ステントグラフトデリバリー装置
【課題】シースのキンクやシャフトの撓みの発生を防止できるとともに、ステントグラフトを拡張・展開させた後にシースとシャフトとの間に他のカテーテルを挿入することができるステントグラフトデリバリー装置を提供する。
【解決手段】ステントグラフトデリバリー装置10Aは、シャフト12と、シース16と、ハンドル20とを備える。ステントグラフト12を収納する部分よりも基端側におけるシース16の内周部に、拡張及び収縮が可能なバルーン30が軸方向の所定範囲に設けられる。
【解決手段】ステントグラフトデリバリー装置10Aは、シャフト12と、シース16と、ハンドル20とを備える。ステントグラフト12を収納する部分よりも基端側におけるシース16の内周部に、拡張及び収縮が可能なバルーン30が軸方向の所定範囲に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントグラフトデリバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大動脈瘤や大動脈解離の治療には人工血管を用いた外科手術が行われてきたが、近年下記特許文献1に開示されているようなステントグラフト(ステント付き人工血管)を用いた低侵襲治療が広がっている。ステントグラフトを用いた治療法はステントグラフト内挿術と呼ばれ、経カテーテル的にステントグラフトを大動脈瘤内に挿入・留置して血管形成する。それら一連の操作を行う機器をステントグラフトシステムと呼び、あらかじめカテーテル内にステントグラフトを折りたたんで収納しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6740111号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステントグラフト内挿術に使用されるデリバリー装置は、シース、シャフト及びハンドルからなり、シースとシャフトはそれぞれ基端部(手元側端部)でハンドルに連結している。デリバリー装置では、その先端部近傍におけるシースとシャフトとの間にステントグラフトが収納される。このため、デリバリー装置先端部におけるシースとシャフトとの間には、ステントグラフトを収納するのに十分なクリアランスが必要である。一方、デリバリー装置基端側におけるシースとシャフトとの間には、シャフトに対してシースが軸線方向にスムーズに動くのに必要最低限のクリアランスしか存在しない。それは、デリバリー装置基端側でシースとシャフトとの間のクリアランスが大きすぎると、シースがキンクする恐れがあるためである。また、ステントグラフトを放出するときのステントグラフトとシースとの摩擦抵抗が大きい場合、シース内でシャフトが撓む可能性があるからである。
【0005】
従来のデリバリー装置では、上述したように装置基端側のシースとシャフトとのクリアランスが小さいため、ステントグラフトを血管内に放出した後、造影用カテーテルや、ステントグラフト拡張用のバルーンカテーテルをデリバリー装置のシースとシャフトとの間に挿入できず、それらのカテーテルを入れるための別のシースを血管内に別途挿入する必要があった。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、シースのキンクやシャフトの撓みの発生を防止できるとともに、ステントグラフトを拡張・展開させた後にシースとシャフトとの間に他のカテーテルを挿入することができるステントグラフトデリバリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、長尺なシャフトと、前記シャフトの外側に配置され、前記シャフトに対して軸線方向に移動可能な管状のシースとを備え、前記シース及び前記シャフトの先端側における前記シースと前記シャフトとの間に、自己拡張機能を有するステントグラフトを収縮状態で収納し、前記シャフトに対して前記シースを基端方向に移動させることで前記ステントグラフトを生体管腔内で拡張・展開させるステントグラフトデリバリー装置であって、前記ステントグラフトを収納する部分よりも基端側における前記シースの内周部と前記シャフトの外周部の少なくとも一方に、拡張及び収縮が可能なバルーンが軸方向の所定範囲に設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明のこのような構成によれば、ステントグラフトを拡張・展開するまでは、バルーンを膨張させておくことで、シースとシャフトとの間のクリアランスが充填されるため、シースのキンクやシャフトの撓みの発生を防止できる。ステントグラフトを膨張・展開した後は、バルーンを収縮させることで、シースとシャフトとの間に他のカテーテル(造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる状態とすることができる。
【0009】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記バルーンは、前記シースの内周部に設けられ、前記バルーンの拡張状態において、前記バルーンと前記シャフトとの間に僅かなクリアランスが形成されるとよい。このように構成すると、バルーンの拡張後においても、シャフトに対してシースを軸線方向へ容易に移動させることができ、良好な操作性が得られる。
【0010】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記バルーンは、前記シャフトの外周部に設けられ、前記バルーンの拡張状態において、前記バルーンと前記シースとの間に僅かなクリアランスが形成されるとよい。このように構成すると、バルーンの拡張後においても、シャフトに対してシースを軸線方向へ容易に移動させることができ、良好な操作性が得られる。
【0011】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記バルーンは、螺旋状に配設されているとよい。このように構成すると、バルーンを拡張した状態でもシース又はシャフトの柔軟性を好適に確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のステントグラフトデリバリー装置によれば、シースのキンクやシャフトの撓みの発生を防止できるとともに、ステントグラフトを拡張・展開させた後にシースとシャフトとの間に他のカテーテルを挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置の全体構成を示す一部断面側面図である。
【図2】シースの内周部に設けられたバルーン及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿った模式的断面図である。
【図4】ハンドル及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【図5】ハンドル及びその周辺部位を示す一部省略斜視図である。
【図6】ステントグラフトデリバリー装置を用いた手技を示す第1の概略説明図である。
【図7】ステントグラフトデリバリー装置を用いた手技を示す第2の概略説明図である。
【図8】変形例に係るバルーンを備えたシース及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置の全体構成を示す一部断面側面図である。
【図10】図9に示したステントグラフトデリバリー装置におけるシャフトの外周部に設けられたバルーン及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線に沿った模式的断面図である。
【図12】変形例に係るバルーンを備えたシャフト及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るステントグラフトデリバリー装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置10A(以下、「デリバリー装置10A」という)の全体構成を示す一部断面側面図である。図1では、デリバリー装置10Aを長手方向の途中で分断し、上下に分けて示している。デリバリー装置10Aは、その先端側に載置・収納(マウント)したステントグラフト12を、血管を通して大動脈瘤等の病変部(治療部位)に到達させ、ステントグラフト12を展開・留置することで病変部の治療を行うための医療機器である。
【0016】
以下、デリバリー装置10Aの各構成要素について説明する。なお、以下の説明では、図1におけるデリバリー装置10Aの右側(ハンドル20側)を「基端(後端)」側、デリバリー装置10Aの左側(ステントグラフト12側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0017】
デリバリー装置10Aは、先端側でステントグラフト12をマウントした長尺なシャフト14と、シャフト14の外側で摺動可能な長尺なシース16と、シース16の基端部に設けられたシース操作部18と、装置の基端部を構成するハンドル20とを備え、シース16及びシャフト14の先端側におけるシース16とシャフト14との間に、自己拡張機能を有するステントグラフト12を収縮状態で収納し、シャフト14に対してシース16を基端方向に移動させることでステントグラフト12を生体管腔内で拡張・展開させるように構成されている。ステントグラフト12とデリバリー装置10Aとにより、ステントグラフトシステムが構成されている。
【0018】
ステントグラフト12は、一般的なステントグラフトと略同様な構成である。例えば、グラフトは、ポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)やePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)のフィルムをチューブ状に形成して構成される。グラフトの外表面、つまり血管壁と接触する部分には、血液の漏れを防止するために膨潤性のゲル等を塗布してもよい。 ステントは、超弾性合金等からなる針金をZ状やリング状に形成する、又は、超弾性合金からなるパイプをレーザーカットして形成することにより自己拡張性能を有する。ステントを形成する超弾性合金としては、例えば、Ti−Ni合金、Ti−Ni−Fe系合金、Cu−Zn系合金、Cu−Zn−Al系合金、Cu−Al−Ni系合金、Cu−Au−Zn系合金、Cu−Sn系合金、Ni−Al系合金、Ag−Cd系合金、Au−Cd系合金、In−Ti系合金、In−Cd系合金等を挙げることができる。
【0019】
シャフト14は、可撓性を有する柔軟なチューブ状部材である。シャフト14には、ガイドワイヤー25(図6参照)が挿通されるガイドワイヤールーメン22(図3も参照)が全長にわたって貫通形成されるとともに、後述する複数のワイヤーが摺動可能に挿通されるコントロールワイヤールーメン23が軸線方向に形成されている。コントロールワイヤールーメン23は、先端側の開口23aがステントグラフト12の基端近傍に配設されるとともに、シャフト14の基端近傍まで延在している。なお、後述するように、ハンドル20内におけるシャフト14の基端側には、コントロールワイヤールーメン23とシャフト14外部とを連通する第1の側孔48及び第2の側孔50が設けられている(図4及び図5参照)。
