説明

ストレス付与装置、及びこれを用いた実装基板の製造方法

【課題】製造された実装基板についてインラインで温度変化によるストレスに対する信頼性を従来よりも高くする。
【解決手段】基板搬送機構部16と、高温槽20と、低温槽21とを備えている。実装基板に、高温槽20及び低温槽21を交互に投入することにより、電子部品の使用温度範囲内の温度サイクルを付与することにより、実装基板wにおけるプリント基板と電子部品との間の歪差を増大させ、その後、実装基板wの半田接合部の良否を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ストレス付与装置、及びプリント基板と電子部品との接続を検査する実装基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化や高性能化に伴い、電子機器に用いられる半導体パッケージやその実装形態が多様化してきている。半導体パッケージには、DIP(Dual In−line Package)に加えて、QFP(Quad Flat Package)やSOP(Small Outline Package)などが存在している。これらのパッケージは入出力端子にリードピンを用いたPGA(Pin Grid Array)パッケージに属するものである。また、入出力端子にボール状の半田バンプを用いて入出力端子の多数化を実現したBGA(Ball Grid Array)パッケージ(単にBGAと呼ぶ。)やCSP(Cip Scale Package)が開発され、広く使用されるようになっている。
【0003】
半導体パッケージのプリント基板への実装は、DIPでは、パッケージの両サイドにあるリードピンをプリント基板の貫通孔(スルホール)に挿入し、スルホールの間隙に半田を充填し、リードピンをプリント基板に接続させるようにしている。QFPやSOPでは、スルホールの代わりにプリント基板上に接続電極(パッド)を形成し、このパッドにパッケージの4辺にあるリードを接続させるようにする表面実装が行われている。そしてBGAでは、リードピンを介さずに半導体パッケージの片面に均等に配置されたボール状の半田バンプでプリント基板上に直接に接合させるようにしている。
【0004】
このようにDIP、QFP、SOP、BGA、CSP又はその他の電子部品などを実装された実装基板は自動化された実装基板製造ラインにより製造されている。この実装基板製造ラインにおいては、ロウ付けの完了した実装基板の中への不良品の混入を阻止することが必要である。これに対処するため、プリント基板への電子部品の半田付けが終了した段階で、全ての実装基板について或いは抜き取り的に一部の実装基板についてインサーキット検査を行い、不良品と判断された実装基板を選り出して完成品に含まれないようにすることが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-6864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体パッケージと基板との間の接続に欠陥があると、両者の熱膨張差に起因するストレスにより、予定の耐用年数よりも短い期間で、半田接合箇所が破壊される。
【0007】
半田接合箇所に欠陥があっても、導通がありさえすれば、電子部品を半田付けされた後のインサーキット検査やファンクション検査などで良好と確認されてしまう。
【0008】
サンプル品について熱によるストレスを多数回、繰り返して付与して疲労を加速させて、実装基板が破壊されるまでの期間を求めて耐用年数の確認を行うエイジング処理が知られているが、製品全数を対象とすることはできない。
【0009】
本発明は、このような問題点に対処するため、製造された全ての実装基板について製造ライン中において温度変化によるストレスに対する信頼性を検査(インライン検査)をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のストレス付与装置は、半導体パッケージが実装された平面状の実装基板を水平姿勢と鉛直姿勢との間で姿勢変更し、鉛直面に沿った方向へ移動させる基板搬送機構と、前記基板搬送機構が実装基板を垂直面に沿って移動させる範囲に設置され、大気温度よりも高い温度に維持される高温槽と、前記基板搬送機構が実装基板を垂直面に沿って移動させる範囲に設置され、大気温度よりも低い温度に維持される低温槽とを備え、水平に移動された実装基板を鉛直姿勢に変更し、前記高温槽と低温槽との間において前記実装基板を繰り返し移動させ、その後水平姿勢に復帰させて送り出する制御回路を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の実装基板の製造方法は、半導体パッケージが実装された平面状の実装基板を鉛直姿勢に変更し、鉛直面に沿った方向へ移動させ、前記鉛直面に沿った方向に設けられた大気温度よりも前記高温槽と低温槽との間において前記実装基板を繰り返し移動させ、前記高温槽と低温槽とを離脱した位置で水平姿勢に復帰させ、前記実装基板の半田接合部の良否を検査することを特徴とする。

