説明

ストレスにさらされている生細胞とさらされていない生細胞とを用いた少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化の同定法

【課題】本発明は、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)若い生細胞について
b)加齢した生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、細胞の加齢により更に変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にする方法に実質的に関する。
本発明は、活性源をスクリーニングするために上記方法を使用することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)若い生細胞について
b)加齢した生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、細胞の加齢により変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にする方法に実質的に関する。
【0002】
本発明は更に、加齢する間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法、又は、加齢する間に変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターの変化を防止することに関する。
【0003】
本発明は更に、少なくとも1つの化粧組成物及び/又は医薬組成物を調製するための、上記の方法により選択される活性物質の使用に関する。
【0004】
本発明は更に、上記の方法により選択される、化粧品又は薬学の分野における活性物質に関する。
【0005】
「若い」細胞と呼ばれる細胞は、若いドナー由来の生検材料に由来する細胞、in vitro経代培養の回数が比較的少なくあまり増殖していない細胞、又は、太陽放射にあまりさらされていない生検材料(胴体、胸部、腹部、包皮等)に由来する細胞のいずれかであり、また、「加齢した」細胞と呼ばれる細胞は、加齢したドナー由来の生検材料に由来する細胞、in vitro経代培養を受けた回数が多い細胞、又は、太陽にさらされている部位(首、手、顔等)から採取した生検材料に由来する細胞のいずれかである。
【0006】
上記で行った細胞モデルの様々なゲノム解析及びプロテオーム解析の手法による解析によって、上記で明らかにされた加齢の影響を調節するために、潜在的で治療に役立つターゲットを明らかにしたり、化粧品又は医薬品における活性源を選定したりすることができる。上記活性源を含む化粧又は医薬の製剤の影響は、上記の細胞モデルを用いて評価することも可能である。
【背景技術】
【0007】
細胞増殖、細胞分化及び細胞死等の細胞の機能は全て、非常に多くの遺伝子と細胞シグナル経路によって制御されている。健康若しくは異常ドナー由来又は細胞系由来の、通常は繊維芽細胞又はケラチノサイトの単層細胞培養におけるin vitroで得られた結果を調べると、生検において得られる結果と常に完全に適合するというわけではない。
【0008】
実際、細胞増殖及び代謝性合成の制御は、単層細胞モデルと生検材料又はこれを非常に忠実に表現した三次元細胞モデルとの間で全く異なっている。同様に、三次元多細胞モデルにおいて、細胞間の制御機構が明らかにされた。これらは、細胞種間の相互関係、又は、例えば繊維芽細胞によるケラチノサイトの制御及びその逆も同様に可能にするといったような拡散因子の存在(Saintigny G.、Bonnard M.、Damour O.、Colombel C.Acta Derm Venerol(Stockh)(1993)73:175−180、及び、Lacroix M.、Bovy T.、Nusgens B.V.、Lapiere C.M.Arch Dermatol Res(1995)287:659−664)、又は、より複雑な免疫担当再構成皮膚モデルにおける樹状細胞前駆体の内皮細胞及びマクロファージへの分化(A.Black:ヒト再構成皮膚モデルの構造成熟と力学(“Structure maturation and dynamics of a model of human reconstructed skin”)(“Structure maturation et dynamique d’un modele de peau reconstruite humaine”);Thesis 82/2000 UCBL1,France)のいずれかによるものである。
【0009】
また、タンパク質の発現及び合成に関するデータが例えば生理学的加齢又は光誘導性加齢と相関のあるものとして見出せるというわけでは必ずしもなく、これらのデータと実験用単純モデルでのin vivoの結果とは時々矛盾していることが明らかとなることがある。
【0010】
二次元電気泳動、タンパク質「アレイ」及びDNA「アレイ」等のプロテオーム解析又はゲノム解析に由来する技術が出現したことにより、現在では実際、複数のパラメーターを非常に高い感度で検出でき、かつ、その結果、小さな生体試料からの遺伝子発現やタンパク質合成が多岐にわたることを明らかにすることが可能である。
【0011】
上記の技術は今まで、ヒト血清、又は、単層ヒト細胞によるならし培地等の様々な種類の生体試料について(Huang R.P.、Huang R.、Fan Y.、Lin Y.、Analytical Biochemistry(2001)294:55−62)、又は、様々な種類の細胞、並びに、例えば繊維芽細胞及びケラチノサイトの単層培養において(Gutsmann−Conrad A.、Heydari A.R.、You S.、Richardson A.、Exp.Cell Res.(1998)241(2):404−413)用いられている。同様に、単層培養した様々な年齢のドナー由来のケラチノサイトについて(Compton C.、Tong T.、Trookman N.、Zhao H.、Roy D.、J.Invest.Dermatol.(1994)103(1):127−133)、又は、単層培養した様々な年齢のドナー由来の繊維芽細胞について(Reed M.J.、Ferara N.S.、Vernon R.B.、「加齢と発達の機構(Mechanisms of aging and development)」(2001)122(11):1203−1220)、又は、in vitroで加齢した繊維芽細胞について(Nishio K.、Inoue A.、Qiao H.K.、Mimura A.、Histochem Cell Biol(2001)116:321−327)実験が行われた。
【0012】
単層培養した正常若しくは悪性のヒトメラノサイト(腫瘍組織から抽出した細胞系又はメラノサイト)に対する紫外線によるストレスの調節作用に関する研究を可能にした実験もある(Valery C.、Grob J.J.、Verrando P.、J.Invest.Dermatol.(2001)117:1471−1482)。
【0013】
分析技術の発展と同時に、非常に多くの表皮モデル(ロレアルのEP 0 789 074 A1)又は再構成上皮モデル(Schmalz G.Schweikl H.、Hiller K.A.、Eur.J.Oral Sci.(2000)108:442−448)、及び、再構成粘膜、再構成皮膚又は色素細胞を含む再構成皮膚及び/若しくは免疫担当再構成皮膚のモデルが作られた(CNRSのEP 0 296 78)。上記モデルは、薬物毒性学的な評価並びに医薬及び化粧品成分の有効性研究に今日非常に広く用いられている。しかし、分析方法としては基本的に、組織学を画像解析と組み合わせた方法、すなわち、電気泳動分析、ウェスタンブロット、ノーザンブロット又はRT−PCR等によって代謝性合成及び制御を調べる方法が用いられる。タンパク質アレイの技術、及び、DNAアレイの技術、又は、特に複合サイトカイン決定(combined determinations of cytokines)の技術は、上記モデルにおいて用いられていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は主として、細胞の加齢におけるin vivoでの状況を反映するため、細胞の代謝を研究するモデルを提供して、技術的な問題を当初の予想に反して解決することを目的とする。
【0015】
本発明は、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)若い生細胞について
b)加齢した生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、細胞の加齢に対して更に変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にすることを特徴とする方法を提供するという新規の技術的な問題を解決することを目的とする。
【0016】
本発明は、細胞モデルを比較してそのゲノム及びタンパク質の特徴を研究することを目的とする。
【0017】
上記の比較は、一方では以下のモデル:
1)再構成上皮(再構成表皮を含む)、色素細胞を含む及び/又は免疫担当性の、再構成上皮、結合性マトリックス(絨毛膜、真皮を含む)、再構成皮膚又は粘膜、色素細胞を含む及び/又は免疫担当性の再構成皮膚又は粘膜、色素細胞を含む及び/又は免疫担当性の及び/又は内皮化した及び/又はマクロファージを含有する、再構成皮膚又は粘膜、生検材料
もう一方では、以下のモデル:
2)単層又は懸濁状態で培養した、上記のモデル又は上記の様々なモデルを作っている細胞
から選択されるモデルの間で行い、
上記の比較は以下の若い細胞と加齢細胞:
・「若い細胞」と呼ばれる細胞、すなわち、若いドナー由来の生検材料から抽出した細胞、in vitroであまり増幅されていない細胞、又は、太陽にさらされていない部位の体(胴体、胸部、腹部、包皮等)由来の生検材料から抽出した細胞
・「加齢細胞」と呼ばれる細胞、すなわち、加齢したドナー由来の生検材料から抽出した細胞、in vitroで何度も増幅された細胞、又は、太陽にさらされる部位の体(首、顔、手等)由来の生検材料から抽出した細胞
の間で行う。
【0018】
上記のようにプロテオーム解析又はゲノム解析により比較することによって、生理学的又は光誘導的に加齢する間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換したり又はその変化を防止したりするために行動目標を定めることができる。
【0019】
