説明

ストレスに曝されて改変された酵母エキスおよびこれに関連する組成物の化粧品としての使用

ストレスに曝された酵母エキス中にある金属錯体型のペプチド画分および/またはカルシウム流入抑制剤を含む化粧組成物と、剥離効果、抗老化、抗脂質、抗炎症、および/または皮膚の色を薄くする利益、および/または髪の色を薄くする利益をもたらすように、該組成物を使用する方法を開示する。該組成物は、皮膚の老化、炎症、脂質の合成、およびメラニン生成に関連する少なくとも一つの生化学的経路を調節できる活性を有すると考えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ストレスに曝された酵母エキスの金属錯体型のペプチド画分を含み、皮膚または髪に局所的に塗布する組成物と、皮膚または髪に特定の利益を与えるように、該組成物を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
消費者は、皮膚と髪の外観を改善することを求め続けている。消費者は、変色または過度の色素沈着、発赤および/または炎症と同様に、目に見える老化の兆候、つまり、皮膚表面での油分と脂質の過剰生成に関心がある。したがって、抗老化、抗炎症、抗脂質、および/または淡色化効果をもたらす製品がなお求められている。
【0003】
皮膚や髪の色素は、表皮または毛髪繊維に存在するメラニンレベルによって決定される。表皮には、3つの異なる種類のメラニンが存在する。つまり、黒みがかった色のDHIメラニン、茶色がかった色のDHICAメラニン、および赤みがかった色のフェオメラニンである。メラニンは、色素細胞(メラノサイト)内のメラノソームと呼ばれる特殊な細胞小器官で合成される。該プロセスは、酵素であるチロシナーゼがアミノ酸であるチロシンに作用して開始する。メラニン合成は、チロシナーゼの活性、マイクロフタルミア誘導性転写因子(MITF)の活性、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)などのホルモンによるシグナル伝達、酸化ストレス、および他の因子などの多数の細胞内因子によって制御される。
【0004】
非特許文献1および非特許文献2に示されるように、炎症も皮膚の変色に寄与し、皮膚の外観に有害な影響を及ぼす。例えば、炎症性のにきびの病害によって、瘢痕が生じる可能性がある(非特許文献3)。非特許文献4ないし非特許文献6に示されるように、炎症の累積的な変性効果によって、人間の皮膚の寿命は内因的(年齢とともに)かつ外因的(光によって)に悪化されることが分かった。主要な炎症仲介物質、つまり、腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)は、急性と慢性の両方の皮膚の炎症の原因になると考えられている。
【0005】
また、コラーゲンの合成と分解が役割を果たす皮膚の問題が共通する。コラーゲンI、つまり、皮膚中でのコラーゲンタイプの減少は、皮膚のハリと弾性に関係し、老化に関連する皺の原因になる。コラーゲンは、体内の主要な構造タンパク質であり、コラーゲンによって、皮膚の強度、耐久性、および平滑でふっくらとした外観が得られる。コラーゲンは、真皮内に配置される特定の皮膚細胞である繊維芽細胞によって生成される。生成プロセスには、プレプロコラーゲンIをプロコラーゲンIIに転換し、最終的に、コラーゲン繊維を形成する形態であるトロポコラーゲンに転換することが含まれる。非特許文献7に示されるようにコラーゲンIは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によって皮膚中で低減される。MMPは、関連する亜鉛依存性プロテアーゼのファミリーであり、該MMPには、メタロプロテアーゼ(MMP−1、−8、および−13)とゼラチナーゼ(MMP−2および9)が含まれる。
【0006】
ヒアルロン酸は、皮膚の別の成分であり、美的な外観を保つ役割を果たす。ヒアルロン酸は、皮膚中において、細胞外基質(ECM)の一部として発見されたグリコサミノグリカン(GAG)である。しかしながら、非特許文献8ないし10に示されるように、年齢とともに、GAGの合成と皮膚でのGAGの全含有量は減少するようである。非特許文献11ないし15に示されるように、このGAGの減少は、皮膚の機械的特性の年齢に応じた変化に寄与すると考えられている。例えば、該変化には、ふくよかさとフリーラジカルに対する保護の変化と同様に、組織の水和の変化が含まれる。
【0007】
皮膚中の角質除去用酵素の活性も、美しく若々しい外観を保つ役割を果たす。皮膚の最外層である角質層において、細胞間の結合は、主に、コーネオデスモゾーム(corneodesmosomes)として知られるタンパク質に依存する。皮膚が再構築され再生している間、死細胞は、コーネオデスモゾームを破壊する天然プロテアーゼの作用によって、皮膚の表面から剥がれ落ちて、剥離が助長される。非特許文献16に示されるように、ヒト組織カリクレイン(KLK)は、角質層に存在するプロテアーゼのファミリーであり、コーネオデスモゾームの代謝回転に直接的に関与するものとして知られる。
【0008】
脂質の過剰生産も、髪の外観と同様に、皮膚の外観に影響を及ぼす。例えば、皮脂の過剰な分泌は、脂性肌、油毛症、および、にきびに関係する。つまり、皮下脂肪の過剰な蓄積は、セルライトになる可能性がある。セルライトは、塊が多く不均等型の脂肪であり、主に、臀部と太腿に蓄積され、「みかん膚」または「コテージチーズ」のような見た目の原因になる。脂質代謝の一部は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)によって制御される。該ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体によって、一群の核転写因子が形成される。特に、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマは、脂肪細胞の分化と脂肪細胞によるエネルギーの貯蔵に好適であるフィードフォワード経路において重要であると考えられている。
【0009】
望ましくない皮膚または髪を再生する生理的プロセスの多くには、真核微生物のカウンターパートが含まれ、例えば、酵母と酵母エキスが、化粧品用途で用いられてきた。例えば、熱、紫外線、または他のストレスに反応して、酵母が、細胞増殖または生存能力を促進する因子を産生することが知られている(例えば、特許文献1参照)。皮膚に及ぼされる特定のストレスの影響を打ち消すことを目的とする化粧品用途で使用するために、このような因子を含むストレスに曝された酵母溶解物が、開示され指摘されてきた。例えば、紫外線ストレスに曝された酵母溶解物が化粧品用途で使用されてきた(例えば、特許文献2ないし特許文献4参照)。最近では、オゾンストレスに曝された酵母エキスが、オゾンの有害な影響から皮膚細胞を保護するのに有用であると開示されている(例えば、Scholzらによる特許文献5および特許文献6、並びに特許文献7および特許文献8)。それにも関わらず、これらの初期のケースでは、特定の化粧用途は認識されていないし、細胞溶解物内の有効成分は同定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第2239345号明細書
【特許文献2】米国特許第5643587号明細書
【特許文献3】米国特許第5676956号明細書
【特許文献4】米国特許第5776441号明細書
【特許文献5】米国特許第6461857号明細書
【特許文献6】米国特許第6858212号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0198682号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0110815号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ruiz-Maldonado et al.(1997) Semin Cutan Med Surrg.16(1):36-43
【非特許文献2】Tomita et al.(1989) Dermatologica 179 Suppl 1:49-53
【非特許文献3】Holland et al.Semin Cutan Med Surg.2005 Jun;24(2):79-83
【非特許文献4】Pillai,et al.(2005) Int J Cosmet Sci.Feb;27(1):17-34
【非特許文献5】Bissett,et al.(1990) Photodermatol.Photoimmunol.Photomed.7:153-8
【非特許文献6】Thornfeldt, CR (2008) J.Cosmet.Dermatol.7:78-82
【非特許文献7】Gross J,et al.Biochem Biophys Res Commun 1974;61:605-12
【非特許文献8】Smith et al.J.Invest.Dermatol., 1962,39,pages 347-350
【非特許文献9】leoschmajer et al.Biochim.Biophys.Acta,1972,279,pages 265-275
【非特許文献10】Longas et al.Carbohydr.Res.,1987,159,pages 127-136
【非特許文献11】Carrino et al.,Arch Biochem Biophys.2000 Jan 1;373(1):91-101
【非特許文献12】Vogel et al.,Z Gerontol.1994 May-Jun;27(3):182-5
【非特許文献13】Lanir et al.,J Biomech Eng.1990 Feb;112(1):63-9
【非特許文献14】Wiest et al.J Dtsch Dermatol Ges.2008 Mar;6(3):176-60
【非特許文献15】Bert et al.Biortheology.1998 May-Jun;35(3):211-9
【非特許文献16】Kishibe M et al.J.Biol.Chem.2006;282:5834-5841
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そのため、剥離性、抗老化、抗脂質、抗炎症性、および/または皮膚(または髪)の淡色化効果を含む更なる皮膚への利益を効果的にもたらす、明確に定義された化粧組成物が、なお要求されている。したがって、本発明の目的は、メラニンの合成、TNFaの生成、PPARを介したシグナル伝達、および/またはメタロプロテアーゼ活性を低減し、及び/またはコラーゲンの合成、ヒアルロン酸の生成、および/またはKLK活性を増大させる組成物と方法を提供することである。本発明の更なる目的は、該組成物を用いて、皮膚または髪の外観全体を改善し、必要に応じて、皮膚と髪の色を薄くすることである。
【0013】
前述の議論は、当該技術が直面している問題の本質を明確に理解するために示しているに過ぎず、先行技術であることを容認したものとして解釈されるべきではなく、あるいは、本明細書中の参考文献の引用は、該参考文献が、本出願について、「従来技術」を構成することを容認したものとして解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的と他の目的に従うと、驚くべきことに、ストレスに曝された酵母から誘導され、金属イオンと錯体形成した特定のペプチド画分によって、メラニンの合成、TNFaの生成、PPARを介したシグナル伝達、および/またはコラーゲンの分解を低減でき、および/またはコラーゲンの合成、ヒアルロン酸の生成、および/またはKLK活性を増大できるので、前記特定のペプチド画分が、皮膚と髪の外観を改善するのに有益な因子であることが分かった。さらに驚くべきことに、色素細胞へのカルシウムの流入を抑制することによって、メラニン合成は低減されるので、過度の色素沈着を低減する新たなアプローチを提供できることが分かった。
【0015】
本発明の一態様は、化粧組成物中で用いる改変された酵母ペプチド画分に関する。特に、改変された酵母ペプチド画分を含む組成物が提供される。該改変された酵母ペプチド画分には、配列番号1からなるペプチドが含まれていて、該ペプチドは、金属イオン、好ましくは、亜鉛などの2価の金属イオンと錯体形成する。該組成物によれば、抗脂質、抗炎症、および/または皮膚淡色化剤のような用途と、剥離作用を増強し、および/または目に見える皮膚の老化の兆候を処置および/または防ぐ用途が見出される。ある実施形態では、メラニンの合成、TNFaの生成、および/またはPPARを介したシグナル伝達のうちの少なくとも1つを低減するのに十分な量の改変されたペプチド画分が存在する。老化の兆候に対抗することを目的とするある実施形態では、メタロプロテアーゼ活性を低減し、コラーゲン合成を増大し、ヒアルロン酸生成を増大し、および/またはKLK活性を増大するのに十分な量の改変されたペプチド画分が存在する。
【0016】
本発明の別の態様は、人間の皮膚に少なくとも1つの利益をもたらすために、改変された酵母ペプチド画分を含む組成物を、化粧品として使用することに関する。該改変された酵母ペプチド画分には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれている。このような利益には、以下のものが含まれる。
(a)小皺または皺の処置および/または予防
(b)皮膚の細孔の大きさの低減
(c)皮膚の厚さ、ふくよかさ、および/またはつっぱり感の改善
(d)皮膚のしなやかさおよび/または柔らかさの改善
(e)皮膚の色調、輝き、および/または透明感の改善
(f)皮膚のきめ、および/または再組織化(retexturization)の促進
(g)皮膚バリア修復、および/または機能の改善
(h)皮膚輪郭の外観の改善
(i)皮膚のつや、および/または明るさの回復
(j)皮膚の必須栄養素、および/または必須成分の補充
(k)閉経により減少する皮膚外観の改善
(l)皮膚の保湿、および/または水和の改善
(m)皮膚の弾力および/または弾力性の増大および/または損失の防止
(n)プロコラーゲンおよび/またはコラーゲン合成の改善
(o)皮膚の弛みまたは萎縮の処置および/または防止
(p)剥離効果の向上および/または乾燥の低減
(q)皮膚への過度の色素沈着の治療および/または予防
(r)発赤、浮腫、および/または腫張などの炎症の治療および/または予防
(s)過度の皮脂の産出の治療および/または予防
(t)セルライトの治療および/または予防
【0017】
該組成物は、治療を要する皮膚に塗布することができ、該皮膚は、該組成物によって、剥離性、抗老化、抗脂質、抗炎症、および/または皮膚(または髪)の淡色化効果の利益を得ることができる。ある実施形態では、有効量の改変された酵母ペプチド画分は、化粧品に許容されるビヒクル中に供給にされ、所望の効果を得るのに十分な時間で、皮膚の一領域に局所的に塗布される。好適な局所製剤には、ローション、クリーム、軟膏、美容液、ゲル、またはスティックが含まれる。特定の実施形態では、改変された酵母ペプチドは、髪の色を薄くするように使用される。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、カルシウム流入抑制剤を用いて、過度の色素沈着を治療することに関する。カルシウム流入抑制剤は、カルシウムが色素生成細胞に侵入するのを防止することによって、メラニンの合成を低減できる。好適なカルシウム流入抑制剤には、改変された酵母ペプチド画分とホウ酸2−アミノエチルジフェニルが含まれ、該酵母ペプチド画分には、亜鉛錯体型の配列番号1からなるペプチドが含まれる。ある実施形態では、有効量のカルシウム流入抑制剤は、化粧品として許容されるビヒクル中に供給され、色素が過度に沈着した皮膚の領域に局所的に塗布されて、患部の色を薄くする。ある実施形態では、前記抑制剤は、少なくとも一種の他のスキンライトナーと組み合わされる。ある実施形態では、カルシウム抑制剤は、髪の色を薄くするように使用される。
【0019】
本発明のこれらの態様と他の態様は、本発明の以下の詳細な説明を参照すれば、さらに理解できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
驚くべきことに、金属錯体型の配列番号1からなるペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分は、色素細胞内へのカルシウムの流入を抑制することによって、メラニン合成を低減できることが分かった。さらに驚くべきことに、改変された酵母ペプチド画分は、TNFaの生成を低減でき、PPARを介したシグナル伝達を低減でき、メタロプロテアーゼ活性を低減でき、コラーゲンの合成を増大でき、ヒアルロン酸の生成を増大でき、および/またはKLK活性を増大できることが分かった。
【0021】
これらの発見と他の発見を考慮すると、局所組成物は、皮膚の損傷と皮膚の老化の兆候に対処するのに有用であるとともに、皮膚(または髪)の色を薄くし、炎症を低減し、剥離効果を高め、および/または脂質の過剰生成を制御するのに有用であると考えられる。皮膚の損傷と皮膚の老化の兆候の対処には、小皺と皺の低減、皮膚のハリとふくよかさの保持、皮膚の保水性と弾力性の改善、皮膚のつやと明るさの回復、および皮膚の老化の他の関連する兆候を打ち消すことが含まれる。色素細胞へのカルシウム流入を抑制する他の化合物によって、皮膚および/または髪の色を薄くする用途が見出されることがさらに考えられる。
【0022】
(改変された酵母ペプチド画分とその金属錯体型のペプチド)
本発明の一態様は、ストレスに曝された酵母エキスの改変されたペプチド画分に関する。該画分には、配列番号1で示される配列を有するペプチドが含まれる。ここで、該ペプチドは、金属イオンと錯体を形成する。本明細書では、「金属イオンとの錯体形成」、および「金属錯体」、「金属錯体型」、「金属錯体型誘導体」、「金属イオンとの錯体」などの関連する用語は、中心にあるペプチドが周囲の金属イオンに結合された錯体化合物を指している。金属イオンは、ペプチドの1または複数個の負に帯電したアミノ酸残基と錯体を形成することができる任意の金属カチオンであってもよい。これらに限定される訳ではないが、金属カチオンには、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、ランタノイド、アクチノイド、半金属などのイオン、あるいはこれらの全ての組み合わせが含まれる。典型的には、金属イオンは、M+nの形態からなる。ここで、Mは、何らかの金属または半金属であり、nは1から4の整数、典型的には1または2である。
【0023】
本明細書で使用されるように、「ペプチド」は、ペプチド結合によって一体に結合された2または複数個のアミノ酸を含む任意の構成物を指している。ペプチドの長さは、約2から約200、あるいはそれ以上のアミノ酸が結合した長さであり、完全長タンパク質の一画分に相当する。ここで、前記画分には、天然の完全長タンパク質を構成する全てのアミノ酸が含まれるとは限らない。ある実施形態では、ペプチドは、少なくともアミノ酸が3個結合した長さ、少なくとも4個結合した長さ、少なくとも5個結合した長さ、少なくとも6個結合した長さ、少なくとも8個結合した長さ、少なくとも10個結合した長さ、少なくとも15個結合した長さ、あるいは少なくとも20個結合した長さであってもよい。ある実施形態では、ペプチドの長さは、アミノ酸が約200以下結合した長さ、100以下結合した長さ、50以下結合した長さ、30以下結合した長さ、20以下結合した長さであってもよい。例えば、ある好適な実施形態では、ペプチドには、約20未満のアミノ酸、約15未満のアミノ酸、約10未満のアミノ酸、あるいは配列Phe−Val−Ala−Pro−Phe−Proを含む約6個のアミノ酸が含まれる。
【0024】
ある実施形態では、配列がPhe−Val−Ala−Pro−Phe−Proである6個のアミノ酸の1または複数個を保存的に置換してもよい。適切なアミノ酸の保存的な置換は、当業者に公知であり、一般に、生物学的活性を変えずに実行できる。アミノ酸の置換は、典型的には一残基であるが、複数残基であってもよいし、六量体の配列に沿ってクラスター化されるか分散化されるかのいずれかであってもよい。アミノ酸は、異なる天然型または非従来型のアミノ酸残基で置換されてもよい。このような置換は、「保存的」に分類できる。ここで、ペプチド中に含まれるアミノ酸残基は、極性、側鎖の官能性、および/または大きさの何れかに関して類似の性質を有する別のアミノ酸で置換される。置換例には、PheをMet、LeuまたはTyrで置換すること、ValをIleまたはLueで置換すること、AlaをGlyまたはSerで置換することが含まれる。
【0025】
ペプチドには、一般に20種の天然型アミノ酸と呼ばれている20種のアミノ酸以外のアミノ酸が含まれてもよく、末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸は、グリコシル化や他の翻訳後修飾などの天然プロセス、あるいは当該技術分野において公知の化学修飾法のいずれかによって、所定のペプチド中で修飾されてもよいことがさらに理解されるであろう。これらに限定される訳ではないが、本発明のペプチド中に存在する可能性がある公知の修飾の中には、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、分岐、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、ジメチル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、酸化、リン酸化、フェニル化、ラセミ化、セレノイレーション(selenoylation)、硫酸化、およびユビキチン化が含まれる。
