説明

ステントから、抗再狭窄剤を供給する方法

ステント設置という医療的介入を伴う、再狭窄レベル低減方法であって、該ステントから、制御され、延長され、実質的に直線的な薬剤放出プロファイルでの処置を必要としている血管組織への、ある用量の、パクリタキセルのような抗再狭窄剤の連続投与を含んでいる方法。実質的に直線的な延長された放出である本方法は、与えられた用量の投薬の治療有効性を増加させる。1例では、再狭窄抑制方法であって、該ステント移植時刻から、実質的に全てのパクリタキセルが該ステントから放出される時刻までの全投与期間を通して、該ステント上のパクリタキセルの全用量の1%を、1日につき最小限放出する速度で、該ステントから動脈へとパクリタキセルを供給することを包含する方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
大部分の冠状動脈関連死は、心組織への冠血流を制限もしくは梗塞させるアテローム(粥状)硬化病巣により引き起こされる。冠状動脈疾患について述べると、医師らはしばしば、造影による経皮的な冠血管形成(PTCA)もしくは冠状動脈バイパス移植(CABG)に頼る。PTCAは、小バルーンカテーテルが、狭くなった冠状動脈を進行され、次いで拡大されて、該動脈を再開通させる施術である。血管形成の主要な利点は、該施術が上手く行っている患者は、冠状動脈バイパス移植という、より侵襲的な外科施術を受けなくて済むということである。PTCAに伴う主要な難点は、PTCA直後(急性再梗塞)および長期(再狭窄)両方における、当該血管の血管形成後閉塞の問題である。
【背景技術】
【0002】
冠ステントは典型的に、PTCAと組み合わせて使用され、当該動脈の再梗塞を抑える。所望の場所に位置されるまで、ステントは経皮的に導入され、造影により運ばれる。これらの装置は次いで、該装置内側に位置される心軸もしくはバルーンの拡大によるように機械的に拡大されるか、または、蓄えられたエネルギーを体内での作動時に放出することによりそれら自体を拡大させる。一旦当該血管内で拡大されると。ステントと呼ばれるこれらの装置は、体内組織内に包まれるようになり、永久的な移植片を残す。
【0003】
再狭窄は、血管形成およびステント移植のような、血管への引き続いての介入を生じさせ得る主要な合併症である。簡潔に定義すると、再狭窄とは、細胞外マトリックスの付着、新生内膜の過剰形成、および血管平滑筋細胞増殖により、当該血管直径を減少させる癒傷プロセスであり、究極的には、当該血管の再狭窄もしくは再梗塞という結果にさえ至ることがある。改良された外科的施術、装置、および医薬品の導入にもかかわらず、全体的な再狭窄の割合は、血管形成術後6〜12ヶ月内ではいまだ25%〜50%の範囲と報告されている。この病状に対処するには頻繁に、更なる再血管開通施術が必要とされ、これによって、当該患者への外傷およびリスクを増大させてしまう。
【0004】
再狭窄の精確なメカニズムがいまだ追究されている一方、ある種の物質が、ヒトにおいて再狭窄を抑制することが実証されてきている。ステントから供給される場合に再狭窄を抑制することが実証されてきている物質の1例がパクリタキセルであり、これはよく知られた化合物で、癌腫瘍の処置において汎用されるものである。しかしながら、抗再狭窄剤の供給用に現在開発中であるステントの多くは、最適というには劣る放出プロファイルおよび副作用を持っている。1例では、ステント上へと充填された全物質の90%以上が、該ステント表面上の薄いコーティング中に永久的に保持されてしまい、決して組織へと供給されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、治療面での投与の有効性を増加させるよう制御された薬剤放出プロファイルでの抗再狭窄剤の投与によるステント使用を伴う、再狭窄抑制方法に関する。本発明はまた、プログラム化された薬剤放出プロファイルでの該薬剤の制御された放出用に固定されたある用量の抗再狭窄剤を持つステントにも関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1態様によれば、再狭窄抑制方法が提供され、ここで本方法は、動脈への供給用のある用量のパクリタキセルを持つ薬剤供給ステントを与えることを含み、該用量は、実質的に全パクリタキセルが、該動脈中での該ステントの移植時に、該ステントから放出可能であるよう調整される。本方法は更に、患者の動脈内に該ステントを移植すること、ならびに、実質的に全パクリタキセルが該ステントから放出される時まで、該ステント移植時からの全投与期間を通して、1日につき該ステント上の全用量のパクリタキセルの1%という最小放出速度で、該ステントから該動脈へとパクリタキセルを供給することを含んでいる。
【0007】
本発明のもう1つ別の態様によれば、再狭窄抑制方法が提供され、ここで本方法は、動脈への供給用のある用量のパクリタキセルを持つ薬剤供給ステントを設けることを含んでいる。本方法は更に、患者の動脈内に該ステントを移植すること、ならびに、移植後1日から移植後25日までの全投与期間に亘って、実質的に直線的な放出速度で、該ステントから該動脈へとパクリタキセルを供給することを含み、ここで、該期間中供給されるパクリタキセル量は、該ステント上に充填されたこの薬剤の少なくとも25%である。
【0008】
本発明の更なる態様によれば、再狭窄抑制方法が提供され、ここで本方法は、動脈への供給用のある用量のパクリタキセルを持つ薬剤供給ステントを設けることを含んでいる。本方法は更に、患者の動脈内に該ステントを移植すること、ならびに、該ステントから該動脈へとパクリタキセルを供給することを含み、ここで、該ステントにより与えられるパクリタキセルの全量の少なくとも80%が、移植60日以内に該動脈へと供給される。
【0009】
本発明の更なる態様によれば、再狭窄抑制方法が提供され、ここで本方法は、動脈への供給用のある用量の抗再狭窄薬剤を持つ薬剤供給ステントを含み、該用量は、実質的に全ての該薬剤が、該動脈における該ステントの移植時に、該ステントから放出可能であるよう調整されたものである。本方法は更に、患者の動脈内に該ステントを移植すること、ならびに、実質的に全ての該薬剤が該ステントから放出される時まで、該ステントの移植時からの全投与期間を通して、1日につき該ステント上の全用量の該薬剤の1%という最小放出速度で、該ステントから該動脈へと該薬剤を供給することを含み、ここで、該薬剤の放出速度は実質的に、少なくとも2日から25日までを通して、直線的なものである。
【0010】