本発明はまた、活性源、特に化粧品又は医薬品における活性源がゲノム、トランスクリプトーム又はプロテオームの特徴に与える影響を評価するために、上述の組織モデルを用いることができるという解決策を提供することもまた目的とする。
【0020】
本発明はまた、活性源を含有する又は含有しない製剤、特に活性源を含有する又は含有しない化粧又は医薬の製剤が、ゲノム又はプロテオームの特徴に与える影響を評価するためには、上述の組織モデルを用いることができるという解決策を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上述の技術的な問題を解決することを可能にするものである。
【0022】
本発明の記述において本発明者らによれば、「ゲノム解析」は、生物体の遺伝子全体の機能を研究するために、少なくともその一部分の配列表を作成して研究する行為を意味するものである。
【0023】
本発明者らによれば、「トランスクリプトーム解析」は、ゲノムから転写されたRNA全体のうち少なくともその一部分の配列表を作成して研究する行為を意味するものである。
【0024】
本発明者らによれば、「プロテオーム解析」は、発現したタンパク質のうち少なくともその一部分の配列表を作成して研究する行為を意味するものである。
【0025】
本発明は主として、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)若い生細胞について
b)加齢した生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、細胞の加齢に対して更に変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にすることを特徴とする方法を提供するものである。
【0026】
「若い細胞」は、若いドナー由来の生検材料に由来する細胞、in vitro経代培養の回数が比較的少なくあまり増殖していない細胞、又は、太陽放射にあまりさらされていない生検材料(胴体、胸部、腹部、包皮等)由来の細胞のいずれかである。
【0027】
また、「加齢細胞」は、加齢したドナー由来の生検材料に由来する細胞、in vitro経代培養を受けた回数が多い細胞、又は、太陽にさらされている部位(首、手、顔等)から採取した生検材料に由来する細胞のいずれかである。
【0028】
本発明者らによれば、経代培養は、トリプシン処理(trypsination)によって増幅する行為を意味するものである。
【0029】
上記組織細胞モデルは、特に生体組織を再構成する目的で生細胞を播種することができる組織モデルとして定められ、三次元モデルとも呼ばれる。上記組織モデルは特に、皮膚の場合は真皮、粘膜の場合は絨毛膜と呼ばれる、主として間質細胞を含んだ結合性マトリックスのモデル、主として上皮細胞から構成される上皮モデル、主としてケラチノサイトから構成される表皮モデル、表皮及び真皮から構成される皮膚モデル、上皮及び絨毛膜から構成される粘膜モデル、生存状態を保った生検材料(又は外植片)のモデル、及び、上述のモデルに存在する細胞を用いた単層又は懸濁状態のモデルとなることができるものとして定められる。
【0030】
上記モデルにおいては、正常、健康若しくは異常細胞、又は、細胞系由来の細胞を用いることができ、上記細胞はヒト又は動物由来のものを使用することができる。
【0031】
上記特徴のうち後半のものの別の形によれば、結合性マトリックス(真皮又は絨毛膜)の三次元培養モデルは、再構成真皮又は再構成絨毛膜を作るために間質細胞を播種した担体を含む。
【0032】
上記表皮又は上皮の三次元培養モデルは、再構成上皮又は表皮を得るために、あらかじめ間質細胞、特に繊維芽細胞を播種し、その後上皮細胞、及び、特にケラチノサイトを播種した担体、又は、何も播種していない担体を含む。
【0033】
上記再構成皮膚又は粘膜の三次元培養モデルは、再構成粘膜を得るために上皮細胞を、又は、再構成皮膚を得るためにケラチノサイトを播種した(真皮又は絨毛膜の)マトリックス担体を含む。
【0034】
別の形によれば、用いられる上記三次元培養モデルは更に少なくとも1種の細胞、例えば、内皮細胞(EC)、及び/又は、リンパ球、及び/又は、脂肪細胞、及び/又は、間質性樹状細胞、及び/又は、体毛、髪、皮脂腺細胞等の皮膚の付属器といった種類の細胞が少なくとも1種更に組み込まれたモデルを含む。
【0035】
有利には、色素細胞、免疫担当細胞(ランゲルハンス細胞)、神経細胞等は上皮部分に加えて導入することができる。
【0036】
種類の異なる抽出した細胞(繊維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト)は、別々に増幅し、別々に使用したり、三次元モデルを再構成するため、及び、単層又は懸濁状態で培養するために複数のドナーから貯蔵したりすることができる。
【0037】
別の形によれば、上記樹状細胞前駆体(間質性樹状細胞)は、任意に異なっていてもよく、上記少なくとも上皮細胞及び間質細胞を含む三次元条件で樹状細胞前駆体を培養する際、内皮細胞及びマクロファージ等の少なくとも2種の追加的な細胞の起点となることが可能である。
【0038】
上記で定めた組織モデルは、ゲノム解析、トランスプリクトーム解析及び/又はプロテオーム解析を行うために培養の最後に使用する。特に上記解析によって、生理学的又は光誘導的に加齢する間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換又は防止するために可能性のある目標を選定、同定及び特徴付けすることができる。
【0039】
上記可能性のある目標とは、本発明を実行することにより同定される、変換される生物学的パラメーター、又は、防止される変化である。
【0040】
上記目標を定めた後、上記モデル及び検出方法と同様のものを用いて、化粧品又は医薬品における活性源をスクリーニングすることができ、また、上記活性物質を含む、又は、含まない、化粧又は医薬の製剤の有効性を証明することができる。
【0041】
上記で用いられる解析方法の中で、以下のものが特に挙げられる。
−プロテオームの特徴の解析方法:二次元電気泳動、タンパク質アレイ、サイトカインアレイ及び/又は複合ELISA法
−ゲノムの特徴の解析方法:DNAアレイ、ポリメラーゼ多重連鎖反応(PCR−multiplex)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び/又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)
−トランスクリプトームの特徴の解析方法:RNAアレイ、cDNAアレイ、逆転写多重ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR−multiplex)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)及び/又はリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
第一の態様によると、本発明は、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)若い生細胞について
b)加齢した生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、細胞の加齢に対して更に変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にする方法に関する。
【0043】
有利には、上記若い細胞及び加齢細胞は共に三次元組織モデルにおいて用いられる。
【0044】
有利には、細胞が加齢する間に変化が生じる上記生物学的パラメーターは若い細胞の代謝と加齢細胞の代謝の間の差のうちの少なくとも1つによって定められる。
【0045】
有利には、上記a)段階の若い細胞は、若いドナー由来の生検材料に由来する細胞、有利には40〜45才未満の若いドナー由来の生検材料に由来する細胞、in vitro経代培養の回数が比較的少なくあまり増殖していない細胞、又は、太陽放射にあまりさらされていない生検材料(例えば胴体、胸部、腹部、包皮等)に由来する細胞のいずれかである。
【0046】
有利には、上記b)段階の加齢細胞は、加齢したドナー由来の生検材料に由来する細胞、有利には40〜45才を超える加齢したドナー由来の生検材料に由来する細胞、in vitro経代培養を受けた回数が多い細胞、又は、太陽にさらされている部位(例えば手、顔、首、襟首等)から採取した生検材料に由来する細胞のいずれかである。
【0047】
有利には、上記b)段階の加齢細胞は、長期間に、有利には1か月以上、より有利には2か月以上の長期間に渉って培養することにより人為的に加齢させた1種以上の細胞を含む三次元組織モデルにおいて統合された若い細胞である。
【0048】
有利には、上記若い細胞又は加齢細胞は少なくとも一体のヒト又は少なくとも一体の動物由来の細胞である。
【0049】
有利には、上記検討は以下の解析方法:
−プロテオームの特徴の解析方法:二次元電気泳動、タンパク質アレイ、サイトカインアレイ及び/又は複合ELISA法
−ゲノムの特徴の解析方法:DNAアレイ、ポリメラーゼ多重連鎖反応(PCR−multiplex)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び/又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)
−トランスクリプトームの特徴の解析方法:RNAアレイ、cDNAアレイ、逆転写多重ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR−multiplex)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)及び/又はリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)
から選択される少なくとも1つの解析を含む。
【0050】
有利には、上記組織モデルは細胞の代謝を少なくとも部分的に維持している条件下で培養及び/又は保存される。
【0051】
有利には、上記組織モデルは少なくとも繊維芽細胞又はケラチノサイトを含む。
【0052】
有利には、上記モデルは、正常、健康若しくは異常細胞、又は、細胞系由来の細胞を含み、上記細胞は好ましくはヒト又は動物由来のものである。
【0053】
有利には、上記組織モデルは以下のモデル:
