説明

ストレスにさらされている生細胞とさらされていない生細胞とを用いた少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化の同定法

【課題】本発明は、太陽の放射にさらされることによる細胞の代謝作用の変化を制限または防止する活性を発現するための化粧組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ラウリル酸ヘスペリチンおよびカプリル酸ケルシチンから選択される活性物質を含み、太陽の放射にさらされることによる細胞の代謝作用の変化を制限または防止する活性を発現するための化粧組成物であって、前記活性が、細胞の生存率の増大、および炎症性分子の合成の制限から選択される化粧組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)ストレス細胞と呼ばれる、ストレスにさらされている生細胞について
b)対照細胞と呼ばれる、上記と同様のストレスにさらされていない生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、ストレスによって変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にする方法に実質的に関する。
【0002】
本発明は更に、ストレスにさらされる間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法、又は、ストレスにさらされる間に変化が生じる生物学的パラメーターの変化を少なくとも1つ防止することに関する。
【0003】
本発明は更に、少なくとも1つの化粧組成物及び/又は医薬組成物を調製するための、上記の方法により選択される活性物質の使用に関する。
【0004】
本発明は更に、上記の方法により選択される、化粧品又は薬学の分野における活性物質に関する。
【背景技術】
【0005】
太陽放射は、発熱させる赤外線(波長5000〜800nm)を56%、可視光線(800〜400nm)を39%、並びに、おおよそUVAを4.9%及びUVB+UVCを0.1%含む紫外線A、B、C(400〜190nm)を5%含む電磁放射から構成される。
−UVCは非常に有害で、通常オゾン層によって濾過される。
【0006】
−UVBは一部、大気圏やガラスを通過することができない。UVBは表皮までは達するが、真皮には達しない。UVBは日焼け細胞の存在を特徴とする日焼けを形成するが、日焼け細胞とは、核のDNAが損傷してアポトーシスの始まったケラチノサイトである。上記日焼け細胞の数は浴びたUVBの線量が多くなるにつれて多くなる。実際には、損傷を受けた細胞は自然の防御プロセスにより修復又は除去されるが、このシステムが飽和したり遺伝子に障害があったりして機能不全になると皮膚ガンが発生する根本的な原因となる。
−UVAは、夏でも冬と同様に大気圏を容易に通過して真皮及び表皮を貫通し、UVBほど有害ではないが、浴びた量によって損傷を与える。UVAは日焼け細胞を産生しないか、又は、産生するとしてもごく少量であるが、フリーラジカルを形成することによって細胞のDNAだけでなく細胞の脂質及び細胞のタンパク質にも損傷を与える可能性がある。UVAは、コラーゲン及びエラスチン繊維だけでなく、真皮内のその他の細胞外マトリックス成分の分解を増進し、皮膚の加齢を加速する原因となる。また、多くの研究により、表皮のランゲルハンス細胞を媒介したUVAの免疫抑制効果が明らかにされている。上記ランゲルハンス細胞は、照射後、Tリンパ球と相互作用し、サイトカイン、並びに、表皮細胞及び神経繊維によるカスケードで産生する神経伝達物質を通して全身に影響を及ぼす(Meunier L.、Eur.J.Dermatol.1999,9:269−275)。長い時間が経つうちに、前駆ガン細胞は外来細胞として認識されなくなり、その結果免疫系によって除去されなくなるので、皮膚ガンの危険性は増大する。
【0007】
ヨーロッパでは、光度の調査により(Zanetti R.ら、Br.J.Canc.1996,73:1440−1454)、紫外線暴露、皮膚の表現型及びガン腫の間の関係が示され、紫外線には直接的な危険性があるという概念が定められている。
【0008】
その他、放射線と関係のある損傷の中で公知のものは、赤外線により温度が上昇して受ける損傷が、メラノサイトにおいて熱ショックタンパク質の産生、及び、UVBによって誘導される影響に類似した影響を誘導する(Nakazawaら、J Invest Dermatol 1998,110:972−977);近赤外線による損傷が皮膚細胞の生存能力に影響を与える(YOO B.H.ら、J Cosmet Sci 2002,53(3):175−184);突然変異誘発力を誘導する可視光線暴露(繰り返し照射)による損傷(Larko O.、Lakartidningen 2002,99(18):2036−2040);電離放射線による損傷が潰瘍及びガンを発生させる(Lorette G.、Machet L.、Cancer Radiother 2001,5(1):116s−120s)、又は、皮膚のI型及びIII型コラーゲンの合成等の細胞の代謝を変化させる(Riekki Rら、Arch Dermatol Res 2002,294(4):178−184)、又は、増殖及び表皮の分化も変化させる(Sivan V.ら、Int J Radiat Oncol Biol Phys 2002,53(2):385−393)といったものが挙げられる。この他にも、マイクロ波の細胞遺伝学的な影響による損傷(Zotti−Martelli Lら、Mutat Res 2000.472(1−2):51−58)、又は、熱ショックタンパク質(HSP70及びHSP27)経路の抑制、若しくは、電磁場及び特に携帯電話から発生するフリーラジカルの発生による腫瘍形成効果による損傷(French P.Wら、Differenciation 2001,67(4−5):93−97;Di Carloら、J Cell Biochem 2002;84(3):447−454;Leszczynski D.ら、Differenciation 2002 70(2−3):120−129;Moustafa Y.M.ら、J Pharm Biomed Anal 2001,26(4):605−608)といったものが挙げられる。
【0009】
他の要素としては、例えば、ある化学薬品(過酸化水素、一酸化窒素、重金属類等)又は生物剤(ウィルス、細菌等)、更には、細胞のストレスを誘導することができる力学的要因(伸縮、圧縮等)といったものも挙げられる。
【0010】
現在のところ、増殖、分化及び細胞死等の、非常に多くの遺伝子と細胞シグナル経路によって制御される細胞の機能の全てが、ex vivo(生検)で、又は、通常は、健康若しくは異常なドナー又は細胞系由来の繊維芽細胞、ケラチノサイト又はメラノサイトの単層細胞培養によるin vitroで調べられている。また、発現及び細胞合成に関するデータが特異的なストレスと相関のあるものとして見出せるというわけでは必ずしもなく、in vitroで得られる結果と実験用単純モデルでのin vivoの結果とは時々矛盾する。
【0011】
ここ数年間で、主として細胞治療、細胞毒性試験及び有効性試験のために、動物実験の代わるものとして様々な三次元細胞モデルが開発された。表皮のモデルとしては(Oreal、EP 0 789 074 A1;A.de Brugerolle de Fraissinetteら、1999,Cell Biol.Tox.15:121−135)が挙げられ、急性又は慢性の皮膚の炎症についての予測可能性を調べるために用いられる。その他、再構成上皮のモデル(Schmalz G.ら、Eur.J.Oral Sci.2000.108:442−448;Nielsenら、Int.J.Pharm.2000.200:261−270)、並びに、再構成皮膚又は色素細胞を含む再構成皮膚及び/若しくは免疫担当再構成皮膚のモデル(Regnier M.ら、Pour la science(1999)266:154−159)等も例として挙げられる。
【0012】
上記モデルのうち薬物毒性学的な評価並びに医薬及び化粧品成分の有効性研究に今日非常に広く用いられているものがあるとすれば、そこで用いられる分析方法としては組織学を画像解析と組み合わせた方法、すなわち、電気泳動分析、ウェスタンブロット、ノーザンブロット又はRT−PCR等によって代謝性合成及び制御を調べる方法が基本的に用いられる。タンパク質アレイ(又はマッピング)及びDNAアレイの技術、特に二次元電気泳動又は複合サイトカイン決定(combined cytokine determinations)(サイトカインマップ)の技術は、上記三次元モデルにおいて、上記モデルを物理的、化学的、生物学的又は力学的性質のいずれかのストレスを受ける条件下で培養する場合には用いられているのとは対照的に、標準的な条件下で培養する場合には用いられていない。
【0013】
逆に、上記技術は、単層細胞系において、例えば、単層培養した正常又は悪性のヒトメラノサイト(腫瘍組織から抽出した細胞系又はメラノサイト)に対する紫外線によるストレスの調節作用に関する研究等において開発され、用いられている(Valery C.、Grob J.J.、Verrando P.、J.Invest.Dermatol.(2001)117:1471−1482)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は主として、細胞がストレスを受けている時のin vivoでの状況を反映するため、細胞の代謝を研究するモデルを提供して、技術的な問題を当初の予想に反して解決することを目的とする。
【0015】
本発明は、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)ストレス細胞と呼ばれる、ストレスにさらされている生細胞について
b)対照細胞と呼ばれる、上記と同様のストレスにさらされていない生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、ストレスによって変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にする方法を提供するという新規の技術的な問題を解決することを目的とする。
【0016】
上記プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析又はゲノム解析によって、ストレスを受けている間に変化が生じるパラメーターを少なくとも1つ変換したり又は変化を防止したりするために行動目標を定めることができる。
【0017】
本発明はまた、活性源、特に化粧品又は医薬品における活性源がゲノム又はプロテオームの特徴に与える影響を評価するために、上述の三次元組織モデルを用いることができるという解決策を提供することも目的とする。
【0018】
本発明はまた、製剤、特に上記活性源を含有する化粧又は医薬の製剤が、ゲノム、トランスクリプトーム又はプロテオームの特徴に与える影響を評価するために、上述の三次元組織モデルを用いることができるという解決策を提供することも目的とする。
【0019】
本発明は更に、ストレスを受けている間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換したり又は変化を防止したりすることができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法を提供するという新規の技術的な問題を解決することもまた目的とする。
【0020】
本発明は更に、上記方法によって選択される活性物質を提供し、化粧品又は医薬品を調製するために使用するという新規の技術的な問題を解決することもまた目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上述の技術的な問題を解決することを可能にするものである。
【0022】
