説明

ストレッチラメ糸とその製造方法およびこのストレッチラメ糸を用いた布帛

【課題】ラメ糸による被覆率が極めて高く、しかも所望の伸縮性を備えながら、伸縮による被覆の乱れを抑制して高い被覆率を維持できるようにする。
【解決手段】芯糸(2)に弾性糸を配し、芯糸(2)の周囲にラメ糸(7)を含む鞘糸(3)を巻きつける。鞘糸(3)を、下ヨリ糸(4)と、ラメ糸(7)を含む上ヨリ糸(5)とで構成する。芯糸(2)を2倍以下のドラフト率で引き伸ばした状態で、下ヨリ糸(4)を所定方向に巻きつけたのち、これとは逆方向に上ヨリ糸(5)を巻きつけて、ダブルカバリング構造を形成する。上ヨリ糸(5)の巻きつけの際に、芯糸の繊度をSSとし、鞘糸全体の繊度をSCとし、カバリング時の芯糸のドラフト率をDとし、上ヨリ糸の撚り数をR1としたとき、式K1=(SS÷D+SC)1/2×R1で表される上撚り係数K1が30000以上となるようにカバリング条件を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性糸を芯糸とし、その周囲にラメ糸とラメ糸以外の繊維とを配したダブルカバリング構造を有する、高被覆性を備えたストレッチラメ糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ストレッチ素材を得るために、芯糸としてポリウレタン系弾性繊維を用い、鞘糸となるポリアミド繊維やポリエチレンテレフタレート繊維などを一重あるいは二重に被覆したカバリング糸が、ストッキング、ソックス、インナーなど一般衣料用途に使用されてきた(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
これに伴い、ラメ糸についても同様に、ストレッチを持たせた素材が多々提案されている。例えば、芯糸の弾性糸に捲縮加工糸を巻き付けて、その上から金属線や箔糸を1重もしくは2重に巻き付けて電線等に用いるものが提案されている(例えば特許文献2参照、以下、従来技術1という。)。
【0004】
また、弾性糸にラメ糸を一方向に巻き付け、その上から逆方向にその他の繊維を巻き付けたダブルカバリング構造のストレッチラメ糸についての提案もされている(例えば特許文献3参照、以下、従来技術2という。)。さらに、捲縮発現性繊維からなる芯糸にラメ糸と他の繊維とを引き揃えたものでプライもしくはシングルカバーしたストレッチラメ糸も提案されている(例えば特許文献4参照、以下、従来技術3という。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−178845号公報
【特許文献2】特開昭61−194235号公報
【特許文献3】特開平10−1833号公報
【特許文献4】特開2003−155634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術1に準じて製造したストレッチラメ糸では、金属箔線状物を2重に巻いた場合、電線用途として良好な被覆性が得られるものの、糸が極端に硬くなってストレッチ性が損なわれるばかりか、伸縮するうちに2重目の金属箔が糸長手方向にずれやすく、ヨリだまりを発生して美観を損なう虞がある。一方、金属箔線状物を1重に巻いた場合、被覆の際に芯糸となる弾性繊維を3倍に伸長しているため、伸縮性が良好であるものの、金属箔による被覆が乱れやすく、十分な被覆性が得られない問題があり、いずれの場合もストレッチラメ糸としては適していない。
【0007】
一方、上記の従来技術2では、ラメ糸の上からその他の繊維を巻き付けるため、ラメ糸の一部がその他の繊維で隠れることとなる。従ってこのストレッチラメ糸は、外表面のうちラメ糸で覆われる部分が少なく、ラメ糸による被覆率を高くできないので、十分な意匠性を得ることができない問題がある。
また上記の従来技術3では、ストレッチラメ糸の外表面にラメ糸と他の繊維とが配されるため、その外表面に他の繊維が配される分、この従来技術3の場合もラメ糸による高被覆性を得ることができない問題がある。
【0008】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、極めて被覆性に優れ、しかも所望の伸縮性を備えながら、伸縮によるラメ糸の乱れが抑制され、ヨリだまりなど発生が防止されたストレッチラメ糸とその製造方法およびそのストレッチラメ糸を用いた布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図3に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明1はストレッチラメ糸の製造方法に関し、芯糸(2)に弾性糸を配し、この芯糸(2)の周囲にラメ糸(7)を含む鞘糸(3)を巻きつける、ストレッチラメ糸の製造方法であって、上記の鞘糸(3)を、下ヨリ糸(4)と、ラメ糸(7)を含む上ヨリ糸(5)とで構成し、上記の芯糸(2)を2倍以下のドラフト率で引き伸ばした状態で、上記の下ヨリ糸(4)を所定方向に巻きつけたのち、これとは逆方向に上記の上ヨリ糸(5)を巻きつけてダブルカバリング構造を形成し、上記の上ヨリ糸(5)の巻きつけの際のカバリング条件を、下記式(F1)で表される上撚り係数K1が30000以上となるように設定することを特徴とする。