皮膚の場合は真皮、粘膜の場合は絨毛膜と呼ばれる、主として間質細胞を含む結合性マトリックスモデル、主として上皮細胞から構成される上皮モデル、主としてケラチノサイトから構成される表皮モデル、表皮及び真皮から構成される皮膚モデル、上皮及び絨毛膜から構成される粘膜モデル
から選択される。
【0054】
有利には、上記組織モデルは好ましくは以下のマトリックス担体:
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロン(登録商標)膜若しくはテフロン(登録商標)スポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、Anopore無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CM半透膜、ポリエステル半透膜又はポリグリコール酸の膜若しくは薄膜からなる群より選択される不活性な担体(上記群において、例えば、真皮モデルであるSkin2TMmodel ZK1100、Dermagraft(R)及びTranscyte(R)(Advanced Tissue Sciences)が挙げられる)
−細胞培養処理した樹脂(葉状真皮(a dermal leaf)の構造:Michel M.ら、In Vitro Cell.Dev Biol.−Animal(1999)35:318−326)
−ヒアルロン酸(Hyalograft(R) 3D−Fidia advanced Biopolymers)及び/又はコラーゲン及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とするゲル又は膜(上記群において、例えば、真皮モデルであるVitrix(R)(オルガノジェネシス)が挙げられる)
より選択されるマトリックス担体を含み、多孔性マトリックスは浮上している又は浮上していないもので、1つ以上のグリコサミノグリカン類及び/又は最終的にはキトサン(CNRSのEP0296078 A1、ColeticaのWO01/911821及びWO01/92322)を含むことが可能であるコラーゲンから作られる結合性マトリックス(真皮又は絨毛膜)の組織モデルである。
【0055】
上記群において、例えば、真皮モデルであるMimederm(R)(Coletica)が挙げられる。
【0056】
上記マトリックス担体は間質細胞、特に繊維芽細胞を含む。
【0057】
有利には、上記組織モデルは好ましくは以下のマトリックス担体:
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロン(登録商標)膜若しくはテフロン(登録商標)スポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、Anopore無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CM半透膜又はポリエステル半透膜からなる群より選択される不活性な担体(上記群において、再構成表皮及び上皮のモデル(Skinethic(R))、並びに、EpiDerm(R)、EpiAirway(R)、EpiOccular(R)(Mattek Corporation)といったモデルが挙げられる)
−ヒアルロン酸及び/又はコラーゲン及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とする薄膜又は膜(上記群において、特に、Laserskin(R)(Fidia advanced Biopolymers)、Episkin(R)(ロレアル)といったモデルが挙げられる)
より選択されるマトリックス担体を含む表皮組織モデル又は上皮組織モデルである。
【0058】
上記モデルは、間質細胞、特に繊維芽細胞を播種し、その後上皮細胞、及び、特にケラチノサイトを播種するものである。
【0059】
有利には、上記上皮部分に上皮細胞、色素細胞、免疫担当細胞及び神経細胞が更に導入され、上記免疫担当細胞は好ましくはランゲルハンス細胞である。
【0060】
有利には、上記組織モデルは好ましくは以下のマトリックス担体:
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロン(登録商標)膜若しくはテフロン(登録商標)スポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、Anopore無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CM半透膜又はポリエステル半透膜からなる群より選択される不活性な担体(上記不活性な担体は間質細胞、特に繊維芽細胞を含む)
−間質細胞、特に繊維芽細胞を含む、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とするゲル
−1つ以上のグリコサミノグリカン類及び/又は最終的にはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる、浮上している又は浮上していない多孔性マトリックス(上記多孔性マトリックスは間質細胞、特に繊維芽細胞を統合したものである)
−ヒト又は動物の、上皮を剥がした真皮又は死んだ真皮
より選択される真皮の又は絨毛膜のマトリックス担体を含む再構成皮膚又は粘膜の組織モデルである。
【0061】
上記群において、Mimeskin(R)(Coletica)、Apligraf(R)(オルガノジェネシス)、ATS−2000(CellSystems(R) Biotechnologie Vertrieb)、特にはSkin2TM(ZK1200−1300−2000、Advanced Tissue Science)といったモデルを挙げることができる。
【0062】
更に、上記研究課題にもなり得る組織治療に使用できるモデルも確かに存在する。上記モデルとしては、EpidexTM(Modex Therapeutiques)、Epibase(R)(Laboratoire Genevrier)、EpicellTM(ジェンザイム)、AutodermTM及びTransdermTM(イノジェネティックス)を挙げることができる。
【0063】
上記マトリックス担体はその後、再構成粘膜を得るために上皮細胞を、又は、再構成皮膚を得るためにケラチノサイトを播種される。
【0064】
有利には、用いられる上記組織モデルは更に少なくとも1種の細胞、好ましくは、内皮細胞(EC)、及び/又は、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞等の免疫細胞、及び/又は、脂肪細胞、及び/又は、体毛、髪、皮脂腺細胞等の皮膚の付属器といった種類の細胞が少なくとも1種更に組み込まれたモデルを含む。
【0065】
第二の態様によると、本発明は、上記のように加齢する間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つスクリーニングする上記の方法の使用に関する。
【0066】
有利には、上記のように加齢する間に変化が生じる生物学的パラメーターの少なくとも1つを変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つスクリーニングする方法は、
A/上記潜在的活性物質を、上記潜在的活性物質を作用させるのに十分な時間、上記細胞モデル又は組織モデルに播種した上記加齢細胞と接触させて配置すること
B/上記細胞モデル又は組織モデルに播種した上記若い細胞
C/上記加齢細胞における細胞の代謝に対する上記物質の作用を検討するために、部分的に又は完全に、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析を行うこと
D/上記潜在的活性物質の存在下の上記加齢細胞における細胞の代謝を、上記物質の非存在下の上記加齢細胞又は若い細胞における代謝と比較すること
E/上記潜在的活性物質の活性の有無を明らかにすること、特に加齢の間に変化が生じることが明らかにされた生物学的パラメーターの変化を防止するための上記物質の肯定的又は否定的な効果を明らかにすること
を含む。
【0067】
別の態様によると、本発明は、
a)対照として用いられる若い細胞、好ましくは上記に記載の若い細胞を培養すること
b)若い細胞と呼ばれる細胞に対して変化が生じた生物学的パラメーターを持った加齢細胞、好ましくは上記に記載の加齢細胞を、上記細胞における細胞の代謝に対して上記潜在的活性物質を結果的に作用させるのに十分な時間、少なくとも1つの潜在的活性物質の存在下で培養して、代謝を若い細胞のレベルに回復すること
c)結果的に活性を持つことになる物質の存在下又は非存在下で培養した加齢細胞について、好ましくは上記の方法で、部分的に又は完全に、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析を行うこと
d)c)で行った解析と、上記潜在的活性物質の非存在下で培養したa)に記載の若い生細胞についての、好ましくは上記の方法による、部分的な又は完全な、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析とを比較すること
e)c)及びd)での解析の比較に続いて、上記加齢により変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる活性物質を少なくとも1つ結果的に同定すること
を含む、加齢する間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法に関する。
【0068】
別の態様によると、本発明は、
a)上記に記載の組織モデルに播種した上記に記載の加齢細胞と呼ばれる細胞と接触させて、上記潜在的活性物質を作用させるのに十分な時間、上記潜在的活性物質を配置すること
b)上記物質と接触させて配置した加齢細胞について、好ましくは上記に記載の方法で、部分的に又は完全に、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析を行うこと
c)b)で行った解析と、上記潜在的活性物質の非存在下で培養した生細胞についての、好ましくは上記に記載の、部分的な又は完全な、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析とを比較すること
d)c)での解析の比較に続いて、加齢により変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターの変化を防止することができる活性物質を少なくとも1つ結果的に同定すること
