説明

ストレス誘導性光合成生物由来の生物活性画分ならびにその製造方法および使用方法

本発明は、ストレス誘導性光合成生物から単離した生物活性画分に関する。本発明はまた、変化した生物活性画分の単離に適切なストレス誘導性光合成生物の産生方法に関する。本発明は、さらに、生物活性組成物、生物活性局所処方物、およびその使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス誘導性光合成生物から単離した生物活性画分、生物活性画分の単離方法、生物活性画分の使用方法、ならびに生物活性画分を含有する組成物および処方物に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月11日に出願された米国特許仮出願第61/260,095号(その全体が本明細書中で参考として組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
環境ストレスは、植物の発生、成長、および生産性の主な制限因子である。植物が応答し得るストレス因子には、一般的に以下の2つの型が存在する:(1)非生物的(環境下での過剰又は欠損から生じる)および(2)生物的(他の生物から与えられる)。
【0004】
ストレス因子に対する植物の応答により、細胞代謝の調整、遺伝子発現の変化、成長速度の変化、ファイトマス(phytomass)の産生、および生殖能力が誘発される。とりわけ、以下の条件が植物にストレスを与える:ウォーターロギング(water-logging)および沈水、干ばつ、高温又は低温、高い又は低い土壌塩分、土壌中の不適切なミネラル、過剰又は少なすぎる光、高濃度オゾンへの暴露、およびUV光への暴露不足又は過剰暴露。
【0005】
光合成生物のストレスに対する耐性又は感受性は、種、遺伝子型、および発達年齢に依存する。以下の3つの主なストレス耐性機構が存在する:(1)ストレスへの暴露を防止する回避機構、(2)植物がストレスに抵抗することが可能となる耐性機構、および(3)馴化(すなわち、ストレスに対する応答における植物生理学の変化)。
【0006】
ストレス応答は、植物が細胞レベルでストレスを認識し、このストレス認識が各細胞内又は植物全体に情報を伝達するシグナル伝達経路を活性化する場合に開始される。植物ストレス応答の制御因子には、アブシジン酸およびジャスモン酸、浸透圧調整因子、オスモチン、タンパク質安定化因子、熱ショックタンパク質、特異的mRNA、Ca2+イオン、および防御関連二次代謝産物が含まれるが、これらに限定されない。
【0007】
植物が高レベルの複数のストレスを維持する印象的な能力は、事実上防御機構が非常に複雑であり、且つ複数の細胞適応機構および多数の代謝経路を含むことを示す。この包括的且つ強力な防御システムが依然として完全に理解されていないにもかかわらず、その構成要素およびその相互作用の利用は非常に有益であり得る。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0031446号明細書は、ストレス関連ポリペプチドおよび植物中でのその使用方法(SLSRPコード核酸で形質転換されたトランスジェニック植物であって、植物中でのこの核酸配列の発現により、種々の野生型植物と比較して水不足の環境下での成長が増大し、および/又は環境ストレス耐性が増加するトランスジェニック植物)を開示している。
【0009】
ルチン(ソバ葉中の抗酸化性フラボノイド)の合成が異なるUV−B照射レベルに影響を受ける(17%オゾン枯渇に対応するUV−B光レベルで成長した植物におけるルチン含有量がより低い)ことが示された。UV−B照射の適用によってストレス状態(許容限界を超え、適応能が酷使される)になり、おそらくルチン合成が妨害される。測定により、低レベルのUV−Bと比較して環境レベルのUV−B照射がソバ植物中のルチン蓄積を刺激することが示唆される。効果は、花より葉で明白である。UV−B照射の増強により、ルチン蓄積が妨害される(Samo Kreft et al., Journal of Experimental Botany, Vol. 53, No. 375, pp. 1801-1804, August 2002)。
【0010】
ストレス誘導性の複合体および化合物の幅広い物理化学的多様性および普遍的な特異的「マーカー」が存在しないことにより、単一抽出物中の全てのストレス誘導性の生物学的に活性な複合体および化合物の捕捉が可能でないことが示唆される。
【0011】
したがって、光合成植物中のストレス誘導性生物活性画分の生成および単離のための方法およびシステムが必要である。本発明は、当分野におけるこれらおよび他の欠陥の克服に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0031446号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Samo Kreft et al., Journal of Experimental Botany, Vol. 53, No. 375, pp. 1801-1804, August 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、一般に、ストレス誘導性光合成生物から得た生物学的に活性な画分(この生物学的に活性な画分を本明細書中で「BAFSI」という)に関する。本発明のBAFSIは、天然の防御機構によって生じた望ましい標的活性を有する複合体および組成物を有する。BAFSIを、新鮮な植物の分画テクノロジーによって捕捉および単離することができ、少なくとも1つのBAFSIおよび他の美容的に許容可能な成分および活性物質(active)を含むスキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケア用の処方物および適用における使用に十分に適切である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの態様では、本発明は、変化した生物活性画分(すなわち、BAFSI)の単離で用いるストレス誘導性光合成生物の産生方法に関する。この方法は、(i)光合成生物を準備する工程および(ii)ストレス誘導性光合成生物からの変化した生物活性画分の単離での使用に適切なストレス誘導性光合成生物を産生するのに有効なストレス誘導性培養条件下で光合成生物を培養する工程を含む。適切なストレス誘導性培養条件には、光合成生物をストレス因子又は複数のストレス因子に供することを含むが、これに限定されない。ストレス因子又は複数のストレス因子には、ストレス因子、例えば紫外線、オゾン、浸透圧、静水圧、および/又は組み合わせなどが含まれ得るが、これらに限定されない。この方法で使用されるストレス因子又は複数のストレス因子は、非ストレス誘導性光合成生物から単離した対応する生物活性画分と比較してストレス誘導性光合成生物から単離した少なくとも1つの生物活性画分の少なくとも1つの特徴を変化させるのに有効である。本発明はまた、この方法によって産生されたストレス誘導性光合成生物に関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、ストレス誘導性光合成生物から変化した生物活性画分を単離する方法に関する。この方法は、(i)本発明に従って産生されたストレス誘導性光合成生物を準備する工程、(ii)ストレス誘導性光合成生物を細胞液および細胞壁成分に分離する工程、(iii)細胞液を生物活性画分を得るのに十分な条件下で処置する工程であって、生物活性画分には、細胞セラム(serum)画分、膜画分、細胞液上清画分、および細胞セラム濾過画分が含まれるが、これらに限定されない、処置する工程、および(iv)処置された細胞液から生物活性画分を単離する工程を含む。単離された生物活性画分は、非ストレス誘導性光合成生物から単離した対応する生物活性画分と比較して少なくとも1つの変化した特徴を有する。本発明はまた、この方法に従って単離された変化した生物活性画分に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、ストレス誘導性光合成生物由来の単離された生物活性画分を含む生物活性組成物であって、生物活性画分には、細胞セラム画分、膜画分、細胞液上清画分、および細胞セラム濾過画分が含まれるが、これらに限定されない、生物活性組成物に関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、哺乳動物への局所適用に適切な生物活性局所処方物であって、生物活性局所処方物が、(i)局所的有効量の本発明の生物活性組成物および(ii)局所的に許容可能なキャリアを含む、生物活性局所処方物に関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、哺乳動物の皮膚組織における炎症活性を阻害する方法に関する。この方法は、(i)本発明による生物活性組成物を準備する工程、および(ii)生物活性組成物を皮膚組織における炎症活性を阻害するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、紫外線誘導性損傷から哺乳動物の皮膚組織を保護する方法に関する。この方法は、(i)本発明による生物活性組成物を準備する工程、および(ii)生物活性組成物を、皮膚組織の紫外線誘導性損傷を軽減し、皮膚組織の酸化的損傷を防止するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、哺乳動物の皮膚組織における皮膚障害を正常化する方法に関する。この方法は、(i)本発明による生物活性組成物を準備する工程、および(ii)生物活性組成物を皮膚組織における細胞障害を正常化するのに有効な量で皮膚細胞に適用する工程を含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、ストレス誘導性光合成生物の培養系に関する。この系は、(i)光合成生物を培養するためのバイオリアクター、および(ii)バイオリアクター中の培養条件を制御するための培養制御システムを含む。培養制御システムは、ストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせがバイオリアクターに導入されるように構成され、バイオリアクター中のストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせの強度、持続時間、および/又は濃度を調整するように構成されている。ストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせには、ストレス因子、例えば紫外線、オゾン、浸透圧、静水圧、およびその組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
新鮮な植物の分画テクノロジーによって単離されたストレス誘導性の生物学的に活性な複合体および化合物(「SIBAC」)を、ストレス誘導性光合成生物由来の生物学的に活性な画分(本明細書中で「BAFSI」と略する)として正確に記載することもできる。本明細書中で使用する場合、用語「生物学的に活性な」および「生物活性」を交換可能に使用する。
【0024】
BAFSIは、種々のストレスから光合成生物(植物、海洋生物)を防御する天然の防御機構によって生成される複合体および化合物を含有し、その後に全てのこれらの複合体および化合物を利用する方法およびその評価基準が得られる。
【0025】
驚くべきことに、且つ予想外に、種々のストレス因子、その強度、およびその持続時間がBAFSIの種々の特徴(物理化学的性質(乾燥物質含有量、重量オスモル濃度、表面張力、表面改質能)および生物学的活性(酵素阻害、抗酸化活性、およびフリーラジカル捕捉が含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない)に調整的影響(増加、減少、又は変化)を及ぼすことが見いだされた。
【0026】
異なる光合成生物に適用した類似のストレス因子がこれらの植物から得たBAFSIの特徴に異なる影響を及ぼし得ることも予想外に見いだされた。
【0027】
培養光合成生物に適用した種々のストレスにより、所望の生物学的活性および物理化学的性質を有するBAFSIの生成が誘導され、このBAFSIはスキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケアのための組成物および適用でも有用であり得る。例えば、本発明のBAFSIを、ヒト皮膚代謝で重要な役割を果たす一定の酵素(トリプシン、エラスターゼなど)の活性を制御する成分ならびに抗酸化活性およびフリーラジカル捕捉活性を有する成分として使用することができる。有用な物理化学的性質と生物学的活性との最適な組み合わせ(抗酸化剤およびフリーラジカル捕捉活性、皮膚の加齢および環境的損傷に関連する酵素の阻害、皮膚の保護およびヒト組織の修復が含まれるが、これらに限定されない)を有する見込みのあるBAFSIの単離およびスクリーニングにより、スキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケアの市場で用いる新規の多機能性成分の開発の基礎を得ることができる。
【0028】
本発明はまた、種々の光合成生物(海洋生物が含まれる)の培養中でのストレスの誘導、ストレスを与えた植物からの新鮮な植物材料の回収、ストレス誘導性の生物学的に活性な複合体および化合物が豊富なコアBAFSIを単離するためのその分画、所望の標的活性を有するBAFSIの同定、およびスキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケアのための処方物および適用でのその利用を含む過程に関する。
【0029】
本発明の種々の実施形態では、BAFSIの生成を、異なるストレス因子(紫外線(UV)、オゾン(O)、浸透圧、および元の培養条件、例えば、静水圧の有意な変化が含まれるが、これらに限定されない)によって開始させた。基本的なインプットストレスシグナルには、インパルス関数(f(t)=δ(t))、単位段階関数(f(t)=u(t))、およびランプ関数(f(t)=t)が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の光合成生物には、種々の生物学的活性を有する成分の有益な供給源である水生光合成生物が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明を図示するために、本発明の一定の実施形態を図面に記載する。しかし、本発明は、図面に記載の実施形態の配置および手段に厳格に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の種々の実施形態にしたがってストレス(すなわち、ストレス因子)の適用のために使用した種々の関数の略図である。
【0033】
【図2】本発明の種々の実施形態にしたがって水生生物に適用されたストレスを説明する関数を示す略図である。ジャイアントブラウンケルプ(Giant brown kelp)(マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera))の場合、水槽中での培養がこの種に共通の天然の成長条件よりも水圧が低いので、さらなる静水ストレス因子が存在する。静水ストレスは、ケルプがその通常の環境から取り出された場合に開始され、実験終了時に終了する。これは実験中の全ケルプに等しく適用される因子であり、したがって示さない。
【0034】
【図3】ケルプから単離した本発明の種々の生物活性画分の乾燥物質含有量(乾燥物質の重量%)を示すグラフである。
【0035】
【図4】ミリオスモル/キログラム(mOsm/kg)として本発明の種々のケルプサンプルの重量オスモル濃度の値を示すグラフである。
【0036】
【図5】本発明の種々のケルプサンプルの乾燥重量に対する含有率あたりの重量オスモル濃度(mOsm/kg)を示すグラフである。
【0037】
【図6】ミリニュートン/メートル(mN/m)として表示した本発明の種々のケルプサンプルの表面張力値を示すグラフである。
【0038】
【図7】°で示した本発明の種々のケルプサンプルによって改変されたVitro Skin基質上の脱イオン水の接触角を示すグラフである。
【0039】
【図8】1単位重量のDPPHを完全にクエンチするのに必要なサンプルの単位重量の乾燥物質として示した本発明の種々のケルプサンプルのフリーラジカルクエンチング効率を示すグラフである。値が低いほどDPPHのクエンチング効率が高い。
【0040】
【図9】反応体積1ミリリットルあたりの本発明の種々のケルプサンプルの乾燥物質のミリグラムとして示したエラスターゼIC50値を示すグラフである。
【0041】
【図10】反応体積1ミリリットルあたりの本発明の種々のケルプサンプルの乾燥物質のミリグラムとして示したトリプシンIC50値を示すグラフである。
【0042】
【図11】ケトモルファ(Chaetomorpha)対コントロール由来のBAFSIの乾燥物質含有量の変化を示すグラフである。被験物質を、同日に採取したコントロールサンプルとの百分率の相違として示す。
【0043】
【図12】ケトモルファ対コントロール由来のBAFSIの重量オスモル濃度の変化を示すグラフである。被験物質を、同日に採取したコントロールサンプルとの百分率の相違として示す。
【0044】
【図13】ケトモルファ対コントロール由来のBAFSIの乾燥物質の百分率あたりの重量オスモル濃度の変化を示すグラフである。被験物質を、同日に採取したコントロールサンプルとの百分率の相違として示す。
【0045】
【図14】同日に採取したコントロールサンプルとの百分率の相違として示した、ケトモルファ対コントロール由来のBAFSIのエラスターゼ阻害の変化を示すグラフである。プロトコールにより、被験物質の乾燥物質について計算したIC50の結果が得られる。IC50値が低いほど阻害が高く、負の変化をこのグラフの上部に示す。
【0046】
【図15】同日に採取したコントロールサンプルとの百分率の相違として示した、ケトモルファ対コントロール由来のBAFSIの表面張力の変化を示すグラフである。
【0047】
【図16】同日に採取したコントロールサンプルとの百分率の相違として示した、ケトモルファ対コントロール由来のBAFSIの酸素ラジカル吸収能(oxygen radical absorbance capacity)(ORAC)の変化を示すグラフである。使用した試験プロトコールにより、(R)−トロロックスメチルエーテルの等価重量(weight equivalence)の逆数としての結果が得られる(すなわち、1単位重量の(R)−トロロックスメチルエーテルと同一の抗酸化効果を達成するための被験物質の乾燥重量の単位数X)。したがって、数値が低いほど有効性が高く、負の変化をこのグラフの上部に示す。
【0048】
【図17】本発明のシステムの1つの実施形態の写真である。システムは、制御された条件下での水生光合成生物の培養および種々のストレス因子の適用に有効であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、一般に、ストレス誘導性光合成生物由来の生物学的に活性な画分に関し、本発明の生物活性画分を本明細書中で略語「BAFSI」によって言及する。本発明のBAFSIは、標的生物学的活性を有する複合体および化合物を含有し、新鮮な植物の分画テクノロジーによって捕捉および単離された光合成生物の天然の防御機構によって生成される。BAFSIは、スキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケアのための処方物および適用でのその利用に十分に適切である。
【0050】
本発明はまた、(a)少なくとも1つのBAFSIおよび(b)他の美容的に許容可能な成分および活性物質を含むスキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケアのための組成物に関する。
【0051】
本発明は、さらに、UV光保護に有効な量の(a)少なくとも1つのUVスクリーニング剤、(b)少なくとも1つのBAFSI、および(c)他の美容的に許容可能な成分および機能的ポリマーを含むヒトの皮膚および/又は髪のUV光保護に十分に適切な局所的に許容可能な美容的又は皮膚科学的組成物に関する。
【0052】
本発明のさらなる態様(本発明のこれらの態様の作製および使用のために当業者に適切なさらなる詳細が含まれる)を本発明の以下に提供する。
【0053】
本発明は、変化した生物活性画分(すなわち、BAFSI)の単離で用いるストレス誘導性光合成生物の産生方法に関する。この方法は、(i)光合成生物を準備する工程および(ii)ストレス誘導性光合成生物からの変化した生物活性画分の単離での使用に適切なストレス誘導性光合成生物を産生するのに有効なストレス誘導性培養条件下で光合成生物を培養する工程を含む。
【0054】
本明細書中で使用する場合、本発明の変化した生物活性画分は、ストレス誘導性光合成生物から単離した生物活性画分をいい、この生物活性画分は非ストレス誘導性光合成生物から単離した対応する生物活性画分と比較して少なくとも1つの変化した特徴を有する。変化した特徴は本明細書中に記載の通りであり、変化した物理化学的性質、変化した表面改質性、変化した加湿性、変化した抗炎症活性、および/又は変化したアンチエイジング活性が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、変化した特徴により、非ストレス誘導性光合成生物由来の対応する生物活性画分の生物活性又は性質と比較して本発明の生物活性画分の生物活性又は性質が改善される。別の実施形態では、少なくとも1つの変化した特徴は、非ストレス誘導性光合成生物由来の対応する生物活性画分の生物活性又は性質と比較した本発明の生物活性画分の1つ又はそれ以上の生物活性又は性質の変化をいう。
【0055】
