説明

ステージ用テントとその組立方法

【課題】ステージの天井部から背面及び両側部を囲うものとして、組立構築に際して足場を組む必要がなく、組立作業を熟練を要さずに容易に短時間で高所作業を排して安全に行えるステージ用テントを提供する。
【解決手段】ステージ幅方向の梁部11と両側柱部12、12とからなる前後複数基の門形フレーム1A〜1Dが、両側柱部12、12の下端部で土台2両側の支持枠21,21に着脱可能に枢着されて、後位側ほど後傾して側面視扇形に配置し、これら門形フレーム1A〜1Dの前後に隣接する梁部11,11間、ならびに最後位の門形フレーム1Dの梁部11と土台2間に、ステージ幅方向の所要間隔置きに繋ぎ杆3…が着脱可能に架設されて、最前位の門形フレーム1Aを間口とするテント骨組み10を構成し、テント骨組み10の天井部から背面部にわたる所要領域にカバーシート4Aが張設されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野外ステージでコンサートや演劇等を始めとする様々な催しを行う際に、ステージの天井部から背面及び両側部を囲うのに用いるステージ用テントと、その組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野外ステージでは、雨除けや日除けのための天井部と、背景隠しに舞台演出を兼ねた背面部を仮設するのが普通であるが、これら天井部及び背面部は、鉄骨やパイプ材にて構築した骨組みに、シートや軽量パネル材を張設した構成が一般的である。
【0003】
しかるに、従来の野外ステージの仮設工事では、前記骨組みの組立構築、シートの張設、照明具や看板の取り付け等のために非常に手間がかかる上、足場を組んでの高所作業を余儀なくされ、その作業に危険を伴うと共に熟練を要し、また足場のための余分なスペースも必要になるといった問題があった。とりわけ、広いステージ空間に対応する骨組みでは、強度面より柱部や梁部をトラス構造にする等、使用する個々の部材が大型で重いものになるから、その組立構築に多大な労力と時間を費やすことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の状況に鑑み、ステージの天井部から背面及び両側部を囲うものとして、その組立構築に際して足場を組む必要がなく、組立作業を熟練を要さずに容易に短時間で、しかも高所作業を排して安全に行えるステージ用テントと、その組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るステージ用テントは、図面の参照符号を付して示せば、ステージ幅方向の梁部11と両側柱部12、12とからなる前後複数基の門形フレーム1A〜1Dが、両側柱部12、12の下端部で土台2両側の支持枠21,21に着脱可能に枢着されて、後位側ほど後傾して側面視扇形に配置すると共に、これら門形フレーム1A〜1Dの前後に隣接する梁部11,11間、ならびに最後位の門形フレーム1Dの梁部11と土台2間に、ステージ幅方向の所要間隔置きに繋ぎ杆3…が着脱可能に架設されて、最前位の門形フレーム1Aを間口とするテント骨組み10を構成し、このテント骨組み10の少なくとも天井部から背面部にわたる所要領域にカバーシート4Aが張設されてなる構成としている。
【0006】
請求項2の発明は、上記請求項1のステージ用テントにおいて、側面視扇形をなす両側面部の所要領域にカバーシート4Bが張設されてなるものとしている。
【0007】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2のステージ用テントにおいて、門形フレーム1A〜1Dの前後に隣接する柱部12,12の中間部同士が着脱可能な補強桟5にて繋がれてなるものとしている。
【0008】
請求項4の発明は、上記請求項3のステージ用テントにおいて、土台2の前記支持枠21に対し、前後複数基の門形フレーム1A〜1Dにおける柱部12の下端部(枢支用パイプ18)が前位の門形フレームほど高くなる異なる位置で枢着され、前記補強桟5が屈伸リンク51,52からなると共に、この屈伸リンク51,52と前記支持枠21とを繋ぐ補強杆53が着脱可能に取り付けられてなるものとしている。