【0026】
ある実施形態では、ペプチドは、配列番号1に対応するアミノ酸配列から、実質的に構成される。「実質的に構成される」は、ペプチドが、追加の配列と、メラニン合成、TNFa生成、PPARを介したシグナル伝達、および/またはコラーゲンの分解を有効に低減し、および/またはコラーゲン合成、ヒアルロン酸生成、および/またはKLK活性を有効に増大するペプチドの能力に物質的に影響を及ぼす他の組成成分を除外することを意味している。そのような機能に影響を及ぼす能力は、例えば、本明細書で説明されるインビトロ分析法(以下の実施例1−7と13参照)、または、メラニン合成、TNFa生成、PPARの発現またはPPARを介したシグナル伝達、コラーゲン合成、コラーゲン分解、ヒアルロン酸生成、および/またはKLK活性を試験するために、当該技術分野で公知の他の分析法などの分析法を用いて、当業者によって決定される。
【0027】
本発明の改変された酵母ペプチド画分は、特定の酵母、例えば、出芽酵母から直接的に得ることができる。例えば、酵母ペプチド画分は、ストレスに曝された酵母エキスから得ることができる。該酵母エキスは、例えば、酵母をストレスに曝した後に、細胞を溶解する当業者に公知の標準的な発酵プロセスを用いて、栄養培地で酵母を成長させて調製される。成長した細胞は、1または複数のストレス、一般的には、亜致死量に曝される。ストレスには、例えば、熱、紫外線、x線、過酸化水素、オゾン、汚染物質、化学的損傷、または他の悪条件が含まれる。「ストレスに曝された酵母」とは、1または複数のこのようなストレスに曝された酵母のことである。「ストレスに曝された酵母エキス」とは、栄養培地で成長され、ある部分を1または複数のストレスに曝した後に、酵母成分を含む組成物を得るために殺された酵母から得た溶解物のことである。「酵母エキス」は、栄養培地で成長した後に、酵母成分を含む組成物を得るために殺された酵母から得た溶解物を指している。これに限定される訳ではないが、酵母成分には、細胞のタンパク物質、細胞の核物質、細胞の細胞質物質、細胞の原形質物質、細胞壁の成分、および/または普通ブイヨンが含まれる。「酵母」という用語には、単一の酵母細胞、複数の酵母細胞、および/または酵母細胞の培養が包含される。
【0028】
使用される酵母は、当業者に公知の種々の属に属するものであってもよく、上述の属の中から、配列番号1からなるペプチド得られることが決定される。理論に拘束されることを望むものではないが、タンパク質を含み、ストレスの有害効果を打ち消すことができる細胞成分を生成することによって、酵母を紫外線などのストレスに反応させることが提案される。本明細書で教示されるように、該細胞成分は、驚くべきことに、人間の皮膚細胞に異なる利益と追加的な利益をもたらすことも分かっている。このようなタンパク質の発現は、ストレスに応答して誘発されたり、上方制御されたりしてもよい。誘発され、あるいは上方制御されたタンパク質は、酵母の「熱ショックタンパク質」(hsp)と命名されたタンパク質を含む。該タンパク質は、「ストレス反応タンパク質」とも呼ばれる(特許文献1を参照されたい)。例えば、ストレスにより不能になった細胞の機能を取り替えることによって、あるいは、タンパク質の折り畳み構造を改変するなどの自然構造を保護する分子シャペロンとして作用することによって、悪条件に直面したときに、熱ショックタンパク質が、細胞の分裂増殖および/または細胞生存性を改善することが知られている。
【0029】
例えば、紫外線露光などのストレスに応答して誘発されたり、上方制御される酵母タンパク質は、比較二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて、ストレスに曝された酵母エキス中に存在するタンパク質と、同じストレスに曝されていない酵母のエキス中に存在するタンパク質とを比較して決定することもできる(例えば、特許文献8を参照されたい)。ストレスに応答して発現が変化する酵母遺伝子を同定する、例えば、ストレスに応答して、どの遺伝子が、誘発され、上方制御され、発現せず、あるいは下方制御されるかを決定するために、他のアプローチには、酵母遺伝子マイクロアレイを作動することが含まれる。このような比較によれば、ストレスに応答して誘発され、あるいは上方制御される、多くの酵母の熱ショックタンパク質を表すことができ、同定されたタンパク質が、配列番号1を含むか否かを決定するために、同定されたタンパク質を分析することもできる。これらに限定される訳ではないが、分析される可能性がある異なる酵母には、アルスロアスカス(Arthroascus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ボトリオアスカス(Botryoascus)、ブレタノマイセス(Brettanomyces)、カンジタ、シテロマイセス(Citeromyces)、クラビスポーラ(Clavispora)、シプトコッカス(Cryptcoccus)、デバリオマイセス(Debaryomyces)、デッケラ(Dekkera)、フィロバジディウム(Filobasidium)、ギラモンデラ(Guilliermondella)、ハンゼヌラ(Hansenula)、ハンゼニアスポーラ(Hanseniaspora)、ホルモアスカス(Hormoascus)、クロッケラ(Klockera)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ロイコスポリジウム(Leucosporidium)、リポマイセス(Lipomyces)、マラセジア(Malassezia)、メチニコビア(Metshnikowia)、ナドソニア(Nadsonia)、ネマストポラ(Nematospora)、オースポリジウム(Oosporidium)、パチソレン(Pachysolen)、パチチチョスポラ(Pachytichospora)、ペニシリウム(Penicillium)、ピチア(Pichia)、プロトテカ(Prototheca)、ロードスポディリウム(Rhodosporidium)、ロドトルラ(Rhodotorula)、サッカロミケス(Saccharomyces)、サッカロミコデス(Saccharomydodes)、サッカロミコプシス(Saccharomycopsis)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyce)、シュワニオマイセス(Shwanniomyces)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、スポロバチデルミア(Sporopachydermia)、トレメラ(Tremella)、トリコスポロン(Trichosporon)、トリゴノブシス(Trigonopsis)、トルロプシス(Torulopsis)、ウイロプシス(Williopsis)、ヤロウィア(Yarrowia)、ジゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)などが含まれ、それらの組み合わせと同様に、配列番号1からなるタンパク質またはペプチドを生成することが分かっている全ての酵母を使用できる。配列番号1は、出芽酵母の膜貫通タンパク質中でも発見されており、1または複数の他の種類の膜貫通タンパク質、例えば、上で列挙した1または複数の他の酵母種中でも現れる可能性がある。
【0030】
ある実施形態では、使用される酵母は、サッカロミセス属由来である。特定の好適な実施形態では、酵母は、パン酵母としても知られる出芽酵母である。また、ある実施形態では、特定の種類の酵母が排除されてもよい。例えば、ある実施形態では、使用される酵母は、(例えば、仏国特許発明第2904552号明細書や日本国特許第2003252743号公報に記載されたような)ワイン酵母および/または(韓国特許第2005095167号公報に記載されたような)カンジダパラプシロシス(Candida parapsilosis)に含まれるものではない。
【0031】
選択された1または複数種の酵母は、栄養培地または生育培地とも呼ばれる栄養を有する培地上において、制御された温度で成長されてもよい。典型的には、前記培地には、アミノ酸、ペプトン、低分子量ペプチド画分、および他の一般的な増殖培地成分が含まれる。好適な増殖培地は「酵母発酵培地」であり、該培地は、CRCプレスによって刊行されたハンドブック・オブ・マイクロバイオロジカル・メディアに開示されている。酵母を増殖させる方法は、当業者に公知である。例えば、酵母は、開放型の発酵容器で増殖されてもよいし、ニュージャージー州のエジソンにあるニュー・ブランスウィック・サイエンティフィックから市販されている密閉型の生物発酵槽を用いて増殖されてもよい。増殖する細胞は、一般には亜致死量で、1または複数のストレスに曝される場合がある。ストレスには、例えば、熱、紫外線、x線、過酸化水素、オゾン、汚染物質、化学的損傷または他の悪条件が含まれる。典型的には、酵母中での反応を引き起こすため、例えば、熱ショックタンパク質の生成を誘発するために、一定量のストレスが加えられるが、該ストレスによって酵母は亜致死状態になる。亜致死状態とは、ストレスに曝された後に、少なくとも約1%の酵母が生存していることを意味する。ある実施形態では、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、あるいは少なくとも約80%の酵母が、処理後に生存している。
【0032】
ある好適な実施形態では、生存している酵母細胞には、紫外線、より好ましくは286nmの紫外線が照射されて、ストレスが加えられる。上述したように、細胞は、種々の保護物質を生成することによって反応する。例えば、紫外分光光度計を用いて256から258nmでの吸収を測定することによって、細胞の生化学変化を監視できる。紫外線に暴露されている程度によって、熱ショックタンパク質を含むタンパク質の生成とその生成量に影響を及ぼすことができる。酵母の種類、使用される波長、通気速度、温度などに応じて、酵母は、数分から数日間、紫外線に暴露されてもよい。概して、紫外線への暴露は、完全な生化学防御機構が完了するまで、数日間続く。
【0033】
ある実施形態では、酵母の最大限の部分、ほぼ最大限の部分、あるいはかなりの部分が、人間の皮膚または髪に利益を与えるとき、例えば、皮膚または髪の外観を改善するときに有効な細胞成分を生成できる時間の間、酵母は、紫外線の波長に暴露される。特定の好適な実施形態では、酵母の最大限の部分、ほぼ最大限の部分、あるいはかなりの部分が、望ましくない皮膚状態に対して有効な細胞成分を生成できる時間の間、酵母は、紫外線の波長に暴露される。望ましくない皮膚状態には、過度の色素沈着、炎症、脂質の過剰生成、および/または目に見える老化の兆候が含まれる。例えば、酵母の最大限の部分、ほぼ最大限の部分、あるいはかなりの部分が、メラニン合成、TNFa生成、PPARを介したシグナル伝達、およびメタロプロテアーゼ活性を低減でき、および/またはコラーゲン合成、ヒアルロン酸生成、および/またはKLK活性を増大できる細胞成分を生成できる時間の間、酵母は、紫外線に暴露されてもよい。特定の好適な実施形態では、酵母の最大限の部分、ほぼ最大限の部分、あるいはかなりの部分が、少なくとも1種の熱ショックタンパク質を生成できる時間の間、酵母は、紫外線に暴露されてもよい。より好ましくは、熱ショックタンパク質には、1または複数のメラニン合成、TNFa生成、PPARを介したシグナル伝達、およびメタロプロテアーゼ活性を低減でき、および/または1または複数のコラーゲン合成、ヒアルロン酸生成、KLK活性の増大を可能にする少なくとも1個のペプチド部分が含まれる。特定の特に好ましい実施形態では、酵母の最大限の部分、ほぼ最大限の部分、あるいはかなりの部分が、配列番号1からなるペプチド(Phe−Val−Ala−Pro−Phe−Pro)を含む熱ショックタンパク質を生成できる時間の間、酵母は紫外線に暴露される。
【0034】
次に、ストレスに曝された酵母エキスを得るために、ストレスに曝された酵母は、溶解されてもよい。例えば好適なタンパク質分解酵素を用いて、細胞壁を破壊することによって、発酵を停止してもよい。これらに限定される訳ではないが、酵母は、酵素、高速撹拌、自己溶解、生育培地の変更、および/またはpHの変化を含む当業者に公知の種々の方法で溶解されてもよい。典型的には、酵母エキスは、水溶性と非水溶性の成分を含む。非水溶性の成分を分離・除去して、水溶性の成分を含むストレスに曝された酵母エキスを得てもよい。例えば、不溶性の細胞壁物質は、遠心分離機で分離されて、細胞の原形質が回収されてもよい。ある実施形態では、酵母エキスは水溶性、または実質的に水溶性である。典型的に、「水溶性」とは、0.1グラムの酵母成分が1グラムの水に溶けることを意味している。
【0035】
これらに限定される訳ではないが、ストレスに曝された酵母エキスは、所望により、クロマトグラフィ、水蒸気蒸留、溶媒抽出、遠心分離、デカンテーション、濾過、および/または炭素を含む当業者に公知の幾つもの手段によって、さらに精製されてもよい。
【0036】
特定の好適な実施形態では、主要なペプチド画分を分離するために、エキスは、遠心分離、濾過、および/またはクロマトグラフィシステムを用いて分画される。ストレスに曝された酵母エキスを精製すれば、1000〜3000ダルトンの範囲にある分子量が小さいペプチドを豊富にできる。六量体のペプチドPhe−Val−Ala−Pro−Phe−Proからなるペプチドが主要な画分である。ペプチドは、ストレスに曝された酵母エキスの他の成分から実質的に分離でき、該ペプチドには、好ましくは、該ペプチドが誘導される完全長に満たないタンパク質が含まれる。
【0037】
ある実施家形態では、六量体のペプチド自体は、自動化学合成または組み換え手段を用いて合成され、例えば、酵母ペプチド画分中の六量体のペプチドの濃度を人工的に増やすために、酵母ペプチド画分に最添加される。例えば、単一の隣接ペプチドとして、標準的な化学的ペプチド合成を用いて、比較的短い分子が合成されてもよい。固相合成が用いられてもよく、該固相合成においては、配列中の残りのアミノ酸の連続的な添加に続いて、配列のC末端アミノ酸が不溶性の支持体に取り付けられる。固体合成法は、例えば、Barany and Merrifield,Solid−Phase Peptide Synthesis;pp.3 284、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.Vol2:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A、Merrifield,et al.(1963)J.Am.Chem.Soc.,85:2149 2156、Stewart et al.(1984)Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Illに記載されている。
【0038】
また、六量体のペプチドは、組換発現システムを用いて合成されてもよい。概して、組換発現システムには、所望のペプチドを符号化するDNA配列を作成すること、特定のプロモータの制御下において、DNAを発現カセット中に配置すること、ホスト中にペプチドを発現すること、発現したペプチドを分離すること、および、必要に応じて、ペプチドを再生することが含まれる(米国特許第7030231号明細書を参照されたい)。DNA符号化された配列番号1からなるペプチドは、例えば、適切な配列のクローニングと制限、または、Narang et al.(1979)Meth.Enzymol.68:90 99のホスホトリエステル法、Brown et al.(1979)Meth.Enzymol.68:109 151のホスホジエチル法、Beaucage et al.(1981)Tetra.Lett.,22:1859 1862のジエチルホスホロアミジド法、および米国特許第4458066号明細書の固体支持法などの方法による直接化学合成を含む、適切な全ての方法で用意されてもよい。化学的合成によって、一本鎖オリゴヌクレオチドが生成されてもよく、該一本鎖オリゴヌクレオチドは、相補的な配列とのハイブリダイゼーションによって、あるいは、テンプレートとして一本鎖を用いて、DNA重合酵素との重合によって、二本鎖DNAに変換されてもよい。
【0039】
これに代えて、配列は、複製化される場合があり、適切なサブシーケンスは、適切な制限酵素を用いて開裂された。次に、六量体のペプチドを符号化する核酸の配列は、適切な対応する制限サイトを備えるベクターに結合され得る。適切な制限サイトは、特定部位の突然変異によってペプチドを符号化する核酸に加えられてもよい。配列は、骨髄腫細胞株と同様に、COS、CHOおよびHeLa細胞系などの酵母、大腸菌(E.coli)、他の細胞宿主、および種々の高等真核細胞を含む、種々の宿主細胞中に発現してもよい。組換配列は、各ホストの適切な発現制御配列に操作可能に結合される。当業者であれば、生物学的活性を低減せずに、ペプチドに変形を加えることができることを理解しているであろう。分子のクローニングまたは発現を促進するために、いくつかの変形が加えられてもよい。このような変形は当業者に公知であり、該変形には、例えば、開始部位を得るためにアミノ末端にメチオニンを添加すること、あるいは、追加的なアミノ酸(例えば、ポリヒスチジン)を、好適に配置された制限部位を作る末端、終止コドン、あるいは精製配列(purification sequences)の何れかに配置することが含まれる。
【0040】
大腸菌(E.coli)に対する塩化カルシウム形質転換やリン酸カルシウム処理、あるいは哺乳類細胞に対する電気穿孔などの公知の方法によって、発現ベクターを選択したホスト細胞内に輸送できる。プラスミドによって変換された細胞は、発現ベクター上に含まれる遺伝子、例えば、amp、gpt、neoおよびhyg遺伝子によって付与される抗生物質に対する耐性によって選択される。一旦発現すると、硫酸アンモニウム沈殿法、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィなどを含む、当該技術分野で一般的な手順に従って、組換ペプチドを精製できる。概略は、R.Scopes,(1982)Protein Purification,Springer−Verlag,N.Yと、Deutscher(1990)Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification.,Academic Press,Inc.N.Y.を参照されたい。化粧用途に適した形態を付与するために、ペプチドを精製、および/または濃縮できる。当業者に公知のように、ペプチド組成物を試験して、上述のように、化粧用途への適合性を判定できる。次に、配列番号1からなる合成されたペプチドは、上述のように、酵母のペプチド画分に添加できる。主要な画分としてペプチドを含む酵母のペプチド画分と同様に、六量体のペプチドは、ニュージャージー州のサウスプレインフィールドにあるアーチ・パーソナル・ケア・プロダクツ、エル・ピー(Arch Personal Care Products,L.P)(www.archpersonalcare.com)からPeptamide(登録商標)(INCI名はヘキサペプチド−11)として市販されている。
【0041】
次に、酵母のペプチド画分は、1または複数個の金属イオンと錯体を形成して改変されて、改変された酵母のペプチド画分をもたらしてもよい。「改変されたペプチド画分」などの関連する用語とともに、本願明細書で使用されるような「改変された酵母のペプチド画分」は、本願明細書において、1または複数種の金属錯体型ペプチド、つまり、金属イオンと錯体を形成する少なくとも1種のペプチドを含む酵母エキスのペプチド画分を表すのに用いられる。例えば、酵母のペプチド画分は、金属塩水溶液で洗浄されて、画分中において、金属イオンと1または複数種のペプチドとの間で錯体を形成してもよい。これらに限定される訳ではないが、金属塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、ランタノイド、アクチノイド、半金属などの塩、あるいはこれらの何らかの組み合わせが含まれてもよい。特定の好適な実施形態では、金属塩は、二価金属の塩であり、例えば、カルシウム(Ca2+)、銅(Cu2+)、マグネシウム(Mg2+)、マンガン(Mn2+)、ベリリウム(Be2+)、亜鉛(Zn2+)などの金属塩であり、塩には、硫酸塩、臭化物、塩化物、リン酸塩、酢酸塩などが含まれてもよい。ある特定の好適な実施形態では、臭化亜鉛、塩化亜鉛、リン酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、などの亜鉛塩が用いられる。例えば、酵母のペプチド画分は、硫酸亜鉛水溶液、より好ましくは、飽和の硫酸亜鉛水溶液で洗浄されて、配列番号1からなるペプチドと亜鉛の錯体を含む、ペプチドと亜鉛の錯体を形成してもよい。
【0042】
