説明

ステープル繊維ヤーン、織物品を製造するための方法および織物品

少なくとも1つの撚糸を含むステープル繊維が提供される。この撚糸は第1ステープル繊維および第2ステープル繊維の混合物を含み、第1ステープル繊維は少なくとも80cN/texの破断強度を有する高強度フィラメントから製造され、第2ステープル繊維は5%〜50%の範囲の収縮率を有する。第1ステープル繊維対第2ステープル繊維の重量比はA:BであってかつA:Bは5:95〜45:55の範囲にある。本発明のステープル繊維ヤーンを用いて織物品を製造する方法も提供される。この方法は収縮することを含み、収縮はステープル繊維ヤーンに施され、その後収縮されたステープル繊維ヤーンから物品を製造するか、または未収縮ステープル繊維ヤーンを含む物品に施される。この織物品は同様に製造された織物品と同等に高いかまたはそれより大いに高い着用抵抗を有しており、その織物品に用いられたステープル繊維ヤーンはもっぱら高強度フィラメントから製造された第1ステープル繊維からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステープル繊維ヤーン、織物品(textile article)を製造するための方法および織物品に関する。
【背景技術】
【0002】
アラミドステープル繊維から製造されたステープル繊維ヤーンで作られた織物品はEP−A 1 099 088によって知られている。手袋のような、このタイプの品物は着用抵抗(wear resistance)および切断抵抗は高いが、その中の加工された高コストのアラミド繊維のために、それだけ高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故、本発明の目的は、着用抵抗を損なうことなく、より安価で供給できる織物品を入手可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は少なくとも1つの撚糸を含むステープル繊維ヤーンによって達成される。この撚糸は第1ステープル繊維と第2ステープル繊維の混合物からなり、第1ステープル繊維は少なくとも80cN/texの破断強度を有する高強度フィラメントからなり、第2ステープル繊維は5%〜50%の範囲の収縮率を有し、少なくとも1つの撚糸中の第1ステープル繊維対第2ステープル繊維の重量比はA:Bで表され、そしてA:Bは5:95〜45:55の範囲にある。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明のステープル繊維ヤーンは、まずそれが縮められた後織物品に加工されるか、または初めに本発明のステープル繊維ヤーンから織物品を製造した後この物品を縮めるか、のどちらかで織物品に加工されうる。
驚くべきことに、本発明の織物品はもっぱら第1ステープル繊維からなるステープル繊維ヤーンを用いて同様に製造された織物品と比較して同じかまたはそれより高い着用抵抗を有しており、本発明品は、高強度フィラメントから作られた第1ステープル繊維の比率について見ると、A:Bの比率が5:95〜45:55の範囲にあるので、常に第2ステープル繊維の割合よりも小さいが、依然として切断抵抗があり、その減少量は高強度フィラメントから製造された第1ステープル繊維から専ら製造された比較品に比べ、驚くほどに小さい。
それ故、上記織物品の製造方法およびこの方法によって製造された織物品は本発明の一部である。
【0006】
本発明は本発明品に含まれる第2ステープル繊維が第1ステープル繊維に比較して著しく低価格であるために、初めて相応に低い価格で織物品を提供できるようにするものである。それと同時に、本発明の織物品のある態様では、着用抵抗は81%増加したが、一方、切断抵抗は高強度フィラメント(A:B=100:0)から製造された第1ステープル繊維のみからなる1種類のステープル繊維ヤーンを用いて同じ方法で製造された織物品よりも11%低いだけである。
本発明のステープル繊維ヤーンは第1および第2ステープル繊維の混合物からなる少なくとも1つの撚糸を含んでいる。このことは、本発明の文脈においては、本発明のステープル繊維ヤーンの各容量単位において、第1および第2ステープル繊維は、第1および第2ステープル繊維に関してステープル繊維ヤーンがすべて心鞘構造を基本的にはとっておらず、好ましくは完全にとっていないように、緊密な混合物として存在することを意味する。
【0007】
