説明

ストレスおよび不安を治療するための多糖類の使用

本発明は、15%〜50%の1−6グルコシド結合;20%未満の還元糖含有量、5未満の多分子指数;Mn数4500g/モル未満の平均分子量を有する多糖と、ヒトまたは動物において、ストレス、不安および抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための少なくとも1つの活性薬剤との混合物を含む組成物に関する。本発明はまた、ヒトまたは動物において、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための前記多糖の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物においてストレスおよび不安を低下させるための多糖の使用に関する。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1つの多糖と、ヒトまたは動物において、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための少なくとも1つの活性薬剤とを含有する組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
抗うつ薬は、ストレス、不安または抑うつ的で自殺的でさえある行動、睡眠障害、強迫性障害、および過食症を治療するため、および慢性疼痛またはてんかんを治療するために、一般に使用される。抗うつ薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系および四環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、および非定型抗うつ薬の4つの主要なファミリーに分類される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1006128号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの分子は、多くの場合において治療中断の原因である、それらの多数の副作用で一般に知られている。これらの副作用の中では、特に身体および胃腸症候群、睡眠障害、異常運動および行動障害、精神錯乱、四肢の震えまたは癲癇発作を引き起こすリスクが特筆すべきであろう。さらにこれらの分子は、それらが引き起こす常習癖で主に知られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの向精神薬の服用を低減させるために、または重篤性が最小の症例において、これらの服用を、依存症または副作用の大きな危険性を有さないより自然な要素で完全に置き換えるために、本発明は、少なくとも1つの多糖と、ヒトまたは動物における、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんの治療において使用し得る少なくとも1つの活性薬剤とを含んでなる組成物に関する。
【0007】
本発明はまた、ヒトまたは動物における、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんの予防または治療を意図する薬剤を調製するための前記組成物の使用にも向けたものである。
【0008】
「多糖」という一般用語は、特定数の単糖類から形成されたポリマーを意味することが意図される。これらの多糖は、同一単糖類からなるホモ多糖と、異なる単糖類から形成されるヘテロ多糖で区別される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従って使用される多糖は、
− 15〜50%、好ましくは22%〜45%、より好ましくは20〜40%、なおもより好ましくは25〜35%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満、好ましくは2〜20%、より好ましくは2.5〜15%、なおもより好ましくは3.5〜10%の還元糖含有量、
− 5未満、好ましくは1〜4、より好ましくは1.5〜3の多分散性指数、および
− 4500g/モル未満、好ましくは400〜4500g/モル、より好ましくは500〜3000g/モル、好適には700〜2800g/モル、なおもより好ましくは1000〜2600g/モルの数平均分子量Mn
を有する。
【0010】
本発明に従って使用される多糖は、水溶性である。
【0011】
それは、欧州特許第1006128号明細書に記載される方法に従って調製し得る。この特許は、特にその1−>6グルコシド結合の豊富さの観点から、標準的マルトデキストリンと異なる分枝マルトデキストリン製造について記載する。
【0012】
好ましくは、本発明に従った多糖は、任意選択により熱処理がそれに続く、酸または酵素的加水分解によって得られる化工デンプンである。典型的には、多糖は、分枝デキストリンまたは分枝マルトデキストリンである。
【0013】
本発明の目的で、「分枝マルトデキストリン」という用語は、1−>6グルコシド結合含有量が、標準マルトデキストリンを超えるマルトデキストリンを意味することが意図される。したがって標準マルトデキストリンは、グルコースと、4〜5%のみが1−>6グルコシド結合である本質的に1−>4結合されたグルコースポリマーとの、精製され濃縮された混合物と定義され、それは極めて多様な分子量を有し、完全に水溶性であり、低還元力を有する。
【0014】
