説明

ストリップのホットディップコーティングをするための装置及び方法

金属溶湯(200)用の容器(110)と、金属溶湯内に浸漬された、ローラボディ(122)及びローラネック(124)を備える、金属溶湯を通過する際にストリップを転向又は安定させるためのローラ(120)と、ローラネック(124)をスルースチャンバ(132)によって包囲するスルース(130)と、金属溶湯(200)に対してスルースチャンバ(132)をシールするためにスルースチャンバ(132)内にガス圧を有するガス状媒体(N)を供給するための供給手段(170)とを有する、金属溶湯(200)でストリップのコーティングをするためのホットディップコーティング装置(100)において、スルースの整備費用を低減するために、スルースチャンバ(132)を有するスルースが、金属溶湯(200)内に浸漬され、スルースチャンバ(132)が、通路状の出口(134)を有するダイビングベルの形態に形成されており、この出口が、金属溶湯(200)内に浸漬され、金属溶湯に対して開放している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリップのホットディップコーティングをするための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、例えば特許文献1から基本的に公知である。これに開示されたホットディップコーティング装置は、金属溶湯用の容器を有し、この容器を通るように、ストリップが案内される。溶湯を通過する際に、ストリップは、ローラボディ及びローラネックを備えるローラによって、溶湯内で転向及び安定させられる。ローラもしくはローラネックは、転がり軸受により軸受けされている。
【0003】
その機能を保証するため、転がり軸受は、攻撃的な金属溶湯から保護されなければならない。この目的のため、溶湯の転がり軸受への浸入を防止するために、金属溶湯への軸の貫通部は、有効なシールによって閉鎖しなければならない。前記特許文献1では、シールが、スルースチャンバによってローラネックを包囲するスルースにより行なわれ、このスルースチャンバは、軸の貫通部、即ちネックへの移行部、における非気密性を無視すれば、金属溶湯に対して遮断もしくはシールされている。軸の貫通部を通る金属溶湯の浸入を防止するため、スルースチャンバは、ガス圧を有するガス状媒体の作用を受ける。スルースは、ガス圧があるにもかかわらずスルースチャンバ内に浸入している僅かな量の金属溶湯の形態のリーク損失を捕集するために、捕集容器を備える。この捕集容器は、時々空にしなければならず、このため、捕集容器は、先ず取り外し、その後再び取り付けなければならないので、このスルースの運転には、高い整備費用が結び付いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2004 030 207号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来技術から出発して、本発明の根底にある課題は、特にスルースの整備費用を低減するように、ストリップのホットディップコーティングをするための公知の装置及び公知の方法を構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の装置によって解決される。従って、本発明によるホットディップコーティング装置は、スルースチャンバを有するスルースが、金属溶湯内に浸漬されていること、スルースチャンバが、通路状の出口を有するダイビングベルの形態に形成されており、この出口が、金属溶湯内に浸漬され、金属溶湯に対して開放していることを特徴とする。
【0007】
本発明によりダイビングベルとしてスルースチャンバを形成した場合、僅かなリーク損失を、意識的に受け入れる。ガス圧に抗して軸の貫通部を通ってスルースチャンバの内部に達する僅かな量の金属溶湯が、そこで直接通路状の出口を介して再び溶湯槽に供給されるので、リーク損失は、無害であり、高い整備費用を生じさせない。独立した捕集容器へのリーク損失の捕集と、これによる従来技術から公知の整備費用は、本発明によりスルースを形成した場合は、なくすことができる。
【0008】
単純にするため、本明細書では、ローラネックに連結可能な駆動軸と、ローラネック自身の間に違いがない。即ち、ローラネックの概念は、特に具体的な実施形においてはローラネックではなく、駆動軸が、軸受室によって方位され、軸受内に回転可能に軸受けされている場合は、駆動軸を意味することがある。
【0009】
