説明

ステントのシース装着技術

【課題】圧着プロセス中に、ステントをシース装着する方法、及び、特に圧着プロセス中に、ステントをシース装着するための装置を提供する。
【解決手段】ステントをシース装着する方法であって、カテーテル部材11とカテーテル部材11の周りに配置されたステント部材12とを有するステント組立体10を提供するステップと、第1のシース膜13を、ステント組立体10の一側部に隣接するように配置するステップと、第2のシース膜14を、ステント組立体10の反対側に隣接するように配置するステップと、ステント組立体10を圧縮するステップとを有し、第1のシース膜13と第2のシース膜14とは、互いに近づく方へ移動し、ステント組立体10を実質的に包囲する。第1のシース膜13及び第2のシース膜14は、ロール状に供給される。圧縮は、径方向圧縮機構によって実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文献の開示の一部は、著作権保護の対象となる文献を含んでいる。本著作権所有者は、本特許文献又は特許開示については、これらが、米国特許商標庁の特許ファイル、または記録に掲載されているため、何人によるこれのファクシミリ複写に関して異議は無いが、他の手段に関する全ての著作権等を保有するものである。
関連出願の相互参照:
本出願は、2004年11月2日に米国で出願されている係属中の米国予備特許出願番号60/624,432に関する、35 U.S.C. 119条(e)に規定されている利益を享受するものであり、その開示内容は、参照事項として、本願に包含されるものとする。
米国連邦政府が関与する調査や開発に関する声明:適用無し。
マイクロフィルム追補:適用無し。
【0002】
本発明は、広義では、医用装置、医用装置製造プロセス、医用装置の製造、及び医用装置の製造のための装置、並びに前記プロセスの実施のための装置に関する。また、本発明は、医用ステント、及びステント製造方法並びに装置にも関する。
【0003】
特に、本発明は、ステントをシース脱着するための方法並びに装置、及びシース装着したステントに関する。ステントをシース装着することは、ステント面を保護するのに有用である。シース装着は、圧着その他の処理中に、ステントを保護するために特に有用である。
【0004】
シース装着は、比較的敏感な薬剤コーティング、ポリマー、生体分解性材料、その他圧着プロセスで容易に傷付き易い材料を圧着するために、特に有用な手法である。このプロセスでは、軟質の物質に対する低い応力での圧着や、硬質の物質に対する高応力での圧着により、損傷が生じることがある。本発明の装置及び製造方法、並びに製造装置は、他の領域でも有用である。
【背景技術】
【0005】
本発明の技術分野には、ステント(薬剤コーティングステントを含む)、ステント成形、圧着の方法、並びに装置が含まれる。現在、圧着コーティングステントについては、コーティングが概して軟質で脆弱であるために生じる多くの問題がある。
【0006】
その解決策の一つとしては、圧着の前に、ステントの上に薄いシースを配置することが挙げられる。シースは典型的には、壁厚が例えば0.025〜0.05mm(0.001〜0.002インチ)管であり、ステントの上に、人の手によって配置される。次いで、この組立体を、圧着装置の中に設置して、通常通りに処理する。圧着の後、シースを、人の手によりステントから再び除去する。
【0007】
この技術には、重大な限界、及び欠点があると考えられている。人の手によるシースの設置及び除去は、時間も費用もかかる作業である。また、管状のシースは、概して効果であり、処理は容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した理由や、その他の理由から、本発明による改善の必要性が存在する。
【0009】
この明細書の各所で言及した全ての米国特許及び米国特許出願、並びにその他全ての公表された文書の全体は、参照事項として、本願明細書中に包含されるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特に圧着プロセス中に、ステントをシース装着する方法、及び、特に圧着プロセス中に、ステントをシース装着するための装置を提供するものであり、これらの方法や装置は、実用的で信頼性が高く、高精度で高効率であり、また、従来技術における必要性を充足させるとともに、従来技術に対する改善を構成するものと確信される。
【0011】
本発明に係るステントのシース装着方法の一局面は、カテーテル部材の周りに配置されたカテーテル部材、及びステント部材を有するステント組立体を提供するステップと、ステント組立体の一方の側部に隣接するように、第1のシース膜を配置するステップと、ステント組立体の反対の側部に隣接するよう、第2のシース膜を配置するステップと、ステント組立体を圧縮するステップとを有し、第1のシース膜と第2のシース膜とは、ステント組立体を実質的に包囲するように、互いの方へ向かって移動することを特徴としている。
