説明

ストック長さ調節式模擬銃の通電装置

【課題】ストック長さ調節式模擬銃において、ストック位置に拘らず電動部と電源部を常時通電可能な状態に置く通電装置を提供する。
【解決手段】銃本体の後端部にて後方へ突出した本体突出部20を設け、本体突出部の前後方向へ移動可能であり、前方移動では銃本体に近付き後方移動では銃本体から遠ざかるようにストック13を本体突出部20に嵌合して取り付け、ストックの移動位置に拘らず電動部とストックに設けた電源部を常時通電可能な状態に置くために前後方向に沿って細長く形成された端子レール31と、ストックの前後移動に伴って端子レールと常時摺接可能な接点端子32をそれぞれ銃本体又はストックの何れかに設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銃本体の後部に長さ調節機構を介して設けたストックを有し、銃本体に設けた電動部とストックに設けた電源部が通電可能に接続されている構成を有するストック長さ調節式模擬銃の通電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銃には、例えば米国特許第6560911号明細書或いは特開2008−8525号に開示されているように、ストック或いは銃床などと呼ばれる部分の長さを調節可能にした形態を持つものがある。この形態を持つ銃をモデルとして電動式の模擬銃を構成する場合には、銃本体に電動部を設けストックには電源部を設けることが合理的であるので、銃本体の電動部とストックの電源部を配線によって接続する必要がある。
【0003】
従来は、ストックの移動分の長さよりも余裕を持たせた長さのコードを用いて、上記の電動部と電源部を接続することが行われたが、ストックの移動の都度コードが引き伸ばされたり撓ませられたりすることを繰り返す結果、コードが早期に損傷したり、ストックのスムーズな長さ調節が妨げられたりするという問題が起こる。また、弾丸発射に伴う反動を与えるウェイトを銃本体に設けたリコイルユニットの一部として装備した模擬銃では、ストックの長さ調節機構部分にコードを通すことができないため、電源部をストック以外に設けるかリコイルユニットをあきらめるかの選択を迫られることになる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6560911号明細書
【特許文献2】特開2008−8525号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、ストック長さ調節式模擬銃において、ストック位置に拘らず銃本体に設けた電動部とストックに設けた電源部を常時通電可能な状態に置く通電装置を提供することである。また、本発明の他の課題はリコイルユニットを搭載した模擬銃においても、また、リコイルユニットを搭載していない模擬銃においても適用可能なストック長さ調節式模擬銃の通電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、銃本体の後部に長さ調節機構を介して設けたストックを有し、銃本体に設けた電動部とストックに設けた電源部が通電可能に接続されている構成を有するストック長さ調節式模擬銃の通電装置において、
銃本体の後端部にて後方へ突出した本体突出部を設け、この本体突出部の前後方向へ移動可能であり、前方移動では銃本体に近付き後方移動では銃本体から遠ざかるストックを本体突出部に嵌合して取り付け、
ストックの移動位置に拘らず電動部と電源部を常時通電可能な状態に置くために前後方向に沿って細長く形成された端子レールと、ストックの前後移動に伴って端子レールと常時摺接可能な接点端子をそれぞれ銃本体又はストックの何れかに設けた構成を有するものとするという手段を講じたものである(請求項1)。
【0007】
本発明の装置はストック長さ調節式模擬銃において、ストックの移動位置に拘らず電動部と電源部を常時通電可能な状態に置くことを可能にするものである。銃本体の後部に長さ調節機構を介して設けたストックを持つものについては、伸縮式であるとか出没式であるとか様々な呼び方がなされる。しかし、ストックはゴムやばねのように伸び縮みするものでないので伸縮式というのは適当ではなく、銃本体内に没入してしまうものでもないので出没式ともいいがたい。そこでそれらと同等であるが、本発明のものはこれをストック長さ調節式模擬銃と呼ぶものである。
【0008】
本発明の装置では、銃本体の後端部に後方へ突出した本体突出部を設けるものとする。本体突出部は銃本体の一部であり、長さ調節機構として見た場合にはストックを前後方向に移動可能とするための一種のガイドの機能を果たす。そしてこの本体突出部の前後方向へ移動可能であり、前方移動では銃本体に近付き、後方移動では銃本体から遠ざかるように、ストックを本体突出部に嵌合して取り付ける。