本発明の第1の実施例によれば、ローラネック用の軸受を有する軸受チャンバは、ガス状媒体に関してスルースチャンバと連絡するように形成されている。これは、軸受チャンバ内もガス圧が支配し、このようにして、金属溶湯が軸受から遠ざけられるという利点を有する。
【0010】
本発明によるダイビングベルの形態のスルースは、単独でも、例えば金属溶湯に対して開放又は閉鎖可能な別のスルースと共にでも、軸受チャンバとローラボディの間に配設可能である。平行に配設されたこれらスルースは、冗長的なカスケード状のシールシステムとして、このシールシステムの他方に、即ちローラボディの領域に、存在する金属溶湯に対して軸受チャンバをシールするために協働する。個々のスルースの場合、特に、前記のようにダイビングベルとして形成されたスルースの場合、非気密性を意識的に受け入れるが、この非機密性は、1次的な目的、即ち金属溶湯からの軸受室の保護、と矛盾しない。
【0011】
個々のスルースは、場合によっては軸受室も、基本的にそれぞれ独立してガス状媒体の作用を受けることができ、このようにして金属溶湯に対してシールすることができる。
【0012】
しかしながら、本発明は、軸受室と種々のスルースチャンバを、ガス状媒体に関して互いに連絡するように形成し、少なくとも一方向にガス状媒体の流通を可能にすることを、提案する。これは、特に有利なことに、隣接する2つのチャンバの間の移行領域のリップシールによって実現される。このリップシールは、一方向へのガス状媒体の流通を可能にし、他の方向へは、ガス状媒体のための逆止弁としても、場合によっては生じる金属溶湯のリークのための遮断装置としても機能する。
【0013】
スルースチャンバと液状の金属溶湯の間の移行領域内の軸の貫通部は、スルースチャンバから金属溶湯内に漏れるガス状媒体にとっても、スルースチャンバ内に浸入する金属溶湯にとっても、ホットディップコーティング装置の本質的に非気密性の箇所である。望んでない浸入した金属溶湯の溶湯槽への本発明による返還は、既に前で述べている。
【0014】
有利なことに、軸の貫通部に隣接して、スルース外に、スルースチャンバから金属溶湯内に流出したガス状媒体を捕集するためのガス分離要素を設けることができる。有利なことに、捕集したこの媒体は、次に、ガス回路を介して軸受チャンバ又はスルースチャンバに再び供給することができる。しかしながら、選択的に環境空気内に排出してもよい。
【0015】
軸の貫通部の領域内の非気密性が基本的に受け入れられる場合でも、非気密性は望ましくない。軸の貫通部の領域内の気密性は、そこに、スルースチャンバ内のガス圧と金属溶湯の槽内の圧力の差によってローラ軸に対して平行にローラボディ又はローラネックの突出部に押し付けられる摺動シールを設けることによって、著しく向上させることができる。
【0016】
有利なことに、場合によっては、漏れたガスの前記返還を行なうガス循環システムは、省略してもよい。
【0017】
摺動シールに対して選択的又は付加的に、軸の貫通部の領域内に、誘導シールを設けてもよい。誘導シールは、ローラネックに対するリングシールとして使用してもよい。
【0018】
有利なことに、スルースチャンバ内のガス圧も、軸受チャンバ内のガス圧も、圧力コントロール回路によって監視され、一定に保持される。
【0019】
有利なことに、軸受室に、ローラネックを、これによりローラ全体を、回転させるための駆動装置が統合されている。駆動装置は、例えば電気モータ又は特別に形成された圧縮空気モータとして形成可能である。軸受室内への駆動装置の配設に対して選択的に、駆動装置は、外部に、即ち金属溶湯外に、配設してもよく、その場合、ローラネックとローラは、機械的な結合部、例えばスライダクランク駆動装置、を介して回転される。
【0020】
更に、前記課題は、本発明によるホットディップコーティング装置を運転するための方法によって解決される。この方法と結びついた利点は、ホットディップコーティング装置に関係して上でのべた利点に一致する。
【0021】
ホットディップコーティング装置とこれを運転するための方法の有利な形成は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ホットディップコーティング装置全体を示す。
【図2】本発明の第1の実施例によるローラの軸受部とシール部を示す。
【図3】本発明の第2の実施例によるローラの軸受部とシール部を示す。
【図4】ホットディップコーティング装置用のガス回路を示す。
【図5】本発明の第3の実施例によるローラの軸受部とシール部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を、前記の図に関連させた実施例の形で以下で詳細に説明する。全ての図で、同じ技術要素は、それぞれ同じ符号で示してある。
