説明

ストレス活性化蛋白質キナーゼ系をモジュレートするためのピリドン誘導体

【課題】炎症性肺線維症及び/又は特発性肺線維症などの種々の炎症性の状態及び/又は線維性の状態を治療するための安全で効果的な薬剤の提供。
【解決手段】活性化合物を用いたストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)をモジュレートする方法を開示し、ここで活性化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して低い力価を示し;そしてここで化合物による少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関する低いパーセント阻害濃度であるSAPKモジュレート濃度において接触を行う。更に又、ピルフェニドンの誘導体も開示する。これらの誘導体はストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)系をモジュレートすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/679,471号(2005年5月10日出願)および米国仮特許出願第60/732,230号(2005年11月1日出願)の優先権を主張し、これらの両出願は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は種々の炎症性状態及び/又は線維性の状態、例えばキナーゼp38の増強された活性に関連するものの治療において有用な化合物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
多数の慢性及び急性の状態が炎症応答の撹乱に関連すると認識されている。IL−1、IL−6、IL−8及びTNF−αを包含する多数のサイトカインがこの応答に関与している。炎症の調節におけるこれらのサイトカインの活性は細胞シグナリング経路の酵素、p38として一般的に知られておりSAPK、CSBP及びRKとしても知られているMAPキナーゼファミリーのメンバーの活性に関連している。
【0004】
p38の阻害剤の数種、例えばNPC31169、SB239063、SB203580、FR−167653及びピルフェニドンがインビトロ及び/又はインビボで試験されており、そして炎症応答をモジュレートするのに効果的であることがわかっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炎症性肺線維症及び/又は特発性肺線維症などの種々の炎症性の状態及び/又は線維性の状態を治療するための安全で効果的な薬剤がなお必要とされ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明の1つの実施形態は、p38有糸分裂促進物質活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)に化合物を接触させることを含む、ストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)をモジュレートする方法であって、化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示し;そして化合物による少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関するEC30よりも低値のSAPKモジュレート濃度において接触を行う方法である。
【0007】
本発明の別の実施形態は、対象における疾患状態を治療又は防止する方法であって、以下の工程:炎症性状態及び線維性状態から選択される状態の危険性を有するか、又はその状態を有している対象を特定すること;その状態を治療又は防止するために有効な量で対象に化合物を投与すること;を含み、化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示し;そして、有効量はp38MAPK少なくとも1つの阻害に関するEC30未満の血液又は血清又は他の体液濃度をもたらす方法である。
【0008】
本発明の別の実施形態は、薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、以下の工程:化合物のライブラリを準備すること;少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関してライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;および、複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、選択された化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;を含む方法である。
【0009】
本発明の別の実施形態は、薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、以下の工程:化合物のライブラリを準備すること;インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関してライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、選択された化合物はインビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;を含む方法である。
【0010】
本発明の別の実施形態は、薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、以下の工程:化合物のライブラリを準備すること;インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関してライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、選択された化合物はインビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;を含む方法である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、以下の工程:化合物のライブラリを準備すること;インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関してライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、選択された化合物はインビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;を含む方法である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、以下の工程:化合物のライブラリを準備すること;インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関してライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、選択された化合物はインビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;を含む方法である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、亜属IIIの式:
【0014】
【化3−1】

[式中、XはH、F及びOHよりなる群から選択され;RはH及びCFよりなる群から選択される]を有する化合物であって、化合物はp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグである。
【0015】
本発明の別の実施形態は、属VIの式:
【0016】
【化3−2】

[式中、Arはピリジニル又はフェニルであり;ZはO又はSであり;XはH、F、Cl、OH又はOCHであり;Rはメチル、C(=O)H、C(=O)CH、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシ、メチルヒドロキシ又はフェニルであり;そして、RはH又はヒドロキシルであるが;ただし、Rがトリフルオロメチルであり、ZがOであり、RがHであり、そしてArがフェニルである場合は、フェニルはH、F又はOHにより4’位において置換されているのみではない]を有する化合物であって、化合物はp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグである。
【0017】
本発明の別の実施形態は、属VIIの式:
【0018】
【化4】

[式中、XはH、ハロゲン、C−C10アルコキシ又はOHであり;Y、Y、Y及びYは独立してH、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニルよりなる群から選択され;RはH、ハロゲン又はOHである]を有する化合物であって、化合物はp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグである。
【0019】
本発明の別の実施形態は上記した式を有する化合物及び製薬上許容可能な賦形剤を含有する医薬組成物である。
【0020】
これら及び他の実施形態は以下に詳述する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)をモジュレートする方法であって、p38有糸分裂促進物質活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)に化合物を接触させることを含み、
該化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示し;そして、
該化合物による少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関するEC50よりも低いSAPKモジュレート濃度において接触を行う方法。
(項目2)
p38MAPKがp38α、p38β、p38γ及びp38δよりなる群から選択される、項目1記載の方法。
(項目3)
前記化合物によるp38MAPKの阻害に関するEC20より低いSAPKモジュレート濃度において接触を行う、項目1記載の方法。
(項目4)
前記化合物によるp38MAPKの阻害に関するEC10より低いSAPKモジュレート濃度において接触を行う、項目1記載の方法。
(項目5)
EC50値及びEC30値を用量応答曲線から得る、項目1記載の方法。
(項目6)
SAPKモジュレート濃度が少なくとも15%全血中TNFα放出を改変するために有効である、項目1記載の方法。
(項目7)
EC50が約50μM〜約650μMの範囲にある、項目1記載の方法。
(項目8)
前記化合物がピリドン環を含む、項目1記載の方法。
(項目9)
前記化合物が属Ia:
【化68】


[式中、
、R、R及びRは、独立して、H、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択され;そして、
、X、X、X及びXは、独立して、H、ハロゲン、C−C10アルコキシ及びヒドロキシよりなる群から選択される]である、項目1記載の方法。
(項目10)
前記化合物が属Iaの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目9記載の方法。
(項目11)
前記化合物が属Ib:
【化69−1】


[式中、
はH、ハロゲン、C−C10アルコキシ及びOHよりなる群から選択され;
はH、ハロゲン、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択され;そして、
はH、ハロゲン及びOHよりなる群から選択される]である、項目1記載の方法。
(項目12)
前記化合物が属Ic:
【化69−2】


[式中、
はH、F、OH及びOCHよりなる群から選択され;
はH、CF、CHF、CHF、CHOH、COOH、CO−グルクロニド、Br、CHおよびCHOCHよりなる群から選択され;そして、
はH及びOHよりなる群から選択されるが;
ただし、R及びXがHである場合は、RはCHではない]である、項目1記載の方法。
(項目13)
前記化合物が亜属II:
【化70−1】


[式中、
はH、OH及びOCHよりなる群から選択され;
はH、CHOH、COOH、CO−グルクロニド、CH及びCHOCHよりなる群から選択され;そして、
はH及びOHよりなる群から選択されるが、ただしXがOHである場合は、RはCHではない]である、項目1記載の方法。
(項目14)
前記化合物が亜属III:
【化70−2】


[式中、
はH、F及びOHよりなる群から選択され;そして、
はH、Br、CHF、CHF及びCFよりなる群から選択される]である、項目1記載の方法。
(項目15)
前記化合物が亜属IV:
【化70−3】


[式中、XはH、ハロゲン、C−C10アルコキシ、OH、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、フェニル、置換されたフェニル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択される]である、項目1記載の方法。
(項目16)
前記化合物が亜属V:
【化71−1】


[式中、XはH、ハロゲン、C−C10アルコキシ、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、フェニル、置換されたフェニル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択される]である、項目1記載の方法。
(項目17)
前記化合物が属VI:
【化71−2】


[式中、
Arはピリジニル又はフェニルであり;
ZはO又はSであり;
はH、F、Cl、OH、CH又はOCHであり;
はメチル、C(=O)H、C(=O)CH、C(=O)OCH、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモ、メチルメトキシ、メチルヒドロキシ又はフェニルであり;そして、
はH又はヒドロキシルであるが;
ただし、Rがトリフルオロメチルであり、ZがOであり、RがHであり、そしてArがフェニルである場合は、フェニルはH、F又はOHにより4’位において単独で置換されていない]である、項目1記載の方法。
(項目18)
前記化合物が属VII:
【化72−1】


[式中、
はH、ハロゲン、C−C10アルコキシ又はOHであり;
、Y、Y及びYは、独立して、H、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニルよりなる群から選択され;そして、
はH、ハロゲン又はOHである]である、項目1記載の方法。
(項目19)
前記化合物が:
【化72−2】


である、項目18記載の方法。
(項目20)
対象における疾患状態を治療又は防止する方法であって、下記工程:
炎症性状態及び線維性状態から選択される状態の危険性を有するか、又はその状態を有している対象を特定すること;
その状態を治療又は防止するために有効な量で対象に化合物を投与すること;
を包含し、
該化合物は、少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示し;そして、
該有効量は、少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関するEC30未満の血液又は血清又は他の体液濃度をもたらす方法。
(項目21)
前記状態が、線維症、慢性閉塞性肺疾患、炎症性肺線維症、特発性肺線維症、閉塞性細気管支炎症候群、慢性自家移植片線維症、関節リューマチ;リウマチ様脊椎炎;骨関節炎;痛風;敗血症;敗血症性ショック;内毒素ショック;グラム陰性敗血症;毒性ショック症候群;顔面筋疼痛症候群(MPS);細菌性赤痢;喘息;成人呼吸窮迫症候群;炎症性腸疾患;クローン病;乾癬;湿疹;潰瘍性結腸炎;糸球体腎炎;硬皮症;慢性甲状腺炎;グレーブス病;オーモンド病;自己免疫性胃炎;重症筋無力症;自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性好中球減少症;血小板減少症;膵臓線維症;慢性活動性肝炎;肝線維症;腎疾患;腎線維症、刺激性腸症候群;発熱;再狭窄;脳マラリア;卒中及び虚血傷害;神経外傷;アルツハイマー病;ハンチントン病;パーキンソン病;急性及び慢性の疼痛;アレルギー;心臓肥大、慢性心不全;急性冠動脈症候群;悪液質;マラリア;らい病;リーシュマニア症;ライム病;ライター症候群;急性滑膜炎;筋肉変性、滑液嚢炎;腱炎;腱滑膜炎;ヘルニア化、破断又は脱出した椎間板症候群;骨粗鬆症;血栓症;珪肺症;肺筋肉異常増殖症;骨再吸収疾患;癌;多発性硬化症;狼瘡;線維筋肉痛;AID;帯状疱疹、単純疱疹;インフルエンザウィルス;重度急性呼吸症候群(SARS);サイトメガロウィルス;及び真性糖尿病よりなる群から選択される、項目20記載の方法。
(項目22)
前記有効量が前記対象において望ましくない副作用を誘発する量の50%未満である、項目20記載の方法。
(項目23)
前記化合物がSAPKシグナリング経路におけるキナーゼを阻害する、項目20記載の方法。
(項目24)
前記化合物がピルフェニドン類縁体である、項目20記載の方法。
(項目25)
前記化合物が属Ia:




[式中、
、R、R及びRは、独立して、H、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択され;そして、
、X、X、X及びXは、独立して、H、ハロゲン、アルコキシ及びヒドロキシよりなる群から選択される]である、項目20記載の方法。
(項目26)
前記化合物が属Iaの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目25記載の方法。
(項目27)
化合物が属Ib:
【化74−1】


[式中、
はH、ハロゲン、C−C10アルコキシ及びOHよりなる群から選択され;
はH、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択され;そして、
はH、ハロゲン及びOHよりなる群から選択される]である、項目20記載の方法。
(項目28)
前記化合物が属Ibの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目27記載の方法。
(項目29)
前記化合物が属Ic:
【化74−2】


[式中、
はH、F、OH及びOCHよりなる群から選択され;
はH、CF、CHF、CHF、CHOH、COOH、CO−グルクロニド、Br、CHおよびCHOCHよりなる群から選択され;そして、
はH及びOHよりなる群から選択されるが;
ただし、R及びXがHである場合は、RはCHではない]である、項目20記載の方法。
(項目30)
前記化合物が属Icの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目29記載の方法。
(項目31)
前記化合物が下記化合物1〜12及び14:
【化75】


【化76】


【化77−1】


から選択される、項目29記載の方法。
(項目32)
前記化合物が亜属II:
【化77−2】


[式中、
はH、OH及びOCHよりなる群から選択され;
はH、CHOH、COOH、CO−グルクロニド、CH及びCHOCHよりなる群から選択され;そして、
はH及びOHよりなる群から選択されるが、ただしXがOHである場合は、RはCHではない]である、項目20記載の方法。
(項目33)
前記化合物が亜属IIの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目32記載の方法。
(項目34)
前記化合物が亜属III:
【化77−3】


[式中、
はH、F及びOHよりなる群から選択され;そして、
はH、Br、CHF、CHF及びCFよりなる群から選択される]である、項目20記載の方法。
(項目35)
前記化合物が亜属IIIの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目34記載の方法。
(項目36)
前記化合物が亜属IV:
【化78−1】


[式中、XはH、ハロゲン、C−C10アルコキシ、OH、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、フェニル、置換されたフェニル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択される]である、項目20記載の方法。
(項目37)
前記化合物が亜属IVの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目36記載の方法。
(項目38)
前記化合物が亜属V:
【化78−2】


[式中、XはH、ハロゲン、C−C10アルコキシ、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、フェニル、置換されたフェニル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択される]である、項目20記載の方法。
(項目39)
前記化合物が亜属Vの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目38記載の方法。
(項目40)
前記化合物が属VI:
【化78−3】


[式中、
Arはピリジニル又はフェニルであり;
ZはO又はSであり;
はH、F、Cl、OH、CH又はOCHであり;
はメチル、C(=O)H、C(=O)CH、C(=O)OCH、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモ、メチルメトキシ、メチルヒドロキシ又はフェニルであり;そして、
はH又はヒドロキシルであるが;
ただし、Rがトリフルオロメチルであり、ZがOであり、RがHであり、そしてArがフェニルである場合は、フェニルはH、F又はOHにより4’位において単独で置換されていない]である、項目20記載の方法。
(項目41)
前記化合物が亜属VIの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目40記載の方法。
(項目42)
前記化合物が下記化合物14〜32:
【化79】


【化80】


【化81】


【化82−1】


から選択される、項目40記載の方法。
(項目43)
前記化合物が属VII:
【化82−2】


[式中、
はH、ハロゲン、アルコキシ又はOHであり;
、Y、Y及びYは、独立して、H、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニルよりなる群から選択され;そして、
はH、ハロゲン又はOHである]である、項目20記載の方法。
(項目44)
前記化合物が亜属VIIの化合物の代謝産物、水和物、溶媒和物又はプロドラッグである、項目43記載の方法。
(項目45)
前記化合物が:
【化82−3】


である、項目44記載の方法。
(項目46)
薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、下記工程:
化合物のライブラリを準備すること;
少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して該ライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;
該複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、該選択された化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;
を含む方法。
(項目47)
薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、下記工程:
化合物のライブラリを準備すること;
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して該ライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;
該複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、該選択された化合物はインビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;
を含む方法。
(項目48)
薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、下記工程:
化合物のライブラリを準備すること;
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して該ライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;
該複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、該選択された化合物はインビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;
を含む方法。
(項目49)
薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、下記工程:
化合物のライブラリを準備すること;
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して該ライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;
該複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、該選択された化合物はインビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;
を含む方法。
(項目50)
薬学的に活性な化合物を特定する方法であって、下記工程:
化合物のライブラリを準備すること;
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して該ライブラリ由来の複数の化合物を試験すること;
該複数の化合物から少なくとも1つの化合物を選択することであって、該選択された化合物はインビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示すこと;
を含む方法。
(項目51)
前記選択された化合物の哺乳類毒性を測定することを更に含む、項目47〜50の何れか1項に記載の方法。
(項目52)
被験対象に前記選択された化合物を投与することを更に含む、項目47〜50の何れか1項に記載の方法。
(項目53)
被験対象が炎症性状態を有するか、有する危険性を有する、項目52記載の方法。
(項目54)
p38MAPKがp38α、p38β、p38γ及びp38δよりなる群から選択される、項目47〜50の何れか1項に記載の方法。
(項目55)
EC50を用量応答曲線から得る、項目46記載の方法。
(項目56)
EC50が約50μM〜約650μMの範囲にある、項目46記載の方法。
(項目57)
EC50を用量応答曲線から得る、項目47記載の方法。
(項目58)
EC50が約50μM〜約650μMの範囲にある、項目47記載の方法。
(項目59)
亜属III:
【化84】


[式中、
はH、F及びOHよりなる群から選択され;
はH及びCFよりなる群から選択される]の式を有する化合物であって、
化合物はp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグ。
(項目60)
前記化合物が下記化合物8〜12:
【化85】


から選択される、項目59記載の化合物。
(項目61)
p38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目59記載の化合物。
(項目62)
約50μM〜約650μMの範囲のEC50を有する、項目61記載の化合物。
(項目63)
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目61記載の化合物。
(項目64)
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目61記載の化合物。
(項目65)
属VI:
【化86−1】


