説明

ストレス関連障害を含む機能的身体障害の予防および処置

【課題】ストレスの軽度の徴候を示す急性ストレス下にある個体を治療すること。
【解決手段】ストレス下にある個体に、治療有効量の二重セロトニン/ノルエピネフリン再取り込みインヒビターを投与することによる、ストレス関連障害の予防または処置のための方法が、記載される。セロトニン/ノルアドレナリン/ドパミンについての三重モノアミン再取り込みインヒビターもまた、ストレス関連障害の危険性がある個体に投与され得る。好ましい実施形態において、この化合物はミルナシプランであり、そして有効量で予防的に投与されて、危険性のある個体においてストレス関連障害を遅延または予防する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年4月24日に出願した発明の名称が「Methods of tr
eating Functional Somatic Disorders」であるJ
ay D.KranzlerおよびSinivas G.Raoによる米国特許出願番号
60/375,068と、2003年4月18日に出願した発明の名称が「Preven
tion and Treatment of Stress−Related Dis
orders」であるJay D.KranzlerおよびSrinivas G.Ra
oによる米国特許出願 に対して、優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、機能的身体障害(FSD)(ストレス関連障害(SRD)を含む)を予防ま
たは処置する方法に関する。1つの特定の局面において、本発明は、機能的身体障害を、
二重セロトニンノルエピネフリン再取り込みインヒビター(これはまた、NMDAアンタ
ゴニスト活性も有する)を用いて、処置または予防する方法に関する。別の局面において
、本発明は、1つ以上のFSD症状を有するヒトにおいてFSDを処置する方法に関し、
この方法は、FSDの少なくとも1つの身体症状と1つの中枢神経系(CNS)症状とを
同時に処置することによる。好ましい実施形態において、本発明は、二重セロトニン/ノ
ルエピネフリン再取り込みインヒビターを用いてSRDを予防または処置する方法に関す
る。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ストレス関連障害(SRD)は、医師の診察室に訪問するうちの75%〜90%の原因
である。ストレスは、疾患の発症に影響を与え得るかまたは疾患に対する感受性に影響を
与え得る。ストレスはまた、基礎となる別の疾患病態生理が存在する場合にさえ、その疾
患の進行または経過に影響を与え得る。既存の疾患からの回復もまた、ストレスが原因で
遅らされ得る。
【0004】
ストレッサーとは、身体の温度、血圧、および他の機能の安定なバランスを破壊する、
事象または他の要因である。ヒトは、洗練された脳および思考過程を有するので、破壊を
認識することもまた、ストレッサーであり得る。身体は、種々のホルモンの分泌を変化さ
せて安定性を再確立するストレス応答によって、ストレッサーに応答する。このストレス
応答は、損傷、飢餓、熱、低温、または化学物質曝露によって誘発され得る。このストレ
ス応答は、短期の緊急の場合に有用である。なぜなら、このストレス応答は、エネルギー
および血圧を増加させ、同時に、より重要ではない機能(例えば、生殖、成長、および消
化)を一時的に制限するからである。しかし、そのストレス応答が慢性的に活性化された
場合、疾患が生じ得る。例としては、欝病、潰瘍、線維筋痛症候群、慢性疲労症候群、過
敏性腸症候群、および他の生理学的機能不全が挙げられる。
【0005】
ストレスに応答して変化される多数の生理学的プロセスが存在する。これらのプロセスには、コルチソルレベルの変化、コルチコトロピンレベルの変化、カテコールアミンレベルの変化、およびセロトニンレベルの変化がある。これらのレベルは、急性ストレッサーが取り除かれた後に、ベースラインまで戻る(非特許文献1)。次いで、これらの生化学的ストレスマーカーは、不健康および心理社会的障害をもたらす。結果的に、ストレスは、身体的健康および精神的健康において主要な役割を果す。
【0006】
SRDは、個々の環境におけるストレスの結果として生じる、広範な種類の身体的障害を包含する。例えば、ストレスは、高い血圧、心疾患、頭痛、大腸炎、過敏性腸症候群、顎関節障害、癌、消化性潰瘍、不眠、皮膚障害、および喘息に寄与する要因である。ストレスはまた、他の状態(例えば、多発性硬化症、糖尿病、ヘルペス、精神病、物質乱用、および暴力的性癖または攻撃的性癖の存在により特徴付けられる精神医学的障害)を悪化し得る。特に、ストレスは、機能的身体障害、情動障害、および大欝病障害に寄与する。これらの障害としては、慢性疲労症候群(CFS)、線維筋痛症候群(FMS)、湾岸戦争症候群、不安および心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような、障害が挙げられる。
【0007】
SRDの機構に関する普及している理論の1つは、視床下部−下垂体系における機能不全付近に集中している。ストレス関連障害(例えば、慢性疲労症候群、線維筋痛症候群、および欝病)において同定された、いくつかの神経内分泌異常が存在する。これらの異常のほとんどは、低い中枢副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)レベルと一致しており、これは、末梢におけるカテコールアミンおよびグルココルチコイドの変化ならびに鈍ったストレス応答をもたらす。CFS患者において、視床下部−下垂体−副腎(HPA)系の鈍化(低い24時間での遊離コルチソル排出、副腎皮質刺激(adrenocortocotropic)ホルモン(ACTH)に対する副腎皮質感受性の増加、およびCRHに対するACTH応答の減弱を含む)が、存在する。これらの異常は、三次(視床下部)副腎不全と一致する(非特許文献2;非特許文献3)。FMSにおいて、副腎の応答性低下が、コルチソルの減少およびCRHに対する下垂体応答過大とともに観察されており、このことは、一次副腎不全を示唆する。HPA系の鈍化を示唆する同様の異常が、より一般的ではない慢性疲労状態の多く(例えば、気分変調または季節性感情障害)においても留意されている。この同様の異常はまた、それ程理解されていない傷害(例えば、湾岸戦争症候群にも関与し得る(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。
【0008】
正常な運動パターンまたは睡眠パターンを破壊するストレッサーはまた、この内分泌の不均衡に寄与し、そしてさらなる睡眠障害および運動障害を生じる。それにより、疲労と運動の欠如とがさらなるストレスを生じ、従って初期SRDを引き起こしそして既存の疾患をより深刻なレベルへと悪化させる、ポジティブフィードバックループが発生する。
【0009】
多くの治療は、SRDが明らかになりそして深刻な健康問題となった後で、SRDに取り組む。このポジティブフィードバックループの発生とそれから生じるSRDとを予防するために、有効な予防療法についての必要性が存在する。
【0010】
例示的SRDは、「一貫して明白な組織異常によってよりも、症状、苦痛および障害によって特徴付けられる」、機能的身体障害(FSD)である(非特許文献7)。いくつかの推定により、FSDは、集団中の20%程度を冒す。機能的身体障害(FSD)の例としては、片頭痛および緊張性頭痛(MTH)、過敏性腸症候群(IBS)、月経前不快気分障害(PMDD)、顎関節障害(TMD)、化学物質頻回暴露感度(MCS)、および間質性膀胱炎(IC)が、挙げられる。
【0011】
これらのFSDのすべてに種々の程度まで共通する症状としては、疼痛、疲労、ならびに認知困難および/または記憶困難が挙げられ(非特許文献8)、そしてすべてが、一般的集団において見出されるよりも高い有病率の睡眠障害(非特許文献9)および精神医学的障害(非特許文献10)に関係している。FSDにおいて一般的な疼痛徴候は、身体感覚刺激および/または内臓感覚刺激の全般的な知覚増大に起因すると考えられる。
【0012】
FSDに関係する特定の困難は、その障害の病因ならびにその障害に影響する生物学的要因、環境要因、および他の要因について、理解が不完全であることである。FSDの異なる症状発現の認知が無関係であり、一般に異なる医療分野により処置される場合、これらの異なる症状発現および適応症は、ある場合は同じ医薬で処置され、ある場合は異なる医薬で処置されてきた。FSDの種々の症状発現を処置するために現在使用される一般的な医薬のいくつかとしては、鎮痛薬、催眠薬、免疫抑制薬、他の種々の処方箋調剤、および一群の非処方箋調剤が、挙げられる。単一の薬剤または薬剤の組み合わせが、これらの障害の種々の症状発現の処置において有効であることは、示されていない。FSDが単一の障害として広範には認識されていないことが原因で、FSDについての有効な処置レジメンが欠如しており、有効な処置を開発する必要性が存在する。それらの共通の徴候が原因で、機能的身体障害は、関連していると考えられる。しかし、機能的身体障害は、異なる主要な症状を呈する。
【0013】
歴史的に、抗欝剤(AD)が、FSDの多くの処置において顕著な役割を果している。実際、複数の種類のADによる処置に対する多くのFSDの(部分的または全体的)応答性は、症状自体および付随する精神病理の両方が共通の病態生理学的特徴を共有する、「感情スペクトル障害(Affective Spectrum Disorder)」の形態として、FSDに対する共通の病因を示唆するために使用されている。しかし、種々の種類の抗欝剤が他の感情スペクトル障害に対して顕著な効果を有する一方で、ADの効力は、特に、選択的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI)薬の種類について、FSDにおいて限定される。さらに、提唱されるいかなるこのような共通の病因の性質および特異性も記載されておらず、感情スペクトル障害において、症状間のいかなる原因的関連性も提唱されておらず、暗示さえもされていない。これらの点は、特に、以下の刊行物において考察されている:非特許文献11、非特許文献12、ならびに非特許文献13。多変量モデルは、a)多くの要因が、症状の発生に寄与すること;2)その障害の発症のために必要な単一の要因が存在するわけではないこと;および3)これらの要因は、異なる組み合わせで相互作用すること、を示唆する。例えば、心理学的要因(例えば、ストレスまたは身体化)は、FSDの症状を明らかに悪化させ得る。