【0024】
図1は、ストリップ(示してない)をコーティングするためのホットディップコーティング装置100を示す。この装置は、金属溶湯200で満たされた容器110の両側に配設された2つの垂直なポスト102を有する。ポストに沿って、トラバース103が、垂直駆動装置104によって垂直に移動される。トラバース103に、2つのサポートアーム105が吊り下げられており、これらサポートアームの間にローラ120が回転可能に支承されている。金属溶湯内に浸漬された後、ストリップは、ローラ120を中心として、正確に言うとそのローラボディ122を中心として、金属溶湯から再び上に向かって出る前に、転向される。垂直に移動可能なトラバース103によって、ローラは、サポートアーム105におけるその軸受部と共に、金属溶湯200内に沈められるか、整備のためもしくは停止時間のために金属溶湯から引き上げられる。
【0025】
図2は、図1の詳細図の形で、本発明によるホットディップコーティング装置の第1の実施例を示す。金属溶湯200を内部に含んだ容器110が認められるが、金属溶湯の湯面は、符号Bで示されている。サポートアーム105に吊り下げられた、軸受部と共に金属溶湯200内に浸漬されたローラ120を認めることができる。具体的には、例えばサポートアーム105内の転がり軸受144に支承されたローラネック124を認めることができる。転がり軸受の環境は、以下では軸受チャンバ142と呼ぶ。更に、ガス状媒体、例えば窒素、を軸受チャンバ142内に供給するためのガスライン190を認めることができる。
【0026】
軸受チャンバ142に入る直前に、ガスライン190は、螺旋状に巻かれている。この螺旋状のコイルは、軸受チャンバ142に入るまでの、供給されるガス状媒体のための延長された経路を示し、螺旋状のコイルが、高温の金属溶湯200内に浸漬された場合、ガス状媒体は、螺旋状のコイルの通過時、軸受チャンバ142に入る前には既に金属溶湯の温度に予熱される。
【0027】
軸受チャンバ142とローラボディ122の間に、ローラネック124をスルースチャンバ132によって包囲する本発明によるスルース130が配設されている。スルース130は、まさに軸受ケース146とローラボディ122のように、金属溶湯200内に浸漬され、従って、外側から金属溶湯によって包囲されている。
【0028】
本発明によれば、スルース130及びそのスルースチャンバ132は、ホットディップコーティング装置の運転中に同様に金属溶湯200内に浸漬されている通路状の出口134を有するダイビングベルの形態に形成されており、出口134は、金属溶湯に対して開放している。
【0029】
スルース130は、軸受チャンバ142とローラボディ122の間に配設されている。軸受チャンバ142とスルースチャンバ132の間の移行領域で、隔壁は、ネック側が、ローラ120のネック124を包囲するブッシュ137で終わる。ブッシュ137の内径とネックの外径の間には、軸受チャンバ142とスルースチャンバ132の間をガス状媒体Nをコントロールして通過させるための環状間隙136が残っている。
【0030】
向かい側にある、ローラボディ122側のスルースチャンバの壁138は、柔軟に、例えばダイヤフラムとして、形成されている。壁138は、ネック側が、リングシール139で終わる。しかしながら、このリングシール139は、ネック側が、完全に気密性を有するのではなく、ネック124に対してある程度の非気密性が残っている。この非気密性は、ガス状媒体についても、金属溶湯200についても、当て嵌まり、ガス状媒体は、非気密性を介してスルースチャンバ132から包囲する金属溶湯200に漏れることができ、金属溶湯200は、軸の貫通部136の非気密性によってスルースチャンバ132内に達することができる。
【0031】
この非気密性を低減するため、リングシール139は、本発明により摺動シールとして形成されており、ローラボディ122又はローラネック124の突出部123に沿って摺動する。
【0032】
図2に図示した、場合によっては望まないのに浸入する溶湯200に対する軸受144のシール部は、以下のように機能する。
【0033】