【0020】
シャフト14の先端部には、先端側に向かって縮径するノーズコーン24が設けられ、当該ノーズコーン24の基端側には、ステントグラフト12を載置(マウント)するための縮径したマウント部26が設けられている。シャフト14の基端部には、ガイドワイヤー25が導出されるガイドワイヤー用ポート28が、ハンドル20の基端よりも突出して設けられている。
【0021】
シース16は、シャフト14の外面側に摺動可能に配置される可撓性を有する薄肉且つ柔軟なチューブ状部材である。初期状態において、シース16は、シャフト14に対して、マウント部26を完全に覆う位置にあり、マウント部26にステントグラフト12が収納される。この状態で、ステントグラフト12はその外側にあるシース16によって拡張が阻止されている。また、初期状態では、シース16は、ノーズコーン24の基端面に当接(近接)している。
【0022】
このようなシャフト14及びシース16は、術者が基端側を把持及び操作しながら、長尺なチューブの先端を血管内へと円滑に挿通させることができるために、適度な可撓性と適度な強度(コシ。剛性)を有することが好ましい。そこで、シャフト14及びシース16は、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物、或いは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成するとよい。
【0023】
図2は、シース16の内周部に設けられたバルーン30及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図であり、図3は、図2におけるIII−III線に沿った横断面図である。図2及び図3に示すように、ステントグラフト12を収納する部分よりも基端側におけるシース16の内周部には、拡張及び収縮が可能なバルーン30が軸方向の所定範囲に設けられている。
【0024】
バルーン30は、内圧の変化により収縮(折り畳み)及び拡張が可能であり、シース16の外周部に設けられた流体用ポート32を介して内部に注入される拡張用流体により、シャフト14を囲む筒状(円筒状)に拡張するように構成されている。図2では、バルーン30が拡張した状態を示している。バルーン30は、先端部及び基端部にてシース16の内周部に液密に接合されることで、シース16に固着されている。バルーン30とシース16とは、液密に固着されればよく、例えば接着や熱融着によって接合される。
【0025】
シース16の外周部に設けられた流体用ポート32は、バルーン30の内部と連通した内腔32aを有するとともに、インデフレータ等の圧力印加装置71(図6参照)を接続可能であり、当該圧力印加装置71により流体用ポート32を介して所定の流体をバルーン30に対して給排することで、バルーン30を拡張及び収縮させることができる。
【0026】
バルーン30が拡張した状態では、シース16とシャフト14との間のクリアランスが充填される。このため、シース16及びシャフト14を血管内に挿入する際にシース16がキンクすることを防止することができ、また、ステントグラフト12を放出するときのステントグラフト12とシース16との摩擦抵抗が大きい場合でも、シース16内でシャフト14が撓むことを防止できる。
【0027】
バルーン30が拡張した状態でのバルーン30の内径は、バルーン30が囲む部分のシャフト14の外径よりも僅かに大きく設定されるのがよい。これにより、バルーン30の拡張状態において、バルーン30の内周部とシャフト14の外周部との間に僅かなクリアランスが形成される。当該クリアランスは、シース16のキンクやシャフト14の撓みの発生を防止でき、且つシャフト14に対してシース16を軸線方向にスムーズに移動させることができ程度に設定されるのがよい。
【0028】
一方、バルーン30が収縮した状態では、シース16の内周部と、シャフト14の外周部との間に、比較的大きなクリアランスが形成される。このときのクリアランスは、他のカテーテル(例えば、造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる大きさに設定される。
【0029】
バルーン30は、例えば、ステントグラフト12の基端部近傍(ステントグラフト12の基端部よりも僅かに基端側)から、シース16の基端部近傍までの範囲に設けられる。このような範囲にバルーン30が設けられることで、血管内に挿入する際におけるシース16のキンクやシャフト14の撓みの発生を確実に防止することができる。
【0030】
あるいは、バルーン30は、ステントグラフト12の基端部近傍から、シース16のうち体内に挿入される部分までの範囲に設けられてもよく、この場合でも、血管内に挿入する際のシース16のキンクを防止することができる。ただし、この場合、体内に挿入されない部分のシャフト14は金属製とするなど、シース16内でたわまないような剛性を有することが必要である。
【0031】
バルーン30は、適度な可撓性が必要とされるとともに、拡張時にはシース16のキンク及びシャフト14の撓みを防止できる程度の強度が必要である。このため、バルーン30の構成材料としては、過拡張しない材料(ノンコンプライアント材)が最適であり、多少過拡張する材料(セミコンプライアント材)も使用することができる。過拡張しない材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。多少過拡張する材料としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12が挙げられる。
【0032】
バルーン30が過拡張しない材料又は多少過拡張する材料で構成されることにより、バルーン30内に十分な圧力の加圧流体を導入してバルーン30を確実に拡張することができるとともに、拡張時におけるバルーン30の内周部とシャフト14の外周部との間のクリアランスを所望の大きさに維持しやすく、シース16のシャフト14に対する軸線方向の移動の円滑性を確実に担保できる。
【0033】
また、バルーン30の構成材料としては、上記のものに限定されず、弾性材料であってもよい。そのような弾性材料としては、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種ゴム、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステルやポリスチレン、及びそれらの各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。バルーン30がこのような弾性材料で構成される場合、バルーン30の内周部には摩擦抵抗の小さい材料からなる被覆が施されてもよい。被覆の構成材料としては、例えば、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)や潤滑性コートが挙げられる。このような被覆を設けることにより、バルーン30の内周部とシャフト14の外周部との摩擦抵抗が低減されて摺動性が向上し、シャフト14に対するシース16の軸線方向への操作性を高めることができる。
【0034】
図1に示すように、シース16の基端部には、ハンドル20に対して軸線方向に摺動可能なチューブ状のシース操作部18(シーススライダー)が設けられている。このシース操作部18は、術者が手で把持して先端方向又は基端方向に移動操作する部分である。シース操作部18とシース16とは互いに固定されているため、シース操作部18を軸線方向に移動操作することで、シース操作部18とシース16が一体的に軸線方向に移動する。
【0035】
シース操作部18の外周部には、他のカテーテルを挿通可能なカテーテル用ポート34が、ハンドル20側に傾斜して設けられている。カテーテル用ポート34には、シース操作部18の内部空間18aに連通する内腔34aが設けられており、バルーン30の収縮時には、当該内腔34a及び内部空間18aを介して、他のカテーテルをシャフト14とシース16との間のクリアランスに挿入することができる。このようなシース操作部18の構成材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート等の硬質樹脂を例示できる。
【0036】
デリバリー装置10Aでは、X線透視下で当該デリバリー装置10Aのシース16等の位置を視認するため、シースの先端にX線不透過マーカを設けてもよい。X線不透過マーカは、金や白金、タングステン等からなるX線(放射線)不透過性を有する材質(放射線不透過性材)によって形成されており、生体内でシース16の先端位置をX線造影下で視認するためのものである。
【0037】
図4は、ハンドル20及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図であり、図5は、シース操作部18及びその周辺部位を示す一部省略斜視図である。図4及び図5に示すように、ハンドル20は、中空筒状のグリップ部36と、グリップ部36の外周部に着脱可能に取り付けられたコントロール機構38と、グリップ部36の外周部に着脱可能に取り付けられた複数のリリースリング40、42とを有する。
【0038】
グリップ部36は、デリバリー装置10Aを支持するため術者が把持する部分であり、術者が握りやすいように適度の大きさを有しており、先端側からシース操作部18が挿入され、シース操作部18を摺動自在に支持している。グリップ部36内には、シャフト14の基端部が同心的に挿通されるとともに固定されている。
【0039】
コントロール機構38は、ステントグラフト12を生体(血管)内に放出した後に位置を再調整する際にステントグラフト12を収縮させ又は向きを変えるためのステントグラフト位置調整機構(ステントグラフト操作部)として機能するものであり、第1操作リング(第1操作部)44と、第2操作リング(第2操作部)45とからなる。図示した構成例の第1操作リング44及び第2操作リング45は、いずれも、C字状に形成された部材であり、グリップ部36に着脱可能に装着されるとともに、グリップ部36の軸線方向に沿って移動可能にグリップ部36の外周部に支持されている。
【0040】
第1操作リング44には、第1コントロールワイヤー52aの一端が連結されている。第2操作リング45には、第2コントロールワイヤー52bの一端が連結されている。第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bは、グリップ部36に設けられた側孔58及びシャフト14に設けられた第1の側孔48を介して、コントロールワイヤールーメン23内に挿通されており、それらのワイヤーの他端は、シャフト14の先端側に設けられた開口23aから導出されている(図7参照)。なお、第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bとシース操作部18とが干渉してハンドル20に対するシース16の軸線方向への移動が阻害されないように、シース操作部18には、軸線方向に沿って延びるスリット18bが形成され、当該スリット18bに第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bが挿通されている。
