説明

ストランドの製造方法

【課題】 表面外観が良いストランドの製造方法の提供。
【解決手段】 (A)熱可塑性樹脂100質量部、(B)前記(A)成分の熱可塑性樹脂中に分散した状態で粒子径が100μm以下の粒子状セルロースエステル及び/又は繊維状のセルロースエステル0.1〜50質量部、並びに(C)セルロース系充填材10〜300質量部を含有する熱可塑性樹脂組成物から得られるストランドの製造方法であって、
(a)前記熱可塑性樹脂組成物をヘンシェルミキサー中で加熱しながら混練し、造粒する工程、(b)前記(a)工程で得られた造粒物を冷却する工程、(c)前記(b)工程で冷却された造粒物を押出機に供給して、ストランド状に押し出す工程、を有しているストランドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストランドの製造方法、前記ストランドを用いたペレットの製造方法、前記ペレットを用いた異形押出成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の増量や機械的強度の改善を目的として、熱可塑性樹脂に対して木粉、パルプ、古紙、各種繊維等の充填材が配合されている。ガラス繊維や鉱物系の充填材と比較して、低比重化が実現できること、燃焼残渣が少ないことから、天然繊維系の充填材が使用されるようになっている。
【0003】
しかし、熱可塑性樹脂に対して天然繊維系充填材を配合したものをストランド状に押し出したとき、肌荒れが著しく、ペレットの生産性も低下させるという問題がある。また、天然繊維系充填材の配合量を増加させて(例えば、樹脂100質量部に対して100質量部以上)異形押し出ししたときは、成形品表面の肌荒れが大きく、耐衝撃強度が低下するという問題がある。
【0004】
特許文献1には、熱可塑性樹脂、パルプ、これらの相溶化材とを含む混合物からなる成形材料が開示されており、前記相溶化材の配合により、パルプの混入比率の高い成形材料が得られ、機械的特性、熱的性質、寸法安定性の優れた成形品が得られることが開示されている(特許請求の範囲、段落番号5等)。
【特許文献1】特開平6−170838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、熱可塑性樹脂、パルプ、これらの相溶化材をヘンシェルミキサーに挿入して混合した後、混練押出装置のホッパに投入し、加熱混練して押し出し(ここでストランドが得られる)、冷却後にホットカッタで切断してペレットを得ることが開示されている(段落番号7)。
【0006】
しかし、このようにヘンシェルミキサー混合した後に直ちに押出機内で溶融混練してストランドを得た場合、セルロース系充填材の分散が悪く、表面の肌荒れが著しくなるため、ペレットの生産性の低下の問題、異形押出品の表面の肌荒れや耐衝撃強度が低下するという問題が解決されていない。
【0007】
本発明は、表面外観が美しく、ペレットの生産性を向上させ、異形押出品の表面外観や機械的強度も良好なストランドを得ることができる、ストランドの製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
また本発明は、前記製造方法で得られたストランドからペレットを製造する方法と、前記ペレットから異形押出成形品を製造する方法を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、
(A)熱可塑性樹脂 100質量部、
(B)前記(A)成分の熱可塑性樹脂中に分散した状態で粒子径が100μm以下の粒子状セルロースエステル及び/又は繊維状のセルロースエステル 0.1〜50質量部、並びに
(C)セルロース系充填材 10〜300質量部
を含有する熱可塑性樹脂組成物から得られるストランドの製造方法であって、
(a)前記熱可塑性樹脂組成物をヘンシェルミキサー中で加熱しながら混練し、造粒する工程、
(b)前記(a)工程で得られた造粒物を冷却する工程、
(c)前記(b)工程で冷却された造粒物を押出機に供給して、ストランド状に押し出す工程、
を有しているストランドの製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、他の課題の解決手段として、請求項1〜5のいずれかの製造方法で得られたストランドを冷却した後に切断するペレットの製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、更に他の課題の解決手段として、請求項6記載の製造方法で得られたペレットを用い、異形押出する異形押出成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のストランドの製造方法によれば、表面が平滑で、外観の美しいストランドを得ることができる。更に前記ストランドから得られたペレットを用いて製造された異形押出成形品は表面外観や機械的強度が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<熱可塑性樹脂組成物>
