ストッパを生産する方法
【課題】容器特に薬剤容器を閉鎖するストッパを生産するためのもっと効率の良い方法を提供する。
【解決手段】エラストマー材の担持体104及び不活性層34を持つ一体品ストッパ12を生産する方法。担持体104は、円板形の外側部分62及び外側部分62からスピゴット状に突出する内側部分30を有する。内側部分30は成形用金型において熱の効果によってエラストマー材のシート26及び不活性フィルム28から成形され、その後打ち抜かれる。外側部分62は射出成形によって内側部分30の上に成形され、それによってストッパ12にその最終形状が与えられる。
【解決手段】エラストマー材の担持体104及び不活性層34を持つ一体品ストッパ12を生産する方法。担持体104は、円板形の外側部分62及び外側部分62からスピゴット状に突出する内側部分30を有する。内側部分30は成形用金型において熱の効果によってエラストマー材のシート26及び不活性フィルム28から成形され、その後打ち抜かれる。外側部分62は射出成形によって内側部分30の上に成形され、それによってストッパ12にその最終形状が与えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器特に薬剤容器を閉鎖するためのストッパを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に薬剤を保管するために使用される容器をシールし、閉鎖するために、様々な形式及び様々な材料のストッパが使用される。概して、このようなストッパは、天然ゴムまたは合成ゴムまたはゴム弾性または純粋熱可塑性プラスチックで作られる。これらの材料を以後「エラストマー材」という用語の中に含める。
【0003】
エラストマー材のこの種のストッパの弾性特性は、特にガラスで作られることが多い薬剤ビン、注射器シリンダまたはその他の容器の場合に有利である。なぜなら、一方で、この種のビンの開口または注射器シリンダの寸法公差を補正することができ、他方で、カニューレを使ってストッパを穿孔して、容器内容物を取り出したり容器を充填したりすることもできるからである。ストッパは、比較的長い期間容器を適切に確実にシールすることができる。
【0004】
薬剤ビン、注射器シリンダまたは同様の容器に保管される概して液体または粉末の製剤は、使用されるストッパ材料に関して様々な要件を課す。例えば、ビンの内容物によって化学的かつ(または)生物学的適合性が要求される。さらに、ビンの内容物が酸素または水分に対して敏感な場合、閉鎖ストッパの気体または水蒸気の透過性は重大である。さらに、ストッパ材料は、例えば有害なまたは製剤を変質させる物質を内容物から放出することによってまたは製剤の成分を奪うことによって、容器内容物の治療価値機能を変質させてはならない。
【0005】
上記の問題は、注射器のプランジャー、注射器アンプル及び(または)二室注射器アンプルにも同様に当てはまる。
【0006】
欧州特許第0,148,426号は、しっかりとシールしながら同時にストッパ材料と容器内容物との間の相互作用を確実に予防する、容器を閉鎖または小分けするための薬剤用ストッパを開示する。欧州特許第0,148,426号に係るストッパは、実質的にゴムで作られ、使用位置において容器内容物に面しかつキャップの形式の不活性フィルムによって囲繞される領域を有する。不活性フィルムに隣接するコーティングされない領域において、ストッパのネック部が容器の開口の壁に直接当接する。この種のストッパの場合、実用上、容器内容物は不活性フィルムとしか接触せず、ストッパのネック部の非コーティング領域はゴム弾性材料を使用するので、容器の内壁に対して適切なシールを与える。
【0007】
また、欧州特許0,148,426号は、上述のストッパを生産する方法も開示する。この方法において、ゴムフィルム(これに、例えばフッ化ポリマーフィルムが事前に積層される)は当初は平らな複合材として成形用金型に導入され、ここで圧力及び熱によって(例えば、熱成形工程において)ストッパの内側部品に予定される形状に変形される。これによって、ポリマーフィルムはゴムフィルムと固定して接着され、ゴムフィルムは少なくとも部分的に硫化される。第二作業ステップにおいて、ストッパの内側部品は成形用金型から取り出されて、打ち抜かれる。その後ストッパの外側部品がストッパの内側部品と一緒に第二成形用金型に入れられ、ここで成形されて、一緒に完全に硫化され、相互に接着される。ストッパ完成品は再度の打ち抜きによって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ストッパを生産する上記の方法は、比較的複雑でありかつ多くの作業ステップを含むという不利益を有する。したがって、本発明の目的は、ストッパを生産するためのもっと効率の良い方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。好ましい実施形態は従属請求項において主張される。
【0010】
本発明に係る方法は、エラストマー材の担持体及び不活性層を持つ一体品ストッパを生産するためのものである。ストッパは、開口特に実質的に円形の開口を持つ容器を閉鎖するためのものである。ストッパの担持体は円板形の外側部分及びスピゴット(樽栓)状の内側部分を有する。内側部分は外側部分に固定して接続され、外側部分から突出して、外側部分から離れた自由端を有する。外側部分と内側部分は共通の中心軸を持つことが好ましい。外側部分は容器の外面に載り、内側部分の自由端は容器の開口の中へ挿入されて、容器の内部へ突出する。内側部分の表面は、少なくとも部分的に不活性層でコーティングされるので、担持体と容器内容物との接触を少なくともほとんど完全に予防することができる。
【0011】
欧州特許第0,148,426号から類推すると、生産方法は、
(a)エラストマー材及び不活性フィルムを成形用金型の中に配置するステップと、
(b)熱の効果によって内側部分を成形して、不活性フィルムが不活性層を形成して内側部分の自由端及び隣接領域をコーティングし、エラストマー材が少なくとも部分的に硫化され、不活性フィルムに分離不能に接着されて、スキンが形成されるステップと、
(c)成形用金型からスキンを取り出すステップと、
(d)スキンから内側部分を打ち抜くステップと、
(e)別の成形用金型において外側部分を付着させるステップと、
を含む。
本発明に係る方法は、外側部分を付着させるために、
(e1)自由端の反対側の成形合わせ端(molding-on end)がキャビティにおいて露出するように内側部分を射出成形用金型のキャビティの中に配置し、
(e2)内側部分の成形合わせ端の上に射出成形によって外側部分を成形し、それによってストッパにその最終形状を与え、
(e3)完全に硫化したまたは少なくとも部分的に硬化したストッパを射出成形用金型から取り出す、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る方法は、内側部分への外側部分の付着を著しく単純化することができる。欧州特許第0,148,426号に係る方法の場合、さらに2つの成形作業ステップ、すなわち熱成形及び打ち抜きのステップが必要であるが、本発明に係る方法の場合、外側部分は単一の射出成形作業において完全に成形されかつ内側部分に接着される。したがって、多くの作業ステップを減らすことが可能になり、生産方法を短縮し、複雑さを減らしかつより効率的にすることができる。
