説明

ストレス関連症状の重症性を軽減し予防する方法

本発明は、ブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、若しくはラセミ混合物の有効量を全身投与することにより、その対象におけるストレス関連症状の重症性を軽減し予防する方法を提供する。本発明の方法により治療されるストレス関連症状には、制限はされないが、消化不良;心筋虚血に関連する者を除く頻脈;非炎症性の皮膚症状;筋収縮障害;偏頭痛関連の知覚過敏性;および行動障害が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して交感神経系および種々のストレス関連症状、そして特にA-2アドレナリン作動薬であるブリモニジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレスに関連し、またはこれにより悪化される症状は、少なくともその一部は交感神経系により仲介される。これらストレス関連症状には、胃腸病;過敏性腸症候群;消化不良;頻脈;パニック発作;インスリン抵抗;II型糖尿病;皮膚症状;緊張性頭痛のような筋収縮障害;悪心、光恐怖症および音声恐怖症のような偏頭痛関連の知覚過敏性;および過食や薬物依存のようなストレス関連行動障害が含まれる。
残念ながら、そのようなストレス関連症状の治療は、例えば鎮静作用のような望まない副作用のために一般的に無効であり、また不十分である。そのため、ストレス関連症状の重症性を軽減し予防する新規な方法が求められている。本発明はこの要求を満たし、同じく関連する利益を提供する。
【発明の開示】
【0003】
発明の要約
本発明は、その対象におけるストレス関連症状の重症性を軽減し予防する方法を提供する。その方法は、ブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、若しくはラセミ混合物の有効量を全身投与するものであり、ここでストレス関連症状とは次のひとつである;胃腸病;過敏性腸症候群;消化不良;頻脈;パニック発作;インスリン抵抗;II型糖尿病;非炎症性の皮膚症状;筋収縮障害;偏頭痛関連の知覚過敏性;および過食や薬物依存のようなストレス関連行動障害。
【0004】
ひとつの態様では、本発明の方法は胃腸病の重症性を軽減し、予防する。他の態様では、本発明の方法は過敏性腸症候群または消化不良を軽減し、予防する。また別の態様では、本発明の方法は例えば心筋虚血関連の頻脈を除く頻脈の重症性を軽減し、予防する。更なる態様では、本発明の方法はパニック発作の重症性を軽減し、予防する。より更なる態様では、本発明の方法はインスリン抵抗の重症性を軽減し、予防し、またはII型糖尿病の重症性を軽減し、予防する。更なる態様では、本発明の方法は非炎症性の皮膚症状の重症性を軽減し、予防する。また他の態様では、本発明の方法は筋収縮障害、例えば骨格筋収縮の障害や平滑筋収縮の障害、膀胱炎若しくは非細菌性前立腺炎関連の平滑筋収縮の障害、緊張性頭痛に関連する筋収縮の障害の重症性を軽減し、予防する。また別の態様では、本発明の方法は偏頭痛関連の知覚過敏性の重症性を軽減し、予防する。更なる態様では、本発明の方法はストレス関連行動障害に関連する知覚過敏性の重症性を軽減し、予防する。本発明の方法においては、ブリモニジンの有効量を任意の種々の方法により投与することができ、この方法には、限定はされないが経口、局所、静注、または貼付剤によるものが含まれる。
【0005】
アドレナリン受容体は、カテコラミン、ノルエピネフリンおよびエピネフリンに対する生理的な応答を媒介し七つの膜貫通領域を有するGタンパク結合受容体スーパーファミリーの仲間である。これら受容体は薬理学的にはα-1、α-2およびβ-アドレナリン受容体タイプに分けられ、心臓血管系および中枢神経系を含む多様な生理機能発現に含まれる。α-アドレナリン受容体は、最も興奮的な機能を媒介する:α-1アドレナリン受容体は一般に効果器の応答を媒介し、α-2アドレナリン受容体はシナプス前と同程度にシナプス後に局在して神経伝達物質の放出を規制している。α-2アドレナリン受容体作用薬は現在高血圧や緑内障、痙縮、注意力欠如障害、オピエート離脱の抑制、および一般麻酔の補助剤として臨床上用いられている。
【0006】
α-2アドレナリン受容体は現在、薬理学的および分子特性により三つのサブタイプに分類される;α-2A/D(α-2Aはヒト、α-2Dはラット);α-2Bおよびα-2Cである〔Bylund et al. , Pharmacol. Rev. 46: 121-136 (1994)、Hein and Kobilka, Neuropharmacol. 34: 357-366 (1995)〕。α-2Aおよびα-2Bサブタイプはある血管床で動脈の収縮を規制することができ、α-2Aおよびα-2Cサブタイプは交感神経末端からのノルエピネフリン放出のフィードバック阻害を媒介する。α-2Aサブタイプはまたα-2アドレナリン作用薬の中枢効果の多くを媒介する〔Calzada andArtinano, Pharmacol. Res. 44: 195-208 (2001) ; Hein et al. , Ann. NY Acad. Science 881: 265-271 (1999); and Ruffolo (Ed.), a-Adrenoreceptors : Molecular Biology, Biochemistry and Pharmacology S. Karger Publisher's Inc. Farmington, CT (1991)〕。
【0007】
以前の研究は、ノルエピネフリンはα-2A受容体よりもα-2C受容体の方に対して高い親和性を持つことを示している〔Ki = 5800nM; Link et al., Mol. Pharm. 42: 16-27(1992)〕。そして、ノルエピネフリン放出に対する自動阻害作用はノルエピネフリンが低濃度ではα-2C受容体、ノルエピネフリンが高濃度ではα-2A受容体を介して媒介される〔Altman et al., Mol. Pharm. 56: 154-161(1999)〕。その結果、ノルエピネフリンの基礎放出に対するフィードバック阻害はα-2C受容体で媒介され、他方α-2A受容体は高頻度刺激の条件下における放出に対するフィードバック阻害を媒介する〔Hein et al. , Ann. N. Y. Acad. Sci. 881: 265-271(1999)〕。この実施例IIで示すように、基礎または低頻度刺激条件下における交感神経流出のシナプス前阻害が減少しているα-2Cノックアウトマウスでは、フェニレフリン処置によるα-1受容体活性の増大にはより感受性が大である(Figure 2参照)。さらに、Figure 3に示すようにα-2Aノックアウトマウスはスルプロストン誘発触覚性過敏症に対して感受性が高く、他方α-2Cノックアウトマウスのスルプロストン感受性は野生型マウスと同程度である。これら結果は、スルプロストン処置が高頻度交感神経刺激をもたらすことを示し、それは、高頻度交感神経流出のシナプス前阻害に欠けるα-2Aノックアウトマウスのみがスルプロストン誘発触覚性過敏症の閾値を減少させた事実により証明される
【0008】
さらに、実施例3に示すように、野生型マウスおよびスルプロストン誘発触覚性過敏症のα-2Cノックアウトマウスの両方でブリモニジンは鎮痛効果を示した。反対に、クロニジンは野生型マウスでは鎮痛効果を示したがα-2Cノックアウトマウスでは示さなかった(Figures 5bおよびdを比較)。鎮痛活性を媒介する脊髄のα-2Aアドレナリン受容体を欠くα-2Aノックアウトマウスでは、予想通りクロニジンもブリモニジンも鎮痛効果を示さなかった。こうして、交感神経系依存が増強されたモデルとして有用なスルプロストン処置したα-2Cノックアウトマウスでは、全アゴニストのブリモニジンおよびクロニジンも全く異なる作用を示す。ここで開示する追加的な結果は野生型マウスにおいてブリモニジンが、例えばチザニジンやクロニジンのような他の全アゴニストと異なって、付随的な鎮静作用を伴わずに鎮痛効果を発現することを示す(Figure 6参照)。その上、ブリモニジンは基礎試験においてα-1受容体と比べα-2アドレナリン受容体に対して高選択的(1000倍以上)であり、例えばクロニジンやチザニジンのような他の全アゴニストの選択性は10倍もない(Figure 7および表2参照)。これらの結果は、全アゴニストのブリモニジンとクロニジンとの識別的な機能活性を示し、そしてさらにα-1と比したα-2機能選択性が、ストレス関連症状のような交感神経系依存が強い症状を付随する鎮静作用を伴うことなく治療するためには有利であることを示す。
【0009】
消化不良は生物的心理社会的疾患と記述され一般にはその一部は食事に続く上腹部の不快感で特徴付けられる。食後の上腹部不快または痛みに加えて、器質性疾患がない場合には消化不良は早期満腹感、悪心、嘔吐、腹部膨満若しくは充満、または拒食症で特徴付けられる(Thumshirn, Gut 51 Suppl.1 : i63-66 (2002; Anderson, Dorland's Illustrated Medical Dictionary28th Edition, W. B. Saunder's Company, Philadelphia (1994))。
【0010】
消化不良は本願では障害を受けた消化を意味するが、本発明の方法は消化不良の重症性を予防しまたは軽減するのに有用である。種々のタイプの消化不良の中、いずれも本発明の方法により治療可能である。消化不良の語は限定的ではなく、胃酸過剰に関連する酸消化不良;盲腸性消化不良としても知られ消化不良の症状に慢性的虫垂炎が伴う、虫垂性消化不良;胃炎を伴うカタル性消化不良;栄養不良の幼児に見られるデンプン性栄養失調の状態であるチチコ(chichiko)消化不良;胆嚢障害に関連する突然の消化不良の発病を含む胆汁結石性消化不良;大腸の機能障害を含む結腸性消化不良;摂取した食物の発酵により特徴付けられる発酵性消化不良;胃内でのガスの生成と関連し、しばしば頻繁なげっぷを付随する上腹部不快感を含む鼓腸性消化不良;胃に由来する胃性消化不良;および腸管に由来する腸管性消化不良を含む。ここで用いられる消化性不良の定義中には、これらの他症状の温和なまたは急性の症候性形態が含まれると理解される。本発明の方法の一つの態様は、胃炎に関連する消化不良以外の消化不良の重症性を予防しまたは軽減するための使用である。
【0011】
