説明

ストレッチフィルム包装機

【課題】 フィルムセットが容易で、且つ、フィルム搬送不良を生じさせないフィルムセット手段を備えたストレッチフィルム包装機を提供すること。
【解決手段】 フィルムの幅方向両側縁部を挟持して搬送する左右一対のフィルム搬送手段の始端側に設けたフィルム挟持部より上流側に、フィルムロールから引き出したフィルム先端部を係止保持するフィルム先端保持部を設け、そのフィルム先端保持部はフィルム搬送手段の始端部から離間する第1の位置と、係止保持したフィルム先端部を前記フィルム搬送手段の始端部に差し込む第2の位置と、に移動可能とし、且つフィルム先端保持部は、一方の面をフィルムとの密着性が高い面とし、他方の面は低密着性面であり、フィルムロールから延びるフィルムと対面する位置に前記フィルム先端保持部の低密着性面が配置されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスーパーマーケットのバックヤード等で生鮮食品をストレッチフィルムを用いてストレッチ包装する包装機に関し、更に詳しくは包装に使用するストレッチフィルムのフィルムセットに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレッチフィルム包装機で、包装に使用するフィルムロールを機内にセットし、そのフィルムロールに繋がるフィルム先端をフィルムセット部材に引っ掛けて包装機の所定位置に移動することで、該フィルムを包装位置へ搬送し得るようにしたストレッチフィルム包装機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そのストレッチフィルム包装機は、フィルムの幅方向両側縁部を挟持して搬送する左右一対のフィルム搬送手段の始端側に設けたフィルム挟持部より上流側に、フィルムロールから引き出したフィルム先端部を係止保持するフィルム先端保持部を設け、そのフィルム先端保持部はフィルム搬送手段の始端部から離間する第1の位置と、係止保持したフィルム先端部を前記フィルム搬送手段の始端部に差し込む第2の位置と、に移動可能とし、フィルムセット時に、フィルムロールから引き出したフィルム先端部をフィルム先端保持部に係止して第1の位置から第2の位置へ移動させることで、フィルム先端部をフィルム搬送手段の始端部に挟入させて、フィルムを前記フィルム搬送手段にて搬送し包装するというものである。
【0004】
そして、前記フィルム先端保持部は、フィルムを係止する部分に、フィルムとの密着性を高める処理として鏡面仕上げ加工を施し、それによりフィルム先端部をフィルム先端保持部に確実に係止保持でき、フィルム先端保持部の移動時にフィルム先端が該フィルム先端保持部から外れるのを防止でき、フィルムセットを容易に行うことができるとしている。
【0005】
しかし、フィルムとフィルム先端保持部との密着性が高すぎて、フィルム搬送手段を駆動してフィルム挟持部に挟入されたフィルム先端保持部に係止されているフィルムを搬送しようとした場合、フィルム先端保持部との係止が強すぎてフィルム先端保持部からフィルムが離れず、フィルム搬送不良を生じるという問題点があった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−335306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、フィルムセットが容易で、且つ、フィルム搬送不良を生じさせないフィルムセット手段を備えたストレッチフィルム包装機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に本発明が講じた技術的手段は、フィルムの幅方向両側縁部を挟持して搬送する左右一対のフィルム搬送手段の始端側に設けたフィルム挟持部より上流側に、フィルムロールから引き出したフィルム先端部を係止保持するフィルム先端保持部を設け、そのフィルム先端保持部はフィルム搬送手段の始端部から離間する第1の位置と、係止保持したフィルム先端部を前記フィルム搬送手段の始端部に差し込む第2の位置と、に移動可能とし、フィルムロールから引き出したフィルム先端部をフィルム先端保持部に係止して第1の位置から第2の位置へ移動させることで、フィルム先端部をフィルム搬送手段の始端部に挟入させて、フィルムを前記フィルム搬送手段にて搬送し包装するストレッチフィルム包装機において、