(A)成分の熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等)等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。これらの中でもオレフィン系樹脂が好ましい。
【0014】
オレフィン系樹脂は、エチレンのほか、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独ポリマー、エチレンとα−オレフィンの共重合体、異なるα−オレフィン同士の共重合体、エチレン又はα−オレフィンを主成分として、これと共重合可能な他のモノマー、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の共重合体等を挙げることができる。
【0015】
オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンを主成分とし、更にエチレン又はプロピレン以外のα−オレフィンをブロック又はランダム共重合させた共重合体が好ましく、特にプロピレンを主成分とし、更にエチレン又はプロピレン以外のα−オレフィンをブロック又はランダム共重合させた共重合体(オレフィン系樹脂)が好ましい。ここで、エチレン又はプロピレン以外のα−オレフィンの割合(仕込み割合)は、0.1〜10質量%が好ましい。
【0016】
(B)成分のセルロースエステルは、粒子状のもの、繊維状のもの又はこれらの混合物であり、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、ブタン酸セルロースから選ばれる1又は2以上が好ましい。
【0017】
(B)成分のセルロースエステルが粒子状のものであるとき、(A)成分の熱可塑性樹脂中に分散した状態で粒子径が100μm以下であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下である。
【0018】
(B)成分のセルロースエステルが繊維状のものであるとき、繊維径及び長さは特に制限されないが、繊維径が1〜100μmで、長さが100〜5000μmのものが好ましい。
【0019】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部であり、好ましくは0.2〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜15質量部である。0.1質量部未満であると、成形性が悪く、成形品の外観も悪くなり、50質量部を超えると、成形品の剛性が低下する。
【0020】
(C)成分のセルロース系充填材は、木材、木粉、古紙、パルプ、竹繊維、麻繊維(ジュート、亜麻、苧麻、サイザル麻、大麻、ケナフ等)等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。(C)成分のセルロース系充填材は、押出加工時に発泡することを防止するため、含水率が3質量%以下のものを用いることが好ましい。
【0021】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して10〜300質量部であり、好ましくは10〜250質量部であり、より好ましくは10〜200質量部である。10質量部未満であると、セルロース系充填材による充填効果、剛性の改善が不十分であり、300質量部を超えると、熱可塑性及び溶融流動性が不足し、押出による成形・賦形が困難になる。
【0022】
熱可塑性樹脂組成物には、(A)成分と(B)成分の相溶性を向上させ、組成物から得られる成形品の剛性を向上させるため、(D)成分として極性基含有重合体を含有していてもよい。極性基含有重合体としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを挙げることができる。
【0023】
(D)成分の含有量は、(A)成分の熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。0.1質量部以上であると、成形品の表面外観の向上及び剛性の改良効果が良くなり、10質量部以下であると、成形性が良くなる。
【0024】
熱可塑性樹脂組成物には、本発明の課題を解決できる範囲内で、各種添加剤、熱安定化剤、酸性成分の中和剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、染料、顔料、発泡剤等を含有させることができる。
