説明

ストレス軽減剤

【課題】効果が確実で、かつ効果が持続するストレス軽減剤を提供しようとする。
【解決手段】生茶葉から抽出した抽出液10重量部と、該液に加えて青葉アルコール1〜100重量部とを含むストレス軽減剤である。前記青葉アルコールはペパーミントから抽出された3−ヘキセノール(Z)を含み得る。また、前記ストレス軽減剤とシクロデキストリンとを混合して乾燥するストレス軽減用剤の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉成分によるストレスの解消に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人は、ありとあらゆる所でさまざまなストレスにさらされている。ストレスが続くと心理的な緊張不安から眠れなくなることがあり、こうした一時的な心理学的不眠がきっかけで不眠恐怖症に陥り、眠ろうと意識すればするほど眠れなくなるという精神医学的不眠を引き起こしてしまうことがある。現代人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えているとの調査もあり、ストレスはさまざまな生活習慣病の原因の一つともなっている。
【0003】
こうした背景の下、ストレス解消のための工夫がいろいろされている。香りを利用した精神のリラクゼーションはその代表的なものであり、エッセンシャルオイルによるアロマテラピーは一般的になりつつある(例えば、特許文献1[0002]参照)。
【0004】
香り剤としては、ラベンダー、オレンジ、カモミルなどが一般的であり、緑葉中に含まれる緑の香りとも呼ばれる青葉アルデヒド(trans−2−hexenal:以下ヘキセナールと称する)や青葉アルコール(cis―3−hexenol:以下ヘキセノールと称する)も効果があるとされている((例えば、特許文献2[0003][0006])、非特許文献1参照)。
【0005】
また、茶葉から抽出された成分がリラクゼーション効果を有することが本願発明者により開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし茶葉から抽出された成分には幾多の成分が混在していて得られるリラクゼーション効果がなんらかの成分によりマスクされるせいか、人によっては効果がものたりないと感ずる場合があった。
【0006】
一方、青葉アルデヒド(trans−2−hexenal)や青葉アルコール(cis―3−hexenol)を単独で使用した場合は、初期の効果は顕著であるが、効果の深みや効果の持続性にものたりなさを感ずる場合があった。
【特許文献1】特開2004−244756号公報
【特許文献2】特開2005−299066号公報
【特許文献3】特開2007−176857号公報
【非特許文献1】http://kaihatu.okomari.net/midori−no−kaori/
【非特許文献2】Physiology&Behavior80(2004)481−488
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、効果が確実で、かつ効果が持続するストレス軽減剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨とするところは、生茶葉を混合した水を、該水が沸騰する温度未満の温度で加熱して発生する気体を冷却して得られる抽出液(A)、
生茶葉を、該生茶葉に含まれる水が沸騰する温度未満の温度で加熱して発生する気体を冷却して得られる抽出液(B)、
抽出液(A)と抽出液(B)とが混合された混合抽出液、
から選択された液10重量部と、該液に加えて青葉アルコール1〜100重量部とを含むストレス軽減剤であることにある。
【0009】
前記青葉アルコールは3−ヘキセノール(Z)を含み得る。
【0010】
前記3−ヘキセノール(Z)はペパーミントから抽出されたものであり得る。
【0011】
また、本発明の要旨とするところは、前記ストレス軽減剤を担体に担持させてなるストレス軽減用剤であることにある。
【0012】
さらに、本発明の要旨とするところは、前記ストレス軽減剤を準備する工程と、
該ストレス軽減剤とシクロデキストリンとを混合して混合物を得る工程と、
該混合物を乾燥する工程と
を含むストレス軽減用剤の製造方法であることにある。
【0013】
またさらに、本発明の要旨とするところは、前記ストレス軽減剤を準備する工程と、
該ストレス軽減剤と水とを混合して混合液を得る工程と、
該混合液とシクロデキストリンとを混合して混合物を得る工程と、
該混合物を乾燥する工程と