反応が完了した後に、もし何らかの残留アニオンと遊離金属があれば、該アニオンと遊離金属は、イオン交換カラムを用いたクロマトグラフィで除去できる。つまり、形成された金属錯体は、例えば、錯体を形成しない過剰のイオンを除去するために、イオン交換カラムに流される可能性がある。これにより、金属塩と遊離金属イオンが分けられた、実質的に分けられた、あるいは、より完全に分けられた金属錯体ペプチドを得ることができる。得られた組成物は、改変された酵母エキスのペプチド画分である。改変とは添加された金属と錯体を形成することである。配列番号1からなる金属錯体型のペプチドによれば、該改変された酵母エキスのペプチド画分の総重量を基準にして、約0.001重量%〜約5重量%、好ましくは約0.01重量%〜約3重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約2重量%、あるいは約0.1重量%が構成される。改変された酵母のペプチド画分の他の残りの成分には、例えば、他の低分子量ペプチド、オリゴペプチド、砂糖、およびオリゴ糖が含まれてもよい。本願明細書の教示に基づけば、適切な酵母ペプチド画分から配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を生成する他のアプローチは、当業者に明らかである。
【0043】
本発明の化粧組成物は、概して、人間の皮膚に利益をもたらすのに有効な量の改変された酵母ペプチド画分を含み、該改変された酵母ペプチド画分には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。好適な実施形態では、組成物には、メラニン合成、TNFa生成、PPARを介したシグナル伝達、および/またはメタロプロテアーゼ活性を低減し、および/またはコラーゲン合成、ヒアルロン酸生成、および/またはKLK活性を増大するのに有効な量の改変されたペプチド画分、および/または有効な量の配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。特定の好適な実施形態では、化粧組成物には、組成物の総重量を基準にして約0.001重量%〜約5重量%、好ましくは、組成物の総重量を基準にして約0.01重量%〜約3重量%、より好ましくは、組成物の総重量を基準にして約0.1重量%〜約2重量%、あるいは組成物の総重量を基準にして約0.1重量%の量の配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。上述の量は、改変された酵母ペプチド画分の「有効量」、例えば、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドの量を意味している。「有効量」という用語は、改変されたペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドの量を意味していて、希釈剤、溶媒、キャリア、フィラーなどは含まれない。発見されて、ここに記載された化粧組成物は、例えば、以下に詳述されるように、角質除去剤、抗老化剤、抗脂質剤、抗炎症剤、および/または皮膚(または髪)の淡色化剤として使用される。
【0044】
(改変された酵母ペプチド画分と関連する組成物の化粧品への使用)
本発明の他の態様は、改変された酵母ペプチド画分を含む組成物の化粧品への使用に関し、改変された酵母ペプチド画分には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドおよび/または他のカルシウム流入抑制剤が含まれる。驚くべきことに、化粧組成物は、KLK活性、ヒアルロン酸生成、およびコラーゲン合成の1または複数を増大し、および/またはメタロコラゲナーゼ活性、PPARを介したシグナル伝達、TNFa生成、およびメラニン合成の1または複数を低減するように作用するので、それに応じて、角質除去製品、抗老化製品、抗脂質製品、抗炎症製品、および/またはスキン(またはヘア)ライトニング製品としての用途が見出される。
【0045】
ある実施形態では、人間の皮膚に少なくとも1つの利益をもたらす方法が提供される。該方法には、本願明細書に記載された、化粧品に許容されるビヒクル中にある少なくとも1種の組成物を、必要に応じて皮膚に局所的に塗布することが含まれる。該組成物には、有効量の改変された酵母ペプチド画分、配列番号1からなる金属錯体型のペプチド、および/または他のカルシウム流入抑制剤が含まれる。皮膚に特別な利益をもたらす「量的に有効(amount effective)」または「有効量(effective amount)」は、十分な時間で塗布されたときに、特別な皮膚の症状の改善を臨床的に測定できるのに十分な有効量の改変された画分、金属錯体型のペプチド、またはカルシウム流入抑制剤を意味している。これらに限定される訳ではないが、このような利益には、以下のものが含まれる。
(a)小皺または皺の処置および/または予防
(b)皮膚の細孔の大きさの低減
(c)皮膚の厚さ、ふくよかさ、および/またはつっぱり感の改善
(d)皮膚のしなやかさおよび/または柔らかさの改善
(e)皮膚の色調、輝き、および/または透明感の改善
(f)皮膚のきめ、および/または再組織化(retexturization)の促進
(g)皮膚バリア修復、および/または機能の改善
(h)皮膚輪郭の外観の改善
(i)皮膚のつや、および/または明るさの回復
(j)皮膚の必須栄養素、および/または必須成分の補充
(k)閉経により減少する皮膚外観の改善
(l)皮膚の保湿、および/または水和の改善
(m)皮膚の弾力および/または弾力性の増大および/または損失の防止
(n)プロコラーゲンおよび/またはコラーゲン合成の改善
(o)皮膚の弛みまたは萎縮の処置および/または防止
(p)剥離効果の向上および/または乾燥の低減
(q)皮膚への過度の色素沈着の治療および/または予防
(r)発赤、浮腫、および/または腫張などの炎症の治療および/または予防
(s)過度の皮脂の産出の治療および/または予防
(t)セルライトの治療および/または予防
【0046】
本発明の組成物は、上記の何らかの属性または状態の不足または低下に悩まされる皮膚などの治療が必要な皮膚に塗布でき、あるいは、例えば、本願明細書に記載した、組成物の角質除去効果、抗老化効果、抗脂質効果、抗炎症効果、および/または皮膚の淡色化効果から他の利益が得られる。例えば、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドおよび/または他のカルシウム流入抑制剤を含む、改変されたペプチド画分は、化粧品として許容可能なビヒクル中に入れられ、皮膚の所望の領域に局所的に塗布され、皮膚の望ましくない特徴または状態を治療および/または防止し、および/または皮膚の美的な外観を改善するのに有効な量で前記領域上に残存できる。例えば、角質を除去できる利益は、数分内に実現できるのに対し、他の利益は、皮膚上において、長い時間周期を要する場合がある。
【0047】
「皮膚の状態(condition of the skin)」または「皮膚状態(skin condition)」は、本願明細書において、「皮膚障害」に関して互換可能に使用される。「治療する(treat)」または「治療すること(treating)」などの関連する用語と同様に、本願明細書で使用される「治療(treatment)」は、消費者が、皮膚の状態に関して改善または他の治療の利益を知覚するような、治療される皮膚の状態に関する望ましくない特徴の1または複数を根絶し、低減し、回復させ、後退させることを意味している。「予防する(prevent)」または「予防すること(preventing)」などの関連する用語と同様に、本願明細書で使用される「予防(prevention)」は、状態による影響がまだ及ぼされていない皮膚に、防止されるべき皮膚の状態に関する1または複数の望ましくない特徴を回避し、遅延させ、未然に防ぎ、あるいは最小にするのに役立つ利益をもたらすことを意味している。このような予防の利益には、例えば、状態の進行を遅延させること、あるいは、状態が最終的に進行した場合でも、状態に関する1または複数の望ましくない特徴の継続期間、深刻度または強度を低減することが含まれる。
【0048】
(過度の色素沈着)
特定の好適な実施形態では、本願明細書に記載された化粧組成物は、皮膚の過度の色素沈着および/または髪の過度の色素沈着を治療および/または予防するように、例えば、皮膚または髪の色を薄くするように使用できる。ある特定の好適な実施形態では、組成物が、皮膚または髪に、例えば、過度に色素が沈着された皮膚または髪の領域に局所的に塗布される。該組成物には、有効量の改変された酵母ペプチド画分が含まれており、改変された酵母ペプチド画分には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。本願明細書で用いられる「過度の色素沈着」という用語は、特に言及されない限り、「メラニン形成細胞が介在する過度の色素沈着」を意味している。このことは、着色の原因が、専ら、大部分が、あるいは少なくとも実質的に、メラニン形成細胞、つまり、メラニンを合成する色素生成細胞の作用にあることを意味している。
【0049】
過度の色素沈着には、個々の人間の皮膚または髪の着色であって、その人が望むよりも暗い色になるものの全てが含まれ、それらは、メラニン生成細胞が原因となる。このような望ましくない色素沈着は、変色とも呼ばれる。過度に色素が沈着した皮膚の領域には、分離して、あるいは斑に色素が過度に沈着した領域が含まれる。色素が過度に沈着して他と区別される領域は、均一な暗色であって他と区別される領域の場合もあるし、一般に色素斑または「老人斑」と呼ばれる、褐色斑あるいは褐色の染みとして皮膚に現れることもある。色素が過度に沈着した皮膚の斑の領域は、暗色の染みである場合もある。該暗色の染みは、色素が沈着して他と区別される領域に比べて、寸法が大きく、形状が不規則である。色素が過度に沈着した領域には、日に焼けた皮膚、例えば、紫外線に曝されて焼けた皮膚の領域も含まれる。過度に色素が沈着した髪には、望んでいるよりも暗い全ての髪の色合いが含まれる。
【0050】
皮膚への色素の過度の沈着は、例えば、遺伝学、紫外線または太陽への曝露、年齢、瘢痕、または皮膚損傷による変色を含む幾つもの因子が原因となる可能性がある。皮膚損傷には、裂傷、火傷、日焼け、にきび、または他の皮膚疾患などが含まれる。例えば、色素が過度に沈着した皮膚の領域には、メラニン色素斑が含まれる。メラニン色素斑は、顔の皮膚の変色に関する一般的な皮膚障害であり、特に、妊婦に多く、顔面の褐色斑または褐色斑と呼ばれる。メラニン色素(または褐色)斑は、顔面、特に、頬の上部、鼻、唇、上唇、および額に、暗褐色の不規則な斑点として現れる場合がある。斑点は、時間をかけて徐々に現れる場合が多く、一般に、痒くなく、あるいは痛むようなものではないが、個々の外観に負の影響を及ぼす可能性がある。色素が過度に沈着した皮膚の領域とは、例えば、望んでいるよりも褐色になった、あるいは褐色になりつつある腕の下側の領域のことも指している。
【0051】
色素が過度に沈着した皮膚の領域には、当人の望みよりも褐色になった個々の人間の目の下側にある領域が含まれても含まれなくてもよい。該領域は、一般に、「目の下側の隈」あるいは「隈」を指している。隈とは、通常、目の下側にある色素が沈着した半円形の均一な領域のことであり、遺伝、アレルギー、疲労、あるいは他の原因によって生じる。ある実施形態では、過度の色素沈着の治療から、顔面において目の下側にある皮膚の変色および/または波状のたるみを治療することが除外されている。特に、目の下側への過度の色素の沈着は、単なるメラニン形成細胞が介在する過度の色素沈着の問題ではない(例えば、特許文献2を参照されたい)。病因には、皮膚表面の下側への漏れを引き起こす血管透過性の増大などの循環障害、炎症、および環境への暴露が含まれ、通常、公知の色素沈着低下または皮膚の美白化合物によく反応しないことが問題となる。実際、このような場合の目の下側の変色を低減するのに用いる局所組成物には、それ自体は公知のスキンライトナーであるリン酸アスコルビルが高い割合で含まれるので、該局所組成物は、目の下側の皮膚の色を薄くする役割を負っていた。リン酸アスコルビルと本発明の金属錯体型のペプチドを含まなければ、特許文献2に記載されたストレスに曝された酵母エキスは、目の下側に過度に沈着した色素を低減するように作用しないことが、以下の実施例14によってさらに裏付けられている。
【0052】
過度の色素沈着または色素が過度に沈着した皮膚/髪の治療とは、過度の色素沈着に関連する望ましくない特徴の1または複数を根絶し、低減し、回復し、あるいは後退させること、例えば、影響が及ぼされた領域での皮膚または髪の色を知覚可能な程度まで薄く(美白化(皮膚の場合に限る。)、淡色化及び明色化の概念を含む。)することなどを指している。色素が過度に沈着された皮膚の領域の色を薄くすることは、特に、老人斑の低減、日焼けの色を薄くすること、皮膚の色調の均一化または最適化、例えば、過剰な色素が斑状に沈着した領域において、メラニン色素斑や褐色斑、そばかす、火傷後の瘢痕、および受傷後に過度に沈着した色素を治療することに関して望ましい場合がある。色素の過度の沈着または色素が皮膚に過度に沈着するのを防止することは、まだ過度の色素沈着の影響を受けていない皮膚に、皮膚への色素の過度の沈着に関連する1または複数の望ましくない特徴を回避し、遅延させ、未然に防ぎ、最小化する役割を果たす利益をもたらすこと、例えば、最終的に現れる色素が過度に沈着した領域の暗さまたは大きさを低減する利益をもたらすことを指している。改変された酵母ペプチド画分は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含み、過度の色素が沈着した皮膚を治療および/または防止できるものであり、「スキンライトナー」と称することもできる。髪の色を薄くするのに用いられる場合、該酵母ペプチド画分は、「ヘアライトナー」と称されてもよい。「色を薄くすること」やこれに関連する用語は、望ましくない褐色領域の色を薄くする何らかのプロセスを指していて、これらには、漂白、色素沈着の低減、白化および/または脱色という概念が含まれる。色素の過度の沈着についての用途で用いられる組成物には、色素の過度の沈着を治療および/または防止、例えば、影響が及ぼされた領域の皮膚/髪の色を薄くするのに有効な量の改変された酵母ペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。
【0053】
(唇を含む)皮膚と髪の色素沈着は、表皮または毛髪繊維中に存在するメラニンのレベルと種類によって決まる。最も暗色な種類のメラニンである、DHIメラニンの表皮でのレベルが高いほど、皮膚は暗色になる。上述したように、メラニンは、(色素生成細胞またはメラノサイトとも呼ばれる)色素細胞内にあるメラノゾームと呼ばれる特別な細胞器官中で合成され、このプロセスは、酵素であるチロシナーゼによって、アミノ酸であるチロシンがドパキノンに転換されるのを契機に開始する。他の皮膚の色を薄くするプロセスの多くは、皮膚に塗布されて、メラニン合成を低減するチロシナーゼ抑制剤に依存していた(韓国特許第2005095167号公報、日本国特許第2003252743号公報、および日本国特許第61260009号公報を参照されたい)。もっとも、これらの場合では、日本国特許第2002234828号公報と日本国特許第2001151631号公報と同様に、ストレスに曝されていない酵母、つまり、1または複数のストレスに曝されなかった酵母から得られたエキス用いていた。理論に拘束されることを望むものではないが、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分は、チロシン抑制剤に依存して、メラニン合成を低減するものではなく、異なる作用メカニズムを有すると考えられている。実際、驚くべきことに、本発明の組成物は、色素細胞へのカルシウムの流入を抑制して、メラニン合成を低減することが分かった。さらに、驚くべきことに、他のカルシウム流入抑制剤を含む組成物も、過度の色素沈着に対する化粧品用途で使用できることが分かった。以下の実施例1を参照されたい。
【0054】
したがって、本発明の他の態様は、皮膚および/または髪の色を薄くするカルシウム流入抑制剤を含む組成物を化粧品に使用することに関する。本願明細書で使用される「カルシウム流入抑制剤」は、カルシウムが色素細胞に入ることを減少させ、低減させ、妨害し、あるいはそれ以外の抑制をするように作用するあらゆる化合物を指している。該用語は、本願明細書において、「カルシウムチャンネル抑制剤」と互換可能に使用される。カルシウム流入抑制剤には、これに限定される訳ではないが、2−アミノエチルジフェニルボレート(2−APB)などのカルシウムが色素細胞に入るのを制御する、当該技術分野において公知の化合物が含まれる。例えば、該化合物は、カルシウムが、色素細胞を含む細胞に入ることを特に防止するものとして知られている。これらに限定される訳ではないが、他の公知のカルシウム流入抑制剤には、アミノヘキサヒドロフルオレン、ベプリジル、カルシクルジン、カルシセプチン、塩化カルミダゾリウム、ニフェジピン、ベラパミル、FS2(デンドロアスピスポリレピスポリレピス(Dendroaspis polylepis polylepis))、ガラニン、プロトピン、テトラヒドロパルマチン、ソマトスタチン−14、マンガンとその塩、マグネシウムとその塩と同様に、L−ステフォリジニールベリン(Stepholidinealverine)およびその塩が含まれる。欧州特許第1419764号明細書、国際公開第2006048671号、および米国特許出願公開第2009/0028826号明細書を参照されたい。驚くべきことに、カルシウム流入抑制剤を含むカルシウム組成物は、メラニン合成を低減するように作用し、それに応じて、例えば、皮膚の過度の色素沈着を治療および/または防止し、あるいは髪を脱色するために、皮膚または髪の色を薄くする製品中で使用することが見出された。過度に色素が沈着した皮膚を治療および/または防止できるカルシウム流入抑制剤は、「スキンライトナー」と呼ばれてもよい。髪の色を薄くするのに使用される場合は、カルシウム流入抑制剤は、「ヘアライトナー」と呼ばれてもよい。過度の色素沈着に関する用途で用いられる組成物には、過度の色素沈着を治療および/または防止、例えば、影響が及ぼされた領域中にある皮膚/髪の色を薄くするのに有効な量の1または複数のカルシウム流入抑制剤が含まれる。
【0055】
特定の実施形態では、本発明の組成物には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分、および/または局所的に塗布されたときに、皮膚(または髪)の所定の領域中において、メラニン合成を低減するのに十分な量の他のカルシウム流入抑制剤が含まれる。本願明細書で用いられるように、「メラニン合成を低減すること」とそれに関連する表現は、皮膚中で生合成され、および/または髪中に沈着される異なる種類のメラニンの1または複数の量を低減すること、特に、メラニン形成細胞が介在する過度の色素沈着を低減することを指している。理論に拘束されることを望むものではないが、上述したように、メラニンの低減は、カルシウムが色素細胞に流入するのを抑制することに起因するものだと考えられている。あるメラニン生合成(と、あるカルシウム流入)は継続しているにも関わらず、メラニン合成を低減すると、治療を受けた皮膚(または髪)の色は知覚できるほど薄くなると好ましい。例えば、スキン(またはヘア)ライトナーを含む組成物が欠如したメラニン合成と比べると、ある実施形態では、メラニン合成は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、あるいは少なくとも約90%低減される。スキン(またはヘア)ライトナーを含む組成物が欠如したカルシウム流入と比べて、ある実施形態では、カルシウム流入は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、あるいは少なくとも約95%低減される。メラニン合成および/またはカルシウム流入の程度は、適当な分析、例えば、本願明細書に記載され、当該技術分野で公知のインビトロ分析によって測定できる。例えば、後述する実施例1と実施例13には、カルシウム流入抑制剤と全てのメラニン合成を測定するための分析の実験の詳細が提示される。
【0056】
ある実施形態では、過度の色素沈着を治療および/または防止、例えば、皮膚(または髪)の色を薄くする化粧組成物には、少なくとも1種の他のスキンライトナー(または少なくとも1種の他のヘアライトナー)がさらに含まれる。例えば、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド、および/または過度の色素沈着を治療および/または防止するのに有効な量の他のカルシウム流入抑制剤を含む化粧組成物には、少なくとも1種の他のスキンライトナー(あるいは少なくとも1種の他のヘアライトナー)がさらに含まれてもよい。例えば、ある実施形態では、韓国特許第2005095167号公報、日本国特許第2003252743号公報、および日本国特許第6126009号公報に記載されたチロシン抑制剤の全てを含むチロシン抑制剤が含まれてもよい。また、皮膚(または髪)に塗布されて、皮膚(または髪)の色を薄くする全ての他の基質が、本願明細書に記載された組成物とともに、追加のスキン(またはヘア)ライトナーとして使用されてもよい。これらに限定される訳ではないが、スキンライトナーの例には、ヒドロキノン、コウジ酸、リコリスおよび/またはその誘導体、アスコルビン酸および/またはその誘導体、アルブチン、クマコケモモエキス、カンゾウ(Glycyrrhiza glabra)およびその誘導体、クロレラブルガリス(Chlorella vulgaris)エキス、シソエキス、ヤシノミエキス、および/または他の脱色剤が含まれる。シソエキスは、例えば、米国特許第5989904号明細書、日本国特許出願公開07025742号、日本国特許出願公開07187989号、日本国特許出願公開10265322号、日本国特許出願公開2001163759号、および日本国特許出願公開2001181173号に、美白剤として開示されている。ヤシノミエキスは、日本国特許第2896815公報に、美白剤として開示されている。