K1=(SS÷D+SC)1/2×R1 …(F1)
ここでSSは芯糸の繊度(dtex)であり、SCは鞘糸全体の繊度(dtex)であり、Dはカバリング時の芯糸のドラフト率(倍)であり、R1は上ヨリ糸の撚り数(回/m)である。
【0010】
本発明2はストレッチラメ糸に関し、芯糸(2)に弾性糸が配してあり、この芯糸(2)の周囲に、下ヨリ糸(4)と、ラメ糸(7)を含む上ヨリ糸(5)とを順に巻きつけたダブルカバリング構造を有しており、下記式(F3)で表される被覆率Cが95%以上であることを特徴とする。
C=W/(π×d×cosφ)×100 …(F3)
ここでWは上ヨリ糸の糸幅(mm)であり、dはストレッチラメ糸の直径(mm)であり、φはストレッチラメ糸の長さ方向に対する上ヨリ糸の撚り角度(度)であり、πは円周率である。
【0011】
また本発明3は布帛に関し、上記の本発明2のストレッチラメ糸(1)を用いて織成または編組したことを特徴とする。
【0012】
上記の本発明1により製造されたストレッチラメ糸は、ラメ糸を含む上ヨリ糸の撚り係数K1が大きいため、この上ヨリ糸のラメ糸で芯糸や下ヨリ糸が十分に覆われ、例えば、ストレッチラメ糸の外表面の95%以上がこのラメ糸で覆われる。しかも芯糸が所定のドラフト率で伸長されているため、ストレッチラメ糸として十分な伸縮性が備わっているにもかかわらず、このドラフト率が2倍以下であるため、ストレッチラメ糸が過度に伸長することがない。この結果、上ヨリ糸による被覆は伸縮に起因して乱れることが抑制され、高い被覆率が良好に維持される。
【0013】
上記の上撚り係数K1は、具体的には上ヨリ糸の糸幅やストレッチラメ糸の直径等によっても異なるが、30000以上であればよく、50000以上であるとより好ましく、60000以上であるとさらに好ましい。
【0014】
上記のラメ糸を含む上ヨリ糸は、特定の繊度のものに限定されないが、細いほど伸縮による乱れが抑制されるので、例えば100dtex以下のものが好ましく、30〜80dtex程度のものがより好ましい。またこの上ヨリ糸の撚り数は、大きいほど被覆率を高くできて好ましく、具体的には上ヨリ糸の繊度や芯糸の繊度、芯糸のドラフト率等によっても異なるので特定の値に限定されないが、例えば2000〜8000回/m程度が好ましく、3000〜6000回/m程度がより好ましい。
なおこの上ヨリ糸は、ラメ糸のみで構成してあると被覆率を高くできて好ましいが、ラメ糸が95%以上となるように、他の繊維等を含むものであってもよい。
【0015】
上記の芯糸は、上記の下ヨリ糸と上ヨリ糸とを巻き付ける際に2倍以下のドラフト率で引き伸ばされておればよく、このドラフト率は特定の値に限定されない。具体的には、このドラフト率は例えば1.1倍以上に設定されるが、1.5倍以上であると得られたストレッチラメ糸の伸縮性が良好となるので、より好ましい。
【0016】
上記の芯糸に対し上記の上ヨリ糸を巻きつける際の、芯糸との間に形成されるバルーニング角は、特定の値に限定されず、上ヨリ糸や芯糸の繊度等によっても異なり、例えば20度以上に設定される。しかしこのバルーニング角を大きくして、例えば30〜50度程度に設定すると、上ヨリ糸による被覆を円滑に高い被覆率にでき、より好ましい。
【0017】
また上記の芯糸に対する下ヨリ糸のカバリングは、特定の条件に限定されないが、下記式(F2)で表される下撚り係数K2が、上記の上撚り係数K1よりも小さい値、例えば下撚り係数K2の97%程度以下の値となるようにカバリング条件を設定すると、得られたストレッチラメ糸が伸長した際に上ヨリ糸へ過度の張力が加わることを抑制でき、被覆乱れの発生を抑制できて好ましい。
K2=(SS÷D+SC)1/2×R2 …(F2)
ここで、R2は下ヨリ糸の撚り数(回/m)である。
【0018】
但し上記の下撚り係数K2は、上撚り係数K1と大きく異なるとストレッチラメ糸として上ヨリ糸と下ヨリ糸のバランスが崩れるので、この下撚り係数K2は上撚り係数K1の50%以上であるとより好ましい。
【0019】
なお、上記の下ヨリ糸の撚り数は、上ヨリ糸の撚り数よりも小さいと、ストレッチラメ糸が伸長した際に上ヨリ糸へ過度の張力が加わることを抑制できて好ましい。この場合、下ヨリ糸のバルーニング角は、上ヨリ糸のバルーニング角よりもやや小さいと、下ヨリ糸を円滑に巻き付けることができてより好ましい。
【0020】
上記の本発明2のストレッチラメ糸は、上記の被覆率Cが95%以上であればよく、必ずしも特定の製造方法によるものに限定されない。しかしこのストレッチラメ糸を上記の本発明1の製造方法により製造すると、被覆率を容易に且つ確実に高くできて好ましい。