本発明の記述において本発明者らによれば、「ゲノム研究」は、生物体の遺伝子全体の機能を研究するために、少なくともその一部分の配列表を作成して研究する行為を意味するものである。
【0023】
本発明者らによれば、「トランスクリプトーム研究」は、ゲノムから転写されたRNA全体のうち少なくともその一部分の配列表を作成して研究する行為を意味するものである。
【0024】
本発明者らによれば、「プロテオーム研究」は、発現したタンパク質のうち少なくともその一部分の配列表を作成して研究する行為を意味するものである。
【0025】
本発明は主として、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)ストレス細胞と呼ばれる、ストレスにさらされている生細胞について
b)対照細胞と呼ばれる、上記と同様のストレスにさらされていない生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、ストレスによって変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にすることを特徴とする方法を提供するものである。
【0026】
「対照細胞」と呼ばれる細胞とは、上記で調べたストレスを受けていない細胞である。対照細胞は、上述の発明の効果を最大にするためにいかなるストレスにさらされる可能性もできるだけ小さくした細胞であるということは、当業者であれば容易に理解することができる。上記細胞は特に、保護された生検材料、すなわち、太陽放射にほとんどさらされていない生検材料(胸部、腹部等)から取り出した細胞か、又は、いかなるストレス(物理化学的、生物学的又は力学的ストレス)にもさらされていない細胞のいずれかということになるであろう。
【0027】
「ストレス」細胞と呼ばれる細胞は、日光にさらされている部位(手、顔等)から採取した生検材料由来の細胞であるか、又は、UVA、UVB、日光、赤外線、近赤外線、熱、磁場、マイクロ波及び携帯電話の電波を包含するヘルツ放射線、β、γ及びX線を包含する電離放射線、上記の放射線に偶然又は非偶然に暴露される間に受けるストレス等を含むストレス(物理的、化学的又は生物学的ストレス)にさらされている細胞である。上記細胞は、同一のドナー又は異なるドナー由来の複数の生検材料から取り出すことができる。
【0028】
上記生物学的パラメーターとは、通常、遺伝子発現におけるいかなる変化、タンパク質の分泌におけるいかなる変化、又は、対照細胞の代謝において示される可能性のあるいかなる変化にも相当するものである。
【0029】
上記組織モデルは、特に生体組織を再構成する目的で、生細胞を播種することができる組織モデルとして定められ、三次元モデルとも呼ばれる。上記組織モデルは特に、皮膚の場合は真皮、粘膜の場合は絨毛膜と呼ばれる、主として間質細胞を含んだ結合性マトリックスのモデル、主として上皮細胞から構成される上皮モデル、主としてケラチノサイトから構成される表皮モデル、表皮及び真皮から構成される皮膚モデル、上皮及び絨毛膜から構成される粘膜モデル、生存状態を保った生検材料(又は外植片)のモデル、及び、上述のモデルに存在する細胞を用いた単層又は懸濁状態のモデルとなることができるものとして定められる。
【0030】
上記モデルにおいては、正常、健康若しくは異常細胞、又は、細胞系由来の細胞を用いることができ、上記細胞はヒト又は動物由来のものを使用することができる。
【0031】
上記特徴のうち後半のものの別の形によれば、結合性マトリックス(真皮又は絨毛膜)の三次元培養モデルは、再構成真皮又は再構成絨毛膜を作るために間質細胞を播種した担体を含む。
【0032】
上記表皮又は上皮の三次元培養モデルは、再構成上皮又は表皮を得るために、あらかじめ間質細胞、特に繊維芽細胞を播種し、その後上皮細胞、及び、特にケラチノサイトを播種した担体、又は、何も播種していない担体を含む。
【0033】
上記再構成皮膚又は粘膜の三次元培養モデルは、再構成粘膜を得るために上皮細胞を、又は、再構成皮膚を得るためにケラチノサイトを播種した(真皮又は絨毛膜の)マトリックス担体を含む。
【0034】
別の形によれば、用いられる上記三次元培養モデルは更に少なくとも1種の細胞、例えば、内皮細胞(EC)、及び/又は、リンパ球、及び/又は、脂肪細胞、及び/又は、体毛、髪、皮脂腺等の皮膚の付属器といった種類の細胞が少なくとも1種更に組み込まれたモデルを含む。
【0035】
別の形によれば、上記三次元担体は、その他どんな種類の細胞(免疫細胞、内皮細胞、神経細胞、筋細胞、肝細胞等)によるコロニー形成も可能にする。
【0036】
有利には、色素細胞、免疫担当細胞(ランゲルハンス細胞及び/又は樹状細胞)、神経細胞等は上皮部分に加えて導入することができる。
【0037】
種類の異なる抽出した細胞(繊維芽細胞、ケラチノサイト、メラノサイト等)は、別々に増幅し、別々に使用したり、三次元モデルを再構成するため、及び、単層又は懸濁状態で培養するために複数のドナーから貯蔵したりすることができる。
【0038】
上記で定めた組織モデルは、ゲノム解析及びプロテオーム解析を行うために培養の最後に使用する。特に上記解析によって、ストレスの影響に対抗できる可能性のある目標を選定、同定及び特徴付けすることができる。
【0039】
上記可能性のある目標とは、変換される生物学的パラメーター、又は、防止される変化である。
【0040】
上記目標を定めた後、上記モデル及び検出方法と同様のものを用いて、化粧品又は医薬品における活性源をスクリーニングすることができる。上記モデル及び検出方法と同様のものを用いて、上記活性物質を含む、又は、含まない、化粧又は医薬の製剤の有効性を証明することができる。
【0041】
上記モデル及び検出方法を用いると、活性物質、化粧品若しくは医薬品に毒性があるかどうか、又は、化粧若しくは医薬の製剤に毒性があるかどうかを明らかにすることもできる。上記毒性は、ストレス、特に光毒性によって誘導される。
【0042】
上記で用いられる解析方法の中で、以下のものが特に挙げられる。
−プロテオームの特徴の解析方法:二次元電気泳動、タンパク質アレイ及び/又はサイトカインアレイ、及び/又は、複合ELISA測定法
−ゲノムの特徴の解析方法:DNAアレイ、ポリメラーゼ多重連鎖反応(PCR−multiplex)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び/又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)
−トランスクリプトームの特徴の解析方法:RNAアレイ、cDNAアレイ、逆転写多重ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR−multiplex)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)及び/又はリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)
【発明の効果】
【0043】
本発明は主として、細胞がストレスを受けている時のin vivoでの状況を反映するため、細胞の代謝を研究するモデルを提供して、技術的な問題を当初の予想に反して解決することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
第一の態様によると、本発明は、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化を同定する方法であって、
a)ストレス細胞と呼ばれる、ストレスにさらされている生細胞について
b)対照細胞と呼ばれる、上記と同様のストレスにさらされていない生細胞について
c)三次元組織モデルで用いられる上記2種類の細胞のうち少なくとも1種について
比較プロテオーム解析、比較トランスクリプトーム解析及び/又は比較ゲノム解析を行い、ストレスによって変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定することを可能にする方法に関する。
【0045】
特に、本発明は、少なくとも1つの生物学的パラメーターに結果的に生じた変化の同定法であって、
a)組織モデルに播種したストレス細胞と呼ばれるストレスにさらされている生細胞について、部分的に又は完全に、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析を行うこと
b)a)で行った解析と、対照細胞と呼ばれる上記ストレスにさらされていない生細胞についての、部分的な又は完全な、プロテオーム解析及び/又はゲノム解析とを比較すること
c)上記ストレスによって変化が生じる少なくとも1つの生物学的パラメーターを結果的に同定すること
を含む同定法に関する。
【0046】
有利には、上記対照細胞及び上記ストレス細胞は三次元組織モデルにおいて用いられる。
【0047】
有利には、ストレスにさらされる間に変化が生じる上記生物学的パラメーターはストレス細胞と呼ばれる細胞の代謝と対照細胞と呼ばれる細胞の代謝の間の差のうちの少なくとも1つによって定められる。
【0048】
有利な形態によると、上記a)段階が以下の段階:
a1)細胞モデル、すなわち単層若しくは懸濁状態において、及び/又は、組織モデル、すなわち三次元状態において対照細胞と呼ばれる細胞を1種以上播種する段階
a2)上記モデルをストレスにさらす段階(上記細胞はこのことよりストレス細胞と呼ばれる)
を含む。
【0049】
また、もう1つの有利な形態によると、上記a)段階が以下の段階:
a1)1種以上の生細胞をストレスにさらす段階(上記細胞はこのことよりストレス細胞と呼ばれる)
a2)細胞モデル、すなわち単層若しくは懸濁状態において、及び/又は、組織モデル、すなわち三次元状態において上記ストレス細胞を用いる段階
を含む。
【0050】
有利には、上記ストレスは物理的ストレス(UVA、UVB、日光、赤外線、近赤外線、熱、磁場、マイクロ波及び携帯電話の電波を包含するヘルツ放射線、β、γ及びX線を包含する電離放射線、上記の放射線に偶然又は非偶然に暴露される間に受けるストレスから選択されたストレス)、物理化学的ストレス、生物学的ストレス及び/又は力学的ストレスである。
【0051】
有利な形態によると、上記ストレス細胞は、
・当業者には試料となるであろうことが公知の、手や顔等の日光にさらされている部位から採取される生検材料由来の細胞
・物理的ストレス(UVA、UVB、日光、赤外線、近赤外線、熱、磁場、マイクロ波及び携帯電話の電波を包含するヘルツ放射線、β、γ及びX線を包含する電離放射線、上記の放射線に偶然又は非偶然に暴露される間に受けるストレスから選択されたストレス)、物理化学的ストレス、生物学的ストレス及び/又は力学的ストレスによりストレスを受けている細胞
のいずれかである。
【0052】
有利な形態によると、上記対照細胞は、胸部、腹部、包皮等の太陽放射によるストレスをあまり受けていない生検材料から取り出した細胞、又は、UVA型、UVB型、太陽放射型及び/若しくは磁場由来の放射線といった物理的ストレス、化学的ストレス、生物学的ストレス及び/又は力学的ストレス等のストレスを受けていない細胞のいずれかである。
【0053】
有利には、上記ストレス細胞は少なくとも一体のヒト又は少なくとも一体の動物由来の細胞である。
【0054】
有利には、上記検討は以下の解析方法:
−プロテオームの特徴の解析方法:二次元電気泳動、タンパク質アレイ及び/又はサイトカインアレイ、及び/又は、複合ELISA測定法
−ゲノムの特徴の解析方法:DNAアレイ、ポリメラーゼ多重連鎖反応(PCR−multiplex)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び/又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)