を含む、加齢する間に変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターの変化を防止することができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法に関する。
【0069】
別の態様によると、本発明は、少なくとも1つの化粧組成物及び/又は医薬組成物を調製するための、上記の方法により選択される活性物質の使用に関する。
【0070】
別の態様によると、本発明は、上記の方法により選択される化粧品又は薬学の分野における活性物質に関する。
【0071】
別の態様によると、本発明は、加齢する間に変化が生じることが明らかにされた生物学的パラメーターを変換すること、及び/又は、その変化を防止することができる活性物質に関するものであり、
上記パラメーターは、若い細胞を用いた細胞モデルと、加齢細胞を用いた細胞モデルとを比較検討することにより同定されたものであり、
上記モデルの少なくとも1つは繊維芽細胞又はケラチノサイトの少なくともどちらかを含む組織モデルである。
【0072】
また、以下に本発明の実例である簡潔な実施例を掲げて本発明の特徴と利点を明確に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。上記実施例は本発明に不可欠な部分であり、従来技術に照らして新規の特徴は全て、従来技術との関係及びその特徴の概略を本発明に不可欠なものとして記載する。実施例において、特に指示のない限り、百分率は重量%で、温度は摂氏で、圧力は大気圧で表す。
【0073】
実施例1
「若い」細胞又は「加齢した」細胞と呼ばれる細胞の抽出及び培養
「若い」細胞と呼ばれる細胞は、
・若いドナーから抽出した細胞、すなわち、形成外科、好ましくは包皮、腹部、乳房、最終的には歯肉又は膣の形成外科より入手した、日光にさらされていない生検材料から抽出した細胞
・若いドナーから抽出した細胞、例えば45才未満の若いドナーから抽出した細胞
・経代培養初期で用いられる細胞、例えば、繊維芽細胞の場合は10回未満、メラノサイトの場合は6回未満及びケラチノサイトの場合は2回未満といった経代培養初期で用いられる細胞
のいずれかである。
【0074】
「加齢」細胞と呼ばれる細胞は、
・加齢したドナー由来の生検材料から抽出した細胞、及び、形成外科、好ましくは腹部、乳房、最終的には歯肉又は膣の形成外科より入手した、日光にさらされていない、高齢の患者、例えば45才を超えるドナー由来の生検材料から抽出した細胞
・様々な年齢のドナー由来の生検材料、及び、日光にさらされた部位(顔、首、手)の形成外科より入手した生検材料より抽出した細胞
・経代培養後期で用いられる細胞、例えば、繊維芽細胞の場合は10回を超える、メラノサイトの場合は6回を超える及びケラチノサイトの場合は2回を超えるといった経代培養後期で用いられる細胞
のいずれかである。
【0075】
外植片を用いる方法若しくはコラゲナーゼ等を用いる酵素的消化により抽出した繊維芽細胞、又は、酵素的に、具体的にはディスパーゼ、サーモリシン若しくはトリプシン−EDTA等によって真皮−表皮を分離した後抽出したケラチノサイト若しくはメラノサイトといった種類の細胞を得ることができる。
【0076】
抽出後、上記繊維芽細胞は、ウシ血清を10%、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、ゲンタマイシンを最終濃度1μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたDMEM培地(Dulabecco’s Modified Eagle’s Medium)/Ham F12 glutamax 50/50(v/v)中で増幅する。上記繊維芽細胞は、90%コンフルエンスになるとすぐにトリプシン処理(trypsination)により増幅する。
【0077】
抽出後、上記ケラチノサイトは、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、ゲンタマイシンを最終濃度1μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたウシ下垂体腺の抽出物を含むK−SFM培地(ケラチノサイト用非血清培地、インビトロジェン)中で増幅する。上記ケラチノサイトは、90%コンフルエンスになるとすぐにトリプシン処理(trypsination)により増幅する。
【0078】
抽出後、上記メラノサイトは、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、ゲンタマイシンを最終濃度1μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ジェネテシンを100μg/mLの割合で加えたMMK2培地(メラノサイト培養キット、シグマ)中で3日間増幅し、残留しているケラチノサイトを除去する。その後、ジェネテシンを除く以外は上記と同じ培地中で培養を続ける。上記メラノサイトは、90%コンフルエンスになるとすぐにトリプシン処理(trypsination)により増幅する。
【0079】
実施例2
「若い」再構成真皮及び「加齢した」再構成真皮と呼ばれる再構成真皮の調製、並びに、RNA、DNA及びタンパク質の抽出
実施例1に記載の方法で増幅した、若いドナー(45才未満)及び高齢のドナー(45才を超える)をそれぞれ3人含むプールに由来する繊維芽細胞500,000個を、ウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたDMEM−glutamax培地中の、アジ化ジフェニルホスホリル(diphenylphosphoryl azide)で架橋したコラーゲンでできている真皮の基質に播種して21日間培養する。
【0080】
実験の最後に、上記再構成真皮は液体窒素中でバイオプルベライザーを用いてすりつぶす。これをTri Reagent(R)(T9424、シグマ、セントルイス、アメリカ)中に入れ、クロロホルムで抽出する。12,000g、15分間、4℃で遠心分離した後の上層にRNAが、下層にDNAが、界面にタンパク質が確認できる。
【0081】
実施例3
「若い」再構成表皮及び「加齢した」再構成表皮と呼ばれる再構成表皮の調製、並びに、RNA、DNA及びタンパク質の抽出
実施例1に記載の方法で経代培養1回目(トリプシン処理(trypsination)による1回目の増幅)まで増幅した、「若い」ケラチノサイト(35才未満のドナーに由来する)及び「加齢した」ケラチノサイト(55才を超えるドナーに由来する)と呼ばれるケラチノサイト4×10個を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中の、繊維芽細胞層下にあらかじめ栄養分を播種してある容器型のBoyden挿入片(空隙率0.4μm、直径25mmの膜)に播種し、3〜8日間浸漬させて培養する。
【0082】
上記培養したケラチノサイトはこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に12〜18日間おく。
【0083】
実験の最後に、挿入片中の上記再構成表皮は、掻き取って集め、Tri Reagent(R)(シグマ)中に入れ、クロロホルムで抽出する。12,000g、15分間、4℃で遠心分離した後の上層にRNAが、下層にDNAが、界面にタンパク質が確認できる。
【0084】
実施例4
「若い」再構成歯肉粘膜上皮及び「加齢した」再構成歯肉粘膜上皮と呼ばれる再構成歯肉粘膜上皮の調製、並びに、RNA、DNA及びタンパク質の抽出
実施例1に記載の方法で抽出した、「若い」上皮細胞と呼ばれる歯肉粘膜上皮細胞(経代培養1回目、トリプシン処理(trypsination)による1回目の増幅におけるもの)及び「加齢した」上皮細胞と呼ばれる歯肉粘膜上皮細胞(経代培養4回目、トリプシン処理(trypsination)による4回目の増幅におけるもの)1〜2×10個を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9モル/L、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中の、容器の形状のBoyden挿入片(空隙率0.4μm、直径10mmの膜)に播種して、3〜8日間浸漬させて培養する。
【0085】
上記培養した上皮細胞はこの後、ウシ血清の割合を10%から1%に減らす以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で浸漬させたまま12〜18日間おく。
【0086】
実験の最後に、上記再構成上皮はTri Reagent(R)(シグマ)中に入れ、クロロホルムで抽出する。12,000g、15分間、4℃で遠心分離した後の上層にRNAが、下層にDNAが、界面にタンパク質が確認できる。
【0087】
実施例5
「若い」再構成皮膚及び「加齢した」再構成皮膚と呼ばれる再構成皮膚の三次元多細胞モデル、並びに、RNA、DNA及びタンパク質の抽出
「若い」繊維芽細胞(35才未満の3人のドナーを含むプールに由来する)及び「加齢した」繊維芽細胞(55才を超える3人のドナーを含むプールに由来する)と呼ばれる繊維芽細胞400,000個を抽出し、実施例1に記載の方法で経代培養5回目(トリプシン処理(trypsination)による5回目の増幅)まで増幅し、浮上したコラーゲンのスポンジを基盤とする真皮の基質の上に播種する。
【0088】
簡潔には、上記真皮の基質は、以下のプロトコールに従って調製する:
−0.75%コラーゲンゲルを25℃で乾燥させ、薄膜を作る。
−上記コラーゲン薄膜を0.75%コラーゲンゲルの上におく。
−24時間凍結乾燥させ、ジメチルホルムアミド溶媒、その後pH8.9ホウ酸バッファーの中で、コラーゲンをDPPA(アジ化ジフェニルホスホリル(diphenylphosphoryl azide))50μL/gで架橋する。
−脱塩水で洗浄し、浮上した真皮の基質を再度凍結乾燥する。
【0089】
上記繊維芽細胞の培養は、hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax培地を用い、14日間培養する。
【0090】
その後、抽出して実施例1に記載の方法で経代培養2回目(トリプシン処理(trypsination)による2回目の増幅)まで増幅した「若い」ケラチノサイト(35才未満の3人のドナーを含むプールに由来する)及び「加齢した」ケラチノサイト(55才を超える3人のドナーを含むプールに由来する)と呼ばれるケラチノサイト400,000個を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中で真皮等価物(dermal equivalents)に播種して、7日間浸漬させて培養する。
