説明

ストレッチシュリンク積層フィルム及びその製造方法

【課題】良好な生産性を発揮し、かつ製造設備の費用が安価なインフレーション成形機でも製造可能であり、低温収縮性と包装仕上がりに優れたストレッチシュリンク積層フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、中間層が乳酸系樹脂である(B)成分とアイオノマー系樹脂である(C)成分との混合樹脂組成物を主成分とすることを特徴とするストレッチシュリンク積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチシュリンクフィルムおよびその製造方法に関し、さらに詳細には、主に、生鮮食品や加工食品を入れた各種トレーや容器のプリパッケージ、オーバーラップシュリンクフィルム用途に用いられるストレッチシュリンク積層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に、生鮮食品や加工食品を入れた各種トレーや容器のプリパッケージ、オーバーラップシュリンクフィルム用途に用いられる熱収縮性を有するシュリンクフィルムとしては、ポリ塩化ビニル(以下、PVCと略することがある)系フィルムやポリオレフィン(以下、POと略することがある)系フィルムが知られている。これはPVCやPO系材料からなるシュリンクフィルムが、主な要求特性である力学強度、透明性、収縮特性等の実用特性およびコスト面も含めて、ユーザーの要求を比較的広く満足するからである。
【0003】
上記用途におけるシュリンクフィルムは、主に用いられる容器により大きく2つに大別される。1つは主にコンビニエンスストア等の弁当や惣菜等の蓋付き容器のオーバーラップシュリンク包装に使用される高収縮タイプのシュリンクフィルムであり、もう1つは、主にストレッチ包装に用いられる発泡ポリスチレンやポリプロピレン系材料からなる蓋無しトレーを容器とし、これをストレッチ包装した後に、主にシワ解消やフィルムのタイト感を発現させるためにシュリンク包装される包装方法に使用されるストレッチシュリンクフィルムである。
【0004】
高収縮タイプのシュリンクフィルムを用いた包装方法においては、主に横ピロー式と呼ばれる溶断シール方式の包装機が用いられる。本包装方式においてはフィルムの搬送途中において、まず針の付属したロールを通過させ、フィルムに一定のピッチで穴を形成させる。次に容器を包み込むようにフィルムを筒状に形成し、容器の底部でフィルムを長手方向にローラーで圧着して熱シールした後に、容器の前後を溶断シールする。その後シュリンクトンネルを通過せしめ、先に形成したフィルムの針穴からエアを逃がしながら収縮包装する方式である。該包装方法においては、さまざまな形状や大きさの容器に対応してタイトな包装仕上がりを得るために、高い収縮率や針穴でフィルムが引き裂けない等の物性が求められる。
【0005】
一方、ストレッチシュリンクを用いた包装方法においては、通常のストレッチ包装に用いられるトレーをフィルムでオーバーラップし、フィルムをトレーの底に折り込んだ後、収縮包装する方式であり、ストレッチ包装機と同一の横ピロー式や突き上げ式と呼ばれる折り込みタイプの包装機の後工程にシュリンクトンネルを付加した包装機が用いられる。ここで、ストレッチ包装は、用いるストレッチフィルムの主に応力−歪曲線や応力緩和などの粘弾性特性によりシワ解消や底シール性などの包装仕上がりを発現する包装方法である。これに対して、ストレッチシュリンクフィルムを用いた包装では、ストレッチ包装した後に底部のヒートシール工程とシュリンクトンネルを通過させることによりストレッチ包装後のシワ解消や底シール性などの包装仕上がりを発現する包装方式であること、およびタイトな包装仕上がりが発現できることが、通常のストレッチ包装と大きく異なる点である。
【0006】
生鮮品等の包装としては、パックセンター等で包装し各店舗に配送するものと、インストアで包装し直接店舗内に陳列するものに大別されるが、最近では人件費や包装作業の効率からみた総合コスト面で、インストアの包装比率が減少しパックセンター等での集約、大量、高速包装の比率が高まりつつある。ここで、パックセンターにおける包装においては、パックした商品を2〜4パック程度積み重ねてコンテナに詰められて保冷車で各店舗に配送される。このため、通常のストレッチ包装のみでは、輸送途中の振動や商品同士の摩擦等により、配送後にフィルムの破れや積み重ねによるフィルムのたるみ等が発生することがあるため、配送後の店舗において、商品のディスプレー効果を低下させてしまったり、場合によってはリパック(再包装)が必要となるなどの問題点があった。
【0007】
これらの問題を解決するために、ストレッチフィルムに比べフィルムの強度やパックした商品にフィルムのタイト感が得られるストレッチシュリンクフィルムの使用が増加する傾向にある。該包装方法は、包装機が通常のストレッチ包装機と同一であり、包装後の工程にシュリンクトンネルを付加する程度であり、またトレー形状も多岐にわたらないことから上記した弁当容器包装のような高い収縮率は要求されず、比較的小さな収縮率で十分良好な包装仕上がりが得られる。但し、内容物が生鮮食品であることが多く、比較的低い温度(通常80℃程度)での熱収縮特性(以下本発明においては低温収縮性と呼ぶ)が求められており、低温収縮性が良好なストレッチシュリンクフィルムが望まれている。
【0008】
ここで、従来のシュリンク包装用フィルムの製造方法は、溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方式であるテンター法あるいはチューブラー法による方式が主に採用されている。これは、主に再加熱時の温度と延伸倍率および延伸速度等を調整することにより、比較的容易に所望の熱収縮特性やフィルム物性を付与することが出来るからであると考えられる。
【0009】