−トランスクリプトームの特徴の解析方法:RNAアレイ、cDNAアレイ、逆転写多重ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR−multiplex)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)及び/又はリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)
から選択される少なくとも1つの解析を含む。
【0055】
有利には、上記組織モデルは細胞の代謝を少なくとも部分的に維持している条件下で培養及び/又は保存される。
【0056】
有利には、上記組織モデルは少なくとも繊維芽細胞又はケラチノサイトを含む。
【0057】
有利には、上記モデルは、正常、健康若しくは異常細胞、又は、細胞系由来の細胞を含み、上記細胞は好ましくはヒト又は動物由来のものである。
【0058】
有利には、上記組織モデルは以下のモデル:
皮膚の場合は真皮、粘膜の場合は絨毛膜と呼ばれる、主として間質細胞を含む結合性マトリックスモデル、主として上皮細胞から構成される上皮モデル、主としてケラチノサイトから構成される表皮モデル、表皮及び真皮から構成される皮膚モデル、上皮及び絨毛膜から構成される粘膜モデル
から選択される。
【0059】
有利には、上記組織モデルは好ましくは以下のマトリックス担体:
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロン(登録商標)膜若しくはテフロン(登録商標)スポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、AnoporeTM無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CMTM半透膜、ポリエステル半透膜又はポリグリコール酸の膜若しくは薄膜からなる群より選択される不活性な担体(上記群において、例えば、真皮モデルであるSkin2TMmodel ZK1100、Dermagraft(R)及びTranscyte(R)(Advanced Tissue Sciences)が挙げられる)
−細胞培養処理した樹脂(葉状真皮(a dermal leaf)の構造:Michel M.ら、In Vitro Cell.Dev Biol.−Animal(1999)35:318−326)
−ヒアルロン酸(Hyalograft(R) 3D−Fidia Advanced Biopolymers)及び/又はコラーゲン及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とするゲル又は膜(上記群において、例えば、真皮モデルであるVitrix(R)(オルガノジェネシス)が挙げられる)
−1つ以上のグリコサミノグリカン類及び/又は最終的にはキトサン(CNRSのEP0296078 A1、ColeticaのWO01/911821及びWO01/92322)を含むことが可能であるコラーゲンから作られる、浮上している又は浮上していない多孔性マトリックス(上記群において、例えば、真皮モデルであるMimederm(R)(Coletica)が挙げられ、上記マトリックス担体が間質細胞、特に繊維芽細胞を含む)
より選択されるマトリックス担体を含む結合性マトリックス(真皮又は絨毛膜)の組織モデルである。
【0060】
有利には、上記組織モデルは好ましくは以下のマトリックス担体:
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロン(登録商標)膜若しくはテフロン(登録商標)スポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、Anopore無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CM半透膜又はポリエステル半透膜からなる群より選択される不活性な担体(上記群において、再構成表皮及び上皮のモデル(Skinethic(R))、並びに、EpiDerm(R)、EpiAirway(R)、EpiOccular(R)(Mattek Corporation)といったモデルが挙げられる)
−ヒアルロン酸及び/又はコラーゲン及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とする薄膜又は膜(上記群において、特に、Mimetop(R)(Coletica)、Laserskin(R)(Fidia advanced Biopolymers)、Episkin(R)(ロレアル)といったモデルが挙げられる)
より選択されるマトリックス担体を含む表皮組織モデル又は上皮組織モデルである。上記モデルは、あらかじめ間質細胞、特に繊維芽細胞を播種し、その後上皮細胞、及び、特にケラチノサイトを播種するものである。
【0061】
有利には、上記上皮部分に上皮細胞、色素細胞、免疫担当細胞及び神経細胞が上皮細胞に更に導入され、上記免疫担当細胞は好ましくはランゲルハンス細胞である。
【0062】
有利には、上記組織モデルは好ましくは以下のマトリックス担体:
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロン(登録商標)膜若しくはテフロン(登録商標)スポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、Anopore無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CM半透膜又はポリエステル半透膜からなる群より選択される不活性な担体(上記不活性な担体は間質細胞、特に繊維芽細胞を含む)
−間質細胞、特に繊維芽細胞を含む、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とするゲル
−1つ以上のグリコサミノグリカン類及び/又は最終的にはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる、浮上している又は浮上していない多孔性マトリックス(上記多孔性マトリックスは間質細胞、特に繊維芽細胞を統合したものである)
−ヒト又は動物の、上皮を剥がした真皮又は死んだ真皮
より選択される真皮の又は絨毛膜のマトリックス担体を含む再構成皮膚又は粘膜の組織モデルである。
【0063】
上記群において、Mimeskin(R)(Coletica)、Apligraf(R)(オルガノジェネシス)、ATS−2000(CellSystems(R) Biotechnologie Vertrieb)、特にはSkin2TM(ZK1200−1300−2000、Advanced Tissue Science)といったモデルを挙げることができる。
【0064】
更に、上記研究課題にもなり得る組織治療に使用できるモデルも確かに存在する。上記モデルとしては、EpidexTM(Modex Therapeutiques)、Epibase(R)(Laboratoire Genevrier)、EpicellTM(ジェンザイム)、AutodermTM及びTransdermTM(イノジェネティックス)を挙げることができる。
【0065】
上記マトリックス担体はその後、再構成粘膜を得るために上皮細胞を、又は、再構成皮膚を得るためにケラチノサイトを播種される。
【0066】
有利には、用いられる上記組織モデルは更に少なくとも1種の細胞、好ましくは、内皮細胞(EC)、及び/又は、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞等の免疫細胞、及び/又は、脂肪細胞、及び/又は、体毛、髪、皮脂腺等の皮膚の付属器といった種類の細胞が少なくとも1種更に組み込まれたモデルを含む。
【0067】
第二の態様によると、本発明は、上記ストレスにさらされる間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つスクリーニングする上記の方法の使用に関する。
【0068】
第三の態様によると、本発明は、上記ストレスにさらされる間に変化が生じる生物学的パラメーターの変化を少なくとも1つ防止することができる潜在的活性物質を少なくとも1つスクリーニングする方法の使用に関する。
【0069】
有利には、本発明は、上記ストレスにさらされる間に変化が生じる生物学的パラメーターの変化を少なくとも1つ防止又は変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つスクリーニングする方法であって、
A/上記潜在的活性物質を、上記潜在的活性物質を作用させるのに十分な時間、上記組織モデルに播種した上記対照細胞と接触させて配置すること、上記ストレスを与えること
B/上記細胞における細胞の代謝に対する上記物質の作用を検討するために、部分的に又は完全に、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析を行うこと
C/上記潜在的活性物質の存在下の上記細胞における細胞の代謝を、コントロール細胞と呼ばれる、上記物質の非存在下の上記細胞における代謝と比較すること
D/上記潜在的活性物質の活性の有無を明らかにすること、特に生物学的パラメーターの変化を防止するための上記物質の肯定的又は否定的な効果を明らかにすること
を含む方法に関する。
【0070】
別の態様によると、本発明は、
a)変化が生じた生物学的パラメーターを持ったストレスにさらされている細胞、好ましくは上記のストレス細胞と呼ばれる細胞を、上記細胞における細胞の代謝に対して上記潜在的活性物質を結果的に作用させるのに十分な時間、少なくとも1つの結果的に活性を持つことになる物質の存在下で培養すること(上記ストレス細胞は上記組織モデルに播種される)
b)a)段階で培養したストレス細胞について、好ましくは上記の方法で、部分的に又は完全に、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析を行うこと
c)b)で行った解析と、コントロール細胞と呼ばれる上記潜在的活性物質の非存在下で培養した生細胞についての、好ましくは上記の方法による、部分的な又は完全な、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析とを比較すること
d)c)での解析の比較に続いて、上記ストレスにより変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる活性物質を少なくとも1つ結果的に同定すること
を含む、ストレスにさらされる間に変化が生じる生物学的パラメーターを少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法に関する。
【0071】
別の態様によると、本発明は、
a)上記組織モデルに播種した上記対照細胞と接触させて、上記潜在的活性物質を作用させるのに十分な時間、上記潜在的活性物質を配置すること、上記ストレスを与えること
b)a)段階で培養したストレス細胞について、好ましくは上記の方法で、部分的に又は完全に、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析及び/又はゲノム解析を行うこと
c)b)で行った解析と、コントロール細胞と呼ばれる上記潜在的活性物質の非存在下で培養した生細胞についての、好ましくは上記の、部分的な又は完全な、プロテオーム解析及び/又はゲノム解析とを比較すること
d)c)での解析の比較に続いて、ストレスにより変化が生じる生物学的パラメーターの変化を少なくとも1つ防止することができる活性物質を少なくとも1つ結果的に同定すること
を含む、ストレスにさらされる間に変化が生じる生物学的パラメーターの変化を少なくとも1つ防止することができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法に関する。
【0072】
別の態様によると、本発明は、少なくとも1つの化粧組成物及び/又は医薬組成物を調製するための、上記の方法により選択される活性物質の使用に関する。
【0073】