適切なストレス誘導性培養条件は本明細書中に記載の通りであり、光合成生物をストレス因子又は複数のストレス因子に供することが含まれ得るが、これらに限定されない。本明細書中に説明するように、ストレス因子又は複数のストレス因子には、ストレス因子、例えば紫外線、オゾン、浸透圧、静水圧、および/又はその組み合わせなどが含まれ得るが、これらに限定されない。本明細書中に説明するように、ストレス因子又は複数のストレス因子は、非ストレス誘導性光合成生物から単離した対応する生物活性画分と比較してストレス誘導性光合成生物から単離した少なくとも1つの生物活性画分の少なくとも1つの特徴を変化させるのに有効である。
【0056】
本発明のストレス誘導性光合成生物の産生方法は、本発明の生物活性画分の少なくとも1つの特徴、例えば物理化学的性質、表面改質性、加湿性、抗炎症活性、および/又はアンチエイジング活性などの特徴が含まれ得るが、これらに限定されない特徴を変化させるのに有効である。
【0057】
本明細書中で使用する場合、物理化学的性質には、性質、例えば表面張力、乾燥物質含有量、および重量オスモル濃度などが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書中で使用する場合、抗炎症活性および/又はアンチエイジング活性には、活性、例えばエラスターゼ阻害、トリプシン阻害、抗酸化活性、およびフリーラジカル捕捉活性などが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
ストレス誘導性光合成生物から単離することができる生物活性画分には、細胞セラム画分、膜画分、細胞液上清画分、および細胞セラム濾過画分が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0060】
本発明はまた、本方法によって産生されたストレス誘導性光合成生物に関する。
【0061】
本明細書中で使用する場合、光合成生物には、水生光合成生物および陸生非水生光合成生物が含まれる。光合成活性を有する任意の生物を、本発明で使用することができる。
【0062】
本発明によれば、水生光合成生物には、褐藻綱および緑藻綱の水生光合成生物が含まれるが、これらに限定されない。特に、水生光合成生物には、一連のマクロシスティス属およびケトモルファ属が含まれ得るが、これらに限定されない。適切な一連のマクロシスティス属には、マクロシスティス・アングスティフォリア(Macrocystis angustifolia)、マクロシスティス・インテグリフォリア(Macrocystis integrifolia)、マクロシスティス・レビス(Macrocystis laevis)およびマクロシスティス・ピリフェラが含まれ得るが、これらに限定されない。適切な一連のケトモルファ属には、ケトモルファ・アエレア(Chaetomorpha aerea)、ケトモルファ・アンテニナ(Chaetomorpha antennina)、ケトモルファ・バシレトルサ(Chaetomorpha basiretorsa)、ケトモルファ・ブラキゴナ(Chaetomorpha brachygona)、ケトモルファ・カリフォルニカ(Chaetomorpha californica)、ケトモルファ・カンナビナ(Chaetomorpha cannabina)、ケトモルファ・クラッサ(Chaetomorpha crassa)、ケトモルファ・グラシリス(Chaetomorpha gracilis)、ケトモルファ・リヌム(Chaetomorpha linum)、ケトモルファ・メラゴニウム(Chaetomorpha melagonium)、ケトモルファ・ナタレンシス(Chaetomorpha natalensis)およびケトモルファ・スピラリス(Chaetomorpha spiralis)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0063】
本発明はまた、ストレス誘導性光合成生物からの変化した生物活性画分を単離する方法に関する。この方法は、(i)本発明にしたがって産生されたストレス誘導性光合成生物を準備する工程、(ii)ストレス誘導性光合成生物を細胞液成分および細胞壁成分に分離する工程、(iii)細胞液を生物活性画分を得るのに有効な条件下で処置する工程であって、生物活性画分には、細胞セラム画分、膜画分、細胞液上清画分、および細胞セラム濾過画分が含まれるが、これらに限定されない、処置する工程、および(iv)生物活性画分を処置した細胞液から単離する工程を含む。
【0064】
1つの実施形態では、本発明のストレス誘導性光合成生物中の生物活性画分ならびにストレス誘導性の複合体および化合物を、以下の米国特許および公開特許出願に記載の新鮮な植物の分画テクノロジーによって捕捉および単離することができる:米国特許第7,537,791号明細書、同第7,442,391号明細書、および同第7,473,435号明細書、ならびに米国特許出願公開第2007/0196523号明細書、同第2009/0186109号明細書、同第2009/0185990号明細書、および同第2009/0017144号明細書(その開示全体が本明細書中で参考として組み込まれる)。
【0065】
本明細書中に記載の単離技術ならびに上記米国特許および公開特許出願中に教示された新鮮な植物の分画テクノロジーを考慮して、当業者は、本発明の単離した生物活性画分の産生方法を容易に決定することができる。参照を目的として、以下は、上記で引用した各米国特許および公開特許出願の教示の概要である。
【0066】
米国特許第7,537,791号明細書(本明細書中で参考として組み込まれる)は、ナツシロギク(タナセタム・パルテニウム(Tanacetum parthenium))由来の無パルテノライド生物活性成分(bioactive ingredient)およびその産生過程を開示している。
【0067】
米国特許第7,442,391号明細書(本明細書中で参考として組み込まれる)は、生物活性植物性美容組成物およびその産生過程を開示している。
【0068】
米国特許第7,473,435号明細書(本明細書中で参考として組み込まれる)は、ツバキ科植物由来の生物活性組成物およびその産生過程を開示している。
【0069】
米国特許出願公開第2007/0196523号明細書(本明細書中で参考として組み込まれる)は、ナツシロギク(タナセタム・パルテニウム)由来の無パルテノライド生物活性成分およびその産生過程を開示している。
【0070】
米国特許出願公開第2009/0186109号明細書(本明細書中で参考として組み込まれる)は、ナツシロギク(タナセタム・パルテニウム)由来の無パルテノライド生物活性成分およびその産生過程を開示している。
【0071】
米国特許出願公開第2009/0185990号明細書(本明細書中で参考として組み込まれる)は、ツバキ科植物由来の生物活性組成物およびその産生過程を開示している。
【0072】
米国特許出願公開第2009/0017144号明細書(本明細書中で参考として組み込まれる)は、生物活性植物性美容組成物およびその産生過程を開示している。
【0073】
当業者が認識することができるように、これらの分画および単離テクノロジーにより、全ての細胞内材料およびコア画分中の全てのその成分の分布を完全に捕捉するための手段が得られる。この手段により、いかなる外部の溶媒又は化学物質を使用することなく、且つ細胞内浸透圧ホメオスタシスを損傷することなく新鮮な植物材料から単離される。結果として、種々のストレス因子に供された光合成生物の全てのオルガネラおよび細胞質成分の完全性を完全に保存し、種々の画分中に単離することができる。
【0074】
本発明の単離方法によって産生された単離した生物活性画分は、非ストレス誘導性光合成生物から単離した対応する生物活性画分と比較して少なくとも1つの変化した特徴を有する。本明細書中に記述するように、単離された生物活性画分中の変化し得る特徴の例には、物理化学的性質、表面改質性、加湿性、抗炎症活性、およびアンチエイジング活性が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0075】
本発明はまた、ストレス誘導性光合成生物由来の単離された生物活性画分を含む生物活性組成物であって、生物活性画分には、細胞セラム画分、膜画分、細胞液上清画分、および細胞セラム濾過画分が含まれるが、これらに限定されない、生物活性組成物に関する。
【0076】
生物活性組成物で使用される生物活性画分を、非ストレス誘導性光合成生物から単離した対応する生物活性画分と比較して単離した生物活性画分の少なくとも1つの特徴を変化させるのに有効な条件下で、ストレス因子又は複数のストレス因子に供したストレス誘導性光合成生物から単離する。変化した特徴および種々のストレス因子は、本明細書中に提供する通りである。
【0077】
1つの実施形態では、生物活性組成物は、安定剤を含むこともできる。本発明の生物活性組成物での使用に適切な安定剤は当分野で周知である。適切な安定剤の例には、乳化剤、防腐剤、抗酸化剤、ポリマーマトリックス、およびその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
1つの実施形態では、生物活性画分は、望ましくない成分(タンパク質が含まれるが、これに限定されない)を実質的に含まない。残存タンパク質が接触皮膚炎を引き起こし得るので、タンパク質の不在は重要である(V. Janssens, et al., 「Protein contact dermatitis: myth or reality?」, British Journal of Dermatology 1995; 132: 1-6)。さらに、タンパク質の存在は、最終製品の処方において安定性および適合性に関する問題を引き起こし得る。
【0079】
本発明はまた、哺乳動物への局所適用に適切な生物活性局所処方物であって、生物活性局所処方物が、(i)局所的有効量の本発明の生物活性組成物および(ii)局所的に許容可能なキャリアを含む、生物活性局所処方物に関する。
【0080】
本発明の生物活性組成物での使用に適切な局所的に許容可能なキャリアは当分野で周知である。適切な局所的に許容可能なキャリアには、親水性クリーム基剤、親水性ローション基剤、親水性界面活性剤基剤、親水性ゲル基剤、親水性溶液基剤、疎水性クリーム基剤、疎水性ローション基剤、疎水性界面活性剤基剤、疎水性ゲル基剤、および疎水性溶液基剤が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0081】
種々の実施形態では、本発明の生物活性画分、組成物、および処方物は、「美容的に許容可能」である。本明細書中で使用する場合、用語「美容的に許容可能な」は、妥当なリスク便益比(benefit/risk ratio)に見合った過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、およびアレルギー反応などを示さない哺乳動物組織(例えば、ヒトの皮膚)と接触させて使用するのに適切な生物活性画分、組成物、成分、処方物、美容的に活性な薬剤、又は不活性成分をいう。
【0082】
種々の実施形態では、本発明の生物活性画分、組成物、および処方物は、ヒトへの局所適用に有用であり、「安全且つ有効な量」で適用することができる。本明細書中で使用する場合、用語「安全且つ有効な量」は、制御又は処置すべき条件下で正の改変を有意に誘導するのに十分であるが、重篤な副作用を回避するのに十分に低い生物活性画分、組成物、成分、又は処方物の量をいう。生物活性画分を含有する生物活性組成物、成分、又は処方物の安全且つ有効な量は、処置される特定の条件、最終使用者の年齢および健康状態、処置/又は防止される容態の重症度、処置の持続時間、併用療法の性質、使用される特定の生物活性成分又は処方物、および使用される特定の美容的に許容可能な局所キャリアなどの要因によって変化する。
【0083】
本発明の生物活性画分又は組成物を含有する処方物を、当業者に周知の方法論を使用して調製することができる。
【0084】
生物活性組成物が生物活性局所処方物の総重量の約0.01%と約98.0%との間の範囲の量で存在するように生物活性局所処方物を処方することができる。本発明は、記載の0.01〜98.0%(終点(すなわち、0.01%および98.0%)を含む)の範囲内の生物活性組成物濃度を有する生物活性局所処方物を意図する。当業者は、特定の局所処方物での使用に適切な生物活性組成物の濃度を容易に決定することができる。
【0085】
本発明の生物活性局所処方物は、種々の適用、例えば、スキンケアでの適用、サンケアでの適用、ヘアケアでの適用、およびパーソナルケアでの適用が含まれる適用での使用に適切である。当業者は、他の適用における生物活性局所処方物の他の使用を容易に決定することができる。
【0086】
本発明の生物活性局所処方物は、ローション(スキンローション、日光阻止用ゲル、保湿ローション、日焼け止めローション、顔用ゲルローション、顔用トーニングローション、およびアンチエイジングローションが含まれるが、これらに限定されない)としての使用に適切である。当業者は、本発明の生物活性局所処方物を組み込むことができる他のローションを容易に決定することができる。
【0087】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における炎症活性を阻害する方法に関する。この方法は、(i)本発明による生物活性組成物を準備する工程、および(ii)生物活性組成物を皮膚組織における炎症活性を阻害するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。当業者は、この方法にしたがって本発明の生物活性組成物を提供および適用するためのパラメーターおよび他の特定のプロトコールを容易に決定することができる。
【0088】
本発明は、さらに、紫外線誘導性損傷から哺乳動物の皮膚組織を保護する方法に関する。この方法は、(i)本発明による生物活性組成物を準備する工程、および(ii)生物活性組成物を、皮膚組織の紫外線誘導性損傷を軽減し、皮膚組織の酸化的損傷を防止するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。当業者は、この方法にしたがって本発明の生物活性組成物を提供および適用するためのパラメーターおよび他の特定のプロトコールを容易に決定することができる。
【0089】
本発明はまた、哺乳動物の皮膚組織における皮膚障害を正常化する方法に関する。この方法は、(i)本発明による生物活性組成物を準備する工程、および(ii)生物活性組成物を皮膚組織における細胞障害を正常化するのに有効な量で皮膚組織に適用する工程を含む。皮膚組織における細胞障害は当分野で周知である。当業者は、この方法にしたがって本発明の生物活性組成物を提供および適用するためのパラメーターおよび他の特定のプロトコールを容易に決定することができる。
【0090】
本明細書中で使用する場合、用語「哺乳動物」には、ヒトが含まれるが、これに限定されない。
【0091】
本発明はまた、ストレス誘導性光合成生物の培養系に関する。この系は、(i)光合成生物を培養するためのバイオリアクター、および(ii)バイオリアクター中の培養条件を制御するための培養制御システムを含む。培養制御システムは、ストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせがバイオリアクターに導入されるように構成され、バイオリアクター中のストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせの強度、持続時間、および/又は濃度を調整するように構成されている。ストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせには、ストレス因子、例えば紫外線、オゾン、浸透圧、静水圧、およびその組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
1つの実施形態では、本発明の系を水生光合成生物の培養のために使用し、バイオリアクターは、液体培地中で水生光合成生物を培養するように構成されている。水生光合成生物との使用に適切なシステムの配置例を図17に図示する。特定の実施形態では、バイオリアクターは水槽であり得るが、これに限定されない。本発明のシステムの1つの実施形態の種々の構成要素を、表1に示す(以下)。本明細書中の教示を考慮して、当業者は、本発明のシステムでの使用に適切な他の一般的又は特定の構成要素を容易に決定することができる。したがって、かかる他の一般的又は特定の構成要素が本発明で意図される。
【0093】
本発明の種々の態様および実施形態に関するさらなる詳細を以下に記載する。
【0094】
1つの実施形態では、ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)を、その成長の速さおよび極限状態(特に、高温および比較的低温)で生存する能力のために選択した。これは、世界中のいくつかの大陸沖、例えば、北アメリカの西海岸沖(アラスカ南部からバハ・カリフォルニアまで)、南アメリカ沖、南アフリカ沖、および南オーストラリア沖で見いだされる。ジャイアントケルプを特定の環境下で生息させるために、この環境は付着のための堅い表面、高栄養濃度、中程度の水の動き、ならびに透明且つ清潔な大洋水を備えなければならない。マクロシスティス(Macrocystis)は、外岸水域中の塩濃度の高い十分に混合された塩水を好む(Connor J, Baxter C, Kelp Forest. Monterey Bay Aquarium Foundation, Monterey: 1989)。ジャイアントブラウンケルプは、ヨウ素、カルシウム、および硫黄に富み、鉄、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ならびにビタミンA、D、E、K、およびBの複合体の良好な供給源である。ケルプの主な構成物は、ムコ多糖、アルギン酸塩、フェノール化合物、極性脂質、およびグリコシルエステルジグリセリド、ならびにタンパク質、炭水化物、必須脂肪酸、アミノ酸、および約30種のミネラル、クロロフィルaおよびc、ならびにカロテンおよびキサントフィルである(Wurges, J., and R. J. Frey. 2005. In J. L. Longe, The Gale Encyclopedia of Alternative Medicine, Farmington Hills, Mich: Thomson/Gale. ISBN 0787693960)。細胞壁は、ポリサッカリド(有益なアルギン酸など)と層をなすセルロースから構成される。
【0095】
ジャイアントケルプの茎は、陸生植物の茎と類似している。光合成で産生される必須の糖を使用してその代謝的に必要な場所に糖を供給し、同様に、藻類の他の部分(固着器官、胞子産生葉、および新規の葉状体が含まれる)に糖を輸送する。
【0096】
ジャイアントブラウンケルプの葉は、ほとんどの太陽光エネルギーを捕捉し、光合成によって糖に変換する部位である。次いで、産生された糖はエネルギーとして藻類によって使用される。ジャイアントブラウンケルプの気胞は、光合成が起こり得る表面により近い葉を引き上げるためのブイとして働くガスが充填された浮袋である(Bold HC, Wynne M J. Introduction to the Algae. Prentice Hall, Englewood Cliffs: 1978)。
【0097】
ジャイアントケルプの固着器官の外観は、根に類似している。しかし、これらの根は陸生植物のように栄養や水を取り込まない。固着器官は、ケルプの位置を保持する。ジャイアントケルプの固着器官は多年生であり、1〜数年間生存する(Connor J, Baxter C, Kelp Forest. Monterey Bay Aquarium Foundation, Monterey: 1989)。
【0098】
別の実施形態では、マクロシスティス・ピリフェラと比較して成長速度が速く、比較的高温および高レベルの光合成活性で生存することができるので、緑藻(ケトモルファ・リヌム)を選択した。ケトモルファ・リヌムは、比較的浅い亜熱帯から熱帯の太平洋の岩礁で見いだされる。これは、いかなる基底(substrate)に付着することなく繊維状の集塊中で成長する浮動性の藻類である。ケトモルファ・リヌムは、夾雑物、特に硝酸塩を除去するための天然のフィルターとして使用するために頻繁に水産養殖されている。
【0099】
別の実施形態では、BAFSIの生成は、異なるストレス因子(紫外線(UV)、オゾン(O)、浸透圧(Biological Control Systems Analysis. John H. Milsum-McGraw-Hill Book Company NY, 1966)、および元の培養条件、例えば静水圧の有意な変化が含まれるが、これらに限定されない)によって開始された。
【0100】
1つの実施形態では、図1に示した基本的なストレスシグナル受容(basic input stress signal)には、インパルス関数(f(t)=δ(t))、単位段階関数(f(t)=u(t))、およびランプ関数(f(t)=t)が含まれるが、これらに限定されない。藻類に適用されたストレスを説明する関数を、図2に示す。
【0101】
別の実施形態では、ジャイアントケルプの場合、水槽中での培養がこの種に共通の天然の成長条件よりも水圧が低いので、さらなる静水ストレス因子が存在する。静水ストレスは、ケルプがその通常の環境から取り出された場合に開始され、実験終了時に終了する。これは実験中の全ケルプに等しく適用される因子であり、したがって示さない。
【0102】
培養条件およびパラメーター
本発明の1つの実施形態では、4つの同一の150リットル水槽を、35g/l人工的海塩を用いて14日間循環させた。次いで、プロリンF/2藻類用飼料(algae food)を各水槽に添加し、一連の培養中の硝酸塩レベルのモニタリングによって維持した。この実施形態の装置の構成要素に関する詳細な情報を表1に示す。
【表1】