【0013】
ステップ(a)において成形用金型の中に配置されるエラストマー材のシートは完全には硫化されない。すなわち部分的に硫化されるまたは未硫化である。シートは未硫化であることが好ましい。
【0014】
好ましい実施形態において、ストッパの担持体は天然ゴムまたは合成ゴム材から作られる。担持体にゴム材を使用すると、ストッパの最適のシール機能が保証される。ブロモブチルゴム、ニトリルゴム(NBR)またはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)特にブロモブチルゴムをエラストマー材として使用することが好ましい。これらの材料は気体不透過性であり化学的に比較的不活性なので、特に適している。
【0015】
好ましい実施形態において、不活性フィルムとしてフッ化ポリマーフィルムが使用される。フッ化ポリマーフィルムは化学的に非常に不活性であり、耐性が強いので、容器内容物とストッパとの間の相互作用を防止することができる。これによって容器内容物の損傷が予防される。これは特に製剤の場合非常に重要である。ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標)、PTFE)、テトラフルオロエチレンペルフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリフッ化ビニル(PVF)のフッ化ポリマーフィルム、特にTeflon(登録商標)フィルムを使用することが好ましい。
【0016】
好ましい実施形態において、内側部分は、ステップ(b)において、120℃〜250℃の温度、好ましくは150℃〜200℃、特に約180℃の温度で成形される。熱は成形用金型を介して伝達されることが好ましい。ステップ(b)において、さらにエラストマー材のシート及び不活性フィルムに圧力が加えられることが好ましい。
【0017】
好ましい実施形態においては、ステップ(b)において、不活性層は、完成スピゴットの外側部分から突出する内側部分の外面を完全にコーティングするように成形される。このようにして、完成スピゴットにおいて容器の開口の中へ導入される部分全体が不活性層でコーティングされ、容器内容物は担持体の材料と全く接触しない。このようにして、ストッパによる容器内容物の損傷を完全に予防することができる。
【0018】
好ましい実施形態においては、ステップ(b)において、内側部分の自由端の端面に凹部が形成される。これによって、凹部の領域におけるストッパの厚みが減少するので、カニューレを使ってより簡単に穿孔できる。さらに、内側部分の自由端のこのような凹部によって、弾性シールリップの形成が可能になり、ストッパのシール機能をさらに改良する。
【0019】
好ましい実施形態においては、ステップ(b)において、内側部分の成形合わせ端の最端面に外周環状溝が形成される。この環状溝は、内側部分と外側部分との間の接触面積を増大して内側部分の最端面への外側部分の接着を改良する効果を有する。
【0020】
好ましい実施形態においては、ステップ(e1)において、内側部分は、成形合わせ端に隣接する領域が露出するように射出成形用金型のキャビティの中に配置される。キャビティ内におけるこのような配列は、射出成形時に内側部分の成形合わせ端に軸方向に成形されるだけでなく、これに隣接する露出円周領域にも半径方向に成形されるという効果を有する。このことは、また、内側部分と外側部分との間の接触面積を増大して、内側部分への外側部分の接着を改良する効果を有する。
【0021】
好ましい実施形態においては、ステップ(e1)において、内側部分は不活性層でコーティングされない内側部分の成形合わせ端の領域すなわち不活性層の無い領域のみが露出するように、射出成形用金型のキャビティの中に配置される。このようにして、内側部分及び外側部分に属する担持体の2つの部分の間の接触面積が最大限に大きくされると同時に、使用時に担持体自体が容器内容物と接触するのを防ぐ。
【0022】
さらに好ましい実施形態においては、外側部分の成形前に射出成形用金型の中で負圧が創成される。負圧は、射出成形前に射出成形用金型のキャビティからできる限り多くの空気を取り除き、射出成形作業をより容易にする効果を有する。このために、外部装置によって負圧経路を介して射出成形用金型を空にすることが望ましい。負圧経路はキャビティに接続される。射出成形作業の直前まで空気を排出できるように、射出成形用金型は遮断弁を持つことが好ましい。遮断弁は成形材料自体によって閉鎖位置へ動かされ、射出成形作業時に成形材料が負圧経路に侵入するのを防ぐ。射出成形用金型における負圧の創成は、成形された外側部分の中に気泡が含まれるのを防止し、それによって製品の品質を改良する目的に役立つ。
【0023】
好ましい実施形態においては、ステップ(e2)において、外側部分の成形のために80〜140MPa(800〜1400bar)、好ましくは100〜120MPa(1000〜1200bar)、特に約110MPa(1100bar)の射出圧力が使用される。
【0024】
さらに、以下の図面に示される概略断面図に基づいて本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】開放位置にある成形用金型を示す。
【図2】成形用金型におけるエラストマー材のシート及び不活性フィルムの配置を示す。
【図3】成形用金型におけるエラストマー材及び不活性フィルムからの内側部分の成形を示す。
【図4】成形用金型からのスキンの取り出しを示す。
【図5】打抜き型の中でのスキンの配置を示す。
【図6】打抜き型の閉鎖を示す。
【図7】内側部分の打抜きを示す。
【図8】開放位置にある射出成形用金型を示す。
【図9】射出成形用金型のキャビティにおける内側部分の配置を示す。
【図10】外側部分の成形を示す。
【図11】本発明に係る方法によって生産されたストッパを示す。
【図12】本発明に係る方法によって生産されたストッパを装着した容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、開放位置にある成形用金型10の概略断面図を示す。ストッパ12(図11)生産のための本発明に係る方法にこの成形用金型を使用できる。成形用金型10は第一金型板材14、及びこれに平行に配列される第二金型板材16を有する。2つの金型板材14及び16は金型板材の平面に対して垂直に相互に対して移動可能である。第一金型板材14は、第二金型板材16に面する側18に第一型彫部20を有する。第二金型板材16は、第一金型板材14に面する側22に第二型彫部24を有する。個々の第一型彫部20は、成形用金型10が使用されるとき第一型彫部が第二型彫部24と相互作用できるように配列される。特に、第一型彫部20はそれぞれ第二型彫部24に割り当てられ、第一と第二型彫部は、金型板材の平面に対して垂直に上下に配列される。
【0027】