FSDの共存症を説明するためのなお他のアプローチにおいて、試験可能な仮説が暗示されている。なぜなら、これらの説明は、付随する他の症状の主要な原因として、心理学に対して生物学を選択することを「支持する」からである。これらのモデルは、FSDの身体的症状発現が主要であると考える人々と、精神医学的障害に主要であると焦点を当てる他の人々との間で分裂され得る。しかし、これらのパラダイムの臨床的予測は、診療所において経験的に観察されている結果と完全には一致しない。例えば、抗欝剤は、ほとんどすべての症例においてFSDの気分的要素において有効であることが実証されている;しかし、その症状の疼痛要素に対する抗欝剤の効力は、一致しているにははるかに及ばない。また、統計学的分析は、精神医学的困難のレベルについて制御された場合でさえ、種々のFSDの独立性を支持している。特に、非特許文献14;非特許文献15(前掲書);非特許文献16;および非特許文献17を参照のこと。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】McEwen N Eng J Med 1998 338(3):171〜179
【非特許文献2】Sternberg J Rheumatol 1993 20:418〜421
【非特許文献3】Bearnら、Biol Psychiatry 1995 37:245〜252
【非特許文献4】Goldら、N Eng J Med 1988 319:348〜353
【非特許文献5】Meaneyら、Ann NY Acad Sci 1993 697:70〜85
【非特許文献6】Vanderpoolら、J Clin Endocrinol Metabl 1991 72:1382〜1387
【非特許文献7】Barskyら、Ann Intern Med 1999;130:910〜921
【非特許文献8】Aaronら、Ann Intern Med 2001;134:868〜881
【非特許文献9】Aaronら、Arch Intern Med 2000;160:221〜227
【非特許文献10】Katonら、Ann Intern Med 2001;134:917〜925
【非特許文献11】Gruberら、Psychiatric Clinics of N.America 1996;19:351〜369
【非特許文献12】HudsonおよびPope,Amer J Psychiatry 1990;147:552〜564
【非特許文献13】Hudsonら、Journal of Rheumatology 1989;16:15〜22
【非特許文献14】Clauw Med Hypotheses 1995;44:369〜378
【非特許文献15】Mayer Gut 2000;47:861〜869;Barsky 1999
【非特許文献16】Robbinsら、J Nerv Mental Dis 1997;185:606〜615
【非特許文献17】Whorwellら、Gut 1986;27:37〜40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
提唱されるモデルすべてに関する問題は、それらのモデルが、患者のための処置の選択
について何の指示も提供せず、新規な薬物開発についての何の指示も提供しないことであ
る。なぜなら、試験されるべき仮説が、これらの説明によって何も生じないからである。
FSDに罹患した患者の処置のために有効な治療の開発について、有意な必要性が未だに
存在する。
【0016】
本発明の目的は、ストレスの軽度の徴候を示す急性ストレス下にある個体を、その徴候
が深刻なSRDへと悪化する前に処置するために有効な治療を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、SRDを発症する素因がある個体を同定し、その個体を、S
RDの症状発現を予防する化合物を用いて処置するための方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、急性ストレス下にある個体を、ストレッサーが軽減される時
期まで、SRDが明らかになる前に、薬学的組成物を用いて処置するための方法を提供す
ることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
ストレス関連障害(例えば、機能的身体障害(FSD))および/またはストレス関連
障害に伴う症状の予防または処置のための方法が、開発された。この方法は、一般的に、
FSDの少なくとも1つの身体的症状と、1つの中枢神経系(CNS)症状とを同時に処
置する工程を包含する。好ましい実施形態において、治療有効量の特定の型の二重セロト
ニンノルエピネフリン再取り込みインヒビター(「DRI」)化合物またはその薬学的に
受容可能な塩が、投与される。最も好ましいDRI化合物は、セロトニン再取り込み阻害
がノルエピネフリン再取り込み阻害より大きい、非三環系SNRI化合物と、ノルエピネ
フリン再取り込み阻害がセロトニン再取り込み阻害よりも大きい、NSRIとである。最
も好ましい化合物は、ミルナシプラン(milnacipran)またはその生物学的に
等価な塩もしくはその薬学的に受容可能な塩である。他の好ましい化合物は、デュロキセ
チン(duloxetine)およびベンルファキシン(venlfaxine)、また
はそれらの生物学的に等価な塩もしくは薬学的に受容可能な塩である。なお別の実施形態
において、治療有効量の特定の型の非三環系再取り込みインヒビター(「TRI」)化合
物またはその薬学的に受容可能な塩が、投与される。このTRI化合物は、主要な3つの
脳内モノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、およびドパミン)の再取り込み(従っ
て、中枢濃度の増加)をブロックする能力によって、特徴付けられる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
ストレス関連障害の予防または処置のための方法であって、該方法は、ストレス関連障害
を発症する危険性があるかまたはストレス関連障害を有する患者に、二重再取り込みイン
ヒビター(DRI)薬学的化合物および三重再取り込みインヒビター(TRI)薬学的化
合物からなる群より選択される、有効量の薬学的化合物を投与して、該ストレス関連疾患
の発症を遅延もしくは予防するか、または該ストレス関連障害の症状を緩和する工程、を
包含する、方法。
(項目2)
前記DRIがSNRI化合物である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記DRIがNSRI化合物である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記DRI化合物がNMDAアンタゴニスト活性を有する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記NSRI化合物もまた、NMDAアンタゴニスト活性を有する、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記SNRI化合物が、デュロキセチンおよびベンラファキシンからなる群より選択され
る、項目2に記載の方法。
(項目7)
前記NSRI化合物が、ミルナシプランである、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記TRI化合物が、NMDAアンタゴニスト活性を有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記TRIが、シブトラミンである、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記ストレス関連障害が、機能的身体障害である、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記FSDまたはFSDの症状が、MTH、IBS、AFP、PMDD、TMD、NCCP、MCS、LBP、ICおよびCPPからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記薬学的化合物が、ニューロンチン、プレガバリン、プラミペキソール、L−DOPA
、アンフェタミン、チザニジン、クロニジン、トラマドール、モルヒネ、三環系抗うつ薬
、コデイン、カルバマゼピン、シブトラミン、アンフェタミン、バリウムおよびトラゾド
ンからなる群より選択される薬剤と付属的に投与される、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記ストレス関連障害が、不安、心的外傷後ストレス障害および湾岸戦争症候群からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記投与量が、約25mg/日〜約400mg/日である、項目7に記載の方法。
(項目15)
前記投与量が、約100mg/日〜約250mg/日である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記ミルナシプランが、徐放性投薬処方物中に処方される、項目7に記載の方法。
(項目17)