本発明の更なる態様によれば、患者を処置する方法が提供され、ここで本方法は、動脈への供給用のある用量の治療剤を持つ薬剤供給ステントを設けることを含み、該用量は、実質的に全ての該薬剤が、該動脈における該ステントの移植時に、該ステントから放出可能であるよう調整されたものである。本方法は更に、患者の動脈内に該ステントを移植すること、ならびに、実質的に全ての該薬剤が該ステントから放出される時まで、該ステントの移植時からの全投与期間を通して、1日につき該ステント上の全用量の該薬剤の1%という最小放出速度で、該ステントから該動脈へと該薬剤を供給することを含み、ここで、該薬剤の1日後の放出速度は実質的に、少なくとも2日から25日までを通して、直線的なものである。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、再狭窄を抑制するステントが提供され、ここで本ステントは、冠状動脈中への本ステントの挿入のために未拡大の初期直径を持ち、冠状動脈内での移植のために拡大される直径を持つ、薬剤供給ステントを包含する。本ステントは更に、動脈への供給用のある用量のパクリタキセルを包含し、該用量は、実質的に全てのパクリタキセルが、該動脈中での該ステントの移植時に、該ステントから放出可能であるよう調整される。更に、該用量のパクリタキセルは、実質的に全てのパクリタキセルが該ステントから放出される時まで、該ステントの移植時からの全投与期間を通して、1日につき該ステント上の全用量のパクリタキセルの1%という最小放出速度で放出されるよう調整されたものである。
【0012】
ステント設置という医療的な介入を伴う再狭窄レベル抑制方法は、制御され、延長され、実質的に直線的な薬剤放出プロファイルでの、該ステントから、処置を必要とする血管組織への、ある用量の抗再狭窄剤もしくは薬剤の連続的投与を含んでいる。処置を必要とする該血管組織は、動脈組織、特に冠状動脈組織であることが見込まれる。実質的に直線的で延長された放出方法は、与えられた用量の抗再狭窄剤の投与の治療面での有効性を増大させ、副作用を減少させる。
【0013】
本明細書において詳細に記載される1例では、該治療剤もしくは薬剤が放出前に、該ステント本体中のリザーバー中に含有されるようにされる。該リザーバーに関する例では、該薬剤、ポリマー材料、および任意に該薬剤の放出を律する添加剤から構成される薬剤供給マトリックス中の該ステント中の該リザーバー内に保たれるようにされる。好ましくは、該ポリマー材料は生体再吸収性ポリマーである。
【0014】
本明細書において使用される場合、以下の用語は以下の意味を持つ。
【0015】
用語「薬剤」および「治療剤」は互換的に使用され、生体へと供給されて、通常は有益な所望の効果を生み出す如何なる治療活性物質のことも言う。
【0016】
用語「マトリックス」または「生体相容性マトリックス」は互換的に使用され、媒体または材料のことを言い、これは被験体における移植時に、該マトリックスの拒絶という結果に至るのに充分な障害性応答を惹起しないものである。該マトリックスは、治療剤を含有するかもしくは包んでもよく、および/または、体内への該治療剤の放出を調節するものでもよい。マトリックスはまた、支持性、構造的統合性、または構造的障壁を単に提供するだけでよい媒体でもある。該マトリックスは、ポリマー性、非ポリマー性、疎水性、親水性、親油性、両親媒性、および同様のものであってもよい。該マトリックスは、生体再吸収性または生体非再吸収性であってもよい。
【0017】
用語「生体再吸収性」とは、本明細書において定義されるようなマトリックスのことを言い、これは、生理学的環境との相互作用時に、化学的もしくは物理的プロセスにより、壊され得るものである。該マトリックスは、受食もしくは溶解し得る。生体再吸収性マトリックスは、薬剤供給(ドラッグデリバリー)のような、体内での一時的な機能を与え、次いで、数分〜数年、好ましくは1年未満の期間に亘って、代謝可能もしくは排泄可能である成分へと分解もしくは壊されるが、一方で同期間中、如何なる構造的統合性要件をも維持する。
【0018】
用語「開口部」は、貫通している開口部および陥没両方を包含する。
【0019】
用語「医薬的に許容可能」とは、宿主もしくは患者に対して毒性でなく、治療剤の安定性を維持するのに適切であるという特徴のことを言い、標的細胞もしくは組織への該治療剤の供給を可能にする。
【0020】
用語「ポリマー」とは、2つ以上の繰り返し単位、いわゆる単量体(モノマー)の化学的結合から形成される分子のことを言う。従って、該用語「ポリマー」内には、例えば、ダイマー(2量体)、トリマー(3量体)、およびオリゴマーが包含されてよい。該ポリマーは、合成品、天然起源、または半合成品であってもよい。その好ましい形態では、用語「ポリマー」は、約3,000より大きく、好ましくは約10,000より大きく、約10,000,000未満、好ましくは約1,000,000未満、より好ましくは約200,000未満であるMwを典型的に持つ分子を言う。ポリマーの例は、ポリ乳酸(PLLAもしくはDLPLA)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸+グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸+カプロラクトンのようなポリ−α−ヒドロキシ酸エステル;ポリ(ブロック−エチレンオキシド−ブロック−ラクチド+グリコリド)ポリマー(PEO−ブロック−PLGAおよびPEO−ブロック−PLGA−ブロック−PEO);ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキシド、ポリ(ブロック−エチレンオキシド−ブロック−プロピレンオキシド−ブロック−エチレンオキシド);ポリビニルピロリドン;ポリオルトエステル;ポリヒアルロン酸、ポリ(グルコース)、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、およびβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルのような置換シクロデキストリンのような多糖類および多糖類誘導体;ポリペプチド、および、ポリリジン、ポリグルタミン酸、アルブミンのようなタンパク質;ポリ無水物;ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート、および同様のもののようなポリヒドロキシアルコノエートを包含するが、これらに限定されない。
【0021】
方向を有する供給に関しての用語「まず」とは、血管へと与えられる治療剤全量の約50%より多い量を言う。
【0022】
用語「再狭窄」とは、血管形成術後の動脈の再狭窄を言い、ステント移植後の狭窄をも包含することがある。
【0023】