【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、電子部品の使用温度範囲内の温度サイクルを付与することにより、半田接合箇所に欠陥を持つ実装基板を破壊して、製造ラインから弾き出すことにより、製品の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例に係るストレス付与装置の組み込まれた実装基板製造ラインを示す平面図である。
【図2】本実施例に係るストレス付与装置を示す斜視図である。
【図3】ストレス付与装置のローダー部の周辺を示す斜視図である。
【図4】ストレス付与装置の温度サイクル付与部の周辺を示す斜視図である。
【図5】ストレス付与装置の温度サイクル付与部を示し、Aは前方から見た要部を示す図で、BはAのx1−x1部を示す図である。
【図6】ストレス付与装置の案ローダー部の周辺を示す斜視図である。
【図7】実装基板の平面図である。
【図8】実装基板の温度や歪量の変化を示す図である。
【図9】実装基板の温度や歪差の変化を示す図である。
【図10】半導体パッケージの端子の電気特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
<本発明の実施例である実装基板製造ラインの全体説明>
本実施例に係る実装基板用のストレス付与装置は、実装基板製造ラインに対しインラインで使用するのが好ましい。
図1において、ストレス付与装置100は、実装基板製造ライン部分101と実装基板製造ライン部分102との間に挟まれて設置されている。
【0015】
先ず実装基板製造ライン部分101は、水平姿勢のプリント基板を矢印a1で示すように前側から後側へ向けて自動的に搬送する搬送装置1を備え、この搬送装置1の搬送途中に前側から印刷処理部2、ボンド塗布部3、電子部品搭載部4、及びリフロー部5が設けられている。
【0016】
ストレス付与装置100は、ローダー部13、温度サイクル付与部14及びアンローダ部15を備え、これら各部間に渡る基板搬送機構部16を備えている。
【0017】
後側の実装基板製造ライン部分102は、水平姿勢の実装基板を矢印a1で示すように前側から後側へ向けて搬送する搬送装置9を備え、この搬送途中に検査部10及び製品取出し部12が設けられている。
【0018】
検査部10は、搬送装置9でこれの検査位置に搬送された実装基板上のデバイスの入力端子にテスト信号を直接に印加し、その結果を直接に実装基板上のデバイスの出力端子から検出し、半田付け不良などを発見し、不良の実装基板を選り出して排除する。
【0019】
図2にストレス付与装置100を示す。ローダー部13においては、基板搬送機構部16の一部である第一搬送機構16aが配置されている。第一搬送機構16aは、実装基板製造ライン101から水平姿勢の実装基板wを搬送始端b1に受け取り、そのままの姿勢を維持させて自身の搬送終端b2に移動させる。
【0020】
第一搬送機構16aは、図3に示すように、左右一対の前後向き案内レール17a、17bと、この案内レール17a、17bに案内されて前後方向a1へ移動される第一基板保持部18a、18bと、この基板保持部18a、18bに搬送力を付与する駆動部19とを備えている。
【0021】
第一搬送機構16aは、実装基板製造ライン101の搬送終端に達した実装基板wを、搬送始端b1において基板保持部18a、18bにより受け取る。続いて、駆動部19が作動して基板保持部18a、18bを第一搬送機構16aの搬送終端b2まで移動させる。基板保持部18a、18bは第一搬送機構16aの搬送始端b1まで復帰する。
【0022】