[式中、
Arはピリジニル又はフェニルであり;
ZはO又はSであり;
はH、F、Cl、OH又はOCHであり;
はメチル、C(=O)H、C(=O)CH、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシ、メチルヒドロキシ又はフェニルであり;そして、
はH又はヒドロキシルであるが;
ただし、Rがトリフルオロメチルであり、ZがOであり、RがHであり、そしてArがフェニルである場合は、フェニルはH、F又はOHにより4’位において単独で置換されていない]の式を有する化合物であって、
化合物はp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグ。
(項目66)
前記化合物が下記化合物14〜32:
【化86−2】


【化87】


【化88】


【化89−1】


から選択される、項目65記載の化合物。
(項目67)
少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目68記載の化合物。
(項目68)
約50μM〜約650μMの範囲のEC50を有する、項目67記載の化合物。
(項目69)
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目67記載の化合物。
(項目70)
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目67記載の化合物。
(項目71)
属VII:
【化89−2】


[式中、
はH、ハロゲン、アルコキシ又はOHであり;
、Y、Y及びYは、独立して、H、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニルよりなる群から選択され;
はH、ハロゲン又はOHである]の式を有する化合物であって、そして、
化合物はp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグ。
(項目72)
少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目71記載の化合物。
(項目73)
約50μM〜約650μMの範囲のEC50を有する、項目71記載の化合物。
(項目74)
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目71記載の化合物。
(項目75)
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目71記載の化合物。
(項目76)
式:
【化90】


を有する、項目71記載の化合物。
(項目77)
少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目71記載の化合物。
(項目78)
約50μM〜約650μMの範囲のEC50を有する、項目71記載の化合物。
(項目79)
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目71記載の化合物。
(項目80)
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、項目71記載の化合物。
(項目81)
項目59記載の化合物及び製薬上許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
(項目82)
項目65記載の化合物及び製薬上許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
(項目83)
項目71記載の化合物及び製薬上許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
(項目84)
前記組成物が、1日2回、1日1回、2日毎に1回、週3回、週2回及び週1回から選択される日程における患者への投与の為に選択された前記化合物の量を含有する、項目81記載の医薬組成物。
(項目85)
前記組成物が、1日2回、1日1回、2日毎に1回、週3回、週2回及び週1回から選択される日程における患者への投与の為に選択された前記化合物の量を含有する、項目82記載の医薬品。
(項目86)
前記組成物が、1日2回、1日1回、2日毎に1回、週3回、週2回及び週1回から選択される日程における患者への投与の為に選択された前記化合物の量を含有する、項目83記載の医薬組成物。
(項目87)
前記化合物を、1日2回、1日1回、2日毎に1回、週3回、週2回及び週1回から選択される日程で前記対象に投与する、項目20記載の方法。
(項目88)
前記化合物を、1日2回、1日1回、2日毎に1回、週3回、週2回及び週1回から選択される日程で該対象に投与する、項目21記載の方法。
(項目89)
前記状態が閉塞性細気管支炎症候群である、項目21記載の方法。
(項目90)
前記状態が慢性自家移植片線維症である、項目21記載の方法。
(項目91)
前記状態が特発性肺線維症である、項目21記載の方法。
(項目92)
前記状態が慢性閉塞性肺疾患である、項目21記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1はp38MAPKシグナリングカスケードの模式的表示である(従来技術、Underwoodら、2001Prog Respir Res 31:342−345の図1)。これは、種々の刺激によるp38シグナリングカスケードの活性化、並びに転写活性化及び翻訳/mRNA安定化を介した炎症応答に対するp38活性化の下流作用を模式的に示している。
【図2】図2は化合物の濃度の関数としての種々のピルフェニドンの代謝産物及び類縁体によるp38γの小数表示の阻害を示すプロットである。これらの化合物のEC50濃度はプロットの右に示す。試験の詳細な説明は実施例5に記載する。
【図3】図3は化合物の濃度の関数としての種々のピルフェニドンの代謝産物及び類縁体によるp38αの小数表示の阻害を示すプロットである。これらの化合物のEC50濃度はプロットの右に示す。試験の詳細な説明は実施例5に記載する。
【図4】図4は種々のピルフェニドンの代謝産物及び類縁体に関する生化学的データの総括である。図2、3、5及び6において言及するピルフェニドンの代謝産物及び類縁体は、図4に示す置換パターンにより説明される。総括はp38α及びp38γの阻害に関するEC50濃度に対する3位置における置換の作用を示す。
【図5】図5は各化合物の濃度の関数としての種々のピルフェニドンの代謝産物及び類縁体の小数表示の活性(LPSに応答したマクロファージからのTNFα放出)を示すプロットである。試験の詳細な説明は実施例5に記載する。
【図6−1】図6は化合物の種々の濃度における種々のピルフェニドンの代謝産物及び類縁体の細胞毒性を示す棒グラフシリーズである。細胞毒性は、化合物の存在下に細胞をインキュベートした後のLDH放出を測定することにより調べた。放出されたLDHの量はTriton−X−100処理により放出されたものに対して規格化し、化合物濃度に対してプロットした。
【図6−2】図6は化合物の種々の濃度における種々のピルフェニドンの代謝産物及び類縁体の細胞毒性を示す棒グラフシリーズである。細胞毒性は、化合物の存在下に細胞をインキュベートした後のLDH放出を測定することにより調べた。放出されたLDHの量はTriton−X−100処理により放出されたものに対して規格化し、化合物濃度に対してプロットした。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
今回、キナーゼp38の増強された活性に関連する種々の疾患の治療における高い治療効果が比較的低力価のp38キナーゼ阻害剤化合物を使用することにより達成され得ることを発見した。
【0023】
従って、1つの実施形態において、p38有糸分裂促進物質活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)に化合物を接触させることによりストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)をモジュレートする方法を提供する。好ましい化合物は、少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す。p38MAPKに化合物を接触させる濃度は、一般的に、その化合物によるp38の阻害のEC30より低い。好ましくは、濃度はEC20より低く、より好ましくは、濃度はEC10より低い。
【0024】
「有糸分裂促進物質活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)」は、多くの細胞事象の調節に関与する進化的に保存されたセリン/スレオニンキナーゼである。数種のMAPKグループが哺乳類細胞において特定されており、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、p38及びSAPK/JNKが包含される。MAPKはその特異的MAPKキナーゼ(MAPKK)により、ERKはMEK1及びMEK2により、p38はMKK3及びMKK6により、そしてSAPK/JNKはSEK1(MKK4としても知られている)及びMKK7(SEK2)により、活性化されると考えられている。これらのMAPKKはまた、種々のMAPKKキナーゼ(MAPKKK)、例えばRaf、MLK、MEKK1、TAK1及びASK1により活性化することもできる。
【0025】
細胞ストレス(酸化ストレス、DNA損傷、熱又は浸透圧ショック、紫外線照射、虚血−再灌流)、外因性物質(アニソマイシン、ヒ酸Na、リポ多糖類、LPS)又はプロ炎症サイトカイン、TNF−α及びIL−1βにより活性化されると、他のキナーゼ又は核蛋白質、例えば原形質又は核の何れかにおける転写因子をホスホリル化及び活性化することができる少なくとも12種のクローニングされた高度に保存されたプロリン指向のセリン−スレオニンキナーゼが、MAPKのネットワークに関与していると考えられている(図1)。
p38MAPK
本明細書において、「p38MAPK」とは少なくとも4アイソフォーム(α、β、γ、δ)を包含するストレス活性化蛋白質キナーゼファミリーのメンバーであり、その数種は炎症応答及び組織リモデリングに必須な過程において重要であると考えられている(Leeら、2000 Immunopharmacol.47:185−201)。単球及びマクロファージにおいて優勢なキナーゼであるp38α及びp38βは、p38γ(骨格筋)又はp38δ(精巣、膵臓、前立腺、小腸、及び、唾液線、下垂体及び副腎)と比較してより広範に発現されていると考えられる。p38γアイソフォームは筋線維芽に発現され、これはアルファ平滑筋アクチンの発現を含む筋肉細胞との一部の表現型同様性を有している。多くのp38MAPキナーゼの基質が特定されており、例えば他のキナーゼ(MAPKAP、K2/3、PRAK、MNK1/2、MSK1/RLPK、RSK−B)、転写因子(ATF2/6、筋線維増強因子2、核転写因子−β、CHOP/GADD153、Elk1及びSAP−1A1)及びサイトゾル蛋白質(スタスミン)が包含され、これらの多くは生理学的に重要である。
【0026】
Jiang,Y.ら、1996 J Biol Chem271:17920−17926は、p38−αに緊密に関連した372アミノ酸蛋白質としてp38βの特性を報告している。p38α及びp38βは、共に、プロ炎症サイトカイン及び環境ストレスにより活性化され、p38βは、MAPキナーゼキナーゼ−6(MKK6)により優先的に活性化され、そして活性化転写因子2(ATF2)を優先的にホスホリル化する。Kumar,S.ら、1997 Biochem Biophys Res Comm 235:533−538及びStein,B.ら、1997 J Biol Chem272:19509−19517はp38αに73%同一性を有する364アミノ酸を含有するp38βの第2アイソフォーム、p−38β2を報告している。p38βは、プロ炎症サイトカイン及び環境ストレスにより活性化されると考えられているが、第2の報告されたp38βアイソフォームであるp38β2は、p38αのより偏在する組織発現と比較して、中枢神経系(CNS)、心臓及び骨格筋において優先的に発現されると考えられる。更に、活性化転写因子−2(ATF−2)がp38αよりもp38β2に対するより良好な基質であると考えられている。
【0027】
p38γの特定は、Li,Z.ら、1996 Biochem Biophys Res Comm 228:334−340により、そしてp38δの場合はWang,X.ら、1997J Biol Chem 272:23668−23674により、そして、Kumar,S.ら、1997Biochem Biophys Res Comm 235:533−538により報告されている。これらの2つのp38アイソフォーム(γ及びδ)は、それらの組織発現パターン、基質利用、直接及び間接の刺激に対する応答、及びキナーゼ阻害剤に対する感受性に基づいてMAPKファミリーの独特のサブセットを表す。主要配列の保存に基づくと、p38α及びβは緊密に関連しているが、相互により緊密に関連しているγ及びδからは偏移している。
【0028】
典型的には、p38MAPキナーゼ経路は、同属体受容体への特異的リガンド、例えばサイトカイン、ケモカイン又はリポ多糖類(LPS)の結合により活性化されている受容体チロシンキナーゼ、ケモカイン又はG蛋白質カップリング受容体により直接又は間接的に活性化される。その後、p38MAPキナーゼは、特異的スレオニン及びチロシン残基上のホスホリル化により活性化される。活性化後、p38MAPキナーゼは、他の細胞内蛋白質、例えば蛋白質キナーゼをホスホリル化することができ、そして細胞の核に転座することができ、そこでそれは転写因子をホスホリル化及び活性化し、プロ炎症サイトカイン、並びに炎症応答、細胞接着及び蛋白質分解に寄与する他の蛋白質の発現をもたらす。例えば、骨髄様細胞系統の細胞、例えばマクロファージ及び単球においては、IL−1βおよびTNFαの両方がp38活性化に応答して転写される。その後のこれら及び他のサイトカインの翻訳及び分泌は、隣接組織において、そして白血球の浸潤を介して、局所的又は全身性の炎症応答を開始させる。この応答は細胞ストレスに対する生理学的応答の正常な部分であるが、急性又は慢性の細胞ストレスは、過剰な、調節不可能な、又は、過剰で調節不可能なプロ炎症サイトカイン発現をもたらす。これが次に組織の損傷をもたらし、疼痛及び消耗をもたらす。
【0029】
肺胞マクロファージにおいては、p38阻害剤、SB203580によるp38キナーゼの阻害によりサイトカイン遺伝子産物が低減される。炎症性サイトカイン(TNF−α、IFN−γ、IL−4、IL−5)及びケモカイン(IL−8、RANTES、エオタキシン)は慢性気道炎症を調節又は支持することができると考えられている。気道炎症の潜在的メディエーターの多くの生産及び作用は、ストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)又はs38キナーゼのカスケードに依存していると考えられる(Underwoodら、2001 Prog Respir Res31:342−345)。多くの環境刺激によるp38キナーゼ経路の活性化は、生産が翻訳調節性であると考えられている認知された炎症メディエーターの生成をもたらす。更に、種々の炎症メディエーターがp38MAPKを活性化し、次にこれが下流のMAPK系の標的、例えば他のキナーゼ又は転写因子を活性化し、これにより肺における増幅された炎症過程の可能性が生じる。
MAPキナーゼのp38グループの下流の基質
p38α又はp38βの蛋白質キナーゼ基質:MAPキナーゼ活性化蛋白質キナーゼ2(MAPKAPK2又はM2)、MAPキナーゼ相互作用蛋白質キナーゼ(MNK1)、p38調節/活性化キナーゼ(PRAK)、有糸分裂促進物質及びストレス活性化キナーゼ(MSK:RSK−B又はRLPK)。
【0030】
p38により活性化される転写因子:活性化転写因子(ATF)−1、2及び6、SRFアクセサリー蛋白質(Sap1)、CHOP(生育停止及びDNA損傷誘導遺伝子153即ちGADD153)、p53、C/EBPβ、筋細胞増強因子2C(MEF2C)、MEF2A、MITF1、DDIT3、ELK1、NFAT及び高運動性グループボックス蛋白質(HBP1)。
【0031】
他の型のp38基質:cPLA2、Na/H交換アイソフォーム−1、tau、ケラチン8及びスタスミン。
【0032】
p38基質経路により調節される遺伝子:c−jun、c−fos、IL−1、TNF、IL−6、IL−8、MCP−1、VCAM−1、iNOS、PPARγ、シクロオキシゲナーゼ、(COX)−2、コラゲナーゼ−1(MMP−1)、コラゲナーゼ−3(MMP−13)、HIV−LTR、Fgl−2、脳ナトリウム排出ペプチド(BNP)、CD23、CCK、ホスホエノールピルベートカルボキシキナーゼサイトゾル、サイクリンD1、LDL受容体(Onoら、2000 Cellular Signaling12:1−13)。
p38活性化の生物学的帰結
p38及び炎症
急性及び慢性の炎症は、関節リューマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの多くの疾患の病因の中心であると考えられている。p38経路の活性化は(1)IL−1β、TNF−α及びIL−6などのプロ炎症サイトカインの生産;(2)病理学的状態における結合組織のリモデリングを制御するCOX−2などの酵素の誘導;(3)酸化を調節するiNOSなどの細胞内酵素の発現;(4)VCAM−1などの接着蛋白質及び多くの他の炎症関連分子の誘導において、中心的役割を果たしていると考えられる。これらに加えて、p38経路は、免疫系の細胞の増殖及び分化において調節的役割を果たしている。p38はGM−CSF、CSF、EPO及びCD40−誘導細胞増殖及び/又は分化に関与し得る。
【0033】
炎症関連疾患におけるp38経路の役割は数種の動物モデルにおいて検討されている。SB203580によるp38の阻害は、内毒素誘導ショックのネズミモデルにおいて致死率を低減し、そして、マウスコラーゲン誘導関節炎及びラットアジュバント関節炎の発症を抑制している。最近の研究によれば、より強力なp38阻害剤であるSB220025は肉芽腫の血管内密度の顕著な用量依存性低下をもたらしている。これらの結果は、p38又はp38経路の成分が炎症性疾患の治療標的となり得ることを示している。
p38及びアポトーシス
p38及びアポトーシスの同時活性化は、NGF中止及びFasライゲーションなどの種々の薬剤により誘導されると考えられる。システインプロテアーゼ(カスパーゼ)はアポトーシス経路の中核であり、そして不活性チモーゲンとして発現される。次にカスパーゼ阻害剤はFas交差結合を介してp38活性化をブロックすることができる。しかしながら、優性な活性MMK6bの過剰発現はカスパーゼ活性及び細胞死を誘導することもできる。アポトーシスにおけるp38の役割は細胞型及び刺激に依存している。p38シグナリングは一部の細胞系統における細胞死を誘発することがわかっているが、異なる細胞系統においては、p38は生存性、細胞生育及び分化を増強することがわかっている。
細胞周期におけるp38
酵母におけるp38αの過剰発現は増殖の顕著な緩徐化をもたらし、細胞生育におけるp38αの関与を示している。培養哺乳類細胞のより緩徐な増殖が、細胞にp38α/β阻害剤、SB203580を投与した場合に観察されている。
p38及び心筋細胞肥大
心筋細胞肥大におけるp38の活性化及び機能が検討されている。肥大の進行中、p38α及びp38βの濃度は共に増大し、構成的に活性なMKK3及びMKK6誘発肥大応答が筋節組織化及び上昇した心房性ナトリウム排出因子の発現により増強される。更に、心臓におけるp38の低下したシグナリングは、カルシニューリン−NFATシグナリングの関与する機序を介して心筋細胞の分化を促進する。
p38及び発生
p38ノックアウトマウスの非生存性とは相反して、発生におけるp38の示差的役割に関する証拠が存在する。p38は幾つかの研究において胎盤の血管形成に関連付けられているが、心臓血管の発生には関連付けられていない。更に、p38gはエリスロポエチンの発現にも関連付けられており、赤血球形成における役割が示唆されている。PRAKは最近、ネズミ移植における細胞発生に関与が示唆されている。PRAKmRNA並びにp38アイソフォームは、胚盤胞発生の全体を通して発現されることがわかっている。
p38及び細胞分化
p38α及び/又はp38βは、数種の細胞型への細胞分化において重要な役割を果たしていることがわかっている。3T3−L1細胞から肥満細胞への分化及びPC12細胞からニューロンへの分化は共にp38α及び/又はβを必要とする。p38経路は、ヘモグロビン化細胞へのSKT6の分化並びに筋管におけるC2C112分化の為に必要かつ十分であることがわかっている。
老化及び腫瘍抑制におけるp38
p38は、腫瘍形成及び老化において役割を有する。MKK6及びMKK3の活性化がp38MAPK活性に依存した老化の表現型をもたらすという報告がある。更に、p38MAPK活性はテロメアの短鎖化、H曝露及び慢性RAS癌遺伝子シグナリングに応答した老化に関与することがわかっている。腫瘍細胞の共通した特徴は老化の消失であり、そしてp38は特定の細胞における腫瘍形成に関連付けられている。p38活性化が腫瘍では低減され、そしてMKK3及びMMK6などのp38経路の成分の消失は、これらの試験において使用した細胞系統又は腫瘍誘導剤に関わらず、増殖及び腫瘍形成性の変換の尤度を増大したという報告がある。
p38MAPキナーゼ阻害剤
「p38MAPK阻害剤」とはp38の活性を阻害する化合物である。p38の活性に対する化合物の阻害作用は、当該分野で良く知られている種々の方法で測定してよい。例えば、阻害作用はリポ多糖類(LPS)刺激サイトカイン生産の阻害の水準を測定することにより測定してよい(Leeら、1988 Int J Immunopharmacol 10:835−843;Leeら、1993 Ann NY Acad Sci.696:149−170;Leeら、1994 Nature 372:739−746;Leeら、1999 Pharmacol Ther 82:389−397)。
【0034】
p38MAPL阻害剤を開発する努力は力価の増大に焦点をあててきた。SB203580及び他の2,4,5−トリアリールイミダゾールは、ナノモル範囲にED50値を有する強力なp38キナーゼ阻害剤であることがわかっている。例えば、SB203580に関して、EC50は48nMであることがわかっている。以下に示すピリジニルイミダゾールSKF86002(P1)及びSB203582(P2)は、p38阻害剤の大部分に対する鋳型として使用されている。最近の文献(Leeら、2000 Immunoharmacology 47:185−201)では、以下に示すp38阻害剤(P3−P6)が開示されている。これらの阻害剤中で注目すべきは、化合物P4に関して記載された比較的高い力価及び選択性(p38EC50=0.19nM)並びにSB220025(P6)による炎症駆動型血管形成の阻害である。
【0035】
臨床開発中と報告されている2種のp38阻害剤は、HEP689(P7)及びVX−745(P8)である。VX−745は、関節リューマチの第II相治験中であると報告されている。強力な局所抗炎症活性がHRP689に関して開示されており、これは、乾癬及び他の皮膚疾患の治療のための局所用薬剤としてのその可能性を調べるために臨床開発に入ったと報告されている。
【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