前記フィルム先端保持部は、平板部材であり、その平板部材の両面のうち、一方の面をフィルムとの密着性が高い面とし、他方の面は低密着性面であり、フィルムロールから延びるフィルムと対面する位置に前記フィルム先端保持部の低密着性面が配置されるように構成した(請求項1)。
前記フィルムロールは、フィルム先端保持部の第2の位置に対し、下方位置或いは上方位置の何れの側に配置されていてもよく、フィルムロールが下方位置に位置する場合、前記低密着性面は平板部材の下側面であり、フィルムロールが上方位置に位置する場合、前記低密着性面は平板部材の上側面となる。
前記密着性が高い面とは、例えば、フィルム先端保持部を構成する金属平板を鏡面加工、或いは平板部材の表面にビニールテープ等が貼付されている、或いは合成樹脂材などフィルムが保持される程度の密着性を備えていることをいう。
又、低密着性面とは、フィルムと該面が接した場合でもフィルムが保持されず、例えばステンレスやアルミ等の金属平板の表面や、或いはそれらの金属にサンドブラスト等、密着性を下げるような処理が施されている面を言う。
【0009】
上記手段によれば、フィルム先端保持部を構成する平板部材の一方の面のみにフィルムとの密着性が高い面が形成されているので、フィルム先端をフィルム先端保持部に係止保持する作業を確実且つ容易に行うことができる。そして、フィルムロールから延びるフィルムは低密着性面と接する為、フィルムがフィルム先端保持部と密着してフィルムの引き出し搬送が阻害されるのを防止でき、フィルムを確実に引き出し搬送できる。従って、フィルム搬送不良が生じるのを防止できる。
【0010】
又、前記フィルム搬送手段は、フィルムを上下の駆動するベルトで挟持して搬送する搬送手段で、前記フィルム先端保持部は前記上下のベルトに挟まれる位置に切欠部を備え、該フィルム先端保持部が第2の位置に位置した時、該先端保持部の位置が、側面視上下ベルト間の中央より該先端保持部の密着性が高い面と対面するベルト側へずれるようにする(請求項2)。
上記フィルム先端保持部のズレ量は、少なくともフィルムロールに繋がるフィルムが上下のベルトで挟持されて引き出し搬送される際、該搬送されるフィルムがフィルム先端保持部により抵抗を受けない程度の量である。
【0011】
上記手段によれば、フィルム先端保持部が第2の位置において密着性が高い面と対面するベルト側にずれていることで、上下のベルトで挟持されて引き出し搬送されるフィルムは、フィード中フィルム先端保持部の低密着性面とより接しなくなる。従って、フィルム搬送手段の駆動によるフィルム搬送時フィルムに対する抵抗が作用しないので、フィルム搬送をスムーズに行うことができる。
【0012】
更に、前記フィルム先端保持部のずれている側に位置するベルトは、他方のベルトよりもフィルムとの密着性、粘着性を高めた構成とする(請求項3)。
上記手段によれば、フィルム先端保持部はフィルムとの密着性(粘着性)が高いベルト側にずれているので、フィルム先端をフィルム先端保持部に係止保持してフィルム搬送手段の始端部に差し込み、フィルム搬送手段の駆動でフィルムが始めて挟持搬送される際、フィルムは密着性の高いベルト側に押し当てられる力が作用するので、フィルム先端保持部に係止保持されたフィルムをより確実に挟持搬送することができる。
【0013】
又、前記フィルム先端保持部における低密着性面は密着性を高める処理を施さない未処理のままでもよいが、積極的にフィルムとの密着性を下げる処理を施してもよい(請求項4)。
密着性を下げる処理としては、例えば、テフロン(登録商標)加工された部材を貼付する、或いはフィルム先端保持部が金属製である場合、該当箇所をサンドブラスト処理する等の方法が挙げられる。
【0014】