【0057】
他のスキンライトナーには、アスコルビルグリコシド、ビタミンC、レチノールおよび/またはその誘導体、アルブチン、ルメックス・クリスプス(rumex crispus)エキス、加水分解された乳タンパク質を含む乳タンパク質、N,N,S−トリス(カルボキシメチル)システアミン、オレアノール酸、シソ油、プラセンタエキス、ユキノシタ(saxifragia sarmentosa)、ビャクシン酸(juniperic acid)、チオジプロピオン酸(thiodipropionic acid(TDPA))、リグスティクムキアングシオングホート(ligusticum chiangxiong hort)、ゼンマイ(asmunda japonica thunb)、ハコベ(stellaria medica(L.)cry)、ツルマンネングサ(sedum sarmentosum bunge)、トウネズミモチ(ligusicum lucidum Ait)、ナナミノキ(ilex purpurea hassk)、エンブリカ(emblica)、アピゲニン(apigenin)、アスコルビルパルミトール(ascorbyl palmitol)、カルバ・ポリフェノール(carruba polyphenols)、ヘスペリチン、イナバタ・ポリフェノール(inabata polyphenols)、イソリクイルチゲニン(isoliquirtigenin)、カエンフェロール−7−ネオヘスペリドーズ(kaempherol−7−neohesperidose)、L−リモネン、ルテオリン、油溶性のカンゾウエキスP−T(40)、オキサ酸(oxa acid)、フェニルイソチオシアネート、ココチン(cococin)、シリマリン、T4CA、テトラヒドロクルクミン、ユニトリエノール(unitrienol)、ウルソルオレアノール酸(ursolic−oleanolic acid)、UVA/URSI、あるいはこれらの何らかの組み合わせと同様に、ブッテアフロンドサ(Butea frondosa)、ナリンギ・クレヌラタ(Naringi crenulata)、ステノラマ・チュウサナ(Stenoloma Chusana)、インドセンダン(Azadirachta indica)、カンゾウ(Glycyrrhiza)、モリンダ・シトリフォリア(Morinda citrifolia)、トマト糖脂質(tomato glycolipid)、あるいはこれらの全ての組み合わせのエキスが含まれる。さらに、ある実施形態では、本発明の組成物とこのような1または複数の追加のスキン(またはヘア)ライトナーとの組み合わせを用いれば、相乗的な改善効果が得られると考えられる。例えば、ある実施形態では、本発明は、TDPAを有する本願明細書で記載された1または複数の組成物の相乗的な作用、例えば、皮膚の色を薄くする向上された利益を皮膚にもたらすことに関する。
【0058】
(炎症)
特定の好適な実施形態では、本願明細書に記載された化粧組成物は、炎症を治療および/または防止する、例えば、皮膚の炎症に関連する発赤および/または腫脹を低減するように使用できる。ある特定の好適な実施形態では、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を有効量含む組成物は、皮膚、例えば、炎症を受けた皮膚の部位に局所的に塗布される。一般に、炎症は、例えば、病原体、毒素、空気汚染、細胞に損傷を与える物理的な外傷、破片、火傷、化学刺激物、自己免疫反応などの異物などの望ましくない刺激に個々の人間が反応して生じ、急性であっても慢性であってもよい。個々の人間に炎症反応を引き起こす刺激は、一般に、「刺激物」と称される。炎症は、一般に、5つの主徴候を有することを特徴とする。主徴候とは、発赤、熱の増加、腫れ物、痛み、および機能欠損のことである。「炎症を受けた皮膚」または「炎症を受けた皮膚の領域」は、発赤、腫れ物、または腫脹などの、炎症に関連する1または複数の徴候または特徴が現れた全ての皮膚を指している。これらに限定される訳ではないが、炎症を受けた皮膚の状態には、湿疹、浮腫、職業性皮膚炎または接触性皮膚炎、乾癬、にきび、(蕁麻疹(urticaria)としても知られる)皮疹(hives)、酒さ(rosacea)、あるいは他の吹き出物またはツタウルシ毒などの刺激に応答するアレルギー反応が含まれる。炎症の領域には、状態、にきびの病害、いぼ、吹き出物、汚斑などによって、皮膚に影響が及ぼされる領域と、剥がれ、剥離、かゆみ、火傷、刺すような痛み、刺痛、および/または激痛が生じた領域と同様に、発赤、腫れ物および/または膨脹が生じた領域などの炎症が生じた領域が含まれる。
【0059】
炎症の治療あるいは炎症を受けた皮膚の治療は、炎症に関連する望ましくない特徴の1または複数を根絶し、低減し、回復し、あるいは後退させること、例えば、影響が及ぼされた領域の発赤、腫脹および/または腫れ物を知覚可能な程度まで低減し、あるいは該領域を平坦にしたり、該領域の症状を落ち着かせることを指している。炎症を防止することは、まだ炎症を起こしていない皮膚に、炎症に関連する1または複数の望ましくない特徴を回避し、遅延させ、未然に防ぎ、あるいは最小化するのに役立つ利益をもたらすこと、例えば、刺激物に曝されたときに、発達する可能性がある腫れ物の程度を低減することを指している。改変された酵母ペプチド画分は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含んでいて、炎症を受けた皮膚を治療および/または防止できる。改変されたペプチド画分は、「抗炎症剤」と呼ばれてもよい。炎症に対して用いられる組成物には、炎症を治療および/または予防、例えば、影響が及ぼされた領域の発赤、腫れ物および/または膨脹を低減するのに有効な量の改変された酵母ペプチド画分、および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。ある特定の実施形態では、本発明の方法と組成物は、発疹が生じる前、生じている間、および生じた後に、にきびサイクルの全段階に対抗すること、例えば、にきびの病害が出現する前に、にきびを防止し、にきびの病害の出現回数を低減し、発疹が生じている前に治療を加速することなどを目的とする。
【0060】
炎症に関する重要な炎症仲介物質は、カケキシンまたはカケクチンとしても知られている腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)である。TNFaは、急性の皮膚炎症と慢性の炎症の両方に関与すると考えられている。TNFaは、リンパ腺細胞、肥満細胞、内皮細胞、および繊維芽細胞などを含む他の細胞種と同様に、主に、大食細胞によって生成され、TNFa濃度の局所的な増加によって、炎症の主徴候が生じる。理論に拘束されることを望むものではないが、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分は、TNFa生成を減少するように作用できるので、炎症に関する望ましくない特徴、例えば、発赤、腫脹、および/または腫れ物を低減できる。後述する実施例2を参照されたい。
【0061】
特定の実施形態では、本発明の組成物には、局所的に塗布されたときに、皮膚の所定の領域中にあるTNFa生成を低減するのに十分な量だけの、改変された酵母ペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。本願明細書で使用されるように、「TNFa生成を低下すること」とこれに関連する表現は、例えば、刺激物に反応してTNFaが誘導されることを抑制することによって、刺激物に反応して生成されるTNFaの量を低減することを指している。あるTNFa生成が継続しているにも関わらず、TNFa生成の低下によって、影響が及ぼされた領域の発赤、腫脹、および/または腫れ物が、知覚可能な程度まで低減されると好ましい。例えば、ある実施形態では、抗炎症剤を含む組成物が欠如しているTNFa生成に比べて、TNFa生成は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、あるいは少なくとも約90%低下される。TNFa生成の程度は、適当な分析、例えば、本願明細書に記載され、当該技術分野で公知のインビトロ分析によって測定できる。例えば、実施例2によれば、TNFa生成を測定する分析の実験の詳細が得られる。
【0062】
ある実施形態では、炎症を治療および/または防止、例えば、発赤と腫れ物を低減する化粧組成物は、抗にきび剤などの少なくとも他の1種の抗炎症剤をさらに含むことができる。例えば、化粧組成物は、炎症を治療および/または防止するのに有効な量の配列番号1からなる金属錯体型のペプチド画分を含む改変された酵母ペプチド画分を含んでいて、少なくとも1種の他の抗炎症剤をさらに含んでいてもよい。抗刺激剤、蛋白糖化最終生成物(AGE)抑制剤、および免疫システム抑制剤と同様に、抗炎症剤には、例えば、ステロイド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、アスピリン、アスピリン誘導体、アロエベラ、柳の樹皮、カモミール、およびこれらの組み合わせが含まれてもよい。ある実施形態では、本発明の組成物には、例えば、サリチル酸などの抗にきび剤が含まれる。幾つかのこのような実施形態では、グリコール酸がさらに含まれる。もっとも、ある他の実施形態では、サリチル酸などの追加の抗にきび剤は除外される。さらに、ある実施形態において、1または複数のこのような追加の抗炎症剤と本発明の組成物を混合すると、相乗的な改善効果が得られる可能性があると考えられる。
【0063】
(脂質の過剰生成)
特定の好適な実施形態では、本願明細書に記載された化粧組成物は、脂質の過剰生成を治療および/または防止、例えば、過剰の皮脂出力および/またはセルライトを低減するように使用できる。ある特別な好適な実施形態では、組成物は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を有効量含み、皮膚、例えば、脂質の過剰生成の影響が及ぼされた皮膚の領域に局所的に塗布される。「過剰生成された脂質」または「脂質の過剰生成」は、油分の何らかの生成または分泌、および/または当人の望みより過剰量の皮下脂肪の生成または沈着を指している。例えば、脂質の過剰生成には、セルライトなどの皮下脂肪の過剰な生成または蓄積と同様に、皮脂の過剰な生成、分泌、または蓄積が含まれる。
【0064】
皮脂は、皮脂腺によって生成される、脂肪、ケラチン、および細胞形質成分を含む油分の分泌物である。皮脂腺とは、毛包に隣接する小さな管のとこである。皮脂は、(頭皮から)皮膚と髪に分泌される。過剰の皮脂出力は、脂性の皮膚と髪に関連し、にきびと脂性のフケ(脂漏性皮膚炎)などの状態に寄与する可能性がある。性ホルモンの増加が皮脂の過剰生成を誘発するので、このような問題は、特に若者に共通するものである。脂質の過剰生成によって影響が及ぼされる領域には、にきびの病害などの過剰の皮脂出力に関連する皮膚の状態の影響を受ける領域と同様に、皮膚の脂性領域、例えば、脂性である顔面の皮膚または頭皮の領域が含まれる。
【0065】
セルライトは、塊の多い不均等型の皮下脂肪であって、主に、多くの女性の臀部と大腿部に蓄積する。遺伝的要因、腸管内の要因、循環の要因、リンパの要因、ホルモンの要因、および生活習慣の要因を含む多数の要因が、セルライトの原因になる可能性がある。セルライトによって、皮膚の下側にある組織は、「みかん膚」または「カッテージチーズ」に見えるようになり、皮膚を摘むと、脂肪層の隆起や指圧痕を有する「マットレスのような外観」が生成される可能性があるので、セルライトは、大いに(unslightly)考慮される。脂質の過剰生成によって影響が及ぼされる領域には、セルライトの領域、例えば、「みかん膚」、「カッテージチーズ」または「マットレスのような外観」を有する皮膚の領域が含まれる。「セルライトの治療」という用語には、目に見えるセルライトの兆候の回復が含まれる。
【0066】
脂質の過剰生成を治療することは、脂質の過剰生成に関連する望ましくない特徴の1または複数を根絶し、低減し、回復し、あるいは後退させることを指している。皮脂の過剰生成に関連する望ましくない特徴には、例えば、脂性の皮膚、光沢のある皮膚、にきびが発生しやすい皮膚、脂性の頭皮、脂性の髪、ふけが発生しやすい髪、あるいは望ましくない体臭が含まれる。皮下脂肪の過剰生成に関連する望ましくない特徴には、例えば、セルライトの領域が僅かではないことが含まれる。治療の利益には、例えば、影響が及ぼされた皮膚または髪の脂性の外観を低減すること、表面の油分を抑制すること、油分が発生しやすい皮膚中の皮脂の平衡を保つこと、毛穴を視覚的に最小にすること、過剰の脂質の蓄積が原因となる望ましくない体臭を低減すること、あるいはセルライトの体積の影響を受ける領域の外観を改善することが含まれる。脂質の過剰生成を防止することは、まだ影響が及ぼされていない皮膚に、脂質の過剰生成に関連する1または複数の望ましくない特徴を回避し、遅延させ、 未然に防ぎ、あるいは最小にするのに役立つ利益、例えば、最終的には治療領域で生じる、脂気の程度、にきびの発病度、あるいはセルライトの固化を低減する利益をもたらすことを指している。改変された酵母ペプチド画分は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含み、脂質の過剰生成を治療および/または防止でき、「抗脂質剤」とも称することができる。抗脂質剤は、例えば、抗脂性および/または抗セルライト剤として作用できる。脂質の過剰生成を制御するように使用される組成物には、脂質の過剰生成を治療および/または防止、例えば、にきびおよび/またはセルライトを低減するのに有効な量の改変された酵母ペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。
【0067】
脂質代謝の一部は、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)によって制御され、PPARによって、核転写因子の上科が形成される。PPARは、適切なリガンドによる活性化に続いて、核内の特定の遺伝子配列と結合して、特定の遺伝子の転写を誘発するリガンド依存性の細胞内タンパク質である。特に、PPARガンマの活性は、PPARガンマによって制御されることが多い栄養経路または代謝経路から誘導される脂溶性のリガンド、主には、脂肪酸によって左右される。実際、PPARガンマは、脂肪細胞によって、エネルギー貯蔵の分別を助力するフィードフォワード経路の中心にあると考えられている。理論に拘束されることを望むものではないが、配列番号1からなる金属錯体型のペプチド画分を含む改変された酵母ペプチドは、PPARを介したシグナル伝達、特に、PPARガンマを介したシグナル伝達を低減するように作用できるので、脂質の生成を低減し、抗脂性および/または抗セルライト剤として作用すると考えられている。例えば、該組成物は、脂肪細胞分化や脂肪貯蔵をシグナル伝達するのに利用できるものを少なくするように、PPARガンマの誘導を低減するように作用してもよい。後述する実施例3を参照されたい。
【0068】
さらに、本発明の特定の組成物によって生成物が低減される脂質が、膜脂質、例えば、脂質二重層中に発見される膜脂質と区別されることに着目してもよい。二重層脂質には、例えば、角質層の二重層中にある脂質、あるいは皮膚の脂質二重層を形成する、コレステロール、コレステロールエステル、遊離脂肪酸、およびセラミドなどの他の皮膚脂質が含まれる。特許文献8を参照されたい。
【0069】
特定の実施形態では、本発明の組成物には、局所的に塗布されたときに、皮膚の所定の領域中のPPARを介したシグナル伝達を低減するのに十分な量だけの、改変された酵母ペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。本願明細書で使用されるように、「PPARを介したシグナル伝達を低減すること」とこれに関連する表現は、1または複数のPPAR(特にPPARガンマ)が、細胞に信号伝達できる程度を低減することを指している。
【0070】
ある実施形態では、脂質の過剰生成を治療および/または防止、例えば、皮脂出力またはセルライトを低減する化粧組成物には、少なくとも1種の他の抗脂質剤がさらに含まれてもよい。例えば、化粧組成物は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を、脂質の過剰生成を治療および/または防止するのに十分な量だけ含んでいて、少なくとも1種の他の抗脂質剤をさらに含んでいてもよい。これらに限定される訳ではないが、一例を挙げれば、特定の抗にきび剤と他のPPAR抑制剤、例えば、サジオモダカ(Alisma orientate)からのエキスが含まれている。米国特許第7410658号明細書を参照されたい。さらに、ある実施形態において、1または複数のこのような追加の抗脂質剤を本発明の組成物を混合すると、相乗的な改善効果が得られる可能性があると考えられる。
【0071】
(老化の兆候)
特定の好適な実施形態では、本願明細書に記載された化粧組成物は、皮膚の老化あるいは他の皮膚の損傷の兆候を治療および/または防止するように使用できる。皮膚の老化の兆候には、内因性の(経時的な)老化、あるいは(光老化などの)外性因子によって生じる兆候を含むあらゆる皮膚科学的な老化の兆候が含まれる。該組成物は、例えば、加齢または太陽への曝露のために、目に見える老化の兆候が現れた、あるいはそのような兆候を示しそうな皮膚に塗布されてもよい。
【0072】
それは表面の微細な小皺であっても、あるいは深い襞(crease)や溝(fold)であってもよいが、顔面の皺が徐々に発達することは、皮膚の老化の初期の兆候に含まれる。皺や他の老化の兆候が皮膚に刻まれる場合に、そのプロセスは、太陽への過度の曝露や他の損傷要素、表情筋を過度に動かすこと、煙草製品を頻繁に使用すること、栄養不足、あるいは特定の皮膚障害などの外性因子によって加速されることがある。深い襞へと進行する微細な表面の小皺、皮膚が折り重なることが原因となる深い顔面の皺、十分に発達した深い溝は、老化に関連する目に見える変化である。
【0073】
皮膚の老化の兆候を治療することは、例えば、知覚できる程度まで、皮膚のハリまたはふくよかさの損失を低減することによって、皮膚の老化に関連する望ましくない特徴の1または複数を根絶し、低減し、回復し、あるいは後退させることを指している。例えば、本発明の組成物と方法は、一旦現れた、年齢が25歳を上回る個々の人間に共通するような皮膚の老化の兆候を後退または治療するように使用できる。皮膚の老化の兆候を防止することは、例えば、皮膚の老化の結果として生じる、ハリやふくよかさの損失を遅くすることによって、皮膚に、老化に関連する1または複数の望ましくない特徴を回避し、遅延させ、未然に防ぎ、あるいは最小にするのに役立つ利益をもたらすことを指している。つまり、本発明の組成物と方法は、例えば、まだ皮膚の老化の兆候が現れていない個々の人間、最も一般的には、年齢が25歳未満の個々の人間の皮膚の老化の兆候を未然に防ぐために、予防的に用いられてもよい。
【0074】
改変された酵母ペプチド画分は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含み、老化の兆候を治療および/または防止でき、「抗老化剤」と称すことができる。抗老化剤として使用される組成物には、老化の兆候を治療および/または防止するのに有効な量の改変された酵母ペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドが含まれる。ある特定の好適な実施形態によれば、局所塗布用の組成物が提供され、該組成物には、老化の兆候を治療および/または防止するのに有効な量の配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドが含まれる。一般に、治療および/または予防によれば、1または複数の望ましくない特徴および/または治療済の皮膚の全体的な美的な外観は改善されるようになる。
【0075】
望ましくない特徴および/または全体的な美的な外観の改善には、以下の1または複数、つまり、経時的な老化、光老化、ホルモンの老化、および/または光線老化の皮膚科学的な兆候を低減すること、小皺および/または皺の外観を防止および/または低減すること、顔面の小皺や皺、頬や額にある顔面の皺、目の間にある垂直な皺、目の上方にある水平な皺、口の周りの皺、マリオネットライン、および特に深い皺または襞の目立ち感(noticeability)を低減すること、小皺および/または皺の外観および/または深さを防止、低減および/または減少すること、眼窩下の小皺および/または眼窩周囲の小皺の外観を改善すること、カラスの足跡の外観を低減すること、皮膚、特に老化した皮膚を若返らせ、および/または生き返らせること、皮膚の脆弱性を低減すること、皮膚萎縮を防止すること、皮膚の色調、輝き、および/または透明さを改善すること、皮膚のたるみを防止し、低減し、および/または回復すること、皮膚のハリ、ふくよかさ、つっぱり感、しなやかさ、および/または柔軟性を改善すること、皮膚のきめの改善および/または再組織化(retexturization)の促進、皮膚のバリア修復および/または機能の改善、皮膚の輪郭の外観の改善、皮膚の光沢および/または明るさを復元すること、疲労および/またはストレスの皮膚科学的な兆候を最小にすること、環境ストレスに対抗すること、老化および/または閉経によって低下した皮膚中に、必須栄養素または他の皮膚の構成成分などの薬効成分を補充すること、エストロゲンの不均衡の影響を改善すること、皮膚細胞間の伝達を改善すること、細胞の分裂増殖および/または増殖を増大すること、老化および/または閉経によって低下した皮膚の細胞代謝を増大すること、細胞の老化を遅延させること、皮膚の保湿および/または水和を改善すること、皮膚の厚さを増大すること、皮膚の弾性および/または弾力を増大すること、プロコラーゲンおよび/またはコラーゲン合成を改善すること、剥離作用を高めること、微小循環を改善すること、乾燥を低減すること、およびこれらの全ての組み合わせを含むことができる。