種々のp38阻害剤の別の考察は、Boehmら、2000 Exp Opin Ther Pat 10:25−37;及びSalituroら、1999 Curr Med Chem 6:807−823に記載されている。
【0038】
本明細書に記載する好ましいp38阻害剤は、p38阻害の比較的低い力価を示しつつ、意外にも、そのような阻害の結果として比較的高い治療効果(例えばSAPK系のモジュレーションに関する)を有するピルフェニドンの誘導体及び類縁体である。好ましくは、実施形態のp38阻害剤は、p38MAPKの阻害に関して、約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す。
ピルフェニドン誘導体及び類縁体
ピルフェニドン(5−メチル−1−フェニル−2−(1H)−ピリドン)自体は既知化合物であり、その薬理学的作用は、例えば日本国特許出願公開87677/1974及び1284338/1976に開示されている。全て参照により全体が本明細書に組み込まれる1974年10月1日発行の米国特許第3,839,346号;1976年8月10日発行の米国特許第3,974,281号;1977年8月16日発行の米国特許第4,042,699号;及び1977年10月4日発行の米国特許第4,052,509号は、5−メチル−1−フェニル−2−(1H)−ピリドンの製造方法及び抗炎症剤としてのその使用を記載している。
【0039】
ピルフェニドン及びその誘導体は、ストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)系をモジュレートするための有用な化合物である。
【0040】
用語「アルキル」は、本明細書において、1〜10の炭素原子の1価の直鎖又は分枝鎖ラジカルを指し、例えば、限定しないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ヘキシル等を包含する。
【0041】
用語「アルケニル」は、本明細書において、炭素二重結合を含有する2〜10の炭素原子の1価の直鎖又は分枝鎖ラジカルを指し、例えば、限定しないが、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル等を包含する。
【0042】
用語「ハロゲン」は、本明細書において、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0043】
用語「ハロアルキル」は、本明細書において、アルキルラジカルに付加した1つ以上のハロゲン基を指す。
【0044】
用語「ニトロアルキル」は、本明細書において、アルキルラジカルに付加した1つ以上のニトロ基を指す。
【0045】
用語「チオアルキル」は、本明細書において、アルキルラジカルに付加した1つ以上のチオ基を指す。
【0046】
用語「ヒドロキシアルキル」は、本明細書において、アルキルラジカルに付加した1つ以上のヒドロキシ基を指す。
【0047】
用語「アルコキシ」は、本明細書において、−O−連結部を介して親分子に共有結合した直鎖又は分枝鎖アルキルラジカルを指す。アルコキシ基の例は限定しないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ等を包含する。
【0048】
用語「アルコキシアルキル」は、本明細書において、アルキルラジカルに付加した1つ以上のアルコキシ基を指す。
【0049】
用語「カルボキシ」は、本明細書において、場合によりアルキル基に付加した−COOHを指す。カルボキシ基の例は、限定しないが、−COOH、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−CH(COOH)(CH)等を包含する。
【0050】
用語「アルコキシカルボニル」は、−(CO)−(O)−アルキルを指す。アルコキシカルボニル基の例は、限定しないが、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等を包含する。
【0051】
炭水化物は、ポリヒドロキシアルデヒド又はケトン、又は加水分解によりそのような化合物を生じる物質である。炭水化物は、元素である炭素(C)、水素(H)及び酸素(O)を含み、水素の比率は炭素及び酸素のものの二倍となる。
【0052】
その基本的形態において、炭水化物は単一の糖類又は単糖類である。これらの単一の糖類が相互に組み合わせられてより複雑な炭水化物を形成する。2つの単一の糖類の組合せが2糖類である。2〜10個の単一の糖類よりなる炭化水素をオリゴ糖、そしてより多数を有するものを多糖類と称する。
【0053】
用語「ウロニド」は、本明細書において、環の一部ではない炭素上のカルボキシル基(−COOH)を有する単糖類を指す。ウロニドの名称は単糖類の根源を保持しているが、−オースの糖の接尾辞が−ウロニドに変化している。例えば、グルクロニドの構造はグルコースに相当する。
【0054】
本明細書において、ラジカルはラジカルを含有する物質種が他の物質種に共有結合することができるように単一の不対電子を有する物質種を示す。従って、この文脈において、ラジカルは必ずしもフリーラジカルではない。むしろ、ラジカルとはより大きい分子の特定の部分を示す。用語「ラジカル」は、用語「基」と互換的に使用できる。
【0055】
本明細書においては、置換された基は、1つ以上の水素原子の他の原子又は基との交換が起こっている未置換の親構造から誘導される。置換されている場合、置換基はC−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、アリール、縮合アリール、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヒドロキシ、C−C10アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、C−C10アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、C−C10アルコキシカルボニル、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル及びアミノ、例えばモノおよびジジ置換アミノ基及びこれらの保護された誘導体から個々に独立して選択される。上記置換基の保護誘導体を形成できる保護基は当該分野で知られており、Green and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis;John Wiley and
Sons:New York,1999などの参考文献に記載されている。置換基を「場合により置換された」と記載する場合は、その置換基は上記置換基により置換されていてよい。
【0056】
用語「精製された」は、試験した場合に測定される物質の少なくとも95%を含むように他の化合物から分離されている化合物を指す。
【0057】
不斉炭素原子が本明細書に記載した化合物中に存在してよい。ジアステレオマー及びエナンチオマー並びにそれらの混合物を包含するそのような異性体の全てが、言及されている化合物の範囲に包含されることを意図している。特定の場合においては、化合物は互変異体の形態で存在できる。全ての互変異体の形態が、言及されている化合物の範囲に包含されることを意図している。同様に、化合物がアルケニル又はアルケニレン基を含有する場合は、化合物のシス及びトランス異性体型が存在する。シス及びトランス異性体の両方、並びに、シス及びトランス異性体の混合物が包含される。即ち、本明細書において化合物に言及する場合は、特段の記載が無い限り上記した異性体型の全てを包含する。
【0058】
種々の形態、例えば多形型、溶媒和物、水和物、配座異性体、塩及びプロドラッグの誘導体が実施形態に包含される。多形型は同じ化学式を有するが、異なる構造を有する組成物である。溶媒和物は、溶媒和(溶媒分子と溶質の分子又はイオンとの組合せ)により形成される組成物である。水和物は水の取り込みにより形成される化合物である。配座異性体は配座上の異性体である構造である。配座上の異性体形成は同じ構造式を有するが回転性結合に関して原子の異なるコンホーメーションを有する分子(配座異性体)の現象である。化合物の塩は当該分野で知られた方法により製造できる。例えば、化合物の塩は化合物の化学量論的等量に適切な塩基又は酸を反応させることにより製造できる。プロドラッグはその薬理学的作用を示す前に生体変換(化学変換)を起こす化合物である。例えば、プロドラッグとは、即ち、親分子における望ましくない特性を改変又は排除するために一過性に使用される特殊な保護基を含有する薬剤として捉えることができる。即ち、本明細書において化合物に言及する場合は、特段の記載が無い限り上記した形態の全てを包含する。
【0059】
以下に記載する化合物は本明細書に記載する方法において有用である。ある実施形態において、以下に記載する化合物は、p38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す。
【0060】
ある実施形態は下記属(属Ia):
【0061】
【化15】

[式中、
、R、R及びRは、独立して、H、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択され;そして、
、X、X、X及びXは、独立して、H、ハロゲン、アルコキシ及びヒドロキシよりなる群から選択される]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0062】
別の実施形態は、下記属(属Ib):
【0063】
【化16−1】

[式中、
はH、ハロゲン、C−C10アルコキシ及びOHよりなる群から選択され;
はH、ハロゲン、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択され;そして、
はH、ハロゲン及びOHよりなる群から選択される]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0064】
別の実施形態は、下記属(属Ic):
【0065】
【化16−2】

[式中、
はH、F、OH及びOCHよりなる群から選択され;
はH、CF、CHF、CHF、CHOH、COOH、CO−グルクロニド、Br、CHおよびCHOCHよりなる群から選択され;そして、
はH及びOHよりなる群から選択されるが;
ただし、R及びXがHである場合は、RはCHではない]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0066】
別の実施形態は、下記亜属(亜属II):
【0067】
【化17−1】

[式中、
はH、OH及びOCHよりなる群から選択され;
はH、CHOH、COOH、CO−グルクロニド、Br、CH及びCHOCHよりなる群から選択され;そして、
はH及びOHよりなる群から選択されるが、ただしXがOHである場合は、RはCHではない]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0068】
別の実施形態は、下記亜属(亜属III):
【0069】
【化17−2】

[式中、
はH、F及びOHよりなる群から選択され;そして、
はH、Br、CHF、CHF及びCFよりなる群から選択される]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0070】
別の実施形態は、下記亜属(亜属IV):
【0071】
【化17−3】

[式中、XはH、ハロゲン、C−C10アルコキシ、OH、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、フェニル、置換されたフェニル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択される]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0072】
別の実施形態は、下記亜属(亜属V):
【0073】
【化18−1】

[式中、XはH、ハロゲン、C−C10アルコキシ、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、フェニル、置換されたフェニル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−単糖類、CO−オリゴ糖及びCO−多糖類よりなる群から選択される]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0074】
別の実施形態は、下記属(属VI):
【0075】
【化18−2】

[式中、
Arはピリジニル又はフェニルであり;
ZはO又はSであり;
はH、F、Cl、OH、CH又はOCHであり;
はメチル、C(=O)H、C(=O)CH、C(=O)OCH、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモ、メチルメトキシ、メチルヒドロキシ又はフェニルであり;そして、
はH又はヒドロキシルであるが;
ただし、Rがトリフルオロメチルであり、ZがOであり、RがHであり、そしてArがフェニルである場合は、フェニルはH、F又はOHにより4’位において置換されているのみではない]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0076】
属VIは下記亜属VIa及び亜属VIb:
【0077】
【化19−1】

[式中、Z、X、R及びRは属VIと同様に定義される]により表される化合物のファミリーを提供する。亜属VIaにより表される構造におけるフェニル環は4位においてXで置換されていると認識される。
【0078】
別の実施形態は、下記属(属VII):
【0079】
【化19−2】

[式中、
はH、ハロゲン、C−C10アルコキシ及びOHよりなる群から選択され;
、Y、Y及びYは独立してH、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニルよりなる群から選択され;そして、
はH、ハロゲン及びOHよりなる群から選択される]により表される化合物のファミリーを提供する。
【0080】
本明細書に記載した特定の化合物は、上記した種々の属の1つより多くのメンバーであってよい。本明細書に記載した化合物はストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)系をモジュレートするために有用である。ストレス活性化蛋白質キナーゼ(SAPK)系をモジュレートするために有用である属Ia〜c、亜属II〜V及び属VI及びVIIの例示される化合物を以下の表1に示す。化合物1〜6は亜属IIの化合物の例である。化合物7〜12は亜属IIIの化合物の例である。化合物13はピルフェニドン、即ち亜属IIの化合物の例である。化合物14〜32は亜属VIの化合物の例である。化合物33は亜属VIIの化合物の例である。
【0081】
【化20】

【0082】
【化21】

【0083】
【化22】

【0084】
【化23】

【0085】
【化24】

別の実施形態は、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIにより示される精製された化合物に関する。純度の程度は上記したパーセントとして表示してよい。好ましい実施形態においては、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIにより表される精製された化合物は、精製された化合物を含む組成物の総重量に基づいて約96%以上、より好ましくは約98%以上の純度を有する。例えば、ある実施形態は、精製された化合物3を提供する(表1)。
【0086】
属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物は種々の反応により合成できる。合成の例は、合成スキーム1、2及び3と標記される以下のものを包含する。合成スキーム1
【0087】
【化26】

合成スキーム2
【0088】
【化27−1】

Ullmann反応:Chem.Pharm.Bull.45(4):719−721。標的N−アリール−ピリジン−2−オンは、2−ヒドロキシピリジンのアリール化を介して得た。Ullmann反応は開示した化合物の製造に有用であるが、例外として5−ブロモ類縁体及び化合物33は例えば合成スキーム3により得られる。
【0089】
DMF(3ml)中の2−ヒドロキシピリジン(1ミリモル)、ヨウ化又は臭化アリール(2ミリモル)、CuI(0.1〜0.5ミリモル)及び無水炭酸カリウム(1ミリモル)をアルゴン雰囲気下135℃で一夜攪拌した。深色の反応混合物を酢酸エチル及び10%水酸化アンモニウム中に回収した。有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上に乾燥した。カラムクロマトグラフィーにより25〜60%収率でオフホワイトの固体として標的化合物を得た。
合成スキーム3
【0090】
【化27−2】