別の態様によると、本発明は、上記の方法により選択される化粧品又は薬学の分野における活性物質に関する。
【0074】
別の態様によると、本発明は、物理的、化学的又は生物学的ストレスを受けている間に変化が生じることが明らかにされた生物学的パラメーターを変換すること、及び/又は、その変化を防止することができる活性物質に関するものであり、
上記パラメーターは、「ストレス」細胞と呼ばれる細胞を用いた細胞モデルと、「対照」細胞と呼ばれる細胞を用いた細胞モデルとを比較検討することにより同定されたものであり、
上記モデルの少なくとも1つは繊維芽細胞又はケラチノサイトの少なくともどちらかを含む組織モデルである。
【0075】
また、以下に本発明の実例である簡潔な実施例を掲げて本発明の特徴と利点を明確に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。上記実施例は本発明に不可欠な部分であり、従来技術に照らして新規の特徴は全て、従来技術との関係及びその特徴の概略を本発明に不可欠なものとして記載する。実施例において、特に指示のない限り、百分率は重量%で、温度は摂氏で、圧力は大気圧で表す。
【実施例】
【0076】
実施例1
「ストレス細胞」と呼ばれる細胞、又は、「対照細胞」と呼ばれる細胞の抽出及び培養
「対照細胞」と呼ばれる細胞は、日光のストレスを受けていない、形成外科、好ましくは腹部、乳房、最終的には歯肉又は膣の形成外科より入手した生検材料、又は、様々な年齢のドナーより抽出する。
「ストレス細胞」と呼ばれる細胞は、日光のストレスを受けた部位(顔、首、手)の形成外科より入手した生検材料、又は、様々な年齢のドナーより抽出する。
【0077】
外植片を用いる方法若しくはコラゲナーゼ等を用いる酵素的消化により抽出した繊維芽細胞、又は、具体的にはディスパーゼ、サーモリシン又はトリプシン−EDTA等によって酵素的に真皮−表皮を分離した後抽出したケラチノサイト若しくはメラノサイトといった種類の細胞を得ることができる。
【0078】
抽出後、上記繊維芽細胞は、ウシ血清を10%、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、ゲンタマイシンを最終濃度1μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたDMEM培地(Dulabecco’s Modified Eagle’s Medium)/Ham F12 glutamax 50/50(v/v)中で増幅する。上記繊維芽細胞は、90%コンフルエンスになるとすぐにトリプシン処理(trypsination)により増幅する。
【0079】
抽出後、上記ケラチノサイトは、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、ゲンタマイシンを最終濃度1μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたウシ下垂体腺の抽出物を含むK−SFM培地(ケラチノサイト用非血清培地、インビトロジェン)中で増幅する。上記ケラチノサイトは、90%コンフルエンスになるとすぐにトリプシン処理(trypsination)により増幅する。
【0080】
抽出後、上記メラノサイトは、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、ゲンタマイシンを最終濃度1μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ジェネテシンを100μg/mLの割合で加えたMMK2培地(メラノサイト培養キット、シグマ)中で3日間増幅し、残留しているケラチノサイトを除去する。その後、ジェネテシンを除く以外は上記と同じ培地中で培養を続ける。上記メラノサイトは、90%コンフルエンスになるとすぐにトリプシン処理(trypsination)により増幅する。
【0081】
実施例2
「ストレス細胞」と呼ばれる細胞、又は、「対照細胞」と呼ばれる細胞からの再構成真皮の調製
実施例1に記載の方法で増幅した、対照生検材料(乳房の生検材料)を3つ含むプール及びストレスを受けた生検材料(持ち上げることによるストレス)を3つ含むプールに由来する繊維芽細胞500,000個を、ウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、ゲンタマイシンを最終濃度1μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたDMEM−glutamax培地中の、アジ化ジフェニルホスホリル(diphenylphosphorylazide)で架橋したコラーゲンでできている真皮の基質に播種して21日間培養する。
【0082】
実施例3
UVA照射によりストレスを与えた「ストレス細胞」と呼ばれる細胞又は「対照細胞」と呼ばれる細胞をあらかじめ播種した再構成真皮におけるサイトカインの定量
実施例1に記載の方法で増幅した、対照生検材料(乳房の生検材料)に由来する繊維芽細胞500,000個を、ウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、ゲンタマイシンを最終濃度1μg/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL加えたDMEM−glutamax培地中の、アジ化ジフェニルホスホリル(diphenylphosphorylazide)で架橋したコラーゲンでできている真皮の基質に播種して15日間培養する。上記細胞は、血清を除いた培地(FBM、繊維芽細胞基本培地、Promocell)中で更に1週間培養する。
【0083】
実験の最後に、上記再構成真皮はpH7.4のリン酸バッファー(PBS)中で洗浄し、pH7.4のPBSを1mL入れた小型のペトリ皿に入れる。試料の一部は外界と同じ温度で保ち(この再構成真皮を「対照真皮」と呼ぶ)、それ以外にはUVA(365nm)を線量を増やしながら(0−5−10−15−20−25−30J/cm)照射する。
【0084】
「ストレス細胞」又は「対照細胞」と呼ばれる細胞を含む上記再構成真皮はこの後、血清を除いた培地(FBM、Promocell)中で24時間培養する。マトリックスにおける細胞の生存能力を、MTT(メチルチアゾールテトラゾリウム)を用いた試験により評価し、非照射のコントロールに対する百分率で表す。培地を回収し、遠心分離して、サイトカイン含有量をFluorokine MAPキット(R&D Systems)で測定する。すなわち、標準又は試料を50μL、それぞれ区別したウェルにピペットで移す。種々のサイトカインに特異的な抗体を固定した微粒子50μLを、プレートについてあらかじめ決めておいた計画に従って上記ウェルに加える。回転させて攪拌しながら1時間培養し、固定していない基質を洗浄して除去した後、種々のサイトカインに特異的な標識抗体をウェルに添加し、回転させて攪拌しながら2時間培養する。洗浄後、上記微粒子を洗浄バッファーに懸濁し、回転しながら1分間攪拌する。Luminex 100 Analyser(R&D Systems)で直ちに記録をとる。上記で記録した培地中の種々のサイトカインの含有量を、高度精製組み換えヒトサイトカインで較正した範囲に基づいて測定する。この方法を用いて、細胞の様々なサイトカイン(IL−1β、IL−2、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、TNFα、GM−CSF、G−CSF、VEGF、bFGF、G−CSF、IFNγ)の分泌について調べることができる。
【0085】
【表1】

【0086】
本発明の方法により、ストレス(ここではUVA照射)が細胞の生存能力の低下、及び、炎症誘発性インターロイキンの合成の増加を誘導することが分かる。正しく選択された活性源を用いて上記のような合成の増加を減少させることは興味深いであろう。
【0087】
実施例4
サイトカインに結果的に生じる調節を同定するための、例えばUVB照射等によりストレスを与えた「ストレス細胞」と呼ばれる細胞又は「対照細胞」と呼ばれる細胞を含む再構成表皮におけるサイトカインの定量
ここではUVB非照射(乳房の生検材料)で、実施例1に記載の方法で経代培養1回目(トリプシン処理(trypsination)による1回目の増幅)まで増幅した対照ケラチノサイト4×106個を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12IU/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中の、層の下にあらかじめ繊維芽細胞の栄養分を播種してある容器型のBoyden挿入片(空隙率0.4μm、直径25mmの膜)に播種し、3〜8日間浸漬させて培養する。
【0088】
上記培養したケラチノサイトはこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に12〜18日間おく。
【0089】
6つの試料は、培養の最後に処理はしない(対照細胞を含むモデル=コントロール)。6つの再構成表皮全部をそれぞれ異なるストレスにさらしてもよい。ストレスのタイプ毎に異なるプロトコールを、例えば以下の一覧から選択して用いることができる。
化学的ストレス
例えば、2%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、0.05%トレチノイン、過酸化水素(3〜300μM)、一酸化窒素(NO)(MAHMA nonoate 0.1〜1μM)、二酸化炭素で飽和させたり又はタバコの煙を用いたりすることによる低酸素状態等の異なる要因を再構成表皮に与え、10分間〜1時間後pH7.4のPBS中で洗浄して除去する。
生物学的ストレス
例えば、TGFβ(5〜10ng/mL)、TNFα(50−100−200IU/mL)、IL1(5〜10ng/mL)、LPS(リポ多糖類5〜10ng/mL)等の様々な試薬を再構成表皮に添加し、1時間後pH7.4のPBS中で洗浄して除去する。
力学的ストレス
再構成表皮を切断する、又は、1時間圧力をかける。
温度ストレス
再構成表皮を37℃、40℃及び43℃で1時間おく。
磁場ストレス
再構成表皮を、835MHz/0.6Wや1,800MHz/0.125W(携帯電話の無線周波数)等の磁場に1時間おく。
マイクロ波
再構成表皮を、周波数2.45及び7.7GHz、電力30mW/cmのマイクロ波にさらす。
電離放射線
再構成表皮を、線量0.2〜10mGyのX線にさらす。
UVストレス
UVA(0〜60J/cm)、UVB(0〜100mJ/cm)、日光(0〜3,500kJ/m
【0090】
上記実験において、本発明者らはUVB型の放射線を照射することを選択した。この実験において、上記培地を除去してpH7.4のPBSで置き換え、挿入片中の一部の再構成表皮にUVB(312nm)を0〜100mJ/cm、線量を増加させて照射する。その他の再構成表皮は、照射をしないこと以外は同じ条件で保つ(この表皮を「非ストレス対照表皮」と呼ぶ)。上記で処理した再構成表皮はこの後、発生培地(emersion medium)中で更に24時間培養する。サイトカインは、実施例3に記載の方法でFlorokine MAPで定量する。細胞の活性は、タンパク定量(タンパク定量用のビシンコニン酸キット:シグマ、セントルイス、アメリカ)、又は、それ以外の、アルカリフォスファターゼ酵素活性を定量できるような細胞活性測定の試験(リン酸p−ニトロフェニル5mM、酢酸ナトリウム0.1M及び0.1%Triton X100 pH5を含む溶液で37℃において2時間培養した後、10%1NNaOH溶液で中和し、405nmの吸収の記録をとる。)により評価する。
【0091】
結果を、非照射コントロールに対する百分率で以下の表に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