【0025】
<ストランドの製造方法>
本発明のストランドの製造方法は、下記の(a)〜(c)工程のほか、必要に応じて他の工程を付加することができる。
【0026】
(a)工程は、熱可塑性樹脂組成物をヘンシェルミキサー中で加熱しながら混練し、造粒する工程である。(a)工程では、槽内温度、周速(攪拌羽根の周速)及び混練時間を所定範囲内に調整することが好ましい。
【0027】
樹脂温度は140〜250℃が好ましく、より好ましくは150〜220℃、更に好ましくは160〜220℃である。周速は10〜100m/秒が好ましく、より好ましくは20〜100m/秒、更に好ましくは30〜100m/秒である。混練時間は、1〜30分間が好ましく、より好ましくは3〜30分間、更に好ましくは5〜30分間である。
【0028】
熱可塑性樹脂組成物を投入する槽(混練・造粒槽)の容積と前記組成物の投入量は、槽容積50Lに対して、前記組成物は2000〜6000gが好ましい。
【0029】
(b)工程は、(a)工程で得られた造粒物を前工程における混練・造粒時の温度未満の温度に冷却する工程である。
【0030】
(b)工程では、ミキサー中にて攪拌しながら槽内温度を140℃以下まで低下させることが好ましく、より好ましくは130℃以下まで低下させ、造粒物の温度も前記温度範囲内まで低下させる。(b)工程では、造粒物の温度を前記温度範囲まで冷却させることができれば、混合時間は特に制限されないが、10〜25分間程度かけて冷却することが好ましい。槽内温度は、ミキサーの外壁に設置したセンサーで測定した温度である。
【0031】
(c)工程は、(b)工程で冷却された造粒物を押出機に供給して、ストランド状に押し出す工程である。押出には、例えば一軸押出機を用い、押出時のシリンダー温度が170〜240℃で、直径が2〜6mmの範囲内になるように押し出すことができる。このようにして得られたストランドは、表面が平滑で、外観が美しいものである。
【0032】
<ペレット及び異形押出成形品の製造方法>
本発明のペレットの製造方法は、上記した製造方法で得られたストランドを水又は冷風により冷却した後、裁断機で所定長さに切断する方法である。
【0033】
本発明の異形押出成形品の製造方法は、上記製造方法で得られたペレットを用い、異形ダイスを備えた押出機、サイジング金型、冷却装置、引き取り装置、切断機からなる公知の製造装置により成形する方法である。
【0034】
このようにして得られた異形押出成形品は、表面外観が良好で、機械的強度も高い。この異形押出成形品は、建材、遊戯機器、自動車部品、家電部品、音響機器部品、各種雑貨等の用途に提供できる。
【実施例】
【0035】
実施例1〜3、比較例1(ストランドの製造)
表1に示す各成分(質量部表示)からなる熱可塑性樹脂組成物を用い、下記の方法によりストランドを製造した。
【0036】
(a)工程
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物2500gをヘンシェル型高速ミキサー(容量20L)内に投入し、表1に示す条件にて混練しながら溶融させて造粒した。
【0037】
(b)工程
造粒物を冷却用ミキサー(容量50L)中に入れ、攪拌しながら表1に示す槽内温度まで低下させ、その状態で10分間保持した。
【0038】
(c)工程
冷却用ミキサー中の造粒物を一軸押出機に投入して、210℃でストランド状に押し出した。
【0039】
得られたストランドの外観・生産性を評価した。外観は、ストランドを目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:表面が滑らかである。
×:表面にざらつきや毛羽立ちがある。またストランドが1回/分以上の割合で切れる。
【0040】
シャルピー衝撃強度:単位はkJ/m2、 ISO179/1eAに準拠して測定、ノッチつき。
【0041】
【表1】

【0042】
(A)成分
PP:エチレン/プロピレンランダム共重合体,サンアロマー(株)のPM870L(MI=147)
(B)成分
アセテートトウ:ダイセル化学工業(株)製のL40から得られたトウ
酢酸セルロース粉末:ダイセル化学工業(株)製のL40粉末
(C)成分
パルプ:日本製紙(株)製のパルプNDP−T
(D)成分
ユーメックス1010:三洋化成(株)製;無水マレイン酸変性ポリプロピレン
表1から明らかなとおり、ストランドの外観が良好で、しかも安定的に製造できた。
【0043】
実施例4〜6、比較例2、3(異形押出成形品の製造)
表2に示す各成分(質量部表示)からなる熱可塑性樹脂組成物を用い、下記の方法によりストランドを製造した。