【0103】
使用した小型の蛍光照明システムにより、表面および表面下条件下での太陽光の性質をモデリングした。紫外光源により、UVB領域の照射をモデリングした。ウェーブメーカーによって水流および乱流を起こし、天然の環境条件をシミュレートした。制御システムによって、pH、酸化還元電位、伝導率、オゾン濃度、および温度をモニタリングした。さらに、タイマーによって照明、UV、およびオゾンシステムを制御した。重量オスモル濃度、屈折率、および比重も、アンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩、リン酸塩、カルシウムのレベル、および炭酸塩硬度(KH)と共にモニタリングした。1つの水槽をコントロールとして常に使用し、3つの他の水槽に、(a)3つの異なる選択したストレス因子のレベル又は(b)3つの異なるストレス因子型を導入した。
【0104】
培養ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)を有するこれらの水槽の写真を図17に示す。
【0105】
1つの実施形態では、水槽中のUVBストレスを、外部UVB光を使用して適用した。2つの30ワットのUVB照明設備を水槽上部に導入し、UVBの強度をUVX放射計を使用して測定した。表1に記載のシステムを使用してオゾンを水槽内に注入することによって水槽中にオゾンストレスを与えた。オゾン生成しない水槽には、気流および水流の相違を排除するための同一のオゾン注入システムも導入した。溶存オゾン濃度を、Aquasensorsのオゾンセンサーおよび分析器で測定した。塩水濃度の制御によって浸透圧ストレスを水槽に与えた。重量オスモル濃度を、モデル3250氷点降下浸透圧計(Advanced Instruments,Inc.,MA)を使用して測定した。水槽中の静水ストレス(静水圧低下条件)は、典型的に深水(10ft以下)中で成長するジャイアントブラウンケルプに影響を及ぼした。コントロールおよびストレスを与えた系に使用した培養パラメーターの範囲、ストレス因子およびそのパラメーターを表2に示す。
【表2】