本発明の方法により、ストレス(ここではUVB照射)が細胞の生存能力の顕著な低下、及び、炎症誘発性インターロイキンの合成の増加を誘導することが分かる。従って、正しく選択された活性源を用いて上記のような合成の増加を減少させ、細胞の死亡率を制限することは興味深いであろう。
【0094】
実施例5
サイトカイン、ケモカイン及び免疫調節因子のmRNAの定量のための、「ストレス細胞」と呼ばれる細胞又は「対照細胞」と呼ばれる細胞を含む再構成歯肉粘膜上皮の調製
実施例1に記載の方法で抽出した、「対照歯肉粘膜上皮細胞」と呼ばれる歯肉粘膜上皮細胞(経代培養3回目(トリプシン処理(trypsination)による3回目の増幅)における歯肉の生検材料)1〜2×106個を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12IU/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中の、容器の形状のBoyden挿入片(空隙率0.4μm、直径10mmの膜、層の下に繊維芽細胞の栄養分が播種してあるもの)に播種して、3〜8日間浸漬させて培養する。
【0095】
上記培養した上皮細胞はこの後、ウシ血清の割合を10%から1%に減らす以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で浸漬させたまま12〜18日間おく。
【0096】
実験の最後に、上記培地を除去してpH7.4のPBSで置き換え、挿入片中のある再構成上皮に、単位上皮あたり20μLの割合で1時間、様々な潜在的刺激薬又は感作剤(5%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、リポ多糖類(LPS)1000U/mL、抗炎症剤プレドニゾロン(シグマ)を10mM、及び、活性のあるInhipase(R)3%(プエラリア・ロバータ(pueraria lobata)の根の抽出物、Coletica))によりストレスを与える。この後再構成上皮に添加した試薬を除去し、この再構成上皮をウシ血清を除いた浸漬用培地中で更に24時間培養する。上記再構成上皮の一部は、MTT(メチルチアゾールテトラゾリウム)を用いた試験により、細胞の生存能力を調べる。それ以外の再構成上皮は、掻き取ってTri Reagent(R)(T9424、シグマ、セントルイス、アメリカ)中に入れ、クロロホルムで抽出する。12,000g、15分間、4℃で遠心分離した後の上層にRNAが確認できる。
【0097】
上記上皮のmRNAを、Expression Array(R&D System)により供給業者のプロトコールに従って定量する。結果を、非ストレスコントロールに関する変量の因子として示す。[(ストレス細胞における結果/非ストレス細胞における結果)×100]
【0098】
【表3】

【0099】
本発明の方法により、ストレス(ここでは、刺激性又は感作性の試薬の添加)が炎症の様々な標識の変化を誘導することが分かる。活性源Inhipase(R)の有効性は、対照である抗炎症性剤と比較すると明らかとなる。
【0100】
実施例6
再構成皮膚の組織モデルの調製、mRNAの合成における温度ストレスの検討、及び、若いドナーと加齢したドナーの比較
抽出する細胞は、光が当たらない乳房の生検材料から得たものである。
【0101】
「若い繊維芽細胞」(35才未満の3人のドナーを含むプールに由来する)及び「加齢した繊維芽細胞」(55才を超える3人のドナーを含むプールに由来する)と呼ばれる繊維芽細胞400,000個を抽出し、実施例1に記載の方法で経代培養5回目(トリプシン処理(trypsination)による5回目の増幅)まで増幅し、浮上した真皮の基質の両面に播種する。
【0102】
簡潔には、上記真皮の基質は、以下のプロトコールに従って調製する:
−0.75%コラーゲンゲルを25℃で乾燥させ、薄膜を作る。
−上記コラーゲン薄膜を0.75%コラーゲンゲルの上におく。
−24時間凍結乾燥させ、ジメチルホルムアミド溶媒、その後pH8.9ホウ酸バッファーの中で、コラーゲンをDPPA(アジ化ジフェニルホスホリル(diphenylphosphorylazide))50μL/gで架橋する。
−脱塩水で洗浄し、浮上した真皮の基質を再度凍結乾燥する。
【0103】
上記繊維芽細胞の培養には、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax培地を用いる。再構成真皮を得るためには14日間培養することが必要である。
【0104】
その後、抽出して実施例1に記載の方法で経代培養2回目(トリプシン処理(trypsination)による2回目の増幅)まで増幅した「若いケラチノサイト」(35才未満の3人のドナーを含むプールに由来する)及び「加齢したケラチノサイト」(55才を超える3人のドナーを含むプールに由来する)と呼ばれるケラチノサイト400,000個を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12IU/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中で浮上した真皮等価物(dermal equivalents)の薄膜側に播種して、7日間浸漬させて培養する。
【0105】
上記培養したケラチノサイトはこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に14日間おく。
【0106】
実験の最後に、上記培地を除去してpH7.4のPBSで置き換え、挿入片中の再構成皮膚を、対照細胞を含むモデルは37℃で1時間、ストレス細胞を含むモデルは43℃で1時間培養する。上記で処理した再構成表皮は、浸漬用培地中で更に24時間培養する。熱のショックを受けた「ストレス細胞」及び「対照細胞」を含む試料を、cDNAアレイにより調べる。
【0107】
−すなわち、上記試料のRNAを(液体窒素中でバイオプルベライザーを用いてすりつぶした後で)抽出し、Tri Reagent(R)(シグマ)の供給業者のプロトコールに従って精製し、DNAを完全に除去する。
−精製したRNAについて定性分析及び定量分析を行う。
−次の段階として、Atlas Pure(クロンテック)のプロトコールに従い、メッセンジャーRNA(mRNA)のpoly(A)末端をビオチン化オリゴ(dT)プライマーとハイブリダイゼーションさせ、ストレプトアビジンビーズ上に選択的に捕獲することにより、mRNAのプールを精製した。[α33P]−dATPの存在下で、「アレイ」上に固定されているシークエンスに特異的なプライマーのプールを用いて、poly(dT)のビーズ上に連結したmRNAを逆転写することにより、33Pで複数標識したDNAプローブを作成した。上記標識したプローブは、排除カラムクロマトグラフィー(exclusion column chromatography)を用いて精製し、その性質及び当量を液体シンチレーション計数法で評価した。
−上記Custom ATLAS膜を前処理した後、それぞれの膜に固定されているcDNAを対応する標識したプローブとハイブリダイズさせた(68℃、一晩)。この後、分析する前に薄膜を洗浄した。
−Phosphorimager Cyclone(Packard instrument;3時間、この後取得するために72時間)及びQuantArray software(Packard)を用いて、スポットの放射能をオートラジオグラフィーにより分析して定量した。
−ドナーが若かったり高齢であったり、温度ストレスを受けていたり受けていなかったりと、様々な実験条件での目的の遺伝子を同定した。結果を、加齢したモデルと若いモデル、非ストレス条件下とストレス条件下の変化の百分率で示す。
【0108】
【表4】

【0109】
本発明の方法によれば、ストレス(ここでは熱のショック)により、一方で多数のラベラーの変化が、他方でストレスに対する、ドナーの年齢と相関して異なる反応が誘導されることが分かる。以上のように、上記モデルにより、熱のショックの影響を防止又は変換するための行動目標を定めることができる。更に、上記モデルにより、活性源を開発するために、本発明の年齢群と相関して異なる指針を定めることができる。
【0110】
実施例7
ランゲルハンス細胞、間質性樹状細胞、マクロファージ及び内皮細胞を含む多細胞再構成皮膚の組織モデルの調製、細菌のリポ多糖類による攻撃生物学的ストレスの検討
●ランゲルハンス細胞の分化経路において優先的に環境に適応することができる、未分化で未発達の樹状細胞の産出
【0111】
一体以上のヒトのドナーから静脈血の試料をリチウム−ヘパリン等の通常の抗凝血剤中に入れたヴァキュテーナー(vacutainer)内に採取し、抹消循環血を集めた。
【0112】
上記循環血からの単球(CD14+)の分離は、The Rockefeller University Pressから出版されたGeissmannら、J.EXP.MED.Vol 187,No 6,16 March 1998,961−966ページのプロトコールに従い、以下の方法で有利に行うことができる:
−Ficoll(R) gradient(ナトリウムジアトリゾエ―ト/密度1.077のポリスクロース;Lymphoprep Abcys 1053980)を用いて遠心分離した後、上記循環血の単核の細胞を回収し、磁気ビーズに結合した抗体混合物(主として抗CD3、抗CD7、抗CD19、抗CD45RA、抗CD56、抗IgE)により間接的に標識する。
−磁気カラムを通した後、非磁性標識単球のみを溶出する。
【0113】
上記CD14+単球を、当業者には公知の任意の物理的な分離方法、及び、特に遠心沈降又は遠心分離によって溶出液の形で回収し、次の培養に用いる溶出液として溶出する。
【0114】
この後上記CD14+単球を、非働化ウシ胎児血清を10%、並びに、2種のサイトカイン、具体的にはサイトカインGM−CSFを400IU/mL及びサイトカインTGFβ1を10ng/mLの割合で最初から含んだRPMI 1640培地(ローズウェルパーク記念研究所)中に約100万個/mLの割合で添加する。
【0115】
上記培養は、CO2を5%含んだ湿気のある空気中で37℃において行う。
【0116】
上記培地は、第三のサイトカイン、具体的にはサイトカインIL−13を10ng/mLの割合で最初から添加されているものを用いる。遅くとも2日間培養する前に、培養6日目まで上記IL−13を加えないこと以外は上記と同じ培地を追加する。6日目に、未分化で未発達の樹状細胞が産生し、これらはランゲルハンス細胞への分化経路で優先的に環境に適応することができる:
−上記in vitroにおいて産生する樹状細胞の約60〜80%は、Langerinを細胞内レベルにおいて、及び、MIP−3αの特異的受容体であるCCR6を発現する。
−上記in vitroにおいて産生する樹状細胞は、MIP−3αによって化学的に強く引き寄せられることから、上記受容体CCR6との相関関係が明らかである。
−上記in vitroにおいて産生する樹状細胞は、成熟度の標識であるCD83、DC−LAMP及びCCR7を発現していないため、未成熟である。
【0117】
●次に、下記プロトコールに従って、上記組織モデルを作る。
【0118】
対照細胞と呼ばれる、腹部の生検材料から抽出した繊維芽細胞2×105個を、実施例1に記載の方法で増幅し、この後、hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL及びゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax培地中のコラーゲン−グリコサミノグリカン−キトサンを基盤とする真皮の基質の上に播種して、21日間培養する。その後、上記培地からEGFを除いた培地中で更に1週間培養を続ける。
【0119】