標準マルトデキストリンは、デンプンの酸または酵素的加水分解によって、従来法で製造される。標準マルトデキストリンの分類は、主に、従来法でデキストロース当量(DE)の概念によって表される、それらの還元力の測定に基づく。この特定の点に関して、Food Chemicals Codex Specification Monographsにおけるマルトデキストリンの定義は、D.E.値が20を超えてはならないと規定する。
【0015】
D.E.測定は、実際の所、標準マルトデキストリンの成分グルコースおよびグルコースポリマー混合物の平均重合度(D.P.)、ひいてはそれらの数平均分子量(Mn)のおよその推量のみを与える。標準マルトデキストリンの分子量分布の特徴付けを完全なものにするために、別のパラメーターである重量平均分子量(Mw)の判定が重要である。
【0016】
実際には、MnおよびMw値は様々な技術によって測定される。既知の分子量のプルランで較正された、クロマトグラフィーカラム上のゲル透過クロマトグラフィーに基づいた、グルコースポリマーに適した測定方法が、例えば使用される。
【0017】
Mw/Mn比は多分散性指数(P.I.)と称され、高分子混合物の分子量分布の総合的特徴付けを可能にする。原則として、標準マルトデキストリンの分子量分布は、5〜10のI.P.値をもたらす。
【0018】
欧州特許第1006128号明細書は、
a.5%よりも低く、好適には4%以下の水分含量を示す脱水酸性化デンプンを調製するステップと、
b.このように脱水された酸性化デンプンを薄層タイプの反応装置内において120〜300℃、好適には150〜200℃の温度で加工するステップと、
c.このようにして得られた分枝デンプン誘導体を収集し、精製して、好適には濃縮するステップと、
d.分枝マルトデキストリンを得るようなやり方で、前記分枝デンプン誘導体をそれらの数平均分子量によって分子分画するステップ
を実施することで得られる、本発明に従った分枝マルトデキストリンについて記載する。
【0019】
一変法によれば、前記多糖は1000〜6000g/モル、好ましくは1500〜5000g/モル、およびより好ましくは3000〜5000g/モルの分子量Mwを有する。
【0020】
本発明の一態様に従って、前記活性薬剤は、抗うつ薬である。有利には、抗うつ薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系および四環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、非定型抗うつ薬、およびそれらの混合物から選択される。
【0021】
適切な活性薬剤の中で、ベンゾジアゼピンまたはセロトニン再取り込み阻害薬クラスの抗うつ薬が望ましい。
【0022】
これらの組成物は、ヒトをはじめとする哺乳類への投与のために調合し得る。投与量は、療法に応じて、および問題の疾患に応じて変動する。これらの組成物は、消化管、特に舌下、経口または直腸投与によって投与されるように調製される。混合物は、動物またはヒトに、従来の医薬担体との混合物として、投与単位形態で投与し得る。
【0023】
適切な投与単位形態としては、錠剤、ジェルカプセル、粉末、顆粒および経口溶液または懸濁液、またはシロップなどの経口投与形態、または坐薬などの直腸投与形態が挙げられる。
【0024】
シロップまたはエリキシル剤形態の製剤は、甘味料、防腐剤、ならびに着香料と適切な着色剤と共に、活性薬剤と組み合わせられた、少なくとも1つの多糖を含有し得る。
【0025】
水分散性粉末または顆粒は、活性成分との混合物として、少なくとも1つの本発明に従った多糖を含有し得る。それはさらに、分散剤、湿潤剤、懸濁剤、フレーバー増強剤または甘味料などの様々な薬剤を単独で、または混合物として含有し得る。これらの粉末は本発明に従った混合物の噴霧または製粉によって得られ、顆粒は乾式または湿式造粒または共噴霧によって得られる。
【0026】
錠剤形態の調製には、本発明に従った混合物の放出を制御するためのコーティングステップが任意選択により続き得る。
【0027】
本発明に従って使用される多糖は、単独で、または少なくとも1つの他の活性薬剤との併用で、治療法において用い得る。この他の活性薬剤は、不安、睡眠障害、およびてんかんを治療するのに適した活性薬剤、または本発明に従った混合物の活性を改善するアジュバント、さもなければ前記疾患の治療におけるそれらの使用が知られている他の活性薬剤から、特に選択される。このような活性薬剤は当業者に良く知られており、市販され、さもなければ参考文献に記載されている。
【0028】
本発明はまた、
ヒトまたは動物における、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんの治療を意図する薬剤を調製するための、
− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量、
− 5未満の多分散性指数、
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する多糖の使用にも関する。
【0029】
不安またはストレスの治療において多糖を使用することで、常習癖などの副作用なしに、天然起源の分子を使用できるようになる。
【0030】
本発明は、
− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量、
− 5未満の多分散性指数、および