一方、ストレッチ包装用フィルムの製造方法は、溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法が主に採用されている。これは、一般的にインフレーション法の方がテンター法あるいはチューブラー法よりも条件設定範囲が比較的広く、また安定して生産できること、さらに製造設備の費用も安価であるためと思われる。一般にインフレーション法では、原料樹脂を融点(Tm)以上の温度に加熱し、環状ダイから円筒状に押出し、溶融円筒にエアを吹き込んで膨らませてフィルムとするが、この際、エアにより直径方向に、引き取りにより縦方向に延伸がなされる。しかし、この延伸時において、樹脂は高い温度領域にあり、弾性率や粘性が低いため、インフレーション成形したのみでは、熱収縮性歪の付与という点からは、実質未延伸のフィルムであり、若干の熱収縮性は発現するが、特に比較的低い温度(80℃程度)の収縮率(低温収縮性)が発現するような十分な配向をもったフィルムとは通常なりにくい。
【0010】
特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層、及びポリ乳酸を主成分とする層を積層してなる食品包装用ストレッチシュリンクフィルムが提案されている。具体的にはポリ乳酸として、D体量が4質量%であり、重量平均分子量が約20万の材料が使用され、フィルムの全厚さ中に占めるポリ乳酸を主成分とする層の厚さが25%以上となるように多層インフレーション成形装置にて、ブローアップ比6倍でフィルムを得ている実施例が示されており、120℃における熱収縮率がフィルムの縦方向が30%以上、横方向の収縮率が40%以上となるフィルムが開示されている。しかしながら、該出願ではインフレーション成形にてオーバーラップシュリンク包装に使用される高収縮タイプのシュリンクフィルムに好適な熱収縮特性を有するものの、前述した熱収縮時に内部のエアを逃がすために形成される針穴でフィルムが引き裂け易かったり、低温収縮特性や包装仕上がりの点で不十分な点がある等、ストレッチ性ストレッチシュリンク用途に用いる場合には、なお課題を残すものであった。
【0011】
【特許文献1】特開2002−019053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、良好な生産性を発揮し、かつ製造設備の費用が安価なインフレーション成形機でも製造可能であり、低温収縮性と包装仕上がりに優れたストレッチシュリンク積層フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明らは、鋭意検討を重ねた結果、エチレン系重合体を両表面層とし、乳酸系樹脂とアイオノマー系樹脂との混合樹脂組成物を中間層とすることにより上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、中間層が乳酸系樹脂である(B)成分とアイオノマー系樹脂である(C)成分との混合樹脂組成物を主成分とすることを特徴とするストレッチシュリンク積層フィルム。
(2)前記混合樹脂組成物は、乳酸系樹脂である(B)成分10〜90質量%と、アイオノマー系樹脂である(C)成分90〜10質量%から構成されることを特徴とする(1)記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(3)80℃オイルバス中10秒浸漬した時の縦方向及び横方向の熱収縮率が、それぞれ20%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(4)エチレン系重合体である(A)成分が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(5)エチレン系重合体である(A)成分が、酢酸ビニル含量が8〜30質量%で、メルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重:21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(6)エチレン系重合体である(A)成分の融点が、65〜100℃であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(7)アイオノマー系樹脂である(C)成分が、不飽和カルボン酸含量10〜30質量%、金属イオンによる中和度が15〜80%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体であることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(8)溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法で製造されたことを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【0014】
また、本発明のもう一つの目的は、上記(1)から(7)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムをインフレーション成形機により製造することにより達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温収縮性と包装仕上がりに優れたストレッチシュリンク積層フィルムおよびその製造方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特性する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。また、本発明における主成分とは、最も多量に含有されている成分のことであり、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含有する成分のことである。
【0017】
まず、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、また中間層が乳酸系樹脂である(B)成分とアイオノマー系樹脂である(C)成分との混合樹脂組成物を主成分とすることを特徴とする。
【0018】