温度サイクル付与部14は、基板搬送機構部16の一部である第二搬送機構16bと、基板搬送機構部16の他の一部である第三搬送機構16cと、基板搬送機構部16のさらに他の一部である第四搬送機構16dと、箱体状に形成され内方空間が大気温度よりも高い温度に維持される高温槽20と、箱体状に形成され内方空間が大気温度よりも低い温度に維持される低温槽21とを備えている。
【0023】
第二搬送機構16bは第一搬送機構16aの搬送終端b2に到達した実装基板wを受け取り、鉛直姿勢(左右方向a2と垂直方向a3の為す面)に変更させて、第三搬送機構16cに送り込む。第二搬送機構16bは、図3に示すように、回動軸22と駆動部23と左右一対の支持アーム部材24a、24bとチャッキング部材25a、25bとを備えている。回動軸22は支持フレーム26を介して回動可能に支持されており、駆動部23はこの回動軸22を回動させる。支持アーム部材24a、24bは、回動軸22の左右に離れて固定され前方へ水平状に延出しており、左右端縁部の下面を支持する。チャッキング部材25a、25bは、支持アーム部材24a、24bを把持する。回動軸22が駆動部23により90度上方へ回動されることにより、支持アーム部材24a、24b上の実装基板wが水平姿勢から鉛直姿勢に変化し、第二搬送機構16bの搬送終端b3に到達する。
【0024】
図4及び図5において、第三送り機構16cは、第二送り機構16bの搬送した実装基板wを鉛直姿勢状態で受け取り、鉛直面に沿って移動させ、最終的にアンローダー部15への送り渡し位置に移動させる。この第三送り機構16cは、上下送り力付与部27と上下案内軌道部28と基板掴み部29とで構成される。上下送り力付与部27は、支持フレーム26の左右各側に複数の案内輪30とリール31とを装設され、左右各側で別々にこれら案内輪30及びリール31に送りワイヤ32が掛け回されて、駆動部33がリール31を回転させている。上下案内軌道部28は、左右各側のワイヤ32、32の送り要部32aを前後から挟むように案内軌道板28a、28bを支持フレーム26に対状に固定している。
【0025】
基板掴み部29は、左右一対の掴み体29a、29bと左右一対の規制部材34a、34bとからなっている。各掴み体29a、29bはその対応する左右一側の対状の案内軌道板28a、28bの間箇所に位置された摺動体35a、35bを備えている。この摺動体35a、35bは、ワイヤ32に止着され、これの対応する対状の案内軌道板28a、28bを介して垂直方向へ案内される。また各摺動体35a、35bは対向面部に流体圧又は電動モーターなどの駆動力で方向a2へ変位される押圧部材36a、36bを具備しており、該押圧部材36a、36bは支持フレーム幅中央側の垂直面に上下向きの基板用案内溝c1を形成されている。各規制部材34a、34bはその対応する側の摺動体35a又は35bの下部に固定され実装基板wの下端縁を支持する。
【0026】
第三搬送機構16cの搬送始端b4に位置された基盤掴み部29は、実装基板wが第二搬送機構16bに搬送されてこれの搬送終端b3に達した後で、しかも未だチャッキング部25a、25bによる把持が解放されていない時点で、左右の押圧部材35a、35bを互いに近接する側へ移動させる。左右の押圧部材35a、35bの基板用案内溝c1は、第二搬送機構16bの搬送終端b3に位置した実装基板wの左右側縁に遊隙の存在する状態で外嵌している。左右の押圧部材35a、35bの外嵌動作が行われると、第二搬送機構16bのチャッキング部材25a、25bは把持している実装基板wを解放する。第二搬送機構16bから解放された実装基板wは、左右の規制部材34a、34bに受け止められて垂直姿勢のまま停止される。この後、左右の押圧部材34a、34bが互いに近接する側へ変位されて、この実装基板wの左右側縁を押圧して挟み付ける。これにより、実装基板wは基板掴み部29に固定状に掴まれた状態となる。
【0027】
続いて駆動部33が作動されて、リール31が回転されワイヤ32が動作されることにより、基板掴み部29及びこれに固定状に掴まれた実装基板wが上下方向へ移動される。この移動中は、左右の摺動体35a、35bが対状の案内軌道板28a、28bに案内される。先ず搬送始端b4から最上位置へ向けて移動され、次に最下位置へ向けて移動され、次に搬送終端b5へ向けて上方へ移動される。本実施例では搬送始端b4と搬送終端b5とは同一位置としている。
【0028】
第三搬送機構16cは、終端b3に到達した実装基板wを受け取り、水平姿勢に変更させる。この動作は、先に説明した動作と逆の動作である。これら、第一搬送機構16a、第二搬送機構16b、第三搬送機構16cの一連の動作は、制御装置40により制御されている。