ガスライン190によって、ガス状媒体、特に窒素、は、軸受チャンバ142内に案内される。そこで、ガス状媒体は、環状間隙136’を通ってスルースチャンバ132内に流出する前に、軸受144に行き渡る。軸受チャンバ142とスルースチャンバ132は、環状間隙136を介してガス状媒体に冠して互いに連絡するように形成されている。従って、両チャンバ内は、同じ大きさのガス圧に調整される。ガス圧は、スルース130の開放した通路状の出口134を通るスルースチャンバ132の内部への金属溶湯200の侵入が有効に防止されるような大きさに選択される。同時に、この圧力は、スルースチャンバ132の柔軟に形成された外壁138に作用する。この外壁138は、外側から金属溶湯200によって加えられた圧力の負荷を受けている。従って、摺動式のリングシール139は、スルースチャンバ132の内部のガス圧と、金属溶湯200によって外壁138に加えられた圧力の差圧によって、ローラの軸方向Rに対して平行な力Kで突出部123又はローラボディ122に押し付けられる。スルースチャンバ132の内部のガス圧は、この目的のため、金属溶湯によって加えられる圧力に対して大きくなるように適切に設定することができる。摺動シールとしてのリングシールの形成は、ネックの表面に対するシールとしての純粋な形成と比べてそのシール作用の著しい改善を生じさせる。全体的に、このようにして、軸の貫通部136を通って浸入する金属溶湯の量は、明らかに低減可能である。その際、溶湯は、スルースチャンバ132の領域において、直接、得ローラネック124から通路状の出口134に滴下し、このようにして即座に再び容器110内の溶湯槽に供給される。このようにして、非常に効果的な方法で、軸受チャンバ142、しかしながら特に軸受144を、整備費用をかけずに攻撃的な金属溶湯200から保護することができる。
【0034】
図3は、本発明の第2の実施例を示す。これは、ローラネック124を包囲する別のスルース室152を有する別のスルース150が軸受室と図2のスルースとの間に配設されていることによって、図2に示した第1の実施例とは異なる。この第2のスルースは、浸入する金属溶湯に対する軸受室の更に改善された遮断を生じさせ、別のスルース150は、ダイビングベルの形態のスルース130と共にカスケード状のシールである。別のスルースチャンバ152は、ガス状媒体に関して軸受チャンバ142とスルースチャンバ132と連絡するように形成されている。この連絡は、リップシール154によって、軸受チャンバ142から別のスルースチャンバ152の方向のガス状媒体の流通を限定される。
【0035】
リップシール154は、ローラネック124上のフランジ125に不動に取り付けられている。従って、ローラネック及びローラの回転時、リップシール154は、図3に示した実施例の場合、共に回転し、この場合、軸受ケース143の突出部147上を滑走する。別のスルースチャンバ152とスルースチャンバ132の間の隔壁は、ローラネック124に向かって、リングシールによってシールされており、しかしながら、このシールは、ネックの回転運動に基づいて、完全な気密性を有しているのではなく、特に、別のスルースチャンバ152からスルースチャンバ132へのガス状媒体の限定的な流通を可能にする。
【0036】
スルース130とは違って、別のスルース150は、ネック側のシールにおける非気密性を無視すれば、別のスルースチャンバ152とスルースチャンバ132の間の移行領域で、進入する金属溶湯200に対して隔絶されている。特に、別のスルース150は、ダイビングベルとして溶湯200に向かって開放した出口を備えていない。その代わり、別のスルース150は、スルース130を通過できた金属溶湯を捕集可能な、別のスルースチャンバに向かって開放した捕集容器158を備える。別のスルースチャンバ152から軸受チャンバ142への、ローラネック124の表面を伝わる金属溶湯は、最終的に、リップシール154が固定された前記フランジ125によって中断される。その点で、リップシール154と協働する別のスルース150によって、軸受室142への金属溶湯200の浸入に対する付加的な保護が得られる。
【0037】
ネック124に、軸、例えば駆動軸、が、軸方向に連結されるべきである場合には、インターフェース、例えば接合部17の形態のインターフェース、の、スルースチャンバ132の領域への配設を推奨するが、貫通部136から十分離れているので、別のスルースチャンバ152の領域への配設が更によい。このようにして、液状金属200の浸入による敏感な接合部の接着又は汚染を防止することができる。
【0038】