用語「実質的に直線的な放出プロファイル」とは、当該放出が起こる間の時間に対して、放出され累積した薬剤のプロットにより定義される放出プロファイルを言い、ここで、このような放出プロファイルのプロットの1次最小平方根が、供給第1日の後のデータ収集時点について、0.92より大きな相関係数r(最小平方回帰線の相関係数の2乗)を持つ。実質的に直線的な放出プロファイルは、投与期間に亘って一様な速度での予定された用量の薬剤放出を可能にする点において、臨床的に有意義である。この制御された放出は、特定薬剤に関しての毒性/治療ウィンドウ(領域)内に留まることにつき本質的たり得る。
【0024】
図1は、ステント10の形態の移植可能な医療装置の1例を例示するものである。図2は、図1のステントの1部分の拡大平面図であり、延性ヒンジ20により相互接続される支柱12を包含するステント構造の1例を例示するものである。支柱12は開口部14を包含し、これは、治療剤を含有する非変形開口部であり得る。非変形開口部を持つステント構造の1例が、米国特許第6,562,065号明細書に示され、その全体が本明細書において援用される。
【0025】
本発明の移植可能な医療装置は、その移植可能な本体へと固定されたマトリックスから、少なくとも1つの治療剤を放出するよう形状付けられる。該ポリマーマトリックス中の該治療剤の分布が直接、該マトリックスからの該治療剤の溶出速度を制御するよう、該マトリックスが形成される。
【0026】
1実施形態において、該マトリックスはポリマー材料であり、これはバインダーもしくはキャリアーとして作用し、該ステント中もしくは上に該治療剤を保ち、および/または、該ステントからの該治療剤の放出を調節する。該ポリマー材料は、生体再吸収性もしくは生体非再吸収性材料たり得る。
【0027】
該治療剤を含有するマトリックスは、種々の形状の該ステント中もしくは該ステント表面上に配置され得、これは、該治療剤のリザーバーとして、開口部、穴、もしくは凹表面のような、該ステントにより画定されるか、または、該ステント構造の表面全体もしくは1部分中もしくは上に配置される内部容積を包含する。該治療剤マトリックスが、該ステントの支柱構造中の開口部内に配置されてリザーバーを形成する場合、該開口部は、該治療剤を含有するマトリックスにより、部分的もしくは完全に満たされてよい。
【0028】
図3は、ステント10の1支柱および血管100の横断面であり、血管壁に隣接して配置された開口部14の1例を例示し、血管壁側表面26が該血管壁にはり付き、血管側表面24が該血管壁側表面に相対する。図3の開口部14は、該マトリックス中「○」により例示される治療剤を有するマトリックス40を含有する。ステント開口部14の血管側24は、障壁層30と共に与えられる。障壁層30は、該治療剤を含有するマトリックス40よりもゆっくり受食され、このため該治療剤が、該ステントの血管壁側26へとまず供給されるようにされる。マトリックス40および該治療剤は、プログラム化可能な様式で配置され、望ましい放出速度および投与期間を達成し、以下に更に詳細に記載される。図3の例において見られるように、治療剤(○)の濃度は、ステント10の血管側24において最高であり、該ステントの血管壁側26において最低である。該薬剤が該マトリックス内に精密に配置され得るこの形状は、その放出速度および投与期間が特定の適用へと選択されプログラム化されるようにするものである。該薬剤が該開口部中の該マトリックス内に精密に配置され得る本方法は段階的沈着プロセスであり、2004年2月11日出願の米国特許出願第10,777,283号に更に記載され、本明細書において援用される。
【0029】
図4は、マトリックスおよび治療剤を含有するステント10中の開口部14のもう1つ別の例の横断面である。図4の開口部14は、該マトリックス中「○」により例示される治療剤を有するマトリックスを含有する。ステント開口部14の1/4〜3/4血管寄りに位置する部分のマトリックス50が抗再狭窄剤を有さないマトリックスを包含する一方、該ステント開口部の1/4〜3/4血管壁寄りに位置する部分のマトリックス60が抗再狭窄剤を有するマトリックスを包含する。好ましくは、抗再狭窄剤を有するマトリックス60が、該ステント開口部の血管壁から約1/2において位置される。該ステントの血管壁側26により近く位置される抗再狭窄剤を有する配置は、前記したような障壁層があってもなくても、該抗再狭窄剤のまず血管壁側への方向付けられた供給を達成させる。マトリックスの部分50と、マトリックスおよび抗再狭窄剤の部分60とは、プログラム化可能な様式で配置され、望ましい放出速度および投与期間を達成し、以下に更に詳細に記載される。図4から分かるように、該治療剤(○)の濃度は、ステント10中央において最高であり、該ステントの血管壁側26においてより低く、最小の開始初期放出をもって、実質的に直線的な放出速度を達成する。
【0030】
該マトリックスおよび治療剤の数多くの他の有用な配置が形成され得、本明細書において記載される実質的に直線的な放出、延長された放出、および実質的に完全な放出を達成する。該マトリックスの各領域は、1領域からその次の領域へと同一もしくは異なる割合で、1種以上の治療剤を包含してよい。該マトリックスは、固体、有孔性、または他の薬剤もしくは賦形剤により満たされてもよい。該治療剤は、該マトリックスの異なる領域において、均一に配置されるかもしくは不均一に配置されてよい。
【0031】
図5は、延長された直線的薬剤放出プロファイルの3つの例を例示し、これらは、第1日における僅かな薬剤の初期放出、次いで、該ステント上に充填された全薬剤が放出されるまで、実質的に直線的な延長された放出により、特徴付けられる。好ましくは、投与第1日における初期放出は、充填された全薬剤の25%未満とされる。これらの例では、放出される薬剤はパクリタキセルであり、これは、該ステント血管壁側への方向付けられた供給のために、PLGAマトリックス中に充填される。該薬剤の放出速度は、該マトリックスの異なる領域中に、異なる濃度の薬剤を与えることにより、プログラム化される。
【0032】
パクリタキセルのような、ある用量の抗再狭窄剤を投与する方法は、第1日に、該ステント中へと充填された治療剤の合計量の2〜25%を供給し、次いで、20〜45日で、充填された該薬剤の合計95%を、実質的に直線的な方式で供給することを包含し得る。第1日の放出後、延長された実質的に直線的な薬剤放出速度は、1日につき1%より大きい範囲中とされ、好ましくは、1日につき充填された薬剤全用量の約1.5%〜約5%、より好ましくは、実質的に直線的な該放出速度が、1日につき充填された全薬剤の約2%〜約4%の範囲中にある。
【0033】
薬剤もしくは治療剤のための放出プロファイルは、図4に示されるように、「放出された薬剤の累積」対「該放出が起こる間の時間」のプロットにより、定義され得る。「実質的に直線的な放出プロファイル」により、このような放出プロファイルプロットの1次最小平方根が、供給第1日後のデータ(収集)時点について、0.92よりも大きな相関係数値rを持つことが意味される。好ましい1実施形態によっては、パクリタキセルのような抗再狭窄剤が、実質的に直線的な放出速度で放出され、ここでrは、供給第1日後0.95よりも大きく、充填された全薬剤の25%未満が、第1日中に供給される。