【0029】
図4において、高温槽20は、基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wの全体を収容し得る大きさの直方体状の箱体20aで主要部を形成され、この箱体20aの内側空間の温度を制御するための温度制御装置20bを備えている。箱体20aは第三搬送機構16cの搬送範囲の最上部に設置されている。箱体20aの下面の囲壁には基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wを通過させる出入り口20cや、ワイヤ32及び左右各側の対状の案内軌道板28a、28bを挿通させるための透孔が形成されている。この透孔はワイヤ32や案内軌道板28a、28bとの隙間を可及的に少なくするため適宜な介在物(例えば撓曲可能なゴムや合成樹脂材など)を設けるのが好ましい。出入り口20cは基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wが通過するときのみその扉部20dが開放される。温度制御装置20bは箱体20aの内方空間を例えば80℃以下に保持している。
【0030】
低温槽21は、基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wの全体を収容し得る大きさの直方体状の箱体21aで主要部を形成され、この箱体21aの内方空間の温度を制御するための温度制御装置21bとを備えている。箱体21aは第三搬送機構16cの搬送範囲の最下部に位置されている。箱体21aの上面の囲壁には基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wを通過させる出入り口21cや、ワイヤ32及び左右各側の対状の案内軌道板28a、28bを挿通させるための透孔が形成されている。この透孔はワイヤ32や案内軌道板28a、28bとの隙間を可及的に少なくするため適宜な介在物(例えば撓曲可能なゴムや合成樹脂材など)を設けるのが好ましい。出入り口20cは基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wが通過するときのみその扉部21dが開放される。温度制御装置21bは箱体21aの内方空間を例えば−20℃以下に保持されている。
【0031】
常温となる位置(終端b3)を挟んで、高温槽20と低温槽21を上下に配置したため、高温槽20と低温槽21との熱が互いに混ざり合わず、かつ実装基板wの投入方向が互いの熱の逃げる方向の逆方向であるので熱流出を抑制できる。また、実装基板wは、鉛直姿勢となって高温槽20または低温槽21に投入されるため、高温槽20と低温槽21の出入り口20c、21cの開口を狭くすることができる。また、高温槽20と低温槽21の設定温度は、半導体パッケージの使用温度範囲内である。
【0032】
図6において、アンローダー部15は、実装基板wを受け取って基板解放位置b7に移動させ、ここにストックさせるものである。このアンローダー部15は、基板搬送機構部16の一部である第四搬送機構16eとストッカー部41とで構成される。第四搬送機構16eは、左右一対の前後向きコンベア42a、42bと、駆動部44とを備えている。ストッカー部41は第四搬送機構16eが搬送した実装基板wを支持するように上下作動する昇降台45を備えている。
【0033】
コンベア42a、42bが水平姿勢の実装基板wを受け取ると、駆動部44が作動して実装基板wを基板解放位置b7まで移動させ、ここで実装基板wを解放し昇降台45上に落下させる。積層処理が繰り返されると昇降台45の上面上に図3に示すように実装基板wが積層される。
【0034】
アンローダー部15の下流には、検査部10が設けられており、コンベア43a、43bにより移動された実装基板wの検査を行う。図中、50は実装基板のパット(ランド)に対して接触する探触針(プローブ、図示せず)を下面に多数配置された検査冶具であり、駆動部52により上下される。51は、テスタである。半導体パッケージの端子には、保護ダイオード(或いは寄生ダイオード)が接地電位との間に設けられている。保護ダイオードは、半導体パッケージ内部において一定以上の電圧が掛かるとショートして、接地電位に過電圧を逃がすものである。テスタは、接地電位と半導体パッケージの端子との間で、保護ダイオードの順方向となる定電圧を印加して、電流値を測定する。半田付箇所に欠陥がある場合、ストレス付与装置100により、その欠陥が拡大し、或いは断線状態となっている。