前記薬学的化合物が、ストレッサーが取り除かれるまで投与される、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記薬学的化合物が、2週間にわたり投与される、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記薬学的化合物が、6ヶ月にわたり投与される、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記薬学的化合物が、1年以上にわたり投与される、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記化合物が、ストレス性事象の発生前に投与される、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記化合物が、ストレス性事象の発生の間に投与される、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記化合物が、ストレス性事象の発生直後に投与される、項目1に記載の方法。
(項目24)
項目1に記載の方法であって、神経伝達物質機能不全、HPA機能不全および神経内分泌機能不全からなるリストから選択される2つ以上の経路における機能不全を、薬学的に矯正することによる、FSDを予防または処置するための、方法。
(項目25)
1つ以上のFSDの症状を有するヒトにおいてFSDを予防または処置するための、項目1に記載の方法であって、該方法は、慢性疼痛、神経伝達物質変化、神経内分泌変化、睡眠障害および疲労からなるリストより選択される2つ以上の症状を処置する1種以上のSNRI薬学的化合物を、該ヒトに投与する工程を包含する、方法。
(項目26)
1つ以上のFSDの症状を有するヒトにおいてFSDを予防または処置するための、項目1に記載の方法であって、該方法は、FSDの少なくとも1つの身体症状および1つのCNS症状を同時に処置する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】なし
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
(略語)
CFS 慢性疲労症候群
FMS 線維筋痛症候群
PTSD 心的外傷後ストレス障害
SRD ストレス関連障害
FSD 機能的身体障害
5−HT セロトニン
NE ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)
NMDA N−メチルD−アスパラギン酸
NSAID 非ステロイド性抗炎症剤
SSRI 選択的セロトニン再取り込みインヒビター
TCA 三環系抗欝剤
SNRI 二重セロトニンノルエピネフリン再取り込みインヒビター
5−HT>NEが、暗示される
NSRI NE>5−HT SNRIについての代替的略語
DA ドパミン
TRI 5−HT、NE、およびDAの再取り込みをブロックする化合物
DRI 5−HTおよびNEの再取り込みをブロックする化合物の種類。この種類
は、SNRIサブクラスとNSRIサブクラスとに、さらに分割され得る。
(定義)
用語「二重セロトニンノルエピネフリン再取り込みインヒビター化合物」(本明細書中
でDRI化合物とも呼ばれる)とは、セロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込みを
阻害する、十分に認識された種類の抗欝化合物を指す。一般的DRI化合物としては、ベ
ンラファキシン(venlafaxine)、デュロキセチン(duloxetine)
、およびミルナシプラン(milnacipran)が挙げられるが、これらに限定され
ない。
【0022】
用語「NF>5−HT SNRI」または「NSRI」とは、セロトニンの再取り込み
を阻害するよりも多くノルエピネフリンの再取り込みを阻害する、DRI化合物の特定の
サブクラスを指す。このサブクラスは、本明細書中により詳細に記載されるように、本発
明の方法およびキットの特定の実施形態において有用である。
【0023】
用語SNRIとは、ノルエピネフリンの再取り込みを阻害するよりも多くのセロトニン
の再取り込みを阻害する、特定のDRI化合物を指す。
【0024】
用語TRIとは、セロトニンの再取り込み、ノルアドレナリンの再取り込み、およびド
パミンの再取り込みを阻害する、抗欝特性と食欲抑制特性と抗パーキンソン病特性とを備
えた化合物の種類を指す。
【0025】
用語片頭痛(Migraine)および緊張性頭痛(Tension Headach
e)とは、頭痛を生じる障害を指す。片頭痛は、通常は、以下の悪心、嘔吐、光恐怖(光
に対する嫌悪)、音恐怖(騒音に対する嫌悪)のうちのいくつかまたはすべてを伴う、片
側が脈動する頭痛である。平均4〜72時間継続する発作は、軽度〜深刻な強度であり、
運動により悪化される。緊張性頭痛は、非特異的な型の頭痛であり、脈管性でも片頭痛性
でもなく、そして器官疾患に関連しない。緊張性頭痛は、頸部および頭皮の後部の筋肉が
引き締まることにより生じる。
【0026】
用語異型顔面痛(Atypical Facial Pain)とは、顔面痛に関する
広範な問題(灼熱感(burning)、うずき(aching)、または痙攣(cra
mping)を含む)を包含する症候群を指し、顔面の片側にて、しばしば三叉神経領域
において生じ、しばしば、首上部または頭皮の背部へと広がり得、ごくわずかな寛解期間
しかない。
【0027】
用語非心臓性胸部疼痛(Non−Cardiac Chest Pain)とは、心臓
によって生じるのではない、胸部の疼痛を指す。非心臓性胸部疼痛の最も一般的な原因は
、食道(胃食道逆流疾患(GERD)および胃食道痙攣を含む)から生じる。
【0028】
用語過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome)とは、大
腸(結腸)の正常な機能を妨げる障害を指す。過敏性腸症候群は、一群の症状(痙攣性腹
部疼痛、鼓脹、便秘、および下痢)により特徴付けられる。過敏性腸症候群(IBS)は
、多大な不快感および窮迫を引き起こす。IBSは、永続的には腸に害を与えないが、い
く人かの人々を無力にするものであり得る。
【0029】
用語月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Diso
rder)とは、月経期間の前にありかつ大気分障害(major mood dist
rubance)についての精神医学的期間でもある、女性周期の一部に関係する身体を
衰弱させる症状の組を指す。月経前不快気分障害(PMDD)症候群は、非常に深刻であ
り、女性の日々の活動を完全に崩壊させる。
【0030】
用語顎関節障害とは、顎関節(jaw joint)((temporomandib
ular joint)すなわち(TMJ))と咀嚼を制御する筋肉とに影響する、しば
しば有痛であるたった1つの障害だけではなく一群の状態をも指す。これらの障害は、3
つのグループ(筋筋膜痛、変形性関節症、および関節の内部障害)へと分類される。
【0031】
用語化学物質頻回暴露感度(Multiple Chemical Sensitiv
ity)とは、ほとんどの人々に対して毒性でもアレルゲン性でもない家庭用物質または
環境物質に対して曝露された後に、個体が困難な複数の症状を報告する障害を指す。
【0032】
用語間質性膀胱炎(Interstitial Cystitis)とは、慢性骨盤痛
障害のうちの1つを指し、膀胱および周囲の骨盤領域において再発性の不快感または疼痛
を生じる状態である。症状としては、緊急の排尿の必要性(尿意促迫)、頻繁な排尿の必
要性(頻尿)、またはこれらの症状の組み合わせが挙げられ得る。疼痛は、膀胱が尿で満
たされる場合または空になった場合により、強度が変化し得る。
【0033】
用語慢性腰痛(Chronic Lower Back Pain)とは、(不断では
ないかもしれないが)6ヶ月間より長く継続する、腰部領域における疼痛を指す。
【0034】
(I.ストレス関連疾患)
ストレスにより引き起こされるか、またはストレスにより悪化されるかのいずれかであ
ることが公知である、多数の障害がある。これらとしては、以下が挙げられる:物質乱用
、食欲不振、過食症、肥満、喫煙嗜癖、および体重嗜癖(weight addicti
on)のような依存性疾患;広場恐怖症、不安障害、強迫性障害、パニック発作、動作不
安(performance anxiety)、恐怖症、および心的外傷後ストレス障
害のような不安障害;アレルギー、関節炎、線維筋痛、線維筋炎(fibromytos
is)、狼瘡、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、および白斑のよ
うな自己免疫障害;骨の癌、脳の癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、ホジキン病、白血病、
肝臓癌、肺癌、リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、および前立腺癌のような癌;
不整脈、動脈硬化症、ビュルガー病(Burger’s disease)、本態性高血
圧症、細動、僧帽弁逸脱症、心悸亢進、末梢血管疾患、レーノー病、発作、心頻拍、およ
びウルフ−パーキンソン−ホワイト症候群のような心血管障害;ならびに、注意欠陥障害
、集中問題(concentration problems)、行為障害、失読症、運
動過剰症、言語障害(language and speech disorders)
、および学習障害のような発達障害。
【0035】
本処置方法に最も関連するストレス関連障害としては、機能的身体障害(functi
onal somatic disorders)(FSD)、不安障害、および大うつ
障害(major depressive disorder)が挙げられる。
【0036】
(a.機能的身体障害)
機能的身体障害(FSD)としては、限定することなく、慢性疲労症候群(CFD)、
線維筋痛症候群(FMS)、片頭痛および緊張性頭痛(MTH)、過敏性腸症候群(IB
S)、異型顔面痛(AFP)、月経前不快気分障害(PMDD)、顎関節障害(TMD)
、非心臓性胸部痛(Non−Cardiac Chest Pain)(NCCP)、化
学物質頻回暴露感度(MCS)、間質性膀胱炎(IC)、慢性骨盤痛(CPP)、および
