ステープラー
【課題】使用時又は不使用時のいずれの場合においても、内蔵されたステープルの数を外部から容易に視認可能なステープラーの提供。
【解決手段】ステープラー1に窓部14と目盛針部によって形成される残針計7を設ける。このとき、窓部14はステープラー1の蓋部2に設け、目盛針部はマガジン部3に内蔵されたプッシャーに設ける。そして目盛針部をプッシャーの動作に連動させると共に、窓部に接触させる。そして、ステープラー1が通常姿勢時、又はステープルを打出す時の打出し姿勢時のいずれの場合においても、目盛針部と窓部14の接触状態を維持させる。
【解決手段】ステープラー1に窓部14と目盛針部によって形成される残針計7を設ける。このとき、窓部14はステープラー1の蓋部2に設け、目盛針部はマガジン部3に内蔵されたプッシャーに設ける。そして目盛針部をプッシャーの動作に連動させると共に、窓部に接触させる。そして、ステープラー1が通常姿勢時、又はステープルを打出す時の打出し姿勢時のいずれの場合においても、目盛針部と窓部14の接触状態を維持させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵するステープル(所謂、ホチキス針、芯、たま、縫合ピン等とも称される固定用の針部材)の残数を視認可能なステープラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙を綴じる文房具や傷口を縫合する医療器具として、様々な種類のステープラーが考案されている。これらのステープラーは、一般に、内蔵したステープルを1つずつ対象物に打出すことによって、紙片束を綴じたり、傷口を閉じた状態で皮膚を固定したりすることができる。
【0003】
ところでステープラーには、内蔵するステープルの残数を外部から視認可能なステープラーがある。この種のステープラーによると、使用者は、マガジンを開けて内部を確認するといった煩雑な操作をすることなく、ステープルの残数を確認することができる。また使用者は、ステープラーの使用中であってもステープルの残数を確認することができる。つまり、この種のステープラーは、使用者がステープルの補給時期を容易に確認できるので、空打ちを確実に防止可能であり、快適に使用することができる。
【0004】
この種のステープラーとして、例えば、特許文献1に開示されているステープラーが知られている。特許文献1に開示されているステープラーは、ステープルマガジン(マガジン部)の上方に位置するハンドルの天面に視認窓を形成し、ステープルマガジンに内蔵されたステープルを使用者が外部から視認できる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−63780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているステープラーでは、視認窓を必ず打出し口の上方部分に設けなければならないという制限があった。具体的に説明すると、マガジンに内蔵したステープルの残数が少なくなってくると、ステープルはマガジン内部の打出し口の上方近傍にのみ位置している。したがって、このときステープルを視認するためには、視認窓を打出し口の上方に設ける必要がある。しかしながら、一般的なステープラーにおいて、打出し口の上方部分はステープルを打出すときに使用者が指で押圧する部分となっている。そのため、この部分に視認窓を設けてしまうと、ステープラーの使用時にステープルの残数が確認できないという不具合があった。
【0007】
また特許文献1に開示されているステープラーでは、視認窓からステープルそのものを目視してステープルの残数を視認する。このとき、ステープラーに内蔵されるステープルの塊には、ステープルを一本ずつに分割する切れ目が形成されており、使用者はステープルの塊に形成された切れ目の数を視認してステープルの残数を把握する。しかしながら、一般的に1本のステープルは小さく、ステープルの塊に形成される切れ目は細かくなってしまうため、視力が低い使用者にとっては切れ目の数を目視して確認することが困難である場合があった。
【0008】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題に鑑みてなされたものであって、ステープラーの使用時又は不使用時のいずれの場合においても外部から内蔵されたステープルの数を視認可能であり、視力が低い使用者であっても容易にステープルの残数を視認可能なステープラーの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、1又は複数本が束となったステープルを内部に装填可能であり、内部に装填したステープルを打ち出すための打出し口を備えたマガジン部と、当該マガジン部を覆う蓋部と、打込み片と、押圧片部とを備え、前記押圧片部は、マガジン部の内部に装填したステープルを前記打出し口近傍へ向かって押圧し、前記ステープルを前記打出し口に対して位置決めするものであり、打込み片が打出し口から離れた位置にある通常姿勢から、打込み片が前記打出し口近傍に位置する打出し姿勢へと移行することによってステープルを打ち出すステープラーにおいて、マガジン部に装填したステープルの残数を視認可能な残数確認手段を有しており、前記残数確認手段は、窓部と目盛針部とを備え、前記窓部は、蓋部に形成されており、前記目盛針部は押圧片部と連動するものであり、目盛針部の少なくとも一部は前記窓部にマガジン部側から接触するものであって、通常姿勢時と打出し姿勢時のいずれにおいても目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触した状態を維持することを特徴とするステープラーである。
【0010】
本発明のステープラーは、ステープルの残数を視認可能な残数確認手段が、蓋部に形成された窓部と、目盛針部とから形成されている。そして、ステープルを打出し口近傍へ向かって押圧する押圧片部と、目盛針部とが連動する構成となっている。つまり、ステープルの残数に対応して動作する押圧片部と目盛針部を連動させ、目盛針部の位置を窓部から確認することによってステープルの残数が把握可能となっている。
このように、直接ステープルを視認して残数を把握するのではなく、目盛針部を介してステープルの残数を把握するので、ステープルの残数を確認するための窓部をステープルの打出し口から離れた位置に形成することができる。換言すると、本発明のステープラーは窓部を設置する位置の自由度が高く、ステープルの使用時に使用者が視認し易い位置に窓部を設けることができる。そのため、ステープラーの使用時であっても、ステープラーの不使用時と同じく外部から内蔵されたステープルの数を容易に視認可能となっている。またステープルの数を目盛りで示すため、直接ステープルを視認して残数を把握する構成に比べて、ステープルの残数を視認し易い構成にできる。
【0011】
さらに本発明のステープラーは、打込み片が打出し口から離れた位置にある通常姿勢から、打込み片が前記打出し口近傍に位置する打出し姿勢へと移行するとき、通常姿勢時と打出し姿勢時のいずれにおいても目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触した状態を維持する。つまり、使用者がステープラーを使用しているとき、目盛針部が窓部に常に接触している。このように、内蔵されたステープルの残数を示す目盛りの針が視認用の窓部と常に近い位置にあるため、使用者が目盛りの値を読み取り易い。このことによって、視力の低い使用者であっても、容易にステープルの残数を把握することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記目盛針部は、本体部と付勢部材とを有し、本体部の少なくとも一部は、前記押圧片部に近づく方向に退入可能となっており、付勢部材によって押圧片部から離れる方向へ付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のステープラーである。
【0013】
請求項2の構成によると、蓋部によって目盛針部が押圧片部側へ押されたとき、目盛針部の少なくとも一部は押圧片部側へ埋没する。そして、目盛針部に加わる力が低減されるか解除されたとき、目盛針部の本体部が押圧片部から離れる方向へと突出する。このように目盛針部の本体部を押圧片部に対して近接、離間する方向に相対的に動作可能とすることにより、蓋部等が押圧片部に対して近接、離間するとき、目盛針部を蓋部等の動作に沿って動作させることができる。このことにより、蓋部に形成された窓部と常に接触する目盛針部が蓋部の動作を妨げないので、操作感の良いステープラーを提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記蓋部は前記マガジン部の上方部分を被覆して閉塞可能なものであって、蓋部の内側面にはガイド溝が形成されており、前記蓋部が閉じた状態にあるとき、目盛針部の少なくとも一部がガイド溝の間に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載のステープラーである。
【0015】
請求項3の構成によると、目盛針部が押圧片部と連動するとき、目盛針部をガイド溝の延び方向に沿って動作させることができる。即ち、目盛針部の既定外の方向への移動が規制されるので、目盛針部をより円滑に動作させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明ステープラーは、目盛針部及び窓部を介して内蔵されたステープルの残数を視認できるので、直接ステープルを視認することなくステープルの残数を把握可能となっている。そのため、ステープルの残数の視認が容易となり、たとえ視力の低い者であっても内蔵されたステープルの残数を容易に把握できるという効果がある。