【0009】
本発明では、ストックの移動位置に拘らず電動部と電源部を常時通電可能な状態に置くために前後方向に沿って細長く設けられた端子レールと、ストックの前後移動に伴って端子レールと常時摺接可能な接点端子をそれぞれ銃本体又はストックの何れかに設けるものとする。後述する例では、端子レールをストックに配置し、接点端子を本体突出部に配置した例について記載しており、このようにするとストックの荷重を、接点端子を経て端子レールに掛けることになり、接点圧力の安定を図ることができると考えられるが、逆に端子レールを本体突出部に配置し、接点端子をストックに配置することももちろん可能である。
【0010】
上記長さ調節機構としては、前後方向に沿って本体突出部に複数箇所設けた係合部と、係合部と係合可能かつ係合部から離脱可能にストックに設けた係合相手部及びその操作部から成る構成を取る。操作部は簡単な操作によって係合部と係合相手部との係合及び係合からの離脱を可能にするために、例えばレバーのような操作部分を有していることが望ましい。
【0011】
上記本体突出部が、リコイルユニットの一部として弾丸発射に伴う反動を与えるウェイトが前後方向へ移動するウェイト収納部になっているものでは、ストックの長さ調節機構部分をリコイルユニット用と、通電装置用の二つの構成に利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、ストック長さ調節式模擬銃において、ストック位置に拘らず銃本体に設けた電動部とストックに設けた電源部を常時通電可能な状態に置く通電装置を提供することができる。また、本発明によれば、リコイルユニットを搭載した模擬銃においても適用可能なストック長さ調節式模擬銃の通電装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明の通電装置を搭載したストック長さ調節式模擬銃10を示しており、11は機関部を内蔵した銃本体、12はその内部に機関部として組み込まれた電動部、13はストックを示しており、ストック13は銃本体11の後部に、長さ調節機構を介して、設けられている。
【0014】
電動部12は、例えばこの模擬銃10の場合には、圧縮エアを作り出すピストンシリンダー装置を駆動するモーターを有しており、例えば特開平6−235597号などに開示されているようにラックアンドピニオン機構を用いてピストンを駆動し、トリガー14によって動作回路をオンオフする機構を備えている。この例の場合ピストンシリンダー装置のシリンダーノズルから圧縮エアが噴射され、その圧縮エアによって銃身15の後端に配置されている弾丸が銃口から発射される構成を取る。なお、弾丸はマガジン16から銃身15の後端の装弾部に供給される。しかしながら電動部12は電力によって動作する部分の意味であるので、上記の機関部として組み込まれた電動部に限るものではなく、例えばエアガンなど非電動銃に装備された照準、或いは発光のための電動部等を含む。
【0015】
上記電動部12は、ピストン後方に装備されたリコイルユニット17と連動する。リコイルユニット17は弾丸発射に伴う反動を与えるウェイト18と、ウェイト18を前後方向へ移動可能に配置したウェイト収納部19を有しており、このウェイト収納部19は、銃本体11の後端部にて後方へ突出した本体突出部20の内部に設けられている(図2参照)。本体突出部20は本体11と一体の構造部分であり、円筒状構造を有しその内部に上記のウェイト18が配置されている。ウェイト18は連絡軸18aによってピストンと機械的に連絡しており、かつまた、コイルばねとして示されている弾性部材19aによって前方へ付勢されていて、連絡軸18aの挿通口を有するウェイト収納部前部のストッパー部19bに接した状態に置かれる。
【0016】
ストック13は模擬銃10を身体で安定に支えるために必要な形状及び大きさを有しており、また、銃全長の寸法にかかわる後方への突出長さを調節可能なように、上記本体突出部20に嵌合して取り付けられる。そのために、ストック13には本体突出部20を受け入れる空洞状の嵌合凹部21がストック上部にて前後方向に設けられている。また、本体突出部20は下部に前後方向に沿って設けた突状部22を有しており、その突状部22が収まる、同様に前後方向の凹溝部23が嵌合凹部21の下部に設けられている。突状部22と凹溝部23は相互に嵌合可能であることによって、ストック13の回転止めの役割もする構成になっている。
【0017】