慢性腰痛(LBP)のサブセット、が挙げられる、そして組織の異常性よりもむしろ症状
、苦痛および障害により、よく特徴付けられる。様々な程度で、FSDに共通する症状と
しては、疼痛、疲労、ならびに認識困難および/または記憶困難が挙げられ(Aaron
ら、Ann Intern Med 2001;134:868−881)、そして全て
は、一般大衆において見出されるよりも、より高い罹患率の睡眠障害(Aaronら、A
nn Intern Med 2000;160:221−227)および精神医学的障
害(Katonら、Ann Intern Med 2001;134:917−925
)と関係する。FSDにおいて蔓延する疼痛症候学は、全身および/または内臓の感覚刺
激の全般に強まった認識(generalized heightened perce
ption)に起因すると考えられる。FSDを有する患者は、頻繁に、異痛症(無害性
刺激を伴う疼痛)および痛覚過敏(有痛性刺激に対する強められた感受性)の両方の形態
で、疼痛認識における異常を表す。
【0037】
FSDを有する個体のうち約20〜40%が、同一性流動性気分障害(identif
iable current mood disorder)(例えば、鬱病または診断
時の不安障害)を有すると推定される。鬱病の生涯の罹患率は、70%程度高いことが報
告されている(BoissevainおよびMCain,Pain.191:227−3
8;BoissevainおよびMCain,Pain.1991;45:239−48
;Hudsonら,Am J Psychiatry 1985;142;441−6)

【0038】
FSDに伴う特定の問題は、この障害の病因、ならびにこの障害に影響する生物学的要
因、環境的要因および他の要因の完全な理解である。FSDの異なる症状の認知が無関係
であり、一般に異なる医療分野により処置される場合、これらの異なる症状および適応症
は、ある場合は同じ医薬で処置され、ある場合は異なる医薬で処置されてきた。種々のF
SDの症状を処置するために現在用いられるいくつかの一般的な医薬としては、鎮痛剤、
催眠剤、免疫抑制剤、種々の他の処方された医薬、および非処方の多数の医薬が挙げられ
るが、これらに限定されない。
【0039】
ある特定のFSDは、湾岸戦争症候群(1990〜1991のペルシャ湾岸戦争の兵士
にちなんで命名された)である。この病因は、十分には理解されていないが、この症候群
は、症状(例えば、慢性疲労、筋肉痛および関節痛、頭痛、皮膚発疹、集痛力および記憶
の問題、呼吸問題、睡眠障害、胃腸障害、ならびに鬱病)の存在によって特徴付けられて
いる。2つのタイプの湾岸戦争症候群が、特定の症状の存在に基づいて同定されている。
症候群1(認識障害)は、鬱病および集中の困難性により特徴付けられる。これは通常は
、殺虫剤を含有したノミよけ首輪を付けた湾岸戦争兵士において見出される。症候群2(
錯乱−不安)は、最も重篤な形態であり、思考および推測の障害、めまい、バランスおよ
び協調の欠如により特徴付けられる。これは一般に、神経ガスに曝されたと主張する湾岸
戦争兵士において見出される。データにより、このタイプを有する兵士は最も広範囲の脳
損傷を有することが示されている(Haleyら,Neuroradiology 20
00 215:807−817)。
【0040】
広範なアレイの医薬が、FSD患者において使用されているが、いずれの単一の薬理学
的薬剤も薬剤の組み合わせも、これらの障害の種々の発症の処置において効果的であると
は示されていない。単一の疾患としてのFSDの広範な認識の欠如に起因して、FSDに
対する効果的な処置レジメンの欠陥が存在し、そして効果的な処置を開発することに対す
る必要性が存在する。
【0041】
(b.不安障害)
不安障害は、群として、米国において最も通常の精神病である。1900万人を超える
米国の成人が、毎年これらの消耗性の疾病に罹患している。小児および青年もまた、不安
障害を発症し得る。不安障害は、約1900万人の米国の成人に影響を与える、重篤な医
学的疾病である。これらの障害は、人々の生活を、圧倒的な不安および恐怖で満たす。ス
トレス性事象(例えば、業務での発表または初めてのデート)によって引き起こされる比
較的穏やかな短期間の不安とは異なり、不安障害は、慢性的であり、冷酷であり、そして
処置されない場合、次第に悪化し得る。不安障害の5つの主要な型は、以下のように識別
される:恐慌性障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、全般性不安障害、および恐
怖症(社会的恐怖症(社会的不安障害ともまた称される)を含む)。各不安障害は、その
独自の別個の特徴を有するが、これらは全て、過剰の不合理な恐怖および心配という共通
の課題によって一緒に結び付けられる。不安障害がうつ病、摂食障害、物質乱用、または
別の不安障害を伴うことは、よくあることである。不安障害はまた、癌または心臓病のよ
うな疾病と共存し得る。このような例においては、付随する障害もまた、処置される必要
がある。しかし、いずれかの処置を開始する前に、他の可能な症状の原因を排除するため
に、徹底的な診断を行うことが重要である。
【0042】
i)恐慌性恐怖症は、しばしば警告なしに襲う強烈な恐怖の反復するエピソードによっ
て特徴付けられる。身体的症状としては、胸部の疼痛、心臓の動悸、呼吸の短縮、めまい
感、腹部の窮迫、非現実性の感情、および死の恐怖が挙げられる。
【0043】
ii)強迫性障害は、停止または制御することが不可能なようである、反復される所望
でない思考または強迫行動によって特徴付けられる。
【0044】
iii)心的外傷後ストレス障害は、外傷的事象(例えば、強姦または他の犯罪的暴行
、戦争、小児虐待、天災または人災、あるいは衝突)を経験または目撃した後に起こる、
持続性の症状によって特徴付けられる。悪夢、フラッシュバック、情動の無感覚、うつ病
、ならびに怒り、過敏または転動性、および容易な驚愕の感じは、通常である。犠牲者の
家族の構成員もまた、この疾患を発症し得る。心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、
恐ろしい事象に続いて発生し得る消耗性状態である。PTSDを引き起こす事象は、人も
しくはその人の親近者の生活を脅かしたものであり得るか、または目撃されたものであり
得る。
【0045】
問題の原因が何であれ、PTSDを罹患するいく人かの人は、悪夢および日中の動揺さ
せる想起の形態で、その外傷を繰り返しまざまざと思い出す。彼らはまた、他の睡眠の問
題を経験し得るか、無関心もしくは無感覚に感じ得るか、または容易に驚愕し得る。彼ら
は、以前には楽しんでいたことへの興味を失い得、そして優しさを感じることが困難であ
り得る。彼らは、怒りっぽくか、以前より攻撃的にか、または乱暴にさえ感じ得る。外傷
を彼らに思い出させるものは、非常に苦しめ、このことは、それらの記憶を呼び起こす特
定の場所または状況を彼らに回避させ得る。外傷的事象の記念日は、しばしば非常に苦し
い。
【0046】
PTSDは、約520万人の米国の成人に影響を与える。女性は、男性よりもPTSD
を発症しやすい。これは、小児期を含めて任意の年齢で起こり得、そしてPTSDに対す
る感受性は、家族に遺伝し得ることのいくつかの証拠が存在する。この障害は、しばしば
、うつ病、物質乱用、または1つ以上の他の不安障害を伴う。重篤な場合には、その人は
、仕事または社交活動が困難であり得る。
【0047】
iv)全般性不安障害は、少なくとも6ヶ月間持続する、毎日の日常生活および活動に
ついての、誇張された気がかりなことおよび緊張によって特徴付けられる。最悪のことを
予測する理由がほとんどない場合でさえも、ほとんど常に最悪のことを予期する;身体的
な症状(例えば、疲労、振せん、筋肉の緊張、頭痛、または悪心)を伴う。
【0048】
v)恐怖症は、2つの主要な型の恐怖症(社会的な恐怖症および特殊な恐怖症)に特徴
付けられる。社会的な恐怖症を罹患する人々は、社会的な状況における詮索、困惑、また
は屈辱に対する圧倒的かつ障害となる恐れを有し、このことは、多くの潜在的に楽しく有
意義な活動の回避を導く。特別な恐怖症を罹患する人々は、実際の危険をほとんどまたは
全く示さないことに対する、極端な、障害となる、不合理な恐怖を経験する;この恐怖は
、目的または状況の回避を導き、そして人々に自分の生活を不必要に制限させ得る。
【0049】
(c.大うつ病障害)
大うつ病障害とは、躁病の基準を満たす気分の上昇および過剰な活性の独立したエピソ
ードのいずれの病歴もなしに、うつ病のネガティブな影響および繰り返されるエピソード
によって特徴付けられる症状のクラスをいう。大うつ病障害の複数の亜型が認識されてお
り、これらとしては、異型の特徴を有するもの、精神病性の成分などが挙げられる。発症
の年齢および重篤度、うつ病のエピソードの持続時間および頻度は、全て大きく変動し得
る。発症時の平均年齢は、20代後半であるが、この障害は、任意の年齢で開始し得る。
大うつ病障害の症状は、代表的に、数日間から数週間にわたって発症する。前駆症状とし
ては、全般性不安、パニック発作、恐怖症または抑うつ性症状が挙げられ、そして多くが
、エピソード前の数ヶ月にわたって起こり得る。個々のエピソードはまた、3ヶ月と12
ヶ月との間持続するが、より低い頻度で再発する。回復は、通常、エピソード間に完了す
るが、少数の患者は、主として老年期に、持続性のうつ病を発症し得る。任意の重篤度の
個々のエピソードは、しばしば、ストレス性生活事象によって早められる;多くの生活様
式において、個々のエピソードと持続性のうつ病との両方が、女性において男性より2倍
多い。この疾病に関与する遺伝的成分が存在し、これは、一般的な集団と比較して、第一
度に罹患した生物学を有する集団のうちで、1.5〜3倍多い。うつ病のエピソードの通
常の症状としては、減少した集中および注意;減少した自尊心および自身;有罪およびふ
さわしくないことの概念、自己損傷または自殺の概念または行動;妨げられた睡眠;なら
びに減少した欲求が挙げられる。頻繁に、大うつ病のエピソードは、心理社会的ストレッ