【0012】
本発明の代替的なステントのシース装着方法は、ステント組立体を提供するステップと、第1の端部及び第2の端部を有する第1のシース膜を、所定の形状をもって、ステント組立体に隣接するように配置するするステップと、ステント組立体を圧縮するステップとを有し、かつシース膜は、ステントを包囲していることを特徴とする。
【0013】
本発明の別の局面に係る、ステントをシース装着するための装置は、圧着機構と、シース膜供給部と、圧着機構を介して膜供給部から、少なくとも1枚の膜を移動させる膜供給装置と、圧着機構にステント組立体を移動させるためのステント投入系とを備えることを特徴としている。
【0014】
シース膜は、折り重ねることにより、ステント組立体を実質的に包囲するようになっているシングル膜を備えていてもよく、あるいは、一緒になって動くことにより、ステント組立体を実質的に包囲する1対の膜を備えていてもよい。この単一膜の折り重ねや、対の膜の移動は、圧着機構の作動中に行われることが好ましい。
【0015】
本発明の特徴、利点及び目的は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲の記載や、必要に応じて図面を参照することにより、当業者には明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のシース装着されたステント組立体の具体例を例示する斜視図である。
【図2】図1で示された組立体の端面図である。
【図3】本発明に従い、圧着中にステント組立体をシース装着するための一体型膜圧着装置の具体例の斜視図である。
【図4】膜圧着装置の正面図である。
【図5】膜圧着装置の背面図である。
【図6】膜圧着装置の平面図である。
【図7】膜圧着装置の下面図である。
【図8】膜圧着装置の右側面図である。
【図9】膜圧着装置の左の側面図である。
【図10】膜装てんのためにヘッドを開けた状態の、膜圧着の正面図である。
【図11】上記装置の上記状態における背面図である。
【図12】上記装置の上記状態における詳細な正面像である。
【図13】上記装置の上記状態におけるさらに詳細な正面像である。
【図14】上記装置の上記状態における詳細な背面図である。
【図15】上記装置の上記状態におけるさらに詳細な背面図である。
【図16】シース装着装置の代替的な具体例を例示する斜視図である。
【図17】上記装置の別の斜視図である。
【図18】シース装着装置の別の代替的な具体例を例示する斜視図であり、ヘッドが開いた状態を示している。
【図19】上記装置のヘッドが閉じた状態の斜視図である。
【図20】ヘッドの詳細な正面図である。
【図21】カテーテルへのステントのシース装着及び圧着におけるヘッドのさらに詳細な正面図である。
【図22】1枚の膜でシース装着を行うステント組立体を含む、本発明のシース組立体、及びシース装着方法におけるまた別の具体例を例示する斜視図である。
【図23】上記装置の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のシース装着プロセス及び装置は、或る材料の1対の扁平な膜を利用するものである。ここでは、先行技術の場合のような管状のシースは、必要としない。
【0018】
図1及び図2に示すように、シースが装着されたステント組立体10は、カテーテル部材11と、ステント12とを備え、これは、第1の扁平膜または上方の扁平膜13と、第2の扁平膜または下方の扁平膜14とを有している。これらの扁平膜は、リボン、またはハーフシースとも呼ばれる。
【0019】
膜13及び14は、ステント12の両側に配置され、このステントは、例えば、薬剤をコーティングしたものであり、一般に、薬剤溶出ステント(DES: drug eluting stent)と呼ばれるものである。
【0020】
膜13及び14は、連続経路(後述の図を参照)で、圧着ヘッドの一方に自動的に送られることが好ましい。この経路は、圧着ヘッドの中を通過して外へ出る。シース13及び14は、圧着プロセス中、ステント12を保護する。この連続経路を用いることにより、シースを配置するために、手でステントカテーテル組立体10を扱う必要性はなくなる。
【0021】
膜材料は、好ましくは、扁平、連続体、又は継目なしのロール状又は網状であり、個々に管状のシースを用いるよりも、低いコストで済む。また厚さのより薄い膜材料を使用することにより、プロセス制御を改善することができる。
【0022】
ステント12をシース装着する方法の好適な具体例は、カテーテル部材11を含むステント組立体と、カテーテル部材11の周りに配置されるステント部材12とを提供するステップと、ステント組立体11/12の一側部に隣接するよう、第1のシース膜13を配置するステップと、ステント組立体11/12の反対側に隣接するように、第2のシース膜14を配置ステップと、ステント組立体11/12の圧縮を、例えば圧着により行うステップとを有し、第1のシース膜13及び第2のシース膜14が、互いに近づく方向へ移動して、ステント12をカテーテル部材11に圧着することにより、ステント組立体を実質的に包囲することを特徴としている。