ここで、上記の上ヨリ糸の糸幅とは、ストレッチラメ糸の外表面に巻き付けられた時の糸幅をいい、断面が円形の場合はその直径をいうが、例えば箔糸のように薄い所定厚さとこれよりも大きい幅寸法とを備える場合はその幅寸法をいう。
【0021】
上記のストレッチラメ糸の伸縮性の程度は特に限定されないが、伸縮性が過剰に高いと上ヨリ糸による被覆が伸縮の際に乱れる虞がある。このため、このストレッチラメ糸の伸長率は50〜150%程度が好ましく、60〜120%程度がさらに好ましい。このような伸長率は、上記の本発明1において、上記のドラフト率を1.5〜2倍に設定することで、容易に且つ確実に達成される。
【0022】
上記のストレッチラメ糸の芯糸に配する糸は、弾性を備えておればよく、特定の材質のものに限定されない。具体的にこの弾性糸には、例えば、ポリウレタン系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、天然ゴム、合成ゴム、伸縮性を有する複合繊維などを用いることができ、なかでも、その伸縮性、熱セット性、耐ガス脆化、耐薬品などの点からポリウレタン系弾性繊維が特に好ましい。
【0023】
上記のラメ糸は、金属光沢を備えたものであればよく、金属箔などを用いてもよいが、合成樹脂フィルムに金属を蒸着させて形成してあると、安価に製造できるうえ合成樹脂フィルムを無色にすることでラメ糸を金属自体の色にでき、着色することで任意の色彩の金属光沢を備えることができるので、意匠性を良好に発揮できて好ましい。
【0024】
上記のラメ糸を含む上ヨリ糸の撚り角度は、特定の値に限定されないが、撚り角度が大きいと被覆率を高くできるので、ストレッチラメ糸の糸径やラメ糸の糸幅によっても異なるが、例えば60度以上が好ましく、70度以上であるとさらに好ましい。
【0025】
上記の本発明3の布帛は、上記の本発明2のストレッチラメ糸を用いてあればよく、ストレッチラメ糸を単独で用いて織成または編組したものであってもよく、或いは、他の糸と任意の割合で組み合わせて織成または編組したものであってもよい。この場合、他の糸は天然繊維と合成繊維のいずれであってもよく、特定の材質のものに限定されない。この他の糸は、伸縮性を備えていると布帛全体の伸縮性が良好に発揮される。しかしこの他の糸は、伸縮性が低い場合や伸縮性を備えていない場合であっても良く、上記のストレッチラメ糸を組み合わせて用いることで布帛全体としての伸縮性が発揮され、しかもラメ糸による意匠性が良好に発揮される。なお上記の織成や編組は、任意の組織構造を採用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0027】
(1)本発明によれば、上ヨリ糸にラメ糸が含まれており、この上ヨリ糸の撚り係数が30000以上と大きな値であるため、ストレッチラメ糸の外表面を、例えば95%以上の極めて高い被覆率で、ラメ糸により覆うことができ、意匠性の優れたストレッチラメ糸を得ることができる。
(2)芯糸を所定のドラフト率で引き伸ばした状態で下ヨリ糸と上ヨリ糸とを巻き付けることから、例えば伸長率が110〜200%程度の、所望の伸縮性を十分に備えたストレッチラメ糸を得ることができる。
(3)上記のドラフト率は2倍以下であるので、ストレッチラメ糸が過度に伸長することが抑制され、しかも上撚り係数が大きいことから、ストレッチラメ糸の伸縮に起因して上ヨリ糸の被覆が乱れたりヨリだまりが発生したりすることを抑制でき、高い被覆率での被覆を良好に維持することができる。
(4)本発明3にあっては、外表面が高い被覆率でラメ糸により覆われた、所望の伸縮性を備えるストレッチラメ糸を用いるので、伸縮性を備えたものでありながら、意匠性の優れた布帛にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のストレッチラメ糸の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のストレッチラメ糸の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明のストレッチラメ糸の実施例の、物性対比表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のストレッチラメ糸の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、このストレッチラメ糸(1)は、芯糸(2)の周囲に鞘糸(3)が巻き付けてあり、この鞘糸(3)は下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)とからなる。即ちこのストレッチラメ糸(1)は、下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)とを順に巻きつけたダブルカバリング構造を有している。この下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)の撚り方向は、例えば下ヨリ糸(4)をS撚りとし、上ヨリ糸(5)をZ撚りとするなど、互いに逆の撚り方向にしてある。