また本発明のステープラーは、内蔵されたステープルを直接視認できる位置に窓部を設けなくてもよく、窓部の配置位置の自由度が高くなっている。そのため、ステープラーの使用時に視認し易い位置に窓部を設けることができる。そのことにより、ステープラーの使用時、不使用時に係わらず、内蔵されたステープルの残量の把握が容易であるという利点がある。
そして本発明は、通常姿勢時と打出し姿勢時のいずれにおいても目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触した状態を維持するので、内蔵されたステープルの残数を示す目盛りの針が視認用の窓と常に近い位置にある。そのため、使用者が目盛りの値を読み取り易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるステープラーを示す斜視図である。
【図2】図1のステープラーの分解斜視図である。
【図3】図1のステープラーの蓋部材を示す斜視図である。
【図4】図3の蓋部材をA方向からみた平面図である。
【図5】図4の蓋部材のA−A断面図である。
【図6】図2のプッシャーを示す斜視図である。
【図7】図6のプッシャーの目盛針部の部分を示すA−A断面図である。
【図8】図1のステープラーのステープル打出し動作を示す一部破断側面図であり、(a)は通常姿勢時のステープラーを示し、(b)は通常姿勢から打出し姿勢へ移行した状態のステープラーを示す。
【図9】図1のステープラーにおいて、内蔵されたステープルが減少していくときの残針計の動作を示す図であり、左図がステープラーの一部破断側面図を示し、右図が左図で示すステープラーの残針計を示す平面図であって、(a)〜(c)の順にステープルが減少していく状態を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかるステープラーを示す斜視図である。
【図11】図6の目盛針部とは異なる形態の目盛針部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明における前後方向は、特に断りのない限りステープルの打出し口25側を前方とし、マガジン部3等の各部材の回動軸6側を後方として説明する。また、以下の説明における上下方向は、図1の上下方向を基準として説明する。
【0019】
本発明の第1の実施形態のステープラー1は、主に文房具として使用されるステープラーであって、図1で示されるように、蓋部2、マガジン部3、ベース部4を有している。そして、図2で示されるように、マガジン部3には、内部に入れ込んだステープルを後方から前方へと押圧するプッシャー5(押圧片部)が内蔵されている。そして、蓋部2、マガジン部3、ベース部4は回動軸6を介して一体に取付けられており、回動軸6を中心にそれぞれ独立して回動可能となっている。このとき、図1で示されるように、蓋部2の上面には、前後方向の中心部分からやや後方よりの部分に残針計7(残数確認手段)が設けられている。ステープラー1の使用者は、この残針計7が示す値を視認することにより、ステープラー1に内蔵されたステープルの残数を把握可能となっている。
【0020】
蓋部2は、図2で示されるように、外蓋部10と中板部11から構成されている。
【0021】
外蓋部10は略直方体であって、後方及び下方が開放された箱体となっている。このとき外蓋部10の天板部分10aは、やや屈曲しつつ前後方向に延びた略長方形板状となっている。そして、この天板部分10aには、残針計7の一部をなす窓部14が形成されており、窓部14と隣接する位置に残数目盛15が印字されている。より具体的には、窓部14と残数目盛15とは、外蓋部10の幅方向(前後方向及び上下方向に直交する方向)に併設されている。
【0022】
窓部14は、外蓋部10の天板部分10aを上下に貫通する長孔14aと、当該長孔14aを塞ぐ透明板14bから形成されている。
【0023】
このとき長孔14aは、外蓋部10の幅方向の中心近傍に位置しており、外蓋部10の前後方向の中心近傍から後方に向かって延びている。つまり、長孔14aは、外蓋部10の前後方向に延びる長孔となっている。そして長孔14aは、開口形状が略楕円形となっている。より詳細には、長孔14aの開口は、前端に位置する前方に凸となった半円状の部分と、前後方向の中心に位置する略長方形状の部分と、後端に位置する後方に凸となった半円状の部分とが連続したような形状となっている。
【0024】
またこの透明板14bは、特に限定されるものではないが、アクリル等の可視光を透過する部材で形成された板状の部分である。また、詳しくは後述するが、透明板14bは長孔14aの外側の開口を塞ぐ位置に配されている。
【0025】
中板部11は、ばね鋼等で形成された弾性を有する部材であり、図2で示されるように、略長方形板状の板本体部17と、打込み片18と、傾斜部19を有している。
【0026】
打込み片18は、図2で示されるように、板本体部17の前端部分を下方へ折り曲げることにより形成される略長方形板状の部分であり、板本体部17の前端から略垂直下方へ突出している。
【0027】
傾斜部19は、板本体部17の後端部分を折り曲げることにより形成される部分であり、中板部11の後方下側へ向かって延びている。より詳細に説明すると、図2で示されるように、傾斜部19は2つの略長方形板状の傾斜板部20,21によって形成されており、2つの傾斜板部20,21は所定の間隔を空けて並列に配され、同方向に延びている。そしてこの2つの傾斜板部20,21は、それぞれ本体部20a,21aと、後側板部20b,21bから形成されている。本体部20a,21aと後側板部20b,21bはいずれも長方形板状の部分であり、本体部20a,21aは後側板部20b,21bに比べて長手方向の長さが長くなっている。
【0028】
本体部20a,21aは、それぞれ前端部分で板本体部17と連続し、後端部分で後側板部20b,21bと連続している。そして本体部20a,21aは、いずれも後方へ向かうにつれて下方に向かって延びている。換言すると、本体部20a,21aは、中板部11の後方下側へ向かって延びている。
【0029】
後側板部20b,21bは、それぞれ前端部分で本体部20a,21aと連続しており、本体部20a,21aの後端から後方へ向かうにつれて下方に向かって延びている。即ち、本体部20a,21aの後端から後方下側へ向かって延びている。
【0030】
ここで、図2で示されるように、本体部20a,21aと後側板部20b,21bはいずれも後方下側へ向かって延びているが、延び方向の傾斜角度が異なっている。具体的には、本体部20a,21aと後側板部20b,21bは、いずれも板本体部17に対して傾斜する方向に延びているが、本体部20a,21aは、後側板部20b,21bに比べて傾斜が急になっている。
【0031】
つまり、板本体部17の後方部分を下方に折り曲げて本体部20a,21aを形成し、さらに本体部20a,21aの後端部分を上方に折り曲げることで後側板部20b,21bを形成している。このとき、2つの傾斜板部20,21の折り曲げ位置は、中板部11の前後方向において同じ位置となっており、2つの傾斜板部20,21は略同一の形状となっている。
【0032】
ここで、中板部11の後方部分に注目すると、後端から前方に向かって延びるガイド溝23が形成されている。
【0033】
ガイド溝23は、図2で示されるように、中板部11の幅方向(前後方向及び上下方向に直交する方向)の中心近傍に位置しており、中板部11の後端から前後方向の中心近傍まで延びる溝状の部分である。より具体的には、ガイド溝23は、傾斜部19と板本体部17の一部分に設けられており、後方側の傾斜部19に形成される部分と前方側の板本体部17に形成される部分とが連続して1つの溝を形成している。ここで後方側の傾斜部19に形成される部分は、2つの傾斜板部20,21の間に位置しており、傾斜部19の延び方向に沿って延びている。また前方側の板本体部17に形成される部分は、板本体部17の幅方向の中心近傍に位置しており、板本体部17の前後方向に沿って延びている。
このとき、ガイド溝23の開口形状は前端部分が丸みを帯びた略長方形状となっている。より具体的には、ガイド溝23の前端部分の開口形状は前方に凸となった半円状となっている。
【0034】
ここで蓋部2は、図2乃至図5で示されるように、外蓋部10の天板部分10aの下面(外蓋部10の内側天面)と中板部11の板本体部17の上面とを一体に取付けて形成されている。このとき、打込み片18は蓋部2の前端よりやや後方部分に位置しており、傾斜部19は蓋部2の後端よりやや前方に位置している。そして、図4,5で示されるように、窓部14とガイド溝23は重なり合う位置に配されている。
【0035】
具体的に説明すると、図4,5で示されるように、窓部14の前端とガイド溝23の前端とは、蓋部2の前後方向において同一の位置となっている。またガイド溝23の幅方向の長さと、窓部14の幅方向の長さが略同一となっている。さらにガイド溝23と窓部14はいずれも蓋部2の前後方向に延びている。したがって、図5で示されるように、ガイド溝23の板本体部17に形成されている部分と窓部14の長孔14aとは上下方向で連続しており、あたかも一体の溝のようになっている。
これに対して、外蓋部10の天板部分10aの下面(外蓋部10の内側天面)と中板部11の傾斜部19とは上下方向で離間している。したがって、図5で示されるように、ガイド溝23の傾斜部19に形成されている部分と窓部14の長孔14aとは上下方向で離間している。
つまり、図5で示されるように、窓部14の前端部分から後端よりやや前方の部分では、窓部14の長孔14aとガイド溝23が上下方向で連続して一体の溝を形成しており、窓部14の後端近傍の部分では、窓部14の長孔14aとガイド溝23の間に隙間を有する構成となっている。
【0036】
ところで、図5で示されるように、透明板14bの厚さ(上下方向の長さ)L1は、長孔14aの深さ(上下方向の長さ)L2より小さく(短く)なっており、透明板14bは長孔14aの上端近傍の部分に位置している。そして透明板14bの上面は、外蓋部10の天板部分10aの上面と同一面を形成している。即ち、透明板14bの上面はステープラー1の蓋部2の上面の一部を形成する。そして長孔14aは、上端側の開口近傍を透明板14bで閉塞されており、窓部14はあたかも下方から上方へ向かって深くなる有底穴のような形状となっている。