【0023】
図3〜図9は、ステントをシース装着し、カテーテルに圧着するための、本発明の一体型の膜圧着装置20の具体例を示す。装置20は、大まかに言って、圧着器21と、圧着器21に接続されたマウント枠22と、両方とも枠22に接続されている下部の膜ロール、またはペイオフ23及び上部のロールフィルム24と、マウント22に接続された巻き取りスプール25と、マウント22及び圧着器21に接続された分離システム26とを備えている。
【0024】
発明の名称を「ステント圧着装置及び方法」(Stent Crimping Apparatus and Method)とするモツセンボーカー(Motsenbocker)らの米国特許6,629,350号に記載されるように、圧着器21は、セグメント径方向に作用する圧縮システムであることが好ましい。
【0025】
しかし、圧着器21を、分割または開くように構成し、膜が、中央の開口の中を通過して、圧着のために、動作自在に配置されているステント及びカテーテルを包囲して、シース装着をするようにすることが可能となる。
【0026】
この圧着器21は、1対の圧着ヘッド部材32及び33を備えている。部材32及び33のそれぞれは、複数のセグメントまたは素子31を備えている。部品は、遠位のハブ組立体35/36に、可動に接続されているのが好ましい。
【0027】
この組立体は、作動アーム34に接続される。作動アーム34は、装置10の両側に配置されていてもよく、あるいは一方に配置されていてもよい。他の作動の手段を用いることもできる。
【0028】
また上部部材32は、上板40に接続した上面基部ピンシート組立体41を備えている。底部部材33は、底板42に接続されている底部近接ピンシート組立体43を備えている。
【0029】
分離シリンダー組立体26は、マウント22及び上板に搭載されるシリンダーを備えていることが好ましい。巻き取りスプール25を、好ましくはモータ50によって駆動し、圧着器21を通して、ペイオフ24及び23から、膜を引張る。
【0030】
図10〜図15は、スロット53の中を通過する下部膜51及び上部膜52を有するヘッドを、開いた状態で示す。
【0031】
作動に際し、分離シリンダー26を作動させてヘッド30を開き、部材32及び33を分離して、膜を、ペイオフ23及び24から引き抜き、部材32と部材33との間の空隙を通って、巻き取りスプール25へ送る。分離シリンダーを作動させて、ヘッド30を閉じ、部材32及び33をまとめる。ステントは、比較的ゆるくカテーテルに配置されていることが好ましい。
【0032】
ステントカテーテル組立体10は、投入組立体54上に配置され、その後、所定の大きさで開いている圧着ヘッド30の中央の開口37内に搬入される。
【0033】
この構成によると、上部の膜及び下部の膜は、ステント/カテーテル組立体10を包囲する。図21に示すように、圧着器30が作動して、ステントをカテーテル上へ、セグメント状に半径方向に圧縮圧着する。
【0034】
圧着器30を解放して、圧着したステントを取り出し、また、巻き取りスプールを作動させ、上部膜及び下部膜の新しいセグメントを圧着開口内に引き込む。装置10は、電子制御機構55によって制御されることが好ましい。
【0035】
図16、図17及び図18〜図20は、シース装着及び圧着のための、代替的な一体型の膜圧着器の具体例60及び70を例示するものであり、ここでは、膜供給及び巻取り部分の修正を示す。
【0036】
ステントをシース装着するための装置60は、圧着機構と、シース膜供給部と、膜供給部から圧着機構中へ少なくとも1枚の膜を移動させるための膜供給装置と、圧着機構内にステント組立体を移動させるためのステント投入系とを備えている。シース膜は、折り重ねることにより、ステント組立体を実質的に包囲するシングル膜を備えていてもよく、また、一緒に動くことにより、ステント組立体を実質的に包囲する1対の膜を備えていてもよい。この単一膜の折り重ねや対の膜の移動は、圧着機構の作動中に行われることが好ましい。
【0037】
上部シースハーフ及び下部のシースハーフは、圧着ヘッドで示した案内板61〜64により形成されている。2つのシースハーフを、圧着及びシース装着ヘッドにより圧縮して、管のような構造を形成し、カテーテルへのステント圧着中、ステント組立体は、ほぼ完全にシース装着される。シース膜の「翼部」は、圧着ヘッドセグメント同士の間の空隙の中を通過する。
【0038】
再び、シース材料の薄膜は、前方のスプール上に格容され、案内板上を通り、圧着ヘッドの中、及びヘッドの反対側の案内板上に供給される。次いで膜は、圧着ヘッドの反対側の巻き取りスプール上に収集される。