別の態様では、本発明は胃腸病の治療に関連する。炎症性大腸炎(IBD)または過敏性腸症候群(IBS)は全アメリカ人の半数がその一生において何らかの影響を受ける胃腸病であり、その費用はIBDは26億ドル以上、IBSは80億ドル以上である。IBDやIBSおよびその他の病気に関連した内臓過敏性の頻度と重症性はストレスにより悪化される。ここで開示するように、ストレス関連胃腸病、例えば、制限はされないが、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、または過敏性腸症候群(IBS)等に関連する内臓過敏性の重症性を軽減しまたは予防するのに本発明の方法は有用である。かくして、本発明はストレス関連胃腸病に関連する内臓過敏性の重症性を軽減しまたは予防する方法を提供する。これによると、ブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体またはラセミ混合物がその対象に全身的に投与される。
【0012】
本発明の方法はまた、心筋虚血とは関連しない頻脈の重症性を予防しまたは軽減するのに有用であり得る。ここで、「頻脈」の語は、心拍数の過剰速度を意味し、頻脈性不整脈を含む。成人の場合、頻脈の語は一般に一分間あたり拍動数100を超えるものをいう。頻脈の語は心筋虚血以外の種々の病気の二次的な頻脈を包含し、制限はないが、例えば、頻脈が突然出現し停止する発作性頻脈、心室性または上室性頻脈、および頻脈がゆっくりと出現し一般に一分間あたり拍動数70から130である非発作性頻脈が含まれる。一つの態様では、本発明の方法は心筋虚血とは関連しない無意識の頻脈の重症性を予防しまたは軽減する。別の態様では、本発明の方法は成人の対象における頻脈の重症性を予防しまたは軽減する。さらに別の態様では、本発明の方法は子供の対象における頻脈の重症性を予防しまたは軽減する。
【0013】
本発明の方法に従って治療される頻脈には、心臓の任意の部位に由来するもの、例えば心室性頻脈、上室性頻脈が含まれ、これらは例えば、心房性および接合部性(結節)頻脈に分類される。こうして、本発明の方法は、例えば心室性頻脈の重症性を予防しまたは軽減するのに有用である。この、心室性頻脈は心室の異常興奮を伴う異常に速い心室の鼓動でしばしば一分間あたり拍動数150を超え、心室内で発生しそしてときどき房室解離と連動して起こる。本発明の方法はさらに、上室性頻脈(SVT)の重症性を予防しまたは軽減するのに有用である。この上室性頻脈は規則正しい頻脈で索枝の上部、例えば洞結節、心房または房室接合部に刺激点が局在し、または心室および心房部位を含む大きなリエントリー回路から生じる。
【0014】
一つの態様では、本発明の方法は心房性頻脈の重症性を予防しまたは軽減するのに用いられる。この頻脈は一般に一分間160-190の高い心拍数で特徴付けられ心房中心に由来して、例えば、限定的ではないが、発作性心房頻拍等が含まれる。別の態様では、本発明の方法は、接合部性頻拍の重症性を予防し、または軽減するのに用いられる。この頻脈は房室接合部に生じる刺激に応答して発生する頻脈で、一般には一分間75より大きい心拍数により特徴付けられる。接合部性頻拍は非発作性および発作性頻脈、例えば、リエントリーまたは増強された自動能の結果である接合部性頻拍のようなものを含む。本法はまた、制限はされないが、二つのタイプの異所性頻脈が含まれる二重頻脈;洞結節に由来してショック、低血圧、うっ血性心不全および熱と関連のある洞頻脈;寝た状態から立ち上がるときの不規則な心拍数上昇で特徴付けられる起立性頻脈;および一分間に100から130の心房拍動、顕著に変化するP波形態と不規則なP-P間隔で特徴付けられる無秩序な心房性頻脈の重症性を予防し、または軽減するのに使用できると解される(Anderson, supra, 1994)。
【0015】
本発明の方法に従って治療される頻脈は、例えば呼吸器系疾患、糖尿病、外科手術による外傷等のひとつ若しくはそれ以上の病気を併発していてもよく、また高齢者であってもよい。例えば、無秩序な心房性頻脈(多原性心房性頻脈)は、慢性閉塞性肺疾患の患者や糖尿病患者および高齢者に起こり得る。さらなる例としては、非発作性接合部性頻脈は外科手術による外傷と併発し得る。これらの頻脈および心筋虚血とは関連しない種々のよく知られた自動性その他の頻脈は本発明の方法に従ってその重症性を予防し、または軽減することができると解される。また別の態様では、本発明は心筋虚血と関連するものを含むすべてのタイプの頻脈の重症性を予防し、または軽減する方法を提供する。
【0016】
本発明の方法はまた、すべての人口の約3%の罹患率がある普遍的な病気のパニック発作に対し、その重症性を予防し、または軽減するために有用である〔Potokar and Nutt, Int. J. Clin. Pract. 54: 110-114 (2000)〕。再発性のパニック発作を含むパニック障害は、発病の平均年齢24歳で若年成人に典型的に見られ、男性よりも女性により一般的に認められる。ここでいう「パニック発作」の語は、以下のひとつ以上の症候を伴う激しい恐怖感または不快症状の個別の期間を意味する;心拍または動悸の亢進;胸の痛み;悪寒と顔面紅潮;現実感喪失または離人症;死の恐怖;自制喪失または発狂の恐怖;めまいまたは脱力感;窒息感;悪心または腹部苦悶;知覚異常;息切れまたは息苦しさ;発汗;または振戦若しくは身震いである。通常、パニック発作は強い不安または恐怖感が突然に出現し一般に5分から20分ぐらい継続する。パニック発作の語は、本格的発作および限られた症候の発作を包含する;本格的発作は上記の症候の四つ以上を伴い、限られた症候の発作は四つよりも少ない数の症候を伴う。本発明の方法はパニック発作全体を阻止し、または付随する上記症候のひとつまたはどれか複数の組み合わせの重症性を予防し、または軽減することができる。
【0017】
あるパニック発作の患者はパニック障害を引き起こすが、本発明に従いブリモニジンを使用することによりこのパニック障害の重症性を予防し、または軽減することができる。ここでパニック発作の語は、パニック障害を包含する;パニック障害は、追加的な症状発現や発作の結果または挙動の顕著な変化に対する継続的な不安を、一度以上のパニック発作に続いて少なくとも一ヶ月間経験して、これと連動する再発性のパニック発作として定義される。パニック障害は、例えばうつ病のような他の精神状態と併発し得る。
中枢の交感神経系はII型糖尿病の特徴であるインスリン抵抗性および高血圧の発現に重要な役割を果たしている〔(Rocchini etal., Hypertension 33 [part II] : 548-553 (1999)〕。ここではさらに、高血圧、高脂血症、およびインスリン抵抗性で特徴付けられ、ストレスでさらに悪化される疾患であるII型糖尿病の重症性を予防し、または軽減する方法が提供される。ここで開示するように、II型糖尿病の重症性を予防し、または軽減するために、その対象に対してブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体またはラセミ混合物を全身投与することができる。
【0018】
本発明の方法はまた非炎症性皮膚病変の重症性を予防し、または軽減するのに有用である。これらの方法は例えば、非炎症性皮膚病変に伴う掻痒感その他の不快感の一つ以上の症候を予防し、または軽減するのに有用である。ここで「非炎症性皮膚病変」の語は、炎症に起因し若しくは伴うものではない皮膚病その他の疾患を意味する。本発明の方法に従って治療される非炎症性皮膚病変はストレスの多い状態に起因しまたは悪化され得る。非炎症性皮膚病変は、制限は受けないが、非炎症性の水疱症状を含む非炎症性皮膚病を包含し、例えば、表皮水疱症やポルフィリン症;魚鱗癬;毛孔性角化症;若年性足底皮膚病(JPD);扁平苔癬皮膚病;および乾燥症が含まれる。当業者はこれらおよびその他の公知の非炎症性皮膚病変が本発明の方法で治療できることを理解するだろう。
【0019】
別の態様では、本発明はストレス関連炎症性皮膚病変の重症性を予防し、または軽減する方法を提供する;この方法ではその対象にブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体またはラセミ混合物が全身投与される。これらの方法は例えば、炎症性皮膚病変に伴う掻痒感その他の不快感の一つ以上の症候を予防し、または軽減するのに有用である。種々の炎症性皮膚病変の任意のものが本発明の方法に包含され、制限はされないが例えば、乾癬のような急性若しくは慢性の皮膚炎、接触性アレルギー性皮膚炎のようなアレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、カロリー性皮膚炎、接触性皮膚炎、化粧品性皮膚炎、湿疹、剥脱性皮膚炎、人為的な皮膚炎、刺激性皮膚炎、慢性単純性苔癬、海水浴皮膚炎、神経皮膚炎、口周辺皮膚炎、光毒性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、増殖性皮膚炎等が含まれる。
【0020】
本発明の方法は種々の筋収縮障害の重症性を予防し、または軽減するのに有用である;この障害は少なくとも部分的には不適切な筋収縮の結果生じる病変である。本発明の方法に従って治療される筋収縮障害には、制限はされないが、骨格筋収縮障害、平滑筋収縮障害、分泌腺関連筋収縮障害、うっ血性心不全のような心筋収縮障害等が含まれる。これらの他、本発明の方法によりその重症性が予防され、または軽減される収縮障害には、筋細胞が神経支配を受けているものと受けていないものが同様に含まれる。本発明の方法によりその重症性が予防され、または軽減される筋収縮障害の非制限的な例としては、例えば、背中またはその他の筋肉の痙攣、膀胱炎関連の筋収縮、非細菌性前立腺炎関連の筋収縮、歯ぎしり関連の筋収縮、緊張性頭痛関連の筋収縮、うっ血性心不全関連の筋収縮等が含まれる。
【0021】
本発明の方法は例えば背中の痙攣のような筋肉の痙攣の重症性を予防し、または軽減するのに有用である。筋肉の痙攣は当業者によく理解されている。ここで「痙攣」の語は、痛みと機能障害を伴う、非自発的な突然の一つ若しくは複数の筋肉の収縮を意味する。痙攣には例えば、非自発的な動きやねじれを伴うことがあり得る。一つの態様では本発明の方法は背中の痙攣の重症性を予防し、または軽減する。
【0022】
一つの態様では、本発明の方法は膀胱炎関連の筋収縮の重症性を予防し、または軽減するのに有用である。ここで、「膀胱炎」の語は、膀胱の炎症を意味する。膀胱炎の語は制限はされないが、アレルギー性膀胱炎、細菌性膀胱炎、急性カタル性膀胱炎、嚢胞性膀胱炎、ジフテリア性(クループ性)膀胱炎、好酸球性膀胱炎、剥離性膀胱炎、毛包性膀胱炎、腺性膀胱炎、痂皮性膀胱炎、慢性間質性(全壁性、粘膜下)膀胱炎、機構的膀胱炎、乳頭腫性膀胱炎、女性老人性膀胱炎等を包含する。例えば、Anderson, supra, 1994参照。膀胱炎は次のひとつ以上の臨床上の症候を伴い得る;頻尿、排尿時の灼熱感、恥骨上不快感、倦怠感、血尿または混濁尿、および時々伴う微熱である〔Bennett and Plum(Eds.), Cecil Textbook of Medicine Sixth Edition, W. B. Saunders Company, Philadelphia 1996〕。当業者はこれらの任意の症候を伴う筋収縮またはその他の温和な若しくは重篤な、そして急性若しくは慢性の膀胱炎の形態に伴う筋収縮が本発明の方法で治療されうることを理解する。
