説明

ステロール二量体

【課題】本発明は、Ubc13−Uev1A複合体の形成を抑制する物質の提供。
【解決手段】一般式I:[式中、22位及び23位における二重結合を形成する置換基の配置はシス又はトランスであり;25’位及び26’位、並びに25’位及び27’位における炭素−炭素結合のいずれか一方は単結合、他方は二重結合であり;R及びRは、それぞれ独立して、H等であり;R、R及びR〜Rは、それぞれ独立して、OH等である]で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステロール二量体、及び前記ステロール二量体を含む医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキチン−プロテアソームシステムでは、生体内で不要になったタンパク質をユビキチンで標識し、プロテアソームによって分解する。具体的には、ATP依存的ユビキチン活性化酵素(E1)がユビキチンを活性化し、活性化されたユビキチンをユビキチン結合酵素(E2)に移す。E2はユビキチンリガーゼ(E3)を介してタンパク質をユビキチン化し、プロテアソームがユビキチン化されたタンパク質を分解する。ここで、Ubc13及びUev1Aは、ヘテロダイマー(Ubc13−Uev1A複合体)を形成してE2活性を示す。
【0003】
癌抑制遺伝子産物であるp53は四量体を形成し、細胞修復又はアポトーシスを誘導する。これにより細胞の癌化が抑えられる。しかし、p53がUbc13−Uev1A複合体と結合すると、p53はユビキチン化され、分解される。これにより、p53の癌抑制作用が失われ、発癌に至ることが報告されている(非特許文献1及び2)。
【0004】
なお、p53の働きを強化して癌を治療する技術として以下のものが知られている。
(1)遺伝子治療
ヒト癌の約50%では、p53遺伝子の変異が見つかっている。そのため、癌細胞に野生型p53遺伝子を導入する遺伝子治療の研究が行われている。しかし、全ての癌細胞に遺伝子を組み込むことは不可能である。また、転移した部位には遺伝子を導入することができないため、臨床応用には至っていない。
【0005】
(2)低分子化合物による変異型p53タンパク質の活性化
ヒト癌の約50%においてp53遺伝子の変異が見出されていることを考慮すると、変異型p53タンパク質を正常に機能させることが好ましい。しかし、この研究は未だ基礎段階であり、臨床応用可能な段階には至っていない。
【0006】
(3)一般的な化学療法剤
これまでに多くの化学療法剤が開発されている。しかし、これらの薬剤は重篤な副作用を引き起こすものが多いため、副作用の少ない薬剤の開発が期待されている。
【0007】
上記の通り、癌の治療方法はこれまでに複数知られている。しかし、未だに多くの技術的課題が残されており、新たな治療方法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mol. Cell. Biol. 26, 8901, 2006
【非特許文献2】Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106, 12676, 2009
【非特許文献3】日本薬学会 第131年会(静岡) 要旨 29H−pm08
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
癌化を抑制するp53は、Ubc13−Uev1A複合体と結合することによりユビキチン化され、その後分解される。そのため、Ubc13−Uev1A複合体の形成を抑制することにより、p53の分解を抑え、癌を抑制することができると考えられる。
【0010】
従って、本発明は、Ubc13−Uev1A複合体の形成を抑制する物質を提供することを目的とする。生体内成分であるp53の分解を阻害してその作用を増強させるというメカニズムであれば、副作用を低く抑えることができると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、海綿Lissodendoryx fibrosaにUbc13−Uev1A複合体形成を抑制する物質が含まれていることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)一般式I:
【化1】

[式中、
22位及び23位における二重結合を形成する2つの炭素原子に置換する置換基の配置はシス又はトランスであり;
25’位及び26’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合並びに25’位及び27’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合のいずれか一方は単結合であり、他方は二重結合であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、又はOSOHであり;
、R、及びR〜Rは、それぞれ独立して、OH、又はOSOHである]
で表される化合物(但し、以下の式II:
【化2】

で表される化合物は除く)
又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物。
(2)RがH、又はOSOHであり;
がOHであり;
及びR〜RがOSOHであり;
がH、又はOHである、
(1)に記載の化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物。
(3)以下の式III:
【化3】

で表される、(1)又は(2)に記載の化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物。
(4)一般式I:
【化4】