標的N−アリール−2−ピリドンは、アルキルボロン酸を用いた2−ヒドロキシピリジンのアリール化を介して得ることができる(Tetrahedron Lett.,42(2001)3415−3418)。アルキルボロン酸経路は、開示した化合物の製造において有用である。ジクロロメタン(25ml)中の2−ヒドロキシピリジン(5ミリモル)、アリールボロン酸(10ミリモル)、酢酸銅(II)(0.5〜1ミリモル)、ピリジン(10ミリモル)及びモレキュラーシーブ4A(0.5〜1g)の混合物を大気開放下に室温で24〜48時間攪拌した。反応混合物をEDTAと共に飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、有機層を硫酸ナトリウム上に乾燥した。標的N−アリール−2−ピリドンは、85〜100%収率で白色固体としてカラムクロマトグラフィーにより単離した。
【0091】
ピルフェニドン誘導体として、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物はまた、全て参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第3,839,346号;第3,974,281号;第4,042,669号;及び第4,052,509号に開示されているようなピルフェニドンのための知られた合成スキームに基づいて当該分野で知られた何れかの従来の反応により合成してもよい。
【0092】
本明細書に記載した出発物質は市販品であるか、既知物質であるか、又は当該分野で知られた方法により製造できる。更に、本明細書に記載していない出発物質は市販品であるか、既知物質であるか、又は当該分野で知られた方法により製造できる。
【0093】
出発物質は適切な置換基を有することにより最終的に相当する置換基を有する所望の生成物を与えることができる。或いは、置換基は合成の何れかの時点において付加することにより最終的に相当する置換基を有する所望の生成物を与えることができる。
【0094】
合成スキーム1〜3は、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物を製造するために使用できる方法を示している。当業者の知る通り、多くの異なる合成反応スキームを使用して属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物を合成することができる。更に、当業者の知る通り多くの異なる溶媒、カップリング剤及び反応条件を合成反応において使用することにより同等の結果を得ることができる。
【0095】
順序の変更は当業者の知る通りであり、そして更に、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物を作成するための、上記した過程において適切に使用してよい記載した又は別途既知である類似の反応からの適切な反応条件の変更も、当業者の知る通りである。
【0096】
属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物の製造のための本明細書に記載した過程において、保護基の使用は有機化学の当業者の知る通りであり、従って、適切な保護基の使用は、一部の場合においては、そのような基を標記上は明記しないものの、本明細書に記載したスキームの過程において意図される場合がある。そのような適当な保護基の導入及び除去は有機化学の当該分野で良く知られており;例えば、T.W.Green,”Protective Groups in Organic Synthesis”,Wiley(New York),1999を参照できる。本明細書に記載した反応の生成物は抽出、蒸留、クロマトグラフィー等の従来の手段により単離してよい。
【0097】
属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物の塩、例えば製薬上許容可能な塩は、化合物の化学量論的等量に適切な塩基又は酸を反応させることにより製造できる。同様に、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物の製薬上許容可能な誘導体(例えばエステル)、代謝産物、水和物、溶媒和物及びプロドラッグは当該分野で知られた方法により製造してよい。即ち、他の実施形態は、活性化合物のプロドラッグである化合物を提供する。一般的に、プロドラッグはインビボで代謝(例えば脱アミノ化、脱アルキル化、脱エステル化等による)されることにより活性化合物を与える化合物である。「製薬上許容可能なプロドラッグ」とは、調和の取れた医学的判断の範囲内において、予定外の毒性、刺激、アレルギー応答等を伴うことなく患者における薬学的使用に適し、そして、意図する用途の為に有効な化合物を意味し、本実施形態の化合物の製薬上許容可能なエステル並びに可能な場合は両性イオン型を包含する。製薬上許容可能なプロドラッグ型は、T.Higuchi and V.Stella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14,A.C.S.Symposium Series及びEdward B.Roche,ed.,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に記載されており、これらは両方とも参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0098】
本明細書に記載した化合物及び組成物は、代謝産物であってもよい。本明細書においては、用語「代謝産物」は、実施形態の化合物又は製薬上許容可能なその塩、類縁体又は誘導体と同様のインビトロ又はインビボ活性を示す実施形態の化合物の代謝の生成物を意味する。本明細書に記載した化合物及び組成物はまた、水和物及び溶媒和物を包含してもよい。本明細書においては、用語「溶媒和物」は、溶質(本明細書において、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物)及び溶媒により形成される複合体を指す。実施形態の目的のためにはこのような溶媒は、好ましくは溶質の生物学的活性を妨害してはならない。溶媒は、例えば、水、エタノール、又は酢酸であってよい。上記を鑑みれば、特定の化合物又は化合物の属の本明細書における言及は、特段の記載が無い限り、上記した種々の形態、例えば製薬上許容可能な塩、エステル、プロドラッグ、代謝産物及び溶媒和物を包含するものと理解する。
p38MAPキナーゼの阻害方法
ある実施形態においては、インビトロ及びインビボでSAPK系をモジュレートするための方法が提供される。方法は、少なくとも1つのp38MAPKに化合物のSAPKモジュレート濃度を接触させること(例えば少なくとも1つのp38MAPKを含有する細胞又は組織に化合物を接触させることによる)を包含し、ここで化合物は、化合物による少なくとも1つのp38MAPKの阻害のための比較的高い阻害剤濃度に相当する、少なくとも1つのp38MAPKの阻害剤のための比較的低い力価を有する。
【0099】
「細胞を接触させる」とは、化合物又は他の要件組成物を細胞又は組織に直接接触させるか、又は細胞又は組織において所望の生物学的活性を誘導するために十分接近させる状態を指す。例えば、化合物にp38MAPK含有細胞又は組織を接触させることは、p38MAPKと化合物との間の相互作用を可能にし、これにより細胞内で所望の生物学的作用をもたらす何れかの態様において行ってよい。細胞又は組織を接触させることは、例えば、化合物(例えば属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物、及び/又は、その塩、エステル、プロドラッグ及び/又は中間体、及び/又は、上記の1つ以上を含む医薬組成物)の相互混合又は投与により達成してよい。
【0100】
或いは、細胞又は組織を接触させることは化合物が直接又は間接的にp38MAPK含有細胞又は組織にターゲティングされるような態様において化合物を導入することにより達成してよい。細胞又は組織の接触は、少なくとも1つのp38MAPKに化合物が結合する条件下で行ってよい。そのような条件は、化合物とp38含有細胞又は組織との接近、pH、温度、又は、p38MAPKへの化合物の結合に影響する何れかの条件を包含してよい。
【0101】
特定の実施形態においては、細胞はインビトロで化合物に接触させ、別の実施形態においては、細胞はインビボで化合物に接触させる。
【0102】
細胞をインビボで接触させる場合、化合物の有効濃度(EC)は、その化合物による特定のエンドポイントの最大観察可能低減と相対比較した場合に、ある標的パーセント(例えば50%、40%、30%、20%、10%)まで特定のエンドポイントの低減をもたらす濃度である。このようなエンドポイントは、生理学的応答、例えば血液又は他の体液中のTNFα濃度の低減であってよい。例えば、EC50、EC40、EC30、EC20及びEC10は、用量応答曲線上の、最大観察可能低減と相対比較した場合のそれぞれ50%、40%、30%、20%及び10%までの血清中TNFα濃度の低下をもたらす濃度として測定される。
【0103】
細胞をインビトロで接触させる場合、細胞系試験を除き、有効濃度(EC)は所定のパーセント(例えば50%、40%、30%、20%、10%)まで特定の標的の活性の低下をもたらす濃度である。例えば、EC50、EC40、EC30、EC20及びEC10は、用量応答曲線上の、それぞれ50%、40%、30%、20%及び10%までの特定の標的の活性の低下をもたらす濃度として測定される。特定の標的の完全な阻害が得られない場合は、化合物の有効濃度(EC)は、その化合物による標的活性の最大低減と相対比較した場合に、あるパーセント(例えば50%、40%、30%、20%、10%)まで標的活性の低下をもたらす濃度である。
【0104】
細胞をインビトロで接触させる場合、細胞系の試験においては、化合物の有効濃度(EC)は、その化合物による特定のエンドポイントの最大観察可能低減と相対比較した場合に、ある標的パーセント(例えば50%、40%、30%、20%、10%)まで特定のエンドポイントの低減をもたらす濃度である。このようなエンドポイントは、生理学的応答、例えば、細胞培地中のTNFα濃度により測定した場合のTNFαの分泌の低減であってよい。例えば、EC50、EC40、EC30、EC20及びEC10は、用量応答曲線上の、最大観察可能低減と相対比較した場合のそれぞれ50%、40%、30%、20%及び10%までのTNFα濃度の低下をもたらす濃度として測定される。
【0105】
SAPK系モジュレート化合物のEC50は、好ましくは少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μM、より好ましくは約50μM〜約650μMの範囲にある。即ち、例えば、SAPK系のモジュレーションは、インビボの用量応答曲線上で求めた場合に、化合物による少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して、EC40より低い、好ましくはEC30より低い、より好ましくはEC20より低い、更に好ましくはEC10より低い少なくとも1つのp38MAPKに化合物(例えば、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物)を接触させることを包含する。
【0106】
特定の実施形態においては、化合物は製薬上許容可能な担体と共に医薬組成物の形態で提供される。
低力価p38阻害剤を得るための化合物ライブラリのスクリーニング
別の態様において、薬学的活性化合物を特定するため、例えば化合物が、例えば炎症性状態(例えばp38又はサイトカイン関連状態)の防止又は治療のための治療薬として潜在的に有用であるかどうかを調べるための方法が提供される。方法は、少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して複数の化合物を試験すること、及び、p38MAPKの阻害に関して比較的低力価を示す化合物を選択することを包含する。好ましくはそのような低力価p38阻害剤化合物のEC50は、少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲にある。試験すべき複数の化合物は、好ましくは潜在的化合物のライブラリから選択する。ライブラリの複数の化合物の試験は種々の方法で実施してよい。例えば、一部の実施形態においては、方法は更に複数の化合物に少なくとも1つのp38MAPKを接触させること、及び、化合物がサイトカインの活性を阻害するかどうか調べることを含む。p38MAPKは、好ましくは、p38α、p38β、p38γ及びp38δよりなる群から選択される。好ましい実施形態においては、接触工程はインビトロで行われ;特定の好ましい実施形態においては、接触工程はp38MAPKを含む細胞を化合物に接触させることを含む。
【0107】
更に別の実施形態においては、インビトロ又はインビボにおいて細胞中のp38MAPKの活性を阻害する方法が提供される。一般的に、そのような方法は、細胞におけるp38活性が阻害される条件下、化合物(例えば、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物)の有効なp38阻害量に少なくとも1つのp38MAPKを含有する細胞を接触させることを包含する。このような方法の例は後述する実施例のセクションに示す。化合物は、好ましくは少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す。化合物に少なくとも1つのp38MAPKを接触させることは、好ましくは、化合物による少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して、EC30より低い、好ましくはEC20より低い、より好ましくはEC10より低いSAPK系モジュレート濃度において実施する。
【0108】
インビボの方法は例えば、種々の濃度の目的の化合物(例えば、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物)を経口又は注射により動物群に導入することを包含する。化合物の注射の後、リポ多糖類を静脈内投与する。血清中TNFα濃度を測定し、対照動物のものと比較する。好ましい化合物はTNFαの放出を阻害し、これにより、試験動物の血液試料中のTNFα濃度を低下させる。化合物は、好ましくはTNFαの放出の阻害に関して約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す。
【0109】
薬学的に活性な化合物を特定する方法は、更に、選択された化合物の哺乳類毒性を測定することを包含してよい。このような方法は一般的に当業者の知る通りである。薬学的に活性な化合物を特定する方法は、哺乳類毒性測定と組み合わせるか、他の理由の為に、選択された化合物を被験対象に投与することを包含してもよい。ある実施形態においては、被験対象は炎症性状態を有するか、有する危険性を有している。好ましくは、被験対象は哺乳類であり、そしてヒトであってよい。
治療及び/又は防止の方法
別の実施形態は、疾患状態、例えば炎症性状態及び/又は及び線維性状態を治療又は防止するための方法を提供する。方法は、炎症性状態及び線維性状態から選択される状態少なくとも1つの危険性を有するか、又はその状態を有している対象を特定すること、及び、炎症性状態及び/又は線維性状態を治療又は防止するために有効な量で対象に化合物を投与することを包含する。好ましい実施形態においては、化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す。好ましい実施形態においては、有効量は、化合物による少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して、EC30より低い、好ましくはEC20より低い、より好ましくはEC10より低い血液又は血清又は他の体液濃度をもたらす。好ましい実施形態においては、化合物はTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す。別の実施形態においては、有効量は、化合物による体液中のLPS刺激TNFα放出の阻害に関して、EC30より低い、好ましくはEC20より低い、より好ましくはEC10より低い血液又は血清又は他の体液濃度をもたらす。有効量は、好ましくは、例えば限定しないが眠気、吐き気、寒気、胃腸不快感及び光感受性発疹などの対象における望ましくない副作用を誘発する量の約70%以下、より好ましくは約50%未満である。治療又は防止の為に使用される化合物は、好ましくは属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物である。
【0110】
炎症性状態の危険性を有するか、その状態を有している対象を特定するための方法は当業者の知る通りである。本明細書に記載した方法により治療又は防止してよい炎症性状態の例は、p38関連状態、例えば改変されたサイトカイン活性に関連する状態、SAPK系のモジュレーションに関連する状態、自己免疫疾患及び急性及び慢性の炎症に関連する疾患を包含する。サイトカインは好ましくはIL−1β、IL−6、IL−8及びTNFαよりなる群から選択されるがこれらに限定されない。ある実施形態においては、炎症性状態を治療又は防止するために使用する化合物は、SAPKシグナリング経路におけるキナーゼを阻害する化合物である。好ましい化合物の例は、属Ia〜c、亜属II〜V及び/又は属VI及びVIIの化合物を包含する。
【0111】
用語「p38関連状態」は、直接又は間接的にp38MAPキナーゼシグナリング経路の関与が考えられる疾患又は他の有害な状態を意味する。p38関連状態の例は、p38活性の持続、延長、増強又は上昇した水準に起因するIL−1β、TNFα、IL−6又はIL−8の調節不全又は過剰発現により誘発される状態を包含する。このような状態は、限定しないが、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維性疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、感染性疾患、神経変性疾患、アレルギー、卒中における再灌流虚血、心臓発作、血管形成障害、臓器低酸素賞、血管肥大、心臓肥大、トロンビン誘導血小板凝集、及び、プロスタグランジン又はシクロオキシゲナーゼ経路に関連する状態、例えばプロスタグランジンエンドパーオキシドシンターゼの関与する状態を包含する。p38関連状態は、p38のアイソフォームの関連する、又はこれにより媒介される何れかの状態を包含することができる。