【0023】
ここで開示するように、本発明の方法はまた非細菌性前立腺炎に付随する筋収縮の重症性を予防し、または軽減するのに有用である。前立腺の炎症症候は男性成人のおよそ50%がその生涯において経験し、その約95%が細菌感染以外の原因によるものである。ここで、「非細菌性前立腺炎」の語は「前立腺炎」の同義語であって、細菌感染によらない前立腺の炎症を意味する。非細菌性前立腺炎は、制限はされないが、慢性非細菌性前立腺炎、アレルギー性若しくは好酸球性前立腺炎および非特異的肉芽腫性前立腺炎等を含む。また制限はされないが、非細菌性前立腺炎の語は、病因が未知で異常に発現された前立腺分泌物(EPS)と通常の細菌培養物で特徴付けられる前立腺炎を含むと理解される。ある場合には、非細菌性前立腺炎は抗生物質またはストレスの管理により効果的に治療され得る(Bennett and Plum, supra, 1996)。これらに関連する筋収縮またはその他の軽微な若しくは重篤な、そして慢性若しくは急性の非細菌性前立腺炎の形態に関連する筋収縮は、本発明の方法に従って治療され得る。
【0024】
別の態様において、本発明の方法は成人米国人の90%もの人数に起こる普遍的な形態の緊張性頭痛に関連する筋収縮の重症性を予防し、または軽減するのに有用である。ここで使用される「緊張性頭痛」の語は、少なくとも部分的には筋収縮により生じる頭痛を意味し、その筋収縮は例えばストレスや激しい運動によって引き起こされ得る。緊張性頭痛の語は、一時的なおよび慢性の頭痛を包含し、普通の緊張性頭痛を含むが限定はされない。緊張性頭痛は頭蓋の頂部または前部に生じることもあるが、一般には頭や首の後部に生じ、また一般に対称的であるが無力化するほどの重症性はない点が特徴的である。すべてが存在するわけではないが、緊張性頭痛の診断的特長としては両側性の痛み、軽微なものから中程度の重症性、安定感を伴う圧的特質、日毎の増強等が含まれ、毎日若しくは連続して高頻度に現れる可能性があり、偏頭痛的な特徴、例えば悪心や光過敏性、音響過敏性、頭部運動のような身体的活動による悪化といったものは比較的まれである。
【0025】
緊張性頭痛は、例えばストレスや過労、疲れ眼、悪い姿勢による顔面や、首、頭皮の筋肉のこわばりに起因する。そのような頭痛は幾日もまた幾週も続き、また種々の強度の痛みを起こし得る。何週もまたは何ヶ月もの間の長期にわたって継続する緊張性頭痛は慢性の緊張性頭痛といわれ、ここでいう緊張性頭痛に包含される。
【0026】
緊張性頭痛は、血管的特長と悪心や嘔吐、光過敏性等の欠如および前兆の欠如で偏頭痛とは区別できる〔Spira, Austr. Family Phys. 27: 597-599(1998)〕。血管の構成要素を持たない頭痛をいう緊張性頭痛の語は、緊張型血管性頭痛、群発性頭痛、偏頭痛、その他の主たる血管構成要素を有する頭痛と対比して使用される。しかしながら、本発明の方法は他の頭痛に関連する知覚過敏症、例えば制限はされないが頚椎性頭痛、外傷後の頭痛、群発性頭痛、顎関節障害(TMJ)の重症性を予防しまたは軽減するのに有用である。
【0027】
本発明の方法はまた、偏頭痛に関連する知覚過敏症の重症性を予防しまたは軽減するのに有用である;この頭痛は、人口の10%より多い人々を悩ませ、血管性の構成要素を有する頭痛である。一つの態様では、本発明の方法は偏頭痛に関連する眼球過敏症、例えば光恐怖症の重症性を予防しまたは軽減する。本発明の方法は偏頭痛の種々の形態のいずれにも関連する知覚過敏症の重症性を予防しまたは軽減するのに有用である;この偏頭痛には、限定はされないが、前兆のない偏頭痛("MO")、前兆のある偏頭痛("MA")および偏頭痛性障害等が含まれる。本発明の方法によりその重症性が予防されまたは軽減される知覚過敏症は、例えば腹性偏頭痛、急性錯乱性偏頭痛、脳底動脈片頭痛、片麻痺性若しくは家族性片麻痺性片頭痛、電光性偏頭痛、眼球性偏頭痛、眼筋麻痺性片頭痛または網膜性片頭痛と関連し得る。加えて、本発明の方法は片頭痛と同等の病気の重症性を予防しまたは軽減するのに有用である;この同等の病気には例えば頭痛を伴わない片頭痛の前兆がある。片頭痛の前兆は、可視的な運動性の、精神的な、知覚異常のまたはその他の神経的異常であって片頭痛を伴うものである〔Elrington, J.Neurol.Neurosurg. Psychiatry 72 Supple,II:iilO-iil5(2002); Anderson, supra, 1994; Bennett and Plum, supra, 1996参照〕。
【0028】
本発明の方法は、片頭痛に関連する種々の知覚過敏症の一つ以上、その重症性を予防しまたは軽減するのに有用である。そのような知覚過敏症には、限定はされないが、悪心、嘔吐、下痢、光過敏症(光アレルギー)、音響過敏症(騒音アレルギー)等が含まれる。そのような知覚過敏症には、また視覚的な異常、例えば明るい点滅灯(閃光若しくは強化暗点)、単眼的(網膜の)視覚的異常または半盲的視力喪失;片側的知覚異常のような知覚異常(異常触角);失語症(発語と理解の喪失);片側不全麻痺(筋力低下または片側の不完全麻痺);片側感覚異常;めまい、運動失調(筋肉協調の喪失)または複視等が含まれる。本発明の方法は、これらおよびその他のタイプの知覚過敏症の重症性を予防しまたは軽減するのに有用であると理解される;これら過敏症は片頭痛の前、同時またはその後に生じるか、または片頭痛と同等な症状の一部として頭痛なしで生じる。
【0029】
本発明の方法は、例えば線維筋痛、または結合組織炎として知られている他の疾患と関連した種々の知覚過敏症の一つ以上につき、その重症性を予防しまたは軽減するのに有用である。線維筋痛は慢性の広がった筋骨格痛と種々の部位の圧通を含み、結合組織や他の筋骨格疾患のない疾患である。特に線維筋痛は、米国リウマチ学会の定義する18以上の部位のうちの11の部位における痛み若しくは圧通でもって定義される。線維筋痛はしばしば睡眠障害や慢性疲労、頭痛および過敏性腸症候群と関連する(Bennett and Plum, supra, 1996)。
【0030】
種々の知覚過敏症が線維筋痛と関連し得る。そして本発明の方法によりその重症性が予防されまたは軽減される。制限はされないが、光、雑音、触感または匂いに対する過敏症、寒冷または高熱不耐性、悪心、真性のアレルギーではないが例えば鼻炎、掻痒、発疹のようなアレルギー様症候等がこれに含まれる。これらまたは線維筋痛と関連し得るその他のタイプの知覚過敏症のいずれも、その重症性を予防しまたは軽減するのに本発明の方法が有用であることを当業者は理解している。
【0031】
本発明の方法はまた、ストレス関連行動の病気の重症性を予防し、または軽減するのに有用である;この病気はストレスにより誘発されまたは悪化される任意の行動上の病気である。非制限的な例としては、ストレス関連行動の病気は強迫的な若しくは反復される有害な行動であって、ストレスにより誘発されまたは悪化され、例えば過食や肥満、強迫神経症(OCD)、チック、トゥーレット症候群、アルコール使用、薬物使用、賭博、引っかきや頭髪引きのような自傷行為、性的不能や性的興奮等があるが制限はされない。一つの態様として、ストレス関連行動の病気は薬物使用以外の病気である。また別の態様としては、ストレス関連行動の病気はアルコールまたは薬物使用以外の病気である。
【0032】
本発明の方法はさらにストレス関連精神病、即ち、ストレスにより誘発されまたは悪化される任意の精神病の重症性を予防し、または軽減するのに有用である。非制限的な例としては、本発明の方法は例えば統合失調症のような精神病の重症性を予防し、または軽減するのに有用である。
【0033】
またここでは、眼球疾患の重症性を予防し、または軽減する方法が提供される;この方法では、ブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体若しくはラセミ混合物の有効量が全身的に投与される。ここで開示されるように、ブリモニジンは神経保護薬として、感覚神経網膜に影響する多くの眼球疾患において例えば網膜損傷を予防する。本発明の方法に従ってブリモニジンを用い、その重症性が予防され、または軽減され得る眼球疾患には、制限はされないが、糖尿病性網膜症;糖尿病その他の症状に関連する黄斑浮腫のような黄斑浮腫;加齢性の黄斑変性若しくは網膜色素変性のような網膜変性;網膜の炎症性障害;網膜末梢若しくは網膜中心動脈閉塞や網膜血管閉塞のような網膜の血管閉塞症状;未熟児網膜症;鎌状赤血球貧血のような血液病に関連する網膜症;網膜剥離に続く障害;硝子体茎切除術もしくは網膜手術による障害若しくは発作およびその他の網膜損傷であって、網膜レーザー処置による治療上の障害、例えば、糖尿病性網膜症のための全網膜光凝固または、例えば眼球掻痒のようなその他の眼球症状の他加齢性黄斑変性症のための網膜の光治療等が含まれる。
【0034】
本発明の方法に従って、その重症性が予防され、または軽減され得る眼球疾患にはさらに、制限はされないが、遺伝子的および後天的な視神経症、例えば第一に中心視力の低下で特徴付けられる視神経症、Leberの遺伝性視神経症(LHON);常染色体優性視神経萎縮(Kjer病)およびその他の視神経症、ミトコンドリア異常、異常ダイナミン関連タンパク、不適切なアポトーシス等が含まれる。例えば、Carelli et al. , Neurochem. Intl. 40: 573-584 (2002); and Olichon et al. , J. Biol. Chem. 278: 7743-7746 (2003)参照。
【0035】
本発明の方法は鎮静作用を伴うことなくストレス関連疾患の重症性を予防し、または軽減するのに有用である。ここで鎮静とは、自発運動量の減少を意味する語である。ここでいう「鎮静作用を伴わない」との語句は、薬物の一度若しくはそれ以上の投与量でストレス関連疾患の一つ以上の症候の重症性が減少し、これに自発運動量減少が伴うがそれは比較的少ないことを意味する。自発運動量の20%を軽減するのに要する投与量が、ストレス関連疾患の一つ以上の症候の重症性を有意に減少させるのに要する投与量の少なくとも3倍より大であれば、一般に薬物は末梢投与すれば鎮静作用を伴わずに作用する。Figure 6に示したように、ブリモニジンは鎮静作用(点線、右側縦軸)の増加を20%未満に抑えつつ、感作スコア(実線、左側縦軸)の減少をもたらす投与量を投与することが可能であるが、チザニジンやクロニジンではそれはできない。非制限的な例として、自発運動量の20%を減少させるのに要する投与量は、ストレス関連疾患の一つ以上の症候の重症性を有意に減少させるのに要する投与量の少なくとも4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、25倍以上、50倍以上、100倍以上、200倍以上、500倍以上、1000倍以上、2000倍以上または5000倍以上である。ストレス関連疾患の症候の重症性減少の程度および鎮静の程度を決定する方法は当業者によく知られている。