本発明のステープル繊維ヤーンは少なくとも1つの撚糸を含んでおり、その撚糸は少なくとも80cN/texの破断強度を有する高強度フィラメントから製造される第1ステープル繊維を含んでいる。もし破断強度が80cN/texより小さいと、本発明のステープル繊維ヤーンから製造される織物品の切断抵抗は低すぎる。本発明のステープル繊維ヤーンの第1ステープル繊維は好ましくは少なくとも120cN/tex、特に好ましくは少なくとも150cN/texそしてさらに特に好ましくは190cN/texの破断強度を有する高強度フィラメントから製造される。
第1ステープル繊維は相当する高強度フィラメントを引き裂くことによって製造することができ、このことは第1ステープル繊維の長さ分布は引き裂く工程の結果によることになることを意味する。あるいは、第1ステープル繊維は相当する高強度フィラメントを切断することによって製造することができる。このことは、第1ステープル繊維は一定の長さとなることを意味しており、その長さは好ましくは10mm〜200mmの範囲にあり、そしてさらに好ましくは30mm〜60mmの範囲にある。
【0008】
本発明ステープル繊維ヤーンの好ましい態様では、第1ステープル繊維は、アラミドステープル繊維、ポリベンズオキサゾールステープル繊維、およびポリベンズチアゾールステープル繊維からなる群の少なくとも1つから選択される。これは、本発明においては、第1ステープル繊維はアラミドステープル繊維もしくはポリベンズオキサゾールステープル繊維またはポリベンズチアゾールステープル繊維のいずれかのみから選択されるということを意味する。これはさらに、本発明においては、第1ステープル繊維はポリベンズオキサゾールステープル繊維および/またはポリベンズチアゾールステープル繊維とアラミドステープル繊維との混合物からなることもありうることを意味する。
本発明の範囲内では、アラミドステープル繊維とは、アラミド、すなわち少なくとも85%のアミド結合(−CO−NH−)が2つの芳香環に直接結合している芳香族ポリアミドから製造されるステープル繊維を意味している。本発明において特に好ましい芳香族ポリアミドは、パラフェニレンジアミンと二塩化テレフタロイルのモル対モル重合によって得られる単独重合体であるポリパラフェニレンテレフタルアミドである。さらに、パラフェニレンジアミンと二塩化テレフタロイルに加えて、重合鎖中に取り込まれた少量の他のジアミンおよび/または他のジカルボン酸塩化物を含む共重合体は、本発明の芳香族ポリアミドとして好適である。一般的な基準として、パラフェニレンジアミンと二塩化テレフタロイルに関して、他のジアミンおよび/または他のジカルボン酸塩化物は10モルパーセントまでの量で重合鎖に取り込められると理解されている。
【0009】
本発明のステープル繊維ヤーンにおいては、ここで使用される第1ステープル繊維は、例えば前記アラミドステープル繊維と同様に新規のステープル繊維でありうる。しかしながら、本発明のステープル繊維ヤーンにおいて使用される第1ステープル繊維は、例えば前記アラミドステープル繊維はもちろん、それと同じく、最大100wt%のリサイクルステープル繊維から作られたものであることができる。
本発明の範囲内では、ポリベンズオキサゾールステープル繊維およびポリベンズチアゾールステープル繊維は、ポリベンズオキサゾールまたはポリベンズチアゾール、すなわち下記構造単位中に示されるように、窒素に結合した芳香族基が好ましくは炭素環式構造である、下記に示す構造単位を有する重合体から製造されるステープル繊維を意味する。ただし、上記芳香族基は複素環式であってもよい。加えて、下記構造単位に示すように、窒素に結合した芳香族基は6員環が好ましい。ただし、上記芳香族基は縮環もしくは非縮環の多環系として形成されていてもよい。
【0010】
【化1】

【0011】
好ましい態様では、本発明のステープル繊維ヤーンは線密度が0.1dtex〜10dtexの範囲の第1ステープル繊維を有し、その線密度は特に好ましくは0.5dtex〜5dtex、そして最も好ましくは0.5dtex〜2.5dtexの範囲である。
【0012】
本発明のステープル繊維ヤーンは5%〜50%の範囲の収縮率を持つ第2ステープル繊維を有する。もし収縮率が5%より小さければ、本発明のステープル繊維によって製造された織物品の切断抵抗は低すぎる。収縮率が50%より大きいとき、収縮した織物品は硬すぎて、着用快適性が低すぎる。
本発明のステープル繊維ヤーンの第2ステープル繊維は、好ましくは7%〜40%の範囲の収縮率を有し、さらに好ましくは8%〜35%の範囲、最も好ましくは9%〜30%の範囲の収縮率を有する。
