説明

ステンレス及びアルミニウム合金ダストの検出方法

【課題】 クリーンルームで捕集されたダストがステンレス製装置に由来するものか、アルミニウム合金製装置に由来するものかを検出する方法を提供する。
【解決手段】 捕集されたダストに酸と酸化剤を滴下して加熱溶解し、鉄及びアルミニウムとそれぞれ異なる色調の錯体を形成する試薬を滴下して、その結果得られた呈色の色調から、ステンレスまたはアルミニウムの含有を検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステンレス及びアルミニウム合金ダストの検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム等のクリーン環境下で生産活動をおこなっている産業分野は、現在では多岐にわたっている。これらの生産現場では、各種製造用設備が使用されているが、摩耗等による金属ダストの発生は避けがたいものである。そして、そのダストは製品への混入や付着により、品質低下を惹起する可能性があるものとなっている。
したがって、生産現場では、金属ダスト発生状況の把握がまず必要とされているが、簡単には進まないのが現状である。よく用いられているのはSEM−EDX等の大型分析機器である。しかし、これらは装置価格が高価であり、ランニングコストも大きいと言わざるを得ない。一方、オンサイトで顕微鏡観察等を実施しても、由来を同定することは困難である。
【0003】
クリーンルームで使用されている製造設備の多くは、ステンレス製あるいはアルミニウム合金製のものが多いので、摩耗等により飛散するダストもステンレスあるいはアルミニウム合金であると考えられる。
大型分析装置以外での金属ダストの検出方法は、現在のところ殆ど知られていない。一方、微量の鉄を検出する方法としては、各種錯形成剤を用いた方法が存在する。しかし、その多くは、中性付近での厳密なpH制御を必要とするものであり、検出操作の煩雑な感度が低いものであると言える。
更に、アルミニウムについては、吸光光度法の長い歴史の中でも特に選択的な錯形成試薬に欠けることが知られている元素である。そのため、低価格で効果的なアルミニウム合金ダストの検出方法を入手することは、困難であると言える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
捕集したダストの由来を調査する大型分析装置は、多大な費用を必要とする。したがって、安価で簡便なオンサイト検出方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
捕集したダスト試料を耐熱性と耐薬品性を併せ持つ時計皿等に置き、酸と酸化剤を添加して、加熱溶解する。その後、鉄及びアルミニウムと錯形成する溶液を滴下し、その色調から、当該ダストがステンレスあるいはアルミニウムを含有することを検出する。その場合、検出感度を向上させるため、滴下試薬の合計を100マイクロリットル以下とする。
【発明の効果】
【0006】
固形物であるダストに、微量の酸と酸化剤を滴下し加熱することにより、ダストを溶解し、鉄が存在すれば3価の鉄イオンに酸化できる。溶解した試料に錯形成試薬を滴下することにより、溶液中の3価の鉄イオン、あるいは、アルミニウムイオンが錯体を形成して呈色する。その色調が鉄とアルミニウムで異なるため、鉄とアルミニウムの識別が可能となる。ここで必要なものは、時計皿のような容器、試薬類と加熱装置、及びピペット類であるので、低価格で簡便な検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
捕集されたダストを時計皿に置き、塩酸と酸化剤を滴下し、100℃で3〜4分間加熱する。つぎに錯形成剤であるキシレノールオレンジ溶液と緩衝液を滴下してその色調を目視観察する。ダスト成分がステンレスの場合は、濃青色を示す。アルミニウムの場合は、鮮明な赤色を示す。
【実施例】
【0008】
ステンレス試料及びアルミニウム試料から削り取った疑似ダストに上記の方法を適用した。操作手順を図1に、検出結果を図2に示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ダスト検出の手順
【図2】疑似ダストの検出結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を酸で溶解した後、鉄イオン及びアルミニウムイオンと反応してそれぞれ異なる色調を呈する錯形成剤を添加し、その色調から試料の由来を判定する方法。
【請求項2】
前記試料の溶解剤として塩酸を使用し、錯形成剤としてキシレノールオレンジを使用したことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記試料に滴下する溶解剤および試薬の合計が100マイクロリットル以下であることを特徴とする請求項2の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−39015(P2011−39015A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198937(P2009−198937)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(508372412)サトダサイエンス合同会社 (9)
【Fターム(参考)】