【0112】
「線維性状態」、「線維増殖性状態」、「線維性疾患」、「線維増殖性疾患」、「線維性障害」及び「線維増殖性障害」は、線維芽細胞の調節不全の増殖又は活性及び/又はコラーゲン製組織の病的又は過剰な蓄積を特徴とする状態、疾患又は障害を指すために互換的に使用される。典型的には、何れかのこのような疾患、障害又は状態は、抗線維活性を有する化合物の投与による治療に適している。線維性障害は限定しないが、肺線維症、例えば特発性肺線維症(IPF)及び既知の病因から生じる肺線維症、肝線維症及び腎線維症を包含する。他の例示される線維性状態は、筋骨格線維症、心線維症、手術後癒着、硬皮症、緑内障及びケロイドなどの皮膚患部を包含する。
【0113】
用語「SAPK系をモジュレートする」は、例えば、インビトロ又はインビボにおいてp38活性を阻害することにより、ストレス活性化蛋白質キナーゼ活性の活性を増大又は低減することを意味する。特定の実施形態において、SAPK系は、細胞におけるp38活性が、未治療の対照細胞のp38活性と比較して、約50%、好ましくは約40%、より好ましくは約30%、更に好ましくは約20%、又は、更により好ましくは約10%阻害される場合にモジュレートされる。
【0114】
改変されたサイトカイン活性に関連する状態とは、本明細書においては、非疾患状態と比較してサイトカイン活性が改変されている状態を指す。これには、限定されないが、p38活性に関連し得るサイトカイン活性の持続、延長、増強又は上昇した水準をもたらすIL−1β、TNFα、IL−6又はIL−8の過剰生産又は調節不全により誘発される状態を包含する。このような状態は、限定されないが、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維性疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、感染性疾患、神経変性疾患、アレルギー、卒中における再灌流/虚血、心臓発作、血管形成障害、臓器低酸素症、血管肥大、心臓肥大、トロンビン誘導血小板凝集、及び、プロスタグランジンエンドパーオキシドシンターゼなどのシクロオキシゲナーゼ及びリポキシゲナーゼシグナリング経路に関連する状態を包含する。サイトカイン関連状態は、IL−1(特にIL−1β)、TNFα、IL−6又はIL−8又はp38により調節できる何れかの他のサイトカインに関連するか、これにより媒介される何れかの状態を包含できる。好ましい実施形態においては、サイトカイン関連状態はTNFαに関連する状態である。
【0115】
本明細書に記載した方法はまた、自己免疫疾患及び急性及び慢性の炎症に関連する疾患を治療するために使用してもよい。これらの疾患は、限定されないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、閉塞性細気管支炎症候群、慢性自家移植片線維症、炎症性肺線維症(IPF)、関節リューマチ;リューマチ様脊椎炎;骨関節炎;痛風、他の関節炎状態;敗血症;敗血症性ショック;内毒素ショック;グラム陰性敗血症;毒性ショック症候群;顔面筋疼痛症候群(MPS);細菌性赤痢;喘息;成人呼吸窮迫症候群;炎症性腸疾患;クローン病;乾癬;湿疹;潰瘍性結腸炎;糸球体腎炎;硬皮症;慢性甲状腺炎;グレーブス病;オーモンド病;自己免疫性胃炎;重症筋無力症;自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性好中球減少症;血小板減少症;膵臓線維症;慢性活動性肝炎、例えば肝線維症;急性及び慢性の腎疾患;腎線維症、刺激性腸症候群;発熱;再狭窄;脳マラリア;卒中及び虚血傷害;神経外傷;アルツハイマー病;ハンチントン病;パーキンソン病;急性及び慢性の疼痛;アレルギー、例えばアレルギー性鼻炎及びアレルギー性結膜炎;心臓肥大、慢性心不全;急性冠動脈症候群;悪液質;マラリア;らい病;リーシュマニア症;ライム病;ライター症候群;急性滑膜炎;筋肉変性、滑液嚢炎;腱炎;腱滑膜炎;ヘルニア化、破断又は脱出した椎間板症候群;骨粗鬆症;血栓症;珪肺症;肺筋肉異常増殖症;骨再吸収疾患、例えば骨粗鬆症又は多発性骨髄腫関連骨障害;癌、例えば転移性乳癌、結腸直腸癌、悪性黒色腫、胃癌及び非小細胞肺癌;対宿主性移植片反応;及び自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、狼瘡及び線維筋肉痛;AIDS及び他のウィルス性疾患、例えば帯状疱疹、単純疱疹I又はII、インフルエンザウィルス、重度急性呼吸症候群(SARS)及びサイトメガロウィルス;及び真性糖尿病を包含する。更に、実施形態の方法は、増殖性疾患(良性及び悪性の過形成の両方を包含する)、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、カポジ肉腫、転移性黒色腫、多発性骨髄腫、乳癌、例えば転移乳癌;結腸直腸癌;悪性黒色腫;胃癌;非小細胞肺癌(NSCLC);骨転移等;疼痛障害、例えば神経筋疼痛、頭痛、癌疼痛、歯痛及び関節痛;血管形成障害、例えば固形腫瘍血管形成、眼の血管新生、及び乳幼児血管腫;シクロオキシゲナーゼ及びリポキシゲナーゼシグナリング経路に関連する状態、例えばプロスタグランジンエンドパーオキシドシンターゼ−2に関連する状態(例えば浮腫、発熱、痛覚消失及び疼痛);臓器低酸素症;トロンビン誘導血小板凝集を治療するために使用できる。更に、本明細書に記載した方法は、動物、例えば哺乳類における原生動物疾患の治療に有用である。
【0116】
対象は、細胞又は組織又は生物の1つ以上を包含してよい。好ましい対象は哺乳類である。哺乳類は何れかの哺乳類を包含してよい。非限定的な例として、好ましい哺乳類はウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラクダ、バッファロー、ネコ、イヌ、ラット、マウス及びヒトを包含する。高度に好ましい対象哺乳類はヒトである。化合物は当該分野で知られた何れかの薬物送達経路を介して対象に投与してよい。特定の例示される投与経路は経口、眼球、直腸内、口内、局所、経鼻、眼内、皮下、筋肉内、静脈内(瞬時及び注入)、脳内、経皮及び肺への投与を包含する。
【0117】
用語「治療有効量」及び「予防有効量」は、本明細書においては、特定された疾患を治療、軽減又は防止するために、又は、検出可能な治療、予防又は阻害作用を示すために十分な化合物の量を指す。作用は例えば以下の実施例において開示する試験により検出できる。対象に対する厳密な有効量は、対象の体重、体格及び健康状態;状態の性質及び範囲;及び投与の為に選択された治療薬又は治療薬の組合せに応じて変動する。ある状況に対する治療及び予防有効量は、医師の技量及び判断の範囲内の日常的実験により決定できる。好ましくは、実施形態の化合物の有効量はp38MAPキナーゼの阻害に関するEC30、EC20又はEC10未満の血液又は血清又は他の体液濃度をもたらす。
【0118】
何れかの化合物に対して、治療及び予防有効量はまず、例えば新生物細胞の細胞培養試験において、又は動物モデル、通常はラット、マウス、ウサギ、イヌ又はブタにおいて、推定することができる。動物モデルは又、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用してもよい。次にこれらの情報を用いてヒトにおける投与のための有用な用量及び経路を決定できる。
【0119】
治療/予防の薬効及び毒性、例えばED50(集団の50%において治療上有効な用量)及びLD50(集団の50%において致死的な用量)は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的操作法により測定してよい。治療作用と毒性作用との間の用量比は治療指数であり、それは比ED50/LD50で表示できる。大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。しかしながら、狭小な治療指数を示す医薬組成物も実施形態の範囲に包含される。細胞培養試験及び動物試験から得られたデータをヒトにおける使用のための用量範囲の設定において使用してよい。このような組成物中に含有される用量は好ましくは毒性を僅かしか、又は全く伴わないED50を包含する循環系中濃度の範囲内である。用量はこの範囲内において、使用する剤型、患者の感受性及び投与経路により変動してよい。
【0120】
より詳細には、最大血漿濃度(Cmax)は投与経路に応じて、約65μM〜約115μM、又は約75μM〜約105μM、又は約85μM〜約95μM、又は約85μM〜約90μMに変動してよい。特定の用量及び送達方法に関する指針は文献に記載されており、そして一般的に当業者が入手できるものである。一般的に用量は、体重約40〜約100kgの患者に対して、単回、分割又は連続用量において、約100mg/日〜約10g/日、又は約200mg/日〜約5g/日、又は約400mg/日〜約3g/日、又は約500mg/日〜約2g/日の範囲であり得る(これらの用量は、この体重範囲より高い又は低い患者、特に40kg未満の小児に対しては調節してよい)。一般的に、用量は一日当たり約25mg/kg〜約300mg/kg体重の範囲であり得る。
【0121】
厳密な用量は、治療を必要とする対象に関連した要因に鑑みて専門家により決定される。用量及び投与は活性剤の十分な濃度が得られるように、又は、所望の作用が維持されるように調節する。考慮してよい要因は、疾患状態の重症度、対象の全身状態、対象の年齢、体重および性別、投与の時間及び頻度、薬剤の組合せ、反応感受性及び治療に対する耐容性/応答性を包含する。長時間作用性の医薬組成物は特定の製剤の半減期及びクリアランス率に応じて、1日2回、1日1回、2日毎に1回、週3回、週2回、3〜4日毎又は毎週、投与してよい。例えば、ある実施形態においては、医薬組成物は1日2回、1日1回、2日毎に1回、週3回、週2回及び週1回から選択される日程による患者への投与の為に選択された本明細書に記載した化合物の量を含有する。
【0122】
当然ながら、本明細書に記載した治療は、疾患の防止、症状の軽減、疾患進行の緩徐化、損傷の逆行、又は疾患の治癒を包含する。
【0123】
1つの態様において、炎症状態を治療することは、未治療の対象の集団と比較した場合の治療対象の集団の平均生存期間の増大をもたらす。好ましくは、平均生存期間は約30日超;より好ましくは約60日超;より好ましくは約90日超;そして更に好ましくは約120日超、増大する。集団の生存期間の増大は何れかの再現性のある手段により測定してよい。好ましい態様においては、集団の平均生存期間の増大は、例えば活性化合物を用いた治療の開始後の生存の平均の長さを集団について計算することにより測定してよい。別の好ましい態様においては、集団の平均生存期間の増大は、例えば活性化合物を用いた治療の第1ラウンドの終了後の生存の平均の長さを集団について計算することにより測定してよい。
【0124】
別の態様においては、炎症性状態を治療することは、担体のみ投与されている対象の集団と比較した場合の治療対象の集団の死亡率の低下をもたらす。別の態様において、炎症性状態を治療することは、未治療集団と比較した場合の治療対象の集団の死亡率の低下をもたらす。更に別の態様においては、炎症性状態を治療することは、実施形態の化合物又は製薬上許容可能なその塩、代謝産物、類縁体又は誘導体ではない薬剤で1剤療法を受けている集団と比較した場合の治療対象の集団の死亡率の低下をもたらす。好ましくは、死亡率は約2%超;より好ましくは約5%超;より好ましくは約10%超;そして最も好ましくは約25%超、増大する。好ましい態様において、治療対象の集団の死亡率の低下は、何れかの再現性のある手段により測定してよい。別の好ましい態様においては、集団の死亡率の低下は、例えば活性化合物を用いた治療の開始後の単位時間当たりの疾患関連死亡の平均数を集団について計算することにより測定してよい。別の好ましい態様においては、集団の死亡率の低下は、例えば活性化合物を用いた治療の第1ラウンドの終了後の単位時間当たりの疾患関連死亡の平均数を集団について計算することにより測定してよい。
【0125】
別の態様においては、炎症性状態を治療することは腫瘍生育速度の低減をもたらす。好ましくは、投与後、腫瘍生育速度は投与前の数値と相対比較して少なくとも約5%低下し;より好ましくは、腫瘍生育速度は少なくとも約10%低下し;より好ましくは少なくとも約20%低下し;より好ましくは少なくとも約30%低下し;より好ましくは少なくとも約40%低下し;より好ましくは少なくとも約50%低下し;更により好ましくは少なくとも約60%低下し;そして最もより好ましくは少なくとも約75%低下する。腫瘍生育速度は測定の何れかの再現性のある手段により測定してよい。好ましい態様においては、腫瘍生育速度は単位時間当たりの腫瘍直径の変化に従って測定する。
【0126】
別の態様において、炎症性状態を治療することは細胞増殖速度の低減をもたらす。好ましくは、投与後、細胞増殖速度は少なくとも約5%低下し;より好ましくは少なくとも約10%低下し;より好ましくは少なくとも約20%低下し;より好ましくは少なくとも約30%低下し;より好ましくは少なくとも約40%低下し;より好ましくは少なくとも約50%低下し;更により好ましくは少なくとも約60%低下し;そして最もより好ましくは少なくとも約75%低下する。細胞増殖速度は測定の何れかの再現性のある手段により測定してよい。好ましい態様においては、細胞増殖速度は、例えば、単位時間当たりの組織試料中の分裂細胞の数を測定することにより測定する。
【0127】
別の態様において、炎症性状態を治療することは増殖細胞の比率の低減をもたらす。好ましくは、投与後、増殖細胞の比率は少なくとも約5%低下し;より好ましくは少なくとも約10%低下し;より好ましくは少なくとも約20%低下し;より好ましくは少なくとも約30%低下し;より好ましくは少なくとも約40%低下し;より好ましくは少なくとも約50%低下し;更により好ましくは少なくとも約60%低下し;そして最もより好ましくは少なくとも約75%低下する。増殖細胞の比率は測定の何れかの再現性のある手段により測定してよい。好ましい態様においては、増殖細胞の比率は、例えば、組織試料中の非分裂細胞の数と相対比較しながら分裂細胞の数を定量することにより測定する。別の好ましい態様において、増殖細胞の比率は有糸分裂指数と等価である。
【0128】
別の態様において、炎症性状態を治療することは増殖細胞の領域又は区域のサイズの低減をもたらす。好ましくは、治療後、増殖細胞の領域又は区域のサイズは治療前のそのサイズと相対比較して少なくとも約5%低下し;より好ましくは少なくとも約10%低下し;より好ましくは少なくとも約20%低下し;より好ましくは少なくとも約30%低下し;より好ましくは少なくとも約40%低下し;より好ましくは少なくとも約50%低下し;更により好ましくは少なくとも約60%低下し;そして最もより好ましくは少なくとも約75%低下する。増殖細胞の領域又は区域のサイズは測定の何れかの再現性のある手段により測定してよい。好ましい態様においては、増殖細胞の領域又は区域のサイズは、細胞増殖の領域又は区域の直径又は幅として測定してよい。
【0129】
本明細書に記載の方法は、治療の必要な対象を特定することを包含してよい。好ましい実施形態においては、方法は治療の必要な哺乳類を特定することを包含する。高度に好ましい実施形態においては、方法は治療の必要なヒトを特定することを包含する。治療の必要な対象を特定することは治療から利益を被ることができる対象を示す何れかの手段により達成してよい。例えば、治療の必要な対象を特定することは、臨床診断、検査、又は当該分野で知られた何れかの他の手段、例えば特定のための手段の何れか組合せにより行ってよい。
【0130】
本明細書の他の箇所に記載するとおり、本明細書に記載の化合物は、所望により医薬組成物中に製剤してよく、そして、疾患又は状態の治療を可能とする何れかの経路により投与できる。好ましい投与経路は経口投与である。投与は単回投与の形態であってよく、又は、実施形態の化合物はある期間に渡って、分割用量において、又は、連続放出の製剤又は投与方法(例えばポンプ)において、投与することができる。しかしながら、実施形態の化合物を対象に投与する場合、投与される化合物の量及び選択される投与経路は疾患状態の有効な治療を可能にするように選択しなければならない。
【0131】
実施形態の方法はまた、疾患状態の治療のための1つ以上の付加的治療薬と共に本明細書に記載の化合物を使用することを包含する。即ち、例えば、活性成分の組合せは、(1)複合製剤において同時製剤し、そして同時に投与又は送達するか;(2)別個の製剤として交互に、又は平行して送達するか、又は;(3)当該分野で知られた何れかの別の複合療法用法により行ってよい。交互療法において送達する場合、本明細書に記載の方法は、活性成分を逐次的に、例えば別個の溶液、乳液、懸濁液、錠剤、丸薬又はカプセルにおいて、又は、別個のシリンジでの異なる注射により、投与又は送達することを包含してよい。一般的に、交互療法の間、各活性成分の有効用量を逐次的に、即ち、連続的に投与するが、同時療法の場合は、2種以上の活性成分の有効用量を共に投与する。間欠的複合療法の種々の順序も使用してよい。
【0132】
診断試験は本明細書に記載した方法の部分として意図される。例えば、組織生検試料を炎症性状態、例えばp38関連又はサイトカイン関連の状態に罹患した対象から採取してよい。生検試料を試験することにより試料中に存在するp38活性(又はサイトカイン濃度)を測定することができ;次に試料を実施形態の選択された化合物と接触させることができ、そしてp38活性(又はサイトカイン濃度)を測定することにより化合物が所望の作用(例えば約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50でp38又はサイトカインの活性を阻害すること)を有するかどうか調べる。このような試験を用いることにより、そのような化合物による治療が対象において奏功するかどうか判断してよい。或いは、試料を標識された化合物(例えば蛍光標識化合物又は放射標識化合物)と接触させ、そして次に試料を検査して蛍光又は放射線のシグナルを検出することにより組織試料中のp38の分布を調べてよい。治療の過程において反復して採取された生検試料もまた、治療の有効性を検討するために使用してもよい。本明細書に記載した化合物を使用する他の診断試験は本明細書の教示を鑑みれば当業者の知る通りである。