【0009】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかのステージ用テントにおいて、門形フレーム1A〜1Dの前後に隣接する梁部11,11間に、複数本のブレース6…が着脱可能に連結されてなるものとしている。
【0010】
請求項6の発明は、上記請求項1〜5のいずれかのステージ用テントにおいて、門形フレーム1A〜1Dの梁部11及び両側柱部12,12がトラス構造を有する少なくとも一つの独立部材からなり、これら部材同士のボルト止め連結によって門形フレーム1A〜1Dが構成されてなるものとしている。
【0011】
請求項7の発明は、上記請求項1〜5のいずれかのステージ用テントにおいて、門形フレーム1の両側柱部12,12の下端部と土台2両側の支持枠21,21とにピン挿通孔(枢支用パイプ18,ピン挿通孔22)が設けられ、両者のピン挿通孔を連通して枢支ピン8を挿通することにより、該支持枠21に前後複数基の門形フレーム1…が枢着されてなるものとしている。
【0012】
一方、請求項8の発明に係るステージ用テントの組立方法は、ステージ幅方向の梁部11と両側柱部12,12とからなる前後複数基の門形フレーム1A〜1Dを、両側柱部12,12の下端部で土台2両側の支持枠21,21に一体に枢着して、後位側のものから順に倒伏姿勢で積み上げた形で待機させ、その最上位にある門形フレーム1Aの上部側を機械力によって段階的に引き起こしながら、各引き起こし段階で斜めに持ち上がった門形フレームと倒伏姿勢の次位の門形フレームの梁部11,11同士をステージ幅方向の所要間隔置きに繋ぎ杆3…で連結し、最終的に最後位の門形フレーム1Dの梁部と土台2とを同様に繋ぎ杆3…で連結しすることにより、全部の門形フレーム1A〜1Dを引き起こして後位ほど後傾した側面視扇形に連結一体化して、最前位の門形フレーム1Aを間口とするテント骨組み10を構築すると共に、このテント骨組み10の少なくとも天井部から背面部にわたる所要領域にカバーシート4Aを張設することを特徴としている。
【0013】
請求項9の発明は、上記請求項8のステージ用テントの組立方法において、斜めに持ち上げられた門形フレームと倒伏姿勢の次位の門形フレームの梁部11,11間を連結する各段階毎に、テント骨組み10の所要部位に対する前記カバーシート4Aの取付作業を行う構成としている。
【0014】
請求項10の発明は、上記請求項8又は9のステージ用テントの組立方法において、上記機械力による引き起こしをクレーン車MのクレーンCによって行う構成としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係るステージ用テントでは、前後複数基の門形フレームと、土台と、複数本の繋ぎ杆とは相互に着脱可能であるから、テント組立前にはこれらを分離した状態で容易に搬送及び取扱いできる。そして、複数基の門形フレームは組立状態で後位側ほど後傾して側面視扇形に配置するものであるから、テント組立の際には、これら門形フレームを倒伏姿勢で後位側から順に上へ積み重なる形にして、全部の門形フレームの両側柱部を土台の支持枠に枢着し、その最上位の門形フレームの上部側を機械力で段階的に引き起こしてゆく各段階において、斜めに持ち上がった門形フレームの梁部と、倒伏している次位の門形フレームの梁部とを繋ぎ杆で連結してゆく手法により、最終的に最後位の門形フレームの梁部と土台とを同様に連結してテント骨組み全体を構築できる。
【0016】
しかして、この手法では、組立状態における各門形フレームの位置と姿勢には関係なく、その繋ぎ杆による連結のための作業部位が低い位置になるから、全ての門形フレームの連結作業を地上位置で行え、またカバーシートの貼着作業、照明具その他の器材や看板、装飾物の高所への取付作業等も全て地上で行うことが可能になるため、高所作業を排して作業の安全性を確保できる上、作業自体も容易になって熟練を要さずに能率よく行えるから、テント骨組みの組立構築の工期を大幅に短縮できる。また、構築したステージ用テントは、左右両側面部が1/4円形で、天井部より背面部にわたって湾曲した半割り蒲鉾形をなすから、一般的に多い単純な箱型とは異なり、独特な雰囲気のステージ空間を現出し、コンサートや演劇等の催しの興趣を高める効果もある。