ストック13は銃本体11の後部に長さ調節機構24を介して設けられている。図示の例における長さ調節機構24は、本体突出部20の前後方向に沿って複数箇所設けた窪み状の係合部25と、係合部25と係合可能かつ係合部25から離脱可能にストック13に設けた係合相手部26及びその操作部としてのレバー27から構成されている。上記係合相手部26は係合部25を設けた突状部22に対して、ほぼ直交方向へ進退可能にストック13の取り付け部28に配置され、かつばね29によって係合方向へ付勢されており、係合相手部26のストック13の外部に露出した端部に、操作部としてレバー27が取り付けられている。
【0018】
図中、27aはレバー操作端であり、これを図2の矢印方向へ押すことによって、中間部を支点27bとして、係合相手部26を係合部形成面25aの外まで抜き出して係合部25から離脱させ、ストック13を前後方向へ移動させることができるように形成されている。また、レバー27を一杯に引き出したときには凹溝部23の面まで係合相手部26を下げることができるので、ストック13を本体突出部20から引き抜いて取り外すことができる。25bは前部ストッパーであり、係合相手部26の前進限界を規定する。
【0019】
上記ストック13には充電式バッテリーを使用する電源部30が設けられており(図1B参照)、銃本体11に設けた電動部12とストック13に設けた電源部30を通電可能に接続するために、以下の通電手段が設けられている。すなわち、ストック13の移動位置に拘らず電動部12と電源部30を常時通電可能な状態に置くために、前後方向に沿って細長く設けられた端子レール31と、ストック13の前後移動に伴って端子レール31と常時摺接可能な接点端子32をそれぞれ銃本体11又はストック13の何れかに設けるものとする。端子レール31と接点端子32をどのように設けるかは自由に決めることができる。以下にその例を示す。
【0020】
図3に示した例1は図2の例と同じであり、正負一対の端子レール31が銃本体前後方向の左右に配置されており、この一対の端子レール31にそれぞれ接触する正負の接点端子32は本体突出部20の下部後端部に配置されている。接点端子32は本体突出部20の下部後端部から下方へわずかに離して配置されており、かつ端子レール31に弾性的に接触するように、弾性材によって取り付けられているので、常に適切な接触圧力で通電可能な状態に置かれている。一対の接点端子32に接続された一対の導線33は突状部22の内部に形成されている配線路34を通って銃本体11の電動部12へ通じている。
【0021】
図4に示した例2では、正負一対の端子レール35が銃本体前後方向の左右に配置されている点は例2と同じであるが、この一対の端子レール31にそれぞれ接触する正負の接点端子36は本体突出部20の左右両側の後端部に配置されている。この例2においても接点端子36を、弾性材を用いて本体突出部20に取り付け、適切な接触圧力で常時通電可能な状態に置くものとする。また、一対の接点端子36は例1と同様に接続されている一対の導線33によって、突状部22の内部に形成されている配線路34を通って銃本体11の電動部12へ通じるものとする。
【0022】
図5に示した例3では、正負一対の端子レール37が銃本体前後方向の上下に配置されており、この一対の端子レール37にそれぞれ接触する正負の接点端子38は本体突出部20の左右側面の後端部に配置されている。この例3においても接点端子38を、弾性材を用いて本体突出部20に取り付け、適切な接触圧力で常時通電可能な状態に置くものとする。また、一対の接点端子38は例1、例2と同様に接続されている一対の導線33によって、突状部22の内部に形成されている配線路34を通って銃本体11の電動部12へ通じるものとする。
【0023】
このように構成されている本発明の作用について説明すると、図6Aは、長さ調節機構24において最前部の係合部25に係合相手部26が係合しており、ストック13が前方移動しストック後端が銃本体11に近付いて、銃全長の寸法が最も短縮されている状態を示す。この最短状態においては、接点端子32が端子レール31の後端に位置して、電源部30と電動部12を、導線33を介して通電可能に接続している。従って、トリガー14を引いて作動回路を起動し、電源部30の電力によって電動部12が作動すると、ピストンシリンダー装置の動作によって圧縮エアが生成されシリンダーノズルから噴射して弾丸を発射するまでの一連の動作が実行される。
【0024】
また、図6Bは操作部27を操作し、最後部の係合部25に係合相手部26を係合させて、ストック13を後方移動しストック後端を銃本体11から離して、銃全長の寸法を最も伸長させることになる状態を示す。この最長状態においては、接点端子32が端子レール31の前端に位置することになり、電源部30と電動部12を、導線33を介して通電可能に接続するので、上記と同様にトリガー14を操作することによって弾丸発射までの一連の動作を実行することができる。