【0076】
特定の好適な実施形態では、本発明の組成物と方法は、皮膚中の微細な小皺または皺を治療および/または防止することを目的とする。治療の場合、組成物は、このような治療を必要とする皮膚に塗布される。これは、皮膚に皺および/または微細な小皺があることを意味している。微細な小皺および/または皺は、これらに限定される訳ではないが、手、腕、足、首、胸部、および額を含む顔を含む、皮膚のあらゆる表面に生じてもよい。該組成物は、微小な小皺および/または皺に直に塗布されると好ましい。例えば、微小な小皺と皺を治療する方法には、本願明細書に記載された組成物を、塗布を必要とする皮膚に局所的に塗布すること、例えば、微細な小皺および/または皺の発病度を低減するのに十分な量と時間で、微細な小皺および/または皺に直に局所的に塗布することが含まれてもよい。組成物が微細な小皺と皺に及ぼす効果は、例えば、外観検査によって定性的に、あるいはしわの形態(例えば、皮膚の単位面積あたりの皺の数、深さ、長さ、面積、体積および/または幅)を測定するのを補助する顕微鏡またはコンピュータによって定量的に評価できる。
【0077】
皺(wrinkle)または皺(wrinkling)は、微細な皺および/または粗大な皺の両方を指している。微細な皺または微細な小皺は、皮膚表面上の皮相の小皺と皺を指している。粗大な皺は、顔面上や目の回りにある深い溝(furrow)、特に、深い小皺/皺を指していて、これらには、眉間の小皺や皺、額の小皺や皺、カラスの足跡の小皺や皺、ほうれい線、マリオネットラインやマリオネットリンクル(marionette wrinkle)などの表情の小皺が含まれる。額の小皺と皺は、額の皮膚上の表層にある小皺および/または深い溝を指している。カラスの足跡の小皺と皺は、目の回りの皮膚上の表層にある小皺および/または深い溝を指している。マリオネットラインとマリオネットリンクルは、口の周りの皮膚上の表層にある小皺および/または深い溝を指している。
【0078】
特定の好適な実施形態では、本発明の組成物と方法は、皮膚のハリ、ふくよかさおよび/またはつっぱり感を改善することを目的とする。特定の好適な実施形態では、本発明の組成物と方法は、皮膚の弾性の損失を増大および/または防止することを目的とする。皮膚の弾性は、変形後に元の形状と大きさに回復する皮膚の能力に起因する、皮膚の弾性力および/または復元力を指している。皮膚の弾性は、皮膚の伸張または圧迫の何れかによって変形を引き起こすことができるピンチテストによって評価されてもよい。
【0079】
ハリの低下、皺および他の老化の兆候の一部は、皮膚のコラーゲンの経時的な低下が原因になる。本願明細書で使用される「コラーゲン」は、「コラーゲンI」または「I型コラーゲン」と互換可能に使用される。これらは、真皮マトリックス成分として皮膚中に存在する種類のものである。コラーゲンIは、互いに絡み合って緊密な三重螺旋状をなす三本のタンパク質鎖から構成され、この三本のタンパク質鎖によって、鋼鉄よりも大きな引張強度が得られる。コラーゲンIは、真皮中に配置される特別な皮膚細胞である線維芽細胞によって作られる。形成には、粗面小胞体(RER)に沿ったリボソームによるプレコラーゲンIの生成、プロコラーゲンIへの転換とPER内での三重螺旋構造の形成、および細胞外でのトロポコラーゲンの最終的な形成、つまり、コラーゲン細線維とその後にコラーゲン線維をもたらすために集合した形態が含まれる。コラーゲンによって、皮膚のハリ、強度、耐久性、および若々しく見える滑らかでふくよかな外観が得られる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分は、コラーゲン生成を増大し、それによりコラーゲンの皮膚レベルを増大するように作用できるので、例えば、皮膚のハリとふくよかさを維持することによって、皮膚の老化に関連する望ましくない特徴の1または複数を遅延させると考えられている。後述する実施例4を参照されたい。
【0080】
特定の実施形態では、本発明の組成物には、局所的に塗布されたときに、皮膚の所定の領域でコラーゲン合成を増大するのに十分な量だけの、改変された酵母ペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチド画分が含まれる。本願明細書で使用されるように、「コラーゲン合成を増大すること」とこれに関連する表現は、皮膚の領域中でのコラーゲン量を増大するために、プロコラーゲンおよび/またはコラーゲンの生成を誘発し、誘起し、あるいは上方制御すること、好ましくは、皮膚のハリおよび/またはふくよかさを知覚可能な程度まで改善することを指している。例えば、ある実施形態では、コラーゲン合成は、該組成物がない場合のコラーゲン合成と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、あるいは少なくとも約90%増大される。皮膚中でのコラーゲンおよび/またはコラーゲン合成の程度は、適当な分析、例えば、本願明細書に記載され当該技術分野で公知のインビトロ分析によって測定できる。1または複数個のコラーゲン前駆体のレベルは、皮膚のコラーゲンレベルを表すものとして測定することもでき、このようなインビトロ分析も当該技術分野で公知である。例えば、後述する実施例4によれば、ヒトの真皮線維芽細胞中のプロコラーゲンIのレベルを測定した実験の詳細が得られる。
【0081】
コラーゲンが線維芽細胞によって作られている間、コラーゲンの分解は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によって制御される。Gross J,et al.Biochem Biophys Res Commun 1974;61:605−12を参照されたい。MMPは、関連する亜鉛依存性プロテアーゼのファミリーであり、該亜鉛依存性のプロテアーゼには、25を超える要素が含まれ、メタロプロテアーゼ(MMP−1、−8および−13)とゼラチナーゼ(MMP−2および9)が含まれている。MMPによるコラーゲンの分解は、皮膚のハリと弾性の低下に関連する。例えば、コラーゲンの分解は、堅固で柔軟性に劣る構造を生成するコラーゲン線維の不規則な架橋結合をもたらすようになる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分は、メタロプロテアーゼ抑制剤として作用でき、メタロプロテアーゼ活性を低下させるので、コラーゲンの損失と関連する皮膚の老化の望ましくない特徴を低減すると考えられている。後述する実施例5を参照されたい。
【0082】
特定の実施形態では、本発明の組成物には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分が、局所的に塗布されたときに、皮膚の所定の領域中のメタロプロテアーゼ活性を低下するのに十分な量だけ含まれる。本願明細書で使用されるように、「メタロプロテアーゼ活性を低下すること」およびこれに関連する表現は、メタロプロテアーゼスーパーファミリーの1または複数種の酵素の活性を抑制し、下方制御し、あるいは低下することを指している。あるメタロプロテアーゼ活性が持続しているにも関わらず、メタロプロテアーゼ活性の低下によって、コラーゲンの損失は、知覚可能な程度まで低下される。例えば、ある実施形態では、メタロプロテアーゼ活性は、メタロプロテアーゼ抑制剤を含む組成物がない場合のメタロプロテアーゼ活性と比べて、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、あるいは少なくとも約90%低下される。メタロプロテアーゼ活性および/または抑制の程度は、適当な分析、例えば、本願明細書に記載され当該技術分野で公知のインビトロ分析で測定できる。例えば、後述する実施例5によれば、メタロプロテアーゼ活性と抑制を測定した実験の詳細が得られる。
【0083】
経時的なヒアルロン酸の損失も、皮膚の老化において役割を果たす。ヒアルロン酸は、皮膚中において、ECMの一部として発見されたグリコサミノグリカン(GAG)である。GAGは、二糖単位が繰り返された長鎖の非分岐性ポリマーであり、主に、ヘキサミン、ヘキソース、ヘキスロン酸部分、あるいはそれらの硫酸塩から構成される。GAGは、皮膚中においてタンパク質に結合して、プロテオグリカンを形成する。グロテオグリカンは、皮膚の成長、保全、および修復に寄与する。特に、ヒアルロン酸は、皮膚の水和、栄養交換、およびフリーラジカルに対する保護に関与すると報告されている。Wiest et al.J.Dtsch Dermatol Ges.2008 Mar;6(3):176−80、Bert et al.Biorheology.1998 May−Jun;35(3):211−9を参照されたい。もっとも、皮膚が経時的に老化するにつれて、GAG合成は低下し、皮膚中でのGAGの総量が減少することも報告されている。Smith et al.in J.Invest.Dermatol.,1962,39,pages 347−350、Fleishmajer et al.Biochim.Biophys.Acta,1972,279,pages 265−275、Longas et al.Carbohydr.Res.,1987,159,pages 127−136を参照されたい。皮膚中でのこのGAGとヒアルロン酸の量の低減は、加齢に伴う皮膚の機械的性質の変化、特に、組織の水和と弾力性に寄与すると考えられている。Carrino et al.,Arch Biochem Biophys.2000 Jan 1;373(1):91−101、Vogel et al.,Z Gerontol.1994 May−Jun;27(3):182−5、Lanir et al.,J Biomech Eng.1990 Feb;112(1)63−9を参照されたい。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分は、ヒアルロン酸の生成を増大するように作用できるので、例えば、皮膚の水和と弾力性を改善することによって、皮膚の老化に関連する望ましくない特徴の1または複数を低減すると考えられている。後述する実施例6を参照されたい。
【0084】
特定の好適な実施形態では、本発明の組成物と方法は、皮膚の保水および/または水和を改善することを目的とする。例えば、特定の実施形態では、本発明の組成物には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含むペプチド画分が、局所的に塗布されたときに、皮膚の所定の領域でのヒアルロン酸の生成を増大するのに十分な量だけ含まれる。本願明細書で使用されるように、「ヒアルロン酸の生成を増大すること」とこれに関連する表現は、皮膚のある領域でのヒアルロン酸の量を増大するために、ヒアルロン酸の合成を誘発し、誘起し、上方制御すること、好ましくは、皮膚の水和および/または弾力性を、知覚可能な量で改善することを指している。例えば、ある実施形態では、ヒアルロン酸の生成は、該組成物がない状態でのヒアルロン酸の生成に比べて、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、あるいは少なくとも約90%増大する。皮膚中でのヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸の生成の程度は、適当な分析、例えば、本願明細書に記載され当該技術分野で公知のインビトロ分析によって測定できる。例えば、後述する実施例6によれば、ヒトの真皮線維芽細胞中のヒアルロン酸レベルを測定する分析の実験の詳細が得られる。
【0085】
KLKなどの皮膚中の剥離酵素は、皮膚の老化にも関連する。KLKは、細胞間結合を担うタンパク質を破壊することによって、死亡した皮膚細胞の剥離を促進する人間の皮膚の角質層に存在するプロテアーゼのファミリーである。Kishibe M et al.2006 ”Kallikreins 8 Is Involved in Skin Desquamation in Cooperation with Other Kallikreins.”J.Biol.Chem.282:5834−5841を参照されたい。角質層においては、細胞間結合は、主に、コーネオデスモゾームとして知られるタンパク質に依存する。コーネオデスモゾームは、皮膚の再形成と再生の間に、KLKによって破壊されて、死細胞を皮膚の表面から剥離可能にすることが知られている。この死細胞の剥離によれば、例えば、乾燥し、キメが荒く、光沢のない外観を皮膚に付与する死細胞が皮膚表面に蓄積するのを防止することによって、皮膚の美的な外観は改善される。剥離によれば、皮膚を滑らかな感じにし、新鮮に見えるようにしておくことができ、さらに、他の皮膚活性成分の浸透を増大できる。もっとも、加齢とともに、コーネオデスモゾームのターンオーバーは低下し、皮膚表面への死細胞の蓄積を許すようになると考えられる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分は、KLK活性を増大するように作用できるので、皮膚の老化に関連する1または複数の望ましくない特徴を低減する、例えば、乾燥を低減し、および/または光沢および/または明るさを改善すると考えられる。後述する実施例7を参照されたい。KLK活性の上方制御によって、死亡した皮膚を脱落させる速度を増加でき、それにより、皮膚の剥離を自然に向上できる。
【0086】
したがって、特定の好適な実施形態では、本願明細書に記載された組成物は、剥離を向上するように使用できる。ある特別に好適な実施形態では、有効量の改変された酵母ペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む組成物は、皮膚、例えば、剥離を要する皮膚の領域に局所的に塗布される。剥離を要する皮膚の領域には、例えば、年齢が25歳を上回る個々の人間に共通するように、乾燥した皮膚の特定の領域において、皮膚表面に蓄積された死細胞を除去する速度の増加により利益を得ることができる、あらゆる皮膚の表面が含まれる。乾燥した皮膚を剥離すれば、前記領域は、新鮮で滑らかに見えるようになる。剥離を要する皮膚の領域には、局所的に送達される皮膚活性成分の浸透を増加または増大するのが望ましい領域も含まれる。剥離を要する皮膚の領域には、にきびが生じやすい領域、例えば、にきびが生じる前に、剥離によって、例えば、新鮮で明るい皮膚および/またはツヤを抑えた仕上がりを露わにするために、毛穴に詰まった汚れや油分を除去することによって、にきびの発生を妨げることができる領域も含まれる。これらに限定される訳ではないが、剥離を高めることによって利益を得ることができる領域には、手、腕、足、首、胸部、および額を含む顔面の皮膚が含まれる。特に、関節と足の皮膚には、死亡した皮膚細胞が蓄積しやすい傾向があり、このような領域中に、きめが粗く、乾燥し、光沢がなく、皺が寄り、および/または変色した皮膚が生じる原因になる。
【0087】
いくつかのより好適な実施形態では、本願明細書に記載された組成物は、肘、膝、足首、足、足の裏、踵などの皮膚、つまり、剥離を高めることによって特に利益を得ることができる領域に局所的に塗布される。ある好適な実施形態では、本願明細書に記載された組成物は、乾燥した皮膚、つまり、剥離を高めることによって局所的に利益を得る領域に局所的に塗布される。配列番号1からなる金属錯体型のペプチドからなる改変された酵母ペプチド画分は、剥離を高めることができ、「剥離剤」と称することもできる。剥離剤として使用される組成物は、局所的に塗布するときに、皮膚の所定の領域の剥離を改善または高めるのに有効な量の改変された酵母ペプチド画分および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む。
【0088】
より詳細には、特定の実施形態では、本発明の組成物には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分が、局所的に塗布されたときに、皮膚の所定の領域でのKLK活性を増大するのに十分な量だけ含まれる。本願明細書で使用される「KLK活性を増大すること」とこれに関連する表現は、皮膚の領域からの死亡した皮膚細胞の除去を増大するために、KLKファミリーに属する1または複数のプロテアーゼ酵素のタンパク質分解活性を誘発し、誘起し、上方制御することを指している。KLK活性の増大によって、死細胞の皮膚表面からの剥離速度が、例えば、皮膚の光沢および/または明るさに改善が見られる、および/または皮膚の色調、輝き、および/または透明性に完全が見られるように、知覚可能な程度まで増加すると好ましい。例えば、前記組成物がない状態でのKLKプロテアーゼ活性と比べると、ある実施形態では、KLK活性は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%増大する。皮膚中での剥離および/またはKLK活性の程度は、適切な分析、例えば、本願明細書に記載され当該技術分野において公知のインビトロ分析によって測定できる。例えば、以下の実施例7によれば、組換ヒトKLK5の活性を測定する分析の実験の詳細が得られる。
【0089】
ある実施形態では、剥離を高める方法には、剥離剤を含む組成物を皮膚表面に擦り付けることがさらに含まれる。このような擦り付けは、一般に、皮膚に組成物を押しつけて、該組成物を、好ましくは繰り返し、さらに好ましくは円運動で繰り返し皮膚上において動かすことを意味している。「繰り返し」とは、例えば、組成物のタンパク質分解性を向上させる性質によって解放された皮膚の死細胞の脱落を促進するために、約2回、約3回、約5回、約10回あるいはそれ以上繰り返すことを意味している。擦り付けは、例えば、剥離される領域に応じて、穏やかにしてもよいし力強くしてもよい。剥離に続いて、皮膚の領域は、一般に、例えば、冷水を用いて洗浄された後に、潤いが与えられて、皮膚表面の剥離が防止される。
【0090】
特定の実施形態では、本発明の組成物には、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分が、局所的に塗布されたときに、皮膚の所定の領域において、以下、つまり、KLK活性の増大、ヒアルロン酸生成の増大、コラーゲン合成の増大、およびメタロプロテアーゼ活性の低減の約2またはそれ以上をもたらすのに十分な量だけ含まれる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、異なる老化プロセスを目的とする、2またはそれ以上のこのような作用の組み合わせによって、皮膚の老化の徴候が、相乗的に治療および/または防止される可能性がある。
【0091】
さらに、本願明細書に記載された組成物のスキンライトニング、抗炎症、および/または抗脂質特性は、抗酸化特性に寄与することもできる。例えば、炎症は、種々のマトリックス分解メタロプロテアーゼを活性化するように示されていて、皮膚の老化に寄与する可能性がある不規則なマトリックス分解をもたらす。Pillai,et al.(2005)Int J Cosmet Sci.Feb;27(1):17−34を参照されたい。炎症は、細胞タンパク質に損傷を与える反応性の酸素種、後に真皮および外皮の小室に蓄積される脂質および炭水化物の蓄積を引き起こすことによって、人間の皮膚の内因性および外因性の老化を悪化させることが示されている。Pillai,et al.(2005)Int J Cosmet Sci.Feb;27(1):17−34、Bissett,et al.(1990)Photodermatol.Photoimmunol.Photomed.7:153−8、Thornfeldt,CR(2008)J.Cosmet.Dermatol.7:78−82を参照されたい。炎症は、皮膚の変色に寄与することも知られていて、例えば、皮膚中の過度の色素沈着が、後の炎症として観察されている。Ruiz−Maldonado et al.(1997) Semin Cutan Med Surg.16(1):36−43、Tomita et al.(1989) Dermatologica.179 Suppl 1:49−53、Holland et al.Semin Cutan Med Surg.2005 Jun;24(2):79−83を参照されたい。セルライトの脂性および/または領域に加えて、皮膚の変色は、老化した外観にさらに寄与できる。再言すると、理論に拘束されることを望むものではないが、本願明細書に記載された組成物の作用を組み合わせれば、皮膚に相乗的な利益をもたらすことができ、特定の実施形態では、例えば、以下の調節可能な活性、つまり、メラニン合成の低減、TNFa生成の低減、PPARを介したシグナル伝達の低減、メタロプロテアーゼ活性の低減、コラーゲン合成の増大、ヒアルロン酸生成の増大、およびKLK活性の増大の2またはそれ以上を示すことによって、皮膚に相乗的な利益をもたらすことができる。