上記手段によれば、フィルムがフィルム搬送手段で挟持搬送される際、該フィルムはフィルム先端保持部の低密着性面と対向するが、その低密着性面に密着性を下げる処理が施されていることで、より一層フィルム搬送不良が生じるのを解消することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のストレッチフィルム包装機は請求項1記載の構成により、フィルム先端保持部の一方の面がフィルムとの密着性が高いので、該フィルム先端保持部へのフィルムの巻き付け(セット)を容易に行うことができる。そして、フィルムを巻き付けた後に行われるフィルムの引き出し搬送(フィルムフィード)においては、フィルムロールから引き出されるフィルムはフィルム先端保持部の低密着性面と接するようになるので、フィルムの引き出し搬送(フィルムフィード)の際にフィルムがフィルム先端保持部と密着してフィルム引き出し搬送が阻害されるのを防止できる。即ち、フィルム搬送不良の発生を解消することができ、安定した包装を可能とする。
又、請求項2記載の構成により、上下のベルトで挟持されて引き出し搬送されるフィルムは、フィルム先端保持部の低密着性面と非接触状態で搬送される。従って、フィルム搬送手段の駆動によるフィルム搬送時、フィルム搬送をスムーズに行うことができる。
【0016】
更に、請求項3記載の構成により、フィルムは密着性の高いベルト側に押し当てられる為、フィルム先端保持部に係止保持されたフィルムをより確実に挟持搬送することができる。
また、請求項4記載の構成により、フィルムはフィルム先端保持部の低密着性面と対向するが、その低密着性面に密着性を下げる処理が施されていることで、より一層フィルム搬送不良が生じるのを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るストレッチフィルム包装機の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至図3は、被包装物aのインフィード手段を備えず、被包装物を載置する載置台をエレベータで構成したストレッチフィルム包装機の概略を示し、その包装機Aは略直方体形状をした機枠1内の略中央位置に、被包装物aを載承して上下するエレベータ2が配置され、そのエレベータ2の上限位置より僅か下方位置には包装に使用するフィルムを張架保持する包装部bが設けられ、その包装部bの側方には被包装物aを包装するフィルムを供給するロール配置部3が設けられ、そのロール配置部3にフィルムロール4がセットされている。
【0018】
又、前記ロール配置部3の上方位置から前記包装部b上を通過する経路にはフィルム搬送手段5が配置されており、そのフィルム搬送手段5によりフィルムロール4から繰り出されるフィルム4’の両側部を挟んで所定長さ引出し切断すると共に、切断されたフィルム4’を包装部bに張架するようにしてある。
【0019】
更に、前記フィルム搬送手段5の上方には、左右折込み板6,6’及び後折込み板7を配置して、被包装物aの上面を覆うフィルム4’の端部を被包装物aの底面側に折り込むようにし、後折込み板7の上方には排出プッシャー8を配置して包装済みの被包装物a’をヒートシール部9へ向けて水平に押動排出し得るように構成されている。尚、ヒートシール部9への押動によりフィルム4’の前端部が被包装物aの底面側に折り込まれ、その折り込まれたフィルムの端部は該ヒートシール部9でヒートシールされて包装を完成する。
又、前記エレベータ2の下方位置には計量台10が配置され、被包装物aを載承したエレベータが下限位置に下降した時、前記被包装物aが計量台10で載承され、計量し得るように構成されている。
【0020】
前記エレベータ2は、被包装物aを載置する載置台であると共に、包装部bに張架されたフィルム4’に対して下方から被包装物aを突き上げて該被包装物aの上面をフィルム4’で包む働きをなすもので、昇降部2aと、エレベータヘッド2bとを備え、昇降部2aはエレベータヘッド2bが取り付けられる上面板201とその上面板201の幅方向両端に下方に向けて垂直に取り付けた側板202,202’とで略門形に構成され、その左右の側板202,202’に亘って連結板203の一端部が取り付けられ、連結板203の他端部は機枠1に連結されている。又、左右の側板202,202’と機枠1には前記連結板203の下方に位置してリンク204,204’が取り付けられて、昇降リンク機構が構成されている。