次に、「対照細胞」と呼ばれる細胞を含む、腹部の生検材料から抽出し、実施例1に記載の方法で経代培養1回目(1回目の増幅)まで増幅したケラチノサイト2×105個、及び、in vitroにおいて産生する未分化樹状細胞1〜3×105個を、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12IU/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中の真皮等価物(dermal equivalents)上に播種して、7日間浸漬させて培養する。
【0120】
上記培養物はこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に20日間おく。
【0121】
上記条件において、ランゲルハンス細胞は表皮内に、間質樹状細胞、マクロファージ及び内皮細胞は真皮内に局在している。
【0122】
上記細菌のリポ多糖類(LPS)を10ng/mLの割合で6時間及び24時間かけて上記浸漬用培地に添加する、又は、添加しない。
【0123】
実験の最後に、免疫担当再構成皮膚を実施例6に記載の方法でcDNAアレイによって調べる。この後、上記で集めて凍結した培地を実施例3に記載の方法でFlorokine MAPにより調べる。結果は、特にインターロイキン1及びTNFαによる未熟段階での制御の部分については、pg/mLで表し、上記DNAアレイでのサイトカインの合成に対しては百分率([(ストレス細胞における結果/非ストレス細胞における結果)×100])で示す。
【0124】
【表5】

【0125】
上記結果により、インターロイキン1及びTNFαが炎症反応の制御をコードする遺伝子をいくらか急速に活性化することが証明される。ラベラーCD1a、CD40及びCD86の場合において減少が観察されたのは、遺伝子制御の現象によるものではなく、三次元モデルに最初から存在していた樹状細胞が挿入片の下の培地中で移動した後にリポ多糖類によるストレスの影響を受けて消失することによるものである。
【0126】
上記本発明の方法によって、ストレスが生じた後に観察される上記様々な変化を防止又は調節することができる活性源を選択することもできる。
【0127】
実施例8
太陽光線を繰り返し照射することにより定めたストレスにさらされた、色素細胞を含む再構成皮膚の調製、及び、抗酸化性の活性源の効果の検討
上記で抽出した細胞は、上記で調べたストレスにさらされていない乳房の生検材料から得る。実施例1に記載の方法で経代培養5回目(トリプシン処理(trypsination)による5回目の増幅)まで増幅した繊維芽細胞400,000個は、hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGF(表皮成長因子)を最終濃度10ng/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL及びゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax培地中の、浮上したコラーゲンのスポンジに基づいた真皮の基質に播種して14日間培養する。
【0128】
次に、実施例1に記載の方法で経代培養2回目(トリプシン処理(trypsination)による2回目の増幅)まで増幅したケラチノサイト400,000個及びメラノサイト10,000個は、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12IU/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中の真皮等価物(dermal equivalents)上に播種して、7日間浸漬させて培養する。
【0129】
上記培養物はこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に14日間おく。
【0130】
上記浸漬用培地を除去してpH7.4のPBSで置き換える操作を週に2回の割合で2週間行う。上記挿入片に存在する色素細胞を含む再構成皮膚の一部は室温に保つ。このモデルは「対照細胞」と呼ばれる細胞を含む。残りの上記挿入片に存在する色素細胞を含む再構成皮膚は、太陽光線照射器Suntest CPS+(ATLAS)を用いて561KJ/m(中欧における平均暴露時間に相当)で照射する。このモデルは「ストレス細胞」と呼ばれる細胞を含む。照射していない時は、上記再構成皮膚を、37℃、5%CO2の条件下で浸漬用培地中で培養する。
【0131】
例えばFlavagrum(R)(ラウリル酸ヘスペリチン、Coletica)、Flavenger(R)(カプリル酸ケルシチン、Coletica)等の抗酸化活性物質を3%含む、又は、含まない化粧製剤を8μL、上記色素細胞を含む再構成皮膚に10日間塗布する。
【0132】
上記処理の最後に、上記色素細胞を含む再構成皮膚を浸漬用培地中に更に24時間浸漬し、上記抗酸化処理の効果を以下の調査によって評価する。
−上記「ストレス」細胞又は「対照」細胞を含む上記色素細胞を含む再構成皮膚における細胞の生存能力の調査(MTT−メチルチアゾールテトラゾリウムを用いた試験による)(結果は、非照射のコントロールに対する変量の百分率で示す)
−Fluorokine MAPキットによる、実施例3に記載の方法で集めた上記培地中におけるインターロイキンの分泌の定量(結果はpg/mLで示す)
【0133】
【表6】

【0134】
上記の本発明の方法により、ストレス(ここでは太陽光線の照射)が細胞の生存能力の低下、及び、炎症誘発性インターロイキンの合成の増加を誘導することが分かる。これより、正しく選択された活性源を用いて炎症誘発性の分子の合成を制限することは興味深いであろう。上記スクリーニングした活性源のうち、Flavagrum(R)とFlavenger(R)の2種には上記2つのパラメーターにおいて対照と同じレベルまで回復させる傾向があるという効果があることが示された。
【0135】
実施例9
再構成皮膚に対するUVBの照射により定められる物理的ストレスの検討、及び、リアルタイムRT−PCRによる活性源の効果の検討
再構成皮膚を実施例6に記載の方法で作る。
【0136】
「ストレス」細胞を含む上記試料の半分にUVBを50mJ/cmの割合で照射する。その他の試料は、上記と同じ条件下で室温で保存し、「対照」細胞を含む試料とする。次に、上記試料は活性物質(1及び3%のFlavenger(R)、すなわちアクリル化ケルシチン、Coletica、フランス)の存在下、又は、非存在下で更に24時間培養する。
【0137】
実験の最後に、トロポエラスチンmRNA、I型コラーゲン及びIII型コラーゲンの含有量を、リアルタイムRT−PCR法で評価する。この評価において、トロポエラスチン、I型コラーゲン及びIII型コラーゲンの特異的な断片を増幅することができる2つのプライマー(それぞれセンス18/アンチセンス19、及び、センス18/アンチセンス20)、及び、アクチンシークエンスプライマー(541塩基対)を用いた。供給業者のプロトコールに従ってTriReagent(R)(シグマ)での抽出とRNAの精製を行った後、「Opticon」システム(MJリサーチ)を用いたリアルタイム定量RT−PCR法によりRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を行う。
【0138】
COLL1 センス CAGAGGGAAGCCGCAAGA
COLL1 アンチセンス CTGGCCGCCATACTCGAAC
【0139】
COLL3 センス AAGGAGAGCCCGGACCAC
COLL3 アンチセンス GGACCTCCAGGGACGCCATC
【0140】
エラスチン センス CCTTCCCCGCAGTTACCTTTC
エラスチン アンチセンス GCACGCCACCTGGGTATACAC
【0141】
アクチン センス GTGGGGCGCCCCAGGCACCA
アクチン アンチセンス CTCCTTAATGTCACGCACGATTTC
【0142】
ウェルに導入した上記反応混合物(50μL)は、それぞれの試料について以下の通りである。
−5ng/μLの濃度のRNAを10μL
−上記で用いた様々なラベラーのプライマー
−反応混合物[2×(MgCl2を5mM含むQuantiTect SYBR Green RT−PCR master mix)25μL+(QuantiTect RT mix 0.5μL)、キアゲン]、伸長の際にDNA二重らせんに挿入されたラベラーSYBR Green I。
【0143】
RT−PCRの条件は以下の通りである。
−逆転写:50℃で30分
−PCR反応:[94℃で15秒、60℃で30秒及び72℃で30秒]を50サイクル。
【0144】
混入がないこと及び増幅生成物の純度は、PCR増幅生成物の融解曲線から分かる。ピークが2つあったり融解温度が正常でない生成物は除く。
【0145】
分析及び計算方法
上記増幅したDNA中に取り込まれた蛍光を、PCRサイクルの間連続的に評価した。この方法により蛍光測定曲線がPCRサイクルの関数として得られ、これより増幅したDNAの相対量を求めることができる。
【0146】
上記再構成皮膚中の細胞数を考慮するため、上記の結果は全てハウスキーピング遺伝子として用いたシグナル「アクチン」に従属していると考えた。
【0147】
上記実験によって、C(T)の測定閾値(サイクル閾値のこと)を0.05〜0.01の間の値であるTについて固定し、その後測定の任意の単位をそれぞれの遺伝子について式:
Sgene<x>=107×(1/2)C(T)gene<x>
(C(T)gene<x>は、遺伝子<x>のC(T)の測定閾値(サイクル閾値)を示す)
によって計算する。
【0148】
目的の遺伝子の値は、以下の割合:
R=Sgene<x>/Sactin
の計算により、シグナル「アクチン」に従属していると考える。
【0149】
上記割合を、処理した試料と未処理の試料とで比較する。
【0150】
【表7】

【0151】
本発明の方法により、ストレス(ここではUVB照射)が、I型コラーゲン、III型コラーゲン及びエラスチン等の細胞外マトリックスの分子の合成をコードするRNAの急速な増加を誘導することが分かる。活性源Flavenger(R)を用いると、分子の合成を線量依存的に回復させることによって誘導されるUVBストレスの影響を制限することができる。
【0152】
実施例10
再構成真皮に対する太陽光線の照射により定められる物理的ストレスの検討、及び、リアルタイム多重RT−PCRによる活性源のスクリーニング
上記再構成真皮は、3週間かけて実施例3に記載の方法で作る。
【0153】
再構成真皮の一部を室温に保つ。このモデルは、「対照細胞」と呼ばれる細胞を含む。残りの再構成真皮は、太陽光線照射器Suntest CPS+(ATLAS)を用いて561KJ/m(中欧における平均暴露時間に相当)で照射する。このモデルは「ストレス細胞」と呼ばれる細胞を含む。
【0154】
上記再構成真皮は、活性物質(3%)の存在下、又は、非存在下で照射し、その後24時間培養する。
【0155】
上記RNAは最後に、実施例5に記載の方法で抽出する。
【0156】
上記プライマー(収量、特異性及び多重適合性)を正確に選択し、リアルタイムRT−PCRの実験(成分の濃度、上記サイクルのパラメーター、蛍光の検出の条件)を最適化した後、上記潜在的なTGF及びI型コラーゲン(COL1)の遺伝子の発現を、リアルタイム多重RT−PCRにより同時に調べる。
【0157】
アクチンの加水分解物のプローブ(20〜30mer)は、5’末端をJOE蛍光レポーター(励起520−放出548)で、3’末端をTAMRAのクエンチャー(アプライドバイオシステムズ、フォスターシティー、カリフォルニア)で標識する。
【0158】
分析する上記遺伝子の加水分解物のプローブ(20〜30mer)は、5’末端を蛍光レポーターFAM(励起495−放出520)で、3’末端をTAMRAのクエンチャー(励起555−放出576、アプライドバイオシステムズ)で標識する。
【0159】
TGF潜在的 センス AGCGGGAGGAGGGACGAG
TGF潜在的 アンチセンス TGAGGGACGCCGTGTAGG
【0160】
COL1 センス CAACATGGAGACTGGTGAGACCTGCGTGTA