図2に示す断面は本発明に係る方法の第一ステップ(a)の概略を示す。本発明によれば、エラストマー材のシート26及び不活性フィルム28は成形用金型10の中に配置される。この場合、エラストマー材シート26及び不活性フィルム28は、2枚の金型板材14と16の間に相互に平行に配列される。配置前に、例えばエラストマー材シート26に不活性フィルム28を積層させることによって、エラストマー材シート26と不活性フィルム28を相互に接着することができる。または、成形用金型10の中にシート26と不活性フィルム28を別個に配置することも可能である。ステップ(a)において、エラストマー材シート26は第一金型板材14と不活性フィルム28との間に配列され、不活性フィルム28は第二金型板材16とエラストマー材シート26との間に配列される。
【0028】
図3は、本発明に係る方法のステップ(b)による内側部分30(図11)の成形の概略を示す。成形のために、第一金型板材14と第二金型板材16が相互に移動され、成形用金型10はエラストマー材シート26及び不活性フィルム28の周りで閉鎖されて、エラストマー材シート26と不活性フィルム28は一緒に型彫部20及び24の中へ押し込まれる。熱の効果によって、多数のスピゴット状の内側部分30を持つスキン32が形成され、エラストマー材は少なくとも部分的に硫化されて、不活性フィルム28に接着する。これによって、不活性フィルム28は不活性層34(図11)を形成し、不活性層は内側部分の第二金型板材16に面する側をコーティングする。
【0029】
図4は、スキン32が成形用金型10から取り出されるときの成形用金型10の概略断面図を示す。取出しのために、スキン32を型彫部20及び24から外せるように、成形用金型10を開放位置にする。スキン32の一部であるスピゴット状の内側部分30は、各々第二金型板材16に面するスキンの側に、凹部38を持つ自由端36を有する。凹部は自由端36の端面40に形成される。また、内側部分30は、各々、自由端36の反対側に成形合わせ端42を有する。内側部分30の成形合わせ端42の最端面には外周環状溝44が形成される。環状溝は端面に向かって開放している。
【0030】
本発明に係る方法のステップ(d)において、内側部分30はスキン32から打ち抜かれる。この作業が図5〜7において概略断面図で示される。スキン32(またはその一部)は打抜き型46の中に配置され(図5)、打抜き型46が閉鎖され(図6)、内側部分30が打ち抜かれる(図7)。
【0031】
打抜き型46は、第一クリアランス50を持つ第一打抜き板材48、及び第一打抜き板材48に平行に配列される、第二クリアランス54を持つ第二打抜き板材52を有する。2枚の打抜き板材48及び52は打抜き板材の平面に対して垂直に移動可能である。2つの円柱形のクリアランス50及び54は、打抜き板材の平面に対して垂直であり、同一の直径d1を有し、打抜き型46が閉鎖されたとき連続する中空空間を形成するように配列される。第二打抜き板材52は、第一打抜き板材48に面する側に支持面56を有する。スキン32は、内側部分30の自由端36が第二クリアランス54の中へ突出するように支持面56の上に配置される。スキン32から第二クリアランス54の中へ突出するスピゴット形の領域はほぼ円柱形であり、中心軸Aを有し、2つのクリアランス50及び54と少なくともほぼ同じ直径d1を持つことが好ましい。
【0032】
さらに、打抜き型46は、円柱形の打抜きラム58を有する。打抜きラムは、打抜き板材の平面に対して垂直の中心軸Aに沿って移動可能である。打抜きラム58は、実際の打抜き作業の前に第一クリアランス50の中に配置され、d1に比べて多少例えば0.01mm〜0.03mm小さい直径を有する。打抜きの前に、スキン32は2枚の打抜き板材48と52の間に止め具で留められて、固定される。打抜きのために、打抜きラム58は第一クリアランス50を通過して第二クリアランス54の中へ押し込まれるので、内側部分30の外円周に沿ってスキン32を切断する。
【0033】
図8〜10は、射出成形用金型60の概略断面図を示す。外側部分62(図11)を成形するための本発明に係る方法にこの射出成形用金型を使用できる。図8は、開放位置にある射出成形用金型60を示し、図9は射出成形用金型60における内側部分30の配置を示し、図10は外側部分62の実際の成形を示す。
【0034】
射出成形用金型60は第一外側板材64、第一内側板材66、第二内側板材68及び第二外側板材70を有し、これら全ては相互に平行に配列され、板材の平面に対して垂直に移動可能である。2枚の内側板材66及び68は外側板材64と70の間に配列される。図8に示される開放位置において、第一外側板材64と第一内側板材66は相互に固定して接続され、本発明に係る方法全体を通じて接続されたままである。図8に示される開放位置において、第一内側板材66は第二内側板材68からある距離にある。第一内側板材66と第一外側板材64は射出成形用金型60に固定的に接続される。しかし、第二内側板材68及び第二外側板材70は、相互に対して移動可能であり、また特に金型からの取出し時に第一内側板材66及び第一外側板材64から離れるように移動可能である。射出成形作業時に、第二内側板材68と第二外側板材70は相互に押し付けられ、射出成形用金型60は閉鎖される。
【0035】
成形材料を供給するための供給経路72が第一外側板材64及び2枚の内側板材66及び68を貫通する。供給経路は、それぞれ3枚の金型板材64、66及び68の1つに配列される3つの供給経路部分74、76及び78によって構成される。供給経路72に対して直角に、第二内側板材68と第二外側板材70との間に少なくとも1つの、好ましくは平形の、ランナ80が走る。これを通過して、成形材料を射出成形用金型60のキャビティへ送ることができる。
【0036】
第一内側板材66の中には、交換可能な第一金型インサート82が挿入される。インサートは第一部分キャビティ84を有する。第一部分キャビティは第二内側板材68に向かって開放される。第二内側板材68の中には、交換可能な第二金型インサート86が挿入される。このインサートは第二部分キャビティ96を有し、第二部分キャビティは第一内側板材66に向かって開放される。第一部分キャビティ84及び第二部分キャビティ96は板材の平面に対して垂直に走る中心軸Aに沿って配列され、射出成形用金型60が閉鎖されると、射出成形用金型60のキャビティを形成する。第一金型インサート82は、第一内側板材66において円板ばね88によってプレストレスを与えられる。円板ばねは第一内側板材66の中空空間90に挿入され、中心軸Aに沿って走る案内シリンダ92の周りに配置される。第一金型インサート82は外側半径方向ショルダ93によって第一内側板材66に載り、円板ばねのばね力によって所定の位置に維持される。図8に示す開放位置において、第一金型インサート82は第一内側板材66から僅かに突出する。射出成形用金型60が閉鎖されると、第一金型インサート82は押し戻され、その結果ぴったりと嵌った接続が得られる。第二金型インサート86は第二外側板材70によって第二内側板材68の中で固定される。第二内側金型インサート86も射出経路94を有し、射出経路はランナ80を第二部分キャビティ96に接続する。
【0037】
第二外側板材70には負圧経路98が配置される。負圧経路によって、成形材料が導入される前に、閉鎖された射出成形用金型60から空気が取り除かれる。これによって、閉鎖された射出成形用金型60のキャビティに対する負圧が創成される。遮断弁100によって負圧経路98を閉鎖することができる。遮断弁は、コイルばね102によって開放状態を維持される。図示する遮断弁100は、成形材料が金型の中に導入されると直ちに成形材料自身による背圧によって閉鎖位置にされるので、成形材料が射出成形作業時に負圧経路98の中に侵入するのを防ぐ。