そして、前記昇降部2aは、電動モータ205の回転が回転軸206、回転軸206に連結した作動杆207、および作動杆207に連結した縦杆208を介して上下方向に作動され、一定の範囲を上下昇降する。
又、エレベータ2における上下1サイクルの始動位置と終了位置は、被包装物aを載置したり、包装が行われる上限位置に設定されている。尚、エレベータ2は本発明の要旨と直接関係しないため詳細な説明は省略する(詳細な構成は特開2003−335306号公報参照)。
【0021】
フィルム搬送手段5は、包装部bより上流位置に配置されたロール配置部3にセットされたフィルムロール4から繰り出されるフィルムの先端部両側を挟持して保持すると共に、包装に必要な長さ宛引き出して切断し、包装部bに張架保持するものである。
そのフィルム搬送手段5は、フィルムの幅方向の側端部を挟持する上下一対の無端状の弾性ベルト5a,5a’と、下側の弾性ベルト5a’を上側の弾性ベルト5a側へ圧接するクランプ板5bとで構成され、それらが包装部bを挟んで前後に配置されている。
そして、前記した前後一対の構成部材は、それぞれ取り付け枠5d,5d’に支持され、その取り付け枠5d,5d’は所定の間隔をおいて機枠1に固定されている。
【0022】
上記フィルム搬送手段5を構成する上下一対の無端状の弾性ベルト5a,5a’はフィルムを挟持して搬送し得るように同方向に駆動回転される。その駆動方式は、減速機付モータ5eで下側の弾性ベルト5a’が巻回されている駆動ローラ5f’を回転し、且つその駆動ローラ5f’の軸に固着したプーリー(図示せず)と上側の弾性ベルト5aが巻回されている駆動ローラ5fの軸に固着したプーリー(図示せず)とに亘ってベルトを巻回して動力伝達が行われ、上側の弾性ベルト5aも回転するように構成されている。尚、上下の弾性ベルトはフィルムの挟持及び搬送が安定よく確実に行われるように、途中にテンション調節機構が装備されている。
【0023】
又、上側の弾性ベルト5aに対して下側の弾性ベルト5a’を圧接するクランプ板5bは、図1に示すように3個に分割され、その3個のクランプ板は電磁ソレノイド等によってそれぞれ独立して上下方向に駆動され、下側の弾性ベルト5a’に押し付け、下側の弾性ベルト5a‘から離反されるように構成されている。従って、3分割されたクランプ板5bの解放のタイミングは別々に変化させることができる。
【0024】
更に、上記フィルム搬送手段5の始端側には、フィルムの先端部を上側の弾性ベルト5aと下側の弾性ベルト5a’とで圧着してフィルムの移動を止めるフィルム挟持部12が設けられ、そのフィルム挟持部12より上流側にフィルムロール4から繰り出されるフィルムに切断のためのミシン目を入れるミシン目刃18が、フィルム面に対し直角方向に進退するように配置されている。
又、前記フィルム挟持部12より上流側で、ミシン目刃18より下流側にはフィルムロール4から引き出したフィルム先端部を係止保持するフィルム先端保持部19が、機枠1の側部に設けた開閉自在なカバー20の内側に設けられている。そして、前記カバー20を開けることでフィルム先端保持部19はフィルム搬送手段5の始端部から離間する第1の位置に位置し、カバー20を閉じることでフィルム先端保持部19に係止保持したフィルム先端部をフィルム搬送手段5の始端部に差し込む第2の位置に移動する。
【0025】
フィルム先端保持部19は、図5及び図6に示すように金属製平板からなる小片21を断面略L字形に折り曲げ、その水平片21aに、前記フィルム搬送手段5におけるフィルム挟持部12のベルト幅よりやや幅広い切欠部22を所定深さ切欠き形成したフィルム保持部材19a,19bで構成されている。そして、このフィルム保持部材19a,19bは、カバー20の内側に架設した取付桟20’に前記した左右一対のフィルム搬送手段5の設置間隔と同じ間隔をおいて固着されている。