【0036】
ここで使用される「ブリモニジン」の語は下記の構造式
【化1】

またはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、ラセミ混合物、多形体、水和物若しくは溶媒和物を意味する。そのような薬学的に許容される誘導体は実質的に5-ブロモ-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリンD-酒石酸塩(1:1)の活性を有し、スルプロストン処置マウスにおいて鎮静作用を伴わずに触知性過敏症を軽減できる。
【0037】
ブリモニジンの語は、制限されないが、Alphagan(商標)およびUK14304を包含する。ブリモニジン、およびその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、ラセミ混合物は市販品として、例えばAlphagan(商標)(Allergan)として入手できる。加えてブリモニジン、およびその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、ラセミ混合物は、下記実施例1に記載した定法で製造できる;米国特許No.6,323,204号参照。
【0038】
こうして、本発明の方法はブリモニジンを表す式から誘導される、薬学的に許容される塩、エステルおよびアミドの使用を包含すると解される。薬学的に許容される塩で適切なものは、制限はされないが、例えばブリモニジン溶液を塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸のような適切な酸の溶液と混合して得られる酸付加塩が含まれる。さらなる薬学的に許容される塩としては、また制限はされないが、過リン酸塩、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素酸塩、硫酸水素酸塩、酸性酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシナフト酸塩、ヨウ化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル塩、硝酸メチル塩、硫酸メチル塩、ムケート、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ポリガラクツロン酸、サッカリン塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、p-トルエンスルホン酸塩、トシレート、トリエチオダイド、および吉草酸塩が含まれる。
【0039】
一つの態様として、本発明はブリモニジン酒石酸塩で実施される。
さらにブリモニジンの官能基は、例えば化合物の薬学的用途を増強するためにこれを修飾することができると解される。このような修飾は当業者である化学者の知識範囲内にあり、制限はされないが、ブリモニジンのエステル、アミド、エーテル、N−オキシド、プロドラッグがここで用いる「ブリモニジン」の語の中に包含される。活性を増強し得る修飾の例としては、例えばC1からC6、好ましくはC1からC4のアルキルエステルのようなエステル化が含まれ、ここでアルキル基は直鎖または分枝鎖を有する。その他の許容されるエステルとしては例えばC5からC7のシクロアルキルエステルおよびベンジルエステルのようなアリールアルキルエステルが含まれる。これらのエステルは有機化学の分野でよく知られた慣用的な方法を用いて個々に記載された化合物から調製できる。
【0040】
その他の薬学的に許容される修飾としてアミド形成が含まれる。有用なアミド化としては、例えば、アンモニア;一級のC1アミンからC6のジアルキルアミン、ここでアルキル基は直鎖または分枝鎖を有し;および種々の置換基を有するアリールアミンから誘導されるものを含む。二級アミンの場合、該アミンは5員または6員環を形成することもできる。これらおよびその他のアミドを調製する方法は当業者によく知られている。
さらに、化学的に区別できるブリモニジンのエナンチオマーおよび互変異体も「ブリモニジン」の語の中に包含されると解され、本発明の方法に有用である。また、結晶型において多形体が存在し得る;溶媒(例えば水若しくは一般の有機溶媒)があれば溶媒和物があり得る。このようなブリモニジンの溶媒和物、水和物および多形体も「ブリモニジン」の語の中に包含されると解され、個々で開示する本発明の方法に有用である。
【0041】
本発明の方法においてブリモニジンを含む薬学的組成物も有用であると解される。このような薬学的組成物は、ブリモニジンと、任意で薬学的に許容される担体若しくは希釈剤のような賦形剤を含有し、これらはその対象に投与された場合長期間若しくは不変の有害な効果を実質上有しない、任意の担体若しくは希釈剤である。賦形剤は一般に活性化合物と混合され、または活性化合物を希釈し若しくは包むことが許される。担体は固体、半固体または液体で活性化合物の基剤若しくは賦形剤としての役をなす。固体担体の例としては、制限はされないが、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、ポリアルキレングリコール、タルカム、セルロース、グルコース、シュクロース、および炭酸マグネシウムが含まれる。座薬製剤には、例えば、担体としてプロピレングリコールを含むことができる。薬学的に許容される担体および希釈剤には、制限はされないが、蒸留水若しくは脱イオン水のような水;生理食塩水;水性デキストロース、グリセロール、エタノール等が含まれる。有効成分は溶解性であるか、または所望の担体若しくは希釈剤中の懸濁液として輸送されると解される。
【0042】
薬学的組成物はまた、制限はされないが、乳化剤、湿潤剤、甘味料若しくは香料、等張化剤、保存剤、緩衝剤若しくは抗酸化剤の一つ以上を任意で含むことができる。薬学的組成物で有用な等張化剤としては、制限はされないが、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩、マンニトール、グリセリンおよびその他の薬学的に許容される等張化剤が含まれる。薬学的組成物で有用な保存剤としては、制限はされないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロザール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀等が含まれる。pH調節のため種々の緩衝剤および手段が薬学的組成物で使用でき、これには制限はされないが、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびホウ酸緩衝液が含まれる。
【0043】
同様に、薬学的組成物で有用な抗酸化剤はその分野でよく知られていて、制限はされないが、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンが含まれる。本発明の方法で有用な薬学的組成物には、これらの他薬学分野で知られているその他の物質が含まれると解される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences Mack Publishing Company, Easton, PA 16th Edition 1980参照。ブリモニジン含有組成物はさらに、一つ以上の他の治療用物質と組み合わせ、同一または異なる組成物として、そして同一または異なる投与経路で投与することができる。
【0044】
ブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体若しくはラセミ混合物はその有効量が投与される。その有効量とは通常、所望するストレス関連疾患の重症性の予防または軽減を達成するのに必要な最小量であり、大まかには例えばストレス関連症状によりもたらされる不快さを許容できる程度にまで軽減するのに要する量である。そのような投与量は0.1-1000 mg/dayの範囲であり、例えば、0.1-500 mg/day、0.5-500 mg/day、0.5-100 mg/day、0.5-50 mg/day、0.5-20 mg/day、0.5-10 mg/dayまたは0.5-5 mg/dayであってよく、実際に投与される量はストレス関連疾患の重症度や型、患者の年齢や体重、患者の一般的な体調、そして薬学的な製剤や投与経路等を含む関係状況を考慮して医師により決定される。座剤や持続性放出製剤もまた本発明の方法において有用であり、例えば、皮膚パッチ剤、皮下若しくは皮膚上のデポ製剤、筋肉注射用製剤問うが含まれる。
【0045】
本発明の方法で有用な薬学的組成物は種々の手段によりその対象に投与され、その手段は例えば、治療される症状の型、薬学的な製剤、患者の病歴や危険因子そして症候等に依存する。本発明の方法に適した投与経路には、全身投与および局所投与が含まれる。非制限的な例として、ストレス関連疾患の重症性の予防または軽減に有用な薬学的組成物は経口的に;非経口的に;皮下投与ポンプにより;皮膚パッチで;静注、動脈注、皮下注若しくは筋肉内注射で;局所的な滴下剤、クリーム剤、ゲル若しくは軟膏で;埋め込み型または注射の持続型放出製剤で;皮下の微小ポンプ若しくは埋め込みデバイスで;くも膜下腔内ポンプ若しくは注射で;または硬膜外注射で投与される。投与方法に依存して、ブリモニジンは任意の薬学的に許容される投与量形態、例えば、制限はされないが、錠剤、丸剤、カプセル、座剤、粉末、液剤、懸濁液、乳化液、またはエアロゾル等にできる。そして、正確な用量の単回投与に適した単位用量形態や、連続的な制御投与のための持続性放出製剤にも任意ですることができる。
【0046】
本発明の方法は、ブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体若しくはラセミ混合物を末梢的に投与することにより実施され得る。ここで、「末梢的な投与」または「末梢的に投与する」とは、ブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体若しくはラセミ混合物を、投与対象において中枢神経系の外側に導入することをいう。末梢的な投与には脊髄若しくは脳内への直接投与以外の任意の投与経路を包含する。
【0047】