【0133】
即ち、例えば、ある実施形態は、細胞又は組織試料におけるp38蛋白質の存在、位置、又は量、又はその何れかの組合せを測定するための方法を提供する。方法は、a)細胞又は組織試料を、実施形態の化合物に、少なくとも1つのp38MAPKに化合物が結合できるような条件下において、接触させること;及びb)細胞又は組織試料中の化合物の存在、位置、又は量、又はその何れかの組合せを測定することにより細胞又は組織試料中の少なくとも1つのp38MAPKの存在、位置、又は量、又はその何れかの組合せを測定することを包含する。細胞又は組織試料中の化合物の存在、位置、又は量、又はその何れかの組合せを測定することは、細胞又は組織中の化合物の存在、位置、又は量、又はその何れかの組合せを明らかにする何れかの手段により実施してよい。例えば、上記した通り、放射性又は蛍光標識方法を使用してよい。化合物の存在、位置、又は量、又はその何れかの組合せを測定する別の方法は当業者の知る通りである。
【0134】
別の実施形態は、(1)化合物が炎症性状態に罹患した対象の治療のための有用な治療薬となるかどうか、又は(2)疾患の重症度、又は、(3)疾患変性剤を用いた治療中の疾患の過程を調べるための方法を提供する。方法は、a)本明細書に記載した化合物又は別の疾患変性剤を用いた治療の前、治療中、又は終了後において、対象から細胞又は組織試料を得ること;b)試料を化合物に接触させること;及びc)試料に結合する化合物の量を測定することであって、化合物によるp38MAPKへの結合は試料中のp38MAPKの量に関連するものであることを包含する。
本明細書に記載した化合物及び方法により治療されることを意図した疾患の特定の例
COPD
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は慢性の炎症過程を特徴とし、これは(1)気道及び実質組織における炎症性細胞(好中球、マクロファージ及びSD8T細胞)の数の増大、(2)増大した炎症性サイトカイン及びケモカインの発現、及び(3)プロテアーゼ(エラスターゼ、カテプシン及びマトリックスメタロプロテイナーゼ、MMP)の数の増大を包含する。気道炎症の潜在的メディエーターの多数の生産及び作用はストレス誘導MAPK又はp38キナーゼカスケードに依存していると考えられる。幾つかの報告によれば、多くの肺の事象、即ち、肺微小血管内皮細胞上のLPS及びTNF−α誘導細胞内接着分子−1発現、MMP−9活性化、肺動脈細胞の低酸素誘導刺激、気管支上皮細胞における浸透圧亢進誘導IL−8発現、及び、増強された好酸球の移動及び生存性等へのp38キナーゼ活性化の関連が裏付けられている。
【0135】
Trufukueffら(2005 Brit J Pharmacol 144:1002−10)は、CGH2466、複合アデノシン受容体拮抗剤、p38MAPK及びホスホジエステラーゼ4型阻害剤が喘息及びCOPDなどの疾患における強力なインビトロ及びインビボの抗炎症活性を示すことを報告している。Underwoodら(2000 Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 279:L895−L902)は、強力で選択的なp38MAPK阻害剤、SB239063が、線維芽細胞増殖及びマトリックス生産を調節する能力を有することから気道線維症に関連付けられていたIL−1β、TNF−α、IL−6又はIL−8を包含するプロ炎症性サイトカイン生産を低減することを明らかにしており;これは肺における低減した好中球の移動及び活性化をもたらす。より早期においては、同様の化合物がブレオマイシンにより誘導された慢性線維症に関連する応答を改変できることがわかっている。この阻害的な活性はp38のα及びβアイソフォームに対して選択的であった。本明細書に記載した化合物及び方法はCOPDの治療において有用である。
肺線維症
肺線維症はまた、特発性肺線維症(IPF)、間質性びまん性肺線維症、炎症性肺線維症又は線維形成性肺胞炎とも称され、炎症性の肺障害であり、そして線維症をもたらす肺胞隔壁内への炎症性細胞浸潤を含む肺胞炎により引き起こされる肺胞間の線維性組織の異常形成を特徴とする状態の不均質なグループである。IPFの作用は、慢性的、進行性及びしばしば致死性となる。p38MAPKの活性化は、肺線維症を有する患者の肺において明らかにされている。肺線維症に関する研究の多くによれば、肺における一部のサイトカインの持続性で増強された発現は炎症性細胞のリクルートメント及び細胞外マトリックス成分の蓄積とその後の肺構造のリモデリングに関連することが示されている。特に、プロ炎症性のサイトカイン、例えばTNF−α及びインターロイキンIL−1βは、肺炎及び肺線維症の形成において主要な役割を果たしていることが明らかにされている。更に、プロ線維性のサイトカイン、例えばTGFβ及びCTGFもまた肺線維症の発症において重要な役割を果たしている。Matsuokaら(2002 Am J Physiol
Lung Cell Mol Physiol 283:L103−L112)は、p38阻害剤、FR−167653がネズミブレオマイシン誘導肺線維症を軽減することを示している。更に、ピルフェニドン(5−メチル−1−フェニル−2−(1H)−ピリドン)、即ち複合的な抗炎症、抗酸化及び抗線維作用を有する化合物が肺線維症の実験モデル並びに臨床試験において有効であることが判った(Raghuら、1999 Am J
Respir Crit Care Med 159:1061−1069;Nagaiら、Intern Med 41:1118−1123;Gahlら、2002Mol
Genet Metab 76:234−242;Azumaら、2002 Am J
Respir Crit Care Med 165:A729)。本明細書に記載した化合物及び方法は、IPFなどの肺線維症の治療において有用である。
閉塞性細気管支炎及び閉塞性細気管支炎症候群
閉塞性細気管支炎及びその相関する臨床状態である閉塞性細気管支炎症候群は、肺の小型気道の閉塞を介した肺経路の遮断を特徴とする。閉塞性細気管支炎においては、病理学的検査は特徴的に、肺の小型気道を遮断又は閉塞させる患部を発見する。これらの患部は顆粒状の線維粘液様組織及び緻密な粘膜下瘢痕組織である。患部はTNF−αなどの前炎症性サイトカインにより媒介される延長した異常又は迷走性の上皮の炎症及び小型気道の上皮局在構造から進行し、過剰な線維増殖に到る。肺小型気道の閉塞は進行性に気流の遮断をもたらし、これは1秒当たりの努力呼気肺活量(FEV)の進行性の低下を特徴とし、そして下部気道の再発性の感染症及び病原性微生物による肺組織のコロニー形成を伴う場合が多い。
【0136】
閉塞性細気管支炎症候群は、肺移植手術後の5年生存患者の50〜60%で発生し、そして閉塞性細気管支炎症候群の発症後の5年生存率は僅か30〜40%である。閉塞性細気管支炎症候群を経験する肺移植患者は、増強免疫抑制に対する応答が不良である場合が多い。特発性肺線維症を有する患者においては、閉塞性細気管支炎症候群後の生存は気腫患者よりも短い。本明細書に記載の化合物及び方法は閉塞性細気管支炎症候群の治療において有用である。
慢性自家移植片線維症
自家移植片不全は移植の管理における深刻な問題である。自家移植片不全の主要原因の1つは慢性自家移植片機能不全である。慢性自家移植片機能不全の特徴は慢性の炎症及び慢性の線維症であり、これらは共に炎症性サイトカイン及び成長因子の生産と関連している。特にコラーゲン及びTGF生産の中断をもたらす炎症性サイトカイン及び成長因子の媒介は慢性自家移植片線維症の治療において有用である。用語「慢性自家移植片線維症」は、本明細書においては、慢性自家移植片線維症に関連する慢性の炎症及び慢性の線維症の両方を包含することを意図している。本明細書に記載の化合物及び方法は慢性自家移植片線維症の治療において有用である。
腎線維症
初回発症の性質とは無関係に、腎線維症は腎疾患が末期段階の腎不全にまで進行する共通の最終的経路であると考えられる。Srambeら(2004 J Am Soc Nephrol 15:370−379)は腎線維症のラットモデルにおいてScios Inc.(San Francisco,CA)により開発されたNPC31169というp38の活性型(ホスホリル化)の阻害剤を試験し、そして、間質容量、コラーゲンIV付着及び結合組織生育mRNAレベルから評価した場合の腎線維症の顕著な低減を報告している。本明細書に記載の化合物及び方法は腎線維症の治療において有用である。
平滑筋腫
子宮平滑筋腫又は類線維腫は、長期間有効な薬剤療法が行えなかった女性における最も一般的な骨盤の腫瘍である。平滑筋腫は増大した細胞増殖及び組織の線維症を特徴とする。培養された子宮筋及び平滑筋腫の平滑筋細胞における細胞増殖及びコラーゲン発現に対してピルフェニドンが試験されており、そして子宮筋及び平滑筋腫の細胞増殖の有効な抑制剤であることがわかっている(Leeら、1998 J Clin Endocrinol Metab 83:219−233)。本明細書に記載の化合物及び方法は平滑筋腫の治療において有用である。
心内膜心筋線維症
心内膜心筋線維症(EMF)は拘束型心筋症の発症を特徴としている。EMFはレフラー心内膜炎(非発熱性好酸球性心内膜線維症、又は好酸球増加症を伴った線維形成性の部分的心内膜炎)を包含する単一の疾患過程のスペクトルの部分とみなされる場合がある。EMFにおいては、伏在する過程が心臓の内膜表面の斑状の線維症を形成し、低減したコンプライアンスをもたらし、そして最終的には心内膜心筋表面がより全般的に関わってくるに従って生理学的特徴となる。心内膜心筋線維症は左右心室の流入管に主に関わっており、そして房室弁に影響する場合があり、三尖及び僧帽逆流をもたらす場合がある。MAPK活性化はEMFにおける不整脈誘発性の辛抱構造のリモデリングに寄与することがわかっている。本明細書に記載の化合物及び方法は心内膜心筋線維症の治療において有用である。
他の炎症性疾患
多くの自己免疫疾患及び慢性炎症に関連する疾患、並びに、急性の応答は、p38MAPキナーゼの活性化又は炎症性サイトカインの過剰発現又は調節不全に関連付けられている。これらの疾患は、限定されないが、関節リューマチ;リウマチ様脊椎炎;骨関節炎;痛風、他の間接の状態;敗血症;敗血症性ショック;内毒素ショック;グラム陰性敗血症;毒性ショック症候群;喘息;成人呼吸窮迫症候群;慢性閉塞性肺疾患;慢性肺炎症;炎症性腸疾患;クローン病;乾癬;湿疹;潰瘍性結腸炎;膵臓線維症;肝線維症;急性及び慢性の腎疾患;刺激性腸症候群;発熱;再狭窄;脳マラリア;卒中及び虚血傷害;神経外傷;アルツハイマー病;ハンチントン病;パーキンソン病;急性及び慢性の疼痛;アレルギー性鼻炎;アレルギー性結膜炎;慢性心不全;急性冠動脈症候群;悪液質;マラリア;らい病;リーシュマニア症;ライム病;ライター症候群;急性滑膜炎;筋肉変性、滑液嚢炎;腱炎;腱滑膜炎;ヘルニア化、破断又は脱出した椎間板症候群;骨粗鬆症;血栓症;癌;再狭窄;珪肺症;肺筋肉異常増殖症;骨再吸収疾患、例えば骨粗鬆症;対宿主性移植片反応;及び自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、狼瘡及び線維筋肉痛;AIDS及び他のウィルス性疾患、例えば帯状疱疹、単純疱疹I又はII、インフルエンザウィルス及びサイトメガロウィルス;及び真性糖尿病を包含する。
【0137】
多くの試験がp38MAPキナーゼ、その上流の活性化物質又はその顆粒のエフェクターの活性を遺伝子又は化学的手段のいずれかを介して低減すると、炎症応答が中断され、組織の損傷を防止又は最小限化できることを示している(例えばEnglishら、2002 Trends Phrmacol Sci 23:4−45;及びDongら、2002 Annu Rev Immunol 20:55−72参照)。即ち、過剰又は未調節のサイトカイン生産を阻害し、そして単一のプロ炎症性サイトカインより多くを阻害する可能性のあるp38活性の阻害剤は、抗炎症性の薬剤及び治療薬として有用であり得る。更に、p38MAPキナーゼ関連炎症応答に関連する疾患の大多数がこれらの症状を治療するための有効な方法が必要とされていることを示している。
【0138】
心臓血管疾患。炎症及び白血球の活性化/浸潤はアテローム性動脈硬化症及び心疾患を包含する心臓血管疾患の開始及び進行において主要な役割を果たしている。急性のp38有糸分裂促進物質活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)経路の阻害は、心筋虚血及び/又は再灌流傷害における組織損傷及び白血球蓄積を減衰する。本明細書に記載の化合物及び方法は心臓血管疾患の治療において有用である。
【0139】
多発性硬化症。中枢神経系の炎症は多発性硬化症などの疾患において生じ、そして軸索の機能不全及び破壊をもたらす。インビトロ及びインビボの観察の両方が炎症性軸索症の媒介において酸化窒素(NO)の重要な役割を示している。p38MAPキナーゼはNO曝露により活性化され、そしてp38シグナリングの阻害はニューロン及び軸索の生存効果をもたらすことがわかっている。OCM及びIGF−1は、NO曝露皮質ニューロンにおけるp38活性化を低減し、そして有糸分裂促進物質活性化蛋白質キナーゼ/細胞外シグナル関連キナーゼシグナリングに依存する過程であるNOに曝露された培養物中の軸索生存性を改善している。本明細書に記載の化合物及び方法は、多発性硬化症の治療において有用である。
【0140】
原発性移植片機能不全。非特異的炎症は原発性移植片機能不全(PNF)に関連している。炎症性の膵島損傷はプロ炎症性のサイトカイン、例えばレジデント膵島マクロファージにより生産されるインターロイキン−1β(IL−1β)及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)により少なくとも部分的に媒介される。p38経路は単球−マクロファージ細胞系列の細胞におけるサイトカイン生産に関与することが知られている。化学的p38阻害剤、SB203580によるp38経路の阻害は、リポ多糖類(LPS)及び/又は炎症性サイトカインに曝露されたヒト膵島におけるIL−1β及びTNF−αの生産を抑制する。IL−1βは主にレジデントマクロファージにより生産されるが、管細胞及び膵島血管内皮細胞は、単離されたヒト膵島においてIL−1βの別の細胞源であることがわかっている。SB203580はまた、治療される膵島における誘導型の酸化窒素シンターゼ(iNOS)及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の発現も阻害する。更に、移植前1時間にSB203580で処置されたヒト膵島は顕著に改善された移植片機能を示している。本明細書に記載の化合物及び方法は、臨床膵島移植における移植片生存の改善の為に有用である。
【0141】
急性腎傷害。シスプラチンは重要な化学療法剤であるが、急性の腎傷害を起こす場合がある。この急性人傷害の一部は腫瘍壊死因子−α(TNF−α)により媒介される。シスプラチンはp38MAPKを活性化し、そして、癌細胞におけるアポトーシスを誘発する。p38MAPKの活性化は虚血傷害及びマクロファージにおけるTNF−αの生産の増大をもたらす。インビトロでは、シスプラチンは近位の管細胞においてp38MAPKの用量依存的活性化を誘発する。p38MAPK活性化の阻害はTNF−α生産の抑制をもたらす。インビボでは、シスプラチンの単回投与を受けたマウスは重度の腎不全を発症し、これは腎p38MAPK活性の増大及び浸潤白血球の増大を伴っていた。しかしながら、シスプラチンと共にp38MAPK阻害剤SKF86002で処置された動物は、シスプラチン+ベヒクル投与動物と比較して、より低い腎機能不全、より低い重症度の組織学的損傷及びより少ない白血球を示している。本明細書に記載の化合物及び方法は急性腎傷害の防止の為に有用である。
【0142】
歯周病。プロ炎症性のメディエーターであるブラジキニン(BK)は、インビトロでヒト歯肉線維芽細胞におけるインターロイキン−8(IL−8)を刺激し、そして歯周炎を含む種々の炎症性疾患の発症において重要な役割を果たす。特異的p38有糸分裂促進物質活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)阻害剤SB203580は、BKとIL−1βとの組合せにより刺激されるIL−8生産、並びに、IL−1β刺激IL−8生産を低減している。本明細書に記載の化合物及び方法は歯周炎の治療又は防止において有用である。
医薬組成物
本明細書に記載の化合物は単独で投与することが可能であるが、化合物を医薬組成物に製剤することが好ましい場合がある。即ち、更に別の態様においては、本発明の方法において有用な医薬組成物が提供される。より特には、本明細書に記載する医薬組成物はとりわけ、炎症性状態、例えばp38活性又はサイトカイン活性又はその何れかの組合せに関連する状態を治療又は防止するために有用である。医薬組成物は状態を治療又は軽減するために対象にインビトロ又はインビボ又は両方で投与してよい何れかの組成物である。好ましい実施形態においては、医薬組成物はインビボで投与してよい。対象は細胞又は組織、又は生物の1つ以上を包含してよい。好ましい対象は哺乳類である。哺乳類は何れかの哺乳類、例えば限定されないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラクダ、バッファロー、ネコ、イヌ、ラット、マウス及びヒトを包含する。高度に好ましい対象はヒトである。
【0143】
