説明

ステンドグラス製の電灯傘及びその製作方法。

【課題】 ステンドグラスに描かれた絵柄を壁、天井、床に投影して(柄飛びさせて)装飾効果を挙げる。また、回転や昇降させて更に興趣の高いものにする。
【解決手段】 電球を中に収容したステンドグラスを使用した電灯傘において、上端に少なくとも電線が挿入される孔があき、下方が漸拡径した多角錘の上半分部と、上半分部の下端に接続される上半分部の下端と同一の形状をした中間部と、中間部に接続され、下方が漸縮径した多角錘の下半分部とからなり、下半分部の下端に電球の取替えができる程度の孔をあけるとともに、電灯傘を回転や昇降ができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンドグラスを使用したステンドグラス製の電灯傘及びその製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステンドグラスは透明ガラスに所望の絵柄を描いた着色ガラスを組み込んだガラスピースを集合して所定の大きさと形状にしたガラスユニットにし、ガラスユニットを接合して所要の形状に仕上げるものである。ステンドグラスが使用される典型的な例は教会等の窓ガラスであるが、下記特許文献1〜3に見られるように電灯傘も多く製造されている。これらに共通するのは透明ガラスの中にステンドグラスを入れ込んだもので、これではステンドグラス本来のよさが出ない。
【0003】
ステンドグラスのみの電灯傘によれば、壁(天井や床も含む。以下、同じ)を白っぽい色にしておくことで、電灯傘の絵柄が壁に投影され(これを柄飛びという)、装飾効果が高い。この場合の電灯傘は平面部を有する方が柄飛びが鮮明であり、しかも、製作が容易なため、下方に漸拡径する多角錘をしているものが多い(中には円錐形をしたものもある)。
【0004】
ところが、従来の電灯傘は多角錘をしていても、上半分部のみであり、柄飛びは傘の下方(床等)には飛ばず、装飾効果としてはもの足らなかった。この最大の理由は伝統的なステンドガラスの装飾品はガラスピース及びガラスユニットの接着にハンダを用いるからであり、ハンダ付けは表面のみでなく、裏面も必要とするため、裏面にハンダごてを挿入できるスペースが必要であるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−161215号公報
【特許文献2】特開平09−045119号公報
【特許文献3】特開平09−147610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、柄飛びが下方の床等にも飛ぶ電灯傘を提供し、装飾的効果をより高めたものである。加えて、電灯傘を回転及び/又は昇降させると、柄飛びした絵柄が動き、かつ、焦点が合ったりぼやけたりして非常に興趣の高いものになるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、電球を中に収容したステンドグラスを使用した電灯傘において、上端に少なくとも電線が挿入される孔があき、下方が漸拡径した多角錘の上半分部と、上半分部の下端に接続される上半分部の下端と同一の形状をした中間部と、中間部に接続され、下方が漸縮径した多角錘の下半分部とからなり、下半分部の下端に電球の取替えができる程度の孔をあけたことを特徴とするステンドグラス製の電灯傘を提供するとともに、これにおいて、請求項2に記載した、上半分部及び下半分部の漸拡径及び漸縮径の角度が45°程度である手段、請求項3に記載した、電灯傘が回転及び/又は昇降ができる手段を提供する。
【0008】
また、本発明は、以上の電灯傘の製作方法において、請求項4に記載した、電灯傘がステンドグラスの伝統的手法で製造されるものであり、下半分部の下端をハンダごて及び清掃のための手が入る程度の孔があいた状態で止め、この孔から半田ごてを挿入して上半分部、中間部及び下半分部の裏面部のハンダ付けをするとともに、清掃布等で清掃した後、下半分部の下端に下端に電球交換が可能な程度の孔があいた部分下半分部を接続することを特徴とするステンドグラス製の電灯傘の製作方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、柄飛びが下方にも飛ぶことになり、装飾効果が高い。そして、請求項2の手段によると、柄飛びした絵柄が壁に焦点が合い、鮮明な画像になる。また、請求項3の手段によると、柄飛びして壁に写った絵柄が回転し、天井や床には焦点が合ったりぼやけたりして装飾効果はより高くなり、興趣も増す。請求項4の手段によると、従来、請求項1に記した完成された姿では裏面のハンダ付けや綺麗な清掃が不可能であったものも可能になり、本発明のような電灯傘を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ステンドグラス製の電灯傘の平面図である。