第2ステープル繊維は、本発明で要求される収縮率を有する相応のフィラメントを引き裂くことによって製造することができ、第2ステープル繊維は引き裂き工程の結果に起因する長さ分布を有する。あるいは、第2ステープル繊維は、本発明で要求される収縮率を有する相応のフィラメントを切断することによって製造することができ、その切断により第2ステープル繊維は一定の長さとなり、その長さは好ましくは10mm〜200mmの範囲そしてさらに好ましくは30mm〜60mmの範囲である。
【0013】
本発明のステープル繊維ヤーンのさらに好ましい態様においては、第2ステープル繊維は熱可塑性ステープル繊維であり、好ましくはポリアクリロニトリルステープル繊維およびポリエーテルエーテルケトンステープル繊維からなる群の少なくとも1つから選択される。つまり、本発明の文脈においては、第2ステープル繊維はポリアクリロニトリルステープル繊維またはポリエーテルエーテルケトンステープル繊維のどちらかのみから選ばれるのが好ましい。さらに言えば、本発明の文脈においてさらに好ましい態様においては、第2ステープル繊維はポリアクリロニトリルステープル繊維とポリエーテルエーテルケトンステープル繊維の混合物から製造される。この場合、ポリエーテルエーテルケトンステープル繊維の割合が増加するほど本発明のステープル繊維から製造された織物品の耐熱性は増加する。
本発明の文脈においては、ポリアクリロニトリルステープル繊維は少なくとも85wt%のアクリロニトリル単位
【0014】
【化2】

【0015】
を含む重合体から製造されるステープル繊維を意味する。残りの最大15wt%は単独のまたは混合物中のエチレン性単量体であってよく、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど)、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはメタクリロニトリルの如き、アクリロニトリルと重合されうるエチレン性単量体である。
【0016】
本発明の文脈においては、ポリエーテルエーテルケトンステープル繊維は、複数のフェニル基が複数のエーテル基および複数のケトン基と順番に結合し、すなわち2つのエーテル結合に続き1つのケトン結合がある重合体から製造されるステープル繊維を意味している。
好ましい態様では、本発明のステープル繊維ヤーンは0.1dtex〜20dtexの範囲の線密度を有する第2ステープル繊維を有し、その線密度はさらに好ましくは0.5dtex〜5dtexの範囲、特に好ましくは0.9dtex〜2.5dtexの範囲にある。
本発明のステープル繊維ヤーンは少なくとも1つの撚糸を含み、好ましくは2つまたは3つまたは4つの撚糸を含む。
本発明のステープル繊維ヤーンの各撚糸は好ましくは100dtex〜10,000dtex、さらに好ましくは120dtex〜5,000dtex、特に好ましくは200dtex〜2,000dtexの範囲の線密度および相応するNm値を有する(Nm=1,000/tex)。
本発明のステープル繊維ヤーンの好ましい具体例では、A:Bは10:90〜40:60の範囲にある。
【0017】
本発明ステープル繊維ヤーンは、原則としてステープル繊維を製造する如何なる方法によっても製造される。例えば以下の工程からなる方法が挙げられる。
a)第1および第2そしてもし必要であれば追加のステープル繊維を用意し、ここで、第1ステープル繊維は少なくとも80cN/texの破断強度を有する高強度フィラメントから製造され、そして第2ステープル繊維は5%〜50%の範囲の収縮率を有する、
b)第1、第2そしてもし必要であれば追加のステープル繊維をスライバーを製造することによって混合し、ここで、その混合は、製造される本発明のステープル繊維の各容積単位で、第1、第2そしてもし必要であれば追加のステープル繊維の緊密な混合物が存在するように行われ、その結果得られた本発明のステープル繊維ヤーンは少なくとも第1および第2ステープル繊維に関して基本的にすべて心鞘構造をとらず、そして第1ステープル繊維対第2ステープル繊維対追加のステープル繊維の重量比は5:95:0〜45:55:0、好ましくは5:90:5〜40:60:0の範囲内にある、そして
c)工程b)において製造されたスライバーを少なくとも1つの撚糸に紡糸する。
これまでの過程で、先に述べた工程の特徴は、本発明のステープル繊維ヤーンの初めの記述中で説明した該当する意味を有する。
【0018】