【0034】
本発明の方法により供給される抗再狭窄剤がパクリタキセルである場合、供給される(そして充填される)全量は、好ましくは2μg〜50μgである。好ましい1実施形態では、供給されるパクリタキセル量は、第1日において約0.1μg〜約15μgとされ、より好ましくは約0.3μg〜約9μgとされる。第1日後、該パクリタキセルは、最低限21日間、1日につき約0.025μg〜約2.5μg、好ましくは1日につき約0.25μg〜約2μgの速度で、実質的に直線的な方式で供給される。全パクリタキセルが該ステントから、60日未満で放出されると見込まれる。該ステント上へと充填され、処置を必要としている組織中へと放出されるパクリタキセルの合計量は、好ましくは約1.5μg〜約75μgの範囲中、より好ましくは約3μg〜約30μgの範囲中、更に好ましくは約10μgの範囲中にある。パクリタキセルに関する上記放出速度は、17mmの長さ拡大した直径の、3.0mm寸法の平均的なステントに関して与えられている。この平均的な17mmステントに関して、その放出速度は、好ましくは1日につき約0.1μg〜約0.5μgである。初期の指数は、僅かに高い用量(つまり、1日につき約0.5μg〜約1.5μg)が、糖尿病のようなある種のクラス(分類)の患者に関しては有利たり得ることを示す。
【0035】
他の寸法のステントは、同様な薬剤充填密度に基づき、同様なそれぞれの割合で、合計での薬剤の充填量を含有するようにされる。1例では、第1日後の1日につき放出されるパクリタキセル量が、約0.0003〜約0.03μg/mm組織表面積、好ましくは約0.0003〜約0.01μg/mm組織表面積である。もう1つ別の例では、第1日後の1日につき放出されるパクリタキセル量が、1日につき約0.001〜約0.2μg/mmステント長である。
【0036】
本発明の方法は好ましくは結果的に、180日以内に、好ましくは60日以内に、最も好ましくは35日以内に、該ステント上へと充填された実質的に全ての薬剤の持続した放出を与えることとなる。
【0037】
抗再狭窄剤がパクリタキセルである場合、該ステント上へと充填された少なくとも50%のパクリタキセルが好ましくは放出され、50%以下の量が放出され得ない。放出され得ないパクリタキセルは、前記ポリマーマトリックス中に封鎖されるパクリタキセルであり、180日以内に生理学的条件下に放出されないようにする。好ましくは、充填された80%より多いパクリタキセルが、180日以内に放出されるようにされ、より好ましくは、全パクリタキセルが放出されるようにされる。
【0038】
好ましい1実施形態では、治療剤が、本ステント中のポリマーマトリックスリザーバーから供給されるようにされ、ここで該ポリマーは、生体再吸収性ポリマーである。生体再吸収性ポリマーの場合、全ポリマーマトリックスが再吸収される前に、好ましくは全薬剤が本ステントから溶出される。典型的には全ポリマー薬剤供給マトリックスが、14日〜1年、より好ましくは30日〜90日で、生体再吸収されるようにされる。
【0039】
前記した実質的に直線的な延長された薬剤供給プロファイルおよび図5に示される例が、0オーダーの放出プロファイルとなり得、または、薬剤供給第2日後に、0オーダーの放出プロファイルとなり得る。
【0040】
図5に示される放出プロファイルのような、抗再狭窄剤であるパクリタキセルのより長く一定もしくは実質的に直線的な放出が結果的に、同一用量のより急速な放出よりも、ステント中でのより少ない間質新生増殖を与えることが、臨床試験において示されている。抗再狭窄剤の、実質的に直線的な延長された放出である本方法は、与えられた用量の治療剤投与の治療効果を増大させ、副作用を減少させる。
【0041】
7カ国に亘る9地域の191人の患者による多中心的研究が、異なる速度および用量で供給されるパクリタキセルの安全性および効能を比較した。この試験に参加した患者は、用量、薬剤放出速度(速い、中庸、遅い)、ならびに方向性(動脈壁側のみへの薬剤放出vs該動脈壁側および血管(動脈)側両方への放出)により変動する、パクリタキセルの異なる6種の処方を受け取った。これらの用量には、図5に挙げられる10μg/30日および30μg/30日の用量が包含された。該10μg用量には39人の患者、該30μg用量には30人の患者がいた。その平均年齢は59.1+9.2歳であり、これらの患者の70%が男性であった。
【0042】
4ヶ月の追跡において、全6処方とも安全であると決定され、心臓での主要な有害現象(MACE)の全体での割合は5.2%であった。10μgを受け取った39人の患者のグループでは、血管壁へとゆっくり放出する(30日)処方が供給され、MACEは0であった。この処方では、ステント中での2元(binary)再狭窄の割合は0%であり、血管内超音波(IVUS)により求められたステント中での血管造影の後発的な消失は0.38mmおよび7.7容積%梗塞であった。加えて、このグループに関しての標的病巣における再灌流(TLR)割合は0%であり、標的血管における再灌流(TVR)割合は2.6%であった。比較すると、血管壁へと供給される10μgの速い放出の(10日)処方を受け取ったもう1つ別のグループでは、ステント中での再狭窄割合が3.6%であり、ステント中での血管造影の後発的な消失は0.67mmであり、IVUSにより、17.3容積%梗塞であった。これらの結果は、薬剤放出速度が処置結果に影響を持っていること、30日に亘る延長された放出が同一用量の10日間での放出よりもより良い結果を示すことを、指し示すものである。
【0043】
30μgを受け取った30人の患者のグループでは、血管壁へとゆっくり放出される(30日)処方が供給され、第30日〜4ヶ月の期間中、やはりMACEは0であった。この処方では、ステント中での2元再狭窄の割合は7.4%であり、血管内超音波(IVUS)により求められたステント中での血管造影の後発的な消失は0.37mmおよび5.1容積%梗塞であった。加えて、このグループに関しての標的病巣における再灌流(TLR)割合は0%であり、標的血管における再灌流(TVR)割合は3.3%であった。
【0044】
治療剤
再狭窄の処置に関して本発明が記載されてきたが、他の治療剤が、急性心筋梗塞、血栓形成のような他の病状の処置用、または、危急の血小板止血用に記述される放出プロファイルで供給されてよい。
【0045】
