説明

ストレッチ短繊維織物および婦人用パンツ

【課題】ストレッチ性保持しながら、織物の裏面とストッキングとの動摩擦係数が小さく、さらに、吸湿性と平滑性を兼ね備えたストレッチ短繊維織物及びそれを用いた婦人用パンツを提供する。
【解決手段】経糸にセルロース紡績糸、緯糸に再生セルロース短繊維と自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントとの精紡交撚糸で構成され、総セルロース繊維の混率が70wt%以上であり、緯方向の伸長率が10%以上30%以下である織物であって、該織物の少なくとも片面において、織物の経方向における動摩擦係数が標準状態で0.350以下、湿潤状態で0.450以下であることを特徴とするストレッチ短繊維織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ短繊維織物およびそれを用いた婦人用パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
婦人用パンツに用いられる織物として、着心地、縫製した時の仕立て栄えを向上させるために、緯糸にポリウレタン繊維を用いたコアスパンヤーン、合撚糸等のストレッチヤーン、さらには、精紡交撚糸で構成されたストレッチ短繊維織物が従来から知られている。
【0003】
しかし婦人用パンツの場合は、紳士用パンツと異なり、ストッキングを着用した上にパンツを履く場合が多く、肌がストッキングと密着することにより発汗しやすく、織物が湿潤状態になることで、ストッキングと織物との摩擦抵抗が大きくなって、パンツを着脱しにくいという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、織物裏面の動摩擦係数を減らすために、織物組織で緯糸の表面占有率を下げる方法、シリコン系柔軟剤などの平滑性の高い柔軟仕上げ剤を使用する方法等が提案されているが、動摩擦係数を下げることは困難であった。
【0005】
精紡交撚糸については、特許文献1に開示され、ストレッチ織物については、特許文献2、3に開示されている。
【0006】
特に、特許文献1には、セルロース系短繊維とポリエステルマルチフィラメント糸を交撚した精紡交撚糸であって、該ポリエステルマルチフィラメント糸が自発捲縮型複合繊維及び/又は異収縮混繊糸であることを特徴とする精紡交撚糸が開示されている。この特許文献1によれば、セルロース素材としての限定はなく、また、ポリエステルマルチフィラメント糸として異繊維混繊糸を使用することによってヤーンに毛羽を生じさせることで、ウォーム感を発生させている。したがって、特許文献1に記載の精紡交撚糸を用いて得られた織物は、織物の裏面における経方向の動摩擦係数を下げるという性能は有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−260275号公報
【特許文献2】特許3961815号公報
【特許文献3】特開平9−228230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ストレッチ性を保持しながら、織物の裏面とストッキングとの動摩擦係数が小さく、さらに、吸湿性と平滑性を兼ね備えたストレッチ短繊維織物及びそれを用いた婦人用パンツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため、紡績糸の品位及び伸長率と経方向の動摩擦係数の関係を鋭意研究したところ、動摩擦係数には伸長率と紡績糸の糸むらや毛羽が大きく寄与することがわかった。すなわち、伸長率を高くすると、緯糸収縮が密度や組織で吸収しきれなくなり、表面浮きとなって凹凸が発生し、経方向の動摩擦係数が高くなる。その際に、紡績糸の糸むらや毛羽品位が悪いと、さらに動摩擦係数が高くなってしまうのである。
【0010】
このような問題を解決するために、本発明者らは、伸長率を高め、糸毛羽を抑制する紡績方法、及び、糸むらが起こりにくいセルロース短繊維とその繊度について検討した結果、織物裏面とストッキングの経方向における動摩擦係数が、標準状態で0.350以下、湿潤状態で0.450以下であれば、スムーズな着脱が可能になることを見出した。
【0011】
本発明者らは、上記の知見に基づき、経糸にセルロース紡績糸、緯糸に再生セルロース短繊維と自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントとの精紡交撚糸を用い、さらに、特定のセルロース混率とすることにより、ストレッチ性能を保持しながら吸湿性と裏面の平滑性を有するストレッチ短繊維織物が得られ、この織物を用いることによって、肌と密着したストッキングによるムレが抑制された婦人用パンツが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
1.経糸がセルロース紡績糸、緯糸が再生セルロース短繊維と自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントとの精紡交撚糸で構成され、総セルロース繊維の混率が70wt%以上であり、緯方向の伸長率が10%以上30%以下である織物であって、該織物の少なくとも片面において、織物の経方向における動摩擦係数が標準状態で0.350以下、湿潤状態で0.450以下であることを特徴とするストレッチ短繊維織物。
【0013】
2.前記精紡交撚糸の総番手が英式綿番手表示で40番〜5番であり、自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントの混率が30〜70wt%であることを特徴とする上記1に記載のストレッチ短繊維織物。