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する多糖が、単独で使用され、またはヒトまたは動物においてストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための少なくとも1つの活性薬剤との混合物として使用されることを特徴とする、ヒトまたは動物における、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんの治療および/または予防を意図する薬剤を製造する方法に向けたものである。
【0031】
多糖は、一般に、1日分1〜100g、好ましくは5g〜50g、なおもより好ましくは8〜40gで投与される。
【0032】
本発明はまた、ヒトまたは動物において、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための有効量の少なくとも1つの活性薬剤と、下で定義される有効量の少なくとも1つの多糖とを500〜104、好適には300〜105、なおもより好ましくは200〜106の多糖/活性薬剤比で含有する医薬組成物にも関する。
【0033】
活性薬剤と前記多糖との併用により、ストレスまたは不安の症状に対する混合物の作用を低下させることなく、より少量の活性薬剤を使用できるようになる。この混合物は、治療が徐々に休止される過程で、または薬物療法の利益が患者に対する常習癖の危険性と比較して小さすぎる場合に、想定され得る。
【0034】
本発明の一実施形態は、
a)上で定義される多糖を含んでなる第1の組成物と、
b)ヒトまたは動物においてストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための活性薬剤を含んでなる第2の組成物と
を含んでなる、ヒトまたは動物の治療的または予防的処置のためのキットに関する。
【0035】
本発明はまた、
− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量、
− 5未満の多分散性指数、
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する有効量の多糖と、
ヒトまたは動物において、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための薬理学的に許容可能なビヒクルと
を含んでなる薬剤にも関する。
【0036】
有利には、本発明に従った医薬組成物は、適切な薬学的ビヒクルもまた含んでなる。
【0037】
典型的には、本発明は、
− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量、
− 5未満の多分散性指数、および
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する薬学的有効量の多糖を、それを必要とする患者に投与するステップを含んでなる、ヒトまたは動物において、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療および/または予防する方法に向けたものであり、
前記多糖は単独で投与されるか、またはヒトまたは動物において、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための少なくとも1つの活性薬剤との混合物として投与される。
【0038】
本発明の別の態様に従って、それはまた、タンパク質または炭水化物性の食品等級担体と組み合わされた、本発明に従った有効量の多糖を含有する、特に不安、睡眠障害、およびてんかん易発性の個人の食餌を栄養補給するのに適した、栄養補助食品にも関する。
【0039】
本発明をここで、ウィスター系ラットにおける薬理行動研究に基づいて、下文の実施例でより詳細に記載する。
【実施例】
【0040】
実施例1:
オスのウィスター系ラットにおける機能観察総合評価(FOB)において、14日間にわたり0.7および1.4g/kg用量で経口的に投与されたオリゴ糖類の効果を評価した。このFOB試験の目的は、試験製品に応じた、ラットの行動、神経学的、および生理学的パラメーターの変化を評価することである。
【0041】
このために、14日間にわたり毎日これらの2種の用量(試験群当たり6匹のラット)で、表1に記載の多糖(PS1)を食道経管栄養法によって投与する。同様に、天然水からなるビヒクル対照をこれらの条件下で投与する。参照陽性対照はジアゼパムであり、D0〜D13にかけてメチルセルロースがラットに投与され、D14にジアゼパムもまた3mg/kg体重で投与される。
【0042】
【表1】

【0043】
処置前のD0および研究終了時のD14に、動物に対して機能観察総合評価を実施する。
【0044】
各試験は、3つの観察相を含む。
− 動物を動揺させない直接観察相、
− 動物に手を触れる能動的観察相、
− 反応性試験に対する動物の反応の評価に専念する相。
【0045】
いくつかの変数が記録される。
− 行動的影響:自発的な歩行活動、運動行動障害、情動性(発声頻度)、接触逃避反応、過敏、誘発攻撃性および凍結挙動、睡眠/覚醒、排尿および脱糞、感覚運動応答(視覚性置き直し、つまさき挟み、および音刺激反応)。
− 神経学的影響:瞳孔反応、眼瞼反射、骨盤の高さ、尾の位置、四肢および腹部筋緊張、立ち直り試験、握力試験、懸垂試験、振戦、および立毛。
− 生理学的影響:流涎、流涙、下痢、直腸温度、心拍および呼吸数。
【0046】
結果は、最初の処置前には、1回目のFOBにおいて有意差が実証されないことを示す。
【0047】