【0030】
上記の芯糸(2)には弾性糸が配してある。一方、上記の下ヨリ糸(4)はラメ糸以外の繊維(6)からなり、合成繊維、或いは天然繊維などいかなる繊維であっても良い。なかでもこの下ヨリ糸(4)は、ストレッチラメ糸(1)の伸縮時に、上ヨリ糸(5)が糸長手方向にずれたりヨリだまりを発生したりすることを抑制する観点から、ポリエチレンテレフタレート繊維やポリアミド繊維などのウーリー加工糸(6)が好ましい。
また上記の上ヨリ糸(5)はラメ糸(7)で構成してある。このラメ糸(7)は金属光沢を備えており、例えば、ポリエステルやポリアミドなどの合成樹脂製フィルムに、銀やアルミニウムなどの金属を蒸着させ、これを所定幅に裁断して形成してある。
【0031】
上記のラメ糸(7)で構成した上ヨリ糸(5)は、ストレッチラメ糸(1)の外表面を殆ど隙間なく被覆しており、下記式(F3)で表される被覆率Cが95%以上となっている。
C=W/(π×d×cosφ)×100 …(F3)
ここでWは上ヨリ糸(5)の糸幅(mm)であり、dはストレッチラメ糸(1)の直径(mm)であり、φはストレッチラメ糸(1)の長さ方向に対する上ヨリ糸(5)の撚り角度(度)であり、πは円周率である。
【0032】
上記の上ヨリ糸(5)の撚り角度(φ)は、小さいと高被覆率にするには上ヨリ糸(5)の糸幅(W)を大きくしなければならず、伸縮の繰り返しにより被覆が乱れ易くなる虞がある。一方、撚り角度(φ)が90度近くになると1m当りの撚り回数が大きくなり、生産性を高めることが容易でない。このためこの撚り角度(φ)は、例えば75度など、通常は60〜80度の範囲内に設定してある。
【0033】
上記の芯糸(2)は、例えば伸縮性に優れているポリウレタン弾性繊維などの弾性糸が配してあるので、上記のストレッチラメ糸(1)は所望の伸縮率を備える。しかし、過剰に伸縮すると上記の上ヨリ糸(5)による被覆が乱れ易くなるので、このストレッチラメ糸(1)の伸長率は110〜200%となるように設定してある。
【0034】
このストレッチラメ糸(1)は被覆率が高く、しかも所望の伸縮性を備えるうえ、伸縮してもラメ糸による被覆が乱れ難い。このため、このストレッチラメ糸(1)を用いて織成或いは編組した布帛は、伸縮性があるため着用性やフィット性等に優れるうえ、良好な意匠性を発揮することができ、例えばデニム生地などに好ましく用いられて10%程度の伸縮性を備えた布帛にすることができる。
【0035】
上記のストレッチラメ糸(1)の芯糸(2)に使用される上記の弾性糸としては、例えば、ポリウレタン系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、天然ゴム、合成ゴム、伸縮性を有する複合繊維などを用いることができるが、その伸縮性、熱セット性、耐ガス脆化、耐薬品などの点からポリウレタン系弾性繊維が好ましい。
【0036】
上記のポリウレタン系弾性繊維を用いる場合は、例えば、ポリマージオールと有機ジイソシアネートを主体とするイソシアネートと多官能活性水素化合物との反応で得られたポリウレタン重合体を紡糸して得られる繊維が、特に好ましい。
【0037】
上記のポリマージオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンエーテルグリコールのようなポリエーテルグリコール類、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類の少なくとも1種と、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、β−メチルアジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン酸の少なくとも1種とを反応させて得られるポリエステルグリコール類、ポリカプロラクトングリコール、ポリヘキサメチレンジカーボネートグリコールのようなポリマージオールなどの、1種または2種以上の混合物または共重合物が例示できる。
【0038】
前記有機ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのような、有機ジイソシアネートの1種または2種以上の混合物が例示できる。さらにトリイソシアネートを少量併用してもよい。
【0039】
前記多官能活性水素化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、1,4−ジアミノピペラジン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの1種またはこれらの2種以上の混合物が例示できる。所望により、これらの化合物に、モノアミン、モノアルコールのような停止剤を少量併用してもよい。
【0040】