【0038】
外側部分62の上に成形する際(図10)、打ち抜かれた内側部分30は、成形合わせ端42がキャビティの中で露出しかつ自由端36に向かう領域が完全に第一部分キャビティ84によって囲繞されるように、第一部分キャビティ84の中に配置される。好ましくは、内側部分30は、成形合わせ端42に隣接する円筒形領域もキャビティの中で露出するように配置される。その結果、内側部分30は、露出領域において、成形合わせ端42から軸方向だけでなく半径方向にも成形できる。射出成形用金型60が閉鎖された後、成形材料が、射出されて供給経路72を通過し、ランナ80及び射出経路94を介して第二部分キャビティ96の中へ入る。第二部分キャビティにおいて外側部分62が成形される。射出成形時に、遮断弁100は閉鎖される。ストッパ12(図11)はこの射出成形によってその最終形状を与えられ、硫化したらまたは少なくとも部分的に硬化したら直ちに射出成形用金型60から取り出すことができる。射出成形用金型60からストッパ12を取り出す際、まず第二内側板材68及び第二外側板材70を第一内側板材66及び第一外側板材64に対して移動させる。このステップにおいて、内側部分30または部分的に硬化したストッパ完成品12は第一金型インサート82から外される。その後、第二内側板材68は、液圧または電気駆動手段によって、第二外側板材から分離されるか、またはこれから離れるように移動される。これは、ランナ80及び射出経路94の中に残っている成形材料が第二外側板材70から分離されるという効果を持つ。その後、ストッパ12を射出経路94の中に残っている成形材料から分離することができる。その後、残っている成形材料は、第三供給経路部分78に残っているスプルと一緒に射出成形用金型60から取り除かれる。
【0039】
図11は、本発明に係る方法によって生産されたストッパ12の概略断面図を示す。ストッパ12は担持体104及び不活性層34を有する。不活性層は内側部分30の領域において担持体104をコーティングする。ストッパ12の内側部分30は、外側部分62から離れた自由端36を有し、自由端の最端部には凹部38が配置される。さらに、内側部分30はケーシング状のシール面106を有する。シール面は外側部分62に隣接し、不活性層34によって完全にコーティングされる。円板形の外側部分62は、側面108及びこれに垂直に配列される環状支持面110を有する。環状支持面は内側部分30に隣接する。内側部分30から離れた側に、外側部分62は凹部112を有する。凹部112は、凹部38と一緒に、ストッパ12をカニューレで穿孔しやすくするために役立つ。
【0040】
図12は、容器114に嵌められているストッパ12の概略断面図を示す。容器114には内容物、特に薬剤組成物が充填されており、ストッパ12によって閉鎖されている。ストッパ12の環状支持面110は容器114の上縁の上に載っており、ストッパ12のケーシング状のシール面106は容器壁の内面に接していて、容器をシールする。不活性層34は、容器114内部に配置されるストッパ12の領域を完全にコーティングして、容器114の内容物116がストッパ12の担持体104の材料と接触するのを防ぐ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器特に薬剤容器を閉鎖するためのストッパを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に薬剤を保管するために使用される容器をシールし、閉鎖するために、様々な形式及び様々な材料のストッパが使用される。概して、このようなストッパは、天然ゴムまたは合成ゴムまたはゴム弾性または純粋熱可塑性プラスチックで作られる。これらの材料を以後「エラストマー材」という用語の中に含める。
【0003】
エラストマー材のこの種のストッパの弾性特性は、特にガラスで作られることが多い薬剤ビン、注射器シリンダまたはその他の容器の場合に有利である。なぜなら、一方で、この種のビンの開口または注射器シリンダの寸法公差を補正することができ、他方で、カニューレを使ってストッパを穿孔して、容器内容物を取り出したり容器を充填したりすることもできるからである。ストッパは、比較的長い期間容器を適切に確実にシールすることができる。
【0004】
薬剤ビン、注射器シリンダまたは同様の容器に保管される概して液体または粉末の製剤は、使用されるストッパ材料に関して様々な要件を課す。例えば、ビンの内容物によって化学的かつ(または)生物学的適合性が要求される。さらに、ビンの内容物が酸素または水分に対して敏感な場合、閉鎖ストッパの気体または水蒸気の透過性は重大である。さらに、ストッパ材料は、例えば有害なまたは製剤を変質させる物質を内容物から放出することによってまたは製剤の成分を奪うことによって、容器内容物の治療価値機能を変質させてはならない。
【0005】
上記の問題は、注射器のプランジャー、注射器アンプル及び(または)二室注射器アンプルにも同様に当てはまる。
【0006】
欧州特許第0,148,426号は、しっかりとシールしながら同時にストッパ材料と容器内容物との間の相互作用を確実に予防する、容器を閉鎖または小分けするための薬剤用ストッパを開示する。欧州特許第0,148,426号に係るストッパは、実質的にゴムで作られ、使用位置において容器内容物に面しかつキャップの形式の不活性フィルムによって囲繞される領域を有する。不活性フィルムに隣接するコーティングされない領域において、ストッパのネック部が容器の開口の壁に直接当接する。この種のストッパの場合、実用上、容器内容物は不活性フィルムとしか接触せず、ストッパのネック部の非コーティング領域はゴム弾性材料を使用するので、容器の内壁に対して適切なシールを与える。
【0007】
また、欧州特許0,148,426号は、上述のストッパを生産する方法も開示する。この方法において、ゴムフィルム(これに、例えばフッ化ポリマーフィルムが事前に積層される)は当初は平らな複合材として成形用金型に導入され、ここで圧力及び熱によって(例えば、熱成形工程において)ストッパの内側部品に予定される形状に変形される。これによって、ポリマーフィルムはゴムフィルムと固定して接着され、ゴムフィルムは少なくとも部分的に硫化される。第二作業ステップにおいて、ストッパの内側部品は成形用金型から取り出されて、打ち抜かれる。その後ストッパの外側部品がストッパの内側部品と一緒に第二成形用金型に入れられ、ここで成形されて、一緒に完全に硫化され、相互に接着される。ストッパ完成品は再度の打ち抜きによって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ストッパを生産する上記の方法は、比較的複雑でありかつ多くの作業ステップを含むという不利益を有する。したがって、本発明の目的は、ストッパを生産するためのもっと効率の良い方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。好ましい実施形態は従属請求項において主張される。
【0010】