【0037】
マガジン部3は、図2で示されるように、上方と後方が開放された略直方体の箱体となっている。このとき底板部分3aの前端近傍には、内蔵されたステープルを打出すための打出し口25が設けられている。この打出し口25は、マガジン部3の底板部分3aを貫通し、マガジン部3の内部と外部を連通している。
またマガジン部3の幅方向の両端部分には、側壁部3b,3cがそれぞれ設けられている。この2つの側壁部3b,3cはそれぞれ略垂直に立設されるものであり、マガジン部3の前後方向の全域に亘って前後方向に沿って延びている。したがって、2つの側壁部3b,3cは対向する位置ある。このとき、2つの側壁部3b,3cの後端側近傍にはそれぞれ貫通孔27,27が設けられている。この貫通孔27,27は、それぞれ側壁部3b,3cをマガジン部3の幅方向に貫通する貫通孔となっている。そして2つの貫通孔27,27の上下方向及び前後方向の位置は同一であり、中心軸は同一となっている。即ち、2つの貫通孔27,27は対向する位置にある。
【0038】
ベース部4は、図2で示されるように、略長方形板状の本体部4aと側壁部4b,4cから形成されている。このとき、本体部4aの上面の前端部分には、曲台29が形成されている。曲台29は周囲よりやや隆起しており、その上面に、打ち出されたステープルの脚部を折り曲げるための窪みが形成されている。また、ベース部4の後端側の部分に注目すると、幅方向両端部分に側壁部4b,4cがそれぞれ設けられている。この2つの側壁部4b,4cはそれぞれ略垂直に立設されるものであり、それぞれベース部4の前後方向中心より後方側の位置から後端部分まで前後方向に沿って延びている。したがって、2つの側壁部4b,4cは対向する位置にある。このとき、2つの側壁部4b,4cの後端側上方にはそれぞれ貫通孔30,30が設けられている。この貫通孔30,30は、それぞれ側壁部4b,4cをベース部4の幅方向に貫通する貫通孔となっている。そして2つの貫通孔30,30の上下方向及び前後方向の位置は同一であり、中心軸は同一となっている。即ち、2つの貫通孔30,30は対向する位置にある。
【0039】
プッシャー5は、図6で示されるように、下方を開放した断面略「コ」字状で延びるプッシャー本体5aと、プッシャー本体5aの前端からさらに前方へ突出するステープル押圧部32,32とを備えている。そして、プッシャー本体5aの上面には、その後端近傍に目盛針部33が設けられている。
【0040】
目盛針部33は、図6で示されるように、土台部35と、針本体部36(本体部)と、コイルばね37(付勢部材)とを有している。
【0041】
土台部35は、図6で示されるように、プッシャー本体5aの上面に設けられ、当該上面より上方に隆起した部分となっている。そして土台部35は、図7で示されるように、その内部に内部空間40が形成されている。この内部空間40は略円筒状の空間となっており、上端部分の一部が開放されて外部と連続している。さらに具体的には、この内部空間40の中心軸は傾斜しており、内部空間40は斜め後方へ延びる空間となっている。このとき、内部空間40の上端近傍には、内部空間40を形成する内壁から内側へ突出する突出部42が設けられている。この突出部42は、より詳細には、内部空間40の径方向の外側から中心側へ向かって突出する環状の突起となっている。そして図6,7で示されるように、突出部42の上面は、土台部35の上面と同一面を形成している。そのことにより、内部空間40は、図7で示されるように、上端近傍に位置する略小径円柱状の上側空間40aと、下方側に位置する略大径円柱状の下側空間40bとが斜め方向で連続して形成される空間となっている。なお、上側空間40aと下側空間40bはいずれも中心軸が斜め後方へ傾斜した円柱状の空間となっている。
【0042】
針本体部36は、図7で示されるように、頭部36a,棒状部36b,突起部36cから形成されている。
【0043】
頭部36aは、図6,7で示されるように、針本体部36の上端側に位置する略円柱状の部分となっている。より詳細には、頭部36aは上端縁部が面取りされて丸みを帯びており、上方から下方へなだらかに傾斜している。つまり、頭部36aの上方では、上方から下方に向けて径が大きくなっていく部分が形成されている。
【0044】
棒状部36bは、図6,7で示されるように、略丸棒状の部分であり、頭部36aの下面の中心部分から略垂直下方へと突出する部分となっている。
【0045】
突起部36cは、図7で示されるように、棒状部36bの下端近傍に形成され、針本体部36の外側へ向かって突出する突起状の部分となっている。
【0046】
ここで、図7で示されるように、針本体部36の下方側の一部分は、土台部35の内部空間40内に配されており、針本体部36の上方側の部分は、土台部35の上面から外部へ突出している。詳細には、針本体部36の突起部36cが内部空間40の突出部42の下方に位置しており、針本体部36の棒状部36bが内部空間40の上側空間40aに挿通され、針本体部36の頭部36aが土台部35の外部に位置する状態となっている。そして、棒状部36bの径方向の長さは上側空間40aの径方向の長さより小さく、突起部36cの径方向の長さは上側空間40aの径方向の長さより大きくなっている。加えて、頭部36aの径方向の長さは上側空間40aの径方向の長さより大きくなっている。これらのことから、針本体部36が土台部35に対して、後方上側又は前方下側へ相対的に移動可能となっている。加えて、針本体部36が土台部35に対して相対的に移動しても、針本体部36が土台部35から外れない構成となっている。
【0047】
さらにまた、図6,7で示されるように、針本体部36の頭部36aと土台部35の天面の間には、コイルばね37が配されている。コイルばね37は、上端で頭部36aの下面と接触し、下端で土台部35の天面に接触している。そして、針本体部36の棒状部36bを取り囲むように配置されている。このことにより、針本体部36はコイルばね37によって後方上側へ付勢された状態となっている。
【0048】
次に本実施形態のステープラー1の組み立て構造について図1,2を参照しつつ説明する。本実施形態のステープラー1は、下方から上方へ向かって、ベース部4、マガジン部3、蓋部2の順に配された状態となっている。このとき、マガジン部3の貫通孔27,27と、ベース部4の貫通孔30,30が幅方向で重なった状態となっており、これら貫通孔27,27,30,30に回動軸6が挿通された状態となっている。そして、回動軸6を介して一体に取り付けられたベース部4及びマガジン部3に、蓋部2が取付けられた状態となっている。またこのとき、蓋部2は回動軸6を支点に回動可能に取り付けられるため、ベース部4、マガジン部3、蓋部2は回動軸6を支点に回動可能であり、それぞれ独立して回動可能となっている。
【0049】
さらにまた、マガジン部3の内部にプッシャー5が配された状態となっている。このとき、プッシャー5は、図示しないバネ等の付勢部材によって前方側へ付勢された状態で配されている。
【0050】
ここで本実施形態のステープラー1では、図1で示されるように、針本体部36の頭部36aが、窓部14の透明板14bの下面に下方から接触した状態となっている。そして、蓋部2の下方に位置する針本体部36を上方から視認可能となっている。詳説すると、図1,2で示されるように、目盛針部33、窓部14、残数目盛15によって残針計7が蓋部2に形成されている。この残針計7は、蓋部2の前後方向の中心部分近傍から蓋部2の後端よりやや前方の部分にかけて設けられている。即ち、残針計7は、使用者がステープラー1を使用するとき、多くの場合において使用者が把持しない部分に設けられている。このことにより、本実施形態のステープラー1は外部からマガジン部3に内蔵したステープルの残数を視認することができる。
以上で本実施形態のステープラー1の組み立て構造についての説明を終了する。
【0051】
本実施形態のステープラー1は、打込み片18が打出し口25から離れた位置にある通常姿勢から、打込み片18が前記打出し口25近傍に位置する打出し姿勢へと移行することによってステープルを打ち出すことができる。以下、図8を参照しつつステープラー1のステープル打出し動作について説明する。
【0052】
通常姿勢時では、本実施形態のステープラー1は、図8(a)で示されるように、打込み片18が打込み口25の上方に離れた位置に配されている。またこのとき、マガジン部3には、複数のステープルが列状に配されて形成されるステープル束45が内蔵されている。そして、打込み片18と打込み口25の間にはステープル束45の前端部分が位置している。
【0053】
この通常姿勢時の目盛針部33に注目すると、針本体部36がコイルばね37によって上方側へ付勢されており、針本体部36の頭部36aが窓部14の透明板14bに下方から接触している。より詳細には、頭部36aの少なくとも上方側の一部は長孔14a内に位置しており、頭部36aの上端部分は透明板14bの下面に接触している。
【0054】
上記した通常姿勢時のステープラー1に対して、ベース部4を支持した状態で蓋部2を下方側へ押圧すると、図8(b)で示されるように、ステープラー1の前端部分の近傍において蓋部2及びマガジン部3がベース部4に上方から接近して打出し姿勢へと移行する。このとき、蓋部2の移動に伴って、打込み片18が打出し口25と近接する。そして、ステープル束45の前端に位置するステープルが打込み片18によって押し出され、打出し口25から1本のステープルが打ち出される。
【0055】