ここで、上記両表面層に用いる主成分であるエチレン系重合体である(A)成分は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体或いはそれらの混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を超えるものである。
【0019】
これらのエチレン系重合体である(A)成分の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体が好ましい。アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0020】
また、本発明において両表面層は、成形加工時の製膜安定性(例えば、インフレーション成形におけるバブル安定性)や得られるストレッチシュリンク積層フィルムの適度なスリップ性と表面粘着性のバランスあるいは防曇性などの表面特性や、透明性および柔軟性などの力学特性を発現する機能を担っているため、上記エチレン系重合体である(A)成分の中では、酢酸ビニル含量が8〜30質量%で、メルトフローレート(以下、MFRと略することがある)(JISK7210、190℃、荷重:21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、これらの諸特性を材料コスト面も含めて比較的容易に調整できることから最も好ましい。
【0021】
ここで酢酸ビニル含量が8質量%以上であれば、結晶性が低いため得られるフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好であり、フィルム全体の透明性や低温収縮性が損なわれることが無く、また表面粘着性も発現しやすいため好ましい。一方30質量%以下であれば、耐熱性やフィルム強度等が十分確保され、また添加する防曇剤のブリード性や表面粘着性が強すぎないためにフィルムの巻き出し性や外観が良好であるため好ましい。これらのことから、該酢酸ビニル含量は、好ましくは10〜28質量%、更に好ましくは12〜25質量%である。
【0022】
また、MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、一方10g/10分以下であれば、インフレーション成形においても製膜安定性が得られ、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなるため好ましい。これらのことから、該MFRは、好ましくは、0.5〜8g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分である。
【0023】
さらに、両表面層の上記した表面特性や力学特性と得られるストレッチシュリンク積層フィルムの熱収縮性特性とのバランス、特に低温収縮性からはエチレン系重合体である(A)成分の融点が65〜100℃であることが最も好ましい。
【0024】
ここで融点が65℃以上であれば、耐熱性やフィルム強度等が実用的に問題になることが少なく、また、添加する防曇剤のブリード性や表面粘着性が強過ぎないためにフィルムの巻き出し性や外観が良好であるため好ましい。一方、100℃以下であれば、結晶性が低いため得られるフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好であり、フィルム全体の透明性や低温収縮性も損なわれることが少なく、また表面粘着性も発現にやすいため好ましい。これらのことから、該融点は、好ましくは70〜100℃、さらに好ましくは75〜98℃である。
【0025】
上記エチレン系重合体である(A)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
【0026】
次に、(B)成分について説明する。本発明における(B)成分は乳酸系樹脂であることが重要となる。上記(B)成分を乳酸系樹脂とすることで室温時のフィルムの剛性が高まり、パック後の商品輸送時における輸送途中の積み重ねによるフィルムのたるみを起こり難くすることが可能となるため好ましい。また、ガラス転移温度が製膜押出温度から室温までの間に存在するため、例えばインフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工時に、ガラス転移温度近傍で延伸変形が止まり、ガラス転移温度よりも高い温度で受けた収縮歪を緩和させずに残すことが可能となるため、ストレッチシュリンクフィルムに好適な低温での収縮特性(低温収縮特性)を付与することが可能となる。
【0027】
上記乳酸系樹脂は、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリ(DL−乳酸)や、これらの混合体を用いることができる。乳酸系樹脂のD−乳酸(D体)とL−乳酸(L体)との構成比は、本来一般的な組成としてはL体:D体=100:0〜90:10、もしくは、L体:D体=0:100〜10:90であることが好ましく、L体:D体=100:0〜94:6、もしくはL体:D対=0:100〜6:94であることが好ましく、特に、L体:D体=99.5:0.5〜94:6、もしくはL体:D体=0.5:99.5〜6:94であるとより好ましい。D体とL体との構成比がこの範囲内では、得られるフィルムの耐熱性が高く、用途が限定されることがない。
ただし、低温熱収縮特性の付与という観点から言えば、乳酸系樹脂の結晶性は低い方が好ましく、L体:D体=50:50〜94:6、もしくはL体:D体=50:50〜6:94の方が低温熱収縮特性を発現させやすく好ましい。
なお、L体とD体との共重合比が異なる乳酸系樹脂をブレンドしてもよい。この場合、複数の乳酸系樹脂のL体とD体の実質的ホモポリマーと、共重合体をブレンドすることにより、低温熱収縮特性と耐熱性の発現のバランスをとることができる。
【0028】