【0035】
断線状態となっている場合には、導通が無いため、不良と直ちに判別できる。一方、拡大された欠陥は電流が流れるため、流れる電流値により欠陥の判定を行う。ダイオードの特性として、順方向電圧よりも大きい電圧を印加しないと電流が流れない。従って、順方向電圧よりも大きな電圧をテスタ52により与える。図10は半導体パッケージの端子の電気特性を示している。正常な実装基板を測定した電流値を図中のN(抵抗0Ω)とすると、半田付箇所に欠陥が生じている実装基板の場合は、これにより抵抗値が増加するため、Fのような電流(抵抗1Ω)となる。テスタにより、定電圧E(2V)を与えたとき、それぞれ0.062A、0.067Aとなり、5mAの差が生じる。従って、誤差を含めて許容できる電流値を定めておけば、半田付箇所に欠陥が生じている実装基板を選別することができる。
【0036】
<温度サイクルの付与動作>
次にストレス付与装置100の温度サイクル付与部14による温度サイクル付与動作を説明する。
【0037】
a:温度サイクル付与部14による温度サイクル付与時の各部の動作
いま大気温度(常温)は23℃であるとする。高温槽20の箱体20aの内側空間は温度制御装置20bにより70℃に保持される。一方、低温槽21の箱体21aの内側空間は温度制御装置21bにより−20℃に保持される。
【0038】
搬送始端b4で実装基板wを受け取った基板掴み部29は実装基板wと一緒に上方へ移動され、先ず高温槽20の箱体20a内にこれの出入り口20cを通じ進入した状態とされる。出入り口20cが閉鎖され、基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wは箱体20a内で30秒間70℃の熱に晒される。この30秒間が経過したとき、出入り口20cが開放される。
【0039】
次に基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wは下方へ移動されて、高温槽20の箱体20a内から退出し、その後、低温槽21の箱体21a内に出入り口21cを通じ進入した状態となる。出入り口21cが閉鎖されると、基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wは箱体21a内で30秒間−20℃の熱に晒される。この30秒間が経過したとき、出入り口21cが開放される。
【0040】
この後、基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wは上方へ移動され、搬送始端b4に戻り、こうして実装基板wは第1周期目の温度サイクルの付与を完了するのである。
【0041】
次に再び、基板掴み部29及びこれに保持された実装基板wは、第一周期目と同様に高温槽20及び低温槽21においてこれら箱体20a、21a内でその内方の熱に晒された後に、第三搬送機構16cの搬送終端b5に到達する。こうして第三搬送機構16cで搬送された実装基板wは第2周期目の温度サイクルを付与された状態となる。
【0042】
b:温度サイクル付与時の実装基板wの状態
上記のように実装基板wに2周期分の温度サイクルが付与されるときの、実装基板wの状態について図7、図8及び図9を参照して説明する。
【0043】
図7はこの実施例で製造される実装基板wの一例を示している。図7中、d1はプリント基板であり、d2はプリント基板d1に表面実装されたQFPやBGAなどのICパッケージである。またe1aはプリント基板d1の表面のうちICパッケージd2の実装された側でICパッケージd2の左側箇所を示し、以下単に基板左箇所と呼称する。e1bはプリント基板d1の表面のうちICパッケージd2の実装された側でICパッケージd2の右側箇所を示し、以下単に基板右箇所と呼称する。e2はICパッケージd2の封止材の表面であってプリント基板d1に当接される面の反対側となる面(裏面)を示している。
【0044】
図8は実装基板wの各部の温度tや歪量εの変化を示しており、左縦軸は温度t(単位は℃)を表し、右縦軸は歪量ε(単位はmm)を表し、横軸は経過時間s(単位は秒)を表す。図9は実装基板wにおけるICパッケージd2の温度の変化や、各部の歪量の差(歪差)の変化を示し、左縦軸は温度t(単位は℃)を表し、右縦軸は歪差Δεを表し、横軸は時間s(単位は秒)を表す。