ここで目盛針部33に注目すると、蓋部2と一体に設けられた透明板14bによって、針本体部36の頭部36aが下方側に押圧される。そのことにより、針本体部36の棒状部36bが土台部35の内部空間40(図7参照)に入り込んでいく。つまり、透明板14bによって押圧されることにより、針本体部36がコイルばね37の力に抗して下方へと移動する。そして、針本体部36の棒状部36bが下方から土台部35の内部へと埋没していく。ところでこのとき、コイルばね37は、針本体部36の頭部36aを上方へ押圧し続ける。そのため、針本体部36の頭部36aは透明板14bに接触した状態を維持する。換言すると、針本体部36は下方部分が土台部35の内部へ埋没し、頭部36aが透明板14bに接触した状態となる。
【0056】
なお、このようにコイルばね37が針本体部36の頭部36aを押圧し続けることにより、打出し姿勢時から通常姿勢時へ移行する場合においても針本体部36の頭部36aが透明板14bに接触した状態を実質的に維持する。即ち、針本体部36に対して透明板14bが離れる方向へ移動しても、コイルばね37に押圧された針本体部36の頭部36aが上方へ移動して透明板14bの下面に当接した状態となる。
【0057】
つまり、本実施形態のステープラー1では、通常姿勢、打込み姿勢のいずれ場合においても、針本体部36の頭部36aが透明板14bに接触した状態を維持する。加えて、通常姿勢から打込み姿勢への移行時においても頭部36aが透明板14bに接触した状態を維持すると共に、打込み姿勢から通常姿勢への移行時において頭部36aが透明板14bに接触した状態を実質的に維持する。即ち、本実施形態のステープラー1は、使用時又は不使用時に係わらず、常時、針本体部36の頭部36aが透明板14bに接触した状態を実質的に維持し続ける。
【0058】
次に、本実施形態のステープラー1においてステープル打出し動作を繰り返し、内蔵したステープル数が減少していくときのプッシャー5及び残針計7の動作について、図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0059】
ステープラー1のマガジン部3にステープル束45を内蔵すると、プッシャー5のステープル押圧部32がステープル束45を後方から前方へと押圧した状態となる。つまり、プッシャー5がステープル束45の後方に位置した状態となる。このとき、ステープル束45を構成するステープルの数は、ステープラー1に内蔵可能なステープル数の最大値であるものとする。すると、図9(a)の左図で示されるように、目盛針部33の針本体部36は、頭部36aが窓部14の後端側に位置した状態となっている。換言すると、ステープラー1に内蔵しているステープルの数が最大のとき、針本体部36の頭部36aが窓部14の長孔14aの後端側に位置するように設けられている。そしてこのとき、図9(a)の右図で示されるように、目盛針部33の頭部36aが残数目盛15の最大値を差し示す。
【0060】
図9(a)で示される状態からステープラー1でステープル打出し動作を繰り返し、内蔵したステープル数が減少していくと、図9(b)で示されるようにステープル束45の前後方向の長さが短くなり、プッシャー5がマガジン部3に対して相対的に前方へ移動する。そして、このプッシャー5の前方への移動に伴って、プッシャー5に一体に形成された針本体部36もまた、前方へと移動する。そして、針本体部36が移動することにより、図9(b)の右図で示されるように、残数目盛15において目盛針部33の頭部36aが差し示す値が変化する。ここで前記したように、針本体部36の頭部36aは、コイルばね37によって透明板14b側へ付勢されている。そのため、針本体部36は、頭部36aが透明板14bに接触した状態で前方へ摺動する。換言すると、頭部36aが前方へ移動するとき、頭部36aの上端は透明板14bの下面に沿って移動する。
【0061】
このとき、本実施形態では、針本体部36の頭部36aはガイド溝23に嵌入された状態となっている。即ち、針本体部36の少なくとも一部がガイド溝23内に配されている。このことにより、針本体部36が前方へと移動するとき、ガイド溝23によって蓋部2の幅方向側への移動を制限される。このことにより、移動時に針本体部36が正常な位置からずれることがなく、円滑に移動することができる。
【0062】
図9(b)で示される状態からステープラー1でさらにステープル打出し動作を繰り返し、内蔵したステープル数が減少していくと、図9(c)の左図で示されるように、マガジン部3の内部にステープルがない状態となる。このとき、図9(c)の左図で示されるように、プッシャー5が最も前方側に位置した状態となる。詳説すると、ステープラー1にステープルが内蔵された状態では、図9(a),図9(b)で示されるように、プッシャー5の前方にステープル(ステープル束45)が位置する。しかしながら、ステープラー1にステープルが内蔵されていない場合、図9(c)の左図で示されるように、プッシャー5の前方にステープルがなく、プッシャー5の前方への移動をステープルが妨げないので、プッシャー5はステープルが内蔵されているときより相対的に前方へ位置する。
【0063】
このとき、図9(c)の左図で示されるように、目盛針部33の針本体部36は、頭部36aが窓部14の前端側に位置した状態となっている。換言すると、ステープラー1に内蔵しているステープルの数がゼロのとき、針本体部36の頭部36aが窓部14の長孔14aの前端側に位置するように設けられている。そしてこのとき、図9(c)の右図で示されるように、目盛針部33の頭部36aが残数目盛15の最小値を差し示す。
以上で、内蔵したステープル数が減少していくときのプッシャー5及び残針計7の動作についての説明を終了する。
【0064】
上記した実施形態では、初めにステープラー1に内蔵したステープルの数が、ステープラー1の内蔵可能なステープル数の最大値であったため、図9(a)の右図のように、目盛針部33が残数目盛15の最大値を差し示した。しかしながら、ステープラー1にステープルを内蔵するとき、必ずしも内蔵可能な最大数のステープルを入れなくてもよい。目盛針部33が差し示す残数目盛15の値は、ステープラー1に内蔵したステープルの数、即ち、ステープル束45の前後方向の長さで可変する。したがって、初めにステープラー1に内蔵したステープルの数がステープラー1に内蔵可能なステープル数の最大値より小さい場合、残数目盛15はステープラー1に入れたステープル数に応じた値を差し示す。本実施形態のステープラー1は、このように目盛針部33が差し示す残数目盛15の値が最大値でない状態から使用してもよい。
【0065】
上記した実施形態では、手のひらに収めて使用する一般的なステープラーに本発明を適用した例を示したが、本発明を適用するステープラーはこれに限るものではない。例えば、所謂設置型と称される、大型ステープル打出し用のステープラーに本発明を適用してもよい。即ち、図10で示される第2の実施形態のように、机上等に設置した状態でハンドルを押し下げてステープルを打ち込むステープラー100に、残数計101を設けた構成であってもよい。本発明の残数計(残数確認手段)は、内蔵したステープル数に対応して動く部分(押圧片部)に目盛針部を連動でき、目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触する構成であればよい。
【0066】
また、上記した実施形態の目盛針部33は、針本体部36の頭部36aが上方角部分を面とりした略円柱状の頭部36aを示したが、本発明の針本体部の頭部はこのように形状に限るものではない。針本体部の頭部は、例えば、円柱状や角柱状のような略柱状であってもよく、球状や、半球状のように上方に凸であって上端近傍が丸みを帯びた形状であってもよい。また、天面が星型やハート型のような意匠性の高い形状であってもかまわない。
なお図11で示されるように、頭部104が球体の針本体部103であれば、透明板14bと点接触するので、面接触する構成に比べて針本体部103が滑らかに摺動するという効果がある。
さらにまた、上記した実施形態のように、角部分が適宜面とりされた構成であると、面とりしない構成に比べて、針本体部が摺動するときに透明板14bに引っ掛かりにくく、針本体部が滑らかに動くので望ましい。
【符号の説明】
【0067】
1 ステープラー
2 蓋部
3 マガジン部
5 プッシャー(押圧片部)
7 残針計(残数確認手段)
14 窓部
18 打込み片
23 ガイド溝
25 打出し口
33 目盛針部
36 本体部
37 コイルばね(付勢部材)
45 ステープル束
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵するステープル(所謂、ホチキス針、芯、たま、縫合ピン等とも称される固定用の針部材)の残数を視認可能なステープラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙を綴じる文房具や傷口を縫合する医療器具として、様々な種類のステープラーが考案されている。これらのステープラーは、一般に、内蔵したステープルを1つずつ対象物に打出すことによって、紙片束を綴じたり、傷口を閉じた状態で皮膚を固定したりすることができる。
【0003】
ところでステープラーには、内蔵するステープルの残数を外部から視認可能なステープラーがある。この種のステープラーによると、使用者は、マガジンを開けて内部を確認するといった煩雑な操作をすることなく、ステープルの残数を確認することができる。また使用者は、ステープラーの使用中であってもステープルの残数を確認することができる。つまり、この種のステープラーは、使用者がステープルの補給時期を容易に確認できるので、空打ちを確実に防止可能であり、快適に使用することができる。
【0004】