そして、フィルム保持部材19a,19bにおけるフィルム先端部が係止される面、即ち、切欠部22を切り欠いた水平片21aの上面にはフィルムの密着係止を確実にする係止面23が形成されている。その係止面23は、フィルムの密着性を高める鏡面仕上げ加工によって構成されているので、フィルムロールから伸びるフィルムが係止面23に密着して容易に第2の位置へ移動させることができる。即ち、フィルムをフィルム搬送手段5の始端部に差し込むフィルムセットの際、フィルムがフィルム先端保持部19から落ちることなく容易にフィルムセットが可能になる。
【0026】
又、前記フィルム保持部材19a,19bの水平片21aの他方の面、即ち下面はフィルムとの密着性を高める処理が施されていない低密着性面24に形成されている。
前記水平片21aの低密着性面24は、フィルムロール4から引き出されるフィルムと対向する位置に配置される面で、フィルムロール4をセットするロール配置部3がフィルム先端保持部の第2の位置(カバー20を閉じてフィルム先端保持部19の水平片21aをフィルム搬送手段5の始端部に差し込んだ位置)に対して下方に配置されている場合は図4に示すように水平片21aの下面が低密着性面24となる。
又、フィルムロール4をセットするロール配置部3がフィルム先端保持部の第2の位置に対して上方に配置されている場合は図9に示すように水平片21aの上面が低密着性面24となり、下面がフィルムとの密着性が高い係止面23となる。但し、その場合はフィルムロール4から引き出すフィルムに対してミシン目を形成するミシン目刃の配置等の関係でカバー20の取り付け位置、及びフィルム搬送手段5の始端部の向きは、フィルムロール4がフィルム先端保持部より下方に配置した実施の形態(図1、4参照)とは逆の位置に配置する。
【0027】
上記低密着性面24は、フィルムとの密着性を高める処理を全く施さない素材自体の表面状態のままでもよいが、逆に積極的にフィルムとの密着性を下げる処理(非密着処理)を施してもよい。その密着性を下げる処理としては、例えばテフロン(登録商標)加工された部材を貼付する方法、或いはフィルム保持部材19a,19bが金属製である場合は水平片21aの下面をサンドブラスト処理する等の方法が挙げられる。
【0028】
又、前記フィルム先端保持部19はカバー20を閉じてフィルム搬送手段5を構成する上下一対の無端状の弾性ベルト5a,5a’の間に差し込まれる第2の位置に移動させるが、第2の位置に位置した時、フィルム先端保持部19の水平片21aは、側面視で上下の弾性ベルト5a,5a’が接触する境界線上(中央)に位置するが、前記したようにフィルム先端保持部19の水平片21aにおけるフィルムロール4に繋がるフィルムと対面する面は低密着性面24であるため、包装に必要なフィルムをフィルム搬送手段5の駆動で引き出した場合、フィルムは水平片21aの低密着性面24に接触するが、該低密着性面24はフィルムの密着性を高める処理がされていない、又は密着性を下げる処理が施されているため、フィルムの引き出し搬送が阻害されることはなく、フィルムの安定した引き出し搬送が可能となる。
【0029】
上記フィルム先端保持部19は第2の位置に位置させた時、水平片21aは側面視で上下の弾性ベルト5a,5a’が接触する境界線(中央線)C・Lより該先端保持部の密着性が高い面と対向するベルト側へずれて配置されるように構成してもよい。
即ち、フィルムロール4の配置位置がフィルム先端保持部の第2の位置に対して下方である場合、前記境界線(中央)C・Lより上側の弾性ベルト5a側へずらして配置する(図7及び図8参照)。