【0106】
1つの実施形態では、ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)を使用したコントロールおよびストレスを与えた系に使用した培養パラメーターの範囲は以下であった:培養時間は72時間(3日間)又は96時間(4日間)であった。コントロール(ストレスなし):ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)を、深水中での元の培養条件から採取し、水槽に移すことなく処理した。静水圧ストレスのみは、各培養期間で継続されていた。典型的には深水(10ft以下)で成長する藻類、例えば、ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)が元の培養条件で存在する藻類と比較して低い静水圧のより浅いリザーバ(水槽)に移して培養した場合に静水ストレスが起こる。静水ストレス+UVBストレス=2mW/cmUVB 3〜12時間/日;静水ストレス+オゾンストレス=100mg/hr連続注入;静水ストレス+浸透圧ストレス−培養培地の重量オスモル濃度=コントロールの75%。培養期間は72時間(3日間)又は96時間(4日間)であった。
【0107】
1つの実施形態では、典型的には浅水域で成長し、したがって実験で静水ストレスを経験しない緑藻(ケトモルファ・リヌム)を使用したコントロールおよびストレスを与えた系のために使用した培養パラメーターの範囲は以下であった:培養期間は24時間(1日間)、96時間(4日間)、288時間(12日間)、456時間(19日間)であった。コントロール(ストレスなし)。UVBストレス=2mW/cmUVB 12時間/日;オゾンストレス=100mg/hr連続注入。浸透圧ストレス−培養培地の重量オスモル濃度=コントロールの85%。
【0108】
定義および方法
本発明の生物活性画分について決定することができる特徴の様々な定義およびこれらの特徴の関連する測定又は分析方法を以下に示す。
【0109】
表面張力
表面張力は単位長さのラインに沿った力と定義し、この力は、表面に対して平行であるが、前記ラインに対して垂直である。表面張力を、単位長さあたりの力で測定し、そのSI単位はN/m(ニュートン/メートル)である(Pierre-Gilles de Gennes; Francoise Brochard-Wyart; David Quere (2002). Capillary and Wetting Phenomena-Drops, Bubbles, Pearls, Waves. Springer. ISBN 0-387-00592-7; White, Harvey E. (1948). Modern College Physics. van Nostrand. ISBN 0442294018)。
【0110】
表面張力は、種々の分子間力による液体分子間の引力に起因する。大量の液体では、各分子は隣接する液体分子によってあらゆる方向に均等に引っ張られ、それにより、正味の力はゼロである。液体表面では、分子はより深い液体内部の他の分子によって中心へ引っ張られ、隣接する媒質(吸引状態(be it vacuum)、空気、又は別の液体)中の分子によって強く引き付けられない。したがって、表面の全分子は内向きに分子間力を受け、この分子間力は液体の圧縮に対する抵抗のみによってバランスが取られ、正味の内向きの力がないことを意味する。しかし、表面積を減少させるための推進力が存在する。したがって、液体が局所的に可能な最小の表面積を有するまで、液体自体が共に締め付けられる。表面積最小化の結果として、表面は可能な最もなめらかな形状を有する。表面形状の任意の湾曲によってより大きな領域が得られるので、より高いエネルギーも得られる。したがって、表面は、坂を上ったボールがその重力ポテンシャルエネルギーを最小にするために抵抗するのとほとんど同一の方法でいかなる湾曲にも抵抗する。
【0111】
表面張力を、デバイスの制御、画像収集、および液滴画像の分析のためのKruss DSA1ソフトウェアを実行するコンピュータを取り付けたKruss EasyDrop液滴形状分析システムを使用して測定した。直径1.8mmの使い捨て投薬用ニードル(dosing needle)を備えた使い捨て2mLシリンジを使用してサンプルを保持および分注し、異なるサンプル材料毎に新規のシリンジおよび新規のニードルを使用した。測定手順は、システムと共に提供されたKrussソフトウェア中の液滴形状分析DSA1バージョン1.91のユーザーマニュアルに記載されている。室内照明を明るく不拡散の光を排除するように調整し、したがって、液滴表面上の反射が防止された。システムをオンにし、バックライトを強度25%に設定し、ニードル画像のためにシリンジおよびニードルを配置してフレームの約10%を取り込んだ。焦点を、ソフトウェアによって決定される最大の鮮明度になるように調整した。対象の領域を、脱イオン水の懸滴を使用して規定した。液滴型を懸滴に設定した。画像の規模を、ニードル直径により読み取った。液浸培地密度を、室温における海水面での空気密度として入力した。最初のコントロールの測定のために水を使用した。水および各サンプル材料のために、サンプル密度を入力し、次いで、適切に成形されたペンダントドロップを生成するのに必要な体積を決定した。その後、表面張力を、3つのペンダントドロップ(各測定について新たな液滴)について測定した。ヤング・ラプラース液滴輪郭フィット(drop contour fit)を計算のために使用した。3つの測定値の平均を、所与のサンプル材料の表面張力と見なした。
【0112】
重量オスモル濃度
重量オスモル濃度は、1kgの溶液あたりの溶質のオスモル数として定義される溶質濃度の基準である。重量オスモル濃度は、溶液の単位質量あたりの溶質粒子のオスモル数を測定する。重量オスモル濃度は、溶質のモル数よりもむしろ溶質粒子のモル数を測定するので、モル濃度と異なる。ある化合物は溶液に溶解することができるのに対して、他の化合物ができないので、差異が生じる。イオン性化合物、例えば塩などは溶液中でその成分イオンに解離することができ、それにより、溶液のモル濃度と重量オスモル濃度とが1対1の関係ではない。例えば、塩化ナトリウム(NaCl)は、NaイオンおよびClイオンに解離する。したがって、溶液中の各1モルのNaClについて、2オスモルの溶質粒子が存在する(すなわち、1M NaCl溶液は2Osm NaCl溶液である)。ナトリウムイオンおよび塩素イオンは共に溶液の浸透圧に影響を及ぼす。非イオン性化合物は解離せず、1モルの溶質あたり1オスモルの溶質のみを形成する。例えば、1Mグルコース溶液は1Osmである(Widmaier, Eric P.; Hershel Raff, Kevin T. Strang (2008). Vander's Human Physiology, 11th Ed. McGraw-Hill. pp. 108-112)。浸透圧計モデル3250(Advanced Instruments,Inc)を使用して、BAFSIの重量オスモル濃度を決定した。この装置は、測定原理として氷点降下を利用する。凝固点は、束一性を示し、これは、溶解粒子の存在およびその数に依存するがその同一性に依存しない。氷点降下は、溶質が電解質、例えば種々の塩などである場合および非電解質、例えば炭水化物などである場合の両方で起こる。
【0113】
乾燥物質
乾燥物質は、BAFSI中の不揮発性成分の濃度を反映する。乾燥物質レベルを、液体サンプルの重量を液体成分が蒸発した後の残存乾燥物質の重量と比較することによって決定した。使い捨てのアルミニウム製秤量皿(VWR 25433−016)、Ohaus Explorer E00640天秤(Ohaus Corporation)、およびShel Labモデル1400Eオーブン(VWR)(105℃に設定)を使用した。乾燥物質の比率を、(「風袋重量+乾燥重量」−「風袋重量」)/(「風袋重量+湿重量」−「風袋重量」)*100として計算した。
【0114】
BAFSI適用後のVitro Skin(N−19)表面の改変
代用皮膚基質の表面特性に及ぼす種々の物質の影響を定量するために水の接触角の測定を使用する試験方法(Correlating Water Contact Angles and Moisturization/Sensory Claims” by Olga V. Dueva-Koganov et al. Cosmetics & Toiletries, January 2007, Vol. 122, No. 1, pp. 20-27)を使用した。この文献中に示されたデータは、接触角測定を使用してこの皮膚様基質の表面特性に及ぼすスキンケア製品の影響を定量および比較することができることを示している。より低い接触角(80°未満)を生じる製品は、軽くべたつかない感触および短期間の保湿に関する感覚的な主張がより多い傾向があり、一方、比較的高い接触角を生じる製品は長期間保湿に関する主張がより多い傾向がある。
【0115】
接触角を、デバイスの制御、画像収集、および液滴画像の分析のためのKruss DSA1ソフトウェアを実行するコンピュータを取り付けたKruss EasyDrop液滴形状分析システムを使用した液滴法にしたがって測定した(www.kruss.de/en/products/contact-angle/easydrop.html)。
【0116】
脱イオン水をプローブ溶液として使用し、IMS,Inc.のVitro Skin(N−19)を基質として使用した。試験BAFSIの適用用量は2mg/sq.cmであった。これは、in vivoでの種々の皮膚研究で使用される生成物の局所適用用量に類似する。
【0117】
エラスターゼ阻害
エラスターゼは、多数のタンパク質(エラスチン(その構造骨組みを支持する皮膚内の弾性物質)が含まれる)を分解することができる酵素である。エラスターゼは、皮膚炎症、加齢、光老化、皺の形成などに関与する。エラスターゼ阻害活性を、Corning Incorporated(Corning,NY)の96ウェルマイクロタイタープレート(Corning 3641)およびBioTek Instruments,Inc.(Winooski,VT)のSynergy2マイクロプレートリーダーと共に使用するために適合させた動態学的比色分析によって決定した。基質切断における酵素活性を、410nm波長での吸光度の増加として測定した黄色の発生によって示した。ネガティブコントロールウェルについての平均最大吸光度増加率を100%酵素活性と見なし、IC50を酵素活性を50%まで減少させるのに必要なウェル中のサンプル濃度として計算した。IC50値が低いほどエラスターゼ阻害活性が高いことを示す。N−メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−pNA基質(EPC FH237)およびエラスターゼ(EPC SE563)を、EPC(Elastin Products Company,Inc.,Owensville,MO)から入手した。各ウェル中の反応体積は200μlであり、これは、エラスターゼ濃度0.87単位/mlに等しく、基質363μMに等しかった。この手順の出典は、Elastin Products Company, Inc. Research Biochemicals Catalogue (2004, 92 pages)の84ページの「基質としてN−MeO−Suc−Ala−Ala−Pro−Val−pNA(EPC No.FH237)を使用したアッセイ」というタイトルの方法であった。
【0118】
トリプシン阻害
トリプシンは、in vivoでの表皮の増殖および炎症に関与するタンパク質分解酵素である。トリプシン阻害活性を、96ウェルマイクロタイタープレート(マイクロプレート)およびコンピュータ制御のマイクロプレートリーダーと共に使用するためにデザインされた動態学的比色分析によって決定した。基質切断における酵素活性を、405nm波長での吸光度の増加として測定した黄色の発生によって示した。ネガティブコントロールウェルについての平均最大吸光度増加率を100%酵素活性と見なし、IC50を酵素活性を50%まで減少させるのに必要なウェル中のサンプル濃度として計算した。IC50値が低いほどトリプシン阻害活性が高いことを示す。L−BAPA(Nα−ベンゾイル−L−アルギニン4−ニトロアニリドヒドロクロリド)基質、トリプシン、および溶媒試薬をSigma−Aldrichから入手した。pH8.2のTris−CaCl緩衝液を、トリプシンおよびL−BAPA基質の希釈標準溶液の調製のために使用した。脱イオン水を、緩衝液試薬のための溶媒、ネガティブコントロール、およびサンプルの連続希釈物の調製のための希釈剤として使用した。各ウェル中の反応体積は200μlであり、これはトリプシン濃度60nMに等しく、基質0.5mMに等しかった。
【0119】
抗酸化活性
抗酸化剤は、酸化によって生じる損傷を軽減させる薬剤である。抗酸化活性を、BioTek Instruments Inc(Winooski,VT)のSynergy2マイクロプレートリーダーと共に使用するための(www.biotek.com/resources/docs/ORAC_Assay_Application_Note.pdf)で利用可能なBioTekの「Performing Oxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) Assays with Synergy HT Multi-Detection Microplate Reader」アプリケーションノートに記載の方法を適合させたORAC試験によって決定した。このアッセイでは、AAPH(2,2'−アゾビス2−アミノ−プロパン)は、蛍光プローブ(フルオレセインナトリウム)にダメージを与える活性酸素種を生成する。抗酸化剤、例えば(R)−トロロックスメチルエーテルなどはこのダメージを防止又は遅延させ、その影響を、蛍光測定によって定量化することができる。485nmに設定した励起波長および528nmに設定した放射波長、反応体積200μl、AAPH濃度55mM、フルオレセインナトリウム濃度1.33μM、および(R)−トロロックスメチルエーテル濃度(80μMと2μMとの間の範囲)を使用して蛍光を読み取った。フルオレセインナトリウム(Fluka 46960)、AAPH(Sigma 440914)、および(R)−トロロックスメチルエーテル(Fluka 93509)を、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。AUC(曲線下面積)値を、比率(測定時のウェルの蛍光読み取り値をウェルの第1の蛍光読み取り値で割る)の和として計算した。脱イオン水を使用したウェルの平均AUC値を(R)−トロロックスメチルエーテルを使用したウェルおよび被験物質を使用したウェルのAUCから引いて、抗酸化剤による蛍光の防止に対応するAUCを得た。検量線を、(R)−トロロックスメチルエーテル重量等価ORAC活性を示すウェルの抗酸化剤関連AUCの関数として作成した。次いで、被験物質のORAC活性を、1単位重量の(R)−トロロックスメチルエーテルによって得られる効果に等しい抗酸化剤の効果を達成するのに必要な単位重量の被験物質として計算した(数値が低いほどORAC活性が高い)。
【0120】
DPPH(2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル)フリーラジカル捕捉活性