この種のステープラーとして、例えば、特許文献1に開示されているステープラーが知られている。特許文献1に開示されているステープラーは、ステープルマガジン(マガジン部)の上方に位置するハンドルの天面に視認窓を形成し、ステープルマガジンに内蔵されたステープルを使用者が外部から視認できる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−63780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているステープラーでは、視認窓を必ず打出し口の上方部分に設けなければならないという制限があった。具体的に説明すると、マガジンに内蔵したステープルの残数が少なくなってくると、ステープルはマガジン内部の打出し口の上方近傍にのみ位置している。したがって、このときステープルを視認するためには、視認窓を打出し口の上方に設ける必要がある。しかしながら、一般的なステープラーにおいて、打出し口の上方部分はステープルを打出すときに使用者が指で押圧する部分となっている。そのため、この部分に視認窓を設けてしまうと、ステープラーの使用時にステープルの残数が確認できないという不具合があった。
【0007】
また特許文献1に開示されているステープラーでは、視認窓からステープルそのものを目視してステープルの残数を視認する。このとき、ステープラーに内蔵されるステープルの塊には、ステープルを一本ずつに分割する切れ目が形成されており、使用者はステープルの塊に形成された切れ目の数を視認してステープルの残数を把握する。しかしながら、一般的に1本のステープルは小さく、ステープルの塊に形成される切れ目は細かくなってしまうため、視力が低い使用者にとっては切れ目の数を目視して確認することが困難である場合があった。
【0008】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題に鑑みてなされたものであって、ステープラーの使用時又は不使用時のいずれの場合においても外部から内蔵されたステープルの数を視認可能であり、視力が低い使用者であっても容易にステープルの残数を視認可能なステープラーの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、1又は複数本が束となったステープルを内部に装填可能であり、内部に装填したステープルを打ち出すための打出し口を備えたマガジン部と、当該マガジン部を覆う蓋部と、打込み片と、押圧片部とを備え、前記押圧片部は、マガジン部の内部に装填したステープルを前記打出し口近傍へ向かって押圧し、前記ステープルを前記打出し口に対して位置決めするものであり、打込み片が打出し口から離れた位置にある通常姿勢から、打込み片が前記打出し口近傍に位置する打出し姿勢へと移行することによってステープルを打ち出すステープラーにおいて、マガジン部に装填したステープルの残数を視認可能な残数確認手段を有しており、前記残数確認手段は、窓部と目盛針部とを備え、前記窓部は、蓋部に形成されており、前記目盛針部は押圧片部と連動するものであり、目盛針部の少なくとも一部は前記窓部にマガジン部側から接触するものであって、通常姿勢時と打出し姿勢時のいずれにおいても目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触した状態を維持することを特徴とするステープラーである。
【0010】
本発明のステープラーは、ステープルの残数を視認可能な残数確認手段が、蓋部に形成された窓部と、目盛針部とから形成されている。そして、ステープルを打出し口近傍へ向かって押圧する押圧片部と、目盛針部とが連動する構成となっている。つまり、ステープルの残数に対応して動作する押圧片部と目盛針部を連動させ、目盛針部の位置を窓部から確認することによってステープルの残数が把握可能となっている。
このように、直接ステープルを視認して残数を把握するのではなく、目盛針部を介してステープルの残数を把握するので、ステープルの残数を確認するための窓部をステープルの打出し口から離れた位置に形成することができる。換言すると、本発明のステープラーは窓部を設置する位置の自由度が高く、ステープルの使用時に使用者が視認し易い位置に窓部を設けることができる。そのため、ステープラーの使用時であっても、ステープラーの不使用時と同じく外部から内蔵されたステープルの数を容易に視認可能となっている。またステープルの数を目盛りで示すため、直接ステープルを視認して残数を把握する構成に比べて、ステープルの残数を視認し易い構成にできる。
【0011】
さらに本発明のステープラーは、打込み片が打出し口から離れた位置にある通常姿勢から、打込み片が前記打出し口近傍に位置する打出し姿勢へと移行するとき、通常姿勢時と打出し姿勢時のいずれにおいても目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触した状態を維持する。つまり、使用者がステープラーを使用しているとき、目盛針部が窓部に常に接触している。このように、内蔵されたステープルの残数を示す目盛りの針が視認用の窓部と常に近い位置にあるため、使用者が目盛りの値を読み取り易い。このことによって、視力の低い使用者であっても、容易にステープルの残数を把握することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記目盛針部は、本体部と付勢部材とを有し、本体部の少なくとも一部は、前記押圧片部に近づく方向に退入可能となっており、付勢部材によって押圧片部から離れる方向へ付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のステープラーである。
【0013】
請求項2の構成によると、蓋部によって目盛針部が押圧片部側へ押されたとき、目盛針部の少なくとも一部は押圧片部側へ埋没する。そして、目盛針部に加わる力が低減されるか解除されたとき、目盛針部の本体部が押圧片部から離れる方向へと突出する。このように目盛針部の本体部を押圧片部に対して近接、離間する方向に相対的に動作可能とすることにより、蓋部等が押圧片部に対して近接、離間するとき、目盛針部を蓋部等の動作に沿って動作させることができる。このことにより、蓋部に形成された窓部と常に接触する目盛針部が蓋部の動作を妨げないので、操作感の良いステープラーを提供することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記蓋部は前記マガジン部の上方部分を被覆して閉塞可能なものであって、蓋部の内側面にはガイド溝が形成されており、前記蓋部が閉じた状態にあるとき、目盛針部の少なくとも一部がガイド溝の間に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載のステープラーである。
【0015】
請求項3の構成によると、目盛針部が押圧片部と連動するとき、目盛針部をガイド溝の延び方向に沿って動作させることができる。即ち、目盛針部の既定外の方向への移動が規制されるので、目盛針部をより円滑に動作させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明ステープラーは、目盛針部及び窓部を介して内蔵されたステープルの残数を視認できるので、直接ステープルを視認することなくステープルの残数を把握可能となっている。そのため、ステープルの残数の視認が容易となり、たとえ視力の低い者であっても内蔵されたステープルの残数を容易に把握できるという効果がある。
また本発明のステープラーは、内蔵されたステープルを直接視認できる位置に窓部を設けなくてもよく、窓部の配置位置の自由度が高くなっている。そのため、ステープラーの使用時に視認し易い位置に窓部を設けることができる。そのことにより、ステープラーの使用時、不使用時に係わらず、内蔵されたステープルの残量の把握が容易であるという利点がある。
そして本発明は、通常姿勢時と打出し姿勢時のいずれにおいても目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触した状態を維持するので、内蔵されたステープルの残数を示す目盛りの針が視認用の窓と常に近い位置にある。そのため、使用者が目盛りの値を読み取り易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるステープラーを示す斜視図である。
【図2】図1のステープラーの分解斜視図である。
【図3】図1のステープラーの蓋部材を示す斜視図である。
【図4】図3の蓋部材をA方向からみた平面図である。
【図5】図4の蓋部材のA−A断面図である。
【図6】図2のプッシャーを示す斜視図である。
【図7】図6のプッシャーの目盛針部の部分を示すA−A断面図である。
【図8】図1のステープラーのステープル打出し動作を示す一部破断側面図であり、(a)は通常姿勢時のステープラーを示し、(b)は通常姿勢から打出し姿勢へ移行した状態のステープラーを示す。
【図9】図1のステープラーにおいて、内蔵されたステープルが減少していくときの残針計の動作を示す図であり、左図がステープラーの一部破断側面図を示し、右図が左図で示すステープラーの残針計を示す平面図であって、(a)〜(c)の順にステープルが減少していく状態を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかるステープラーを示す斜視図である。
【図11】図6の目盛針部とは異なる形態の目盛針部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明における前後方向は、特に断りのない限りステープルの打出し口25側を前方とし、マガジン部3等の各部材の回動軸6側を後方として説明する。また、以下の説明における上下方向は、図1の上下方向を基準として説明する。
【0019】
本発明の第1の実施形態のステープラー1は、主に文房具として使用されるステープラーであって、図1で示されるように、蓋部2、マガジン部3、ベース部4を有している。そして、図2で示されるように、マガジン部3には、内部に入れ込んだステープルを後方から前方へと押圧するプッシャー5(押圧片部)が内蔵されている。そして、蓋部2、マガジン部3、ベース部4は回動軸6を介して一体に取付けられており、回動軸6を中心にそれぞれ独立して回動可能となっている。このとき、図1で示されるように、蓋部2の上面には、前後方向の中心部分からやや後方よりの部分に残針計7(残数確認手段)が設けられている。ステープラー1の使用者は、この残針計7が示す値を視認することにより、ステープラー1に内蔵されたステープルの残数を把握可能となっている。