乳酸系樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法を採用することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系樹脂を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状ニ量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有する乳酸系樹脂を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、所望の組成や結晶性を有する乳酸系樹脂を得ることができる。
【0029】
さらに、本実施形態に用いられる乳酸系樹脂は、本発明の性能を損なわない範囲で、必要に応じて、少量の共重合成分を添加することもでき、テレフタル酸等の非脂肪族カルボキシル基或いは水酸基、又はその両方のエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール等を用いることもできる。
【0030】
本実施形態に用いられる乳酸系樹脂は、重量平均分子量が5万〜40万の範囲であることが好ましく、更に好ましくは10万〜30万の範囲である。酸系樹脂の重合平均分子量がかかる範囲内であれば、機械物性や耐熱性の実用物性を確保するとともに、適度な溶融粘度であるため良好な成形加工性を確保することができる。
【0031】
本実施形態に用いられる乳酸系樹脂は、市販されている乳酸系樹脂を用いることができ、例えば、商品名「レイシア」シリーズ(三井化学(株)製)、商品名「Nature Works」シリーズ(NatureWorks社製)、商品名「U‘zシリーズ」(豊田自動車社製)等を挙げることができる。
【0032】
本発明に用いられる(B)成分のMFR(JIS K7210、190℃、荷重:21.18N)は0.2〜20g/10分であることが好ましい。かかる範囲内であれば、押出成形時に背圧等が急激にあがることがなく、バブルの安定性などのインフレーション成形性やストレッチシュリンクフィルムに好適な力学特性を得ることが可能となるため好ましい。これらのことから、該MFRは、好ましくは0.3〜10g/10分、更に好ましくは0.5〜3g/10分である。
【0033】
次に、(C)成分のアイオノマー系樹脂について説明する。アイオノマー樹脂は、エチレンと不飽和カルボン酸と、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合体のス飽和カルボン酸成分の少なくとも一部を金属イオンもしくは有機アミンのうち少なくともいずれか一方で中和することに得ることができる。またアイオノマー樹脂は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルと、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合体の不飽和カルボン酸エステル成分の少なくとも一部を鹸化することによっても得ることができる。
【0034】
アイオノマー系樹脂の原料となるエチレンと不飽和カルボン酸、任意成分としてその他不飽和化合物を含む共重合体において、不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8程度のものが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどが用いられる。これらの中では、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましく用いられる。また任意成分としての他の不飽和化合物として代表的なものは不飽和エステルであり、その具体例としては酢酸ビニルエステルなどを挙げることができる。なお、これらは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
また、これらの共重合体中の中和成分としては、Na、K、Li、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Al3+などの1価から3価の金属の陽イオン(以下、金属イオンと略することがある)、または有機アミンを挙げることができる。本発明においては、ナトリウム又は亜鉛が好適に用いられる。なお、これらは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明においては、上記のアイオノマー原料となる共重合体において、エチレン含量は50〜90質量%、好ましくは60〜88質量%、不飽和カルボン酸含量は10〜30質量%、好ましくは12〜20質量%、その他不飽和化合物は0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%の重合組成のものが好適に用いられる。また、中和度は、前記金属の陽イオンで共重合体成分中の不飽和カルボン酸量の15〜80%、好ましくは20〜60%が中和されたものが好適に用いられる。ここで、前記重合体組成及び中和度の範囲内であれば、アイオノマー系樹脂の結晶性がある程度低下するため、成形工程時の冷却条件で結晶化しにくくなり、フィルムの透明性を保持することが可能となるため好ましい。また同時に、主にイオン性架橋の凝集力により、例えばインフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工により良好な低温での熱収縮特性(低温収縮性)を付与することが可能となるため好ましい。なお、アイオノマー系樹脂は1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。この際、金属イオンの異なるアイオノマー樹脂を組み合わせて用いることも可能である。
【0037】