【0092】
ある実施形態では、皮膚の老化の兆候を治療および/または防止する化粧組成物は、追加の剥離および/または抗老化剤をさらに含む。例えば、化粧組成物は、皮膚の老化の兆候を治療および/または防止するのに有効な量だけ、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含んでいて、少なくとも1種の剥離および/または抗老化剤をさらに含んでいてもよい。ある実施形態では、このような組み合わせを用いれば、相乗的な改善効果を得ることができると考えられる。
【0093】
これらに限定される訳ではないが、剥離剤の例には、アルファヒドロキシ酸類、ベータヒドロキシ酸類、オキソ酸類、オキサジ酸類、およびエステル類、酸無水物、およびこれらの塩などのこれらの誘導体が含まれる。パイナップルの酵素(pineapple enzyme)などの果物の酵素類(fruit enzymes)と同様に、好適なヒドロキシ酸には、例えば、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、2−ヒドロキシアルカン酸、マンデル酸、サリチル酸、およびこれらの誘導体が含まれる。好適な追加の剥離剤は、グリコール酸である。
【0094】
これらに限定される訳ではないが、数例を挙げると、抗老化剤の例には、(例えば、ブテア・フロンドーサエキスなどの)植物成分、チオジプロピオン酸(TDPA)およびこれらのエステル、(例えば、全トランス型レチノイン酸、9−シスレチノイン酸、フィタン酸およびその他のものなどの)レチノイド、(アルファヒドロシキ酸およびベータヒドロキシ酸を含む)ヒドロキシ酸、サリチル酸およびサリチル酸塩、抗酸化剤、(例えば、グリコール酸、3,6,9−トリオキサウンデカン二酸などの)剥離剤、(例えば、カフェインおよびその誘導体などの)エストロゲンシンセターゼを刺激する化合物、(例えば、リノレン酸、リノレン酸、フィナステライド、およびこれらの混合物などの)5アルファレダクターゼ活性を抑制する化合物、(例えば、セラミド、グリセリド、コレステロール、およびそれらのエステル、アルファヒドロキシ酸およびオメガヒドロキシ脂肪酸、およびこれらのエステルなどの)バリア機能を高める薬剤、コラゲナーゼ抑制剤、ケラチノサイト増殖促進剤、皮膚に対する追加のコラーゲン促進剤として使用されるスキンプランパー(skin plumper)が含まれる。好適なスキンプランパーの例は、パルミトイルオリゴペプチドである。他のスキンプランパーには、他のコラーゲンおよび/または他のグリコサミノグリカン(GAG)促進剤が含まれる。これらに限定される訳ではないが、レチノイドの例には、(例えば、全トランス型または13−シス型などの)レチノイン酸およびこれらの誘導体、レチノール(ビタミンA)およびレチノールパルミテート、レチノールアセテート、およびレチノールプロピネートなどのレチノールエステル、およびレチノールの塩が含まれる。ある実施形態では、本発明は、1または複数の本願明細書に記載された組成物の相乗作用、例えば、抗老化を促進する利点を皮膚にもたらす相互作用に関する。該組成物には、TDPAが含まれる。抗老化剤の追加の例は後述する。
【0095】
本願明細書に示された教示に基づくと、当業者であれば、本願明細書に記載された組成物の他の化粧および/または医薬用途を理解でき、該用途も本発明の範囲に含まれると考えられる。例えば、スキンケア製品またはヘアケア製品などのパーソナルケア製品において、本願明細書に記載された組成物を使用することを見出すことができる。製品の用途に応じて、本願明細書に記載された皮膚の利益が生じると望ましい。皮膚のパーソナルケア製品には、例えば、腋臭止めが含まれる。例えば、腕の下の領域が望んでいるよりも暗くなった、あるいは暗くなっている場合に、腕の下の皮膚の色を薄くする腋の下用の製剤において、本願明細書に記載された組成物を使用することを見出すことができると考えられる。
【0096】
本発明によれば、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分、および/または他のカルシウム流入抑制剤を含む組成物を、本願明細書に記載された利益の1または複数を生じるのに十分な期間、皮膚のある領域の全体に局所的に塗布することによって、皮膚の利益をもたらす方法が提供される。本願明細書に記載されたように、剥離、抗老化、抗脂質、抗炎症および/または皮膚(または髪)の色を薄くする利益などの望ましい結果を得る必要がある限り、組成物は、典型的には、一日に1、2または3回塗布される。この治療法には、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約8週間、少なくとも約12週間、あるいはそれ以上の間、毎日塗布すること、あるいは一日おきに塗布することが含まれる。例えば、にきびに対抗することを目的としたある実施形態では、本発明の組成物は、朝および/または夕方に、例えば、顔面全体に付けた製品を優しく滑らかにすることによって、好ましくは、洗浄済みの乾燥した皮膚に塗布されてもよい。例えば、皮膚の老化、または、にきびなどの他の望ましくない皮膚の特徴の1または複数を未然に防ぐことを目的とする予防的な治療に関して、慢性的な治療法も考えられる。
【0097】
以下に記載されるように、例えば、化粧品として許容されるビヒクルを用いて、皮膚(または髪)に局所的に塗布するために処方されると好ましい、剥離、抗老化、抗脂質、抗セルライト、抗炎症、および/または皮膚(または髪)の色を薄くする製品において、本願明細書に記載された組成物を使用することが見出される。
【0098】
(改変されたペプチド画分と関連する組成物の化粧品の処方)
本願明細書に記載された組成物は、局所的に塗布する種々のスキンまたはヘアケア製品として処方できる。該組成物は、例えば、ローション、クリーム、漿液、噴霧剤、エアロゾル、ケーキ、軟膏、美容液、ゲル、ペースト、パッチ、パッド、ペンシル、ポマード、溶液、ウエットティッシュ、マスク、スティック、泡、ムース、粉末、バスソルトなどの(頭皮を含む)皮膚および/または髪に塗布するのに適した種々の製品形態で処方されてもよい。
【0099】
該組成物は、有効量の改変された酵母ペプチド画分、および/または配列番号1からなる金属錯体型のペプチド、および/またはカルシウム流入抑制剤を含む。上記は、スキン(またはヘア)ライトナー、抗炎症剤、抗脂質剤、剥離剤、および/または抗老化剤として作用することなどの、1または複数の所望の性質または調節可能な活性を、処方された製品に付与するのに十分であることを意味している。例えば、改変されたペプチド画分または配列番号1からなる金属錯体型のペプチドは、組成物の総重量を基準にして、約0.001重量%から約5重量%、好ましくは、組成物の総重量を基準にして、約0.01重量%から約3重量%、さらに好ましくは、組成物の総重量を基準にして、約0.1重量%から約2重量%、あるいは約1重量%の量だけ存在していてもよい。
【0100】
化粧品として許容されるビヒクルが、組成物に含まれてもよい。化粧品として許容されるビヒクルは、人間の組織および/または人間の髪に、安全に直に接触させて使用するのに適した化粧品、医薬品、または薬剤用の全てのビヒクルを指していて、該ビヒクルには、例えば、何らかの希釈剤、溶媒、媒体、フィラーなどが含まれてもよい。該ビヒクルは、皮膚(または髪)に塗布するのに適した、当該技術分野において公知のあらゆる形態を取ることができ、(例えば、脱イオン水などの)水、植物油、鉱油、オクタルパルミテート、イソプロピルミリステート、およびイソプロピルパルミテートなどのエステル、ジカプリルエステルおよびジメチルイソソルバイドなどのエステル、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、およびビフェニルアルコールなどのアルコール、イソオクタン、イソドデカン、およびイソヘキサデカンなどのイソパラフィン、シクロメチコン、ジメチコン、ジメチコンクロスポリマー、ポリシロキサン、およびそれらの誘導体、好ましくは、有機修飾された(organo−modified)誘導体などのシリコンオイル、鉱油、石油、イソエイコサン(isoeicosane)、およびポリイソブテンなどの炭化水素オイル、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、およびヘキシレングリコールなどのポリオール、みつろう、植物ワックス(botanical wax)などのワックス、あるいは、前述したものの全ての組み合わせまたは混合物を含んでもよい。本願明細書の教示に基づくと、当業者であれば、好適なビヒクル、および/または本発明の化粧組成物の所望の性質の1または複数を保つようなビヒクルの量を選ぶことができる。
【0101】
前記ビヒクルは、水相、油相、アルコール相、シリコン相、またはこれらの混合物を含んでもよい。化粧品として許容されるビヒクルは、エマルションを含んでもよい。好適なエマルションの非限定的な例には、油中水型エマルション、水中油型エマルション、水中シリコン型エマルション、シリコン中水型エマルション、水中ワックス型エマルション、水中油中水型の三相エマルション(triple emulsion)、あるいはクリーム、ゲル、またはミクロエマルションの外観を有するものなどが含まれる。エマルションには、ノニオン、アニオン、または両性界面活性剤などの乳化剤が含まれてもよい。
【0102】
エマルションの油相には、軟化剤を含む1または複数種の有機化合物、ブチレングリコール、プロピレングリコール、メチルグルセス−20、およびグリセリンなどの保水剤、ビーガム(veegum)またはヒドロキシアルキルセルロースなどの増粘剤を含む水分散性または水溶性化合物、カルボポール(CARBOPOL)934のような高分子量のアクリル酸などのゲル化剤、およびこれらの混合物が含まれると好ましい。エマルションには、組成物中に存在する種々の成分を乳化できる1または複数種の乳化剤が含まれてもよい。
【0103】
これらに限定される訳ではないが、油相中での使用に適した化合物には、植物油、オクチルパルミテート、イソプロピルミリステート、およびイソプロピルパルミテートなどのエステル、ジカプリルエステルなどのエステル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの脂肪族アルコール、イソオクタン、イソドデカン、およびイソヘキサデカンなどのイソパラフィン、ジメチコン、環状シリコン、およびポリシロキサンなどのシリコンオイル、鉱油、石油、イソエイコサン(isoeicosane)、およびポリイソブテンなどの炭化水素オイル、天然または合成ワックスなどが含まれる。油含有相は、単一のオイルまたは異なるオイルの混合物から構成されてもよい。好適な疎水性の炭化水素オイルは、飽和であっても不飽和であってもよく、脂肪族の特性を有してもよく、直鎖状であっても分岐鎖を有してもよく、あるいは脂環式または芳香族の環を含んでいてもよい。炭化水素オイルには、6〜20の炭素数、より好ましくは、10〜16の炭素数を有する炭化水素オイルが含まれる。代表的な炭化水素には、デカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカン、およびC8−20イソパラフィンが含まれる。パラフィン系炭化水素は、商標名ISOPARSとしてエクソンから入手でき、パルメチル・コーポレイション(Permethyl Corporation)からも入手できる。さらに、商標名パルメチル(Permethyl)99ATMを有して、パルメチル・コーポレイションで製造されたC12イソパラフィン(イソドデカン)などのC8−20パラフィン系炭化水素も好適であると考えられる。(商標名Permethyl(登録商標)を有する)イソヘキサデカンなどの種々の市販のC16イソパラフィンも好適である。好適な揮発性の炭化水素には、例えば、パルメチル−99A(プレスパース・インコーポレイテッド(Presperse Inc.))を含むイソドデカンやイソデカン、およびエクソン・ケミカルから入手可能なイソパー・シリーズ(Isopar Series)などのC−CないしC12−C15イソパラフィンなどのポリデカンが含まれる。代表的な炭化水素溶媒はイソドデカンである。
【0104】
油相には、例えば、ライスブラン(rice bran)ワックス、カルナウバ蝋、オウリカリー(ouricurry)ワックス、キャンデリラ(candelilla)ワックス、モンタン(montan)ワックス、サトウキビ蝋、地蝋、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ(Fischer−Tropsch)ワックス、蜜蝋、微結晶ワックス、シリコンワックス、フッ化ワックス、およびこれらの何らかの組み合わせを含む1または複数種のワックスが含まれる。
【0105】
非限定的な乳化剤には、乳化蝋、乳化多価アルコール、ポリエチルポリオール、ポリエーテル、ポリオールのモノまたはジエステル、エチレングリコールモノステアリン酸塩、グリセリンモノステアリン酸塩、グリセリンジステアリン酸塩、シリコン含有乳化剤、大豆ステロール、(セチルアルコールなどの)脂肪族アルコール、アクリレート、ステアリン酸などの脂肪酸、脂肪酸塩、およびこれらの混合物が含まれる。ある好適な乳化剤には、大豆ステロール、セチルアルコール、ステアリン酸、乳化蝋、アクリレート、シリコン含有乳化剤、およびこれらの混合物が含まれる。これらに限定される訳ではないが、本願明細書に記載された組成物とともに使用できる他の特定の乳化剤には、一例を挙げたに過ぎないが、以下の1または複数、つまり、C10−30アルキルアクリレート共重合体、ジメチコンPEG−7イソステアレート、アクリルアミド共重合体、鉱油、ソルビタンエステル、ポリグリセリル−3−ジイソステアレート、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロールなどのグリセロールエステル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールおよびポリオキシエチレンノニルフェノールなどのポリオキシエチレンフェノール、ポリオキシエチレンセチルエーテルおよびポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ジメチコンコポリオール、ポリグリセリル−3−ジイソステアレートなどのポリグリセリルエステル、グリセリルラウレート、ステアレス(Steareth)−2、ステアレス−10およびステアレス−20の1または複数が含まれる。さらなる乳化剤は、INCI Ingredient Dictionary and Handbook 11th Edition 2006に示されていて、その開示内容は、ここに参照されて包含される。これらの乳化剤は、典型的には、組成物中に、約0.001重量%から約10重量%の量、好ましくは、約0.01重量%から約5重量%、より好ましくは、約0.1重量%から約3重量%だけ存在している。本願明細書の教示に基づくと、当業者であれば、好適な乳化剤、あるいは本願明細書に記載された他の材料を選ぶことができ、および/または本発明の化粧組成物の所望の性質の1または複数を保つような乳化剤の量を選ぶことができる。
【0106】
油相には、1または複数の揮発性および/または非揮発性のシリコンオイルが含まれてもよい。揮発性のシリコンには、環状と直鎖状の揮発性ジメチルシロキサンシリコンが含まれる。ある実施形態では、揮発性のシリコンには、四量体(D4)、五量体(D5)、六量体(D6)のシクロメチコンを含むシクロジメチコン、あるいはこれらの混合物が含まれてもよい。揮発性のシクロメチコン−ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチル−シクロテトラシロキサン、およびデカメチル−シクロペンタシロキサンが、特に言及されてもよい。好適なジメチコンは、ダウ・コーニングから、商品名ダウ・コーニング200(Dow Coring 200(登録商標))流体として入手でき、該ジメチコンは、約0.65から約600000センチストークあるいはそれより高い範囲の粘度を有する。好適な非極性の揮発性液体シリコンオイルは、米国特許第4781917号明細書に開示されていて、その全体はここに参照されて包含される。さらなる揮発性のシリコン材料は、Todd et al.,”Volatile Silicone Fluid for Cosmetics”,Cosmetics and Toiletries,91:27−32(1976)に記載されていて、その全体はここに参照されて包含される。直鎖状の揮発性シリコンは、一般に、25℃において、約5センチストーク未満の粘度を有するのに対し、環状のシリコンは、25℃において、約10センチストーク未満の粘度を有する。種々の粘度を有する揮発性シリコンの例には、(ダウ・コーニング・コーポレイションの)ダウ・コーニング200、ダウ・コーニング244、ダウ・コーニング245、ダウ・コーニング344、およびダウ・コーニング345、(ジー・イー・シリコンズの)SF−1204およびSF−1202シリコン流体、(ゼネラル・エレクトリック・カンパニーの)GE7207および7158、および(SWSシリコンズ・コーポレイションの)SWS−03314が含まれる。直鎖状の揮発性のシリコンには、一例を挙げたに過ぎないが、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、およびドデカメチルペンタシロキサンなどの低分子量のポリジメチルシロキサン化合物が含まれる。
【0107】
非揮発性のシリコンオイルには、典型的に、ポリアルキルシロキサン、ポリアリルシロキサン、ポリアルキルアリルシロキサン、またはこれらの混合物が含まれる。ポリジメチルシロキサンは、好適な非揮発性のシリコンオイルである。非揮発性のシリコンオイルは、典型的に、25℃において、約10から約60000センチストーク、好ましくは、約10から約10000センチストーク、より好ましくは、約10から約500センチストークの粘度を有し、沸点は、大気圧において、250℃よりも高い。非限定的な例には、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、フェニルトリメチコン、およびジフェニルジメチコンが含まれる。揮発性および非揮発性のシリコンオイルは、一例を挙げたに過ぎないが、アルキル、アリル、アミン基、ビニル、ヒドロキシル、ハロアルキル基、アルキルアリル基、およびアクリル酸基などの種々の官能基で、必要に応じて置換されてもよい。
【0108】
シリコン中水型のエマルションは、例えば、ポリジオーガノシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体などのノニオン性の界面活性剤で乳化されてもよい。該界面活性剤は、米国特許第4122029号明細書に開示された内容に含まれていて、その内容は、ここに参照されて包含される。これらの乳化剤は、一般に、ポリジオーガノシロキサン骨格、つまり、典型的に、−(EO)−および/または−(PO)−を含む側鎖を有するポリジメチルシロキサンからなる。ここで、EOはエチルエノキシ基であり、POは1,2−プロピレンオキシ基であり、側鎖には、典型的には、水素または(例えば、C1−6、典型的にはC1−3などの)低級アルキル基が取り付けられたり、水素または低級アルキル基によって末端が形成されたりしている。他の好適なシリコン中水型の乳化剤は、米国特許第6685952号明細書に開示されていて、その開示内容は、ここに参照されて包含される。市販のシリコン中水型の乳化剤には、ダウ・コーニングから、商品名3225Cおよび5225C FORMULATION AIDとして入手可能なもの、ゼネラル・エレクトリックから入手可能なSILICONE SF−1528、(バージニア州のホープウェルにある)ゴールドシュミット・ケミカル・コーポレイションから入手可能なABIL EM 90およびEM 97、(コネチカット州のダンベリーにある)OSIスペシャリティーズおよびから販売されているSILWETシリーズの乳化剤が含まれる。
【0109】
これらに限定される訳ではないが、シリコン中水型の乳化剤の例には、ジメチコンPEG10/15クロスポリマー、ジメチコンコポリオール、セチルジメチコンコポリオール、PEG−15ラウリルジメチコンクロスポリマー、ラウリルメチコンクロスポリマー、シクロメチコン、ジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオール、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、ポリグリセリル−4−イソステアレート、セチルジメチコンコポリオール、ラウリン酸ヘキシル、ジメチコンコポリオール、シクロペンタシロキサン、およびこれらの2または複数の何らかの組み合わせが含まれる。これらに限定される訳ではないが、シリコン中水型の乳化剤の好適な例には、PEG/PPG−18/18ジメチコン(商品名5525C、ダウ・コーニング製)、PEG/PPG−19/19ジメチコン(商品名BY25−337、ダウ・コーニング製)、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン(商品名Abil EM−90、ゴールドシュミット・ケミカル・コーポレイション製)、PEG−12ジメチコン(商品名SF1288、ゼネラル・エレクトリック製)、ラウリルPEG/PPG−18/18メチコン(商品名5200 FORMULATION AID、ダウ・コーニング製)、PEG−12ジメチコンクロスポリマー(商品名9010および9011 silicone elastomer blend、ダウ・コーニング製)、PEG−10ジメチコンクロスポリマー(商品名KSG−20、信越製)、およびジメチコンPEG−7イソステアレートが含まれる。シリコン中水型の乳化剤は、典型的に、約0.001重量%から約10重量%の量、特に、約0.01重量%から約5重量%の量、より好ましくは、1重量%を下回る量だけ、組成物中に存在する。