本発明に係る方法は、エラストマー材の担持体及び不活性層を持つ一体品ストッパを生産するためのものである。ストッパは、開口特に実質的に円形の開口を持つ容器を閉鎖するためのものである。ストッパの担持体は円板形の外側部分及びスピゴット(樽栓)状の内側部分を有する。内側部分は外側部分に固定して接続され、外側部分から突出して、外側部分から離れた自由端を有する。外側部分と内側部分は共通の中心軸を持つことが好ましい。外側部分は容器の外面に載り、内側部分の自由端は容器の開口の中へ挿入されて、容器の内部へ突出する。内側部分の表面は、少なくとも部分的に不活性層でコーティングされるので、担持体と容器内容物との接触を少なくともほとんど完全に予防することができる。
【0011】
欧州特許第0,148,426号から類推すると、生産方法は、
(a)エラストマー材及び不活性フィルムを成形用金型の中に配置するステップと、
(b)熱の効果によって内側部分を成形して、不活性フィルムが不活性層を形成して内側部分の自由端及び隣接領域をコーティングし、エラストマー材が少なくとも部分的に硫化され、不活性フィルムに分離不能に接着されて、スキンが形成されるステップと、
(c)成形用金型からスキンを取り出すステップと、
(d)スキンから内側部分を打ち抜くステップと、
(e)別の成形用金型において外側部分を付着させるステップと、
を含む。
本発明に係る方法は、外側部分を付着させるために、
(e1)自由端の反対側の成形合わせ端(molding-on end)がキャビティにおいて露出するように内側部分を射出成形用金型のキャビティの中に配置し、
(e2)内側部分の成形合わせ端の上に射出成形によって外側部分を成形し、それによってストッパにその最終形状を与え、
(e3)完全に硫化したまたは少なくとも部分的に硬化したストッパを射出成形用金型から取り出す、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る方法は、内側部分への外側部分の付着を著しく単純化することができる。欧州特許第0,148,426号に係る方法の場合、さらに2つの成形作業ステップ、すなわち熱成形及び打ち抜きのステップが必要であるが、本発明に係る方法の場合、外側部分は単一の射出成形作業において完全に成形されかつ内側部分に接着される。したがって、多くの作業ステップを減らすことが可能になり、生産方法を短縮し、複雑さを減らしかつより効率的にすることができる。
【0013】
ステップ(a)において成形用金型の中に配置されるエラストマー材のシートは完全には硫化されない。すなわち部分的に硫化されるまたは未硫化である。シートは未硫化であることが好ましい。
【0014】
好ましい実施形態において、ストッパの担持体は天然ゴムまたは合成ゴム材から作られる。担持体にゴム材を使用すると、ストッパの最適のシール機能が保証される。ブロモブチルゴム、ニトリルゴム(NBR)またはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)特にブロモブチルゴムをエラストマー材として使用することが好ましい。これらの材料は気体不透過性であり化学的に比較的不活性なので、特に適している。
【0015】
好ましい実施形態において、不活性フィルムとしてフッ化ポリマーフィルムが使用される。フッ化ポリマーフィルムは化学的に非常に不活性であり、耐性が強いので、容器内容物とストッパとの間の相互作用を防止することができる。これによって容器内容物の損傷が予防される。これは特に製剤の場合非常に重要である。ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標)、PTFE)、テトラフルオロエチレンペルフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリフッ化ビニル(PVF)のフッ化ポリマーフィルム、特にTeflon(登録商標)フィルムを使用することが好ましい。
【0016】
好ましい実施形態において、内側部分は、ステップ(b)において、120℃〜250℃の温度、好ましくは150℃〜200℃、特に約180℃の温度で成形される。熱は成形用金型を介して伝達されることが好ましい。ステップ(b)において、さらにエラストマー材のシート及び不活性フィルムに圧力が加えられることが好ましい。
【0017】
好ましい実施形態においては、ステップ(b)において、不活性層は、完成スピゴットの外側部分から突出する内側部分の外面を完全にコーティングするように成形される。このようにして、完成スピゴットにおいて容器の開口の中へ導入される部分全体が不活性層でコーティングされ、容器内容物は担持体の材料と全く接触しない。このようにして、ストッパによる容器内容物の損傷を完全に予防することができる。
【0018】
好ましい実施形態においては、ステップ(b)において、内側部分の自由端の端面に凹部が形成される。これによって、凹部の領域におけるストッパの厚みが減少するので、カニューレを使ってより簡単に穿孔できる。さらに、内側部分の自由端のこのような凹部によって、弾性シールリップの形成が可能になり、ストッパのシール機能をさらに改良する。
【0019】
好ましい実施形態においては、ステップ(b)において、内側部分の成形合わせ端の最端面に外周環状溝が形成される。この環状溝は、内側部分と外側部分との間の接触面積を増大して内側部分の最端面への外側部分の接着を改良する効果を有する。
【0020】
好ましい実施形態においては、ステップ(e1)において、内側部分は、成形合わせ端に隣接する領域が露出するように射出成形用金型のキャビティの中に配置される。キャビティ内におけるこのような配列は、射出成形時に内側部分の成形合わせ端に軸方向に成形されるだけでなく、これに隣接する露出円周領域にも半径方向に成形されるという効果を有する。このことは、また、内側部分と外側部分との間の接触面積を増大して、内側部分への外側部分の接着を改良する効果を有する。
【0021】
好ましい実施形態においては、ステップ(e1)において、内側部分は不活性層でコーティングされない内側部分の成形合わせ端の領域すなわち不活性層の無い領域のみが露出するように、射出成形用金型のキャビティの中に配置される。このようにして、内側部分及び外側部分に属する担持体の2つの部分の間の接触面積が最大限に大きくされると同時に、使用時に担持体自体が容器内容物と接触するのを防ぐ。
【0022】
さらに好ましい実施形態においては、外側部分の成形前に射出成形用金型の中で負圧が創成される。負圧は、射出成形前に射出成形用金型のキャビティからできる限り多くの空気を取り除き、射出成形作業をより容易にする効果を有する。このために、外部装置によって負圧経路を介して射出成形用金型を空にすることが望ましい。負圧経路はキャビティに接続される。射出成形作業の直前まで空気を排出できるように、射出成形用金型は遮断弁を持つことが好ましい。遮断弁は成形材料自体によって閉鎖位置へ動かされ、射出成形作業時に成形材料が負圧経路に侵入するのを防ぐ。射出成形用金型における負圧の創成は、成形された外側部分の中に気泡が含まれるのを防止し、それによって製品の品質を改良する目的に役立つ。
【0023】
好ましい実施形態においては、ステップ(e2)において、外側部分の成形のために80〜140MPa(800〜1400bar)、好ましくは100〜120MPa(1000〜1200bar)、特に約110MPa(1100bar)の射出圧力が使用される。
【0024】