製品の14日間の投与後には、様々な試験群のラット間で有意差が観察される。
【0048】
【表2】

【0049】
スコアの定義:
− 自発的活動:0=興奮状態;1〜3=中程度に迅速な動き;4:活動性なし
− 指接近反応:0=なし;1〜3=わずか〜強い逃避
− 呼吸数:0=遅い;1=正常;2=早い
− 音刺激驚愕反応:0=わずか;1=<1cm;2=>1cm
【0050】
D14のビヒクルとの比較において:
− 自発的活動:マンホイットニー検定は、参照群のラットは活動性が有意により低い傾向がある一方、PS1 0.7g/kg群およびPS1 1.4g/kg群のラットは活動性が有意により高い傾向があることを示す。PS1群では、ラットはそれらの環境に対してより高い興味を示す。
− 指接近反応:マンホイットニー検定は、参照群およびPS1 0.7g/kg群およびPS1 1.4g/kg群のラットが、指接近に対する反応性が有意により低いことを示す。さらにこれらのラットはより落ち着いており、不安が軽減している。
− 呼吸数:マンホイットニー検定は、参照群およびPS1 1.4g/kg群のラットが、有意により遅い呼吸数、そしてまた心拍数も呈することを示す。PS1群では、ラットはより落ち着いている。
− 音刺激驚愕反応:マンホイットニー検定は、全群のラットが有意により低い程度の驚愕を呈することを示す。PS1群のラットはより落ち着いている。
【0051】
D14の参照との比較において:
− 自発的活動:マンホイットニー検定は、PS1 0.7g/kg群およびPS1 1.4g/kg群のラットが、活動性が有意により高いことを示す。
− 指接近反応:マンホイットニー検定は、いかなる差違も示さない。
− 呼吸数:マンホイットニー検定は、いかなる差違も示さない。
− 音刺激驚愕反応:マンホイットニー検定は、いかなる差違も示さない。
【0052】
結論として、研究されたパラメーターのセットは、2種の用量で、PS1で処置された群のラットが、14日間の処置の後に、不安が軽減しており、より好奇心が高かったことを示す。
【0053】
さらにいくつかの判定基準では、PS1多糖による処置は、ジアゼパムによる処置と同一効果を示す。
【0054】
実施例2
オスのウィスター系ラットで立ち直り試験において、11日間にわたり経口的投与されるPS1多糖の抗ストレス効果を評価した。
【0055】
このために、11日間にわたり毎日0.7、1.4、および2.8g/kg体重の用量(試験群当たり16匹のラット)で、PS1を食道経管栄養法によって投与する。同様に、天然水によって代表されるビヒクル対照をこれらの条件下で投与する。
【0056】
D1〜D11にかけて、ラットに毎日立ち直り試験を実施する。この試験は、ラットを仰向けに手のひらに載せて、ラットが姿勢を立て直す速度を評価することからなる。緩慢な立ち直りの百分率は、D1〜D11の処置期間にかけて、0=迅速な立ち直り、または1=緩慢な立ち直りのスコアを当てはめてから、ラット群毎に計算される。
【0057】
得られた結果を下の表に示す。それらは、D1〜D11の間により緩慢な立ち直りを見せたラット数の%として表される。
【0058】
【表3】

【0059】
時間と共に、動物が慣れていく現象がある。ビヒクル対照群(水)では、姿勢をゆっくりと立ち直すラットの百分率は0%から17%になる。他方、この百分率はPS1 0.7g群およびPS1 1.4g群では倍増し、およそ36〜41%に達する。したがって動物は、この姿勢に置かれることに、より少ないストレスを感じている。
【0060】
実施例3
条件性防御性覆い隠し(CDB)試験条件で、オスのウィスター系ラットにおいて、14日間にわたって経口的に投与されるPS1多糖の抗ストレス効果を評価した。
【0061】
このために、14日間にわたり毎日0.7、1.4、および2.8g/kg体重の用量(試験群当たり8匹のラット)で、PS1を食道経管栄養法によって投与する。同様に、天然水によって代表されるビヒクル対照を同一条件下で投与する。参照陽性対照はジアゼパムであり、D0〜D13にかけてメチルセルロースがラットに投与され、D14にはジアゼパムが1mg/kgまたは3mg/kg体重でラットに投与される。PS1とジアゼパムとの混合物もまた試験され、14日間にわたりPS1が単独で投与され、D14にジアゼパムが1mg/kgで、PS1の食道経管栄養に添加される。
【0062】
D14に、条件性防御性覆い隠し(CDB)試験をラットに実施する。このために、試験開始前にケージ内に電気プローブを挿入する。各ラットをプローブの反対側の実験的装置内に入れ、動物がプローブ上に初めて前脚を載せた瞬間に、低強度(2mA)の単回電気刺激を動物に送達する。この刺激に続いて、ラットの行動を5分間にわたって記録し、総合ストレススコアを各ラットに割り当てる。ストレスが大きいほど、スコアは高くなる。
【0063】
得られた結果を下の表に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
− 統計学的結果は、3mg/kgジアゼパム群および2.8g/kg PS1+1mg/kgジアゼパム群のラットの総合ストレススコアが、ビヒクル群よりも有意に低いことを示す。
− PS1 1.4g/kg群および1mg/kgジアゼパム群のスコアは、ビヒクル群よりも低い傾向がある。
− PS1 0.7g/kg群およびPS1 2.8g/kg群のスコアはより低いが、これらの2群では、スコアはビヒクル群と有意には異ならない。
【0066】
以下のように結論づけることができる。