【0041】
図示した構成例のリリースリング40、42は、C字状に形成されており、グリップ部36の基端部に着脱可能に装着されている。一方のリリースリング40(以下、第1リリースリング40という)には、第1リリースワイヤー60が連結されている。この第1リリースワイヤー60は、グリップ部36の内外を貫通する孔部63に挿通されるとともに、シャフト14の基端側に設けられた第2の側孔50を介してコントロールワイヤールーメン23内に挿通されており、第1リリースワイヤー60の他端は、シャフト14の先端側に設けられた開口23aから導出されている(図7参照)。
【0042】
他方のリリースリング42(以下、第2リリースリング42という)には、第2リリースワイヤー62が連結されている。この第2リリースワイヤー62は、グリップ部36に設けられた孔部63に挿通されるとともに、シャフト14の基端側に設けられた第2の側孔50を介してコントロールワイヤールーメン23内に挿通されており、第2リリースワイヤー62の他端は、シャフト14の先端側に設けられた開口23aから導出されている(図7参照)。
【0043】
なお、このような第1操作リング44、第2操作リング45、第1コントロールワイヤー52a、第2コントロールワイヤー52b、第1リリースリング40、第2リリースリング42、第1リリースワイヤー60及び第2リリースワイヤー62の作用については、デリバリー装置10Aの使用方法の説明において詳述する。
【0044】
上記のように、デリバリー装置10Aにおいて、シース操作部18はハンドル20に対して軸方向にスライド可能に挿通されるとともに、シャフト14の基端部がハンドル20内で固定されている。従って、術者がハンドル20を把持した状態で、シース操作部18を軸方向に進退操作することにより、シース操作部18に連結されたシース16をシャフト14に対して進退移動させることができる。従って、シース16を後退させると、シース16の内腔内に収納保持されたステントグラフト12を体腔内で展開することができる。
【0045】
本実施形態に係るデリバリー装置10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0046】
デリバリー装置10Aは、例えば、大動脈に発生した大動脈瘤の内側にステントグラフト12を送達し、その位置でステントグラフト12を放出することで当該ステントグラフト12を拡張・展開させ、留置するステントグラフト内挿術に用いられる。図6は、血管70内でステントグラフト12を拡張・展開した状態を示す模式的概略図である。
【0047】
ステントグラフト内挿術では、デリバリー装置10Aを体内に挿入するのに先立って、まず、例えば、大腿動脈内にガイドワイヤー25を挿入し、X線透視下で造影を行って大動脈内に到達させる。
【0048】
続いて、デリバリー装置10Aの流体用ポートに圧力印加装置71を接続し、圧力印加装置71により流体用ポート32を介してバルーン30内に圧力流体を供給する。これにより、バルーン30を拡張させた状態とする。
【0049】
次に、バルーン30が拡張した状態で、ガイドワイヤー25に沿って、先端側にステントグラフト12を収納したデリバリー装置10Aのシャフト14及びシース16の先端部を、血管70内に走行させ、ステントグラフト12を収納したデリバリー装置10Aの先端部を病変部(大動脈瘤)がある位置まで到達させる。このとき、拡張したバルーン30により、シース16とシャフト14との間のクリアランスが充填されているため、シース16及びシャフト14を血管内に挿入する際にシース16がキンクすることを防止することができ、また、ステントグラフト12を放出するときのステントグラフト12とシース16との摩擦抵抗が大きい場合でも、シース16内でシャフト14が撓むことを防止できる。
【0050】
次に、ステントグラフト12を血管70内で展開させる手技を行う。まず、図1に示す初期状態から、患者に対するハンドル20の位置を保持したまま、シース操作部18を把持して基端方向に引き寄せることにより、ハンドル20に対してシース16を基端方向に移動させる。そうすると、シース16の基端方向への移動に伴って、シース16によって拡張が阻止されていたステントグラフト12が徐々に拡張・展開していき、シース16が最も基端側に移動した状態では、図6に示すようにステントグラフト12の全体が拡張・展開した状態となる。
【0051】
血管70内におけるステントグラフト12の位置の再調整(リポジショニング)が必要な場合には、以下の操作を行う。リポジショニングを実現するため、図7に示すように、ステントグラフト12とシャフト14とは、複数のワイヤーにより連結されている。具体的には、ステントグラフト12を構成する図示しない複数のリングステントの各々は、2つの山部と2つの谷部が周方向に交互に形成されるように変形しており、最も先端側にあるリングステントの山部に一対の第1の輪72a、72bが配設されるとともに、シャフト14のノーズコーン24の基端側に連結固定されたループ状の2つのワイヤー74a、74bの一端が、これらの第1の輪72a、72bの各々に通されている。また、ワイヤー74a、74bの、第1の輪72a、72bに通されて引き出された部分に、上述した第1リリースワイヤー60が通されている。これにより、各ワイヤー74a、74bが各第1の輪72a、72bから抜け出ることが阻止された状態となっている。
【0052】
ステントグラフト12において最も先端側にあるリングステントの谷部には、一対の第2の輪76a、76bが配設されるとともに、開口23aから導出された第1コントロールワイヤー52aの先端が、一方の第2の輪76aに通され、第2コントロールワイヤー52bの先端が、他方の第2の輪76bに通されている。また、第1コントロールワイヤー52aの、一方の第2の輪76aに通されて引き出された部分に、上述した第2リリースワイヤー62が通されるとともに、第2コントロールワイヤー52bの、他方の第2の輪76bに通されて引き出された部分に、上述した第2リリースワイヤー62が通されている。これにより、第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bが、第2の輪76a、76bから抜け出ることが阻止されている。
【0053】
ステントグラフト12のリポジショニングを行うには、コントロール機構38の第1操作リング44及び第2操作リング45(図4及び図5参照)を初期位置から基端方向に移動させる。すると、第1操作リング44及び第2操作リング45に連結された第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bが基端方向に引っ張られることで、第2の輪76a、76bがハンドル20側に引っ張られながらシャフト14に近づき、さらに同時に、第1リリースワイヤ60を介してワイヤー74a、74bに係止された第1の輪72a、72bもハンドル側20に引っ張られながらシャフト14に近づく。結果として、ステントグラフト12における最先端部の前記リングステントが折り畳まれて、収縮する。このようにステントグラフト12を収縮させたら、血管70内でシャフト14を移動させることでステントグラフト12を所望の位置に移動させる。次に、第1操作リング44を先端方向に移動して、ステントグラフト12を再び拡張させる。
【0054】
ステントグラフト12の向き(特に、先端側の開口の向き)を変更したい場合には、変更したい向きに応じて、第1操作リング44と第2操作リング45のいずれか一方を基端方向に移動させる。そうすると、第1操作リング44に連結された第1コントロールワイヤー52a又は第2操作リング45に連結された第2コントロールワイヤー52bが引っ張られ、第1コントロールワイヤー52aに引っ掛けられた一方の第2の輪76a又は第2コントロールワイヤー52bに引っ掛けられた他方の第2の輪76bが引っ張られる。これにより、ステントグラフト12の向きを変更することができる。
【0055】
本実施形態に係るデリバリー装置10Aの場合、ステントグラフト12を膨張・展開した後は、バルーン30を収縮させることで、シース16とシャフト14との間に他のカテーテル(造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる状態とすることができる。そこで、バルーン30を収縮させてから、シース16とシャフト14との間にバルーンカテーテルを挿通させ、当該バルーンカテーテルの先端をシース16の先端から突出させる。次に、ステントグラフト12の内側でバルーンカテーテルの先端部に設けられた拡張用バルーンを拡張させ、ステントグラフト12を血管70の内壁に密着させる。このように、バルーンカテーテルを挿通させる別のシースを用いることなく、ステントグラフト12とシャフト14とを複数のワイヤーで連結した状態のまま、バルーンカテーテルを血管70内に挿入することができる。
【0056】
また、造影剤による造影を行う場合、バルーン30を収縮させてから、シース16とシャフト14との間に造影用カテーテルを挿通させ、当該造影用カテーテルの先端をシース16の先端から突出させ、造影剤を吐出させる。このように、造影用カテーテルを挿通させる別のシースを用いることなく、ステントグラフト12とシャフト14とを複数のワイヤーで連結した状態のまま、造影用カテーテルを血管70内に挿入することができる。
【0057】
ステントグラフト12を所望の位置に留置したら、次に、第1リリースリング40(図4及び図5参照)をグリップ部36から取り外して引っ張ることで、第1リリースリング40に連結された第1リリースワイヤー60を基端方向に引っ張り、第1リリースワイヤー60をデリバリー装置10Aから完全に引き抜く。すると、第1リリースワイヤー60が、第1の輪72a、72bに通されたワイヤー74a、74bから抜け出ることで、ワイヤー74a、74bと第1の輪72a、72bとの係合が解除される。
【0058】
また、第2リリースリング42をグリップ部36から取り外して引っ張ることで、第2リリースリング42に連結された第2リリースワイヤー62を基端方向に引っ張り、第2リリースワイヤー62をデリバリー装置10Aから完全に引き抜く。すると、第2リリースワイヤー62が、第2の輪76a、76bに通された第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bから抜け出ることで、第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bと第2の輪76a、76bとの係合が解除される。このとき、第1操作リング44及び第2操作リング45をグリップ部36から取り外して引っ張ることで、第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bを基端方向に引っ張り、デリバリー装置10Aから完全に引き抜いてもよい。
【0059】