例えば、図7に示すようにフィルム先端保持部19を上側の弾性ベルト5a側にずらして配置した場合、左右のフィルム保持部材19a,19bの水平片21aに亘って巻き付けたフィルム4’の面は上下の弾性ベルト5a,5a’が接触する境界線(中央線)C・Lより上方に位置する。従って、フィルム4‘の搬送の際、フィルム4’と水平片21aとは接しなくなり、水平片21aによる抵抗を受けなくなる。また、弾性ベルト5a側にずれているのでフィルム先端保持部19が第2の位置へ移動された時、水平片21aの切欠部22を覆うフィルムは上側の弾性ベルト5aの幅方向の両角部で下方に押し付けられ、その結果フィルムに反作用が働き、フィルム4’は上側の弾性ベルト5aに押し付けられることになる。よって、フィルムの引き出し搬送が安定して行われる。
又、上側の弾性ベルトに対するフィルムの押し当てる力を更に高める場合は、図7に示すようにフィルム先端保持部19の水平片21aの上面にフィルムを押し上げる部材、例えばクッション性部材25を貼り付けてもよい。但し、その場合クッション性部材25の表面はフィルムとの密着性を高める処理を施すようにする。
フィルムロール4の配置位置がフィルム先端保持部の第2の位置に対して上方である包装機にあっては、前記境界線(中央)C・Lより下側の弾性ベルト5a’側へずらして配置する(図9乃至図11参照)。
【0030】
また、フィルム先端保持部19の水平片21aがずれて配置される場合、例えばフィルム先端保持部19が境界線(中央)C・Lより上側の弾性ベルト5a側へずらして配置される場合、上側の弾性ベルト5aは下側の弾性ベルト5a'よりもフィルムとの密着性が高く構成されている。同様に、フィルム先端保持部19が境界線(中央)C・Lより下側の弾性ベルト5a’側へずらして配置される場合、下側の弾性ベルト5a’は上側の弾性ベルト5aよりもフィルムとの密着性が高く構成されている。
更に、前記フィルム先端保持部19における水平片21aの低密着性面24は、上記したように該低密着性面24にフィルムとの密着性を下げる処理を施してもよい。
【0031】
上記したフィルム先端保持部19の水平片21aにフィルム先端を巻き付け、カバー20を閉じて該フィルム先端保持部19の水平片21aをフィルム搬送手段5の上下の弾性ベルト5aと5a’との間に差し込んだ場合、水平片21aが境界線(中央)C・Lより上側又は下側にずれて配置されていることで、図7に示すように水平片21aの切欠部22を覆うフィルムがずれている側の弾性ベルトの両角部でもう一方の弾性ベルト側へ押し付けられる為、フィルムの反作用で水平片21aに巻き付けたフィルムをずれている側の弾性ベルトに強く押し当てることになる。それにより、水平片21aにセットされたフィルムをより確実に挟持して引き出し搬送することが出来る。
更に、前記フィルム先端保持部19の水平片21aがずれている側の弾性ベルトは、他方の弾性ベルトよりフィルムとの密着性が高い為、より確実にフィルムの引き出し搬送を行うことができる。特に、フィルム先端をフィルム先端保持部の水平片21aに巻き付けて行う1回目のフィルム引き出しは、水平片21aにフィルムが重ねて巻き付けられるため、より強い搬送力が要求されるが、前記構成により充分対応することが可能となる。
【0032】
そして、上記動作によって所定長さに切断したフィルムは包装部bに張架されるが、フィルムロールから引き出し包装部に張架した最初のフィルムは、空の包装動作によって取り除かれる。即ち、1回目はフィルムを所定位置にセットすることが目的で、2回目から正規の包装が行われる。
最初のフィルムは、空の包装動作で取り除かれるが、1回目に所定長さ引き出されて切断されたフィルムロール側の端部、即ちフィルムロールに繋がるフィルム先端は図12に示すようにフィルム挟持部12を通過した下流側位置で次のフィルムフィードを待機する。そして、2回目以降の正規の包装動作に必要なフィルムはフィルム搬送手段5の駆動で引き出され、所定長さ引き出された位置でミシン目刃18が作動してフィルム4にミシン目が形成され、そのミシン目部分がフィルム挟持部12を通過する位置まで搬送され、ミシン目がフィルム挟持部12を通過した時該フィルム挟持部12が作動してフィルムの移動を止める。それにより、フィルム挟持部12より下流側に位置するフィルムはフィルム搬送手段5の駆動で下流側に引っ張られるため、ミシン目部分で引き裂かれ、切断された所定長さのフィルム4’は包装部bに張架保持され、フィルムロールに繋がるフィルム先端はフィルム挟持部12を通過した下流側位置で待機する。そして、2回目以降のフィルム引き出しに際し、第2の位置に位置するフィルム先端保持部19の水平片21aはフィルム搬送手段5の上下の弾性ベルト5a,5a’が接触する境界線(中央線)C・Lより上方又は下方に位置してギャップがあるため、フィルム搬送手段5の駆動でフィルムロールから引き出されるフィルムは水平片21aに接することなく引き出される。