フリーラジカル捕捉剤は、生物系においてフリーラジカルと反応し、フリーラジカル誘導性の損傷を軽減し、フリーラジカルの影響を防御する成分である。フリーラジカル捕捉活性(すなわち、DPPH(2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル)フリーラジカル捕捉活性)を、SUN−SRi(Rockwood,TN)のガラスコーティングしたポリプロピレン96ウェルマイクロタイタープレート(カタログ番号400 062)およびBioTek Instruments Inc(Winooski,VT)のSynergy2マイクロプレートリーダーとの使用に適合させた動態学的比色分析によって決定した。波長515nmでの吸光度を測定した。各マイクロプレートウェル中の反応体積は200μlであり、DPPHの初期濃度は114μMであった。L−アスコルビン酸をポジティブコントロールとして使用した。DPPH(Sigma D9132)およびUSP L−アスコルビン酸(Sigma A−2218)を、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。反応の化学量論を計算し、1単位重量のDPPHをクエンチするのに必要な単位重量の被験物質として示した(数値が低いほど活性が高い)。この方法を、LWT-Food Science and Technology, Volume 28, Issue 1, 1995, pp 25-30中に発表されたW. Brand-Williams et alの「Use of a free radical method to evaluate antioxidant activity」に記載の手順から適合させた。
【0121】
色(ガードナースケール)
ASTM D1544で規定されたガードナー色スケールは、淡黄色から茶褐色の範囲の色特性を有する光伝達サンプルの類別のための単数の色スケールである。このスケールは、最も明るい1から最も暗い18まで番号が付けられたガラススタンダードの色度によって定義される。サンプルのガードナー色を、Lovibond Gardner Comparator 3000(The Tintometer Limited of Salisbury,UK)(着色されたガラススタンダードとの直接比較によってサンプルのガードナー色を視覚的に決定するための3視野装置)で決定した。
【0122】
屈折率(nD)
屈折率を、Cole−Parmer(Vernon Hills,Illinois)のPolystatモデル12108−10温度調節器で温度調節したReichert Analytical Instruments(Depew,NY)のArias 500屈折計での測定によって決定した。手順は、Arias500屈折計の取扱い説明書の6.0、4.1、および4.4〜4.5項に基づく。
【0123】
pHの決定
pHを溶液中の水素イオン活性の常用対数の負数と定義し、溶液の酸性又は塩基性を決定するために使用する。
【0124】
pHレベルを、pH/ATC電極番号300729.1(Denver Instrument Company)を備えたDenver Instrument Company(Bohemia,NY)のpHメーターモデル250 pH/ISE/伝導率計で決定した。手順は、Denver Instrument Company 301127.1 Rev. D manual, pages ii and 9-12に基づく。
【0125】
UVスペクトルの最大吸収波長(λmax、nm)の決定
λmax(nm)を、水加熱セルホルダー(Amersham part # 80−2106−08)を備えたBiochrom Ltd(Cambridge,UK)(以前はGE Healthcare(以前はAmersham Biosciencesとして公知))のUltrospec 4300 pro UV/可視分光光度計で決定した。手順は、タイトル「SWIFT IIアプリケーションソフトウェアUV/可視分光光度計」のAmershamマニュアル番号80−2108−25の第2項および第4項およびタイトル「Ultrospec4300 pro UV/可視分光光度計ユーザーマニュアル」のAmershamマニュアル番号80−2111−79の7頁および15頁に基づく。SWIFT IIソフトウェアスイート(Biochrom Ltd)およびTorrey Pines Scientific(Carlsbad,CA)のCB20ミニサーキュレーターによる温度制御によって装置を制御した。
【0126】
タンパク質の決定
ケルダール法を使用して、タンパク質窒素含有量を測定した。
【0127】
微生物学的限度
微生物の含有量および限度:総プレート数、CFU/g;カビおよび酵母、CFU/g;E.コリ;サルモネラ属種(Salmonella sp.);スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)を、米国薬局方XXX、NF25、<61>、微生物制限試験(Microbiological Limit Test)にしたがって決定した。
【実施例】
【0128】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態の例示を意図するが、本発明の範囲の制限を決して意図しない。
【実施例1】
【0129】
本発明のBAFSIの調製過程
一般に、本発明の生物活性組成物の調製過程は、米国特許第7,442,391号明細書(本明細書中で参考として組み込まれる)に記載されている。特定の光合成生物(植物、水生植物、又は藻類)に依存して、この過程のレジメンをさらに修正することができる。光合成生物を、種々のストレスに供し、採取し、回収し、洗浄して新鮮なバイオマス(植物又は藻類)を得る。
【0130】
この新鮮なバイオマスを、粉砕、浸軟、および圧縮に供する。バイオマスを、3,000rpmで30秒間粉砕した。粉砕したバイオマスを、水平な連続スクリュープレス(コンパクトプレス「CP−6」、Vincent Corporation,FL)を使用して直ちに圧縮する。コーン上の圧縮を、24kg/cmレベル、スクリュー速度12rpm、および温度増加5℃以下で維持する。結果として、細胞液が細胞壁画分から有効に分離される。次いで、細胞液をナイロンメッシュで濾過して濾過植物細胞液を得る。
【0131】
新鮮なファイトマスの細胞壁画分および細胞内液への分離後、細胞液の分画によってコアBAFSI(膜画分およびセラム画分)を得る。
【0132】
濾過した細胞液をマイクロ波処理に暴露して細胞液を凝固させる。凝固した細胞液を冷却し、次いで、遠心分離又は超遠心分離に供して膜画分および細胞液上清を得る。
【0133】
BAFSI膜画分を使用して、BAFSI膜画分を含有するスキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケア用の組成物を調製する。
【0134】
「そのままの」細胞液上清を適切なBAFSIとも見なすことができ、生物活性成分として使用することができる。
【0135】
さらに、細胞液上清を使用して、BAFSIを含有するスキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケア用の組成物を調製することができる。
【0136】
海洋生物起源又は植物起源に依存して、細胞液上清を細胞セラムの改良にさらに供して安定且つ活性な化粧品成分を得ることができる。望ましくない沈殿の生成ならびに色および臭いの悪化を起こす不可逆的変換を担う主成分を細胞セラムから除去することによってこれを行う。これらの手順には、pH調整、等電沈殿、マイクロ波処理、熱処理、冷却、遠心分離、吸引濾過、および安定化が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
等電沈殿を使用して、細胞質画分および細胞セラム画分を含有する混合物を得る。次いで、細胞セラム画分をマイクロ波処理に供して凝固させる。細胞質画分から細胞セラム画分を分離するために、混合物を遠心分離に供する。植物供給源に応じて、マイクロ波処理の前に、細胞セラム画分のpHを調整することができる。凝固後、混合物を冷却し、その後に濾過又は遠心分離して細胞セラム濾液を得る。この手順を細胞質画分からの細胞セラムの分離を完了した直後に使用しなければならないことに留意されたい。細胞質画分の完全分離を評価するための定量的基準は、その後の濾液又は上清中に検出可能なレベルの高分子量のタンパク質が存在しないことである(例えば、リブロース二リン酸カルボキシラーゼの不在)。例として、沈殿した細胞液上清を冷却遠心器中にて3,000rpm又はそれ以上で20分又はそれ以上分離して、細胞セラム中に分子量10,000又はそれ以上のタンパク質が存在しないようにすることができる。
【0138】
次いで、細胞セラム濾液を、安定剤、防腐剤、キレート剤、および抗酸化剤を使用して安定化させて細胞セラム由来BAFSIを得る。
【0139】
本発明での使用に適切な防腐剤には、例えば、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メチルパラベンナトリウム、およびクエン酸が含まれる。適切な安定剤には、ペンチレングリコール、エチルヘキシルグリセリンが含まれるが、これらに限定されない。適切なキレート剤には、EDTAテトラナトリウム、EDTAジナトリウム、シュウ酸、クエン酸、酒石酸が含まれるが、これらに限定されない。本発明での使用に適切な抗酸化剤の例はメタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0140】
BAFSIを新鮮な植物の分画テクノロジーによって捕捉および単離し、これは、少なくとも1つのBAFSIおよび他の美容的に許容可能な成分および活性物質を含むスキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケア用の処方物および適用でのその使用に十分に適切である。
【0141】
本発明はまた、有用な物理化学的性質および生物学的活性(抗酸化活性およびフリーラジカル捕捉活性、皮膚炎症、皮膚の老化および環境的損傷に関連する酵素の阻害、皮膚の保護、ならびにヒト組織の修復が含まれるが、これらに限定されない)の最適な組み合わせを示すBAFSI含有スキンケア、サンケア、ヘアケア、およびパーソナルケア用組成物の調製方法に関する。
【0142】
安定化したBAFSIは、化粧品成分の全要件を完全に満たす性質を示す。安定性研究は、これらの方法によって細胞セラムから生成された化粧品成分が室温で12〜24ヶ月安定である(すなわち、化粧品成分が物理化学的な完全性および活性を維持する)ことを示す。
【実施例2】
【0143】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)からのBAFSIセラム画分の調製
長さが15cm〜60cmのサイズ範囲のマクロシスティス・ピリフェラの出発材料(start)を、南カルフォルニア海洋底から採取した。出発材料を、回収直後に大洋水を含むバッグあたり6〜7つの出発材料で袋づめにし、ゲルアイスパックを含むクーラー中に包装し、翌日配達便にてニューヨーク州オシニングの研究所に輸送した。ケルプを、配達から30分以内に水槽に入れ、循環水槽中で馴化させた。
【0144】
4つの同一の150リットル水槽を、各輸送前にケルプの天然環境における海洋条件を再現するように調製した。35(35)グラム/リットルのCoralife化学グレード人工海塩を脱イオン水と混合し、水槽中で循環させた。25ミリリットルのパートAおよびパートBのプロリンF/2藻類飼料を各水槽に添加した。
【0145】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)を使用したコントロールおよびストレスを与えた系のために使用した培養パラメーターの範囲は以下であった:コントロール(ストレスなし):深水中での元の培養条件から採取し、処理したジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)。静水圧ストレスのみが全ての各培養期間で継続されていた。培養期間は72時間(3日間)又は96時間(4日間)であった。静水ストレスは、典型的に深水(10ft以下)中で成長する藻類、例えば、ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)を移動させ、次いで、元の培養条件下に存在する静水圧と比較して静水圧が減少したより浅いリザーバ(水槽)で培養した場合に起こる。静水ストレス+UVBストレス=2mW/cmUVB 3〜12時間/日;静水ストレス+オゾンストレス=100mg/hr連続注入;静水ストレス+浸透圧ストレス−培養培地の重量オスモル濃度=コントロールの75%。
【0146】
培養装置および制御システムの構成要素ならびに水槽中で使用した培養パラメーターの範囲の説明を、それぞれ表1および表2に記載する。
【0147】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)のバイオマスサンプルを配達時に採取し、以下の特定の培養期間で培養水槽から取り出した:72時間(3日間)、96時間(4日間)。固着器官の切り出しおよび除去後、この巨大藻類(macroalgae)の以下のパーツ:葉、気胞、および茎を回収し、リンスし、ステンレスナイフおよびグラビティリッド(gravity lid)を備えたGrindomix GM 200ナイフミル(Retsch、Germany)の容器に入れ、3000RPMで30秒間粉砕した。
【0148】
次いで、粉砕したバイオマスを、水平な連続スクリュープレス(コンパクトプレス「CP−6」、Vincent Corporation,FL)を使用して直ちに圧縮した。コーン上の圧縮を24kg/cmレベルで維持し、スクリュー速度は12rpmであり、温度増加は5℃以下であった。結果として、細胞壁画分が細胞液から有効に分離され、これをさらなる分画のために使用した。
【0149】
細胞液の初期pHは6.50〜7.30であった。このpHを約pH4.0に調整し、約194F(90℃)で約30秒間のマイクロ波処理に供し、約30℃に冷却し、冷却遠心機中にて4,000g又はそれ以上で45分間又はそれ以上遠心分離して分離した。
【0150】
以下の防腐剤および安定剤の組成を使用した:ソルビン酸カリウム0.1%、安息香酸ナトリウム0.1%、メタ重亜硫酸ナトリウム0.1%、EDTAテトラナトリウム(Dissolvine 220S)0.1%、およびペンチレングリコール(Hydrolite 5)1.9%。
【実施例3】
【0151】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来のBAFSIセラム画分の生成物仕様
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来のBAFSIを、上の実施例2に記載の過程にしたがって調製した。
【0152】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来のBAFSIの分析を行い、表3に示したその物理化学的特徴および微生物の特徴を決定した。
【表3】