アイオノマー樹脂は、金属の陽イオンなどにより共重合体中のカルボキシル基を中和すると中和した部分がイオン化される。中和度が高くなるにつれてイオン化された部分がイオン結合力によって凝集したイオン性架橋となる。イオン性架橋はイオン結合によって凝集しているものであり、イオン結合力よりも大きな力を受けたときには凝集していた部分が壊れるが、イオン結合力よりも小さな力では擬似架橋状態となる。よって中和度の量に伴って溶融粘度が増大し、この効果はアイオノマー樹脂の融点に近い方が大きくなる。ここで、上記重合組成及び中和度の範囲内であれば、これらの作用によって押出性能、具体的には過度な溶融粘度の上昇が無く、例えばインフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工時には、イオン性架橋が擬似架橋構造のままとなるためにストレッチシュリンクフィルムに好適な低温での熱収縮特性(低温収縮性)を付与することが可能となるものと考えられる。
【0038】
アイオノマー系樹脂の中和度に関しては、中和度が高いアイオノマー樹脂に中和していない共重合体をブレンドすることでも中和度の調整が可能となる。具体的には、例えば1価の金属の陽イオンで中和された中和度が80%のアイオノマー樹脂の中和度を40%にする場合には、中和度が80%のアイオノマー樹脂に中和していない共重合体を50質量%/50質量%の割合で溶融混練することで可能となる。
【0039】
本発明に用いられるアイオノマー系樹脂である(C)成分のMFR(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)は、0.2〜20g/10分であることが好ましい。かかる範囲内であれば、押出成形時に背圧等が急激にあがることがなく、バブルの安定性などのインフレーション成形性やストレッチシュリンクフィルムに好適な力学特性を得ることが可能となるため好ましい。これらのことから、該MFRは、好ましくは0.3〜10g/10分、更に好ましくは0.5〜3g/10分である。
【0040】
本発明に用いられるアイオノマー系樹脂である(C)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、特公昭39−6810号公報等に示される公知の製造方法を用いることができる。また、金属イオンを含まないエチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸等の共重合体樹脂を原料に、アセチルアセトン金属錯体、酸化金属、脂肪酸金属塩等を必要量後添加してイオン架橋を導入し、成形加工時にアイオノマー系樹脂を得てもかまわない。エチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸等の共重合体樹脂は、ポストメタロセン触媒により重合することも可能である。
【0041】
また、本発明においては市販の原料を用いることもできる。アイオノマー系樹脂の具体的な商品としては、三井・デュポンポリケミカル(株)の商品名「ハイミラン」が挙げられる。また、金属イオンを含まないエチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸等の共重合体樹脂の具体的な商品としては、三井・デュポンポリケミカル(株)の商品名「ニュクレル」、日本ポリケム(株)の商品名「レクスパールEAA」、ダウ・ケミカル(株)の商品名「プリマコール」などが挙げられる。
【0042】
また、本発明の中間層には、上記した乳酸系樹脂である(B)成分と、アイオノマー系樹脂である(C)成分との混合樹脂組成物を主成分とすることが重要である。ここで、中間層を乳酸系樹脂である(B)成分と、アイオノマー系樹脂である(C)成分との混合樹脂組成物を主成分とすることにより、例えば、インフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工時に、乳酸系樹脂のガラス転移温度付近で変形が止まり、このガラス転移温度よりも高い温度で受けた変形による収縮歪みを緩和させずに残しつつ冷却させることができ、更にアイオノマー系樹脂のイオン性架橋の凝集力により、バブルの内圧を高め、バブルの変形が止まる領域(フロストライン)を安定化させることが可能となるため、ストレッチシュリンクフィルムに好適な低温での収縮特性(低温収縮性)を付与しつつ、成形加工時の製膜安定性(例えば、インフレーション成形におけるバブル安定性)を改良することが可能となるため好ましい。
【0043】
本発明の中間層に用いる混合樹脂組成物は、上記した特性を満足すれば特に限定されないが、良好な低温収縮性と成形加工性を発現する機能を優位に発揮することができる点から、上記(B)成分である乳酸系樹脂と、(C)成分であるアイオノマー系樹脂との混合割合が、(B)成分10〜90質量%、(C)成分90〜10質量%となる混合樹脂組成物が好適に用いられ、より好ましくは、(B)成分30〜70質量%、(C)成分70〜30質量%とを含む混合樹脂組成物である。
【0044】
上記したように、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、エチレン系重合体である(A)成分を主成分とする両表面層と、乳酸系樹脂である(B)成分とアイオノマー系樹脂である(C)成分との混合樹脂組成物を主成分とする中間層を有する、少なくとも3層から構成される積層フィルムであるが、本発明の趣旨を越えない範囲で、力学特性や層間接着性の改良などを目的とし必要に応じて他の層(以下、P層と略することがある)を適宜導入しても構わない。ここで、表面層(以下、S層と略することがある)は、両表面層以外に、すなわち、中間層に同様の層を有しても構わない。また、中間層(以下、M層と略することがある)は、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(S層)からなる4層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(P層)/(S層)、(S層)/(M層)/(P層)/(M層)/(S層)などからなる5層以上の構成も代表的に挙げることができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なっていても構わない。
【0045】