【0045】
上記したICパッケージd2の温度t1や歪量ε1は表面箇所e2に固定させたセンサーを介して測定しており、また基板左箇所e1の温度t2や歪量ε2、及び、基板右箇所e1bの温度t3や歪量ε3はそれぞれの箇所に固定させたセンサーを介して測定したものである。なお、図8中の歪量ε1、ε2、ε3についてはセンサーの温度変化に起因した伸縮による明確な測定誤差が含まれている。
【0046】
上記のように温度サイクル付与部14で実装基板wに温度サイクルを付与している期間中において、ICパッケージd2の温度t1、基板左箇所e1aの温度t2、及び、基板右箇所e1bの温度t3のそれぞれは、図7に示すように、ほぼ曲線g(t1、t2、t3)で示すように変化する。即ち、温度サイクルの第一周期目f1では、実装基板wが高温槽20の箱体20a内に進入を開始した時点s1から箱体20aの外方への退出を開始する時点s2までは次第に上昇していく。そして実装基板wが箱体20a内から退出を開始した時点s2から箱体20a内からの退出を完了し、続いて低温槽21の箱体21a内に進入し、さらに箱体21a内からの退出を開始する時点s3までは次第に下降する。そして、箱体21a内から退出を開始した時点s3から箱体21a内からの退出を完了する時点s4までは次第に上昇していく。温度サイクルの第二周期目f2でも各温度t1、t2、t3は第一周期目f1とほぼ同様に変化する。
【0047】
上記のように温度サイクルを付与している期間中、ICパッケージd2の歪量ε1は曲線g(ε1)で示すように変化する。曲線g(ε1)が示すように、温度サイクルの第一周期目f1では、ICパッケージd2の歪量ε1は、実装基板wが高温槽20の箱体20a内に進入を開始した時点s1から箱体20aの外方への退出を開始する時点s2までの期間において、その初期段階では比較的急激な傾斜で増大していき、その後はほぼ一定大きさを維持される。そして実装基板wが高温槽20の箱体20a内から退出を開始した時点s2からこの退出が完了する時点s2aまでは比較的急な傾斜で減少していく。これから後、歪量の逆転現象が生じる。即ち、箱体20a内からの退出を完了した時点s2aから低温槽21の箱体21a内への進入が完了した後の時点s2bまでは比較的急激な傾斜で増大していく。そして実装基板wが低温槽21の箱体21a内に進入した後、この箱体21a内からの退出を完了する時点s4までは比較的大きい状態を維持しながら極めて緩やかな傾斜で継続して増大していく。また温度サイクルの第二周期目f2では、実装基板wが高温槽20の箱体20a内に進入を開始した時点s4からこの箱体の外方への退出を完了した後の時点s5までは、比較的急な傾斜で減少していく。そして実装基板wが低温槽21の箱体21a内への進入を開始した時点s5の直後から箱体21a内への進入を完了する時点s6まで、急激な傾斜で増大していく。そして実装基板wが低温槽21の箱体21a内に進入した後、この箱体21a内からの退出を完了する時点s7まで比較的大きい状態をほぼ維持する。このようなICパッケージd2の歪量ε1について逆転が起きるのはICパッケージd2の熱容量が大きいことに由来すると考えられる。
【0048】
一方、基板左箇所e1aの歪量ε2は、曲線g(ε2)で示すように変化し、また基板右箇所e1bの歪量ε3は曲線g(ε3)で示すように変化する。これらの曲線g(ε2)、g(ε3)から判断されるように、基板左箇所e1a及び基板右箇所e1bの何れもその歪量ε2、ε3は時間の経過と共にほぼ同じように変化していく。即ち、温度サイクルの第一周期目f1では、基板左箇所e1a及び基板右箇所e1bの何れもその歪量ε2、ε3は、実装基板wが高温槽20の箱体20a内に進入を開始した時点s1から箱体20aの外方への退出を開始するs2までの期間においてはその初期段階で比較的急激な傾斜で増大し、その後はほぼ一定大きさを維持される。そして実装基板wが高温槽20の箱体20a内から退出を開始した時点s2から箱体20a内からの退出を完了し、続いて低温槽21の箱体21a内に進入した後の時点s2bまでは比較的急な傾斜で減少し続いて負値となってその絶対値が増大していく。そして実装基板wが低温槽21の箱体21a内に進入した後の時点s2bから、この箱体21a内からの退出を開始する時点s3までは前記絶対値が比較的緩やかに増大していく。そして低温槽21の箱体21a内からの退出を開始した時点s3からその箱体21a内からの退出を完了する時点s4までは比較的急激な傾斜で前記絶対値は増大していく。また温度サイクルの第二周期目f2でも、基板左箇所e1a及び基板右箇所e1bの何れもその歪量ε2、ε3は、第一周期目f1のときとほぼ同じように変化していく。