【図2】ステンドグラス製の電灯傘の側面図である。
【図3】ステンドグラス製の電灯傘を構成するガラスユニットの正面図である。
【図4】ステンドグラス製の電灯傘の回転及び昇降を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、図1はこの電灯傘の平面図、図2は側面図、図3はガラスピースを集合させたガラスユニットの正面図である。まず、ステンドグラスの装飾品を製作する場合について説明する。この製作をステンドグラスの伝統的な方法で行うには次のような工程による。
【0012】
1.所望の形状をしたでき上りの装飾品(本例では、上下端方向に径が減縮する12面体をした電灯傘)の一部分を構成するステンドグラスのガラスピース1を製作する。ガラスピース1には絵柄部分1aとなる比較的色の濃いものとそれ以外の基体部分1bとなる比較的色の薄い(透明も含む)ものからなる。
【0013】
2.ガラスピース1を集合して一つの多面体であるガラスユニット2を製作する。このとき、ガラスピース1を接合する必要があるが、これをハンダ付けで行う。そのためには、ガラスピース1の縁を面取りし、これに銅テープ(図示省略)を密着させ、その溝にハンダを埋め込む。これにより、鉛と錫の合金であるハンダが銅テープと接着し、ガラスピース1同士が接合する。ガラスユニット2はガラスピース1を寄せ集めたモザイク模様をしていることになる。本例のガラスユニット2は三つのガラスピース1を一つの面とし、これを四段に重ねたものにしている。
【0014】
なお、ハンダ付けが終了したら、ハンダの部分をセレン等で薬品処理する。これを行うと、一種の酸化である黒色化するが、ハンダの酸化は鉄等と違って中まで浸透せず、長期に亘ってその脆性化を防ぐ。本例の絵柄部分1aは上下に細長い帯であり、ガラスユニット2の12面体すべて同じ形状にしている。なお、ハンダ付けは表裏両面に行う。
【0015】
3.ガラスユニット2を集合させて12面体の電灯傘とする。この接合も表裏面のハンダ付けで行う。また、上端には電線3が挿入できる孔があいて後述する減速モータに連結する連結環4を形成しておく。
【0016】
4.これで上半分部5が完成されたことになるが、上半分部5は下方に行くほど径が大きい漸拡径していることになる。このときの角度は45°付近であり、この角度程度にしなければ、天井や壁に絵柄が合焦しない。同様の工程によって下半分部6も製作する。下半分部6は上半分部5とは逆の形態をしており、下方に行くほど径が小さくなる漸縮径していることになる。このときの角度も45°付近である。ただし、下端には少なくとも電球7の取替えができる孔8が形成されている。また、本例では、絵柄部分1aはすべてのガラスユニット2で同じにしている。
【0017】
5.以上の上半分部5と下半分部6とを接続するが、このとき、上半分部5(下半分部6も同じであるが)の下端と同じ形状をした中間部9を介在させる。こうすると、上半分部5と下半分部6の接続が容易であり、かつ、装飾効果も高いからである。上半分部5、下半分部6及び中間部9の接続は表裏面のハンダ付けで行うのは同じである。
【0018】
6.ただし、裏面のハンダ付けをより容易に行うために、このとき、下半分部6の下端にはハンダごてが楽に挿入でき、かつ、ハンダ付けをした後に裏面を綺麗に清掃できる清掃布等が挿入できる150mm程度の孔を残しておき、下半分部6の下端Aはこの径までにしておく(丈が若干短くなる)。
【0019】
7.これでは孔が大きすぎて下方への柄飛びが十分ではないので、最後に下端の孔8を60mm程度にした下半分部6に連続する形状をした部分下半分部10を製作し、これを下半分部6の下端に同じくハンダで接続する(特殊のハンダごてを使用すれば、裏面もハンダ付けができる)。孔8の径が60mm程度というのは電球を取り替える際に最低限必要であるからである。なお、本例では、部分下半分部10には絵柄部分1aがないが、もちろん、存在させていてもよい。
【0020】
8.これで電灯傘が完成されたことになるが、中に電球7を取り付け、これに給電することで、絵柄部分1aと基体部分1bとが色分けされて周囲、上下に柄飛びし、非常に興趣の高いものになる。このとき、投影面が近いと絵柄は合焦し、非常に鮮明なものになるし、遠くなると投影像も拡大し、焦点もぼやける。