ここで、本発明において好適な積層構成は、(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成であり、この層構成を採用することにより、本発明の目的である良好な低温収縮性と成形加工時の製膜安定性にも優れたストレッチシュリンク積層フィルムを生産性、経済性良く得ることができる。
【0046】
本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、上記した中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比が30〜90%であることが好ましい。中間層のフィルム全体の厚み比に対する厚み比がかかる範囲内であれば、例えば製膜方法として、インフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工法を用いても、安定した製膜加工性が得られ、また、ストレッチシュリンクフィルムに好適な低温収縮性などの熱収縮特性や透明性及び柔軟性などの力学特性を材料コスト面も含めて比較的容易に付与できるため好ましい。これらのことから、該厚み比は、安定した製膜加工性と柔軟性及び材料コスト面をより重視する場合には、好ましくは35〜60%、より好ましくは、35〜50%である。ここで、該中間層が上記したように積層構成中に2層ある場合には、全ての中間層の合計厚みを用いて厚み比を計算すればよい。なお、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムの全体の厚みは、特に制限されるものではないが、通常のストレッチフィルムの厚みと同じ程度の範囲、即ち5〜30μm程度、代表的には8〜20μm程度の範囲にある。
【0047】
また、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、80℃オイルバス中10秒浸漬した時の縦方向及び横方向の熱収縮率がそれぞれ20%以上であることが好ましい。さらに好ましくは20〜60%、特に25〜50%であれば、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムを用いてストレッチ包装した後の皺をシュリンクトンネルを通過させることにより解消できることが多く、また、トレーを変形させたり、トレーの底部に折り込まれたフィルムがヒートシールする際にカールしてしまったり、自然収縮などにより経時的にロール状フィルム(巻物)に巻き締まりによる変形などの不具合が発生することが無いため好ましい。
【0048】
さらに、本発明においては、用いるフィルム幅とトレーのサイズとの大小関係などにより変化するが、80℃オイルバス中10秒浸漬したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値は40〜120%以上、好ましくは40〜100%である。かかる範囲内であれば、各種サイズのトレーへの包装仕上がり性やロール状フィルムの経時変化などが優れておりより好ましい。
【0049】
上記した熱収縮率は、主に両表面層と中間層の厚み構成比と延伸倍率やブローアップ比(バブル直径/ダイ直径)及び延伸温度や冷却条件などの温度条件を変化させることにより所望の範囲に調整することができる。例えば、熱収縮率が所望の値よりも小さい場合には、より低温での熱収縮性歪みを大きくするように、縦方向及び/又は横方向の延伸倍率を上げたり、外面冷却における冷却ブロアー量のUPや内面冷却を併用するなどの冷却効率を適宜調整すればよい。逆に、熱収縮率が所望の値よりも大きい場合には、より低温での熱収縮性歪みを小さくするように、縦方向及び/または横方向の延伸倍率を下げたり、外面冷却における冷却ブロアー量のDOWNや内面冷却を弱くするなどの冷却効率を適宜調整すればよい。
【0050】
次に、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムの中間層には、該(B)成分と(C)成分との混合樹脂組成物以外に、上記した(A)成分であるエチレン系重合体を本発明の趣旨を越えない範囲で混入してもかまわない。例えば、トリミングロス等から発生するリサイクル樹脂の添加や得られるストレッチシュリンク積層フィルム全体での力学特性、特に弾性率(剛性)や引き裂き強度などの特性向上や材料コストの低減などを主目的とする場合に有効な手段となる。混合する場合の混合質量比は、(A)/{(B)+(C)}=1〜50/99〜50、好ましくは、5〜50/95〜50、更に好ましくは、10〜45/90〜55である。
【0051】
ここで、最も好適に混合できる(A)成分としては、酢酸ビニル含有量が10〜80質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これは、両表面層として好適に使用でき、かつ、トリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を添加した際の透明性、力学特性や材料コスト面も含めて実用的に大きな問題がなく、工業材料としても安定的に入手可能であるからである。
【0052】
本発明のストレッチシュリンク積層フィルムには、本発明の趣旨を超えない範囲で、防曇性、帯電防止性、滑り性、自己粘着性、力学特性等の諸物性を更に調整、向上させる目的で必要に応じて各種添加剤及び/又は上記した(A)成分、(B)成分と(C)成分の混合樹脂組成物以外の樹脂を表面層及び/又は中間層にそれぞれ適宜配合することができる。
【0053】