− PS1 1.4g/kgの中間用量は、ストレススコアに関して興味深い結果を与える。
− PS1群とジアゼパム群で観察された効果は、有意に一致する。
− 個別には、ジアゼパム1mg/kg群およびPS1 2.8g/kg群は、スコアはそれぞれ92および107である。これらの2つの製品が併用されると、総合スコアは75に低下する。PS1はジアゼパムの効果を増強する。この相乗作用によって、投与されるジアゼパム用量を制限し、その副作用を制限することが可能になる。PS1の摂取は、薬剤効果の最適化を助ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの多糖と、ヒトまたは動物においてストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための少なくとも1つの活性薬剤とを含んでなる組成物であって、前記多糖が、
− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量、
− 5未満の多分散性指数、および
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する、組成物。
【請求項2】
前記多糖が、
− 20%〜40%の1−6グルコシド結合、
− 2〜20%の還元糖含有量、
− 1〜4の多分散性指数、および
− 500〜3000g/モルの数平均分子量Mn
を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多糖が1000〜6000g/モル、好ましくは1500〜5000g/モル、より好ましくは3000〜5000g/モルの分子量Mwを有することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの活性薬剤が抗うつ薬であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記活性薬剤が、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系および四環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)、非定型抗うつ薬、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
舌下、経口または直腸投与形態であることを特徴とする、請求項1〜5ののいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
錠剤、ジェルカプセル、粉末、顆粒、経口溶液または懸濁液、エマルション、シロップまたは坐薬の形態であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量、
− 5未満の多分散性指数、
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する有効量の多糖と、
ヒトまたは動物においてストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための薬理学的に許容可能なビヒクルと
を含んでなる薬剤。
【請求項9】
ヒトまたは動物におけるストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんの治療を意図する薬剤を調製するための、
− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量、
− 5未満の多分散性指数、および
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する少なくとも1つの多糖の使用。
【請求項10】
ヒトまたは動物におけるストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんの治療を意図する薬剤を製造するための、
− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量,
− 5未満の多分散性指数、および
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する少なくとも1つの多糖と、
ヒトまたは動物において、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための少なくとも1つの活性薬剤との使用。
【請求項11】
a)− 15〜50%の1−6グルコシド結合、
− 20%未満の還元糖含有量、
− 5未満の多分散性指数、
− 4500g/モル未満の数平均分子量Mn
を有する多糖を含んでなる第1の組成物と、
b)ヒトまたは動物において、ストレス、不安または抑うつ性行動、睡眠障害、強迫性障害、過食症、およびてんかんを治療するための活性薬剤を含んでなる第2の組成物と
を含んでなる、ヒトまたは動物の治療的または予防的処置のためのキット。

【公表番号】特表2013−515708(P2013−515708A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545405(P2012−545405)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052911
【国際公開番号】WO2011/077063
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】