を含むストレス軽減用剤の製造方法であることにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、効果が確実で、かつ効果が持続するストレス軽減剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のストレス軽減剤は、生茶葉から抽出して得られる抽出液に、植物の青葉由来精油成分である青葉アルコールの成分が付加されてなる。
【0016】
本発明のストレス軽減剤においては、生茶葉から抽出して得られる抽出液と青葉アルコールの成分との配合比率は、生茶葉から抽出して得られる抽出液10重量部に対して青葉アルコールの成分が1〜100重量部であることが好ましい。このような比率で配合された本発明のストレス軽減剤は、ストレス軽減の効果が確実であるとともに、その効果が持続する。青葉アルコールの成分の比率がこの範囲をこえて小さくなると、ストレス軽減の効果が人によっては不充分な場合がある。青葉アルコールの成分の比率がこの範囲をこえて大きくなると、ストレス軽減の効果の持続性が損なわれる場合がある。
【0017】
本発明においては、摘み取り後1日以内の生茶葉から成分を抽出する。摘み取り後1日をこえて経過した茶、あるいは蒸熱処理工程や以降の工程を経た茶から抽出された抽出物は、ストレス軽減効果をもたらす成分が少なく、あるいはほとんどなく、本発明の効果がほとんどない。
【0018】
生茶葉は摘み取り後1日以内の茶を冷凍したものであってもよい。このように冷凍されたものは摘み取り後1日をこえて時間が経過しても、本発明において使用できる。従って、本発明においては、生茶葉は摘み取り後1日以内の茶及び摘み取り後1日以内の茶を冷凍したものを意味するものとする。
【0019】
生茶葉からの成分の抽出は、生茶葉を混合した水を、その水が沸騰する温度未満の温度で加熱して発生する蒸気を冷却してトラップすることにより行うことができる。あるいは、生茶葉を、その生茶葉に含まれる水が沸騰する温度未満の温度で加熱して発生する蒸気を冷却してトラップすることにより行うことができる。本発明においては、このいずれかの方法によりトラップされた抽出液あるいは、それぞれの方法でトラップされた抽出液を混合した混合抽出液を用いることができる。
【0020】
これらの水の沸点の温度でこのような蒸留や加熱がなされると、ストレス軽減剤として有効な成分のほかにポリフェノール等の高沸点成分や雑物のような余分なものも同時に抽出されて、抽出成分にこの余分なものが多く含まれることになる。これら余分な成分はストレス軽減剤の効果をマスクし、あるいは妨げるので好ましくない。
【0021】
さらに本発明においては、生茶葉から成分を抽出するこのような蒸留や加熱は減圧下でなされることが好ましい。この減圧下における蒸留においては、その圧力における水の沸点未満の温度でその加熱が行われることにより、本発明に用いる抽出液が得られる。減圧下における蒸留により、抽出の効率を上げることができる。減圧の圧力は380mmHg以下であることが抽出の効率を上げるうえで、また、できるだけストレス軽減効果にとって有効な成分のみを抽出するうえで好ましい。
【0022】
図1は、本発明により茶葉から抽出された抽出液をガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)により計測して得られたチャートである。抽出液は図中の矢印Aで示すピークで表されるヘキセナール及び矢印Bで示すピークで表されるヘキセノールを含有し、さらに、茶特有のベンズアルデヒドやベンジルアルコールなどの抽出成分を含有し、何人にも好ましいストレス軽減成分を構成する。
【0023】
この抽出は、摘み取り後半日経過した生茶葉を水と混ぜ、常法で350mmHg下で60℃で減圧蒸留してなされたものである。
【0024】
このようにして蒸留などにより得られた抽出液は、例えば非特許文献2に記載されているように、その成分であるヘキセナール及びヘキセノールがストレス軽減に大きく寄与するが、その他の茶特有の成分も寄与する。
【0025】
この抽出液、あるいは混合抽出液に添加する上記の青葉アルコールとしては植物から抽出されたものであっても、合成されたものであってもよい。この青葉アルコールの成分としては、3−ヘキセノール(Z)、3−ヘキセノール(E)、2−ヘキセノール(E)、n−ヘキサノールが挙げられる。なかでも、この青葉アルコールの成分としては、3−ヘキセノール(Z)が好ましい。
【0026】
この3−ヘキセノール(Z)としては、ペパーミントから抽出された成分であることが好ましい。ペパーミントから抽出された3−ヘキセノール(Z)成分には図2に示すガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)により計測して得られたチャートにみられるように、3−ヘキセノール(Z)のピーク(D)の他にペパーミント特有の他の多数の成分が若干含まれており、このペパーミント特有の他の成分がストレス軽減の効果に微妙な影響を与えているものと思われる。