前記ポリウレタン重合体には、例えば、2,6−ジテトラブチルパラクレゾール、亜リン酸エステルなどの酸化防止剤、ヒドロキシベンゾフェノン系またはヒドオキシベンゾチアゾールなどの光または紫外線吸収剤、1,1−ジアルキル置換セミカルバジド、ジチオカルバミン酸塩などのガス黄変、劣化防止剤、および/または、酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料等を、適宜添加してもよい。
【0041】
上記のポリウレタン弾性繊維などの芯糸(2)の繊度は、特定の値に限定されず、好ましくは、例えば110〜330dtexのものが用いられるが、用いられる布帛の用途などに応じて、これら以外の繊度のものであってもよい。
また、上記の下ヨリ糸(4)は、通常はラメ糸以外の繊維(6)が用いられ、例えばポリエチレンテレフタレート繊維とポリアミド繊維との何れか、または両方を用いてもよく、他の合成繊維や天然繊維であってもよい。これらの繊維の繊度および態様は特定のものに限定されず、用途や目的に応じて適宜選択するのが好ましい。例えば、フィラメント糸と紡績糸のいずれであってもよく、その態様は、ウーリー加工糸、もしくは先染糸等のいずれであってもよく、また、これらの複合糸であってもよい。ストレッチラメ糸(1)の伸縮時に、上ヨリ糸(5)が糸長手方向にずれたりヨリだまりを発生したりすることを抑制する観点から、なかでもウーリー加工糸が特に好ましい。ただし、いずれも撚糸加工のし易い、安定した糸条であることが好ましい。
【0042】
次に、本発明のストレッチラメ糸の製造方法について説明する。
本発明のストレッチラメ糸(1)は、芯糸(2)に、例えば繊度が110〜330dtexのポリウレタン弾性繊維からなる弾性糸を用い、下ヨリ糸(4)にラメ糸以外の繊維(6)を用い、上ヨリ糸(5)にラメ糸(7)を用いて、例えば図2に示すカバリング装置(8)にて製造される。
【0043】
即ち、図2に示すカバリング装置(8)は、二つのフィードローラ(9・10)と、下ヨリ糸(4)をカバリングするための第1スピンドル(11)、第1Hボビン(12)並びに第1バルーンガイド(13)と、上ヨリ糸(5)をカバリングするための第2スピンドル(14)、第2Hボビン(15)並びに第2バルーンガイド(16)と、デリベリローラ(17)と、ストレッチラメ糸(1)をパッケージ(18)に巻き取るワインダ(19)とを備える。
【0044】
上記のカバリング装置(8)を用いた製造工程では、最初に、上記の第1フィードローラ(9)で給糸されたポリウレタン弾性繊維からなる芯糸(2)がこの第1フィードローラ(9)と上記の第2フィードローラ(10)との間でプレドラフトされる。そして、このプレドラフトされた芯糸(2)は、第2フィードローラー(10)とデリベリローラ(17)との間で再ドラフトされながら、下ヨリ糸(4)により、例えばS撚りにカバリング被覆された後、上ヨリ糸(5)により、下ヨリ糸(4)と反対方向の、例えばZ撚りにカバリング被覆される。
【0045】
上記のカバリングの際のドラフト率は、第1フィードローラ(9)とデリベリローラ(17)との間で引っ張られる倍率として定義され、第1フィードローラ(9)の表面速度に対するデリベリローラ(17)の表面速度の比で表される。本発明の製造方法では、上記のドラフト率が、例えば1.1倍〜2倍の範囲内に設定され、より好ましくは1.5倍〜2倍の範囲内に設定される。
【0046】
上記の上ヨリ糸(5)の巻きつけの際、下記式(F1)で表される上撚り係数K1が、30000以上の値となるように、上ヨリ糸(5)の撚り数などカバリング条件が設定される。
K1=(SS÷D+SC)1/2×R1 …(F1)
ここでSSは芯糸(2)の繊度(dtex)であり、SCは鞘糸(3)全体の繊度(dtex)であり、Dはカバリング時の芯糸(2)のドラフト率(倍)であり、R1は上ヨリ糸(5)の撚り数(回/m)である。
【0047】
上記の上ヨリ糸(5)の撚り数(R1)は、好ましくは2000〜8000回/mの範囲内に設定され、より好ましくは3000〜6000回/mの範囲内に設定される。また上記の芯糸(2)に対し上記の上ヨリ糸(5)を巻きつける際の、芯糸(2)と上ヨリ糸(5)との間に形成されるバルーニング角(α)は、30〜50度の範囲内に設定してある。
【0048】
一方、上記の下ヨリ糸(4)の巻きつけの際、下記式(F2)で表される下撚り係数K2が、上記の上撚り係数K1よりも小さい値となるように、下ヨリ糸(4)の撚り数などのカバリング条件が設定される。
K2=(SS÷D+SC)1/2×R2 …(F2)
ここで、R2は下ヨリ糸(4)の撚り数(回/m)である。
上記の上撚り係数K1に対する下撚り係数K2の比率は、好ましくは50〜97%の範囲内に設定される。
【0049】
上記の下ヨリ糸(4)の撚り数(R2)は、通常、上記の上ヨリ糸(5)の撚り数(R1)よりも小さい値に設定される。また上記の芯糸(2)に対し下ヨリ糸(4)を巻きつける際の、芯糸(2)と下ヨリ糸(4)とで形成されるバルーニング角(β)は、上記の上ヨリ糸(5)のバルーニング角(α)よりもやや小さい角度に設定してある。
【0050】