【0110】
エマルションの水相には、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールを含む1または複数の追加の溶媒が含まれてもよい。揮発性の溶媒は、酢酸ブチルまたは酢酸エチルなどの化粧品として許容されるエステル、アセトンまたはエチルメチルケトンなどのケトンなどであってもよい。
【0111】
油含有相は、エマルションの総重量に基づいて、典型的に、約10重量%から約99重量%、好ましくは、約20重量%から約85重量%、より好ましくは、約30重量%から約70重量%含まれていて、水相は、典型的に、エマルションの重量の約1から約90%、好ましくは約5%から約70%、より好ましくは約20%から約60%含まれている。水相は、典型的には、水の重量の約25%から約100%、より典型的には、約50%から約95%含まれている。
【0112】
組成物はリポソームを含んでいてもよい。リポソームは、他の添加剤や物質を含んでいてもよく、および/または投与を受ける部位に、より特異的に達したり残存するように修正されてもよい。追加の好適なデリバリービヒクルには、例えば、ニオソーム、サブミクロンエマルション高分子のカプセル化物質、ゲル、クリーム、ローション、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0113】
これらに限定される訳ではないが、組成物は、必要に応じて、フィラー、乳化剤、界面活性剤、フィルム形成剤、EDTAなどのキレート剤、ゲル化剤、増粘剤、軟化剤、保水剤、保湿剤、ビタミン、無機塩類、粘度および/またはレオロジー調節剤、日焼け止め、レチノイド、ホルモン化合物、アルファヒドロキシ酸、アルファケト酸、抗マイコバクテリア剤、防菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、脂質化合物、抗腫瘍薬、免疫系刺激剤、抗アレルギー剤、H1またはH2抗ヒスタミン剤、麻酔薬、防腐剤、防虫剤、皮膚冷却化合物、皮膚保護剤、皮膚浸透促進剤、剥離剤、潤滑剤、芳香剤、着色剤、色素沈着低下剤、(例えば、DMDMヒダントイン/ヨードプロピニルブチルカルボネートなどの)防腐剤、安定剤、医薬品、光安定化剤、(例えば、トリエタノールアミンなどの)中和剤、およびこれらの混合物を含む当業者に明らかな他の化粧品用の活性剤や賦形剤を含んでもよい。前述したものに加えて、本発明の化粧組成物は、皮膚の状態または疾患を治療する他の全ての化合物を含んでもよい。本明細書の教示に基づくと、当業者であれば、これらまたは他の材料の全てを選ぶことができ、および/または本発明の化粧組成物の所望の性質の1または複数を保つような乳化剤の量を選ぶことができる。
【0114】
例えば、防腐剤には、アルコール、グリコール、パラベン、4元素からなる含窒素化合物、イソチアゾリノン、アルデヒド放出剤、抗酸化剤、ハロゲン化化合物、およびこれらの組み合わせが含まれてもよい。例示的なアルコールには、例えば、フェノキシエタノール、イソプロピルアルコール、およびベンジルアルコールが含まれる。例示的なグリコールには、例えば、プロピレン、ブチレン、およびペンチレングリコールが含まれる。例示的な(パラヒドロキシ安息香酸としても知られる)パラベンには、例えば、メチル、プロピル、およびブチルパラベンが含まれる。例示的な4元素からなる含窒素化合物には、例えば、塩化ベンザルコニウムおよびクオーターニウム15が含まれる。例示的なイソチアゾリノンには、例えば、メチルイソチアゾリノンおよびメチルクロロイソチアゾリノンが含まれる。例示的なアルデヒド放出剤には、例えば、DMDMヒダントイン、イミダゾリジニル尿素、およびジアゾリジニル尿素が含まれる。例示的な抗酸化剤には、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン、およびトコフェロールが含まれる。例示的なハロゲン化化合物には、例えば、トリクロサンおよびクロロヘキシジンジグルコネートが含まれる。本発明の目的に有用な防腐剤の追加の例は、例えば、Steinber,D.”Frequency of Use of Preservatives 2001”Cosmet.Toilet.117,41−44,(2002)および”Preservative Encyclopedia”Cosmet.Toilet.117,80−96(2002)に見出すことができる。
【0115】
着色剤には、例えば、有機および無機の色素および光沢剤が含まれてもよい。これらに限定される訳ではないが、好適な無機色素には、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、およびフェリックブルー(ferric blue)と同様に、酸化チタン、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化セリウムが含まれる。好適な有機色素には、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、およびアルミニウムレーキとカーボンブラックが含まれる。好適な光沢剤には、酸化チタン、酸化鉄、または天然色素で被覆されたマイカが含まれる。
【0116】
種々のフィラーや追加の成分が添加されてもよい。フィラーは、通常、組成物の総重量に基づいて、約0重量%から約20重量%、好ましくは、約0.1重量%から約10重量%の量だけ存在している。これらに限定される訳ではないが、好適なフィラーには、シリカ、処理済シリカ(treated silica)、タルク、ステアリン酸亜鉛、マイカ、カオリン、オルガゾール(Orgasol(商標))などのナイロン(Nylon)粉末、ポリエチレン粉末、テフロン(Teflon(商標))、でんぷん、窒化ホウ素、エクスパンセル(Expancel(商標)、ノーベル・インダストリー製)などのなどの共重合体ミクロスフィア、ポリトラップ(Polytrap(商標)、ダウ・コーニング製)、およびシリコン樹脂マイクロビーズ(Toshibaから入手可能なトスパール(Tospearl(商標))などが含まれる。
【0117】
ある好適な実施形態では、組成物には、少なくとも1種の他のスキン(ヘア)ライトナー、少なくとも1種の他の抗炎症剤、少なくとも1種の他の抗脂質剤、少なくとも1種の他の剥離剤、および/または少なくとも1種の他の抗老化剤が含まれる。他の従来の添加剤には、アスコルビン酸モノパルミテートなどのビタミン誘導体、ヒドロシキアルキルセルロースなどの増粘剤、ゲル化剤、およびベントナイト、スメクタイト、マグネシウムアルミニウムシリケート、およびリチウムマグネシウムシリケートなどの構造化剤が含まれる。本発明のある実施形態では、本発明の局所的な組成物には、以下の1または複数、つまり、軟化剤、光拡散剤、日焼け止め、および抗酸化剤の1または複数が含まれてもよい。これらの添加物は、抗老化剤として作用してもよい。本明細書の教示に基づくと、当業者であれば、好適な軟化剤、光拡散剤、日焼け止め、および/または抗酸化剤、あるいは何らかの他の材料を選ぶことができ、および/または本発明の化粧組成物の所望の性質の1または複数を保つような上記薬剤の量を選ぶことができる。
【0118】
軟化剤によって、皮膚の滑らかさを促進し、細かな小皺および粗い皺の外観を低減するという機能的な利点がもたらされる。軟化剤の例には、イソプロピルミリステート、ワセリン、イソプロピルラノレート、(例えば、メチコン、ジメチコンなどの)シリコン、オイル、鉱油、脂肪酸エステル、セチルエチルヘキサノエート、C12−15アルキルベンゾエート、イソプロピルイソステアレート、ジイソプロピル二量体ジリノレアート、あるいは何らかのこれらの混合物が含まれる。軟化剤は、好ましくは、組成物の総重量の約0.1重量%から約50重量%存在していてもよい。
【0119】
光拡散剤は、皮膚の表面の光学的な見た目(optometrics)を変化させて、例えば、小皺と皺を視覚的にぼかしたり和らげるようにする粒子である。これらに限定される訳ではないが、本発明で使用できる光拡散剤の例には、窒化ホウ素、マイカ、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリウレタン粉末、セリサイト、シリカ、シリコン粉末、タルク、テフロン、二酸化チタン、酸化亜鉛、あるいは何らかのこれらの混合物が含まれる。存在する場合は、光拡散剤は、組成物の総重量の約0.01重量%から約20重量%存在してもよい。
【0120】
皮膚を紫外線の損傷から保護する日焼け止めが含まれてもよい。好適な日焼け止めは、オクトクリレン、アボベンゾン(パルソール1789)、オクチルメトキシシナメート、オクチルサリチレート、オキシベンゾン、ホモサレート、ベンゾフェノン、しょうのう誘導体、酸化亜鉛、および二酸化チタンなどの広範囲のUVAとUVBを保護するものである。存在する場合は、日焼け止めは、組成物の総重量の約0.01重量%から約70重量%存在してもよい。
【0121】
抗酸化剤は、特に、皮膚からフリーラジカルを除去して、環境中にある侵略物質(environmental aggressor)から、皮膚を保護するように機能する。本発明の組成物で使用される可能性がある抗酸化剤の例には、アスコルビン酸とその誘導体/エステルなどのフェノール性水酸基を有する化合物、アルファヒドロキシ酸、ベータカロテン、カテキン、クルクミン、(例えば、フェルラ酸エチルおよびフェルラ酸ナトリウムなどの)フェルラ酸誘導体、(例えば、ガリウム酸プロピルなどの)ガリウム酸誘導体、リコピン、還元酸、ロスマリン酸、タンニン酸、テトラヒドロクルクミン、トコフェロールおよび(例えば、酢酸トコフェリルなどの)その誘導体、尿酸、あるいはこれらの混合物が含まれる。他の好適な抗酸化剤は、還元型あるいは非還元型のいずれの形態を取ってもよい、グルタチオン、リポ酸、トリグリコール酸、および他のスルフヒドリル化合物などの1または複数個のチオール基(−SH)を有するものである。抗酸化剤は、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、亜硫酸塩、あるいは他の無機塩およびイオウを含む酸などの無機物であってもよい。本発明の組成物は、抗酸化剤を、組成物の総重量の、好ましくは約0.001重量%から約10重量%、より好ましくは約0.01重量%から約5重量%含んでいてもよい。
【実施例】
【0122】
(実施例1:カルシウム流入の抑制によるメラニン合成の低減)
色素生成細胞中へのカルシウムの流入を抑制する能力に関して、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を、インビトロで試験した。実験は、製造者の指示に従って、Fluo−4 NW Calcium Assay Kits(インビトロジェン製)を用いて、B16メラノーマ細胞中の細胞内カルシウムを測定することを目的とした。B16マウスメラノーマ細胞系(ATCCのカタログ番号CRL−6475)は、96ウェル組織培養用の処理済ディッシュにおいて、増殖培地中で増殖された。カルシウム処理の前に、B16細胞培養から増殖培地を取り除いて、100マイクロリットルの色素添加液を、6ウェルプレートの各ウェルに迅速に添加した。プレートを37℃で30分間培養した後、常温でさらに30分間保温した。色素バッファを除去し、プレートを1倍のリン酸緩衝生理食塩水で一度洗浄し、試験化合物とカルシウムを含む(製造業者の指示に従って作られた)分析用バッファで置換した。使用した試験化合物は、公知のカルシウム流入抑制剤である100マイクロモーラーの2−APBと、配列番号1からなる濃度の異なる亜鉛錯体型のペプチドを0.1%含む改変された酵母ペプチド画分であった。(試験化合物を含まない分析用バッファである)ビヒクルをコントロールとして使用した。
【0123】
それぞれ485ナノメートル/530ナノメートルの励起/発光波長でマイクロプレートリーダーを使用して、蛍光発光を測定した。前記リーダーは、5分の間、30秒ごとに蛍光発光を読み取るように設定した。5分が終了したときに、各ウェル中の最終濃度が1マイクロモーラーになるように、タプシガルジンを分析用バッファに添加することによって、カルシウムイオンの流入を誘発した。ネガティブコントロールとして、タプシガルジンを含まない分析用バッファを使用した。蛍光発光用のマイクロプレートリーダーは、再び、それぞれ485ナノメートル/530ナノメートルの励起/発光波長で、30分の間、30秒ごとに蛍光発光を測定するように設定した。カルシウム流入のグラフを得るために、蛍光単位(fluorescence unit)を時間(単位は分)に対してプロットした。コントロールに対する2APBまたは改変されたペプチド画分の効果を、カルシウム流入曲線のピークの下側にある面積を用いて比較した。
【0124】
100マイクロモーラーの2−APBの処理によって、細胞へのカルシウムの流入が86%抑制されることが観察された。さらに、意外なことに、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを0.1%含む改変されたペプチド画分を用いたB16色素細胞の処理によって、細胞へのカルシウムの流入が約45%抑制されることも分かった。
【0125】
次に、2−APBと、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを備える改変されたペプチド画分のメラニン合成に対する効果を、B16細胞中で調べた。B16マウスメラノーマ細胞系(ATCCのカタログ番号CRL−6475)は、96ウェル組織培養用の処理済ディッシュ(ファルコン製)で増殖され、色素形成(メラニン合成)を調節する能力を測定するために、試験化合物を用いて処理された。特に、細胞は、100マイクロモーラーの2−APBまたは配列番号1からなる濃度の異なる亜鉛錯体型のペプチドを1%および0.1%含む改変された酵母ペプチド画分に、7日間暴露された。この処理期間に続いて、540ナノメートルで、パッカード製のマイクロプレートリーダーを用いてメラニン合成のレベルを定量化した。
【0126】
メラニン合成の量を定量化した後、MTT転換法を用いて、細胞生存率を測定した。MTT転換法は、生細胞中でだけ機能するNAD(P)H依存性のミクロゾームの脱水素酵素によって、MTT色素が黄色の水溶性のテトラゾリウム塩から青紫色の不溶性のフォルマザン沈殿物に還元されるのを測定する方法である。したがって、青色の強度が細胞生存率の指標になる。メラニン合成を定量化した後、濃度1ミリグラム/ミリリットルのMTT色素溶液に、3時間培養菌を暴露した。試薬アルコール(95%エタノール:5%イソプロパノール)を用いて、フォルマザン物質を溶解し、オービタルシェーカー上で15分振とうした。パッカード製のマイクロプレートリーダーを用いて、570nmで、抽出されたフォルマザンを測定して、生細胞によるMTT色素の取り込みと転換を測定した。
【0127】
細胞生存率に標準化した後、全ての色素沈着を計算し、コントロールに対する百分率活性値として表した。驚くべきことに、2−APBは、コントロール(p<0.05)と比べて、メラニン合成を77%抑制し、0.1%と1%の亜鉛錯体型のペプチドは、それぞれ27%と52%の抑制効果を示すことが観察された。この結果によれば、過度に色素沈着した皮膚に局所的に塗布したときに、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分および/または他のカルシウム流入抑制剤を含む組成物を、過度の色素沈着を抑制するように使用できることが示唆される。
【0128】
(実施例2:改変された酵母ペプチド画分によるTNFa生成の低減)
炎症に関するものとして知られるTNFaの生成を低減する能力に関して、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分をインビトロで試験した。6ウェルプレート中の増殖培地において、37℃かつCO5%の条件で48時間、ヒト表皮ケラチノサイト細胞を培養した。腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)を誘発するために、10ミリグラム/ミリリットルのホルボールミリスチルアセテート(PMA)を含む1mLの増殖細胞を用いて、細胞を処理した。配列番号1からなる濃度の異なる亜鉛錯体型のペプチドを0.1%と1%含む酵母ペプチド画分を用いて、細胞を同じように処理した。
【0129】
37℃で6時間培養した後、培養培地を採集し、ELISAキット(Quantikine Human TNF−α/TNFSF1A、アール・アンド・ディー・システムズ製)を用いて、TNFaのレベルを分析した。配列番号1からなる亜鉛型のペプチド画分を0.1%と1%含む改変されたペプチド画分を用いた処理によれば、PMAによるTNFaの誘発が、それぞれ25%と46%抑制されることが観察された(p<0.05)。この結果によれば、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分を含む組成物を局所的に塗布することによって、炎症を低減でき、炎症性の皮膚の状態に関連する症状を改善できることが示唆される。
【0130】
(実施例3:改変された酵母ペプチド画分によるPPARガンマの発現の低減)
脂質の生成と貯蔵に関連するものとして知られるPPARガンマの発現を低減する能力に関して、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分をインビトロで試験した。ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(luciferase reporter assay system)を用いて、PPARガンマ遺伝子の発現を監視した。このアッセイシステムは、領域をコードするルシフェラーゼ酵素に結合されるPPARガンマプロモータシーケンスに関連するものである。ルシフェラーゼ活性のレベルは、PPARガンマプロモータからの遺伝子発現活性の指標になる。PPARガンマレポーターは、PPAR要素((ACO)3)の3個の複製物をpGLベクターに挿入することによって構成される。その後、該構成は、CV−1細胞中に形質移入される。
【0131】
CV−1細胞は、24ウェルプレートにおいて、10%の(脱脂された)ウシ胎児血清を加えたDMEM培地中に、濃度60%で蒔かれた。85%コンフルエンス(confluence)に達した後、細胞は、リポフェクトアミンとプラス試薬を含むトランスフェクション混合物を用いて形質移入された。トランスフェクション混合物は、(100ナノグラム/ウェルの)PPARガンマプラスミドと(10ナノグラム/ウェルの)参照プラスミドであるpRL−NULLと同様に、(100ナノグラム/ウェルの)PPARガンマレポーター(ACO3−tk)の構成を含んでいた。プラスミドの構成は、最初に、750マイクロリットルの血清と抗生物質を含まない培地中に希釈された20マイクロリットルのプラス試薬と、常温(RT)で15分間混合され、次に、5ミリリットルの同じ培地中に希釈された30マイクロリットルのリポフェクトアミン試薬と、さらに15分間混合された。(1.5ミリリットル/ウェルの)最終的なトランスフェクション複合物を、CV−1細胞の単一層に添加した。3時間培養した後、前記培地は、標準的な培養培地と交換され、5.0%のCOを含む加湿培養器中において、37℃で一晩保温された。
【0132】
形質移入された細胞は、配列番号1からなる濃度の異なる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を用いて処理された。該ペプチド画分には、0.004%の亜鉛錯体型のペプチドを含む組成物が含まれていた。ポジティブコントロールとして、細胞を10マイクロモーラーのシグリタゾンで処理し、ネガティブコントロールとして、細胞を何らのストレスに曝された酵母エキスを含まないビヒクルで処理した。処理済の細胞は、さらに24時間培養され、リン酸緩衝食塩水で一回洗浄され、室温で30分間緩やかに振とうすることによって、100マイクロリットルの細胞溶媒バッファ中に溶解された。−80℃で3時間培養した後、擦り取ることによって、細胞溶解液を収集した。全ての実験は、3組の適切なポジティブまたはネガティブコントロールを含む条件で実施した。
【0133】
デュアルルシフェラーゼ・レポーター・アッセイ・システム(Dual−Luciferase Reporter Assay System)(プロメガ(Promega)製)を用いて、製造者が記載したように、ルシフェラーゼ活性を測定した。このシステムには、2種のルシフェラーゼ活性を経時的に測定するように使用される2種の基質が含まれていた。レポーター遺伝子の活性を示すホタルルシフェラーゼの活性は、一定量の溶解液(10マイクロリットル)をルシフェラーゼ・アッセイ・リージェント(Luciferase Assay Reagent)IIに混合すると開始された。その後、ホタルルシフェラーゼを急冷し、ストップ・アンド・グロ・リージェント(Stop & Glo Reagent)を試料プレートに添加して、ウミシイタケルシフェラーゼを同時に活性化した。各試料における、ウミシイタケルシフェラーゼシグナルに対するホタルルシフェラーゼシグナルの比率を計算し、ビヒクル処理済のウェルからのシグナルに対する抽出処理済のウェルからのシグナルの比率を、誘導(>1)または抑制(<1)の境目(fold)として記録した。