さらに、以下の図面に示される概略断面図に基づいて本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】開放位置にある成形用金型を示す。
【図2】成形用金型におけるエラストマー材のシート及び不活性フィルムの配置を示す。
【図3】成形用金型におけるエラストマー材及び不活性フィルムからの内側部分の成形を示す。
【図4】成形用金型からのスキンの取り出しを示す。
【図5】打抜き型の中でのスキンの配置を示す。
【図6】打抜き型の閉鎖を示す。
【図7】内側部分の打抜きを示す。
【図8】開放位置にある射出成形用金型を示す。
【図9】射出成形用金型のキャビティにおける内側部分の配置を示す。
【図10】外側部分の成形を示す。
【図11】本発明に係る方法によって生産されたストッパを示す。
【図12】本発明に係る方法によって生産されたストッパを装着した容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、開放位置にある成形用金型10の概略断面図を示す。ストッパ12(図11)生産のための本発明に係る方法にこの成形用金型を使用できる。成形用金型10は第一金型板材14、及びこれに平行に配列される第二金型板材16を有する。2つの金型板材14及び16は金型板材の平面に対して垂直に相互に対して移動可能である。第一金型板材14は、第二金型板材16に面する側18に第一型彫部20を有する。第二金型板材16は、第一金型板材14に面する側22に第二型彫部24を有する。個々の第一型彫部20は、成形用金型10が使用されるとき第一型彫部が第二型彫部24と相互作用できるように配列される。特に、第一型彫部20はそれぞれ第二型彫部24に割り当てられ、第一と第二型彫部は、金型板材の平面に対して垂直に上下に配列される。
【0027】
図2に示す断面は本発明に係る方法の第一ステップ(a)の概略を示す。本発明によれば、エラストマー材のシート26及び不活性フィルム28は成形用金型10の中に配置される。この場合、エラストマー材シート26及び不活性フィルム28は、2枚の金型板材14と16の間に相互に平行に配列される。配置前に、例えばエラストマー材シート26に不活性フィルム28を積層させることによって、エラストマー材シート26と不活性フィルム28を相互に接着することができる。または、成形用金型10の中にシート26と不活性フィルム28を別個に配置することも可能である。ステップ(a)において、エラストマー材シート26は第一金型板材14と不活性フィルム28との間に配列され、不活性フィルム28は第二金型板材16とエラストマー材シート26との間に配列される。
【0028】
図3は、本発明に係る方法のステップ(b)による内側部分30(図11)の成形の概略を示す。成形のために、第一金型板材14と第二金型板材16が相互に移動され、成形用金型10はエラストマー材シート26及び不活性フィルム28の周りで閉鎖されて、エラストマー材シート26と不活性フィルム28は一緒に型彫部20及び24の中へ押し込まれる。熱の効果によって、多数のスピゴット状の内側部分30を持つスキン32が形成され、エラストマー材は少なくとも部分的に硫化されて、不活性フィルム28に接着する。これによって、不活性フィルム28は不活性層34(図11)を形成し、不活性層は内側部分の第二金型板材16に面する側をコーティングする。
【0029】
図4は、スキン32が成形用金型10から取り出されるときの成形用金型10の概略断面図を示す。取出しのために、スキン32を型彫部20及び24から外せるように、成形用金型10を開放位置にする。スキン32の一部であるスピゴット状の内側部分30は、各々第二金型板材16に面するスキンの側に、凹部38を持つ自由端36を有する。凹部は自由端36の端面40に形成される。また、内側部分30は、各々、自由端36の反対側に成形合わせ端42を有する。内側部分30の成形合わせ端42の最端面には外周環状溝44が形成される。環状溝は端面に向かって開放している。
【0030】
本発明に係る方法のステップ(d)において、内側部分30はスキン32から打ち抜かれる。この作業が図5〜7において概略断面図で示される。スキン32(またはその一部)は打抜き型46の中に配置され(図5)、打抜き型46が閉鎖され(図6)、内側部分30が打ち抜かれる(図7)。
【0031】
打抜き型46は、第一クリアランス50を持つ第一打抜き板材48、及び第一打抜き板材48に平行に配列される、第二クリアランス54を持つ第二打抜き板材52を有する。2枚の打抜き板材48及び52は打抜き板材の平面に対して垂直に移動可能である。2つの円柱形のクリアランス50及び54は、打抜き板材の平面に対して垂直であり、同一の直径d1を有し、打抜き型46が閉鎖されたとき連続する中空空間を形成するように配列される。第二打抜き板材52は、第一打抜き板材48に面する側に支持面56を有する。スキン32は、内側部分30の自由端36が第二クリアランス54の中へ突出するように支持面56の上に配置される。スキン32から第二クリアランス54の中へ突出するスピゴット形の領域はほぼ円柱形であり、中心軸Aを有し、2つのクリアランス50及び54と少なくともほぼ同じ直径d1を持つことが好ましい。
【0032】
さらに、打抜き型46は、円柱形の打抜きラム58を有する。打抜きラムは、打抜き板材の平面に対して垂直の中心軸Aに沿って移動可能である。打抜きラム58は、実際の打抜き作業の前に第一クリアランス50の中に配置され、d1に比べて多少例えば0.01mm〜0.03mm小さい直径を有する。打抜きの前に、スキン32は2枚の打抜き板材48と52の間に止め具で留められて、固定される。打抜きのために、打抜きラム58は第一クリアランス50を通過して第二クリアランス54の中へ押し込まれるので、内側部分30の外円周に沿ってスキン32を切断する。
【0033】
図8〜10は、射出成形用金型60の概略断面図を示す。外側部分62(図11)を成形するための本発明に係る方法にこの射出成形用金型を使用できる。図8は、開放位置にある射出成形用金型60を示し、図9は射出成形用金型60における内側部分30の配置を示し、図10は外側部分62の実際の成形を示す。
【0034】
射出成形用金型60は第一外側板材64、第一内側板材66、第二内側板材68及び第二外側板材70を有し、これら全ては相互に平行に配列され、板材の平面に対して垂直に移動可能である。2枚の内側板材66及び68は外側板材64と70の間に配列される。図8に示される開放位置において、第一外側板材64と第一内側板材66は相互に固定して接続され、本発明に係る方法全体を通じて接続されたままである。図8に示される開放位置において、第一内側板材66は第二内側板材68からある距離にある。第一内側板材66と第一外側板材64は射出成形用金型60に固定的に接続される。しかし、第二内側板材68及び第二外側板材70は、相互に対して移動可能であり、また特に金型からの取出し時に第一内側板材66及び第一外側板材64から離れるように移動可能である。射出成形作業時に、第二内側板材68と第二外側板材70は相互に押し付けられ、射出成形用金型60は閉鎖される。
【0035】