【0091】
上記培養したケラチノサイトはこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に21日間おく。
【0092】
実験の最後に、上記再構成皮膚はTri Reagent(R)(シグマ)中に入れ、液体窒素中でバイオプルベライザーを用いてすりつぶした後、クロロホルムで抽出する。12,000g、15分間、4℃で遠心分離した後の上層にRNAが、下層にDNAが、界面にタンパク質が確認できる。
【0093】
実施例6
ランゲルハンス細胞、間質性樹状細胞、マクロファージ及び内皮細胞の個体群を含む、「若い」モデル及び「加齢した」モデルと呼ばれる再構成皮膚の三次元多細胞モデル、並びに、RNA、DNA及びタンパク質の抽出
●ランゲルハンス細胞の分化経路において優先的に環境に適応することができる、未分化で未発達の樹状細胞の産出
【0094】
一体以上のヒトのドナーから静脈血の試料をリチウム−ヘパリン等の通常の抗凝血剤中に入れたヴァキュテーナー内に採取し、抹消循環血を集めた。
【0095】
上記循環血からのCD14単球の分離は、ロックフェラー大学出版から出版されたGeissmannら、J.EXP.MED.Vol 187,No 6,16 March 1998,961−966ページのプロトコールに従い、以下の方法で有利に行うことができる:
−Ficoll(R) gradient(ナトリウムジアトリゾエ―ト/密度1.077のポリスクロース;Lymphoprep Abcys 1053980)を用いて遠心分離した後、上記循環血の単核の細胞を回収し、磁気ビーズに結合した抗体混合物(主として抗CD3、抗fCD3、抗CD7、抗CD19、抗CD45RA、抗CD56、抗IgE(抗免疫グロブリンE)のCD)により間接的に標識する。
−磁気カラムを通した後、非磁性標識単球のみを溶出する。
【0096】
上記CD14単球を、当業者には公知の任意の物理的な分離方法、及び、特に遠心沈降又は遠心分離によって溶出液の形で回収し、次の培養に用いる溶出液として溶出する。
【0097】
この後上記CD14単球を、非働化ウシ胎児血清を10%、並びに、2種のサイトカイン、具体的にはサイトカインGM−CSFを400UI/mL及びサイトカインTGFβ1を10ng/mLの割合で最初から含んだRPMI 1640培地中に約100万個/mLの割合で添加する。
【0098】
上記培養は、COを5%含んだ湿気のある空気中で37℃において行う。
【0099】
上記培地は、第三のサイトカイン、具体的にはサイトカインIL−13を10ng/mLの割合で最初から添加されているものを用いる。遅くとも2日間培養する前に、培養6日目までIL−13を加えないこと以外は上記と同じ培地を追加する。6日目に、未分化で未発達の樹状細胞が産生し、これらはランゲルハンス細胞の分化経路において優先的に環境に適応することができる:
−上記in vitroにおいて産生する樹状細胞の約60〜80%は、Langerinを細胞内において、及び、MIP−3αの特異的受容体であるCCR6を発現する。
−上記in vitroにおいて産生する樹状細胞は、MIP−3αによって化学的に強く引き寄せられることから、上記受容体CCR6との相関関係が明らかである。
−上記in vitroにおいて産生する樹状細胞は、成熟度の標識であるCD83、DC−LAMP及びCCR7を発現していないため、未成熟である。
【0100】
●次に、下記プロトコールに従って、上記三次元モデルを作る。
【0101】
実施例1に記載の方法で経代培養3回目から10回目(トリプシン処理(trypsination)による10回目の増幅)まで増幅した繊維芽細胞2×10個を、hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL及びゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax培地中のコラーゲン−グリコサミノグリカン−キトサンを基盤とする真皮の基質の上に播種して、21日間培養する。その後、上記培地からEGFを除いた培地中で更に1週間培養を続ける。
【0102】
次に、実施例1に記載の方法で経代培養0回目から2回目(トリプシン処理(trypsination)による2回目の増幅)まで増幅したケラチノサイト2×10個、及び、in vitroにおいて産生する未分化樹状細胞1〜3×10個を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中の真皮等価物(dermal equivalents)上に播種して、7日間浸漬させて培養する。
【0103】
上記培養物はこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に21日間おく。
【0104】
上記条件において、ランゲルハンス細胞は表皮内に、間質樹状細胞、マクロファージ及び内皮細胞は真皮内に局在している。
【0105】
実験の最後に、上記免疫担当再構成皮膚はTri Reagent(R)(シグマ)中に入れ、液体窒素中でバイオプルベライザーを用いてすりつぶした後、クロロホルムで抽出する。12,000g、15分間、4℃で遠心分離した後の上層にRNAが、下層にDNAが、界面にタンパク質が確認できる。
【0106】
実施例7
上記細胞モデルのRNA、DNA及びタンパク質の精製
RNAは、2−プロパノールを用いて沈殿させて12,000gで15分間遠心分離し、80%エタノールでプラグを洗浄し、乾燥させてDNAase(AMBION)を用いて処理を行い、260nm及び280nmでの吸収の値を読んだ後、1μg/μLの割合で水に溶解する。
【0107】
DNAは、RNAを含んだ上層を除去した後、エタノールを用いて2,000g、5分間、4℃で遠心分離して沈殿させる。上清は取っておくが、これはタンパク質のフラクションを含んだものである。上記DNAを含んだプラグは、0.1M酢酸バッファー、10%エタノール、75%エタノールを用いて2,000g、5分間、4℃で遠心分離して洗浄した後、真空下で5〜10分間乾燥させ、最後に8mMの水酸化ナトリウム溶液に溶解する。260nmでの吸収の値を読んだ後、12,000gで10分間遠心分離して不溶物を除去し、DNAの濃度を0.3μg/μLに調整する。
【0108】
エタノール抽出物(上清)に含まれるタンパク質は、12,000g、10分間、4℃で遠心分離し、0.3M塩酸グアニジン95%エタノール溶液で7,500g、5分間、4℃における遠心分離を3回行うことにより洗浄した後、イソプロパノールを用いて沈殿させる。上記プラグは、真空下で5〜10分間乾燥させた後、1%のSDSに溶解する。
【0109】
実施例8
「若い」再構成皮膚及び「加齢した」再構成皮膚と呼ばれる再構成皮膚に対する抗加齢複合体の効果の検討
再構成皮膚は、実施例5に記載の方法により調製した。基底膜の再構成を刺激する活性物質Basaline(R)(改変させた麦芽タンパク質、Coletica、リヨン)を含む3種の活性物質からなる抗加齢複合体を、2.25%濃度で浸漬培地に添加した、又は、添加しなかった(未処理コントロール)。この状態を14日間保った。
【0110】
免疫組織化学的な検討
14日間培養した後、「コントロール」再構成皮膚及び「処理した」再構成皮膚は液体窒素中で凍結させ、クリオマイクロパート(低温維持装置、Microm 500M)を用いて低温で切片を作った。
【0111】
全てのラミニン、5−ラミニン、IV型コラーゲン及びVII型コラーゲンを、免疫組織化学的手法によってトレースした。ラミニンにはNCL−LAMININを、IV型コラーゲンにはNCL−COLL−IVを、VII型コラーゲンにはNCL−COLL−VIIを用いた。5−ラミニンの抗体にはカリニン(kalinin)/ラミニンβ3を用いた。上記の抗体は全て、トレース用媒介剤であるジアミノベンジジン(DAB)と結合したものであった。
【0112】
上記の分子を証明するのに必要な操作(抗体分子の結合、洗浄、トレース等)は全て、免疫組織化学研究用の自動装置(Nexes、Ventana)を用いて行った。
【0113】
再構成皮膚切片のスライドガラスをAxiophot microscope(Zeiss)(40倍)を用いて各抗体について作ったところ、これら切片は有機的構造を持った良質の基底膜であることが分かった。
【0114】
その結果、再構成皮膚モデルは本検討を通して全てのラベル(全てのラミニン、ラミニン5、IV型コラーゲン及びVII型コラーゲン)を表していることが示される。抗加齢複合体で処理した再構成皮膚の場合はより強く標識する。しかし、組織学的分析によっては若い皮膚と加齢した皮膚の真の差を見ることはできない。
【0115】
「ドットブロット(Dot−Blot)」実験
第一段階において、コラーゲンは、0.5N酢酸培地中で48時間4℃においてペプシン(20mg/g乾燥試料)により消化した後、再構成皮膚から抽出する。
【0116】
15,000gで30分間遠心分離した後、0.7MのNaCl溶液中で4℃において2時間かけて沈殿させ、13,000rpmで遠心分離し、I型コラーゲンを除去する。
【0117】
上清に含まれるIV型コラーゲンは、1.2MのNaCl溶液中で4℃において一晩かけて沈殿させ、13,000rpmで遠心分離して集める。
【0118】
上清に含まれるVII型コラーゲンは、TCA/アセトン/DTT混合物(Biorad)を用いて4℃において2時間かけて沈殿させた後、−20℃において45分間保ち、13,000rpmで30分間遠心分離して集め、DTT/アセトン中で遠心分離により洗浄する。
【0119】
異なる型のコラーゲンを含む試料は、TBSバッファーに入れた後、ニトロセルロース膜に転写する。3%ウシ血清アルブミンを含むTBSバッファーを用いて30分間かけて飽和させた後、膜をTBSバッファー中で洗浄して1時間室温でインキュベートし、一次抗体を含んだ溶液中で震盪する。0.05%Tween(R)20(ICI)を含むTBSバッファー中で洗浄した後、膜は、二次抗体中で1時間室温において震盪しながらインキュベートする。この後シグナルを、供給業者の提案通り増幅トレースキットOpti−4CN substrate kit(Biorad)を用いて増幅する。画像解析によるバンドの定量では、抗加齢活性物質がIV型及びVII型コラーゲンの合成に与える顕著な影響を明らかにすることはできない(感度の問題)。