ここで、各種添加剤としては、例えば酸化防止剤、防曇剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤などが挙げられ、本発明の趣旨を超えなければ特に限定されるものではない。本発明において好適に用いられる添加剤としては、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪族との混合物である脂肪族アルコール系脂肪族エステルが挙げられ、具体的には、モノグリセリノレート、ジグリセリンモノオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシレート、グリセリンアセチルシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等を挙げることができる。更にパラフィン系オイルから選ばれた化合物の少なくとも1種を添加することができる。これらの添加剤の好適な添加量は、各種の樹脂成分の合計を100質量部とした場合に、0.1〜12質量部、好ましくは、2〜8質量部、更に好ましくは3〜6質量部であり、本発明においては、少なくとも表面層に添加することが好ましい。
【0054】
また、上記した(A)成分、(B)成分と(C)成分との混合樹脂組成物以外の樹脂としては、本発明の趣旨を超えなければ特に制限されるものではないが、例えばプロピレン系やスチレン系の熱可塑性エラストマー、各種の耐衝撃性改良剤や相容化剤、粘着付与樹脂、可塑剤などを挙げることができる。これらの他の樹脂の好適な添加量は、各種の樹脂成分の合計を100質量部とした場合に、0〜20質量部、好ましくは0〜15部、さらに好ましくは0〜10質量部である。
【0055】
次に、本発明のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法について説明する。製造方法は、公知の各種の製造方法が適用でき、本発明の趣旨を超えなければ特に制限されるものではない。フィルムの積層方法としては、例えば、共押出積層法、ラミネーション法、ドライラミネーション法などを挙げることができる。これらのうち本発明においては、溶融接着する共押出積層法が好適に用いられる。具体的には、複層数に応じた複数の押出機を用いて溶融押出し、フィードブロックやマルチマニホールドなどにより溶融樹脂を展開、積層化する方法である。
【0056】
本発明の主目的の一つである低温収縮性を付与するための方法としては、通常用いられるテンター法やチューブラー法などの溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方式も適宜可能である。本発明においては、上記した積層樹脂組成物構成を採用することにより、溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエア(空気)を吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式である、いわゆるインフレーション法でも低温収縮性に優れたストレッチシュリンク積層フィルムが得られることが見出されたものである。
【0057】
インフレーション法とは、環状ダイより溶融樹脂を引き取り、薄膜化する過程で冷却効果が働き、フィルムを構成する分子が配向する、この配向の度合いは、用いる樹脂の溶融粘度と冷却過程における固化速度あるいは結晶化速度の相違やブローアップ比(バブル直径/ダイス直径)及びバブル形状等によって主に変化するものと考えられる。
【0058】
本発明においては、インフレーション成形する際に、冷風などの媒体で冷却量を調整しながら溶融円筒内に、一定量のエアを入れて加圧量を調整し、ブローアップ比を3.5以上、好ましくは、4〜20、更に好ましくは5〜15とする。続いてフィルムの引き取り速度を調整することによって環状ダイから円筒状に押し出された樹脂の変形倍率がフィルム全体で50〜200倍程度、好適には70〜120倍に調整することが好ましい。ここで、変形倍率とは、環状ダイのリップギャップを得られるフィルムの厚みで除した値のことである。例えば、環状ダイのリップギャップが1mm(1000μm)で、得られるフィルムの厚みが10μmの場合の変形倍率は、100倍となる。また、環状ダイのリップギャップが2mmで、得られるフィルムの厚みが10μmの場合の変形倍率は、200倍となる。該変形倍率の計算には、ブローアップ比の影響を受けないものとする。その際の冷却方法としては、円筒状のフィルムの外面や内面側から冷却する方法、円筒状のフィルムの外面側と内面側の両面から同時に冷却する方法のどちらを採用してもかまわない。
【0059】
上記した方法で得られたストレッチシュリンク積層フィルムは、熱収縮率の調整、自然収縮率の低減やカールの発生を抑制する等の為に、必要に応じて、加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行うことができる。また防曇性、帯電防止性、粘着性等を付与、促進させる目的で、コロナ放電や熟成等の処理、さらには、印刷、コーティング等の表面処理は表面加工を行うこともできる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書に表示されるフィルムについての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
【0061】
(1)熱収縮率
得られたフィルムから縦方向及び横方向からそれぞれ長さ140mm×幅10mmの短冊状にフィルムを切り出し、その中間に長さ100mm間隔の標線を記入した試験片を、80℃のオイルバスに10秒間浸漬し、取り出した後の標線間の長さを測定し、オイルバス浸漬前後の標線間の長さから熱収縮率を%値で求めた。なお、測定は各10回行い、その平均値を算出し、少数第一位を四捨五入した値を記載した。
【0062】
(2)包装仕上がり
幅400mmのフィルムを用い、横ピロー型包装機(大森機械(株)製STN7500
)およびシュリンクトンネル(大森機械(株)製ピロー包装機付属のC−300型、熱風設定温度:85℃、通過時間:3秒)を結合した装置を使用し、200gの粘土(厚み10mm)を入れた通常の発泡ポリスチレントレー(長さ200mm、幅150mm、高さ15mm)を包装し、得られたパックサンプルを下記の基準で評価した。
(◎):トレー上面にシワやたるみが全くなく、フィルムのタイト感が充分あるもの
(○):トレー上面にシワやたるみがほとんどなく、フィルムのタイト感があるもの
(×):トレー上面にシワやたるみが発生したり、フィルムのタイト感がないもの