このように、第1リリースワイヤー60及び第2リリースワイヤー62がデリバリー装置10Aから完全に抜去されることで、ステントグラフト12がシャフト14から完全に分離した状態となる。
【0060】
ところで、造影剤の注入や、バルーンカテーテルによるステントグラフト12の拡張を実施した後に、上述したリポジショニングを実施したい場合がある。一方、デリバリー装置10Aによりリポジショニングを行うには、当該デリバリー装置10Aの構造上、ステントグラフト12とシャフト14とが上述した複数のワイヤーにより連結されていることが必要であり、最終的にステントグラフト12の位置が確定するまではシース16内にシャフト14を挿通させた状態としておく必要がある。
【0061】
従来のデリバリー装置では、上述したように装置基端側のシースとシャフトとのクリアランスが小さいため、ステントグラフトを血管内に放出した後、造影用カテーテルや、バルーンカテーテルをデリバリー装置のシースとシャフトとの間に挿入できず、それらのカテーテルを入れるための別のシースを血管内に別途挿入する必要があった。
【0062】
そこで、本実施形態に係るデリバリー装置10Aでは、ステントグラフト12を収納する部分よりも基端側におけるシース16の内周部に、拡張及び収縮が可能なバルーン30が軸方向の所定範囲に設けられている。このように構成されたデリバリー装置10Aによれば、ステントグラフト12を拡張・展開するまでは、バルーン30を膨張させておくことで、シース16とシャフト14との間のクリアランスが充填されるため、シース16のキンクやシャフト14の撓みの発生を防止できる。また、ステントグラフト12を膨張・展開した後は、バルーン30を収縮させることで、シース16とシャフト14との間に他のカテーテル(造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる状態とすることができる。
【0063】
上述したデリバリー装置10Aにおけるバルーン30は、拡張時の内部空間がシース16の軸線方向に沿って中空円筒状に延在する構成であるが、このようなバルーン30に代えて、図8に示すように、シース16の内周部に沿って螺旋状に配設されたバルーン80を採用してもよい。このように構成されたバルーン80を採用することにより、バルーン80を拡張した状態でもシース16の柔軟性を好適に確保することができる。なお、この場合、バルーン80の拡張時におけるバルーン80の内周部とシャフト14の外周部との間のクリアランスや、バルーン80を設ける範囲は、上述したバルーン30と同様に設定してよい。
【0064】
次に、図9を参照し、第2実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置10B(以下、「デリバリー装置10B」という)について説明する。なお、第2実施形態に係るデリバリー装置10Bにおいて、第1実施形態に係るデリバリー装置10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0065】
デリバリー装置10Bは、先端側でステントグラフト12をマウントした長尺なシャフト90と、シャフト90の外側で摺動可能な長尺なシース92と、シース92の基端部に設けられたシース操作部18と、装置の基端部を構成するハンドル20とを備えている。図10は、シャフト90の外周部に設けられたバルーン94及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図であり、図11は、図10におけるXI−XI線に沿った断面図である。
【0066】
本実施形態に係るデリバリー装置10Bでは、ステントグラフト12を収納する部分よりも基端側におけるシャフト90の外周部に、拡張及び収縮が可能なバルーン94が軸方向の所定範囲に設けられ、シャフト90に拡張用ルーメン96が設けられ、シャフト90の基端部に流体用ポート98(図9参照)が設けられている。シャフト90のその他の部分の構成は、図1等に示したシャフト14と同様である。
【0067】
バルーン94は、内圧の変化により収縮(折り畳み)及び拡張が可能であり、流体用ポート98及び拡張用ルーメン96を介して内部に注入される拡張用流体により、シャフト90を囲む筒状(円筒状)に拡張するように構成されている。図10及び図11では、バルーン94が拡張した状態を示している。バルーン94は、先端部及び基端部にてシャフト90の外周部に液密に接合されることで、シャフト90に固着されている。バルーン94とシャフト90とは、液密に固着されればよく、例えば接着や熱融着によって接合される。
【0068】
バルーン94が拡張した状態では、シース92とシャフト90との間のクリアランスが充填される。このため、シース92及びシャフト90を血管内に挿入する際にシース92がキンクすることを防止することができ、また、ステントグラフト12を放出するときのステントグラフト12とシース92との摩擦抵抗が大きい場合でも、シース92内でシャフト90が撓むことを防止できる。
【0069】
バルーン94が拡張した状態でのバルーン94の外径は、当該バルーン94を囲むシース92の内径よりも僅かに小さく設定されるのがよい。これにより、バルーン94の拡張状態において、バルーン94の外周部とシース92の内周部との間に僅かなクリアランスが形成される。当該クリアランスは、シース92のキンクやシャフト90の撓みの発生を防止でき、且つシャフト90に対してシース92を軸線方向にスムーズに移動させることができ程度に設定されるのがよい。
【0070】
一方、バルーン94が収縮した状態では、シース92の内周部と、シャフト90の外周部との間に、比較的大きなクリアランスが形成される。このときのクリアランスは、他のカテーテル(例えば、造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる大きさに設定される。
【0071】
バルーン94は、例えば、ステントグラフト12の基端部近傍(ステントグラフト12の基端部よりも僅かに基端側)から、初期状態におけるシース92の基端部近傍までの範囲に設けられる。このような範囲にバルーン94が設けられることで、血管内に挿入する際におけるシース92のキンクやシャフト90の撓みの発生を確実に防止することができる。
【0072】
あるいは、バルーン94は、ステントグラフト12の基端部近傍から、シャフト90のうち体内に挿入される部分までの範囲に設けられてもよく、この場合でも、血管内に挿入する際のシース92のキンクを防止することができる。ただし、この場合、体内に挿入されない部分のシャフト90は金属製とするなど、シース92内でたわまないような剛性を有することが必要である。
【0073】
バルーン94は、適度な可撓性が必要とされるとともに、拡張時にはシース92のキンク及びシャフト90の撓みを防止できる程度の強度が必要である。したがって、バルーン94の構成材料としては、上述した第1実施形態におけるバルーン30の構成材料として例示したものから選択することができる。
【0074】
拡張用ルーメン96は、バルーン94内と流体用ポート98の内腔とを連通するように形成されている。流体用ポート98は、インデフレータ等の圧力印加装置71(図6参照)を接続可能である。したがって、圧力印加装置71を流体用ポート98に接続し、流体用ポート98を介して所定の流体をバルーン94に対して給排することで、バルーン94を拡張及び収縮させることができる。
【0075】
本実施形態に係るデリバリー装置10Bにおけるシース92は、第1実施形態に係るデリバリー装置10Aにおけるシース16からバルーン30及び流体用ポート32を省略したものに相当する。
【0076】
上記のように構成されたデリバリー装置10Bによれば、ステントグラフト12を拡張・展開するまでは、バルーン94を膨張させておくことで、シース92とシャフト90との間のクリアランスが充填されるため、シース92及びシャフト90を血管内に挿入する際にシース92がキンクすることを防止することができ、また、ステントグラフト12を放出するときのステントグラフト12とシース92との摩擦抵抗が大きい場合でも、シース92内でシャフト90が撓むことを防止できる。また、ステントグラフト12を膨張・展開した後は、バルーン94を収縮させることで、シース92とシャフト90との間に他のカテーテル(造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる状態とすることができる。
【0077】
第2実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0078】
なお、上述したデリバリー装置10Bにおけるバルーン94は、拡張時の内部空間がシース92の軸線方向に沿って中空円筒状に延在する構成であるが、このようなバルーン94に代えて、図12に示すように、シャフト90の外周部に沿って螺旋状に配設されたバルーン100を採用してもよい。このように構成されたバルーン100を採用することにより、バルーン100を拡張した状態でもシャフト90の柔軟性を好適に確保することができる。なお、この場合、バルーン94の拡張時におけるバルーン94の外周部とシース92の内周部との間のクリアランスや、バルーン94を設ける範囲は、上述したバルーン94と同様に設定してよい。
【0079】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
10A、10B…ステントグラフトデリバリー装置
12…ステント 14、90…シャフト
16、92…シース 20…ハンドル
30、80、94、100…バルーン
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントグラフトデリバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大動脈瘤や大動脈解離の治療には人工血管を用いた外科手術が行われてきたが、近年下記特許文献1に開示されているようなステントグラフト(ステント付き人工血管)を用いた低侵襲治療が広がっている。ステントグラフトを用いた治療法はステントグラフト内挿術と呼ばれ、経カテーテル的にステントグラフトを大動脈瘤内に挿入・留置して血管形成する。それら一連の操作を行う機器をステントグラフトシステムと呼び、あらかじめカテーテル内にステントグラフトを折りたたんで収納しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6740111号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステントグラフト内挿術に使用されるデリバリー装置は、シース、シャフト及びハンドルからなり、シースとシャフトはそれぞれ基端部(手元側端部)でハンドルに連結している。デリバリー装置では、その先端部近傍におけるシースとシャフトとの間にステントグラフトが収納される。このため、デリバリー装置先端部におけるシースとシャフトとの間には、ステントグラフトを収納するのに十分なクリアランスが必要である。一方、デリバリー装置基端側におけるシースとシャフトとの間には、シャフトに対してシースが軸線方向にスムーズに動くのに必要最低限のクリアランスしか存在しない。それは、デリバリー装置基端側でシースとシャフトとの間のクリアランスが大きすぎると、シースがキンクする恐れがあるためである。また、ステントグラフトを放出するときのステントグラフトとシースとの摩擦抵抗が大きい場合、シース内でシャフトが撓む可能性があるからである。