【0017】
請求項2の発明によれば、テント骨組みの側面視扇形をなす両側面部にカバーシートが張設されることから、両側面部が開放している構成に比較し、ステージの音響効果が向上すると共に、該カバーシートを側面部の風除けや舞台演出に利用できる。なお、この側面部のカバーシートの張設についても、門形フレームを引き起こして行く各段階で地上から行うようにすればよい。
【0018】
請求項3の発明によれば、前後に隣接する門形フレームが柱部の中間部同士で補強桟によって繋がれているから、テント骨組みの強度がより向上する。
【0019】
請求項4の発明によれば、前後複数基の門形フレームは、土台の支持枠に対して柱部の下端部が前位の門形フレームほど高い位置で枢着されているから、柱部の下端部が同じ構造であっても、前記骨組みの組立構築に際し、支持枠枢着側で互いに干渉せずに、倒伏姿勢で上下に積み重ねることができる。また、この支持枠に対する枢着構造では、前後に隣接する門形フレームの柱部同士と繋ぎ杆及び支持枠とで構成される四辺形の形が門形フレームの引き起こしに伴って変化し、これによって柱部の中間部同士の距離も変動するが、この中間部同士を繋ぐ補強桟が屈伸リンクになっているために該距離の変動を吸収できると共に、構築後のテント骨組みでは該屈伸リンクと支持枠とを繋ぐ補強杆によって三角形の枠が形成されるから、該骨組みの側面部の強度が増大する。
【0020】
請求項5の発明によれば、前後に隣接する門形フレームの梁部間にブレースが連結されているから、テント骨組みの強度がより向上する。
【0021】
請求項6の発明によれば、門形フレームの梁部及び両側柱部がトラス構造の独立部材からなるため、テント骨組みがより高強度になると共に、これら独立部材同士のボルト止め連結によって門形フレームが構成されることから、組立前の部材が嵩張らずに運搬や保管に好都合であり、組立操作も容易である。
【0022】
請求項7の発明によれば、各門形フレームの両側柱部の下端部と、土台両側の支持枠とが枢支ピンによって枢着される構造であるから、その着脱操作を容易に行える。
【0023】
請求項8の発明に係るステージ用テントの組立方法によれば、前後複数基の門形フレームを、両側柱部の下端部で土台両側の支持枠に一体に枢着し、後位側のものから順に倒伏姿勢で積み上げた形で待機させ、最上位の門形フレームの上部側を機械力によって段階的に引き起こしながら、各引き起こし段階で斜めに持ち上がった門形フレームと倒伏姿勢の次位の門形フレームの梁部同士をステージ幅方向の所要間隔置きに繋ぎ杆で連結し、最終的に最後位の門形フレームの梁部と土台とを同様に繋ぎ杆で連結してテント骨組みを構築することから、その組立構築に際して足場を組む必要がなく、組立作業を熟練を要さずに容易に短時間で、しかも高所作業を排して安全に行える。
【0024】
請求項9の発明によれば、上記のステージ用テントの組立方法において、斜めに持ち上げられた門形フレームと倒伏姿勢の次位の門形フレームの梁部間を連結する各段階毎に、テント骨組みの所要部位に対するカバーシートの取付作業を行うから、該カバーシートの張設に高所作業を必要とせず、それだけ作業の安全性を確保できると共に、作業そのものも容易になる。
【0025】
請求項10の発明によれば、前記機械力による門形フレームの引き起こしをクレーン車のクレーンによって行うため、引き起こしに好都合な高位置からの吊上げを無理なく行える上、その段階的な引き起こし操作を容易に精度よく行え、また引上げ手段が自走するので野外ステージ構築現場へ持込むための労力を要しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るステージ用テントとその組立方法の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