本発明は、タキソール、ラパマイシン、他のリムス(limus)薬剤、クラドリビン、コルチシン、ビンカアルカロイド、ヘパリン、ヒルジン、およびこれらの誘導体を包含する抗再狭窄剤、ならびに、他の細胞毒もしくは細胞増殖抑制剤、微小管安定化剤、および微小管阻害剤の供給に関する。抗再狭窄剤がまず、本明細書において記載されたが、本発明はまた、単独もしくは抗再狭窄剤と組み合わせて、他の治療剤を供給するのに使用されてもよい。
【0046】
本発明と共に使用されるための他の治療剤は、例えば、小分子、ペプチド、リポタンパク、ポリペプチド、ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド、脂質、タンパク薬剤、タンパクと共役した薬剤、酵素、オリゴヌクレオチドおよびこれらの誘導体、リボザイム、他の遺伝子材料、細胞、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モノクローナル抗体、血小板、プリオン、ウィルス、バクテリア、内皮細胞、幹細胞のような真核細胞、ACE阻害剤、モノサイト(単球)/マクロファージ(巨食球)、ならびに血管平滑筋細胞の形態を採ってもよい。このような治療剤は、単独もしくはお互いと種々組み合わされて、使用され得る。例えば、抗炎症剤が抗増殖剤と組み合わされて使用されてよく、該抗増殖剤に対する組織の反応を緩和する。該治療剤はまた、プロドラッグでもよく、これは、宿主への投与時に、所望の薬剤へと代謝して行く。加えて、治療剤は、前記マトリックス中へと取り込まれる前に、マイクロカプセル、微小球、微小泡、リポゾーム、ニオゾーム、エマルション、分散体、もしくは同様なものとして、予め処方されてもよい。治療剤はまた、放射性同位元素、あるいは、光もしくは超音波エネルギーのような他の何らかの形態のエネルギーにより、または、全身投与され得る他の循環分子により活性化される治療剤であってもよい。
【0047】
治療剤の例示的なクラス(分類)は、抗増殖剤、抗トロンビン剤(つまり、血栓溶解剤)、免疫抑制剤、抗脂質剤、抗炎症剤、抗代謝剤を包含する抗新生物剤、抗血小板剤、血管新生剤、抗血管新生剤、ビタミン、抗有糸分裂剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、NOドナー(供与体)、酸化窒素(NO)放出刺激剤、抗狭窄剤、血管活性剤、内皮成長因子、βブロッカー、ホルモン、スタチン、インシュリン成長因子、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウムアンタゴニスト(つまり、カルシウムチャネルアンタゴニスト)、レチノイド、抗マクロファージ物質、抗リンパ球剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、免疫調節剤、アンジオテンシン(アンギオテンシン)変換酵素(ACE)阻害剤、抗白血球剤、高密度リポタンパク(HDL)および誘導体、細胞インシュリン感受性剤、プロスタグランジンおよび誘導体、抗TNF化合物、高血圧用薬剤、タンパクキナーゼ(カイネース)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、心臓保護剤、ペチドース阻害剤(糖代謝を上昇)、エンドセリン受容体アゴニスト、インターロイキン−6アンタゴニスト、抗再狭窄剤、ならびに他の諸々の化合物を包含する。
【0048】
抗増殖剤は、限定することなく、シロリムス、パクリタキセル、アクチノマイシンD、ラパマイシン、およびシクロスポリンを包含する。
【0049】
抗トロンビン剤は、限定することなく、ヘパリン、プラスミノーゲン、α−抗プラスミン、ストレプトキナーゼ、ビバリルジン、および組織プラスミノーゲン活性化剤(t−PA)を包含する。
【0050】
免疫抑制剤は、限定することなく、シクロスポリン、ラパマイシンおよびタクロリムス(FK−506)、シロルムス、エヴェロリムス、エトポシド、およびミトキサントロンを包含する。
【0051】
抗脂質剤は、限定することなく、HMG CoA 還元酵素阻害剤、ニコチン酸、プロブコール、およびフィブリン酸誘導体(例えば、クロフィブレート、ジェムフィブロジル、フェノフィブレート、シプロフィブレート、およびベザフィブレート)を包含する。
【0052】
抗炎症剤は、限定することなく、サリチル酸誘導体(例えば、アスピリン、インシュリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサレート、dflunisal, サリチルサリチル酸、スルファサラジン、およびオルサラジン)、パラアミノフェノール誘導体(例えば、アセトアミノフェン)、インドールおよびインデン酢酸(例えば、インドメタシン、スリンダック、およびエトドラック)、ヘテロアリール酢酸(例えば、トルメチン、ジクロフェナック、およびケトロラック)アリールプロピオン酸(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、およびオキサプロジン)、アントラニル酸(例えば、メフェナミン酸およびメクロフェナミン酸)、エノール酸(例えば、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン)、アルカノン(例えば、ナブメトン)、糖質コルチコイド(例えば、デキサメタゾン、プレドニソロン、およびトリアムシノロン)、ピルフェニドン、ならびにトラニラストを包含する。
【0053】
抗新生物剤は、限定することなく、ナイトロジェンマスタード(神経ガス、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、およびクロラムブシル)、メチルニトロソウレア(例えば、ストレプトゾシン)、2−クロロエチルニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、およびクロロゾトシン)、アルカンスルホン酸(例えば、ブスルファン)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、トリエチレンメラミン、チオテパ、およびアルトレタミン)、トリアジン(例えば、ダカルバジン)、葉酸類縁体(例えば、メトトレキセート)、ピリミジン類縁体(5−フルオロウラシル、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロデオキシウリジン一リン酸、シトシンアラビノシド、5−アザシチジン、および2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン)、プリン類縁体(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、アデノシン、ペントスタチン、クラドリビン、およびエリスロヒドロキシノニルアデニン)、抗有糸分裂薬(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、エピポドフィルロトキシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン、およびミトマイシン(マイトマイシン))、フェノキソジオール、エトポシド、ならびに白金配位錯体(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン)を包含する。