【0020】
蓋部2は、図2で示されるように、外蓋部10と中板部11から構成されている。
【0021】
外蓋部10は略直方体であって、後方及び下方が開放された箱体となっている。このとき外蓋部10の天板部分10aは、やや屈曲しつつ前後方向に延びた略長方形板状となっている。そして、この天板部分10aには、残針計7の一部をなす窓部14が形成されており、窓部14と隣接する位置に残数目盛15が印字されている。より具体的には、窓部14と残数目盛15とは、外蓋部10の幅方向(前後方向及び上下方向に直交する方向)に併設されている。
【0022】
窓部14は、外蓋部10の天板部分10aを上下に貫通する長孔14aと、当該長孔14aを塞ぐ透明板14bから形成されている。
【0023】
このとき長孔14aは、外蓋部10の幅方向の中心近傍に位置しており、外蓋部10の前後方向の中心近傍から後方に向かって延びている。つまり、長孔14aは、外蓋部10の前後方向に延びる長孔となっている。そして長孔14aは、開口形状が略楕円形となっている。より詳細には、長孔14aの開口は、前端に位置する前方に凸となった半円状の部分と、前後方向の中心に位置する略長方形状の部分と、後端に位置する後方に凸となった半円状の部分とが連続したような形状となっている。
【0024】
またこの透明板14bは、特に限定されるものではないが、アクリル等の可視光を透過する部材で形成された板状の部分である。また、詳しくは後述するが、透明板14bは長孔14aの外側の開口を塞ぐ位置に配されている。
【0025】
中板部11は、ばね鋼等で形成された弾性を有する部材であり、図2で示されるように、略長方形板状の板本体部17と、打込み片18と、傾斜部19を有している。
【0026】
打込み片18は、図2で示されるように、板本体部17の前端部分を下方へ折り曲げることにより形成される略長方形板状の部分であり、板本体部17の前端から略垂直下方へ突出している。
【0027】
傾斜部19は、板本体部17の後端部分を折り曲げることにより形成される部分であり、中板部11の後方下側へ向かって延びている。より詳細に説明すると、図2で示されるように、傾斜部19は2つの略長方形板状の傾斜板部20,21によって形成されており、2つの傾斜板部20,21は所定の間隔を空けて並列に配され、同方向に延びている。そしてこの2つの傾斜板部20,21は、それぞれ本体部20a,21aと、後側板部20b,21bから形成されている。本体部20a,21aと後側板部20b,21bはいずれも長方形板状の部分であり、本体部20a,21aは後側板部20b,21bに比べて長手方向の長さが長くなっている。
【0028】
本体部20a,21aは、それぞれ前端部分で板本体部17と連続し、後端部分で後側板部20b,21bと連続している。そして本体部20a,21aは、いずれも後方へ向かうにつれて下方に向かって延びている。換言すると、本体部20a,21aは、中板部11の後方下側へ向かって延びている。
【0029】
後側板部20b,21bは、それぞれ前端部分で本体部20a,21aと連続しており、本体部20a,21aの後端から後方へ向かうにつれて下方に向かって延びている。即ち、本体部20a,21aの後端から後方下側へ向かって延びている。
【0030】
ここで、図2で示されるように、本体部20a,21aと後側板部20b,21bはいずれも後方下側へ向かって延びているが、延び方向の傾斜角度が異なっている。具体的には、本体部20a,21aと後側板部20b,21bは、いずれも板本体部17に対して傾斜する方向に延びているが、本体部20a,21aは、後側板部20b,21bに比べて傾斜が急になっている。
【0031】
つまり、板本体部17の後方部分を下方に折り曲げて本体部20a,21aを形成し、さらに本体部20a,21aの後端部分を上方に折り曲げることで後側板部20b,21bを形成している。このとき、2つの傾斜板部20,21の折り曲げ位置は、中板部11の前後方向において同じ位置となっており、2つの傾斜板部20,21は略同一の形状となっている。
【0032】
ここで、中板部11の後方部分に注目すると、後端から前方に向かって延びるガイド溝23が形成されている。
【0033】
ガイド溝23は、図2で示されるように、中板部11の幅方向(前後方向及び上下方向に直交する方向)の中心近傍に位置しており、中板部11の後端から前後方向の中心近傍まで延びる溝状の部分である。より具体的には、ガイド溝23は、傾斜部19と板本体部17の一部分に設けられており、後方側の傾斜部19に形成される部分と前方側の板本体部17に形成される部分とが連続して1つの溝を形成している。ここで後方側の傾斜部19に形成される部分は、2つの傾斜板部20,21の間に位置しており、傾斜部19の延び方向に沿って延びている。また前方側の板本体部17に形成される部分は、板本体部17の幅方向の中心近傍に位置しており、板本体部17の前後方向に沿って延びている。
このとき、ガイド溝23の開口形状は前端部分が丸みを帯びた略長方形状となっている。より具体的には、ガイド溝23の前端部分の開口形状は前方に凸となった半円状となっている。
【0034】
ここで蓋部2は、図2乃至図5で示されるように、外蓋部10の天板部分10aの下面(外蓋部10の内側天面)と中板部11の板本体部17の上面とを一体に取付けて形成されている。このとき、打込み片18は蓋部2の前端よりやや後方部分に位置しており、傾斜部19は蓋部2の後端よりやや前方に位置している。そして、図4,5で示されるように、窓部14とガイド溝23は重なり合う位置に配されている。
【0035】
具体的に説明すると、図4,5で示されるように、窓部14の前端とガイド溝23の前端とは、蓋部2の前後方向において同一の位置となっている。またガイド溝23の幅方向の長さと、窓部14の幅方向の長さが略同一となっている。さらにガイド溝23と窓部14はいずれも蓋部2の前後方向に延びている。したがって、図5で示されるように、ガイド溝23の板本体部17に形成されている部分と窓部14の長孔14aとは上下方向で連続しており、あたかも一体の溝のようになっている。
これに対して、外蓋部10の天板部分10aの下面(外蓋部10の内側天面)と中板部11の傾斜部19とは上下方向で離間している。したがって、図5で示されるように、ガイド溝23の傾斜部19に形成されている部分と窓部14の長孔14aとは上下方向で離間している。
つまり、図5で示されるように、窓部14の前端部分から後端よりやや前方の部分では、窓部14の長孔14aとガイド溝23が上下方向で連続して一体の溝を形成しており、窓部14の後端近傍の部分では、窓部14の長孔14aとガイド溝23の間に隙間を有する構成となっている。
【0036】
ところで、図5で示されるように、透明板14bの厚さ(上下方向の長さ)L1は、長孔14aの深さ(上下方向の長さ)L2より小さく(短く)なっており、透明板14bは長孔14aの上端近傍の部分に位置している。そして透明板14bの上面は、外蓋部10の天板部分10aの上面と同一面を形成している。即ち、透明板14bの上面はステープラー1の蓋部2の上面の一部を形成する。そして長孔14aは、上端側の開口近傍を透明板14bで閉塞されており、窓部14はあたかも下方から上方へ向かって深くなる有底穴のような形状となっている。
【0037】
マガジン部3は、図2で示されるように、上方と後方が開放された略直方体の箱体となっている。このとき底板部分3aの前端近傍には、内蔵されたステープルを打出すための打出し口25が設けられている。この打出し口25は、マガジン部3の底板部分3aを貫通し、マガジン部3の内部と外部を連通している。
またマガジン部3の幅方向の両端部分には、側壁部3b,3cがそれぞれ設けられている。この2つの側壁部3b,3cはそれぞれ略垂直に立設されるものであり、マガジン部3の前後方向の全域に亘って前後方向に沿って延びている。したがって、2つの側壁部3b,3cは対向する位置ある。このとき、2つの側壁部3b,3cの後端側近傍にはそれぞれ貫通孔27,27が設けられている。この貫通孔27,27は、それぞれ側壁部3b,3cをマガジン部3の幅方向に貫通する貫通孔となっている。そして2つの貫通孔27,27の上下方向及び前後方向の位置は同一であり、中心軸は同一となっている。即ち、2つの貫通孔27,27は対向する位置にある。
【0038】
ベース部4は、図2で示されるように、略長方形板状の本体部4aと側壁部4b,4cから形成されている。このとき、本体部4aの上面の前端部分には、曲台29が形成されている。曲台29は周囲よりやや隆起しており、その上面に、打ち出されたステープルの脚部を折り曲げるための窪みが形成されている。また、ベース部4の後端側の部分に注目すると、幅方向両端部分に側壁部4b,4cがそれぞれ設けられている。この2つの側壁部4b,4cはそれぞれ略垂直に立設されるものであり、それぞれベース部4の前後方向中心より後方側の位置から後端部分まで前後方向に沿って延びている。したがって、2つの側壁部4b,4cは対向する位置にある。このとき、2つの側壁部4b,4cの後端側上方にはそれぞれ貫通孔30,30が設けられている。この貫通孔30,30は、それぞれ側壁部4b,4cをベース部4の幅方向に貫通する貫通孔となっている。そして2つの貫通孔30,30の上下方向及び前後方向の位置は同一であり、中心軸は同一となっている。即ち、2つの貫通孔30,30は対向する位置にある。
【0039】
プッシャー5は、図6で示されるように、下方を開放した断面略「コ」字状で延びるプッシャー本体5aと、プッシャー本体5aの前端からさらに前方へ突出するステープル押圧部32,32とを備えている。そして、プッシャー本体5aの上面には、その後端近傍に目盛針部33が設けられている。