サー(特に、愛する人の死、離婚(marital separation)、出産、ま
たは重要な関係の終了)に続いて起こる。
【0050】
低下した気分は、日ごとにほとんど変動せず、そしてしばしば、状況に対して非応答性
であるが、日が進むにつれて、特徴的な昼行性の変動を示し得る。躁病のエピソードのよ
うに、臨床的な表現は、顕著な個々の変動を示し、そして異型の表現は、青年期に特に通
常である。いくつかの場合において、不安、窮迫、および運動の動揺は、うつ病の数倍顕
著であり得、そして気分の変化もまた、さらなる特徴(例えば、短気、アルコールの過剰
消費、ヒステリー性の行動、および予め存在する恐怖または強迫の症状、あるいは心気症
)によって注目され得る。うつ病のエピソードについて、重篤度とは無関係に、少なくと
も2週間の持続時間が、診断のために通常必要とされるが、症状が異常に重篤であり急速
に発症する場合は、より短い期間が合理的であり得る。種々の亜型は、種々のクラスの抗
うつ薬に対して異なって応答する。例えば、異型のうつ病状態に罹患する患者は、三環系
抗うつ薬よりむしろ、モノアミンオキシダーゼインヒビター(MAO−I)に最良に応答
することが実証されている。
【0051】
(II.視床下部−下垂体軸の機能不全)
視床下部−下垂体軸(HPA)は、SRDの進行に関与し(ClauwおよびChro
usos,Neuroimmunomod 1997 4:134−153)、そしてス
トレッサー(例えば、疼痛)と個体の内分泌応答、自律神経応答、および行動応答との間
のリンクとして働く。従来、HPAは、生理学的変化を媒介してホメオスタシスを維持す
る化学メッセンジャーを産生することによって、環境における変化に反応するようプログ
ラムされたシステムとみなされている(Chrousos(1998)Ann N Y
Acad Sci 851:311−351)。しかし、最近の証拠は、遺伝的影響、生
涯の初期の環境因子、および慢性的ストレスへの曝露が、HPAに永久的に影響を与え得
、そして疾患の発症に素因を与え得ることを示唆することによって、この単純なモデルを
複雑化させる。この研究の大部分は、影響を与える障害の病態生理学へのこれらの変化の
寄与を理解する観点においてなされたが(HeimおよびNemeroff 1999)
、類似の機構は、FSDにおいて作動可能であると考えられる(NeeckおよびCro
fford(2000)Rheum Dis Clin North Am 26(4)
:989−1002)。
【0052】
HPAカスケードにおける主要なメディエーターは、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(
CRH)(身体的ストレスまたは生理学的ストレスに応答して、室傍視床下部において産
生される神経ペプチド)である。CRHは、次に、下垂体前葉からのコルチコトロンピン
(ACTH)の放出を刺激し、これは、副腎からのグルココルチコイドの分泌を促進して
、知覚された切迫に対する順応反応(例えば、血中グルコースレベルを上昇させる)を引
き起こす(NeeckおよびCrofford(2000)Rheum Dis Cli
n North Am 26(4):989−1002)。CRHはまた、神経伝達物質
として機能することによって、成長ホルモンおよび甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対す
る二次的な阻害効果を引き起こし、視床下部および皮質ニューロンからのソマトスタチン
の分泌(PeterfreundおよびVale(1983)Endocrinolog
y 112(4):1275−8)ならびに視床下部LHRH放出(Frias,Pue
rtasら(1997)Neurochem Res 22(2):171−4)を増加
させ得る。HPA軸の活性化と同時に、生物は、「戦闘または逃亡」応答でストレスと反
応し、この応答は、自立新形成の神経系によって媒介され、そして生理学的変化(例えば
、頻拍および高血圧)を生じる。
【0053】
(III.危険因子)
SRDに対して個体が自覚する多数の危険因子が存在する。これらの因子は、ストレス
関連障害の予防両方のための候補個体を、重篤なストレス関連症状の発症の前に同定する
。危険因子は、以前には、ストレス関連不安障害(例えば、PTSDおよび同様に関連す
るもの)に素因を与えられた個体を同定するために使用されていた。これらとしては、以
下が挙げられる:(a)外傷前、(b)心理学的判断の前、(c)精神病理学の家族病歴
、(d)外傷の間の知覚された生命切迫、(e)外傷後の社会支持、(f)外傷周辺の情
動応答、および(g)情動周辺の解離。逃れられないかまたは回避不可能と知覚されるス
トレッサー、あるいは予測可能性または支持の欠乏が付随するストレッサーは、最も強い
有害な生物学的結果を引き起こす。
【0054】
女性は、明らかに、主要な危険因子であり、そして多くのストレス関連障害は、男性よ
り女性において、より流行する。例としては、CFS、FMS、PTSD、および大うつ
病が挙げられ、これらは全て、男性より女性において、より頻繁に顕在である。
【0055】
ストレッサーが経験されている環境は、非常に重要であり、そして制御、支持、予測可
能性の損失によって特徴付けられる環境への曝露は、急性のストレッサーが慢性的な疾病
をもたらす、最も高い可能性に関連するものである。このカテゴリーには、小児虐待/発
育時の虐待のような状況が入る。研究は、以前に、性的外傷、一般的な外傷、不法な薬物
の使用、既存の精神医学的障害(最も顕著には、不安障害および不法な薬物の使用の障害
)のような、以前の外傷を使用した。生涯の初期のストレッサーは、神経系の形成性に起
因して、動物におけるストレスに対する引き続く生物学的応答に永久的な影響を有し得る
。この形成性は、その系の機能を規定する永久的な変化をもたらす、ニューロンの数、回
路の数、および/または遺伝子発現の増加もしくは減少に起因し得る。このことは、FM
S、CFS、身体表現性障害、IBS、および類似の障害を発症する個体が、小児期の身
体的虐待および性的虐待の予測される発生数より高い発生数を示す理由を説明し得る(W
allingら、Obstet Gynecol 1994 84:200−206;S
paccarelli Psychol Bull 1994 116:340−362
;Bendixenら、Child Abuse Negl 1994 18:837−
847)。
【0056】
急性のストレッサーの慢性的な続発症を有する素因を個体に与える遺伝的危険因子が、
おそらく存在する。遺伝的素因が、障害のこのスペクトルを発達させることが、実際に、
ストレス応答の活性の固有の差異に起因することは、あり得ることである。ヒトのストレ
ス応答(例えば、視床下部−下垂体腎傍軸または自律神経系の機能亢進または機能不足(
hypo−activity))におけるベースラインの異常性は、慢性SRDに素因を
与え得る。通常の運動または睡眠パターンを混乱させるストレッサーは、個体を、慢性S
RDを発達させる高い危険性に置き得る。
【0057】
臨床前の知見は、おそらく中枢神経系に影響を与えることによる、特定の不安障害の病
態生理学におけるCRHの役割を、強く示唆する(Arboreliusら、J End
ocrinol 1999 160(1):1−12)。ノルアドレナリンは、うつ病を
罹患する患者およびストレスを有する患者に関与している(Leonard J Psy
chiatry Neurosci 2001 26 補遺:S11−6)。混合された
ノルアドレナリン性薬剤/セロトニン性薬剤を、ストレッサーの後および急性ストレッサ
ーにおいて一時的に使用し、これらの続発症を予防することの以前の報告は、存在しない
。このような化合物は、中枢のノルアドレナリン性系およびセロトニン性系を増大させ、
急性の疼痛、疲労、窮迫が消散し、個体が再度通常に睡眠および運動を開始し得るまで、
これらの続発症に対して個体に素因を与える低い活性を補償する。
【0058】
(IV.組成物)
好ましい実施形態において、モノアミン再取り込みインヒビターは、SRDの発症を予
防するために、予防的に投与される。より好ましい実施形態においてNSRIは、急性の
疼痛、疲労および窮迫が消散し、そして個体が再度通常に睡眠および運動し得るまで、急
性ストレッサーの後に投与される。最も好ましい実施形態において、NSRIは、ミルナ
シプランである。
【0059】
この化合物は、好ましくは、1つ以上の症状の発症を予防するために有効な量で、また
はストレス関連障害の症状を軽減するために有効な量で、投与される。投与される化合物
の有効量は、好ましくは、ストレス関連障害が発症することを防止するか、またはより重
篤な状態に増悪することを防止する。
【0060】
1つの実施形態において、TRI化合物(これは、セロトニン、ノルアドレナリン、お
よびドパミンの再取り込みを阻害する)は、FSDを罹患する個体またはFSDの症状を
予防または処置するために使用される。ドパミン再取り込み阻害活性は、代表的に、ドパ
ミン輸送体(DAT)をブロックして、ドパミンの再取り込みが阻害されるようにする工
程を包含する。化合物がDATをブロックするかまたはドパミンの放出を増加させる能力
は、当該分野において公知のいくつかの技術を使用して決定され得る。例えば、Gain
etdinovら,(1999,Science,283:397−401)は、線条に
おける細胞外ドパミン濃縮が微小透析を使用して測定され得る技術を記載する。化合物が
DATをブロックするかまたはドパミンの放出を増加させる能力を決定するために、ドパ
ミンの細胞外濃度は、この化合物の投与の前後に測定され得る。試験されている化合物の
投与後の、ドパミンレベルの統計学的に有意な増加は、この化合物が、ドパミンの再取込
みを阻害するか、またはドパミンの放出を増加させることを示す。DATをブロックする
能力はまた、ドパミン輸送体における阻害濃度(IC)値(IC50のような)を用いて
定量され得る。IC値を決定するためのいくつかの技術が、当該分野において記載されて