スルース130とローラボディ122の間に、同様に溶湯200に浸漬されたガス分離要素160が設けられている。ガス分離要素は、スルーススチャンバ132から摺動式のリングシール139の脇を通って金属溶湯200に漏れることができる、僅かな量のガス状媒体を捕集するために使用される。ガス分離要素160は、ベル状に形成され、ガス状媒体を金属溶湯から導き出すことができる上昇ライン162を有する。上昇ライン162から、ガス状媒体は、環境空気に排出されるか、容器(ここに示してない)に集められ、所定の時点で、新たな供給をするための供給手段170によって軸受チャンバ142に供給される。最後に挙げた選択肢は、ガス状媒体用の閉じた回路であり、従って、特に環境を汚染しない。ガス分離要素160の壁と、ローラネック124の突出部123もしくはローラネック124自身の表面の間の貫通部は、本発明によれば、ガス状媒体がガス分離要素外の金属溶湯200内に達することができないように、形成されている。
【0039】
軸受チャンバ142、別のスルースチャンバ152及びスルースチャンバ132内のガス圧は、マノメータMによって監視され、コントロール回路(ここに示してない)によってコントロールされ、特に一定に保持される。この場合、このコントロール回路には、軸受チャンバ142にガス状媒体を供給するための供給手段170は、ポンプもしくはアクチュエータとして機能する。
【0040】
ガス状媒体用の回路は、図4に詳細に図示されている。ガス状媒体Nは、ガス圧P1でタンク174内に貯蔵される。絞り182を介して、ガス状媒体の圧力は、特に軸受チャンバ142内で必要とされるような作動圧に調整される。次に、ガス状媒体は、軸受チャンバ142から、場合によっては間にある別のスルースチャンバ152を介してする0スチャンバ132に流れ、そこから軸の貫通部136を通ってガス分離要素160に流れる。スルースチャンバ132内のガス圧と違っていてもよいそこのガス圧P3は、第2の絞り163を介して調整される。上昇ライン162は、容器171に接続し、この容器内に、戻ってくる汚染したガス状媒体が集められる。ガス分離要素160内のガスが、圧力差に基づいて容器171へと上昇するために、個々の中間圧力であるガス分離要素160内のガス圧P3を容器171内のガス圧P4よりも大きく調整することが必要である。
【0041】
容器171とタンク174は、複数のガス回路の共通の要素として、同時に収集容器として利用可能である。その場合、それぞれ他のローラの軸受部に付設され、異なった深さで金属溶湯内に配設可能な複数のガス分離要素において、それぞれ容器171内の圧力よりも高い圧力P3に調整することが必要である。容器171は、清掃のためにマンホール9を有する。ガス回路は、容器171とタンク174の間の接続部によって閉鎖され、この接続部は、戻ってくるガス状媒体を清浄にするためのフィルタ172とガス状媒体をガス回尾及び回路全体に圧送するためのポンプ173を備える。場合によっては生じるガス回路内でのガスの損失は、ホットディップコーティング装置100のガスネットワーク、特に窒素ネットワーク又はリザーブタンク175から補充される。容器171内も、タンク174内も、圧力は、マノメータMによって監視可能である。
【0042】
図5は、本発明によるホットディップコーティング装置の第3の実施例を開示する。軸受144を有する軸受チャンバ142とローラボディ122の間に、スルースイチャンバ132とガス分離要素160が配設されている。スルースチャンバ132は、ダイビングベルとして形成されている。スルースチャンバ132とガス分離要素160の間の隔壁138のネック側の端部に、誘導シール137’が取り付けられている。この誘導シールは、本質的に、導通導体がローラネック124と同軸に巻かれたコイルから成る。この導通導体によって誘導される磁場は、ガス分離要素160からスルースチャンバ132への金属溶湯200の浸入を抑制する。図5の符号xは、金属溶湯の湯面を示す。誘導シールとローラネック124の間の間隙Spは、チャンバ132からガス分離要素160へのガスの通過を制限する。
【符号の説明】
【0043】
9 マンホール
17 接合部
100 ホットディップコーティング装置
102 ポスト
103 トラバース
104 垂直駆動装置
105 サポートアーム
110 容器
120 ローラ
122 ローラボディ
123 突出部
124 ローラネック
125 フランジ
130 スルース
132 スルースチャンバ
134 出口
136 環状間隙
136’ 環状間隙
137 ブッシュ
137’ 誘導シール
138 壁
139 リングシール
142 軸受チャンバ
143 軸受ケース
144 転がり軸受
146 軸受ケース
147 突出部
150 別のスルース
152 別のスルース室
154 リップシール
158 捕集容器
160 ガス分離要素
162 上昇ライン
163 第2の絞り
170 供給手段
171 容器
172 フィルタ
173 ポンプ
174 タンク
175 リザーブタンク
182 絞り
190 ガスライン
200 金属溶湯

B 湯面
K 力
M マノメータ