【0153】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来のBAFSIセラム画分は、実質的にタンパク質を含まず(ケルダール法によって0.027%未満と決定された)、光から保護した密閉コンテナ中にて15℃と25℃との間で保存した場合に少なくとも12〜18ヶ月安定していた(すなわち、物理学的および化学的な完全性が維持された)と決定された。ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来のBAFSIは生分解性生成物である。
【実施例4】
【0154】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来のBAFSIセラム画分の性質に及ぼすストレス因子の調整効果
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来のBAFSIを分析して、その物理化学的性質(表面張力;表面改質性;乾燥物質;重量オスモル濃度)および生物学的活性(酵素阻害、抗酸化剤、およびフリーラジカル捕捉アッセイを使用)に及ぼす種々のストレス因子の影響を決定した。結果を図3〜10に示し、表4にまとめている。
【表4】

【0155】
乾燥物質の変化(例えば、減少)によって証明されるように、ストレスは、ケルプ由来のBAFSIの各物理化学的性質(表面張力;表面改質性;乾燥物質;重量オスモル濃度)に調整効果を及ぼす。さらに、浸透圧ストレスにより、乾燥物質含有量が最低になる。これを、より低い浸透圧に対処する機構によって説明することができる(図3)。
【0156】
重量オスモル濃度は、乾燥物質と幾らか類似のパターンを示す(図4)。
【0157】
しかし、同量の乾燥物質含有量によって得られた粒子数と比較した場合、相違は、特に浸透圧ストレスを与えたケルプについてより明らかである。
【0158】
ケルプの細胞成分はより多数の粒子に結合して相対重量オスモル濃度がさらに減少しているか、比較的小さな粒子、例えば分子などおよびより低分子量のイオンが細胞から輸送され得た(図5)。
【0159】
表面張力は溶質の濃度および性質に依存し、適用したストレス因子に応じて変化し、同時に、ストレス因子に起因する組成の変化の評価に役立つ(図6)。
【0160】
ストレスは、得られたセラム画分の表面改質能を変化させることができる。例えば、静水ストレスを一定のUVBストレスと組み合わせた場合、より低い接触角を得ることができるBAFSIセラム画分を生成することができる。したがって、これらを使用して製造したスキンケア製品は、皮膚感触および保湿性が改良され得た(図7)。
【0161】
DPPHアッセイによって測定されたフリーラジカルクエンチング測定値は、全てのストレスによって能力が低下し、UVBストレスと組み合わせた静水ストレスの場合に劇的に低下することを示す。1つの可能性のある理由は、所与のUVB暴露強度および全持続時間で利用可能な得られたフリーラジカルクエンチング因子の多くが枯渇したということである(図8)。
【0162】
適用した全ストレス(静水ストレスのみ、ならびに浸透圧ストレス、オゾンストレス、およびUVストレスとの組み合わせ)はエラスターゼ阻害活性を改善し、いくつかは非常に有意である(図9)。
【0163】
ストレスは、より特異的な活性の変化、例えば一定のUVBストレスと組み合わせた静水ストレスの場合のトリプシン阻害活性の増加および他のストレス因子下でのこの活性の減少などを誘導することができる(図10)。
【0164】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来の選択されたBAFSIのエラスターゼ阻害活性およびトリプシン阻害活性の増加は、その抗炎症性およびアンチエイジング性の改善を示す。
【実施例5】
【0165】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来のBAFSIセラム画分によるエラスターゼ阻害とアルギン酸塩によるエラスターゼ阻害との比較
アルギン酸塩はエラスターゼ活性を減少させることができることが公知であり、種々の適用、例えば抗炎症性が望ましい場合の創傷被覆剤など(Influence of alginate and alginate containing silver on elastase and ROS activity in vitro, C. Wiegand et al, Annual Congress 2006 of the ETRS 13. 09. -16. 09. 2006, Pisa/Italy)で使用されている。
【0166】
ケルプの葉の乾燥物質は、17重量%〜25重量%のアルギン酸塩を含有する(Monthly Determination of Alginate, M/G Ratio, Mannitol, and Minerals in Cultivated Laminaria japonica, Masura Honya et al, Nippon Suisan Gakkaishi, 59 (2), pp 295-299, 1993)。
【0167】
ケルプBAFSIのエラスターゼ阻害活性に対するアルギン酸塩の寄与をチェックするために、アルギン酸ナトリウムのサンプル(褐藻由来のアルギン酸ナトリウム塩、A2158)をSigma−Aldrich(St.Louis、MO)から入手した。アルギン酸ナトリウムの脱イオン水溶液(0.2% w/w)を、撹拌および超音波処理によって調製した。前に定義したエラスターゼ阻害の決定方法に従って、この溶液の一連の希釈物を2つの異なるケルプBAFSIセラム画分の一連の希釈物と並行して試験した。
【0168】
アルギン酸ナトリウムのエラスターゼIC50は、0.0075mg/mlと決定された。同一の試験では、ケルプBAFSI乾燥物質のIC50は、一方のセラム画分については0.0012mg/mlであり、他方のセラム画分については0.0009mg/mlと決定された。これはまた、図9中のケルプBAFSIエラスターゼのIC50について示した値と十分に対応する。
【0169】
証明された相違は、ケルプBAFSIセラム画分の乾燥物質が100%アルギン酸塩から構成されるという起こり得ない仮説を用いても有意である。上記のより可能性の高いアルギン酸塩レベルを考慮する場合、相違は劇的である。
【0170】
したがって、ケルプBAFSIセラム画分の乾燥物質のエラスターゼ阻害活性は、純粋なアルギン酸ナトリウムよりも高く、このことは、エラスターゼ阻害においてアルギン酸塩より強力な他の成分の寄与によって説明することができる。
【実施例6】
【0171】
ジャイアントブラウンケルプ(マクロシスティス・ピリフェラ)由来の選択されたBAFSIセラム画分のエラスターゼ阻害活性の熱安定性
選択されたケルプBAFSIセラム画分のエラスターゼ阻害活性の熱安定性を、同一のセラム画分から3つの同一アリコートを取り出し、これらを同一の容器中にて異なる温度で6日間保存し、上記方法にしたがってそのエラスターゼ阻害活性を決定することによって試験した。
【0172】
4℃で保存したサンプルのエラスターゼIC50は0.0012mg/mlであり、60℃で保存したサンプルのIC50は0.0012mg/mlであり、80℃で保存したサンプルのIC50は0.0011mg/mlであった。
【0173】
したがって、ケルプBAFSIセラム画分のエラスターゼ阻害活性は、熱安定性研究および促進老化研究で典型的に使用される高温への暴露後に安定なままであり得る。
【実施例7】
【0174】
緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSIセラム画分の調製
緑藻(ケトモルファ・リヌム)は、ジャイアントケルプと比較した場合、成長速度の速さ、比較的高温での生存能力が公知であり、より高いレベルの光合成活性が証明されている。
【0175】
緑藻を水産養殖した(Live Aquaria.com Aquaculture Coral & Marine Life Facility,CA.)。これを採取し、袋づめにし、翌日配達便にてニューヨーク州オシニングの研究所に輸送した。緑藻を輸送バッグから取り出した。バイオマスの一部を採取し、0日目のコントロールサンプル用に処理した。配達30分以内に残りの緑藻を等分し、全て水温が約25.0℃の4つの水槽に入れた。
【0176】
緑藻(ケトモルファ・リヌム)を使用したコントロールおよびストレスを与えた系のために使用した培養パラメーターの範囲は以下であった:コントロール;UVBストレス=2mW/cmUVB 12時間/日;オゾンストレス=100mg/hr連続注入;浸透圧ストレス−培養培地の重量オスモル濃度=コントロールの85%;培養期間:24時間(1日間)、96時間(4日間)、288時間(12日間)、456時間(19日間)。
【0177】
培養装置および制御システムの構成要素ならびに水槽中で使用した培養パラメーターの範囲の説明を、それぞれ表1および表2に記載する。
【0178】
緑藻(ケトモルファ・リヌム)のバイオマスサンプルを、以下の特定の培養期間:0時間、24時間(1日間)、96時間(4日間)、288時間(12日間)、456時間(19日間)で培養水槽から取り出し、リンスし、ステンレスナイフおよびグラビティリッドを備えたGrindomix GM 200ナイフミル(Retsch、Germany)の容器に入れた。緑藻を3000rpmで30秒間粉砕した。
【0179】
次いで、粉砕したバイオマスを、水平な連続スクリュープレス(コンパクトプレス「CP−6」、Vincent Corporation,FL)を使用して直ちに圧縮した。コーン上の圧縮を24kg/cmレベルで維持し、スクリュー速度は12rpmであり、温度増加は5℃以下であった。結果として、細胞壁画分が細胞液から有効に分離され、これをさらなる分画のために使用した。
【0180】
細胞液の初期pHは6.30から7.90まで変化した。
【0181】
このpHを約pH4.0に調整し、約194F(90℃)で約30秒間のマイクロ波処理に供し、約30℃に冷却し、冷却遠心機中にて4,000g又はそれ以上で45分間又はそれ以上遠心分離して分離した。
【0182】
以下の防腐剤および安定剤の組成を使用した:ソルビン酸カリウム0.1%、安息香酸ナトリウム0.1%、メタ重亜硫酸ナトリウム0.1%、EDTAテトラナトリウム(Dissolvine 220S)0.1%、およびペンチレングリコール(Hydrolite 5)1.9%。
【実施例8】
【0183】
緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSIセラム画分の生成物仕様
緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSIを、上の実施例7に記載の過程にしたがって調製した。緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSIの分析を行い、その物理化学的特徴および微生物の特徴を決定した。
【0184】
表5は、緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSI(セラム画分)の物理的、化学的および感覚刺激的な特徴をまとめている。
【表5】

