載の核酸を含むベクターを請求項2に記載のポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養される宿主細胞に転移させる組換えポドシン・ポリペプチドの製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載のポリペプチドに対する抗体。
【請求項10】
生物サンプル中の請求項4に記載のポリペプチドを検出又は精製するための少なくとも1の請求項9に記載の抗体の使用。
【請求項11】
請求項1に記載の核酸配列を含むと定義されるNPHS2遺伝子、又は請求項4に記載の配列に相補的な核酸配列を含むと定義されるその転写産物の異常を検出するための少なくとも1の、請求項1,3,4又は7のいずれか1項に記載の核酸の使用。
【請求項12】
以下の:
a1)DNAを含む生物サンプルを請求項1に記載の核酸配列を含むとして定義される、NPHS2遺伝子の全て又は一部を増幅するための特定のオリゴヌクレオチドと一緒にセットし;
b1)上記DNAを増幅し;
c1)増幅産物を検出し;
d1)得られた増幅産物を、対照サンプルを用いて得られたものと比較し、そしてこのようにステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を示唆する上記NPHS2遺伝子内の起こりうる異常を検出する;
かあるいは代わりに、
a2)RNAを含む生物サンプルを請求項4に記載の相補的な核酸配列を含むとして定義される、NPHS2遺伝子の転写産物の全て又は一部を増幅するための特定のオリゴヌクレオチドと一緒にセットし;
b2)上記DNAを増幅し;
c2)増幅産物を検出し;
d2)得られた増幅産物を、対照サンプルを用いて得られたものと比較し、そしてこのようにしてステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を示唆する上記NPHS2遺伝子内の起こりうる異常を検出する;
から成るステップを含むステロイド抵抗性ネフローゼ症候群のインビトロにおける診断方法。
【請求項13】
請求項2に記載のポリペプチド又は上記ポリペプチドをコードする核酸を医薬として許容される媒質と組合せて含む医薬組成物。
【請求項14】
腎臓病、特にステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の治療を意図した医薬品を製造するための、請求項2に記載のポリペプチド又は上記ポリペプチドをコードする核酸の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2008−167759(P2008−167759A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23877(P2008−23877)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2001−553819(P2001−553819)の分割
【原出願日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【Fターム(参考)】