COL1 アンチセンス CTTGTCCTTGGGGTTCTTGCTGATGTA
【0161】
RT−PCRの条件は以下の通りである。
プラチナTaqを用いたスーパースクリプトキットワンステップRT−PCR(インビトロジェン)
ABI PRISM(R) 7000 Sequence Detection System(アプライドバイオシステムズ)
【0162】
反応混合物:
濃度5ng/μLのRNAを10μL
2倍の反応混合物を25μL
10μMのセンス及びアンチセンスプライマーを2.5μL
50mMのMgSO4を1.8μL
5mMのdNTPを2μL
10μMの各遺伝子対(アクチン/TGF1、及び、アクチン/I型コラーゲン)の加水分解物を1μL
RT/Taq混合物を1μL
水qspを50μL
【0163】
RT−PCRプロトコール
RT、48℃、30分
RTの変性及びポリメラーゼの活性化、95℃、5分、(94℃、15秒−60℃、30秒−72℃、30秒)を50サイクル
【0164】
上記結果(R=Sgene<x>)/Sactinの割合の計算)を、実施例10に記載の方法で分析する。上記活性物質の影響を、上記活性物質の太陽光線の照射によって誘導される潜在的なTGFの活性化の増強の観点から、並びに、I型コラーゲンに与える直接的な影響及び/又は反響(放出された活性TGF−β1を通した)という観点から分析する。複数の興味深い活性物質(小麦抽出物、Soft Roe(R)、Coletica)についての結果を、照射していない又は活性物質で処理していないコントロールに対する百分率の変数で示す。
【0165】
【表8】

【0166】
本発明の方法により、ストレス(ここでは紫外線照射)がTGFβ及びI型コラーゲンの合成の増加を誘導することが分かる。従って、正しく選択された活性源を用いて上記のような合成の増加を模倣することは興味深いであろう。これより、選択した2種の抽出物について得た結果を示す。
【0167】
【表9】

【0168】
実施例11
皮膚の抗菌力の調節を調べるための、「ストレス」細胞及び「対照」細胞を含む再構成表皮及び単層培養の使用
抗菌ペプチドは、細菌、真菌又はウィルス等の微生物を、細胞膜を透過性にすることにより死滅させることができる小さな分子(10〜50アミノ酸)である。上記抗菌ペプチドの大多数は動物の上皮組織において発見されており、ここで第一免疫障壁として優勢な役割を果たしている。より具体的にヒトにおいては、上記のことは、胃腸系及び呼吸器系において、並びに、皮膚及び粘膜において明らかにされている。デフェンシンは、最も研究されている抗菌ペプチドのクラスの1つである。デフェンシンは、α−デフェンシン(典型的なものが六つある)、及び、hBD1、hBD2及びhBD3(ヒトβ−デフェンシン1、2及び3)の3つの形態で存在するβ−デフェンシンという2つのクラスに分類されている。
【0169】
細菌による攻撃(リポ多糖類又はLPS、TNFα、インターフェロンγ等)を模倣したストレスの元で、上記細胞は防御の手段として上記の分子を合成することができる。
【0170】
このことを明らかにするために、ケラチノサイトを単層で及び再構成表皮の形で培養するために、同様の包皮の生検材料から抽出した細胞を用いて調製する。正常なヒトケラチノサイトは、血清を含まずカルシウムを豊富に含む(最終濃度1.7mM)特定の培地中で、96ウェル培養プレートを用いて単層培養する。
【0171】
80%コンフルエンスになったところで、細胞を化学的ストレス、すなわち、TNFα(100ng/mL)又はIFNγ(100ng/mL)等の細菌の攻撃を模倣した分子と接触させて16時間配置する。
【0172】
ストレスを受けていない、すなわち上記細菌の攻撃を模倣した化学物質と接触させて配置されていないケラチノサイトを再構成表皮のモデルで用いる。
【0173】
16時間後、上清を回収し、細胞をPBSで洗浄した後−80℃で凍結乾燥する。
【0174】
全RNAは、シリカカラム上の96ウェル蛍光抽出キットを用いて抽出し、96ウェル分光光度計で260nm及び280nmにて測定する。RNAは5ng/μLに希釈する。
【0175】
one step定性RT−PCRを、アクチン、hBD2及びhBD3のRNA(初期)50ngについて96ウェル中で行う。プライマーは0.5μMで用い、文献より導く。
【0176】
hBD2センス:5’−CCAGCCATCAGCCATGAGGGT−3’
hBD2アンチセンス:5’−GGAGCCCTTTCTGAATCCGCA−3’(Harder J.ら、「ヒト皮膚由来の抗菌ペプチド(A peptide antibiotic from human skin.)」 Nature 1997;387:861)
【0177】
hBD3センス:5’−AGCCTAGCAGCTATGAGGATC−3’
hBD3アンチセンス:5’−CTTCGGCAGCATT TTCGGCCA−3’
【0178】
アクチンセンス:5’−GTGGGGCGCCCCAGGCACCA−3’
アクチンアンチセンス:5’−CTCCTTAATGTCACGCACGATTTC−3’(Harder J.ら、「新規のヒト誘導性抗菌ペプチドであるhBD3の単離と特徴付け(Isolation and characterization of hBD3,a novel human inducible peptide antibiotic.)」 J.Biol.Chem.2001;276:5707−5713)
【0179】
上記試料をサーモサイクラーに設置し、一般的な増幅プログラムに従う:50℃、30分;94℃、2分;(94℃、30秒;60℃、30秒;68℃、30秒)をデフェンシンについて32サイクル及びアクチンについて30サイクル;72℃、10分;14℃、無限。
【0180】
増幅した後、生成物を、アクチンの増幅生成物3μL+hBD2の増幅生成物6μL+hBD3の増幅生成物6μLの割合で混合する。充填バッファーと水(2/3)の混合物5μLを添加して最終的に20μLとし、あらかじめ注いでおいた2%アガロースゲルにのせる。上記試料を30分間で電気泳動し、そのバンドを暗室で紫外線を照射して視覚化し、デジタルカメラで撮影する。
【0181】
スクリーニング方法の第二段階
実施例1に記載の方法で抽出した1〜2×106個の包皮のケラチノサイトは、Hyclone IIウシ血清を10%、アスコルビン酸−2−リン酸を最終濃度1mM、EGFを最終濃度10ng/mL、ヒドロコルチゾンを最終濃度0.4μg/mL、ウムリン(umulin)を最終濃度0.12IU/mL、アイスプレルを最終濃度0.4μg/mL、トリヨードチロニンを最終濃度2×10−9M、アデニンを最終濃度24.3μg/mL、ペニシリンを最終濃度100IU/mL、アンホテリシンBを最終濃度1μg/mL、ゲンタマイシンを最終濃度20μg/mL加えたDMEM−Glutamax/Ham F−12(3/1 v/vの割合)培地中で、層の下にあらかじめ繊維芽細胞の栄養分を播種してある容器型のBoyden挿入片(空隙率0.4μm、直径10mmの膜)に播種し、3日間浸漬させて培養する。
【0182】
上記培養したケラチノサイトはこの後、ウシ血清、ヒドロコルチゾン、アイスプレル、トリヨードチロニン及びウムリン(umulin)を除く以外は上記浸漬培養に用いたものと同じ培地中で気液界面に11日間おく。
【0183】
実験の最後に、上記再構成表皮を以下の通りに処理する。
−試料の1つには何の処理もしない(対照細胞を含むモデル=ネガティブコントロール)。
−試料の1つには上記活性物質での処理はしないが培養の最後に様々なストレスを与える(ストレス細胞を含むモデル=ポジティブコントロール)、例えばTNFα100ng/mL、IFNγ100ng/mLの存在下で培養する。
−試料の1つには上記活性物質(培地中1%、24時間)の処理を行い、その後ストレス(ポジティブコントロールと同等)を与える。
【0184】
この後、上記再構成表皮を活性物質の存在下又は非存在下で更に24時間培養し、PBS中で洗浄した後、全RNAを抽出して96ウェル分光光度計で260nm及び280nmにて測定する。上記RNAは5ng/μLに希釈し、上記に記載の方法で処理する。
【0185】
分析:
上記ゲルの写真を画像処理ソフトで解析し、バンドの濃さを定量する。hBD2/アクチン及びhBD3/アクチンのバンドの濃さの割合を、一方ではストレスを受けない状態での単層モデルと三次元モデル(再構成表皮)について、もう一方ではストレスの影響を受けた状態(TNFβ又はIFNγで処理した細胞)での場合について比較する。
【0186】
次の表は、三次元再構成表皮モデルと比較した単層におけるhBD2及びhBD3の発現(モデルはストレスを受けていない対照細胞を用いる)を示す。
【0187】
【表10】

【0188】
次の表は、三次元再構成表皮モデルと比較した単層におけるhBD2及びhBD3の発現に与えるストレスの影響を示す。
【0189】
【表11】

【0190】
細菌の攻撃を模倣したストレスを受けている間に皮膚の細胞が示すデフェンシンの合成反応は防御反応であり、化学的な攻撃が起こらないのに皮膚のデフェンシンを刺激することができる活性源を見つけるためにはこれを模倣することが求められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのトランスクリプトームのパラメーターに生じた変化を同定する方法であって、
a)ストレス細胞と呼ばれる、ストレスにさらされている、三次元組織モデルで培養された生細胞のmRNAを回収する段階
(前記組織モデルは、(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン若しくは繊維素からなるゲル、薄膜若しくは膜、又は、
(ii)1つ以上のグリコサミノグリカン類若しくはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる多孔性マトリックス
より選択されるマトリックス担体を含み、
前記マトリックス担体は、間質細胞又は上皮細胞を含む)、
b)対照細胞と呼ばれる、前記と同様のストレスにさらされていない、a)段階で規定された三次元組織モデルで培養された生細胞のmRNAを回収する段階、
c)対照細胞から回収したmRNAの発現レベルとストレス細胞から回収したmRNAの発現レベルとを、前記mRNAに対して行った比較トランスクリプトーム解析により比較する段階からなり、
前記mRNAに対して行った比較トランスクリプトーム解析を行うことによりストレス細胞と呼ばれる細胞のトランスクリプトームと対照細胞と呼ばれる細胞のトランスクリプトームとの差を同定することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記組織モデルは、
(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン若しくは繊維素からなるゲル若しくは膜、又は、
(ii)1つ以上のグリコサミノグリカン類若しくはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる多孔性マトリックス
より選択されるマトリックス担体(前記マトリックス担体は間質細胞を含む)を含む再構成真皮であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織モデルは、
ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなる薄膜又は膜を含むマトリックス担体(前記マトリックス担体は上皮細胞を含む)を含む再構成表皮であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組織モデルは、
(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン若しくは繊維素からなるゲル若しくは膜、又は、
(ii)1つ以上のグリコサミノグリカン類若しくはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる多孔性マトリックス