ある実施形態においては、医薬組成物は、特定の投与様式及び剤型に応じて、製薬上許容可能な賦形剤、例えば担体、溶媒、安定化剤、補助剤、希釈剤などと共に製剤してよい。医薬組成物は一般的に生理学的に適合性のあるpHを達成するように製剤しなければならず、そして製剤及び投与経路に応じて、約pH3〜約pH11、好ましくは約pH3〜約pH7の範囲であってよい。代替の実施形態においては、pHを約pH5.0〜約pH8.0の範囲に調節することが好ましい場合がある。より特には、医薬組成物は製薬上許容可能な1つ以上の賦形剤と共に本明細書に記載した化合物少なくとも1つの治療上又は予防上有効な量を含んでよい。場合により、医薬組成物は本明細書に記載した組合せを含んでよく、或いは、細菌感染の治療又は防止において有用な第2の活性成分(例えば抗細菌又は抗微生物剤)を包含してよい。
【0144】
例えば、非経腸又は経口投与のための製剤は最も典型的には固体、液体溶液、乳液又は懸濁液であるが、肺投与のための吸入可能な製剤は一般的に液体又は粉末であり、粉末製剤が一般的には好ましい。好ましい医薬組成物はまた、投与前に生理学的に適合する溶媒で希釈再生される凍結乾燥した固体として製剤してもよい。別の医薬組成物は、シロップ、クリーム、軟膏、錠剤等として製剤してよい。
【0145】
用語「製薬上許容可能な賦形剤」は、本明細書に記載の化合物などの薬学的物質の投与のための賦形剤を指す。用語は予定外の毒性を伴うことなく投与してよい何れかの薬学的賦形剤を指す。
【0146】
製薬上許容可能な賦形剤は、部分的には投与される特定の組成物により、並びに、組成物を投与するために使用される特定の方法により決定される。従って、医薬組成物の適当な製剤には広範な種類が存在する(例えばRemington’s Pharmaceutical Science参照)。
【0147】
適当な賦形剤は大型の緩徐に代謝される巨大分子、例えば蛋白質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体及び不活性のウィルス粒子を包含する担体分子であってよい。他の例示される賦形剤は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸;キレート形成剤、例えばEDTA;炭水化物、例えばデキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸;液体、例えば油脂類、水、食塩水、グリセロール及びエタノール;湿潤又は乳化剤;pH緩衝物質等を包含する。リポソームもまた製薬上許容可能な賦形剤の定義内に包含される。
【0148】
本明細書に記載の医薬組成物は、投与の意図する方法の為に適する何れかの形態に製剤してよい。例えば経口使用を意図する場合、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性の懸濁液、非水性の溶液、分散性粉末又は顆粒(ミクロ化粒子又はナノ粒子を包含する)、乳液、ハード又はソフトカプセル、シロップ又はエリキシルを製造してよい。経口使用を意図する組成物は医薬組成物の製造のための当該分野で知られた何れかの方法に従って製造してよく、そしてそのような組成物は、服用しやすい調製品が得られるように、甘味剤、フレーバー剤、着色剤及び保存料を包含する1つ以上の作用物質を含有してよい。
【0149】
錠剤に関連して使用するのに特に適する製薬上許容可能な賦形剤は、例えば不活性の希釈剤、例えばセルロース、カルシウム又はナトリウムの炭酸塩、乳糖、カルシウム又はナトリウムのリン酸塩;錠剤崩壊剤、例えば交差結合ポビドン、トウモロコシ澱粉又はアルギン酸;バインダー、例えばポビドン、澱粉、ゼラチン又はアカシア;及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクを包含する。
【0150】
錠剤は未コーティングとするか、又は、胃腸管内の崩壊及び吸収を遅延させ、これにより、より長時間に渡る持続的作用を与えるマイクロカプセルを包含する既知の手法によりコーティングしてよい。例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートの単独又はワックスとの組合せなどの時間遅延物質を使用してよい。
【0151】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えばセルロース、乳糖、リン酸カルシウム又はカオリンと混合されたハードゼラチンカプセルとして、又は、活性成分が非水性又は油性の媒体、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ピーナツ油、流動パラフィン又はオリーブ油と混合されたソフトゼラチンカプセルとして提示してもよい。
【0152】
別の実施形態においては、医薬組成物は懸濁液の製造の為に適する、少なくとも1つの製薬上許容可能な賦形剤との添加混合物として実施形態の化合物を含む懸濁液として製剤してよい。
【0153】
更に別の実施形態においては、医薬組成物は適当な賦形剤の添加による懸濁液の製造に適する分散性粉末及び顆粒として製剤してよい。
【0154】
懸濁液に関連した使用に適する賦形剤は、懸濁剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、アカシアガム、分散又は湿潤剤、例えば天然に存在するホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシエタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート);多糖類及び多糖類様化合物(例えばデキストランサルフェート);グリコアミノグリカン及びグリコアミノグリカン様化合物(例えばヒアルロン酸);および増粘剤、例えばカーボマー、蜜蝋、硬質パラフィン又はセチルアルコールを包含する。懸濁液はまた、1つ以上の保存料、例えば酢酸、メチル及び/又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート;1つ以上の着色剤;1つ以上のフレーバー剤;及び1つ以上の甘味剤、例えばスクロース又はサッカリンを含有してよい。
【0155】
医薬組成物はまた、水中油エマルジョンの形態であってもよい。油相は植物油、例えばオリーブ油、鉱物油、例えば流動パラフィン又はこれらの混合物であってよい。適当な乳化剤は、天然に存在するガム、例えばアカシアガム及びトラガカントガム;天然に存在するホスファチド、例えば大豆レシチン、脂肪酸から誘導したエステル又は部分エステル;無水ヘキシトール、例えばソルビタンモノオレエート;及びこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを包含する。エマルジョンはまた、甘味剤及びフレーバー剤を含有してもよい。シロップ及びエリキシルは甘味剤、例えばグリセロール、ソルビトール又はスクロースを用いて製剤してよい。このような製剤はまた、鎮痛剤、保存料、フレーバー剤又は着色剤を含有してもよい。
【0156】
更に、医薬組成物は、滅菌注射用調製品、例えば滅菌注射用水性乳液又は油性懸濁液の形態であってよい。この乳液又は懸濁液は、上記した適当な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて当該分野で知られるとおり製剤してよい。滅菌注射用調製品はまた、非毒性の非経腸許容希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液、例えば1,2−プロパンジオール中の溶液であってよい。
【0157】
滅菌注射用調製品はまた、凍結乾燥粉末として調製してもよい。使用してよい許容可能なベヒクル及び溶媒に含まれるものは、水、リンゲル液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。更に、滅菌された固定油を溶媒又は懸濁媒体として使用してよい。この目的のためには、何れかの銘柄の固定油、例えば合成のモノ又はジグリセリドを使用してよい。更に、オレイン酸などの脂肪酸を同様に注射剤の製造に使用してよい。
【0158】
医薬組成物の安定な水溶性剤型を得るためには、本明細書に記載の化合物の製薬上許容可能な塩を有機又は無機酸の水溶液中、例えばコハク酸、又はより好ましくはクエン酸の0.3M溶液中に溶解してよい。可溶性の塩の形態が得られない場合は、化合物を適当な共溶媒又は共溶媒の組合せに溶解してよい。適当な共溶媒の例は、総容量の約0〜約60%の範囲の濃度のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリン等を包含する。1つの実施形態において、活性化合物はDMSO中に溶解し、水で希釈する。
【0159】
医薬組成物はまた、適切な水性ベヒクル、例えば水又は等張性食塩水又はデキストロース溶液中の活性成分の塩形態の溶液の形態であってもよい。同じく意図されるものは例えばエステル化、グリコシル化、PEG化等により送達のためにより適するもの(例えば増大した溶解度、生物活性、服用し易さ、低下した有害反応等)とする化学的又は生化学的部分を置換又は付加することにより修飾されている化合物である。
【0160】
好ましい実施形態においては、本明細書に記載の化合物は、低溶解度の化合物に適する液体系の製剤中で経口投与するために製剤してよい。液体系製剤は一般的にそのような化合物の経口バイオアベイラビリティを増強することができる。
【0161】
即ち、好ましい医薬組成物は、中鎖脂肪酸又はそのプロピレングリコールエステル(例えばカプリル酸又はカプリン酸などの食用脂肪酸のプロピレングリコールエステル)及び製薬上許容可能な界面活性剤、例えばポリオキシル40水添ヒマシ油よりなる群から選択される製薬上許容可能な少なくとも1つの賦形剤と共に本明細書に記載の化合物の治療又は予防有効量を含む。
【0162】
代替の好ましい実施形態においては、シクロデキストリンを水溶性増強剤として添加してよい。好ましいシクロデキストリンは、α−、β−及びγ−シクロデキストリンのヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル、グリコシル、マルトシル及びマルトトリオシル誘導体を包含する。特に好ましいシクロデキストリン溶解性増強剤は、ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン(BPBC)であり、これは実施形態の化合物の水溶性の特性を更に向上させるために上記した組成物の何れかに添加してよい。1つの実施形態において、組成物は約0.1%〜約20%のヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン、より好ましくは約1%〜約15%のヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン、そして更に好ましくは約2.5%〜約10%のヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリンを含む。使用する溶解性増強剤の量は、組成物中の実施形態の化合物の量に応じたものである。
【0163】
医薬組成物は、意図する治療効果を達成するために十分な活性成分の総量を含有する。より詳細には、一部の実施形態においては、医薬組成物は治療有効量(例えば炎症性疾患又は状態の症状の防止又は治療において有効なSAPKモジュレート化合物の量、化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す)を含有する。統一された剤型を製造するための担体材料と組み合わせてよい化合物の総量は、治療される宿主及び投与の特定の様式により変動する。好ましくは、SAPKモジュレート化合物0,01〜100mg/kg体重/日の用量が組成物を受け取る患者に投与されるように組成物を製剤する。
【実施例】
【0164】
(実施例1)
インビトロのp38MAPキナーゼによるATF2ホスホリル化を抑制する能力について化合物をスクリーニングする。このインビトロの試験においてATF2ホスホリル化を抑制する化合物の能力はインビボのp38MAPキナーゼ及びTNFα発現の抑制に相関し、従って、潜在的なインビボの治療活性のインジケーターとなる(Raingeaud,J.ら、1995 J.Biol.Chem.270:7420−7426;Brinkman,M.N.,ら、1999 J.Biol.Chem.274:30882−30886;及びFuchs,S.Y.ら、J.Biol.Chem.275:12560−12564,2000)。
【0165】
全てのキナーゼ及び基質ATF2は、Upstate(Charlottesville,VA)より入手する。p38MAPキナーゼは、大腸菌(E.coli)で発現させ、これより精製したアミノ末端GST融合部を有する組み換えヒト完全長蛋白質である。ATF2は大腸菌において発現されたヒトATF2のアミノ酸19〜96を含有するGST融合蛋白質である。全蛋白質は−80℃において小分けにして保存する。
【0166】
p38MAPキナーゼ試験は、25mMのHEPES、pH7.5、10mMのMgCl、2mMのDTT、20mMのβ−グリセロホスフェート、0.1mMのNaVO、40μMのATP及び1.25μMのATF2を含有する試験緩衝液、及びp38α蛋白質6ng、p38β蛋白質12ng、p38γ1.5ng、又は0.4ngのJNK2α2を用いながら実施する。化合物をDMSO中連続希釈し、そして種々の濃度の被験化合物2μLを使用する。ベヒクル対照はDMSOのみを投与する。
【0167】
被験化合物を15分間室温でキナーゼ緩衝液(25mMのHEPES、pH7.5、10mMのMgCl、2mMのDTT、20mMのβ−グリセロホスフェート及び0.1mMのNaVO)中酵素20μlと共に予備インキュベートする。反応はキナーゼ緩衝液中40μMのATP及び1.25μMのATF2の終濃度となるように基質溶液30μlを添加することにより開始する。反応混合物を37℃で30分間インキュベートし、200mMのEDTA18mlを添加することにより停止させる。ELISA法を使用してThr69におけるATF2のホスホリル化を測定する。高結合96ウェルプレートを37℃で1時間、キナーゼ反応50μlでコーティングする。コーティングされたプレートを200μlの洗浄緩衝液(25mMのTrisHCl、pH8.3、192mMのグリシン、0.1%のSDS及び0.05%のTween−20)で3回洗浄する。次にプレートをTBS中SuperBlockで3回洗浄する(Pierce,37535)。ブロッキングの後、プレートを37℃で30分間ウサギ抗ホスホATF2抗体(Cell
Signaling,9221L,1:500)50μLと共にインキュベートする。
【0168】
プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後、37℃で30分間HRPコンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体(Cell Signaling,7074,1:500)50μLと共にインキュベートする。次にプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後、室温で8分間UltraTMB−ELISA(Pierce,34028)50μlと共にインキュベートする。最後に、リン酸50μl(1M)を添加して反応を停止し、プレートの吸光度をSpectraMax250プレートリーダー上で450nmにおいて読み取る。
【0169】
化合物はこのインビトロ試験においてATF2のホスホリル化を抑制する。好ましい化合物は約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す。
【0170】
(実施例2)
インビトロでリポ多糖類(LPS)によって刺激されるTHP−1細胞からのTNFα放出を阻害する能力について化合物をスクリーニングする。このインビトロの試験においてTNFα放出を阻害する化合物の能力は、p38活性及びTNFαの阻害に相関し、従って、潜在的なインビボの治療活性のインジケーターとなる(Lee J.C.ら、1993Ann.N.Y.Acad.Sci.696:149−170;及び1994 Nature 372:739−746)。
【0171】
ATCCから入手したTHP−I細胞(TIB202)を10%ウシ胎児血清、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び50μMのβ−メルカプトエタノールを添加した4.5g/Lグルコース含有RPMI1640培地(MediaTech,Herndon,VA)中37℃、5%CO下に維持する。
【0172】
被験化合物を先ず1%DMSO(v/v)添加RPMI培地中に溶解する。次に化合物をRPMI培地中に連続希釈して全ての後続の希釈液を作成する。試験は滅菌条件下に行う。培養細胞密度6〜8×10個/mlのTHP−1細胞を収集し、10個/mlでRPMI培地に再懸濁する。再懸濁細胞100μlを、被験化合物100μlを含む各ウェルに添加する。被験化合物は終濃度の2倍に調製する。最終DMSO濃度は0.5%(v/v)を超えないようにする。細胞を37℃5%CO下で60分間、化合物と共に呼びインキュベートした後、リポ多糖類(LPS)(Sigma L−2880、4mg/mlのPBS中保存溶液)で刺激する。各ウェルのLPS終濃度は、TNFα及びIL−1β放出に関し、それぞれ10又は30μg/mlとする。未刺激の対照細胞の懸濁液にはPBSベヒクルのみを投与する。細胞混合物はTNFα及びIL−1β放出に関し、それぞれ18又は48時間インキュベートする。上澄み150μLを採取し、新しいプレートに移し、後の分析まで−20℃で保存する。TNFα及びIL−1βのレベルはELISAキットを用いて測定する。ルミネセンスをプレートリーダーとして使用する。分析は非線形回帰により行い、用量応答曲線を作成する。計算されたEC50値はTNFα及びIL−1βのレベルの50%低下をもたらす被験化合物の濃度である。
【0173】
化合物は、このインビトロ試験においてTNFα、IL−1β又はTNFα及びIL−1βの両方を阻害する。好ましい化合物は、TNFα及び/又はIL−1βに対して約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50を示す。データを以下の表2に示す。
表2
【0174】
【化56】