成形材料を供給するための供給経路72が第一外側板材64及び2枚の内側板材66及び68を貫通する。供給経路は、それぞれ3枚の金型板材64、66及び68の1つに配列される3つの供給経路部分74、76及び78によって構成される。供給経路72に対して直角に、第二内側板材68と第二外側板材70との間に少なくとも1つの、好ましくは平形の、ランナ80が走る。これを通過して、成形材料を射出成形用金型60のキャビティへ送ることができる。
【0036】
第一内側板材66の中には、交換可能な第一金型インサート82が挿入される。インサートは第一部分キャビティ84を有する。第一部分キャビティは第二内側板材68に向かって開放される。第二内側板材68の中には、交換可能な第二金型インサート86が挿入される。このインサートは第二部分キャビティ96を有し、第二部分キャビティは第一内側板材66に向かって開放される。第一部分キャビティ84及び第二部分キャビティ96は板材の平面に対して垂直に走る中心軸Aに沿って配列され、射出成形用金型60が閉鎖されると、射出成形用金型60のキャビティを形成する。第一金型インサート82は、第一内側板材66において円板ばね88によってプレストレスを与えられる。円板ばねは第一内側板材66の中空空間90に挿入され、中心軸Aに沿って走る案内シリンダ92の周りに配置される。第一金型インサート82は外側半径方向ショルダ93によって第一内側板材66に載り、円板ばねのばね力によって所定の位置に維持される。図8に示す開放位置において、第一金型インサート82は第一内側板材66から僅かに突出する。射出成形用金型60が閉鎖されると、第一金型インサート82は押し戻され、その結果ぴったりと嵌った接続が得られる。第二金型インサート86は第二外側板材70によって第二内側板材68の中で固定される。第二内側金型インサート86も射出経路94を有し、射出経路はランナ80を第二部分キャビティ96に接続する。
【0037】
第二外側板材70には負圧経路98が配置される。負圧経路によって、成形材料が導入される前に、閉鎖された射出成形用金型60から空気が取り除かれる。これによって、閉鎖された射出成形用金型60のキャビティに対する負圧が創成される。遮断弁100によって負圧経路98を閉鎖することができる。遮断弁は、コイルばね102によって開放状態を維持される。図示する遮断弁100は、成形材料が金型の中に導入されると直ちに成形材料自身による背圧によって閉鎖位置にされるので、成形材料が射出成形作業時に負圧経路98の中に侵入するのを防ぐ。
【0038】
外側部分62の上に成形する際(図10)、打ち抜かれた内側部分30は、成形合わせ端42がキャビティの中で露出しかつ自由端36に向かう領域が完全に第一部分キャビティ84によって囲繞されるように、第一部分キャビティ84の中に配置される。好ましくは、内側部分30は、成形合わせ端42に隣接する円筒形領域もキャビティの中で露出するように配置される。その結果、内側部分30は、露出領域において、成形合わせ端42から軸方向だけでなく半径方向にも成形できる。射出成形用金型60が閉鎖された後、成形材料が、射出されて供給経路72を通過し、ランナ80及び射出経路94を介して第二部分キャビティ96の中へ入る。第二部分キャビティにおいて外側部分62が成形される。射出成形時に、遮断弁100は閉鎖される。ストッパ12(図11)はこの射出成形によってその最終形状を与えられ、硫化したらまたは少なくとも部分的に硬化したら直ちに射出成形用金型60から取り出すことができる。射出成形用金型60からストッパ12を取り出す際、まず第二内側板材68及び第二外側板材70を第一内側板材66及び第一外側板材64に対して移動させる。このステップにおいて、内側部分30または部分的に硬化したストッパ完成品12は第一金型インサート82から外される。その後、第二内側板材68は、液圧または電気駆動手段によって、第二外側板材から分離されるか、またはこれから離れるように移動される。これは、ランナ80及び射出経路94の中に残っている成形材料が第二外側板材70から分離されるという効果を持つ。その後、ストッパ12を射出経路94の中に残っている成形材料から分離することができる。その後、残っている成形材料は、第三供給経路部分78に残っているスプルと一緒に射出成形用金型60から取り除かれる。
【0039】
図11は、本発明に係る方法によって生産されたストッパ12の概略断面図を示す。ストッパ12は担持体104及び不活性層34を有する。不活性層は内側部分30の領域において担持体104をコーティングする。ストッパ12の内側部分30は、外側部分62から離れた自由端36を有し、自由端の最端部には凹部38が配置される。さらに、内側部分30はケーシング状のシール面106を有する。シール面は外側部分62に隣接し、不活性層34によって完全にコーティングされる。円板形の外側部分62は、側面108及びこれに垂直に配列される環状支持面110を有する。環状支持面は内側部分30に隣接する。内側部分30から離れた側に、外側部分62は凹部112を有する。凹部112は、凹部38と一緒に、ストッパ12をカニューレで穿孔しやすくするために役立つ。
【0040】
図12は、容器114に嵌められているストッパ12の概略断面図を示す。容器114には内容物、特に薬剤組成物が充填されており、ストッパ12によって閉鎖されている。ストッパ12の環状支持面110は容器114の上縁の上に載っており、ストッパ12のケーシング状のシール面106は容器壁の内面に接していて、容器をシールする。不活性層34は、容器114内部に配置されるストッパ12の領域を完全にコーティングして、容器114の内容物116がストッパ12の担持体104の材料と接触するのを防ぐ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー材の担持体(104)と不活性層(34)とを持つ一体品ストッパ(12)を生産する方法であって、
前記ストッパが開口を持つ容器(114)を閉鎖するためのものであり、
前記担持体(104)が、
前記容器(114)の外側に載る円板形の外側部分(62)と、
内側部分(30)であり、該内側部分(30)は、前記外側部分(62)に固定して接続され、前記外側部分(62)からスピゴット(樽栓)状に突出し、前記外側部分から離れた自由端(36)を有し、前記容器(114)の前記開口の中へ前記自由端(36)が挿入されて前記容器(114)の内部に突出し、その表面が少なくとも部分的に不活性層(34)でコーティングされる、内側部分(30)と、を有し、
前記方法が、
(a)前記エラストマー材シート(26)及び不活性フィルム(28)を成形用金型(10)の中に配置するステップと、
(b)熱の効果によって前記内側部分(30)を成形して、前記不活性フィルム(28)が前記不活性層(34)を形成して前記内側部分(30)の前記自由端(36)及び隣接領域をコーティングし、前記エラストマー材が少なくとも部分的に硫化され、前記不活性フィルム(28)に分離不能に接着されて、スキン(32)が形成されるステップと、
(c)前記成形用金型(10)から前記スキン(32)を取り出すステップと、
(d)前記スキン(32)から前記内側部分(30)を打ち抜くステップと、
(e)別の成形用金型において前記外側部分(62)を付着させるステップと、
を含み、
前記外側部分を付着させるために、
(e1)前記自由端の反対側の成形合わせ端(42)が射出成形用金型(60)のキャビティにおいて露出するように前記内側部分(30)を前記キャビティの中に配置し、