尚、図面ではフィルム搬送手段5の上側の弾性ベルト5aと下側の弾性ベルト5a’は、フィルム先端保持部との関係を理解し易くする為に間隔をあけて表示してあるが、実際は上下の弾性ベルト5a,5a’は接触しており、フィルム先端も上記したフィルム挟持部を通過した下流側位置に挟持されて待機する。
この2回目以降のフィルムの引き出し搬送(フィルムフィード)において、上記した本発明の構成が顕著に作用して、包装に必要なフィルムの引き出し搬送においてフィルム搬送不良の発生を防止できる。
即ち、
(1)フィルム先端保持部の水平片21aにおけるフィルムとの密着性を高める処理が施されていない/又はフィルムとの密着性を下げる処理を施した面(低密着性面)が、フィルムロールに繋がるフィルムと対向するように配置されていることで、フィルムロールから引き出し搬送されるフィルムは低密着性面と接触し、フィルムの引き出しが阻害されることがない。
(2)前記フィルム先端保持部の水平片21aを、側面視で上下の弾性ベルト5a,5a’が接触する境界線(中央線)C・Lより該先端保持部の密着性を高める処理が施された面と対向するベルト側へずらして配置したことにより、フィルム搬送手段の駆動でフィルムを引き出し搬送した場合、フィルムはフィルム先端保持部の水平片に接触することなく引き出し搬送される。従って、より一層フィルムの引き出しが阻害されることがない。
(3)そして、上記フィルム先端保持部の水平片がずれている側の弾性ベルトを、他方の弾性ベルトよりフィルムとの密着性を高くした場合は、フィルムの引き出し搬送をより確実に行うことができる。
尚、フィルムのセットに関する詳細な説明は特開2003−335306号公報を参照のこと。
【0033】
本発明は図示の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で変更可能である。
(1)フィルム先端保持部は金属材に限らず、合成樹脂材でもよい。また、密着性を高める処理を施す例にて説明したが、該処理を施さず、元来密着性が高い素材、例えばプラスチック等を用いてもよい。
(2)フィルム先端保持部の配置位置は、図示のカバーに限定されない。フィルムセット時に、フィルム先端保持部に係止したフィルムを、フィルム挟持部へ移送できればよい。
例えば、特開2000−72105号公報に開示されている二つの保持板の間にフィルムを介在させて、該保持板をモータ駆動により上昇させて、フィルムをフィルム搬送機構端部に挟入させるようなフィルムセット機構で本発明を利用してもよい。
つまり、フィルムロールから伸びるフィルムを両保持板の間に通してセットする場合、フィルムロールから伸びるフィルムと接する保持板の内側の面は低密着性面で、フィルムロールから伸びる余分なフィルム先端を保持板の外側に垂らして、該垂れるフィルムが接触する該保持板の外側の例えば上端部に密着性の高い領域を設けるようにしてもよい。
これにより、フィルムをセットし、フィルムロールから伸びる余分なフィルムをカットする場合でも、前記密着する部分にフィルムの先端部を密着させてからフィルムをカットすることができるので、フィルム先端部が遊ぶことなくフィルムのカットが可能なので容易にフィルムセットができ、又、フィルム搬送の為、フィルムが保持板間を搬送されるときは低密着性面と接するようになるので、フィルム搬送時に余計な抵抗が無くなり安定したフィルム搬送が可能となる。従って、本発明で言うフィルムセット時とは、上記実施形態で説明したようにフィルムをフィルム搬送手段の始端部へ挟入させる場合の他、上記のように保持板間にフィルムを保持させる場合の両方を意味する。