いる(例えば、Rothmanら,2000,Synapse,35:222−227を
参照のこと)。これらの方法において有用な化合物は、代表的に、0.1nM〜600μ
Mの範囲のIC50値を有する。特に、これらの化合物は、0.1nM〜100μMの範
囲のIC50値を有する。
【0061】
TRI化合物の特定の例は、シブトラミン(BTS 54 524;N−[1−[1−
(4−クロロフェニル)シクロブチル]−3−メチルブチル]−N,N−ジメチルアミン
塩酸塩一水和物)、またはその薬学的に受容可能な塩である。シブトラミンは、神経伝達
物質であるドパミン、ノルエピネフリン、およびセロトニンの再取込みをブロックする。
シブトラミンの化学構造は、当該分野において周知である。この化合物は、米国特許第4
,939,175号およびBuckettら,(Prog.Nuero−Psychop
harmacol.& Biol.Psychiat 1988 第12巻:575−5
84)に記載されている。
【0062】
三環系抗うつ薬は、十分に認識されたクラスの抗うつ化合物であり、そして縮合した三
環式核によって特徴付けられる。これらは、本明細書中に記載されるような使用には適切
ではない。三環系抗うつ薬として通常分類される化合物としては、イミプラミン、デシプ
ラミン、クロミプラミン、トリミプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ドキ
セピン、およびプロトリプチリンが挙げられる。
【0063】
好ましい実施形態において、DRI化合物は、NSRI化合物であり、そしてセロトニ
ン再取り込みより大きいノルエピネフリン再取り込みの阻害を示す。1つの実施形態にお
いて、NSRI化合物は、約2〜60:1ノルエピネフリン再取り込み対セロトニン再取
り込み(「NE:5−HT」)の阻害の比を有する。すなわち、NSRI化合物は、セロ
トニンの再取り込みの阻害と比較して、ノルエピネフリンの再取込みを阻害する際に、約
2〜60倍良好である。約10:1〜約2:1のNE:5−HT比を有するNE>5−H
T SNRI化合物は、特に効果的であると考えられる。
【0064】
特定のSNRIのNE:5−HTを決定するための種々の技術が、当該分野において公
知である。例えば、この比は、NEおよび5−HTの再取り込み阻害についてのIC50
データから計算され得る。ミルナシプラン(milnacipran)について、ノルエ
ピネルフィン再取り込みのIC50は100nMであり、一方でセロトニン再取り込み阻
害のIC50は200nMであることが報告されている。Moretら,(Neurop
harmacology,24(12):1211−1219,1985);Palmi
er,Cら(1989)を参照のこと。従って、このデータに基づくミルナシプランにつ
いてのNE:5−HT再取り込み阻害は、2:1である。もちろん、ノルエピネフリンと
セロトニンとの両方について同じIC値が比較される限り、他のIC値(例えば、IC
、IC75など)が使用され得る。所望の程度の阻害を達成するために必要な濃度(す
なわち、IC値)は、インビボまたはインビトロのいずれかで、公知の技術を使用して計
算され得る。SanchezおよびHyttel(Cell Mol Neurobio
l 19(4):467−89);Turcotteら(Neuropsychopha
rmacology.2001年5月;24(5):511−21);Moretら(N
europharmacology 1985年12月;24(12):1211−9.
);MoretおよびBriley(Neuropharmacology.1988年
1月;27(1):43−9);BelおよびArtigas(Neuropsycho
pharmacology 1999年12月;21(6):745−54);Palm
ierら(Eur J Clin Pharmacol 1989;37(3):235
−8)を参照のこと。
【0065】
これらのNSRI化合物の例としては、ミルナシプランが挙げられる。使用され得るさ
らなるSNRI化合物としては、WO95/22521;米国特許第5,621,142
号;Shutoら.J.Med.Chem.,38:2964−2968,1995;S
hutoら,J.Med Chem.,39:4844−4852,1996;Shut
oら,J.Med.Chem.,41:3507−3514,1998;ならびにShu
toら,85:207−213,2001に記載されるアミノシクロプロパン誘導体が挙
げられ、これらは、ミルナシプランに構造的に関連し、従って、セロトニンの再取込みを
阻害するより多くノルエピネフリンの再取込みを阻害し得、本発明の実施に使用され得る

【0066】
ミルナシプランおよびその合成方法は、米国特許第4,478,836号に記載されて
いる。ミルナシプランに関するさらなる情報は、Merck Index,第12版,エ
ントリー6281に見出され得る。他に具体的に示さない限り、用語「ミルナシプラン」
とは、本明細書中において使用される場合、ミルナシプランのエナンチオマー的に純粋な
形態と、ミルナシプランエナンチオマーの混合物との両方をいう。
【0067】
SNRI化合物の別の特定の例は、デュロキセチン(duloxetine)、または
その薬学的に受容可能な塩である。デュロキセチンは、通常、塩酸塩としてヒトに投与さ
れ、そして最も頻繁には、(+)エナンチオマーとして投与される。デュロキセチンの化
学構造は、当業者に周知である。デュロキセチンおよびその合成方法は、米国特許第4,
956,388号に記載されている。デュロキセチンに関するさらなる情報は、Merc
k Index,第12版,エントリー3518に見出され得る。
【0068】
SNRI化合物のなお別の特定の例は、ベンラファキシン、またはその薬学的に受容可
能な塩である。ベンラファキシンの化学構造は、当業者に周知である。ベンラファキシン
およびその合成方法は、米国特許第4,535,186号および同第4,761,501
号に記載されている。ベンラファキシンに関するさらなる情報は、Merck Inde
x,第12版,エントリー10079に見出され得る。ベンラファキシンは、本明細書中
において使用される場合、ベンラファキシンの遊離塩基、その薬学的に受容可能な塩、そ
のラセミ化合物、およびその個々のエナンチオマー、ならびにベンラファキシンアナログ
(ラセミ化合物およびそれらの個々のエナンチオマーの両方として)をいうことが理解さ
れる。
【0069】
当業者は、ミルナシプランのようなSNRI化合物が、互変異性、配座異性、幾何異性
、および/または光学異性を示し得ることを認識する。例えば、上記構造図から明らかで
あるように、ミルナシプランは、光学的に活性である。ミルナシプランの右旋性のエナン
チオマーは、ノルエピネフリンおよびセロトニンの再取込みを阻害する際に、ラセミ混合
物より約2倍活性であること、ならびに左旋性(levrogyral)のエナンチオマ
ーは、さらに弱いことが、文献において報告されている(例えば、Spencerおよび
Wilde,1998,前出;Viazzoら,1996,Tetrahedron L
ett.37(26):4519−4522;Deprezら,1998,Eur.J.
Drug Metab.Pharmacokinet.23(2):166−171を参
照のこと)。従って、ミルナシプランは、エナンチオマー的に純粋な形態(例えば、純粋
な右旋性エナンチオマー)または右旋性エナンチオマーと左旋性エナンチオマーとの混合
物(例えば、ラセミ混合物)で投与される。ミルナシプランおよび他のSNRI化合物の
右旋性エナンチオマーおよび左旋性エナンチオマーを分離および単離するための方法は、
周知である(例えば、Grardら,2000,Electrophoresis 20
00 21:3028−3034を参照のこと)。
【0070】
多くの例において、SNRI化合物は、代謝されて活性なSNRI化合物を生成し得る
こと、および活性な代謝産物が使用され得ることもまた、理解される。
【0071】
グルタミン性神経伝達物質は、中枢感作において主要な役割を果たし、これは、SRD
が時々付随する過敏症を引き越し得る。従って、グルタミン性神経伝達物質を阻害する化
合物(NMDAアンタゴニストなど)は、SRDを標的化する際に特に有用であり得る。
ミルナシプランおよびその誘導体は、NMDAレセプターにおいて、拮抗特性を有するこ
とが報告されている。Shutoら,1995,J.Med.Chem.,38:296
4−2968;Shutoら,1996,J.Med.Chem.,39:4844−4
852;Shutoら,1998,J.Med.Chem.,41:3507−3514
;およびShutoら,2001,Jpn.J.Pharmacol.,85:207−
213を参照のこと。NMDAレセプター拮抗特定を有するSNRI化合物は、約1nM
〜100μMのIC50値を有し得る。例えば、ミルナシプランは、約6.3μMのIC
50値を有すると報告されている。ミルナシプランおよびその誘導体の、NMDAレセプ
ターアンタゴニスト特性は、Shutoら,1995,J.Med.Chem.,38:
2964−2968;Shutoら,1996,J.Med.Chem.,39:484
4−4852;Shutoら,1998,J.Med.Chem.,41:3507−3
514;およびShutoら,2001,Jpn.J.Pharmacol.,85:2
07−213に記載されている。拮抗作用および拮抗作用のための親和性を決定するため
の方法は、Shutoら,1995,J.Med.Chem.,38:2964−296
8;Shutoら,1996,J.Med.Chem.,39:4844−4852;S
hutoら,1998,J.Med.Chem.,41:3507−3514;およびS
hutoら,2001,Jpn.J.Pharmacol.,85:207−213に記
載されている。WO95/22521;米国特許第5,621,142号;Shutoら
,J.Med.Chem.,38:2964−2968,1995;Shutoら,J.