【0005】
従来のデリバリー装置では、上述したように装置基端側のシースとシャフトとのクリアランスが小さいため、ステントグラフトを血管内に放出した後、造影用カテーテルや、ステントグラフト拡張用のバルーンカテーテルをデリバリー装置のシースとシャフトとの間に挿入できず、それらのカテーテルを入れるための別のシースを血管内に別途挿入する必要があった。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、シースのキンクやシャフトの撓みの発生を防止できるとともに、ステントグラフトを拡張・展開させた後にシースとシャフトとの間に他のカテーテルを挿入することができるステントグラフトデリバリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、長尺なシャフトと、前記シャフトの外側に配置され、前記シャフトに対して軸線方向に移動可能な管状のシースとを備え、前記シース及び前記シャフトの先端側における前記シースと前記シャフトとの間に、自己拡張機能を有するステントグラフトを収縮状態で収納し、前記シャフトに対して前記シースを基端方向に移動させることで前記ステントグラフトを生体管腔内で拡張・展開させるステントグラフトデリバリー装置であって、前記ステントグラフトを収納する部分よりも基端側における前記シースの内周部と前記シャフトの外周部の少なくとも一方に、拡張及び収縮が可能なバルーンが軸方向の所定範囲に設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明のこのような構成によれば、ステントグラフトを拡張・展開するまでは、バルーンを膨張させておくことで、シースとシャフトとの間のクリアランスが充填されるため、シースのキンクやシャフトの撓みの発生を防止できる。ステントグラフトを膨張・展開した後は、バルーンを収縮させることで、シースとシャフトとの間に他のカテーテル(造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる状態とすることができる。
【0009】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記バルーンは、前記シースの内周部に設けられ、前記バルーンの拡張状態において、前記バルーンと前記シャフトとの間に僅かなクリアランスが形成されるとよい。このように構成すると、バルーンの拡張後においても、シャフトに対してシースを軸線方向へ容易に移動させることができ、良好な操作性が得られる。
【0010】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記バルーンは、前記シャフトの外周部に設けられ、前記バルーンの拡張状態において、前記バルーンと前記シースとの間に僅かなクリアランスが形成されるとよい。このように構成すると、バルーンの拡張後においても、シャフトに対してシースを軸線方向へ容易に移動させることができ、良好な操作性が得られる。
【0011】
上記のステントグラフトデリバリー装置において、前記バルーンは、螺旋状に配設されているとよい。このように構成すると、バルーンを拡張した状態でもシース又はシャフトの柔軟性を好適に確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のステントグラフトデリバリー装置によれば、シースのキンクやシャフトの撓みの発生を防止できるとともに、ステントグラフトを拡張・展開させた後にシースとシャフトとの間に他のカテーテルを挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置の全体構成を示す一部断面側面図である。
【図2】シースの内周部に設けられたバルーン及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿った模式的断面図である。
【図4】ハンドル及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【図5】ハンドル及びその周辺部位を示す一部省略斜視図である。
【図6】ステントグラフトデリバリー装置を用いた手技を示す第1の概略説明図である。
【図7】ステントグラフトデリバリー装置を用いた手技を示す第2の概略説明図である。
【図8】変形例に係るバルーンを備えたシース及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置の全体構成を示す一部断面側面図である。
【図10】図9に示したステントグラフトデリバリー装置におけるシャフトの外周部に設けられたバルーン及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線に沿った模式的断面図である。
【図12】変形例に係るバルーンを備えたシャフト及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るステントグラフトデリバリー装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置10A(以下、「デリバリー装置10A」という)の全体構成を示す一部断面側面図である。図1では、デリバリー装置10Aを長手方向の途中で分断し、上下に分けて示している。デリバリー装置10Aは、その先端側に載置・収納(マウント)したステントグラフト12を、血管を通して大動脈瘤等の病変部(治療部位)に到達させ、ステントグラフト12を展開・留置することで病変部の治療を行うための医療機器である。
【0016】
以下、デリバリー装置10Aの各構成要素について説明する。なお、以下の説明では、図1におけるデリバリー装置10Aの右側(ハンドル20側)を「基端(後端)」側、デリバリー装置10Aの左側(ステントグラフト12側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0017】
デリバリー装置10Aは、先端側でステントグラフト12をマウントした長尺なシャフト14と、シャフト14の外側で摺動可能な長尺なシース16と、シース16の基端部に設けられたシース操作部18と、装置の基端部を構成するハンドル20とを備え、シース16及びシャフト14の先端側におけるシース16とシャフト14との間に、自己拡張機能を有するステントグラフト12を収縮状態で収納し、シャフト14に対してシース16を基端方向に移動させることでステントグラフト12を生体管腔内で拡張・展開させるように構成されている。ステントグラフト12とデリバリー装置10Aとにより、ステントグラフトシステムが構成されている。
【0018】
ステントグラフト12は、一般的なステントグラフトと略同様な構成である。例えば、グラフトは、ポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)やePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)のフィルムをチューブ状に形成して構成される。グラフトの外表面、つまり血管壁と接触する部分には、血液の漏れを防止するために膨潤性のゲル等を塗布してもよい。 ステントは、超弾性合金等からなる針金をZ状やリング状に形成する、又は、超弾性合金からなるパイプをレーザーカットして形成することにより自己拡張性能を有する。ステントを形成する超弾性合金としては、例えば、Ti−Ni合金、Ti−Ni−Fe系合金、Cu−Zn系合金、Cu−Zn−Al系合金、Cu−Al−Ni系合金、Cu−Au−Zn系合金、Cu−Sn系合金、Ni−Al系合金、Ag−Cd系合金、Au−Cd系合金、In−Ti系合金、In−Cd系合金等を挙げることができる。
【0019】
シャフト14は、可撓性を有する柔軟なチューブ状部材である。シャフト14には、ガイドワイヤー25(図6参照)が挿通されるガイドワイヤールーメン22(図3も参照)が全長にわたって貫通形成されるとともに、後述する複数のワイヤーが摺動可能に挿通されるコントロールワイヤールーメン23が軸線方向に形成されている。コントロールワイヤールーメン23は、先端側の開口23aがステントグラフト12の基端近傍に配設されるとともに、シャフト14の基端近傍まで延在している。なお、後述するように、ハンドル20内におけるシャフト14の基端側には、コントロールワイヤールーメン23とシャフト14外部とを連通する第1の側孔48及び第2の側孔50が設けられている(図4及び図5参照)。
【0020】
シャフト14の先端部には、先端側に向かって縮径するノーズコーン24が設けられ、当該ノーズコーン24の基端側には、ステントグラフト12を載置(マウント)するための縮径したマウント部26が設けられている。シャフト14の基端部には、ガイドワイヤー25が導出されるガイドワイヤー用ポート28が、ハンドル20の基端よりも突出して設けられている。
【0021】
シース16は、シャフト14の外面側に摺動可能に配置される可撓性を有する薄肉且つ柔軟なチューブ状部材である。初期状態において、シース16は、シャフト14に対して、マウント部26を完全に覆う位置にあり、マウント部26にステントグラフト12が収納される。この状態で、ステントグラフト12はその外側にあるシース16によって拡張が阻止されている。また、初期状態では、シース16は、ノーズコーン24の基端面に当接(近接)している。
【0022】
このようなシャフト14及びシース16は、術者が基端側を把持及び操作しながら、長尺なチューブの先端を血管内へと円滑に挿通させることができるために、適度な可撓性と適度な強度(コシ。剛性)を有することが好ましい。そこで、シャフト14及びシース16は、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物、或いは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成するとよい。
【0023】
図2は、シース16の内周部に設けられたバルーン30及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図であり、図3は、図2におけるIII−III線に沿った横断面図である。図2及び図3に示すように、ステントグラフト12を収納する部分よりも基端側におけるシース16の内周部には、拡張及び収縮が可能なバルーン30が軸方向の所定範囲に設けられている。
【0024】
バルーン30は、内圧の変化により収縮(折り畳み)及び拡張が可能であり、シース16の外周部に設けられた流体用ポート32を介して内部に注入される拡張用流体により、シャフト14を囲む筒状(円筒状)に拡張するように構成されている。図2では、バルーン30が拡張した状態を示している。バルーン30は、先端部及び基端部にてシース16の内周部に液密に接合されることで、シース16に固着されている。バルーン30とシース16とは、液密に固着されればよく、例えば接着や熱融着によって接合される。