(3)図示の実施の形態は被包装物をエレベータ上に直接載置する、所謂インフィードコンベヤを備えない包装機であるが、インフィードコンベヤを備えたタイプの包装機にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るストレッチフィルム包装機の実施の形態の一例を示す縦断正面図。
【図2】同縦断側面図。
【図3】同横断平面図。
【図4】要部の拡大断面図。
【図5】フィルム先端保持部を構成するフィルム保持部材を示す斜視図。
【図6】フィルム先端を係止したフィルム先端保持部を、フィルム挟持部に差し込みフィルムセットされた状態を示す拡大平面図。
【図7】図6の(7)−(7)線に沿える拡大断面図。
【図8】図6の(8)−(8)線に沿える拡大断面図。
【図9】フィルムロールがフィルム先端保持部より上方に配置された実施の形態における要部の拡大断面図。
【図10】図9の要部を拡大して示す断面側面図。
【図11】図9の要部を拡大して示す断面正面図。
【図12】フィルムフィードの待機状態を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0035】
A…包装機 a…被包装物
b…包装部 4…フィルムロール
4’…フィルム 5…フィルム搬送手段
12…フィルム挟持部 19…フィルム先端保持部
23…係止面(密着処理面) 24…低密着性面(非密着処理面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの幅方向両側縁部を挟持して搬送する左右一対のフィルム搬送手段の始端側に設けたフィルム挟持部より上流側に、フィルムロールから引き出したフィルム先端部を係止保持するフィルム先端保持部を設け、そのフィルム先端保持部はフィルム搬送手段の始端部から離間する第1の位置と、係止保持したフィルム先端部を前記フィルム搬送手段の始端部に差し込む第2の位置と、に移動可能とし、フィルムロールから引き出したフィルム先端部をフィルム先端保持部に係止して第1の位置から第2の位置へ移動させることで、フィルム先端部をフィルム搬送手段の始端部に挟入させて、フィルムを前記フィルム搬送手段にて搬送し包装するストレッチフィルム包装機において、
前記フィルム先端保持部は、平板部材であり、その平板部材の両面のうち、一方の面をフィルムとの密着性が高い面とし、他方の面は低密着性面であり、フィルムロールから延びるフィルムと対面する位置に前記フィルム先端保持部の低密着性面が配置されることを特徴とするストレッチフィルム包装機。
【請求項2】
前記フィルム搬送手段は、フィルムを上下の駆動するベルトで挟持して搬送する搬送手段で、前記フィルム先端保持部は前記上下のベルトに挟まれる位置に切欠部を備え、該フィルム先端保持部が第2の位置に位置した時、該先端保持部の位置が、側面視上下ベルト間の中央より該先端保持部の密着性が高い面と対面するベルト側へずれていることを特徴とする請求項1記載のストレッチフィルム包装機。
【請求項3】
前記フィルム先端保持部がずれている方向に位置するベルトは、他方のベルトよりもフィルムとの密着性が高いことを特徴とする請求項2記載のストレッチフィルム包装機。
【請求項4】
前記フィルム先端保持部における低密着性面に、フィルムとの密着性を下げる処理がされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のストレッチフィルム包装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−149309(P2009−149309A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326126(P2007−326126)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000145068)株式会社寺岡精工 (317)
【Fターム(参考)】