【0175】
【化57】

1:化合物番号は表1に示す通り。
2:A≦2000、B:>2000;C:無確定(例えばデータが無いか、活性が観察されない)。
3:D:無確定(例えばデータが無いか、活性が観察されない)。
4:化合物25は表1に示す通り、即ち2−ピリドン窒素に結合しているアリール基はN−メチルピリジニウム部分である。
5:化合物33は表1に示す通り、即ち2−ピリドン環の5及び6位に融合したブロモアリール基である。
【0176】
(実施例3)
インビトロでリポ多糖類(LPS)によって刺激される一次ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのTNFα放出を阻害する能力について化合物をスクリーニングする。このインビトロの試験においてTNFα放出を阻害する化合物の能力はp38活性の阻害に相関し、従って、潜在的なインビボの治療活性のインジケーターとなる(2002 Osteoarthritis&Cartilage 10:961−967;及びLaufer,S.A.and Wagner,G.K.2002 J.Med.Chem.45:2733−2740)。
【0177】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を3〜8個体の血液ドナーのプール血清からFicoll−HyPaque密度勾配を用いた示差的遠心分離により単離する。単離したPBMCは約10%のCD−14陽性単球、90%のリンパ球及び<1%の顆粒球及び血小板を含有する。PBMC(10/ml)をポリスチレンプレート中で培養し、血清非含有のGIBCO(商標)RPMI培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)中37℃で24時間、2連で、連続希釈した被験化合物の存在下又は不在下にリポ多糖類(LPS;50ng/ml;Sigma,St.Louis,MO)で刺激する。細胞上澄み中のTNFαのレベルを市販のキットを用いてELISAで測定する(MDSPanalabs#309700)。
【0178】
好ましい化合物は、この試験においてTNFαの放出を約1μM〜約1000μM、好ましくは約50μM〜約650μMの範囲のEC50で阻害する。
【0179】
(実施例4)
インビボの動物モデルにおいてTNFαの放出を阻害する能力について化合物をスクリーニングする(例えば、Griswold D.E.ら、1993 Drugs Exp.Clin.Res.19:243−248;Badger,A.M.ら、1996 J.Pharmacol.Exp.Ther.279:1453−1461;Dong,C.ら、2002 Annu.Rev.Immunol.20:55−72(及びその引用文献);Ono,K.and Han,J.2000 Cellular Signalling 12:1−13(及びその引用文献);及びGriffiths,J.B.ら、1999 Curr.Rheumatol.Rep.1:139−148参照)。
【0180】
特定の理論に制約されないが、このモデルにおけるTNFαの阻害は化合物によるp38MAPキナーゼの阻害によるものと考えられる。
【0181】
雄性Sprague−Dawleyラット(0.2〜0.35kg)を6匹以上の群に無作為に分割し、注入又は瞬時注射により静脈内投与によるか、又は、経口投与により、各場合において適当な製剤中で化合物を投与する。注入又は瞬時注射の終了後30分、及び、経口投与後1〜2時間に、リポ多糖類、大腸菌/0127:B8(0.8mg/kg)をIV投与する。血液試料はLPSの投与後1.5時間に収集する。血清のTNFαレベルはBiosource(KRC3011C)のELISAキットを用いて測定し、ベヒクル投与対照のものと比較する。
【0182】
好ましい化合物は、このインビボの試験においてTNFαの放出を阻害する。好ましい化合物は、500mg/kg未満、好ましくは400mg/kg未満、好ましくは200mg/kg未満、好ましくは100mg/kg未満、より好ましくは50mg/kg未満、より好ましくは40mg/kg未満、より好ましくは30mg/kg未満、より好ましくは20mg/kg未満、より好ましくは10mg/kg未満のEC50を示す。
【0183】
化合物によるp38の阻害のEC50を測定する方法は、上記したp38MAPKの下流の基質の何れかの定量的検出を可能にする当該分野で知られた何れかの方法を包含する。従って、これらの方法は更に、例えば限定されないが、p38により調節されることがわかっている遺伝子の発現の、個別の、又は遺伝子アレイによる検出を包含する。
【0184】
(実施例5)
以下の方法は、(1)EC50の測定のためのキナーゼ試験、(2)EC50の測定のための非放射能測定によるキナーゼ試験、(3)TNFα発現の誘導のモジュレーション、(4)細胞毒性に関する試験、及び(5)コラーゲン生産に対する化合物の作用を調べる試験のために使用できる。
キナーゼ試験
P38キナーゼのアイソフォームP38γ及びP38αを32P−γ−ATPの存在下ATF−2のホスホリル化により測定する。阻害剤の存在下又は不在下の32PのATF2への取り込みを測定する。ピルフェニドン及びその種々の誘導体をこの生化学的試験においてP38γ及びP38αキナーゼの活性の阻害に関して試験する。化合物をDMSO中に溶解し、希釈用及びベヒクル対照として適切な溶媒を使用しながら、0〜10mMの主種々の濃度において試験する。酵素P38γ及びP38αは、活性化された状態で入手し、そして組み換え蛋白質を精製する(Upstate,Charlottesville,VA)。活性化された酵素は最終反応において24.8nMで使用する。酵素は希釈した後、以下の緩衝液(1MのHEPES、pH7.4、500mMのDTT、1%のTritonX−100及び10mg/mlのBSA)中で反応させる。反応は2倍保存溶液として調製した以下の溶液(1MのHEPES、pH7.4、500mMのDTT、1%のTritonX−100)中で実施し、非放射性ATPは、6.25μMのATPで反応中に存在する(Cell Signaling,Beverly,MA)。ATF−2のホスホリル化を測定するために、γ−[32P]−ATP 3000Ci/mmolを7.5μMの濃度で各反応混合物に添加する。キナーゼ基質としてのATF−2(Cell Signaling,Beverly,MA)は3μMで使用する。酵素反応を設定する第1段階として、活性化キナーゼ及び阻害剤又は適切なベヒクル対照を反応緩衝液に添加し、室温で30分間インキュベートする。キナーゼ反応はATF−2及びATPの混合物を添加することにより開始する。各反応の最終容量は20μlとし、30分間室温で実施する。30分インキュベート後、Laemmlie緩衝液80ulを添加する。その後、反応混合物の20%をSDS−PAGE(BioRad,Hercules,CA)により還元条件下に分離する。電気泳動の後、ゲルをホスホイメージャープレートに露光し、ホスホイメージャーを用いて分析する(Storm System,Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)。得られたシグナルをバックグラウンド補正の後に定量し、ベヒクル対照による未阻害キナーゼ活性を0%阻害とした場合のパーセント阻害として計算する。種々の濃度の阻害剤の存在下のキナーゼ活性をKaleidagraph(Synergy Softwater,Reading,PA)を用いてプロットし、各化合物及び被験P38キナーゼに関するEC50を求める。
非放射能測定によるキナーゼ試験
代替法として、非放射能測定によるキナーゼ試験を用いてP38の阻害に関するEC50を定義した。この試験においては、p38キナーゼはATPからEGF−Rペプチド基質にホスフェートを転移させ、ATPからADPへの変換と同時にホスホリル化されたEGF−Rペプチドを形成する。非カップリング反応において、p38はまたペプチド基質の不在下により緩徐な速度でATPを加水分解し(Foxら、FEBS Lett 1999)、これはATP消費に僅かに寄与するのみである。即ち、消費されたATPの量はp38活性に直接比例する。キナーゼ反応の終了時に、残存するATPの量をKinase−GloPlus Luminescent Kinase Assay(Promega,Inc.,Madison,WI)を用いて測定する。これらの試薬は残存ATPを使用することによりカブトムシルシフェリンからオキシルシフェリンへのATP依存性酵素的変換を支援し、同時に光を発生し、これをルミノメーターで検出する。
【0185】
キナーゼ反応は、試験緩衝液中、p38α又はp38γの何れか、及びEGF−Rペプチド基質(AnaSpec,Inc.,San Jose,CA)と化合物(DMSO及び試験緩衝液中に希釈)とを混合することにより実施する。次に、反応をATP添加により開始し、室温で45分間進行させる。最終緩衝液条件は:20mMのHEPES(pH7.4)、2mMのDTT、0.1%のTritonX−100、10mMのMgCl、10%のグリセロール、12.5mMのp38α又はp38γ(Upstate,Chalottesville,VA)、50μMのEGF−Rペプチド基質及び10μMのATPとする。最終試験容量は10μLとする。対照反応は化合物の不在下で実施する。p38不在の別の対照反応を各化合物濃度において実施する。全反応は3連で実施する。
【0186】
キナーゼ反応の開始後45分に、Kinase−GloPlus試験試薬10μLを添加することにより反応をクエンチする。ルシフェラーゼ反応を15分間平衡化させた後、Envisionマルチラベルプレートリーダー(Perkin Elmer Life
and Analytical Sciences,Boston,MA)上で読み取る。データはルミネセントシグナルvs対数化合物濃度としてKaleidaGraph(Synergy Software,Reading,PA)においてプロットする。p38の不在下に対照反応から求められた固定上限を用いてデータを4パラメーター結合式にフィットさせることによりEC50値を求める(ルミネセンスはキナーゼ活性に逆関係であるため)。
TNFα誘導の阻害
THP−1(ATCC,Rockville,MD)をATCCの推奨する通常の組織培養条件下に生育させる。実験の18時間前に、1%血清を含有する通常の培地及びウェル当たり500,000個の細胞密度における0.25mlの培養容量中、96ウェルのフォーマットで細胞をプレーティングした。化合物を3連で各ウェルに添加し、適切な溶媒対照を書く試験において使用する。1μM/mlのp38阻害剤SB203850(Upstate,Waltham,MA)を各試験において陽性対照として使用する。TNFα発現の誘導の為に、1μg/mlのLPSを化合物の添加後30分に各ウェルに添加する。組織培養条件下に4時間インキュベートした後、細胞を遠心分離(10分間、1000rpm、Beckman卓上遠心分離機)により沈降させ、細胞非含有の上澄み画分を収集し、10倍希釈してTNFα特異的ELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN)における定量に付す。TNFαのELISAは製造元の指示に従って実施する。TNFαはpg/ml単位で検出し、溶媒対照におけるTNFα発現に対して企画化した活性率としてプロットする。
細胞系試験における化合物の毒性試験
破壊された細胞膜に起因するLDHの放出は細胞毒性の尺度として適用される。LDHは市販の診断キット(Roche Diagnostics,Cat#1644793)を用いてその酵素活性により検出する。前記した実験における誘導TNFα発現と合致させるためにTHP−1細胞を細胞毒性の測定の為に使用する。TNFα誘導の抑制の試験に関して前述した通り、細胞を1%血清及び通常の組織培養条件下に96ウェルのフォーマットにおいて培養する。化合物を種々の濃度において3連で添加する。適切な溶媒対照を各試験において使用する。化合物添加の後、細胞を通常の組織培養条件下に18時間培養する。このインキュベーション時間の後、Triton−X−100(2%v/v)を未治療細胞に添加することにより陽性対照を開始し、完全な細胞溶解となるまで更に10分間インキュベートする。その後、細胞を遠心分離により沈降させ、上澄み画分を取り出し、製造元の説明書に従ってLDH酵素活性を分析する。データは典型的には100%細胞毒性としてのTriton−X−100溶解細胞に対して規格化された%細胞毒性として報告する。
【0187】
毒性データはまた、市販のATP試験(Molecular ProbesのATP測定キットA22066、Invitrogenから入手)及び/又はMTT試験を用いて得られる。ATP及びMTT試験の両方とも細胞の代謝能力を測定する。MTT試験は、代謝能力(即ち生存性)に関連するマーカー物質を低減させる細胞の能力を測定する。ATP試験は、化合物の存在下及び不在下の細胞のATP濃度を測定する。毒性化合物はATP濃度の低下をもたらす代謝活性低下をもたらす。
コラーゲン生産に対する化合物の作用に関する試験
HFL−1細胞(ATCC、Rockville,MD)を10%ウシ胎児血清(FBS;Mediatech,Inc.,Herndon,VA)を含有する完全培地中で通常の組織培養条件下に生育させた。早期の継代分の細胞を6ウェルプレートにプレーティングした。細胞がコンフルエントに達した後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、そして細胞を0.1%FBS含有完全培地中で一夜保持した。次に培地を新鮮培地+0.1%FCS、10μMのL−プロリン(EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)、20μg/mlのアスコルビン酸(EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)と交換した。DMSO中の100X保存溶液から終濃度1mMとなるように3連のウェルに化合物を添加した。化合物添加の1時間後、TGF−β1(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)によって終濃度10ng/ml(合計25ng)となるように細胞を処置した。TGF−β添加の3日後に、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、次に溶解させた。溶解した細胞の総コラーゲン含有量は適切な標準曲線を用いながら染料系コラーゲン試験(Sircol Collagen Assay,Newtownabbey,Northern Ireland)及びμQuantプレート系分光光度計(BioTek Instruments,Inc.,Winooski、VT)により試験した。試験のダイナミックレンジはTGF−βの存在下及び不在下において擬似処置(化合物を含有しない1%DMSO)された細胞により定義される。データは以下の式により求められるTGF−β誘導コラーゲンのパーセント阻害として表3において報告する。
%阻害=100*[(コラーゲン、擬似/+TGF−β)−(コラーゲン、処置/+TGF−β)]/[(コラーゲン、擬似/+TGF−β)−(コラーゲン、擬似/−TGF−β)]
表3
【0188】
【化63】

(実施例6)
1−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリドン(化合物10)の製造:5−(トリフルオロメチル)−2−(1H)−ピリドン(815.5mg、5ミリモル)、4−ヨードアニソール(2.34g、10ミリモル)、CuI(952mg、5ミリモル)、KCO(691mg、5ミリモル)及びDMF(5ml)の混合物を一晩中135℃で加熱した。反応混合物を10%アンモニア(15ml)で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウム上に乾燥し、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー精製(30%酢酸エチル−ヘキサン)により1−(4−メトキシフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリドン526mg(39.2%)を得た。この化合物(268.2mg、1ミリモル)を0℃で2時間、DCM(5ml)中のジクロロメタン(DCM,2ml)中の1MのBBr溶液で処理した。反応混合物をDCMで希釈し、水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上に乾燥し、蒸発させた。残存物をカラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル−DCM)で分離し、オフホワイトの固体として標題化合物226mg(89%)を得た。HNMRスペクトルは化合物10の構造と合致していた。
【0189】
(実施例7)
1−フェニル−5−アセチル−2−ピリドン(化合物16)の製造:2−メトキシ−5−アセチルピリジン(1.51g、10ミリモル)を5時間100℃で6NのHClで処理した。反応混合物を水酸化ナトリウムでpH7に中和し、次にDCMで数回抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上に乾燥し、蒸発させ、残存物を酢酸エチルから結晶化させて白色固体として5−アセチル−2(1H)−ピリドン1.06g(78%)を得た。この化合物(685.7mg、5ミリモル)を一晩中135℃でCuI(95mg、0.5ミリモル)及びKCO(691mg、5ミリモル)の存在下にヨードベンゼン(0.84ml、7.5ミリモル)と反応させた。反応混合物を10%アンモニア(15ml)で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウム上に乾燥し、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル−DCM)により白色固体として標的化合物407mg(38%)を得た。HNMRスペクトルは化合物16の構造と合致していた。
【0190】
(実施例8)
1−(4−ピリジニル)−5−メチル−2−ピリドン(化合物22)の製造:化合物222は一晩中135℃でCuI(60mg、0.3ミリモル)及びKCO(1.36g、10ミリモル)の存在下、5−メチル−2(1H)−ピリドン(327.4mg、3ミリモル)と塩酸4−ブロモピリジン(778mg、4ミリモル)の縮合により合成した。反応混合物を10%アンモニア(15ml)で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウム上に乾燥し、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(5%MeOH−DCM)により黄色味を帯びた固体として標的化合物197mg(35%)を得た。HNMRスペクトルは化合物22の構造と合致していた。
【0191】
(実施例9)
1−フェニル−5−メチル−2−ピリジンチオン(化合物18)の製造:1−フェニル−5−メチル−2−ピリジノン(555.7mg、3ミリモル)を90℃でトルエン(5ml)中Lawesson試薬(606.7mg、1.5ミリモル)と反応させた。反応混合物を蒸発させ、標的化合物をカラムクロマトグラフィー(20〜30%酢酸エチル−ヘキサン)で単離し、次いでメチル−t−ブチルエーテルから結晶化させた。収量403mg(67%)、黄色固体。HNMRスペクトルは化合物18の構造と合致していた。
【0192】
(実施例10)
化合物33は以下の合成スキームに従って製造した。
【0193】
【化65】

市販のエチル3,3−ジエトキシプロピオネート(9.7ml、50ミリモル)、水酸化ナトリウム(10M、6ml、60ミリモル)及び水(15ml)の混合物を均質になるまで(約30分間)還流した。0℃に冷却した後、溶液のpHを2〜3とするために6N塩酸を添加した(〜10ml)。混合物をジクロロメタンで抽出し、有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を真空下で除去し、得られた酸1を更に精製することなく使用した。
【0194】
0℃のDCM(100ml)中の組成の酸1(約50ミリモル)の溶液に、4−ブロモアニリン(10.3g、60ミリモル)、HOBT(675mg、5ミリモル)及び最後にDCC(12.4g、60ミリモル)を順次添加した。反応混合物を1時間0℃で攪拌し、次に更に4時間還流した。固体を濾去し、濾液を飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を真空下で除去し、僅かに黄色の固体としてアミド2を得た。この固体を0℃で硫酸(96%、50ml)に溶解した。溶液を同じ温度で更に3時間保持した後、氷水(500ml)に注ぎ込んだ。固体を濾過し、水で洗浄し、熱アセトニトリル(100ml)と共に攪拌した。キノリノン3を濾過し、真空下で乾燥した。終了は10g(91%)であった。
【0195】
化合物3(309mg、1.38ミリモル)、フェニルボロン酸(336mg、2.76ミリモル)、Cu(OAc)(36mg、0.2ミリモル)、モレキュラーシーブ4a(0.3g)、ピリジン(0.24ml)及びDCM(10ml)の混合物を2日間室温で攪拌した。反応混合物をセライトで濾過し、EDTAと共に飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、そして、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥した。化合物33はクロマトグラフィー(50%酢酸エチル−ヘキサン−酢酸エチル)で単離した。収量は352mg(85%)であった。
【0196】
(実施例11)
ピルフェニドン、ピルフェニドン類縁体及び誘導体の薬物動態(PK)特性を二重挿管(右頸静脈/左頚動脈)SpragueDawleyラット(Charles River Laboratories,Inc.,Wilmington,MA)において試験した。体重約275〜300gの雄性ラットに適切な製剤において化合物の静脈内(5mg/kg)又は経口(50mg/kg、胃管栄養法)用量を投与した。抗凝固剤としてEDTAを用いながら投与後24時間のうちの所望の時点において動脈内カニューレを介して血漿試料を採取した。各化合物につき3匹の動物を使用した。全実験は、適切なInstitutional Animal Care and Use Committees(IACUC)のガイドラインに従って熟練担当者が実施した。
【0197】
化合物濃度は、DuragelGC18ガードカートリッジ(Peeke Scientific,Redwood City,CA)に装着したShimadzuVPHPLC(Shimadzu Corp.,,Kyoto,Japan)に連結したMDSSCIEXAPI3000質量スペクトル分析器(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いたLC−MSにより試験した。カリブレーション試料はピルフェニドン、ピルフェニドン類縁体又は誘導体の既知量をラット血漿と混合することにより製造した。標準曲線は同じマトリックスにおいてカリブレーション試料の連続希釈により作成した。標準及び分析試料の両方とも、血漿試料の少区分を3倍容量の内標準含有氷冷アセトニトリルと混合することによりHPLC注入用に調整した。次に試料を遠心分離した。得られた上澄みの小区分を次に5倍容量の水中0.2%ギ酸と混合し、HPLCに注入し、メタノール勾配(0.18〜0.2%ギ酸含有)で分割した。積分した分析対象シグナルを内標準のものに対して補正し、適切な標準曲線と比較することにより分析対象の濃度を決定した。
【0198】
表4に示す薬物動態パラメーターはWinNonlinソフトウエアパッケージ(Pharsight Corp,Mountain View,CA)を用いて誘導した。
表4
【0199】
【化67】

本発明を明確化及び理解を目的として一部詳細に説明したが、当業者の知る通り、形態及び詳細の種々の変更が本発明の範囲から外れることなく行える。上記した全ての図、表、付録、特許、特許出願及び出版物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜属III:
【化84】


[式中、
はH、F及びOHよりなる群から選択され;
はHである]の式を有する化合物であって、
該化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグ。
【請求項2】
前記化合物が下記化合物9および11:
【化85A】

から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
約50μM〜約650μMの範囲のEC50を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
請求項1記載の化合物及び製薬上許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
属VI:
【化86】


[式中、
Arはピリジニルであり、XはH、F、Cl、OH又はOCHであるか、又はArはフェニルであり、XはF、Cl、OH又はOCHであり;
ZはO又はSであり;
はC(=O)H、C(=O)CH、C(=O)O−グルコシル、メチルメトキシ、メチルヒドロキシ、ブロモ又はフェニルであり;そして、
はH又はヒドロキシルである]の式を有する化合物であって、
該化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグ。
【請求項8】
前記化合物が下記化合物14、16〜18、20、22、24〜27および30:
【化86A】

【化86B】

【化86C】

から選択される、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
約50μM〜約650μMの範囲のEC50を有する、請求項7記載の化合物。
【請求項10】
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、請求項7記載の化合物。
【請求項11】
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、請求項7記載の化合物。
【請求項12】
請求項7記載の化合物及び製薬上許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項13】
属VII:
【化89−2】


[式中、
はH、ハロゲン、アルコキシ又はOHであり;
、Y、Y及びYは、独立して、H、C−C10アルキル、置換されたC−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10ハロアルキル、C−C10ニトロアルキル、C−C10チオアルキル、C−C10ヒドロキシアルキル、C−C10アルコキシ、フェニル、置換されたフェニル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−C10アルコキシアルキル、C−C10カルボキシ、C−C10アルコキシカルボニルよりなる群から選択され;
はH、ハロゲン又はOHである]の式を有する化合物であって、そして、
該化合物は少なくとも1つのp38MAPKの阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を示す化合物;又は該化合物の製薬上許容可能な塩、エステル、溶媒和物又はプロドラッグ。
【請求項14】
約50μM〜約650μMの範囲のEC50を有する、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
インビボの体液中のTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、請求項13記載の化合物。
【請求項16】
インビトロの培養細胞によるTNFα分泌の阻害に関して約1μM〜約1000μMの範囲のEC50を有する、請求項13記載の化合物。
【請求項17】
式:
【化90】


を有する、請求項13記載の化合物。
【請求項18】
請求項13記載の化合物及び製薬上許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公開番号】特開2012−121931(P2012−121931A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−69834(P2012−69834)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【分割の表示】特願2008−511290(P2008−511290)の分割
【原出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(502191619)インターミューン, インコーポレイテッド (25)
【Fターム(参考)】