【0120】
リアルタイム定量PCR実験
アクチン、IV型コラーゲン及びVII型コラーゲンをコードしているmRNAの定量は、リアルタイム定量PCR法によって再構成したモデルにおいて行った。これを行うために、IV型コラーゲンの特異的な部位を増幅することができるプライマー(231塩基対)及びVII型コラーゲンの特異的な部位を増幅することができるプライマー(763塩基対)及びアクチンのシークエンスのプライマー(541塩基対)を用いた。
【0121】
センス IV型コラーゲン 5’―GTACTGCAACCCTGGTGATGTCTGC―3’
アンチセンス IV型コラーゲン 5’―GAATATCCGATCCACAAACTCCGCC―3’
【0122】
センス VII型コラーゲン 5’―GCCACAGGATACAGGGTTTC―3’
アンチセンス VII型コラーゲン 5’―CACCACACGTAGTTCAATGC―3’
【0123】
センス アクチン GTGGGGCGCCCCAGGCACCA
アンチセンス アクチン CTCCTTAATGTCACGCACGATTTC
【0124】
処理した及び未処理の再構成皮膚からのRNAの抽出は、実施例7に記載のプロトコールに従って行った。
【0125】
RT−PCR反応は(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)は、「Opticon」system(MJ Rsearch)を用いてリアルタイムRT−PCR法によって行う。
【0126】
容器に導入した反応混合物(50μL)は、各試料について以下の通りである。
−5ng/μL濃度のRNA10μL
−上記で用いた様々なラベルのプライマー
−逆転写酵素及びDNAポリメラーゼ酵素、標識剤SYBR Green I(伸長の際にDNA二重らせんに挿入された発蛍光団)並びにMgClを含んだ反応混合物(キアゲン)
【0127】
RT−PCRの条件は以下の通りである。
−逆転写:50℃で30分
−PCR反応:[94℃で15秒、56℃で30秒及び72℃で30秒]を50サイクル
【0128】
混入がないこと及び増幅生成物の純度は、PCR増幅生成物の融解曲線から分かる。ピークが2つあったり融解温度が正常でない生成物は除く。
【0129】
分析及び計算方法
上記増幅したDNA中に取り込まれた蛍光を、PCRサイクルの間連続的に評価した。この方法により蛍光測定曲線がPCRサイクルの関数として得られ、これより増幅したDNAの相対量を求めることができる。
【0130】
上記再構成皮膚中の細胞数を考慮するため、上記の結果は全て「ハウスキーピング遺伝子」として用いたシグナル「アクチン」に従属していると考えた。
【0131】
上記実験によって、C(T)の測定閾値(サイクル閾値のこと)を0.05〜0.01の間の値であるTについて固定し、その後測定の任意の単位をそれぞれの遺伝子について式:
Sgene<x>=10×(1/2)C(T)gene<x>
(C(T)gene<x>は、遺伝子<x>のC(T)の測定閾値(サイクル閾値)を示す)
によって計算する。
【0132】
目的の遺伝子の値は、以下の割合:
R=Sgene<x>/Sactin
の計算により、シグナル「アクチン」に従属していると考える。
【0133】
上記割合を、処理した試料と未処理の試料とで比較する。その結果、加齢した再構成皮膚モデルにおいて、抗加齢複合体によりIV型コラーゲン及びVII型コラーゲンをコードするmRNAの発現が顕著に増加するということが分かる(IV型コラーゲンについて+65%、p<0.05、VII型コラーゲンについて+63%、p<0.05)。
【0134】
実施例9
単層、再構成真皮及び再構成皮膚のDNAアレイによる解析、「若い」モデル及び「加齢した」モデルと呼ばれるモデル間の比較
上記3つの細胞モデルを作るにあたって、同じ回数経代培養した同一のcell stockを用いる。
【0135】
・実施例1に記載の方法で抽出した繊維芽細胞(35才未満の及び55才を超えるドナーをそれぞれ3人含むプールに由来する)は、ウシ血清を10%、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたDMEM培地/Ham F12 glutamax 50/50(v/v)中でコンフルエンスまで単層培養した。上記によりマット状になったものをTri Reagent(R)(シグマ)中で集める。
【0136】
・「若い」再構成真皮及び「加齢した」再構成真皮と呼ばれる再構成真皮は、アジ化ジフェニルホスホリル(diphenylphosphoryl azide)により架橋した浮上したコラーゲンマトリックスに、繊維芽細胞400,000個(35才未満の及び55才を超えるドナーをそれぞれ少なくとも3人含むプールに由来し、実施例1に記載のプロトコールにより別々に抽出及び増幅したもの)を播種して調製する。上記再構成真皮は、ウシ血清を10%、アスコルビン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−glutamax培地中で15日間培養する。上記再構成真皮はReagent(R)(シグマ)中で集める。
【0137】
・「若い再構成皮膚」及び「加齢した再構成皮膚」と呼ばれる再構成皮膚は、アジ化ジフェニルホスホリル(diphenylphosphoryl azide)により架橋した浮上したコラーゲンマトリックスに、繊維芽細胞400,000個(35才未満の及び55才を超えるドナーをそれぞれ少なくとも3人含むプールに由来し、実施例1に記載のプロトコールにより別々に抽出及び増幅したもの)を播種して調製する。上記のように調製した再構成真皮は、ウシ血清を10%、アスコルビン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−glutamax培地中で15日間培養する。ケラチノサイト(同一のドナープールに由来し、実施例1に記載のプロトコールにより別々に抽出及び増幅したもの)は、再構成真皮あたり400,000個の割合で播種する。上記培養物は、Hyclone IIウシ培地を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地でできた増殖培地中で1週間培養を続ける。このようにすると再構成皮膚が発生し、この後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記と同じ培地中で更に2週間培養する。上記再構成皮膚はTri Reagent(R)(シグマ)中で集める。
【0138】
cDNAアレイ
−簡潔には、上記試料のRNAを(液体窒素中でバイオプルベライザー(三次元モデル用のバイオプルベライザー)を用いてすりつぶした後で)抽出し、Tri Reagent(R)の供給業者のプロトコールに従って精製する(DNAを完全に除去する)。
−精製したRNAについて定性分析及び定量分析を行う。
−次の段階として、Atlas Pure(クロンテック)のプロトコールに従い、メッセンジャーRNA(mRNA)のpoly(A)末端をビオチン化オリゴ(dT)プライマーとハイブリダイゼーションさせ、ストレプトアビジンビーズ上に選択的に捕獲することにより、mRNAのプールを精製した。[α33P]−dATPの存在下で、アレイ上に固定されているシークエンスに特異的なプライマーのプールを用いて、poly(dT)のビーズ上に連結したmRNAを逆転写することにより、33Pで複数標識したDNAプローブを作成した。上記標識したプローブは、排除カラムクロマトグラフィー(exclusion column chromatography)を用いて精製し、その性質及び当量を液体シンチレーション計数法で評価した。
−上記Custom ATLAS膜を前処理した後、それぞれの膜に固定されているcDNAを対応する標識したプローブとハイブリダイズさせた(68℃、一晩)。この後、分析する前に薄膜を洗浄した。
−Cyclone Phosphorimager(Packard instrument;3時間、この後取得するために72時間)及びQuantArray(Packard、software)を用いて、スポットの放射能をオートラジオグラフィーにより分析して定量した。
−ドナーが若かったり高齢であったりといった様々な実験条件での目的の遺伝子を同定した。単層条件、単細胞三次元条件及び多細胞三次元条件下における結果を、加齢したモデルと若いモデルの差異の百分率で示す。
【0139】
より具体的に細胞外マトリックスのタンパク質に興味を持つならば、例えば、フィブロネクチン前駆体をコードするRNAの量が、単層及び「加齢した再構成真皮」と呼ばれる再構成真皮において、「若い」と呼ばれるモデルと比較して増加する(単層で2.1倍、再構成真皮で1.8倍)ことは上記から説明できた。一方、「加齢した再構成皮膚モデル」と呼ばれる再構成皮膚モデルでは「若い再構成皮膚モデル」と呼ばれる再構成皮膚モデルに対して、RNA量が明らかに減少する(1.75)。再構成皮膚モデルでの結果は、様々な年齢のドナー由来の皮膚試料について行った免疫組織化学的分析の結果を完全に裏付けるものである。単層においてフィブロネクチン前駆体のRNAが増加するという結果は、ドナーの年齢、及び、単層培養した繊維芽細胞の経代培養の回数に相関してmRNAが増加するということを同様に示すmRNAの分析検討結果と一致する。上記のことから、どの細胞モデルを使用するかによって結果は異なり、かつ、単層モデル又は単細胞三次元モデルは異種の細胞による相互作用を考慮に入れていないので、これらから結果を完全に予測できるものではないことが完全に説明される。
【0140】
また、上記以外の多くの遺伝子が繊維芽細胞単層、再構成真皮及び再構成皮膚の間で様々に発現しているということ、及び、上記3種のモデルにおける上記遺伝子の発現レベルが常に等しいというわけではないということも説明できた。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
本発明の方法により、皮膚が加齢する間に様々な分子が合成されていることがよく把握でき、かつ、加齢する間に観察される変化を防止又は制限することを目的とする活性源をスクリーニングできる。
【0144】
実施例10
「若い再構成皮膚」及び「加齢した再構成皮膚」と呼ばれる再構成皮膚モデルにおけるフィブロネクチンをコードするmRNAのノーザンブロットによる分析