【0054】
抗血小板剤は、限定することなく、インシュリン、ジピリダモール、チロフィバン、エプチフィバチド、abciximab、およびチクロピジンを包含する。
【0055】
血管形成剤は、限定することなく、リン脂質、セラミド、セレブロシド、中性脂肪、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、レシチン、スフィンゴシド、アンジオテンシンの断片、ニコチン、ピルビン酸チオールエステル、ピルビン酸グリセロールエステル、ピルビン酸ジヒドロキシアセトンエステル、およびモノブチリンを包含する。
【0056】
抗血管形成剤は、限定することなく、エンドスタチン、アンジオスタチン、フマジリン、およびオヴァリシンを包含する。
【0057】
ビタミンは、限定することなく、水溶性ビタミン(例えば、チアミン、ニコチン酸、ピリドキシン、およびアスコルビン酸)ならびに脂溶性ビタミン(例えば、レチナール、レチノイン酸、レチナールアルデヒド、フィトナジオン、メナキノン、メナジオン、およびα−トコフェロール)を包含する。
【0058】
抗有糸分裂剤は、限定することなく、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、エピポドフィルロトキシン、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン、およびマイトマイシン(ミトマイシン)を包含する。
【0059】
メタロプロテアーゼは、限定することなく、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3、およびSmaPIを包含する。
【0060】
NOドナーは、限定することなく、L−アルギニン、亜硝酸アミル、三硝酸グリセリル、ニトロプルシドナトリウム、モルシドミン、ジアゼニウムジオレート、S−ニトロソチオール、および浸透圧オキサトリアゾール誘導体を包含する。
【0061】
NO放出刺激剤は、限定することなく、アデノシンを包含する。
【0062】
抗梗塞剤は、限定することなく、コラゲナーゼおよびハロフジノンを包含する。
【0063】
血管活性剤は、限定することなく、酸化窒素、アデノシン、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム、ヒドララジン、フェントラミン、メトキサミン、メタラミノール、エフェドリン、トラパジル、ジピリダモール、血管活性腸管ポリペプチド(VIP)、アルギニン、およびバソプレッシンを包含する。
【0064】
内皮成長因子は、限定することなく、VEGF−121およびVEG−165を包含するVEGF(血管内皮成長因子)、FGF−1およびFGF−2を包含するFGF(線維芽細胞成長因子)、HGF(肝細胞成長因子)、ならびにAng1(アンジオポエチン1)を包含する。
【0065】
βブロッカーは、限定することなく、プロプラノロール、ナドロール、チモロール、ピンドロール、ラベタロール、メトプロロール、アテノロール、エスモロール、およびアセブトロールを包含する。
【0066】
ホルモンは、限定することなく、プロゲスチン、インシュリン、エストロゲン類、ならびにエストラジオール類(例えば、エストラジオール、エストラジオールヴァレレート、エストラジオールシピオネート、エチニルエストラジオール、メストラノール、キネストロール、エストロンド、硫酸エストロン、およびエキリン)を包含する。
【0067】
スタチンは、限定することなく、メバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、およびフルバスタチンを包含する。
【0068】
インシュリン成長因子は、限定することなく、IGF−1およびIGF−2を包含する。
【0069】
抗酸化剤は、限定することなく、ビタミンA、カロテノイド、およびビタミンEを包含する。
【0070】
膜安定化剤は、限定することなく、プロプラノロール、アセブトロール、ラベタロール、オキシプレノロール、ピンドロール、およびアルプレノロールを包含する。
【0071】
カルシウムアンタゴニストは、限定することなく、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、およびベラパミルを包含する。
【0072】
レチノイドは、限定することなく、全てトランス体のレチノール、全てトランス体の14−ヒドロキシレトロレチノール、全てトランス体のレチナール、全てトランス体のレチノイン酸、全てトランス体の3,4−ジデヒドロレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、11−シスレチナール、13−シスレチナール、および13−シスレチノイン酸を包含する。
【0073】
抗マクロファージ物質は、限定することなく、NOドナーを包含する。
【0074】
抗白血球剤は、限定することなく、2−CdA,IL−1阻害剤、抗CD116/CD18モノクローナル抗体、VCAMに対するモノクローナル抗体、ICAMに対するモノクローナル抗体、および亜鉛プロトポルフィリンを包含する。
【0075】
シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、限定することなく、Cox−1阻害剤およびCox−2阻害剤(例えば、CELEBREX(登録商標)およびVIOXX(登録商標))を包含する。
【0076】
免疫調節剤は、限定することなく、免疫抑制剤(上記参照)および免疫刺激剤(例えば、レヴァミゾール、イソプリノシン、インターフェロンα、およびインターロイキン−2)を包含する。
【0077】
ACE阻害剤は、限定することなく、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリルナトリウム、リジノプリル、キナプリル、ラミプリル、およびスピラプリルを包含する。
【0078】
細胞インシュリン感受性剤は、限定することなく、グリタゾン、P par アゴニスト、およびメトフォルミンを包含する。
【0079】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定することなく、resten-NG を包含する。
【0080】