[式中、
22位及び23位における二重結合を形成する2つの炭素原子に置換する置換基の配置はシス又はトランスであり;
25’位及び26’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合並びに25’位及び27’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合のいずれか一方は単結合であり、他方は二重結合であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、又はOSOHであり;
、R、及びR〜Rは、それぞれ独立して、OH、又はOSOHである]
で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む医薬。
(5)RがH、又はOSOHであり;
がOHであり;
及びR〜RがOSOHであり;
がH、又はOHである、
(4)に記載の医薬。
(6)以下の式III:
【化5】

で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む、(4)又は(5)に記載の医薬。
(7)以下の式II:
【化6】

で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む、(4)又は(5)に記載の医薬。
(8)Ubc13とUev1Aとの複合体の形成を阻害するための、(4)〜(7)のいずれかに記載の医薬。
(9)癌を治療するための、(8)に記載の医薬。
(10)海綿Lissodendoryx fibrosaの抽出物又はその精製物を有効成分として含む、Ubc13とUev1Aとの複合体の形成を阻害するための医薬。
(11)前記抽出物が、海綿Lissodendoryx fibrosaのエタノール抽出物を水に溶解し、酢酸エチル及びn−ブタノールで洗浄することにより得られるものである、(10)に記載の医薬。
(12)前記抽出物が、海綿Lissodendoryx fibrosaのエタノール抽出物を水に溶解し、酢酸エチルで洗浄し、n−ブタノールで抽出することにより得られるものである、(10)に記載の医薬。
(13)癌を治療するための、(10)〜(12)のいずれかに記載の医薬。
【0013】
なお、本発明者らは、海綿Lissodendoryx fibrosaから単離した1つの化合物について既に開示している(日本薬学会 第131年会(静岡) 要旨 29H−pm08)。しかし、開示している内容はその化合物の構造だけであり、実際にどのような活性を有しているかについては一切開示していない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、Ubc13−Uev1A複合体の形成を抑制する物質を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.化合物
本発明は、一般式I:
【化7】

[式中、
22位及び23位における二重結合を形成する2つの炭素原子に置換する置換基の配置はシス又はトランスであり;
25’位及び26’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合並びに25’位及び27’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合のいずれか一方は単結合であり、他方は二重結合であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、又はOSOHであり;
、R、及びR〜Rは、それぞれ独立して、OH、又はOSOHである]
で表される化合物(但し、以下の式II:
【化8】

で表される化合物は除く)
又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物に関する。
【0016】
本発明の化合物が1個又は複数のキラル中心を有する場合には、個々のエナンチオマー及びジアステレオマー並びにラセミ体が本発明に包含される。
【0017】
本発明の一実施形態として、一般式IにおいてRがH、又はOSOHであり、RがOHであり、R及びR〜RがOSOHであり、RがH、又はOHである化合物(但し、式IIで表される化合物を除く)又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を挙げることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態として、一般式IにおいてR、R、及びR〜RがOSOHであり、RがOHであり、RがHである化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を挙げることができる。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態として、以下の式III:
【化9】

で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を挙げることができる。
【0020】
本発明は、一般式I:
【化10】

[式中、
22位及び23位における二重結合を形成する2つの炭素原子に置換する置換基の配置はシス又はトランスであり;
25’位及び26’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合並びに25’位及び27’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合のいずれか一方は単結合であり、他方は二重結合であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、又はOSOHであり;
、R、及びR〜Rは、それぞれ独立して、OH、又はOSOHである]
で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む医薬にも関する。
【0021】
本発明の一実施形態として、一般式IにおいてRがH、又はOSOHであり、RがOHであり、R及びR〜RがOSOHであり、RがH、又はOHである化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む医薬を挙げることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態として、以下の式II:
【化11】

で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む医薬を挙げることができる。
【0023】
本発明の別の実施形態として、一般式IにおいてR、R、及びR〜RがOSOHであり、RがOHであり、RがHである化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む医薬を挙げることができる。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態として、以下の式III:
【化12】