【0185】
緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSIは、光から保護した密閉コンテナ中にて15℃と25℃との間で保存した場合に少なくとも12〜18ヶ月安定していた(すなわち、物理学的および化学的な完全性が維持された)と決定された。緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSIは生分解性生成物である。
【実施例9】
【0186】
緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSIセラム画分の性質に及ぼすストレス因子の調整効果
緑藻(ケトモルファ・リヌム)由来のBAFSIを分析して、その物理化学的性質(表面張力;乾燥物質;重量オスモル濃度)および生物学的活性(酵素阻害および抗酸化剤アッセイを使用)に及ぼす種々のストレス因子の影響を決定した。コントロールとの相対的相違を、図11〜16に示し、表6にまとめている。
【表6】

【0187】
巨大藻類(ケルプ)と同様に、ストレスは緑藻の生産性(乾燥物質レベル)も調整する。同日に採取したコントロールサンプルとの相違の百分率として示した被験物質の乾燥物質含有量の変化は、浸透圧ストレスを与えたケトモルファ・リヌムについて特に劇的である(図11)。
【0188】
ケルプと同様に、ケトモルファ・リヌム由来のBAFSIセラム画分の重量オスモル濃度は、乾燥物質含有量と類似のパターンに従う(図12)。ケルプと異なり、緑藻乾燥物質由来の所与の重量のBAFSIセラム画分によって得られた粒子の数は、UVB−ストレスを与えた緑藻を除いてあまり変化しない。これは、緑藻(ケトモルファ・リヌム)の巨大藻類(マクロシスティス・ピリフェラ)とのストレス適応機構の相違を示し得る(図13)。
【0189】
特にUVBおよびオゾン−ストレスを与えたケトモルファ・リヌムについて、その性質と無関係の短期間のストレスにより、セラム画分がエラスターゼを阻害する能力が増大する(図14)。
【0190】
ストレスは、ケトモルファ・リヌム由来の全BAFSIセラム画分の表面張力を調整する。持続時間がより長くなると有意に逸脱する(図15)。
【0191】
UVBストレスは、ケトモルファ・リヌム由来のBAFSIセラム画分の酸素ラジカル吸収能を増加させる(図16)。
【実施例10】
【0192】
スキンローション
【表7A】

【表7B】

【0193】
製造法の説明:パートAおよびパートB(アンフィソールK(Amphisol K)なし)を80℃に加熱し、次いで、アンフィソールKをパートBに添加し、数分間ゆっくり撹拌する。パートAをパートBに添加し、十分に混合する。パートCを添加する。連続的撹拌下でおよそ60℃まで冷却し、パートDを添加する。その後に40℃未満でパートFを添加する。あるいは、BAFSIを、乳濁液の形成後に系に添加することができる。任意選択的な遮光有効成分。**BAFSIの添加によって処方物のアンチエイジング性および他の機能的な性質が改善される。
【実施例11】
【0194】
日光阻止用ゲル(Sun protective gel)
【表8A】

【表8B】



【0195】
製造法の説明:パートBの成分を混合し、キサンタンガムを分散させる。パートAを加熱し、均一になるまで混合する。室温まで冷却する。十分に撹拌しながらパートAをパートBに組み込む。パートCでpH6〜6.5に中和する。最後にパートDの成分を列挙した順序で添加する。あるいは、BAFSIを、ゲルが形成された後に系に添加することができる。**BAFSIの添加によって処方物のアンチエイジング性および他の機能的な性質が改善される。
【実施例12】
【0196】
保湿ローション
【表9A】

【表9B】



【0197】
製造法の説明:パートAおよびパートBを80℃に加熱する。BをおよそpH6に調整し、次いで、撹拌速度を速くしてAをBに添加する。撹拌しながら冷却し、pH7に調整する。撹拌しながらパートDを添加する。およそ50℃まで再度均質化する。40℃未満でパートEの成分を列挙した順序で添加する。最終pHをおよそ7.0に調整する。あるいは、BAFSIを、形成後に系に添加することができる。**BAFSIの添加によって処方物のアンチエイジング性および他の機能的な性質が改善される。
【実施例13】
【0198】
日焼け止めローション
【表10A】

【表10B】

【0199】
製造法の説明:パートAおよびパートBを両方が均一になるまで混合しながら75℃に加熱する。パートA(75℃)をパートB(75℃)に添加し、均質化する。60℃で、パートCを添加し、均一になるまで混合する。パートDを添加し、均質化する。室温まで冷却し、パートEを添加し、均一になるまで混合する。約pH6.0に調整する。あるいは、BAFSIを、形成後に系に添加することができる。**BAFSIの添加によって処方物のアンチエイジング性および他の機能的な性質が改善される。
【実施例14】
【0200】
顔用ゲルローション(Facial Gel Lotion)
【表11】

【0201】
製造法の説明:撹拌しながらパートAをパートBに添加する。短時間均質化する。撹拌しながらパートCを添加する。均一になった時にパートDの成分を列挙した順序で添加する。あるいは、BAFSIを形成後に系に添加することができる。**BAFSIの添加によって処方物のアンチエイジング性および他の機能的な性質が改善される。
【実施例15】
【0202】
顔用トーニングローション(Facial Toning Lotion)
【表12】

【0203】
製造法の説明:相Aおよび相Bを個別に合わせ、共に80℃に加熱する。高剪断で5分間相Bを相Bに添加する。中速から低速度で撹拌しながら15〜30分間混合する。40℃に冷却し、相Cを添加する。必要に応じて、pH5.8〜6.3に調整し、防腐剤(相D)を添加する。あるいは、BAFSIを形成後に系に添加することができる。**BAFSIの添加によって処方物のアンチエイジング性および他の機能的な性質が改善される。
【実施例16】
【0204】
アンチエイジングセラム
【表13】