末梢投与は局所的または全身的でも可能である。局所投与の場合、投与部位の末端よりも投与部位とその周辺において有意に多くの薬学的組成物を与える。全身投与の場合は本質的に、少なくとも末梢系全体に薬学的組成物を輸送することになる。
本発明の方法において有用な末梢投与の経路には、限定はされないが例えば経口投与、局所投与、静脈その他の注射、埋め込み型ミニポンプその他の持続性放出デバイスまたは製剤が包含される。本発明において有用な薬学的組成物は末梢的に、例えば、錠剤、液剤、カプセル、粉末等の任意の許容される形態で経口的に;静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下若しくは非経口的な注射により;経皮的な拡散若しくは電気泳動的に;液滴、クリーム、ゲル若しくは軟膏のような任意の許容される形態で局所的に;そしてミニポンプその他の埋め込み型持続性放出デバイスまたは製剤により投与することができる。
以下の実施例は説明を意図したものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0048】
ブリモニジンの調製
この実施例はブリモニジン、5-ブロモ-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリンの調製を記載する。
6-アミノ-5-ブロモキノキサリン・HBrの調製
6-アミノキノキサリン(2.08g、14.4mmol)を氷酢酸11.5mlに溶解した。該溶液を水中で冷却し、臭素(0.74ml、2.3g、14.4mmol)を氷酢酸1.5mlに溶解してゆっくりと15分間で加えた。30分間撹拌した後、生成した赤オレンジ色の固体を濾取して乾燥エーテルで十分に洗浄した。固体を減圧下で終夜乾燥し粗生成物4.44g(収率100%)を得た。該化合物、6-アミノ-5-ブロモキノキサリン・HBrは明確な融点を示さなかった。粉末から赤色結晶への相転移が220℃付近で見られた。245℃付近で分解した。この物質を以下の6-アミノ-5-ブロモキノキサリン調製に直接使用した。
【0049】
6-アミノ-5-ブロモキノキサリン
上記の未精製6-アミノ-5-ブロモキノキサリンを水中に溶解し、デンプン−ヨウ素試験紙が陰性となるまで飽和硫酸水素ナトリウム水溶液を加えた。その後、2N 水酸化ナトリウム水溶液を加えて溶液を塩基性化し、酢酸エチルで徹底的に抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して遊離塩基を得た。粗生成物を沸騰ベンゼンから再結晶して黄色の結晶を得た;m.p. 155-6℃。種々の分析により、該黄色結晶は6-アミノ-5-ブロモキノキサリンと決定した。収率82%。
【0050】
6-ブロモ-6-イソチオシアナトキノキサリン
未精製の上記臭化水素酸塩生成物(4.27 g, 14.0 mmol)を水60mlに溶解した;激しく撹拌しながら、チオホスゲン(Aldrich, 1.28ml、16.8mmol)を少量ずつ加えた。2時間後、赤色の溶液を捨てた。生成した固体を濾取して十分に水洗した。減圧下250℃で乾燥し、赤色の結晶の塊3.38gを得た;m.p.157-80℃、収率90%。この物質の一部をカラムクロマトグラフィーで精製して白色結晶を得た;m.p.157-80℃。種々の分析により、この結晶は6-ブロモ-6-イソチオシアナトキノキサリンと決定した。
【0051】
5-ブロモ-6-(N-(2-アミノエチル)チオウレイド)キノキサリン
イソチオシアネート(3.25g、12.2mmol)をベンゼン145mlに溶解し、エチレンジアミン(Aldrich、5.43g、90.0mmol)をベンゼン18mlに溶解した溶液に250℃で2時間かけて加えた。さらに30分間撹拌してから、上澄みを除いた。残ったオイルに乾燥エーテルを加えてかき回してから除去し、これを3回繰り返して洗浄してから次の工程に直接用いた。構造確認のため生成物の一部をカラムクロマトグラフィー(SiO2、CHC13)で精製した。得られた白色結晶は175℃でガスを発生(噴き出した)して分解した。この白色固体は5-ブロモ-6-(N-(2-アミノエチル)チオウレイド)キノキサリンと決定された。
【0052】
5-ブロモ-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリン
上記の粗生成物を乾燥メタノール100mlに溶解し、硫化水素ガスが発生しなくなるまで褐色の溶液を19時間環流した。混合物を室温にまで冷却し、約50mlにまで濃縮した。黄色の固体を濾取して減圧下で乾燥した;2.52g(収率70%)の固体を得た;mp.242-40℃。粗生成物は殆どすべての有機溶媒に不溶であったため、最初に酸塩基抽出による精製を行った。粗生成物(23g)を0.5N塩酸100mlに溶解し、混濁した黄色溶液を濾過して得られた透明な橙黄色溶液を酢酸エチルで2回(各10ml)抽出した。水層を0℃に冷却し、6N 水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性とした;温度は常に、15℃以下に保った。析出した黄色固体を濾取して、洗浄液がpH試験紙で中性となるまで十分に水洗した。固体を減圧下で終夜乾燥して黄色固体1.97gを得た;m.p.249-25℃。回収率は約88%であった。更なる精製は再結晶により行った。上記の部分的に精製した生成物を100℃で激しく撹拌しながらN,N-ジメチルホルムアミド(約17ml/g)に溶解した。溶液を濾過して終夜放冷した。明るい黄色結晶を濾取した;mp.252-253℃。回収率は65-77%。種々の分析により、この明るい黄色結晶は5-ブロモ-6-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)キノキサリンであると決定した。
【実施例2】
【0053】
知覚増感のメカニズムが異なるマウスモデル
この実施例は、α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスで交感神経系が緊張すると、α-1受容体活性化により触覚過敏症の誘導が増強されることを示す。
A.スルプロストン誘導触覚過敏症の進行は交感神経系によるが、フェニレフリン誘導触覚過敏症は交感神経系の入力とは独立している。
知覚過敏症に対する交感神経系の寄与を分析するため、知覚過敏症のメカニズムが異なるマウスモデルを作製した。触覚過敏性は誘導薬をくも膜下腔若しくは腹腔内に投与した後マウスのわき腹を絵筆で軽く撫でその応答をスコア化して測定した。交感神経系の緊張を模倣するためにα-1アドレナリン受容体作用薬のフェニレフリンを注射した。Figure laおよび1bに示すとおり、フェニレフリンのくも膜下腔(i.t.)若しくは腹腔内(i.p.)投与は知覚過敏症を引き起こし、3ng i.t.および3 ng/kg i.p.の用量から有意な応答が認められた。触覚過敏症の誘導はα-1受容体に依存的であり、α-1受容体拮抗薬の5-メチルウラピジル(5-MU)を腹腔内投与すると過敏性応答が阻害され得ることから証明される。
【0054】
EP/EP受容体に対して選択的な合成プロスタグランディン作用薬であるスルプロストンの活性も試験した。Figure 1cに示すとおり、用量を増やしながらスルプロストンをくも膜下腔に投与すると用量依存的な触覚過敏症が誘発された;100ngおよび200ngで有意な過敏症が引き起こされた。特異的なEP受容体拮抗薬を同時に投与するとスルプロストン誘発触覚過敏症は完全に阻害されることから、スルプロストンはEP受容体を活性化して触覚過敏症を引き起こすことが示された。
【0055】
第三のマウスモデルとして、NMDAの用量を増やしながらくも膜下腔内に投与して化学感作を引き起こした;NMDAは後シナプス後角神経のNMDAチャネルを活性化することができる〔Woolf etal., Science 288: 1765-1769(2000)〕。くも膜下腔内投与されたNMDAは用量依存的な触覚過敏症を引き起こし100ngで最大効果を与えた。Figure 1dに示すとおり、この過敏症はNMDA拮抗薬のメマンチンで阻害された。
これら三つの興奮剤が異なるメカニズムで知覚経路を感作するのかどうか評価するために一組の薬物について触覚過敏症を妨げ若しくは改善し得るか試験した。表1に示すとおり、各受容体拮抗薬(5-MU、EP受容体拮抗薬またはメマンチン)は相当する受容体作用薬(それぞれフェニレフリン、スルプロストンおよびNMDA)により誘導された触覚過敏症のみを阻害した。臨床上、脊髄感作を軽減し神経因性疼痛の緩和に使用されるガバペンチンについても、触覚過敏症阻害効力を試験した。ガバペンチンはスルプロストンおよびNMDAにより誘導される触覚過敏症を阻害したが、フェニレフリン誘発の触覚過敏症は阻害しなかった。これによっても、異なる興奮剤による知覚経路の違いが示された。
【0056】
【表1】

【0057】
α-2ノックアウトマウスはDr.Brian Kobilkaから提供を受けた〔スタンフォード大;Link et al., Mol.Pharmacol., 48:48-55(1995); Altman et al., Mol.Pharmacol., 56:154-161(1999)〕。該α-2ノックアウトマウスはC57BL/6の遺伝的背景を有し、ホモ接合型ノックアウトマウスの親から繁殖させた。コントロールは性別と週齢が適合したC57BL/6野生型マウスを用いた。
【0058】
スルプロストン(Cayman Chemical; Ann Arbor, Michigan)およびNMDA(Sigma; St Louis, MO)はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。EP受容体拮抗薬
【化2】

は米国特許5,843,942号の記載にしたがって合成し、これとガバペンチン(Victor Medical; Irvine, CA)は50% DMSOと50% 生理食塩水に溶解した。抗ウィルス剤としてよく知られたアマンタジン(1-アマンタジン塩酸塩)の類縁体であるメマンチン(l-アミノ-3,5-ジメチルアマンタジン塩酸塩)は米国特許5,061,703号の記載〔Schneider et al., Dtsch Med.Wochenschr. 109:987(1984)も参照〕に準じて合成し、5-メチルウラピジル、ブリモニジン、フェニレフリン、クロニジンおよびグアネチジンはシグマ社より購入し、生理食塩水に溶解した。プラゾシン(Sigma)およびチザニジン(Biomol; Plymouth Meeting, PA)は蒸留水に溶解した。
【0059】