で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む医薬を挙げることができる。
【0025】
一般式Iの化合物の製薬上許容される塩としては、前記化合物の活性に悪影響を与えず、且つ有害な作用を引き起こさない限り特に限定されない。例えば、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)などを挙げることができる。特に限定するものではないが、ナトリウム塩であることが好ましい。
【0026】
一般式Iの化合物の製薬上許容される溶媒和物としては、前記化合物の活性に悪影響を与えず、且つ有害な作用を引き起こさない限り特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン、酢酸エチルなどの有機溶媒が結合した溶媒和物、又は水が結合した水和物などを挙げることができる。
【0027】
2.抽出物
本発明は、海綿Lissodendoryx fibrosaの抽出物又はその精製物を有効成分として含む、Ubc13とUev1Aとの複合体の形成を阻害するための医薬にも関する。
【0028】
抽出物としては、例えば、海綿Lissodendoryx fibrosaをエタノールで抽出し、濃縮した後、水に溶解し、酢酸エチルで洗浄し、次にn−ブタノールで抽出することにより得られるn−ブタノール画分を使用することができる。
【0029】
別の抽出物としては、例えば、海綿Lissodendoryx fibrosaをエタノールで抽出し、濃縮した後、水に溶解し、酢酸エチル及びn−ブタノールで洗浄して得られる水層画分を使用することができる。酢酸エチル及びn−ブタノールによる洗浄は任意の順序で連続して実施してもよいし、混合溶媒として同時に実施してもよい。
【0030】
抽出物を得るための上記方法は一例に過ぎず、異なる方法によって実施することもできる。例えば、海綿Lissodendoryx fibrosaの抽出をエタノールに代えてメタノールで実施することができる。当業者であれば、類似の性質を有する溶媒を使用して上記の抽出物を得ることができる。
【0031】
従って、本発明において、ある特定の方法で得られる抽出物とは、その抽出物自体を意味するのであって、その方法によって限定されるわけではない。つまり、抽出方法が異なっていても結果的に本発明の化合物を含有する抽出物が得られるのであれば、その抽出物は本発明に包含される。
【0032】
海綿Lissodendoryx fibrosaの抽出物は、カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、透析などにより精製することができる。これにより、抽出物の活性を更に高めることができる。
【0033】
3.医薬用途
上記の化合物及び抽出物は、Ubc13−Uev1A複合体の形成を抑制することができる。そのため、本発明は、Ubc13−Uev1A複合体の形成を抑制するための医薬にも関する。
【0034】
また、Ubc13−Uev1A複合体の形成を抑制することによって、結果的にp53の分解が抑えられ、癌を抑制することができる。そのため、本発明は、癌を治療するための医薬にも関する。
【0035】
本発明において「治療」とは、ある病気に既に罹患している対象において当該病気を抑制することに加えて、当該病気に罹患していない対象において当該病気の発症を抑制すること(すなわち、予防すること)を包含する。
【0036】
癌の種類は特に限定されない。例えば、膵臓癌、肺癌、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、歯肉癌、食道癌、胃癌、胆管癌、乳癌、腎癌、膀胱癌、子宮癌、前立腺癌、悪性リンパ腫などを挙げることができる。
【0037】
医薬の剤形としては、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤、懸濁剤、乳剤、エアゾール剤などを挙げることができる。
【0038】
医薬は製薬上許容される添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、溶剤、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、溶解補助剤、分散剤、抗酸化剤、保存剤などを挙げることができる。
【0039】
賦形剤としては、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類などを挙げることができる。
【0040】
崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントなどを挙げることができる。
【0041】
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールなどを挙げることができる。
【0042】
滑沢剤としては、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
【0043】
界面活性剤としては、例えば、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールなどを挙げることができる。
【0044】
溶剤としては、例えば、水性溶剤(注射用水、生理食塩水、リンゲル液など)、非水性溶剤(トウモロコシ油、ラッカセイ油、ゴマ油などの植物油など)を挙げることができる。
【0045】
pH調節剤としては、例えば、有機酸(クエン酸、酒石酸、酢酸、乳酸など)、無機酸(塩酸、リン酸、リン酸水素ナトリウムなど)、無機塩基(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなど)などを挙げることができる。
【0046】
緩衝剤としては、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などを挙げることができる。
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、メグルミン、グリセリン、プロピレングリコールなどを挙げることができる。
【0047】
溶解補助剤としては、例えば、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
【0048】
分散剤としては、例えば、単糖類(マンニトール、ソルビトールなど)などを挙げることができる。
【0049】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸などを挙げることができる。
【0050】
保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、クレゾール、フェノール、チメロサール、ベンジルアルコールなどを挙げることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0052】
1.活性化合物の単離・構造決定
インドネシアのスラウェシ島で採取された海綿Lissodendoryx fibrosaをエタノールで抽出し、濃縮した。濃縮物を水に溶解し、酢酸エチルで洗浄した後、n−ブタノールと分配した。
【0053】
n−ブタノール層(2.0g)をODSカラムクロマトグラフィー、Sephadex LH−20を用いたゲルろ過クロマトグラフィー、及びODS HPLCを用いて精製し、式IIで表される化合物A(7.2mg)を得た。
【0054】
【化13】