そして上記の下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)のカバリング被覆により得られたダブルカバリング構造のストレッチラメ糸(1)は、上記のワインダ(19)により上記のパッケージ(18)に巻き取られる。
【0051】
このようにして得られる本発明のストレッチラメ糸(1)は、単独で或いは他の糸と組み合わせて織成または編組に用いられ、意匠性と伸縮性に優れた、デニム生地などの布帛にされ、この布帛を用いて衣料等にされる。
【実施例】
【0052】
以下、上記のカバリング装置(8)を用いて製造した実施例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
糸構成として、芯糸(2)に、繊度が310dtexのポリウレタン弾性糸(東レ・オペロンテックス株式会社製、ライクラ(登録商標)、タイプ127C)を用い、鞘糸(3)の下ヨリ糸(4)に、24フィラメントで繊度が78dtexのポリアミド繊維のウーリー加工糸を用い、上ヨリ糸(5)に、厚さ12μm、幅0.2331mm、繊度が60dtex相当のラメ糸(泉工業株式会社製、ジョーテックススレンダー(商品名)、ポリエステルフィルムに銀を蒸着したもの)を用いた。従って、鞘糸(3)全体の繊度は138dtexである。
【0054】
上記のカバリング装置(8)における糸加工条件は以下の通りである。
ドラフト率は1.8倍とした。第1スピンドル(11)の回転数は10000rpmとし、下ヨリ糸(4)はS撚りで撚り数(R2)を33780回/mとし、バルーニング角(β)を31度とした。第2スピンドル(14)の回転数は10500rpmとし、上ヨリ糸(5)はZ撚りで撚り数(R1)を3546回/mとし、バルーニング角(α)を37.9度とした。
そして、上記の示す糸構成と上記の糸加工条件で糸加工し、実施例1のストレッチラメ糸(1)を得た。
【0055】
[実施例2]
糸構成として、芯糸(2)に、繊度が117dtexのポリウレタン弾性糸(東レ・オペロンテックス株式会社製、ライクラ(登録商標)、タイプ127C)を用い、鞘糸(3)の下ヨリ糸(4)に、36フィラメントで繊度が84dtexのポリエチレンテレフタレート繊維のウーリー加工糸を用い、上ヨリ糸(5)に、厚さ12μm、幅0.1515mm、繊度が38dtex相当のラメ糸(泉工業株式会社製、ジョーテックススレンダー(商品名)、ポリエステルフィルムに銀を蒸着したもの)を用いた。従って、鞘糸(3)全体の繊度は122dtexである。
【0056】
上記のカバリング装置(8)における糸加工条件は以下の通りである。
ドラフト率は1.65倍とした。第1スピンドル(11)の回転数は8000rpmとし、下ヨリ糸(4)はZ撚りで撚り数(R2)を2692回/mとし、バルーニング角(β)を31度とした。第2スピンドル(14)の回転数は15000rpmとし、上ヨリ糸(5)はS撚りで撚り数(R1)を5047回/mとし、バルーニング角(α)を37.9度とした。
そして、上記の示す糸構成と上記の糸加工条件で糸加工し、実施例2のストレッチラメ糸(1)を得た。
【0057】
[実施例3]
糸構成として、芯糸(2)に、実施例1と同じポリウレタン弾性糸を用い、鞘糸(3)の下ヨリ糸(4)に、24フィラメントで繊度が122dtexのポリアミド繊維のウーリー加工糸を用い、上ヨリ糸(5)に、厚さ24μm、幅0.2020mm、繊度が65dtex相当のラメ糸(泉工業株式会社製、ニャル(商品名)、ポリアミドフィルムにアルミニウムを蒸着したもの)を用いた。従って、鞘糸(3)全体の繊度は187dtexである。
【0058】
上記のカバリング装置(8)における糸加工条件は以下の通りである。
ドラフト率は1.65倍とした。第1スピンドル(11)の回転数は10000rpmとし、下ヨリ糸(4)はS撚りで撚り数(R2)を2980回/mとし、バルーニング角(β)を31度とした。第2スピンドル(14)の回転数は13000rpmとし、上ヨリ糸(5)はZ撚りで撚り数(R1)を3874回/mとし、バルーニング角(α)を37.9度とした。
そして、上記の示す糸構成と上記の糸加工条件で糸加工し、実施例3のストレッチラメ糸(1)を得た。
【0059】
[実施例4]
糸構成として、芯糸(2)に、実施例2と同じポリウレタン弾性糸を用い、鞘糸(3)の下ヨリ糸(4)に、36フィラメントで繊度が84dtexのポリエチレンテレフタレート繊維のウーリー加工糸を用い、上ヨリ糸(5)に、厚さ12μm、幅0.1515mm、繊度が38dtex相当のラメ糸(泉工業株式会社製、ジョーテックススレンダー(商品名)、ポリエステルフィルムに銀を蒸着したもの)を用いた。従って、鞘糸(3)全体の繊度は122dtexである。
【0060】
上記のカバリング装置(8)における糸加工条件は以下の通りである。