追加で使用されるステープル繊維の選択においては、必要に応じて、本発明の方法では、工程b)において選択される追加のステープル繊維の種類と量は本発明のステープル繊維の有利な特徴を達成させる各々望ましい程度であると考えられるべきである。もし、例えば、綿、レーヨン、ナイロン、または他のポリエステルステープル繊維が追加のステープル繊維として使用される場合、それらの繊維は新しくてもまたはリサイクル工程を経たもののいずれでもよく、工程b)で製造された混合物中の前記ステープル繊維の重量比は約90wt%、好ましくは約80wt%を越えるべきではなく、よって第1ステープル繊維対第2ステープル繊維対追加のステープル繊維の重量比は特定のケース例えば5:20:75および20:70:10の中にある。
もし追加のステープル繊維なしに本発明のステープル繊維ヤーンが製造されるならば、第1ステープル繊維対第2ステープル繊維の重量比は好ましくは10:90〜40:60の範囲にある。
【0019】
本発明の基本的な目的は本発明のステープル繊維ヤーンを使用して織物品を製造する方法によってさらに達成される。その方法は収縮を含み、そしてその収縮が
−ステープル繊維ヤーンに施された後その収縮されたステープル繊維ヤーンを用いて織物品を製造するか
−収縮されていないステープル繊維ヤーンを含む前記物品に実施されるか
のいずれでもよい。
本発明の方法では、収縮は本発明のステープル繊維ヤーンを収縮温度Tで加熱することによって実施される。Tはガラス温度Tよりも高くそして第2ステープル繊維をなす物質の融点Tよりも低い。上記工程で、収縮は、乾燥した、もしくは蒸気飽和した、または湿った雰囲気中で実施されうる。すなわち熱気、飽和水蒸気、または沸騰水による収縮である。
【0020】
もし本発明のステープル繊維ヤーンの収縮が本発明織物品へと加工される前に実施されるならば、本発明のステープル繊維ヤーンは、収縮の間、前記雰囲気の中の1つに置かれたスプール上に置かれる。あるいは、本発明のステープル繊維ヤーンはスプールからほどかれ、そして前記雰囲気の中の1つを通過供給されてもよい。
もし収縮が本発明のステープル繊維ヤーンを含む物品に実施されるならば、本発明のステープル繊維ヤーンを含む本発明の織物品は前記の特定の雰囲気の1つに置かれそして本発明のステープル繊維ヤーンの収縮は特定の温度範囲中で引き起こされる。
前述したように、織物品を製造するための本発明の方法における収縮は収縮温度Tにおいて実施され、TはT<T<Tの範囲にある。第2ステープル繊維を形成する多くの材料、特に熱可塑性ポリマーのために、Tは、100℃〜150℃の範囲にまで、とりわけ110℃〜140℃の範囲まで広げられる。これは本発明方法において上記特定範囲が、それぞれ、好ましいもしくはより好ましいということである。
収縮が本発明の織物品を製造するために本発明方法において十分に行われるように、収縮時間tが20秒〜700秒の範囲、とりわけ30秒〜240秒の範囲、およびさらに特に好ましくは50秒〜180秒の範囲にあると、第2ステープル繊維を形成している複数の材料、とりわけ熱可塑性ポリマーにとって十分である。
【0021】
本発明の織物品を製造するための本発明方法における本発明のステープル繊維の使用は、織物品が好ましくは編成、鉤針編み、編組編み、または織成によってステープル繊維ヤーンから製造されるような既知の方法のいずれか1つの形式で行ってもよい。
本発明のステープル繊維ヤーンを使用する織物品を製造するための本発明方法が編成による場合、その編成は好ましくは針ゲージは7gg〜18gg(1ggは2.54cmあたり1ステッチを意味する)を、また網目密度は横の列はcmあたり3〜12の範囲および縦の列はcmあたり3〜12の範囲で行われる。
【0022】
本発明の物品の製造においては、ただ1つの撚糸から作られた本発明ステープル繊維ヤーンは、例えば、編成、鉤針編み、編組編み、または機織りの装置に供給されうる。しかしながら、2つまたは3つまたは4つの撚糸から作られた本発明ステープル繊維ヤーンもまた前記装置の1つに供給されることが可能であり、その2つまたは3つまたは4つの撚糸は装置に平行に供給されうる。あるいは、2つまたは3つまたは4つの撚糸は初めに互いの周囲にねじられそして本発明の織物品を製造する装置へと供給される。
本発明の基本的な目的は最終的には本発明方法によって製造される織物品によって達成される。
本発明の織物品の好ましい態様は、手袋、エプロン、ズボン、ジャケット、袖、ホース、ホースジャケット、または耐汚損製品である。
本発明は、下記実施例によってさらに詳細に記載される。
【実施例】
【0023】
実施例1a
50mm長のp−アラミドステープル繊維(タイプ1072、テイジンアラミド)は最初のステープル繊維として準備された。これはフィラメント線密度1.7dtexのp−アラミドフィラメントヤーン(タイプ1012、テイジンアラミド)を切断することによって製造されている。