【0027】
さらに、本発明のストレス軽減剤はヘキセナール及びヘキセノールを含有してすぐれたストレス軽減効果を有するのみならず、茶葉抽出物の効果即ち、消臭効果やアロマテラピー効果を有する。
【0028】
本発明のストレス軽減剤は担体に担持させてストレス軽減用剤として使用することができる。例えば、ストレス軽減剤に含まれる有効成分をシクロデキストリン、とりわけα型シクロデキストリンに包接させることにより、揮散を抑制することができ徐放性を付与することができる。有効成分はメラミン系樹脂等の樹脂カプセル材料に内包させてもよい。
【0029】
この有効成分をシクロデキストリンに包接させる方法としては、本発明のストレス軽減剤あるいはそのストレス軽減剤に水を添加した液とシクロデキストリンとを混合して得られる混合液を攪拌後、乾燥する方法が挙げられる。本発明のストレス軽減剤あるいはそのストレス軽減剤に水を添加した液にシクロデキストリンを投入して攪拌すると、液中のヘキセナール、ヘキセノールを主体とする有効成分がシクロデキストリンに包接される。この方法によりシクロデキストリン100重量部に対して約20重量部のヘキセナール、ヘキセノールあるいはヘキセナールとヘキセノールの混合物が包接され、その液を乾燥すると、この包接状態のシクロデキストリンの粉末が得られる。この粉末はストレス軽減用剤として用いられる。
【0030】
攪拌の方法は限定されないが例えばホモジナイザを用いることが好ましい。また、乾燥の方法も限定されないが、アトマイザーによる噴霧乾燥が効率がよく好ましい。アトマイザーによる噴霧乾燥における入り口温度は150〜160℃、アトマイザー条件は10000〜30000rpmであることが効率がよく好ましい。
【0031】
さらには、ストレス軽減剤を内包あるいは包接させた前記ストレス軽減用剤を、別の材料、例えば不織布などにそのまま、もしくはバインダーを介して添着することができる。
【0032】
蒸留して得られたストレス軽減剤、もしくはシクロデキストリンなどに担持させたストレス軽減剤を超音波加湿器に投入し、超音波振動子により霧散させると、効果的なストレス軽減装置となる。このとき、好みの香料成分を添加してアロマテラピーとして楽しむと、ストレス軽減に相乗効果が期待できる。
【0033】
ストレス軽減剤の揮散、蒸散手段は、液のまま、あるいは寒天ゲル等のゲルに配合して自然に揮散させてもよく、加熱により気化する方法でもよい。あるいは、ガム等の嗜好品に混入させて、その嗜好品を噛むことにより、もしくは飲食する過程で、揮散するストレス軽減剤成分を嗅がせる方法であってもよい。
【0034】
以下、本発明具体化の若干例を説明するが、例示は発明思想の制限又は限定を意味するものではない。
【実施例1】
【0035】
抽出液
新茶の生茶葉(摘んだ状態のもの)約100gを容量2リットルの三角フラスコに詰め込み、ブンゼンバーナーで徐々に熱し、70〜90℃で維持した。このとき、フラスコにはコンデンサガラス管と温度計が挿入してあり、蒸留物はガラス管の先端から滴下する。約30分で20ミリリットルの抽出液を得た。この抽出液のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)によるチャートに基づき、この抽出液に含まれる主な成分の重量比率(相対値)を縦軸とした棒グラフを図3に示す。図3より、この抽出液には、3−ヘキセノール(Z)、2−ヘキセナール(E)のほかに、1−ブタノール.3メチル、1−ヘキサノール、リナロールオキシド、ベンズアルデヒド、リナロール、1−オクタノール、グラニオール、ベンジルアルコールなどが含有されていることがわかる。
青葉アルコール
3−ヘキセノール(Z)(合成物)90重量部、3−ヘキセノール(E)(合成物)10重量部の混合物を用いた。
【0036】
上記抽出液50重量部、上記青葉アルコール50重量部を混合してストレス軽減剤を得た。
【0037】
小型の超音波加湿器を準備し、水道水0.5リットルに対し、このストレス軽減剤20ミリリットルを添加した混合液体を調整、加湿器に投入した。加湿器を運転すると、設置した検査室内に、かすかな青葉の香りが漂うストレス軽減剤発散装置となった。
【実施例2】
【0038】
ロータリーエバポレータに、実施例1と同様の生茶葉約1kgを投入、380mmHgに減圧しながら60℃で1時間運転し、コンデンサを経て約250ミリリットルの抽出液を得た。この抽出液20重量部とペパーミントから抽出した3−ヘキセノール(Z)80重量部を混合してストレス軽減剤を得た。このペパーミントから抽出した3−ヘキセノール(Z)のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)によるチャートを図2に示す。