薬物の脊髄注射は以下のように行った。Hylden and Wilcox, Eur.J.Pharmacol., 67: 313-316(1980)に記載のようにマウス(20-30g)のくも膜下腔内に投与した。簡単には、脊椎のL5およびL6の間に、マイクロシリンジについた殺菌した30ゲージ1/2インチ針を挿入した。片手でマウス後肢帯をしっかりと持ち、他方の手でシリンジを脊柱上約20゜の角度で持った。L6棘突起の片側まで針を組織内に挿入し、棘突起と横突起の間にある溝に挿入した。針の角度を約10゜にまで小さくし針をゆっくりと前進させると急な衝撃を感じ、尾の蛇行運動が認められた。化合物を当該くも膜下腔に体積5μlでゆっくりと注入した。各化合物につき複数回投与して試験した。その後の実験ではすべて薬物の最小有効量を用いた。
【0060】
小さな絵筆でマウスわき腹を軽く撫でた場合(通常は痛みはない)のマウスの応答をスコア化することにより、軽い接触に対する過敏性を定量化した。薬物注入15分後から50分後の間、各5分ごとに以下のスケールでマウスを評価した;鳴き声を上げて絵筆に噛み付き、積極的な逃避行動を示すマウスはスコア「2」を与えた;鳴き声が穏やかで逃避を試みるマウスにはスコア「1」を与えた;絵筆で撫でても応答しないマウスにはスコア「0」を与えた。Minami et al., Pain 57: 217-223(1994)の記載のように、スコアを合計して0から16の累積スコアを算出した。Studentsの両側t-検定を用いてvivo試験の有意差を統計的に計算した。
【0061】
グアネチジンによる交感神経遮断は原則的に下記のとおり行った。動物にグアネチジン〔Malmberg and Basbaum, Pain 76:215-222(1998)〕50mg/kgを腹腔内投与して24時間後に触覚過敏性のベースラインを評価した。通常の触覚過敏性を示したマウスにつき、触覚過敏症の化学誘導に対する感受性を評価した。交感神経遮断前の応答に戻ったことで示されるように、マウスは6日から8日後には交感神経遮断から回復した。
B. α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスにおける交感神経緊張の増大は、α-1受容体活性化による触覚過敏症誘導に対する感受性を増加させる。
【0062】
交感神経緊張が知覚感作の感受性に影響を及ぼすかどうか評価するため、α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスにおける触覚過敏症の化学誘導に対する感受性を野生型マウスのそれと比較した。α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスは野生型マウスに比して、触覚過敏症のベースラインを示さなかった。最初に触覚過敏症を引き起こすフェニレフリン濃度をノックアウトマウスと野生型マウスで比較した。Figure 2に示したとおり、α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスの両方において劇的なフェニレフリン用量応答曲線の左方移動があった。これはフェニレフリンの触覚過敏症誘導能が両方のα-2ノックアウトマウスにおいて、そしてα-2Cノックアウトマウスにおいてはより強力に増強されることを示している。特に、野生型マウスにおいては強力な触覚過敏症誘導用量であるフェニレフリンの30ng/kgが、α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスにおいてはそれぞれ0.1ng/kgおよび0.3ng/kgのフェニレフリンで最大の触覚過敏症をもたらした。さらにFigure 2からは、野生型マウスにおいてはゆったりとした二相性の用量応答曲線が両方のノックアウトマウスにおいてはより険しい用量応答曲線となっていることが分かる。
【0063】
グアネチジンの全身投与は、交感神経末端からノルアドレナリンを枯渇させることにより機能的な交感神経遮断をもたらす。α-2ノックアウトマウスにおけるフェニレフリン用量応答曲線の移動が交感神経緊張によるものかどうか試験するため、α-2Aノックアウトマウスをグアネチジン処理(50mg/kg i.p.)により化学的に交感神経遮断を行い、24-30時間後にフェニレフリン誘発感受性を試験した。グアネチジン処理したα-2Aマウスにおいては、フェニレフリンに対する感受性増加は部分的に解除されその二相性用量応答曲線は野生型マウスで観察されたもの(Figure 2参照)と類似であった。これらの結果により増大した交感神経緊張がα-2Aノックアウトマウスにおける知覚感受性を増加させることが確認された。
【0064】
C.交感神経系がスルプロストン誘発触覚過敏症を増強する。
一次求心性感作に対してノックアウトマウスがより感受性が大かどうか調べるため、野生型およびα-2ノックアウトマウスに対して濃度を高めながらスルプロストンをくも膜下腔内に投与した。Figure 3に示すとおり、スルプロストンの用量応答曲線は野生型およびα-2Cノックアウトマウスでは同等であり、α-2Aノックアウトマウスでは左方にシフトしていた。特に、野生型およびα-2Cノックアウトマウスでは部分的な過敏症を誘発する用量が100ngであり、最大効果用量が200ngであったのに比較して、α-2Aノックアウトマウスでは30ngの用量が最大効果を与えた。グアネチジン(50mg/kg i.p.)による化学的交感神経遮断はスルプロストンに対するα-2Aノックアウトマウスの感受性を減少させた。Figure 3に示すとおり、スルプロストン誘発触覚過敏症の用量応答はグアネチジン処理したα-2Aノックアウトマウスにおいておよそ10倍右方へシフトした。これらの結果は、交感神経系がスルプロストン感作を増大していることを示す。
【0065】
D.交感神経系はNMDA誘発触覚過敏症には寄与しない。
NMDAによる後角感作に対してα-2ノックアウトマウスがより感受性大かどうか調べるため、野生型およびα-2ノックアウトマウスに対して濃度を高めながらNMDAを注射した。Figure 4に示すとおり、α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスはいずれも野生型マウスを超えてNMDAに対する感受性が高いことはなかった。これらの結果は、交感神経系がNMDA誘発触覚過敏症に寄与しているとは思われないことを示す。
要約すると、これら結果からα-2ノックアウトマウスにおいては交感神経活性が高いレベルにあること、さらに刺激の部位と方法に特異的な感作増強を示すことが明らかになった。
【実施例3】
【0066】
α-2作用薬のブリモニジンおよびクロニジンの活性比較
この実施例は、交感神経系により増強される知覚過敏症を軽減する作用がα交感神経作用薬により異なることを示す。
A.クロニジンと異なり、ブリモニジンは交感神経系により増強される触覚過敏症を軽減する。
【0067】
脊髄に投与されたα-2アドレナリン作用薬は脊髄上のα-2A受容体を介して神経因性疼痛を軽減する。α-2ノックアウトマウスにおいて増加した交感神経活性がα-2作用薬の鎮痛活性を変化させるかどうか調べるため、幾つかの作用薬の活性を試験した。最初にα-2作用薬のブリモニジンおよびクロニジンをNMDAモデルで試験した;該モデルではノックアウトマウスの基礎的交感神経系緊張によっては感作は影響されない。NMDAとクロニジン若しくはブリモニジンをあわせてくも膜下腔内に投与すると野生型およびα-2Cノックアウトマウスにおいては触覚過敏症を完全に阻害した(それぞれFigures 5aおよびc)。予測されるとおり、α-2AノックアウトマウスにおいてはクロニジンもブリモニジンもNMDA誘発触覚過敏症を阻害しなかった(Figure 5c);これは脊髄のα-2Aアドレナリン受容体サブタイプはα-2アドレナリン作用薬の鎮痛活性を媒介するという従来の研究〔Lakhlani et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:9950-9955(1997); Stone et al., J.Neurosci., 17:7157-1765(1997); Hunter et al., Br.J.Pharmacol., 122:1339-1344(1997)〕と一致する。
【0068】
交感神経緊張に感受性のあるスルプロストン誘発触覚過敏症においてもブリモニジン鎮痛活性の同様のパターンが観察された。対照的に、クロニジンの結果は全く異なる;クロニジンは野生型マウスでは鎮痛活性を示すが、α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスでは鎮痛活性を示さなかった(Figures 5bおよびdの比較)。これら結果は、α-2全作用薬は交感神経的に増強された条件において、ブリモニジンは活性でクロニジンは不活性という異なる活性を示し得ることを示す。
B.クロニジンまたはチザニジンと異なり、ブリモニジンは鎮静作用を伴うことなくスルプロストン誘発過敏症を軽減する。
【0069】
鎮静作用はα-2作用薬を含む多くの薬物の用途を制限する。そこで、鎮静をもたらす用量と知覚過敏症をもたらす用量との間に差があるか試験してα-2作用薬を比較した。
三つのα-2作用薬(チザニジン、クロニジンおよびブリモニジン)について、鎮静効果と触覚過敏症阻害効力を自発運動モデルおよびスルプロストン誘発触覚過敏症をそれぞれ用いて種々の用量で比較した。腹腔内投与15分後および50分後の間5分毎に一群マウス5-6匹の触覚過敏症をスコアに記録した。基剤のみの動物のスコアは通常約4であった。さらに、一群マウス5-6匹の自発運動を腹腔内投与30分後の5分間に測定した。基剤処理した動物に対する自発運動を百分率で表した;%鎮静は100%から自発運動%を引き算して計算した。Figure 6に示すとおり、試験した三種のα-アドレナリン作用薬中、ブリモニジンのみが鎮静と分離し得る鎮痛効果を与えた。この結果から、例えばスルプロストン誘発触覚過敏症のような交感神経的に増強された疾患を鎮静を伴わずに軽減する効力においてはブリモニジンはチザニジンやクロニジンのような他の二つのα-2全作用薬とは異なることが示された。
【0070】
C. α-アドレナリン全作用薬のα-1に対するα-2機能選択性の変化
α-2A、α-2C、α-1Aおよびα-1Bを安定して発現しているセルラインを使用した試験で、α-アドレナリン受容体に対するブリモニジンおよびクロニジンの薬学的特性を分析した。
以前の研究と一致して、α-2Aおよびα-2C受容体を安定して発現しているPCl2細胞におけるフォルスコリン誘発cAMP蓄積阻害効力の順序(Figures 7a、b;表2)は、デクスメデトミジン≧ブリモニジン>クロニジン>チザニジン≧フェニレフリンであった〔Jasper et al., Biochem Pharmacol., 55:1035-1043(1998); Pihlavisto et al., Eur.J.