50mm長ポリアクリロニトリルステープル繊維(タイプSHK1,3/50、Dyvertex)は第2ステープル繊維として準備された。これはフィラメント線密度1.3dtexのポリアクリロニトリルフィラメントヤーンを切断することによって製造されている。上記ポリアクリロニトリルステープル繊維はDIN53866,part3(1979年3月)によれば、収縮時間15分、収縮温度190℃および240mgの予備伸長で19.1%の収縮を計測した。
第1ステープル繊維の30重量部がスライバー混合を用いて第2ステープル繊維の70重量部と緊密に混合され、そしてNm28/1(36tex)の撚糸からなるステープル繊維ヤーンが製造される。これらの撚糸の4本が互いの周りにより合わされ、編み物機に供給されそして手袋に編みあげられる。そのときの針ゲージは7gg(2.54cmにつき7ステッチ)、収縮前の手袋の網目密度は横の列はcmあたり3.5で縦の列はcmあたり3.5である。
【0024】
実施例1b
実施例1bは、手袋の製造工程中Nm28/1(36tex)の撚糸が編み機中に供給され、そのときの針ゲージは13gg(2.54cmにつき13ステッチ)であり、また収縮前の手袋の網目密度は横の列はcmあたり8で縦の列はcmあたり6である点で異なるが、実施例1aと同様に実施される。
【0025】
比較例V1
50mm長のp−アラミドステープル繊維(タイプ1072、テイジンアラミド)はフィラメント線密度1.7dtexのp−アラミドフィラメントヤーン(タイプ1012、テイジンアラミド)を切断することにより製造される。
ステープル繊維ヤーンはNm28/1(36dtex)の撚糸からなる上記ステープル繊維から製造される。これらの糸のうち4つは互いの周囲により合わされ、編み機中に供給されそして手袋へと編みあげられる。このときの針ゲージは7gg(2.54cmにつき7ステッチ)であり、また網目密度は横の列はcmあたり3.5で縦の列はcmあたり3.5である。
【0026】
比較例V2
比較例V2は、撚糸が編み機中に供給され、そのときの針ゲージは13ggであり、また網目密度は横の列はcmあたり8で縦の列はcmあたり6である点で異なるが、比較例V1と同様に実施される。
最低単位切断指数、NESI、および穴が形成されるまでの回転数として表す着用抵抗、TZは、実施例1a−bによって製造された本発明の手袋と比較例V1とV2によって製造された比較手袋についてEN388によって決定された。その後、本発明により製造された手袋は熱気オーブン中で収縮温度T=130℃収縮時間t=120秒の条件で収縮を受け、そして再びNESIとTZが測定された。
上記の結果は下記表に要約されている。A/Bはp−アラミドステープル繊維対本発明のステープル繊維ヤーン中のポリアクリロニトリルステープル繊維の重量比を示し、ggは編み機の針ゲージを示し、未収縮と収縮のNESIは最低単位切断指数、すなわち収縮前と収縮後の切断抵抗を示し、また未収縮と収縮のTZは穴があくまでの回転数、すなわち収縮前と収縮後の着用抵抗を示している。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1aと比較例V1との比較は、本発明の手袋に用いられたステープル繊維ヤーン中の70%のp−アラミドステープル繊維がポリアクリロニトリルステープル繊維に置きかえられているにもかかわらず、本発明のステープル繊維ヤーンを用いかつ収縮されて製造された本発明の手袋は比較例の手袋よりも切断抵抗は11%低いだけで、着用抵抗は81%高いことを示している。
【0029】
実施例1bと比較例V2との比較は、本発明の手袋に用いられたステープル繊維ヤーン中の70%のp−アラミドステープル繊維がポリアクリロニトリルステープル繊維に置きかえられているにもかかわらず、本発明のステープル繊維ヤーンを用いかつ収縮されて製造された本発明の手袋は比較例の手袋よりも確かに33%だけ低い切断抵抗を示しているが着用抵抗は実質的に同等であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの撚糸を含むステープル繊維ヤーンであって、前記撚糸は第1ステープル繊維および第2ステープル繊維の混合物を含み、第1ステープル繊維は少なくとも80cN/texの破断強度を有する高強度フィラメントから製造され、第2ステープル繊維は5%〜50%の範囲の収縮率を有し、上記少なくとも1つの撚糸において第1ステープル繊維対第2ステープル繊維の重量比はA:BであってかつA:Bは5:95〜45:55の範囲にある、前記ステープル繊維ヤーン。