【0039】
小型の超音波加湿器を準備し、水道水0.5リットルに対し、このストレス軽減剤20ミリリットルを添加した混合液体を調整、加湿器に投入した。加湿器を運転すると、設置した検査室内に、かすかな青葉の香りが漂うストレス軽減剤発散装置となった。
【実施例3】
【0040】
実施例2で得られたストレス軽減剤100ミリリットルと、αシクロデキストリン2gとを混合、ホモジナイザで8000rpm×10分攪拌し、分散液を得た。この分散液をアトマイザーで乾燥してストレス軽減用剤を得た。一方、小型の超音波加湿器を準備し、水道水0.5リットルに対し、この分散液100ミリリットルを添加した混合液体を調整、加湿器に投入した。加湿器を運転すると、設置した検査室内に、かすかな青葉の香りが漂うストレス軽減剤発散装置となった
【0041】
[比較例1]
小型の超音波加湿器を準備し、水道水0.5リットルに対し、実施例1で得られた抽出液20ミリリットルを添加した混合液体を調整、加湿器に投入した。加湿器を運転すると、設置した検査室内に、かすかな青葉の香りが漂うストレス軽減剤発散装置となった。
【0042】
[比較例2]
小型の超音波加湿器を準備し、水道水0.5リットルに対し、実施例2で用いたペパーミントから抽出した3−ヘキセノール(Z)20ミリリットルを添加した混合液体を調整、加湿器に投入した。加湿器を運転すると、設置した検査室内に、かすかな青葉の香りが漂うストレス軽減剤発散装置となった。
【0043】
実施例1〜3、及び比較例1、2におけるストレス軽減剤発散装置による各例につき5名のモニターによる試験結果を表1に示す。モニターはストレス軽減剤発散装置から約1m離れた近傍で20分間過ごしたのち、別室にて2時間過ごし、リラックスの度合いを体験した。
【0044】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】茶葉から抽出された抽出液をガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)により計測して得られたチャートである。
【図2】茶葉から抽出された抽出液に含まれる主成分の含有比率(相対値)のグラフである。
【図3】ペパーミントから抽出された青葉アルコール成分(3−ヘキセノール(Z))をガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)により計測して得られたチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生茶葉を混合した水を、該水が沸騰する温度未満の温度で加熱して発生する気体を冷却して得られる抽出液(A)、
生茶葉を、該生茶葉に含まれる水が沸騰する温度未満の温度で加熱して発生する気体を冷却して得られる抽出液(B)、
抽出液(A)と抽出液(B)とが混合された混合抽出液、
から選択された液10重量部と、該液に加えて青葉アルコール1〜100重量部とを含むストレス軽減剤。
【請求項2】
前記青葉アルコールが3−ヘキセノール(Z)を含む請求項1に記載のストレス軽減剤。
【請求項3】
前記3−ヘキセノール(Z)がペパーミントから抽出されたものである請求項2に記載のストレス軽減剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のストレス軽減剤を担体に担持させてなるストレス軽減用剤。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のストレス軽減剤を準備する工程と、
該ストレス軽減剤とシクロデキストリンとを混合して混合物を得る工程と、
該混合物を乾燥する工程と
を含むストレス軽減用剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載のストレス軽減剤を準備する工程と、
該ストレス軽減剤と水とを混合して混合液を得る工程と、
該混合液とシクロデキストリンとを混合して混合物を得る工程と、
該混合物を乾燥する工程と
を含むストレス軽減用剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−102254(P2009−102254A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274868(P2007−274868)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(504232446)
【Fターム(参考)】