【0039】
膜経路は連続であり、そのため、装置への初期装填作業を除き、シース材料のハンドリングは排除される。シース材料の1つのスプールで、数千個のステントに対して、シース装着及び処理を行うことが可能である。
【0040】
シース装着は、ステント上の薬剤コーティングや敏感な非薬剤コーティングステントを、ハンドリングエラーから保護する。また、シース装着は、送出しカテーテルその他のカテーテル上に、ステントを圧着するプロセス中に、ワイピングや剪断から薬剤コーティングを保護する。自動の膜シース装着は、コストのかかる手動の処理、ミスアラインメントによる損傷及び交叉汚染を排除するか、又は最小にする。
【0041】
このシース装着では、ステントへの一時的な接触を確保する図22及び図23を参照し、膜シース組立体15への別のアプローチは、「鍵穴」状に形成されている単一の膜17を用いることである。ステント16の保護及び「翼部」の処理は、膜2枚の方式と実質的に同じである。
【0042】
この方法の代替的な例では、本発明の工程は、ステント16の組立体を提供するステップと、所定の構成において、ステント組立体に隣接する第1の端部、及び第2の端部を有する第1のシース膜17を配置するステップと、ステント組立体を圧縮するステップとを有し、シース膜は、ステントを包囲することを特徴とする。
【0043】
上記の説明及び添付の図面は、単なる例示として解釈されるべきであり、限定する意味に解釈されるべきではない。以上、本発明を、具体例に関して説明してきたが、請求項により定められる範囲内にある他の具体例も、本発明の範囲内にあることは、当業者にはよく理解されると思う。
【0044】
請求項が、特定の機能を実行するための手段や工程として表現していたとしても、これらの請求項は、明細書に記載される構造、材料や動作をカバーするべく解釈されるべきである意図をもって表現したものであり、構造上の同等物と、同等の構造や、材料に基づく同等物及び同等材料、動作に基づく同等物及び同等動作を含むものである。
【符号の説明】
【0045】
10 ステント組立体
11 カテーテル部材
12 カテーテル
13 上方扁平膜
14 下方の扁平膜
15 膜シース組立体
16 ステント
17 第1のシース膜
20 一体型膜圧着装置
22 マウント枠
23 ペイオフ
24 ロールフィルム
25 スプール
26 分離シリンダー組立体
30 圧着ヘッド
31 セグメント
32 圧着ヘッド部材
33 圧着ヘッド部材
34 作動アーム
35 ハブ組立体
36 ハブ組立体
40 上板
42 底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントをシース装着するための装置であって、
(a) 圧縮機構と、
(b) シース膜供給部と、
(c) 少なくとも一つのシース膜を、膜供給部から圧縮機構内を通って移動させるための膜供給装置と、
(d) 圧着機構にステント組立体を移動させるためのステント投入系と
を備えるシース装着装置。
【請求項2】
シース膜が、ステント組立体を実質的に包囲するよう、圧縮機構によって折り重ねられる単一の膜を備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
1対の膜が一緒に動くことにより、ステント組立体を実質的に包囲するようになっている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも1つのシース膜が、ステント組立体の圧縮機構への移動に同調して、圧縮機構中を移動するようになっている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも一つのシース膜が、ステント組立体を実質的に包囲すると同時に、圧縮機構が、ステント組立体のカテーテル上へステント組立体のステントを圧着するようになっている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
圧縮機構は、径方向圧縮機構である請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−66092(P2012−66092A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235121(P2011−235121)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2007−540400(P2007−540400)の分割
【原出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(506157824)マシーン ソリューションズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】