コラーゲン−GAG−キトサンマトリックスに繊維芽細胞(35才未満の及び55才を超えるドナーをそれぞれ少なくとも3人含むプールに由来し、実施例1に記載のプロトコールにより別々に抽出及び増幅したもの)を400,000個播種して、ウシ血清を10%、アスコルビン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL及びゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−glutamax培地中で15日間培養し、若い再構成皮膚及び加齢した再構成皮膚を調製する。ケラチノサイト(同一のドナープールに由来し、実施例1に記載のプロトコールにより別々に抽出及び増幅したもの)は、再構成真皮あたり400,000個の割合で播種する。上記培養物は、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地でできた増殖培地中で1週間培養を続ける。このようにすると再構成皮膚が発生し、この後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記と同じ培地中で更に2週間培養する。上記試料はTri Reagent(R)(シグマ)中で集める。
【0145】
総RNAを実施例7に記載のプロトコールにより抽出する。デンシトメトリーを用いて260nmにてRNAを定量した後、溶液をRNAが1μg/μLになるように調整する。試料を各3〜10μgずつアガロース/ホルムアルデヒドのゲルの上にのせて分離した。この後、RNAを毛管現象によりHybond−N nylon(アマシャム)膜上に一晩かけて転写した。80℃にて90分間加熱してRNAをナイロンに共有結合させた。この後上記膜は、0.1mg/mLのExpressHyb(クロンテック)8mL中で68℃にて20分間プレハイブリダイズさせ、標識したプローブの存在下で68℃にて一晩ハイブリダイズさせた。インキュベート後、上記膜を、1%SDSを含む2倍濃縮SSC溶液で68℃にて30分間4回、0.5%SDSを含む10倍希釈SSC溶液で68℃にて1回、最後に2倍濃縮SSC溶液で洗浄した。スポットの放射能をphosphoimager(Packard Instruments)を用いて直接測定することによりRNAを定量できる。結果を、アクチンシグナルに対する発現量の百分率で表す。フィブロネクチンをコードするmRNAをノーザンブロットによって定量分析することにより、「若い」再構成皮膚と呼ばれる再構成皮膚と比較して、「加齢した」再構成皮膚と呼ばれる再構成皮膚モデルにおけるmRNAが減少していること(ファクター2)を明らかにすることができる。
【0146】
実施例11
「若い」再構成皮膚及び「加齢した」再構成皮膚と呼ばれる再構成皮膚モデルにおけるVII型コラーゲンのウェスタンブロットによる分析
コラーゲン−GAG−キトサンマトリックスにP2(経代培養2回目、すなわちトリプシン処理(trypsination)による2回目の増幅)の「若い」細胞及びP12(経代培養12回目、すなわちトリプシン処理(trypsination)による12回目の増幅)の「加齢した」細胞(両細胞は、実施例1に記載のプロトコールにより別々に抽出及び増幅したもの)を400,000個播種して、ウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL及びゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−glutamax培地中で15日間培養し、「若い」再構成真皮及び「加齢した」再構成真皮と呼ばれる再構成真皮を調製する。P1(経代培養1回目、すなわちトリプシン処理(trypsination)による1回目の増幅)の「若い」と呼ばれるケラチノサイト及びP3の「加齢した」と呼ばれるケラチノサイトを実施例1に記載のプロトコールにより別々に抽出及び増幅し、再構成真皮あたり400,000個の割合で播種する。上記培養物は、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地でできた増殖培地中で1週間培養を続ける。このようにすると再構成皮膚が発生し、この後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記と同じ培地中で更に2週間培養する。
【0147】
VII型コラーゲンを実施例8に記載のプロトコールにより抽出し、電気泳動バッファー(0.5M Tris−HCl、pH6.8、10%グリセリン、2%SDS、5%メルカプトエタノール)に溶解する。上記試料を95℃で5分間加熱する。5%SDS−PAGEでサイズによって分ける。フッ化ビニリデン樹脂の膜に転写する。精製VII型コラーゲンが抽出した試料及び分子量の標準品と平行になるようにする。
【0148】
転写後、膜をブロッキングバッファー(15nM NaCl、20mM Tris−HCl、0.5%Tween20、3%BSA、pH7.4)中で1時間インキュベートする。VII型コラーゲン一次抗体(ポリクローナル、ウサギ、1/1000)をPBS/BSAの1%溶液に添加する。室温にて2時間経過後、膜をブロッキングバッファー中で洗浄し、二次標識抗体(HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)をコンジュゲートさせた抗ウサギIgG)と共に1時間室温でインキュベートする。PBS中で洗浄した後、膜を3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩溶液で現像する。標識が弱い場合には、増幅用キット(Biorad)を用い、その後トレースキットOpti−4CN Substrate kit(Biorad)を用いることができる。
【0149】
トレース後、膜を水で2、3分間洗浄して吸取紙にはさんで乾燥させる。
【0150】
バンドの濃さを画像解析によって調べると、様々な年齢の試料からの抽出物に含まれるVII型コラーゲンの量が著しく減少していることが分かる。
【0151】
実施例12
「若い」モデル及び「加齢した」モデルと呼ばれるモデルである再構成表皮との比較における、単層のケラチノサイトのDNAアレイによる分析
上記3つの細胞モデルを作るにあたって、同じ回数経代培養した同一のcell stockを用いる。
【0152】
実施例1に記載の方法で抽出したケラチノサイト(35才未満の及び55才を超えるドナーをそれぞれ3人含むプールに由来する)を、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたK−SFM(Gibco)培地中でコンフルエンスまで単層培養した。上記によりマット状になったものをTri Reagent(R)(シグマ)中で集める。
【0153】
実施例1に記載の方法で経代培養1回目(トリプシン処理(trypsination)による1回目の増幅)まで増幅した「若い」と呼ばれるケラチノサイト(35才未満の及び55才を超えるドナーをそれぞれ3人含むプールに由来する)を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中の、繊維芽細胞層下にあらかじめ栄養分を播種してある容器型のBoyden挿入片(空隙率0.4μm、直径25mmの膜)に4×10個の割合で播種して3〜8日間浸漬培養して再構成表皮を調製する。
【0154】
上記のように培養したケラチノサイトはこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に12〜18日間おく。
【0155】
実験の最後に、上記挿入片中のケラチノサイトの単層及び再構成表皮は掻き取って集め、Tri Reagent(R)(シグマ)中に入れ、クロロホルムで抽出する。12,000g、15分間、4℃で遠心分離した後の上層にRNAが、下層にDNAが、界面にタンパク質が確認できる。
【0156】
実施例9に記載の方法でcDNAアレイを作る。結果として以下が得られる(RE:相対発現単位)。
【0157】
【表3】

【0158】
【表4】

【0159】
【表5】

【0160】
本発明の方法により、表皮が加齢する間に様々な分子が合成されていることがよく把握でき、かつ、表皮が加齢する間に観察される変化を防止又は制限することを目的とする活性源をスクリーニングできる。
【0161】
実施例13
化粧品用の活性物質を「若い」再構成皮膚及び「加齢した」再構成皮膚と呼ばれる再構成皮膚に局所的に塗布した場合の効果の試験
「若い」繊維芽細胞と呼ばれる繊維芽細胞(胸部の生検材料から抽出)及び「加齢した」繊維芽細胞と呼ばれる繊維芽細胞(美容整形後に得た顔の生検材料から抽出)600,000個を、実施例1に記載の方法で抽出して経代培養6回目(トリプシン処理(trypsination)による6回目の増幅)まで増幅し、hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL及びゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax培地中のコラーゲン−グリコサミノグリカン−キトサンを基盤とする真皮の基質の上に播種して21日間培養する。
【0162】
次に、「若い」ケラチノサイトと呼ばれるケラチノサイト(胸部の生検材料から抽出)及び「加齢した」ケラチノサイトと呼ばれるケラチノサイト(美容整形後に得た顔の生検材料から抽出)600,000個を、実施例1に記載の方法で増幅し、経代培養1回目(トリプシン処理(trypsination)による1回目の増幅)の段階で、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12UI/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100UI/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培養増殖培地中の真皮等価物(dermal equivalents)上に播種して、5日間浸漬培養する。
【0163】
上記培養物はこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く上記浸漬培養に用いた培地から構成される分化用培地中で気液界面に14日間おく。
【0164】
プラセボの化粧製剤及び活性物質を3%含んだ化粧製剤8μLを、「若い再構成皮膚」及び「加齢した再構成皮膚」と呼ばれる再構成皮膚に塗布する。分化用培地中で2日間培養した後、上記化粧製剤を再構成皮膚から非常に注意深く除去し、同量の新製剤と置き換える。この操作を7回繰り返す、すなわち更に14日間培養する。実験の最後に、上記化粧製剤を再構成皮膚から非常に注意深く除去し、再構成皮膚をPBS中で洗浄しTri Reagent(R)(シグマ)中に浸漬する。製剤中の化粧品用の活性物質で処理することによる効果を実施例9に記載のプロトコールに従い「cDNAアレイ」法を用いて評価する。