このステージ用テントは、図1及び図2に示すように、コ字枠形の土台2上に、ステージ幅方向に沿う梁部11と左右両側の柱部12,12とからなる前後4基の門形フレーム1A〜1Dが、各々両側柱部12、12の下端部を土台2の左右両側の支持枠21,21に枢着して、最前位の門形フレーム1Aを垂直にして後位側ほど後傾するように側面視扇形に配置し、これら門形フレーム1A〜1Dの前後に隣接する梁部11,11間、ならびに最後位の門形フレーム1Dの梁部11と土台2の後辺部2a間に、パイプ材からなる繋ぎ杆3…がステージ幅方向の所要間隔置きに架設され、全体が半割り蒲鉾形で最前位の門形フレーム1Aを間口とするテント骨組み10を構成している。そして、このテント骨組み10における天井部から背面部にわたる領域には、最後位の門形フレーム1Dの梁部11と土台2の後辺部2aの間を除いて、カバーシート4Aが張設されると共に、左右両側面部の全体にもカバーシート4Bが張設されている。
【0028】
また、テント骨組み10には、両側面部の補強のために、門形フレーム1A〜1Dの前後に隣接する柱部12,12の中間部間に、屈伸リンクからなる補強桟5が連結されると共に、該補強桟5と土台2の支持枠21との間に補強杆53が連結され、最後位の門形フレーム1Dと土台の側辺部2bの中間部間にも棒状の補強杆50が連結されている。更に、門形フレーム1A〜1Dの梁部11…と繋ぎ杆3…との間で構成される各矩形部分、ならびに最後位の門形フレーム1Dの梁部11と土台2の後辺部2aの間で左右両側部に構成される矩形部分に、それぞれ2本の鋼棒製のブレース6,6が対角線方向に沿って交叉するように止着されている。
【0029】
門形フレーム1A〜1Dは、図3に示すように、梁部11と左右両側の柱部12,12とが共に、内外2本の平行パイプ13a,13bをジグザグ配置の斜め連結杆13c…を介して溶接一体化したトラス構造を備えている。その梁部11は、独立部材である複数本(図では2本)の梁材11a,11bを直列に連結して所要の長さに設定している。また、柱部12も独立部材であり、その上端部で梁部11に連結するようになっている。
【0030】
図4(A)(B)は梁材11a,11bの連結構造を示している。図4(A)のように、両梁材11a,11bの連結側端部に、複数(図では3つ)のボルト挿通孔14aを穿設した帯板状の端板14が両側パイプ13a,13b間に固着されると共に、一方の梁材11bには両側パイプ13a,13aの端部に丸棒状の連結軸15,15が半部を外側へ突出した状態に嵌挿固着されている。そして、連結に際しては、この梁材11bの突出した連結軸15,15を他方の梁材11aの両側パイプ13a,13bの開口端に挿嵌し、もって突き合わされた両梁材11a,11bの端板14,14にわたって、前後両側から矩形の連結板16,16を重ね、これら連結板16,16のボルト挿通孔16a,16aと端板14のボルト挿通孔14aにわたって連結ボルト17aを挿通し、この連結ボルト17aにナット17bを螺合して緊締することにより、図4(B)に示す連結状態とすればよい。
【0031】
門形フレーム1A〜1Dの柱部12は、図3及び図5(A)に示すように、トラス構造の下端部が内側パイプ13aの曲がりによって幅狭になり、その下端部に、両側パイプ13a,13b間を繋ぐ矩形の連結板13dと、最下端で水平方向のピン挿通孔を構成する枢支用パイプ18とが溶接一体化されている。また、該柱部12の上部側は、図3に示すように、梁部11に対応するトラス構造の梁連結部12aが側方突出状に設けてあり、この梁連結部12aを梁部11の端部に対し、前記の梁材11a,11b同士の連結部分と同様にして連結するようになっている。
【0032】
一方、コ字枠形の土台2は、後辺部2a及び左右側辺部2b,2bがH形鋼20にて構成されている。そして、左右側辺部2b,2bの前端の各支持枠21は、図5(A)(B)に示すように、H形鋼20の内外両側に固着した一対の耳形の側板21a,21bと、両側板21a,21bの前縁に固着した前板21cとで構成されており、両側板21a,21bには略1/4円弧の後縁に沿って4個のピン挿通孔22…が略等間隔で穿設されると共に、外側側板21aには隣接する各ピン挿通孔22,22間の後縁寄りに補強杆取付孔23が穿設されている。
【0033】
しかして、門形フレーム1A〜1Dの各柱部12は、図5(A)(B)に示すように、その幅狭になった下端部を土台2の支持枠21の両側板21a,21b間に挿嵌し、その枢支用パイプ18を該支持枠21のピン挿通孔22,22に臨ませ、外側から枢支ピン8をピン挿通孔22,22及び枢支用パイプ18に挿通し、内側へ突出した枢支ピン8の先端部のロック孔8aにワッシャ8bを介して割りピン8cを通して抜け止めすることにより、当該土台に枢着される。