【0021】
これだけでも、柄飛びは上方(天井)、側方(壁)、下方(床)に飛ぶが、次の構造によると、興趣が更に増す。具体的には、電灯傘を回転及び/又は(以下は及びと称する)昇降させることである。図4はその概念図であるが、まず、回転は、二本のガイドバー11を起立させて中央に凸部12aを有する下部フレーム12を用意し、これに電灯傘の上半分部5の連結環4に取付軸13を連結し、取付軸13に連結した出力軸を有する回転用モータ14を固定する。
【0022】
次に、ガイドバー11に摺動可能に嵌合される下垂アーム15aを有する上部フレーム15を天井等16に取り付ける。そして、上部フレームの下面に昇降用モータ17を取り付け、その出力軸に下部フレーム12の凸部12に形成されたネジ孔に螺合するネジ18を取り付けておく。これにより、回転用モータ14を駆動すれば、電灯傘は回転し、昇降用モータ17を駆動すれば、電灯傘は昇降する。ただし、回転のときに電線3が捩れてはならないので、取付軸13の中にはロータリ接続機構19を組み込んでおく。
【0023】
電灯傘を回転と昇降をさせれば、絵柄部分1aは回転と昇降をするが、回転すれば、柄飛びした絵柄が次々に動き、興趣の高いものになる。また、昇降させれは、絵柄部分1a、基体部分1bが天井と床に対して近くなったり遠くなったりし、合焦して鮮明にもなれば、ぼやけたりして非常に興趣の高いものになる。この点で、回転及び昇降はあまり速度が早くないものがよい。なお、電線は、回転用モータ14、下部フレーム12ネジ18、昇降用モータ17を通して天井等16に挿通したり、這わせたして電源につないでおくのはいうまでもない。さらに、以上において、回転、昇降はこの構成に限らないのはもちろんである(例えば、伸縮シリンダによるものでもよい)。
【0024】
以上は、本発明の実施例であり、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、絵柄不分1aは細長い帯に限るものではないし、一面体に一つとは限らない。また、すべての面体で同じものにするとも限らない。同様に多角錘も12面体に限らない(場合によっては球体でもよい)。さらに、基体部分1bも透明や淡い色に限るものではない。
【符号の説明】
【0025】
1 ガラスピース
1a 〃 の絵柄部分
1b 〃 の基体部分
2 ガラスユニット
3 電線
4 連結環
5 上半分部
6 下半分部
7 電球
8 下端の孔
9 中間部
10 部分下半分部
11 ガイドバー
12 下部フレーム
12a 〃 の凸部
13 取付軸
14 回転用モータ
15 上部フレーム
15a 〃 の下垂アーム
16 天井等
17 昇降用モータ
18 ネジ
19 ロータリ接続機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電球を中に収容したステンドグラスを使用した電灯傘において、上端に少なくとも電線が挿入される孔があき、下方が漸拡径した多角錘の上半分部と、上半分部の下端に接続される上半分部の下端と同一の形状をした中間部と、中間部に接続され、下方が漸縮径した多角錘の下半分部とからなり、下半分部の下端に電球の取替えができる程度の孔をあけたことを特徴とするステンドグラス製の電灯傘。
【請求項2】
上半分部及び下半分部の漸拡径及び漸縮径の角度が45°程度である請求項1のステンドグラス製の電灯傘。
【請求項3】
電灯傘が回転及び/又は昇降ができる請求項1又は2のステンドグラス製の電灯傘。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかのステンドグラス製の電灯傘の製作方法において、電灯傘がステンドグラスの伝統的手法で製造されるものであり、下半分部の下端をハンダごて及び清掃のための手が入る程度の孔があいた状態で止め、この孔から半田ごてを挿入して上半分部、中間部及び下半分部の裏面部のハンダ付けをするとともに、清掃布等で清掃した後、下半分部の下端に下端に電球交換が可能な程度の孔があいた部分下半分部を接続することを特徴とするステンドグラス製の電灯傘の製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−98029(P2013−98029A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240173(P2011−240173)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(511266140)