【0049】
本実施例では、低温、高温の温度はさほど高くは無いが、基板とICパッケージとの収縮・膨張の方向を互いに逆方向に振らすことにより、半田付け箇所に欠陥が生じていると容易に破壊することができる。
【0050】
図9は実装基板wに上記のように温度サイクルを付与したときの、実装基板wの温度の変化をICパッケージd2の温度t1の変化で代表的に示し、またICパッケージd2とプリント基板d1表面との間の歪差Δεの変化を示している。この図9中、左の縦軸は温度(単位は℃)を示し、右の縦軸は単位長さの歪差(単位はmm)を示している。
【0051】
温度サイクルを付与したとき、ICパッケージd2の温度t1は曲線g(t1)で示すように変化する。またICパッケージd2の歪量ε1と基板左箇所e1aの歪量ε2との差である歪差Δε1は曲線g(Δε1)で示すように変化し、一方、ICパッケージd2の歪量ε1と基板右箇所e1bの歪量ε3との差である歪差Δε2は曲線g(Δε2)で示すように変化する。
【0052】
これらの曲線g(Δε1)、g(Δε2)から判断されるように、上記のように付与した温度サイクルの第一周期目f1における高温時の最大の歪差Δεは約450×10−6mmとなり、低温時の最大の歪差は約1050×10−6mmとなる。またこの温度サイクルの第二周期目f2における高温時の最大の歪差Δεは600×10−6mmとなり、低温時の最大の歪差Δεは1000×10−6mmとなる。このように、高温時、低温時に渡って歪(特に低温時の歪差Δεは高温時のそれよりも大きい)を起こさせることができる。
【0053】
上記本実施例によれば、高温槽20は80℃以下に保持され、低温槽21は−20℃以上に保持しており、この温度はICパッケージd2の使用許容温度範囲内の温度サイクルである。この温度の範囲内で、ICパッケージd2とプリント基板d1との歪差Δεを得ることができる。
【0054】
また、高温槽20及び低温槽21が上下配置され、かつ高温槽20が下面に実装基板wを通過させるための出入り口20cを有し、また低温槽21が上面に実装基板を通過させるための出入り口21cを有しているため、エネルギーの損失を低減することができる。

【符号の説明】
【0055】
100 ストレス付与装置
101 前方側の実装基板製造ライン
16 基板搬送機構部
16a 第一搬送機構
16b 第二搬送機構
16c 第三搬送機構
16e 第四搬送機構
20 高温槽
20c 出入り口
20d 蓋体
21 低温槽
21c 出入り口
21d 蓋体
d1 プリント基板
d2 ICパッケージ
w 実装基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージが実装された平面状の実装基板を水平姿勢と鉛直姿勢との間で姿勢変更し、鉛直面に沿った方向へ移動させる基板搬送機構と、
前記基板搬送機構が実装基板を垂直面に沿って移動させる範囲に設置され、大気温度よりも高い温度に維持される高温槽と、
前記基板搬送機構が実装基板を垂直面に沿って移動させる範囲に設置され、大気温度よりも低い温度に維持される低温槽とを備え、
水平に移動された実装基板を鉛直姿勢に変更し、前記高温槽と低温槽との間において前記実装基板を繰り返し移動させ、その後水平姿勢に復帰させて送り出する制御回路を有することを特徴とするストレス付与装置。
【請求項2】
請求項1記載のストレス付与装置であって、前記高温槽及び前記低温槽は、基板搬送機構が実装基板を水平姿勢と鉛直姿勢との間で姿勢変更する位置を挟んで上下配置されていることを特徴とするストレス付与装置。
【請求項3】
半導体パッケージが実装された平面状の実装基板を鉛直姿勢に変更し、鉛直面に沿った方向へ移動させ、前記鉛直面に沿った方向に設けられた大気温度よりも前記高温槽と低温槽との間において前記実装基板を繰り返し移動させ、前記高温槽と低温槽とを離脱した位置で水平姿勢に復帰させ、前記実装基板の半田接合部の良否を検査することを特徴とする実装基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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