より選択されるマトリックス担体(前記マトリックス担体は間質細胞を含む)を含む再構成絨毛膜であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組織モデルは、
ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン又は繊維素からなる薄膜又は膜を含むマトリックス担体(前記マトリックス担体は上皮細胞を含む)を含む再構成上皮であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組織モデルは、上皮部と真皮部とからなる再構成皮膚であり、
前記再構成皮膚は、
(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン若しくは繊維素からなるゲル若しくは膜、又は、
(ii)1つ以上のグリコサミノグリカン類若しくはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる多孔性マトリックス
より選択されるマトリックス担体(前記マトリックス担体は、真皮部に間質細胞を、上皮部に上皮細胞を含む)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組織モデルは、上皮部と絨毛膜部とからなる再構成粘膜であり、
前記再構成粘膜は、
(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン若しくは繊維素からなるゲル若しくは膜、又は、
(ii)1つ以上のグリコサミノグリカン類若しくはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる多孔性マトリックス
より選択されるマトリックス担体(前記マトリックス担体は、絨毛膜部に間質細胞を、上皮部に上皮細胞を含む)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記a)段階が以下の段階:
a1)前記三次元組織モデルにおいて対照細胞と呼ばれる細胞を1種以上播種する段階
a2)前記モデルをストレスにさらす段階(前記細胞はこのことよりストレス細胞と呼ばれる)
を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記a)段階が以下の段階:
a1)1種以上の生細胞をストレスにさらす段階(前記細胞はこのことよりストレス細胞と呼ばれる)
a2)前記三次元組織モデルにおいて、前記ストレス細胞を用いる段階
を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ストレスは、
(i)物理的ストレス(UVA、UVB、日光、赤外線、近赤外線、熱、磁場、マイクロ波及び携帯電話の電波を包含するヘルツ放射線、β、γ及びX線を包含する電離放射線から選択されたストレス)、
(ii)物理化学的ストレス、
(iii)生物学的ストレス、又は、
(iv)力学的ストレスであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ストレス細胞は、
(1)手や顔から採取される生検材料由来の細胞、あるいは、
(2)物理的ストレス(UVA、UVB、日光、赤外線、近赤外線、熱、磁場、マイクロ波及び携帯電話の電波を包含するヘルツ放射線、β、γ及びX線を包含する電離放射線から選択されたストレス)、物理化学的ストレス、生物学的ストレス及び/又は力学的ストレスによりストレスを受けている細胞
であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対照細胞は、胸部、腹部、若しくは、包皮から取り出した細胞、又は、
(i)物理的ストレス(UVA、UVB、太陽放射型、又は、磁場由来の放射線)、(ii)化学的ストレス、(iii)生物学的ストレス、若しくは、(iv)力学的ストレスによるストレスを受けていない細胞であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ストレス細胞は少なくとも一体のヒト又は少なくとも一体の動物由来の細胞であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記トランスクリプトーム解析が、RNAアレイ、cDNAアレイ、逆転写ポリメラーゼ多重連鎖反応(RT−PCR−multiplex)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)又はリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)
から選択される少なくとも1つの解析を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記組織モデルは細胞の代謝を少なくとも部分的に維持している条件下で培養又は保存されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記間質細胞が繊維芽細胞であり、前記上皮細胞がケラチノサイトであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記モデルは、正常、健康若しくは異常細胞、又は、細胞系由来の細胞を含むものであることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記上皮部が上皮細胞、色素細胞、免疫担当細胞、神経細胞又はこれらのすべての細胞を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項19】
用いられる前記組織モデルは更に、内皮細胞(EC)、免疫細胞、マクロファージ、樹状細胞、脂肪細胞、及び、皮膚の付属器からなる群より選択される少なくとも1種の細胞を含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
細胞代謝の差を少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つスクリーニングする方法であって、
前記方法が、請求項1に記載の方法でトランスクリプトームの差を同定する段階、及び、細胞代謝の前記差を変換することができる物質をスクリーニングする段階を含む方法。
【請求項21】
細胞代謝の差の少なくとも1つが変性することを防止することができる潜在的活性物質を少なくとも1つスクリーニングする方法であって、
前記方法が、請求項1に記載の方法でトランスクリプトームの差を同定する段階、及び、細胞代謝の前記差が変性することを防止することができる物質をスクリーニングする段階を含む方法。
【請求項22】
A/前記潜在的活性物質を、前記潜在的活性物質を作用させるのに十分な時間、三次元組織モデルに播種した請求項1に記載の対照細胞と接触させて配置すること、細胞にストレスを与えることによりストレス細胞を得、前記ストレス細胞のmRNAを回収すること
B/前記ストレス細胞における細胞の代謝に対する前記物質の作用を検討するために、部分的に又は完全に、前記ストレス細胞からのmRNAに実行したトランスクリプトーム解析を行うこと
C/前記潜在的活性物質の存在下の前記ストレス細胞における細胞の代謝を、コントロール細胞と呼ばれる、前記物質の非存在下の前記ストレス細胞における細胞の代謝と比較すること
D/前記ストレス細胞のトランスクリプトームにおける前記潜在的活性物質の活性の有無を明らかにすること
を含むことを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
a)変化が生じた生物学的パラメーターを持ったストレスにさらされている細胞(ストレス細胞と呼ばれる)を、少なくとも1つの潜在的活性物質の存在下で、前記ストレス細胞における細胞の代謝に対して前記潜在的活性物質を作用させるのに十分な時間、培養すること
(前記ストレス細胞は、三次元組織モデルに播種したものであり、
前記組織モデルは、
(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン若しくは繊維素からなるゲル、薄膜若しくは膜、又は、
(ii)1つ以上のグリコサミノグリカン類若しくはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる多孔性マトリックス
より選択されるマトリックス担体を含み、
前記マトリックス担体は、間質細胞又は上皮細胞を含む)
b)前記ストレス細胞のmRNAを回収すること
c)b)段階で得られたストレス細胞のmRNAに、部分的に又は完全に、トランスクリプトーム解析を行うこと
d)c)で行った解析と、コントロール細胞と呼ばれる前記潜在的活性物質の非存在下に三次元組織モデルで培養した生細胞から回収したmRNAについての、部分的な又は完全なトランスクリプトーム解析とを比較すること
e)d)での解析の比較に続いて、ストレス細胞のトランスクリプトームの差を少なくとも1つ変換することができる活性物質を少なくとも1つ結果的に同定すること
を含む、ストレスにさらされた細胞を同じストレスにさらされていない細胞と比較することにより細胞のトランスクリプトームの差を少なくとも1つ変換することができる潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法。
【請求項24】
a)潜在的活性物質を、前記潜在的活性物質を作用させるのに十分な時間、三次元組織モデルに播種した請求項1に記載の対照細胞と接触させて配置すること、及び、細胞にストレスを与えることによりストレス細胞を得ること
(前記三次元組織は、
(i)ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブロネクチン若しくは繊維素からなるゲル、薄膜若しくは膜、又は、
(ii)1つ以上のグリコサミノグリカン類若しくはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる多孔性マトリックス
より選択されるマトリックス担体を含み、
前記マトリックス担体は、間質細胞又は上皮細胞を含む)
b)前記ストレス細胞のmRNAを回収すること
c)a)段階で培養したストレス細胞から回収したmRNAに、部分的に又は完全に、トランスクリプトーム解析を行うこと
d)c)で行った解析と、コントロール細胞と呼ばれる前記潜在的活性物質の非存在下に三次元組織モデルで培養した生細胞から回収したmRNAについての、部分的な又は完全なトランスクリプトーム解析とを比較すること
e)d)での解析の比較に続いて、ストレス細胞の細胞トランスクリプトームの少なくとも1つの差の変化を防止することができる活性物質を少なくとも1つ結果的に同定すること
を含む、ストレスにさらされた細胞を同じストレスにさらされていない細胞と比較することにより細胞の細胞トランスクリプトームの少なくとも1つの差の変化を防止することができる前記潜在的活性物質を少なくとも1つ同定する方法。

【公開番号】特開2009−131251(P2009−131251A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282923(P2008−282923)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【分割の表示】特願2007−47595(P2007−47595)の分割
【原出願日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願人】(500226948)ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス (21)
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean−de−Dieu 69007 LYON, FRANCE
【Fターム(参考)】