心臓保護剤は、限定することなく、VIP、下垂体アデニル酸環化酵素活性化ペプチド(PACAP)、apoA−Iミラノ、アムロジピン、ニコランジル、シロスタキソン(cilostaxone)、およびチエノピリジンを包含する。
【0081】
ペチドース阻害剤は、限定することなく、オムニパトリラートを包含する。
【0082】
抗再狭窄剤は、限定することなく、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アクチノマイシン、エポチロン(epothilone)、パクリタキセル、およびパクリタキセル誘導体(例えば、ドセタキセル)を包含する。
【0083】
諸々の化合物は、限定することなく、アジポネクチンを包含する。
【0084】
本発明がその好ましい実施形態に言及して詳細に記載されてきたが、当業者には、本発明から逸脱することなく、種々の変更および修飾がなされ得、等価なもの(均等物)が用いられることは、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
本発明が今から、添付図面に例示される好ましい実施形態に言及しながらより詳細に記載され、ここで、同様な要素は同様な参照番号を持っている。
【図1】図1は、本発明によるステントの1例の俯瞰図である。
【図2】図2は、図1のステントの1部分の側面図である。
【図3】図3は、治療剤と障壁層とを有するマトリックスを示す、ステント中の開口部の例の横断面図である。
【図4】図4は、治療剤を有するマトリックスを示す、ステント中の開口部のもう1つ別の例の横断面図である。
【図5】図5は、3つの異なる実質的に直線的な放出プロファイルについての、ステントからのパクリタキセルの累積放出のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再狭窄抑制用ステントであって、冠状動脈中への該ステントの挿入のために未拡大の初期直径を持ち、冠状動脈内での移植のために拡大される直径を持つ薬剤供給ステントを含み、該ステントが、動脈への供給用の所定用量のパクリタキセルを持ち、該用量が、実質的に全ての該パクリタキセルが、該動脈中での該ステントの移植時に、該ステントから放出可能であるよう調整され、ここで該用量のパクリタキセルが、実質的に全ての該パクリタキセルが該ステントから放出される時まで、該ステントの移植時からの全投与期間を通して、1日につき該ステント上の全用量のパクリタキセルの1%の最小放出速度で放出されるよう調整されるステント。
【請求項2】
前記投与期間が、前記移植日から約20日〜約40日である、請求項1のステント。
【請求項3】
第1日後の前記パクリタキセルの放出速度が、実質的に直線的である、請求項1のステント。
【請求項4】
実質的に直線的な前記放出速度が、rが0.95よりも大きい放出速度として定義される、請求項3のステント。
【請求項5】
第1日後の1日につき放出されるパクリタキセル量が、約0.0003〜約0.03μg/mm組織表面積である、請求項1のステント。
【請求項6】
前記パクリタキセルが、前記ステント中の開口部中に配置される、請求項1のステント。
【請求項7】
前記パクリタキセルが、生体再吸収性マトリックス中に含有される、請求項1のステント。
【請求項8】
前記パクリタキセルが、ポリマーマトリックス中に含有される、請求項1のステント。
【請求項9】
前記パクリタキセルが、前記ステントからまず血管壁へと供給されるよう配置される、請求項1のステント。
【請求項10】
第1日に、前記ステント中へと充填された前記パクリタキセルの合計量の2〜25%が供給され、20〜45日で、充填された該パクリタキセルの95%が供給されるよう該パクリタキセルが前記ステントへと固定される、請求項1のステント。
【請求項11】
17mmの長さ拡大した直径の、3.0mm寸法のステントに関して、最低限21日間、1日につき約0.25μg〜約2.5μgの速度で、第1日後の供給用に、前記パクリタキセルが充填され、他の寸法のステントからは、それぞれに相対的な比率に基づいた他の量を供給する、請求項1のステント。
【請求項12】
前記ステント上に充填された前記パクリタキセルの80%より多くが、180日以内に供給されるよう該パクリタキセルが該ステントに固定される、請求項1のステント。
【請求項13】
第1日後の1日につき放出される前記パクリタキセル量が、約0.1〜約0.5μgである、請求項1のステント。
【請求項14】
再狭窄抑制方法であって:
実質的に全てのパクリタキセルが、動脈中でのステントの移植時に、該ステントから放出可能であるよう調整された所定用量の、動脈への供給用の該パクリタキセルを持つ該薬剤供給ステントを与えること;
患者の動脈内へ該ステントを移植すること;ならびに
実質的に全ての該パクリタキセルが該ステントから放出される時まで、該ステントの移植時からの全投与期間を通して、1日につき該ステント上の全用量の該パクリタキセルの1%の最小放出速度で、該ステントから該動脈へと該パクリタキセルを供給すること
を含む方法。
【請求項15】
前記投与期間が、前記移植日から約20日〜約40日である、請求項14の方法。
【請求項16】
第1日後の前記パクリタキセルの放出プロファイルが、実質的に直線的である、請求項14の方法。
【請求項17】
第1日後の1日につき放出される前記パクリタキセル量が、約0.0003〜約0.03μg/mm組織表面積である、請求項14の方法。
【請求項18】
前記パクリタキセルが、前記ステント中の開口部中に配置される、請求項14の方法。
【請求項19】
前記パクリタキセルが、生体再吸収性マトリックス中に含有される、請求項14の方法。
【請求項20】
前記パクリタキセルが、ポリマーマトリックス中に含有される、請求項14の方法。
【請求項21】
前記パクリタキセルが、前記ステントからまず血管壁へと供給される、請求項14の方法。
【請求項22】
第1日に、前記ステント中へと充填された前記パクリタキセルの合計量の2〜25%を供給し、次いで20〜45日で、充填された該パクリタキセルの95%を供給することを、パクリタキセルを供給する前記ステップが更に含む、請求項14の方法。
【請求項23】
17mmの長さ拡大した直径の、3.0mm寸法のステントに関して、最低限21日間、1日につき約0.25μg〜約2.5μgの速度で、第1日後、パクリタキセルを供給し、他の寸法のステントからは、それぞれに相対的な比率に基づいた他の量を供給することを、パクリタキセルを供給する前記ステップが更に含む、請求項14の方法。
【請求項24】
前記ステント上に充填された前記パクリタキセルの80%より多くを、180日以内に供給することを、パクリタキセルを供給する前記ステップが更に含む、請求項14の方法。
【請求項25】
再狭窄抑制方法であって:
動脈への供給用の所定用量のパクリタキセルを持つ薬剤供給ステントを与えること;
患者の動脈内へ該ステントを移植すること;ならびに