Pharmacol., 385:247-253(1999)〕。ブリモニジン、クロニジンおよびチザニジンはα-2C受容体上よりもα-2A受容体上において約10倍強力であった。
【0071】
同じ化合物につき、α-1Aおよびα-1B受容体を安定して発現しているHEK293細胞中のα-1媒介細胞内カルシウム増加効果の官能試験をした(Figures 7c、d;表2)。α-1Aおよびα-1B受容体上における効力の順序は、フェニレフリン>クロニジン>チザニジン=デクスメデトミジン>ブリモニジンであった。α-2作用薬のクロニジン、チザニジンおよびデクスメデトミジンは部分作用薬であり、他方、ブリモニジンはα-1A受容体上では弱い活性を示しα-1B受容体上では非活性であった。こうして、クロニジンおよびチザニジンは結合試験により従前「α-2選択的」作用薬と特徴付けられていたが、官能試験の結果α-1およびα-2受容体間の活性化において10倍の選択性もなかった。対照的に、デクスメデトミジンは官能試験で約300倍の選択性、ブリモニジンは官能試験で最も高い選択性を有し、α-1受容体に比してα-2受容体に1000倍より大の選択性を示した(表2参照)。これらの結果は、ブリモニジンがα-1に対してα-2に選択的な作用薬であり、ブリモニジンのα-2/α-1選択性はクロニジンのような他の全作用薬と対照的であることを示す。
【0072】
クロニジンとブリモニジンにおけるα-2/α-1選択性の違いは、クロニジンのα-1作用がα-2Cノックアウトマウスにおける交感神経緊張を増強し、スルプロストンモデルにおけるクロニジンの鎮痛作用がマスクされることを説明する。これら結果はα-2Cノックアウトマウスにおいてクロニジンとα-1拮抗剤のプラゾシンを同時投与するとクロニジンの鎮痛活性が回復することからも支持される(Figure 7e)。プラゾシンそれ自体は野生型マウスまたはα-2Cノックアウトマウスにおいて鎮痛活性を有しない。
【0073】
要約すると、α-2Cノックアウトマウスにおいてクロニジンの鎮痛活性が消失し、ブリモニジンの活性が消失しないことはクロニジンのα-1作用薬としての結果であり、多くの「α-2作用薬」におけるα-1作用活性がストレス関連およびその他の交感神経により増強される疾患の治療効果を妨げ得ることが示される。
【0074】
安定してアドレナリン受容体を発現しているセルラインは、以下のようにして確立された。ウシα-1A、ハムスターα-1B、ヒトα-2Aおよびα-2C受容体のcDNA平滑末端をレトロウイルスベクターpCL BABE Puro中のNheI-EcoRI部位にサブクローニングした。構成したレトロウイルスを二重鎖DNAシーケンシングで確認した。モロニー白血病ウイルスのGag-Polを安定して発現しているHEK293セルラインであるHEK293GPを、適切なレトロウイルスベクターと、水疱性口内炎ウイルス外被タンパクVSV-Gの発現ベクターであるpMD.Gでコトランスフェクションして高力価の偽型レトロウイルス粒子を作製した。トランスフェクションの16時間後、メディア(DMEM, 10% FCS)を交換した;高力価のメディア(〜1 X 106 pfu/mL)を48時間後に細胞収集した。0.4μMのフィルターで上澄を濾過した。
【0075】
ヒトα-2Aおよびα-2C受容体の上澄を異なる濃度で未処理のPC12細胞に加え、48時間培養した。形質導入した細胞株を低濃度で新たなプレートに移しピュロマイシン100pg/mlを含む培地中で培養した。形質導入されなかった細胞は3日以内に死滅し単一の増殖巣が2ヶ月間成長した。当該増殖巣を取り出して拡大し、ブリモニジン放射性リガンド結合により受容体密度を試験した。α-2受容体官能活性はフォルスコリン誘発cAMP蓄積阻害により確認した。
【0076】
ウシα-1Aおよびハムスターα-1B受容体上澄を未処理のHEK293細胞に加えて48時間培養した。形質導入した細胞株を低濃度で新たなプレートに移しピュロマイシン0.25μg/mlを含む培地中で培養した。3日間以内に有意な細胞死が見られ、単一の増殖巣が2週以内に現れた。当該増殖巣を取り出して拡大した後、拡大されたサブクローンについて、フェニレフリン誘発Ca2+蓄積を測定することによりα-1受容体の発現を官能的に試験した。受容体密度はプラゾシン放射性リガンド結合試験により測定した。
【0077】
ウシα-1Aまたはハムスターα-1Bアドレナリン受容体を安定して発現しているHEK293細胞を用いて、細胞内Ca2+応答を以下のように測定した。ポリD-リジンでコートした96ウエルプレート上で、使用の一日前に10%加熱不活性化ウシ胎仔血清、1%抗生物質-抗真菌剤および0.25μg/mlピュロマイシンを含む0.2ml DMEM中にウエルあたり40,000から50,000個の細胞を播いた。10mM HEPES、2.0mM CaCl、および2.5mM プロベネシッドを追加したHBSSで細胞を2回洗浄し、4μMのFluo-4(Molecular Probes;Eugene, Oregon)を添加して37℃で60分間培養した。細胞外の染料をプレートより2回洗浄してから、該プレートを蛍光分析画像プレートリーダー(FLIPR; Molecular Devices; Sunnyvale, California)上にセットした。リガンドはHBSSで希釈して96ウエルプレート上に等分して加えた。薬物は0.64nMから10,000nMの濃度範囲で試験した。Ca2+応答は任意の蛍光単位で得られた。
【0078】
【表2】

【0079】
細胞内cAMP測定は以下のように行った。ポリD-リジンでコートした96ウエルプレート上で、10%ウマ血清、5%加熱不活性化ウシ胎仔血清、1%抗生物質-抗真菌剤および100μg/mlピュロマイシンを含む100μl DMEM中にウエルあたり30,000個の細胞密度でヒトα-2Aまたはヒトα-2Cアドレナリン受容体を安定して発現しているPC12細胞を播いた。細胞を37℃、5%COの条件下で培養した。細胞に対してIBMX(最終濃度 1mM)、フォルスコリン(最終濃度10)および適当な薬物希釈(最終濃度10−5から10−12M)を含む等量のメディアを加えて薬物投与した。10分間培養した後、メディアを吸引して細胞を200μlの溶解緩衝液(Amersham Biosciences ; Piscataway, New Jersey)で溶解した。プレートは試験前-20℃で24時間まで貯蔵した。細胞内cAMPはBiotrakのcAMPイムノアッセイシステムを使用し製造元の指示に従って決定した。プレートはプレートリーダー上で450nmにて測定した。
【0080】
in vitro試験の用量応答曲線は、KaleidaGraph(Synergy Software; Reading, PA)を使用し、最小二乗法で下式に適合させ作製した。
【数1】

有効率は化合物の最大効果を標準の全作用薬(α-1受容体ではフェニレフリン、α-2受容体ではブリモニジン)の効果と比較して決定した。
【0081】
上記のすべての雑誌論文、参考文献及び引用特許はその公表の如何にかかわらずその全体をここで引用する。
本発明は参照のために実施例を提示して記述したが、本発明の精神から離れることなく種々の変更が可能と理解すべきである。従って、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、いくつかの異なる化学モデルで観察された触知性過敏症を示す。各群はそれぞれ5-6匹の野生型マウスよりなる。触知性過敏症は以下のように評価した;感作スコアは測定時間35分間で各5分ごとに決定してそれを合計し平均±SEMを計算した。各群は基剤のみの対照群と対応のない両側t検定で比較した(* p < .01, ** p < .001)。(a)α-1アゴニストのフェニレフリンを脊髄注射すると用量依存的に触知性過敏症を誘導する。種々の用量のフェニレフリン(黒丸)をくも膜下腔内に投与した。α-1拮抗剤の5-MU(30μg/kg, i.p. ; 黒四角)はフェニレフリン30ngのくも膜下腔内投与15分前に投与した。(b)フェニレフリンの全身投与は用量依存的な触知性過敏症を誘導する。種々の用量のフェニレフリン(黒丸)を腹腔内に投与した。α-1拮抗剤の5-MU(30μg/kg, i.p. ; 黒四角)はフェニレフリン30ng/kgのくも膜下腔内投与15分前に投与した。(c)選択的なEP1/EP3アゴニストであるスルプロストンの脊髄投与は、用量依存的に化学的な触知性過敏症を誘導する。スルプロストン(黒丸)の用量を増量させつつくも膜下腔内に投与した。EP1拮抗剤(100ng,i.t.; 黒四角)はスルプロストン200ngの投与15分前に注射した。(d)NMDAの脊髄投与は、用量依存的に触知性過敏症を誘導する。種々の用量のスルプロストン(黒丸)をくも膜下腔内に投与した。NMDA拮抗剤のメマンチン(1μg,i.t.; 黒四角)はNMDA 100ngの投与15分前に注射した。
【0083】