【0040】
目盛針部33は、図6で示されるように、土台部35と、針本体部36(本体部)と、コイルばね37(付勢部材)とを有している。
【0041】
土台部35は、図6で示されるように、プッシャー本体5aの上面に設けられ、当該上面より上方に隆起した部分となっている。そして土台部35は、図7で示されるように、その内部に内部空間40が形成されている。この内部空間40は略円筒状の空間となっており、上端部分の一部が開放されて外部と連続している。さらに具体的には、この内部空間40の中心軸は傾斜しており、内部空間40は斜め後方へ延びる空間となっている。このとき、内部空間40の上端近傍には、内部空間40を形成する内壁から内側へ突出する突出部42が設けられている。この突出部42は、より詳細には、内部空間40の径方向の外側から中心側へ向かって突出する環状の突起となっている。そして図6,7で示されるように、突出部42の上面は、土台部35の上面と同一面を形成している。そのことにより、内部空間40は、図7で示されるように、上端近傍に位置する略小径円柱状の上側空間40aと、下方側に位置する略大径円柱状の下側空間40bとが斜め方向で連続して形成される空間となっている。なお、上側空間40aと下側空間40bはいずれも中心軸が斜め後方へ傾斜した円柱状の空間となっている。
【0042】
針本体部36は、図7で示されるように、頭部36a,棒状部36b,突起部36cから形成されている。
【0043】
頭部36aは、図6,7で示されるように、針本体部36の上端側に位置する略円柱状の部分となっている。より詳細には、頭部36aは上端縁部が面取りされて丸みを帯びており、上方から下方へなだらかに傾斜している。つまり、頭部36aの上方では、上方から下方に向けて径が大きくなっていく部分が形成されている。
【0044】
棒状部36bは、図6,7で示されるように、略丸棒状の部分であり、頭部36aの下面の中心部分から略垂直下方へと突出する部分となっている。
【0045】
突起部36cは、図7で示されるように、棒状部36bの下端近傍に形成され、針本体部36の外側へ向かって突出する突起状の部分となっている。
【0046】
ここで、図7で示されるように、針本体部36の下方側の一部分は、土台部35の内部空間40内に配されており、針本体部36の上方側の部分は、土台部35の上面から外部へ突出している。詳細には、針本体部36の突起部36cが内部空間40の突出部42の下方に位置しており、針本体部36の棒状部36bが内部空間40の上側空間40aに挿通され、針本体部36の頭部36aが土台部35の外部に位置する状態となっている。そして、棒状部36bの径方向の長さは上側空間40aの径方向の長さより小さく、突起部36cの径方向の長さは上側空間40aの径方向の長さより大きくなっている。加えて、頭部36aの径方向の長さは上側空間40aの径方向の長さより大きくなっている。これらのことから、針本体部36が土台部35に対して、後方上側又は前方下側へ相対的に移動可能となっている。加えて、針本体部36が土台部35に対して相対的に移動しても、針本体部36が土台部35から外れない構成となっている。
【0047】
さらにまた、図6,7で示されるように、針本体部36の頭部36aと土台部35の天面の間には、コイルばね37が配されている。コイルばね37は、上端で頭部36aの下面と接触し、下端で土台部35の天面に接触している。そして、針本体部36の棒状部36bを取り囲むように配置されている。このことにより、針本体部36はコイルばね37によって後方上側へ付勢された状態となっている。
【0048】
次に本実施形態のステープラー1の組み立て構造について図1,2を参照しつつ説明する。本実施形態のステープラー1は、下方から上方へ向かって、ベース部4、マガジン部3、蓋部2の順に配された状態となっている。このとき、マガジン部3の貫通孔27,27と、ベース部4の貫通孔30,30が幅方向で重なった状態となっており、これら貫通孔27,27,30,30に回動軸6が挿通された状態となっている。そして、回動軸6を介して一体に取り付けられたベース部4及びマガジン部3に、蓋部2が取付けられた状態となっている。またこのとき、蓋部2は回動軸6を支点に回動可能に取り付けられるため、ベース部4、マガジン部3、蓋部2は回動軸6を支点に回動可能であり、それぞれ独立して回動可能となっている。
【0049】
さらにまた、マガジン部3の内部にプッシャー5が配された状態となっている。このとき、プッシャー5は、図示しないバネ等の付勢部材によって前方側へ付勢された状態で配されている。
【0050】
ここで本実施形態のステープラー1では、図1で示されるように、針本体部36の頭部36aが、窓部14の透明板14bの下面に下方から接触した状態となっている。そして、蓋部2の下方に位置する針本体部36を上方から視認可能となっている。詳説すると、図1,2で示されるように、目盛針部33、窓部14、残数目盛15によって残針計7が蓋部2に形成されている。この残針計7は、蓋部2の前後方向の中心部分近傍から蓋部2の後端よりやや前方の部分にかけて設けられている。即ち、残針計7は、使用者がステープラー1を使用するとき、多くの場合において使用者が把持しない部分に設けられている。このことにより、本実施形態のステープラー1は外部からマガジン部3に内蔵したステープルの残数を視認することができる。
以上で本実施形態のステープラー1の組み立て構造についての説明を終了する。
【0051】
本実施形態のステープラー1は、打込み片18が打出し口25から離れた位置にある通常姿勢から、打込み片18が前記打出し口25近傍に位置する打出し姿勢へと移行することによってステープルを打ち出すことができる。以下、図8を参照しつつステープラー1のステープル打出し動作について説明する。
【0052】
通常姿勢時では、本実施形態のステープラー1は、図8(a)で示されるように、打込み片18が打込み口25の上方に離れた位置に配されている。またこのとき、マガジン部3には、複数のステープルが列状に配されて形成されるステープル束45が内蔵されている。そして、打込み片18と打込み口25の間にはステープル束45の前端部分が位置している。
【0053】
この通常姿勢時の目盛針部33に注目すると、針本体部36がコイルばね37によって上方側へ付勢されており、針本体部36の頭部36aが窓部14の透明板14bに下方から接触している。より詳細には、頭部36aの少なくとも上方側の一部は長孔14a内に位置しており、頭部36aの上端部分は透明板14bの下面に接触している。
【0054】
上記した通常姿勢時のステープラー1に対して、ベース部4を支持した状態で蓋部2を下方側へ押圧すると、図8(b)で示されるように、ステープラー1の前端部分の近傍において蓋部2及びマガジン部3がベース部4に上方から接近して打出し姿勢へと移行する。このとき、蓋部2の移動に伴って、打込み片18が打出し口25と近接する。そして、ステープル束45の前端に位置するステープルが打込み片18によって押し出され、打出し口25から1本のステープルが打ち出される。
【0055】
ここで目盛針部33に注目すると、蓋部2と一体に設けられた透明板14bによって、針本体部36の頭部36aが下方側に押圧される。そのことにより、針本体部36の棒状部36bが土台部35の内部空間40(図7参照)に入り込んでいく。つまり、透明板14bによって押圧されることにより、針本体部36がコイルばね37の力に抗して下方へと移動する。そして、針本体部36の棒状部36bが下方から土台部35の内部へと埋没していく。ところでこのとき、コイルばね37は、針本体部36の頭部36aを上方へ押圧し続ける。そのため、針本体部36の頭部36aは透明板14bに接触した状態を維持する。換言すると、針本体部36は下方部分が土台部35の内部へ埋没し、頭部36aが透明板14bに接触した状態となる。
【0056】
なお、このようにコイルばね37が針本体部36の頭部36aを押圧し続けることにより、打出し姿勢時から通常姿勢時へ移行する場合においても針本体部36の頭部36aが透明板14bに接触した状態を実質的に維持する。即ち、針本体部36に対して透明板14bが離れる方向へ移動しても、コイルばね37に押圧された針本体部36の頭部36aが上方へ移動して透明板14bの下面に当接した状態となる。
【0057】
つまり、本実施形態のステープラー1では、通常姿勢、打込み姿勢のいずれ場合においても、針本体部36の頭部36aが透明板14bに接触した状態を維持する。加えて、通常姿勢から打込み姿勢への移行時においても頭部36aが透明板14bに接触した状態を維持すると共に、打込み姿勢から通常姿勢への移行時において頭部36aが透明板14bに接触した状態を実質的に維持する。即ち、本実施形態のステープラー1は、使用時又は不使用時に係わらず、常時、針本体部36の頭部36aが透明板14bに接触した状態を実質的に維持し続ける。
【0058】
次に、本実施形態のステープラー1においてステープル打出し動作を繰り返し、内蔵したステープル数が減少していくときのプッシャー5及び残針計7の動作について、図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0059】
ステープラー1のマガジン部3にステープル束45を内蔵すると、プッシャー5のステープル押圧部32がステープル束45を後方から前方へと押圧した状態となる。つまり、プッシャー5がステープル束45の後方に位置した状態となる。このとき、ステープル束45を構成するステープルの数は、ステープラー1に内蔵可能なステープル数の最大値であるものとする。すると、図9(a)の左図で示されるように、目盛針部33の針本体部36は、頭部36aが窓部14の後端側に位置した状態となっている。換言すると、ステープラー1に内蔵しているステープルの数が最大のとき、針本体部36の頭部36aが窓部14の長孔14aの後端側に位置するように設けられている。そしてこのとき、図9(a)の右図で示されるように、目盛針部33の頭部36aが残数目盛15の最大値を差し示す。