【0044】
(a)工程
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物2500gをヘンシェル型高速ミキサー(容量20L)内に投入し、表2に示す条件にて混練しながら溶融させて造粒した。
【0045】
(b)工程
造粒物を冷却用ミキサー(容量50L)中に入れ、攪拌しながら表2に示す槽内温度まで低下させ、その状態で10分間保持した。
【0046】
(c)工程
冷却用ミキサー中の造粒物を一軸押出機に投入して、200〜240℃でストランド状に押し出した。
【0047】
その後、得られたストランドを水中に導いて冷却し、切断してペレットを得た。得られたペレットを用いて、異形ダイスを備えた押出機、サイジング金型、冷却装置、引き取り装置、切断機からなる製造装置により異形押出成形した。
【0048】
前記製造装置は、一軸押出機(スクリュー径50mm,L/D=30)に、10×70mmの断面を持つ平板を押し出すためのダイスを取り付け、(A)成分がPPの場合はシリンダー温度210℃、ダイス温度210℃、(A)成分がナイロン6の場合はシリンダー温度240℃、ダイス温度240℃、(A)成分がポリ乳酸の場合はシリンダー温度200℃、ダイス温度200℃で押出成形した。25℃に設定した真空サイジング金型に1m/分の速度で引き取りながら冷却固化し、切断機で所望長さに切断して、押出成形品を得た。
【0049】
得られたストランドの外観とシャルピー衝撃強度を実施例1と同様にして目視で観察し、評価した。更に異形押出成形品の外観を目視で観察し、下記の基準で評価した
○:成形品表面が滑らかである。
×:成形品のエッジ部分にざらつきやひび割れが見られる。
【0050】
【表2】

【0051】
(A)成分
PP:エチレン/プロピレンランダム共重合体,サンアロマー(株)のPM870L,MI=147)
ナイロン6:宇部興産(株)のウベナイロン1013B
ポリ乳酸:三井化学(株)製のLaceaH100
(B)成分
酢酸セルロース粉末:ダイセル化学工業(株)製のL40粉末
(C)成分
パルプ:日本製紙(株)製のパルプNDP−Tを粉砕したもの
(D)成分
ユーメックス1010:三洋化成(株)製;無水マレイン酸変性ポリプロピレン
表2から明らかなとおり、ストランドの外観が良好で、しかも安定的に製造できた。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂 100質量部、
(B)前記(A)成分の熱可塑性樹脂中に分散した状態で粒子径が100μm以下の粒子状セルロースエステル及び/又は繊維状のセルロースエステル 0.1〜50質量部、並びに
(C)セルロース系充填材 10〜300質量部
を含有する熱可塑性樹脂組成物から得られるストランドの製造方法であって、
(a)前記熱可塑性樹脂組成物をヘンシェルミキサー中で加熱しながら混練し、造粒する工程、
(b)前記(a)工程で得られた造粒物を冷却する工程、
(c)前記(b)工程で冷却された造粒物を押出機に供給して、ストランド状に押し出す工程、
を有しているストランドの製造方法。
【請求項2】
(A)成分の熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である請求項1記載のストランドの製造方法。
【請求項3】
(B)成分のセルロースエステルが、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、ブタン酸セルロースから選ばれるものである請求項1又は2記載のストランドの製造方法。
【請求項4】
(a)工程において、樹脂温度140〜250℃、周速10〜100m/秒、1〜30分間の条件で混練して造粒する、請求項1〜3のいずれかに記載のストランドの製造方法。
【請求項5】
(b)工程において、ミキサー中にて攪拌しながら槽内温度を140℃以下まで低下させる、請求項1〜4のいずれかに記載のストランドの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの製造方法で得られたストランドを冷却した後に切断するペレットの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の製造方法で得られたペレットを用い、異形押出する異形押出成形品の製造方法。



【公開番号】特開2008−93837(P2008−93837A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274799(P2006−274799)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】