【0134】
3組の試験において、配列番号1からなる0.004%の亜鉛錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分を添加すれば、レポーター遺伝子の発現が、30%低減することが分かった(p<0.05)。これは、PPARガンマの発現が、30%低減することを意味している。この結果によれば、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分を含む組成物を塗布することによって、脂質の生成を制御、例えば、皮脂の過剰生成および/またはセルライトを低減できることが示唆される。
【0135】
(実施例4:改変されたペプチド画分によるコラーゲン合成の増大)
コラーゲンの合成、特に、老化する皮膚を低減するものとして知られる真皮マトリックス成分であるプロコラーゲンIを増大する能力に関して、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分をインビトロで試験した。ヒト真皮線維芽細胞(カスケード・バイオロジックス(Cascade Biologics)製)を、96ウェル組織培養プレートにおいて、200マイクロリットルの増殖培地(タルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、5%のウシ胎児血清、1%のL−グルタミン、および1%の抗生物質)中で培養し、37℃において24時間保温した。配列番号1からなる濃度の異なる亜鉛錯体型のペプチドを含み、増殖培地中で希釈される改変された酵母ペプチド画分を用いて、細胞を処理し、37℃において72時間保温した。該ペプチド画分には、増殖培地中で希釈される0.1%の亜鉛錯体型のペプチドを含む画分が含まれている。この時間の後、細胞馴化培地(conditioned media)を収集し、本願明細書で述べたように、コラーゲンの前駆体形態であるプロトコラーゲンIのレベルに関して、該細胞馴化培地を分析した。
【0136】
アメリカ合衆国のウィスコンシン州にあるタカラバイオ(Takara Bio)USAから購入した固相サンドイッチELISA免疫測定装置(Procollagen Type−I C−Peptide EIA Kit)を用いて、製造者の指示に従って、プロトコラーゲンIを測定した。配列番号1からなる0.1%の亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分によって、プロトコラーゲンIは20.5%誘発された。この結果は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含む組成物を局所的に塗布すれば、コラーゲン合成を増大でき、その結果、皮膚中のコラーゲンレベルを増大できるので、皮膚の老化の望ましくない兆候を未然に防ぐことができ、および/または改善できることを示唆している。
【0137】
(実施例5:改変された酵母ペプチド画分によるコラゲナーゼ活性の低減)
メタロプロテアーゼ活性を低減する能力に関して、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分をインビトロで試験した。特に、モレキュラー・プローブ社によって作成されたEnzcheck Gelatinase/Collagenase Assay Kit(E−12055)を用いた。この分析では、共役発光を抑制するような、Molecular Probes BODIPY FL色素でラベル化されたDQゼラチン基質を用いる。コラーゲン基質の消化に関して、発光は可視化される。この分析で用いたコラゲナーゼは、クロストリジウム・ヒストリチクスから精製されたメタロプロテアーゼであった。
【0138】
メタロプロテアーゼがDQゼラチン基質を消化するのを防ぐために、配列番号1からなる濃度の異なる亜鉛錯体型のペプチドを含み、1%の亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分をこの分析に用いた。反応混合物からの蛍光発光の低減は、抑制の指標となる。反応は、暗室において室温で1時間保温された。それぞれ485ナノメートル/530ナノメートルの励起/発光波長において、発光マイクロプレートリーダーを用いて、読み取りを行った。
【0139】
配列番号1からなる1%の亜鉛錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分によって、メタロプロテアーゼ活性が20%低減することが観察された。この結果は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチド画分を含む改変された酵母ペプチド画分を含む組成物を局所的に塗布すれば、メタロプロテアーゼ活性を低減できるので、例えば、皮膚のハリとふくよかさの損失を低減することによって、コラーゲンと、皮膚の老化の関連する望ましくない兆候を低減できることを示唆している。
【0140】
(実施例6:改変された酵母ペプチド画分によるヒアルロン酸の増大)
特に、真皮線維芽細胞中において、ヒアルロン酸の生成を増大する能力に関して、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分をインビトロで試験した。ヒト真皮線維芽細胞(カスケード・バイオロジックス(Cascade Biologics)製)を、96ウェル組織培養プレートにおいて、200マイクロリットルの増殖培地(タルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、5%のウシ胎児血清、1%のL−グルタミン、および1%の抗生物質)中で培養し、37℃において24時間保温した。配列番号1からなる濃度の異なる亜鉛錯体型のペプチドを含み、増殖培地中で希釈される改変された酵母ペプチド画分を用いて、細胞を処理し、37℃において24時間保温した。該ペプチド画分には、増殖培地中で希釈される0.01%の亜鉛錯体型のペプチドを含む画分が含まれている。この時間の後、細胞馴化培地を収集し、アメリカ合衆国のコロラド州にあるコルゲニクス・インコーポレイテッド(Corfenix,Inc)から購入したアッセイキットを用いて、製造者の指示に従って、ヒアルロン酸のレベルに関して、該細胞馴化培地を分析した。
【0141】
配列番号1からなる0.01%の亜鉛錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分によれば、ヒアルロン酸合成は100%誘発されることが分かった。この結果は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分によれば、ヒアルロン酸の生成を増大できるので、例えば、皮膚の水和と弾力性を改善することによって、皮膚の老化に関連する望ましくない特徴の1または複数を低減できることを示唆している。
【0142】
(実施例7:改変された酵母ペプチド画分によるカリクレイン活性の増大)
KLKファミリーの要素、特に、組換型のヒト(rh)KLK5の酵素活性を増大する能力に関して、配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分をインビトロで試験した。組換型のヒトKLK5(R&Dシステムズ製、カタログ番号1108−SE)は、配列番号1からなる濃度の異なる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分を用いてプレ培養された。該ペプチド画分には、0.1%、0.01%および0.001%の亜鉛錯体型のペプチドが含まれている。前処理に続いて、合成基質のペプチド結合の開裂速度を測定することによって、KLK5活性を評価した。該基質は、消光型の蛍光基(Boc−V−P−R−AMC Fluorogenic Peptide Substrate、R&Dシステムズ製、カタログ番号ES011)に接合するので、隣接するペプチド結合が開裂したときに、発光が可視化されて、波長340nmで励起すると、波長612nmにおいて測定可能な発光になる。発光の読み取り値の増加は、rhKLK5活性が増大したことを意味している。
【0143】
配列番号1からなる0.1%、0.01%、および0.001%の亜鉛錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分によれば、KLK5活性が、それぞれ23%、27%、および31%誘発され、驚くことに、逆向きの用量反応が得られることが観察される。この結果は、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含む組成物によれば、KLK活性を増大できるので、例えば、皮膚のつや、および/または明るさを改善することによって、剥離を促進し、皮膚の老化に関連する1または複数の望ましくない特徴を低減できることを示唆している。
【0144】
(実施例8:皮膚の淡色化および/または抗老化エキス配合物)
配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含み、皮膚に局所的に塗布する化粧組成物の例を以下に示す。該組成物は、抗老化および/または皮膚の淡色化用途での使用を見出したエキスの形態で得られる。
【0145】
【表1】

【0146】
(実施例9:皮膚の淡色化および/または抗老化エキス配合物)
配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含み、皮膚に局所的に塗布する化粧組成物のさらなる例を以下に示す。該組成物も、抗老化および/または皮膚の淡色化用途での使用を見出したエキスの形態で得られる。
【0147】
【表2】

【0148】
(実施例10:皮膚の淡色化および/または抗老化エキス配合物)
配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含み、皮膚に局所的に塗布する化粧組成物の例を以下に示す。該組成物は、抗老化および/または皮膚の淡色化用途での使用を見出したクリームの形態で得られる。
【0149】
【表3】

【0150】
(実施例11:皮膚の淡色化および/または抗老化エキス配合物)
配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含み、皮膚に局所的に塗布する化粧組成物の例を以下に示す。該組成物は、抗老化および/または皮膚の淡色化用途での使用を見出した昼用クリームの形態と、さらにSPF20の形態で得られる。
【0151】
【表4】

【0152】
(実施例12:剥離を促すフォーミングクレンザー配合物)
配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含み、皮膚に局所的に塗布する化粧組成物の例を以下に示す。該組成物は、クレンジング中に、さらに剥離を促進するように作用するフォーミングクレンザーの形態で得られる。
【0153】
【表5】

【0154】
(実施例13:皮膚の淡色化および/または抗老化配合物)
配列番号1からなる亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を含み、皮膚に局所的に塗布する化粧組成物の例を以下に示す。該組成物は、抗老化および/または皮膚の淡色化用途での使用を見出したクリームの形態で得られる。
【0155】
【表6】

【0156】
ペプチドを、カルシウム(Ca2+)、銅(Cu2+)、マグネシウム(Mg2+)、マンガン2+)ニッケル(Ni2+)、および鉄(Fe2+)と錯体形成させる、この処方に従うと、種々の配合物が調製される。各配合物は、脱色の必要に応じて、皮膚に局所的に塗布される。該皮膚には、過度の色素沈着の影響が及ぼされた皮膚が含まれる。
【0157】
(実施例14:メラニン合成が低減しない紫外線ストレスに曝された酵母溶解物)
紫外線ストレスに曝された酵母エキスでは、メラニン合成の何らかの顕著な低減を実証できない。米国特許第5643587号明細書に開示されたUVストレスに曝された酵母エキスと、本発明の改変された酵母ペプチド画分について、色素細胞中でのメラニン合成を低減する比較試験を実施した。濃度0.1%、0.01%、および0.001%のUVストレスに曝された酵母エキスに色素細胞を暴露した場合、メラニンのレベルは、+2%、−6%、および−8%変化した。これらの結果によれば、この酵母エキスが、このシステムでのメラニンレベルを調節する能力を有していないことが分かる。
【0158】
一方で、本発明の配列番号1からなる1%および0.1%の亜鉛錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分に色素細胞を暴露した場合、同一の試験条件において、メラニンの合成が、明らかに低減していた。先の実施例1で報告したように、0.1%および1%の亜鉛錯体型のペプチド組成物は、メラニンの合成を、それぞれ27%および52%抑制していた。この結果では、紫外線に曝された従来技術の酵母エキスと比べて、本発明の組成物の色を薄くすることに関する驚くべき利益、特に、配列番号1からなり、亜鉛イオンと錯体化されたペプチドを優性画分として含むUVストレスに曝された酵母エキスの改変された酵母ペプチド画分のメラニン合成を低減する能力が示されている。
【0159】
本願明細書で使用される用語は、特に明記されない限り、通常の慣用的な意味で用いられる。本願明細書で示した全ての重量百分率は、組成物全体に対する「重量%(% by weight)」または「重量%(weight%)」について付与されるものであり、特に指示されていない限り、キャリア、溶媒、皮膚軟化剤、または他の成分を添加した後であって、皮膚(または髪)に塗布する前の配合物全体に対する重量百分率を指している。
【0160】
各個々の刊行物または特許または特許出願が、具体的及び個別に、全ての目的のためにその全体が参照されて包含されることを示していたように、本願明細書で引用された特許出願および刊行物を含む全ての引用文献は、それと同じ範囲で、全ての目的のために、その全体がここに参照されて包含される。当業者に明らかなように、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、本発明には多くの修正および変形をなすことができる。本願明細書に記載された特定の実施形態は、例示のために提供されたものであり、本発明は、添付の特許請求の範囲の用語、及び該特許請求の範囲が権利化されるところの均等物の全範囲によってのみ限定されるべきである。
【0161】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年8月31日に出願された、米国仮特許出願番号第61/238,427号についての優先権の利益を主張し、その開示内容の全ては、ここに参照されて包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品として許容されるビヒクル中に有効量のカルシウム流入抑制剤を含む組成物を、過度に色素沈着した領域に局所的に塗布することを含み、
前記カルシウム流入抑制剤は、前記過度に色素沈着した領域中でのメラニン合成を低減するのに十分な量で存在する、
過度の色素沈着の治療方法。
【請求項2】
前記カルシウム流入抑制剤は、配列番号1からなる金属錯体型ペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分である、
請求項1に記載の過度の色素沈着の治療方法。
【請求項3】
前記カルシウム流入抑制剤は、ホウ酸2−アミノエチルジフェニル、アミノヘキサヒドロフルオレン、ベプリジル、カルシクルジン、カルシセプチン、塩化カルミダゾリウム、ニフェジピン、ベラパミル、FS2(デンドロアスピス・ポリレピス・ポリレピス)、ガラニン、プロトピン、テトラヒドロパルマチン、ソマトスタチン−14、L−ステフォリジニールベリン(Stepholidinealverine)、マンガン、マグネシウム、およびこれらの塩からなる群の中から選ばれる、
請求項1に記載の過度の色素沈着の治療方法。
【請求項4】
前記カルシウム流入抑制剤は、チオジプロピオン酸(TDPA)またはこれらのエステル誘導体から選ばれる、少なくとも1種の他のスキンライトナーと組み合わされる、
請求項1に記載の過度の色素沈着の治療方法。
【請求項5】
化粧品として許容されるビヒクル中に有効量のカルシウム流入抑制剤を含む組成物を、皮膚または髪の色を薄くするのに十分な時間で、皮膚または髪に局所的に塗布することを含む、
皮膚または髪の色を薄くする方法。
【請求項6】
化粧品として許容されるビヒクル中に、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を有効量含む組成物を、該組成物を必要とする皮膚に局所的に塗布することを含む、
人間の皮膚に利益をもたらす方法。
【請求項7】
前記金属は、二価の金属イオン、好ましくは、亜鉛イオンである、
請求項6に記載の人間の皮膚に利益をもたらす方法。
【請求項8】
前記改変された酵母ペプチド画分は、メラニン合成、TNFa生成、PPARを介したシグナル伝達、およびメタロプロテアーゼ活性の少なくとも1つを低減し、および/またはKLK活性、ヒアルロン酸生成、およびコラーゲン合成の少なくとも1つを増大するのに十分な量で存在する、
請求項6に記載の人間の皮膚に利益をもたらす方法。
【請求項9】
前記皮膚の利益は、
(a)皮膚の老化の兆候を予防し治療すること、
(b)小皺または皺の処置および/または予防
(c)皮膚の細孔の大きさの低減
(d)皮膚の厚さ、ふくよかさ、および/またはつっぱりの改善
(e)皮膚のしなやかさおよび/または柔らかさの改善
(f)皮膚の色調、輝き、および/または透明感の改善
(g)皮膚のきめ、および/または再組織化(retexturization)の促進
(h)皮膚バリア修復、および/または機能の改善
(i)皮膚輪郭の外観の改善
(j)皮膚のつや、および/または明るさの回復
(k)皮膚の必須栄養素、および/または必須成分の補充
(l)閉経により減少する皮膚外観の改善
(m)皮膚の保湿、および/または水和の改善
(n)皮膚の弾力および/または弾力性の増大および/または損失の防止
(o)プロコラーゲンおよび/またはコラーゲン合成の改善
(p)皮膚の弛みまたは萎縮の処置および/または防止
(q)剥離効果の向上および/または乾燥の低減
(r)皮膚への過度の色素沈着の処置および/または予防
(s)炎症の処置および/または予防
(t)過度の皮脂の産出の処置および/または予防、および、
(u)セルライトの処置および/または予防
からなる群の中から選ばれる、
請求項6に記載の人間の皮膚に利益をもたらす方法。
【請求項10】
前記皮膚への過度の色素沈着には、老人斑、斑の領域、分離して色素が過度に沈着した領域、日焼けした領域、腋の下の領域、またはメラニン沈着した小斑点が含まれる、
請求項9に記載の人間の皮膚に利益をもたらす方法。
【請求項11】
前記炎症には、にきびの病害、吹き出物、または炎症を起こした領域が含まれる、
請求項9に記載の人間の皮膚に利益をもたらす方法。
【請求項12】
化粧品として許容されるビヒクル中に、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を有効量含む組成物を、皮膚または髪の色を薄くするのに十分な時間で、皮膚または髪に局所的に塗布することを含む、
皮膚または髪の色を薄くする方法。
【請求項13】
化粧品として許容されるビヒクル中に、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変された酵母ペプチド画分を0.001重量%から5重量%含み、
ローション、クリーム、美容液、軟膏、ゲルまたはスティックの形態を取る、
局所的組成物。
【請求項14】
化粧品として許容されるビヒクル中に、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分を有効量含む組成物を、脂質の過剰生成を低減するのに十分な時間で、脂質の過剰生成の影響が及ぼされる皮膚の領域に局所的に塗布することを含む、
皮膚の脂質の過剰生成を治療する方法。
【請求項15】
化粧品として許容されるビヒクル中に、配列番号1からなる金属錯体型のペプチドを含む改変されたペプチド画分を有効量含む組成物を、該組成物を必要とする皮膚の領域に局所的に塗布することと、
前記組成物を前記皮膚に擦り付けること、を含む、
剥離効果を高める方法。

【公表番号】特表2013−506623(P2013−506623A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526799(P2012−526799)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/044360
【国際公開番号】WO2011/025635
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(399130393)エイボン プロダクツ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】