ドラフト率は1.65倍とした。第1スピンドル(11)の回転数は10000rpmとし、下ヨリ糸(4)はS撚りで撚り数(R2)を1481回/mとし、バルーニング角(β)を31度とした。第2スピンドル(14)の回転数は13000rpmとし、上ヨリ糸(5)はZ撚りで撚り数(R1)を2770回/mとし、バルーニング角(α)を37.9度とした。
そして、上記の示す糸構成と上記の糸加工条件で糸加工し、実施例4のストレッチラメ糸(1)を得た。
【0061】
次に、上記の各実施例で得られた各ストレッチラメ糸(1)について、それぞれ下記のように上撚り係数K1と下撚り係数K2を算出した。また、各ストレッチラメ糸(1)の外径と上ヨリ糸(5)の撚り角度(φ)を顕微鏡観察により測定し、被覆率Cを算出した。さらに各ストレッチラメ糸(1)の伸長率と、繰り返し伸縮に対する耐ヨリズレ性を測定した。
なお各実施例において、それぞれのストレッチラメ糸(1)の物性等は、次のように測定し或いは算出した。
【0062】
[撚り数(回/m)]
ストレッチラメ糸(1)を、0.0883cN/dtex荷重下で検撚機にて解撚し、下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)のそれぞれについて、1m当たりの撚り数を5回計測し、その平均値を撚り数とした。
【0063】
[撚り係数]
下記式にて上撚り係数K1と下撚り係数K2を算出した。
K1=(SS÷D+SC)1/2×R1
K2=(SS÷D+SC)1/2×R2
ここで、
SS:芯糸の繊度(dtex)
SC:鞘糸全体の繊度(dtex)
D :ポリウレタン弾性繊維のドラフト率(倍)
R1:上ヨリ糸の撚り数(回/m)
R2:下ヨリ糸の撚り数(回/m)
である。
【0064】
[被覆率(%)]
下記式にて被覆率Cを算出した。
C=W/(π×d×cosφ)×100
ここで、
W:上ヨリ糸の糸幅(mm)
d:ストレッチラメ糸の直径(mm)
φ:ストレッチラメ糸の長さ方向に対する上ヨリ糸の撚り角度(度)
π:円周率
である。
【0065】
[伸長率(%)]
1.8×10-3cN/dtex荷重下で、周長1mの手回し検尺器にて10回巻のカセを5つ採取した。そして、得られた5つの試料について、自記記録装置付定速伸長型引張試験機を用い、1.8×10-3cN/dtexの初荷重をかけた状態で10cmのつかみの間隔に取付け、引張速度を10cm/minとして、破断するまで引き伸ばし、破断したときの伸度を測定して、その5つの値の平均を伸長率とした。
【0066】
[繰り返し伸縮に対する耐ヨリズレ性]
0.0883cN/dtex荷重下で試長が10cmとなるようにデマッチャー試験機(株式会社安田精機製作所製)に試験片をセットし、40%伸長を10,000回繰り返した後の、ヨリズレの有無を目視により確認し、次の基準で耐ヨリズレ性を判断した。
◎:ラメ糸による被覆にズレの発生が皆無であった。
○:ラメ糸による被覆にズレが僅かに生じたが、ヨリだまりの発生は皆無であった。
△:ヨリだまりが殆どなく、被覆率の大きな低下はなかった。
×:ヨリだまりが多数発生し、下ヨリ糸や芯糸が大きく露出した。
【0067】
上記の実施例の物性や測定結果を図3の物性対比表に示す。
この測定結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4のストレッチラメ糸は、いずれも96%以上の高い被覆率を備えており、しかも、適度に優れた伸縮性を備えているうえ、伸縮を繰り返してもヨリだまりの発生が殆どなく、高い耐ヨリズレ性を備えていた。
【0068】
上記の実施形態や実施例で説明したストレッチラメ糸とその製造方法は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、糸構成や糸加工条件等は上記の実施形態や実施例のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0069】
例えば、上記の実施例では、芯糸の弾性糸として、東レ・オペロンテックス株式会社製のライクラ(登録商標)、タイプ127Cを用いた。しかし本発明では、他の市販品をはじめ、任意のポリウレタン弾性繊維や他の弾性糸を芯糸に用いてもよい。
また上記の実施形態では、下ヨリ糸にラメ糸以外の繊維(6)を用い、実施例ではポリエステル繊維とポリアミド繊維とのいずれかを用いた。しかし本発明ではこの下ヨリ糸に、例えばポリエステル繊維とポリアミド繊維とを組み合わせた繊維や、他の合成繊維、天然繊維等を用いてもよく、さらにはラメ糸を含む繊維を用いることも可能である。
また上記の実施形態や実施例では、上ヨリ糸をラメ糸で構成した。しかし本発明ではこの上ヨリ糸に、例えば繊度換算で95%以上の、ラメ糸を含んでおればよく、ラメ糸と他の繊維等とからなるものであってもよい。
【0070】
また上記のポリウレタン弾性繊維や下ヨリ糸、上ヨリ糸は、特定の繊度のものに限定されず、上記の実施例で用いたもの以外の繊度であってもよい。