【0025】
シース16の外周部に設けられた流体用ポート32は、バルーン30の内部と連通した内腔32aを有するとともに、インデフレータ等の圧力印加装置71(図6参照)を接続可能であり、当該圧力印加装置71により流体用ポート32を介して所定の流体をバルーン30に対して給排することで、バルーン30を拡張及び収縮させることができる。
【0026】
バルーン30が拡張した状態では、シース16とシャフト14との間のクリアランスが充填される。このため、シース16及びシャフト14を血管内に挿入する際にシース16がキンクすることを防止することができ、また、ステントグラフト12を放出するときのステントグラフト12とシース16との摩擦抵抗が大きい場合でも、シース16内でシャフト14が撓むことを防止できる。
【0027】
バルーン30が拡張した状態でのバルーン30の内径は、バルーン30が囲む部分のシャフト14の外径よりも僅かに大きく設定されるのがよい。これにより、バルーン30の拡張状態において、バルーン30の内周部とシャフト14の外周部との間に僅かなクリアランスが形成される。当該クリアランスは、シース16のキンクやシャフト14の撓みの発生を防止でき、且つシャフト14に対してシース16を軸線方向にスムーズに移動させることができ程度に設定されるのがよい。
【0028】
一方、バルーン30が収縮した状態では、シース16の内周部と、シャフト14の外周部との間に、比較的大きなクリアランスが形成される。このときのクリアランスは、他のカテーテル(例えば、造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる大きさに設定される。
【0029】
バルーン30は、例えば、ステントグラフト12の基端部近傍(ステントグラフト12の基端部よりも僅かに基端側)から、シース16の基端部近傍までの範囲に設けられる。このような範囲にバルーン30が設けられることで、血管内に挿入する際におけるシース16のキンクやシャフト14の撓みの発生を確実に防止することができる。
【0030】
あるいは、バルーン30は、ステントグラフト12の基端部近傍から、シース16のうち体内に挿入される部分までの範囲に設けられてもよく、この場合でも、血管内に挿入する際のシース16のキンクを防止することができる。ただし、この場合、体内に挿入されない部分のシャフト14は金属製とするなど、シース16内でたわまないような剛性を有することが必要である。
【0031】
バルーン30は、適度な可撓性が必要とされるとともに、拡張時にはシース16のキンク及びシャフト14の撓みを防止できる程度の強度が必要である。このため、バルーン30の構成材料としては、過拡張しない材料(ノンコンプライアント材)が最適であり、多少過拡張する材料(セミコンプライアント材)も使用することができる。過拡張しない材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。多少過拡張する材料としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12が挙げられる。
【0032】
バルーン30が過拡張しない材料又は多少過拡張する材料で構成されることにより、バルーン30内に十分な圧力の加圧流体を導入してバルーン30を確実に拡張することができるとともに、拡張時におけるバルーン30の内周部とシャフト14の外周部との間のクリアランスを所望の大きさに維持しやすく、シース16のシャフト14に対する軸線方向の移動の円滑性を確実に担保できる。
【0033】
また、バルーン30の構成材料としては、上記のものに限定されず、弾性材料であってもよい。そのような弾性材料としては、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種ゴム、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステルやポリスチレン、及びそれらの各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。バルーン30がこのような弾性材料で構成される場合、バルーン30の内周部には摩擦抵抗の小さい材料からなる被覆が施されてもよい。被覆の構成材料としては、例えば、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)や潤滑性コートが挙げられる。このような被覆を設けることにより、バルーン30の内周部とシャフト14の外周部との摩擦抵抗が低減されて摺動性が向上し、シャフト14に対するシース16の軸線方向への操作性を高めることができる。
【0034】
図1に示すように、シース16の基端部には、ハンドル20に対して軸線方向に摺動可能なチューブ状のシース操作部18(シーススライダー)が設けられている。このシース操作部18は、術者が手で把持して先端方向又は基端方向に移動操作する部分である。シース操作部18とシース16とは互いに固定されているため、シース操作部18を軸線方向に移動操作することで、シース操作部18とシース16が一体的に軸線方向に移動する。
【0035】
シース操作部18の外周部には、他のカテーテルを挿通可能なカテーテル用ポート34が、ハンドル20側に傾斜して設けられている。カテーテル用ポート34には、シース操作部18の内部空間18aに連通する内腔34aが設けられており、バルーン30の収縮時には、当該内腔34a及び内部空間18aを介して、他のカテーテルをシャフト14とシース16との間のクリアランスに挿入することができる。このようなシース操作部18の構成材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート等の硬質樹脂を例示できる。
【0036】
デリバリー装置10Aでは、X線透視下で当該デリバリー装置10Aのシース16等の位置を視認するため、シースの先端にX線不透過マーカを設けてもよい。X線不透過マーカは、金や白金、タングステン等からなるX線(放射線)不透過性を有する材質(放射線不透過性材)によって形成されており、生体内でシース16の先端位置をX線造影下で視認するためのものである。
【0037】
図4は、ハンドル20及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図であり、図5は、シース操作部18及びその周辺部位を示す一部省略斜視図である。図4及び図5に示すように、ハンドル20は、中空筒状のグリップ部36と、グリップ部36の外周部に着脱可能に取り付けられたコントロール機構38と、グリップ部36の外周部に着脱可能に取り付けられた複数のリリースリング40、42とを有する。
【0038】
グリップ部36は、デリバリー装置10Aを支持するため術者が把持する部分であり、術者が握りやすいように適度の大きさを有しており、先端側からシース操作部18が挿入され、シース操作部18を摺動自在に支持している。グリップ部36内には、シャフト14の基端部が同心的に挿通されるとともに固定されている。
【0039】
コントロール機構38は、ステントグラフト12を生体(血管)内に放出した後に位置を再調整する際にステントグラフト12を収縮させ又は向きを変えるためのステントグラフト位置調整機構(ステントグラフト操作部)として機能するものであり、第1操作リング(第1操作部)44と、第2操作リング(第2操作部)45とからなる。図示した構成例の第1操作リング44及び第2操作リング45は、いずれも、C字状に形成された部材であり、グリップ部36に着脱可能に装着されるとともに、グリップ部36の軸線方向に沿って移動可能にグリップ部36の外周部に支持されている。
【0040】
第1操作リング44には、第1コントロールワイヤー52aの一端が連結されている。第2操作リング45には、第2コントロールワイヤー52bの一端が連結されている。第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bは、グリップ部36に設けられた側孔58及びシャフト14に設けられた第1の側孔48を介して、コントロールワイヤールーメン23内に挿通されており、それらのワイヤーの他端は、シャフト14の先端側に設けられた開口23aから導出されている(図7参照)。なお、第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bとシース操作部18とが干渉してハンドル20に対するシース16の軸線方向への移動が阻害されないように、シース操作部18には、軸線方向に沿って延びるスリット18bが形成され、当該スリット18bに第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bが挿通されている。
【0041】
図示した構成例のリリースリング40、42は、C字状に形成されており、グリップ部36の基端部に着脱可能に装着されている。一方のリリースリング40(以下、第1リリースリング40という)には、第1リリースワイヤー60が連結されている。この第1リリースワイヤー60は、グリップ部36の内外を貫通する孔部63に挿通されるとともに、シャフト14の基端側に設けられた第2の側孔50を介してコントロールワイヤールーメン23内に挿通されており、第1リリースワイヤー60の他端は、シャフト14の先端側に設けられた開口23aから導出されている(図7参照)。
【0042】
他方のリリースリング42(以下、第2リリースリング42という)には、第2リリースワイヤー62が連結されている。この第2リリースワイヤー62は、グリップ部36に設けられた孔部63に挿通されるとともに、シャフト14の基端側に設けられた第2の側孔50を介してコントロールワイヤールーメン23内に挿通されており、第2リリースワイヤー62の他端は、シャフト14の先端側に設けられた開口23aから導出されている(図7参照)。
【0043】
なお、このような第1操作リング44、第2操作リング45、第1コントロールワイヤー52a、第2コントロールワイヤー52b、第1リリースリング40、第2リリースリング42、第1リリースワイヤー60及び第2リリースワイヤー62の作用については、デリバリー装置10Aの使用方法の説明において詳述する。
【0044】
上記のように、デリバリー装置10Aにおいて、シース操作部18はハンドル20に対して軸方向にスライド可能に挿通されるとともに、シャフト14の基端部がハンドル20内で固定されている。従って、術者がハンドル20を把持した状態で、シース操作部18を軸方向に進退操作することにより、シース操作部18に連結されたシース16をシャフト14に対して進退移動させることができる。従って、シース16を後退させると、シース16の内腔内に収納保持されたステントグラフト12を体腔内で展開することができる。
【0045】
本実施形態に係るデリバリー装置10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0046】