Med Chem.,39:4844−4852,1996;Shutoら,J Med
.Chem.,41:3507−3514,1998;およびShutoら,Jpn.J
.Pharmacol.,85:207−213,2001に記載されているアミノシク
ロプロパン誘導体は、5−HTより多くのNEの再取込みを阻害し、そしてNMDA拮抗
特性を有する。
【0072】
SNRI化合物(例えば、ミルナシプラン)は、他の活性化合物(例えば、抗うつ薬、
鎮痛薬、筋弛緩剤、食欲抑制薬、刺激薬、鎮痙薬物および鎮静薬/催眠薬)と付属的に投
与され得る。SNRI化合物と付属的に投与され得る化合物の特定の例としては、以下が
挙げられるが、これらに限定されない:ニューロンチン(neurontin)、プレガ
バリン(pregabalin)、プラミペキソール、L−DOPA、アンフェタミン、
チザニジン、クロニジン、トラマドール、モルヒネ、三環系抗うつ薬、コデイン、カルバ
マゼピン(cambamazepine)、シブトラミン、アンフェタミン、バリウム(
valium)、トラゾドンおよびこれらの組み合わせ。代表的には、SRD患者につい
て、SNRI化合物は、抗うつ薬、食欲抑制薬、鎮痛薬、筋弛緩剤および鎮静薬/催眠薬
と付属的に投与され得る。本明細書中で使用される場合、付属的投与は、同じ投薬形態で
の化合物の同時投与、別個の投薬形態での同時投与、およびこれらの化合物の別個の投与
を意味する。例えば、ミルナシプランは、バリウムと同時に投与され得、ここで、ミルナ
シプランおよびバリウムの両方は同じ錠剤中に共に処方される。あるいは、ミルナシプラ
ンは、バリウムと同時に投与され得、ミルナシプランおよびバリウムの両方は、2つの別
個の錠剤中に存在する。別の代替において、ミルナシプランは、バリウムの投与の前に最
初に投与され得るか、またはその逆であり得る。
【0073】
これらの化合物は、好ましくは、ストレス関連障害の1つ以上の症状の発症を予防する
ため、またはストレス関連障害の症状を緩和するために有効な量で投与され得る。投与さ
れるべき化合物の有効量は、好ましくは、ストレス関連障害が、より重篤な状態へと発展
または悪化するのを予防する。
【0074】
SNRI化合物は、治療的利益を達成するために治療的に投与され得るか、または予防
的利益を達成するために予防的に投与され得る。治療的利益とは、患者が、その根本的な
障害になお罹患している可能性があるにもかかわらず、気分または状態の改善を報告する
ような、処置される根本的な障害の根絶もしくは緩和(例えば、根本的なSRDの根絶も
しくは緩和)および/または根本的な障害に関連する1つ以上の症状の根絶もしくは緩和
を意味する。例えば、SRDに罹患している患者に対するミルナシプランの投与は、根本
的なSRDが根絶または緩和された場合だけでなく、患者におけるSRDの任意の特定の
症状の減少した症状(例えば、減少した疲労、睡眠パターンの改善、および/または疼痛
の重篤度もしくは持続期間の減少)を患者が報告する場合にも、治療的利益を提供する。
【0075】
(V.使用方法)
治療的投与について、SNRI化合物は、代表的に、処置される特定の適応症を有する
、すでに診断された患者に投与される。
【0076】
予防的投与について、SNRI化合物は、SRDを発症する危険性のある患者、または
(SRDの診断がいまだなされていないかもしれないが)SRDの生理学的症状の1つ以
上を報告している患者に投与され得る。あるいは、予防的投与は、特に、生理学的症状が
臨床的に現れている場合に、根本的な障害の生理学的症状の発症を回避するために適用さ
れ得る。この後者の実施形態において、治療は、根本的な適応症ではなく、付随する生理
学的症状に関して予防的である。例えば、SNRI化合物は、SRDに関連する睡眠障害
を回避するために、就寝時間前に予防的に投与され得る。あるいは、SNRI化合物は、
特定の症状(例えば、疼痛または疲労)の再発または発症の前に投与され得る。
【0077】
(a.個体評価)
個体は、上記の危険因子に基づいて、SRDを発症する素因が存在するか否かを決定す
るために評価され得る。治療は、個体が、ストレッサーに曝される危険性が有意にあるか
、またはストレッサーに実際に曝されたことが決定される場合に投与され得る。好ましい
実施形態において、この化合物は、任意のストレス関連障害の発症前に投与される。
【0078】
精神生理学的ストレス試験は、身体の種々の系(すなわち、筋肉系、心臓血管系、消化
器系、呼吸器系および神経学的系)において存在する、ストレス誘導性の不安の量を測定
するために実施され得る。これらのストレス試験は、当該分野で慣用的に使用される。試
験結果は、地域的標準および人種的標準の両方に対して比較されて、その個体が過剰量の
生理学的不安を示しているかどうか、そして標準化されたストレス性刺激から適切な時間
長で回復できるか否かを決定する。精神学的試験は、危険群に属する個体をモニタリング
して、ストレス障害の感情的病因および/または社会的病因を決定するために使用され得
る。これらの試験は、当該分野で公知であり、そして健康関連評価、精神的健康評価、人
格試験および人格型評価を含む。
【0079】
(b.処方および投与経路)
これらの化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、薬学的組成物(それらの同質異像
を含む)として処方され得る。このような組成物は、所望に応じて、従来の非毒性の薬学
的に受容可能なキャリア、アジュバントおよびビヒクルを含む投薬単位処方物で、経口的
に、頬に、非経口的に、吸入スプレーによって、直腸的に、皮内に、経皮的に、または局
所的に投与され得る。局所的投与はまた、経皮パッチまたはイオン導入デバイスのような
経皮投与の使用を含み得る。用語、非経口は、本明細書中で使用される場合、皮下、静脈
内、筋内または胸骨内の注射もしくは注入技術を含む。好ましい実施形態において、この
組成物は、経口投与される。
【0080】
薬物の処方は、例えば、Hoover,John,E.、Remington’s P
harmaceutical Sciences,Mack Publishing C
o.Easton,Pennsylvania(1975)ならびにLiberman,
H.A.およびLachman,L.編、Pharmaceutical Dosage
Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.(1980)
において考察される。用語「薬学的に受容可能な塩」は、本発明において使用される化合
物の生物学的有効性および特性を保持する塩を意味し、そして生物学的にも他の点におい
ても所望される塩を意味する。このような塩は、無機塩基および有機塩基から調製され得
る。無機塩基由来の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム
塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。有機塩
基由来の塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、置換アミン(天然に存在する
置換アミンおよび環状アミンを含む(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチル
アミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミ
ノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイ
ン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、
グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジ
ンおよびN−エチルピペリジンを含む))の塩が挙げられるが、これらに限定されない。
他のカルボン酸誘導体(例えば、カルボン酸アミド(カルボキサミド、低級アルキルカル
ボキサミド、ジ(低級アルキル)カルボキサミドを含む))が使用され得ることもまた、
理解されるべきである。
【0081】
活性なDRI化合物(またはその薬学的に受容可能な塩)は、それ自体でか、または薬
学的組成物の形態で投与され得、ここで、この活性化合物は、1種以上の薬学的に受容可
能なキャリア、賦形剤もしくは希釈剤との混和物(admixture)または混合物(
mixture)中にある。薬学的組成物は、薬学的に使用され得る調製物への活性化合
物のプロセシングを容易にする、1種以上の薬学的に受容可能なキャリア(賦形剤および
補助剤を含む)を使用して従来の様式で、処方され得る。適切な処方物は、選択される投
与経路に依存する。
【0082】
これらの化合物は、薬学的に処方されるそれらの部分として、他の薬剤と複合体化され
得る。薬学的組成物は、例えば、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、結合剤(例えば、
予めゼラチン化したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微小結晶セルロースまたはリン
酸水素カルシウム);または滑沢剤を用いて従来手段で調製される、錠剤またはカプセル
剤の形態を取り得る。任意のこのような処方された複合体が水溶性である場合、これは、
適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水または他の生理学的に適合性の溶液)中
に処方され得る。あるいは、得られた複合体が、水性溶媒における乏しい可溶性を有する
場合、これは、非イオン性界面活性剤(例えば、Tween)またはポリエチレングリコ
ールを用いて処方され得る。従って、これらの化合物およびその薬学的に受容可能な溶媒
和物が、投与のために処方され得る。
【0083】
注射可能な調製物(例えば、滅菌の注射可能な水性懸濁物または油性懸濁物)は、適切
な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知技術に従って処方され得る。この滅
菌の注射可能な調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌
の注射可能な溶液または懸濁物(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であ
り得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液および
等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌の不揮発油が、溶媒または懸濁媒体として
従来より使用される。この目的のために、任意の刺激のない不揮発油(合成のモノグリセ
リドまたはジグリセリドを含む)が使用され得る。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸
)は、注射可能物の調製において有用である。ジメチルアセトアミド、イオン性および非
イオン性の界面活性剤(detergent)を含む界面活性剤(surfactant
)、ならびにポリエチレングリコールが、使用され得る。上で考察したような溶媒および
湿潤剤の混合物もまた、有用である。
【0084】
これらの化合物は、例えば、従来の坐剤基剤(例えば、ココアバターまたは他のグリセ