【0034】
上記構成のステージ用テントを組立構築するには、まずステージを造る所定位置に、支持枠21付きのものを含むH形鋼20を据え付けてコ字形の土台2を形成し、その上で4基の門形フレーム1A〜1Dを後位側のものから順次に倒伏姿勢で組み立てると共に、組み立てた門形フレーム1A〜1Dの両側柱部12の各下端を、後位側のものほど枢着位置が下位になるように、土台2の支持枠21に対して枢支ピン8を介して枢着する。これにより、4基の門形フレーム1A〜1Dは、図5(B)に示すように、最前位の門形フレーム1Aを一番上にして全部が倒伏姿勢で上下に積み重なった状態になる。
【0035】
そして、積み重なった門形フレーム1A〜1Dの後方の地上にカバーシート4Aを折畳み状に配置し、このカバーシート4Aの前縁部を一番上にある最前位の門形フレーム1Aの梁部11に掛止させる。この掛止には、図7に示すように、門形フレーム1Aの梁部11の頂端に沿って所定間隔置きに突設してあるフック金具19…に対し、カバーシート4Aの前縁部に設けた鳩目穴41…を掛合させればよい。なお、フック金具19…は2〜4番目の門形フレーム1B〜1Dの梁部11には設けていない。
【0036】
次に、図6(A)に示すように、前方に停止させたクレーン車MのクレーンCから延びるワイヤーWの吊り具Fで該梁部11を吊り架け、このクレーンCの駆動によって最前位の門形フレーム1Aを1スパン分、つまり組立状態における前後に隣接する梁部11,11間の距離分だけ斜めに持ち上げる。そして、1段目の組立操作として、斜めに持ち上げた門形フレーム1Aと倒伏姿勢にある2番目の門形フレーム1Bとを、両者の梁部11,11間への繋ぎ杆3…及びブレース6…の架設によって連結一体化すると共に、両者の柱部12,12の中間部間への補強桟5及び補強杆53の取付けを行い、またカバーシート4Aの当該スパンでの支持部位に対する止着と、両門形フレーム1A,1B間の左右両側面部に対するカバーシート4Bの止着を行う。
【0037】
なお、繋ぎ杆3…及びブレース6…の架設は、図8(A)(B)に示すように、予め梁部11の外側パイプ13bに所定間隔置きに設けてある取付突片9に、繋ぎ杆3の偏平化した端部3aとブレース6の端部に固設した取付片6aとを重ね、これらに穿設されているボルト挿通孔(図示省略)に通したボルト91にナット92を螺合緊締する。
【0038】
かくして1段目の組立操作が終了すれば、クレーンCの駆動によって最前位の門形フレーム1Aを更に引き起こすことにより、連結した2番目の門形フレーム1Bが倒伏姿勢にある3番目の門形フレーム1Cに対して1スパン分だけ斜めに持ち上がるようにする。そして、2段目の組立操作として、この2番目の門形フレーム1Bと3番目の門形フレーム1Cに対し、1段目の組立操作と同様に、繋ぎ杆3…、ブレース6…補強桟5、補強杆53の取付けと、カバーシート4A,4Bの止着を行う。
【0039】
この2段目の組立操作が終了すれば、再びクレーンCを駆動して最前位の門形フレーム1Aを引き起こし、図6(B)に示すように、連結した3番目の門形フレーム1Cを倒伏姿勢の4番目の門形フレーム1Dに対して1スパン分だけ持ち上げ、1段目及び2段目と同様に3段目の組立操作として、3,4番目の門形フレーム1C,1Dに対して繋ぎ杆3…、ブレース6…補強桟5、補強杆53の取付けと、カバーシート4A,4Bの止着を行う。
【0040】
更に、3段目の組立操作が終了すれば、クレーンCの駆動によって最前位の門形フレーム1Aを垂直になるまで引き起こし、図6(C)に示すように、連結した4番目の門形フレーム1Bを土台2に対して1スパン分だけ持ち上げる。そして、図2でも示すように、1〜3段目と同様に4段目の組立操作として、斜めに持ち上がった4番目の門形フレーム1Dの梁部11と、土台の後辺部2aとを、繋ぎ杆3…及びブレース6…の架設によって連結一体化すると共に、該門形フレーム1Dの柱部12と土台2の側辺部2bの中間部間を補強杆50で連結し、更に該柱部12と側辺部2bの間へのカバーシート4Bの止着を行い、もってステージ用テントの組立てを完了する。