【0055】
【表1】

また、水層(5.1g)を脱塩し、次にODSカラムクロマトグラフィー、ODS HPLC、及びPhenyl−Hexyl HPLCを用いて精製し、式IIIで表される化合物B(1.4mg)を得た。
【0056】
【化14】

【0057】
【表2】

【0058】
2.Ubc13−Uev1A複合体形成阻害活性の評価
ヒトUbc13及びヒトUev1Aを用いたELISA法によって阻害活性の評価を行った。Ubc13、及びFLAGを結合させたUev1A(Uev1A−FLAG)は、大腸菌で発現させ、精製したものを用いた。
【0059】
Ubc13をELISAプレート上に結合させた。次に、あらかじめサンプル(化合物A又はB)とプレインキュベートしたUev1A−FLAGを加えた。Ubc13−Uev1A複合体形成を検出する抗体には、一次抗体として抗FLAG抗体、二次抗体としてHRPの結合した抗マウスIgG抗体を用いた。
【0060】
その結果、化合物AのIC50は0.13μM(0.16μg/ml)であり、化合物BのIC50は0.09μM(0.12μg/ml)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

[式中、
22位及び23位における二重結合を形成する2つの炭素原子に置換する置換基の配置はシス又はトランスであり;
25’位及び26’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合並びに25’位及び27’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合のいずれか一方は単結合であり、他方は二重結合であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、又はOSOHであり;
、R、及びR〜Rは、それぞれ独立して、OH、又はOSOHである]
で表される化合物(但し、以下の式II:
【化2】

で表される化合物は除く)
又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
がH、又はOSOHであり;
がOHであり;
及びR〜RがOSOHであり;
がH、又はOHである、
請求項1に記載の化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項3】
以下の式III:
【化3】

で表される、請求項1又は2に記載の化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項4】
一般式I:
【化4】

[式中、
22位及び23位における二重結合を形成する2つの炭素原子に置換する置換基の配置はシス又はトランスであり;
25’位及び26’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合並びに25’位及び27’位における2つの炭素原子が形成する炭素−炭素結合のいずれか一方は単結合であり、他方は二重結合であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、又はOSOHであり;
、R、及びR〜Rは、それぞれ独立して、OH、又はOSOHである]
で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む医薬。
【請求項5】
がH、又はOSOHであり;
がOHであり;
及びR〜RがOSOHであり;
がH、又はOHである、
請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
以下の式III:
【化5】

で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む、請求項4又は5に記載の医薬。
【請求項7】
以下の式II:
【化6】

で表される化合物又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含む、請求項4又は5に記載の医薬。
【請求項8】
Ubc13とUev1Aとの複合体の形成を阻害するための、請求項4〜7のいずれかに記載の医薬。
【請求項9】
癌を治療するための、請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
海綿Lissodendoryx fibrosaの抽出物又はその精製物を有効成分として含む、Ubc13とUev1Aとの複合体の形成を阻害するための医薬。
【請求項11】
前記抽出物が、海綿Lissodendoryx fibrosaのエタノール抽出物を水に溶解し、酢酸エチル及びn−ブタノールで洗浄することにより得られるものである、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
前記抽出物が、海綿Lissodendoryx fibrosaのエタノール抽出物を水に溶解し、酢酸エチルで洗浄し、n−ブタノールで抽出することにより得られるものである、請求項10に記載の医薬。
【請求項13】
癌を治療するための、請求項10〜12のいずれかに記載の医薬。


【公開番号】特開2013−49654(P2013−49654A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189831(P2011−189831)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(511212480)ユニヴェルシタス サム ラトゥランギ (2)
【氏名又は名称原語表記】Universitas Sam Ratulangi
【住所又は居所原語表記】Republic of Indonesia Bahu Manado 95115
【Fターム(参考)】