R ローラの軸方向
Sp 間隙
x 湯面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯(200)用の容器(110)と、金属溶湯内に浸漬された、ローラボディ(122)及びローラネック(124)を備える、金属溶湯を通過する際にストリップを転向又は安定させるためのローラ(120)と、ローラネック(124)をスルースチャンバ(132)によって包囲するスルース(130)と、金属溶湯(200)に対してスルースチャンバ(132)をシールするためにスルースチャンバ(132)内にガス圧を有するガス状媒体(N)を供給するための供給手段(170)とを有する、金属溶湯(200)でストリップのコーティングをするためのホットディップコーティング装置(100)において、
スルースチャンバ(132)を有するスルースが、金属溶湯(200)内に浸漬されていること、スルースチャンバ(132)が、通路状の出口(134)を有するダイビングベルの形態に形成されており、この出口が、金属溶湯(200)内に浸漬され、金属溶湯に対して開放していることを特徴とするホットディップコーティング装置。
【請求項2】
サポートアーム(105)内にローラネックを軸受けするためにローラネック(124)上に軸受(144)を有する軸受チャンバ(142)が設けられており、軸受チャンバ(142)が、ガス状媒体(N)に関してスルースチャンバ(132)と連絡するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホットディップコーティング装置。
【請求項3】
軸受チャンバ(142)内に、ローラネックを回転させ、これによりローラボディを回転させるための駆動装置が配設されていることを特徴とする請求項2に記載のホットディップコーティング装置。
【請求項4】
軸受チャンバが、スルースチャンバと一致するか、別々に形成されており、別々に形成されている場合は、スルースチャンバ(132)が、軸受チャンバ(142)とローラボディ(122)の間に配設されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のホットディップコーティング装置。
【請求項5】
軸受チャンバとローラボディの間にローラネック(124)を包囲する別のスルースチャンバ(12)を有する少なくとも1つのスルース(150)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のホットディップコーティング装置。
【請求項6】
別のスルースチャンバ(152)が、ガス状媒体(N)に関してスルースチャンバ(132)又は軸受チャンバ(142)又はスルースチャンバと軸受チャンバと連絡するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のホットディップコーティング装置。
【請求項7】
隣接する2つのチャンバ(132,142,152)の間に、ガス状媒体を少なくとも流れ方向に挿通可能で、反対方向に金属溶湯に対する逆止弁として機能するリップシール(154)か、ガスを通すための両チャンバの共通の壁内の開口とローラネックの外径間の環状間隙(136)が設けられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載のホットディップコーティング装置。
【請求項8】
別のスルースチャンバ(152)が、例えば環状間隙の形態の非気密性を無視すれば、金属溶湯(200)とガス状媒体(N)に対して閉鎖されており、非気密性によって場合によっては別のスルースチャンバ(152)内に侵入した金属溶湯のための捕集容器(158)を備えることを特徴とする請求項7に記載のホットディップコーティング装置。
【請求項9】
金属溶湯(200)にさらされるスルースチャンバ(132)又は別のスルースチャンバ(152)の壁(138)が、柔軟に、例えばダイヤフラムとして、形成されていること、この壁の開口のローラネック側の周縁部が、研削シール(139)として形成され、このシールが、スルースチャンバ(132)又は別のスルースチャンバ(152)内の、金属溶湯の環境圧に対して高いガス圧によって、ローラ軸に対して平行に、ローラボディ(122)又はローラネックの突出部(123)に押し付けられることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載のホットディップコーティング装置。
【請求項10】