(e2)前記内側部分(30)の成形合わせ端(42)の上に射出成形することによって前記外側部分(62)を成形し、それによって前記ストッパ(12)にその最終形状を与え、
(e3)完全に硫化したまたは少なくとも部分的に硬化したストッパ(12)を前記射出成形用金型(60)から取り出す
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記エラストマー材としてブロモブチルゴム、ニトリルゴムまたはエチレンプロピレンジエンゴムを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性フィルムとしてフッ化ポリマーフィルム特にテフロン(登録商標)フィルムを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)において、前記不活性層(34)が、ストッパ完成品(12)において前記外側部分(62)から突出する前記内側部分(30)の外面を完全にコーティングするように成形されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)において、前記内側部分(30)の前記自由端の端面(40)に凹部が形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)において、前記内側部分(30)の成形合わせ端(42)の最端面に外周環状溝(44)が形成され、前記溝が前記端面に向かって開放されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(e1)において、前記内側部分(30)が、前記成形合わせ端(42)に隣接する側面領域が露出するように前記射出成形用金型(60)の前記キャビティの中に配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(e1)において、前記内側部分(30)が前記不活性層の無い前記内側部分(30)の前記成形合わせ端(42)の領域のみが露出するように前記射出成形用金型(60)の前記キャビティの中に配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記外側部分の成形前に前記射出成形用金型(60)の中で負圧が創成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
エラストマー材の担持体(104)と不活性層(34)とを持つ一体品ストッパ(12)を生産する方法であって、
前記ストッパが開口を持つ容器(114)を閉鎖するためのものであり、
前記担持体(104)が、
前記容器(114)の外側に載る円板形の外側部分(62)と、
内側部分(30)であり、該内側部分(30)は、前記外側部分(62)に固定して接続され、前記外側部分(62)からスピゴット(樽栓)状に突出し、前記外側部分から離れた自由端(36)を有し、前記容器(114)の前記開口の中へ前記自由端(36)が挿入されて前記容器(114)の内部に突出し、その表面が少なくとも部分的に不活性層(34)でコーティングされる、内側部分(30)と、を有し、
前記方法が、
(a)前記エラストマー材シート(26)及び不活性フィルム(28)を成形用金型(10)の中に配置するステップと、
(b)熱の効果によって前記内側部分(30)を成形して、前記不活性フィルム(28)が前記不活性層(34)を形成して前記内側部分(30)の前記自由端(36)及び隣接領域をコーティングし、前記エラストマー材が少なくとも部分的に硫化され、前記不活性フィルム(28)に分離不能に接着されて、スキン(32)が形成されるステップと、
(c)前記成形用金型(10)から前記スキン(32)を取り出すステップと、
(d)前記スキン(32)から前記内側部分(30)を打ち抜くステップと、
(e)別の成形用金型において前記外側部分(62)を付着させるステップと、
を含み、
前記外側部分を付着させるために、
(e1)前記自由端の反対側の成形合わせ端(42)が射出成形用金型(60)のキャビティにおいて露出するように前記内側部分(30)を前記キャビティの中に配置し、
(e2)前記内側部分(30)の成形合わせ端(42)の上に射出成形することによって前記外側部分(62)を成形し、それによって前記ストッパ(12)にその最終形状を与え、
(e3)完全に硫化したまたは少なくとも部分的に硬化したストッパ(12)を前記射出成形用金型(60)から取り出す
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記エラストマー材としてブロモブチルゴム、ニトリルゴムまたはエチレンプロピレンジエンゴムを使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性フィルムとしてフッ化ポリマーフィルム特にテフロン(登録商標)フィルムを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)において、前記不活性層(34)が、ストッパ完成品(12)において前記外側部分(62)から突出する前記内側部分(30)の外面を完全にコーティングするように成形されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)において、前記内側部分(30)の前記自由端の端面(40)に凹部が形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)において、前記内側部分(30)の成形合わせ端(42)の最端面に外周環状溝(44)が形成され、前記溝が前記端面に向かって開放されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(e1)において、前記内側部分(30)が、前記成形合わせ端(42)に隣接する側面領域が露出するように前記射出成形用金型(60)の前記キャビティの中に配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(e1)において、前記内側部分(30)が前記不活性層の無い前記内側部分(30)の前記成形合わせ端(42)の領域のみが露出するように前記射出成形用金型(60)の前記キャビティの中に配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記外側部分の成形前に前記射出成形用金型(60)の中で負圧が創成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−62518(P2011−62518A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204418(P2010−204418)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(510246219)ロンストロフ アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(510246219)ロンストロフ アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】
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