デリバリー装置10Aは、例えば、大動脈に発生した大動脈瘤の内側にステントグラフト12を送達し、その位置でステントグラフト12を放出することで当該ステントグラフト12を拡張・展開させ、留置するステントグラフト内挿術に用いられる。図6は、血管70内でステントグラフト12を拡張・展開した状態を示す模式的概略図である。
【0047】
ステントグラフト内挿術では、デリバリー装置10Aを体内に挿入するのに先立って、まず、例えば、大腿動脈内にガイドワイヤー25を挿入し、X線透視下で造影を行って大動脈内に到達させる。
【0048】
続いて、デリバリー装置10Aの流体用ポートに圧力印加装置71を接続し、圧力印加装置71により流体用ポート32を介してバルーン30内に圧力流体を供給する。これにより、バルーン30を拡張させた状態とする。
【0049】
次に、バルーン30が拡張した状態で、ガイドワイヤー25に沿って、先端側にステントグラフト12を収納したデリバリー装置10Aのシャフト14及びシース16の先端部を、血管70内に走行させ、ステントグラフト12を収納したデリバリー装置10Aの先端部を病変部(大動脈瘤)がある位置まで到達させる。このとき、拡張したバルーン30により、シース16とシャフト14との間のクリアランスが充填されているため、シース16及びシャフト14を血管内に挿入する際にシース16がキンクすることを防止することができ、また、ステントグラフト12を放出するときのステントグラフト12とシース16との摩擦抵抗が大きい場合でも、シース16内でシャフト14が撓むことを防止できる。
【0050】
次に、ステントグラフト12を血管70内で展開させる手技を行う。まず、図1に示す初期状態から、患者に対するハンドル20の位置を保持したまま、シース操作部18を把持して基端方向に引き寄せることにより、ハンドル20に対してシース16を基端方向に移動させる。そうすると、シース16の基端方向への移動に伴って、シース16によって拡張が阻止されていたステントグラフト12が徐々に拡張・展開していき、シース16が最も基端側に移動した状態では、図6に示すようにステントグラフト12の全体が拡張・展開した状態となる。
【0051】
血管70内におけるステントグラフト12の位置の再調整(リポジショニング)が必要な場合には、以下の操作を行う。リポジショニングを実現するため、図7に示すように、ステントグラフト12とシャフト14とは、複数のワイヤーにより連結されている。具体的には、ステントグラフト12を構成する図示しない複数のリングステントの各々は、2つの山部と2つの谷部が周方向に交互に形成されるように変形しており、最も先端側にあるリングステントの山部に一対の第1の輪72a、72bが配設されるとともに、シャフト14のノーズコーン24の基端側に連結固定されたループ状の2つのワイヤー74a、74bの一端が、これらの第1の輪72a、72bの各々に通されている。また、ワイヤー74a、74bの、第1の輪72a、72bに通されて引き出された部分に、上述した第1リリースワイヤー60が通されている。これにより、各ワイヤー74a、74bが各第1の輪72a、72bから抜け出ることが阻止された状態となっている。
【0052】
ステントグラフト12において最も先端側にあるリングステントの谷部には、一対の第2の輪76a、76bが配設されるとともに、開口23aから導出された第1コントロールワイヤー52aの先端が、一方の第2の輪76aに通され、第2コントロールワイヤー52bの先端が、他方の第2の輪76bに通されている。また、第1コントロールワイヤー52aの、一方の第2の輪76aに通されて引き出された部分に、上述した第2リリースワイヤー62が通されるとともに、第2コントロールワイヤー52bの、他方の第2の輪76bに通されて引き出された部分に、上述した第2リリースワイヤー62が通されている。これにより、第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bが、第2の輪76a、76bから抜け出ることが阻止されている。
【0053】
ステントグラフト12のリポジショニングを行うには、コントロール機構38の第1操作リング44及び第2操作リング45(図4及び図5参照)を初期位置から基端方向に移動させる。すると、第1操作リング44及び第2操作リング45に連結された第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bが基端方向に引っ張られることで、第2の輪76a、76bがハンドル20側に引っ張られながらシャフト14に近づき、さらに同時に、第1リリースワイヤ60を介してワイヤー74a、74bに係止された第1の輪72a、72bもハンドル側20に引っ張られながらシャフト14に近づく。結果として、ステントグラフト12における最先端部の前記リングステントが折り畳まれて、収縮する。このようにステントグラフト12を収縮させたら、血管70内でシャフト14を移動させることでステントグラフト12を所望の位置に移動させる。次に、第1操作リング44を先端方向に移動して、ステントグラフト12を再び拡張させる。
【0054】
ステントグラフト12の向き(特に、先端側の開口の向き)を変更したい場合には、変更したい向きに応じて、第1操作リング44と第2操作リング45のいずれか一方を基端方向に移動させる。そうすると、第1操作リング44に連結された第1コントロールワイヤー52a又は第2操作リング45に連結された第2コントロールワイヤー52bが引っ張られ、第1コントロールワイヤー52aに引っ掛けられた一方の第2の輪76a又は第2コントロールワイヤー52bに引っ掛けられた他方の第2の輪76bが引っ張られる。これにより、ステントグラフト12の向きを変更することができる。
【0055】
本実施形態に係るデリバリー装置10Aの場合、ステントグラフト12を膨張・展開した後は、バルーン30を収縮させることで、シース16とシャフト14との間に他のカテーテル(造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる状態とすることができる。そこで、バルーン30を収縮させてから、シース16とシャフト14との間にバルーンカテーテルを挿通させ、当該バルーンカテーテルの先端をシース16の先端から突出させる。次に、ステントグラフト12の内側でバルーンカテーテルの先端部に設けられた拡張用バルーンを拡張させ、ステントグラフト12を血管70の内壁に密着させる。このように、バルーンカテーテルを挿通させる別のシースを用いることなく、ステントグラフト12とシャフト14とを複数のワイヤーで連結した状態のまま、バルーンカテーテルを血管70内に挿入することができる。
【0056】
また、造影剤による造影を行う場合、バルーン30を収縮させてから、シース16とシャフト14との間に造影用カテーテルを挿通させ、当該造影用カテーテルの先端をシース16の先端から突出させ、造影剤を吐出させる。このように、造影用カテーテルを挿通させる別のシースを用いることなく、ステントグラフト12とシャフト14とを複数のワイヤーで連結した状態のまま、造影用カテーテルを血管70内に挿入することができる。
【0057】
ステントグラフト12を所望の位置に留置したら、次に、第1リリースリング40(図4及び図5参照)をグリップ部36から取り外して引っ張ることで、第1リリースリング40に連結された第1リリースワイヤー60を基端方向に引っ張り、第1リリースワイヤー60をデリバリー装置10Aから完全に引き抜く。すると、第1リリースワイヤー60が、第1の輪72a、72bに通されたワイヤー74a、74bから抜け出ることで、ワイヤー74a、74bと第1の輪72a、72bとの係合が解除される。
【0058】
また、第2リリースリング42をグリップ部36から取り外して引っ張ることで、第2リリースリング42に連結された第2リリースワイヤー62を基端方向に引っ張り、第2リリースワイヤー62をデリバリー装置10Aから完全に引き抜く。すると、第2リリースワイヤー62が、第2の輪76a、76bに通された第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bから抜け出ることで、第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bと第2の輪76a、76bとの係合が解除される。このとき、第1操作リング44及び第2操作リング45をグリップ部36から取り外して引っ張ることで、第1コントロールワイヤー52a及び第2コントロールワイヤー52bを基端方向に引っ張り、デリバリー装置10Aから完全に引き抜いてもよい。
【0059】
このように、第1リリースワイヤー60及び第2リリースワイヤー62がデリバリー装置10Aから完全に抜去されることで、ステントグラフト12がシャフト14から完全に分離した状態となる。
【0060】
ところで、造影剤の注入や、バルーンカテーテルによるステントグラフト12の拡張を実施した後に、上述したリポジショニングを実施したい場合がある。一方、デリバリー装置10Aによりリポジショニングを行うには、当該デリバリー装置10Aの構造上、ステントグラフト12とシャフト14とが上述した複数のワイヤーにより連結されていることが必要であり、最終的にステントグラフト12の位置が確定するまではシース16内にシャフト14を挿通させた状態としておく必要がある。
【0061】
従来のデリバリー装置では、上述したように装置基端側のシースとシャフトとのクリアランスが小さいため、ステントグラフトを血管内に放出した後、造影用カテーテルや、バルーンカテーテルをデリバリー装置のシースとシャフトとの間に挿入できず、それらのカテーテルを入れるための別のシースを血管内に別途挿入する必要があった。
【0062】
そこで、本実施形態に係るデリバリー装置10Aでは、ステントグラフト12を収納する部分よりも基端側におけるシース16の内周部に、拡張及び収縮が可能なバルーン30が軸方向の所定範囲に設けられている。このように構成されたデリバリー装置10Aによれば、ステントグラフト12を拡張・展開するまでは、バルーン30を膨張させておくことで、シース16とシャフト14との間のクリアランスが充填されるため、シース16のキンクやシャフト14の撓みの発生を防止できる。また、ステントグラフト12を膨張・展開した後は、バルーン30を収縮させることで、シース16とシャフト14との間に他のカテーテル(造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる状態とすることができる。
【0063】
上述したデリバリー装置10Aにおけるバルーン30は、拡張時の内部空間がシース16の軸線方向に沿って中空円筒状に延在する構成であるが、このようなバルーン30に代えて、図8に示すように、シース16の内周部に沿って螺旋状に配設されたバルーン80を採用してもよい。このように構成されたバルーン80を採用することにより、バルーン80を拡張した状態でもシース16の柔軟性を好適に確保することができる。なお、この場合、バルーン80の拡張時におけるバルーン80の内周部とシャフト14の外周部との間のクリアランスや、バルーン80を設ける範囲は、上述したバルーン30と同様に設定してよい。