【0014】
3.前記精紡交撚糸を構成する再生セルロース短繊維の単糸繊度が1.7dtex以下であることを特徴とする上記1又は2に記載のストレッチ短繊維織物。
4.飽和水分率が8%以上であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のストレッチ短繊維織物。
【0015】
5.上記1〜4のいずれかに記載のストレッチ短繊維織物から構成される婦人用パンツであって、該織物において、経方向における動摩擦係数が標準状態で0.350以下であり、湿潤状態で0.450以下である面がパンツの裏面として用いられていることを特徴とする婦人用パンツ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のストレッチ短繊維織物は、ストレッチ性能を保持しながら吸湿性と裏面の平滑性に優れ、婦人用パンツとして有用である。この織物を用いることによって、肌と密着したストッキングとの動摩擦が小さく、かつ、ムレが抑制された婦人用パンツが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、経糸に使用するセルロース紡績糸は、例えば、綿、麻等の天然セルロース繊維や、キュプラアンモニウムレーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジック、リヨセル等のセルロース原料を溶解して紡糸した再生セルロース繊維の1種または2種以上からなり、繊維長は、例えば、38mm、51mm、72mm、梳毛などのいずれでもよく、単糸繊度にも制限はない。また、使用実番手としても、織物目付が婦人用パンツとして適度な目付になる範囲、例えば、60〜7番の範囲で設定すればよい。好ましい素材は、織物物性の観点から、綿である。
【0018】
本発明において、緯糸には、再生セルロース短繊維と自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントとの精紡交撚糸を使用する。
【0019】
再生セルロース短繊維は、ヤーンの状態で最密充填しやすくすると動摩擦係数を下げることができるので、細い単糸繊度であることが好ましい。再生セルロース短繊維の好ましい単糸繊度は1.7dtex以下であり、より好ましくは1.4dtex以下である。断面形状については、特に限定されないが、楕円を含む丸型断面が好ましい。繊維長についても、特に限定されないが、好ましくは30mm〜51mmである。また、同じセルロース繊維でも、綿は、特有のクリンプや捩れが紡績時に空隙を作るために、緯糸の凹凸が大きくなる。したがって、ストレッチ短繊維織物の用途によっては好ましくない場合があり、例えば、婦人用パンツに用いた場合には、ストッキングとの動摩擦抵抗が大きくなる。
【0020】
自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントとしては、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートでの単成分紡糸、上記素材とポリエチレンテレフタレートとの2成分紡糸、または、沸水収縮率の異なる2種のポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートでの2成分紡糸等により得られるマルチフィラメントが挙げられ、染色加工時の湿熱によって収縮挙動が発現し、ストレッチ性を生み出す機能を有するポリエステル繊維をいう。
【0021】
自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントの形態としては、原糸でもウーリー加工したものでもよいが、ウーリー加工糸の方がよりストレッチ性を発現させやすい。また、自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントの繊度は、総合番手と混率を考慮して適切な範囲に設定すればよい。自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントの混率は、30〜70wt%であることが好ましい。混率が上記の範囲であると、織物としたときに適度なストレッチ性が発現し、優れた吸湿性能が得られる。
【0022】
精紡交撚糸の番手は、総番手が英式綿番手表示で40番〜5番であることが好ましい。5番手よりも太くなると、緯糸の凹凸が大きくなり、ストレッチ短繊維織物にした際のストッキングとの動摩擦抵抗が大きくなる。また、精紡交撚糸の撚り係数は、特に制限されず、適宜選定すればよい。
【0023】
本発明のストレッチ短繊維織物は、総セルロース繊維の混率が70wt%以上である。混率が70wt%未満であると、優れた吸湿性が得られない。
本発明のストレッチ短繊維織物は、緯方向の伸長率が10%以上30%以下である。緯方向の伸長率が30%を越えると、緯糸の凹凸が大きくなり、織物裏面の経方向の動摩擦係数が高くなり好ましくない。また、5%未満であると、ストレッチ性能が不十分であり好ましくない。
【0024】
本発明のストレッチ短繊維織物は、該織物の少なくとも片面において、織物の経方向における動摩擦係数が標準状態で0.350以下、湿潤状態で0.450以下である。上記の範囲であると、婦人用パンツとしたとき、裏面の平滑性に優れ、スムーズな着脱が可能になる。
【0025】
本発明のストレッチ短繊維織物は、飽和水分率が8%以上であることが好ましい。飽和水分率が上記の範囲であると、快適な着用感が得られる。