【0041】
このようなステージ用テントの組立方法では、門形フレーム1A〜1Dを倒伏姿勢で重ねた状態から、組立時の相互の開き分に対応する1スパンずつ順次段階的に引き起こしつつ、各段階で低位部における部材の連結及びカバーシート4A,4Bの止着を行うから、完成時の天井頂部が高所に位置するにもかかわらず、これらの部材連結及び止着の操作を全て地上位置で行える。また、所定の催しが終了してステージ用テントを解体する場合には、クレーンCによって門形フレーム1Aの梁部を吊持しつつ、上記の組立時とは逆の手順で、門形フレーム1A〜1Dを1スパンずつ順次段階的に後傾させてゆき、各段階で連結部の分離とカバーシート止着部分の取り外しを行えばよく、やはり全ての作業を地上位置で行える。
【0042】
従って、このステージ用テントによれば、その組立から解体まで高所作業を排して作業の安全性を確保できる上、高所作業用の足場の構築が不要になり、各々の作業自体も地上で容易に行えて熟練を要さず、作業能率も向上するから、工期の大幅な短縮が可能となる。また、天井部や両側面部の高所に照明具の如き器材や看板、装飾物等を取り付ける場合でも、前記の門形フレーム1A〜1Dの段階的な引き起こしによる組立時に、地上位置で安全に且つ容易に取付作業を行える。
【0043】
なお、門形フレーム1A〜1Dの各柱部12の下端は土台2の支持枠21に対して異なる位置で枢着しているため、前後に隣接する柱部12,12とその上端を連結する繋ぎ杆3及び支持枠21の間で四辺形が構成され、この四辺形が門形フレーム1A〜1Dの引き起こしに伴って変化し、これによって柱部12,12上の各点間の距離が変動すると共に、これら2点間を結ぶ線分と両柱部12,12とのなす角度も変化する。そこで、本実施形態では、門形フレーム1A〜1Dの前後に隣接する柱部12,12間を繋ぐ補強桟5を屈伸リンクにて構成し、該補強桟5と土台2の支持枠21との間に補強杆53を取り付けるようにしている。
【0044】
この補強桟5は、図9(A)〜(C)に示すように、相互の一端側をヒンジ54で枢着したリンク片51,52より構成され、一方のリンク片51の一端にはヒンジ54側が開放したU字枠状のストッパー51aが突設されると共に、他方のリンク片52にはヒンジ54側に補強杆53の上端が枢着されており、ヒンジ54が土台2の支持枠21側に臨む形で両リンク片51,52の他端側を各々柱部12の取付片12aに枢着する。また、補強杆53の下端は、支持枠21の補強杆取付孔23〔図5(B)参照〕に係嵌する。そして、例えば門形フレーム1A,1B間の補強桟5は、図9(A)の如く1段目の引き起こし時点では両リンク片51,52が折れ曲がった状態であるが、引き起こし段階が進むのに伴う両柱部12,12との枢着部間の距離の拡大によって折れ曲がりが少なくなり、最終的に図9(B)の如く直線状になる。この最終段階では、補強桟5はストッパー51aによって反対側への折れ曲がりが阻止され、直線状の補強桟5と補強杆53によって三角形の枠を形成するから、骨組み10の側面部の強度が増大する。なお、最後位の門形フレーム1Dの柱部12と土台2の側辺部2bとの間は距離変化がないため、前者の取付片12aと後者の取付片24との間に単なるバー状の補強杆50を連結すればよい。
【0045】
構築したステージ用テントは、一般的に多い単純な箱型とは異なり、図1で示すように、左右両側面部が1/4円形で、天井部より背面部にわたって湾曲した半割り蒲鉾形をなすから、独特な雰囲気のステージ空間が現出され、これによってコンサートや演劇等の催しの興趣を高める効果がある。また、テント骨組み10の略扇形をなす両側面部にもカバーシート4Bが張設されているため、両側面部が開放している場合に比較してステージの音響効果が向上する上、該カバーシート4Bは側面部の風除けになると共に舞台演出にも利用できる。
【0046】