【請求項2】
第1ステープル繊維が少なくとも120cN/texの破断強度を有する高強度フィラメントから製造されることを特徴とする請求項1に記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項3】
第1ステープル繊維がアラミドステープル繊維、ポリベンズオキサゾールステープル繊維およびポリベンズチアゾールステープル繊維からなる群の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項4】
第1ステープル繊維が0.1dtex〜10dtexの範囲の線密度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項5】
第2ステープル繊維が7%〜40%の範囲の収縮率を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項6】
第2ステープル繊維が熱可塑性ステープル繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項7】
熱可塑性ステープル繊維がポリアクリロニトリルステープル繊維およびポリエーテルエーテルケトンステープル繊維からなる群の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項6に記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項8】
第2ステープル繊維が0.1dtex〜20dtexの範囲の線密度を有することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項9】
ステープル繊維ヤーンが2つまたは3つまたは4つの撚糸からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項10】
各撚糸が100dtex〜10,000dtexの範囲の線密度を有することを特徴とする請求項9に記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項11】
第1ステープル繊維対第2ステープル繊維の重量比であるA:Bが10:90〜40:60の範囲にあることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のステープル繊維ヤーン。
【請求項12】
ステープル繊維ヤーンに収縮を施し、その後収縮を施したステープル繊維ヤーンから織物品を製造するか、または収縮されていないステープル繊維ヤーンを含有する織物品に収縮を施す、いずれかの収縮工程を含む、請求項1〜11のいずれかに記載のステープル繊維ヤーンを用いて織物品を製造する方法。
【請求項13】
収縮が100℃〜150℃の範囲の収縮温度Tで実施されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
収縮が20秒〜700秒の範囲の収縮時間tで実施されることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
編成、鉤針編み、編組編み、または織成によって用途が生じることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
編物が、針ゲージは7gg〜18gg、網目密度は横の列はcmあたり3〜12の範囲および縦の列はcmあたり3〜12の範囲で行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれかに記載の方法によって製造された織物品。
【請求項18】
繊維物品が、手袋、エプロン、ズボン、ジャケット、袖、ホース、ホースジャケット、または耐汚損製品であることを特徴とする請求項17に記載の織物品。

【公表番号】特表2011−509357(P2011−509357A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541759(P2010−541759)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050021
【国際公開番号】WO2009/087123
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(502036011)テイジン・アラミド・ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】