移植後1日から移植後25日までの全期間に亘り、実質的に直線的な放出速度で、該ステントから該動脈へと該パクリタキセルを供給すること
を含み、ここで、該期間中供給される該パクリタキセル量が、該ステント上に充填される該パクリタキセルの少なくとも25%である方法。
【請求項26】
第1日後の1日につき放出される前記パクリタキセル量が、約0.0003〜約0.03μg/mm組織表面積である、請求項25の方法。
【請求項27】
前記パクリタキセルが、前記ステント中の開口部中に配置される、請求項25の方法。
【請求項28】
前記パクリタキセルが、生体再吸収性ポリマーマトリックス中に含有される、請求項25の方法。
【請求項29】
前記パクリタキセルが、前記ステントからまず血管壁へと供給される、請求項25の方法。
【請求項30】
第1日に、前記ステント中へと充填された前記パクリタキセルの合計量の2〜25%を供給し、次いで20〜45日で、充填された該パクリタキセルの95%を供給することを、パクリタキセルを供給する前記ステップが更に含む、請求項25の方法。
【請求項31】
前記ステント上に充填された前記パクリタキセルの80%より多くを180日以内に供給することを、パクリタキセルを供給する前記ステップが更に含む、請求項25の方法。
【請求項32】
再狭窄抑制方法であって:
動脈への供給用の所定用量のパクリタキセルを持つ薬剤供給ステントを与えること;
患者の動脈内へ該ステントを移植すること;ならびに
該ステントから該動脈へと該パクリタキセルを供給すること
を含み、ここで、該ステントにより与えられる該パクリタキセルの全用量の少なくとも80%が、移植60日以内に該動脈へと供給される方法。
【請求項33】
第1日後の前記パクリタキセルの放出プロファイルが、実質的に直線的である、請求項32の方法。
【請求項34】
第1日後の1日につき放出される前記パクリタキセル量が、約0.0003〜約0.03μg/mm組織表面積である、請求項32の方法。
【請求項35】
前記パクリタキセルが、前記ステント中の開口部中に配置される、請求項32の方法。
【請求項36】
前記パクリタキセルが、生体再吸収性ポリマーマトリックス中に含有される、請求項32の方法。
【請求項37】
前記パクリタキセルが、前記ステントからまず血管壁へと供給される、請求項32の方法。
【請求項38】
17mmの長さ拡大した直径の、3.0mm寸法のステントに関して、最低限21日間、1日につき約0.25μg〜約2.5μgの速度で、第1日後、パクリタキセルを供給し、他の寸法のステントからは、それぞれに相対的な比率に基づいた他の量を供給することを、パクリタキセルを供給する前記ステップが更に含む、請求項32の方法。
【請求項39】
再狭窄抑制方法であって:
実質的に全ての抗再狭窄薬剤が、動脈中でのステントの移植時に、該ステントから放出可能であるよう調整された所定用量の、動脈への供給用の該薬剤を持つ該薬剤供給ステントを与えること;
患者の動脈内へ該ステントを移植すること;ならびに
実質的に全ての該薬剤が該ステントから放出される時まで、該ステントの移植時からの全投与期間を通して、1日につき該ステント上の全用量の該薬剤の1%の最小放出速度で、該ステントから該動脈へと該薬剤を供給すること
を含み、ここで、該薬剤の該放出速度が、少なくとも第2日から第25日までを通して、実質的に直線的である方法。
【請求項40】
前記投与期間が、移植日から約20日〜約40日である、請求項39の方法。
【請求項41】
前記薬剤が、前記ステント中の開口部中に配置される、請求項39の方法。
【請求項42】
前記薬剤が、生体再吸収性ポリマーマトリックス中に含有される、請求項39の方法。
【請求項43】
前記薬剤が、前記ステントからまず血管壁へと供給される、請求項39の方法。
【請求項44】
第1日に、前記ステント中へと充填された前記薬剤の合計量の2〜25%を供給し、次いで20〜45日で、充填された該薬剤の95%を供給することを、該薬剤を供給する前記ステップが更に含む、請求項39の方法。
【請求項45】
前記ステント上に充填された前記薬剤の80%より多くを180日以内に供給することを、該薬剤を供給する前記ステップが更に含む、請求項14の方法。
【請求項46】
供給第1日の後rが0.95よりも大きく、充填される全前記薬剤の25%未満が第1日中に供給される実質的に直線的な放出速度で該薬剤を放出することを、該薬剤を供給する前記ステップが更に含む、請求項14の方法。
【請求項47】
患者処置方法であって:
実質的に全ての治療剤が、動脈中でのステントの移植時に、該ステントから放出可能であるよう調整された所定用量の、動脈への供給用の該治療剤を持つ該薬剤供給ステントを与えること;
患者の動脈内へ該ステントを移植すること;ならびに
実質的に全ての該薬剤が該ステントから放出される時まで、該ステントの移植時からの全投与期間を通して、1日につき該ステント上の全用量の該治療剤の1%の最小放出速度で、該ステントから該動脈へと該治療剤を供給すること
を含み、ここで、第1日後の該薬剤の該放出速度が、少なくとも第2日から第25日までを通して、実質的に直線的である方法。
【請求項48】
前記投与期間が、移植日から約20日〜約40日である、請求項47の方法。
【請求項49】
前記薬剤が、前記ステント中の開口部中に配置される、請求項47の方法。
【請求項50】
前記薬剤が、生体再吸収性ポリマーマトリックス中に含有される、請求項47の方法。
【請求項51】
供給第1日の後rが0.95よりも大きく、充填される全前記薬剤の25%未満が第1日中に供給される実質的に直線的な放出速度で該薬剤を放出することを、該薬剤を供給する前記ステップが更に含む、請求項47の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−501095(P2007−501095A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533368(P2006−533368)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/016315
【国際公開番号】WO2004/110302
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(500449400)コナー メドシステムズ, インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】CONOR MEDSYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】1360 Hamilton Court,Menlo Park,CA 94025 U.S.A.
【Fターム(参考)】