また、このステージ用テントにおいては、門形フレーム1A〜1Dの梁部11及び両側柱部12,12が高強度のトラス構造である上、前後に隣接する柱部12,12が中間部で補強桟5によって連結され、且つ各補強桟5が土台2の支持枠21に補強杆53で連結され、最後位の門形フレーム1Dと土台の側辺部2bも中間部で補強杆50にて連結され、更に門形フレーム1A〜1Dの梁部11…と繋ぎ杆3…との間の各矩形部分、ならびに最後位の門形フレーム1Dの梁部11と土台2の後辺部2aの間の左右両側の矩形部分に、それぞれ対角線方向に沿って交叉した2本の鋼棒製のブレース6,6が止着されているため、テント骨組み10が全体として極めて頑丈であり、地震等で予期せぬ大きな振動を受けても崩壊する懸念は皆無である。
【0047】
更に、このステージ用テントでは、門形フレーム1A〜1Dにおける梁部11の梁材11a,11bと柱部12を始めとして、各構成部が独立部材からなるため、組立前には嵩張らずに運搬や保管に好都合である。組立操作も容易である。
【0048】
なお、前記実施形態では最前位の門形フレーム1Dが垂直に配置する構成を例示したが、この最前位の門形フレームが若干前傾または後傾する構成としてもよい。
【0049】
また、最前位の門形フレーム1Aを引き起こす機械力の発生手段としては、ウィンチ等も利用できるが、例示したクレーン車MのクレーンCの場合、引き起こしに好都合な高位置からの吊上げを無理なく行える上、その段階的な引き上げ操作を容易に精度よく行え、しかも引上げ手段が自走するので野外ステージ構築現場へ持込むための労力を要しないという利点がある。
【0050】
門形フレーム1A〜1Dの各柱部12の下端側は、前記実施形態では土台2の支持枠21の円弧状の後縁に沿って前位の門形フレームほど高くなる異なる位置に枢着しているが、これら下端側の形状によっては、互いに左右方向に重なる状態で同じ位置(枢支ピンや枢軸)に枢着する構造も可能である。ただし、実施形態のように前位の門形フレームほど高くなる異なる位置に枢着する構成では、全部の門形フレームの柱部下端側を同一形状に設定できるという利点がある。
【0051】
天井部から背面部にわたるカバーシート4Aならびに両側面部のカバーシート4Bのテント骨組み10に対する止着構造については、特に制約はなく、例えばシート側の要所に結び付け用の紐、締着バンド、圧着ファスナー付きの帯片等の適当な繋ぎ止め手段を設けておき、これらでテント骨組み10の梁部11、柱部12、繋ぎ杆5等に止着するようにすればよい。
【0052】
その他、本発明のステージ用テントでは 門形フレームの基数と相互の配置スパン、梁部と柱部との寸法比、相互の連結構造、前後の梁部間に架設する繋ぎ杆の本数と配置間隔、ブレースの取付位置と取付形態、繋ぎ杆やブレースの連結構造、両側面部の柱部杆の補強構造、天井部から背面部にわたるカバーシートと両側面部のカバーシートの張設領域等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係るステージ用テントの組立状態における斜め前方からの斜視図である。
【図2】同ステージ用テントの組立完了時の斜め前方からの斜視図である。
【図3】同ステージ用テントに用いる門形フレームの正面図である。
【図4】同門形フレームの梁材同士の連結部を示し、(A)は連結前の分解斜視図、(B)は連結後の正面図である。
【図5】同門形フレームにおける柱部の下端部と土台の支持枠との連結部を示し、(A)は最前位の門形フレームを垂直姿勢で示す縦断正面図、(B)は全門形フレームが倒伏姿勢である状態の側面図である。
【図6】同ステージ用テントの組立て状況を段階的に示し、(A)は1段目の組立操作終了段階の概略側面図、(B)は3段目の組立操作終了段階の概略側面図、(C)は組立完了段階の概略側面図である。
【図7】同ステージ用テントにおけるカバーシートの前縁部の掛止状態を示す縦断側面図である。
【図8】同ステージ用テントにおける門形フレームの梁部と繋ぎ杆及びブレースの連結部を示し、(A)は平面図、(B)は縦断側面図である。
【図9】同ステージ用テントにおけるテント骨組みを示し、(A)は1段目の組立操作終了段階の側面図、(B)は組立完了段階の側面図、(C)は補強桟のリンク結合部の側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1A 最前位の門形フレーム
1B 2番目の門形フレーム
1C 3番目の門形フレーム
1D 最後位の門形フレーム
10 テント骨組み