【図2】図2は、α-2Aおよびα-2Cノックアウトマウスにおける交感神経系の緊張増加が、α-1受容体の活性化により触知性過敏症誘導を増強することを示す。フェニレフリンの用量を増加させつつ、野生型マウス(黒丸)、α-2Aノックアウトマウス(黒四角)、α-2Cノックアウトマウス(黒三角)に腹腔内投与し、触知性過敏症の試験に供した。α-2Aノックアウトマウスにグアネチジン50mg/kg, i.p.をフェニレフリンのi.p.投与24-30時間前に投与して一時的な化学的交感神経切除を行った(白四角)。各群はマウス5-6匹で構成した。平均の感作スコアおよびSEMを計算し、対応のない両側t検定で基剤のみの対照群と比較した(* p<.01, **p <.001)。
【0084】
【図3】図3は、交感神経系がスルプロストン誘発触知性過敏症を増強することを示す。スルプロストンの用量を増加させつつ、野生型マウス(黒丸)、α-2Aノックアウトマウス(黒四角)、α-2Cノックアウトマウス(黒三角)にくも膜下腔内投与し、触知性過敏症の試験に供した。α-2Aノックアウトマウスにグアネチジン50mg/kg, i.p.をスルプロストンのi.t.投与24時間前に投与して一時的な化学的交感神経切除を行った(白四角)。各群はマウス5-6匹で構成した。平均の感作スコアおよびSEMを計算し、対応のない両側t検定で基剤のみの対照群と比較した(* p<.01, ** p<.001)。
【0085】
【図4】図4は、α-2ノックアウトマウスが変性したNMDA誘発触知性過敏症を生じないことを示す。NMDAの用量を増加させつつ、野生型マウス(黒丸)、α-2Aノックアウトマウス(黒四角)、α-2Cノックアウトマウス(黒三角)にくも膜下腔内投与した。マウス5-6匹の各群につき触知性過敏症をスコア化した。平均の応答およびSEMを計算し、対応のない両側t検定で基剤のみの対照群と比較した(* p<.01, ** p<.001)。
【0086】
【図5】図5は、αアドレナリン作用薬が交感神経系に依存して増強された知覚過敏症の緩和において異なることを示す。各群マウス5-6匹の応答をスコア化した;上記のとおり平均の応答とSEMを計算した。各薬物処理群を、対応のない両側t検定で基剤のみの対照群と比較した(* p<.01, ** p<.001)。(a)脊髄投与したブリモニジンとクロニジンは野生型マウスにおいてNMDA誘発触知性過敏症を緩和する。マウスに基剤のDMSOをくも膜下腔内投与し、または100ngのNMDAと食塩水、0.4μgのブリモニジン(UK14304)若しくは1μgのクロニジンをそれぞれあわせてくも膜下腔内投与した。
【0087】
(b)脊髄投与したブリモニジンとクロニジンは野生型マウスにおいてスルプロストン誘発触知性過敏症を緩和する。マウスに基剤のDMSOをくも膜下腔内投与し、または200ngのスルプロストンと食塩水、0.4μgのブリモニジン(UK14304)若しくは0.4μgのクロニジンをそれぞれあわせてくも膜下腔内投与した。
(c)脊髄投与したブリモニジンとクロニジンはα-2CノックアウトマウスにおいてNMDA誘発触知性過敏症を緩和するが、α-2Aノックアウトマウスにおいては緩和しない。
(d)脊髄投与したブリモニジンとクロニジンはα-2Cノックアウトマウスにおけるスルプロストン誘発触知性過敏症の緩和能が異なる。マウスに基剤のDMSOをくも膜下腔内投与し、または200ng(α-2Cノックアウトマウス)若しくは30ng(α-2Aノックアウトマウス)のスルプロストンと食塩水、0.4μgのブリモニジン(UK14304)若しくは0.4μgのクロニジンをそれぞれあわせてくも膜下腔内投与した。α-2作用薬の鎮痛効果はα-2Aノックアウトマウスでは認められず、クロニジンの鎮痛効果もまたα-2Cノックアウトマウスにおいて失われた。
【0088】
【図6】図6は、ブリモニジンが鎮静作用を示さずスルプロストン誘発触知性過敏症を緩和するが、クロニジン、チザニジンは緩和しないことを示す。三つのα-2作用薬(チザニジン、三角;クロニジン、四角;ブリモニジン、丸)につき、用量依存的な抗過敏症および鎮静効果をスルプロストン誘発触知性過敏症と自発運動でそれぞれ比較した。過敏症全スコアの平均およびSEMを計算し実線で示した(左側軸)。基剤を与えた動物に対する自発運動をパーセントで表し、100%から%自発運動を差し引いて計算した結果を%鎮静として点線で表した(右側軸)。
【0089】
【図7】図7は、α-アドレナリン作用薬のクロニジンとブリモニジンにつき、α-1作用薬に対して変化する作用選択性を示す。フェニレフリン(黒四角)、クロニジン(黒ひし形)、チザニジン(黒丸)、デクスメディトミジン(黒三角)およびブリモニジン(黒逆三角)の濃度を高めつつ、in vitroの細胞性基礎試験を用いてα-1およびα-2作用活性を試験した。(a、b)α-アドレナリン作用薬のα-1Aおよびα-1B作用活性。ウシα-1A受容体(a)またはハムスターα-1B受容体(b)を安定して発現しているHEK細胞において、種々の濃度のα-アドレナリン作用薬を添加した後の細胞内カルシウムの増加をカルシウム感受性染料の蛍光変化を測定することにより決定した。作用薬は6-15回、三重試験で測定して各濃度について蛍光度の平均とSEMを算出した。典型的な実験結果を示す。
【0090】
(c、d)α-アドレナリン作用薬のα-2Aおよびα-2C作用活性。ヒトα-2A受容体(c)またはヒトα-2C受容体(d)を安定して発現しているPC12細胞において、種々の濃度のα-アドレナリン作用薬を添加した後のフルスコリン誘発cAMP蓄積の阻害。作用薬は3-5回、三重試験で測定して各濃度について平均%阻害とSEMを算出した。典型的な実験結果を示す。
(e)α-2Cノックアウトマウスにおいて、クロニジンとプラゾシンをあわせて投与するとクロニジンの鎮痛作用が回復する。野生型マウス(白棒)およびα-2Cノックアウトマウス(斜線棒)に、基剤、プラゾシン(100ng/kg, i.p.)、スルプロストン(200ng, i.t.)、クロニジン(400ng/kg, i.t.)、または種々の組み合わせを示したように注射した。各群マウス5-6匹の触知性過敏症をスコア化し平均応答およびSEMを算出した。薬物処置群を対応のない両側t検定で基剤のみの対照群と比較した(* p<.01, **p <.001)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象にブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、立体異性体、若しくはラセミ混合物の有効量を全身投与することを含んでなり、胃腸病;過敏性腸症候群(IBS);消化不良;心筋虚血とは関連しないとの条件で、頻脈;パニック発作;インスリン抵抗;II型糖尿病;非炎症性の皮膚症状;筋収縮障害;偏頭痛関連の知覚過敏症;および行動障害よりなる群から選択されるストレス関連症状の重症性を軽減しまたは予防する方法。
【請求項2】
該関連症状が胃腸病である、請求項1の方法。
【請求項3】
該関連症状が過敏性腸症候群である、請求項1の方法。
【請求項4】
該関連症状が消化不良である、請求項1の方法。
【請求項5】
該関連症状が、心筋虚血とは関連しないとの条件で頻脈である、請求項1の方法。
【請求項6】
該頻脈が肺疾患と関連する、請求項5の方法。
【請求項7】
該関連症状がパニック発作である、請求項1の方法。
【請求項8】
該関連症状がインスリン抵抗である、請求項1の方法。
【請求項9】
該関連症状がII型糖尿病である、請求項1の方法。
【請求項10】
該関連症状が非炎症性の皮膚症状である、請求項1の方法。
【請求項11】
該関連症状が筋収縮障害である、請求項1の方法。
【請求項12】
該筋収縮障害が骨格筋の収縮障害である、請求項11の方法。
【請求項13】
該筋収縮障害が平滑筋の収縮障害である、請求項11の方法。
【請求項14】
該平滑筋収縮障害が膀胱炎に関連する、請求項13の方法。
【請求項15】
該平滑筋収縮障害が非細菌性前立腺炎に関連する、請求項13の方法。
【請求項16】
該筋収縮障害が緊張性頭痛に関連する、請求項11の方法。
【請求項17】
該関連症状が偏頭痛関連の知覚過敏症である、請求項1の方法。
【請求項18】
該関連症状が行動障害である、請求項1の方法。
【請求項19】
該有効量が経口的に投与される、請求項1の方法。
【請求項20】
該有効量が局所的に投与される、請求項1の方法。
【請求項21】
該有効量がパッチ剤を用いて投与される、請求項1の方法。
【請求項22】
該有効量が静脈内に投与される、請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−524625(P2007−524625A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517594(P2006−517594)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/020194
【国際公開番号】WO2005/002580
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】