【0060】
図9(a)で示される状態からステープラー1でステープル打出し動作を繰り返し、内蔵したステープル数が減少していくと、図9(b)で示されるようにステープル束45の前後方向の長さが短くなり、プッシャー5がマガジン部3に対して相対的に前方へ移動する。そして、このプッシャー5の前方への移動に伴って、プッシャー5に一体に形成された針本体部36もまた、前方へと移動する。そして、針本体部36が移動することにより、図9(b)の右図で示されるように、残数目盛15において目盛針部33の頭部36aが差し示す値が変化する。ここで前記したように、針本体部36の頭部36aは、コイルばね37によって透明板14b側へ付勢されている。そのため、針本体部36は、頭部36aが透明板14bに接触した状態で前方へ摺動する。換言すると、頭部36aが前方へ移動するとき、頭部36aの上端は透明板14bの下面に沿って移動する。
【0061】
このとき、本実施形態では、針本体部36の頭部36aはガイド溝23に嵌入された状態となっている。即ち、針本体部36の少なくとも一部がガイド溝23内に配されている。このことにより、針本体部36が前方へと移動するとき、ガイド溝23によって蓋部2の幅方向側への移動を制限される。このことにより、移動時に針本体部36が正常な位置からずれることがなく、円滑に移動することができる。
【0062】
図9(b)で示される状態からステープラー1でさらにステープル打出し動作を繰り返し、内蔵したステープル数が減少していくと、図9(c)の左図で示されるように、マガジン部3の内部にステープルがない状態となる。このとき、図9(c)の左図で示されるように、プッシャー5が最も前方側に位置した状態となる。詳説すると、ステープラー1にステープルが内蔵された状態では、図9(a),図9(b)で示されるように、プッシャー5の前方にステープル(ステープル束45)が位置する。しかしながら、ステープラー1にステープルが内蔵されていない場合、図9(c)の左図で示されるように、プッシャー5の前方にステープルがなく、プッシャー5の前方への移動をステープルが妨げないので、プッシャー5はステープルが内蔵されているときより相対的に前方へ位置する。
【0063】
このとき、図9(c)の左図で示されるように、目盛針部33の針本体部36は、頭部36aが窓部14の前端側に位置した状態となっている。換言すると、ステープラー1に内蔵しているステープルの数がゼロのとき、針本体部36の頭部36aが窓部14の長孔14aの前端側に位置するように設けられている。そしてこのとき、図9(c)の右図で示されるように、目盛針部33の頭部36aが残数目盛15の最小値を差し示す。
以上で、内蔵したステープル数が減少していくときのプッシャー5及び残針計7の動作についての説明を終了する。
【0064】
上記した実施形態では、初めにステープラー1に内蔵したステープルの数が、ステープラー1の内蔵可能なステープル数の最大値であったため、図9(a)の右図のように、目盛針部33が残数目盛15の最大値を差し示した。しかしながら、ステープラー1にステープルを内蔵するとき、必ずしも内蔵可能な最大数のステープルを入れなくてもよい。目盛針部33が差し示す残数目盛15の値は、ステープラー1に内蔵したステープルの数、即ち、ステープル束45の前後方向の長さで可変する。したがって、初めにステープラー1に内蔵したステープルの数がステープラー1に内蔵可能なステープル数の最大値より小さい場合、残数目盛15はステープラー1に入れたステープル数に応じた値を差し示す。本実施形態のステープラー1は、このように目盛針部33が差し示す残数目盛15の値が最大値でない状態から使用してもよい。
【0065】
上記した実施形態では、手のひらに収めて使用する一般的なステープラーに本発明を適用した例を示したが、本発明を適用するステープラーはこれに限るものではない。例えば、所謂設置型と称される、大型ステープル打出し用のステープラーに本発明を適用してもよい。即ち、図10で示される第2の実施形態のように、机上等に設置した状態でハンドルを押し下げてステープルを打ち込むステープラー100に、残数計101を設けた構成であってもよい。本発明の残数計(残数確認手段)は、内蔵したステープル数に対応して動く部分(押圧片部)に目盛針部を連動でき、目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触する構成であればよい。
【0066】
また、上記した実施形態の目盛針部33は、針本体部36の頭部36aが上方角部分を面とりした略円柱状の頭部36aを示したが、本発明の針本体部の頭部はこのように形状に限るものではない。針本体部の頭部は、例えば、円柱状や角柱状のような略柱状であってもよく、球状や、半球状のように上方に凸であって上端近傍が丸みを帯びた形状であってもよい。また、天面が星型やハート型のような意匠性の高い形状であってもかまわない。
なお図11で示されるように、頭部104が球体の針本体部103であれば、透明板14bと点接触するので、面接触する構成に比べて針本体部103が滑らかに摺動するという効果がある。
さらにまた、上記した実施形態のように、角部分が適宜面とりされた構成であると、面とりしない構成に比べて、針本体部が摺動するときに透明板14bに引っ掛かりにくく、針本体部が滑らかに動くので望ましい。
【符号の説明】
【0067】
1 ステープラー
2 蓋部
3 マガジン部
5 プッシャー(押圧片部)
7 残針計(残数確認手段)
14 窓部
18 打込み片
23 ガイド溝
25 打出し口
33 目盛針部
36 本体部
37 コイルばね(付勢部材)
45 ステープル束
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数本が束となったステープルを内部に装填可能であり、内部に装填したステープルを打ち出すための打出し口を備えたマガジン部と、当該マガジン部を覆う蓋部と、打込み片と、押圧片部とを備え、
前記押圧片部は、マガジン部の内部に装填したステープルを前記打出し口近傍へ向かって押圧し、前記ステープルを前記打出し口に対して位置決めするものであり、
打込み片が打出し口から離れた位置にある通常姿勢から、打込み片が前記打出し口近傍に位置する打出し姿勢へと移行することによってステープルを打ち出すステープラーにおいて、
マガジン部に装填したステープルの残数を視認可能な残数確認手段を有しており、
前記残数確認手段は、窓部と目盛針部とを備え、
前記窓部は、蓋部に形成されており、
前記目盛針部は押圧片部と連動するものであり、目盛針部の少なくとも一部は前記窓部にマガジン部側から接触するものであって、
通常姿勢時と打出し姿勢時のいずれにおいても目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触した状態を維持することを特徴とするステープラー。
【請求項2】
前記目盛針部は、本体部と付勢部材とを有し、
本体部の少なくとも一部は、前記押圧片部に近づく方向に退入可能となっており、付勢部材によって押圧片部から離れる方向へ付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のステープラー。
【請求項3】
前記蓋部は前記マガジン部の上方部分を被覆して閉塞可能なものであって、
蓋部の内側面にはガイド溝が形成されており、前記蓋部が閉じた状態にあるとき、目盛針部の少なくとも一部がガイド溝の間に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載のステープラー。
【請求項1】
1又は複数本が束となったステープルを内部に装填可能であり、内部に装填したステープルを打ち出すための打出し口を備えたマガジン部と、当該マガジン部を覆う蓋部と、打込み片と、押圧片部とを備え、
前記押圧片部は、マガジン部の内部に装填したステープルを前記打出し口近傍へ向かって押圧し、前記ステープルを前記打出し口に対して位置決めするものであり、
打込み片が打出し口から離れた位置にある通常姿勢から、打込み片が前記打出し口近傍に位置する打出し姿勢へと移行することによってステープルを打ち出すステープラーにおいて、
マガジン部に装填したステープルの残数を視認可能な残数確認手段を有しており、
前記残数確認手段は、窓部と目盛針部とを備え、
前記窓部は、蓋部に形成されており、
前記目盛針部は押圧片部と連動するものであり、目盛針部の少なくとも一部は前記窓部にマガジン部側から接触するものであって、
通常姿勢時と打出し姿勢時のいずれにおいても目盛針部の少なくとも一部が窓部に接触した状態を維持することを特徴とするステープラー。
【請求項2】
前記目盛針部は、本体部と付勢部材とを有し、
本体部の少なくとも一部は、前記押圧片部に近づく方向に退入可能となっており、付勢部材によって押圧片部から離れる方向へ付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のステープラー。
【請求項3】
前記蓋部は前記マガジン部の上方部分を被覆して閉塞可能なものであって、
蓋部の内側面にはガイド溝が形成されており、前記蓋部が閉じた状態にあるとき、目盛針部の少なくとも一部がガイド溝の間に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載のステープラー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−43236(P2013−43236A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181384(P2011−181384)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】
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