11 梁部
12 柱部
17a 連結ボルト
18 枢支用パイプ(ピン挿通孔)
2 土台
21 支持枠
22 ピン挿通孔
3 繋ぎ杆
4A カバーシート
4B カバーシート
5 補強桟
51 リンク
52 リンク
53 補強杆
6 ブレース
8 枢支ピン
M クレーン車
C クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ幅方向の梁部と両側柱部とからなる前後複数基の門形フレームが、両側柱部の下端部で土台両側の支持枠に着脱可能に枢着されて、後位側ほど後傾して側面視扇形に配置すると共に、これら門形フレームの前後に隣接する梁部間、ならびに最後位の門形フレームの梁部と土台間に、ステージ幅方向の所要間隔置きに繋ぎ杆が着脱可能に架設されて、最前位の門形フレームを間口とするテント骨組みを構成し、このテント骨組みの少なくとも天井部から背面部にわたる所要領域にカバーシートが張設されてなるステージ用テント。
【請求項2】
側面視扇形をなす両側面部の所要領域にカバーシートが張設されてなる請求項1記載のステージ用テント。
【請求項3】
門形フレームの前後に隣接する柱部の中間部同士が着脱可能な補強桟にて繋がれてなる請求項1又は2に記載のステージ用テント。
【請求項4】
土台の前記支持枠に対し、前後複数基の門形フレームにおける柱部の下端部が前位の門形フレームほど高くなる異なる位置で枢着され、前記補強桟が屈伸リンクからなると共に、この屈伸リンクと前記支持枠とを繋ぐ補強杆が着脱可能に取り付けられてなる請求項3記載のステージ用テント。
【請求項5】
門形フレームの前後に隣接する梁部間に、複数本のブレースが着脱可能に連結されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のステージ用テント。
【請求項6】
門形フレームの梁部及び両側柱部がトラス構造を有する少なくとも一つの独立部材からなり、これら部材同士のボルト止め連結によって門形フレームが構成されてなる請求項1〜5のいずれかに記載のステージ用テント。
【請求項7】
門形フレームの両側柱部の下端部と前記土台両側の支持枠とにピン挿通孔が設けられ、両者のピン挿通孔を連通して枢支ピンを挿通することにより、該支持枠に前後複数基の門形フレームが枢着されてなる請求項1〜6のいずれかに記載のステージ用テント。
【請求項8】
ステージ幅方向の梁部と両側柱部とからなる前後複数基の門形フレームを、両側柱部の下端部で土台両側の支持枠に一体に枢着して、後位側のものから順に倒伏姿勢で積み上げた形で待機させ、その最上位にある門形フレームの上部側を機械力によって段階的に引き起こしながら、各引き起こし段階で斜めに持ち上がった門形フレームと倒伏姿勢の次位の門形フレームの梁部同士をステージ幅方向の所要間隔置きに繋ぎ杆で連結し、最終的に最後位の門形フレームの梁部と土台とを同様に繋ぎ杆で連結することにより、全部の門形フレームを引き起こして後位ほど後傾した側面視扇形に連結一体化して、最前位の門形フレームを間口とするテント骨組みを構築すると共に、このテント骨組みの少なくとも天井部から背面部にわたる所要領域にカバーシートを張設することを特徴とするステージ用テントの組立方法。
【請求項9】
斜めに持ち上げられた門形フレームと倒伏姿勢の次位の門形フレームの梁部間を連結する各段階毎に、テント骨組みの所要部位に対する前記カバーシートの取付作業を行う請求項8記載のステージ用テントの組立方法。
【請求項10】
前記機械力による引き起こしをクレーン車のクレーンによって行う請求項8又は9に記載のステージ用テントの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−138572(P2007−138572A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334422(P2005−334422)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(505429887)有限会社タイコーテック (1)
【出願人】(505429902)株式会社エヴァテント (1)
【Fターム(参考)】