さらに上記の実施例では、ラメ糸としてポリエステルやポリアミドの合成樹脂製フィルムに銀やアルミニウムを蒸着したものを用いた。しかし本発明のストレッチラメ糸には、他の材料の合成樹脂製フィルムや金属を用いたものであってもよいことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のストレッチラメ糸は、ラメ糸による被覆率が極めて高く、しかも所望の伸縮性を備えながら、伸縮による被覆の乱れを抑制して高い被覆率を維持できるので、意匠性に優れた伸縮性を備える衣料用布帛に好適である。
【符号の説明】
【0072】
1…ストレッチラメ糸
2…芯糸
3…鞘糸
4…下ヨリ糸
5…上ヨリ糸
6…ラメ糸以外の繊維
7…ラメ糸
8…カバリング装置
9…第1フィードローラ
10…第2フィードローラ
11…第1スピンドル
12…第1Hボビン
13…第1バルーンガイド
14…第2スピンドル
15…第2Hボビン
16…第2バルーンガイド
17…デリベリローラ
18…パッケージ
19…ワインダ
d…ストレッチラメ糸の直径
W…上ヨリ糸の糸幅
α…上ヨリ糸のバルーニング角
β…下ヨリ糸のバルーニング角
φ…上ヨリ糸の撚り角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸(2)に弾性糸を配し、この芯糸(2)の周囲にラメ糸(7)を含む鞘糸(3)を巻きつける、ストレッチラメ糸の製造方法であって、
上記の鞘糸(3)を、下ヨリ糸(4)と、ラメ糸(7)を含む上ヨリ糸(5)とで構成し、
上記の芯糸(2)を2倍以下のドラフト率で引き伸ばした状態で、上記の下ヨリ糸(4)を所定方向に巻きつけたのち、これとは逆方向に上記の上ヨリ糸(5)を巻きつけてダブルカバリング構造を形成し、
上記の上ヨリ糸(5)の巻きつけの際のカバリング条件を、下記式(F1)で表される上撚り係数K1が30000以上となるように設定することを特徴とする、ストレッチラメ糸の製造方法。
K1=(SS÷D+SC)1/2×R1 …(F1)
ここで、
SS:芯糸の繊度(dtex)
SC:鞘糸全体の繊度(dtex)
D :カバリング時の芯糸のドラフト率(倍)
R1:上ヨリ糸の撚り数(回/m)
である。
【請求項2】
上記の芯糸(2)のドラフト率は、1.5倍以上である、請求項1に記載のストレッチラメ糸の製造方法。
【請求項3】
上記の芯糸(2)に対し上記の上ヨリ糸(5)を巻きつける際の、芯糸(2)との間に形成されるバルーニング角(α)を30〜50度とした、請求項1または請求項2に記載のストレッチラメ糸の製造方法。
【請求項4】
上記の下ヨリ糸(4)の巻きつけの際のカバリング条件を、下記式(F2)で表される下撚り係数K2が上記の上撚り係数K1よりも小さい値となるように設定する、請求項1から3のいずれかに記載のストレッチラメ糸の製造方法。
K2=(SS÷D+SC)1/2×R2 …(F2)
ここで、
R2:下ヨリ糸の撚り数(回/m)
である。
【請求項5】
上記の下撚り係数K2は、上記の上撚り係数K1の50%以上である、請求項4に記載のストレッチラメ糸の製造方法。
【請求項6】
芯糸(2)に弾性糸が配してあり、この芯糸(2)の周囲に、下ヨリ糸(4)と、ラメ糸(7)を含む上ヨリ糸(5)とを順に巻きつけたダブルカバリング構造を有しており、
下記式(F3)で表される被覆率Cが95%以上であることを特徴とする、ストレッチラメ糸。
C=W/(π×d×cosφ)×100 …(F3)
ここで、
W:上ヨリ糸の糸幅(mm)
d:ストレッチラメ糸の直径(mm)
φ:ストレッチラメ糸の長さ方向に対する上ヨリ糸の撚り角度(度)
π:円周率
である。
【請求項7】
上記の請求項1から5のいずれかに記載のストレッチラメ糸の製造方法で製造した、請求項6に記載のストレッチラメ糸。
【請求項8】
上記のストレッチラメ糸(1)の長さ方向に対する上ヨリ糸(5)の撚り角度(φ)が、60度以上である、請求項6または請求項7に記載のストレッチラメ糸。
【請求項9】
伸長率が50〜150%である、請求項6から8のいずれかに記載のストレッチラメ糸。
【請求項10】
上記の弾性糸がポリウレタン弾性繊維からなる、請求項6から9のいずれかに記載のストレッチラメ糸。
【請求項11】
上記のラメ糸(7)が、合成樹脂フィルムに金属を蒸着させて形成してある、請求項6から10のいずれかに記載のストレッチラメ糸。
【請求項12】
請求項6から11のいずれかに記載のストレッチラメ糸(1)を用いて織成または編組したことを特徴とする、布帛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−207343(P2012−207343A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74299(P2011−74299)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(511081749)川プロ株式会社 (1)
【出願人】(593160105)泉工業株式会社 (3)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】