【0064】
次に、図9を参照し、第2実施形態に係るステントグラフトデリバリー装置10B(以下、「デリバリー装置10B」という)について説明する。なお、第2実施形態に係るデリバリー装置10Bにおいて、第1実施形態に係るデリバリー装置10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0065】
デリバリー装置10Bは、先端側でステントグラフト12をマウントした長尺なシャフト90と、シャフト90の外側で摺動可能な長尺なシース92と、シース92の基端部に設けられたシース操作部18と、装置の基端部を構成するハンドル20とを備えている。図10は、シャフト90の外周部に設けられたバルーン94及びその周辺部位を示す一部省略縦断面図であり、図11は、図10におけるXI−XI線に沿った断面図である。
【0066】
本実施形態に係るデリバリー装置10Bでは、ステントグラフト12を収納する部分よりも基端側におけるシャフト90の外周部に、拡張及び収縮が可能なバルーン94が軸方向の所定範囲に設けられ、シャフト90に拡張用ルーメン96が設けられ、シャフト90の基端部に流体用ポート98(図9参照)が設けられている。シャフト90のその他の部分の構成は、図1等に示したシャフト14と同様である。
【0067】
バルーン94は、内圧の変化により収縮(折り畳み)及び拡張が可能であり、流体用ポート98及び拡張用ルーメン96を介して内部に注入される拡張用流体により、シャフト90を囲む筒状(円筒状)に拡張するように構成されている。図10及び図11では、バルーン94が拡張した状態を示している。バルーン94は、先端部及び基端部にてシャフト90の外周部に液密に接合されることで、シャフト90に固着されている。バルーン94とシャフト90とは、液密に固着されればよく、例えば接着や熱融着によって接合される。
【0068】
バルーン94が拡張した状態では、シース92とシャフト90との間のクリアランスが充填される。このため、シース92及びシャフト90を血管内に挿入する際にシース92がキンクすることを防止することができ、また、ステントグラフト12を放出するときのステントグラフト12とシース92との摩擦抵抗が大きい場合でも、シース92内でシャフト90が撓むことを防止できる。
【0069】
バルーン94が拡張した状態でのバルーン94の外径は、当該バルーン94を囲むシース92の内径よりも僅かに小さく設定されるのがよい。これにより、バルーン94の拡張状態において、バルーン94の外周部とシース92の内周部との間に僅かなクリアランスが形成される。当該クリアランスは、シース92のキンクやシャフト90の撓みの発生を防止でき、且つシャフト90に対してシース92を軸線方向にスムーズに移動させることができ程度に設定されるのがよい。
【0070】
一方、バルーン94が収縮した状態では、シース92の内周部と、シャフト90の外周部との間に、比較的大きなクリアランスが形成される。このときのクリアランスは、他のカテーテル(例えば、造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる大きさに設定される。
【0071】
バルーン94は、例えば、ステントグラフト12の基端部近傍(ステントグラフト12の基端部よりも僅かに基端側)から、初期状態におけるシース92の基端部近傍までの範囲に設けられる。このような範囲にバルーン94が設けられることで、血管内に挿入する際におけるシース92のキンクやシャフト90の撓みの発生を確実に防止することができる。
【0072】
あるいは、バルーン94は、ステントグラフト12の基端部近傍から、シャフト90のうち体内に挿入される部分までの範囲に設けられてもよく、この場合でも、血管内に挿入する際のシース92のキンクを防止することができる。ただし、この場合、体内に挿入されない部分のシャフト90は金属製とするなど、シース92内でたわまないような剛性を有することが必要である。
【0073】
バルーン94は、適度な可撓性が必要とされるとともに、拡張時にはシース92のキンク及びシャフト90の撓みを防止できる程度の強度が必要である。したがって、バルーン94の構成材料としては、上述した第1実施形態におけるバルーン30の構成材料として例示したものから選択することができる。
【0074】
拡張用ルーメン96は、バルーン94内と流体用ポート98の内腔とを連通するように形成されている。流体用ポート98は、インデフレータ等の圧力印加装置71(図6参照)を接続可能である。したがって、圧力印加装置71を流体用ポート98に接続し、流体用ポート98を介して所定の流体をバルーン94に対して給排することで、バルーン94を拡張及び収縮させることができる。
【0075】
本実施形態に係るデリバリー装置10Bにおけるシース92は、第1実施形態に係るデリバリー装置10Aにおけるシース16からバルーン30及び流体用ポート32を省略したものに相当する。
【0076】
上記のように構成されたデリバリー装置10Bによれば、ステントグラフト12を拡張・展開するまでは、バルーン94を膨張させておくことで、シース92とシャフト90との間のクリアランスが充填されるため、シース92及びシャフト90を血管内に挿入する際にシース92がキンクすることを防止することができ、また、ステントグラフト12を放出するときのステントグラフト12とシース92との摩擦抵抗が大きい場合でも、シース92内でシャフト90が撓むことを防止できる。また、ステントグラフト12を膨張・展開した後は、バルーン94を収縮させることで、シース92とシャフト90との間に他のカテーテル(造影用カテーテルやバルーンカテーテル等)を挿入できる状態とすることができる。
【0077】
第2実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0078】
なお、上述したデリバリー装置10Bにおけるバルーン94は、拡張時の内部空間がシース92の軸線方向に沿って中空円筒状に延在する構成であるが、このようなバルーン94に代えて、図12に示すように、シャフト90の外周部に沿って螺旋状に配設されたバルーン100を採用してもよい。このように構成されたバルーン100を採用することにより、バルーン100を拡張した状態でもシャフト90の柔軟性を好適に確保することができる。なお、この場合、バルーン94の拡張時におけるバルーン94の外周部とシース92の内周部との間のクリアランスや、バルーン94を設ける範囲は、上述したバルーン94と同様に設定してよい。
【0079】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
10A、10B…ステントグラフトデリバリー装置
12…ステント 14、90…シャフト
16、92…シース 20…ハンドル
30、80、94、100…バルーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なシャフトと、
前記シャフトの外側に配置され、前記シャフトに対して軸線方向に移動可能な管状のシースとを備え、
前記シース及び前記シャフトの先端側における前記シースと前記シャフトとの間に、自己拡張機能を有するステントグラフトを収縮状態で収納し、前記シャフトに対して前記シースを基端方向に移動させることで前記ステントグラフトを生体管腔内で拡張・展開させるステントグラフトデリバリー装置であって、
前記ステントグラフトを収納する部分よりも基端側における前記シースの内周部と前記シャフトの外周部の少なくとも一方に、拡張及び収縮が可能なバルーンが軸方向の所定範囲に設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項2】
請求項1記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記バルーンは、前記シースの内周部に設けられ、
前記バルーンの拡張状態において、前記バルーンと前記シャフトとの間に僅かなクリアランスが形成される、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項3】
請求項1記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記バルーンは、前記シャフトの外周部に設けられ、
前記バルーンの拡張状態において、前記バルーンと前記シースとの間に僅かなクリアランスが形成される、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記バルーンは、螺旋状に配設されている、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項1】
長尺なシャフトと、
前記シャフトの外側に配置され、前記シャフトに対して軸線方向に移動可能な管状のシースとを備え、
前記シース及び前記シャフトの先端側における前記シースと前記シャフトとの間に、自己拡張機能を有するステントグラフトを収縮状態で収納し、前記シャフトに対して前記シースを基端方向に移動させることで前記ステントグラフトを生体管腔内で拡張・展開させるステントグラフトデリバリー装置であって、
前記ステントグラフトを収納する部分よりも基端側における前記シースの内周部と前記シャフトの外周部の少なくとも一方に、拡張及び収縮が可能なバルーンが軸方向の所定範囲に設けられる、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項2】
請求項1記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記バルーンは、前記シースの内周部に設けられ、
前記バルーンの拡張状態において、前記バルーンと前記シャフトとの間に僅かなクリアランスが形成される、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項3】
請求項1記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記バルーンは、前記シャフトの外周部に設けられ、
前記バルーンの拡張状態において、前記バルーンと前記シースとの間に僅かなクリアランスが形成される、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントグラフトデリバリー装置において、
前記バルーンは、螺旋状に配設されている、
ことを特徴とするステントグラフトデリバリー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−205838(P2012−205838A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75371(P2011−75371)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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