本発明において、織物の組織については特に限定はないが、一般的には、平織よりも綾織が好ましく、さらに、朱子織となるにつれて、織物裏面の緯糸占有率が高くなり、織物裏面の経方向の動摩擦係数が大きくなるので好ましい。
【0026】
本発明において、織物のストレッチ性を発現させるためには、例えば、拡布式連続精練機、液流染色機、もしくは高圧ワッシャー等で、80℃〜120℃、数十秒〜20分の精練リラックスによる織物の巾入れを行った後、最終製品の伸長率が10%〜30%の範囲に入るよう、セット巾を設定し、160℃〜190℃の温度条件でテンターにてセットすることが好ましい。
【0027】
染色方法及び仕上げ剤の選定については、特に限定されない。一般的には、液流染色機を用い、分散染料と反応染料もしくは直接染料にて染色した後、100〜120℃で乾燥後、柔軟仕上げ剤、弱撥水剤、可縫製向上剤等をDipNip法で織物に付与し、乾燥する。防縮効果を得たい場合は、例えば、グリオキザール系ノンホルマリン樹脂加工剤及び触媒を、DipNip法で織物に付与し、150〜180℃の熱処理を施せばよい。
【0028】
本発明のストレッチ短繊維織物は、少なくとも片面の経方向における動摩擦係数が低く、優れた吸湿性を有し、調湿機能に優れているので、経方向における動摩擦係数が標準状態で0.350以下、湿潤状態で0.450以下である面を、裏面として用いることにより、着用感と着脱性に優れた婦人用パンツとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
なお、測定方法及び評価方法は以下の通りである。
【0030】
(1)織物の伸長率
JIS L−1096「伸縮織物の伸長率」A法にて、織物(試料)の緯方向について、伸長率を測定した。
【0031】
(2)織物の飽和水分率
織物(試料)から10cm×10cmの試験片を3枚採取し、恒温恒湿機内に該試験片を吊り下げ、6時間放置した。その後、試験片を取り出して質量(g)を測定した。次いで、該試験片を絶乾して絶乾後の質量(g)を測定し、下記の式で飽和水分率(%)を求めた。3点の測定値の平均値を算出し、小数点一桁に丸めた。
飽和水分率(%)=[(W−W0)/W0]×100
なお、Wは恒温恒湿機内で吸湿後の質量、W0は絶乾後の質量である。
【0032】
(3)織物の動摩擦係数
<標準状態での動摩擦係数>
織物(試料)から20cm×20cmの試験片を採取し、摩擦感テスター(KES−SE:カトーテック社製)を用いて測定した。摩擦子に、ナイロンストッキング(芯糸:ポリウレタン20dtex、鞘糸:ナイロン33dtexのカバリング糸、編機4インチ400本)を、経緯方向にそれぞれ100%伸長して貼り付けて固定したものを使用し、圧力50g/cm、速度1mm/秒の条件における動摩擦係数を測定した。なお、標準状態とは、JIS L−0105「試験条件」に記載されている、試料の状態である。
【0033】
<湿潤状態での動摩擦係数>
織物(試料)を、脱イオン水に5分間浸漬し、その後、ろ紙で軽くふき取るなどして、織物への水分付着量を100%に調整して湿潤状態とし、この湿潤状態の織物(試料)について動摩擦係数を測定した。測定方法は、上記と同様である。
【0034】
(4)婦人用パンツとしての性能評価
<着用性、標準状態及び湿潤状態での滑り性の評価>
婦人用パンツの標準状態及び湿潤状態における着用性、滑り性の効果について、官能評価を実施した。官能評価の基準を表1に示す。
【0035】
標準状態については、JIS L−0105「試験条件」に記載されている、試料及び試験場所の状態において、被験者がストッキングを着用した上に婦人用パンツを着用し、着用性、着脱時の滑り性を官能評価した。
湿潤状態については、30℃、湿度90%RHの雰囲気下の試験室にて、被験者がストッキングを着用した上に婦人用パンツを着用し、15分歩行した後の着用性、着脱時の滑り性を官能評価した。
【0036】
<吸湿性>
婦人用パンツの吸湿性の効果については、30℃、湿度90%RHの雰囲気下の試験室にて、被験者がストッキングを着用した上に婦人用パンツを着用し、15分間着席静止していた時のムレ感について官能評価をした。官能評価基準を表1に示す。
【0037】
<ストレッチ性>
婦人用パンツのストレッチ性については、婦人用パンツを着用した被験者が、屈伸運動を10回した時のパンツのストレッチ感を官能評価した。官能評価基準を表1に示す。
なお、上記の官能評価は、20代から50代の女性10名で行い、被験者による官能評価結果の平均値を各項目における点数とした。各評価の合計点数を総合評価とし、総合評価が大きいものほど優れていることを示す。
【0038】
〔実施例1〕
1.4dtex、38mm長のキュプラ短繊維と、167dtexのポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートのサイドバイサイド型2成分マルチフィラメントのウーリー加工糸を用い、撚数17.9回/2.54cm(撚係数4.0)にて、20番の精紡交撚糸を作製した。
得られた精紡交撚糸を緯糸に、経糸に綿30番を用いて、経糸密度140本/2.54cm、緯糸密度78本/2.54cmで構成した4/1組織の綾織物を得た。
【0039】
該綾織物を、液流染色機にて、非イオン系活性剤1g/リットルを用い、105℃で20分間精練リラックスした後、160℃にてプレセットし、再度、液流染色機にて、110℃の染色温度にて60分間、ポリエステル染色を実施した。次いで、80℃にて10分間還元洗浄した後、湯洗し、60分間セルロース染色を実施し、その後、80℃にて10分間ソーピングを行った。
【0040】