【0205】
製造法の説明:十分に撹拌しながら相Aを一つずつ合わせる。中速から低速度で撹拌しながら15〜30分間混合する。必要に応じて、標的領域に応じた標的レベル(顔(pH 4.0〜6.9)又は目の周りの領域(6.7〜7.3))にpHを調整し、相B由来の防腐剤を添加する。**BAFSIの添加により、処方物のアンチエイジング性および他の機能的性質が得られる。
【0206】
上記の実施例10〜16は、本発明の最終処方物の限定されない例である。実施例を例示のみのために提供し、本発明の精神および範囲を逸脱することなく多数のその変形形態が可能であるので、本発明が制限されると解釈すべきではなく、この変形形態は当業者に認識されるであろう。実施例では、特別の定めのない限り全濃度を重量%として列挙しており、微量材料、例えば希釈剤および充填剤などを排除することができる。したがって、列挙した処方物は、列挙した成分およびこのような成分に関連する任意の微量材料を含む。当業者に明らかなように、これらの微量材料の選択は、本明細書中に記載の本発明を作製するために選択された特定の成分の物理的および化学的な特徴に応じて変化するであろう。
【0207】
本発明はその特定の実施形態を参照して記載しているが、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく種々の変更形態を得ることができ、等価物を代わりに使用することができることが当業者に理解されるはずである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、過程、工程段階を本発明の客観的な精神および範囲に適合させるための多数の修正形態を得ることができる。全てのこのような修正形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【0208】
本明細書中の文献の引用は、このような文献が本発明の先行技術であると承認していると解釈されないものとする。本明細書中に引用した全ての文献は、その全体が本明細書中で参考として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化した生物活性画分の単離で用いるストレス誘導性光合成生物の産生方法であって、前記方法は、
光合成生物を準備する工程、および
ストレス誘導性光合成生物からの変化した生物活性画分の単離での使用に適切なストレス誘導性光合成生物を産生するのに有効なストレス誘導性培養条件下で前記光合成生物を培養する工程
を含み、
前記ストレス誘導性培養条件が、光合成生物をストレス因子又は複数のストレス因子に供することを含み、
前記ストレス因子又は複数のストレス因子には、紫外線、オゾン、浸透圧、静水圧、およびその組み合わせからなる群から選択されるストレス因子が含まれるが、これらに限定されず、
前記ストレス因子又は複数のストレス因子が、非ストレス誘導性光合成生物から単離された対応する生物活性画分と比較してストレス誘導性光合成生物から単離した少なくとも1つの生物活性画分の少なくとも1つの特徴を変化させるのに有効である、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの特徴には、物理化学的性質、表面改質性、加湿性、抗炎症活性、およびアンチエイジング活性からなる群から選択される特徴が含まれるがこれらに限定されず、
前記物理化学的性質には、表面張力、乾燥物質含有量、および重量オスモル濃度からなる群から選択される性質が含まれるが、これらに限定されず、
前記抗炎症活性および/又はアンチエイジング活性には、エラスターゼ阻害、トリプシン阻害、抗酸化活性、およびフリーラジカル捕捉活性からなる群から選択される活性が含まれるが、これらに限定されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物活性画分が、細胞セラム画分、膜画分、細胞液上清画分、および細胞セラム濾過画分からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光合成生物が、水生光合成生物および陸生非水生光合成生物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水生光合成生物には、褐藻類および緑藻類からなる群から選択されるクラスの水生光合成生物が含まれるが、これらに限定されない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水生光合成生物には、マクロシスティス属種(Macrocystis spp.)およびケトモルファ属種(Chaetomorpha spp.)からなる群から選択される水生光合成生物が含まれるが、これらに限定されない、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記マクロシスティス属種(Macrocystis spp.)には、マクロシスティス・アングスティフォリア(Macrocystis angustifolia)、マクロシスティス・インテグリフォリア(Macrocystis integrifolia)、マクロシスティス・レビス(Macrocystis laevis)およびマクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)からなる群から選択されるマクロシスティス属種(Macrocystis spp.)が含まれるが、これらに限定されない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ケトモルファ属種には、ケトモルファ・アエレア(Chaetomorpha aerea)、ケトモルファ・アンテニナ(Chaetomorpha antennina)、ケトモルファ・バシレトルサ(Chaetomorpha basiretorsa)、ケトモルファ・ブラキゴナ(Chaetomorpha brachygona)、ケトモルファ・カリフォルニカ(Chaetomorpha californica)、ケトモルファ・カンナビナ(Chaetomorpha cannabina)、ケトモルファ・クラッサ(Chaetomorpha crassa)、ケトモルファ・グラシリス(Chaetomorpha gracilis)、ケトモルファ・リヌム(Chaetomorpha linum)、ケトモルファ・メラゴニウム(Chaetomorpha melagonium)、ケトモルファ・ナタレンシス(Chaetomorpha natalensis)およびケトモルファ・スピラリス(Chaetomorpha spiralis)からなる群から選択されるケトモルファ属種が含まれるが、これらに限定されない、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1の方法に従って産生されたストレス誘導性光合成生物。
【請求項10】
ストレス誘導性光合成生物から変化した生物活性画分を単離する方法であって、前記方法が、
請求項1の方法に従って産生されたストレス誘導性光合成生物を準備する工程、
前記ストレス誘導性光合成生物を細胞液および細胞壁成分に分離する工程、
前記細胞液を生物活性画分を得るのに有効な条件下で処置する工程であって、前記生物活性画分が、細胞セラム画分、膜画分、細胞液上清画分、および細胞セラム濾過画分からなる群から選択される、処置する工程、および
前記生物活性画分を前記処置した細胞液から単離する工程であって、前記単離した生物活性画分が、非ストレス誘導性光合成生物から単離した対応する生物活性画分と比較して少なくとも1つの変化した特徴を有する、単離する工程
を含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの特徴には、物理化学的性質、表面改質性、加湿性、抗炎症活性、およびアンチエイジング活性からなる群から選択される特徴が含まれるが、これらに限定されず、
前記物理化学的性質には、表面張力、乾燥物質含有量、および重量オスモル濃度からなる群から選択される特徴が含まれるが、これらに限定されず、
前記抗炎症活性および/又はアンチエイジング活性には、エラスターゼ阻害、トリプシン阻害、抗酸化活性、およびフリーラジカル捕捉活性からなる群から選択される活性が含まれるが、これらに限定されない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法に従って単離された変化した生物活性画分。
【請求項13】
ストレス誘導性光合成生物由来の単離された生物活性画分を含む生物活性組成物であって、
前記生物活性画分が、細胞セラム画分、膜画分、細胞液上清画分、および細胞セラム濾過画分からなる群から選択される、生物活性組成物。
【請求項14】
前記生物活性画分が、タンパク質が含まれるが、これに限定されない望ましくない成分を実質的に含まない、請求項13に記載の生物活性組成物。
【請求項15】
前記光合成生物が、水生光合成生物および陸生非水生光合成生物からなる群から選択される、請求項13に記載の生物活性組成物。
【請求項16】
前記水生光合成生物には、褐藻類および緑藻類からなる群から選択されるクラスの水生光合成生物が含まれるが、これらに限定されない、請求項13に記載の生物活性組成物。
【請求項17】
前記水生光合成生物には、マクロシスティス属種(Macrocystis spp.)およびケトモルファ属種からなる群から選択される水生光合成生物が含まれるが、これらに限定されない、請求項16に記載の生物活性組成物。
【請求項18】
前記マクロシスティス属種(Macrocystis spp.)には、マクロシスティス・アングスティフォリア、マクロシスティス・インテグリフォリア(Macrocystis integrifolia)、マクロシスティス・レビス(Macrocystis laevis)およびマクロシスティス・ピリフェラからなる群から選択されるマクロシスティス属種(Macrocystis spp.)が含まれるが、これらに限定されない、請求項17に記載の生物活性組成物。
【請求項19】
前記ケトモルファ属種には、ケトモルファ・アエレア、ケトモルファ・アンテニナ、ケトモルファ・バシレトルサ、ケトモルファ・ブラキゴナ、ケトモルファ・カリフォルニカ、ケトモルファ・カンナビナ、ケトモルファ・クラッサ、ケトモルファ・グラシリス、ケトモルファ・リヌム、ケトモルファ・メラゴニウム、ケトモルファ・ナタレンシスおよびケトモルファ・スピラリスからなる群から選択されるケトモルファ属種が含まれるが、これらに限定されない、請求項17に記載の生物活性組成物。
【請求項20】
単離前に前記ストレス誘導性光合成生物を、非ストレス誘導性光合成生物から単離した対応する生物活性画分と比較して単離した生物活性画分の少なくとも1つの特徴を変化させるのに有効な条件下で、ストレス因子又は複数のストレス因子に供し、
前記少なくとも1つの特徴には、物理化学的性質、表面改質性、加湿性、抗炎症活性、およびアンチエイジング活性からなる群から選択される特徴が含まれるがこれらに限定されず、
前記物理化学的性質には、表面張力、乾燥物質含有量、および重量オスモル濃度からなる群から選択される性質が含まれるが、これらに限定されず、
前記抗炎症活性および/又はアンチエイジング活性には、エラスターゼ阻害、トリプシン阻害、抗酸化活性、およびフリーラジカル捕捉活性からなる群から選択される活性が含まれるが、これらに限定されず、
前記ストレス因子又は複数のストレス因子には、紫外線、オゾン、浸透圧、静水圧、およびその組み合わせからなる群から選択されるストレス因子が含まれるが、これらに限定されない、請求項13に記載の生物活性組成物。
【請求項21】
安定剤をさらに含む、請求項13に記載の生物活性組成物。
【請求項22】
前記安定剤が、乳化剤、防腐剤、抗酸化剤、ポリマーマトリックス、およびその混合物からなる群から選択される、請求項21に記載の生物活性組成物。
【請求項23】
哺乳動物への局所適用に適切な生物活性局所処方物であって、前記生物活性局所処方物は、
局所的有効量の請求項13に記載の生物活性組成物および
局所的に許容可能なキャリア
を含む、生物活性局所処方物。
【請求項24】
前記局所的に許容可能なキャリアが、親水性クリーム基剤、親水性ローション基剤、親水性界面活性剤基剤、親水性ゲル基剤、親水性溶液基剤、疎水性クリーム基剤、疎水性ローション基剤、疎水性界面活性剤基剤、疎水性ゲル基剤、および疎水性溶液基剤からなる群から選択される、請求項23に記載の生物活性局所処方物。
【請求項25】
前記生物活性組成物が、前記生物活性局所処方物の総重量の約0.01%と約98.0%との間の範囲の量で存在する、請求項23に記載の生物活性局所処方物。
【請求項26】
前記生物活性局所処方物が、スキンケアでの適用、サンケアでの適用、ヘアケアでの適用、およびパーソナルケアでの適用からなる群から選択される適用に適切である、請求項23に記載の生物活性局所処方物。
【請求項27】
前記生物活性局所処方物が、スキンローション、乳化剤非含有の日光阻止用ゲル、保湿ローション、日焼け止めローション、顔用ゲルローション、顔用トーニングローション、およびアンチエイジングローションからなる群から選択されるローションとしての使用に適切である、請求項23に記載の生物活性局所処方物。
【請求項28】
哺乳動物の皮膚組織における炎症活性を阻害する方法であって、前記方法が、
請求項13に記載の生物活性組成物を準備する工程、および
前記生物活性組成物を前記皮膚組織における炎症活性を阻害するのに有効な量で前記皮膚組織に適用する工程
を含む、方法。
【請求項29】
紫外線誘導性損傷から哺乳動物の皮膚組織を保護する方法であって、前記方法が、
請求項13に記載の生物活性組成物を準備する工程、および
前記生物活性組成物を、前記皮膚組織の紫外線誘導性損傷を軽減し、前記皮膚組織の酸化的損傷を防止するのに有効な量で前記皮膚組織に適用する工程
を含む、方法。
【請求項30】
哺乳動物の皮膚組織における皮膚障害を正常化する方法であって、前記方法が、
請求項13に記載の生物活性組成物を準備する工程、および
前記生物活性組成物を前記皮膚組織における細胞障害を正常化するのに有効な量で前記皮膚細胞に適用する工程を含む、方法。
【請求項31】
ストレス誘導性光合成生物の培養系であって、前記系が、
光合成生物を培養するためのバイオリアクター、および
前記バイオリアクター中の培養条件を制御するための培養制御システム
を含み、
前記培養制御システムが、ストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせが前記バイオリアクターに導入されるように構成され、前記バイオリアクター中のストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせの強度、持続時間、および/又は濃度を調整するように構成されており、
前記ストレス因子又は2つ又はそれ以上のストレス因子の組み合わせには、紫外線、オゾン、浸透圧、静水圧、およびその組み合わせからなる群から選択されるストレス因子が含まれるが、これらに限定されない、培養系。
【請求項32】
前記光合成生物が水生光合成生物であり、前記バイオリアクターが液体培地中で水生光合成生物を培養するように構成されている、請求項31に記載の系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−510583(P2013−510583A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539014(P2012−539014)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/056520
【国際公開番号】WO2011/060252
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(312013619)アクゾ ノーベル サーフィス ケミストリー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】