【0063】
(実施例1)
エチレン系重合体である(A)成分として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン(株)製:LV−440、酢酸ビニル含量:15質量%、MFR:2.2g/10分、融点:95℃)、(以下A−1と略する)100質量部に、防曇剤としてジグリセリンモノオレート3.0質量部を押出設定温度180〜200℃で溶融混練した樹脂組成物を両表面層とし、また、乳酸系樹脂である(B)成分として、NW4032D(NatureWorks社製:ガラス転移温度:55℃、MFR:3.0g/10分)(以下B−1と略する場合がある)60質量%と、アイオノマー系樹脂である(C)成分として、ハイミラン1706(三井・デュポンポリケミカル(株)製:ハイミラン1706、密度:0.96g/cm3、融点:88℃、MFR:0.9g/10分)(以下C−1と略称する場合がある)40質量%とを押出設定温度180〜200℃で溶融混練した混合樹脂組成物を中間層とし、それぞれ別々の押出機から合流させ、環状三層ダイ温度185℃、リップギャップ1.2mm、ブローアップ比5.0で共押出インフレーション成形して、総厚み10μm(厚み比:1/2/1)のストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0064】
(実施例2)
実施例1において、(B)成分をB−1を50質量%とし、(C)成分としてC−1を30質量%とし、エチレン・アクリル酸共重合体(日本ポリエチレン(株)製:レクスパールA−210K、アクリル酸含量:7質量%、MFR:3.0g/10分、融点:98℃)(以下C−2と略する場合がある)を20質量%とした以外は同様にしてストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
実施例1において、中間層の組成を、(B)成分としてB−1を50質量%とし、(C)成分として、C−1を20質量%とし、さらに(A)成分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製:エバフレックスEV360、酢酸ビニル含有量:25質量%、密度:0.95g/cm3、融点:77℃、MFR:2.0g/10分))(以下A−2と略する場合がある)を30質量%とした以外は同様にしてストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1)
実施例1において、中間層として、表裏層に用いたA−1に変更し、実質的にA−1からなる単層フィルムとした以外は、実施例1と同様にしてストレッチシュリンク積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1より、本発明で規定するストレッチシュリンク積層フィルムは、低温収縮性と包装仕上がりに優れていることがわかる。また、インフレーション成形でも製造可能であることが確認できる(実施例1〜3)。これに対して、乳酸系樹脂である(B)成分と、アイオノマー系樹脂である(C)成分との混合樹脂組成物を主成分とする中間層を有さない層構成の場合(比較例1)、自動包装機適性は良好であるものの、低温収縮性が乏しく包装仕上がり時にシワが残ったり、フィルムのタイト感に問題があることが確認できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、中間層が乳酸系樹脂である(B)成分とアイオノマー系樹脂である(C)成分との混合樹脂組成物を主成分とすることを特徴とするストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項2】
前記混合樹脂組成物は、乳酸系樹脂である(B)成分10〜90質量%と、アイオノマー系樹脂である(C)成分90〜10質量%から構成されることを特徴とする請求項1記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項3】
80℃オイルバス中10秒浸漬した時の縦方向及び横方向の熱収縮率が、それぞれ20%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項4】
エチレン系重合体である(A)成分が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項5】
エチレン系重合体である(A)成分が、酢酸ビニル含量が8〜30質量%で、メルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重:21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項6】
エチレン系重合体である(A)成分の融点が、65〜100℃であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項7】
アイオノマー系樹脂である(C)成分が、不飽和カルボン酸含量10〜30質量%、金属イオンによる中和度が15〜80%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項8】
溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法で製造されたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項9】
インフレーション成形機により製造することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。


【公開番号】特開2008−80744(P2008−80744A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265789(P2006−265789)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】