リド)を含む、直腸組成物(例えば、坐剤または保持浣腸)で処方され得る。本明細書中
で考察される化合物の直腸投与または膣投与のための坐剤は、活性薬剤を、通常温度では
固体であるが、直腸温度もしくは膣温度では液体であり、従って、直腸もしくは膣におい
て融解して薬物を放出する、適切な非刺激性賦形剤(例えば、ココアバター、合成のモノ
グリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリド、脂肪酸、またはポリエチレングリコ
ール)と混合することによって、調製され得る。
【0085】
経口投与のための固体投薬形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒が
挙げられ得る。このような固体投薬形態において、本発明の化合物は、通常、示された投
与経路に適切な1種以上のアジュバントと合わされる。適切な賦形剤としては、例えば、
充填剤(例えば、糖(ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む
);セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン
、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリ
ビニルピロリドン(PVP)))が挙げられる。所望の場合、崩壊剤(例えば、架橋ポリ
ビニルピロリドン、寒天もしくはアルギン酸、またはこれらの塩(例えば、アルギン酸ナ
トリウム))が添加され得る。
【0086】
それ自体で投与される場合、これらの化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉
末、アルカノン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステア
リン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム
塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピ
ロリドン、ならびに/またはポリビニルアルコールと混合され、次いで簡便な投与のため
に錠剤化またはカプセル化され得る。このようなカプセル剤または錠剤は、ヒドロキシメ
チルセルロース中の活性化合物の分散物において提供され得るような、制御放出処方物を
含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、これらの投薬形態はまた、クエン酸ナト
リウム、炭酸マグネシウムもしくは重炭酸マグネシウム、または炭酸カルシウムもしくは
重炭酸カルシウムのような緩衝化剤を含み得る。錠剤および丸剤はさらに、腸溶性コーテ
ィングを用いて調製され得る。
【0087】
あるいは、経口投与のために、薬学的調製物は、液体形態(例えば、溶液、シロップま
たは懸濁物)であり得るか、または使用前の水もしくは他の適切なビヒクルを用いた再構
成のための薬物生成物として、調製され得る。このような液体調製物は、薬学的に受容可
能な添加剤(例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または
水素化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例え
ば、アーモンド油、油性エステルまたは分留植物油);および保存剤(例えば、メチル−
p−ヒドロキシベンゾエートもしくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート、またはソ
ルビン酸)ならびに甘味料、香味料および芳香剤)を用いて、従来手段により調製され得
る。
【0088】
治療目的のために、非経口投与のための処方物は、水性または非水性の、等張の滅菌注
射溶液または懸濁液の形態であり得る。これらの溶液および懸濁液は、経口投与のための
処方物中での使用のために言及された、1種以上のキャリアまたは希釈剤を有する、滅菌
の散剤または顆粒から調製され得る。これらの化合物は、水、ポリエチレングリコール、
プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、ピーナツ油、ゴマ油、ベ
ンジルアルコール、塩化ナトリウム、および/または種々の緩衝液中に溶解され得る。他
のアジュバントおよび投与様式は、薬学分野において周知かつ広範に知られている。
【0089】
キャリア材料と組み合わされて単回投薬形態を生成し得る活性成分の量は、患者および
特定の投与様式に依存して変動する。
【0090】
経口投与のための調製物は、活性化合物の制御放出を与えるために、適切に処方され得
る。
【0091】
吸入による投与のために、本発明に従って使用される化合物は、圧縮パックまたはネビ
ュライザからのエアロゾルスプレー体裁の形態で、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフ
ルオロエタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素
または他の適切な気体)の使用によって、簡便に送達され得る。圧縮エアロゾルの場合、
投薬単位は、計量した量を送達するために弁を提供することによって、決定され得る。吸
入器または注入器における使用のための、例えば、ゼラチンのカプセル剤およびカートリ
ッジは、化合物および適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)の粉末混合
物を含んで処方され得る。
【0092】
適切なコーティングを有する糖衣コアが提供される。この目的のために、濃縮糖溶液が
使用され得、この濃縮糖溶液は、必要に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロ
リドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッ
カー溶液ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。染料または色素は、活性
化合物用量の異なる組み合わせをの同定または特徴づけのために、錠剤または糖衣コーテ
ィングに添加され得る。
【0093】
経口的に使用され得る薬学的調製物としては、ゼラチン製のプッシュフィット(pus
h−fit)カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソ
ルビトール)製の軟質密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、充填剤
(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)、および/または滑沢剤(例えば
、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)ならびに必要に応じて安定剤との混和物中に
活性成分を含み得る。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪
油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコール)中に溶解または懸濁され得る。
さらに、安定剤が添加され得る。経口投与のための全ての処方物は、このような投与に適
切な投薬量であるべきである。
【0094】
頬投与のために、組成物は、従来様式で処方された錠剤またはロゼンジの形態を取り得
る。化合物は、注射(例えば、ボーラス注射または連続注入)による非経口投与のために
処方され得る。注射のための処方物は、保存剤が添加された、(例えば、アンプル中また
は複数用量容器中の)単位投薬形態中に存在し得る。これらの組成物は、懸濁液、溶液ま
たは油性ビヒクルもしくは水性ビヒクル中の乳濁物のような形態をとり得、そして処方剤
(例えば、懸濁剤、安定剤および/または分散剤)を含み得る。あるいは、活性化合物は
、使用前の適切なビヒクル(例えば、滅菌の発熱物質を含まない水)を用いた構成のため
の、粉末形態であり得る。
【0095】
上記の処方物に加えて、化合物はまた、蓄積調製物または持続放出調製物として処方さ
れ得る。このような長期作用性処方物は、移植、浸透圧ポンプもしくは経皮送達(例えば
、皮下または皮内)、筋内注射または経皮パッチによって投与され得る。従って、例えば
、化合物は、(例えば、受容可能な油中の乳濁物として)安定なポリマー材料もしくは疎
水性材料、またはイオン交換樹脂と共に、あるいは溶け難い(sparingly so
luble)誘導体(例えば、溶け難い塩)として、処方され得る。
【0096】
薬学的組成物はまた、適切な固相または気相のキャリアまたは賦形剤を含み得る。この
ようなキャリアまたは賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の
糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(例えば、ポリエチレングリ
コール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
(c.有効投薬量)
ヒトにおける使用のための治療的有効量は、動物モデルから決定され得る。例えば、ヒ
トについての用量は、動物において有効であることが見出された循環濃度を達成するため
に処方され得る。これらの症状について有用な動物モデルは、当該分野で公知である。特
に、以下の参考文献は、疼痛の適切な動物モデルを提供する。
【0098】
ヒトにおける使用のための有効量はまた、うつを処置するために使用されるSNRI化
合物についてのヒトデータから決定され得る。投与量は、うつを処置するために投与され
た量と同じであり得るか、またはうつを処置するために投与される量より低い量であり得
る。例えば、うつを予防するためまたはFSDを処置するために投与されるミルナシプラ
ンの量は、処置のために約50mg/日〜100mg/日の範囲であり、より好ましくは
100mg/日、そして最も好ましくは200mg/日である。
【0099】
SNRI化合物の経口投与のための患者用量は、代表的に、約1μg/日〜1mg/日
の範囲である。例えば、FSDの処置についてミルナシプランを用いると、投薬量範囲は
、約25mg/日〜400mg/日、より好ましくは100mg/日〜250mg/日で
ある。この投薬量は、1日1回、または1日数回もしくは複数回投与され得る。SNRI
化合物の量は、もちろん、処置される被験体、罹患の重篤度、投与様式および処方する医
師の判断に依存する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2010−70573(P2010−70573A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295495(P2009−295495)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2003−587377(P2003−587377)の分割
【原出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【出願人】(504045075)サイプレス バイオサイエンス, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】