【0025】
図7は、このような本発明の模擬銃10において、ストック13の前後方向への移動の状態を示した外観図であり、これによってストック13の移動が銃全長の寸法にかかわるものであることが理解されるであろう。ストック13は端子レール31の長さの範囲において移動可能であり、ストック13の移動可能な範囲の全域において接点レール31と接点端子32は常時通電可能な状態を保つことは、上記の説明から明らかである。
【0026】
尚、図1に示した模擬銃10はM4と呼ばれる米軍制式銃に範を取ったもので、ストック部分の左右両側が膨らみほぼ三角形状の断面形状を持っているので、この左右の膨らみ部分39L、39Rをバッテリーの収納部に利用する構成を取っている。この形状を有するものはM4のほかにも、図8に横断面図とともに示したようにVOLTOR型が存在するので、これについても、ストック13には中央の空洞を嵌合凹部21として使用することができ、その両側の空洞を、充電式バッテリーを収納する電源部30に利用することができる。従って、VOLTOR型模擬銃にはここに記載した例をそのまま転用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る通電装置を適用したストック長さ調節式模擬銃の一例を示すもので、Aは側面図、Bはストック部の横断面図である。
【図2】同上の要部拡大図で、Aは本体突出部とストックを分離して示した側面縦断面図、Bは本体突出部の下面図である。
【図3】同じく通電装置要部の例1を示すもので、Aは平面断面図、Bは側面断面図、Cは横断面図である。
【図4】同じく通電装置要部の例2を示すもので、Aは平面断面図、Bは側面断面図、Cは横断面図である。
【図5】同じく通電装置要部の例3を示すもので、Aは平面断面図、Bは側面断面図、Cは横断面図である。
【図6】同じく本発明装置の説明図で、Aはストックの最短状態の縦断面図、Bは最長状態の縦断面図である。
【図7】同じく本発明装置の説明図で、ストックの前後方向への移動の状態を示した外観図である。
【図8】同じく本発明装置をVOLTOR型模擬銃に適用した例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 模擬銃
11 銃本体
12 電動部
13 ストック
14 トリガー
15 銃身
16 マガジン
17 リコイルユニット
18 ウェイト
19 ウェイト収納部
20 本体突出部
21 嵌合凹部
22 突状部
23 凹溝部
24 長さ調節機構
25 係合部
26 係合相手部
27 操作部としてのレバー
28 取り付け部
29 ばね
30 電源部
31、35、37 端子レール
32、36、38 接点端子
33 導線
34 配線路
35、37 端子レール
36、38 接点端子
39L、39R 膨らみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銃本体の後部に長さ調節機構を介して設けたストックを有し、銃本体に設けた電動部とストックに設けた電源部が通電可能に接続されている構成を有するストック長さ調節式模擬銃の通電装置において、
銃本体の後端部にて後方へ突出した本体突出部を設け、この本体突出部の前後方向へ移動可能であり、前方移動では銃本体に近付き後方移動では銃本体から遠ざかるストックを本体突出部に嵌合して取り付け、
ストックの移動位置に拘らず電動部と電源部を常時通電可能な状態に置くために前後方向に沿って細長く形成された端子レールと、ストックの前後移動に伴って端子レールと常時摺接可能な接点端子をそれぞれ銃本体又はストックの何れかに設けたことを特徴とする
ストック長さ調節式模擬銃の通電装置。
【請求項2】
長さ調節機構は、前後方向に沿って本体突出部に複数箇所設けた係合部と、係合部と係合可能かつ係合部から離脱可能にストックに設けた係合相手部及びその操作部から成る請求項1記載のストック長さ調節式模擬銃の通電装置。
【請求項3】
本体突出部は、リコイルユニットの一部として、弾丸発射に伴う反動を与えるウェイトが前後方向へ移動するウェイト収納部を構成するものである請求項1記載のストック長さ調節式模擬銃の通電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−107170(P2010−107170A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282505(P2008−282505)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(592153584)株式会社東京マルイ (29)
【Fターム(参考)】