染色乾燥後、ニッカシリコンAMZ(アミノシリコン系柔軟剤:日華化学社製)2wt%を含む水溶液に含浸し、ピックアップ率85%で絞液し、140℃で2分間乾燥し、経糸密度179本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率75%の染色された綾織物を得た。
得られた染色綾織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色綾織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0041】
〔実施例2〕
精紡交撚糸として、1.4dtex、38mm長のリヨセルと、167dtexのポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメントのウーリー加工糸を用い、撚数17.9回/2.54cm(撚係数4.0)にて、20番の精紡交撚糸を作製した。
【0042】
得られた精紡交撚糸を緯糸に用いたこと以外は、実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度179本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率75%の染色織物を得た。
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0043】
〔実施例3〕
精紡交撚糸として、1.0dtex、38mm長のハイウェットモジュラスレーヨンと、167dtexのポリブチレンテレフタレートマルチフィラメントのウーリー加工糸を用い、撚数17.9回/2.54cm(撚係数4.0)にて、20番の精紡交撚糸を作製した。
【0044】
得られた精紡交撚糸を緯糸に用い、かつ、プレセット温度180℃、染色温度130℃で加工したこと以外は、実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度179本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率75%の染色織物を得た。
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0045】
〔実施例4〕
精紡交撚糸として、1.4dtex、38mm長のレギュラーレーヨンと、167dtexのポリエチレンテレフタレートのサイドバイサイド型2成分マルチフィラメントのウーリー加工糸を用い、撚数17.9回/2.54cm(撚係数4.0)にて、20番の精紡交撚糸を作製した。
【0046】
得られた精紡交撚糸を緯糸に用い、かつ、プレセット温度180℃、染色温度130℃で加工したこと以外は、実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度179本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率75%の染色織物を得た。
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0047】
〔比較例1〕
精紡交撚糸として、綿と、167dtexのポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートのサイドバイサイド型2成分マルチフィラメントのウーリー加工糸を用い、撚数17.9回/2.54cm(撚係数4.0)にて、20番の精紡交撚糸を作製した。
【0048】
得られた精紡交撚糸を緯糸に用いたこと以外は実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度178本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率75%の染色織物を得た。
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0049】
〔比較例2〕
精紡交撚糸として、2.2dtex、38mm長のキュプラと、167dtexのポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートのサイドバイサイド型2成分マルチフィラメントのウーリー加工糸を用い、撚数17.9回/2.54cm(撚係数4.0)にて、20番の精紡交撚糸を作製した。
【0050】
得られた精紡交撚糸を緯糸に用いたこと以外は実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度179本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率75%の染色織物を得た。
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0051】
〔比較例3〕
精紡交撚糸として、1.4dtex、38mm長のポリエチレンテレフタレートと、167dtexのポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートのサイドバイサイド型2成分マルチフィラメントのウーリー加工糸を用い、撚数17.9回/2.54cm(撚係数4.0)にて、20番の精紡交撚糸を作製した。
【0052】
得られた精紡交撚糸を緯糸に用いたこと以外は実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度179本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率55%の染色織物を得た。