金属溶湯(200)とスルースチャンバ(132)又は別のスルースチャンバ(152)に間の移行領域をシールするために誘導シールが設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のホットディップコーティング装置。
【請求項11】
軸受チャンバ(142)、スルースチャンバ(132)及び別のスルースチャンバ(152)の1つから金属溶湯内に流出したガス状媒体(N)を捕集するためのガス分離要素(160)が設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載のホットディップコーティング装置。
【請求項12】
ガス循環システムが設けられており、ガス分離要素(160)によって捕集されたガス状媒体(N)が、供給手段(170)を介して再びチャンバ内に返還されることを特徴とする請求項11に記載のホットディップコーティング装置。
【請求項13】
先ずガス状媒体(N)が軸受チャンバ(142)に導入され、そこで、次にガス状媒体(N)がスルースチャンバ(132)又は別のスルースチャンバ(152)内に達する前に軸受(144)に行き渡るように、ガス状媒体(N)の供給手段(170)が配設されていることを特徴とする請求項2〜12のいずれか1つに記載のホットディップコーティング装置。
【請求項14】
スルースチャンバ(132)又は別のスルースチャンバ(152)又は軸受チャンバ(142)内のガス圧をコントロールするための、特に一定に保持するための、コントロール回路が設けられており、これらチャンバの1つの内部のガス圧が、マノメータ(M)によって監視されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載のホットディップコーティング装置。
【請求項15】
金属溶湯(200)にストリップを案内するステップと、ローラ(120)によって金属溶湯内でストリップを転向又は安定させるステップと、金属溶湯(200)に対してスルースチャンバ(132)をシールするためにスルースチャンバ(132)内にガス圧を有するガス状媒体(N)を供給するステップとを有する、ローラボディ(122)とローラネック(124)を備えるローラ(120)と、ローラネック(124)をスルースチャンバ(132)によって包囲する少なくとも1つのスルース(130)を有するホットディップコーティング装置(100)を運転するための方法において、
スルースチャンバ(132)内のガス圧によって、ダイビングベルとして形成されたスルースチャンバ(132)の、金属溶湯内に浸漬された通路状の開放した出口(134)から、少なくとも部分的に金属溶湯(200)を排除することを特徴とする方法。
【請求項16】
先ずガス状媒体(N)を軸受チャンバ(142)内に案内し、そこから少なくとも1つのスルースチャンバ(132,152)内に流入させることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ガス状媒体(N)を、スルースチャンバ(152,132)の1つから金属溶湯(200)内に流出させ、そこで捕集することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
捕集したガス状媒体(N)を、軸受チャンバ(142)又はスルースチャンバ(132,152)の1つに再び供給することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つのスルースチャンバ(132)と金属溶湯(200)の間の移行領域で、スルースチャンバ内のガス圧に基づいて、シール(139)を、ローラ軸(R)に対して平行な力でローラボディ(122)又はローラネックの突出部(123)に押し付けることを特徴とする請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
下に向かって開放したスルースチャンバの亜鉛槽への均等な浸漬を保証するために、トラバース(103)が、浸漬ローラと共にリフト装置(102,104)を介して亜鉛槽に対して昇降可能であることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−518254(P2010−518254A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547615(P2009−547615)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000878
【国際公開番号】WO2008/098697
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】