【0165】
実施例14
化粧品用の活性物質を「若い」再構成真皮及び「加齢した」再構成真皮と呼ばれる再構成真皮のモデルにおいて全身に塗布した場合の効果の試験
実施例12から、フィブロネクチン含量が、加齢した細胞と呼ばれる細胞を用いたモデルにおいて、加齢した細胞を用いたモデルに対して減少するということが分かる(43%減少)。
【0166】
実施例9に記載の方法によって再構成真皮を作る。Deliner(R)(トウモロコシ抽出物、Coletica、リヨン)を培地中に2%で用い、培地は2日毎に交換する。培地を集め、実施例8に記載の方法によるドットブロット法に続いて画像解析を行い、フィブロネクチン含量を定量する。フィブロネクチン含量は25%増加する。このことから、Deliner(R)は実際、加齢に影響を受けるフィブロネクチン合成の減少を防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの加齢する間に変化が生じるトランスクリプトームパラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなるゲル、薄膜又は膜、又は(ii)コラーゲンから作られる多孔性マトリックスから選択され、かつ間質細胞又は上皮細胞からなるマトリックス担体からなる三次元組織モデルで培養された若い生細胞からmRNAを回収すること
b)工程a)で定義された三次元組織モデルで培養された加齢した生細胞からmRNAを回収すること
c)若い生細胞から回収したmRNAの発現レベルと、加齢した細胞から回収したmRNAの発現レベルとを、前記mRNAで行われる比較トランスクリプトーム解析により比較すること
d)細胞の加齢に対して更に変化が生じる少なくとも1つのトランスクリプトームパラメーターを同定するために、前記mRNAで行われる比較トランスクリプトーム解析を行うことにより、若い生細胞のトランスクリプトームと加齢した生細胞のトランスクリプトームとの少なくとも一つの差を結果的に同定することを可能にすること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記組織モデルが、(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなるゲル又は膜、又は(ii)コラーゲンから作られる多孔性マトリックスから選択され、かつ間質細胞からなるマトリックス担体からなる再構成真皮である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記組織モデルが、ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなる薄膜又は膜から選択され、かつ上皮細胞からなるマトリックス担体からなる再構成表皮である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記組織モデルが、(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなるゲル又は膜、又は(ii)コラーゲンから作られる多孔性マトリックスから選択され、かつ間質細胞からなるマトリックス担体からなる再構成絨毛膜である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記組織モデルが、ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなる薄膜又は膜から選択され、かつ上皮細胞からなるマトリックス担体からなる再構成上皮である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記組織モデルが、上皮部分と真皮部分を有する再構成皮膚であり、上記再構成皮膚が、(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなるゲル又は膜、又は(ii)コラーゲンから作られる多孔性マトリックスから選択され、かつ真皮部分にある間質細胞と上皮部分にある上皮細胞からなるマトリックス担体からなる請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記組織モデルが、上皮部分と絨毛膜部分を有する再構成粘膜であり、上記再構成粘膜が、(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなるゲル又は膜、又は(ii)コラーゲンから作られる多孔性マトリックスから選択され、かつ絨毛膜部分にある間質細胞と上皮部分にある上皮細胞からなるマトリックス担体からなる請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程a)の若い細胞は、45才未満のドナー由来の生検材料に由来する細胞、細胞の機能別に予め決定された回数未満のin vitro経代培養を受けた細胞、又は、太陽放射にあまりさらされていない生検材料に由来する細胞のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
若い細胞が、胴体、胸部、腹部又は包皮に由来することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
加齢細胞は、45才を超えるドナー由来の生検材料に由来する細胞、細胞の機能別に予め決定された回数を超えるin vitro経代培養を受けた細胞、又は、太陽にさらされている部位から採取した生検材料に由来する細胞のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
加齢細胞が、手、顔、首又は襟首に由来することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
加齢細胞は、1か月以上の長期間に渉って培養することにより人為的に加齢させた1種以上の細胞を含む三次元組織モデルにおいて統合された若い細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記若い細胞又は加齢細胞は少なくとも一体のヒト又は少なくとも一体の動物由来の細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記トランスクリプトーム解析は以下の:
RNAアレイ、cDNAアレイ、逆転写多重ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR−multiplex)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)又はリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)
から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記マトリックス担体が間質細胞及び上皮細胞からなり、前記間質細胞が繊維芽細胞であり、前記上皮細胞がケラチノサイトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記モデルは、正常若しくは異常細胞、又は、細胞系由来の細胞を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記上皮部分が、上皮細胞、色素細胞、免疫担当細胞、神経細胞又はこれらのすべての細胞からなることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
用いられる前記組織モデルは、内皮細胞(EC)、免疫細胞、樹状細胞、脂肪細胞、リンパ球、マクロファージ、脂腺細胞、又は、皮膚の付属器から選択される少なくとも1種更に組み込まれたモデルを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
加齢する間に変化が生じるトランスクリプトームパラメーターを少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つスクリーニングする方法であって、
請求項1に記載の方法によりトランスクリプトームにおける差を同定すること、及び、加齢する間に変化が生じる細胞の代謝における差を変換することができる物質をスクリーニングすることからなる方法。
【請求項20】
a)対照として用いられる請求項1に記載の若い細胞を三次元組織モデルで培養し、前記若い細胞からmRNAを回収すること
b)前記若い細胞のトランスクリプトームに対して変化が生じるトランスクリプトームパラメーターを持った請求項1に記載の加齢細胞を、前記加齢細胞における細胞の代謝に対して前記潜在的活性物質を結果的に作用させるのに十分な時間、少なくとも1つの潜在的活性物質の存在下で三次元組織モデルで培養して、前記加齢細胞からmRNAを回収すること
c)結果的に活性を持つことになる物質の存在下又は非存在下で培養した前記加齢細胞のmRNAについて、部分的に又は完全に、トランスクリプトーム解析を行うこと
d)c)で行った解析と、前記潜在的活性物質の非存在下で培養したa)に記載の若い生細胞のmRNAについての、部分的な又は完全な、トランスクリプトーム解析とを比較すること
e)c)及びd)での解析の比較に続いて、前記加齢細胞のトランスクリプトームパラメーターを少なくとも1つ変換することができる活性物質を少なくとも1つ結果的に同定すること
を含む、加齢する間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法。

【公開番号】特開2008−22863(P2008−22863A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258522(P2007−258522)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【分割の表示】特願2003−105029(P2003−105029)の分割
【原出願日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願人】(500226948)エンゲルハード・リヨン (21)
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean−de−Dieu 69007 LYON, FRANCE
【Fターム(参考)】