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0053】
〔比較例4〕
精紡交撚糸として、1.4dtex、38mm長のキュプラと、167dtexのポリエチレンテレフタレート単成分マルチフィラメントのウーリー加工糸を用い、撚数17.9回/2.54cm(撚係数4.0)にて、20番の精紡交撚糸を作製した。
【0054】
得られた精紡交撚糸を緯糸に用い、かつ、プレセット温度180℃、染色温度130℃で加工したこと以外は、実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度160本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率75%の染色織物を得た。
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0055】
〔比較例5〕
精紡交撚糸の代わりに、綿と、70dtexのポリウレタンで構成されたコアスパンヤーン20番を作製した。
得られたコアスパンヤーンを緯糸に用い、かつ、プレセット温度190℃、染色温度130℃で加工したこと以外は、実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度182本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率95%の染色織物を得た。
【0056】
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【0057】
〔比較例6〕
精紡交撚糸の代わりに、1.4dtex、38mm長のベンベルグで作製した50番紡績糸と、167dtexのポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートのサイドバイサイド型2成分マルチフィラメントを用い、1000回/mで合撚した合撚糸を作製した。
【0058】
得られた合撚糸を緯糸に用いたこと以外は、実施例1と同様にして、製織、染色仕上げを行い、経糸密度177本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cm、総セルロース混率78%の染色織物を得た。
得られた染色織物を用いて婦人用パンツを作成した。
上記で得られた染色織物の性能を表2に、婦人用パンツの着用感、滑り性、吸湿性、ストレッチ性について評価した結果を表3に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【0059】
上記の表2の結果から、実施例である、経糸にセルロース紡績糸、緯糸に再生セルロース短繊維と自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントとの精紡交撚糸で構成されたストレッチ短繊維織物は、ストッキングとの動摩擦抵抗が低く、吸湿性に優れた婦人パンツ用ストレッチ短繊維織物であることがわかる。
【0060】
これに対して、比較例1、2、5及び6の織物は、ストッキングとの動摩擦係数が劣っており、比較例3の織物は、総セルロース混率が低く、吸湿性能が劣っている。また、比較例4の織物は、伸長率が劣っており、婦人用パンツとして好ましいストレッチ性能を有していない。
また、表3の結果から、実施例1〜4の織物は婦人用パンツとして非常に適しており、比較例1〜6の織物は婦人用パンツとしては適していないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸がセルロース紡績糸、緯糸が再生セルロース短繊維と自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントとの精紡交撚糸で構成され、総セルロース繊維の混率が70wt%以上であり、緯方向の伸長率が10%以上30%以下である織物であって、該織物の少なくとも片面において、織物の経方向における動摩擦係数が標準状態で0.350以下、湿潤状態で0.450以下であることを特徴とするストレッチ短繊維織物。
【請求項2】
前記精紡交撚糸の総番手が英式綿番手表示で40番〜5番であり、自発捲縮型ポリエステルマルチフィラメントの混率が30〜70wt%であることを特徴とする請求項1記載のストレッチ短繊維織物。
【請求項3】
前記精紡交撚糸を構成する再生セルロース短繊維の単糸繊度が1.7dtex以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のストレッチ短繊維織物。
【請求項4】
飽和水分率が8%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のストレッチ短繊維織物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のストレッチ短繊維織物から構成される婦人用パンツであって、該織物において、経方向における動摩擦係数が標準状態で0.350以下であり、湿潤状態で0.450以下である面がパンツの裏面として用いられていることを特徴とする婦人用パンツ。

【公開番号】特開2010−236160(P2010−236160A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87807(P2009−87807)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】